説明

カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを含む集積回路、およびその製造方法

【課題】カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを含む集積回路であって、その製造プロセスにプラズマ環境下での工程が含まれていても、優れた特性のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタを維持する手段を提供する。
【解決手段】1の半導体基板上に配置された、電界効果トランジスタと、MOSトランジスタと、前記電界効果トランジスタと前記MOSトランジスタとを接続するメタル配線と、を含む集積回路であって:前記電界効果トランジスタは、ゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたカーボンナノチューブを含むチャネルと、前記カーボンナノチューブを被覆する絶縁保護膜と、前記絶縁保護膜上であって前記チャネルを覆う領域に配置された金属膜と、前記チャネルに接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記チャネルを制御可能なゲート電極とを有し、ここで前記メタル配線は、プラズマエッチング法により形成された配線である、集積回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを含む集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンナノチューブ(以下「CNT」とも称する)をチャネルとするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(以下「CNT-FET」とも称する)が研究されている(例えば特許文献1参照)。また、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタの優れた特性を利用して、高感度センサーの開発が進められている。
【0003】
CNT-FETの作製は、例えば、基板上の異なる位置に2つの触媒を形成し、2つの触媒を使って触媒間にCNTを成長させる。次に、このCNTを介してソース電極とドレイン電極とを電気的に接続する。
【0004】
図8に、CNT-FETの構成例を示す。図8のCNT-FETは、シリコン等の半導体基板11の両面に、酸化シリコン等のゲート絶縁膜11a、11bが形成されている。ゲート絶縁膜11a上の所定位置には、金属でなる触媒12a、12bが形成されている。また、触媒12a、12bを繋ぐ位置には、触媒12a、12bを用いて成長されたCNT13が形成されている。
【0005】
触媒12a、12bとCNT13は、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材でなる絶縁保護膜14によって被膜保護されている。絶縁保護膜14上には、ソース電極15及びドレイン電極16が形成されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、コンタクトホールを介してCNT13と電気的に接続されている。ソース電極15及びドレイン電極16は、配線が引き出される位置を除いて、酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁材でなる配線保護膜17によって被膜保護されている。そして、配線保護膜17上には、窒化シリコン等でなる最終保護膜19が形成されている。
【0006】
ソース電極15及びドレイン電極16が形成されたゲート絶縁膜11aに対して裏面側のゲート絶縁膜11b上には、ゲート電極18が形成されている。
【0007】
また、カーボンナノチューブからなるチャネルを保護するために、チャネルを被覆する絶縁保護膜上に、金属膜を配置する手法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−71898号公報
【特許文献2】特開2009−289989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、CNT-FETをデバイスとして利用するには、それを制御するためのトランジスタ(制御トランジスタ)を同一基板に配置し、かつCNT-FETと制御トランジスタとをメタル配線で接続することが多い。このメタル配線は、通常、金属膜をプラズマエッチングすることでパターニングして形成する。
【0010】
このメタル配線を、プラズマエッチングを用いて形成するときに、カーボンナノチューブが損傷を受けることがあった。これは、チャネルとなるCNT13をプラズマ環境から十分に保護することができないためであり、つまり、最終保護膜19ではチャネルとなるCNT13を十分に保護することができないことが見出された。
【0011】
そこで本発明は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを含む集積回路であって、その製造プロセスにプラズマ環境下での工程が含まれていても、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタの優れた特性を維持する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明の第1は、以下に示す集積回路、およびそれを含むバイオセンサに関する。
[1] 1の半導体基板上に配置された、電界効果トランジスタと、MOSトランジスタと、前記電界効果トランジスタと前記MOSトランジスタとを接続するメタル配線と、を含む集積回路であって、
前記電界効果トランジスタは、ゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたカーボンナノチューブを含むチャネルと、前記カーボンナノチューブを被覆する絶縁保護膜と、前記絶縁保護膜上であって前記チャネルを覆う領域に配置された金属膜と、前記チャネルに接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記チャネルを制御可能なゲート電極とを有し、
前記メタル配線は、プラズマエッチング法によりパターニング形成された配線である、集積回路。
[2] 前記電界効果トランジスタは、前記金属膜上に配置された、プラズマCVD法で形成された絶縁膜をさらに有する、[1]に記載の集積回路。
[3] 前記[1]に記載の集積回路と、前記基板の表面に形成された反応場と、を有するバイオセンサ。
【0013】
本発明の第二は、以下に示す集積回路の製造方法に関する。
[4] 前記[1]または[2]に記載の集積回路を製造する方法であって、
互いに素子分離された素子領域Aと素子領域Bとを有する半導体基板を準備する工程と、前記素子領域AにMOSトランジスタを作製する工程と、前記素子領域Bにカーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製する工程と、前記MOSトランジスタと前記カーボンナノチューブ電界効果トランジスタとを接続するメタル配線を形成する工程とを含み、
前記メタル配線は、メタル膜をプラズマガスでエッチングすることでパターニング形成される、集積回路を製造する方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カーボンナノチューブチャネルを損傷することなく、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを集積回路に組み込むことができる。よって、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタデバイスの実用化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明におけるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタの第1の例を示す図である。
【図2】本発明におけるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタの第2の例を示す図である。
【図3】本発明の集積回路の例を示す図である。
【図4】本発明の集積回路の製造において、制御トランジスタを作製するフローの例を示す図である。
【図5A】本発明の集積回路の製造において、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製するフローの第1の例を示す図である。
【図5B】本発明の集積回路の製造において、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製するフローの第1の例を示す図である。
【図6A】本発明の集積回路の製造において、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製するフローの第2の例を示す図である。
【図6B】本発明の集積回路の製造において、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製するフローの第2の例を示す図である。
【図7】SOI基板を素子分離する例を示す図である。
【図8】従来のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタの構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の集積回路は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタと、それを制御するトランジスタ(通常はMOSトランジスタ)と、両者を接続するメタル配線と、を有する。これらは、通常、1つの半導体基板に配置されており、半導体基板とは、通常はシリコン基板であるが、SOI基板や化合物半導体基板などであってもよい。
【0017】
1.カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ
本発明の集積回路に含まれるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、ゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたカーボンナノチューブを含むチャネルと、前記カーボンナノチューブを被覆する絶縁保護膜と、前記絶縁保護膜上であって前記チャネルを覆う領域に配置された金属膜と、前記チャネルに接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記チャネルを制御可能なゲート電極とを有する。
【0018】
前記ゲート絶縁膜は、通常、半導体基板上に配置されており、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ハフニウム酸化膜などであるが、通常はシリコン酸化膜である。
【0019】
図1には、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタの第1の例を示す。図1に示されるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1は、両面に酸化シリコン等のゲート絶縁膜21a、21bが形成されているシリコン等の半導体基板20を有する。
【0020】
ゲート絶縁膜21a上の所定位置には、金属でなる一対の触媒33が形成されている。また、一対の触媒33を繋ぐ位置には、触媒33を用いて成長されたカーボンナノチューブが形成され、カーボンナノチューブチャネル32を構成する。
【0021】
触媒33とカーボンナノチューブチャネル32は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等の絶縁材でなる絶縁保護膜24によって被膜保護されている。絶縁保護膜24の厚みは、50[nm]以上で1000[nm]以下とすると好ましい。
【0022】
絶縁保護膜24上には、金属膜30が配置されている。金属膜30は、少なくともカーボンナノチューブチャネル32を覆っていることが好ましい。金属膜30は、アルミニウムやチタン等であることが好ましい。金属膜30の厚みは、10[nm]以上で1000[nm]以下であることが好ましい。
【0023】
金属膜30は、本発明の集積回路の製造工程をプラズマ環境下にて行うときに、チャネル32を構成するカーボンナノチューブを保護して、損傷を防ぐことができる。プラズマ環境下とは、絶縁保護膜29をプラズマCVD法によって成膜するときの環境や、メタル配線100(図3B参照)を形成するためにメタル膜をプラズマエッチングするときの環境などをいうが、特に限定されない。
【0024】
金属膜30上には、さらに絶縁保護膜29が配置されている。絶縁保護膜29は、プラズマCVD法によって形成されることが好ましい。プラズマCVD法によれば、高速に、密着性のよい絶縁保護膜29を成膜することができ、生産性が高まるからである。絶縁保護膜29は、無機絶縁膜であればよいが、窒化シリコン膜などであることが好ましい。
【0025】
さらに、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1は、ソース電極25およびドレイン電極26を有する。ソース電極25およびドレイン電極26は、絶縁保護膜24と、金属膜30と、絶縁保護膜29とを貫通するコンタクトホールを介して、カーボンナノチューブチャネル32と接続している。また、コンタクトホールの内壁には、絶縁酸化膜31が配置されて、金属膜30とソース電極25およびドレイン電極26との導通を防ぐ。
【0026】
カーボンナノチューブチャネル32を制御するゲート電極28は、シリコン基板20のゲート絶縁膜21bに配置されている。このように、ゲート電極28は、ソース電極25およびドレイン電極26が形成されたゲート絶縁膜21aに対して裏面側のゲート絶縁膜21b上に形成されており、いわゆるバックゲート型のゲート電極である。ゲート電極28、ゲート絶縁膜21b及び半導体基板20は、金属−絶縁体−半導体(Metal-Insulator-Semiconductor:MIS)構造を形成しており、ゲート電圧は半導体基板20に直接印加されない。
【0027】
ゲート電極28の材質は、導電性を有するものであれば特に限定されず、通常は、金、白金、チタン、アルミニウムなどの金属であるが、導電性プラスチックなどであってもよい。
【0028】
図2には、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタの第2の例を示す。図2に示されるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-2は、ソース電極25およびドレイン電極26と、絶縁保護膜29との相対位置関係が、図1に示すカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1と相違する。
【0029】
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-2は、両面に酸化シリコン等のゲート絶縁膜21a、21bが形成されているシリコン等の半導体基板20を有する。ゲート絶縁膜21a上の所定位置には、金属でなる一対の触媒33が形成されている。また、一対の触媒33を繋ぐ位置には、触媒33を用いて成長されたカーボンナノチューブが形成され、カーボンナノチューブチャネル32を構成する。そして、触媒33とカーボンナノチューブチャネル32は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等の絶縁材でなる絶縁保護膜24によって被膜保護されている。以上は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1と同様である。
【0030】
絶縁保護膜24上の一部には、金属膜30が配置されている。金属膜30はパターニングされており、CNTチャネル32を覆うように配置されている。また、ソース電極25およびドレイン電極26のためのコンタクトホールを形成する部位には、金属膜30は配置されない。ソース電極25およびドレイン電極26と、金属膜30との導通を防ぐためである。
【0031】
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1と同様に、金属膜30は、本発明の集積回路の製造工程をプラズマ環境下にて行うときに、カーボンナノチューブチャネル23を構成するカーボンナノチューブを保護することができる。
【0032】
パターニングされている金属膜30の上に、絶縁保護膜24’が配置されている。絶縁保護膜24’の厚みは、50[nm]以上で1000[nm]以下とすると好ましい。絶縁保護膜24’の上に、ソース電極25とドレイン電極26とが配置され、絶縁保護膜24と24’を貫通するコンタクトホールを介して、カーボンナノチューブチャネル32と接続している。
【0033】
さらに、ソース電極25とドレイン電極26とを覆うように絶縁保護膜29が配置される。絶縁保護膜29は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1の場合と同様に、プラズマCVD法によって形成されることが好ましい。
【0034】
また、カーボンナノチューブチャネル32を制御するゲート電極28は、シリコン基板20のゲート絶縁膜21bに配置されている。
【0035】
このように、本発明の集積回路に含まれるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、カーボンナノチューブチャネルを保護するための金属膜を有することを特徴とする。カーボンナノチューブは、プラズマによって損傷を受け易く、チャネルとしての性能が大きく劣化するが、本発明におけるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタでは、性能低下が著しく抑制されている。
【0036】
本発明の本発明の集積回路に含まれるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、例示した態様に限定されず、例えばゲート電極は絶縁膜21a側にあってもよいし、半導体基板はシリコン基板に限定されない。
【0037】
2.制御トランジスタとメタル配線
本発明の集積回路に含まれる、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを制御するトランジスタ(制御トランジスタ)は、例えばMOSトランジスタであり、通常はCMOS型トランジスタである。CMOS型トランジスタは、特に限定されず、シングル・ウェル型、ツイン・ウェル型、トリプル・ウェル型などの、いずれでもよい。
【0038】
本発明の集積回路に含まれる制御トランジスタは、メタル配線を介して前述のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタと接続している。メタル配線は、プラズマエッチングによってパターニングされている。したがって、メタル配線はプラズマエッチングされうる金属からなり、アルミまたその合金、銅またはその合金などである。
【0039】
3.集積回路
前述の通り、本発明の集積回路は、1つの半導体基板上に配置されていることが好ましく、通常はシリコン基板上に配置されている。ただし、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタが配置される素子領域と、制御トランジスタが配置される素子領域とは、素子分離されている。素子分離は、例えば素子領域同士の間に厚い絶縁膜を設ければよいが、特に限定されない。
【0040】
図3Bには、本発明の集積回路の例が示される。図3Bに示される集積回路は、1つのシリコン基板20にカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1と、ツイン・ウェル型のCMOS型トランジスタ50が配置されている。カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1は、図1に示されたものと同様である。
【0041】
CMOS型トランジスタ50は、シリコン基板20のうち、絶縁層52(例えば酸化シリコン層)によって素子分離された領域に配置され、NチャネルMOSトランジスタ60と、PチャネルMOSトランジスタ70とを有する。
【0042】
NチャネルMOSトランジスタ60は、シリコン基板20の一部であるP型ウェル61と、P型ウェル61の内部に形成されたN型ソース領域63とドレイン領域65と、ソース領域63に接続するソース電極66と、ドレイン領域65に接続するドレイン電極67と、ゲート電極69とを有する。P型ウェル61とゲート電極69とは、ゲート絶縁膜21aで絶縁されている。
【0043】
同様に、PチャネルMOSトランジスタ70は、シリコン基板20の一部であるN型ウェル71と、N型ウェル71の内部に形成されたP型ドレイン領域73とソース領域75と、ドレイン領域73に接続したドレイン電極76と、ソース領域75に接続したソース電極77と、ゲート電極79とを有する。N型ウェル71とゲート電極79とは、ゲート絶縁膜21aで絶縁されている。また、PチャネルMOSトランジスタ70のドレイン電極76は、NチャネルMOSトランジスタ60のドレイン電極67と接続している。
【0044】
さらに、PチャネルMOSトランジスタ70のソース電極77は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1のソース電極25と、メタル配線100を通じて接続している。このように、CMOS型トランジスタ50と、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10-1とが、メタル配線100を介して接続することで、CMOS型トランジスタ50は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10−1を制御することができる。
【0045】
一般的にメタル配線100は、CMOS型トランジスタとカーボンナノチューブ電界効果トランジスタとを作製したのち、メタル膜を成膜し、それをプラズマガスでエッチングすることでパターニング形成する。プラズマエッチングによれば、生産性が高まるからである。ところが、従来のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、プラズマ雰囲気にさらされると、チャネルを構成するカーボンナノチューブが損傷され、電界効果トランジスタとしての十分な特性を維持できないという問題があった。
【0046】
一方で、本発明におけるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、カーボンナノチューブチャネルを覆うように金属膜が配置されているので、プラズマ雰囲気にさらされても、チャネルを構成するカーボンナノチューブが損傷されないという特徴を有する。
【0047】
そのため、本発明の集積回路を含むセンサは、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタの特性を活かして、高感度な検出装置となりうる。例えば、半導体基板に反応場を設けて、反応場に被検出物質認識分子を結合させることで、センサとすることができる。反応場に被検出物質を提供すると、被検出物質認識分子との反応が生じる。その反応をカーボンナノチューブ電界効果トランジスタで検知することで、被検出物質をセンシングすることができる。反応場の位置、態様などは特に限定されないが、例えば半導体基板の表面のうち、ゲート電極の近傍にあると好ましい場合がある。
【0048】
4.集積回路の製造方法
本発明の集積回路は、例えば以下の工程を含むフローにて製造されうる。
1)互いに素子分離された素子領域Aと素子領域Bとを有する半導体基板を準備する工程
2)素子領域Aに制御トランジスタを作製する工程
3)素子領域Bにカーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製する工程
4)メタル配線を作製する工程
【0049】
1)で準備する、互いに素子分離された素子領域Aと素子領域Bとを有する半導体基板は、例えばSOIウエハ(絶縁膜を内包したウエハ)を用いて得ることができる(図7参照)。図7Aに示されるように、SOI型のシリコンウェハ80を用意する。シリコンウェハ80は、シリコン層81および83と、絶縁膜(酸化シリコン膜)82とを含む。素子領域80Aのシリコン81をエッチングして、絶縁膜82に達する切断溝84を形成する(図7B)。形成した溝84の内部と、ウェハ80の表面とに絶縁層85を形成する(図7C)。絶縁層85のうちウェハ80の表面の絶縁層をエッチングにより除去して、溝内部の絶縁層86を残す(図7D)。素子領域80Aには制御トランジスタを、素子領域80Bにはカーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製する。
【0050】
1)で準備する半導体基板は、通常のシリコン基板(バルクシリコン基板)であってもよく、P型シリコン基板またはN型シリコン基板である。半導体基板は、少なくとも2つの素子領域(素子領域Aおよび素子領域B)を有し、互いに素子分離されている。図4Aには、素子領域20Bと、絶縁層(酸化シリコン層)52によって分離された素子領域20Aとを含むシリコン基板20が示される。
【0051】
2)素子領域20Aに作製される制御トランジスタは、通常はCMOSトランジスタである。CMOSトランジスタを作製するには、半導体基板20の素子領域20AにP型ウェル61と、N型ウェル71とを形成し(図4B);P型ウェル61に、N型ソース領域63とドレイン領域65とを形成し、N型ウェル71にP型ドレイン領域73とソース領域75とを形成し(図4C);シリコン基板の表面に絶縁膜21aおよび絶縁膜21bを成膜し、さらにP型ウェル61上にゲート電極69を形成し、N型ウェル71上にゲート電極79を形成する(図4D)。さらに、ソース領域63に接続するソース電極66と、ドレイン領域65に接続するドレイン電極67とを形成し、ドレイン領域73に接続したドレイン電極76と、ソース領域75に接続したソース電極77とを形成する(図4E)。
【0052】
一方、3)素子領域Bには、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製する。このカーボンナノチューブ電界効果トランジスタの作製は、CMOSトランジスタの作製が完了したのち、つまり図4Eの状態になってから行うか;または、ソース電極やドレイン電極を形成する前、つまり図4Dの状態になってから行うことが好ましい。
【0053】
カーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、例えば図5または図6に示されるフローで作製されうる。図5または図6には、図4Aにおける半導体基板20の素子領域20Bだけが示されており、素子領域20Aが省略されている。
【0054】
図5に示されるように、1)で準備した半導体基板20(図4A参照)の素子領域Bの両面に、絶縁膜(酸化膜)21aおよび21bを形成する(図5-1)。一方の面の絶縁膜21a上に、カーボンナノチューブを作製するための、一対の金属触媒33を配置する(図5-2)。金属触媒33を用いて、アセチレンガスやメタンガスやメタノールなどを原料としてCVD法などによりカーボンナノチューブ32を成長させて、金属触媒間を架橋させる(図5-3)。カーボンナノチューブの作製の具体的条件は特に限定されない。
【0055】
作製したカーボンナノチューブ32を覆うように、絶縁保護膜24が成膜される。さらに、絶縁保護膜上に金属膜30が形成される(図5-4)。
【0056】
金属膜を形成した後、絶縁保護膜29を形成する(図5-5)。この絶縁保護膜29は、プラズマCVD法によって形成することができ、窒化シリコン膜であることが好ましい。
【0057】
絶縁保護膜29と、金属膜30とを貫通するコンタクトホール35を形成する(図5-6)。コンタクトホール35は、絶縁保護膜24を貫通していない。カーボンナノチューブ32を露出させるのは、ソース電極やドレイン電極を形成する工程の直前に行うことが好ましいからである。次に、プラズマCVD法で、コンタクトホール35の内部と絶縁保護膜29の上面に、絶縁酸化膜31を形成する(図5-7)。さらに、絶縁酸化膜31と絶縁保護膜24を貫通するホール37を形成する(図5-8)。そして、ホール37の内部と絶縁酸化膜31の上面にソース電極25とドレイン電極26とを形成し、ゲート絶縁膜21b上にゲート電極(バックゲート電極)28を形成する(図5−9)。
【0058】
さらに、スパッタリング法でソース電極25、ドレイン電極26を形成する。また、ゲート電極28を、絶縁膜21bに配置して電界効果トランジスタとする。
【0059】
また、3)素子領域Bに作製されるカーボンナノチューブ電界効果トランジスタは、例えば図6に示されるフローでも作製されうる。図6に示されるフローのうち、図6-1〜図6-4までは、図5-1〜図5-4と同様である。まず、工程1)で準備する半導体基板20の素子領域Bの両面に絶縁膜21aと21bを形成し(図6-1)、一対の触媒33を配置し(図6-2)、カーボンナノチューブ32を形成し(図6-3)、絶縁保護膜24を成膜し、金属膜30を成膜する(図6-4)。
【0060】
次に、金属膜30をパターニングして、ソース領域とドレイン領域の金属膜を除去する(図6-5)。その後、絶縁保護膜24’を形成する(図6-6)。絶縁保護膜24と絶縁保護膜24’とを貫通するコンタクトホール35を、ウェットエッチングなどにより形成する(図6-6)。コンタクトホール35により、カーボンナノチューブの一部が露出する。
【0061】
次に、電極材となるアルミニウムなどの金属膜36をスパッタリングで成膜し(図6-7)、パターニングしてソース電極25とドレイン電極26とする。その後、絶縁保護膜29を形成するが、これをプラズマCVD法によって形成することができ、窒化シリコン膜とすることが好ましい。また、ゲート電極28をゲート絶縁膜21bに配置して、電界効果トランジスタとする(図6−8)。
【0062】
このようにして、1の半導体基板20に、CMOSトランジスタと、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタとを、別個に形成する。それぞれを作製した状態が、図3Aに示される。それぞれを作製したら、両者をメタル配線100(図3B参照)で接続する。メタル配線は、CMOSトランジスタとカーボンナノチューブ電界効果トランジスタとをつなぐメタル膜を成膜したのちに、プラズマエッチングして配線パターニングすることで形成することが、生産性の点から好ましい。
【0063】
つまり、図3Aの状態の素子に、メタル膜をスパッタリングなどで成膜し、そのメタル膜をプラズマエッチングにより、図3Bのメタル配線100を形成する。このとき、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ10−1もプラズマ環境にさらされる。カーボンナノチューブは、プラズマによって損傷を受けやすいので、従来のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタでは、このときにカーボンナノチューブチャネルが損傷を受け、トランジスタ特性を低下させていた。一方、本発明のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタでは、金属膜によってカーボンナノチューブチャネルを保護しているので、プラズマ環境にさらされてもチャネルが損傷を受けない。よって、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタの優れた特性を維持できる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを含む集積回路であって、その製造プロセスにプラズマ環境下での工程が含まれていても、優れた特性のカーボンナノチューブ電界効果トランジスタを維持する手段が提供される。本発明は、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタを含むデバイスの実用化に寄与する。
【符号の説明】
【0065】
10−1,10−2 カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ
11 シリコン基板
11a,11b ゲート絶縁膜
12a,12b 触媒
13 カーボンナノチューブ
14 絶縁保護膜
15 ソース電極
16 ドレイン電極
17 配線保護膜
18 ゲート電極
19 最終保護膜
20 半導体基板
20A 素子領域
20B 素子領域
21a,21b ゲート絶縁膜
24,24’ 絶縁保護膜
25 ソース電極
26 ドレイン電極
28 ゲート電極
29 絶縁保護膜
30 金属膜
31 絶縁酸化膜
32 CNTチャネル
33 触媒
35 コンタクトホール
36 金属膜
37 ホール
50 CMOS型トランジスタ
52 絶縁層
60 NチャネルMOSトランジスタ
61 P型ウェル
63 N型ソース領域
65 N型ドレイン領域
66 ソース電極
67 ドレイン電極
69 ゲート電極
70 PチャネルMOSトランジスタ
71 N型ウェル
73 P型ドレイン領域
75 P型ソース領域
76 ドレイン電極
77 ソース電極
79 ゲート電極
80 SOI型シリコン基板
84 溝
85 絶縁膜
100 メタル配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の半導体基板上に配置された、電界効果トランジスタと、MOSトランジスタと、前記電界効果トランジスタと前記MOSトランジスタとを接続するメタル配線と、を含む集積回路であって、
前記電界効果トランジスタは、ゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたカーボンナノチューブを含むチャネルと、前記カーボンナノチューブを被覆する絶縁保護膜と、前記絶縁保護膜上であって前記チャネルを覆う領域に配置された金属膜と、前記チャネルに接続されたソース電極およびドレイン電極と、前記チャネルを制御可能なゲート電極とを有し、
前記メタル配線は、プラズマエッチング法によりパターニング形成された配線である、集積回路。
【請求項2】
前記電界効果トランジスタは、前記金属膜上に配置された、プラズマCVD法で形成された絶縁膜をさらに有する、請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
請求項1に記載の集積回路と、前記基板の表面に形成された反応場と、を有するバイオセンサ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の集積回路を製造する方法であって、
互いに素子分離された素子領域Aと素子領域Bとを有する半導体基板を準備する工程と、前記素子領域AにMOSトランジスタを作製する工程と、前記素子領域Bにカーボンナノチューブ電界効果トランジスタを作製する工程と、前記MOSトランジスタと前記カーボンナノチューブ電界効果トランジスタとを接続するメタル配線を形成する工程とを含み、
前記メタル配線は、メタル膜をプラズマガスでエッチングすることでパターニング形成される、集積回路を製造する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−204752(P2011−204752A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68212(P2010−68212)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】