説明

アクチュエーター、光制御装置、電気光学装置、及び電子機器

【課題】小型化されたアクチュエーターを提供する。
【解決手段】本発明のアクチュエーター200は、基板18上に、いずれも櫛歯状を成し、互いの開放端側で対向する第1固定電極11及び第2固定電極12と、第1固定電極11と第2固定電極12との間に配置され、第1固定電極11と第2固定電極12との間を移動可能とされた平面視蛇行形状の可動電極13と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーター、光制御装置、電気光学装置、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術によるアクチュエーターを用いた光制御装置が公知である。例えば、DMD(Digital Micromirror Device;登録商標)、GLV(Grating Light Valve)などの反射型光制御装置が実用化されていた。しかし、反射型光制御装置をプロジェクタなどの製品に適用した場合、投射表示に用いない光を適切に処理するための光路設計が複雑になるという課題があり、透過型光制御装置の開発が待たれていた。
【0003】
一方、透過型の光制御装置としては、例えば特許文献1に記載の静電アクチュエーターを用いたものが知られていた。かかる光制御装置は、光が通過する開口部、光をオン/オフする遮蔽板、遮蔽板を駆動するアクチュエーター、及びアクチュエーターの可動部を支持するバネ構造部などを備えて構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−43674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の透過型光制御装置では、駆動力の弱い静電アクチュエーターを用いていたため、静電アクチュエーターが大型にならざるを得なかった。また、遮蔽板の側方に接続された静電アクチュエーターにより遮蔽板を水平移動させる構造であったため、光を透過させる開口領域のほかに、遮蔽板を退避させる領域と静電アクチュエーターを設置する領域と静電アクチュエーター及び遮蔽板を指示するバネ構造部を設置する領域とを確保する必要があり、そのために十分な光利用効率を得ることができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、小型化されたアクチュエーターと、光利用効率を高めた光制御装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアクチュエーターは、基板上に、いずれも櫛歯状を成し、互いの開放端側で対向する第1固定電極及び第2固定電極と、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間に配置され、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間を移動可能とされた平面視蛇行形状の可動電極と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、いずれも櫛歯状の第1及び第2固定電極を形成し、これらの固定電極に噛み合う蛇行形状の可動電極を用いているので、固定電極と可動電極の双方を櫛歯電極とした構成に比して大きな駆動力を得ることができ、確実に可動電極を移動させることが可能である。これにより、十分な駆動力を確保しつつアクチュエーターを小型化することが可能になる。
また、可動電極の移動範囲のうち、おおよそ半分の領域は第1固定電極と可動電極との間に電圧を印加することにより可動電極の移動を行い、残りの領域は第2固定電極と可動電極との間に電圧を印加することにより可動電極の移動を行うことができる。したがって、電極間に印加する電圧を比較的低くすることができる。
【0009】
前記可動電極が平面視略矩形波状であることが好ましい。このような構成とすれば、櫛歯状の第1及び第2固定電極との間に形成される電界を大きくすることができ、駆動力を向上させることができる。
【0010】
前記可動電極の前記基板と反対側の面に板状部材が設けられていることが好ましい。このような構成とすれば、上記の板状部材によって蛇行形状の可動電極の反りや曲がりを防止することができ、アクチュエーターの信頼性を向上させることができる。
【0011】
前記可動電極の少なくとも一部が中空構造であることが好ましい。この構成によれば、可動電極を軽量化することができ、必要な駆動力を小さくすることができる。したがって、アクチュエーターのさらなる小型化に有利な構成となる。
【0012】
前記可動電極の移動方向が、前記基板の主面に対して略平行方向であることが好ましい。この構成によれば、第1又は第2固定電極と可動電極との間に形成される電界の方向に沿った移動方向となり、大きな駆動力を得ることができる。
【0013】
本発明の光制御装置は、先に記載のアクチュエーターと、前記可動電極と接続された遮光部材とを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、小型化されたアクチュエーターにより遮光板を駆動することで、開口率を高めた光制御装置が得られる。
【0014】
本発明の光制御装置は、基板上に、櫛歯状の第1固定電極と、前記第1固定電極と互いの開放端側で対向配置された櫛歯状の第2固定電極と、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間に配置され、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間を移動可能とされた蛇行形状の可動電極と、前記基板を貫通し、前記可動電極の移動領域内に開口する貫通孔と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、いずれも櫛歯状の第1及び第2固定電極を形成し、これらの固定電極に噛み合う蛇行形状の可動電極を用いているので、固定電極と可動電極の双方を櫛歯電極とした構成に比して大きな駆動力を得ることができ、確実に可動電極を移動させることが可能である。また、可動電極の移動範囲のうち、おおよそ半分の領域は第1固定電極と可動電極との間に電圧を印加することにより可動電極の移動を行い、残りの領域は第2固定電極と可動電極との間に電圧を印加することにより可動電極の移動を行うことができる。したがって、電極間に印加する電圧を比較的低くすることができる。
この構成によれば、第1固定電極と第2固定電極との間に配置された可動電極の移動領域内に貫通孔が開口しているので、貫通孔から射出される光の通過/遮断状態を可動電極の移動によって切り換えることができる。これにより、第1及び第2固定電極の外側に貫通孔を設ける従来例に比して開口率を高めることができる。
【0016】
前記可動電極の前記基板と反対側の面に、前記貫通孔の開口部を平面視で遮蔽可能の遮光部材が設けられていることが好ましい。この構成によれば、遮光板の移動によって貫通孔から射出される光の通過/遮断状態を切り換えることができる。遮光板は可動電極よりも大きくすることができるので、貫通孔を大きくすることが可能になり、さらに開口率を高めることが可能である。
【0017】
本発明の電気光学装置は、先に記載の光制御装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高開口率の透過型の電気光学装置を提供することができる。
【0018】
本発明の電子機器は、先に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高輝度、高コントラストの表示が可能な表示手段を具備した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】光制御装置の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1のA−A’線に沿う位置における光制御装置の断面図。
【図3】実施形態に係る光制御装置の動作説明図。
【図4】実施形態に係る光制御装置の製造工程を示す断面図。
【図5】実施形態に係る光制御装置の製造工程を示す断面図。
【図6】アクチュエーターの一実施形態を示す平面図。
【図7】電気光学装置の一実施形態を示す図。
【図8】電子機器の一実施形態であるプロジェクターを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(光制御装置)
以下、図面を用いて本発明の光制御装置について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0021】
図1は、本発明の光制御装置の一実施形態を示す平面図である。図2(a)は、図1のA−A’線に沿う位置における光制御装置の断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の光制御装置100は、基体としての基板18と、第1固定電極11と、第2固定電極12と、第1固定電極11と第2固定電極12との間に配置された可動電極13と、可動電極13の移動領域内で開口する貫通孔14と、を備えて構成されている。
【0023】
基板18は、例えばシリコンやガラス等からなり、その表面に遮光膜や絶縁膜が形成されたものであってもよい。基板18には、平面視矩形状を成して基板18を厚さ方向に貫通する貫通孔14が形成されている。本実施形態の場合、貫通孔14の形成領域に対応して第1固定電極11が形成されており、貫通孔14の側方に第2固定電極12が形成されている。
【0024】
第1固定電極11及び第2固定電極12は、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなり、いずれも平面視略櫛歯状に形成されている。第1固定電極11は、図示上下方向に延在する幹電極11aと、幹電極11aから第2固定電極12側(図示右側)に延出された複数(図1では6本)の枝電極11bとからなる。第1固定電極11の両端に位置する枝電極11b、11bの間の領域に、幹電極11aに沿って延びる貫通孔14が配置されている。
第2固定電極12は、図示上下方向に延在する幹電極12aと、幹電極12aから第1固定電極11側に延出された複数(図1では5本)の枝電極12bとからなる。
【0025】
第1固定電極11と第2固定電極12とは、互いの開放端(枝電極11b、12bの先端)を対向させた状態で基板18上に配置されている。第1固定電極11及び第2固定電極12の長手方向(図示上下方向)において、第1固定電極11の枝電極11bと第2固定電極12の枝電極12bとが交互に配置されている。
【0026】
第1固定電極11の幹電極11aには、基板18上に形成された配線17aが接続されており、第2固定電極12の幹電極12aには、基板18上に形成された配線17bが接続されている。光制御装置100の動作時には、配線17a、17bを介して、図示略の電位制御回路から第1固定電極11及び第2固定電極12に所定の電位が入力される。
【0027】
可動電極13は、第1固定電極11と第2固定電極12との間に配置されており、例えば、不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなる。可動電極13は、平面視蛇行形状に形成されており、本実施形態の場合、平面視矩形波状に形成されている。可動電極13の形状は、矩形波状に限らず、三角波状のジグザグ形状や、正弦波状のような曲線形状であってもよい。
【0028】
可動電極13は、互いに対向して配置された第1固定電極11と第2固定電極12との間の矩形波状の平面領域に沿って形成されている。そして、可動電極13は、第1固定電極11と第2固定電極12との間の領域を、第1固定電極11と第2固定電極12の対向方向(図示左右方向)に移動可能である。
【0029】
より詳しくは、可動電極13は、第1固定電極11側に位置する複数の第1U形電極部13aと、第2固定電極12側に位置する複数の第2U形電極部13bとを相互に接続した構成を有している。第1U形電極部13aと第2U形電極部13bとは、可動電極13の長手方向(図示上下方向)に沿って交互に配列され、全体として矩形波状を成している。
【0030】
第1U形電極部13aの外側部は、第1固定電極11の枝電極11b、11b間に噛み合うように配置され、第1U形電極部13aの内側部は、第2固定電極12の枝電極12bに噛み合うように配置されている。
一方、第2U形電極部13bの外側部は、第2固定電極12の枝電極12b、12b間に噛み合うように配置され、第2U形電極部13bの内側部は、第1固定電極11の枝電極11bと噛み合うように配置されている。
【0031】
ここで、図2(b)〜図2(f)は、図1のB−B’線に沿う位置の可動電極13の断面構造を複数例示する図である。可動電極13は、図2(a)に示すように中実な構造であってもよいが、図2(b)に示すように内部に空間を有する中空構造をであってもよい。さらに、図2(c)及び図2(d)に示すように、一部に開口を有する中空構造であってもよい。さらにまた、図2(e)及び図2(f)に示すように、2枚の壁体を接続した断面L形の構造であってもよい。
【0032】
可動電極13は、その全体が上記のような中空構造であってもよく、一部のみに中空構造が形成された構造であってもよい。例えば、第1U形電極部13a及び第2U形電極部13bのみを図2(b)〜(f)の中空構造とし、連結部13c、13dは中実構造とすれば、可動電極13を軽量化しつつ、弾性梁部15a〜15dとの接続部の強度を確保することが可能である。
【0033】
可動電極13の両端には、可動電極13の矩形波状の部位から第1固定電極11の外側に延出された連結部13c、13dが形成されている。連結部13cの両側(図示左右側)の側壁面には、可動電極13の移動方向(図示左右方向)に伸縮可能な弾性梁部15a、15bがそれぞれ接続されている。また、連結部13dの両側には、弾性梁部15c、15dがそれぞれ接続されている。
弾性梁部15a〜15dは、平面視略矩形波状の弾性体であり、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなる。
【0034】
弾性梁部15a、15bの先端は、それぞれ、基板18上に形成された支持部16a、16bと接続されている。また、弾性梁部15c、15dの先端は、それぞれ、基板18上に形成された支持部16c、16dと接続されている。
支持部16a〜16dは、基板18上に固定されており、弾性梁部15a〜15dは、図示左右方向に移動可能な自由端で連結部13c、13dに接続されている。
支持部16a〜16dは、例えば不純物をドープした多結晶シリコンや金属材料からなる。
【0035】
本実施形態の場合、支持部16a及び16cに、基板18上に形成された配線17cが接続されている。光制御装置100の動作時には、配線17cを介して、図示略の電位制御装置から支持部16a、16cに所定の電位が入力される。そして、支持部16a、16cから弾性梁部15a、15c、及び連結部13c、13dを介して、可動電極13に上記の電位が入力される。
【0036】
可動電極13の平面視矩形波状の部位を覆うようにして、遮光板19が設けられている。遮光板19は、例えば、多結晶シリコンや金属材料などの遮光性材料からなる。遮光板19は可動電極13と接続されており、可動電極13と一体に水平移動する。遮光板19は、基板18の裏面(図1奥側の面)から照射され、貫通孔14を通過した光のシャッターとして機能する部材であり、所定位置で貫通孔14を覆う大きさに形成される。
【0037】
図2に示す断面構造を見ると、基板18上に絶縁膜21が形成されており、絶縁膜21上に第1固定電極11及び第2固定電極12が形成されている。可動電極13は絶縁膜21から図示上方に離間状態で配設され、第1固定電極11と第2固定電極12との間を水平移動可能に構成されている。可動電極13上には、複数の支柱部19aを介して遮光板19が接続されている。貫通孔14は基板18及び絶縁膜21を厚さ方向(図示上下方向)に貫通して形成されている。
【0038】
図3は、光制御装置100の動作説明図である。図3には、図1に示す光制御装置100の要部が拡大表示されている。
光制御装置100は、可動電極13及び遮光板19を一体に水平移動させることで貫通孔14上に遮光板19を進退させる。これにより、貫通孔14を介して入射する光の遮光板19による通過/遮断状態を切り換えることで光制御を行う。
【0039】
図3(a)は、光遮断状態の光制御装置100を示す図である。図3(a)では、第1固定電極11と可動電極13との間に、電源30によって電圧が印加されている。本実施形態の場合、第1固定電極11が相対的に高電位、可動電極13が相対的に低電位とされているが、電位の高低関係は逆であってもよい。すなわち、第1固定電極11と可動電極13との間に電位差を生じさせれば、可動電極13を移動させることができる。なお、このときの第2固定電極12は、可動電極13の動作を妨げなければ任意の電位状態とすることができる。第2固定電極12の電位は、例えば、可動電極13と同電位とすればよく、電気的に切断された状態であってもよい。
【0040】
このように電圧を印加すると、第1固定電極11と可動電極13との間の静電引力が生じ、可動電極13が第1固定電極11側へ引き寄せられる。そうすると、可動電極13とともに第1固定電極11側に移動した遮光板19によって貫通孔14が覆われ、貫通孔14から射出される光が遮光板19により遮断された状態となる。
【0041】
一方、図3(b)に示す光通過状態では、第2固定電極12が相対的に高電位、可動電極13が相対的に低電位となるように第2固定電極12と可動電極13との間に電圧を印加する。そうすると、可動電極13が第2固定電極12側へ引き寄せられ、遮光板19が貫通孔14上から後退する。これにより、貫通孔14から射出される光が光制御装置100を透過する状態となる。
【0042】
このように、本実施形態の光制御装置100は、第1固定電極11、第2固定電極12、及び可動電極13の電位状態を制御することで、可動電極13を第1固定電極11側又は第2固定電極12側に水平移動させ、遮光板19によって貫通孔14から射出される光の通過/遮断状態を切り換えることができる。
【0043】
次に、上記実施形態の光制御装置100の製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5に示す工程図は、図1のA−A’線に沿う位置における各工程での状態を示す断面図である。
【0044】
まず、図4(a)に示すように、例えばシリコンからなる基板18を用意し、基板18の一面側に絶縁膜21を形成する。絶縁膜21は、シリコンからなる基板18を熱酸化して形成してもよいし、CVD法やスパッタ法などの成膜法を用いて形成してもよい。また、絶縁膜21は、シリコン酸化物膜に限らず、シリコン窒化物やシリコン酸化窒化物膜であってもよい。
【0045】
次いで、絶縁膜21上に、例えばシリコン窒化物からなる犠牲層22をパターン形成する。犠牲層22は、光制御装置100における可動部を基板18から浮かせて形成するために用いられる。したがって、犠牲層22が形成される平面領域は、図1に示した第1固定電極11の複数の枝電極11b、第2固定電極12の複数の枝電極12b、可動電極13、及び弾性梁部15a〜15dを内包する領域である。
【0046】
なお、実際の工程では、犠牲層22を形成する前に、絶縁膜21上に、図1に示した配線17a〜17cを形成する工程が実施される。本実施形態の場合、配線17b、17cと弾性梁部15c、15dが平面視で重なる位置に形成されるので、犠牲層22は、配線17b、17cの一部を覆うようにして形成される。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、犠牲層22及び絶縁膜21を覆うように、導電膜23をスパッタ法などの公知の成膜法により形成する。導電膜23は、例えば、不純物をドープした多結晶シリコン膜である。
【0048】
次に、図4(c)に示すように、導電膜23をフォトリソグラフィー工程でパターニングする。このパターニングにより、第1固定電極11、第2固定電極12、可動電極13、弾性梁部15a〜15d、及び支持部16a〜16dが形成される。
図示のように、第1固定電極11及び第2固定電極12の幹電極11a、12aが、犠牲層22の外側の絶縁膜21上に形成され、幹電極11a、12aから内側に延びる枝電極11b、12bは犠牲層22上に形成される。また、光制御装置100の可動部である可動電極13及び弾性梁部15a〜15dも犠牲層22上に形成される。一方、支持部16a〜16dは、絶縁膜21上に形成され、さらに支持部16a、16cは配線17aと一部重なって形成される。
【0049】
次に、図4(d)に示すように、基板18上の全面に犠牲層24を形成する。その後、犠牲層24の表面を、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などの処理により平坦化する。犠牲層22は、先の犠牲層24と同様の材料を用いて形成してもよいし、異なる材料を用いて形成してもよい。犠牲層24に犠牲層22と異なる材料を用いる場合には、同等のエッチング速度が得られる材料を用いることが好ましい。犠牲層24は、例えばシリコン酸化物膜やシリコン窒化物膜とすることができる。
【0050】
次に、図4(e)に示すように、犠牲層24を貫通して可動電極13に達するコンタクトホール24aを、フォトリソグラフィー工程により形成する。コンタクトホール24aは、遮光板19を支持する支柱部19aを形成するためのものであり、遮光板19と可動電極13との接続信頼性を確保できる範囲で任意の大きさと個数で形成してよい。
【0051】
次に、図5(a)に示すように、遮光性材料からなる遮光膜25を、犠牲層24上に形成する。遮光膜25は、アルミニウムやクロムなどの金属材料やシリコンなど、遮光性を有し、可動電極13との密着性が良好な材料を用いて形成することができる。
次に、図5(b)に示すように、遮光膜25をフォトリソグラフィー工程によりパターニングして遮光板19を形成する。遮光板19は支柱部19aを介して可動電極13と接続されている。
【0052】
次に、図5(c)に示すように、基板18を裏面(図示下面)からエッチングすることで、基板18及び絶縁膜21を厚さ方向に貫通する貫通孔14を形成する。
次に、図5(d)に示すように、フッ酸系のエッチング液やエッチングガスを用いたエッチング工程により、犠牲層22及び犠牲層24を除去する。これにより、基板18上に、貫通孔14上で水平移動可能の可動電極13及び遮光板19が形成される。
以上の工程により、光制御装置100を製造することができる。
【0053】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の光制御装置100では、第1固定電極11と第2固定電極12との間に水平移動可能の可動電極13と遮光板19を形成し、可動電極13及び遮光板19を貫通孔14上に進退させることで、貫通孔14から射出される光の通過/遮断状態を制御することができる。
【0054】
本実施形態では、可動電極13が、第1固定電極11と第2固定電極12の双方に噛み合うような平面視矩形波状に形成されている。これにより、図3に示したように、第1固定電極11又は第2固定電極12と、可動電極13との間隔を比較的狭くすることができる。したがって、第1固定電極11又は第2固定電極12と、可動電極13との間に作用する静電引力を大きくすることができ、小型であっても可動電極13を確実に動作させることができる光制御装置100を実現することができる。
【0055】
また、貫通孔14が、第1固定電極11の枝電極11bが配列された領域に形成されている。すなわち、アクチュエーターとして機能する第1固定電極11、第2固定電極12の内側に、貫通孔14が配置されている。したがって、アクチュエーターの外側に貫通孔を形成する場合に比して、光制御装置100の平面積を小さくすることができる。
【0056】
また、遮光板19が可動電極13上に配設されており、遮光板19もアクチュエーター(第1固定電極11、第2固定電極12、可動電極13)の内側でのみ移動する。かかる構成も、光制御装置100の小型化に寄与する。
より詳しくは、従来技術のようにアクチュエーターの外側に貫通孔が設けられている場合には、貫通孔から遮光板を後退させたときに遮光板が配置される領域(退避領域)を確保しなければならないが、本実施形態ではアクチュエーターの内側で遮光板19が移動するため、上記の退避領域を設ける必要が無く、その結果、光制御装置100を小型化することができる。
【0057】
また、本実施形態の光制御装置100では、電極11〜13に電位を入力しない状態において、可動電極13が、弾性梁部15a〜15dによって第1固定電極11と第2固定電極12との中間位置に付勢されている。
これにより、遮光板19を貫通孔14上に進出させるときに第1固定電極11と可動電極13との間に印加する電圧と、遮光板19を貫通孔14上から後退させるときに第2固定電極12と可動電極13との間に印加する電圧とを、ほぼ同じ電圧とすることができ、動作制御が容易な構成を実現することができる。
【0058】
また上記構成によれば、可動電極13を第1固定電極11又は第2固定電極12に引き寄せている状態で、第1固定電極11又は第2固定電極12と可動電極13への電位入力を停止すれば、弾性梁部15a〜15dの弾性復帰力により可動電極13を中間位置に戻る。
かかる弾性復帰作用を利用すれば、電力を消費することなく可動電極13を中央位置に戻せるため、可動電極13を例えば第1固定電極11側から第2固定電極12側へ大きく移動させる際にも、可動電極13を中間位置から第2固定電極12側へ引き寄せるための電圧を印加すればよい。したがって、本実施形態の光制御装置100では、可動電極13を連続的に移動させる場合の印加電圧を比較的小さくすることができ、消費電力の点でも有利である。
【0059】
また、本実施形態の光制御装置100では、貫通孔14上に第1固定電極11の枝電極11bが配置されている。そこで、第1固定電極11の少なくとも枝電極11bを、透明導電材料を用いて形成してもよい。このような構成とすれば、貫通孔14から射出されて枝電極11bを透過した光を利用することができ、開口率を高めることができる。
【0060】
また本実施形態では、貫通孔14が1つのみ形成されている構成について説明したが、貫通孔14の形状や個数については適宜変更することができる。例えば、第1固定電極11の枝電極11b間の各領域に独立の貫通孔14を形成してもよい。
【0061】
(アクチュエーター)
図6は、本発明のアクチュエータの一実施形態を示す平面図である。以下、図面を参照しつつ説明する。
なお、図6において、図1と共通の構成要素には同一の符号を付し、それら共通の構成要素についての説明は適宜省略することとする。
【0062】
本実施形態のアクチュエーター200は、図6に示すように、基板18上に、第1固定電極11と、第2固定電極12と、可動電極13と、弾性梁部15a〜15dと、支持部16a〜16cと、を備えて構成されている。
すなわち、アクチュエーター200は、先の実施形態の光制御装置100において遮光板19を移動させる駆動部をその構成要素とするものである。
【0063】
本実施形態のアクチュエーター200によれば、可動電極13が、第1固定電極11と第2固定電極12の双方に噛み合うような平面視矩形波状に形成されている。これにより、第1固定電極11又は第2固定電極12と、可動電極13との間隔を比較的狭くすることができる。したがって、第1固定電極11又は第2固定電極12と、可動電極13との間に作用する静電引力を大きくすることができ、小型であっても駆動力の大きいアクチュエーターを実現することができる。
【0064】
先の実施形態では、第1固定電極11の形成領域に対応して貫通孔14を設け、可動電極13上に配設した遮光板19により光の通過/遮断状態を制御するものとしたが、光制御装置100の駆動部であるアクチュエーター200は、種々の形態の光制御装置に使用することができる。
【0065】
例えば、図6に示すように、可動電極13の連結部13dに、遮光板29Aを接続した構成としてもよい。また、遮光板29Aの可動電極13と反対側(図示下側)に、他のアクチュエーター200をもう1つ接続し、2個のアクチュエーター200により遮光板29Aを移動させる構成としてもよい。
あるいは、図示のように、アクチュエーター200の側方(図示右側)に遮光板29Bを配置し、遮光板29Bから延出された接続梁部29aを介して可動電極13と接続した構成としてもよい。
【0066】
また本実施形態のアクチュエーター200では、図6に示すように、可動電極13上に、板状部材39を設けることが好ましい。このような構成とすることで、線状に形成された電極材を蛇行させた可動電極13を、板状部材39によって平面状に支持することができ、可動電極13の反りや湾曲を防止することができる。
【0067】
(電気光学装置)
図7は、先の実施形態の光制御装置100を備えた電気光学装置40の概略平面図である。
電気光学装置40は、図7に示すように、基板18と、基板18上に形成された表示領域50と、表示領域50の側方に形成された駆動回路60とを備えて構成されている。表示領域50には、複数の光制御装置100が平面視マトリクス状に配列されており、各々の光制御装置100は、図示略の配線を介して駆動回路60に接続されている。
【0068】
本実施形態の電気光学装置40は、光制御装置100を画素として備えており、各々の光制御装置100において、貫通孔14から射出される光の通過/遮断状態を遮光板19の水平移動によって独立に制御することができる。
【0069】
先に説明したように、本発明に係る光制御装置100は、貫通孔14と遮光板19とがアクチュエーターの平面領域内に設けられていることで、高い開口率を得ることができる。したがって、本実施形態の電気光学装置40によれば、表示領域を構成する画素において高い開口率を得ることができる。
【0070】
なお、本実施形態では、電気光学装置40の画素として光制御装置100を用いた場合について説明したが、上述したアクチュエーター200を備えた光制御装置によって画素を構成してもよいのはもちろんである。
【0071】
(電子機器)
次に、本発明の電子機器の一実施形態について説明する。
図8は、上記実施形態の電気光学装置を備えた電子機器の一例であるプロジェクターを示す図である。
【0072】
図8に示すように、プロジェクター400は、三原色に対応する原色光を各々出力する光源装置41R、41G、41Bと、透過型ライトバルブ40R、40G、40Bと、ダイクロイックプリズム44と、投射光学系45とを備えている。
透過型ライトバルブ40R、40G、40Bは、先に説明した本発明に係る電気光学装置40からなり、透過型の光制御装置100を画素として備えたライトバルブである。
【0073】
光源装置41R、41G、41Bは、それぞれ赤色光、緑色光、青色光を射出し、射出された各色光は、それぞれ透過型ライトバルブ40R、40G、40Bに入射して変調される。変調された各色光は、ダイクロイックプリズム44によって合成され、合成された光は投射光学系45によってスクリーン等に投射される。
【0074】
また、本実施形態のプロジェクター400は、照度均一化光学系42R、42G、42Bを含んでいる。照度均一化光学系42R、42G、42Bは、レーザー光源やLED光源を備えた光源装置41R、41G、41Bから射出された出力光の照度分布を均一化する。照度均一化光学系42Rは、ホログラム421Rとフィールドレンズ422R等により構成されている。照度均一化光学系42G、42Bは、照度均一化光学系42Rと同様に、ホログラム421G、421B、フィールドレンズ422G、422Bを備えた構成になっている。
【0075】
透過型ライトバルブ40R、40G、40Bの各々により変調された色光は、ダイクロイックプリズム44に入射する。ダイクロイックプリズム44は4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面(直角プリズムの表面)に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。3つの色光は、これらの誘電体多層膜によって合成され、カラー画像を表す光になる。合成された光が投射光学系45によりスクリーンや壁等の被投射面450に拡大投射されることにより、投射画像が表示される。
【0076】
本実施形態のプロジェクター400によれば、透過型ライトバルブ40R、40G、40Bとして、本発明に係る電気光学装置40を備えているので、高輝度、高コントラストの表示が得られるプロジェクターとなっている。
【0077】
なお、上記したプロジェクターの構成は一例であり、その構成は適宜変更することができる。例えば、プロジェクター400では色光合成素子としてダイクロイックプリズムを用いているが、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するものや、ダイクロイックミラーを平行に配置し色光を合成するもの等を用いた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 光制御装置、200 アクチュエーター、400 プロジェクター(電子機器)、11 第1固定電極、11a,12a 幹電極、11b,12b 枝電極、12 第2固定電極、13 可動電極、13a 第1U形電極部、13b 第2U形電極部、13c,13d 連結部、14 貫通孔、15a,15b,15c,15d 弾性梁部、16 支持部、17a,17b,17c 配線、18 基板、19,29A,29B 遮光板、39 板状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
いずれも櫛歯状を成し、互いの開放端側で対向する第1固定電極及び第2固定電極と、
前記第1固定電極と前記第2固定電極との間に配置され、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間を移動可能とされた平面視蛇行形状の可動電極と、
を有することを特徴とするアクチュエーター。
【請求項2】
前記可動電極が平面視略矩形波状であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエーター。
【請求項3】
前記可動電極の前記基板と反対側の面に板状部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエーター。
【請求項4】
前記可動電極の少なくとも一部が中空構造であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
【請求項5】
前記可動電極の移動方向が、前記基板の主面に対して略平行方向であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアクチュエーター。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のアクチュエーターと、前記可動電極と接続された遮光部材とを備えたことを特徴とする光制御装置。
【請求項7】
基板上に、
櫛歯状の第1固定電極と、
前記第1固定電極と互いの開放端側で対向配置された櫛歯状の第2固定電極と、
前記第1固定電極と前記第2固定電極との間に配置され、前記第1固定電極と前記第2固定電極との間を移動可能とされた蛇行形状の可動電極と、
前記基板を貫通し、前記可動電極の移動領域内に開口する貫通孔と、
を有することを特徴とする光制御装置。
【請求項8】
前記可動電極の前記基板と反対側の面に、前記貫通孔の開口部を平面視で遮蔽可能の遮光部材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の光制御装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の光制御装置を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210813(P2010−210813A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55432(P2009−55432)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】