説明

MEMSトランスデューサの製造方法

【課題】MEMSトランスデューサの製造工程において、アニール処理によって生じる絶縁層の内部応力による基板の反りや破損を、新たに工程を増やすことなく防止する。
【解決手段】第一絶縁層と第一導電層と第二絶縁層と第二導電層とが形成された後に、第一導電層に到達するコンタクトホールを形成するとともに溝部H3を形成するために、第一絶縁層と第二絶縁層とをエッチングした後、第一導電層または第二導電層の応力を緩和するためのアニール処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)トランスデューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MEMSトランスデューサの一形態としてコンデンサマイクロホンが知られている。コンデンサマイクロホンは、ダイヤフラム(振動電極)やプレート(静止電極)に導電性の多結晶シリコンを用い、基板・ダイヤフラム・ダイヤフラムの各層の間に、絶縁材料のシリコン酸化膜を用いることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−082985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン酸化膜は低応力のプラズマCVD法により厚膜化が可能である。感度性能確保のためにダイヤフラムの応力を緩和するためのアニール処理が必要で、このアニール処理により多結晶シリコンのダイヤフラムの引っ張り応力が緩和され高感度の音響性能を得ることができる。しかし、そのアニール処理によってシリコン酸化膜の応力は強い圧縮側に変化することが分かっており、基板の反りの拡大や、堆積膜の座屈破壊につながる可能性がある。ウエハ全体が反ると、基板を搬送するときに不具合が生じる可能性がある。また、反りが生じていると、パターニングの際に露光不良の原因となり、製造工程を後工程に進められなくなる。なお、反りや座屈破壊を抑制するためにシリコン酸化膜を厚く形成しない場合、所望の音響性能が得られない。
【0005】
特許文献1には、半導体センサの製造工程において、応力緩和のためのアニール処理工程の前に、基板をハーフダイシングすることが記載されている。しかし、ハーフダイシング工程が新たに加わるため、製造コストが増加する。
本発明は上記課題にかんがみてなされたもので、MEMSトランスデューサの製造工程において、アニール処理によって生じる絶縁層の内部応力による基板の反りや破損を、新たに工程を増やすことなく防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するためのMEMSトランスデューサ(厚さ方向に貫通する開口が形成された基板の第一の主面上の前記開口の外側に形成された第一絶縁層と、前記第一絶縁層の上に形成され前記開口の上に張り渡された第一導電層と、前記開口より外側において前記第一導電層の上に形成された第二絶縁層と、前記第二絶縁層の上に形成され前記第一導電層と空隙を介して対向する第二導電層と、を有する構造体と前記基板とを備え、前記構造体の平面視における外周の少なくとも一部に前記基板の前記第一の主面を露出させる溝部が形成されているMEMSトランスデューサ)の製造方法は、前記第一絶縁層と前記第一導電層と前記第二絶縁層と前記第二導電層とが形成された後に、前記第一導電層に到達するコンタクトホールを形成するとともに前記溝部を形成するために、前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とをエッチングする絶縁層エッチング工程と、前記絶縁層エッチング工程の後、前記第一導電層または前記第二導電層の応力を緩和するためのアニール処理を施すアニール処理工程と、を含む。
【0007】
本発明の製造方法では、導電層の応力を緩和するためのアニール処理を行う前に、完成状態における一つのMEMSトランスデューサを構成する構造体の平面視における外周の少なくとも一部において絶縁層を除去して溝部を形成するため、熱処理前に当該溝部を形成しない場合と比較して、熱処理による基板の反りを軽減することができる。すなわち溝部を形成することにより、第一絶縁層や第二絶縁層の平面視における面積を小さくする、あるいは分断することができ、アニール処理によって第一絶縁層や第二絶縁層に生じる応力によって基板に変形を生じにくくさせることができる。また、溝部はコンタクトホールを形成するための絶縁層エッチング工程において行うことができるので、溝部を形成するために新たな工程(例えば先行技術文献に記載されていたようなハーフダイシング工程)を加える必要がなく、製造コストの増加を抑えることができる。なお、本明細書において「平面視」とは、基板の厚さ方向に平行な方向から見る場合を意味する。
【0008】
(2)上記目的を達成するためのMEMSトランスデューサの製造方法において、前記絶縁層エッチング工程において形成する前記溝部は、前記構造体の平面視における外周を囲っていてもよい。
基板上に複数形成される構造体の外周を囲んで溝部が形成されるため、基板の反りを軽減することができる。
【0009】
尚、請求項において「〜上に」というときは、技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。また、請求項に記載された動作の順序は、技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず、同時に実行されても良いし、記載順の逆順に実行されても良いし、連続した順序で実行されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(1A)は第一実施形態にかかるマイクロホンダイの上面図、(1B)はその模式的な断面図。
【図2】第一実施形態にかかる各層の形状を示す模式図。
【図3】(3A)〜(3E)は第一実施形態にかかる製造工程を示す断面図。
【図4】(4A)〜(4E)は第一実施形態にかかる製造工程を示す断面図。
【図5】(5A)は第一実施形態にかかるウエハの上面図、(5B)はその断面図、(5C)は比較対象のウエハの上面図、(5D)はその断面図。
【図6】(6A)および(6B)は他の実施形態にかかる平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0012】
1.第一実施形態
1−1.構成
図1は本発明の一実施形態にかかるコンデンサマイクロホンのマイクロホンダイ1を示す図である。図1Aはマイクロホンダイ1の上面図、図1Bはマイクロホンダイ1の層構造を説明するための模式的な断面図、図2は各層の形状を示す模式図である。コンデンサマイクロホンはマイクロホンダイ1と図示しない回路ダイと、これらを収容する図示しないパッケージとから構成される。マイクロホンダイはMEMS製造プロセスを用いて形成される積層構造体である。
【0013】
マイクロホンダイ1は例えば基板層10と次に述べる複数の層が順に積層されてなる構造体から構成されている。基板層10は厚さ200μm〜600μmの単結晶シリコンからなる。第一絶縁層11は厚さ1.0〜2.0μmのシリコン酸化膜からなる。第一絶縁層11は、円周上に等間隔に配列された複数のダイヤフラム支持部102と、ダイヤフラム支持部102よりも内側において円周上に等間隔に配列された複数のガードスペーサ103と、ガードリング125cおよびガードリード125dを基板層10から絶縁している環状の環状部101とを構成している。
【0014】
第一導電層12は厚さ0.5〜1.5μmの層で、P等の不純物が導入された多結晶シリコンからなる。第一導電層12はガード電極125aとガードコネクタ125bとガードリング125cとガードリード125dとからなるガード部127と、ダイヤフラム123とを構成している。第二絶縁層14は厚さ2.0〜10μmのシリコン酸化膜からなる。第二絶縁層14は、円周上に配列された複数のプレートスペーサ131と、プレートスペーサ131の外側に位置しエッチストッパリング161を支持しプレートリード162dとガードリード125dとを絶縁する環状の環状部132と、を構成している。
【0015】
第二導電層18は厚さ1.0〜3.0μmの層でありP等の不純物が導入された多結晶シリコンからなる。第二導電層18は、プレート162と、プレートリード162dと、エッチストッパリング161とを構成している。絶縁層20は厚さ0.1〜0.5μmのシリコン酸化膜からなり、エッチストッパリング161の外側に形成されている。マイクロホンダイ1には、4つの電極パッド125e、162e、123e、100eが設けられている。これらの電極パッド125e、162e、123e、100eは、AlSiなどの導電性の堆積膜であるパッド導電層21からなる。電極パッド125e、162e、123e、100eの側壁を保護するパッシベーション層22は厚さ1.0〜2.0μmのシリコン窒化膜からなる。
【0016】
ダイヤフラム123は、中央部123aと、中央部123aから外側に放射状に伸びる複数の腕部123cとを備える。ダイヤフラム123はその外縁近傍の複数箇所に接合されている複数の柱形のダイヤフラム支持部102によってプレート162との間と基板層10との間とにそれぞれ空隙を挟んでプレート162から絶縁して支持され、基板層10と平行に張り渡されている。ダイヤフラム支持部102は、ダイヤフラム123のそれぞれの腕部123cの先端部近傍に接合されている。それぞれの腕部123cには通孔であるダイヤフラム孔123bが複数形成されている。
【0017】
複数のダイヤフラム支持部102はバックキャビティC1の開口100aの周囲において開口100aの周方向に等間隔に配列されている。それぞれのダイヤフラム支持部102は絶縁性の堆積膜からなり柱形である。ダイヤフラム123は、その中央部123aがバックキャビティC1の開口100aを覆うように、これらのダイヤフラム支持部102によって基板層10の上に支持されている。基板層10とダイヤフラム123との間にはダイヤフラム支持部102の厚さに相当する空隙C2が形成されている。空隙C2はバックキャビティC1の気圧を大気圧と平衡させるために必要である。空隙C2はダイヤフラム123を振動させる音波がバックキャビティの開口100aに至るまでの経路における最大の音響抵抗を形成するように、ダイヤフラム123の径方向の長さが長く形成されている。ダイヤフラム123の基板層10と対抗する面には複数のダイヤフラムバンプ123fが形成されている。このダイヤフラムバンプ123fはダイヤフラム123が基板層10に吸着(スティッキング)することを防止するための突起物である。
【0018】
プレート162は、中央部162bと、中央部162bから外側に放射状に伸びる腕部162aとを備える。プレート162はその外縁近傍の複数箇所に接合されている複数の柱形のプレートスペーサ131に支持されている。またプレート162はその中心がダイヤフラム123の中心と重なるようにダイヤフラム123と平行に張り渡されている。プレート162には通孔であるプレート孔162cが複数形成されている。プレート孔162cはダイヤフラム123に音波を伝搬させる通路として機能する。
【0019】
プレートスペーサ131はダイヤフラム123と同じ層に位置するガード電極125aに接合されている。複数のプレートスペーサ131はバックキャビティC1の開口100aの周囲に等間隔に配列されている。それぞれのプレートスペーサ131はダイヤフラム123の腕部123cと腕部123cとの間の切り欠きの領域に位置する。プレート162はそれぞれがガードスペーサ103とガード電極125aとプレートスペーサ131とによって構成される柱形の複数のプレート支持部129によって基板層10上に支持されている。すなわち本実施形態においてプレート支持部129は複層の堆積膜からなる構造である。プレート支持部129によって、プレート162とダイヤフラム123との間には空隙C3が形成され、プレート162と基板層10との間には空隙C3と空隙C2とが形成されている。ガードスペーサ103とプレートスペーサ131とが絶縁性を有するためプレート162は基板層10から絶縁されている。
【0020】
プレート162のダイヤフラム123と対向する面には複数の突起(プレートバンプ)162fが設けられている。プレートバンプ162fはプレート162を構成する第二導電層18に接合された絶縁層17と、絶縁層17に接合された導電層15とからなる。プレートバンプ162fはダイヤフラム123がプレート162に吸着(スティッキング)することを防止する。導電層15は厚さ0.5〜2.0μmの多結晶シリコンからなる。絶縁層17は厚さ0.1〜0.2μmのシリコン窒化膜からなる。
【0021】
マイクロホンダイ1の外周には、段差(H3)が形成されている。段差(H3)の底面には基板層10が露出している。すなわちマイクロホンダイ1の外周においては、第一絶縁層11,第二絶縁層14,絶縁層20が除去されている。
【0022】
1−2.製造方法
次にマイクロホンダイ1の製造方法を説明する。図3Aに示すように、単結晶シリコンからなるウエハ(基板層10)の第一の主面上に第一絶縁層11としてシリコン酸化膜をプラズマCVD法により成膜し、その後、フォトレジストからなる図示しないマスクを用いて第一絶縁層11の表面にディンプル11aを形成する。
【0023】
続いて図3B示すように、第一絶縁層11の表面上に第一導電層12として多結晶シリコン膜を減圧CVD法などにより形成する。ディンプル11aは第一導電層12で埋められ、ダイヤフラムバンプ123fとなる。またこのとき同時に基板層10の第二の主面上にも導電層13が形成される。そして、図示しないマスクを用いて第一導電層12をパターニングし、ダイヤフラム123、ダイヤフラム孔123b、ガード部127を形成する。
【0024】
続いて図3Cに示すように、第一導電層12および第一絶縁層11の表面上に第二絶縁層14としてシリコン酸化膜をプラズマCVD法により成膜し、図示しないマスクを用いて第二絶縁層14上にディンプル14aを形成する。
続いて図3Dに示すように、ディンプル14aにプレートバンプ162fを形成する。具体的には、第二絶縁層14の表面上に導電層15として多結晶シリコン膜を形成する。このとき同時に導電層13の表面上にも導電層16が形成される。そしてディンプル14aの部分を残して導電層15を除去し、第二絶縁層14およびプレートバンプ162fの表面上に、絶縁層17としてのシリコン窒化膜を減圧CVD法によって成膜し、ディンプル14aの部分に残存している導電層15と接する部分を除いて絶縁層17を除去する。
【0025】
続いて、図3Eに示すように、第二絶縁層14と絶縁層17の表面上に第二導電層18として多結晶シリコン膜を減圧CVD法により成膜する。このとき導電層16の表面上にも導電層19(多結晶シリコン)が形成される。そして図示しないマスクを用いて第二導電層18をエッチングすることによりプレート162とプレートリード162dとエッチストッパリング161とを形成する。その後、基板層10の第二の主面上に堆積している導電層13、導電層16、導電層19を除去する。
【0026】
続いて、図4Aに示すように、コンタクトホールH1,H2を形成するとともに溝部H3を、図示しないマスクを用いて第一絶縁層11や第二絶縁層14をエッチングすることにより形成する(絶縁層エッチング工程)。コンタクトホールH1は、第二絶縁層14に開口を形成することによって開口の底部において第一導電層12を露出させている。コンタクトホールH2は、第二絶縁層14および第一絶縁層11に開口を形成することによって開口の底部において基板層10を露出させている。溝部H3は、図1Aに示すように一つのマイクロホンダイの構造体の外周に形成される溝であり、第一絶縁層11および第二絶縁層14に開口を形成することにより開口の底部において基板層10を露出させている。溝部H3を形成した後、ウエハを800℃〜1000℃でアニール処理を施す(アニール処理工程)。
【0027】
アニール処理により、第一導電層12の成膜時に生じた引っ張り応力を緩和することができる。そのため、第一導電層12で構成されるダイヤフラム123が、音波を受けたときに振動しやすくなり、すなわちマイクロホンとしての感度を向上させることができる。一方、このアニール処理によりシリコン酸化膜からなる第一絶縁層11および第二絶縁層14においては圧縮応力が大きくなってしまう。基板層10についでシリコン酸化膜の厚さは厚く、また第一の主面に占める面積も大きいため、シリコン酸化膜の応力はウエハ全体の反りに影響を与える。そのため、図5Aのような溝部H3が形成されていない場合、図5Cに示すようにウエハは大きく反り、最悪の場合、堆積膜の座屈破壊につながる。また、座屈破壊までに至らなくてもウエハの反りが大きいと、その後の工程において不具合が生じやすくなる。例えばフォトレジストマスクの露光不良等である。また、ウエハの搬送時にウエハが破損しやすい。
【0028】
本実施形態では、アニール処理の前にコンタクトホールH1,H2を形成する際に同工程において溝部H3も形成する。図5Aに示すように、溝部H3によって基板層10上のシリコン酸化膜が分割される。その結果、溝部H3を形成しない状態でアニール処理を行う場合(図5C・5D)と比較すると、図5Bに示すようにウエハの反りを少なくすることができる。溝部H3はコンタクトホールを形成する工程において形成できるので、溝部H3を形成するための新たな工程が追加されるわけではないので、製造コストの増加を抑えることができる。
【0029】
続いて、第二絶縁層14および第二導電層18の表面上に絶縁層20としてシリコン酸化膜をプラズマCVD法によって成膜する。このとき溝部H3の底部やコンタクトホールH1,H2の底部にも絶縁層20が堆積する。続いて図4Bに示すように、図示しないマスクを用いて絶縁層20をエッチングすることにより、コンタクトホールH1,H2の底部や溝部H3の底部の絶縁層20を除去するとともに、コンタクトホールH4を形成する。コンタクトホールH4の底部においては第二導電層18が露出している。
【0030】
続いて、図4Cに示すように、コンタクトホールH1,H2,H4にパッド導電層21からなる電極パッド123e、162e、125e、100eを形成した後、パッシベーション層22を形成し、絶縁層20および第二導電層18にプレート孔162cを形成する。その後、Nアニール処理を行いメタル−シリコン界面を合金化する。続いて、基板層10の第二の主面を研削し、基板層10を200〜600μm程度の厚さにする。
【0031】
続いて図4Dに示すように、開口20aを形成して第二導電層18を露出させ、その後、基板層10に開口100aを形成する。続いて図4Eに示すように、開口20aで囲まれている部分の外側の部分をフォトレジストからなるマスクRで覆い、等方性エッチングにより、プレート162およびプレートリード162dの上にある余分な絶縁層20を除去し、さらに第二絶縁層14の一部を除去して環状部132、プレートスペーサ131および空隙C3を形成し、第一絶縁層11の一部を除去してガードスペーサ103、ダイヤフラム支持部102、環状部101および空隙C2を形成する。このときエッチャントはマスクRの開口H5と基板層10の開口100aそれぞれから進入する。エッチングが終了した後、マスクRを除去する。そして、溝部H3においてダイシングし、各マイクロホンダイ1に分割される。そのためマイクロホンダイ1の外周には段差(H3)が残った状態となる。
【0032】
2.他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態で示した材質や寸法や成膜方法やパターン転写方法はあくまで例示であるし、当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。また、コンデンサマイクロホンを構成しうる物性を持つ膜材料の組み合わせや、膜厚や、要求される輪郭形状精度などに応じて適宜選択されるものであって、特に限定されない。
【0033】
上記実施形態では、溝部H3が各マイクロホンダイ1が形成される領域の外周を完全に囲っている構成を説明したが、図6Aや図6Bに示すように一部にシリコン酸化膜が残存していてもよい。図6Aは、複数個のマイクロホンの構造体ごとにその領域の外周に溝部H3が形成されている形態を示している。
また、第一絶縁層11や第二絶縁層14は、シリコン酸化膜の他、シリコン窒化膜、不純物を導入していないシリコン等であってもよい。
また、上記実施形態では、MEMSトランスデューサとしてコンデンサマイクロホンを例にして説明したが、本発明は、スピーカーや圧力センサなど、様々なトランスデューサに適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:マイクロホンダイ、10:基板層、11:第一絶縁層、11a:ディンプル、12:第一導電層、13:導電層、14:第二絶縁層、14a:ディンプル、15:導電層、16:導電層、17:絶縁層、18:第二導電層、19:導電層、20:絶縁層、20a:開口、21:パッド導電層、22:パッシベーション層、100a:開口、101:環状部、102:ダイヤフラム支持部、103:ガードスペーサ、123:ダイヤフラム、123a:中央部、123b:ダイヤフラム孔、123c:腕部、123e:電極パッド、123f:ダイヤフラムバンプ、125a:ガード電極、125b:ガードコネクタ、125c:ガードリング、125d:ガードリード、125e:電極パッド、127:ガード部、129:プレート支持部、131:プレートスペーサ、132:環状部、161:エッチストッパリング、162:プレート、162a:腕部、162b:中央部、162c:プレート孔、162d:プレートリード、162f:プレートバンプ、C1:バックキャビティ、C2:空隙、C3:空隙、H1〜H2:コンタクトホール、H3:溝部、H4:コンタクトホール、H5:開口、R:マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する開口が形成された基板の第一の主面上の前記開口の外側に形成された第一絶縁層と、
前記第一絶縁層の上に形成され前記開口の上に張り渡された第一導電層と、
前記開口より外側において前記第一導電層の上に形成された第二絶縁層と、
前記第二絶縁層の上に形成され前記第一導電層と空隙を介して対向する第二導電層と、
を有する構造体と前記基板とを備え、前記構造体の平面視における外周の少なくとも一部に前記基板の前記第一の主面を露出させる溝部が形成されているMEMSトランスデューサの製造方法であって、
前記基板の第一の主面上に前記第一絶縁層と前記第一導電層と前記第二絶縁層と前記第二導電層とが順に形成された後に、前記第一導電層に到達するコンタクトホールを形成するとともに前記溝部を形成するために、前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とをエッチングする絶縁層エッチング工程と、
前記絶縁層エッチング工程の後、前記第一導電層または前記第二導電層の応力を緩和するためのアニール処理を施すアニール処理工程と、
を含むMEMSトランスデューサの製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層エッチング工程において形成する前記溝部は、前記構造体の平面視における外周を囲っている、
請求項1に記載のMEMSトランスデューサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45659(P2012−45659A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189341(P2010−189341)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】