説明

めっき装置及びめっき方法

【課題】 比較的簡単な構成で、例えアスペクト比が高く、深さが深いビアホール等にあっても、金属膜を内部にボイドを発生させることなく確実に埋込むことができるようにする。
【解決手段】 第1めっき液を該第1めっき液にアノードを浸漬させて保持する第1めっき槽170aと、第1めっき液より金属濃度の低い第2めっき液を該第2めっき液にアノードを浸漬させて保持する第2めっき槽170bと、第1めっき槽170aと第2めっき槽170bとの間を移動自在で、被めっき材を該被めっき材に通電可能に保持するホルダ160を有し、ホルダ160で保持した被めっき材を第1めっき槽170a内の第1めっき液に接触させて行う第1めっき処理と、第2めっき槽170b内の第2めっき液に接触させて行う第2めっき処理を順次繰返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば基板の表面(被めっき面)にめっきを施すめっき装置及びめっき方法に係り、特に半導体ウェーハ等の表面に設けられた微細なトレンチやビアホール等の配線用凹部に銅や銀等の導電体(配線材料)を埋込んで埋込み配線を形成するのに使用されるめっき装置及びめっき方法に関する。
本発明のめっき装置及びめっき方法は、例えば内部に上下に貫通する多数のビアプラグを有し、半導体チップ等のいわゆる3次元実装に使用されるインタポーザまたはスペーサを製造する際におけるビアの埋込みにも使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板上に配線回路を形成するための金属材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細な配線用凹部の内部に銅を埋込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、CVD、スパッタリング及びめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜し、化学的機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1は、いわゆるディップ方式を採用した従来の電気めっき装置の一例を示す。この電気めっき装置は、内部にめっき液を保持するめっき槽12aと、基板Wをその周縁部を水密的にシールし表面(被めっき面)を露出させて着脱自在に保持する上下動自在な基板ホルダ14aを有している。めっき槽12aの内部には、アノード24がアノードホルダ26に保持されて垂直に配置され、更に基板ホルダ14aで保持した基板Wがアノード24と対向する位置に配置された時に、このアノード24と基板Wとの間に位置するように、中央孔28aを有する誘電体からなる調整板(レギュレーションプレート)28が配置されている。
【0004】
これにより、これらのアノード24、基板W及び調整板28をめっき槽12a内のめっき液中に浸漬し、同時に、導線30aを介してアノード24をめっき電源32の陽極に、導線30bを介して基板Wをめっき電源32の陰極にそれぞれ接続することで、基板Wとアノード24との電位差により、めっき液中の金属イオンが基板Wの表面より電子を受け取り、基板W上に金属が析出して金属膜が形成される。
【0005】
このめっき装置によれば、アノード24と該アノード24と対向する位置に配置される基板Wとの間に、中央孔28aを有する調整板28を配置し、この調整板28でめっき槽12a内の電位分布を調節することで、基板Wの表面に形成される金属膜の膜厚分布をある程度調節することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のめっき装置では、一般に同じ組成のめっき液中に基板等の被めっき材を所定の時間浸漬させて、被めっき材の表面(被めっき面)にめっき膜を形成するようにしている。このため、例えば基板の表面に設けた、直径10〜20μm、深さ70〜150μm程度の、アスペスト比が高く、深さの深いビアホールの内部に、内部にボイド等の欠陥が生じることを防止しつつ、めっきで金属膜を確実に埋込むのは一般にかなり困難であった。
【0007】
例えば、アスペクト比が1以上と高く、深さが深いビアホールの内部にめっきで金属膜を埋込もうとすると、ビアホールの底部までめっき液が行き届かなくなり、ビアホールの開口端部付近におけるめっき液の金属濃度が高くなる。このような状態で、図2に示すように、内部にビアホール40を設けた絶縁膜42を覆うシード層44の表面にめっきを行うと、ビアホール40の内部での金属イオンの供給が不足し、ビアホール40の開口端部付近でめっき析出が優先されて該開口端部が金属膜(めっき膜)46で塞がれ、ビアホール40の内部に埋込まれた金属膜46の内部にボイド48が生じてしまう。
【0008】
なお、電気めっきにあっては、めっき中の電流密度を上げることでめっき速度を上げることができる。しかし、単に電流密度を上げると、めっきやけ、めっき欠陥、アノード表面の不動態化等が生じて、めっき不具合の原因となってしまう。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、比較的簡単な構成で、例えアスペクト比が高く、深さが深いビアホール等にあっても、金属膜を内部にボイドを発生させることなく確実に埋込むことができるようにしためっき装置及びめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、第1めっき液を該第1めっき液中にアノードを浸漬させて保持する第1めっき槽と、前記第1めっき液より金属濃度の低い第2めっき液を該第2めっき液中にアノードを浸漬させて保持する第2めっき槽と、前記第1めっき槽と前記第2めっき槽との間を移動自在で、被めっき材を該被めっき材に通電可能に保持して前記第1めっき槽内の第1めっき液と前記第2めっき槽内の第2めっき液にそれぞれ接触させるホルダを有し、前記ホルダで保持した被めっき材を前記第1めっき槽内の第1めっき液に接触させて行う第1めっき処理と、前記第2めっき槽内の第2めっき液に接触させて行う第2めっき処理を1サイクルとして該サイクルを繰返すことを特徴とするめっき装置である。
【0011】
例えば、図3(a)に示すように、シード層44で覆われたビアホール40を内部に設けた絶縁膜42の表面に第1めっき液50aを接触させると、第1めっき液50aはビアホール40の内部に入り込む。そして、この状態で第1めっき処理を行った後、第1めっき液50aより金属濃度の低い第2めっき液50bに絶縁膜42の表面を接触させると、この接触直後から短時間では、図3(b)に示すように、金属濃度の低い第2めっき液50bがビアホール40内の第1めっき液50a中に徐々に拡散し、これによって、ビアホール40の内部に位置するめっき液の金属濃度は、ビアホール40の開口端部付近のめっき液よりも相対的に高くなる。この状態で第2めっき処理を行うことで、ビアホール40の内部での金属イオンの供給不足を解消しつつ、ビアホール40の開口端部付近に対して反応律速にならないようにして、ビアホール40の周壁に均一な膜厚のめっき膜を形成することができる。このため、この第1めっき処理と第2めっき処理を1サイクルとして、このサイクルを繰返すことによって、図3(c)に示すように、ビアホール40の内部に、内部にボイドのない金属膜(めっき膜)46を埋込むことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記第1めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が190〜250g/Lの硫酸銅めっき液で、前記第2めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が50〜180g/Lの硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項1記載のめっき装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、被めっき材を第1めっき液に接触させ、該被めっき材と前記第1めっき液に浸漬させたアノードとの間に電圧を印加して行う第1めっき処理と、被めっき材を前記第1めっき液よりも金属濃度の低い第2めっき液に接触させ、該被めっき材と前記第2めっき液に浸漬させたアノードとの間に電圧を印加して行う第2めっき処理を1サイクルとして該サイクルを繰返すことを特徴とするめっき方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記第1めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が190〜250g/Lの硫酸銅めっき液で、前記第2めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が50〜180g/Lの硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項3記載のめっき方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビアホール等の開口端部で金属膜(めっき膜)が優先的に析出されることを防止して、アスペスト比が高く、埋込み深さの深いビアホール等であっても、金属膜を内部にボイドを発生させることなく確実に埋込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では、被めっき材として半導体ウェーハ等の基板を使用した例を示す。
図4は、本発明の実施の形態におけるめっき装置を備えためっき処理設備の全体配置図を示す。このめっき処理設備は、基板の前処理、めっき処理及びめっきの後処理のめっき全工程を連続して自動的に行うようにしたもので、外装パネルを取付けた装置フレーム110の内部は、仕切板112によって、基板のめっき処理及びめっき液が付着した基板の処理を行うめっき空間116と、それ以外の処理、すなわちめっき液に直接には関わらない処理を行う清浄空間114に区分されている。
【0017】
めっき空間116と清浄空間114とを仕切る仕切板112で仕切られた仕切り部には、基板ホルダ160(図5参照)を2枚並列に配置して、この各基板ホルダ160との間で基板の脱着を行う、基板受渡し部としての基板脱着台162が備えられている。清浄空間114には、基板を収納した基板カセットを載置搭載するロード・アンロードポート120が接続され、更に、装置フレーム110には、操作パネル121が備えられている。
【0018】
清浄空間114の内部には、基板のオリフラやノッチなどの位置を所定方向に合わせるアライナ122と、めっき処理後の基板を洗浄し高速回転させてスピン乾燥させる2台の洗浄・乾燥装置124と、基板の前処理、この例では、基板の表面(被めっき面)に向けて純水を吹きかけることで、基板表面を純水で洗浄するとともに、純水で濡らして親水性を良くする水洗前処理を行う前処理装置126が、その四隅に位置して配置されている。更に、これらの各処理装置、つまりアライナ122、洗浄・乾燥装置124及び前処理装置126のほぼ中心に位置して、これらの各処理装置122,124,126、前記基板脱着台162及び前記ロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットとの間で基板の搬送と受渡しを行う第1搬送ロボット128が配置されている。
【0019】
清浄空間114内に配置されたアライナ122、洗浄・乾燥装置124及び前処理装置126は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して処理する。第1搬送ロボット128は、表面を上向きにした水平姿勢で基板を保持して基板の搬送及び受渡しを行う。
【0020】
めっき空間116内には、仕切板112側から順に、基板ホルダ160の保管及び一時仮置きを行うストッカ164、例えば基板の表面に形成したシード層表面の電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの薬液でエッチング除去する活性化処理装置166、基板の表面を純水で水洗する第1水洗装置168a、第1めっき液による第1めっき処理を行う第1めっき装置170a、第2めっき液による第2めっき処理を行う第2めっき装置170b、第2水洗装置168b及びめっき処理後の基板の水切りを行うブロー装置172が順に配置されている。そして、これらの装置の側方に位置して、2台の第2搬送ロボット174a,174bがレール176に沿って走行自在に配置されている。この一方の第2搬送ロボット174aは、基板脱着台162とストッカ164との間で基板ホルダ160の搬送を行う。他方の第2搬送ロボット174bは、ストッカ164、活性化処理装置166、第1水洗装置168a、第1めっき装置170a、第2めっき装置170b、第2水洗装置168b及びブロー装置172の間で基板ホルダ160の搬送を行う。
【0021】
第2搬送ロボット174a,174bは、図5に示すように、鉛直方向に延びるボディ178と、このボディ178に沿って上下動自在でかつ軸心を中心に回転自在なアーム180を備えており、このアーム180に、基板ホルダ160を着脱自在に保持する基板ホルダ保持部182が2個並列に備えられている。基板ホルダ160は、表面を露出させ周縁部をシールした状態で基板Wを着脱自在に保持するように構成されている。
【0022】
ストッカ164、活性化処理装置166、水洗装置168a,168b及びめっき装置170a,170bは、基板ホルダ160の両端部に設けた外方に突出する突出部160aを上端部に引っ掛けて、基板ホルダ160を鉛直方向に吊り下げた状態で支持する。活性化処理装置166には、内部に薬液を保持する2個の活性化処理槽183が備えられ、図5に示すように、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、基板ホルダ160を活性化処理槽183の上端部に引っ掛けて吊下げ支持することで、基板ホルダ160を基板Wごと活性化処理槽183内の薬液に浸漬させて活性化処理を行うように構成されている。
【0023】
同様に、水洗装置168a,168bには、内部に純水を保持した各2個の水洗槽184a,184bが、第1めっき装置170aには、内部に第1めっき液50a(図3(a)等参照)を保持した複数の第1めっき槽186aが、第2めっき装置170bには、内部に第2めっき液50b(図3(b)参照)を保持した複数の第2めっき槽186bがそれぞれ備えられている。そして、前述と同様に、基板ホルダ160を基板Wごとこれらの水洗槽184a,184b内の純水またはめっき槽186a,186b内のめっき液50a,50bに浸漬させることで、水洗処理やめっき処理が行われるように構成されている。またブロー装置172は、基板Wを装着した基板ホルダ160を鉛直状態で保持した第2搬送ロボット174bのアーム180を下降させ、この基板ホルダ160に装着した基板Wにエアーや不活性ガスを吹きかけることで、基板のブロー処理を行うように構成されている。
【0024】
第2めっき液50bとして、第1めっき液50aより金属濃度が低いめっき液が使用される。例えば、銅めっきを行う場合には、第1めっき液50aとして、例えば下記の組成の硫酸銅めっき液(高濃度浴)が、第2めっき液50bとして、第1めっき液50aよりも銅濃度の低い、例えば下記の組成の硫酸銅めっき液(低濃度浴)が使用される。
【0025】
第1めっき液(高濃度浴)の組成
硫酸銅・5水和物:190〜250g/L
硫酸 : 10〜200g/L
塩素 : 30〜80mg/L
添加剤 : 任意
第2めっき液(低濃度浴)の組成
硫酸銅・5水和物: 50〜180g/L
硫酸 : 10〜200g/L
塩素 : 30〜80mg/L
添加剤 : 任意
【0026】
第1めっき装置170a及び第1めっき槽186aと、第2めっき装置170b及び第2めっき槽186bは、使用するめっき液が異なるのみで、同じ構成である。ここでは、第1めっき装置170a及び第1めっき槽186aについて説明する。
図6に示すように、第1めっき装置170aの各第1めっき槽186aは、内部に一定量の第1めっき液50a(第2めっき装置170bの各第2めっき槽186bにあっては、第2めっき液50b)を保持するように構成され、この第1めっき液50a中に、基板ホルダ160で周縁部を水密的にシールし表面(被めっき面)を露出させて保持した基板Wを浸漬させて配置するようになっている。
【0027】
第1めっき槽186aの側方には、この第1めっき槽186aの溢流堰200の上端をオーバフローした第1めっき液50aを流すオーバフロー槽202が設けられ、このオーバフロー槽202には、めっき液排出ライン204が連結されている。そして、このめっき液排出ライン204とめっき液供給ライン218を結ぶめっき液循環ライン206の内部に、循環ポンプ208、流量調節器210及びフィルタ212が介装されている。これによって、循環ポンプ208の駆動に伴って第1めっき槽186a内に供給された第1めっき液50aは、第1めっき槽186aの内部を満たし、しかる後、溢流堰200からオーバフローしてオーバフロー槽202内に流れ込み、循環ポンプ208に戻って循環する。しかも、めっき液循環ライン206に沿って流れる第1めっき液50aの流量は、流量調節器210で調節される。
【0028】
第1めっき槽186aの内部には、基板Wの形状に沿った円板状のアノード214がアノードホルダ216に保持されて垂直に設置されている。このアノード214は、第1めっき槽186a内に第1めっき液50aを満たした時に、この第1めっき液50a中に浸漬され、基板ホルダ160で保持して第1めっき槽186a内の所定の位置に配置される基板Wと対面する。
【0029】
更に、第1めっき槽186aの内部には、アノード214と第1めっき槽186a内の所定の位置に配置される基板ホルダ160との間に位置して、めっき液供給ライン218に連結されたリング状のノズル配管220が配置されている。このノズル配管220は、基板Wの外形に沿ったリング状に形成されており、このノズル配管220の円周方向に沿った所定の位置には、複数のめっき液噴射ノズル222が所定のピッチで設けられている。これにより、前述のようにして循環ポンプ208の駆動に伴って循環する第1めっき液50aは、このめっき液噴射ノズル222から噴射されて第1めっき槽186a内に供給される。
【0030】
この例では、ノズル配管220は、内部に開口部224aを有し、第1めっき槽186a内をアノード側と基板側に仕切る矩形平板状の固定板224に止め具226を介して固定されている。この開口部224aの大きさは、ノズル配管220の内径とほぼ同じか、やや小径に設定され、ノズル配管220は、固定板224の基板側に位置して、開口部224aの周囲を囲むように配置されている。そして、めっき液噴射ノズル222は、このめっき液噴射ノズル222から噴射される第1めっき液50aが、基板ホルダ160で保持されて第1めっき槽186a内の所定の位置に配置される基板Wのほぼ中央手前の合流点Pで合流する向きに配置されている。
【0031】
これによって、リング状のノズル配管220に設けためっき液噴射ノズル222から第1めっき液50aを噴射して第1めっき槽186a内に供給し循環させる。この時、めっき液噴射ノズル222から、基板Wの表面(被めっき面)に向けて第1めっき液50aを噴射して第1めっき液50aの強い噴流を当てることで、基板Wの表面全域における電位分布の均一性を乱すことを抑えつつ、第1めっき液50a中のイオンを基板Wの表面に効率よく供給して、めっき膜質を劣化させることなく、めっき速度を高めることができる。しかも、めっき液噴射ノズル222から噴射させる第1めっき液50aの流量および方向を、基板Wの表面近傍における第1めっき液50aの流れがより均一となるように調整することで、基板Wの表面に形成されるめっき膜の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0032】
特に、めっき液噴射ノズル222から噴射される第1めっき液50aが、基板Wの表面のほぼ中央手前の合流点Pで合流するようにすることが好ましい。これにより、合流した第1めっき液50aの流れが基板Wの表面のほぼ中央に垂直に当たる流れとなり、その後、基板Wの表面に沿って外方に拡がる流れに方向を変えるようにすることで、第1めっき液50aの基板Wの表面に衝突した後の流れが第1めっき液50aの排出流れと干渉することを防止して、一定の連続した安定した第1めっき液50aの流れを形成することができる。
【0033】
ノズル配管220、めっき液噴射ノズル222及び固定板224は、例えば、PVC,PP,PEEK,PES,HT−PVC,PFA,PTFE,その他の樹脂系材料からなる誘電体から構成されていることが好ましい。これによって、これらの存在によって、第1めっき槽186a内の電界分布が乱されてしまうことを防止することができる。
【0034】
更に、開口部224aを設けた固定板224で第1めっき槽186a内を仕切り、第1めっき液50aは、この開口部224aを通過した後、オーバフロー槽202よりオーバフローするようにすることで、基板Wの全域に対する電位分布をより均一にすることができる。
【0035】
第1めっき装置170aには、めっき時に陽極が導線228aを介してアノード214に、陰極が導線228bを介して基板Wにそれぞれ接続されるめっき電源230が備えられている。このめっき電源230は、制御部250に接続され、この制御部250からの信号に基づいて、めっき中にアノード214と基板Wとの間に印加する電圧を変更するように構成されている。このことは、第2めっき装置170bにおいても同様である。
【0036】
この第1めっき装置170aによれば、先ず、第1めっき槽186aの内部に第1めっき液50aを満たしておく。そして、基板Wを保持した基板ホルダ160を下降させて、基板Wを第1めっき槽186a内の第1めっき液50aに浸漬した所定の位置に配置する。この状態で、循環ポンプ208を駆動して、めっき液噴射ノズル222から第1めっき液50aを基板Wの表面に向けて噴射して第1めっき槽186a内に供給し、第1めっき液50aを循環させる。そして、制御部250からの信号でめっき電源230を制御し、アノード214と基板Wとの間に印加する電圧を調整することによって、基板Wの表面に金属を析出させて金属膜を形成する。
【0037】
この時、前述のように、めっき液噴射ノズル222から、基板Wの表面(被めっき面)に向けて第1めっき液50aを噴射して第1めっき液50aの強い噴流を当てることで、めっき膜質を劣化させることなく、めっき速度を高めることができる。しかも、基板Wの表面近傍における第1めっき液50aの流れがより均一となるように調整することで、基板Wの表面に形成されるめっき膜の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0038】
このように構成しためっき処理設備によって、銅配線を形成する一連のめっき処理を、図7を更に参照して説明する。先ず、図7(a)に示すように、半導体素子を形成した半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やLow−k材膜等の絶縁膜2を堆積し、この絶縁膜2の内部に、リソグラフィ・エッチング技術により、配線用凹部としてのビアホール3とトレンチ4を形成し、その上にTa,TaN,TiN,WN,SiTiN,CoWPまたはCoWB等からなるバリア層5、更にその上に電解めっきの給電層としてシード層(導電層)7を形成した基板Wを用意する。そして、この基板Wをその表面(被めっき面)を上にした状態で基板カセットに収容し、この基板カセットをロード・アンロードポート120に搭載する。
【0039】
このロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットから、第1搬送ロボット128で基板Wを1枚取出し、アライナ122に載せてオリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。このアライナ122で方向を合わせた基板Wを第1搬送ロボット128で前処理装置126に搬送する。そして、この前処理装置126で、前処理液に純水を使用した前処理(水洗前処理)を施す。一方、ストッカ164内に鉛直姿勢で保管されていた基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで取出し、これを90゜回転させた水平状態にして基板脱着台162に2個並列に載置する。
【0040】
そして、前述の前処理(水洗前処理)を施した基板Wをこの基板脱着台162に載置された基板ホルダ160に周縁部をシールして装着する。そして、この基板Wを装着した基板ホルダ160を第2搬送ロボット174aで2基同時に把持し、上昇させた後、ストッカ164まで搬送し、90゜回転させて基板ホルダ160を垂直な状態となし、しかる後、下降させ、これによって、2基の基板ホルダ160をストッカ164に吊下げ保持(仮置き)する。これを順次繰返して、ストッカ164内に収容された基板ホルダ160に順次基板を装着し、ストッカ164の所定の位置に順次吊り下げ保持(仮置き)する。
【0041】
一方、第2搬送ロボット174bにあっては、基板を装着しストッカ164に仮置きした基板ホルダ160を2基同時に把持し、上昇させた後、活性化処理装置166に搬送し、活性化処理槽183に入れた硫酸や塩酸などの薬液に基板を浸漬させてシード層表面の電気抵抗の大きい酸化膜をエッチングし、清浄な金属面を露出させる。更に、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、第1水洗装置168aに搬送し、この水洗槽184aに入れた純水で基板の表面を水洗する。
【0042】
水洗が終了した基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、第1めっき装置170aに搬送し、第1めっき槽186a内の第1めっき液50aに基板を浸漬させた状態で第1めっき槽186aに吊り下げ支持し、基板Wと第1めっき槽186a内のアノード214との間に電圧を印加して、基板Wの表面に第1めっき液(高濃度浴)50aによる第1めっき処理を施す。そして、第1めっき処理を所定時間行った後、基板を装着した基板ホルダ160を第1めっき槽186a内の第1めっき液50aから引き上げて、第2めっき装置170bに搬送する。そして、第2めっき槽186b内の第2めっき液50bに基板を浸漬させた状態で基板ホルダ160を第2めっき槽186bに吊り下げ支持し、基板Wと第2めっき槽186b内のアノード214との間に電圧を印加して、基板Wの表面に第1めっき液(高濃度浴)50aより銅濃度の低い第2めっき液(低濃度浴)50bによる第2めっき処理を施す。
【0043】
この第1めっき装置170aの第1めっき液50aによる第1めっき処理と、第2めっき装置170bの第2めっき液50bによる第2めっき処理を1サイクルとし、このサイクルを所定回数繰返して、めっき処理を完了させる。
例えば、幅が20μmのトレンチ内に銅を埋込むにあたり、第1めっき装置170aの前述の組成を有する第1めっき液50aによる第1めっき処理と、第2めっき装置170bの前述の組成を有する第2めっき液50bによる第2めっき処理の1サイクルによって1μmの膜厚の銅膜(めっき膜)を得ることができるときには、このサイクルを10回繰返す。
【0044】
この1サイクルのめっき処理によって、ビアホール3やトレンチ4の内部に位置するめっき液の銅濃度をビアホール3やトレンチ4の開口端部付近のめっき液よりも相対的に高くした第2めっき処理を行うことができる。これによって、ビアホール3やトレンチ4の内部での銅イオンの供給不足を解消しつつ、ビアホール3やトレンチ4の開口端部付近に対して反応律速にならないようにして、ビアホール3やトレンチ4の周壁に均一な膜厚のめっき膜(銅膜)を形成することができる。そして、このサイクルを所定回数繰返すことで、図7(b)に示すように、ビアホール3やトレンチ4の内部に、内部にボイドのない銅膜(めっき膜)6を埋込むことができる。
【0045】
めっき処理終了後、第2めっき装置170bの第2めっき槽186a内の第2めっき液50bから基板ホルダ160を引き上げ、前出と同様にして、第2水洗装置168bまで搬送し、この水洗槽184bに入れた純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ブロー装置172に搬送し、ここで、不活性ガスやエアーを基板に向けて吹き付けて、基板ホルダ160に付着しためっき液や水滴を除去する。しかる後、この基板を装着した基板ホルダ160を、前記と同様にして、ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。
【0046】
第2搬送ロボット174bは、上記作業を順次繰り返し、めっきが終了した基板を装着した基板ホルダ160を順次ストッカ164の所定の位置に戻して吊下げ保持する。
一方、第2搬送ロボット174aにあっては、めっき処理後の基板を装着しストッカ164に戻した基板ホルダ160を2基同時に把持し、前記と同様にして、基板脱着台162上に載置する。
【0047】
そして、清浄空間114内に配置された第1搬送ロボット128は、この基板脱着台162上に載置された基板ホルダ160から基板を取出し、いずれかの洗浄・乾燥装置124に搬送する。そして、この洗浄・乾燥装置124で、表面を上向きにして水平に保持した基板を、純水等で洗浄し、高速回転させてスピン乾燥させた後、この基板を第1搬送ロボット128でロード・アンロードポート120に搭載した基板カセットに戻して、一連のめっき処理を完了する。これにより、図7(b)に示すように、ビアホール3及びトレンチ4内に銅を充填するとともに、絶縁膜2上に銅膜6を堆積させた基板Wが得られる。
【0048】
そして、前述のようにしてスピン乾燥させた基板Wを、その後、化学的機械的研磨(CMP)装置に搬送し、化学的機械的研磨(CMP)により、絶縁膜2上の銅膜6、シード層7及びバリア層5を除去して、ビアホール3及びトレンチ4に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図7(c)に示すように、銅膜6からなる配線を形成する。
【0049】
次に、図8を参照して、内部に上下に貫通する複数の銅からなるビアプラグを有するインタポーザまたはスペーサの製造例を説明する。図8(a)に示すように、シリコン等からなる基材510の表面にSiO等からなる絶縁膜512を堆積し、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、内部に上方に開口する複数のビアホール514を形成した基板Wを用意する。このビアホール514の直径dは、例えば10〜20μmで、深さhは、例えば70〜150μmである。そして、図8(b)に示すように、この基板Wの表面にTaN等からなるバリア層516、該バリア層516の表面に電気めっきの給電層としての(銅)シード層518をスパッタリング等で形成する。
【0050】
そして、前述と同様にして、基板Wの表面に、第1めっき装置170aの第1めっき液50aによる第1めっき処理と、第2めっき装置170bの第2めっき液50bによる第2めっき処理を1サイクルとし、このサイクルを所定回数繰返すめっき処理を施すことで、図8(c)に示すように、基板Wのビアホール514内に銅(めっき膜)を充填するとともに、絶縁膜512の表面に銅膜520を堆積させる。
【0051】
その後、図8(d)に示すように、化学的機械的研磨(CMP)等により、絶縁膜512上の余剰な銅膜520,シード層518及びバリア層516を除去し、同時に、ビアホール514内に充填した銅の底面が外部に露出するまで基材510の裏面側を研磨除去する。これによって、上下に貫通する銅からなる複数のビアプラグ522を内部に有するインタポーザまたはスペーサを完成させる。
【0052】
本発明のめっき装置を使用した銅めっきを行うことで、例えば直径dが10〜20μmで、深さhが70〜150μm程度の、アスペスト比が高く、深さが深いビアホールにあっても、例えば5時間程度で、ボイド等の欠陥のない、銅(めっき膜)の埋込みが行えることが確かめられている。
【0053】
この例によれば、めっき空間116内での基板の受渡しをめっき空間116内に配置した第2搬送ロボット174a,174bで、清浄空間114内での基板の受渡しを該清浄空間114内に配置した第1搬送ロボット128でそれぞれ行うことで、基板の前処理、めっき処理及びめっきの後処理の全めっき工程を連続して行うめっき処理設備の内部における基板周りの清浄度を向上させるとともに、めっき処理設備としてのスループットを向上させ、更にめっき処理設備の付帯設備の負荷を軽減して、めっき処理設備としてのより小型化を図ることができる。
【0054】
この例にあっては、めっき処理を行うめっき装置170a,170bとして、フットプリントの小さいめっき槽186a,186bを有するものを使用することで、多数のめっき槽186a,186bを有するめっき装置の更なる小型化を図るとともに、工場付帯設備負荷をより軽減することができる。なお、図4において2台設置されている洗浄・乾燥装置124の一方を、前処理装置に置換えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来のめっき装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】従来のめっき装置でめっきを行った時における金属膜の埋込み状態の概要を示す図である。
【図3】(a)は絶縁膜表面に第1めっき液を接触させた状態を、(b)は、絶縁膜表面に第1めっき液を接触させた後、第2めっき液に接触させた直後の状態を、(c)は、本発明によって埋込みを行った後の状態をそれぞれ示す図である。
【図4】本発明の実施の形態のめっき装置を備えためっき処理設備の全体配置図である。
【図5】図4に示すめっき処理設備のめっき空間内に備えられている搬送ロボットの概要図である。
【図6】図4に示すめっき処理設備に備えられているめっき装置の概略断面図である。
【図7】銅配線基板Wの一製造例を工程順に示す図である。
【図8】内部に上下に貫通する複数の銅からなるビアプラグを有するインタポーザまたはスペーサの製造例を工程順に示す図である。
【符号の説明】
【0056】
50a,50b めっき液
110 装置フレーム
112 仕切板
114 清浄空間
116 めっき空間
120 ロード・アンロードポート
122 アライナ
124 洗浄・乾燥装置
126 前処理装置
128 搬送ロボット
160 基板ホルダ
162 基板脱着台
164 ストッカ
166 活性化処理装置
168a,168b 水洗装置
170a,170b めっき装置
172 ブロー装置
174a,174b 搬送ロボット
180 アーム
182 基板ホルダ保持部
183 活性化処理槽
184a,184b 水洗槽
186a,186b めっき槽
202 オーバフロー槽
204 めっき液排出ライン
206 めっき液循環ライン
208 循環ポンプ
210 流量調節器
214 アノード
216 アノードホルダ
218 めっき液供給ライン
220 ノズル配管
222 めっき液噴射ノズル
224 固定板
230 めっき電源
250 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1めっき液を該第1めっき液中にアノードを浸漬させて保持する第1めっき槽と、
前記第1めっき液より金属濃度の低い第2めっき液を該第2めっき液中にアノードを浸漬させて保持する第2めっき槽と、
前記第1めっき槽と前記第2めっき槽との間を移動自在で、被めっき材を該被めっき材に通電可能に保持して前記第1めっき槽内の第1めっき液と前記第2めっき槽内の第2めっき液にそれぞれ接触させるホルダを有し、
前記ホルダで保持した被めっき材を前記第1めっき槽内の第1めっき液に接触させて行う第1めっき処理と、前記第2めっき槽内の第2めっき液に接触させて行う第2めっき処理を1サイクルとして該サイクルを繰返すことを特徴とするめっき装置。
【請求項2】
前記第1めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が190〜250g/Lの硫酸銅めっき液で、前記第2めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が50〜180g/Lの硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項1記載のめっき装置。
【請求項3】
被めっき材を第1めっき液に接触させ、該被めっき材と前記第1めっき液に浸漬させたアノードとの間に電圧を印加して行う第1めっき処理と、被めっき材を前記第1めっき液よりも金属濃度の低い第2めっき液に接触させ、該被めっき材と前記第2めっき液に浸漬させたアノードとの間に電圧を印加して行う第2めっき処理を1サイクルとして該サイクルを繰返すことを特徴とするめっき方法。
【請求項4】
前記第1めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が190〜250g/Lの硫酸銅めっき液で、前記第2めっき液は、硫酸銅・5水和物の濃度が50〜180g/Lの硫酸銅めっき液であることを特徴とする請求項3記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−225715(P2006−225715A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40624(P2005−40624)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】