説明

インサート樹脂成形品およびその製造方法

【課題】金属製のインサート部材と樹脂成形部との境界面に硫黄を含有する接着層を備える密着性の高いインサート樹脂成形品および該製品を製造する方法を提供する。また、該成形品を備える電池の提供を他の目的とする。
【解決手段】本発明により提供される金属製のインサート部材64と熱可塑性樹脂から成る樹脂成形部70との境界面に、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層90を備えるインサート樹脂成形品の製造方法は、上記インサート部材64と上記樹脂成形部70との境界面に上記接着層90が形成されたインサート成形体を用意し、該成形体を所定の時間加熱することにより該接着層90中の遊離硫黄と該樹脂成形部70を構成する熱可塑性樹脂とを結合させて、加熱前よりも該接着層90中の遊離硫黄を減少させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート樹脂成形品およびその製造方法に関する。詳しくは、硫黄原子を含む成分を含有する接着層を金属製のインサート部材と樹脂成形部との境界面に備えるインサート樹脂成形品およびその製造方法に関する。また、該成形品を電極端子取出し部に備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート樹脂成形品は、成形用金型内にインサート部材を装填し、射出成形などによって溶融樹脂を注入して固化させることによって製造される複合物である。この種のインサート樹脂成形品に用いられるインサート部材としては、金属、プラスチック、木材、ガラス、素子等、多様な材料が挙げられる。特に、金属をインサート部材とする該成形品は、それぞれ異なる物性、即ち樹脂の絶縁性と金属の導電性とを利用した自動車関連部品や電気電子部品等において欠かせないものとなっている。
【0003】
金属をインサート部材とするインサート樹脂成形品の一形態として、金属の一部が樹脂成形部より外部に露出した形状が挙げられる。例えば、電池の電極端子取出し部には、かかる形状に形成された該成形品が用いられている。特に、リチウムイオン電池等の二次電池の場合、充放電による温度変化が繰り返される環境に配置されるため、金属と樹脂の熱膨張係数の違いからインサート部材と樹脂成形部との境界面にクラックや剥離を生じ易く、これにより密着性が損なわれ、充放電特性が低下する虞がある。
金属をインサート部材とするインサート樹脂成形品に関する関連技術として、特許文献1が挙げられる。特許文献1に記載の技術では、インサート部材と樹脂部との間に粘度を規定した充填剤を装填することによって密着性を高め、界面隙間への水分等の浸入を抑制している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−100191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記インサート部材と樹脂成形部との境界面に備えられる充填剤、或いは接着剤には硫黄成分が含まれるものが多く存在する。この場合、外気の水分(典型的にはインサート樹脂成形品が設置される環境下に起因する水分、例えば水中も含む概念)と該硫黄成分が緩やかに反応して硫酸を生じ、亀裂やひび割れを引き起こす虞がある。また、これにより、金属のインサート部材と樹脂部とが剥離すると、かかる隙間に水分等が浸入して金属が腐食するため、所望する機能(密着性、絶縁性等)を果たし得なくなる。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、硫黄を含有する接着層を金属製のインサート部材と樹脂成形部との境界面に備える密着性の高いインサート樹脂成形品および該製品を製造する方法を提供することである。また、該成形品を備える電池の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するべく本発明によって、金属製のインサート部材と熱可塑性樹脂から成る樹脂成形部との境界面に、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層を備える、インサート樹脂成形品の製造方法が提供される。
かかる製造方法は、上記インサート部材と上記樹脂成形部との境界面に上記接着層が形成されたインサート成形体を用意し、該成形体を所定の時間加熱することにより該接着層中の遊離硫黄と該樹脂成形部を構成する熱可塑性樹脂とを結合させて、加熱前よりも該接着層中の遊離硫黄を減少させることを特徴とする。
【0008】
金属製のインサート部材と樹脂成形部との密着性を高めるために境界面に配置された硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層には、化学的に不安定な状態で残留している遊離硫黄が存在する。遊離硫黄が接着層に多く含まれていると、外気の水分と遊離硫黄とが緩やかに反応することによって硫酸を生じ、亀裂やひび割れを引き起こす虞がある。本発明では、インサート成形後のインサート成形体をその後所定の時間加熱処理することによって、接着層中の遊離硫黄と樹脂成形部を構成する熱可塑性樹脂とを結合(化学的な結合または吸着も含む)させている。これにより、接着層中の遊離硫黄を減少するため、硫酸が生成され難くなる。その結果、金属製のインサート部材と樹脂成形部との密着性が長期間持続したインサート樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0009】
本発明によって提供されるインサート樹脂成形品の製造方法の好ましい一態様では、上記インサート部材が銅製の部材であり、上記樹脂成形部がポリフェニレンスルフィドから成る上記インサート成形体を、85〜150℃で1時間以上加熱することを特徴とする。
インサート部材として銅製のものを用意し、ポリフェニレンスルフィドを溶融させてインサート成形されたインサート成形体を、85〜150℃で1時間以上加熱処理することによって、接着層中の遊離硫黄を減少させることができる。その結果、インサート部材と樹脂成形部との密着性が長期間持続したインサート樹脂成形品の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明は金属製のインサート部材と熱可塑性樹脂から成る樹脂成形部との境界面に、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層を備える、インサート樹脂成形品を提供する。インサート成形後の加熱処理によって、該加熱前よりも上記接着層に含まれる遊離硫黄の量を減少させていることを特徴とする。
架橋されずに残留している遊離硫黄が接着層中に多く存在すると、外気の水分と緩やかに反応することにより硫酸を生じ、亀裂やひび割れを引き起こす虞がある。本発明では、インサート部材が装填された成形金型に溶融樹脂が充填されてインサート成形された後、インサート成形体が加熱処理されることによって、金属製のインサート部材と樹脂成形部との境界面に予め備えられた接着層中の遊離硫黄は、熱可塑性樹脂から構成される樹脂成形部と結合するため減少する。これにより、亀裂やひび割れを引き起こす誘因となる遊離硫黄が減少させられ、金属性のインサート部材と樹脂成形部との密着性が長期間持続したインサート樹脂成形品が提供される。
【0011】
本発明によって提供されるインサート樹脂成形品の好ましい一態様では、上記インサート部材が銅製の部材であり、上記樹脂成形部がポリフェニレンスルフィドから成る上記インサート成形体であって、所定のインサート成形後、85〜150℃で1時間以上加熱されることを特徴とする。
銅製のインサート部材と、熱可塑性樹脂の一つであるポリフェニレンスルフィドで構成された樹脂成形部とを備えるインサート成形体は、加熱処理されることによって接着層中の遊離硫黄が減少するため、銅とポリフェニレンスルフィドとの密着性が高められる。その結果、接着効果を長期間持続したインサート樹脂成形品が提供される。
【0012】
また、本発明は、他の側面として、ここに開示されるインサート樹脂成形品または上記製法によって得られたインサート樹脂成形品を備える電池を提供する。
また、本発明によって提供される電池の好ましい一態様では、電極体ユニットと、該電極体ユニットを収容するためのケースと、該電極体ユニットに接続された電極端子とを備える電池であって、上記インサート樹脂成形品は、上記電極端子の一部を上記ケース外部に取り出すための電極端子取出し部を構成している。
【0013】
なお、本明細書において「電池」とは、所定の電気エネルギーを取り出し得る蓄電装置をいい、特定の蓄電機構(電極体や電解質の構成)に限定されず、一次電池および二次電池を含む概念である。リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等のいわゆる化学電池の他、電気二重層キャパシタのように種々の化学電池と同様の産業分野で同様に使用され得る蓄電素子(物理電池)は、ここでいう電池に包含される典型例である。
また、本明細書において「電極体ユニット」とは、少なくとも一つずつの正極および負極を含む電池の主体を成す構造体をいう。
また、本明細書において「ケース」とは、ここで開示される電池を構成する一部材であって、電極体ユニットおよび電解液を収容し、開口部(即ち電極体ユニット収容口)を有する電池用筐体をいう。
また、「電極端子取出し部」とは、電池ケースの一部に設けられた正負極のそれぞれの電極端子が、ケースから突出した状態で該ケースの一部に固定されている部分であって、外部との電気的な接続を担う部分をいう。
【0014】
ここに開示される上記インサート樹脂成形品が電池、典型的には上記電極端子取出し部を構成することにより、高い密閉性(封止性)と絶縁性を備えた電池が提供される。こうして提供される電池は、例えば車両(ハイブリッド自動車等)の動力源として好適に利用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
本発明のインサート樹脂成形品は、金属製のインサート部材と熱可塑性樹脂から成る樹脂成形部との境界面に硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層を備えることによって特徴付けられる。従って、以下に本発明の好適な実施形態の一つとして、電池(典型的には電極端子取出し部)に備えられるインサート樹脂成形品を例に用いて説明するが、かかる実施形態に限定するものではなく、用途や備えられる電子機器部品等によって適切にその形状および大きさを変更することができる。
なお、以下、角型形状のリチウムイオン電池を例にして、該電池に備えられるインサート樹脂成形品について詳細に説明するが、本発明をかかる実施形態に記載されたものに限定することを意図したものではない。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態を説明する。図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明する。
図1および図2を参照にしつつ、本実施形態に係る電池100(以下、単に「電池」ということもある。)について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電池100の構造を模式的に示す断面図であり、図2は、図1内の点線IIで囲んだ部分となる電極端子取出し部30を拡大して示す模式的な断面図である。
【0018】
図1および図2に示されるように、本実施形態に係る電池100は、大まかに言って、電極体ユニット80と、該電極体ユニット80および適当な電解液を内部に収容する直方体形状のケース10とを備える。そして、該ケース10の開口部12は、該ケース10の底面とほぼ同一のサイズ・形状であってケース10の一面を構成する蓋体20によって密閉されている。
また、該ケース10のうち蓋体20の長手方向の両端部付近において、外部接続用の正極端子44と負極端子64とが設けられている。そして、正極端子44および負極端子64の一部は蓋体20を挿通し、該蓋体20の表面側から突出した状態で該蓋体20の電極端子取出し部30において樹脂成形部70とともに固定されている。さらに、正極端子44および負極端子64は、ケース10内部に収容された電極体ユニット80の正極集電体42および負極集電体62にそれぞれ接合されることにより、外部との電気的な接続が構成されている。
なお、以下の説明においては、主として負極60側について本実施形態の特徴部分を説明するが、本発明に係る電極端子取出し部30の適用は負極60側に限定されるものではなく、正極40側と負極60側の両方に適用することも、正極40側または負極60側のどちらか一方のみに適用することもできる。本実施形態に係る電池100では、正極40側および負極60側の電極端子取出し部30の構造は実質的に同じである。
【0019】
本実施形態では、上記電極端子取出し部30にインサート樹脂成形品が備えられている。
インサート樹脂成形品は、所謂異なる素材同士(本実施形態では、それぞれインサート部材と樹脂成形部)の複合体であり、成形用金型内に予めインサート部材を装填し、溶融樹脂を該金型に注入して固化させる射出成形などのインサート成形によって、インサート部材と樹脂成形部とが一体的に成形されるものである。本実施形態のインサート部材では、金属製の部材が用いられている。また、該インサート部材となる電極端子44,64と樹脂成形部70との境界面には、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層90が備えられている。
なお、詳細については後述するが、本実施形態では、さらに上記構成の「インサート成形体(複合体)」をインサート成形した後、該成形体を加熱処理して得られる「インサート樹脂成形品」を電極端子取出し部30に備える。
【0020】
まず、かかるインサート樹脂成形品を備える本実施形態の電極端子取出し部30の構成について、負極60側を例に説明する。
本実施形態に係る電極端子取出し部30は、図2に示すように、蓋本体22の平面部分から僅かに立ち上がるように形成された円筒状の挿通部分24の中心軸部分に、負極端子64が挿通されて該蓋体20から突出している。つまり、負極端子64が蓋本体22の平面方向と直交する向きで挿通部分24の円孔に挿通されて、電極端子取出し部30が構成されている。
そして、樹脂成形部70は、上記負極端子64が蓋本体22を挿通する部分を包み込むようにして、該負極端子64の外周面と蓋本体22の円筒状の挿通部分24とを覆っている。したがって、電極端子取出し部30では、負極端子64が蓋本体22に挿通された部分全体が樹脂成形部70で覆われた構成を備えている。
【0021】
次に、上記電極取り出し部30におけるインサート樹脂成形品を構成する部材の構成材料についてそれぞれ説明する。
本実施形態に係るインサート部材の構成材料は、金属である。該インサート部材としては、アルミニウム、銅、鉄、スズ、ニッケル、亜鉛等が例示されるが、アルミニウム合金またはステンレス鋼等の合金でもよい。また、表面がアルミニウム、スズ、ニッケル、金等でメッキ加工された部材についても好ましく用いることができる。
本実施形態では、電極端子44,64をインサート部材とする。その構成材料としては、上記のとおり金属製の材料が好ましく使用される。それぞれの電極端子44,64はケース10内部で電極集電体42,62に接合されて外部との電気的な接続が形成されるためである。例えば、負極端子64の構成材料としては、該端子74に接続される負極60の負極集電体62と同種の金属材料(例えば銅)を好ましく用いることができる。一方、正極端子44の構成材料としては、該端子44に接続される正極40の正極集電体42と同種の金属材料(例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金)を好ましく用いることができる。
【0022】
また、蓋体20の構成材料としては、軽量で熱伝導性が良い金属材料を好適に使用することができる。このような金属材料として、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などが挙げられる。特に好ましい材料は、軽量で熱伝導性の良いアルミニウムまたはアルミニウム合金である。
蓋体20を構成する構成材料はケース10を構成する成形材料と同じ材料でも良く、異なる材料を用いて構成されていても構わない。ただし、同じ材料で構成されたケース10および蓋体20は、熱伝導率や溶融温度等の諸物性が同じであるため、例えばレーザ溶接の熱による溶融に偏りが生じないため好ましい。本実施形態では、ケース10および蓋体20は、いずれもアルミニウムで構成されている。なお、上記形状のケース10および蓋体20は、適当な金属材料からなる板材を用いて、プレス加工等によって所望の形状に成形される。
【0023】
さらに、樹脂成形部70の構成材料としては、射出成形等のインサート成形が可能であり、かつ絶縁材料となる熱可塑性樹脂が好ましい。汎用樹脂でもエンジニアリング樹脂(所謂エンプラ)でも良く、結晶性樹脂でも非晶質樹脂でも良い。スーパーエンジニアリングプラスチックは特に好ましい。
例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)等が挙げられる。これらの他、種々のグレードのポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を用いることが可能である。さらに、より好ましくは、高強度であり耐熱温度が更に高いポリフェニレンスルフィド(PPS)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
上記の他、樹脂成形部70を二色成形等することによって異なる材料を用いることも可能である。その場合、熱可塑性樹脂の他、種々の熱可塑性エラストマー(TPE)を樹脂成形部70の構成材料として好適に用いることができる。スチレン系、オレフィン系、ビニル系、エステル系等の種々のTPEが挙げられるが、例えば、耐熱性、耐油性、耐薬品性、強度等の観点から、適切なTPEを選択することが可能である。
その他、必要に応じて種々の補助成分が含有されていてもよい。かかる補助成分としては、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、難燃剤、分散剤、抗菌剤、帯電防止剤等が例示される。
本実施形態では、樹脂成形部70の構成材料として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用した。
【0024】
また、上記負極端子64と上記樹脂成形部70との間の境界面には接着層90が配置され、かかる境界面の密着性が高められている。
上述のとおり、負極端子64はケース10内部で負極集電体62に接続されているため、電池100の使用時(通電している時)には負極端子64の金属温度は上昇し、未使用時には放冷されて下降する。特に、二次電池の場合では、充放電のたびに負極端子64の温度が上下変化し、かつ該変化が長期的に繰り返し行われるため、負極端子64と隣接する樹脂成形部70ではこの温度変化の影響を受け易い。
さらに、樹脂成形部70を形成する熱可塑性樹脂と負極端子64の金属はそれぞれ熱膨膨張係数が異なる。そのため、負極端子64の温度変化の繰り返しによって徐々に両者の密着性が低下し、境界付近にクラックや剥離を生じ易い。そこで、本実施形態では、金属で形成された負極端子64と、該端子64に接する絶縁性部材から成る樹脂成形部70との長期的な密着性を保持させるために、該境界面に接着層90が設けられている。
なお、本実施形態では、電極端子取出し部30は、負極端子64と樹脂成形部70との境界面にのみ接着層90が形成された構成を備え、蓋本体22(典型的には挿通部分24)と該樹脂成形部70との境界面には、上記負極端子64との境界面のように接着層90が形成されていない。それは、蓋本体22の該挿通部分24は、インサート成形で一体的に形成されるものの、負極端子64のように直接通電される部材でないことから、温度の上下変化の影響を受けないためである。しかしながら、かかる接着層90が蓋本体22と樹脂成形部70との境界面にも形成されるようにインサート成形することも可能である。
【0025】
また、上記接着層90は、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成されている。かかる接着剤としては、従来公知の市販される接着剤を適宜選択することができる。硫黄原子を含む成分を含有する接着剤は、硫黄系架橋(加硫)剤を含むエラストマー系の接着剤に例示されるように、例えば、無機硫黄(例えば粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄)、有機硫黄化合物(例えばモルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド)等を含有する接着剤が挙げられる。これらのうち一種を単独で使用されていてもよく、二種以上を併用しているものであってもよい。また、上記架橋剤(加硫剤)の他、硬度や耐久性等の特性を向上させるために通常使用される添加剤、例えば、架橋促進剤(加硫助剤)、加硫促進助剤、軟化剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、補強剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、発泡剤、カップリング剤、分散剤、離型剤などに硫黄原子を含む成分が添加されていてもよい。
また、ゴム成分としては、広範囲の天然および合成ゴムが使用される。その代表的な例として、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、水素添加ニトリルゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム(NIR)、アクリロニトリル−イソプレン−ブタジエンゴム(NBIR)、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム(EAM)等が挙げられる。これらのゴムには、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸などの酸をコモノマーとして含有させたカルボキシル化ゴム(カルボキシル化ニトリルゴム(XNBR))等の酸変性ゴム、その他の変性ゴムも含まれる。これらのゴムは、一種を単独で使用されていてもよく、二種以上を混合して使用されていてもよい。
本実施形態では、トリアジン化合物(チオール基等の硫黄原子を置換基に有するトリアジン誘導体またはその塩)を含有するTRIシステム(東亜電化社製)を使用した。トリアジン化合物は、主に耐熱性、耐油性に優れたアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等の加硫剤や種々の性状向上のための添加剤として一般に使用されている。
【0026】
次に、上記電極取り出し部30を構成するインサート樹脂成形品の製造方法について説明する。
まず、インサート部材となる銅製の負極端子64を用意し、樹脂成形部70との境界面に相当する部分にトリアジン化合物を含む上記接着剤(TRIシステム、東亜電化社製)を付与(典型的には浸漬)した。そして、該接着剤が付与された負極端子64を蓋体20の挿通部分24に形成された円孔に挿通した。ここで、負極端子64を蓋体20に挿通する前に、予め電極体ユニット80の負極集電体62と負極端子64とを接続しておいてもよいが、挿通時における取り扱い易さを考えて、負極端子64を蓋本体22に挿通してから負極集電体62に接続する順番で行うことが好ましい。
そして、蓋体20に挿通された負極端子64を射出成形用の金型内の所定の位置に載置(装填)した。装填した後、型を閉じて加熱溶融した液状のポリフェニレンスルフィドを金型内に射出して溶融樹脂を充填させた。それから、型を閉じた状態で所定の時間維持し、冷却して固化させ、銅製のインサート部材と一体化したポリフェニレンスルフィド樹脂の複合体であるインサート成形体を成形した。
なお、かかるインサート成形を実施するために使用される装置としては、本発明を特徴付けるものではなく、一般的な射出成形機を使用することができる。
【0027】
本実施形態では、インサート成形後、上記成形したインサート成形体の複合体を加熱処理した。加熱温度としては、85〜150℃が好ましい。なお、より好ましくは120〜150℃、例えば120℃である。
さらに、上記加熱温度でおよそ1時間以上加熱するのが好ましい。特に好ましくは5時間以上の加熱である。
インサート成形後は、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層90には、架橋されずに残留している遊離硫黄が存在する。しかしながら、上記加熱処理を行うことによって、接着層90中の遊離硫黄と樹脂成形部70を構成する熱可塑性樹脂(本実施形態ではポリフェニレンスルフィド)とが共有結合または吸着するなどして、接着層90中の遊離硫黄が減少する。接着層90中の遊離硫黄の存在は短期的には問題を生じないが、遊離硫黄が接着層90に多く含まれていると、外気の水分と遊離硫黄とが緩やかに反応することによって硫酸を生じ、密着性が低下して亀裂やひび割れを引き起こす虞がある。本実施形態では、インサート成形後に加熱処理することにより接着層90中の遊離硫黄が減少しているため、硫酸が生成され難くなっている。その結果、負極端子64と樹脂成形部70との密着性が長期間持続したインサート樹脂成形品となり得る。
本実施形態では、インサート成形体を120℃で5時間加熱処理して遊離硫黄を減少させたインサート樹脂成形品を電極端子取出し部30に用いた。
【0028】
以上、負極70側の電極端子取出し部30に用いられるインサート樹脂成形品について説明したが、正極60側の電極端子取出し部30についても、負極70側と全く同様である。
また、その他の構成要素であるケース10、電極体ユニット80、および電解液等は、本発明の目的を達成し得る限りにおいて特に限定されるものではないが、本実施形態では、捲回型の電極体ユニットを備えるリチウムイオン電池100を構築したので、以下、その他の構成要素について説明する。ただし、本発明を係る実施形態に限定することを意図したものではない。
【0029】
ケース10は、電極体ユニット80を収容し得る形状であればよく、円筒形状、角型形状等、特に限定されない。また、ケース10は、少なくとも一方の端部が開口しており、当該開口部12から電極体ユニット80を収容できるように構成されていればよい。図1に示されるように、本実施形態では角型形状のケース10を用いた。該ケース10は、一方の端部に開口部12を備える有底の角型形状を有しており、該開口部12の周縁部は長方形状となっている。
ケース10の構成材料としては、軽量で熱伝導性が良く且つ加工性も良好な金属材料により構成されることが好ましい。このような金属材料として、例えばアルミニウム合金(純アルミを含む)、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等を好ましく用いることができる。
【0030】
上記ケース10の内部には、図1に示されるように、電極体ユニット80が収容されている。該電極体ユニット80は、長尺シート状の正極集電体42の表面に正極活物質層を有する正極シート、長尺シート状の負極集電体62の表面に負極活物質層を有する負極シート、および長尺シート状のセパレータ82からなり、正極シートおよび負極シートを2枚のセパレータと共に重ね合わせて捲回し、得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって扁平形状に成形されている。セパレータ82としては、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。
そして、正極集電体42の端部に正極端子44が、負極集電体62の端部には負極端子64がそれぞれ接合され、上記扁平形状に形成された電極体ユニット80の正極シートまたは負極シートと電気的に接続されている。電極端子44,64と電極集電体42,62とのそれぞれの接合方法としては、例えば超音波溶接法、抵抗溶接法等の各種溶接法を用いることができる。
【0031】
正極シートを構成する正極集電体42としては、導電性の良好な金属からなるシート材を用いることができる。例えば、アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする合金製の導電性部材が挙げられる。また、正極活物質層の主成分たる電極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えばリチウム遷移金属複合酸化物等を好ましく用いることができる。かかるリチウム遷移金属複合酸化物の代表例として、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物およびリチウムマンガン系複合酸化物が挙げられる。
一方、負極シートを構成する負極集電体62としては、例えば銅等の金属からなるシート材を用いることができる。例えば、銅箔が好ましい導電性部材として挙げられる。また、負極活物質層の主成分たる電極活物質としては、従来からリチウムイオン電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。例えば、グラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料が挙げられる。
正極シートおよび負極シートは、上記電極活物質を適当な溶媒に分散させた組成物をそれぞれの集電体に付与し、該組成物を乾燥させることにより好ましく作製され得る。上記溶媒としては、例えば、水等の水系溶媒、或いはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン、トルエン等の非水系溶媒を好適に用いることができる。
また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のポリマーから適宜選択される一種または二種以上のポリマー材料を、結着剤や増粘剤などの各種添加剤として好適に用いることができる。なお、上記電極活物質を適当な溶媒に分散させた組成物をそれぞれの集電体42,62に付与(典型的には塗布)する操作は、例えば、適当な塗布装置(スリットコーター、ダイコーター、コンマコーター等)を使用して、所定量の組成物を塗布することができる。
【0032】
上記電極端子44,64と電極集電体42,62とがそれぞれ接合した上記電極体ユニット80をケース10に収容した後、電解液を該ケース10内に注入する。リチウムイオン電池用電解液としては、例えば、非水系溶媒と該溶媒に添加され溶解しているリチウム塩(支持塩)とを含む非水電解液が挙げられる。
非水系溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン等の、一般に非水系電池(リチウムイオン二次電池等)の電解液等に使用し得るものとして知られている非水系溶媒から選択される一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
電解液に含有させる支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiCSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI等から選択される一種または二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。
上記電解液を注入後、該ケース10の開口部12を覆う蓋体20と該ケースとの周縁がレーザ溶接等によって接合されることにより、本発明の好ましい一実施形態である角型形状のリチウムイオン電池100が構築される。
【0033】
[加熱処理の評価試験]
インサート成形後の加熱処理の温度と時間の評価試験を行った。
まず、銅製のインサート部材を用意し、トリアジン化合物を含む上記接着剤(TRIシステム、東亜電化社製)に浸漬した。浸漬した該部材を金型内に装填し、加熱して溶融したポリフェニレンスルフィド(PPS)を金型内に充填させて、突合せ型のインサート成形体(銅とポリフェニレンスルフィドの複合体)を形成した。インサート成形後、それぞれ異なる温度と時間で加熱処理を行った。
各サンプルとして、加熱処理をしない、即ち室温保存のもの(サンプル1)と、種々の加熱処理を行ったもの(サンプル2〜8)を用意した。加熱処理のサンプルとしては、加熱温度と加熱時間の異なる次のサンプルをそれぞれ用意した。85℃で5時間(サンプル2)、120℃で1時間(サンプル3)、120℃で5時間(サンプル4)、150℃で1時間(サンプル5)、150℃で5時間(サンプル6)、200℃で1時間(サンプル7)、および200℃で5時間(サンプル8)とした。
そして、それぞれのサンプルを加熱処理した後、調製した電解液に80℃で220時間の浸漬を行い、市販の引張試験機を用いてそれぞれのサンプルの引張強度を測定した。試験用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との1:1(体積比)混合溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた組成の非水電解液を用いた。図3に引張強度(MPa)の測定結果を示す。
【0034】
図3に示されるように、最も引張強度(MPa)が大きかったのは、インサート成形後、120℃で5時間加熱処理したサンプル4であった。引張強度は凡そ25MPaであり、加熱処理を行わなかったサンプル1よりも、引張強度が約15%大きかった。
また、サンプル4に次いで引張強度が大きかったのは、120℃で1時間の加熱処理をしたサンプル3と、150℃で5時間の加熱処理をしたサンプル6であった。両サンプルとも、ほぼ同じ引張強度であった。
なお、85℃で5時間加熱処理したサンプル2の引張強度は、加熱処理を行わなかったサンプル1より僅かに大きかった。また、200℃で1時間、および200℃で5時間加熱処理したサンプル7および8では、加熱処理を行わなかったサンプル1よりも引張強度が小さかった。
このことから、インサート成形後に好適な加熱処理することによって、引張強度が増すことが示された。即ち、インサート部材と樹脂成形部との密着性が向上することが示唆される。またその最も好適な条件は、120℃で5時間の加熱処理であった。
【0035】
[X線光電子分光分析]
次に、加熱処理を行わなかった上記サンプル1と、引張強度が最も大きかった120℃で5時間加熱処理した上記サンプル4について、X線光電子分光分析装置を用いてそれぞれ解析した。図4は、X線光電子分光分析によって解析された結果を示す図である。上段がサンプル1(加熱処理無し)、下段がサンプル4(加熱処理有り)のスペクトルをそれぞれ示している。
【0036】
X線光電子分光分析の結果、図4に示されるように、加熱処理を行ったサンプル4のスペクトルおよび加熱処理を行わなかったサンプル1のスペクトルは、ともに約163eVのピーク(S−Cu)と、166〜171eVの周辺にブロードなピーク(遊離硫黄)が同じような位置関係でそれぞれ確認された。
しかしながら、サンプル4(加熱処理有り)では約163eVのピーク(S−Cu)が、サンプル1(加熱処理無し)に比べて特に大きい。さらに、サンプル4の約163eVのピーク(S−Cu)は166〜171eVのピーク集団(遊離硫黄)のいずれのピークよりも高く、エネルギーの強度が大きいことが確認された。
一方、サンプル1では、約163eVのピーク(S−Cu)は確認されるが、166〜171eVのピーク集団(遊離硫黄)と約163eVのピーク(S−Cu)とは、ほぼ同じ高さのピークを有することから、サンプル1中に占めるS−Cu結合はサンプル4ほど多くないことが示された。
図4に示す結果から明らかなように、インサート成形後に加熱したサンプル4では遊離硫黄が減少されており、S−Cu結合が増えていることが確認された。
【0037】
[亀裂進展量の測定試験]
さらに、本実施形態の120℃で5時間の加熱処理を行ったインサート樹脂成形品を負極端子取り出し部に備える角型リチウムイオン電池(実施例A〜C)と、インサート成形後に加熱処理を行わない通常のインサート樹脂成形品を負極端子取り出し部に備える角型リチウムイオン電池(比較例A〜C)を構築した。そして、それぞれの耐久後の樹脂成形部とインサート部材との境界面に形成される亀裂進展量を以下の方法で測定し、比較した。
なお、電解液はいずれもエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との1:1(体積比)混合溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた組成の電解液(水分含量250重量ppm)を用いた。その他の構成要素および製法については、実施例と比較例とで相違はない。
【0038】
実施例A〜C、比較例A〜Cのリチウムイオン電池を65℃で150時間保存した。その後、各電池のケース下部付近(蓋体とケースとの接合面より下部)を切断し、負極側の電極端子取出し部を蛍光試薬(マークテック社製スーパーグロー蛍光浸透探傷剤)に浸漬させた。そして、負極側の電極端子取出し部の該蓋体における挿通部分を固定し、蓋体から突出する負極端子に上部方向の力を加えて、樹脂成形部で覆われていた部分を引き抜いた。引き抜き後、蛍光試薬で染色された部分を観察し、亀裂進展量を測定した。表1は実施例A〜C、比較例A〜Cのそれぞれの亀裂進展量の測定結果を示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示す結果から明らかなように、実施例A、Bと実施例Cの亀裂進展量では1オーダーの差があったが、実施例A〜Cはいずれも亀裂進展量は1mm以下であった。また、実施例A、Bの亀裂進展量については0.1mm以下であり、150時間電解液に浸漬されていても耐え得ることが示された。
一方、比較例A〜Cでは、いずれも亀裂進展量は1mm以上であった。そのうち、比較例Aは亀裂進展量が最も大きく、2mm以上の亀裂が確認された。
以上の測定結果から明らかなように、インサート成形後に加熱処理を行った実施例A〜Cでは、長時間電解液に浸漬されていてもインサート部材と樹脂成形部との密着性が持続されているため亀裂の進展が抑制されていることが確認された。
【0041】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、電池の種類は上述したリチウムイオン電池に限られず、電極体構成材料や電解質が異なる種々の内容の電池、例えばリチウム金属やリチウム合金を負極とするリチウム二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、或いは電気二重層キャパシタのようないわゆる物理電池であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】一実施形態に係る電池100の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】図1内の点線IIで囲んだ部分(電極端子取出し部30)を拡大して示す模式的な断面図である。
【図3】加熱処理条件の異なるサンプルによる引張強度の測定結果である。
【図4】加熱処理しないサンプル1と加熱処理したサンプル4のX線光電子分光分析によるスペクトルの比較図である。
【符号の説明】
【0043】
10 ケース
12 開口部
20 蓋体
22 蓋本体
24 挿通部分
30 電極端子取出し部
40 正極
42 正極集電体
44 正極端子(インサート部材)
60 負極
62 負極集電体
64 負極端子(インサート部材)
70 樹脂成形部
80 電極体ユニット
82 セパレータ
90 接着層
100 密閉型電池



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のインサート部材と熱可塑性樹脂から成る樹脂成形部との境界面に、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層を備える、インサート樹脂成形品の製造方法であって、
前記インサート部材と前記樹脂成形部との境界面に前記接着層が形成されたインサート成形体を用意し、該成形体を所定の時間加熱することにより該接着層中の遊離硫黄と該樹脂成形部を構成する熱可塑性樹脂とを結合させて、加熱前よりも該接着層中の遊離硫黄を減少させることを特徴とする、インサート樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記インサート部材が銅製の部材であり、前記樹脂成形部がポリフェニレンスルフィドから成る前記インサート成形体を、85〜150℃で1時間以上加熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属製のインサート部材と熱可塑性樹脂から成る樹脂成形部との境界面に、硫黄原子を含む成分を含有する接着剤から形成された接着層を備える、インサート樹脂成形品であって、
インサート成形後の加熱処理によって、該加熱前よりも前記接着層に含まれる遊離硫黄の量を減少させていることを特徴とする、インサート樹脂成形品。
【請求項4】
前記インサート部材が銅製の部材であり、前記樹脂成形部がポリフェニレンスルフィドから成る前記インサート樹脂成形品であって、
所定のインサート成形後、85〜150℃で1時間以上加熱されることを特徴とする、請求項3に記載のインサート樹脂成形品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の製法により得られたインサート樹脂成形品および請求項3又は4に記載のインサート樹脂成形品のいずれかを備える、電池。
【請求項6】
電極体ユニットと、該電極体ユニットを収容するためのケースと、該電極体ユニットに接続された電極端子とを備える電池であって、
前記インサート樹脂成形品は、前記電極端子の一部を前記ケース外部に取り出すための電極端子取出し部を構成している、請求項5に記載の電池。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52365(P2010−52365A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221721(P2008−221721)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】