説明

エンジンの停止時騒音防止装置

【課題】始動用モータの回転駆動力をチェーンを介してエンジンに伝動させる構成において、エンジンの停止直前に、チェーンテンショナーから騒音が発生することを防止する。
【解決手段】エンジン回転数Nen(rpm)が、エンジンの停止要求に基づいてNen0からNen1まで低下する間で、始動用モータのトルク指令値を0から目標トルク値Tmbstopにまで変化させ、その後、Nen2になるまで目標トルク値Tmbstopに維持させ、Nen2から停止するまでの間で目標トルク値Tmbstopから0に戻す。そして、前記トルク指令値に応じて、始動用モータのトルクをエンジンの回転方向とは逆方向に作用させることで、エンジン停止直前における回転変動を抑制し、以って、チェーンの張力変化を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエンジンの停止時騒音防止装置に関し、詳しくは、エンジン停止直前の回転変動を要因として騒音が発生することを防止するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、電気自動車において、ジェネレータを駆動するエンジンを備え、該エンジンの始動・停止をバッテリの端子電圧等に応じて制御することが行われていた(特許公報第2790256号等参照)。
【0003】また、エンジンを動力源とするハイブリッド車両において、エンジン停止時における歯打ち音の発生を低減するためにエンジンのポンプ仕事を大きくする構成が、特開平11−173171号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、エンジン始動用モータの駆動軸に軸支させたスプロケットと、エンジンのクランク軸に軸支させたスプロケットとの間にチェーンを張り渡して巻掛け伝動装置を構成し、該巻掛け伝動装置によって始動用モータの回転をエンジンに伝達する構成としたエンジンにおいて、エンジンの停止直前に、前記チェーンの張力を調整する張力調整機構から騒音が発生することがあった。
【0005】前記騒音は、エンジン停止直前の大きな回転変動の落ち込みのときに、前記チェーンが急激に緩み、該チェーンの緩みに伴って張力調整機構を構成するプランジャが飛び出すことが要因となっているものと推定される。
【0006】前記プランジャは、スプリングで付勢されると共に、チェックバルブを介してシリンダ内にオイルが供給され、該オイルをダンパとして機能させる構成となっており、前記チェックバルブのスプリングのセット荷重やオイル供給孔の穴径の変更等によって、急激なプランジャの飛び出しを抑制することを検討したが、これらの変更は、張力調整に影響するため、要求の張力に調整させつつ、エンジン停止直前の騒音を低減させることが困難であった。
【0007】また、例えば、エンジン停止要求をトリガーとして前記プランジャへのオイル供給経路をバルブで閉じる構成とすれば、通常時の張力調整に影響を与えることなく、エンジン停止時のプランジャの飛び出しを減少させることができるが、係る構成では、バルブの追加が必要になると共に、バルブを設置するためにオイル供給経路を変更する必要が生じるなど、簡便に騒音低減を図ることができないという問題があった。
【0008】本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、エンジン停止直前のプランジャの飛び出しを要因とする騒音を、通常時の張力調整に影響を与えることなく、簡便な構成で低減できるエンジンの停止時騒音防止装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】そのため請求項1記載の発明では、張力調整機構が備えられた巻掛け伝動装置を介してクランク軸を回転駆動する始動用モータを備えたエンジンにおいて、エンジンの停止直前に始動用モータのトルクをクランク軸に作用させる。
【0010】かかる構成によると、エンジンの停止直前に始動用モータのトルクをクランク軸に作用させることで、エンジンの回転変動が抑制され、巻掛け伝動装置を構成するチェーンやベルトなどの張力変化が小さくなる。
【0011】請求項2記載の発明では、始動用モータのトルクを、エンジンの停止直前に、クランク軸の回転方向とは逆方向に作用させる構成とした。かかる構成によると、始動用モータのトルクがエンジンの制動方向に作用して、回転低下を速めつつ回転変動を抑制し、巻掛け伝動装置を構成するチェーンやベルトなどの張力変化が小さくなる。
【0012】請求項3記載の発明では、始動用モータのトルクを、エンジンの停止直前に、クランク軸の回転方向と同じ方向に作用させる構成とした。かかる構成によると、始動用モータのトルクがエンジンを回転させる方向に作用して、回転低下を遅くしつつ回転変動を抑制し、巻掛け伝動装置を構成するチェーンやベルトなどの張力変化が小さくなる。
【0013】請求項4記載の発明では、始動用モータのトルクを、エンジン回転速度に基づき制御する構成とした。かかる構成によると、エンジン回転速度に基づき始動用モータのトルクを作用させるべき回転領域を判断され、また、エンジン回転速度に基づき作用させるべきモータトルクが判断される。
【0014】請求項5記載の発明では、エンジン回転速度毎に予め決定されたトルクに従って始動用モータを駆動制御する構成とした。かかる構成によると、エンジン回転速度毎に予めモータトルクが設定され、エンジン停止要求に伴ってエンジン回転速度が低下するときに、該回転低下に対応してモータトルクが一定のパターンで変更される。
【0015】請求項6記載の発明では、第1エンジン回転速度から第2エンジン回転速度(<第1エンジン回転速度)までの間で、前記始動用モータのトルクを初期値から目標値にまで変化させ、第3エンジン回転速度(<第2エンジン回転速度)から第4エンジン回転速度(<第3エンジン回転速度)までの間で、前記始動用モータのトルクを前記目標値から前記初期値にまで戻す構成とした。
【0016】かかる構成によると、エンジン停止要求に伴う回転低下によって第1エンジン回転速度になると、その時点から第2エンジン回転速度(<第1エンジン回転速度)にまで低下する間で、モータトルクを初期値から目標値にまで変化させ、第2エンジン回転速度から第3エンジン回転速度(<第2エンジン回転速度)まで低下する間では目標値に維持し、第3エンジン回転速度(<第2エンジン回転速度)から第4エンジン回転速度(<第3エンジン回転速度)まで低下する間で、モータのトルクを目標値から初期値に戻し、回転変動を抑制するためのモータトルクの制御を終了させる。
【0017】
【発明の効果】請求項1記載の発明によると、エンジンの停止直前に始動用モータのトルクをクランク軸に作用させることで、回転変動を抑制することができ、これにより、巻掛け伝動装置を構成するチェーンやベルトなどが急激に緩むことを回避できるので、張力調整機構のプランジャの飛び出しによる騒音の発生を抑制できるという効果がある。
【0018】請求項2記載の発明によると、モータトルクをエンジンの制動方向に作用させることで回転変動を抑制し、張力調整機構のプランジャの飛び出しによる騒音の発生を抑制できるという効果がある。
【0019】請求項3記載の発明によると、モータトルクをエンジンの回転方向に作用させることで回転変動を抑制し、張力調整機構のプランジャの飛び出しによる騒音の発生を抑制できるという効果がある。
【0020】請求項4記載の発明によると、騒音が発生する回転領域で必要なモータトルクを作用させることができ、張力調整機構のプランジャの飛び出しによる騒音の発生を的確に抑制できるという効果がある。
【0021】請求項5記載の発明によると、過剰なモータトルクの作用による急激な回転低下や回転低下の間延びの発生を回避しつつ、回転変動を抑制できるという効果がある。
【0022】請求項6記載の発明によると、回転変動の抑制に必要なモータトルクにまで滑らかに変化させ、また、前記必要トルクから滑らかに減らすことができ、停止時のエンジン回転速度に大きな乱れを生じさせることなく、騒音の発生を確実に抑制できるという効果がある。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は、本発明に係る停止時騒音防止装置が適用されるハイブリッド車両を示すシステム構成図である。
【0024】この図1に示すハイブリッド車両は、エンジン1と駆動用モータ2が駆動輪3を駆動する方式であり、2つの駆動力を状況に応じて使い分けることができるようになっている。
【0025】具体的には、エンジン1の出力軸は、電磁クラッチ4を介して無段変速機5に接続され、該無段変速機5の出力がディファレンシャルギヤ6を介して駆動輪3に伝達される。
【0026】また、前記電磁クラッチ4と無段変速機5との間の出力軸に、駆動用モータ2の駆動力が加えられるようになっている。また、エンジン1を回転駆動する始動用モータ7が設けられている。
【0027】一方、制御回路として、前記無段変速機5における変速比を制御する変速機制御回路11、前記駆動用モータ2のモータトルクを制御する駆動用モータ制御回路12、前記電磁クラッチ4の伝達トルクを制御する電磁クラッチ制御回路13、前記エンジン1の出力トルクを制御するエンジン制御回路14、前記始動用モータ7のモータトルクを制御する始動用モータ制御回路15が設けられる一方、これら制御回路を統合制御する車両制御回路16が設けられる。
【0028】前記車両制御回路16には、バッテリからの充電状態の情報、ドライバが操作するアクセル・ブレーキ・シフト位置の情報、車両の車速情報、更には、エンジン1の回転速度・冷却水温度の情報などが入力され、これらの情報に基づいて、変速比,駆動用モータトルク,クラッチトルク,エンジン出力トルク,始動用モータトルクの指令を出力する。
【0029】上記ハイブリッド車両において、エンジン1(及びモータ2)で車両を駆動する走行パターンと、モータ2のみで走行させるパターンとがあり、エンジン1(及びモータ2)で車両を駆動する走行パターンからモータ2のみで走行させるパターンへ移行するときには、エンジン1が自動停止される。
【0030】また、バッテリの電圧が低いと、エンジン1を強制的に起動させ、始動用モータ7を発電機として用いてバッテリに充電するようになっており、充電終了後にエンジン1を走行の駆動源として用いない場合には、エンジン1が自動停止される。
【0031】更に、暖機要求に応じてエンジン1を起動させたときには、暖機完了に伴ってエンジン1が自動停止され、イグニッションスイッチのOFF時にエンジン1が起動していた場合にも、エンジン1が自動停止される。
【0032】前記始動用モータ7は、図2に示すように、エンジン1のクランク軸に軸支させたスプロケット51と、始動用モータ7の駆動軸に軸支させたスプロケット52との間にチェーン53を張り渡してなる巻掛け伝動装置によって、エンジン1を回転駆動する構成である。
【0033】また、前記始動用モータ7によりエンジン1を回転駆動するときに緩み側となる始動用モータ7から送り出される側に、チェーン53の張力を調整するための張力調整機構54が設けられ、張り側には、テンションガイド55が設けられている。
【0034】前記張力調整機構54は、チェーン53の外側を支点Sとして揺動可能に支持されるスラックガイド56と、該スラックガイド56の先端をチェーン53に近づく方向に押圧するテンショナー57とから構成される。
【0035】前記テンショナー57は、図3に示すように、本体60に形成されるシリンダ61と、該シリンダ61内に軸方向へ移動可能に嵌挿されるプランジャ62と、該プランジャ62をシリンダ61から離れる方向に付勢するスプリング63と、前記シリンダ61の底部に開口される給油孔64を閉塞するボール弁65と、該ボール弁65をリテーナ66を固定端として閉塞方向に付勢するスプリング67と、シリンダ61の内周に形成される溝68に嵌合支持され、プランジャ62の外周と摺接するOリング69とから構成される。
【0036】また、前記給油孔64に連続する油路70が、前記本体60に形成されており、前記油路70を介して図示しないオイルポンプからオイルが、ボール弁65がリフトしたときにシリンダ61内に供給されるようになっている。
【0037】上記構成において、前記プランジャ62の先端部が、スラックガイド56の先端をチェーン53に近づく方向に押圧することでチェーン53の張力が調整され、チェーン53の緩みと張りとを繰り返すときに、シリンダ61内に充填されるオイルがダンパとして機能し、プランジャ62の振動が減衰される構成となっている。例えば、チェーン53が緩んだときには、プランジャ62がスプリング63の付勢力によってシリンダ61から突き出す方向に移動し、これに伴ってシリンダ61内の圧力が低下するとボール弁65がリフトして開弁し、オイルが給油孔64を介してシリンダ61内に供給され、この状態からチェーン53が張られると、チェーン53が張力がシリンダ61内のオイルを押しつぶすようにしてプランジャ62を押し戻し、このときにオイルがシリンダ61内から徐々に排出される。
【0038】ところで、前述のように、モータ2のみを用いる走行パターンへの移行などに伴ってエンジン1が自動停止されるときに、エンジン1が周期的に圧縮仕事を行なうことで極低回転域で大きな回転変動が生じ、回転速度が急に落ち込むときにチェーン53が急激に緩む。そして、チェーン53の急激な緩みに追従して前記プランジャ62が急に突き出ると、これが騒音要因となってしまう。
【0039】そこで、本実施の形態では、チェーン53の急激な緩みを生じさせる大きな回転変動の発生を、始動用モータ7の制御によって抑制し、前記プランジャ62が急に突き出ることによる騒音の発生を抑止するようにしてある。
【0040】具体的には、図4のフローチャートに示すようにして、始動用モータ7をエンジン1の停止時に制御する。図4のフローチャートは、前記車両制御回路16において処理されるものであり、ステップS1では、エンジン1の停止要求があるか否かを判別する。
【0041】エンジン1の停止要求がある場合には、ステップS2へ進み、エンジントルクの指令値を0とする燃料カット要求を出力し、また、始動用モータ7のトルク指令値を0とする制御指令を出力する。
【0042】次のステップS3では、前記燃料カット要求に応じた燃料カットによってエンジン回転数Nen(rpm)が予め記憶されたエンジン回転数Nen0(例えば500rpm:第1エンジン回転速度)まで低下したか否かを判別する。
【0043】エンジン回転数NenがNen0以下になると、ステップS4へ進み、そのときのエンジン回転数Nenに応じて始動用モータ7のトルク指令値を決定する。具体的には、エンジン1の回転方向とは逆方向(回生側)に作用させる目標トルク値をTmbstop(例えば10Nm)とし、始動用モータ7のトルクを前記目標トルク値Tmbstopにする回転数(rpm)を、エンジン回転数Nen1(例えば400rpm:第2エンジン回転速度)とするときに、始動用モータ7のトルク指令値を、トルク指令値=Tmbstop×(Nen0−Nen)/(Nen0−Nen1)
として求める。
【0044】即ち、エンジン回転数NenがNen0からNen1まで低下する間で、始動用モータ7のトルクを初期値である0から前記目標トルク値Tmbstopにまで変化させるものであり、エンジン回転数Nen毎に予めトルク値が決められることになる(図5参照)。
【0045】ステップS5では、エンジン回転数NenがNen1以下になったか否かを判別し、エンジン回転数NenがNen1以下であれば、ステップS6へ進んで、始動用モータ7のトルク指令値に、前記目標トルク値Tmbstopをセットする。
【0046】エンジン回転数NenがNen1よりも高い場合には、ステップS4の演算で始動用モータ7のトルク指令値が決められる。ステップS7では、エンジン回転数Nenがエンジン回転数Nen2(例えば100rpm:第3エンジン回転速度)以下なったか否かを判別する。そして、エンジン回転数NenがNen2以下になるまでは、ステップS6へ戻り、始動用モータ7のトルク指令値に、前記目標トルク値Tmbstopをセットする(図5参照)。
【0047】従って、エンジン回転数NenがNen0からNen1まで低下する間で、始動用モータ7のトルクを初期値である0から前記目標トルク値Tmbstopにまで変化させた後、エンジン回転数NenがNen2以下になるまでは、始動用モータ7のトルク指令値が前記目標トルク値Tmbstopに固定されることになる(図5参照)。
【0048】エンジン回転数NenがNen2以下なると、ステップS8へ進み、始動用モータ7のトルク指令値を下式に従って算出する。
トルク指令値=Tmbstop×Nen/Nen2上式は、エンジン回転数Nen3(第4エンジン回転速度)=0rpmとすると、トルク指令値=Tmbstop×(Nen−Nen3)/(Nen2−Nen3)
として表され、エンジン回転数NenがNen2からNen3まで低下する間で、始動用モータ7のトルクを前記目標トルク値Tmbstopから初期値(=0)にまで変化させるものである(図5参照)。
【0049】ステップS9では、エンジン回転数Nenが0rpmであるか否かを判別し、0rpmでないときには、ステップS8へ戻ってトルク指令値を演算させ、0rpmになると、ステップS10へ進んでトルク指令値を0とする。
【0050】上記のように設定される始動用モータ7のトルク指令値が始動用モータ制御回路15に出力され、始動用モータ制御回路15では、図6に示すように、前記トルク指令値,バッテリ電圧,モータ回転数(rpm)に従って始動用モータ7に電流指令値を出力する。
【0051】ここで、前記トルク指令値は、エンジン1の回転方向とは逆方向に作用させるモータトルクであり、該モータトルクがエンジン1のクランク軸に作用する結果、エンジン1の制動力(負荷)として働くことになるから、極低回転域(100〜200rpm)になっても大きな回転変動が発生することを抑止できる。従って、回転変動に伴ってチェーン23が急激に緩むことがなく、プランジャ62が急に突き出ることがないから、プランジャ62の急な突き出しによる騒音の発生を回避できる。
【0052】上記実施形態では、前記始動用モータ7のトルク指令値を、機関1の回転方向と逆方向に作用させるモータトルク(回生トルク)としたが、機関1の回転方向と同じ方向(力行側)に作用させるモータトルク(力行トルク)としても良い。この場合、モータトルクが回転低下を抑制するように働くことで、極低回転域(100〜200rpm)での大きな回転変動を抑止し、チェーン23が急激に緩んでプランジャ62が急に突き出すことによる騒音の発生を回避できる。
【0053】エンジン1の回転方向と同じ方向(力行側)に作用させる始動用モータ7のモータトルクは、図5R>5に示した逆方向に作用させるモータトルクと同様にして、エンジン回転数rpmに応じて、目標値にまで増大させ、その後0にまで戻す構成とすれば良い。
【0054】また、上記実施の形態では、始動用モータ7の駆動力をクランク軸に伝達する巻掛け伝動装置においてチェーン53を用いる構成としたが、ベルトを用いる構成であっても良い。
【0055】また、車両をハイブリッド車両に限定するものではなく、駆動用モータ2を備えずに、エンジン1のみを動力源とする車両において、エンジン1がアイドルストップで自動停止されるときや、イグニッションスイッチのOFF操作に伴って停止されるときに、上記のように始動用モータ7のトルクをクランク軸に作用させる構成としても、同様に騒音を低減する効果が得られる。
【0056】更に、上記実施の形態では、エンジン回転速度(回転数rpm)に応じて始動用モータ7のトルクを制御するようにしたが、例えば、エンジン停止要求が出力された時点又は該停止要求出力時から所定時間が経過した時でモータトルクを目標値にまで立ち上げ、その後時間経過と共にモータトルクを小さくする構成とするなど、エンジン回転速度の情報を用いないでモータトルクを制御することも可能である。
【0057】また、エンジン回転速度の変化速度に基づいてモータトルクを逐次補正する構成とすることもでき、更に、エンジン停止直前に発生した回転変動に基づいて次回の停止時にエンジン1に作用させるモータトルクを補正する学習機能を持たせるようにしても良い。
【0058】尚、本実施形態では、始動用モータに特定して述べているが、これは無論発電機能をも兼備するものであり、これを発電専用とする場合には、上記に示したチェーン(ベルト)の張り側と緩み側とが逆になり、それに伴いテンショナーの位置が図2の下側に配置されることになるが、この場合も同様の手法に基づいた対応策を適用することで騒音を低減できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態における車両のシステム構成図。
【図2】同上実施の形態における始動用モータの巻掛け伝動装置を示す図。
【図3】上記巻掛け伝動装置における張力調整機構を示す断面図(図2のA−A断面図)。
【図4】実施の形態におけるエンジン停止直前の始動用モータの制御を示すフローチャート。
【図5】実施の形態におけるエンジン停止直前の始動用モータの制御を示すタイムチャート。
【図6】実施の形態における始動用モータの制御回路を示す制御ブロック図。
【符号の説明】
1…エンジン
2…駆動用モータ
3…駆動輪
4…電磁クラッチ
5…無段変速機
6…ディファレンシャルギヤ
7…始動用モータ
11…変速機制御回路
12…駆動用モータ制御回路
13…電磁クラッチ制御回路
14…エンジン制御回路
15…始動用モータ制御回路
16…車両制御回路
51,52…スプロケット
53…チェーン
54…張力調整機構
55…テンションガイド
56…スラックガイド
57…テンショナー
62…プランジャ
63,67…スプリング
65…ボール弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】張力調整機構が備えられた巻掛け伝動装置を介してクランク軸を回転駆動する始動用モータを備えたエンジンにおいて、エンジンの停止直前に前記始動用モータのトルクを前記クランク軸に作用させることを特徴とするエンジンの停止時騒音防止装置。
【請求項2】前記始動用モータのトルクを、エンジンの停止直前に、前記クランク軸の回転方向とは逆方向に作用させることを特徴とする請求項1記載のエンジンの停止時騒音防止装置。
【請求項3】前記始動用モータのトルクを、エンジンの停止直前に、前記クランク軸の回転方向と同じ方向に作用させることを特徴とする請求項1記載のエンジンの停止時騒音防止装置。
【請求項4】前記始動用モータのトルクを、エンジン回転速度に基づき制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの停止時騒音防止装置。
【請求項5】エンジン回転速度毎に予め決定されたトルクに従って前記始動用モータを駆動制御することを特徴とする請求項4記載のエンジンの停止時騒音防止装置。
【請求項6】第1エンジン回転速度から第2エンジン回転速度(<第1エンジン回転速度)までの間で、前記始動用モータのトルクを初期値から目標値にまで変化させ、第3エンジン回転速度(<第2エンジン回転速度)から第4エンジン回転速度(<第3エンジン回転速度)までの間で、前記始動用モータのトルクを前記目標値から前記初期値にまで戻すことを特徴とする請求項5記載のエンジンの停止時騒音防止装置。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開2001−263116(P2001−263116A)
【公開日】平成13年9月26日(2001.9.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−77575(P2000−77575)
【出願日】平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】