説明

ウエハ形物品を輸送するための装置及び方法

少なくも2個の処理ユニットの複数の少なくも1個の直線状に配列されたアレイを備え、各処理ユニットにおいて1個の枚葉ウエハ形物品を処理でき、更に、かかる各処理ユニットにおいて1個の枚葉ウエハ形物品を処理し得る前記処理ユニット、少なく1個の枚葉ウエハ形物品を内部に貯蔵している少なくも1個のカセットを保持するためのカセット保持ユニット、及びカセットからウエハ形物品を取り上げてこれを処理ユニットの一つの中に置くための輸送システムを備えたウエハ形物品の処理用の装置が明らかにされる。本装置は、直線状トラック上に取り付けられた輸送ユニットを備える。前記輸送ユニットは、枚葉ウエハ形物品を、直線状トラックと平行な実質的に垂直な平面内に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくも1個のアレイ内に整列された少なくも2個の処理ユニットを複数有する装置の処理ユニット内にウエハ形物品を置きかつここから取り上げるためのウエハ形物品を輸送するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に多くの種々の輸送路の構想は本技術において知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。これら輸送システムの全ては、ウエハ形物品が水平状態で動かされることが共通している。ここに、水平状態とは、ウエハ形物品の主面が実質的に水平面内にあることを意味する。
【特許文献1】世界特許第97/11623A1号 明細書
【特許文献2】米国特許第5919529 A1号 明細書
【特許文献3】米国特許第5788868 A1号 明細書
【特許文献4】米国特許第5518542 A1号 明細書
【特許文献5】米国特許第5442416 A1号 明細書
【特許文献6】米国特許第05762391A号 明細書
【特許文献7】米国特許第05931518A号 明細書
【特許文献8】米国特許第06109677A号 明細書
【特許文献9】米国特許第05967578A号 明細書
【特許文献10】米国特許第06152507A号 明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の目的は、占有面積当たりの物品の生産量がより高いこと、或いは同じ生産量当たりの占有面積がより小さいことを許す少なくも2個の処理ユニットを複数有する装置のための輸送システムを提供することである。
【0004】
本発明は、少なくも2個の処理ユニットの複数の少なくも1個の直線状に配列されたアレイであって、かかる各処理ユニットにおいて1個の枚葉ウエハ形物品を処理し得る前記アレイ、少なく1個の枚葉ウエハ形物品を内部に貯蔵している少なくも1個のカセットを保持するためのカセット保持ユニット、及びカセットからウエハ形物品を取り上げてこれを処理ユニットの一つの中に置くための輸送システムを備えたウエハ形物品の処理用の装置を提供することによりこの目的に適合する。輸送システムは、少なくも1個の枚葉ウエハ形物品を複数の処理ユニットのアレイと平行な直線状経路に沿って動かすために、複数の処理ユニットの少なくも1個のアレイと平行に配列された少なくも1個の直線状トラックを備える。装置は、更に、前記少なくも1個の直線状トラックの各に可動に取り付けられた輸送ユニットを備える。前記輸送ユニットは、枚葉ウエハ形物品を直線状トラックと平行な実質的に垂直な面内に保持するために、少なくも1個の保持手段を備える。
【0005】
輸送ユニットは、これを、ステップモーターにより駆動されるボールねじ又は歯付きベルトにより直線状トラック上で間接的に動かすことができる。或いは、電気リニアモーターにより直接これを動かすことができる。
【0006】
本発明の利点は、ウエハ形物品を輸送するための輸送路の幅を、ウエハ形物品の最小直径よりかなり小さく選定し得ることである。例えば、300mmウエハの輸送のためには少なくも320mmの通路幅が必要であるが、本発明の輸送システムでは輸送路の幅を約60mmに減らすことができる。約5mの機械長の場合、1輸送路について占有面積を約1.2m 節約することができる。かかる機械が2個又は3個の平行な輸送路を持つならば、2.4又は3.6m 節約することができる。
【0007】
選択的に、この装置は、ウエハ形物品を実質的に垂直状態から実質的に水平状態に旋回させるための旋回機構を有する輸送ユニットを持つ。これは、ウエハ形物品が水平状態で貯蔵され及び/又は処理される場合に有用である。そこで、処理ユニットに、ウエハ形物品を実質的に水平状態で保持する保持手段を備えることができる。
【0008】
有利な装置は、内部に複数のウエハ形物品を貯蔵しているカセットを保持するための少なくも2個のカセット保持ユニットのアレイが配列された前面ユニット、及び少なくも1個の直線状トラックの輸送ユニットとカセットとの間でウエハ形物品を移送するための移送ユニットを備える。かかる移送ユニットは、1個のウエハ形物品を取り上げるために、カセット内に貯蔵された2個のウエハ形物品の間でカセットにアクセスするに十分に薄いエンドエフェクターを有するロボットとすることができる。
【0009】
別の実施例においては、装置は、ウエハ形物品を一時的に貯蔵するための移送ステーションを少なくも1個備え、この移送ステーションは、直線状トラックに移動可能に取り付けられた輸送ユニット及び移送ユニットによりアクセスすることができる。この中間貯蔵により、カセットからウエハ形物品を取り上げる移送ユニットと、ウエハ形物品を処理ユニットに輸送している輸送ユニットとが、多少とも互いに無関係に作動し得る利点を与える。
【0010】
移送ステーションがウエハ形物品を反転させるための反転機構を有する場合は、ウエハ形物品の前面又は背面を、カセット内でその面が上であっても処理できるという追加の利点を持つ。
【0011】
なお別の実施例は、背中合わせ構成に配列された2個の保持器具を備えた移送ステーションを持つ。このため、1個の移送ステーションが同時に2個のウエハ形物品を保持することができる。
【0012】
輸送ユニットが、ウエハ形物品を反転させるための反転機構及び好ましくは背中合わせ構成の配列された2個の保持手段を備えることが有用である。
【0013】
好ましい実施例においては、装置は、前記少なくも1個の直線状トラックを少なくも2個備えた輸送システムを持つ。かかる場合、左側のトラックは典型的に装置の左側の処理ユニットにウエハ形物品を給送し、そして右側のトラックは右側の処理ユニットに給送する。左右の直線状トラックの間の中央に第3の直線状トラックがある場合は、この第3のトラックは両側にウエハ形物品を給送することができる。
【0014】
本発明の更なる詳細及び長所は、好ましい実施例の詳細な説明より具体化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
装置1は、4個の処理ユニット31、33、35、37を複数有する第1の直線状配列のアレイ及び別の4個の処理ユニット32、34、36、38を複数有する第2の直線状配列のアレイを持つ。かかる処理ユニットの各において、1個の枚葉ウエハ(Wm)を水平位置において処理することができる。この実施例に示された処理ユニットは、湿式スピン処理ユニット、スピンコーター、熱処理ユニット又はその他の適宜の枚葉式ウエハ処理ユニットから選ぶことができる。前記複数の処理ユニット31−38のアレイが配列されたラインは、前面5に対して実質的に直角である。この前面5には、内部に少なくも1個のウエハ形物品を貯蔵している少なくも1個のカセットを保持するための2個のカセット保持ユニット15がある。この場合は、各カセット保持ユニット15は前面開口型統一ポート(front opening unified port,FOUP)である。
【0016】
装置1は、FOUP15上のカセットから1個のウエハを取り上げ、そしてこれを処理ユニット31−38の一つの中に置くための輸送システムを持つ。
【0017】
輸送システムは、複数の処理ユニットのアレイと平行に配列された2個の直線状トラック24及び26を備え、少なくも1個の枚葉ウエハを、複数の処理ユニットのアレイと平行な直線状トラックに沿って動かす。Wmは、処理モジュール(処理ユニット)において処理中のウエハの位置を示す。各直線状トラック24,26に1個の輸送ユニット44、46が可動に取り付けられる。各輸送ユニット44、46は、それぞれ2個の保持手段44a、44b及び46a、46bを持つ。2個のウエハ保持器具が背中合わせ構成で互いに平行に配置される。輸送システムは、直線状トラック24、26と平行な実質的に垂直な面内に枚葉ウエハを保持するように配列される。従って、輸送路はウエハの直径より狭い。
【0018】
各保持手段はグリッパーであり、これはウエハの縁においてのみウエハと接触する(縁だけ接触=ECO)。かかるグリッパー(ECOグリッパーと呼ばれる)は現在の技術水準のものであり、従って更なる詳細については特許文献6、特許文献7又は特許文献8を参照されたい。ベルヌイの原理に基づく別の保持手段は、特許文献9又は特許文献10に開示されたように使用することができる。単純な真空式グリッパーも使用可能である。
【0019】
各輸送ユニット44及び46は、保持手段及びこれと一緒にウエハを垂直位置から水平位置にするために、旋回機構64、66を更に備える。図2に示された旋回機構64及び66の各は、1個のステップモーター及び組み合わせられた伝導機構を持つ。モーター及び伝導機構の両者は本技術において公知である。この実施例における回転運動Pは、それぞれ輸送路24又は26と実質的に平行な軸線を中心として行われる。旋回機構が保持手段を約90゜旋回させて、ウエハを垂直位置から水平位置にする。処理モジュールに面したウエハの面は、ウエハが処理モジュール内に置かれたとき下向きにされる。
【0020】
別の旋回機構(図示せず)は、輸送路に直角でありかつ水平面に対して45゜の角度にある軸線まわりで回転運動を行うことができる。この場合は、旋回機構は、ウエハを垂直位置から水平位置にするために保持手段を約180゜回転させる。これにより、ウエハが処理モジュールの上又は中に置かれたとき、ウエハの処理モジュールに面した側が上向きにされる。
【0021】
図1及び2に示された各輸送ユニット44、46は、保持手段44a、44b及び46、46bをそれぞれ置き換え得るように反転モジュールを更に備える。処理モジュールに面していない保持器具は、これを処理モジュールに面するようにその位置を変えることができ、従ってこの保持器具により担持されたウエハを処理モジュール上に置くことができる。一方の輸送ユニット46が他方の直線状トラック上の輸送ユニット44と衝突することを避けるために、旋回機構66により保持手段46を角度約α(例えば45゜、図2参照)旋回させ、保持手段46a及び46bを動かし、そして少なくも位置46’(点線)に更に旋回させることが有利である。
【0022】
カセット保持ユニット15と直線状トラック24、26との間に移送ステーション20、22が配置される。左の直線状トラック26は左の移送ステーション22と組み合わせられ、右の直線状トラック24は右の移送ステーション20と組み合わせられる。各移送ステーション20、22は、対応したウエハ輸送ユニット44、46が移送ステーションからウエハを取り上げ及びここにウエハを置くように配列される。単純化のため、移送ステーションは、処理ユニットのそれぞれのアレイと一列に配置される。従って、各移送ステーションを、それぞれの保持器具に対して容易にアクセスさせることができる。
【0023】
図1及び2に示されるように、各移送ステーション20、22は、保持ユニット42、40を備える。移送ステーションの各保持ユニット40、42には、それぞれ2個のウエハ保持器具40a、40b及び42a、42bが設けられる。保持器具は、図3及び4において見られるように、互いに平行でありかつ背中合わせに配列される。
【0024】
カセット保持ユニット15と移送ステーション20、22との間にロボット84が配置される。ロボット84は、ウエハWrを輸送するために末端部にエンドエフェクター86が取り付けられた可動の腕を備える。ウエハ輸送用のエンドエフェクターは本技術において公知であり、従ってここでは詳細に説明されない。エンドエフェクター86を有するロボット84は、カセット保持ユニット15により担持されたカセット内のウエハを取り上げ及びここにウエハを置き、更に輸送ステーション20、22の一方のウエハを取り上げここにウエハを置くような方法で構成される。ロボット84は、両方のカセット保持ユニット上のカセットに接近するために、前面5と平行に直線状トラック28上に取り付けられる。ロボットは、更に、矢印L(図2)で示された持ち上げ運動を実行することができ。
【0025】
別の実施例(図示せず)においては、ロボットは、平行に配置された数個のカセット保持ユニットに担持されたカセットにアクセス可能に使用される。
【0026】
或いはダブルアーム式のロボットを使用することができ。この場合、第1のエンドエフェクターが第1のウエハをある場所から取り上げることができ、この直後に、第2のアームが第2のウエハを同じ場所に輸送することができる。
【0027】
移送ステーションの保持ユニット40、42には、矢印Fv(図2)で示されるように下のウエハを上げ及びその逆を行うことができる反転モジュールが更に装備される。この反転モジュールは、ウエハの選択された面を処理するための選択を与える。説明のため、ウエハの第1の面を面Aと呼び、ウエハの反対側の面を面Bと呼ぶ。
【0028】
面Aがカセット内で上向きであり、かつ処理ユニットにおける処理中、面Aが上向きであるとすると、機械を通るウエハの運動は以下のように生ずる。ロボット84は、カセットからウエハを取り上げこれを移送ステーション20の上側の保持器具40aに給送する。輸送ユニット44は、移送ステーション20の近くに直線的に動き、そしてその保持器具44aが保持器具40aからウエハを取り上げ得るように旋回される。次いでウエハは上述されたように処理ユニットに給送される。
【0029】
処理ユニットにおける処理中、面Bが上向きである場合は、ロボット84はカセットからウエハを取り上げ、そしてこれを移送ステーション20の下方の保持器具40bに給送する。このとき、ウエハが上向きとなり、従って面Bが上向きの位置40aになるように保持器具40が反転される。
【0030】
別の実施例(図示せず)においては、移送ステーションは実際的な支持又は保持用の手段は備えず、ウエハはロボットから輸送ユニットに直接給送されるその場所にある。
【0031】
なお別の実施例においては、平行な両方の直線状トラックの間に、組み合わせられた輸送ユニットを有する第3の直線状トラックを配列させることができる。この中央輸送ユニットは、両方の処理ユニットのアレイの処理ユニットに接近することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の有利な実施例によるウエハ形物品を処理するための装置の図式的な平面図を示す。
【図2】線A−Aに沿った図1による断面図を示す。
【図3】本発明において使用する保持手段の実施例の側面図を示す。
【図4】図3による保持手段の平面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ形物品を処理するための装置(1)であって、
1.1 複数の少なくも2個の処理ユニット(31、33)の直線状に配列されたアレ イであって、かかる各処理ユニットにおいて1個の枚葉ウエハ形物品(Wm)を 処理し得る前記処理アレイ、
1.2 少なく1個のウエハ形物品を内部に貯蔵している少なくも1個のカセットを保 持するためのカセット保持ユニット(15)、
1.3 カセットからウエハ形物品を取り上げてこれを処理ユニットの一つの中に置く ための輸送システム
を備え、
輸送システムが、
1.4.1 少なくも1個の枚葉ウエハ形物品を、複数の処理ユニットのアレイと平 行な直線状経路に沿って動かすために、複数の処理ユニット(31、33 )のアレイと平行に配列された少なくも1個の直線状トラック(26)、 1.4.2 前記少なくも1個の直線状トラック(26)の各に可動に取り付けられ た輸送ユニット(46)であって、枚葉ウエハ形物品を、直線状トラック と平行な実質的に垂直な面内に保持するための少なくも1個の保持手段( 46a)を備えた前記輸送ユニット
を備える装置。
【請求項2】
輸送ユニット(46)が、ウエハ形物品を、実質的に垂直の状態から実質的に水平の状態に旋回させる(P)ための旋回機構(66)を有する請求項1に請求された装置。
【請求項3】
複数のウエハ形物品を貯蔵しているカセットを保持するための少なくも2個のカセット保持ユニット(15)のアレイが配列された前面ユニット及びカセットと少なくも1個の直線状トラック(26)の輸送ユニット(46)との間でウエハ形物品を移送するための移送ユニット(84、86)を備えた請求項1に請求された装置。
【請求項4】
ウエハ形物品(Wt)を一時的に貯蔵するための少なくも1個の移送ステーション(22)を備え、移送ステーションは直線状トラック上に移動可能に取り付けられた移送ユニット(84、86)によるアクセスが可能である請求項1に請求された装置。
【請求項5】
前記移送ステーション(22)がウエハ形物品を反転(Fv)させるための反転機構を備える請求項4に請求項された装置。
【請求項6】
前記移送ステーションが、背中合わせ構成に配列された2個の保持器具(42a、42b)を有する保持ユニット(42)を備えている請求項4に請求された装置、
【請求項7】
前記輸送ユニット(46)が、ウエハ形物品と2個の保持器具(46a、46b)とを反転させるための反転機構を備える請求項1に請求された装置。
【請求項8】
2個の保持器具(46a、46b)が、背中合わせ構成に配列される請求項7に請求された装置。
【請求項9】
輸送システムが前記少なくも1個の直線状トラック(24、26)を備えている請求項1に請求された装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−503428(P2006−503428A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544119(P2004−544119)
【出願日】平成15年10月9日(2003.10.9)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011178
【国際公開番号】WO2004/036628
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504329078)エスイーゼツト・アクチエンゲゼルシヤフト (7)
【Fターム(参考)】