アンテナ分波器
【課題】送受信帯域外の減衰特性と送受信端子間のアイソレーション特性を低下させることなく、従来よりも小型化、低背化が可能なアンテナ分波器を提供する。
【解決手段】アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器において、パッケージ内の受信フィルタ用のグランドパターン152は、他のグランドパターン156,157とは分離されており、2つ以上のフットパッドを有する。
【解決手段】アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器において、パッケージ内の受信フィルタ用のグランドパターン152は、他のグランドパターン156,157とは分離されており、2つ以上のフットパッドを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信信号と受信信号を分離するためのアンテナ分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及してきた。携帯電話ではマルチバンド・マルチモード化が急速に進展しつつあるのに加え、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、GPSといった付属の無線インターフェイスの搭載も進む方向にあり、携帯電話内のRF回路部への小型化、集積化の要求も非常に強い。こうした状況の中、RF回路部における主要部品の1つであるアンテナ分波器への小型化、高性能化、低コスト化の要求も非常に強くなっている。
【0003】
アンテナ分波器は、周波数の異なる送信信号と受信信号を分離するために用いられ、送信用フィルタと受信用フィルタとを具備する。そして、これらのフィルタには、図17に示すように、一端子対共振器がよく使用される。共振器としては、従来広く使用されてきたサイズの大きい誘電体共振器に替わり、最近は小型の圧電薄膜共振器や弾性表面波共振器がよく使用される。また、境界波共振器も開発がなされつつある。これら共振器の構造について説明する。
【0004】
図18(a)、(b)は圧電薄膜共振器の基本構造を説明するための図である。図18(a)は、圧電薄膜共振器500の上面図であり、図18(b)は、図18(a)のII−II視断面図である。
【0005】
圧電薄膜共振器500は、シリコン等の基板504に設けられた空隙505上に下部電極膜502、圧電膜503、上部電極膜501が積層されて構成されている。上部電極膜501が入力端子506を構成し、下部電極膜502が出力端子507を構成する。圧電膜503には、例えば窒化アルミニウムが用いられる。ここで、空隙505は図示したように基板504の裏面から貫通穴を穿設して作成する場合や基板504の表面に犠牲層を利用して設けられたキャビティである場合等がある。
【0006】
図18(c)、(d)は他の圧電薄膜共振器の基本構造を説明するための図である。図18(c)は、圧電薄膜共振器510の上面図であり、図18(d)は、図18(c)のIII−III視断面図である。
【0007】
圧電薄膜共振器510は、前述の圧電薄膜共振器500の空隙505の代わりに、基板514上に高音響インピーダンス膜と低音響インピーダンス膜を交互に積層した音響多層膜(以下「積層膜」という。)515が形成されており、その上に下部電極膜512、圧電膜513、上部電極膜511が積層されて構成されている。圧電薄膜共振器510の共振周波数は、積層膜515の膜厚と厚み縦振動の伝搬速度で決まる。
【0008】
図19は弾性表面波共振器の基本構造を説明するための図である。図19(a)は、弾性表面波共振器520の上面図であり、図19(b)は、図19(a)のIV−IV視断面図である。
【0009】
弾性表面波共振器520は、圧電基板524上に入力端子526と出力端子527とに接続されたすだれ電極指(IDT:Interdigital Transducer)521と、IDT521の両側に配置される反射器522とから構成される。IDT521および反射器522は例えばアルミニウム(Al)等の金属で形成される。なお、図中、反射器522およびIDT521の電極指は実際より少なく描いている。弾性表面波共振器520の共振周波数は、IDT521の電極ピッチと弾性表面波の伝搬速度で決まる。
【0010】
図20は境界波共振器の基本構造を説明するための図である。図20(a)は、境界波共振器530の上面図であり、図20(b)は、図20(a)のV−V視断面図である。
【0011】
基本的には弾性表面波共振器520と同様の構造であるが、IDT531と反射器532の上部に2種類の誘電体層538,539が設けられている点で異なる。境界波共振器530の共振周波数は、IDT531の電極ピッチと境界波の伝搬速度で決まる。
【0012】
次に、送信用又は受信用のフィルタについて説明する。
【0013】
図21は、送信用又は受信用のフィルタに用いられるラダー型フィルタについて説明するための図である。
【0014】
ラダー型フィルタ540は、上述した一端子対共振器を直列腕と並列腕に複数個接続した構成であり、送信用又は受信用のフィルタとして広く用いられている。ラダー型フィルタ540は、比較的低損失で広帯域化でき、通過帯域近傍において高減衰量を得やすく、高耐電力性を有するという特長がある。また、広く使用される別の構造のフィルタとしては、縦モード結合型フィルタがある。具体的な構造として、図22あるいは図23に示すようなダブルモード型弾性表面波フィルタ(DMS:Double Mode SAW)が用いられることが多い。
【0015】
図22は、不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【0016】
不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタ550は、図示しない圧電基板上に複数個の入力IDT551と出力IDT553を形成し、その外側に反射器552を配置した構造である。ダブルモード型弾性表面波フィルタ550は、優れた広帯域減衰、不平衡−平衡変換機能を有するフィルタを構成しやすい特長がある。
【0017】
図23は、不平衡−平衡変換型のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【0018】
不平衡−平衡変換型のダブルモード型弾性表面波フィルタ560は、入力端子が不平衡型であり、出力端子が平衡型となっている。このフィルタ560では、出力端子を平衡型とするために、一方の出力IDT563’が他方の出力IDT563とは逆向きに設けられている。それ以外の点については、不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタ550と同様である。
【0019】
また、境界波共振器530について前述したように、ダブルモード型フィルタに関しても同様に、IDT上に2種類の誘電体層を設けることによりダブルモード型境界波フィルタとして使用することもできる。
【0020】
次に、アンテナ分波器について説明する。図24は、アンテナ分波器の基本構成を説明するための図である。
【0021】
アンテナ分波器601は、周波数の異なる送信信号と受信信号を分離するために用いられる。そのために、アンテナ分波器601は、送信フィルタ602と、受信フィルタ603と、整合回路604と、アンテナ端子607と、送信端子608と、受信端子609とを備える。送信信号は、送信端子608より入力され、送信フィルタ602と整合回路604を通過し、アンテナ端子607より出力される。一方、受信信号は、アンテナ端子607より入力され、整合回路604と受信フィルタ603を通過し、受信端子609から出力される。
【0022】
ここで整合回路604は、送信フィルタ602及び受信フィルタ603とアンテナ端子607との間に設けられ、送受信信号の漏れ損失が悪化するのを防ぐ役割を果たす。すなわち、整合回路604は、受信フィルタ603における送信帯域のインピーダンスを大きくすることにより、送信端子608から入力された送信信号が受信フィルタ603に回り込んで受信端子609側に出力されることを防ぎ、送信フィルタ602における受信帯域のインピーダンスを大きくすることにより、アンテナ端子607より入力された受信信号が送信フィルタ602を通過して送信端子608側に出力されることを防ぐ機能を果たす。なお、アンテナ分波器601はユニット化された部品で構成され、送信フィルタ602、受信フィルタ603及び整合回路604はパッケージ内に収納され、アンテナ端子607、送信端子608及び受信端子609はパッケージの外周面に設けられている。
【0023】
近年の携帯電話において、マルチバンド・マルチモード化の進展、付属の無線インターフェイスの多様化、段間フィルタの削減等多くの要因により、アンテナ分波器の高減衰、高アイソレーション特性が従来以上に求められている。
【0024】
帯域外減衰量の増加、及び、アイソレーション特性の向上のためには、パッケージ内のグランドパターンのレイアウトが非常に重要である。一般には、広い面積の共通グランドをパッケージの内部あるいはフットパッドが配置されている面(以下、「フットパッド面」という。)に形成することによりグランドの強化を図る対策が取られる。
【0025】
図25は、特許文献1(特許第3778902号公報)に記載されているアンテナ分波器の内部構造を示す図である。
【0026】
アンテナ分波器701は、積層パッケージ710にフィルタチップ740がフェイスダウン実装されている。図26は、アンテナ分波器701の回路構成を示す図である。この従来例では、パッケージ710を6層構造として、広い面積の共通グランドとしての複数のGNDパターン770をパッケージ710内に作り込んでいる。このため、アンテナ分波器のサイズが大きくなっている。例えば、従来のアンテナ分波器は、3.8mm×3.8mm×1.4mm(1.4mmは高さ)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特許第3778902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、アンテナ分波器においては、性能面の向上の要請とともに、小型・低背化も強く要請されている。このため、パッケージの小型・低背化を図らなければならないが、それを実現しようとすると、逆に十分なグランドパターンをレイアウトすることが困難になるという問題がある。
【0029】
さらには、近年、半導体デバイスは、デバイス間のクロストーク等に対する雑音特性の改善のために、受信回路のミキサーや低雑音アンプ(LNA)等のデバイスの回路の平衡化
が進んできている。このような半導体デバイスに接続されるアンテナ分波器においても、平衡型の受信端子が求められる。平衡型の受信端子を有するアンテナ分波器では、受信フィルタに不平衡−平衡変換機能を有する縦モード結合型フィルタがよく使用される。この縦モード結合型フィルタのグランドパターンのレイアウトは送信帯域の減衰量とアイソレーションに敏感に影響するため、そのグランドパターンのレイアウトには特に注意を要する。
【0030】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、パッケージのグランドパターンのレイアウトを工夫することによって従来の減衰量やアイソレーション特性を低下させることなく、従来以上の小型化、低背化を可能にしたアンテナ分波器を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0032】
本発明の第1の側面によって提供されるアンテナ分波器は、アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンは、他のグランドパターンとは分離されており、2つ以上のフットパッドに接続されていることを特徴とする。
【0033】
この構成によると、パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンが他のグランドパターンと分離されているので、後述する実験結果が示すように、パッケージ内の各端子間のアイソレーション特性を高めやすくなり、ひいては、アンテナ分波器の送受信帯域外の減衰量とアイソレーション特性を改善することができる。また、グランドの強化のため、広い面積の共通グランドをパッケージ内に形成する必要がなくなるため、アンテナ分波器を小型・低背化することが可能になる。また、この構成によると、より小さな値の受信フィルタのグランドのインダクタを実現し易くなる。
【0034】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るアンテナ分波器の第1実施形態の回路構成を示す図である。
【図2】整合回路を実現するIPDの構造を示す図である。
【図3】ノッチ回路を実現するIPDの構造を示す図である。
【図4】第1実施形態のアンテナ分波器の内部レイアウトを説明するための図である。
【図5】本実施形態のアンテナ分波器の内部構造を説明するための図である。
【図6】本実施形態のアンテナ分波器の各層の導体パターンのレイアウトを説明するための図である。
【図7】第1キャビティ層及び第2キャビティ層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる4種類のパッケージを示す図である。
【図8】図7に示す4種類のパッケージを用いたアンテナ分波器の通過特性とアイソレーション特性を示す図である。
【図9】グランドパターン間の接続状態が異なる3種類のパッケージを示す図である。
【図10】図9に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【図11】第1キャビティ層及び第2キャビティ層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【図12】図11に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【図13】第1キャビティ層及び第2ベース層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【図14】図13に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【図15】本発明に係るアンテナ分波器の第2実施形態の回路構成を示す図である。
【図16】本発明に係るアンテナ分波器の第3実施形態の回路構成を示す図である。
【図17】一端子対共振器を示す図である。
【図18】圧電薄膜共振器の基本構造を説明するための図である。
【図19】弾性表面波共振器の基本構造を説明するための図である。
【図20】境界波共振器の基本構造を説明するための図である。
【図21】ラダー型フィルタについて説明するための図である。
【図22】不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【図23】不平衡−平衡変換型のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【図24】アンテナ分波器の基本構成を説明するための図である。
【図25】従来のアンテナ分波器の内部構造を示す図である。
【図26】アンテナ分波器の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0037】
図1は、本発明に係るアンテナ分波器の第1実施形態の回路構成を示している。アンテナ分波器1は送信フィルタ2、受信フィルタ3、整合回路4、ノッチ回路5を備える。
【0038】
送信フィルタ2は、5個の直列共振器S1〜S5、3個の並列共振器P1〜P3からなるラダー型フィルタであり、各共振器S1〜S5,P1〜P3には圧電薄膜共振器が使用されている。3個の並列共振器P1〜P3はグランド側で共通化された後、インダクタL1に接続されている。このインダクタL1はパッケージ内のビアを含む導体パターンにより実現される。なお、第1実施形態では、アンテナ分波器1の耐電力性や、相互変調歪等の線形性を向上させるために、送信フィルタ2のアンテナ端子7側は、2個の直列共振器S1,S2を直列に接続した構成としている。
【0039】
受信フィルタ3は、並列接続された2個のダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2と、両フィルタF1,F2の接続点に直列に接続された2個の弾性表面波共振器S6,S7とで構成されている。ダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2は縦モード結合型フィルタである。ダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2の各出力端子は、受信フィルタ3の平衡型の受信端子9を構成している。このダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2のイダンクタL2〜L7も送信フィルタ2のインダクタL1と同様に、各接地点が接続されるグランドパターンによって生じるインダクタを示すものである。インダクタL2〜L7は、送信フィルタ2のインダクタL1に比べかなり小さいインダクタンス値を有している。インダクタL1〜L7は、後述するように、パッケージ内の2つのベース層にそれぞれ形成される導体パターン(グランドパターン)とこれらのパターンを接続する複数のビアによって実現される。
【0040】
整合回路4は、集積型受動素子(IPD:Integrated Passive Device)であるインダ
クタL8により実現されている。整合回路4は、送信フィルタ2と受信フィルタ3との共通接続点6と、グランドとの間に並列に接続されている。
【0041】
ノッチ回路5は、インダクタL9とキャパシタCの並列回路で構成されている。ノッチ回路5は、IPDによって実現されている。ノッチ回路5は、共通接続点6とアンテナ端子7との間に直列に接続されている。
【0042】
図2は、整合回路4を実現するIPDの構造を示す図である。
【0043】
整合回路4のIPDは、矩形形状の基板の一方面にスパイラル状のラインからなるインダクタL8を形成して構成されている。スパイラル状のラインは、銅(Cu)等の金属配線によって形成されている。基板には、例えば石英等が使用される。基板の4隅には4個のバンプが形成され、インダクタL8の両端は、例えば、左上隅と右下隅に位置する2つのバンプにそれぞれ接続されている。
【0044】
図3は、ノッチ回路5を実現するIPDの構造を示す図である。図3(a)は、IPDを上から見た図、同図(b)は、同図(a)のI−I視断面図である。
【0045】
ノッチ回路5のIPDは、矩形形状の基板の一方面上にキャパシタCを形成するとともに、スパイラル状のラインからなるインダクタL9を形成して構成されている。基板には、整合回路4のIPDと同様に、石英等が使用される。スパイラル状のラインは、銅(Cu)等の金属配線によって形成されている。キャパシタCは、基板上に形成された下部電極C3と、例えば、酸化シリコン等の絶縁膜である誘電体C2と、上部電極C1とMIM構造に積層して形成されている。基板の4隅には4個のバンプが形成され、インダクタL9の一方端とキャパシタCの一方端は、例えば、右下隅のバンプに接続され、インダクタL9の他方端とキャパシタCの他方端は、右上隅のバンプに接続されている。
【0046】
なお、図2,図3では、整合回路4とノッチ回路5とをそれぞれIPDで実現する構造を示したが、これらの回路を纏めて1つのIPDによって実現することも可能である。
【0047】
なお、送信フィルタ2、受信フィルタ3に使用される共振器の数は、図1に示したものに限定されるものではない。また、各共振器は圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器、境界波共振器のいずれであっても構わない。受信フィルタ3は、他の構造の縦モード結合型フィルタであっても良いし、並列接続するフィルタ数は幾つであっても構わない。更にカスケード接続していても良い。また、縦モード結合型フィルタは境界波を使用していてもよい。
【0048】
整合回路4は整合作用をするものであればよいので、インダクタに代えてキャパシタを使用してもよい。また、複数個のインダクタまたはキャパシタを並列または直列に接続した回路によって整合回路4を構成しても良い。また、送信フィルタ2、受信フィルタ3の共通接続点6側の共振器S1,S2,あるいはS6,S7に並列にインダクタを接続する等の方法により、整合を取れる場合は整合回路4を無くすこともできる。また、整合回路4の位置を、アンテナ端子7と共通接続点6との間に代えて、共通接続点6と送信フィルタ2との間や共通接続点6と受信フィルタ3との間にしても良い。さらに、整合回路4に加えて、共通接続点6と送信フィルタ2との間や共通接続点6と受信フィルタ3との間に他の整合回路を設けるようにしても良い。
【0049】
第1実施形態では共通接続点6とアンテナ端子7との間にノッチ回路5を挿入しているが、並列LC共振回路以外のノッチ回路であってもよいし、減衰を確保したい箇所に応じて、HPF(ハイローパスフィルタ)やLPF(ローパスフィルタ)を使用してもよい。なお、特定の帯域の減衰を確保する必要の無い場合には、これらの回路は不要である。
【0050】
次に、第1実施形態のアンテナ分波器1をパッケージとして実現したものについて説明する。なお、図1に示した送信フィルタ2、受信フィルタ3、整合回路4、ノッチ回路5は、それぞれチップ部品として実現されるので、以下の説明では、対応する回路のチップ部品には同一の番号を付して説明する。例えば、送信フィルタチップ、受信フィルタチップ、整合回路用IPDチップ、ノッチ回路用IPDチップの各チップ部品は、「送信フィルタチップ2」、「受信フィルタチップ3」、「整合回路用IPDチップ4」、「ノッチ回路用IPDチップ5」として説明する。
【0051】
図4は、第1実施形態のアンテナ分波器1の内部レイアウトを説明するための図であり、送信フィルタチップ2〜ノッチ回路用IPDチップ5が、パッケージのダイアタッチ面にフェイスダウン実装された際のレイアウトを示している。ここで、各チップ2〜5は点線で示している。
【0052】
また、図5は、アンテナ分波器1の内部構造を説明するための図である。図6は、パッケージの各層の導体パターンのレイアウトを示すための図である。
【0053】
図5に示すように、パッケージ100は、例えば、アルミナセラミックス、あるいはガラスセラミックス等からできている。パッケージ100は、送信フィルタチップ2〜ノッチ回路用IPDチップ5を搭載するためのキャビティ300を形成する第1キャビティ層110及び第2キャビティ層120、そして、各チップ2〜5を実装するための土台になる第1ベース層130及び第2ベース層140の計4層構造からなる。また、図示はしないが、パッケージ100内には、例えばタングステン(W)、あるいは銅(Cu)、あるいは銀(Ag)等を主成分とする導体パターンが形成されている。この導体パターンについては、後述する。さらに、表面に露出した部分には、ニッケル(Ni)/金(Au)等のメッキ処理がなされている。
【0054】
以下に、図6を参照して、各層の導体パターンのレイアウトなどを説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、第1キャビティ層110上面にはシールリング600の導体パターンが形成されている。この導体パターンを介してコバール等のメタル材からなるメタルリッド200がパッケージ100の上面に取り付けられ、キャビティ300内に実装された各チップ2〜5が密封封止されている。
【0056】
図6(a)に示すように、第1キャビティ層110の内側面(図6(a)では、左側の内側面と下側の内側面)にはサイドキャステレーション141a,142aが設けられ、同図(b)に示すように、第2キャビティ層120の内側面(図6(b)では、左側の内側面と下側の内側面)にもサイドキャステレーション141b,142bが設けられている。なお、サイドキャステレーションとは、パッケージの内壁や外壁に設けられた溝に導体層を設けた電気的な接続路である。これらのサイドキャステレーション141a,142a,141b,142bは、メタルリッド200やシールリング600と第1ベース層130、第2ベース層140の導体パターンを電気的に接続する役割を果たす。
【0057】
第1キャビティ層110のサイドキャステレーション141aの位置と第2キャビティ層120のサイドキャステレーション141bの位置は異なっている。このように位置を異ならせているのは、シールリング600を第1キャビティ層110の上面に半田付けする際の半田流れを防止するためである。第1キャビティ層110のサイドキャステレーション141aと第2キャビティ層120のサイドキャステレーション141bは、当該第2キャビティ層120の上面の接続導体パターン141によって接続されている。同様に、第1キャビティ層110のサイドキャステレーション142aと第2キャビティ層120のサイドキャステレーション142bは、当該第2キャビティ層120の上面の接続導体パターン142によって電気的に接続されている。
【0058】
第1実施形態では、メタルリッド200とシールリング600のグランド電位を効率よく強化するために、第1キャビティ層110と第2キャビティ層120にはそれぞれ2つのサイドキャステレーションを設けているが、サイドキャステレーションを3つ以上設けるようにしてもよい。
【0059】
図6(c)に示すように、第1ベース層130の上面は、ダイアタッチ面150と称され、アンテナ端子に接続されるパターン151、受信フィルタ3のグランドパターン152、受信端子に接続されるパターン154,155、整合回路のグランドパターン156、送信フィルタのグランドパターン157、送信端子に接続されるパターン158、共通接続点のパターン159などの各種の導体パターンが形成されている。送信フィルタチップ2〜ノッチ回路用IPDチップ5は、金(Au)、あるいは、半田等のバンプ500(図4における黒丸がバンプ500を示す。)を介してダイアタッチ面150上の、対応するパターンに接続される。
【0060】
さらに、図6(d)に示すように、第2ベース層140の上面には、アンテナ端子に接続されるパターン141、受信フィルタ3のグランドパターン142、受信端子に接続されるパターン144,145、整合回路のグランドパターン146、送信フィルタのグランドパターン147、送信端子に接続されるパターン148などの各種の導体パターンが形成されている。
【0061】
なお、図6(c),(d)において、図中の白丸は下の層に繋がるビア700を表している。また、図6(c),(d)において、第1、第2ベース層130,140に形成されている導体パターンの内、受信フィルタ3のグランドパターン152,142には斜線を付し、送信フィルタ2のグランドパターン157,147には縦線を付し、整合回路のグランドパターン156,146には横線を付して、他の導体パターンと区別し易くしている。以下の図面においても、必要に応じて同様の線を付している。
【0062】
このように、第1ベース層130と第2ベース層140を設け、各層の上面にグランドパターンを形成するようにしているので、比較的大きな値を必要とする送信フィルタ2のインダクタL1(図1参照)も容易に形成することができる。その一方、小さな値を必要とする受信フィルタ3のインダクタL2〜L7(図1参照)も、広い面積のグランドパターンと複数のビア700(図6(c),(d)のパターン142,147,152,157に白丸で示した部分)の組み合わせにより容易に形成することができる。
【0063】
第1実施形態では、受信フィルタ3のインダクタL2〜L7を小さい値とするために少なくとも2つ以上のビア700を設けている(図6(c),(d)のパターン142,152参照)。第1実施形態では、グランドパターン142,147,152,157の形状やビア700の個数及びその位置などを適当に設定することにより送信フィルタ2のインダクタL1と及び受信フィルタ3のインダクタL2〜L7を比較的容易に適正値にすることができ、これにより送受信帯域の減衰量およびアイソレーション特性を好適な値に調整している。
【0064】
図6(e)に示すように、パッケージの最下面である第2ベース層140の下面には、外部接続端子となるフットパッド161〜168が設けられている。アンテナ端子用フットパッド161、送信端子用フットパッド168、受信端子用フットパッド164,165は、それぞれ、図1中のアンテナ端子7、送信端子8、受信端子9に相当している。
【0065】
なお、図6(e)は、各ベース層の導体パターンと各フットパッドとの位置関係を分かり易くするために、第2ベース層140の上面側から透過して見た下面を示している。また、図6(e)において、フットパッドの内、受信フィルタ3のグランド用フットパッド162,163には斜線を付し、送信フィルタのグランド用フットパッド167には縦線を付し、整合回路のグランド用フットパッド166には横線を付して、他のフットパッドと区別しやすいようにしている。以下の図面においても、必要に応じて同様の線を付している。
【0066】
図1には、受信フィルタ3のグランド用フットパッド162,163、送信フィルタ2のグランド用フットパッド167、整合回路4のグランド用フットパッド166に相当する端子(外部接続用の端子)は、図示されていない。受信フィルタ3の場合は、図1に外部接続用のグランド端子を記載する場合は、図6(e)のグランド用フットパッド162,163に対応して、2個設けることになる。
【0067】
第1実施形態では、受信フィルタ3のグランド用フットパッドが2個設けられているが、3個以上設けられていても良い。また、各グランド用フットパッド162,163,167に接続するためのビア700もそれぞれ2個ずつ設けられているが、それぞれ3個以上ずつ設けられていてもよい。
【0068】
図6(c),(d),(e)に示すように、ダイアタッチ面150と第2ベース層140の上面の各種の導体パターン、およびフットパッド面160の各フットパッドは第1ベース層130、第2ベース層140内に形成されるビア700を通して電気的に接続される。特に、送信フィルタ2のグランドは、パッケージ100内のダイアタッチ面150のグランドパターン157(図6(c)で縦線を付しているパターン)と、このグランドパターン157からビア700を通して接続された第2ベース層140の上面のグランドパターン147(図6(d)で縦線を付しているパターン)と、グランドパターン147からビア700を通して接続された第2ベース層140の下面のフットパッド167(図6(e)で縦線を付しているパターン)とによって構成されている。
【0069】
一方、受信フィルタ3のグランドは、パッケージ100内のダイアタッチ面150のグランドパターン152(図6(c)で斜線を付しているパターン)と、このグランドパターン152から複数のビア700を通して接続された第2ベース層140の上面のグランドパターン142(図6(d)で斜線を付しているパターン)と、このグランドパターン142から複数のビア700を通して接続された2個のフットパッド162,163(図6(e)で斜線を付しているパターン)とによって構成されている。
【0070】
このように、受信フィルタ3のグランドパターン142,152は、送信フィルタ2のグランドパターン147,157に比べ、面積が大きく、ビア700の数もかなり多くなっている。第1実施形態のように、受信フィルタ3に2個並列に接続されたダブルモード型フィルタを使用した場合には、各ダブルモード型フィルタのインダクタL2〜L7(グランドパターンによって生じるインダクタ)の値をフィルタ設計に応じて調整する必要があるが、これはビアを含むグランドパターンのレイアウトによって行われている。すなわち、平衡型の受信端子9を有する受信フィルタ3のグランドパターンのレイアウトは、送信帯域の信号が好適に減衰され、十分なアイソレーション特性が得られるように調整されている。
【0071】
以上の構成により、第1実施形態では、アンテナ分波器1を従来のものより小型・低背化することができる。なお、第1実施形態の構造によれば、アンテナ分波器1を、例えば、3.0mm×2.5mm×0.7mm(0.7mmは高さ)のサイズで実現することができた。このサイズは、従来例で示したサイズ3.8mm×3.8mm×1.4mm(1.4mmは高さ)に対して、容量比で約26%であり、大幅な小型化が可能になった。特に、高さが1/2になったことが小型化に大きく寄与しており、第1実施形態は、低背化による小型化に特に有利である効果を有すると言える。
【0072】
次に、第1実施形態のアンテナ分波器1について行った送・受信端子間のアイソレーション特性について説明する。
【0073】
図7は、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120の内壁に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる4種類のパッケージを示す図である。
【0074】
同図の(a)は、サイドキャステレーションを設けていないタイプである。すなわち、メタルリッド200とシールリング600は第1ベース層130、第2ベース層140の導体パターンと電気的に分離されているタイプである。また、同図の(b)〜(d)は、第1キャビティ層110及び第2キャビティ層120の内壁にそれぞれ2個のサイドキャステレーションを形成したものである。(b)のパッケージは、上述した第1実施形態であり、2箇所のサイドキャステレーション141b、142bはともに、ダイアタッチ面150において受信フィルタ3のグランドパターン152に接続されている。(c),(d)のパッケージは、(b)のパッケージに対して、2箇所のサイドキャステレーションとグランドパターンの接続方法は共通しているが、2箇所のサイドキャステレーションが接続されるグランドパターンが異なっている。すなわち、(c)のパッケージは、サイドキャステレーション143b、144bが送信フィルタ2のグランドパターン157’に接続され、(d)のパッケージは、サイドキャステレーション145b、146bが整合回路4のグランドパターン156’に接続されている。
【0075】
なお、図7では、第2キャビティ層120と第1ベース層130の上面(ダイアタッチ面150)、第2ベース層140の下面(フットパッド面160)の導体パターンおよびサイドキャステレーションを、お互いの位置関係が分かり易いように重ね書きしている。また、第1キャビティ層110のサイドキャステレーションは黒の太線で表し、第2キャビティ層120のサイドキャステレーションは白抜きの太線で表し、サイドキャステレーションの接続パターンは点描を付して表し、各フットパッドは点線で表している。その他の面の導体パターンやリッド等は省略している。以下の図9、図11、図13についても同様である。
【0076】
図8は、図7に示す4種類のパッケージを用いたアンテナ分波器の通過特性とアイソレーション特性を示す図である。なお、波形に付した符号は、図7内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0077】
図8(a)は、図7(a)〜(d)に示す4種類のパッケージの送・受信フィルタの通過特性を示している。
【0078】
同図から分かるように、送信フィルタ2の受信帯域(斜線で示す2110MHz〜2170MHzの帯域)における減衰量は、(a)のパッケージがおよそ35dB、(b)のパッケージがおよそ43dB、(c),(d)のパッケージがおよそ40dBである。一方、受信フィルタ3の送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)における減衰量は、(a)〜(d)のパッケージ間で差は小さいものの、(b)のパッケージが最も良く50dB以上取れている。
【0079】
図8(b)は、図7(a)〜(d)に示す4種類のパッケージの送信端子8と受信端子9と間のアイソレーション特性を示している。
【0080】
同図から、(b)のパッケージが送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)と受信帯域(斜線で示す2110MHz〜2170MHzの帯域)の両帯域で最もアイソレーションが大きいことが分かる。すなわち、(b)のパッケージは、送信帯域でおよそ57db〜67db、受信帯域でおよそ46db〜53dbのアイソレーションを有している。
【0081】
図8(a),(b)から、(b)のパッケージ(第1実施形態のパッケージ)が通過特性とアイソレーション特性のいずれも最も優れた特性を有しているから、第1実施形態の構造、すなわち、メタルリッドとシールリングをサイドキャステレーションによつて受信フィルタ3のグランドパターン142,152に接続する構造を採用すれば、減衰量とアイソレーション特性が優れており,かつ、大幅に小型・低背化をしたアンテナ分波器が可能になる。
【0082】
図9は、グランドパターン間の接続状態が異なる3種類のパッケージを示す図である。
【0083】
同図(e)〜(g)に示すパッケージは、第2キャビティ層120の内壁のサイドキャステレーション147b1,147b2については第1実施形態におけるサイドキャステレーション141b,142bと同じ構造でかつ同じ位置にある。しかし、第1キャビティ層110の内壁のサイドキャステレーション147a1〜147a4が4個ある点、各キャビティ層110,120の外壁にサイドキャステレーション147a5,147a6,147b3,147b4が設けられている点、及び、これらのサイドキャステレーションがすべて1つの接続パターン147で接続されている点で第1実施形態と異なっている。なお、(e)〜(g)に示すパッケージの第1キャビティ層110、第2キャビティ層120の内壁のサイドキャステレーションはすべて同じ構造である。
【0084】
図9(e)に示すパッケージでは、受信フィルタ3のグランドパターン152は、パッケージ100内において、他のグランドパターン156,157と分離されている。図9(f)に示すパッケージでは、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120の外壁の角部にサイドキャステレーション148a,148bが形成されている。このサイドキャステレーション148a,148bは、メタルリッド200及びシールリング600と整合回路4のグランドパターン156とを接続している。従って、受信フィルタ3のグランドパターン152は、パッケージ100内において、整合回路4のグランドパターン156に接続されている。なお、受信フィルタ3のグランドパターン152は、送信フィルタ2のグランドパターン157とは分離されている。
【0085】
さらに、図9(g)に示すパッケージでは、図9(f)に示すパッケージにおいて、第2ベース層140の上面に形成された整合回路4のグランドパターン156”を送信フィルタ2のグランド用フットパット167まで伸ばしている。これにより、整合回路4のグランドパターン156”は、送信フィルタ2のグランドパターン157と接続されている。従って、パッケージ100内において、受信フィルタ3のグランドパターン152と、整合回路4のグランドパターン156”と、送信フィルタのグランドパターン157とが全て接続されている。
【0086】
図10は、図9に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。なお、波形に付した符号は、図9内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0087】
受信帯域(斜線で示す2110MHz〜2170MHzの帯域)のアイソレーションが、図9(f)に示すパッケージを使用した場合が良く見えているが、これは送信フィルタ2のグランドパターンのインダクタL1の値が変化して最適値に近づいたためで、本質的に他のパッケージとの差はない。一方、送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)のアイソレーションは、図9(e)に示すパッケージを使用した場合が最も優れている。受信フィルタ3のグランドパターン152は、パッケージ100内において、他のグランドパターンと分離されている場合にアイソレーション特性が良くなる。
【0088】
図11は、第1キャビティ層及び第2キャビティ層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【0089】
図11(i)に示すパッケージは、第1実施形態のパッケージであり、第2キャビティ層120に形成されるサイドキャステレーション141b,142bの一部が受信フィルタ3のグランド用のフットパッド162,163に対向している。
【0090】
図11(h)に示すパッケージでは、第1キャビティ層110に形成されるサイドキャステレーション171a,172a、あるいは、サイドキャステレーションの接続パターン171,172の一部が受信フィルタ3のグランド用のフットパッド162,163に対向している。しかし、第2キャビティ層120に形成されるサイドキャステレーション171b、172bの一部が受信フィルタのグランド用のフットパッド162,163に対向していない。
【0091】
図11(j)に示すパッケージでは、第2キャビティ層120のサイドキャステレーション173b、174bは、図11(i)に示すパッケージの第2キャビティ層120のサイドキャステレーション141b、142bと同じ位置であるが、第1キャビティ層110のサイドキャステレーション173a,174aをそれぞれ、サイドキャステレーション173b、174bの真上に配置し、第1キャビティ層110と第2キャビティ層120のサイドキャステレーションが直線状にレイアウトした構造である。この場合にも、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120に形成されるサイドキャステレーションの一部が受信フィルタのグランド用のフットパッド162,163に対向している。なお、サイドキャステレーションを直線状にレイアウトする場合は、はんだ流れ防止のための方策をとる必要がある。
【0092】
図12は、図11に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。なお、波形に付した符号は、図11内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0093】
図12(h)に示すパッケージを使用した場合に比べ、図12(i)または(j)に示すパッケージを使用した場合は、送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)のアイソレーション特性が優れている。つまり、ダイアタッチ面に繋がるサイドキャステレーションの一部が受信フィルタのグランド用のフットパッド162,163に対向している場合、アイソレーション特性が良好となる。
【0094】
図13は、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120および第1ベース層130、第2ベース層140に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【0095】
3種類のパッケージは、外壁に形成されたサイドキャステレーション、あるいは、サイドキャステレーションの接続パターンの少なくとも一部が、受信フィルタのグランド用のフットパッドに対向している点、さらに、外壁に形成されたサイドキャステレーションの少なくとも一部が、受信フィルタのグランド用のフットパッドと直接接続されている点で共通である。なお、外壁に形成されたサイドキャステレーションと直接接続させるために、受信フィルタのグランド用のフットパッドは、第1実施形態のパッケージとは形状が異なっている。
【0096】
図13(k)に示すパッケージでは、第1キャビティ層110に形成されるサイドキャステレーション175a,176aの位置と、第2キャビティ層120、第1ベース層130、第2ベース層140に形成されるサイドキャステレーション175b,176bの位置とが異なっており、両者は第2キャビティ層120の上面の接続パターン175,176で接続されている。図13(l)と図13(m)に示すパッケージは、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120及び第1ベース層130、第2ベース層140に直線状にサイドキャステレーションが形成されている点で同じである。一方、図13(l)に示すパッケージでは片方のサイドキャステレーション177a,177bがコーナー部に形成されている点、図13(m)に示すパッケージではサイドキャステレーション179a,179b,180a,180bの幅が太い点で異なっている。
【0097】
図14は、図13に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。なお、同図には、比較用に図11(i)に示すパッケージ(第1実施形態のパッケージ)を用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性も記載している。また、波形に付した符号は、図11,図13内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0098】
外壁に形成されたサイドキャステレーションを使用した図13(k),(l),(m)に示すパッケージを使用した場合、内壁に形成されたサイドキャステレーションを使用した図11(i)に示すパッケージを使用した場合よりも送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)のアイソレーション特性が優れている。そして、外壁に形成されたサイドキャステレーションの幅は太い方がよりアイソレーション特性の改善効果が大きいことがわかる。
【0099】
図15は、本発明に係るアンテナ分波器の第2実施形態を示す回路構成図である。
【0100】
第2実施形態に係るアンテナ分波器1’は、図1に示すアンテナ分波器1の回路構成に対して、受信フィルタ3’の構成を異ならせたものでする。すなわち、受信フィルタ3’の受信端子9’を不平衡型としたものである。なお、受信端子出力を不平衡型とするために、ダブルモード型弾性表面波フィルタF1’F2’のIDTを同じレイアウトにしている。
【0101】
図16は、本発明に係るアンテナ分波器の第3実施形態を示す回路構成図である。
【0102】
第3実施形態に係るアンテナ分波器1”も、図1に示すアンテナ分波器1の回路構成に対して、受信フィルタ3’の構成を異ならせたものである。すなわち、受信フィルタ3’として、送信フィルタ2と同じラダー型フィルタを使用したものである。第3実施形態に係るアンテナ分波器1”も、受信フィルタ3”の受信端子9”は不平衡型となっている。
【0103】
第2実施形態及び第3実施形態の回路構成により、アンテナ端子、送信端子、受信端子がすべて不平衡型であるアンテナ分波器を提供できる。なお、回路構成の詳細については、第1実施形態に示したものと同じなので省略する。
【0104】
以上のように、本発明によれば、パッケージ内のサイドキャステレーションのレイアウトを調整することにより、通信帯域外の減衰特性や送受信端子間のアイソレーション特性に優れ,かつ、従来よりも大幅に小型化及び低背化を図ったアンテナ分波器を実現することができる。
【0105】
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンは、他のグランドパターンとは分離されていることを特徴とするアンテナ分波器。
(付記2)
前記パッケージは、前記送信フィルタと前記受信フィルタとを収容するキャビティ部と、シールリング部とを有しており、前記シールリング部は、前記受信フィルタ用のグランドパターンと接続されていることを特徴とする付記1に記載のアンテナ分波器。
(付記3)
前記シールリング部と前記受信フィルタ用のグランドパターンとの接続は、前記パッケージの内壁に形成されたサイドキャステレーションを含む導体パターンによりなされていることを特徴とする付記2に記載のアンテナ分波器。
(付記4)
前記シールリング部と前記受信フィルタ用のグランドパターンとの接続は、前記パッケージの外壁に形成されたサイドキャステレーションを含む導体パターンによりなされていることを特徴とする付記2または3に記載のアンテナ分波器。
(付記5)
前記パッケージには、前記サイドキャステレーションが少なくとも2個形成されていることを特徴とする付記3または4に記載のアンテナ分波器。
(付記6)
前記キャビティ部の側壁は複数の層によって形成され、各層にそれぞれ形成された前記サイドキャステレーションは、層の境界に形成された接続パターンにより接続され、前記サイドキャステレーション若しくは前記接続パターンの少なくとも一部は、前記パッケージの下面に形成された前記受信フィルタのグランド用のフットパッドに対向していることを特徴とする付記3〜5のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記7)
前記対向している部分には、少なくとも、前記キャビティ部の前記送信フィルタ及び前記受信フィルタが実装されるダイアタッチ面に直接接続する前記サイドキャステレーションの一部が含まれていることを特徴とする付記6に記載のアンテナ分波器。
(付記8)
前記サイドキャステレーションの少なくとも一部は、前記受信フィルタのグランド用のフットパッドに直接接続されていることを特徴とする付記6または7に記載のアンテナ分波器。
(付記9)
前記送信フィルタのグランドパターンは、前記パッケージ内の前記ダイアタッチ面の導体パターンと、前記ダイアタッチ面の下層面に設けられた導体パターンと、前記2つの導体パターンを接続するビアとを含むことを特徴とする付記1〜8のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記10)
前記受信フィルタのグランドパターンは、前記パッケージ内の前記ダイアタッチ面の導体パターンと、前記ダイアタッチ面の下層面に設けられた導体パターンと、前記2つの導体パターンを接続するビアとを含むことを特徴とする付記1〜9のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記11)
前記受信フィルタのグランドパターンが有するビアは、2つ以上であることを特徴とする付記10に記載のアンテナ分波器。
(付記12)
前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドは、2つ以上のフットパッドを有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記13)
前記パッケージ内において、少なくとも1つの前記受信フィルタのグランド用のフットパッドに接続されるビアは少なくとも2つ以上であることを特徴とする付記1〜12のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記14)
アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と平衡型の受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、前記送信フィルタはラダー型フィルタであり、前記受信フィルタは複数の並列に接続されたダブルモード型フィルタと、前記ダブルモード型フィルタと前記アンテナ端子との間に直列に接続された複数の共振器とを含むことを特徴とするアンテナ分波器。(付記15)
前記送信フィルタは、前記アンテナ端子側に複数の直列共振器が直列に接続された構成を有することを特徴とする付記14に記載のアンテナ分波器。
(付記16)
前記送信フィルタの前記ラダー型フィルタを構成する共振器は圧電薄膜共振器であることを特徴とする付記14または15に記載のアンテナ分波器。
(付記17)
前記送信フィルタと前記受信フィルタとの共通接続点と、前記アンテナ端子との間に並列に接続されたインダクタを更に有していることを特徴とする付記14〜16のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記18)
前記送信フィルタと前記受信フィルタとの共通接続点と、前記アンテナ端子との間に直列に接続されたノッチ回路を更に有していることを特徴とする付記14〜17のずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記19)
前記送信フィルタは、ラダー型フィルタであることを特徴とする付記1〜13記載のアンテナ分波器。
(付記20)
前記ラダー型フィルタは、複数の並列共振器を含み、前記複数の並列共振器のグランド側端子が共通化された後、インダクタが挿入されていることを特徴とする付記19記載のアンテナ分波器。
(付記21)
前記送信フィルタのアンテナ端子側の共振器は直列共振器であることを特徴とする付記19または20に記載のアンテナ分波器。
(付記22)
前記送信フィルタの送信端子は不平衡型であることを特徴とする付記1〜13,19〜21のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記23)
前記受信フィルタは、ラダー型フィルタであることを特徴とする付記1〜13,19〜22に記載のアンテナ分波器。
前記受信フィルタは、縦モード結合型フィルタを含むことを特徴とする付記1〜13,19〜22に記載のアンテナ分波器。
(付記25)
前記受信フィルタは、さらに、縦モード結合型フィルタとアンテナ端子間に直列に接続された共振器を含むことを特徴とする付記24に記載のアンテナ分波器。
(付記26)
前記縦モード結合型フィルタは、複数の並列に接続されたダブルモード型フィルタから構成されていることを特徴とする付記24または25に記載のアンテナ分波器。
(付記27)
前記受信フィルタの受信端子は不平衡型であることを特徴とする付記1〜13,19〜26のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記28)
前記受信フィルタの受信端子は平衡型であることを特徴とする付記1〜13,19〜22,24〜26のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記29)
前記送信フィルタまたは前記受信フィルタで使用される共振器は、圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器、境界波共振器のうちのいずれかで構成されていることを特徴とする付記1〜13,19〜28のいずれかに記載のアンテナ分波器。(付記30)
前記送信フィルタと前記受信フィルタのアンテナ端子側の直列共振器のうち少なくとも一方は、少なくとも2個直列に接続されていることを特徴とする付記1〜13,19〜29のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記31)
前記受信フィルタで使用される縦モード結合型フィルタは、弾性表面波、境界波のうちのいずれかのモードが使用されることを特徴とする付記24〜30のいずれかに記載のアンテナ分波器。
【0106】
(付記32)
前記アンテナ分波器は、さらに集積型受動素子のチップを具備することを特徴とする付記1〜13,19〜31のいずれかに記載のアンテナ分波器。
【0107】
(付記33)
前記集積型受動素子は少なくとも整合回路を含むことを特徴とする付記32に記載のアンテナ分波器。
(付記34)
前記集積型受動素子は少なくともノッチ回路を含むことを特徴とする付記32または33に記載のアンテナ分波器。
【符号の説明】
【0108】
1,1’,1” アンテナ分波器
2 送信フィルタチップ(送信フィルタ)
3,3’,3” 受信フィルタチップ(受信フィルタ)
4 整合回路用IPDチップ(整合回路)
5 ノッチ回路用IPDチップ(ノッチ回路)
6 共通接続点
7 アンテナ端子
8 送信端子
9,9’,9” 受信端子
100 セラミックパッケージ
110 第1キャビティ層
120 第2キャビティ層
130 第1ベース層
140 第2ベース層
150 ダイアタッチ面
160 フットパッド面
200 メタルリッド
300 キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信信号と受信信号を分離するためのアンテナ分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信システムの発展に伴って携帯電話、携帯情報端末等が急速に普及してきた。携帯電話ではマルチバンド・マルチモード化が急速に進展しつつあるのに加え、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、GPSといった付属の無線インターフェイスの搭載も進む方向にあり、携帯電話内のRF回路部への小型化、集積化の要求も非常に強い。こうした状況の中、RF回路部における主要部品の1つであるアンテナ分波器への小型化、高性能化、低コスト化の要求も非常に強くなっている。
【0003】
アンテナ分波器は、周波数の異なる送信信号と受信信号を分離するために用いられ、送信用フィルタと受信用フィルタとを具備する。そして、これらのフィルタには、図17に示すように、一端子対共振器がよく使用される。共振器としては、従来広く使用されてきたサイズの大きい誘電体共振器に替わり、最近は小型の圧電薄膜共振器や弾性表面波共振器がよく使用される。また、境界波共振器も開発がなされつつある。これら共振器の構造について説明する。
【0004】
図18(a)、(b)は圧電薄膜共振器の基本構造を説明するための図である。図18(a)は、圧電薄膜共振器500の上面図であり、図18(b)は、図18(a)のII−II視断面図である。
【0005】
圧電薄膜共振器500は、シリコン等の基板504に設けられた空隙505上に下部電極膜502、圧電膜503、上部電極膜501が積層されて構成されている。上部電極膜501が入力端子506を構成し、下部電極膜502が出力端子507を構成する。圧電膜503には、例えば窒化アルミニウムが用いられる。ここで、空隙505は図示したように基板504の裏面から貫通穴を穿設して作成する場合や基板504の表面に犠牲層を利用して設けられたキャビティである場合等がある。
【0006】
図18(c)、(d)は他の圧電薄膜共振器の基本構造を説明するための図である。図18(c)は、圧電薄膜共振器510の上面図であり、図18(d)は、図18(c)のIII−III視断面図である。
【0007】
圧電薄膜共振器510は、前述の圧電薄膜共振器500の空隙505の代わりに、基板514上に高音響インピーダンス膜と低音響インピーダンス膜を交互に積層した音響多層膜(以下「積層膜」という。)515が形成されており、その上に下部電極膜512、圧電膜513、上部電極膜511が積層されて構成されている。圧電薄膜共振器510の共振周波数は、積層膜515の膜厚と厚み縦振動の伝搬速度で決まる。
【0008】
図19は弾性表面波共振器の基本構造を説明するための図である。図19(a)は、弾性表面波共振器520の上面図であり、図19(b)は、図19(a)のIV−IV視断面図である。
【0009】
弾性表面波共振器520は、圧電基板524上に入力端子526と出力端子527とに接続されたすだれ電極指(IDT:Interdigital Transducer)521と、IDT521の両側に配置される反射器522とから構成される。IDT521および反射器522は例えばアルミニウム(Al)等の金属で形成される。なお、図中、反射器522およびIDT521の電極指は実際より少なく描いている。弾性表面波共振器520の共振周波数は、IDT521の電極ピッチと弾性表面波の伝搬速度で決まる。
【0010】
図20は境界波共振器の基本構造を説明するための図である。図20(a)は、境界波共振器530の上面図であり、図20(b)は、図20(a)のV−V視断面図である。
【0011】
基本的には弾性表面波共振器520と同様の構造であるが、IDT531と反射器532の上部に2種類の誘電体層538,539が設けられている点で異なる。境界波共振器530の共振周波数は、IDT531の電極ピッチと境界波の伝搬速度で決まる。
【0012】
次に、送信用又は受信用のフィルタについて説明する。
【0013】
図21は、送信用又は受信用のフィルタに用いられるラダー型フィルタについて説明するための図である。
【0014】
ラダー型フィルタ540は、上述した一端子対共振器を直列腕と並列腕に複数個接続した構成であり、送信用又は受信用のフィルタとして広く用いられている。ラダー型フィルタ540は、比較的低損失で広帯域化でき、通過帯域近傍において高減衰量を得やすく、高耐電力性を有するという特長がある。また、広く使用される別の構造のフィルタとしては、縦モード結合型フィルタがある。具体的な構造として、図22あるいは図23に示すようなダブルモード型弾性表面波フィルタ(DMS:Double Mode SAW)が用いられることが多い。
【0015】
図22は、不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【0016】
不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタ550は、図示しない圧電基板上に複数個の入力IDT551と出力IDT553を形成し、その外側に反射器552を配置した構造である。ダブルモード型弾性表面波フィルタ550は、優れた広帯域減衰、不平衡−平衡変換機能を有するフィルタを構成しやすい特長がある。
【0017】
図23は、不平衡−平衡変換型のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【0018】
不平衡−平衡変換型のダブルモード型弾性表面波フィルタ560は、入力端子が不平衡型であり、出力端子が平衡型となっている。このフィルタ560では、出力端子を平衡型とするために、一方の出力IDT563’が他方の出力IDT563とは逆向きに設けられている。それ以外の点については、不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタ550と同様である。
【0019】
また、境界波共振器530について前述したように、ダブルモード型フィルタに関しても同様に、IDT上に2種類の誘電体層を設けることによりダブルモード型境界波フィルタとして使用することもできる。
【0020】
次に、アンテナ分波器について説明する。図24は、アンテナ分波器の基本構成を説明するための図である。
【0021】
アンテナ分波器601は、周波数の異なる送信信号と受信信号を分離するために用いられる。そのために、アンテナ分波器601は、送信フィルタ602と、受信フィルタ603と、整合回路604と、アンテナ端子607と、送信端子608と、受信端子609とを備える。送信信号は、送信端子608より入力され、送信フィルタ602と整合回路604を通過し、アンテナ端子607より出力される。一方、受信信号は、アンテナ端子607より入力され、整合回路604と受信フィルタ603を通過し、受信端子609から出力される。
【0022】
ここで整合回路604は、送信フィルタ602及び受信フィルタ603とアンテナ端子607との間に設けられ、送受信信号の漏れ損失が悪化するのを防ぐ役割を果たす。すなわち、整合回路604は、受信フィルタ603における送信帯域のインピーダンスを大きくすることにより、送信端子608から入力された送信信号が受信フィルタ603に回り込んで受信端子609側に出力されることを防ぎ、送信フィルタ602における受信帯域のインピーダンスを大きくすることにより、アンテナ端子607より入力された受信信号が送信フィルタ602を通過して送信端子608側に出力されることを防ぐ機能を果たす。なお、アンテナ分波器601はユニット化された部品で構成され、送信フィルタ602、受信フィルタ603及び整合回路604はパッケージ内に収納され、アンテナ端子607、送信端子608及び受信端子609はパッケージの外周面に設けられている。
【0023】
近年の携帯電話において、マルチバンド・マルチモード化の進展、付属の無線インターフェイスの多様化、段間フィルタの削減等多くの要因により、アンテナ分波器の高減衰、高アイソレーション特性が従来以上に求められている。
【0024】
帯域外減衰量の増加、及び、アイソレーション特性の向上のためには、パッケージ内のグランドパターンのレイアウトが非常に重要である。一般には、広い面積の共通グランドをパッケージの内部あるいはフットパッドが配置されている面(以下、「フットパッド面」という。)に形成することによりグランドの強化を図る対策が取られる。
【0025】
図25は、特許文献1(特許第3778902号公報)に記載されているアンテナ分波器の内部構造を示す図である。
【0026】
アンテナ分波器701は、積層パッケージ710にフィルタチップ740がフェイスダウン実装されている。図26は、アンテナ分波器701の回路構成を示す図である。この従来例では、パッケージ710を6層構造として、広い面積の共通グランドとしての複数のGNDパターン770をパッケージ710内に作り込んでいる。このため、アンテナ分波器のサイズが大きくなっている。例えば、従来のアンテナ分波器は、3.8mm×3.8mm×1.4mm(1.4mmは高さ)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特許第3778902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、アンテナ分波器においては、性能面の向上の要請とともに、小型・低背化も強く要請されている。このため、パッケージの小型・低背化を図らなければならないが、それを実現しようとすると、逆に十分なグランドパターンをレイアウトすることが困難になるという問題がある。
【0029】
さらには、近年、半導体デバイスは、デバイス間のクロストーク等に対する雑音特性の改善のために、受信回路のミキサーや低雑音アンプ(LNA)等のデバイスの回路の平衡化
が進んできている。このような半導体デバイスに接続されるアンテナ分波器においても、平衡型の受信端子が求められる。平衡型の受信端子を有するアンテナ分波器では、受信フィルタに不平衡−平衡変換機能を有する縦モード結合型フィルタがよく使用される。この縦モード結合型フィルタのグランドパターンのレイアウトは送信帯域の減衰量とアイソレーションに敏感に影響するため、そのグランドパターンのレイアウトには特に注意を要する。
【0030】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、パッケージのグランドパターンのレイアウトを工夫することによって従来の減衰量やアイソレーション特性を低下させることなく、従来以上の小型化、低背化を可能にしたアンテナ分波器を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0032】
本発明の第1の側面によって提供されるアンテナ分波器は、アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンは、他のグランドパターンとは分離されており、2つ以上のフットパッドに接続されていることを特徴とする。
【0033】
この構成によると、パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンが他のグランドパターンと分離されているので、後述する実験結果が示すように、パッケージ内の各端子間のアイソレーション特性を高めやすくなり、ひいては、アンテナ分波器の送受信帯域外の減衰量とアイソレーション特性を改善することができる。また、グランドの強化のため、広い面積の共通グランドをパッケージ内に形成する必要がなくなるため、アンテナ分波器を小型・低背化することが可能になる。また、この構成によると、より小さな値の受信フィルタのグランドのインダクタを実現し易くなる。
【0034】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るアンテナ分波器の第1実施形態の回路構成を示す図である。
【図2】整合回路を実現するIPDの構造を示す図である。
【図3】ノッチ回路を実現するIPDの構造を示す図である。
【図4】第1実施形態のアンテナ分波器の内部レイアウトを説明するための図である。
【図5】本実施形態のアンテナ分波器の内部構造を説明するための図である。
【図6】本実施形態のアンテナ分波器の各層の導体パターンのレイアウトを説明するための図である。
【図7】第1キャビティ層及び第2キャビティ層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる4種類のパッケージを示す図である。
【図8】図7に示す4種類のパッケージを用いたアンテナ分波器の通過特性とアイソレーション特性を示す図である。
【図9】グランドパターン間の接続状態が異なる3種類のパッケージを示す図である。
【図10】図9に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【図11】第1キャビティ層及び第2キャビティ層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【図12】図11に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【図13】第1キャビティ層及び第2ベース層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【図14】図13に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。
【図15】本発明に係るアンテナ分波器の第2実施形態の回路構成を示す図である。
【図16】本発明に係るアンテナ分波器の第3実施形態の回路構成を示す図である。
【図17】一端子対共振器を示す図である。
【図18】圧電薄膜共振器の基本構造を説明するための図である。
【図19】弾性表面波共振器の基本構造を説明するための図である。
【図20】境界波共振器の基本構造を説明するための図である。
【図21】ラダー型フィルタについて説明するための図である。
【図22】不平衡形のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【図23】不平衡−平衡変換型のダブルモード型弾性表面波フィルタについて説明するための図である。
【図24】アンテナ分波器の基本構成を説明するための図である。
【図25】従来のアンテナ分波器の内部構造を示す図である。
【図26】アンテナ分波器の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0037】
図1は、本発明に係るアンテナ分波器の第1実施形態の回路構成を示している。アンテナ分波器1は送信フィルタ2、受信フィルタ3、整合回路4、ノッチ回路5を備える。
【0038】
送信フィルタ2は、5個の直列共振器S1〜S5、3個の並列共振器P1〜P3からなるラダー型フィルタであり、各共振器S1〜S5,P1〜P3には圧電薄膜共振器が使用されている。3個の並列共振器P1〜P3はグランド側で共通化された後、インダクタL1に接続されている。このインダクタL1はパッケージ内のビアを含む導体パターンにより実現される。なお、第1実施形態では、アンテナ分波器1の耐電力性や、相互変調歪等の線形性を向上させるために、送信フィルタ2のアンテナ端子7側は、2個の直列共振器S1,S2を直列に接続した構成としている。
【0039】
受信フィルタ3は、並列接続された2個のダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2と、両フィルタF1,F2の接続点に直列に接続された2個の弾性表面波共振器S6,S7とで構成されている。ダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2は縦モード結合型フィルタである。ダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2の各出力端子は、受信フィルタ3の平衡型の受信端子9を構成している。このダブルモード型弾性表面波フィルタF1,F2のイダンクタL2〜L7も送信フィルタ2のインダクタL1と同様に、各接地点が接続されるグランドパターンによって生じるインダクタを示すものである。インダクタL2〜L7は、送信フィルタ2のインダクタL1に比べかなり小さいインダクタンス値を有している。インダクタL1〜L7は、後述するように、パッケージ内の2つのベース層にそれぞれ形成される導体パターン(グランドパターン)とこれらのパターンを接続する複数のビアによって実現される。
【0040】
整合回路4は、集積型受動素子(IPD:Integrated Passive Device)であるインダ
クタL8により実現されている。整合回路4は、送信フィルタ2と受信フィルタ3との共通接続点6と、グランドとの間に並列に接続されている。
【0041】
ノッチ回路5は、インダクタL9とキャパシタCの並列回路で構成されている。ノッチ回路5は、IPDによって実現されている。ノッチ回路5は、共通接続点6とアンテナ端子7との間に直列に接続されている。
【0042】
図2は、整合回路4を実現するIPDの構造を示す図である。
【0043】
整合回路4のIPDは、矩形形状の基板の一方面にスパイラル状のラインからなるインダクタL8を形成して構成されている。スパイラル状のラインは、銅(Cu)等の金属配線によって形成されている。基板には、例えば石英等が使用される。基板の4隅には4個のバンプが形成され、インダクタL8の両端は、例えば、左上隅と右下隅に位置する2つのバンプにそれぞれ接続されている。
【0044】
図3は、ノッチ回路5を実現するIPDの構造を示す図である。図3(a)は、IPDを上から見た図、同図(b)は、同図(a)のI−I視断面図である。
【0045】
ノッチ回路5のIPDは、矩形形状の基板の一方面上にキャパシタCを形成するとともに、スパイラル状のラインからなるインダクタL9を形成して構成されている。基板には、整合回路4のIPDと同様に、石英等が使用される。スパイラル状のラインは、銅(Cu)等の金属配線によって形成されている。キャパシタCは、基板上に形成された下部電極C3と、例えば、酸化シリコン等の絶縁膜である誘電体C2と、上部電極C1とMIM構造に積層して形成されている。基板の4隅には4個のバンプが形成され、インダクタL9の一方端とキャパシタCの一方端は、例えば、右下隅のバンプに接続され、インダクタL9の他方端とキャパシタCの他方端は、右上隅のバンプに接続されている。
【0046】
なお、図2,図3では、整合回路4とノッチ回路5とをそれぞれIPDで実現する構造を示したが、これらの回路を纏めて1つのIPDによって実現することも可能である。
【0047】
なお、送信フィルタ2、受信フィルタ3に使用される共振器の数は、図1に示したものに限定されるものではない。また、各共振器は圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器、境界波共振器のいずれであっても構わない。受信フィルタ3は、他の構造の縦モード結合型フィルタであっても良いし、並列接続するフィルタ数は幾つであっても構わない。更にカスケード接続していても良い。また、縦モード結合型フィルタは境界波を使用していてもよい。
【0048】
整合回路4は整合作用をするものであればよいので、インダクタに代えてキャパシタを使用してもよい。また、複数個のインダクタまたはキャパシタを並列または直列に接続した回路によって整合回路4を構成しても良い。また、送信フィルタ2、受信フィルタ3の共通接続点6側の共振器S1,S2,あるいはS6,S7に並列にインダクタを接続する等の方法により、整合を取れる場合は整合回路4を無くすこともできる。また、整合回路4の位置を、アンテナ端子7と共通接続点6との間に代えて、共通接続点6と送信フィルタ2との間や共通接続点6と受信フィルタ3との間にしても良い。さらに、整合回路4に加えて、共通接続点6と送信フィルタ2との間や共通接続点6と受信フィルタ3との間に他の整合回路を設けるようにしても良い。
【0049】
第1実施形態では共通接続点6とアンテナ端子7との間にノッチ回路5を挿入しているが、並列LC共振回路以外のノッチ回路であってもよいし、減衰を確保したい箇所に応じて、HPF(ハイローパスフィルタ)やLPF(ローパスフィルタ)を使用してもよい。なお、特定の帯域の減衰を確保する必要の無い場合には、これらの回路は不要である。
【0050】
次に、第1実施形態のアンテナ分波器1をパッケージとして実現したものについて説明する。なお、図1に示した送信フィルタ2、受信フィルタ3、整合回路4、ノッチ回路5は、それぞれチップ部品として実現されるので、以下の説明では、対応する回路のチップ部品には同一の番号を付して説明する。例えば、送信フィルタチップ、受信フィルタチップ、整合回路用IPDチップ、ノッチ回路用IPDチップの各チップ部品は、「送信フィルタチップ2」、「受信フィルタチップ3」、「整合回路用IPDチップ4」、「ノッチ回路用IPDチップ5」として説明する。
【0051】
図4は、第1実施形態のアンテナ分波器1の内部レイアウトを説明するための図であり、送信フィルタチップ2〜ノッチ回路用IPDチップ5が、パッケージのダイアタッチ面にフェイスダウン実装された際のレイアウトを示している。ここで、各チップ2〜5は点線で示している。
【0052】
また、図5は、アンテナ分波器1の内部構造を説明するための図である。図6は、パッケージの各層の導体パターンのレイアウトを示すための図である。
【0053】
図5に示すように、パッケージ100は、例えば、アルミナセラミックス、あるいはガラスセラミックス等からできている。パッケージ100は、送信フィルタチップ2〜ノッチ回路用IPDチップ5を搭載するためのキャビティ300を形成する第1キャビティ層110及び第2キャビティ層120、そして、各チップ2〜5を実装するための土台になる第1ベース層130及び第2ベース層140の計4層構造からなる。また、図示はしないが、パッケージ100内には、例えばタングステン(W)、あるいは銅(Cu)、あるいは銀(Ag)等を主成分とする導体パターンが形成されている。この導体パターンについては、後述する。さらに、表面に露出した部分には、ニッケル(Ni)/金(Au)等のメッキ処理がなされている。
【0054】
以下に、図6を参照して、各層の導体パターンのレイアウトなどを説明する。
【0055】
図6(a)に示すように、第1キャビティ層110上面にはシールリング600の導体パターンが形成されている。この導体パターンを介してコバール等のメタル材からなるメタルリッド200がパッケージ100の上面に取り付けられ、キャビティ300内に実装された各チップ2〜5が密封封止されている。
【0056】
図6(a)に示すように、第1キャビティ層110の内側面(図6(a)では、左側の内側面と下側の内側面)にはサイドキャステレーション141a,142aが設けられ、同図(b)に示すように、第2キャビティ層120の内側面(図6(b)では、左側の内側面と下側の内側面)にもサイドキャステレーション141b,142bが設けられている。なお、サイドキャステレーションとは、パッケージの内壁や外壁に設けられた溝に導体層を設けた電気的な接続路である。これらのサイドキャステレーション141a,142a,141b,142bは、メタルリッド200やシールリング600と第1ベース層130、第2ベース層140の導体パターンを電気的に接続する役割を果たす。
【0057】
第1キャビティ層110のサイドキャステレーション141aの位置と第2キャビティ層120のサイドキャステレーション141bの位置は異なっている。このように位置を異ならせているのは、シールリング600を第1キャビティ層110の上面に半田付けする際の半田流れを防止するためである。第1キャビティ層110のサイドキャステレーション141aと第2キャビティ層120のサイドキャステレーション141bは、当該第2キャビティ層120の上面の接続導体パターン141によって接続されている。同様に、第1キャビティ層110のサイドキャステレーション142aと第2キャビティ層120のサイドキャステレーション142bは、当該第2キャビティ層120の上面の接続導体パターン142によって電気的に接続されている。
【0058】
第1実施形態では、メタルリッド200とシールリング600のグランド電位を効率よく強化するために、第1キャビティ層110と第2キャビティ層120にはそれぞれ2つのサイドキャステレーションを設けているが、サイドキャステレーションを3つ以上設けるようにしてもよい。
【0059】
図6(c)に示すように、第1ベース層130の上面は、ダイアタッチ面150と称され、アンテナ端子に接続されるパターン151、受信フィルタ3のグランドパターン152、受信端子に接続されるパターン154,155、整合回路のグランドパターン156、送信フィルタのグランドパターン157、送信端子に接続されるパターン158、共通接続点のパターン159などの各種の導体パターンが形成されている。送信フィルタチップ2〜ノッチ回路用IPDチップ5は、金(Au)、あるいは、半田等のバンプ500(図4における黒丸がバンプ500を示す。)を介してダイアタッチ面150上の、対応するパターンに接続される。
【0060】
さらに、図6(d)に示すように、第2ベース層140の上面には、アンテナ端子に接続されるパターン141、受信フィルタ3のグランドパターン142、受信端子に接続されるパターン144,145、整合回路のグランドパターン146、送信フィルタのグランドパターン147、送信端子に接続されるパターン148などの各種の導体パターンが形成されている。
【0061】
なお、図6(c),(d)において、図中の白丸は下の層に繋がるビア700を表している。また、図6(c),(d)において、第1、第2ベース層130,140に形成されている導体パターンの内、受信フィルタ3のグランドパターン152,142には斜線を付し、送信フィルタ2のグランドパターン157,147には縦線を付し、整合回路のグランドパターン156,146には横線を付して、他の導体パターンと区別し易くしている。以下の図面においても、必要に応じて同様の線を付している。
【0062】
このように、第1ベース層130と第2ベース層140を設け、各層の上面にグランドパターンを形成するようにしているので、比較的大きな値を必要とする送信フィルタ2のインダクタL1(図1参照)も容易に形成することができる。その一方、小さな値を必要とする受信フィルタ3のインダクタL2〜L7(図1参照)も、広い面積のグランドパターンと複数のビア700(図6(c),(d)のパターン142,147,152,157に白丸で示した部分)の組み合わせにより容易に形成することができる。
【0063】
第1実施形態では、受信フィルタ3のインダクタL2〜L7を小さい値とするために少なくとも2つ以上のビア700を設けている(図6(c),(d)のパターン142,152参照)。第1実施形態では、グランドパターン142,147,152,157の形状やビア700の個数及びその位置などを適当に設定することにより送信フィルタ2のインダクタL1と及び受信フィルタ3のインダクタL2〜L7を比較的容易に適正値にすることができ、これにより送受信帯域の減衰量およびアイソレーション特性を好適な値に調整している。
【0064】
図6(e)に示すように、パッケージの最下面である第2ベース層140の下面には、外部接続端子となるフットパッド161〜168が設けられている。アンテナ端子用フットパッド161、送信端子用フットパッド168、受信端子用フットパッド164,165は、それぞれ、図1中のアンテナ端子7、送信端子8、受信端子9に相当している。
【0065】
なお、図6(e)は、各ベース層の導体パターンと各フットパッドとの位置関係を分かり易くするために、第2ベース層140の上面側から透過して見た下面を示している。また、図6(e)において、フットパッドの内、受信フィルタ3のグランド用フットパッド162,163には斜線を付し、送信フィルタのグランド用フットパッド167には縦線を付し、整合回路のグランド用フットパッド166には横線を付して、他のフットパッドと区別しやすいようにしている。以下の図面においても、必要に応じて同様の線を付している。
【0066】
図1には、受信フィルタ3のグランド用フットパッド162,163、送信フィルタ2のグランド用フットパッド167、整合回路4のグランド用フットパッド166に相当する端子(外部接続用の端子)は、図示されていない。受信フィルタ3の場合は、図1に外部接続用のグランド端子を記載する場合は、図6(e)のグランド用フットパッド162,163に対応して、2個設けることになる。
【0067】
第1実施形態では、受信フィルタ3のグランド用フットパッドが2個設けられているが、3個以上設けられていても良い。また、各グランド用フットパッド162,163,167に接続するためのビア700もそれぞれ2個ずつ設けられているが、それぞれ3個以上ずつ設けられていてもよい。
【0068】
図6(c),(d),(e)に示すように、ダイアタッチ面150と第2ベース層140の上面の各種の導体パターン、およびフットパッド面160の各フットパッドは第1ベース層130、第2ベース層140内に形成されるビア700を通して電気的に接続される。特に、送信フィルタ2のグランドは、パッケージ100内のダイアタッチ面150のグランドパターン157(図6(c)で縦線を付しているパターン)と、このグランドパターン157からビア700を通して接続された第2ベース層140の上面のグランドパターン147(図6(d)で縦線を付しているパターン)と、グランドパターン147からビア700を通して接続された第2ベース層140の下面のフットパッド167(図6(e)で縦線を付しているパターン)とによって構成されている。
【0069】
一方、受信フィルタ3のグランドは、パッケージ100内のダイアタッチ面150のグランドパターン152(図6(c)で斜線を付しているパターン)と、このグランドパターン152から複数のビア700を通して接続された第2ベース層140の上面のグランドパターン142(図6(d)で斜線を付しているパターン)と、このグランドパターン142から複数のビア700を通して接続された2個のフットパッド162,163(図6(e)で斜線を付しているパターン)とによって構成されている。
【0070】
このように、受信フィルタ3のグランドパターン142,152は、送信フィルタ2のグランドパターン147,157に比べ、面積が大きく、ビア700の数もかなり多くなっている。第1実施形態のように、受信フィルタ3に2個並列に接続されたダブルモード型フィルタを使用した場合には、各ダブルモード型フィルタのインダクタL2〜L7(グランドパターンによって生じるインダクタ)の値をフィルタ設計に応じて調整する必要があるが、これはビアを含むグランドパターンのレイアウトによって行われている。すなわち、平衡型の受信端子9を有する受信フィルタ3のグランドパターンのレイアウトは、送信帯域の信号が好適に減衰され、十分なアイソレーション特性が得られるように調整されている。
【0071】
以上の構成により、第1実施形態では、アンテナ分波器1を従来のものより小型・低背化することができる。なお、第1実施形態の構造によれば、アンテナ分波器1を、例えば、3.0mm×2.5mm×0.7mm(0.7mmは高さ)のサイズで実現することができた。このサイズは、従来例で示したサイズ3.8mm×3.8mm×1.4mm(1.4mmは高さ)に対して、容量比で約26%であり、大幅な小型化が可能になった。特に、高さが1/2になったことが小型化に大きく寄与しており、第1実施形態は、低背化による小型化に特に有利である効果を有すると言える。
【0072】
次に、第1実施形態のアンテナ分波器1について行った送・受信端子間のアイソレーション特性について説明する。
【0073】
図7は、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120の内壁に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる4種類のパッケージを示す図である。
【0074】
同図の(a)は、サイドキャステレーションを設けていないタイプである。すなわち、メタルリッド200とシールリング600は第1ベース層130、第2ベース層140の導体パターンと電気的に分離されているタイプである。また、同図の(b)〜(d)は、第1キャビティ層110及び第2キャビティ層120の内壁にそれぞれ2個のサイドキャステレーションを形成したものである。(b)のパッケージは、上述した第1実施形態であり、2箇所のサイドキャステレーション141b、142bはともに、ダイアタッチ面150において受信フィルタ3のグランドパターン152に接続されている。(c),(d)のパッケージは、(b)のパッケージに対して、2箇所のサイドキャステレーションとグランドパターンの接続方法は共通しているが、2箇所のサイドキャステレーションが接続されるグランドパターンが異なっている。すなわち、(c)のパッケージは、サイドキャステレーション143b、144bが送信フィルタ2のグランドパターン157’に接続され、(d)のパッケージは、サイドキャステレーション145b、146bが整合回路4のグランドパターン156’に接続されている。
【0075】
なお、図7では、第2キャビティ層120と第1ベース層130の上面(ダイアタッチ面150)、第2ベース層140の下面(フットパッド面160)の導体パターンおよびサイドキャステレーションを、お互いの位置関係が分かり易いように重ね書きしている。また、第1キャビティ層110のサイドキャステレーションは黒の太線で表し、第2キャビティ層120のサイドキャステレーションは白抜きの太線で表し、サイドキャステレーションの接続パターンは点描を付して表し、各フットパッドは点線で表している。その他の面の導体パターンやリッド等は省略している。以下の図9、図11、図13についても同様である。
【0076】
図8は、図7に示す4種類のパッケージを用いたアンテナ分波器の通過特性とアイソレーション特性を示す図である。なお、波形に付した符号は、図7内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0077】
図8(a)は、図7(a)〜(d)に示す4種類のパッケージの送・受信フィルタの通過特性を示している。
【0078】
同図から分かるように、送信フィルタ2の受信帯域(斜線で示す2110MHz〜2170MHzの帯域)における減衰量は、(a)のパッケージがおよそ35dB、(b)のパッケージがおよそ43dB、(c),(d)のパッケージがおよそ40dBである。一方、受信フィルタ3の送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)における減衰量は、(a)〜(d)のパッケージ間で差は小さいものの、(b)のパッケージが最も良く50dB以上取れている。
【0079】
図8(b)は、図7(a)〜(d)に示す4種類のパッケージの送信端子8と受信端子9と間のアイソレーション特性を示している。
【0080】
同図から、(b)のパッケージが送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)と受信帯域(斜線で示す2110MHz〜2170MHzの帯域)の両帯域で最もアイソレーションが大きいことが分かる。すなわち、(b)のパッケージは、送信帯域でおよそ57db〜67db、受信帯域でおよそ46db〜53dbのアイソレーションを有している。
【0081】
図8(a),(b)から、(b)のパッケージ(第1実施形態のパッケージ)が通過特性とアイソレーション特性のいずれも最も優れた特性を有しているから、第1実施形態の構造、すなわち、メタルリッドとシールリングをサイドキャステレーションによつて受信フィルタ3のグランドパターン142,152に接続する構造を採用すれば、減衰量とアイソレーション特性が優れており,かつ、大幅に小型・低背化をしたアンテナ分波器が可能になる。
【0082】
図9は、グランドパターン間の接続状態が異なる3種類のパッケージを示す図である。
【0083】
同図(e)〜(g)に示すパッケージは、第2キャビティ層120の内壁のサイドキャステレーション147b1,147b2については第1実施形態におけるサイドキャステレーション141b,142bと同じ構造でかつ同じ位置にある。しかし、第1キャビティ層110の内壁のサイドキャステレーション147a1〜147a4が4個ある点、各キャビティ層110,120の外壁にサイドキャステレーション147a5,147a6,147b3,147b4が設けられている点、及び、これらのサイドキャステレーションがすべて1つの接続パターン147で接続されている点で第1実施形態と異なっている。なお、(e)〜(g)に示すパッケージの第1キャビティ層110、第2キャビティ層120の内壁のサイドキャステレーションはすべて同じ構造である。
【0084】
図9(e)に示すパッケージでは、受信フィルタ3のグランドパターン152は、パッケージ100内において、他のグランドパターン156,157と分離されている。図9(f)に示すパッケージでは、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120の外壁の角部にサイドキャステレーション148a,148bが形成されている。このサイドキャステレーション148a,148bは、メタルリッド200及びシールリング600と整合回路4のグランドパターン156とを接続している。従って、受信フィルタ3のグランドパターン152は、パッケージ100内において、整合回路4のグランドパターン156に接続されている。なお、受信フィルタ3のグランドパターン152は、送信フィルタ2のグランドパターン157とは分離されている。
【0085】
さらに、図9(g)に示すパッケージでは、図9(f)に示すパッケージにおいて、第2ベース層140の上面に形成された整合回路4のグランドパターン156”を送信フィルタ2のグランド用フットパット167まで伸ばしている。これにより、整合回路4のグランドパターン156”は、送信フィルタ2のグランドパターン157と接続されている。従って、パッケージ100内において、受信フィルタ3のグランドパターン152と、整合回路4のグランドパターン156”と、送信フィルタのグランドパターン157とが全て接続されている。
【0086】
図10は、図9に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。なお、波形に付した符号は、図9内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0087】
受信帯域(斜線で示す2110MHz〜2170MHzの帯域)のアイソレーションが、図9(f)に示すパッケージを使用した場合が良く見えているが、これは送信フィルタ2のグランドパターンのインダクタL1の値が変化して最適値に近づいたためで、本質的に他のパッケージとの差はない。一方、送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)のアイソレーションは、図9(e)に示すパッケージを使用した場合が最も優れている。受信フィルタ3のグランドパターン152は、パッケージ100内において、他のグランドパターンと分離されている場合にアイソレーション特性が良くなる。
【0088】
図11は、第1キャビティ層及び第2キャビティ層に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【0089】
図11(i)に示すパッケージは、第1実施形態のパッケージであり、第2キャビティ層120に形成されるサイドキャステレーション141b,142bの一部が受信フィルタ3のグランド用のフットパッド162,163に対向している。
【0090】
図11(h)に示すパッケージでは、第1キャビティ層110に形成されるサイドキャステレーション171a,172a、あるいは、サイドキャステレーションの接続パターン171,172の一部が受信フィルタ3のグランド用のフットパッド162,163に対向している。しかし、第2キャビティ層120に形成されるサイドキャステレーション171b、172bの一部が受信フィルタのグランド用のフットパッド162,163に対向していない。
【0091】
図11(j)に示すパッケージでは、第2キャビティ層120のサイドキャステレーション173b、174bは、図11(i)に示すパッケージの第2キャビティ層120のサイドキャステレーション141b、142bと同じ位置であるが、第1キャビティ層110のサイドキャステレーション173a,174aをそれぞれ、サイドキャステレーション173b、174bの真上に配置し、第1キャビティ層110と第2キャビティ層120のサイドキャステレーションが直線状にレイアウトした構造である。この場合にも、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120に形成されるサイドキャステレーションの一部が受信フィルタのグランド用のフットパッド162,163に対向している。なお、サイドキャステレーションを直線状にレイアウトする場合は、はんだ流れ防止のための方策をとる必要がある。
【0092】
図12は、図11に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。なお、波形に付した符号は、図11内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0093】
図12(h)に示すパッケージを使用した場合に比べ、図12(i)または(j)に示すパッケージを使用した場合は、送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)のアイソレーション特性が優れている。つまり、ダイアタッチ面に繋がるサイドキャステレーションの一部が受信フィルタのグランド用のフットパッド162,163に対向している場合、アイソレーション特性が良好となる。
【0094】
図13は、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120および第1ベース層130、第2ベース層140に形成されたサイドキャステレーションのレイアウトの異なる他の3種類のパッケージを示す図である。
【0095】
3種類のパッケージは、外壁に形成されたサイドキャステレーション、あるいは、サイドキャステレーションの接続パターンの少なくとも一部が、受信フィルタのグランド用のフットパッドに対向している点、さらに、外壁に形成されたサイドキャステレーションの少なくとも一部が、受信フィルタのグランド用のフットパッドと直接接続されている点で共通である。なお、外壁に形成されたサイドキャステレーションと直接接続させるために、受信フィルタのグランド用のフットパッドは、第1実施形態のパッケージとは形状が異なっている。
【0096】
図13(k)に示すパッケージでは、第1キャビティ層110に形成されるサイドキャステレーション175a,176aの位置と、第2キャビティ層120、第1ベース層130、第2ベース層140に形成されるサイドキャステレーション175b,176bの位置とが異なっており、両者は第2キャビティ層120の上面の接続パターン175,176で接続されている。図13(l)と図13(m)に示すパッケージは、第1キャビティ層110、第2キャビティ層120及び第1ベース層130、第2ベース層140に直線状にサイドキャステレーションが形成されている点で同じである。一方、図13(l)に示すパッケージでは片方のサイドキャステレーション177a,177bがコーナー部に形成されている点、図13(m)に示すパッケージではサイドキャステレーション179a,179b,180a,180bの幅が太い点で異なっている。
【0097】
図14は、図13に示す3種類のパッケージを用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性を示す図である。なお、同図には、比較用に図11(i)に示すパッケージ(第1実施形態のパッケージ)を用いたアンテナ分波器のアイソレーション特性も記載している。また、波形に付した符号は、図11,図13内の図面に付した符号のパッケージを示している。
【0098】
外壁に形成されたサイドキャステレーションを使用した図13(k),(l),(m)に示すパッケージを使用した場合、内壁に形成されたサイドキャステレーションを使用した図11(i)に示すパッケージを使用した場合よりも送信帯域(斜線で示す1920MHz〜1980MHzの帯域)のアイソレーション特性が優れている。そして、外壁に形成されたサイドキャステレーションの幅は太い方がよりアイソレーション特性の改善効果が大きいことがわかる。
【0099】
図15は、本発明に係るアンテナ分波器の第2実施形態を示す回路構成図である。
【0100】
第2実施形態に係るアンテナ分波器1’は、図1に示すアンテナ分波器1の回路構成に対して、受信フィルタ3’の構成を異ならせたものでする。すなわち、受信フィルタ3’の受信端子9’を不平衡型としたものである。なお、受信端子出力を不平衡型とするために、ダブルモード型弾性表面波フィルタF1’F2’のIDTを同じレイアウトにしている。
【0101】
図16は、本発明に係るアンテナ分波器の第3実施形態を示す回路構成図である。
【0102】
第3実施形態に係るアンテナ分波器1”も、図1に示すアンテナ分波器1の回路構成に対して、受信フィルタ3’の構成を異ならせたものである。すなわち、受信フィルタ3’として、送信フィルタ2と同じラダー型フィルタを使用したものである。第3実施形態に係るアンテナ分波器1”も、受信フィルタ3”の受信端子9”は不平衡型となっている。
【0103】
第2実施形態及び第3実施形態の回路構成により、アンテナ端子、送信端子、受信端子がすべて不平衡型であるアンテナ分波器を提供できる。なお、回路構成の詳細については、第1実施形態に示したものと同じなので省略する。
【0104】
以上のように、本発明によれば、パッケージ内のサイドキャステレーションのレイアウトを調整することにより、通信帯域外の減衰特性や送受信端子間のアイソレーション特性に優れ,かつ、従来よりも大幅に小型化及び低背化を図ったアンテナ分波器を実現することができる。
【0105】
上記実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンは、他のグランドパターンとは分離されていることを特徴とするアンテナ分波器。
(付記2)
前記パッケージは、前記送信フィルタと前記受信フィルタとを収容するキャビティ部と、シールリング部とを有しており、前記シールリング部は、前記受信フィルタ用のグランドパターンと接続されていることを特徴とする付記1に記載のアンテナ分波器。
(付記3)
前記シールリング部と前記受信フィルタ用のグランドパターンとの接続は、前記パッケージの内壁に形成されたサイドキャステレーションを含む導体パターンによりなされていることを特徴とする付記2に記載のアンテナ分波器。
(付記4)
前記シールリング部と前記受信フィルタ用のグランドパターンとの接続は、前記パッケージの外壁に形成されたサイドキャステレーションを含む導体パターンによりなされていることを特徴とする付記2または3に記載のアンテナ分波器。
(付記5)
前記パッケージには、前記サイドキャステレーションが少なくとも2個形成されていることを特徴とする付記3または4に記載のアンテナ分波器。
(付記6)
前記キャビティ部の側壁は複数の層によって形成され、各層にそれぞれ形成された前記サイドキャステレーションは、層の境界に形成された接続パターンにより接続され、前記サイドキャステレーション若しくは前記接続パターンの少なくとも一部は、前記パッケージの下面に形成された前記受信フィルタのグランド用のフットパッドに対向していることを特徴とする付記3〜5のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記7)
前記対向している部分には、少なくとも、前記キャビティ部の前記送信フィルタ及び前記受信フィルタが実装されるダイアタッチ面に直接接続する前記サイドキャステレーションの一部が含まれていることを特徴とする付記6に記載のアンテナ分波器。
(付記8)
前記サイドキャステレーションの少なくとも一部は、前記受信フィルタのグランド用のフットパッドに直接接続されていることを特徴とする付記6または7に記載のアンテナ分波器。
(付記9)
前記送信フィルタのグランドパターンは、前記パッケージ内の前記ダイアタッチ面の導体パターンと、前記ダイアタッチ面の下層面に設けられた導体パターンと、前記2つの導体パターンを接続するビアとを含むことを特徴とする付記1〜8のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記10)
前記受信フィルタのグランドパターンは、前記パッケージ内の前記ダイアタッチ面の導体パターンと、前記ダイアタッチ面の下層面に設けられた導体パターンと、前記2つの導体パターンを接続するビアとを含むことを特徴とする付記1〜9のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記11)
前記受信フィルタのグランドパターンが有するビアは、2つ以上であることを特徴とする付記10に記載のアンテナ分波器。
(付記12)
前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドは、2つ以上のフットパッドを有することを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記13)
前記パッケージ内において、少なくとも1つの前記受信フィルタのグランド用のフットパッドに接続されるビアは少なくとも2つ以上であることを特徴とする付記1〜12のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記14)
アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と平衡型の受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、前記送信フィルタはラダー型フィルタであり、前記受信フィルタは複数の並列に接続されたダブルモード型フィルタと、前記ダブルモード型フィルタと前記アンテナ端子との間に直列に接続された複数の共振器とを含むことを特徴とするアンテナ分波器。(付記15)
前記送信フィルタは、前記アンテナ端子側に複数の直列共振器が直列に接続された構成を有することを特徴とする付記14に記載のアンテナ分波器。
(付記16)
前記送信フィルタの前記ラダー型フィルタを構成する共振器は圧電薄膜共振器であることを特徴とする付記14または15に記載のアンテナ分波器。
(付記17)
前記送信フィルタと前記受信フィルタとの共通接続点と、前記アンテナ端子との間に並列に接続されたインダクタを更に有していることを特徴とする付記14〜16のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記18)
前記送信フィルタと前記受信フィルタとの共通接続点と、前記アンテナ端子との間に直列に接続されたノッチ回路を更に有していることを特徴とする付記14〜17のずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記19)
前記送信フィルタは、ラダー型フィルタであることを特徴とする付記1〜13記載のアンテナ分波器。
(付記20)
前記ラダー型フィルタは、複数の並列共振器を含み、前記複数の並列共振器のグランド側端子が共通化された後、インダクタが挿入されていることを特徴とする付記19記載のアンテナ分波器。
(付記21)
前記送信フィルタのアンテナ端子側の共振器は直列共振器であることを特徴とする付記19または20に記載のアンテナ分波器。
(付記22)
前記送信フィルタの送信端子は不平衡型であることを特徴とする付記1〜13,19〜21のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記23)
前記受信フィルタは、ラダー型フィルタであることを特徴とする付記1〜13,19〜22に記載のアンテナ分波器。
前記受信フィルタは、縦モード結合型フィルタを含むことを特徴とする付記1〜13,19〜22に記載のアンテナ分波器。
(付記25)
前記受信フィルタは、さらに、縦モード結合型フィルタとアンテナ端子間に直列に接続された共振器を含むことを特徴とする付記24に記載のアンテナ分波器。
(付記26)
前記縦モード結合型フィルタは、複数の並列に接続されたダブルモード型フィルタから構成されていることを特徴とする付記24または25に記載のアンテナ分波器。
(付記27)
前記受信フィルタの受信端子は不平衡型であることを特徴とする付記1〜13,19〜26のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記28)
前記受信フィルタの受信端子は平衡型であることを特徴とする付記1〜13,19〜22,24〜26のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記29)
前記送信フィルタまたは前記受信フィルタで使用される共振器は、圧電薄膜共振器、弾性表面波共振器、境界波共振器のうちのいずれかで構成されていることを特徴とする付記1〜13,19〜28のいずれかに記載のアンテナ分波器。(付記30)
前記送信フィルタと前記受信フィルタのアンテナ端子側の直列共振器のうち少なくとも一方は、少なくとも2個直列に接続されていることを特徴とする付記1〜13,19〜29のいずれかに記載のアンテナ分波器。
(付記31)
前記受信フィルタで使用される縦モード結合型フィルタは、弾性表面波、境界波のうちのいずれかのモードが使用されることを特徴とする付記24〜30のいずれかに記載のアンテナ分波器。
【0106】
(付記32)
前記アンテナ分波器は、さらに集積型受動素子のチップを具備することを特徴とする付記1〜13,19〜31のいずれかに記載のアンテナ分波器。
【0107】
(付記33)
前記集積型受動素子は少なくとも整合回路を含むことを特徴とする付記32に記載のアンテナ分波器。
(付記34)
前記集積型受動素子は少なくともノッチ回路を含むことを特徴とする付記32または33に記載のアンテナ分波器。
【符号の説明】
【0108】
1,1’,1” アンテナ分波器
2 送信フィルタチップ(送信フィルタ)
3,3’,3” 受信フィルタチップ(受信フィルタ)
4 整合回路用IPDチップ(整合回路)
5 ノッチ回路用IPDチップ(ノッチ回路)
6 共通接続点
7 アンテナ端子
8 送信端子
9,9’,9” 受信端子
100 セラミックパッケージ
110 第1キャビティ層
120 第2キャビティ層
130 第1ベース層
140 第2ベース層
150 ダイアタッチ面
160 フットパッド面
200 メタルリッド
300 キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、
前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンは、他のグランドパターンとは分離されており、2つ以上のフットパッドに接続されていることを特徴とするアンテナ分波器。
【請求項1】
アンテナ端子と送信端子との間に配置される送信フィルタと前記アンテナ端子と受信端子との間に配置される受信フィルタとをパッケージに実装してなるアンテナ分波器であって、
前記パッケージ内において、受信フィルタ用のグランドパターンは、他のグランドパターンとは分離されており、2つ以上のフットパッドに接続されていることを特徴とするアンテナ分波器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−9411(P2013−9411A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−183937(P2012−183937)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2007−111995(P2007−111995)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【分割の表示】特願2007−111995(P2007−111995)の分割
【原出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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