説明

PTO装置付きエンジンの制御装置

【課題】 広範囲なアイドルアップを可能にしつつ、確実、且つ、安価に行うことができるPTO装置付きエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】 ガスを燃料とするエンジン(2)に接続され、ガスと空気との混合気を生成してエンジンに供給するミキサー(12)は、エンジンの回転速度をアイドル回転速度よりも高い第1アイドルアップ回転速度或いは更に高い第2アイドルアップ回転速度にすべく、レバー部材(160)を介してスロットルバルブを回動させる第1アクチュエータ(140)及び第2アクチュエータ(150)を具備し、ミキサーに対して信号を出力するコントローラ(48)は、PTO装置の作動時に、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを切り換えて作動させる切り換え制御回路(50)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの制御装置に係り、詳しくは、PTO(Power Take Off)装置付きエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の一般住宅では、CO2の排出量やエネルギー効率の観点から、電気に替わるエネルギーとしてガス、例えば液化石油ガス(LPG)の利用が注目されている。このLPGは沿岸基地やガスステーションからLPGの各消費先にバルクローリ車で配送され、この消費先に設置されたバルク貯槽に直接に充填される。これにより、環境負荷の低減に大きく貢献する他、ボンベの配送や交換が不要になって住宅設備機器のランニングコストの低減にも貢献する。
【0003】
上記バルクローリ車ではLPGを燃料とするエンジンの搭載が推奨されており、また、このエンジンのトランスミッションにはPTO装置が取付けられている。当該PTO装置は、エンジンの動力を特殊な車両の車輪駆動用の動力として取り出す他、ポンプを初めとする架装装置用の動力として取り出している。
そして、PTO装置の作動時には、エンジン回転速度をアイドル回転速度以上に上昇、例えば、エンジン回転速度が約450rpmよりも高い約1000rpmにアイドルアップされ、架装装置用の動力の確保を図る技術が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2748302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の如くのLPGの利用に伴い、バルクローリ車はガスステーションや一般住宅を頻繁に行き来する。ガスステーションでは沿岸基地等で積んだガスをこのステーションの大容量タンクに供給する作業が行われる。一方、一般住宅ではガスステーション等で積んだガスをバルク貯槽に供給する作業が行われる。また、これらガス供給作業は必要に応じて夜間にも行われている。よって、架装装置を作動するためのアイドルアップは作業環境に応じて広範囲に切り換えられることが要求される。
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、アイドルアップが約1000rpmの1回転のみであり、これでは、作業環境に適したガス供給作業が困難である。具体的には、ガスステーション等の大容量タンクに対するガス供給作業と一般住宅や夜間等のガス供給作業とでは、ガス供給作業時間の短縮化と作業の静粛性との優先度が明らかに異なるからである。このように、前記従来の技術では作業環境に適したガス供給作業の点については依然として課題が残されている。
【0006】
また、上記アイドルアップは、確実、且つ、安価に行う必要がある点に留意しなければならない。なぜならば、アイドルアップの制御が複雑になれば高コストとなり、これでは、電気からLPGへの積極的な移行を妨げる要因になり得るからである。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、広範囲なアイドルアップを可能にしつつ、確実、且つ、安価に行うことができるPTO装置付きエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載のPTO装置付きエンジンの制御装置は、ガスを燃料とするエンジンと、エンジンに接続され、ガスと空気との混合気を生成してエンジンに供給するミキサーと、エンジンの動力を架装装置用の動力として取り出すPTO装置と、PTO装置の作動時にはミキサーに対して信号を出力するコントローラとを含み、ミキサーは、混合気の供給量を調整するスロットルバルブと、スロットルバルブが回動可能に枢着されるスロットルシャフトと、スロットルシャフトに支持され、スロットルバルブと協働するレバー部材と、エンジンの回転速度をアイドル回転速度よりも高い第1アイドルアップ回転速度にすべく、レバー部材を介してスロットルバルブを回動させる第1アクチュエータと、エンジンの回転速度を第1アイドルアップ回転速度よりも高い第2アイドルアップ回転速度にすべく、レバー部材を介してスロットルバルブを回動させる第2アクチュエータとを具備し、コントローラは、PTO装置の作動時に、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを切り換えて作動させる切り換え制御回路を具備することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2記載の発明では、レバー部材には、第1アイドルアップ回転速度と第2アイドルアップ回転速度とをそれぞれ設定する調整ボルトが備えられ、各アクチュエータは、駆動用圧力の供給によって調整ボルトを押圧する当接部を具備することを特徴としている。
更に、請求項3記載の発明では、アイドルアップ回転速度の設定は、調整ボルトと当接部との間のギャップ調整によって行われることを特徴としている。
【0009】
更にまた、請求項4記載の発明では、切り換え制御回路は、PTO装置の作動に連動するPTOスイッチと、第1アクチュエータと第2アクチュエータとを選択的に切り換える切換スイッチと、切換スイッチに連動して第1アクチュエータと第2アクチュエータとを選択的に切り換える切換リレーとを具備し、エンジンは、切換リレーと第1アクチュエータとの間に介装される第1電磁弁と、切換リレーと第2アクチュエータとの間に介装される第2電磁弁と、第1電磁弁及び第2電磁弁に接続され、各アクチュエータの駆動用圧力を供給する圧力タンクとを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
従って、請求項1記載の本発明のPTO装置付きエンジンの制御装置によれば、PTO装置を使用した架装装置による作業が、第1及び第2の2段階のアイドルアップ回転速度に調整可能であることから、作業環境に適した作業が選択可能となる。
具体的には、一例としてLPG供給作業について述べると、PTO装置の作動によってLPGが供給されるが、住宅地や夜間等のガス供給作業では第1アクチュエータを作動させ、ガス供給作業時間の短縮化よりもガス供給作業に伴う騒音を防止、つまり、作業の静粛性を優先させる。これに対し、ガスステーション等の大容量タンクに対するガス供給作業では第2アクチュエータを作動させ、作業の静粛性よりもガス供給作業時間の短縮化を優先させる。このように、作業環境に適したガス供給作業が選択可能となれば、電気からLPGへの積極的な移行にも寄与する。
【0011】
また、請求項2記載の発明によれば、機械的な構成、つまり、レバー部材に調整ボルトを取り付け、各調整ボルトと各アクチュエータの当接部との接触によってアイドルアップ値の設定が可能となる。これにより、電気的な構成に比してその制御が容易になるし、アイドルアップを確実、且つ、安価に行える結果、電気からLPGへの積極的な移行により一層寄与する。
【0012】
更に、請求項3記載の発明によれば、レバー部材に対する調整ボルトの取り付け位置の変更のみで任意のアイドルアップ値に設定可能となる。このように、任意のアイドルアップ値に設定可能となれば、使用環境に最も適した作業の選択が可能となる。詳しくは、高地の如く大気圧の低い場所においてアイドル回転速度が低下した場合には、ボルトと当接部との間のギャップ調整を行い、スロットルバルブの開度を増加させれば、エンジンに対する混合気の供給量が増加する。よって、この場合にも、平地と同様なアイドルアップ値に維持可能となる。
【0013】
更に、請求項4記載の発明によれば、上記機械的な構成と切り換え制御回路の構成とが相俟って、アイドルアップの任意設定及びその高低の切り換えが従来に比して大幅に容易になるので、PTO装置付きエンジンの制御装置の信頼性がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、PTO装置付きエンジンの概略構成図である。当該エンジンは、例えばLPGを燃料とするバルクローリ車に搭載され、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用される。
同図に示されるように、このエンジン2は、シリンダブロック4に4つの燃焼室6を備えており、各燃焼室6にはスパークプラグ8がそれぞれ配設されている。また、各燃焼室6には吸気マニホールド10が接続され、吸気マニホールド10にはミキサー12が接続される。更に、ミキサー12の上流側には、エアクリーナ18を備えた吸気通路16が接続されている。
【0015】
ミキサー12では吸気通路16からの空気とLPGタンク40からのLPGとの混合気が生成される。この混合気は燃焼室6に吸入され、スパークプラグ8の火花で燃焼し、その排気は図示しない排気系を介して大気に放出される。なお、このミキサー12には、後述するスロットルバルブ124をバイパスするISCバルブ14が備えられており、また、吸気マニホールド10と吸気通路16との間にはミキサー12をバイパスするエアバイパスバルブ20が備えられている。
【0016】
このミキサー12には、LPGタンク40からのLPGが2つの経路を介して供給されている。より詳しくは、LPGタンク40内に充填された高圧液体のLPGは、容器元弁38、フィルタ36及び燃焼遮断弁34を介して液体燃料通路32からベーパーライザ24に導入され、このベーパーライザ24にて大気圧にまで減圧されて気体になる。
ベーパーライザ24内のLPGは、減圧されて気体になったLPGがメイン系通路22を介してミキサー12に至り、後述のスロットルバルブ124の開弁に伴って負圧が生ずると、燃焼室6に向けて供給される。一方、減圧されていない液体のままのLPGがスロー系通路30からスロージェット28に至る。そして、補助燃料として中程度の圧力を有するLPGが、エンジン2の運転状態に応じてスロー系通路30を介してミキサー12内に強制的に噴射される。
【0017】
なお、LPGタンク40には燃料計46が設けられている。この燃料計46によるLPGの残量に応じて充填弁42が開弁され、充填口44からLPGタンク40に液体のLPGが適宜補給される。
また、上記バルクローリ車には、図示しないポンプ(架装装置)が搭載されており、LPGの供給作業に用いられる。このLPGの供給は図示しないPTO装置の作動時に行われる。つまり、LPGの供給作業時には、PTO装置が作動し、エンジン2の動力から上記ポンプ用の動力が取り出される。なお、このPTO装置はエンジン2のトランスミッション或いはトランスファーに取付けられている。
【0018】
エンジン2の運転状態や上記ミキサー12のスロットルバルブ124の開度、及びLPGの供給作業に関する各種信号はECU(コントローラ)48に入力され、ECU48では各種の演算を行い、エンジン2、ミキサー12、ベーパーライザ24、スロージェット28、並びに上記ポンプ等に出力される。また、上記ECU48には、アイドルアップ回転速度の切り換え制御回路50が備えられており、LPGの供給作業時には作業環境に応じて2段階のアイドルアップが可能となるように構成されている。
【0019】
上述のミキサー12の構成は図2に示される。
ミキサー12は本体部120とアクチュエータ部122とから構成されている。具体的には、本体部120の適宜位置にはスロットルバルブ124が設けられ、ミキサー12にて生成された混合気の供給量が調整されている。このスロットルバルブ124はスロットルシャフト126に枢着されており、スロットルシャフト126の回動に伴ってその開度が可変に調整される。
【0020】
また、上記メイン系通路22にはメイン側燃料導入管130が接続される。そして、ベーパーライザ24で減圧されたLPGは、このメイン側の基本燃料量を設定する調整ネジ132側と、メイン側の燃料量を調節して空燃比制御を行うソレノイド136側とに分流される。なお、このメイン側には燃料遮断弁128が配設され、LPGのカットが適宜行われる。一方、上記スロー系通路26にはスロー側燃料導入管134が接続されており、スロージェット28からのLPGが燃焼室6に補助的に供給される。
【0021】
アクチュエータ部122にはL字ブラケット138が設けられている。より詳しくは、L字ブラケット138の内側において、L字ブラケット138の垂直面部分と水平面部分とによって形成される角部分が下方に向けて配置されており、前記垂直面部分が本体部120に接合固定され、前記水平面部分に第1アクチュエータ140及び第2アクチュエータ150が並設されている。これら各アクチュエータ140、150は同型であり、PTO装置の作動時にはECU48からの信号に応じてバキューム力によって作動する。なお、L字ブラケット138の上記水平面部分は先端側にてアシストブラケット168に接合され、換言すれば、L字ブラケット138は両端支持されている。
【0022】
各アクチュエータ140、150は、伸縮部142、152及びこの伸縮部142、152に連なる当接部144、154をそれぞれ備え、これら伸縮部142、152及び当接部144、154はL字ブラケット138の水平面部分の下方側に配設されている。
また、各アクチュエータ140、150の下方にはレバー部材160が設けられている。具体的には、この第1アクチュエータ140の下方には第1L字部材162が備えられ、この第1L字部材162の垂直面部分と上記L字ブラケット138の垂直面部分、及びこれらの各水平面部分が互いに対面し、これら第1L字部材162と上記L字ブラケット138とで閉空間を作るように配置されている。
【0023】
一方、第2アクチュエータ150の下方には第2L字部材164が備えられ、この第2L字部材164の垂直面部分は上記第1L字部材162の垂直面部分に当接されている。つまり、第1L字部材162及び第2L字部材164の各水平面部分がL字ブラケット138の上記水平面部分と平行に配置され、第1L字部材162の水平面部分と第2L字部材164の水平面部分とが互いに拡開する方向に延設されている。
【0024】
そして、これら第1L字部材162の水平面部分と第2L字部材164の水平面部分とには、各アクチュエータ140、150の延長線上に第1調整ボルト(調整ボルト)146と第2調整ボルト(調整ボルト)156とがそれぞれ配設されている。また、第2L字部材164の垂直面部分は第1L字部材162の垂直面部分に接合され、この第1L字部材162の垂直面部分にはシャフト支持部166が接合されており、当該シャフト支持部166がスロットルシャフト126に接合されている。従って、レバー部材160は、シャフト支持部166を介してスロットルシャフト126を回動させることにより、スロットルバルブ124を回動させている。
【0025】
第1アクチュエータ140の伸縮部142は上記バキューム力の発生に伴って伸び、当接部144が第1調整ボルト146の上面を押圧してレバー部材160を下方向に移動させる。また、第2アクチュエータ150の伸縮部152もまた、上記バキューム力の発生に伴って伸び、当接部154も第2調整ボルト156の上面を押圧してレバー部材160を下方向に移動させる。そして、レバー部材160の下方向の移動量がスロットルバルブ124の開度に反映される。なお、アクセルワイヤ170もスロットルシャフト126に取り付けられており、図示しないアクセルペダルの踏み込み量もスロットルバルブ124の開度に反映される。
【0026】
しかしながら、本実施形態の第1アクチュエータ140は、エンジン2の回転速度をアイドル回転速度よりも高い第1アイドルアップ回転速度にすべく、レバー部材160を介してスロットルバルブ124を所定量だけ回動させるために構成されているのに対し、本実施形態の第2アクチュエータ150は、上記第1アイドルアップ回転速度よりも更に高い第2アイドルアップ回転速度にすべく、レバー部材160を介してスロットルバルブ124を所定量だけ回動させるために構成されている。
【0027】
この点について詳述すれば、図3に示されるように、第2アクチュエータ150の当接部154と第2調整ボルト156との距離(ギャップ)G2は、第1アクチュエータ140の当接部144と第1調整ボルト146との距離(ギャップ)G1に比して短く設定されている。つまり、各アクチュエータ140、150の各伸縮部142、152のストローク量は同じであるものの、第1アクチュエータ140の当接部144と第1調整ボルト146との距離G1が第2アクチュエータ150の当接部154と第2調整ボルト156との距離G2よりも長めに設定されているので、第1調整ボルト146の押圧長さは第2調整ボルト156の押圧長さよりも短くなる。よって、第1調整ボルト146によるレバー部材160の下方への移動量は、第2調整ボルト156によるレバー部材160の下方への移動量に比して小さくなり、スロットルバルブ124の開度も小さくなる。この結果、燃焼室6に吸入される混合気の量が抑えられ、エンジン2の回転速度が上記第1アイドルアップ回転速度に設定される。
【0028】
一方、第2調整ボルト156によるレバー部材160の下方への移動量は、第1調整ボルト146によるレバー部材160の下方への移動量に比して大きいことから、スロットルバルブ124の開度が大きくなり、この結果、燃焼室6に吸入される混合気の量がより増やされ、エンジン2の回転速度が上記第2アイドルアップ回転速度に設定される。
また、レバー部材160に対する第1調整ボルト146及び第2調整ボルト156のねじ込み量は任意の値に適宜調節可能であり、これにより、上記PTO装置の作動時におけるアイドルアップも、上記距離G1、G2の変更によって任意の値に調整される。
【0029】
そして、第1アクチュエータ140の作動による第1アイドルアップ回転速度と第2アクチュエータ150の作動による第2アイドルアップ回転速度との切り換えは、作業者が作業環境に応じて適宜実施することができる。
詳しくは、図4に示された切り換え制御回路50が用いられる。
切り換え制御回路50にはPTO装置の作動時にONとなるPTOスイッチ52が備えられ、PTOスイッチ52のONにより、切換スイッチ54側及び切換リレー56の切り換え部60の一端側には電流が流れる。切換スイッチ54には作業者からの指示が反映される。また、切換スイッチ54には、第1アクチュエータ140が常時接続される如くの設定がなされており、作業者が小さなアイドルアップの値を希望する場合には、車室内でアイドルアップ小を指示することにより、切換スイッチ54には電流が流れる。
【0030】
切換リレー56は切換スイッチ54に連動する。例えば、作業の騒音を抑えたいにも拘わらず、車室内ではアイドルアップ大が指示されており、同図の如く切り換え部60の他端が第2電磁弁158側の位置にあった場合には、作業者が車室内でアイドルアップ小を指示すれば、切換スイッチ54の第1側が選択される。これにより、磁力発生部58では磁力が発生し、切り換え部60が第2側から第1側に切り換わる。
【0031】
よって、この場合には、圧力タンク180に接続されている第1電磁弁148及び第2電磁弁158のうち、第2電磁弁158側には電流が遮断される一方、第1電磁弁148側にのみ電流が流れ、第1電磁弁148のみが開弁される。そして、バキューム力によって第1アクチュエータ140が作動して第1調整ボルト146を押圧し、レバー部材160を下方に移動させてスロットルバルブ124を開弁させ、アイドルアップ回転速度が低めに切り換えられる。
【0032】
以上のように、本実施形態によれば、PTO装置を使用したポンプによるLPG供給作業が、第1及び第2の2段階のアイドルアップ回転速度に調整可能であることから、作業環境に適した作業が選択可能となる。
より具体的には、PTO装置の作動によってLPGが供給されるが、住宅地や夜間等のガス供給作業では第1アクチュエータ140を作動させ、ガス供給作業時間の短縮化よりもガス供給作業の騒音防止、換言すれば、作業の静粛性を優先させる。これに対し、ガスステーション等の大容量タンクに対するガス供給作業では第2アクチュエータ150を作動させ、作業の静粛性よりもガス供給作業時間の短縮化を優先させる。このように、作業環境に適したガス供給作業が選択可能となれば、LPGの積極的な使用に貢献することになる。
【0033】
また、機械的な構成、つまり、レバー部材160に第1及び第2調整ボルト146、156を取り付け、各調整ボルト146、156と当接部144、154との接触によってアイドルアップ回転速度の設定が可能となる。これにより、電気的な構成に比してその制御が容易になるし、アイドルアップを確実、且つ、安価に行える結果、電気からLPGへの積極的な移行により一層寄与する。
【0034】
また、レバー部材60に対する各調整ボルト146、156の取り付け位置の変更のみで任意のアイドルアップ回転速度に設定可能となる。このように、任意のアイドルアップ値に設定可能となれば、使用環境に最も適した作業の選択が可能となる。詳しくは、高地の如く大気圧の低い場所においてアイドル回転速度が低下した場合には上述のギャップG1、G2をより大きくし、スロットルバルブ124の開度を増加させれば、エンジン2に対する混合気の供給量が増加する。よって、この場合にも、平地と同様なアイドル回転速度に維持可能となる。
【0035】
また、L字ブラケット138に装着された第1及び第2アクチュエータ140、150は同型を使用し、当接部144、154と第1及び第2調整ボルト146、156とのギャップ調整のみで2段階のアイドルアップを調整可能としたため、コスト的にも安くできる。
また、L字ブラケット138に第1及び第2アクチュエータ140、150を並設するとともに、スロットルバルブ124を回動させるレバー部材160は、第1及び第2L字部材162、164を背中合わせにして、スペースを小さくしており、荷物輸送形態が多様化してきている特装トラックにおいては、車両制作時の他の装置の配置に伴う自由度が大きくなり、各装置の標準化が容易となり、車両制作コストが低減できる。
【0036】
更に、上記機械的な構成と切り換え制御回路50の構成とが相俟って、アイドルアップ回転速度の任意設定及びその高低の切り換えが従来に比して大幅に容易になるので、制御装置の信頼性がより向上する。
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0037】
例えば、上記実施形態ではLPGを用いているが、必ずしもこの形態に限定されるものではなく、圧縮天然ガス(CNG)を用いても良い。この場合にも、上述と同様に、広範囲なアイドルアップを可能にしつつ、その調整を確実、且つ、安価に行えるとの効果を奏する。
また、アイドルアップの切り換えは3段階以上に設定することも可能であり、この場合には、作業環境に対してより一層きめ細やかな対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係るPTO装置付きエンジンの制御装置が適用されるエンジンの概略構成図である。
【図2】図1のミキサーの構成図である。
【図3】図2のミキサーにおけるアイドルアップ値の設定を説明する図である。
【図4】図1の切り換え制御回路を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
2 エンジン
12 ミキサー
48 ECU(コントローラ)
50 切り換え制御回路
52 PTOスイッチ
54 切換スイッチ
56 切換リレー
124 スロットルバルブ
126 スロットルシャフト
140 第1アクチュエータ
146 第1調整ボルト(調整ボルト)
148 第1電磁弁
150 第2アクチュエータ
156 第2調整ボルト(調整ボルト)
158 第2電磁弁
160 レバー部材
180 圧力タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを燃料とするエンジンと、該エンジンに接続され、前記ガスと空気との混合気を生成して前記エンジンに供給するミキサーと、前記エンジンの動力を架装装置用の動力として取り出すPTO装置と、該PTO装置の作動時には前記ミキサーに対して信号を出力するコントローラとを含み、
前記ミキサーは、
前記混合気の供給量を調整するスロットルバルブと、
該スロットルバルブが回動可能に枢着されるスロットルシャフトと、
該スロットルシャフトに支持され、前記スロットルバルブと協働するレバー部材と、
前記エンジンの回転速度をアイドル回転速度よりも高い第1アイドルアップ回転速度にすべく、前記レバー部材を介して前記スロットルバルブを回動させる第1アクチュエータと、
前記エンジンの回転速度を前記第1アイドルアップ回転速度よりも高い第2アイドルアップ回転速度にすべく、前記レバー部材を介して前記スロットルバルブを回動させる第2アクチュエータとを具備し、
前記コントローラは、
前記PTO装置の作動時に、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを切り換えて作動させる切り換え制御回路を具備する
ことを特徴とするPTO装置付きエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記レバー部材には、前記第1アイドルアップ回転速度と前記第2アイドルアップ回転速度とをそれぞれ設定する調整ボルトが備えられ、
前記各アクチュエータは、駆動用圧力の供給によって前記調整ボルトを押圧する当接部を具備することを特徴とする請求項1に記載のPTO装置付きエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記アイドルアップ回転速度の設定は、前記調整ボルトと前記当接部との間のギャップ調整によって行われることを特徴とする請求項2に記載のPTO装置付きエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記切り換え制御回路は、
前記PTO装置の作動に連動するPTOスイッチと、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを選択的に切り換える切換スイッチと、
該切換スイッチに連動して前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを選択的に切り換える切換リレーとを具備し、
前記エンジンは、
前記切換リレーと前記第1アクチュエータとの間に介装される第1電磁弁と、
前記切換リレーと前記第2アクチュエータとの間に介装される第2電磁弁と、
前記第1電磁弁及び前記第2電磁弁に接続され、前記各アクチュエータの駆動用圧力を供給する圧力タンクとを具備する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のPTO装置付きエンジンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−77733(P2006−77733A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265624(P2004−265624)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(304020041)ふそうエンジニアリング株式会社 (10)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】