説明

エリプソメータ

【課題】真空雰囲気中で測定対象物を精度良く測定でき、光ファイバを着脱しても、測定精度に影響の無いエリプソメータを提供する。
【構成】投光部13と受光部14を筺体11の内部に配置し、発光装置12を筺体11の外部に配置し、光配線装置18によって、発光装置12と投光部13とを光接続する。投光部13は入射光を偏光して測定光を生成し、測定対象物7に照射し、反射光を受光部14によって受光して筺体11の外部に配置された分析装置15へ送光すると、分析装置15で膜厚が求められる。測定対象物7を真空雰囲気中で測定でき、光配線装置18と投光部13とを着脱しても、相対的に同じ位置で仮固定され、着脱が測定精度に影響を与えない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリプソメータの技術分野にかかり、特に、検光子や偏光子を回転させなくても膜厚を測定できるエリプソメータの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
真空成膜中に膜厚を測定する方法として、従来では、真空室中に水晶振動子を配置し、測定対象物の表面に薄膜を形成するときに、水晶振動子の表面にも薄膜を成長させ、水晶振動子の振動周波数の変化により、薄膜の膜厚を検出していた。
【0003】
他方、正確な膜厚を測定できる測定装置として、エリプソメータが知られている。
しかし、従来のエリプソメータが採用する測定方法では、投光部や受光部の光学素子を回転させる必要があり、モータ等の駆動系及び駆動系のための電気配線が必要になる。これらを真空室内に配置して成長中の薄膜の膜厚を測定することは極めて困難である。
【0004】
対策として、真空室の壁面に観察窓を設け、真空室の外部に投光部及び受光部を配置し、観察窓を介して真空室内と光のやりとりを行って膜厚を測定することが試みられたが、真空室に設ける観察窓のガラスは、真空室内外の圧力差によってゆがみが発生し、エリプソメータの測定結果に大きな誤差を与えることが分かった。
【0005】
本発明のエリプソメータの測定原理は下記非特許文献に記載されている。
また、CCD素子アレイを使用して真空雰囲気内の測定対象物を測定するエリプソメータには、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−33187号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】加藤貴之、岡和彦、田中哲、大塚喜弘、"周波数領域干渉法に基づく偏光のスペクトル分布測定,"第34回応用物理学会北海道支部学術講演会講演予稿集(応用物理学会北海道支部、札幌、1998)、p.41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は真空雰囲気内に配置された測定対象物上の薄膜の膜厚を直接測定することができるエリプソメータを提供することにある。
また、本発明の更なる課題は、発光装置からの入射光を筺体内に導入する光ファイバを着脱しても、測定に影響を与えないエリプソメータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために創作されたものであって、発光体から放射され、複数の波長の光を含む入射光を射出端子から外部に射出する発光装置と、前記発光装置から射出された前記入射光を通過させる光配線装置と、前記光配線装置を通過し、た前記入射光を偏光させ、筺体内部の配置面上に配置された測定対象物の測定面に照射する投光部と、前記測定面で反射された反射光を受光し、前記反射光に含まれる光の位相差と強度比から、前記測定面に配置された薄膜の膜厚を求めるエリプソメータであって、前記光配線装置は、前記入射光が通過する投光側光ファイバを有し、投光側光ファイバの一端には、出光端子が設けられ、前記投光部には、受光端子が設けられ、前記出光端子と前記受光端子との間は、互いに取り外し可能に装着される仮固定ができ、前記仮固定の状態では、前記出光端子から出光された前記入射光は、前記仮固定がされた前記受光端子から前記投光部に入光されるように構成され、前記受光端子から取り外された前記出光端子を前記受光端子に対して前記仮固定をすると、前記出光端子は、前記受光端子に対して取り外す前と相対的に同じ位置で取り付けられるエリプソメータである。
本発明は、エリプソメータであって、前記投光部は、前記筺体の内部に配置され、前記発光装置は、前記筐体の外部に配置され、前記光配線装置は、前記筺体に気密に取り付けられる中継装置と、前記投光部と前記中継装置とを光接続させる発光側光ファイバとを有し、前記投光側光ファイバは、前記投光部と前記中継装置とを光接続し、前記発光装置から放射された入射光は、前記発光側光ファイバと前記中継装置とを通過して、前記投光側光ファイバに入光されるエリプソメータである。
本発明は、エリプソメータであって、前記発光側光ファイバと前記投光側光ファイバとは、前記中継装置に対して着脱可能に構成されたエリプソメータである。
本発明は、エリプソメータであって、前記筐体は、真空排気可能に構成され、前記筐体の内部には、配置装置が設けられた搬送ロボットが配置され、前記搬送ロボットが動作すると、前記測定対象物を前記配置装置上に載せて移動させるように構成され、前記配置面が、前記投光部に対して予め定められた相対位置にあるときの前記反射光から前記検出結果を得るエリプソメータである。
本発明は、前記筺体と、上記いずれかのエリプソメータを有する真空装置であって、前記筺体内には搬送ロボットが配置され、前記測定対象物を前記筺体の内部と外部との間で移動できるように構成された真空装置である。
本発明は、前記筺体と、上記いずれかのエリプソメータを有する真空装置であって、前記筺体の内部には薄膜生成源が配置され、前記筺体の内部に位置する前記測定対象物の表面に、前記薄膜生成源から放出された微小粒子を到達させて、前記測定対象物表面に前記薄膜を形成する真空装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、真空雰囲気中で測定対象物上に成膜された薄膜の膜厚を、測定対象物を大気に曝さずに、正確に測定することができる。
メンテナンスのために、光ファイバを発光装置や投光部から取り外した後、再装着しても、入射光は、光ファイバ内の同じ場所を通過するので、光ファイバの脱着による測定誤差が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のエリプソメータを用いることができるマルチチャンバ型真空装置の一例
【図2】本発明のエリプソメータを説明するための図
【図3】主光配線を取り外した状態を説明するための図
【図4】入射光、測定光、反射光と、偏光板、第一、第二の高次移相子、測定対象物、検光子、分光器との位置関係を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、マルチチャンバ型真空装置を示している。
このマルチチャンバ型真空装置は、搬送室70を有している。搬送室70は真空槽で構成された筺体11を有しており、筺体11の側壁には、成膜室、エッチング室、アニール室、搬出入室等の一乃至複数台の真空処理装置71〜76が取り付けられている。
【0013】
図2の符号10は、本発明のエリプソメータを示している。
このエリプソメータ10は、発光装置12と、投光部13と、発光装置12と投光部13とを光接続する光配線装置18と、受光部14とを有している。
【0014】
また、筺体11と、各真空処理装置71〜76には真空ポンプがそれぞれ接続されており、筺体11の内部や、各真空処理装置71〜76の内部は真空排気され、真空雰囲気が維持されるようになっている。
【0015】
本発明のエリプソメータ10は、筺体11は搬送室70の真空槽であり、筐体11の内部には、搬送ロボット40が配置されており、発光装置12は筐体11の外部に配置され、投光部13と受光部14とは、筐体11の内部に配置されている。
【0016】
搬送ロボット40は、ロボット本体45と、ロボット本体45に設けられ、ロボット本体45によって回転運動と伸縮運動がされるアーム46と、アーム46の先端に設けられ、アーム46の回転運動と伸縮運動によって、回転移動と直線移動がされるハンド42とを有している。
【0017】
図2の符号7は、測定対象物である。ハンド42は、その表面を配置面として、エリプソメータ10の測定対象物7を乗せて移動できるようにされており、ハンド42の回転移動と直線移動により、ハンド42上の測定対象物7は、搬送室70内を通過して、真空処理装置71〜76間で移動できるようにされている。
【0018】
測定対象物7は、薄膜を形成する測定面を有する基板であり、ここでは、一の真空処理装置71〜76内で測定面上に薄膜が形成された測定対象物7を、薄膜を形成した真空処理装置71〜76内でハンド42上に乗せ、ハンド42を移動させて、測定対象物7を他の真空処理装置71〜76内に搬入する際に、測定対象物7が筺体11内の所定位置で静止して本発明のエリプソメータ10によって膜厚を測定されるように、所定位置でハンド42の移動を一旦停止させる。
【0019】
筺体11内で、測定対象物7表面の薄膜の膜厚を測定する手順を下記に示す。
先ず、発光装置12から説明すると、発光装置12は、発光体81と、発光体81が配置された箱体82を有しており、発光体81は箱体82に対して固定され、通電されると発光する。
【0020】
発光装置12の箱体82には、射出端子35が箱体82に対して固定して設けられている。
発光体81の発光光は、発光装置12内で集光され、射出端子35から測定用の入射光(測定光)として外部に出光される。このエリプソメータ10は、発光光を集光するレンズを省略して説明する。
【0021】
発光装置12から出光された入射光は、光配線装置18に入光し、光配線装置18を通過して投光部13に入光されるように構成されている。
投光部13は、通過する光を直線偏光にする偏光板51と、第一、第二の高次移相子(High-order Retarder)52、53とを有している。
【0022】
図4は、入射光、測定光、反射光と、偏光板、第一、第二の高次移相子、測定対象物、検光子、分光器との位置関係を説明するための図であり、符号91、92、93は、入射光、測定光、反射光を示している。
【0023】
第一、第二の高次移相子52、53は、入射した光が有する互いに直交する直交偏光成分の間の位相差が2πを超える値にする光学特性をそれぞれ有しており、第一又は第二の高次移相子52、53に入射する光に含まれる光の波数をσ(=1/λ)とし、第一、第二の高次移相子52、53の光が透過する距離である厚さをD、複屈折をB(σ)とすると、第一又は、第二の高次移相子52、53のうちの、一方の高次移相子52、53を、互いに直交する直交偏光成分の間の位相差(リタデーション)φ(σ)は、次式で表される。
【0024】
φ(σ) = 2πB(σ)Dσ = 2πLσ+Ф(σ) …… (1)
Lは、中心波数における傾きであり、Ф(σ)は非線形項と定数の和を表す。
【0025】
発光体81から放出された入射光には、発光装置12の特性に従った範囲の波長λの光が含まれており、偏光板51を透過した入射光が、第一、第二の高次移相子52、53を透過し、測定対象物7に反射され、更に検光子61を透過する反射光は、直交偏光成分間で偏光干渉を起こさせ、透過した光のスペクトルを観測すると、波数軸に対してほぼ正弦的に変調されたスペクトルが得られる。
ここでは発光体81にはハロゲンランプが用いられており、入射光には、少なくとも波長530nm〜750nmの範囲の光が含まれている。
【0026】
投光部13に入光された入射光は、投光部13の内部で偏光板51を通過して直線偏光にされた後、第一、第二の高次移相子52、53を透過して測定光にされ、投光部13の外部に射出される。
【0027】
投光部13から投光部13の外部に射出された測定光は、測定対象物7に反射され、検光子61を透過する反射光のスペクトルが緩やかに変動する一つの成分と、異なる周期で擬似的な正弦的に振動する3つの成分からなっていることが確認できる。
【0028】
搬送ロボット40のハンド42は、測定対象物7が配置される配置面を有しており、配置面が、筐体11(搬送室70の真空槽11)内で、測定光が照射される所定位置で静止されている。
【0029】
測定対象物7は板状であり、測定光が入射する測定対象物7の表面は平坦であり、配置面と平行に配置されている。投光部13は、一定の固定された角度で配置面に向けられており、投光部13から射出された測定光は、配置面に配置された測定対象物7の表面に、所定の入射角度で入射する。
【0030】
一般に、入射光と反射光とを含む平面は入射面と呼ばれ、測定対象物7の表面に対して垂直であり、入射光が有する直交偏光成分のうち、電界成分が入射面に対して垂直な平面内で振動する光成分はs偏光成分と呼ばれ、平行な平面内で振動する光成分はp偏光成分と呼ばれている。
【0031】
投光部13から射出された測定光と、測定光の測定対象物7表面での反射光とが位置する入射面に対し、測定光の直交偏光成分のうちの一方がs偏光成分となり、他方がp偏光成分となって測定対象物7表面に入射するようにされている。
【0032】
測定の際、筐体11の内部は真空排気されており、測定対象物7は真空雰囲気に置かれている。
投光部13から射出された測定光は、真空雰囲気中の測定対象物7表面で反射され、反射光となって受光部14に入光される。
【0033】
受光部14の内部には、検光子61が配置されている。検光子61を透過した光のスペクトルが、分析装置15で取得され、それから反射光の波数毎の偏光状態が求められる。
投光部13及び受光部14は、1枚のプレートに固定されている。
【0034】
分析装置15の内部には、分光器などが配置されている。反射光のスペクトルの各成分を周波数フィルタリングにより取り出し、その振幅と位相を復調すれば、4個のストークスパラメータの波数分布を同時且つ独立に求め、薄膜の膜厚や光学定数を算出することができる。このように、本発明によれば、従来のエリプソメータのように検光子や偏光板を回転させなくても、薄膜の膜厚や光学定数などを求めることができる。
【0035】
受光部14内で検出された反射光は、受光部光ファイバ37によって、筺体11の内部から筺体11の外部に導出され、分析装置15に入光されるから、分析装置15は大気中で動作することができるので、分析装置15の動作に支障はなく、また、筺体11の内部雰囲気が分析装置15によって汚染されるようなこともない。
【0036】
ハンド42上の測定対象物7表面の薄膜が測定されると、ハンド42が移動して、測定対象物7は、他の真空処理装置に搬入され、真空処理装置内に配置され、薄膜形成後の真空処理が行われる。このとき、測定した薄膜の膜厚に基いて、真空処理の条件を変更することができ、薄膜の膜厚測定結果と真空処理とを関連付けることができる。
そして、薄膜が形成された他の処理対象物がハンド42上に乗せられ、所定位置で静止され、上記と同様に、ハンド42上の測定対象物7の膜厚や光学定数が測定される。
【0037】
上記のように、入射光を第一、第二の高次移相子52、53を通過させるエリプソメトリでは、異なる測定対象物7を複数回測定する際には、第一、第二の高次移相子52、53と配置面との間の相対位置の調整や、最初に行った位置調整等の初期設定の有効性が維持されるように、発光体81の同じ場所で放射された光は、光ファイバ内の同じ部分を通り、載置面の同じ場所に照射されるようにする必要がある。要するに、発光装置12と、投光部13と、それらの間を接続する光ファイバとの間の位置関係が変更されず、維持されるようにする。
【0038】
他方、本発明では、発光装置12は筐体11の外部に配置されており、メンテナンス等の際に発光装置12を筐体11から取り外すと、元の位置関係を復元して再度取り付ける必要がある。
【0039】
本発明は、筐体11外部に配置された発光装置12内で発生した入射光は、光配線装置18によって、筐体11の内部に導入される。
この光配線装置18は、中継装置17を有しており、中継装置17は、本体板30と、本体板30の片面に設けられた第一の中継端子31と、反対側の面に設けられた第二の中継端子32とを有している。
【0040】
筐体11には、筐体11の厚み方向を貫通された取付孔が設けられており、本体板は、取付孔を閉塞するように、筐体11に気密に固定されている。
【0041】
第一、第二の中継端子31、32は、一方から入光した光が他方から出光されるように構成されており、第一の中継端子31は筐体11の外部の面に配置され、第二の中継端子32は筐体11の内部に向けて配置されており、第一、第二の中継端子31、32により、筐体11の外部で発生した光を、筐体11の内部に導くことができるようにされている。
【0042】
光配線装置18は、発光側光ファイバ21と投光側光ファイバ22とを有している。
発光側光ファイバ21の一端には、入光端子25が設けられ、他端には第一の分割端子26が設けられている。
入光端子25と第一の分割端子26は、射出端子35と第一の中継端子31にそれぞれ取り付けられるように構成されており、発光側光ファイバ21の一端と他端は、入光端子25と第一の分割端子26内に露出され、射出端子35に入光端子25を取り付けると、射出端子35から射出された入射光が、入光端子25内に露出する発光側光ファイバ21の端面から発光側光ファイバ21の内部に入光される。
【0043】
投光部13は収容箱50を有しており、収容箱50には、受光端子36が設けられている。投光側光ファイバ22の一端には、第二の中継端子32に取り付けられる第二の分割端子27が設けられ、他端には受光端子36に取り付けられる出光端子28が設けられている。
【0044】
第一の分割端子26と、第二の分割端子27と、出光端子28とを、第一の中継端子31と、第二の中継端子32と、受光端子36にそれぞれ取り付けると、入光端子25において発光側光ファイバ21内に入光された入射光は、発光側光ファイバ21を通過して第一の分割端子26から出光される。
【0045】
第一の分割端子26から出光された入射光は、第一の中継端子31から中継装置17内に入光され、中継装置17の内部を通過して第二の分割端子27から出光される。
第二の分割端子27から出光された入射光は、第二の分割端子27において、投光側光ファイバ22内に入光され、投光側光ファイバ22を通過して、出光端子28から出光される。
【0046】
出光端子28から出光された入射光は、受光端子36から投光部13内に入光され、上述したように偏光されて測定光が生成され、配置装置(ハンド42)上の測定対象物7に照射され、反射されて生成された反射光が、受光部14に入光され、分析装置15によって薄膜の膜厚や光学定数等が求められる。
【0047】
なお、発光装置12は大気中に配置されており、投光部13は真空雰囲気中に配置されており、従って、発光側光ファイバ21は大気中で発光装置12と中継装置17とを接続し、投光側光ファイバ22は真空雰囲気中で投光装置13と中継装置17とを接続している。
【0048】
測定対象物7の測定面上に形成された薄膜の膜厚と屈折率を、真空雰囲気中と大気中とで測定した。
測定結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
本発明は、発光装置12や分析装置15が筐体11の外部に配置されており、入射光が光配線装置18によって筐体11内に導入されているが、光配線装置18には、筐体11内部と外部の圧力差による歪みは発生しないから、正確な測定を行うことができる。
従って、真空雰囲気中でも大気中での測定と同程度に安定して測定することができている。
【0051】
各端子25〜28、31、32、35、36のうち、出光端子28と受光端子36では、測定精度を向上させるための微調整をした後、着脱(図3は取り外した状態を示している)して、出光端子28と受光端子36とで対面する場所が変わると、測定値に影響があり、微調整の作業が無駄になってしまう。
【0052】
本発明では、出光端子28と受光端子36の間とは、取り外し後、装着して取り外し可能な仮固定するときに、取り外し前と同じ位置で仮固定されるように構成されている。例えば、一方の端子の側面に溝を設け、他方の側面に溝に挿通可能な突起を設け、溝内に突起を滑らせながら端子同士を互いに装着すると、端子同士は相対的に一定の位置で固定される。
【0053】
出光端子28には、投光側光ファイバ22が固定されているから、受光端子36には、仮固定すると、出光端子28と受光端子36の間で接触する部分は、取り外し前に接触していた部分同士が接触又は対面し、投光側光ファイバ22の端面は、偏光板51の取り外し前と同じ部分に対面して仮固定される。
従って、偏光板51の入射光が入射する各位置では、取り外し前と同じ部分を通過した光が入光することになる。
【0054】
他方、射出端子35と受光端子36の間と、第一の分割端子26と第一の中継端子31の間と、第二の中継端子32と第二の分割端子27の間は、相対位置が変わっても測定値に対する影響は無く、接続する端子間の光軸が一致する構造であればよい。
【0055】
なお、上記実施例では、発光側光ファイバ21と投光側光ファイバ22を、中継装置17から取り外しできるように構成したが、投光側光ファイバ22は、中継装置17又は投光部13のいずれか一方又は両方に固定してもよく、固定する場合は端子を設けなくてもよい。
また、発光側光ファイバ21も、中継装置17に着脱できないように固定しても、発光装置12との間を取り外すことができれば良い。
上記実施例では、中継装置17は筐体11に固定したが、筺体11以外の他の装置の部材に設けることができる。
【0056】
以上説明したように、本発明の投光部13は、光配線装置18から入光された入射光から互いに直行する直行偏光成分を生成し、第一、第二の高次移相子52、53によって、生成された直交偏光成分の間に2πを超える位相差をそれぞれ生成させ、直交偏光成分間に偏光干渉を発生させ、波数に対してで変調された測定光を生成し、測定対象物7の測定面に照射していたが、検光子を受光部14内に配置し、検光子を透過した光のスペクトルが、分析装置15で取得され、それから反射光の波数毎の偏光状態が求められる。 分析装置15の内部には、分光器などが配置されている。反射光のスペクトルの各成分を周波数フィルタリングにより取り出し、その振幅と位相を復調すれば、4個のストークスパラメータの波数分布を同時且つ独立に求め、薄膜の膜厚や光学定数を算出することができる。
【0057】
なお、上記実施例では、発光装置12では、箱体82を設け、箱体82の窓54を介して、射出端子35に取り付けられた発光側光ファイバ21の端面に入射光を照射していたが、箱体82ではない部材に射出端子35を固定しても、発光体81に対して、照射端子が固定されていればよい。
【0058】
また、投光部13についても同様であり、上記例では収容箱50の窓55、56を介して、投光部13が入射光を受光し、測定光を送光させていたが、受光端子36と、偏光板51と、第一、第二の高次移相子52、53との位置や姿勢が所定の場所に位置する配置面に対して固定されていればよい。
【0059】
なお、本発明は、筺体内が大気を導入されて大気雰囲気中で測定対象物の薄膜を測定するエリプソメータであっても良い。
また、本発明は、測定対象物表面に薄膜を形成する真空処理装置や、測定対象物表面の薄膜をエッチングする真空処理装置など、種々の真空処理装置の真空槽を筺体として取り付けて、真空雰囲気にされた筺体の内部に配置された測定対象物の測定面上の薄膜の膜厚、屈折率、消衰係数等の薄膜に関する特性値を測定するようにしてもよい。
【0060】
上記実施例では、筺体11内に搬送ロボット40が配置されていたが、本発明のエリプソメータは、基板表面に薄膜を形成するスパッタリングターゲットや、蒸着源などの薄膜生成源が配置された成膜室に設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
11……筺体(真空槽)
12……発光装置
13……投光部
14……受光部
15……分析装置
17……中継装置
18……光配線装置
21……発光側光ファイバ
22……投光側光ファイバ
25……入光端子
26……第一の分割端子
27……第二の分割端子
28……出光端子
35……射出端子
36……受光端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体から放射され、複数の波長の光を含む入射光を射出端子から外部に射出する発光装置と、
前記発光装置から射出された前記入射光を通過させる光配線装置と、
前記光配線装置を通過し、た前記入射光を偏光させ、筺体内部の配置面上に配置された測定対象物の測定面に照射する投光部と、
前記測定面で反射された反射光を受光し、前記反射光に含まれる光の位相差と強度比から、前記測定面に配置された薄膜の膜厚を求めるエリプソメータであって、
前記光配線装置は、前記入射光が通過する投光側光ファイバを有し、
投光側光ファイバの一端には、出光端子が設けられ、
前記投光部には、受光端子が設けられ、
前記出光端子と前記受光端子との間は、互いに取り外し可能に装着される仮固定ができ、
前記仮固定の状態では、前記出光端子から出光された前記入射光は、前記仮固定がされた前記受光端子から前記投光部に入光されるように構成され、
前記受光端子から取り外された前記出光端子を前記受光端子に対して前記仮固定をすると、前記出光端子は、前記受光端子に対して取り外す前と相対的に同じ位置で取り付けられるエリプソメータ。
【請求項2】
前記投光部は、前記筺体の内部に配置され、
前記発光装置は、前記筐体の外部に配置され、
前記光配線装置は、前記筺体に気密に取り付けられる中継装置と、
前記投光部と前記中継装置とを光接続させる発光側光ファイバとを有し、
前記投光側光ファイバは、前記投光部と前記中継装置とを光接続し、
前記発光装置から放射された入射光は、前記発光側光ファイバと前記中継装置とを通過して、前記投光側光ファイバに入光される請求項1記載のエリプソメータ。
【請求項3】
前記発光側光ファイバと前記投光側光ファイバとは、前記中継装置に対して着脱可能に構成された請求項2記載のエリプソメータ。
【請求項4】
前記筐体は、真空排気可能に構成され、前記筐体の内部には、配置装置が設けられた搬送ロボットが配置され、
前記搬送ロボットが動作すると、前記測定対象物を前記配置装置上に載せて移動させるように構成され、
前記配置面が、前記投光部に対して予め定められた相対位置にあるときの前記反射光から前記検出結果を得る請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のエリプソメータ。
【請求項5】
前記筺体と、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のエリプソメータを有する真空装置であって、
前記筺体内には搬送ロボットが配置され、前記測定対象物を前記筺体の内部と外部との間で移動できるように構成された真空装置。
【請求項6】
前記筺体と、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のエリプソメータを有する真空装置であって、
前記筺体の内部には薄膜生成源が配置され、前記筺体の内部に位置する前記測定対象物の表面に、前記薄膜生成源から放出された微小粒子を到達させて、前記測定対象物表面に前記薄膜を形成する真空装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−53921(P2013−53921A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192145(P2011−192145)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】