説明

カーナビゲーション装置

【課題】 カーナビゲーション装置において、案内経路が設定されている場合、その案内経路上にある環状交差点での通過方向案内をユーザが実際に感ずる通過方向に近づけて出力することができるようにする。
【解決手段】 車両が案内経路上の環状交差点Rに接近すると、その環状交差点Rにおける車両の通過方向を案内する。この場合の通過方向の決定は次のようにして行われる。環状交差点Rに入る案内経路上の道路Pと当該環状交差点Rから出る案内経路上の道路Tとの2つの道路について、それぞれ環状交差点Rとの接続位置と当該接続位置から所定距離、例えば500m離れた位置との2位置を結ぶ直線M1,M2を求め、この2本の直線M1,M2のなす角度αにより環状交差点Rでの車両の通過方向を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経路探索機能を有したカーナビゲーション装置において、案内経路上の環状交差点での車両の通過方向情報を出力するようにしたカーナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置では、GPS等により車両の現在位置を検出し、その現在位置周辺の地図を表示装置に表示すると共に、車両の現在位置をその地図上に表示するようにして車両が円滑に所望の場所に到達できるようにしている。
また、カーナビゲーション装置では、目的地が入力されると、現在位置から目的地までの案内経路を探索し、探索した案内経路を表示装置の地図上に通常の色とは異なる色で表示すると共に、交差点などでは車両の進行すべき方向を音声で出力したり、表示画面の片側半分に交差点の拡大図とその交差点における進行方向を矢印で表示したりして、目的地への走行案内を行うようにしている。
【0003】
ところで、交差点のなかには、環状交差点(ロータリ、トラフィックサークル;Traffic circle、ランドアバウト;Round aboutともいわれる。)がある。案内経路上にこの環状交差点が存在する場合、その環状交差点に車両が接近すると、カーナビゲーション装置は、環状交差点への進入方向に対する退出方向(環状交差点に対する通過方向)を音声で出力すると共に、通過方向を矢印で示した環状交差点の拡大図を表示画面に表示するようにしている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−51684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたカーナビゲーション装置では、環状交差点の通過方向を、環状交差点への進入路と環状交差点からの退出路とのなす角度、環状交差点への進入路の接続位置、環状交差点を構成するリンクの変化角に基づいて環状交差点での通過方向の案内を出力している。
しかしながら、このものでは、環状交差点への進入路と退出路とのなす角度については、環状道路への接続位置から例えば20m程度の比較的短い距離をとって2つの道路のなす角度を算出している。このため、環状交差点でカーナビゲーション装置から出力される方向案内が実際のユーザの感覚と一致しない場合が間々ある。
【0005】
例えば、環状交差点を示す図10において、道路LA〜LDは、対面通行道路であり、二股上に分岐した一方通行道路LAi,LAo、LBi,LBo、LCi,LCo、LDi,LDoを通って環状交差点に入り、環状交差点から出るようになっている。なお、環状交差点内は、一方通行、例えば時計回り方向の一方通行となっている。図10に太線で示すように、案内経路が道路LAから環状交差点を通って道路LDへ抜け出るように設定されていた場合、特許文献1のカーナビゲーション装置では、環状交差点に入る一方通行道路LAiと環状交差点から出る一方通行道路LDoとのなす角αによって通過方向の案内情報が出力される。このため、カーナビゲーション装置では、環状交差点での方向案内を「大きく右方向」と案内してしまう。ところが、ユーザは、一方通行道路LAi,LDoの距離が短いため、道路LAからほぼ「右方向」で道路LDへと抜け出る感覚を持ち、カーナビゲーション装置の方向案内に対して違和感を覚える。
また、案内経路が道路LAから道路LCへと抜け出るものであった場合、ユーザは環状交差点をほぼ直進と感じるが、カーナビゲーション装置では、「斜め右方向」と方向案内を出力してしまう。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、環状交差点での通過方向案内をユーザが実際に感ずる通過方向に近づけて出力することができるカーナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、環状交差点への進入路と当該環状交差点からの退出路との2つの道路について、環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求め、この進入路と退出路とについて求めた2本の直線のなす角度により当該環状交差点に対する通過方向を算出することを特徴とする。
この構成によれば、環状交差点への進入路や退出路が環状交差点近くで曲がっていても、環状交差点での通過方向の案内をユーザの感覚に近づけて出力することができる。
【0008】
この場合、環状交差点への進入路と退出路との2つの道路について、環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求める際、その接続位置からの所定距離は、道路の種類に応じて変えることができる。
このように所定距離を道路の種類に応じて変えるようにすれば、例えば県道以下の小さな道路では、本来的にカーブが多いという事情があるが、そのような道路については、環状交差点から離れた位置での道路自体のカーブの影響を受けることなく、通過方向情報を出力することができる。
【0009】
また、本発明では、環状交差点への進入路および退出路のうちの少なくとも一の道路が、地図データ上で上りと下りに分けて表されているときは、その上りと下りに分けて表されている一の道路については、環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求め、上りと下りに分けて表されていない他の道路については、環状交差点との接続部分における当該道路の延長線を求め、一の道路について求めた直線と他の道路について求めた延長線とのなす角度により、環状交差点に対する通過方向を算出することができる。
このようにすることにより、環状交差点への進入路および退出路のうち、V字状に分岐し2本の一方通行道路を介して環状交差点に接続されている可能性のある道路についてだけ、環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求めるが、上りと下りに分けて表されておらず、従って環状交差点近くでV字状に曲がっている可能性のない他の道路については、そのような2位置を結ぶ直線を求めるというような計算を行わずとも済む。
【0010】
本発明では、環状交差点への進入路と当該環状交差点からの退出路との2つの道路について、環状交差点との接続位置から所定距離離れた部分におけるそれら2本の道路の延長線のなす角度により環状交差点に対する通過方向を算出するように構成することができる。
このように構成しても、環状交差点への進入路、退出路が環状交差点近くで曲がっていたとしても、その曲がり部分を考慮に入れずに2つの道路のなす角度を算出でき、環状交差点での通過方向の案内をユーザの感覚に近づけて出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施例)
以下、本発明の第1の実施例につき図1ないし図8を参照しながら説明する。図1はカーナビゲーション装置1の概略構成を示している。この図1に示すように、カーナビゲーション装置1は、制御手段としての制御回路2に対して、表示装置3、現在位置取得手段としての位置検出器4、地図データ取得手段としての地図データ入力器5、操作手段としての操作スイッチ群6、音声出力/音声認識装置7、リモコン8からの信号を検出するリモコンセンサ9、外部メモリ10などを接続して構成されている。
【0012】
制御回路2は、マイクロコンピュータとして構成されたもので、CPU、ROM、RAM、I/Oインタフェース(いずれも図示せず)を備えている。これらのうち、ROMには、ナビゲーション用のプログラムなどが格納され、RAMにはプログラム実行時の処理データや地図データ入力器5から取得した地図データなどが一時的に格納される。
位置検出器4は、絶対方位を検出するための地磁気センサ11、ヨー角速度(ヨーレート)を検出するためのジャイロスコープ12、車両の走行距離を検出するための車速センサ13およびGPS用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機14から構成されており、車両の現在位置情報(経度・緯度情報)や自車両の進んでいる向を算出する部分である。この位置検出器4は、各構成要素が性質の異なる検出誤差を有するため、互いに検出誤差を補間しながら精度の高い位置検出を行うようになっているが、要求される検出精度で現在位置を算出可能であれば全部の構成要素を備える必要はない。
【0013】
地図データ入力器5は、記憶手段としての例えばCD−ROMやDVD−ROMのような大容量の情報記録媒体から地図データを読み取るためのものである。なお、情報記録媒体としては、ハードディスク、光磁気ディスク、大容量メモリカードなどを用いることもできる。情報記録媒体が記憶しているデータとしては、地図データの外、マップマッチング用データ、経路を音声で案内するためのデータ、目的地の地図上の位置を地名などから検索する位置検索データ、同じく目的地の地図上の位置をジャンル別に検索できるようにするためのジャンル別検索データなどを含んでいる。
【0014】
表示装置3は、地図を表示するための例えばカラー液晶ディスプレイからなる表示画面15(図8参照)を主体にして構成されている。操作スイッチ群6は、表示装置3の表示画面15の周りに配置されたメカニカルスイッチ16や表示画面15上に形成されたタッチパネル17などから成り、各種のデータや設定事項などの操作入力を制御回路2に与えるために設けられている。尚、リモコン8も操作スイッチ群6と同様に操作手段として設けられたもので、リモコンセンサ9はリモコン8からの操作入力を受信して制御回路2に与えるようになっている。
【0015】
音声出力/音声認識装置7は、音声合成回路、アンプ、スピーカなどを含んで構成され、制御回路2からの音声情報に応じた任意の音声出力を発生できるようになっている。また、この音声出力/音声認識装置7は、人の音声を認識し、その音声の内容に応じた処理を実行するように制御回路2に音声認識情報を入力する。従って、この音声出力/音声認識装置7も操作手段としての機能を有する。
【0016】
なお、制御回路2には、無線通信手段としての移動電話機18を接続できるようになっている。この移動電話機18は、基地局を介して移動電話網やインターネットなどに接続可能である。このため、移動電話機11を地図データ取得手段として利用して、現在位置情報を地図情報センターに送信し、地図情報センターから現在位置周辺の地図データを受信するように構成することも可能である。
【0017】
制御回路2は、現在位置を地図上に位置付けるマップマッチング処理を実行するという基本的な機能の他に、操作スイッチ群6やリモコン8により出発地と目的地、場合によっては経由地点などの地点データが入力されたときに、その地点データに基づいて出発地から目的地までの経路探索動作を例えばダイクストラ法を用いて行う(経路探索機能)。なお、通常、出発地は現在位置であり、出発地が現在位置であれば、特に出発地としての入力を行う必要はない。そして、制御回路2は、その経路探索結果に応じた案内経路を表示装置3の表示画面15に他の道路と色を異ならせて表示し、且つ案内経路に基づいて音声出力/音声認識装置7からの音声や表示画面15への表示などにより種々の案内を行う(経路案内機能)。
【0018】
経路案内時において、車両が交差点に近付くと、制御回路2は、交差点の拡大図を出力手段としての表示装置3の表示画面15の一部、例えば右側半部に表示すると共に、出力手段としての音声出力/音声認識装置7から音声によって報知する。この交差点の拡大図は、交差点の概略図形を示すと共にその図形上に車両の進行方向を矢印で示してなるものである。但し、交差点が環状交差点である場合には、その拡大図は、例えば図7(a)〜(h)に示すように、環状交差点に入る道路(進入路)と、環状線から出る道路(退出路)をそれぞれ太い白抜きの直線で示すと共に、その進入路と退出路との間を環状交差点を示す太い白抜きの円弧線で接続して構成される。そして、車両の進む方向は、出る道路の先端に矢印を付して示される。
【0019】
さて、情報記録媒体が記憶している地図データは、表示画面15に道路地図を表示するためのデータであって、リンク情報、ノード情報などを含んでいる。これは、周知のように、地図上の道路を交差点、分岐点、合流点、所定角度以上のカーブなどの屈曲点を示すノードにより複数に分割し、それぞれのノード間をリンクとして規定し、それらリンクを接続することによって道路地図を構成するという考え方に基づく。
【0020】
上記リンク情報は、各リンクについて、図6(a)に示すように、リンクの固有ID、道路名、リンク長、道路幅、道路種別(高速道路、国道、県道等)、始点座標、終点座標、向き、環状交差点情報などから構成されている。道路が県道以上で対面通行の場合、その多くは、上りと下りにそれぞれ別々のリンクが規定されている。上りと下りに別々のリンクが規定されている場合には、そのリンクの向き(車両の進む方向)が記載される。対面通行の道路であっても、上りと下りのそれぞれにリンクが規定されておらず、共通リンクのときには、リンクの向きは記載されない。環状交差点情報は、環状交差点を構成するリンクである場合に限り、例えば「round about」と記載される。図4は環状交差点およびその周辺の道路のノードおよびリンクを例示しているが、環状交差点を構成しているリンクA,B,C,D,E,F,G,Hの環状交差点情報には、「round about」と記載されている。
【0021】
一方、ノード情報は、図6(b)に示すように、ノードの固有ID、座標、接続リンク情報、ノード属性などから構成されている。このノード情報において、接続リンク情報は、ノードに接続されているリンクをそのIDで示したもの、ノード属性はそのノードが交差点である場合に交差点であるが記載される。例えば、図4のノードおよびリンクのうち、ノードUo,Ui,Vo,Vi,Wo,Wi,Xo,Xiは、交差点を示すノードであり、そのノード属性には「交差点」と記載されている。また、ノードUo,Ui,Vo,Vi,Wo,Wi,Xo,Xiの接続リンク情報には、それぞれのノードに接続されている3つのリンクのリンクIDが記載されている。例えば、ノードUoの接続リンク情報には、リンクH,A,gのリンクIDが記載され、Uiの接続リンク情報には、リンクA,B,bのリンクIDが記載されている。
【0022】
次に上記構成において、案内経路を探索し、その探索された案内経路に沿って車両の進行方向を案内する場合、特に、環状交差点において、車両の進行方向(通過方向)を算出して出力する場合の作用を図2のフローチャートをも参照しながら説明する。
操作スイッチ群6を操作してカーナビゲーション装置1を目的地設定モードにし、所望の目的地を入力する(ステップS1で「YES」)。すると、制御回路2は、地図情報入力器5により取得された地図データを参照しながら現在位置から目的地までの経路探索を行う(ステップS2:経路探索手段)。そして、制御回路2は、表示画面15に表示されている地図に探索した経路(以下、案内経路)を重ねて表示すると共に、案内経路上のリンクおよびノードを経路順にして記憶手段としての外部メモリ10に記憶する(ステップS3)。ユーザが操作スイッチ群6により案内開始操作を行うと、制御回路2は、探索した案内経路に沿って車両を誘導すべく経路案内を開始する(ステップS4で「YES」)。
【0023】
経路案内に入ると、制御回路2は、位置検出器4からの位置情報によって車両が案内経路上の交差点に接近したか否かを監視する状態となる(ステップS5:交差点接近判断手段)。なお、車両が交差点に接近とは、車両から進行方向前方の交差点までの距離が所定距離以内、例えば300m以内になったことをいうものとする。ここで、現在位置から300m以内の案内経路上に交差点があるか否かは、次のようにして行う。即ち、制御回路2は、外部メモリ10に記憶されている案内経路上のリンクおよびノードを読み出す。そして、制御回路2は、地図データのリンク情報を参照しながら、現在位置から300m以内にあるノードを検索する。次いで、制御回路2は、300m以内のノードについて、地図データのノード情報のノード属性に交差点と記載があるか否かを判別し、交差点と記載があれば、現在位置から300m以内に交差点があること、つまり交差点に接近と判断するものである。
【0024】
車両が交差点に接近したと判断すると(ステップS5で「YES」)、制御回路2は、次にその交差点が環状交差点であるか否かを判断する(ステップS6:交差点種類判別手段)。交差点が環状交差点であるか否かは、交差点を示すノードに接続されているリンクの環状交差点情報に「round about」と記載されているか否かによって判断する。そして、交差点が環状交差点でないと判断した場合(ステップS6で「NO」)、制御回路2は、地図データからその交差点に接続されている道路の平面形状を取得してその拡大図を表示画面15の片側半分に表示し、且つ、その拡大図に車両の進行方向を矢印によって示す(ステップS7)。なお、この際、音声によってもその進行方向が出力される。そして、車両が交差点を通過すると、制御回路2は、交差点の拡大図の表示を停止する。
【0025】
接近している交差点が環状交差点であると判断すると(ステップS6で「YES」)、制御回路2は、環状交差点への進入路と環状交差点からの退出路の種類が県道以下であるか否かを判断する(ステップS9:道路種類判別手段)。県道以下、つまり県道、市道、町道、村道などであった場合、制御回路2は、環状交差点への進入路と環状交差点からの退出路について、環状交差点との接続位置から所定の短距離、例えば20mの範囲を延長し、その2つの延長線のなす角度を算出する(ステップS10:角度算出手段)。
【0026】
この県道以下の道路において、2つの延長線のなす角度を求める場合を、図5により具体的に示す。図5は環状交差点とその周辺の道路をリンクとノードにより示しており、また、案内経路が太線で示されている。環状交差点への進入路(リンクa3,a2,a1)と環状交差点からの退出路(リンクb1,b2,b3,b4)のクラス(階級)は共に県道である。このような形態の環状交差点において、進入路(リンクa3,a2,a1)と退出路(リンクb1,b2,b3,b4)について、それぞれ環状交差点との接続位置(ノードn1,n2)から20mの部分をそのまま延長し、その2つの延長線m1,m2のなす角度αを算出する。ここで、延長線m1,m2のなす角度の算出は、環状交差点に接続されたリンクa1,b1の両端の座標がリンク情報に記載されているので、そのリンクa1,b1の両端の座標から延長線m1,m2の傾き方向が算出でき、その両延長線m1,m2の傾き方向から両延長線m1,m2のなす角度αを算出できるものである。
【0027】
一方、接近している交差点が環状交差点で、環状交差点への進入路と環状交差点からの退出路の道路種類が国道以上であった場合には、制御回路2は、進入路と退出路について、それぞれ環状交差点との接続位置から所定の長距離、例えば500m離れた位置を算出する(ステップS11)。次いで、制御回路2は、環状交差点との接続位置と500m離れた位置の2位置を結ぶ直線を算出してその傾き方向を算出する(ステップS12)。そして、制御回路2は、その2つの直線のなす角度を算出する(ステップS13:角度算出手段)。
【0028】
ここで、この国道以上の場合の2つの直線のなす角度の算出について、具体的に説明する。図3は環状交差点Rとその周辺の道路を示しており、環状交差点Rに接続されている4本の道路P,Q,S,Tは、いずれも対面通行道路で、環状交差点Rの接続位置近くで二股状に分岐している。これらの分岐路P1,P2,Q1,Q2,S1,S2,T1,T2は、一方通行道路で、一方の分岐道路P1,Q1,S1,T1を通って環状交差点Rに入り、他方の分岐道路P2,Q2,S2,T2を通って環状交差点Rから出るようになっている。
【0029】
前述した図4は、図3の道路をノードとリンクで示したもので、リンクa,hは道路Pの上りと下りを示し、リンクb,gは道路P1の分岐道路を示している。また、同様にリンクq,nは道路Qの上りと下り、リンクr,mは道路Qの分岐道路を示し、リンクd,eは道路Sの上りと下り、リンクc,fは道路Sの分岐道路を示し、リンクt,jは道路Tの上りと下り、リンクs,kは道路Tの分岐道路を示している。
【0030】
このような環状交差点Rにおいて、当該環状交差点Rへの進入路である道路P(リンクb側)と環状交差点Rとの接続位置、および環状交差点Rからの退出路である道路T(リンクs側)と環状交差点Rとの接続位置は、それぞれノードUiおよびXoであるので、それらの接続位置はノードUiおよびXoのノード情報から直ちに検索することができる。そして、それら接続位置であるノードUiおよびXoから半径500mの円K1,K2を描き、この円K1,K2と道路P,Tとが交差した位置を接続位置から500m離れた位置L1,L2とする。
【0031】
この500m離れた位置L1,L2の座標は、位置L1,L2が存在するリンクの両端の座標から求められる当該リンクの各点の座標と、ノードUi,Xoの座標から求められる円K1,K2上の各点の座標とから算出することができる。そして、ノードUi,Xoと位置L1,L2とを結ぶ直線M1,M2の傾き方向を算出し、その2つの直線M1,M2とのなす角度αを算出する。なお、以上において、αは進入路側の直線K1から環状道路Rの一方通行方向に向って退出路側の直線K2までの角度である。
【0032】
以上のようにして2つの直線のなす角度αを算出すると、次に制御回路2は、角度αから通過方向を決定する(ステップS14:通過方向算出手段)。この場合、αが0〜10度のときは、通過方向を「左手前方向」と決定し、表示画面15には、図7(a)のように表示する。また、10度を超え60度までは「大きく左方向」と決定して図7(b)のように表示し、60度を越え120度までは「左方向」と決定して図7(c)のように表示し、120度を超え170度までは「斜め左方向」と決定し図7(d)のように表示し、170度を超え190度までは「直進方向」と決定して図7(e)のように表示し、190度を超え240度までは「斜め右方向」と決定して図7(f)のように表示し、240度を超え300度までは「右方向」と決定して図7(g)のように表示し、300度を超え350度までは「大きく右方向」と決定して図7(h)のように表示し、350度を超え360度までは「右手前方向」と決定して図7(i)のように表示する、というように、予め設定された角度と通過方向との関係を示したデータベースに基づいて決定する。
【0033】
通過方向が決定されると、制御回路2は、決定した通過方向を音声出力/音声認識装置7から音声出力すると共に、決定した通過方向に応じた図形を表示装置3に出力して表示画面15の右側半分に拡大表示する(ステップS15:案内制御手段)。そして、制御回路2は、車両が環状交差点から出ると(ステップS16で「YES」)、表示画面15の拡大表示を停止する。
【0034】
以上のような通常の交差点での方向案内、環状交差点での通過方向案内は、目的地に到着するまでの間、案内経路上の各交差点および各環状交差点で行われ、目的地に到着したところで経路案内を終了する(ステップS17で「YES」)。
【0035】
このように本実施例によれば、図3に示すように、環状交差点Rへ進入する道路P1,Q1,S1,T1および環状交差点Rから出る道路P2,Q2,S2,T2が屈曲しているような場合、環状交差点に入る道路と出る道路とについて、環状交差点Rとの接続位置とこの接続位置から500mの離れた位置とを結んだ2つの直線のなす角度M1,M2によって環状交差点Rの通過方向を決定するので、環状交差点Rに直接接続され部分で二股状に分岐する一方通行道路を有した道路であっても、その二股状の一方通行道路の曲がりの影響を少なくして通過方向を決定することができる。このため、通過方向案内を、実際のユーザの感覚に合った案内とすることができる。
【0036】
ところで、県道以下の道路では、カーブが比較的多く、環状道路から500m離れた部分では、その部分よりも少し環状交差点に近くなって、やがて環状交差点に進入してゆこうとする部分とは、道路の方向が違う場合が多い。このため、県道以下の道路についても、環状交差点との接続位置と、その接続位置から500m離れた位置とを結ぶ直線のなす角度によって通過方向を決定すると、かえってユーザの感覚とは異なった通過方向案内をしてしまう場合がある。
【0037】
しかしながら、本実施例では、県道以下の道路については、環状交差点との接続位置と、その接続位置から500mの離れた位置とを結んだ2つの直線のなす角度によって通過方向を決定するのではなく、進入路と退出路とについて、それぞれ環状交差点との接続位置から20mの範囲での2つの道路のなす角度によって通過方向を決定するようにしたので、カーブの影響を受けることなく、ユーザの感覚により合致した通過方向を決定することができる。
【0038】
(第2の実施例)
図9は、本発明の第2の実施例を示す。この実施例では、環状交差点Rへの進入路と退出路について、環状交差点Rとの接続位置から所定距離、例えば100m離れた位置をサンプリングして当該位置の所定長さ部分をそのまま真っ直ぐに延長したとき、その2本の直線のなす角度αによって通過方向を決定するようにしたものである。
【0039】
(その他の実施例)
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
進入路と退出路について、それぞれ環状交差点との接続位置から所定距離離れた位置を求める場合、その所定距離は、第1の実施例では500mと一定の距離に定めたが、これは、道路の種類に応じて、例えば、国道以上では500m、県道以下では200mというように変えても良い。
【0040】
図5において、環状交差点への進入路と環状交差点からの退出路のうち、一方が国道以上の道路であった場合、つまり地図データ上で上りと下りに分けて表されている道路であった場合には、次のようにして環状交差点での通過方向を求めるものである。即ち、国道以上の一の道路については、環状道路との接続位置と、この接続位置から500m離れた位置との2位置を結ぶ直線を求める。一方、県道以下の他の道路については、環状交差点との接続位置から20mの範囲の部分の延長線を求める。そして、上記一の道路について求めた直線と、他の道路について求めた延長線とのなす角度によって通過方向を求める。
500m離れた位置は、環状交差点との接続位置から半径500mの円と交わった位置とするものに限らず、環状交差点との接続位置から道路に沿った距離で500mの位置とするようにしても良い。
環状交差点での通過方向は、表示画面15に表示するだけでも良いし、音声出力/音声認識装置7からの音声だけで報知するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施例を示すカーナビゲーション装置のブロック図
【図2】環状交差点での通過方向を決定するための制御内容を示すフローチャート
【図3】環状交差点での通過方向を決定する方法を説明するための環状交差点周辺の道路を示す図
【図4】図3の環状交差点の周辺道路を地図データ上のノードとリンクで示す図
【図5】図4と異なる環状交差点の周辺道路のノードおよびリンクを示す図
【図6】リンク情報とノード情報の内容を示す図
【図7】環状交差点での通過方向を示す図
【図8】表示装置の正面図
【図9】本発明の第2の実施例を示す図3相当図
【図10】従来例を示す図3相当図
【符号の説明】
【0042】
図中、1はカーナビゲーション装置、2は制御回路(通過方向算出手段、案内制御手段)、3は表示装置(出力手段)、4は位置検出器(現在位置取得手段)、5は地図データ入力器(地図データ取得手段)、7は音声出力/音声認識装置(出力手段)、15は表示画面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地から目的地までの案内経路を探索する経路探索機能を有したカーナビゲーション装置において、
自車両の現在位置を取得するための現在位置取得手段と、
地図データを取得するための地図データ取得手段と、
経路案内のための情報を出力する出力手段と、
前記自車両が前記案内経路上の環状交差点に接近したとき、前記地図データ取得手段により取得された前記地図データに基づいて当該環状交差点に対する通過方向を算出する通過方向算出手段と、
この通過方向算出手段により算出された前記通過方向に基づく案内情報を前記出力手段に出力する案内制御手段と、を備え、
前記通過方向算出手段は、前記環状交差点への進入路と当該環状交差点からの退出路との2つの道路について、前記環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求め、この前記進入路と前記退出路とについて求めた2本の直線のなす角度により当該環状交差点に対する通過方向を算出することを特徴とするカーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記通過方向算出手段は、前記環状交差点への前記進入路と前記退出路との2つの道路について、前記環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求める際、前記所定距離を道路の種類に応じて変えることを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記通過方向算出手段は、前記環状交差点への前記進入路および前記退出路のうちの少なくとも一の道路が、前記地図データ上で上りと下りに分けて表されているときは、その上りと下りに分けて表されている一の道路については、前記環状交差点との接続位置と当該接続位置から所定距離離れた位置との2位置を結ぶ直線を求め、上りと下りに分けて表されていない他の道路については、前記環状交差点との接続部分における当該道路の延長線を求め、前記一の道路について求めた前記直線と前記他の道路について求めた前記延長線とのなす角度により、前記環状交差点に対する通過方向を算出することを特徴とする請求項1記載のカーナビゲーション装置。
【請求項4】
出発地から目的地までの案内経路を探索する経路探索機能を有したカーナビゲーション装置において、
自車両の現在位置を取得するための現在位置取得手段と、
地図データを取得するための地図データ取得手段と、
経路案内のための情報を出力する出力手段と、
前記自車両が前記案内経路上の環状交差点に接近したとき、前記地図データ取得手段により取得された前記地図データに基づいて当該環状交差点に対する通過方向を算出する通過方向算出手段と、
この通過方向算出手段により算出された前記通過方向に基づく案内情報を前記出力手段に出力する案内制御手段と、を備え、
前記通過方向算出手段は、前記環状交差点への進入路と当該環状交差点からの退出路との2つの道路について、前記環状交差点との接続位置から所定距離離れた部分におけるそれら2本の道路の延長線のなす角度により前記環状交差点に対する通過方向を算出することを特徴とするカーナビゲーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−17266(P2007−17266A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198789(P2005−198789)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】