説明

NSAIDとして作用する化合物との併用でのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤のヒト疾患治療のための使用

本発明は、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDとして知られる化合物との併用により有益な治療効果が高まる病状における、ヒストン脱アセチル化酵素活性を有する酵素の阻害剤として作用する化合物の医学的使用に関する。このような病状には、癌、癌素因状態、炎症性および代謝性疾患が含まれる。本発明はまた、前記化合物を2種類の個別の薬剤の形態で別々に、または1回の投与単位に両方の薬剤を含有する投与形態で投与する、本明細書に記載の疾患の治療に臨床的に使用される薬剤の製造を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ステロイド性抗炎症薬NSAIDとして知られる化合物との併用により有益な治療効果が高まる病状における、ヒストン脱アセチル化酵素活性を有する酵素の阻害剤として作用する化合物の医学的使用に関する。このような病状には、癌、癌素因状態、炎症性および代謝性疾患が含まれる。本発明はまた、前記化合物を2種類の個別の薬剤の形態で別々に、または1回の投与単位に両方の薬剤を含有する投与形態で投与する、本明細書に記載の疾患の治療に臨床的に使用される薬剤の製造を含む。
【背景技術】
【0002】
クロマチン制御と疾患
クロマチンの局所的リモデリングは、遺伝子の転写活性化における主要な工程の1つである。転写性タンパク質をDNAの鋳型と接触させるためには、DNAのヌクレオソームパッケージングに動的な変化を生起させる必要がある。クロマチンのリモデリングおよび遺伝子転写に影響を与える最も重要な機構の1つは、ヒストンおよびその他の細胞性タンパク質のアセチル化による翻訳後修飾ならびにそれに続くクロマチン構造の変化である(Davie,1998,Curr Opin Genet Dev 8,173−8;Kouzarides,1999,Curr Opin Genet Dev 9,40−8;StrahlおよびAllis,2000,Nature 403,41−4)。ヒストンの高アセチル化が生起した場合、疎水性アセチル基によって生じたDNAに対する静電気的引力および立体障害に変化が生じ、ヒストンとDNAとの相互作用の不安定になる。その結果、ヒストンのアセチル化によりヌクレオソームが破壊され、DNAは転写装置に接近可能となる。アセチル基の除去によって、ヒストンがDNAおよび隣接するヌクレオソームに対してより強固に結合することが可能となり、したがって、転写が抑制されたクロマチン構造を維持することが可能になる。アセチル化は、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を有する一連の酵素により媒介される。逆に、アセチル基は、特定のヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)酵素によって除去される。これらの機構の破壊は転写の誤調節を引き起こし、自己免疫性、炎症性、または腫瘍化や腫瘍進行などの過剰増殖性の障害を含む、様々なヒトの疾患の原因となる可能性がある。
【0003】
さらに、転写因子のような他の分子は、アセチル化状態に依存してその活性および安定性を変える。たとえば、急性前骨髄球性白血病(APL)に関連した融合タンパク質であるPML−RARは、p53の脱アセチル化および分解を媒介することによりp53を阻害し、これによってAPL芽細胞がp53依存性の癌サーベイランス経路を潜り抜けることが可能となる。造血前駆細胞においてPML−RARが発現すると、p53が媒介する転写活性化が抑制されることになり、遺伝毒性ストレス(X線、酸化的ストレス)に引き起こされるp53依存性アポトーシスから保護される。しかしながら、p53の機能は、HDAC阻害剤の存在下では再設定され、この阻害剤はp53阻害の根底にある機構としてのPML−RARによるHDACのp53への活発な動員に関与している(Insingaら,2004年2月,EMBO Journal,1−11)。したがって、p53のアセチル化のような、ヒストンと異なるタンパク質のアセチル化が、HDAC阻害剤の抗腫瘍活性において不可欠な役割を果たしている。
【0004】
核内受容体とヒストン脱アセチル化酵素
核ホルモン受容体は、リガンド依存性転写因子であり、遺伝子発現の正および負の制御を通じて発生および恒常性を制御している。これらの調節プロセスにおける異常が、多くの疾患の原因の根底にあり、癌の発生に重要な役割を果たす。T3R、RARおよびPPARを含む多くの核内受容体は、リガンド非存在下でN−CoRおよびSMRTのようなコリプレッサー物質と相互作用することができ、これによって転写を阻害することができる。さらに、N−CoRはまた、アンタゴニスト占有プロゲステロンおよびエストロゲン受容体と相互作用することが報告されている。非常に興味深いことに、N−CoRおよびSMRTは、mSin3タンパク質およびヒストン脱アセチル化酵素をも含む大きなタンパク質複合体内に存在することが示されている(PazinおよびKadonaga,1997;Cell 89,325−8)。したがって、核内受容体がリガンドに誘導されて抑制から活性化へと切り替わることは、拮抗する酵素活性を有するコリプレッサーとコアクチベーター複合体との交換を反映している。
【0005】
核内受容体による遺伝子調節
HDAC活性を有するこのようなコリプレッサー複合体は、核内受容体による抑制を媒介するだけでなく、Mad−1、BCL−6およびETOなどのさらなる転写因子と相互作用する。これらのタンパク質の多くは、細胞の増殖および分化の障害において主要な役割を果たしている(PazinおよびKadonaga,1997,Cell 89,325−8;HuynhおよびBardwell,1998,Oncogene 17,2473−84;Wang,J.ら,1998,Proc Natl Acad Sci USA 95,10860−5)。たとえばT3Rは、当初はウイルス性癌遺伝子v−erbAとの相同性に基づいて同定されたが、これは、野生型受容体とは対照的に、リガンドに結合するのではなく、転写の構成的リプレッサーとして機能する。さらに、RARにおける変異は、多くのヒトの癌、特に、急性前骨髄球性白血病(APL)および肝細胞癌と関連している。APL患者では、染色体転座の結果生じたRAR融合タンパク質は、前骨髄球性白血病タンパク質(PML)または前骨髄球性ジンクフィンガータンパク質(PLZF)のいずれかを含む。いずれの融合タンパク質もコリプレッサー複合体の成分と相互作用できるが、レチノイン酸を添加するとPML−RARからコリプレッサー複合体が解放されるが、一方でPLZF−RARは構成的に相互作用する。これらの知見は、レチノイン酸による治療後にPML−RAR APL患者では完全な寛解が達成されるのに対して、PLZF−RAR APL患者では反応が極めてであった理由を説明するものである(Grignaniら,1998,Nature 391,815−8;Guidezら,1998,Blood 91,2634−42;Heら,1998,Nat Genet 18,126−35;Linら,1998,Nature 391,811−4)。
【0006】
最近、レチノイン酸での治療後に幾度か再発を経験したことがあるPML−RAR患者がHDAC阻害剤であるフェニルブチレートによる治療を受け、その結果白血病が完全に寛解している(Warrellら,1998,J.Natl.Cancer Inst.90,1621−1625)。
【0007】
ヒストン脱アセチル化酵素のタンパク質ファミリー
ヒストンアセチル化酵素(HAT)およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の動員は、細胞の増殖および分化に重要な役割を果たす多くの遺伝子の動的調節における主要な要素であると考えられている。ヒストンH3およびH4のN末端テールの高アセチル化は遺伝子の活性化と相関し、脱アセチル化は転写の抑制を媒介する。その結果、多くの疾患が、転写因子に影響する変異によって引き起こされる遺伝子発現の変化と関連している。PML−RAR、PLZF−RAR、AML−ETO、およびStat5−RARなどの白血病融合タンパク質による異常な抑制は、この点における原型的な例である。これらの事例のすべてにおいて、染色体転座により、転写アクチベーターは、HDACの動員による造血分化に重要な標的遺伝子を構成的に抑制するリプレッサーに変換される。同様の事象が、他の多くのタイプの癌の発病の原因となっている可能性は大いにあり得る。同じことが自己免疫性、炎症性または過剰増殖性の障害にも当てはまるという証拠が増えている。
【0008】
哺乳動物のヒストン脱アセチル化酵素は、3つのサブクラスに分けることができる(GrayおよびEkstroem、2001)。HDAC1、2、3および8は、酵母RPD3タンパク質相同体であり、クラスIを構成する。HDAC4、5、6、7、9および10は、酵母Hda1タンパク質に関連しており、クラスIIを構成する。最近、酵母Sir2タンパク質の哺乳類相同体がいくつか同定され、これらはNAD依存性のある脱アセチル化酵素の第3のクラスを構成している。さらに、HDAC11は、クラスIIのHDACの構造的特徴を有するクラスIヒストン脱アセチル化酵素として分類されている。これらのHDACはすべて、細胞内で、過剰な多タンパク質複合体のサブユニットとして存在しているようである。特に、クラスIおよびクラスIIのHDACは、転写因子に対するHDACの動員に必要とされる架橋因子として機能する転写コリプレッサーmSin3、N−CoRおよびSMRTと相互作用することが示されている。
【0009】
HDAC阻害剤を用いた治療
最近、HDAC阻害の原理を用いて癌患者の全身性臨床治療を開発するためのさらなる臨床研究が開始された。これまでに、近縁酪酸誘導体であるPivanex(Titan Pharmaceuticals)を単独療法として用いた第II相臨床試験が終了し、病期III/IVの非小細胞肺癌における活性が示されている(Keerら,2002,ASCO,Abstract No.1253)。さらに多くのHDAC阻害剤が同定されており、NVP−LAQ824(Novartis)およびSAHA(Aton Pharma Inc.)は、第II相臨床試験において試験されたヒドロキサム酸の構造クラスに属するものである(Marksら,2001,Nature Reviews Cancer 1,194−202)。別のクラスは、環状テトラペプチドを含み、たとえばT細胞リンパ腫の治療を目的とした第II相試験に使用され好結果を得たデプシペプチド(FR901228−Fujisawa)などが挙げられる(Piekarzら,2001,Blood 98,2865−8)。さらに、ベンズアミドのクラスに関連した化合物であるMS−27−275(Mitsui Pharmaceuticals)は現在、血液悪性疾患の患者を治療する第I相試験において試験中である。
【0010】
HDAC阻害剤バルプロ酸
バルプロ酸(VPA;2−プロピル−ペンタン酸)は、異なる分子作用機構に依存する多様な生物活性を有している。
− VPAは抗癲癇薬である。
− VPAは催奇形性である。妊娠中に抗癲癇薬として使用した場合、VPAは、生まれる子供の数パーセントにおいて出生異常(神経管閉鎖異常および他の奇形)を誘発する。マウスでは、VPAは、適量を投与した場合、マウス胎児多数において催奇形性を示す。
− VPAは、核内ホルモン受容体(PPARδ)を活性化する。いくつかのさらなる転写因子もまた脱抑制されるが、有意に脱抑制されない因子もある(グルココルチコイド受容体、PPARα)。
− VPAは、肝毒性を引き起こすことがあるが、これは、補酵素Aでの代謝が不十分なエステルに依存する。
− VPAは、HDAC阻害剤である。
− VPAは、HDAC−2のプロテアソーム分解を誘導する。
【0011】
VPA誘導体の使用により、異なる活性が異なる分子作用機構によって媒介されることを解明することができた。優先的に催奇形または優先的に抗癲癇性のいずれかである化合物が単離できることから、催奇形性および抗癲癇活性は、異なる作用様式に従ったものである(Nauら,1991,Pharmacol.Toxicol.69,310−321)。PPARδの活性化は、催奇形性と厳密に相関していることが判明しており(Lampenら,1999,Toxicol.Appl.Pharmacol.160,238−249)、PPARδの活性化および催奇形性がいずれもVPAが有する同一の分子活性を必要とすることが示されている。また、F9細胞の分化は、Lampenら,1999によって示され、また分化マーカーの解析によって実証(Werlingら,2001,Mol.Pharmacol.59,1269−1276)されているように、PPARδの活性化および催奇形性と厳密に相関している。PPARδ活性化は、VPAおよびその誘導体のHDAC阻害活性によって引き起こされることが示された(WO02/07722A2;WO03/024442A2)。さらに、確立されたHDAC阻害剤であるTSAが、PPARδを活性化し、VPAと同じ型のF9細胞分化を誘導することが示された。これらの結果から、PPARδの活性化だけでなく、F9細胞分化およびVPAまたはVPA誘導体の催奇形性の誘導もまたHDAC阻害によって引き起こされるものと結論付けられる。
【0012】
HDAC−2の選択的プロテアソーム分解促進におけるVPAの活性は、HDACの酵素活性阻害剤としての活性とは異なっているが、それは、十分に特徴付けられたHDAC阻害剤トリコスタチンAとMS−27−275とがいずれもHDAC−2の分解に影響を与えないためである(Kraemerら,2003,22(13),3411−3420)。
【0013】
抗癲癇活性および鎮静活性は、異なる構造活性関係に従うものであり、したがって、HDAC阻害とは異なるVPA1次活性に依存することは明らかである。肝毒性の機構は十分に理解されておらず、VPA−CoAエステルの形成と関連しているかどうかはわかっていない。しかしながら、HDAC阻害は、CoAエステル形成を必要としないように思われる。
【0014】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤としてのバルプロ酸
VPAは、癲癇の治療に使用する薬剤として開発されてきた。したがって、VPAは、全身的、経口、または静脈内に使用され、血液脳関門を通過して脳組織内の癲癇標的領域に達して抗癲癇の使命を果たす。さらに、VPAは、多くの異なる型のヒトの癌の治療に、単剤として、または個々に顕著に異なる作用様式に基づく他のさまざまな抗腫瘍治療剤と併用で使用した場合、HDAC活性を有する特定の組の酵素を阻害し、それによって分化および/またはアポトーシスを誘導することによって、有益な効果を有することが示されている(WO02/07722A2、EP1170008;WO03/024442A2、EP1293205A1)。悪性疾患、自己免疫疾患または他の炎症性もしくは過剰増殖性障害を治療または予防するためにも、VPAは、全身、経口または静脈内に投与され得る。さらに、VPAは、ヒト皮膚に効果的に浸透し、したがって、自己免疫疾患、ヒトの皮膚の炎症性または過剰増殖性疾患、たとえば、乾癬およびヒト皮膚癌の局所的治療または予防のために使用した場合、皮膚に局所投与して、有益な効果を発揮することが示された(EP出願番号03014278.0)。
【0015】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とその使用
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、アラキドン酸のプロスタグランジンおよびトロンボキサンへの代謝における主要な酵素であるシクロオキシゲナーゼ酵素の阻害剤である。最近、シクロオキシゲナーゼ酵素が2つのアイソフォームであるCOX−1およびCOX−2を含むことが見出された。COX−1は、ほとんどの組織で構成的に発現され、そこで生理学的機能に寄与している。NSAIDによるCOX−1の阻害は、これらの薬剤に共通した毒性、たとえば、胃潰瘍形成および出血と関連付けられてきた。COX−2は、炎症部位および一部の腫瘍(たとえば、限定されないが、結腸腺腫、結腸癌および結腸直腸癌、乳房、肺および前立腺の腫瘍)でサイトカインおよび増殖因子に応答して誘導される誘導酵素である。
COX阻害剤は、さまざまな疾患および状態、たとえば、痛み、関節リウマチなどの炎症性疾患を治療するため、また、たとえば家族性腺腫症(FAP)を患う患者において、腸ポリープ成長の阻害のためにも使用されている。疫学的研究では、NSAIDを長期にわたって摂取した人の結腸直腸腺腫および癌腫の割合が予想よりも低いことが示されている。
【0016】
これら広く使用されているNSAIDのクラスとして、アスピリン、サリチル酸メチル、ジクロフェナク[Voltaren(登録商標)、Nu−Diclo(登録商標)、Cataflam(登録商標)]、メクロフェナム酸塩[Meclomen(登録商標)]、メフェナム酸[Ponstel(登録商標)]、メロキシカム[Mobic(登録商標)]、ナブメトン[Relafen(登録商標)]、ナプロキセン[Aleve(登録商標)、Anaprox(登録商標)、Naprosyn(登録商標)、Naprelan(登録商標)、Naxen(登録商標)、Novo−Naprox(登録商標)、Synflex(登録商標)]、オキサプロジン[Daypro(登録商標)]、フェニルブタゾン[Cotylbutazone(登録商標)、Alka Butazolidine(登録商標)]、ピロキシカム[Feldene(登録商標)、Nu−Pirox(登録商標)]、スリンダク[Clinoril(登録商標)、Novo−Sundac(登録商標)]、テノキシカム[Mobiflex(登録商標)]、ジフルニサル[Dolobid(登録商標)]、チアプロフェン酸[Albert Tiafen(登録商標)、Surgam(登録商標)]、トルメチン[Tolectin(登録商標)]、エトドラク[Lodine(登録商標)]、フェノプロフェン[Nalfon(登録商標)]、フロクタフェニン[Idarac(登録商標)]、フルルビプロフェン[Ansaid(登録商標)、Froben(登録商標)]、イブプロフェン[Advil(登録商標)、Dolgesic(登録商標)、Excedrin(登録商標)、Genpril(登録商標)、Haltran(登録商標)、Ibifon(登録商標)、Ibren(登録商標)、Ibu(登録商標)、Ibuprin(登録商標)、Ibuprohm(登録商標)、Medipren(登録商標)、Midol(登録商標)、Motrin(登録商標)、Nuprin(登録商標)、Pamprin(登録商標)、Q−Profen(登録商標)、Rufen(登録商標)、Trendar(登録商標)]、インドメタシン[Indocin(登録商標)、Indocid(登録商標)]、ケトプロフェン[Orudis(登録商標)、Oruvail(登録商標)、Actron(登録商標)、Rhodis(登録商標)]、ニメスリド[Aulin(登録商標)]である。いくつかのNSAID(コキシブ系と称する)は、Cox−2酵素活性を選択的に阻害し、このサブクラスには、セレコキシブ[Celebrex(登録商標)、Celebra(登録商標)、Onsenal(登録商標)]、ロフェコキシブ[Vioxx(登録商標)、Vioxx Dolor(登録商標)、Ceoxx(登録商標)]、バルデコキシブ[Bextra(登録商標)、Valdyn(登録商標)]、パレコキシブ[Dynastat(登録商標)、Rayzon(登録商標)]、ルミラコキシブ[Prexige(登録商標)]、エトリコキシブ[Arcoxia(登録商標)]、デラコキシブ、チルマコキシブ、ロベナコキシブ(robenacoxib)、フィロコキシブ(firocoxib)およびシミコキシブ(cimicoxib)が含まれる。
【0017】
しかしながら、2004年12月、最も多く処方されている関節リウマチおよび変形性関節症の鎮痛剤であるセレブレックス(登録商標)(セレコキシブ、Pfizer Inc.)に対し、セレブレックス(登録商標)の2つの5年薬剤治験のうち1つをモニターしていた安全性委員会は、予備データから、この薬剤を多量に摂取していた患者において、心臓障害または脳卒中のリスクがいくぶん増加していることを見出した。この所見により、研究は中止に至った。
【0018】
以前に、Merck&Co.もまた、臨床試験で同様の副作用が得られた後、COX−2阻害薬剤Vioxx(登録商標)の販売を中止した。
【0019】
上述のように、COX酵素は、体内で種々の重要な機能を調節しているプロスタグランジンのレベルを調節する。ある型のプロスタグランジンは、たとえば、胃粘膜と呼ばれる保護液で胃の内側を覆うのを補助する。この保護液の産生が減退すると、一部の人は、胃潰瘍発症のリスクにさらされる。
【0020】
COX−2は、体内のアラキドン酸をプロスタグランジンに変換する。また、癌細胞では、COX−2レベルも上昇し、プロスタグランジンの産生を誘発する。プロスタグランジンは、腫瘍細胞と結合して、新たな血管の生成に関与する遺伝子をオンにする補助を行うことにより、細胞の急速な成長を補助する。
【0021】
また、NSAID、プロスタグランジン(PG)、増殖およびアポトーシス間の関係が、たとえばCOXを発現してPGを合成する結腸腺癌細胞において、調査された。たとえば、PG産生HT−29結腸癌細胞は、COX阻害剤スリンダクおよびピロキシカムによって成長阻害された。結腸直腸癌は、西洋諸国で2番目に多い癌であり、浸潤および/または転移が起こると、しばしば死に至る。現在では、肝細胞増殖因子(HGF)に加えて結腸癌浸潤もまた、シクロオキシゲナーゼ−2(Cox−2)酵素によって産成されるプロスタグランジンに誘導されると考えられている。
【0022】
したがって、多くの細胞について、プロスタグランジンの合成と細胞成長の制御との関連付けが確立しており、たとえば、上皮増殖因子依存性増殖がCOX阻害剤であるインドメタシンにより阻害されるBalb/c3T3細胞においても示されている。
【0023】
また、1世紀以上にわたって痛みおよび炎症の制御に使用されているアスピリンは、疫学的研究により、1980年代初頭にその長期使用と結腸直腸癌の減少とが関連付けられている。ほぼ同時期に、NSAIDスリンダクに反応して結腸直腸腺腫が退行することを示す最初の報告が出された。その後数年間に、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害する他のNSAIDの使用が、乳房、前立腺および肺の組織を含む多くの組織における癌リスクの低減と関連付けて考えられるようになった。
【0024】
今日、COX−2ならびにプロスタグランジン合成経路の上流および下流酵素の過剰発現は、多様な癌および一部の腫瘍発生前病変で証明されている。自己分泌または傍分泌経路を通じたプロスタグランジンとその受容体との直接相互作用による生存細胞の増加および新脈管形成の刺激が、シクロオキシゲナーゼ酵素による発癌促進機能の根底にある分子機構として提案されている(概説については、Cancer Lett.2004 Nov 8;215(1):1−20. Cyclooxygenases in cancer:progress and perspective.Zha S,Yegnasubramanian V,Nelson WG,Isaacs WB,De Marzo AM.を参照のこと)。
【0025】
また最近、この点に関し、シクロオキシゲナーゼCOX−2が一部の肺癌の分子的病因に関与している可能性が、前臨床試験によって示された。利用可能な研究の大部分が、非小細胞肺癌におけるその関与を指摘している。高レベルのCOX−2を発現する非小細胞肺癌を有する患者の生存は、著しく低減される。選択的COX−2阻害剤セレコキシブを用いたヒトの治療により、非小細胞肺癌を有する患者における化学療法の抗腫瘍効果が増大する。COX−2は、腫瘍に関する新脈管形成の一部の特性を調節することが示されている(Clin Cancer Res.2004 Jun 15;10(12 Pt 2):4266s−4269s.Cyclooxygenase as a target in lung cancer.Brown JR,DuBois RN.)。
【0026】
また、いくつかの研究により、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の発現は、進行性乳癌のパラメータ(たとえば、大きな腫瘍サイズ、陽性腋窩リンパ節転移およびHER2−陽性腫瘍状態)と関連していることが示唆されている。マウスおよびラットにおける乳腺腫瘍の研究では、中等度から高度のCOX−2発現が、非特異的および特異的COX−2阻害剤による治療に対して感受性を示す乳腺腫瘍の発生と関連していることが示された(Semin Oncol.2004 Apr;31(2 Suppl 7):22−9.The role of COX−2 inhibition in breast cancer treatment and prevention.Arun B,Goss P.)。
【0027】
COX−2はまた、前立腺癌、特に、高悪性度の前立腺上皮内腫瘍および癌の上皮細胞においても高度に発現される。選択的COX−2阻害剤を用いたヒト前立腺癌細胞株の治療により、インビトロおよびインビボのいずれにおいてもアポトーシスが誘導されることが示された。インビボの結果はまた、COX−2阻害剤が、腫瘍微細血管密度および新脈管形成を減少させることを示している。COX−2阻害剤は、強力な血管形成因子である血管内皮増殖因子の低酸素上方調節を抑制し得る。したがって、これらの結果は、COX−2阻害剤が、前立腺の癌において有効な化学抗癌剤および治療用薬剤として供され得ることを示す(Urology.2001 Aug;58(2 Suppl 1):127−31.The role of cyclooxygenase−2 in prostate cancer.Kirschenbaum A,Liu X,Yao S,Levine AC)。
【0028】
HDAC阻害剤とNSAIDとの併用
WO03/039599A1には、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤とヒストン脱アセチル化酵素阻害剤との併用、および前癌状態の結腸病変または結腸癌または他の悪性腫瘍の治療におけるその使用が一般的に開示されている。
【0029】
本出願の発明者らは、驚くべきことに、HDAC阻害剤とCOX酵素阻害剤との併用が、ヒストン脱アセチル化酵素HDAC−2の上方調節を特徴とする疾患の治療において特に有効であることを見出した。さらに、この併用により、同じくCOX酵素によって調節される、たとえばプロスタグランジンの分泌のような下流の生物学的事象に予期せぬ相乗的阻害がもたらされることがわかった。
【0030】
したがって、本発明は、疾患に罹患した組織におけるヒストン脱アセチル化酵素HDAC−2の上方調節により定義される疾患を治療または予防するための薬剤を製造するための、NSAIDと併用されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の使用に関する。
【0031】
さらに、本発明は、治療を必要とする個体に、有効量のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤と有効量のNSAIDとを投与することを含む、HDAC−2の上方調節を特徴とする疾患の治療または予防のための方法に関する。
【0032】
本発明の別の態様は、疾患の治療または予防のための薬剤を製造するための、NSAIDと併用されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の使用であり、ヒストンの高アセチル化の誘導が有益な効果を有し、治療される個体の少なくとも1つの組織がヒストン脱アセチル化酵素HDAC−2の上方調節を示すことを特徴とする。前記疾患が腫瘍である場合、前記組織は、通常、腫瘍組織である。
【0033】
前記疾患に罹患した組織におけるHDAC−2の上方調節は、異なる変異の結果であるか、またはこれと関連したものであり得る。APC機能の欠如をもたらすAPC変異、またはβ−カテニンの機能の獲得をもたらすβ−カテニン変異により、HDAC−2レベルの上昇が起こり得る。同様に、c−mycの上方調節または機能の向上は、HDAC−2の上方調節を引き起こし得る。一般的に、Wnt経路の変異および改変は、HDAC−2の上方調節を引き起こし得る。したがって、前記疾患に罹患した組織は、APC遺伝子内に少なくとも1つの変異を有し得る。あるいはまた、前記疾患に罹患した組織は、β−カテニン遺伝子内に少なくとも1つの変異を有し、これにより、β−カテニン機能の獲得またはβ−カテニンタンパク質の安定化すなわち半減期の長期化がもたらされる。また別の実施形態では、前記疾患に罹患した組織は、c−mycの上方調節または機能の向上を示す。さらにまた別の実施形態では、前記疾患に罹患した組織は、HDAC−2上方調節をもたらすWnt経路の変異および/または改変を示す。
【0034】
好ましい実施形態においては、前記疾患に罹患した組織は、APC遺伝子に少なくとも1つの変異を、およびβ−カテニン遺伝子に少なくとも1つの変異を有する。別の実施形態においては、前記疾患に罹患した組織は、APC遺伝子に少なくとも1つの変異を、およびβ−カテニン遺伝子に少なくとも1つの変異を、ならびにc−mycの上方調節または機能の向上を有する。
【0035】
用語「組織」は、本明細書で用いる場合、個体由来の生物学的材料を表す。用語「組織」は、個体から得られた細胞を含む。語句「疾患に罹患した」は、細胞または組織が、対応する健常個体の細胞または組織と異なっている状況を指す。たとえば、細胞または組織は、制御されていない細胞分裂を示したり、健常個体の対応する細胞には存在しない遺伝子変異を有したり、または炎症の徴候を示したりする。任意の第1のステップにおいて、組織材料は、個体から生検材料を得ることにより提供され得る。
【0036】
治療すべき疾患に罹患した組織におけるHDAC−2の上方調節は、健常個体の対応する組織におけるHDAC−2レベル(タンパク質またはmRNA)と比べて、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、最も好ましくは少なくとも50%である。用語「上方調節」は、HDAC−2タンパク質および/またはHDAC−2mRNAの量をいう。好ましくは、タンパク質およびmRNAのいずれもが上方調節される。
【0037】
疾患に罹患した組織がヒストン脱アセチル化酵素HDAC−2の上方調節を示すか否か、または上方調節の程度は、HDAC−2の量および/または発現を測定することにより決定できる。たとえば、HDAC−2タンパク質の量は、HDAC−2指向抗体を用いた免疫測定によって決定できる。このような免疫測定は、当業者には公知である。HDAC−2指向抗体は、Kraemerら(2003)EMBO J.22,3411−3420に開示されており、Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Zymed、SigmaAldrichおよびその他の企業など、種々の供給元から得ることができる。
【0038】
当技術分野で一般に知られているウエスタンブロッティングを使用してよい。細胞材料または組織を均質化し、変性剤および/または還元剤を用いて治療し、試料を得る。試料は、ポリアクリルアミドゲル上に負荷し、タンパク質を分離した後、膜に移すか、または直接固相上にスポットしてもよい。次いで、抗体を試料と接触させる。1回以上の洗浄工程の後、結合した抗体を、当技術分野で知られた手法を用いて検出する。タンパク質のゲル電気泳動およびウエスタンブロッティングが、Golemis,“Protein−Protein Interactions:A Laboratory Manual”,CSH Press 2002,Cold Spring Harbor N.Y.に記載されている。
【0039】
固形腫瘍の薄片などの組織材料を固定しかつ透過化した後に、免疫組織化学を使用してもよい。次いで、抗体を試料とともにインキュベートし、1回以上の洗浄工程の後、結合した抗体を検出する。この手法は、HarlowおよびLane,“Antibodies,A Laboratory Manual”CSH Press 1988,Cold Spring Harbor N.Y.に概説されている。
【0040】
好ましい実施形態において、HDAC−2タンパク質の量はELISAにより測定する。さまざまな形式のELISAが想定される。一形式では、抗体をマイクロタイタープレートなどの固相で固定化した後、非特異的結合部位をブロックして、試料とインキュベートする。別の形式では、試料をまず固相と接触させ、試料中に含有されるHDAC−2タンパク質を固定化する。ブロックおよび任意選択の洗浄後、固定化した試料と抗体とを接触させる。ELISA手法は、HarlowおよびLane,“Antibodies,A Laboratory Manual”CSH Press 1988,Cold Spring Harbor N.Y.に記載されている。
【0041】
あるいはまた、HDAC−2のmRNAまたはcDNAの量は、当業者に知られた核酸手法によって測定できる。好ましくは、ハイブリダイゼーション手法および/またはPCR手法が使用される。ノーザンブロッティング手法は、試料中のHDAC−2RNAの量を測定するために使用できる。好ましい実施形態において、RT−PCRが使用される。当業者は、HDAC−2のヌクレオチド配列に基づいて、これらの方法において使用するに適したプライマーおよび/またはプローブを設計することができる。ヌクレオチド配列ならびにHDAC−2の量および/または発現を測定するに適した方法は、WO2004/027418A2に記載されている。
【0042】
本発明の使用または方法の一態様によれば、HDAC−2の上方調節を特徴とする疾患を個体が有するか否かを調べるために、診断工程を実行してもよい。この診断工程は、組織試料中のHDAC−2核酸またはタンパク質の量または発現を測定することが含み得る。組織試料がHDAC−2の上方調節を示す場合、組織を採取した個体は、本発明の使用または方法に従って治療可能である。
【0043】
したがって、本発明による併用治療の前に、mRNAなどのHDAC−2核酸またはタンパク質の量もしくは発現を測定する工程を実施してもよい。任意に、前記試料中のHDAC−2核酸またはタンパク質の量もしくは発現が健常個体由来の参照試料と比較して有意に、少なくとも10、25または50%高い場合に、個体を選択してよい。
【0044】
さらに、APC遺伝子またはβ−カテニン遺伝子に変異が存在するか否かを測定し得る。さらに、当技術分野で知られた方法に従って、c−mycの上方調節または機能の向上の有無を決定し得る。
【0045】
ヒトの癌におけるいくつかのβ−カテニン変異が、Polakis(2000)Genes & Development 14:1837−1851の表1(第1840頁を参照のこと)に開示されている。これらの変異は、引用により本明細書に組み込まれる。本発明の一実施形態において、治療する疾患は、その疾患に罹患した組織におけるこれらβ−カテニン変異の少なくとも1つを特徴とするものである。
【0046】
APC遺伝子における変異は文献に広く記載されており、しばしば、胃腸の癌、たとえば、胃、十二指腸、結腸および直腸の癌の発生と関連付けられており、APC遺伝子を結腸における発癌性のゲートキーパーとしている(BehrensおよびLustig,Int.J.Dev.Biol.48:477−487,2004;ならびにそこに挙げられた参考文献)。さらに、APC変異はまた、さらなる種々の癌(BeroudおよびSoussi,Nucleic Acids Res.24(1):121−4,1996)、たとえば、膵癌(FlandersおよびFoulkes,Med.Genet.33:889−898,1996)、甲状腺癌(Kuriharaら;Thyroid 14(12):1020−9,2004)、肺癌(Ohgakiら;Cancer Lett.207(2):197−203,2004)、腎臓癌(Pecina−Slausら,Pathology 36(2):145−51,2004)、黒色腫(Wormら,Oncogene 23(30):5215−26,2004;Reifenbergerら,Int J Cancer 100(5):549−56,2002)でも見出される。さらにまた、FAPおよびターコット症候群患者におけるAPC変異は、髄芽細胞腫、甲状腺乳頭癌、肝芽腫および類腱腫(Lynchら,Dig.Dis.Sci.46(11):2325−32,2001)ならびに脳腫瘍(Sunaharaら,Nippon Rinsho 58(7):1484−9,2000;Hamiltonら,N.Engl.J.Med.332(13):839−47,1995)の発生と関連付けられている。これらの文献の開示およびそこに記載された変異は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0047】
好ましくは、治療または予防する疾患は、癌に至る遺伝性疾患である。前記疾患はさらに、癌または炎症性疾患であり得る。特に好ましい実施形態において、癌に至る遺伝性疾患は家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)である。
【0048】
本発明の一態様は、炎症性疾患を治療または予防するための薬剤を製造するための、NSAIDとの併用でのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の使用である。
【0049】
治療または予防する疾患は、エストロゲン受容体依存性乳癌、エストロゲン受容体非依存性乳癌、ホルモン受容体依存性前立腺癌、ホルモン受容体非依存性前立腺癌、脳腫瘍、腎臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵臓癌、膀胱癌、食道癌、胃癌、尿生殖器癌、胃腸癌、子宮癌、卵巣癌、星状細胞腫、神経膠腫、皮膚癌、扁平上皮癌、ケラトアカントーマ、ボーエン病、皮膚T細胞リンパ腫、黒色腫、基底細胞癌、光線性角化症、魚鱗癬、ざ瘡、尋常性ざ瘡、肉腫、カポージ肉腫、骨肉腫、頭部および頚部の癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、白血病、リンパ腫および/または他の血液細胞癌であり得る。
【0050】
別の態様では、前記疾患は、関節リウマチ、甲状腺ホルモン抵抗性症候群、糖尿病、サラセミア、肝硬変、原虫感染、リウマチ様脊椎炎、あらゆる形態のリウマチ、変形性関節症、痛風性関節炎、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、インシュリン非依存性糖尿病、喘息、鼻炎、ブドウ膜炎、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、慢性下痢、乾癬、アトピー性皮膚炎、骨疾患、線維増殖性疾患、アテローム性動脈硬化症、再生不良性貧血、ディジョージ症候群、グレーブズ病、癲癇、癲癇重積症、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、統合失調性感情障害、躁病、脳卒中、気分不調和性精神病性症状、双極性障害、情動障害、髄膜炎、筋ジストロフィー、多発性硬化症、激昂、心臓肥大、心不全、再灌流障害および/または肥満である。
【0051】
併用治療に使用するNSAIDはシクロオキシゲナーゼ阻害剤であってもよく、好ましくはシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤である。本発明による好ましいNSAIDは、サリチル酸系、アリールアルカン酸、2−アリールプロピオン酸、N−アリールアントラニル酸、メロキシカムおよびピロキシカムなどのオキシカム系、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびロフェコキシブなどのコキシブ系、スルホンアニリド系、インドメタシン、スリンダク、アスピリン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセンの薬剤およびその誘導体である。
【0052】
本明細書で用いる場合、用語「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を有する酵素のヒストン脱アセチル化酵素活性を阻害できる物質を表す。
【0053】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の阻害活性は、当業者に知られたインビトロ免疫測定によって測定できる(WO03/001403)。IC50値は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の阻害活性の尺度とみなすことができる。低いIC50値は阻害活性が高いことを示し、高いIC50値は阻害活性が低いことを示す。本発明に従って使用されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、好ましくは、少なくとも1種類のヒストン脱アセチル化酵素に関して1mM未満、より好ましくは500μM未満のIC50値を有する。
【0054】
好ましい実施形態によれば、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、ヒストン脱アセチル化酵素または選択した脱アセチル化酵素のサブセットを優先的に阻害できる。用語「優先的に阻害する」は、本明細書で用いる場合、所与のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によって第1の群のヒストン脱アセチル化酵素が第2の群のヒストン脱アセチル化酵素よりも強力に阻害される状態をいう。通常、第1の群のヒストン脱アセチル化酵素を優先的に阻害するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、前記第1の群のヒストン脱アセチル化酵素に関して800μM未満、好ましくは500μM未満のIC50値を有する。第2の群のヒストン脱アセチル化酵素に関するIC50値は、通常、800μMより大きく、好ましくは1mMより大きい。
【0055】
好ましい実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、クラスIヒストン脱アセチル化酵素を優先的に阻害できる。この第1の実施形態によれば、クラスIヒストン脱アセチル化酵素はクラスIIヒストン脱アセチル化酵素よりも強力に阻害される。この第1の実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、ヒストン脱アセチル化酵素HDAC1、2、3および8に関して通常800μM未満、好ましくは500μM未満のIC50値を有する。また、このヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は通常、クラスII酵素HDAC4、5、6、7、9および10に関して800μMより大きい、好ましくは1mMより大きいIC50値を有する。特定の実施形態において、使用するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、HDAC−2を、その他のヒストン脱アセチル化酵素よりも強力に阻害する。本発明に従って使用するヒストン脱アセチル化酵素は、HDAC−2に関して800μM未満、好ましくは500μM未満のIC50値を有することが最も好ましい。
【0056】
好ましくは、本発明に従って使用するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、これを用いて治療される細胞において、HDAC−2タンパク質またはmRNAのレベルを下方調節できる。これは、Kraemerら(2003)EMBO J.22,3411−3420(その開示は引用により本明細書に組み込まれる)に記載のようにして測定できる。下方調節は、少なくとも10%、または少なくとも25%、または少なくとも50%であってよい。
【0057】
本発明の併用治療で使用するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、式I
【化1】

(式中、RおよびRは、独立して、直鎖または分枝鎖の飽和または不飽和脂肪族C3〜25炭化水素鎖を示し、これは、任意に1つまたはいくつかのヘテロ原子を含んでいてもよく、置換されていてもよく、Rは、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシまたは任意にアルキル化されたアミノ基を示す)
の化合物または薬学的に許容され得るその塩であってよい。好ましくは、RおよびRは、独立して、直鎖または分枝鎖のC3〜25炭化水素鎖であり、これは任意に、二重結合または三重結合を1つ含む。
【0058】
最も好ましくは、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩である。
【0059】
本発明の他の態様において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、ヒドロキサム酸誘導体、ベンズアミド、ピロキサミドおよびその誘導体、HDAC阻害活性を示す微生物代謝物質、脂肪酸およびその誘導体、環状テトラペプチド、ペプチド性化合物、クラスIIIのHDAC阻害剤ならびにSIRT阻害剤または薬学的に許容され得るその塩からなる群より選択され得る。
【0060】
ヒドロキサム酸誘導体は、NVP−LAQ824、LBH−589、MGCD0103、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、CBHA、G2M−701、G2M−702、G2M−707、ピロキサミド、スクリプタイド、CI−994、CG−1521、クラミドシン、ビアリールヒドロキサメート、A−161906、ビシクロアリール−N−ヒドロキシカルボキサミド、PXD−101、スルホンアミドヒドロキサム酸、TPX−HAアナログ(CHAP)、オキサムフラチン、トラポキシン、デプデシン、アピジシン、ベンズアミド、MS−27−275,酪酸およびその誘導体、ピバネックス(酪酸ピバロイルオキシメチル)、トラポキシンA、デプシペプチド(FK−228)および関連するペプチド化合物、タセジナリンおよびMG2856または薬学的に許容され得るその塩などの化合物であってよい。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態は、本明細書において先に定義した疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、セレコキシブ(たとえば、セレブレックス(登録商標)として市販)(または他のコキシブ系))との併用でのバルプロ酸の使用である。最も好ましくは、バルプロ酸は、FAP治療用のセレコキシブと併用で使用される。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書において先に定義した疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、スリンダク(または他のアリールアルカン酸)との併用でのバルプロ酸の使用である。最も好ましくは、バルプロ酸は、FAP治療用のスリンダクとの併用で使用される。
【0063】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書において先に定義した疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、アスピリン(または他のサリチル酸系)との併用でのバルプロ酸の使用である。最も好ましくは、バルプロ酸は、アスピリンとの併用で使用される。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書において先に定義した疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、イブプロフェン(または他の2−アリールプロピオン酸)との併用でのバルプロ酸の使用である。最も好ましくは、バルプロ酸は、FAP治療用のイブプロフェンとの併用で使用される。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書において先に定義した疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、フェナム酸(または他のN−アリールアントラニル酸)との併用でのバルプロ酸の使用である。最も好ましくは、バルプロ酸は、FAP治療用のフェナム酸との併用で使用される。
【0066】
本発明の別の好ましい実施形態は、本明細書において先に定義した疾患を予防または治療するための薬剤を製造するための、ピロキシカム(または他のオキシカム系)との併用でのバルプロ酸の使用である。最も好ましくは、バルプロ酸は、FAP治療用のピロキシカムとの併用で使用される。
【0067】
特定の態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)セレコキシブを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関する。別の特定の態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)スリンダクを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関する。別の特定の態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)アスピリンを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関する。別の特定の態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)イブプロフェンを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関する。別の特定の態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)フェナム酸を含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関する。別の特定の態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)ピロキシカムを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関する。
【0068】
活性成分(a)および(b)は、同時、並行、個別または逐次使用のために、遊離形態または薬学的に許容され得る塩の形態で存在し得る。複数の部分から成るキットの複数の部分は、同時または時間をずらして投与されてよく、すなわち、複数の部分から成るキットの任意の部分について、異なる時点で、および等しいかまたは異なる時間間隔をおいて、投与されてよい。
【0069】
本発明による薬剤は、静脈内投与、筋肉投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経鼻投与、腹腔内投与または坐剤投与によって適用され得る。
【0070】
異なる薬剤化合物は、2種類の個別の薬剤の形態で、または1回の投与単位に両方の薬剤を含有する投与形態で投与され得る。異なる薬剤化合物は、同時または時間をずらして投与されてよく、すなわち、複合薬の任意の化合物について、異なる時点で、および等しいかまたは異なる時間間隔をおいて、投与されてよい。
【0071】
驚くべきことに、NSAIDおよびヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の用量が、これらの化合物をそれぞれ単独で使用する場合と比べて、有意に低減され得ることが見出された。
【0072】
したがって、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤との併用で使用する場合におけるNSAIDの好ましい用量は、推奨または認可用量の30〜60%まで、より好ましくは60〜80%まで、より好ましくは80〜90%まで低減され得る。
【0073】
特定の一態様において、本発明は、(a)バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩および(b)セレコキシブを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関し、この場合、治療のためのセレコキシブの1日量は100〜600mgであり、バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩の1日量は体重1kg当り10〜60mgである。より好ましくは、セレコキシブの1日量は200〜500mgであり、バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩の1日量は体重1kg当り20〜45mgである。最も好ましくは、これらの複合薬はFAPの治療のために使用される。
【0074】
別の特定の態様において、本発明は、(a)PXD101または薬学的に許容され得るその塩および(b)セレコキシブを含む複合薬、たとえば、複合製剤または薬剤組成物に関し、この場合、治療のためのセレコキシブの1日量は100〜600mgであり、PXD101の1日量は300mg〜10gである。より好ましくは、セレコキシブの1日量は200〜500mgであり、PXD101の1日量は500mg〜5gである。最も好ましくは、これらの複合薬はFAPの治療のために使用される。
【0075】
本発明の別の実施形態において、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の好ましい用量は、NSAIDとの併用で使用する場合、前記薬剤の推奨または認可用量の30〜60%まで、より好ましくは60〜80%まで、より好ましくは80〜90%まで低減され得る。
【0076】
これらの薬剤の既に知られた副作用プロフィールに鑑み、また、起こり得る副作用を挙げたこのリストに心臓毒性および脳卒中の潜在リスク増大をも追加する最近のデータが存在することから、特に長期使用または常用が必要とされる場合には、これらの薬剤の用量レベルを引き下げることが必要とされる。これは実際に、他の治療的アプローチとCOX阻害剤の使用とを組み合わせた新規な治療方法によって達成でき、副作用を低減させながら少なくとも同等の治療上の成功を維持するか、または患者の利益をさらに増しつつ、COX阻害薬剤の用量を引き下げることが可能となる。
【0077】
本発明において、発明者らは、HDAC阻害剤が、COX−2の発現を下方調節し、これによって細胞によるプロスタグランジン分泌を阻害し得ることを示すデータを提示する。これはすなわち、このようなHDAC阻害剤の抗癌特性に寄与し得る。しかしながら、最も重要なことであるが、本発明において発明者らはHDAC阻害剤とCOX酵素阻害剤とを併用することにより、驚くべきことに、同じくCOX酵素によって調節されるプロスタグランジン分泌など下流の生物学的事象において、予期せぬ相乗的阻害が生じることを示す。これらの相乗的活性は、一部はCOX阻害剤によって引き起こされる酵素的阻害によるものであり、第2に、COX遺伝子発現の下方調節によるものである。しかしながら、いずれの機構にも同じ標的構造が関与するため、この説明は、観察される相乗的効果、特に、動物における最も関連の深いインビボ試験系で見られる前記効果を説明するには不十分であることが予測される。したがって、おそらくヒストン脱アセチル化酵素阻害活性と関連しているさらなる驚くべき活性が、このような有益な相乗的効果をもたらす原因となっていると結論付けなければならない。ここで、これらの所見は、癌または炎症性疾患を患う患者に対し、COX阻害剤とともにHDAC阻害剤を用いる併用治療に基づいた新規な治療法の選択肢を提供するために、ヒト臨床的試験に移すことができる。
【0078】
また、この併用相乗的活性に基づき、HDAC阻害剤との併用で使用される場合、NSAIDの用量を減少させ得ることが予測され、その結果、これらのNSAIDの使用に関連する副作用が減少し得る。
【0079】
したがって、家族性腺腫ポリポーシス(FAP)の場合と同様、HDAC阻害剤とNSAIDとの併用により、腸ポリープ成長およびポリープ負荷の相乗的低減が予測される。その結果、FAP患者に対する現在のケア標準、すなわち、予防的結腸切除(腸の外科的除去)が、可能性として数年間、延期され得る。また、これらの患者の個々のポリープは最終的に結腸癌に進行するため、この進行が抑制および遅延され得る。
【0080】
さらに、本発明は、さまざまな(たとえば、限定されないが、結腸、乳房、肺および前立腺の癌を含む)癌適応症を治療するためのHDAC阻害剤とCOX阻害剤との併用を包含する。
【0081】
また、HDAC阻害剤の抗炎症性活性に基づいて、これらを抗炎症作用性COX阻害剤との併用で使用することができ、炎症性疾患において付加的またはさらに相乗的な治療効果得るために両方の阻害概念を組み合わせた新規な治療の選択肢が与えられる。
【実施例】
【0082】
実施例1
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によるCOX−2のRNAおよびタンパク質発現の下方調節
Cox−2の発現は、HDAC阻害剤によって下方調節される(図1および2)。これは、HDAC阻害性化合物バルプロ酸(VPA、TSA、G2M−701、G2M−702およびG2M−707)の場合(G2M−701、G2M−702およびG2M−707の詳細については、WO2004/009536A1を参照のこと)、RNAおよびタンパク質レベルで、いくつかの系、たとえば、A−549ヒト肺上皮癌細胞、SK−Mel黒色腫細胞、HT−29結腸癌細胞、MDA−MB−231乳癌細胞、THP−1単球および一次ヒトリンパ球およびマクロファージなどにおいて示された。同時に解析したCox−1レベルは、図1に示されるように、影響されていない。対照的に、COX−2阻害剤セレコキシブ(図2)は、COX−2の発現を改変しない。
【0083】
成長培地へ20ng/mlのTPAを3日間添加することにより、THP−1細胞の分化を誘導した。接着細胞を、6ウェルプレートの各ウェル当り5×10細胞の密度で播種し、1mMのVPAまたは10μMのG2M−707とともに一晩インキュベートした(図1A)。次いで、10μg/mlのLPSの添加により、6時間かけてCox−2発現を誘導した。RNAは、Qiagen製のRNeasyキットを用い、製造業者の使用説明書に従って調製した。1μgのRNAを20μlの容量で用いて逆転写を行った。記載の遺伝子に対して特異的プライマーを使用した各PCR反応につき、1μlを使用した。TNF−α、IFN−γおよびIL−6の下方調節に加え、両HDAC阻害剤によるCOX−2RNAの下方調節もまた観察されたが、COX−1RNAの下方調節は観察されなかった(図1A)。
【0084】
また、半定量的RT−PCRを、それぞれ投与量30mg/kg/日(患者1)または120mg/kg/日のVPA(患者2)で治療された患者の末梢血リンパ球から単離したRNAを用いて行った。図1Bは、VPA治療によるCox−2の下方調節を明白に示しているが、対照遺伝子GAPDHの下方調節は見られない。
【0085】
図2に、HDAC阻害剤によるタンパク質レベルでのCox−2の調節を種々の細胞型で示す。ここで、A549細胞およびSK−Mel黒色腫細胞は、COX−2の構成的発現を示し、さらなる誘導は見られなかった。HT−29結腸癌細胞では、100ng/mlのTNF−αを用いた4時間の治療によってCox−2の発現が誘導された。MDA−MB−231乳癌細胞およびTHP−1単球では、10μg/mlのLPSをCox−2発現の誘導物質として、それぞれ16時間または6時間使用した。HDAC阻害剤による治療は、72時間(A−549)、48時間(SK−Mel)、誘導16時間前に開始(THP−1細胞)、または誘導30分前に開始して(HT29およびMDA−MB−231細胞で)行った。
細胞は、24ウェルプレートの各ウェル当り5×10〜1×10細胞の密度で播種した。成長培地を除去し、各ウェル当り200μlのLaemmli試料バッファを添加することにより溶解を行った。60μlを8%アクリルアミドゲル上に負荷し、不連続的電気泳動に供した。PVDF膜上にブロットしたタンパク質を、ヤギ抗Cox−2抗体(St.Cruz,sc1747)またはマウス抗汎アクチン(pan−actin)抗体(Ab−5,NeoMarkers)でプローブ検索した。すべての系において、HDAC阻害剤によるCox−2タンパク質の下方調節が観察されたが、対照タンパク質アクチンの下方調節は観察されなかった(図2)。
【0086】
実施例2
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤およびそのCOX酵素阻害剤(NSAID)との併用によるプロスタグランジン分泌の阻害
HDAC阻害剤によるCox−2タンパク質レベルの阻害もまた、いくつかの系において、分泌プロスタグランジンの下方調節をもたらす。このプロスタグランジンの減少は、図3に示すように、Cox−2阻害剤セレコキシブ(Cel)と同じレベルに達する。
【0087】
HT−29結腸癌細胞では、Cox−2の発現は、100ng/mlのTNF−αで4時間治療することによって誘導され、MDA−MB−231乳癌細胞では、10μg/mlのLPSをCox−2発現の誘導物質として16時間使用した。HDAC阻害剤およびCox阻害剤での治療は、誘導前に30分間(HT−29、MDA−MB−231)または溶解前に16時間(A549)行った。上清み中のプロスタグランジンレベルを、Cayman製のプロスタグランジンE2EIAキットを用い、製造業者の使用説明書に従って解析した。バーは2つの値の平均を示し、誤差バーはその2つの値の範囲を示している(図3)。
【0088】
HDAC阻害剤は、図4に示すように、THP−1単球およびMDA−MB−231乳癌細胞において、Cox阻害剤セレコキシブによるプロスタグランジン分泌低減を促進することさえある。THP−1単球では、プロスタグランジンレベルがセレコキシブによって既に抑制された後であっても、HDAC阻害剤であるG2M−707およびTSAが前記レベルをさらに低減させることがある。プロスタグランジン分泌におけるこの阻害促進は相乗的なものとみなされるべきであるが、それは、セレコキシブとHDAC阻害剤とを併用すると、阻害活性の1つのみを付与した場合に示されるものよりも格段に著しいプロスタグランジン分泌の阻害が得られるからである。したがって、これらのHDAC阻害剤のHDAC阻害機能は、驚くべきことに、これらの相乗効果をもたらすこれまで知られていなかった機構によって、プロスタグランジン分泌の下方調節におけるCOX阻害機能を支持するように思われる。また、MDA−MB−231細胞では、HDAC阻害剤であるVPAは、セレコキシブによるプロスタグランジン分泌の抑制を用量依存的に促進し得た。同時に、Cox−2タンパク質レベルが上述のように低減した。
【0089】
詳細には、細胞を、24ウェルプレートの各ウェル当り7.5×10の密度で播種した。Cayman製のプロスタグランジンE2EIAキットを用い、製造業者の使用説明書に従って、1:3に希釈した上清みの2重解析を行った。バーは2つの値の平均を示す。成長培地を完全に除去し、各ウェル当り200μlのLaemmli試料バッファを添加することにより、細胞抽出物を調製した。次いで、60μlを8%アクリルアミドゲル上に負荷し、不連続的電気泳動に供した。PVDF膜上にブロットしたタンパク質を、ヤギ抗Cox−2抗体(St.Cruz,sc1747)またはマウス抗汎アクチン(この対照タンパク質の発現を解析するため)抗体(Ab−5,NeoMarkers)でプローブ検索した。
【0090】
実施例3
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とCox−2阻害剤との併用使用によるインビボ腺腫成長の相乗的阻害
VPAで治療を行うことにより、APCminマウスモデルにおいて腺腫の数が有意に低減される。このモデルにおいてCox−2阻害剤であるセレコキシブを使用することにより、同様の結果が得られた。しかし、このモデルにおいて両方の薬剤を同時に使用する併用療法では、腺腫数の相乗的低減が観察された。ここでもまた、VPAの二重活性、すなわちCox−2タンパク質レベルを下方調節するその能力、およびそのHDAC阻害機能が、従来のCox−2阻害剤とともに用いた場合に観察された相乗的な治療効果に関与することが強く主張される(図5A)。
【0091】
1群あたり15匹(対照群)、17匹(VPA群)、13匹(セレコキシブ群)または5匹(併用治療群)の動物の平均値を、標準誤差バーとともに示す。P<0.05(2標本t検定;対照対VPA治療およびセレコキシブ治療、ならびに単独療法対併用療法治療動物。
【0092】
図5bは、VPAおよびセレコキシブ単独での治療後、ならびに両方の薬剤による併用治療後のAPCminマウス(結腸癌の発生に至る遺伝性疾患である家族性腺腫性ポリポーシスの動物モデル)の肝臓抽出物中プロスタグランジンレベルを示す。ここで、いずれの薬剤もプロスタグランジンレベルを同程度に減少させることが示された。両方の薬剤を併用療法にて同時に使用することにより、プロスタグランジン分泌がさらに減少した。プロスタグランジン分泌のこの抑制促進は付加的なものであり、ここでもまた、腺腫成長の低減において観察された相乗効果が、単にプロスタグランジン分泌の阻害を妨害することにより説明されるだけでなく、むしろ、VPAの二重活性、(i)HDAC酵素阻害剤としての作用、および(ii)その後のプロスタグランジンレベル低減を伴うCox−2の発現を下方調節するその能力、に帰属しているはずであることが主張される。
【0093】
2匹(対照群)、4匹(VPA群)および5匹(セレコキシブおよび併用群)の動物の平均値を、標準偏差とともに示す。
【0094】
詳細には、7〜16週齢の性別適合ヘテロ接合型C57BL/6J−APCmin/+マウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maine)を、未治療のままにするか、それぞれVPAもしくはセレコキシブまたはその両方の薬剤で治療するかのいずれかとした。対照動物にはPBSを注射(i.p.)した。VPAは、そのナトリウム塩の等張性水溶液として4週間注射(i.p.)(2×400mg/kg/day)し、セレコキシブは、動物に対し、その飼料とともに1250ppm(0.12%)で4週間随意に与えた。併用群には、VPA群およびセレコキシブ群それぞれの単独治療群と同じ投与量を4週間与えた。犠死の際、腸管全体を縦方向に開き、10%リン酸緩衝ホルムアルデヒド中で24時間固定した後、50%エタノール中で3日間エタノール固定した。マウスが受けた治療について知らされていない2名の独立した観察者による解剖顕微鏡下でのポリープの数および大きさの測定前に、0.1%メチレンブルー中で1分間の染色を行ない、ポリープのコントラストを増大させた。
【0095】
シクロオキシゲナーゼ活性を、肝組織において記載(Reuterら,2002;BMC Cancer 2:19)のようにしてエクスビボで評価した。簡単には、マウスを、ビヒクルまたは薬剤の最終投与の3時間後に安楽死させ、肝臓組織試料(約100mg)を採取した。次いで試料を、1mlのリン酸ナトリウム緩衝液(10mM,pH7.4)を入れたマイクロ遠心分離管内に入れ、ハサミを用いて15秒間細かく刻んだ。次いで、試料を振とう水浴中37度で20分間インキュベートした。インキュベーション期間後、試料を9000×gで30秒間遠心分離し、上清みを回収した。上清みを液体窒素中でフラッシュ凍結し、その後のプロスタグランジンE2含量測定のために−80度で保存した。上清みを1:20に希釈後、市場で入手可能な競合酵素免疫測定(Cayman Chemical)を用いてPGE2濃度の2重測定を行った。
【0096】
実施例4
HDAC阻害剤は、コラーゲン誘導関節リウマチ(CIA)の治療モデルにおいて臨床的重症度スコアを低減させる。
Cox−2は、炎症の過程において中心的であることが知られている(Dubois R.ら,FASEB J 12,1063−1073(1998))。これは、炎症メディエータTNF−αによって速やかに上方調節され、COX酵素によって産生されるプロスタグランジンにより、免疫監視がさらに抑制される。したがって、COX酵素の阻害およびその後のプロスタグランジン産生の減少によって、最終的に炎症性症状の緩和がもたらされ、こうしてその緩和効果が利用される。しかしながら、これは、炎症過程の原因に対し効果的に作用するわけではない。近年では、むしろ炎症性疾患の原因療法の探求により、中心的炎症メディエータとしてのTNF−αを標的とした新規な治療が開発されている。
最近、HDAC阻害剤が抗炎症活性を示すことが見出された(HDAC阻害剤がTNF−αを含む炎症性サイトカインの発現を下方調節する図1もまた参照のこと)。したがって、HDAC阻害剤と抗炎症作用を有するCox−阻害剤とを併用使用することが提案可能であり、炎症性疾患を治療する場合、付加的またはさらに相乗的な治療上の利益を得るために両方の阻害概念を組み合わせた新規な治療の選択肢が可能となる。ここで特に、上述のように、HDAC阻害剤の二重機構、すなわち、HDAC阻害活性およびCox−2発現を下方調節することによりプロスタグランジンレベルを減少させる能力は、この仮定につながる。
【0097】
HDAC阻害剤の可溶性TNF−α分泌阻害能力をインビボで評価するため、3H1マウスの急性LPS誘導型炎症モデルを使用した。マウスに、LPSのi.p.注射の1時間前に、試験物質をi.p.注射した。LPS刺激の1時間後に血液試料を採取し、血清中のTNF−αレベルを、TNF−αELISA免疫測定を用いて測定した。図6(下パネル)に示されるように、VPAおよびG2M−707による前治療の結果、対照マウスと比べ、絶対TNF−α血清レベルの60%低減がもたらされた。
【0098】
この実験により、HDAC阻害剤が、インビボでTNF−αレベルの強力な阻害剤であり、Cox−2およびTNF−αレベルの低減に応答する炎症性疾患を治療するために使用できることは明白である。
【0099】
詳細には、1マウス当り50μgのLPS(Sigma)で炎症を誘導する1時間前に、VPA(400mg/kg/日、n=8)、G2M−701(1mg/マウス/日、n=4)、G2M−707(1mg/マウス/日、n=4)または200μlのPBS(対照、n=8)で、マウスを治療した。LPS治療の1時間後、心臓穿刺によって血液を採取し、血清を単離した。血清を、Bender MedSystems製TNF−αサンドイッチELISAモジュールを用いて試験した。この免疫測定は、製造業者のマニュアル記載の通りに行った。ABTSを基質として使用し、測定は、波長405nmの96ウェルプレートリーダーを用いて行った。405nmにおける絶対ODレベルを示す。
【0100】
治療用インビボ炎症モデルにおけるこのHDAC阻害剤の抗炎症有効性を評価するために、VPAおよびG2M−707を、コラーゲン誘導関節炎(CIA)を発症したマウスに適用した。
【0101】
図6(上パネル)は、関節リウマチ(RA)のこのようなモデルにおけるVPAまたはG2M−707での治療の結果を示す。いずれの薬剤も、対照群と比べて、臨床的重症度スコア(合計スコア)を効果的に低減し、その効果は治療過程を通じて維持された。RA用に臨床使用されるコルチコステロイド剤であるプレドニゾロンを、この研究における陽性対照として使用した。各データ点は、それぞれ、9匹(VPA群)、8匹(G2M−707群)または4匹(プレドニゾロン群)の動物の平均を表す。P<0.05(2標本t検定;対照対VPA治療および対照対プレドニゾロン治療動物)。
【0102】
詳細には、この治療用CIAモデルでは、7週齢のDBA/1雌マウスを、100μgのニワトリII型コラーゲン(Chondrex)を用いてCFA中で免疫性を与えた。関節炎の発症は免疫付与の21〜28日後に始まり、6週後には発症率93%に達した。重症度は中等度から高度であり、未治療動物で平均スコア10.3(最大スコア15)に達した。これらのマウスは、確立されたスコアリングシステムを用いて関節炎の徴候について毎日観察した。関節炎の徴候が最初に見られたとき、その罹患マウスをいずれかの治療群に割り当てた。これらマウスを15日間、ビヒクル対照または2×400mg/kg/日のVPAのi.p.または2×1mg/マウス/日のG2M−707のi.p.または2×20mg/kg/日のプレドニゾロンのi.p.で治療した。関節炎の臨床的重症度をそれぞれの足の外観に基づいて評価し、0〜4の等級で主観的に評定した。それぞれの足のスコアを合計し、最大重症度スコアは16となった。スコアリングシステムは次の通り、0:関節炎なし、1:足の発赤および指1〜2本の腫脹、2:足全体の軽度から中程度の腫脹、3:足全体の広範な腫脹、4:足全体の極度の腫脹および硬直の開始、とした。疾患の発症後、前記動物を週に3回ずつスコアリングした。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】HDAC阻害剤によるCox−2発現の下方調節を示す図である。
【図2】HDAC阻害剤によるCox−2発現の調節を種々の細胞型で示す図である。
【図3】HDAC阻害剤とCox阻害剤との併用によるプロスタグランジンの下方調節を種々の細胞型で示す図である。
【図4】HDAC阻害剤とCox阻害剤との併用によるプロスタグランジンの下方調節を種々の細胞型で示す図である。
【図5】HDAC阻害剤とCox阻害剤との併用による腺腫数の低減およびプロスタグランジンの下方調節を示す図である。
【図6】VPAおよびG2M−707による治療の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストン脱アセチル化酵素HDAC−2が疾患に罹患した組織において上方調節されていることを特徴とする疾患を治療または予防する薬剤を製造するための、NSAIDと併用されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の使用。
【請求項2】
前記疾患に罹患した組織の少なくとも一部分が、(a)APC遺伝子内に少なくとも1つの変異を有する、または(b)β−カテニン遺伝子内に、β−カテニンの機能の獲得もしくはβ−カテニンタンパク質の安定化すなわち半減期の長期化をもたらす少なくとも1つの変異を有する、または(c)c−mycの上方調節もしくは機能の向上を示す、および/または(d)HDAC−2の上方調節をもたらすWnt経路の変異もしくは改変を示す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記疾患が、癌、癌素因状態または炎症性疾患をもたらす遺伝性疾患である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記遺伝性疾患が家族性腺腫性ポリポーシスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
NSAIDがシクロオキシゲナーゼ阻害剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
NSAIDがシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
NSAIDが、サリチル酸系、アリールアルカン酸、2−アリールプロピオン酸、N−アリールアントラニル酸、メロキシカムおよびピロキシカムなどのオキシカム系、セレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよびロフェコキシブなどのコキシブ系、スルホンアニリド系、インドメタシン、スリンダク、アスピリン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセンの薬剤およびその誘導体から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、式I
【化1】

(式中、RおよびRは、独立して、直鎖または分枝鎖の飽和または不飽和脂肪族C3〜25炭化水素鎖を示し、これは、任意に1つまたはいくつかのヘテロ原子を含んでいてよく、置換されていてもよく、Rは、ヒドロキシル、ハロゲン、アルコキシまたは任意にアルキル化されたアミノ基を示す)
の化合物または薬学的に許容され得るその塩である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
およびRが、独立して、任意に1つの二重結合または三重結合を含む直鎖または分枝鎖のC3〜25炭化水素鎖である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤がバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、ヒドロキサム酸誘導体、ベンズアミド、ピロキサミドおよびその誘導体、HDAC阻害活性を示す微生物代謝物質、脂肪酸およびその誘導体、環状テトラペプチド、ペプチド性化合物、クラスIIIのHDAC阻害剤ならびにSIRT阻害剤または薬学的に許容され得るその塩からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、ヒドロキサム酸誘導体(NVP−LAQ824、LBH−589、トリコスタチンA(TSA)、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、CBHA、G2M−701、G2M−702、G2M−707、ピロキサミド、スクリプタイド、CI−994、CG−1521、クラミドシン、ビアリールヒドロキサメート、A−161906、ビシクロアリール−N−ヒドロキシカルボキサミド、PXD−101、スルホンアミドヒドロキサム酸など)、TPX−HAアナログ(CHAP)、オキサムフラチン、トラポキシン、デプデシン、アピジシン、ベンズアミド、(MS−27−275およびMGCD0103など)酪酸およびその誘導体、ピバネックス(酪酸ピバロイルオキシメチル)、トラポキシンA、デプシペプチド(FK−228)および関連するペプチド化合物、タセジナリンおよびMG2856または薬学的に許容され得るその塩からなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記疾患が、エストロゲン受容体依存性乳癌、エストロゲン受容体非依存性乳癌、ホルモン受容体依存性前立腺癌、ホルモン受容体非依存性前立腺癌、脳腫瘍、腎臓癌、結腸癌、結腸直腸癌、膵癌、膀胱癌、食道癌、胃癌、尿生殖器の癌、胃腸の癌、子宮癌、卵巣癌、星状細胞腫、神経膠腫、皮膚癌、扁平上皮癌、ケラトアカントーマ、ボーエン病、皮膚T細胞リンパ腫、黒色腫、基底細胞癌、光線性角化症、魚鱗癬、ざ瘡、尋常性ざ瘡、肉腫、カポージ肉腫、骨肉腫、頭部および頚部の癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、白血病、リンパ腫および/または他の血液細胞癌である、請求項1〜12に記載の使用。
【請求項14】
前記疾患が、甲状腺ホルモン抵抗性症候群、糖尿病、サラセミア、肝硬変、原虫感染、関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、あらゆる形態のリウマチ、変形性関節症、痛風性関節炎、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、インシュリン非依存性糖尿病、喘息、鼻炎、ブドウ膜炎、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、クローン病、炎症性腸疾患、慢性下痢、乾癬、アトピー性皮膚炎、骨疾患、線維増殖性疾患、アテローム性動脈硬化症、再生不良性貧血、ディジョージ症候群、グレーブズ病、癲癇、癲癇重積症、アルツハイマー病、うつ病、統合失調症、統合失調性感情障害、躁病、脳卒中、気分不調和性精神病性症状、双極性障害、情動障害、髄膜炎、筋ジストロフィー、多発性硬化症、激昂、心臓肥大、心不全、再灌流障害および/または肥満である、請求項1〜12に記載の使用。
【請求項15】
薬剤が、静脈内投与、筋肉投与、皮下投与、局所投与、経口投与、経鼻投与、腹腔内投与または坐剤投与によって適用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記異なる薬剤化合物が、2種類の個別の薬剤の形態で、または1回の投与単位に両方の薬剤を含有する投与形態で投与される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、セレコキシブおよび少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項18】
第1の成分としてバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてセレコキシブを含む薬剤キット。
【請求項19】
バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、スリンダクおよび少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項20】
第1の成分としてバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてスリンダクを含む薬剤キット。
【請求項21】
バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、アスピリンおよび少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項22】
第1の成分としてバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてアスピリンを含む薬剤キット。
【請求項23】
バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、イブプロフェンおよび少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項24】
第1の成分としてバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてイブプロフェンを含む薬剤キット。
【請求項25】
バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、フェナム酸および少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項26】
第1の成分としてバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてフェナム酸を含む薬剤キット。
【請求項27】
バルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、ピロキシカムおよび少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項28】
第1の成分としてバルプロ酸または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてピロキシカムを含む薬剤キット。
【請求項29】
PXD101または薬学的に許容され得るその塩、セレコキシブおよび少なくとも1種類の薬学的に許容され得る賦形剤または希釈剤を含む薬剤組成物。
【請求項30】
第1の成分としてPXD101または薬学的に許容され得るその塩、および第2の成分としてセレコキシブを含む薬剤キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−501168(P2009−501168A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520735(P2008−520735)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005745
【国際公開番号】WO2007/009539
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506361904)トポターゲット ジャーマニィ アーゲー (4)
【Fターム(参考)】