説明

ウエーハの洗浄方法

【課題】噴射ノズルおよび噴射ノズルを揺動する支持アームの汚染を防止することができるウエーハの洗浄方法を提供する。
【解決手段】表面に水溶性の保護膜が被覆されたウエーハをスピンナーテーブルに表面を上側にして保持し、スピンナーテーブルを回転するとともに洗浄水噴射ノズルから洗浄水をウエーハの表面に向けて噴射しつつ洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで移動することにより、ウエーハの表面に被覆された保護膜を洗浄し除去するウエーハの洗浄方法であって、洗浄水噴射ノズルを支持し洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで揺動する支持アームが、揺動範囲において洗浄水噴射ノズルよりスピンナーテーブルの回転方向上流側に位置するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの表面に被覆された水溶性の保護膜を洗浄して除去するウエーハの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、シリコン等の半導体基板の表面に複数のIC、LSI等のデバイスをマトリックス状に形成した半導体ウエーハが形成される。このように形成された半導体ウエーハは上記デバイスが分割予定ラインによって区画されており、この分割予定ラインに沿って切断することによって個々のデバイスを製造している。また、サファイヤ基板等の表面に格子状に形成された分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスが形成された光デバイスウエーハは、分割予定ラインに沿って個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
このような半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハの分割予定ラインに沿った切断は、一般に切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物であるウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる切削送り手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。このような切削装置によるウエーハの切削においては、切削送り速度に限界があるとともに、切削屑の発生によりデバイスが汚染されるという問題がある。
【0004】
一方、近年半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成された分割予定ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりアブレーション加工を施してレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。レーザー加工は切削加工に比して加工速度を速くすることができるとともに、サファイヤのように硬度の高い素材からなるウエーハであっても比較的容易に加工することができる。しかしながら、ウエーハの分割予定ラインに沿ってレーザー光線を照射してアブレーション加工すると、レーザー光線が照射された領域に熱エネルギーが集中してデブリが発生し、このデブリがデバイスの表面に付着してデバイスの品質を低下させるという新たな問題が生じる。
【0005】
上記デブリによる問題を解消するために、ウエーハの加工面にポリビニルアルコール等の水溶性の液状樹脂からなる保護膜を被覆し、保護膜を通してウエーハにレーザー光線を照射するようにしたレーザー加工方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
また、レーザー加工を効率的に実施するためウエーハの加工面にポリビニルアルコール等の水溶性の液状樹脂からなる保護膜を被覆する保護膜被覆手段を備えたレーザー加工装置が提案されている。このレーザー加工装置は、レーザー加工後にウエーハの表面から保護膜を洗浄して除去する洗浄手段を備えている。洗浄手段は、ウエーハを保持するスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルに保持されたウエーハの上面に洗浄水を噴射する噴射ノズルを備えた洗浄水供給手段を具備し、スピンナーテーブルを回転するとともに噴射ノズルをウエーハの中心に当たる位置から外周部に当たる位置までの角度範囲で揺動しつつ洗浄水を噴射する。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−188475号公報
【特許文献2】特開2004−322168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上述した洗浄手段においては、スピンナーテーブルに保持されたウエーハに被覆された保護膜に噴射ノズルから洗浄水を噴射すると、洗浄水によって溶解した保護膜が飛散し、この飛散した保護膜が噴射ノズルおよび噴射ノズルを揺動する支持アームに付着して噴射ノズルおよび支持アームを汚染するという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、噴射ノズルおよび噴射ノズルを揺動する支持アームの汚染を防止することができるウエーハの洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に水溶性の保護膜が被覆されたウエーハをスピンナーテーブルに表面を上側にして保持し、該スピンナーテーブルを回転するとともに洗浄水噴射ノズルから洗浄水をウエーハの表面に向けて噴射しつつ洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで移動することにより、ウエーハの表面に被覆された保護膜を洗浄し除去するウエーハの洗浄方法であって、
洗浄水噴射ノズルを支持し該洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで揺動する支持アームが、揺動範囲において該洗浄水噴射ノズルよりスピンナーテーブルの回転方向上流側に位置するように設定されている、
ことを特徴とするウエーハの洗浄方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるウエーハの洗浄方法においては、洗浄水噴射ノズルを支持し洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで揺動する支持アームが、揺動範囲において洗浄水噴射ノズルよりスピンナーテーブルの回転方向上流側に位置するように設定されているので、洗浄水噴射ノズルから洗浄水がウエーハに噴射されることによって飛散する洗浄水と保護膜が溶解された保護材料は支持アームよりスピンナーテーブルの回転方向下流側に飛散するため、洗浄水噴射ノズルよりスピンナーテーブルの回転方向上流側に位置する支持アームに付着することはない。従って、洗浄水噴射ノズルから噴射された洗浄水によって保護膜が溶解された保護材料が洗浄水噴射ノズルおよび支持アームに付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるウエーハの洗浄方法を実施するための洗浄機構を備えたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備される保護膜被膜兼洗浄手段の一部を破断して示す斜視図。
【図3】図2に示す保護膜被膜兼洗浄手段のスピンナーテーブルを被加工物搬入・搬出位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図4】図2に示す保護膜被膜兼洗浄手段のスピンナーテーブルを作業位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図5】図2に示す保護膜被膜兼洗浄手段の洗浄水供給手段を構成する洗浄水噴射ノズル機構の要部断面図。
【図6】図1に示すレーザー加工装置によって加工される被加工物としての半導体ウエーハの斜視図。
【図7】図1に示すレーザー加工装置に装備された保護膜被膜兼洗浄手段によって実施される保護膜被覆工程を示す説明図。
【図8】図1に示すレーザー加工装置によってによって実施されるレーザー加工溝形成工程を示す説明図。
【図9】図8に示すレーザー加工溝形成工程によってレーザー加工された被加工物としての半導体ウエーハの要部拡大断面図。
【図10】本発明によるウエーハの洗浄方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるウエーハの洗浄方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明によるウエーハの洗浄方法を実施するための洗浄手段を備えたレーザー加工装置の斜視図が示されている。
図1に示すレーザー加工装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を具備している。この装置ハウジング2内には、被加工物を保持する被加工物保持手段としてのチャックテーブル3が切削送り方向である矢印Xで示す方向に移動可能に配設されている。チャックテーブル3は、チャックテーブル本体31と、該チャックテーブル本体31の上面に配設された吸着チャック32を具備している。吸着チャック32は多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料から構成されており、図示しない吸引手段に接続されている。従って、チャックテーブル3は、吸着チャック32の上面である保持面上に被加工物であるウエーハを載置し、図示しない吸引手段を作動することにより、吸着チャック32上に被加工物であるウエーハを吸引保持する。また、チャックテーブル3は、図示しない回転機構によって回動可能に構成されている。このように構成されたチャックテーブル3のチャックテーブル本体31には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ34が配設されている。
【0015】
図示のレーザー加工装置1は、レーザー光線照射手段4を備えている。レーザー光線照射手段4は、レーザー光線発振手段41と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器42を具備している。このように構成されたレーザー光線照射手段4は、図示の実施形態においては後述する被加工物としての半導体ウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を上記チャックテーブル3に保持された後述する半導体ウエーハに照射する。
【0016】
図示のレーザー加工装置1は、上記チャックテーブル3の吸着チャック32上に保持された被加工物の表面を撮像し、上記レーザー光線照射手段4の集光器42から照射されるレーザー光線によって加工すべき領域を検出する撮像手段5を具備している。この撮像手段5は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。また、図示のレーザー加工装置1は、撮像手段5によって撮像された画像を表示する表示手段6を具備している。
【0017】
図示のレーザー加工装置1は、加工前の被加工物であるウエーハの表面(加工面)にポリビニルアルコール(PVA:Poly Vinyl Alcohol)等の水溶性の液状保護材料を被覆して保護膜を形成するとともに、加工後のウエーハの表面に被覆されている保護膜を除去する保護膜被覆兼洗浄手段7を具備している。この保護膜被覆兼洗浄手段7について、図2乃至図5を参照して説明する。
図示の実施形態における保護膜被覆兼洗浄手段7は、スピンナーテーブル機構71と、該スピンナーテーブル機構71を包囲して配設された洗浄水受け手段72を具備している。スピンナーテーブル機構71は、スピンナーテーブル711と、該スピンナーテーブル711を回転駆動する電動モータ712と、該電動モータ712を上下方向に移動可能に支持する支持機構713を具備している。スピンナーテーブル711は上面に配設された多孔性材料から形成された吸着チャック711aを具備しており、この吸着チャック711aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナーテーブル711は、吸着チャック711aの上面である保持面に被加工物であるウエーハを載置し、図示しない吸引手段により負圧を作用せしめることにより吸着チャック711上にウエーハを吸引保持する。なお、スピンナーテーブル711には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ機構714が配設されている。上記電動モータ712は、その駆動軸712aの上端が上記スピンナーテーブル711に連結される。上記支持機構713は、複数本(図示の実施形態においては3本)の支持脚713aと、該支持脚713aをそれぞれ連結し電動モータ712に取り付けられた複数本(図示の実施形態においては3本)のエアシリンダ713bとからなっている。このように構成された支持機構713は、エアシリンダ713bを作動することにより、電動モータ712およびスピンナーテーブル711を図3に示す上方位置である被加工物搬入・搬出位置と、図4に示す下方位置である作業位置に位置付ける。
【0018】
上記洗浄水受け手段72は、洗浄水受け容器721と、該洗浄水受け容器721を支持する3本(図2には2本が示されている)の支持脚722と、上記電動モータ712の駆動軸712aに装着されたカバー部材723とを具備している。洗浄水受け容器721は、図3および図4に示すように円筒状の外側壁721aと底壁721bと内側壁721cとからなっている。底壁721bの中央部には上記電動モータ712の駆動軸712aが挿通する穴721dが設けられおり、この穴721dの周縁から上方に突出する内側壁721cが形成されている。また、図2に示すように底壁721bには排液口721eが設けられており、この排液口721eにドレンホース724が接続されている。上記カバー部材723は、円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部723aを備えておる。このように構成されたカバー部材723は、電動モータ712およびスピンナーテーブル711が図4に示す作業位置に位置付けられると、カバー部723aが上記洗浄水受け容器721を構成する内側壁721cの外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0019】
図示の実施形態における保護膜被覆兼洗浄手段7は、上記スピンナーテーブル711に保持された加工前の被加工物であるウエーハの加工面にポリビニルアルコール(PVA:Poly Vinyl Alcohol)等の水溶性の液状保護材料を供給する保護材料供給手段74を具備している。保護材料供給手段74は、スピンナーテーブル711に保持された加工前のウエーハの加工面に向けてポリビニルアルコール等の水溶性の液状保護材料を供給する保護材料供給ノズル機構740と、該保護材料供給ノズル機構740を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ745を備えており、保護材料供給ノズル機構740が図示しない保護部材供給源に接続されている。保護材料供給ノズル機構740は、揺動軸部741と、該揺動軸部741に基端が接続され水平に延びる支持アーム742と、該支持アーム742の先端に接続され下方に向けて液状保護材料を噴出する保護材料供給ノズル743とからなっている。このように構成された保護材料供給ノズル機構740は、揺動軸部741および支持アーム742がパイプ材によって形成されており、揺動軸部741が上記洗浄液回収容器721を構成する底壁721bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され図示しない保護材料供給源に接続されている。なお、保護材料供給ノズル機構740の揺動軸部741が挿通する図示しない挿通穴の周縁には、揺動軸部741との間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0020】
図示の実施形態における保護膜被膜兼洗浄手段7は、上記スピンナーテーブル711に保持された加工後の被加工物であるウエーハを洗浄するための洗浄水供給手段を具備している。洗浄水供給手段75は、スピンナーテーブル711に保持された加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴射する洗浄水噴射ノズル機構750と、該洗浄水噴射ノズル機構750を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ755を備えており、該洗浄水噴射ノズル機構750が図示しない洗浄水供給源とエアー供給源に接続されている。洗浄水噴射ノズル機構750は、揺動軸部751と、該揺動軸部751に基端が接続され水平に延びる支持アーム752と、該支持アーム752の先端に接続され下方に向けて洗浄水を噴出する洗浄水噴射ノズル753とからなっている。洗浄水噴射ノズル753は、図5に示すように洗浄水噴射口753aとエアー噴射口753bを備えている。この洗浄水噴射口753aとエアー噴射口753bは、それぞれ支持アーム752に設けられた洗浄水通路752aとエアー通路752bを介して上記揺動軸部751に設けられた図示しない洗浄水通路とエアー通路に連通されている。このように構成された洗浄水噴射ノズル機構750は、揺動軸部751が上記洗浄液回収容器721を構成する底壁721bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され、揺動軸部751に設けられた図示しない洗浄水通路とエアー通路は図示しない洗浄水供給源とエアー供給源に接続されている。なお、洗浄水噴射ノズル機構750の揺動軸部751が挿通する図示しない挿通穴の周縁には、揺動軸部751との間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0021】
図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態における保護膜被膜兼洗浄手段7は、上記スピンナーテーブル711に保持された加工後の被加工物であるウエーハを洗浄した後に乾燥するためのエアー供給手段76を具備している。エアー供給手段76は、スピンナーテーブル711に保持された洗浄後のウエーハに向けてエアーを噴射するエアー噴射ノズル機構760と、該エアー噴射ノズル機構760を揺動せしめる正転・逆転可能な図示しない電動モータを備えている。エアー噴射ノズル機構760は、揺動軸部761と、該揺動軸部761に基端が接続され水平に延びる支持アーム762と、該支持アーム762の先端に接続され下方に向けてエアーを噴射するエアー噴射ノズル763とからなっている。このように構成されたエアー噴射ノズル機構760は、揺動軸部761および支持アーム762がパイプ材によって形成されており、揺動軸部761が上記洗浄液回収容器721を構成する底壁721bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され図示しないエアー供給源に接続されている。なお、エアー噴射ノズル機構760の揺動軸部761が挿通する図示しない挿通穴の周縁には、揺動軸部761との間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、図示のレーザー加工装置1は、被加工物であるウエーハとしての半導体ウエーハ10を収容するカセットが載置されるカセット載置部13aを備えている。カセット載置部13aには図示しない昇降手段によって上下に移動可能にカセットテーブル131が配設されており、このカセットテーブル131上にカセット13が載置される。半導体ウエーハ10は、環状のフレーム11に装着された保護テープ12の表面に貼着されており、保護テープ12を介して環状のフレーム11に支持された状態で上記カセット13に収容される。このように保護テープ12を介して環状のフレーム11に支持される半導体ウエーハ10について、図6を参照して説明する。図6に示す半導体ウエーハ10はシリコンウエーハによって構成されており、表面10aに格子状に配列された複数の分割予定ライン101によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ10は、図1に示すように環状のフレーム11に装着された保護テープ12に表面10a(分割予定ライン101およびデバイス102が形成されている面)を上側にして裏面が貼着される。
【0023】
図示のレーザー加工装置1は、上記カセット13に収納された加工前の半導体ウエーハ10を仮置き部14aに配設された位置合わせ手段14に搬出するとともに加工後の半導体ウエーハ10をカセット13に搬入する被加工物搬出・搬入手段15と、位置合わせ手段14に搬出された加工前の半導体ウエーハ10を保護膜被膜兼洗浄手段7に搬送するとともに保護膜被膜兼洗浄手段7によって表面に保護膜が被覆された半導体ウエーハ10を上記チャックテーブル3上に搬送する第1の被加工物搬送手段16と、チャックテーブル3上でレーザー加工された半導体ウエーハ10を保護膜被膜兼洗浄手段7に搬送する第2の被加工物搬送手段18を具備している。
【0024】
図示のレーザー加工装置1は以上のように構成されており、以下このレーザー加工装置1を用いて上記半導体ウエーハ10の表面10aに形成された分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝を形成する加工方法について説明する。
図1に示すように環状のフレーム11に保護テープ12を介して支持された加工前の半導体ウエーハ10(以下、単に半導体ウエーハ10という)は、加工面である表面10aを上側にしてカセット13に複数収容され、このカセット13がカセットテーブル131上に載置されている。カセットテーブル131上に載置されたカセット13に収容されている加工前の半導体ウエーハ10に分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝を形成するには、図示しない昇降手段によってカセットテーブル131が上下動することにより、カセット13の所定位置に収容された半導体ウエーハ10を搬出位置に位置付ける。次に、被加工物搬出・搬入手段15が進退作動して搬出位置に位置付けられた半導体ウエーハ10を仮置き部14aに配設された位置合わせ手段14に搬出する。位置合わせ手段14に搬出された半導体ウエーハ10は、位置合わせ手段14によって所定の位置に位置合せされる。次に、位置合わせ手段14によって位置合わせされた加工前の半導体ウエーハ10は、第1の被加工物搬送手段16の旋回動作によって保護膜被膜兼洗浄手段7を構成するスピンナーテーブル711の吸着チャック711a上に搬送され、図示しない吸引手段を作動することにより該吸着チャック711a上に吸引保持される(ウエーハ保持工程)。また、環状のフレーム11がクランプ714によって固定される。このとき、スピンナーテーブル711は図3に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられており、保護材料供給ノズル機構740と洗浄水噴射ノズル機構750およびエアー噴射ノズル機構760は図2および図3に示すようにスピンナーテーブル711の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0025】
加工前の半導体ウエーハ10が保護膜被膜兼洗浄手段7のスピンナーテーブル711上に保持するウエーハ保持工程を実施したならば、スピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の加工面である表面10aにポリビニルアルコール等の水溶性の液状保護材料による保護膜を被覆する保護膜被覆工程を実施する。この保護膜被覆工程は、保護膜被覆兼洗浄手段7のスピンナーテーブル機構71を構成する支持機構713を作動してスピンナーテーブル711を図4に示す作業位置に位置付けるとともに、保護材料供給手段74の電動モータ745を駆動して図7の(a)に示すように保護材料供給ノズル機構740の保護材料供給ノズル743をスピンナーテーブル711上に保持された半導体ウエーハ10の中心部上方に位置付ける。そして、スピンナーテーブル711を矢印Aで示す方向に所定の回転速度(例えば200rpm)で回転しつつ、環状のフレーム11に装着された保護テープ12の表面に貼着された半導体ウエーハ10の表面10a(加工面)の中央領域に保護材料供給手段74の保護材料供給ノズル743から所定量(例えば、半導体ウエーハ10の直径が200mmの場合に1cc)の液状の保護材料100を滴下する。
【0026】
このようにして、スピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の表面10a(加工面)の中央領域に液状の保護材料100を1cc滴下し、スピンナーテーブル711を矢印Aで示す方向200rpmの回転速度で60秒程度回転することにより、図7の(b)に示すように半導体ウエーハ10の表面10a(加工面)には厚さが1μ程度の保護膜110が被覆される。
【0027】
上述した保護材料被覆工程を実施したならば、スピンナーテーブル機構71を構成する支持機構713を作動してスピンナーテーブル711を図3に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル711に保持されている半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、スピンナーテーブル711上の半導体ウエーハ10は、第1の被加工物搬送手段16によってチャックテーブル3の吸着チャック32上に搬送され、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック32上に吸引保持される。このようにして半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル3は、図示しない移動手段を作動することによって撮像手段5の直下に位置付けられる。
【0028】
チャックテーブル3が撮像手段5の直下に位置付けられると、撮像手段5および図示しない制御手段によって半導体ウエーハ10に所定方向に形成されている分割予定ライン101と、分割予定ライン101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段4の集光器42との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理が実行され、レーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。また、半導体ウエーハ10に形成されている上記所定方向に対して直交する方向に延びる分割予定ライン101に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の分割予定ライン101が形成されている表面10aには保護膜110が形成されているが、保護膜110が透明でない場合は赤外線で撮像して表面からアライメントすることができる。
【0029】
以上のようにしてチャックテーブル3上に保持された半導体ウエーハ10に形成されている分割予定ライン101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、保護膜110が被覆された半導体ウエーハ10に分割予定ライン101に沿ってシリコンウエーハに対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のレーザー光線を照射し、分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝を形成するレーザー加工溝形成工程を実施する。即ち、チャックテーブル3をレーザー光線照射手段4の集光器42が位置するレーザー光線照射領域に移動し、所定の分割予定ライン101を集光器42の直下に位置付ける。このとき、図8の(a)で示すように半導体ウエーハ10は、分割予定ライン101の一端(図8の(a)において左端)が集光器42の直下に位置するように位置付けられる。次に、レーザー光線照射手段4を作動して集光器42からパルスレーザー光線を照射しつつチャックテーブル3を図8の(a)において矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図8の(b)で示すように分割予定ライン101の他端(図8の(b)において右端)が集光器42の直下位置に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル3の移動を停止する。このレーザー加工溝形成工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを分割予定ライン101の表面付近に合わせる。
【0030】
上述したレーザー加工溝形成工程を実施することにより、半導体ウエーハ10には分割予定ライン101に沿ってアブレーション加工が施され、半導体ウエーハ10には図9に示すように分割予定ライン101に沿ってレーザー加工溝140が形成される。このようにパルスレーザー光線の照射によるアブレーション加工が施されると、図9に示すようにデブリ150が発生するが、このデブリ150は保護膜110によって遮断され、デバイス102に付着することはない。
【0031】
上述したレーザー加工溝形成工程を半導体ウエーハ10の全ての分割予定ライン101に沿って実施したならば、半導体ウエーハ10を保持しているチャックテーブル3は、最初に半導体ウエーハ10を吸引保持した位置に戻され、ここで半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、半導体ウエーハ10は、第2の被加工物搬送手段18によって保護膜被膜兼洗浄手段7を構成するスピンナーテーブル711の吸着チャック711a上に搬送され、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック711a上に吸引保持される。このとき、スピンナーテーブル711は図3に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられており、保護材料供給ノズル機構740と洗浄水噴射ノズル機構750およびエアー噴射ノズル機構760は図2および図3に示すようにスピンナーテーブル711の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0032】
加工後の半導体ウエーハ10が保護膜被膜兼洗浄手段7のスピンナーテーブル711上に保持されたならば、半導体ウエーハ10の加工面である表面10aに被覆されている保護膜110を洗浄する洗浄工程を実施する。この洗浄工程は、スピンナーテーブル機構71を構成する支持機構713を作動してスピンナーテーブル711を図4で示す作業位置に位置付けるとともに、図10に示すように洗浄水供給手段75の電動モータ755を駆動して洗浄水噴射ノズル機構750の洗浄水噴射ノズル753をスピンナーテーブル711上に保持された半導体ウエーハ10の回転中心Cの上方に位置付ける。そして、スピンナーテーブル711を矢印Aで示す方向に例えば800rpmの回転速度で回転しつつ洗浄水供給手段75を作動して洗浄水噴射ノズル753の洗浄水噴出口753aとエアー噴射口753bから純水とエアーとからなる2流体洗浄水を噴出する。なお、洗浄水噴射ノズル機構750は、0.2MPa程度の純水を供給するとともに、0.3〜0.5MPa程度のエアーを供給し、純水をエアーの圧力で噴出して半導体ウエーハ10の加工面である表面10aを洗浄する。このとき、電動モータ755が駆動して洗浄水噴射ノズル機構750の洗浄水噴射ノズル753から噴出された洗浄水がスピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の回転中心Cに当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめられる。この結果、半導体ウエーハ10の表面10aに被覆された保護膜110が上述したようにポリビニルアルコール等の水溶性の液状保護材料からなっているので、保護膜110を容易に洗い流すことができるとともに、レーザー加工時に発生したデブリ150も除去される。
【0033】
このようにスピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10を洗浄する際に、スピンナーテーブル711の回転方向と洗浄水噴射ノズル機構750の洗浄水噴射ノズル753を支持し洗浄水噴射ノズル753を半導体ウエーハ10の回転中心Cを通る領域から外周まで揺動する支持アーム752が、揺動範囲において洗浄水噴射ノズル753よりスピンナーテーブル711の矢印Aで示す回転方向上流側に位置するように設定されていることが重要である。即ち、洗浄水噴射ノズル753から噴射された洗浄水は、矢印Aで示す方向に回転する半導体ウエーハ10に衝突した後に矢印Aで示す方向に飛散するので、この洗浄水によって保護膜110が溶解された保護材料も矢印Aで示す方向に飛散する。従って、半導体ウエーハ10に洗浄水が噴射されることによって飛散する洗浄水と保護膜110が溶解された保護材料は、洗浄水噴射ノズル753よりスピンナーテーブル711の矢印Aで示す回転方向上流側に位置する支持アーム752に付着することはない。従って、洗浄水噴射ノズル753から噴射された洗浄水によって保護膜110が溶解された保護材料が洗浄水噴射ノズル753および支持アーム752に付着するのを防止することができる。
【0034】
上述した洗浄工程が終了したら、乾燥工程を実行する。即ち、洗浄水噴射ノズル機構750を待機位置に位置付け、スピンナーテーブル711を例えば3000rpmの回転速度で15秒程度回転せしめる。このとき、エアー供給手段76の図示しない電動モータを作動してエアー噴射ノズル機構760のエアー噴射ノズル763をスピンナーテーブル711に保持された半導体ウエーハ10の回転中心Cに当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめる。
【0035】
上述したように加工後の半導体ウエーハ10に対して洗浄工程および乾燥工程を実施したならば、スピンナーテーブル711の回転を停止するとともに、エアー供給手段76のエアー噴射ノズル機構760を待機位置に位置付ける。そして、スピンナーテーブル機構71を構成する支持機構713を作動してスピンナーテーブル711を図3に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル711に保持されている半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。次に、スピンナーテーブル711上の加工後の半導体ウエーハ10は、第1の被加工物搬送手段16によって仮置き部14aに配設された位置合わせ手段14に搬出する。位置合わせ手段14に搬出された加工後の半導体ウエーハ10は、被加工物搬出・搬入手段15によってカセット13の所定位置に収納される。
【符号の説明】
【0036】
1:レーザー加工装置
2:装置ハウジング
3:チャックテーブル
4:レーザー光線照射手段
41:レーザー光線発振手段
42:集光器
5:撮像機構
6:表示手段
7:保護部材被膜兼洗浄手段
71:スピンナーテーブル機構
711:スピンナーテーブル
712:電動モータ
72:洗浄水受け手段
74:保護部材供給手段
740:保護材料供給ノズル機構
75:洗浄水供給手段
750:浄水噴射ノズル機構
76:エアー供給手段
760:エアー噴射ノズル機構
10:半導体ウエーハ
100:液状の保護部材
110:保護膜
11:環状のフレーム
12:保護テープ
13:カセット
14:位置合わせ手段
15:被加工物搬出・搬入手段
16:第1の被加工物搬送手段
18:第2の被加工物搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水溶性の保護膜が被覆されたウエーハをスピンナーテーブルに表面を上側にして保持し、該スピンナーテーブルを回転するとともに洗浄水噴射ノズルから洗浄水をウエーハの表面に向けて噴射しつつ洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで移動することにより、ウエーハの表面に被覆された保護膜を洗浄し除去するウエーハの洗浄方法であって、
洗浄水噴射ノズルを支持し該洗浄水噴射ノズルをウエーハの回転中心を通る領域から外周まで揺動する支持アームが、揺動範囲において該洗浄水噴射ノズルよりスピンナーテーブルの回転方向上流側に位置するように設定されている、
ことを特徴とするウエーハの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−245092(P2010−245092A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88852(P2009−88852)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】