説明

クリーニング機能付搬送部材およびその製造方法

【課題】実質的に粘着力を有さないクリーニング層を備えるクリーニング機能付搬送部材であって、搬送性能に優れ、エッジ付近を含むチャックテーブル全面にわたって均一に異物除去性能に優れ、さらに、ウェハのハンドリング部であるウェハエッジ部分付近への異物付着や汚れ付着が効果的に防止でき、機械式固定方式におけるウェハ接触部への異物付着や汚れ付着が効果的に防止できる、クリーニング機能付搬送部材を提供する。また、そのようなクリーニング機能付搬送部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のクリーニング機能付搬送部材は、クリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材であって、該クリーニング層は実質的に粘着力を有さず、該クリーニング層は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング機能付搬送部材およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、半導体検査装置、フラットパネルディスプレイ検査装置等、異物を嫌う装置を効率よくクリーニングするための、クリーニング機能付搬送部材、および、そのようなクリーニング機能付搬送部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板などの製造装置や検査装置など、異物を嫌う各種の基板処理装置では、各搬送系と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板をつぎつぎと汚染するため、定期的に装置を停止し、洗浄処理する必要があった。その結果、処理装置の稼動率が低下するという問題や装置の洗浄処理のために多大な労力が必要となるという問題があった。
【0003】
このような問題を克服するため、板状部材を搬送することにより基板裏面に付着する異物を除去する方法(特許文献1参照)が提案されている。このような方法によれば、基板処理装置を停止させて洗浄処理を行う必要がないので、処理装置の稼動率が低下するという問題は解消される。しかし、この方法では、異物を十分に除去することはできない。
【0004】
一方、粘着性物質を固着した基板をクリーニング部材として基板処理装置内に搬送することにより、当該処理装置内に付着した異物をクリーニング除去する方法(特許文献2参照)が提案されている。この方法は、特許文献1に記載の方法の利点に加えて異物の除去性にも優れるので、処理装置の稼動率が低下するという問題や装置の洗浄処理のために多大な労力が必要となるという問題はいずれも解消される。しかし、特許文献2に記載の方法によれば、粘着性物質と装置との接触部分が強く接着しすぎて離れないおそれがある。その結果、基板を確実に搬送できないという問題や、搬送装置を破損させるという問題、除塵性に劣るという問題が生じるおそれがある。また、粘着性物質の形成に工数が多く必要となり、生産性が悪いという問題もある。
【0005】
上記のような粘着性物質を固着した基板(クリーニング部材)を作製する方法として、搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層を設けることが提案できる。具体的には、例えば、シリコンウェハなどの搬送部材の表面にクリーニング層を形成し得る液状物を塗布する方法が挙げられる。搬送部材の表面への液状物の塗布手段としては、スピンコータやサイクルコータ等のコーティング式の塗布手段が一般的である。しかし、コーティング式の塗布手段によると、ウェハエッジ部分の塗布厚みが他部に比べて極端に大きくなり、クラウンと呼ばれる状態が発生する。このような状態を有するクリーニング層を使用すると、クリーニング対象のテーブルにはクリーニング層のクラウン部分のみが接触することとなり、結果としてテーブルの大部分をクリーニングできないという問題がある。
【0006】
上記の問題を解消する方法として、シンナーなどでクラウン部分を溶解、除去するエッジリンスが挙げられる。しかし、エッジリンスを施すことによって溶解、除去した残部の厚みを他部と同じ厚みに厳密に制御することは困難である。また、シリコンウェハのVノッチ(1.5mm程度の切れ込み)や、オリエンテーションフラットにシンナーがあたると、四方八方にシンナー液が飛び散り、飛び散ったシンナー液によりクリーニング層の塗布全面が面荒するという問題があった。従って、エッジリンスを施す場合は、ウェハエッジから5mm程度を目処に塗布液を全て除去するのが一般的である。しかしながら、こうしてエッジリンスを施したものをクリーニング機能付搬送部材として使用する場合、ウェハエッジから5mm程度の塗布膜が無い部分ではクリーニングできないという問題がある。基板処理装置によっては、ウェハエッジ付近に異物が多く発生し、場合によってはウェハエッジ部分のみをクリーニングしたいという要求に対応できないという問題がある。
【0007】
さらに、近年のウェハ処理・検査装置におけるウェハのハンドリングにおいては、汚染防止の観点から、ウェハ表裏面に接触しないように、特に直径が300mm程度レベルのウェハの場合、ウェハエッジ部分(厳密にはウェハベベル部と表現することもある)を保持することが主流となっている。しかし、何千枚も上記ハンドリングを続けていくと、ウェハのハンドリング部であるウェハエッジ部分付近が汚れるという問題がある。
【0008】
また、機械式固定方式でウェハをテーブルに固定する場合、何千枚もウェハのハンドリングを続けていくと、テーブル表面が汚れるのみならず、機械式固定部のウェハとの接触部も汚れ、その周辺のチップの歩留まりが低下する問題がある。
【特許文献1】特開平11−87458号公報
【特許文献2】特開平10−154686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、実質的に粘着力を有さないクリーニング層を備えるクリーニング機能付搬送部材であって、搬送性能に優れ、エッジ付近を含むチャックテーブル全面にわたって均一に異物除去性能に優れ、さらに、ウェハのハンドリング部であるウェハエッジ部分付近への異物付着や汚れ付着が効果的に防止でき、機械式固定方式におけるウェハ接触部への異物付着や汚れ付着が効果的に防止できる、クリーニング機能付搬送部材を提供することにある。本発明の別の目的は、そのようなクリーニング機能付搬送部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクリーニング機能付搬送部材は、
クリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材であって、
該クリーニング層は実質的に粘着力を有さず、
該クリーニング層は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成されている。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記搬送部材の一方の面の全面へ形成されたクリーニング層と、上記搬送部材のエッジ部分へ形成されたクリーニング層および上記搬送部材のもう一方の面の一部へ形成されたクリーニング層とが異なる。
【0012】
本発明の別の局面によれば、クリーニング機能付搬送部材の製造方法が提供される。本発明のクリーニング機能付搬送部材の製造方法は、
実質的に粘着力を有さないクリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材の製造方法であって、
該クリーニング層を、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成する。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法と、上記搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法および上記搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法とが異なる。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法がコーティング式の塗布方法であり、上記搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法が噴射式の塗布方法である。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記コーティング式の塗布方法がスピンコート法である。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記噴射式の塗布方法がノズル噴射によるエッジ近傍コート法である。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法がエッジコート法である。
【0018】
好ましい実施形態においては、上記搬送部材の一方の面の全面へ形成するクリーニング層の材料と、上記搬送部材のエッジ部分へ形成するクリーニング層の材料および上記搬送部材のもう一方の面の一部へ形成するクリーニング層の材料とが異なる。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記搬送部材の一方の面の全面へのクリーニング層の形成と、上記搬送部材のエッジ部分へのクリーニング層の形成と、上記搬送部材のもう一方の面の一部へのクリーニング層の形成とが同時に行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実質的に粘着力を有さないクリーニング層を備えるクリーニング機能付搬送部材であって、搬送性能に優れ、エッジ付近を含むチャックテーブル全面にわたって均一に異物除去性能に優れ、さらに、ウェハのハンドリング部であるウェハエッジ部分付近への異物付着や汚れ付着が効果的に防止でき、機械式固定方式におけるウェハ接触部への異物付着や汚れ付着が効果的に防止できる、クリーニング機能付搬送部材を提供することができる。また、そのようなクリーニング機能付搬送部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
≪A.クリーニング機能付搬送部材≫
<A−1.全体構成>
図1は、本発明の好ましい実施形態によるクリーニング機能付搬送部材の概略断面図である。図1に示すように、クリーニング機能付搬送部材200は、クリーニング層20が、搬送部材50の一方の面51の全面と、搬送部材50のエッジ部分52と、搬送部材50のもう一方の面53の一部とを連続的に覆うように形成されている。図1に示す実施形態において、クリーニング層20は、搬送部材50の一方の面51の全面を覆うクリーニング層部分と、搬送部材50のエッジ部分52を覆うクリーニング層部分と、搬送部材50のもう一方の面53の一部を覆うクリーニング層部分とが同じクリーニング層である。
【0022】
図2は、本発明の別の好ましい実施形態によるクリーニング機能付搬送部材の概略断面図である。図2に示すように、クリーニング機能付搬送部材200は、クリーニング層が、搬送部材50の一方の面51の全面と、搬送部材50のエッジ部分52と、搬送部材50のもう一方の面53の一部とを連続的に覆うように形成されているが、該クリーニング層中、搬送部材50の一方の面51の全面を覆うクリーニング層部分21と、搬送部材50のエッジ部分52を覆うクリーニング層部分22および搬送部材50のもう一方の面53の一部を覆うクリーニング層部分23とが、異なるクリーニング層である。
【0023】
なお、本明細書において、「異なるクリーニング層」とは、材料が異なるクリーニング層を意味し、「同じクリーニング層」とは、材料が同じクリーニング層を意味する。
【0024】
本発明のクリーニング機能付搬送部材は、図1や図2に示すように、実質的に粘着力を有さないクリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材であって、該クリーニング層は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成されている。このような構成を有することによって、搬送性能に優れ、エッジ付近を含むチャックテーブル全面にわたって均一に異物除去性能に優れ、さらに、ウェハのハンドリング部であるウェハエッジ部分付近への異物付着や汚れ付着が効果的に防止でき、機械式固定方式におけるウェハ接触部への異物付着や汚れ付着が効果的に防止できる。
【0025】
<A−2.搬送部材>
本発明のクリーニング機能付搬送部材における搬送部材としては、例えば、異物除去の対象となる基板処理装置の種類に応じて任意の適切な基板が用いられ得る。具体例としては、半導体ウェハ(例えば、シリコンウェハ)、LCD、PDPなどのフラットパネルディスプレイ用基板、コンパクトディスク、MRヘッドなどの基板が挙げられる。
【0026】
<A−3.クリーニング層>
本発明のクリーニング機能付搬送部材において、クリーニング層は、実質的に粘着力を有さない。すなわち、例えば、粘着性物質から形成されたクリーニング層や、粘着テープを固着することで形成したクリーニング層は、本発明におけるクリーニング層からは除外される。粘着力を有するクリーニング層を備えると、該クリーニング層と装置との接触部分が強く接着しすぎて離れないおそれがある。その結果、基板を確実に搬送できないという問題や、搬送装置を破損させるという問題、除塵性に劣るという問題が生じるおそれがある。また、粘着力を有するクリーニング層の形成に工数が多く必要となり、生産性が悪いという問題もある。
【0027】
本発明におけるクリーニング層は、その表面の算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、かつ、最大高さRzが1.0μm以下である凹凸形状を有することが好ましい。このような算術平均粗さおよび最大高さを有することで、クリーニング層は、平滑表面に比べて顕著に大きい表面積を有し、かつ、凹凸の大きさ(深さ)が小さい表面形状を有する。クリーニング層がこのような特定の表面形状を有することにより、所定の粒子径(代表的には、0.2〜2.0μm)を有する異物をきわめて効率的に除去することができる。算術平均粗さRaは、好ましくは0.04μm以下、さらに好ましくは0.03μm以下である。一方、算術平均粗さRaの下限は、好ましくは0.002μm、さらに好ましくは0.004μmである。最大高さRzは、好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.7μm以下である。一方、最大高さRzの下限は、好ましくは0.001μm、さらに好ましくは0.002μm、特に好ましくは0.003μmである。算術平均粗さおよび最大高さはいずれも、JIS B0601に規定されている。算術平均粗さおよび最大高さは、例えば、以下の手順で測定される:触針式表面粗さ測定装置(Tencor社製、商品名P−11)において、先端部の曲率が2μmのダイヤモンド製触針を用い、針押し付け力5mg、測定スピード1μm/秒(測定長さ100μm)、サンプリング周期200Hzでデータを取り込む。算術平均粗さは、カットオフ値25〜80μmとして算出する。
【0028】
本発明におけるクリーニング層の引張弾性率は、クリーニング層の使用温度領域において、好ましくは2000MPa以下、より好ましくは0.5〜2000MPa、さらに好ましくは1〜1000MPaである。引張弾性率がこのような範囲であれば、異物除去性能と搬送性能のバランスに優れたクリーニング層が得られる。なお、引張弾性率は、JIS K7127に準じて測定される。
【0029】
本発明におけるクリーニング層は、上述の通り、実質的に粘着力を有さない。具体的には、例えば、シリコンウェハのミラー面に対する180度引き剥がし粘着力が、好ましくは0.2N/10mm幅以下、さらに好ましくは0.01〜0.10N/10mm幅である。このような範囲であれば、クリーニング層は実質的に粘着力を有さず、該クリーニング層と装置との接触部分が強く接着しすぎて離れないという問題や、その結果、基板を確実に搬送できないという問題や搬送装置を破損させるという問題、さらに、除塵性に劣るという問題を回避し得る。180度引き剥がし粘着力は、JIS Z0237に準じて測定される。
【0030】
本発明におけるクリーニング層の厚みは、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは0.5〜10μmである。このような範囲であれば、異物の除去性能と搬送性能のバランスに優れたクリーニング層が得られる。
【0031】
本発明におけるクリーニング層を構成する材料としては、目的や凹凸の形成方法に応じて任意の適切な材料が採用され得る。クリーニング層を構成する材料の具体例としては、耐熱性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。好ましくは耐熱性樹脂である。耐熱性樹脂を採用することで、例えば、オゾンアッシャー、PVD装置、酸化拡散炉、常圧CVD装置、減圧CVD装置、プラズマCVD装置などの高温下で使用される装置に用いても、搬送時に処理装置内での搬送不良や汚染を発生させることなく使用できる。
【0032】
本発明においては、クリーニング層を構成する材料は、そのまま用いてクリーニング層を形成しても良いし、任意の適切な溶剤に溶解して用いてクリーニング層を形成しても良い。
【0033】
上記耐熱性樹脂としては、基板処理装置を汚染する物質を含まない樹脂が好ましい。このような樹脂としては、例えば、半導体製造装置に使用されるような耐熱性樹脂が挙げられる。具体例としては、ポリイミド、フッ素樹脂が挙げられる。ポリイミドが好ましい。
【0034】
好ましくは、上記ポリイミドは、ポリアミック酸をイミド化して得ることができる。当該ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを実質的に等モル比にて任意の適切な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
【0035】
上記テトラカルボン酸二無水物成分としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記ジアミン成分としては、例えば、アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有し、ポリエーテル構造を有するジアミン化合物(以下、PEジアミン化合物と称することがある)、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンが挙げられる。PEジアミン化合物は、高耐熱性、低応力の低弾性率ポリイミド樹脂を得ることができる点で好ましい。
【0037】
PEジアミン化合物としては、ポリエーテル構造を有し、アミン構造を有する末端を少なくとも二つ有する化合物である限り、任意の適切な化合物を採用し得る。例えば、ポリプロピレングリコール構造を有する末端ジアミン、ポリエチレングリコール構造を有する末端ジアミン、ポリテトラメチレングリコール構造を有する末端ジアミン、さらにこれら複数の構造を有する末端ジアミンなどが挙げられる。より具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ポリアミン、またはこれらの混合体から調製されるアミン構造を有する末端を少なくとも二つ有するPEジアミン化合物が好ましい。
【0038】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,9−ジオキサ−1,12−ジアミノドデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(α,ω−ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン)などが挙げられる。脂肪族ジアミンの分子量としては、通常50〜1000000が好ましく、100〜30000がより好ましい。
【0039】
芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルプロパン、3,3´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、4,4´−ジアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0040】
上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられる。原材料等の溶解性を調整するために、非極性溶媒(例えば、トルエンや、キシレン)を併用してもよい。
【0041】
上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応温度は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110〜150℃である。このような反応温度であれば、ゲル化が防止できる。その結果、反応系中にゲル分が残留することがないので、ろ過時の目詰まり等が防止され、反応系からの異物の除去が容易となる。さらに、このような反応温度であれば、均一な反応が実現されるので、得られる樹脂の特性のばらつきを防止できる。
【0042】
上記ポリアミック酸のイミド化は、代表的には不活性雰囲気(代表的には、真空または窒素雰囲気)下で加熱処理することにより行われる。加熱処理温度は、好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180〜450℃である。このような温度であれば、樹脂中の揮発成分を実質的に完全に除去することができる。また、不活性雰囲気で処理することにより、樹脂の酸化や劣化を防止することができる。
【0043】
上記エネルギー線硬化性樹脂は、代表的には、粘着性物質、エネルギー線硬化性物質およびエネルギー線硬化開始剤を含む組成物である。
【0044】
上記エネルギー線硬化性樹脂に含まれ得る粘着性物質としては、目的に応じて任意の適切な粘着性物質が採用される。粘着性物質の重量平均分子量は、好ましくは50〜100万、さらに好ましくは60〜90万である。なお、粘着剤性物質は、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤などの適宜な添加剤を配合したものであってもよい。1つの実施形態においては、上記エネルギー線硬化性樹脂に含まれ得る粘着性物質として、感圧接着性ポリマーが用いられる。感圧接着性ポリマーは、クリーニング層の凹凸形成にノズル法(後述)を用いる場合に好適に用いられる。感圧接着性ポリマーの代表例としては、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系モノマーを主モノマーとしたアクリル系ポリマーが挙げられる。アクリル系ポリマーは、単独でまたは組み合わせて用いられる。必要に応じて、アクリル系ポリマーの分子内に不飽和二重結合を導入して、このアクリル系ポリマー自体にエネルギー線硬化性を付与してもよい。不飽和二重結合を導入する方法としては、例えば、アクリル系モノマーと分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物とを共重合する方法、アクリル系ポリマーと分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物の官能基同士を反応させる方法が挙げられる。
【0045】
別の実施形態においては、上記エネルギー線硬化性樹脂に含まれ得る粘着性物質として、ゴム系やアクリル系、ビニルアルキルエーテル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリアミド系、ウレタン系やスチレン・ジエンブロック共重合体系、融点が約200℃以下等の熱溶融性樹脂を配合してクリープ特性を改良した粘着剤(例えば特開昭56−61468号公報、特開昭61−174857号公報、特開昭63−17981号公報、特開昭56−13040号公報)などが用いられる。これらは、単独でまたは組み合わせて用いられる。
【0046】
より具体的には、上記粘着剤は、好ましくは、天然ゴムや各種の合成ゴムをベースポリマーとするゴム系粘着剤;あるいは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基やヘキシル基、ヘプチル基や2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基の如き炭素数が20以下のアルキル基を有するアクリル酸やメタクリル酸等のエステルからなるアクリル酸系アルキルエステルの1種又は2種以上を用いたアクリル系共重合体をベースポリマーとするアクリル系粘着剤である。
【0047】
上記アクリル系共重合体としては、目的に応じて任意の適切なアクリル系共重合体が用いられる。当該アクリル系共重合体は、必要に応じて、凝集力や耐熱性や架橋性等を有してもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシルエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イコタン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸の如きカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸の如き酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルメタアクリレートの如きヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸の如きスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドの如き(N−置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸アルキリアミノ系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルの如き(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドの如きマレイミド系モノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドの如きイタコンイミド系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクルロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドの如きスクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ブニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムの如きビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルの如きシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルの如きエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールの如きグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレートの如きアクリル酸エステル系モノマー;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートの如き多官能モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等の適宜なモノマー;等の2種以上の共重合が挙げられる。これらのモノマーの配合比等は、目的に応じて適宜設定される。
【0048】
上記エネルギー線硬化性物質としては、エネルギー線(好ましくは光、さらに好ましくは紫外線)によって上記粘着性物質と反応し、三次元網目構造を形成する際の架橋点(分岐点)として機能し得る任意の適切な物質が採用され得る。エネルギー線硬化性物質の代表例としては、分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物(以下、重合性不飽和化合物という)が挙げられる。好ましくは、重合性不飽和化合物は、不揮発性で、かつ重量平均分子量が10,000以下、さらに好ましくは5,000以下である。このような分子量であれば、上記粘着性物質が効率よく三次元網目構造を形成し得る。エネルギー線硬化性物質の具体例としては、フェノキシポリエチレングリコ―ル(メタ)アクリレ─ト、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレ─ト、ポリエチレングリコ―ルジ(メタ)アクリレ─ト、ポリプロピレングリコ―ルジ(メタ)アクリレ─ト、トリメチロ─ルプロパントリ(メタ)アクリレ─ト、ジペンタエリスリト─ルヘキサ(メタ)アクリレ─ト、ウレタン(メタ)アクリレ─ト、エポキシ(メタ)アクリレ─ト、オリゴエステル(メタ)アクリレ─ト、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート,1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらは、単独でまたは組み合わせて用いられる。エネルギー線硬化性物質は、上記粘着性物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部の割合で用いられる。
【0049】
また、エネルギー線硬化性物質としてエネルギー線硬化性樹脂を用いてもよい。エネルギー線硬化性樹脂の具体例としては、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、分子末端にアリル基を有するチオール−エン付加型樹脂や光カチオン重合型樹脂、ポリビニルシンナマートなどのシンナモイル基含有ポリマー、ジアゾ化したアミノノボラック樹脂やアクリルアミド型ポリマーなど、感光性反応基含有ポリマーあるいはオリゴマーなどが挙げられる。さらに、エネルギー線で反応するポリマーとしては、エポキシ化ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルシロキサン等が挙げられる。これらは単独で、または組み合わせて用いられる。エネルギー線硬化性樹脂の重量平均分子量は、好ましくは50〜100万、さらに好ましくは60〜90万である。
【0050】
上記エネルギー線硬化開始剤としては、目的に応じて任意の適切な硬化開始剤(重合開始剤)が採用され得る。例えば、エネルギー線として熱を用いる場合には熱重合開始剤が用いられ、エネルギー線として光を用いる場合には光重合開始剤が用いられる。熱重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトンなどの置換アセトフェノン;ベンジルメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタールなどのケタール;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、シメチルチオキサントンなどのキサントン;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトンなどのベンゾフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール;2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフォニルクロライド;1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム;ベンゾイル;シベンジル;α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2−ヒドロキシメチルフェニルプロパンが挙げられる。エネルギー線硬化開始剤は、エネルギー線硬化性物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部の割合で用いられる。
【0051】
本発明におけるクリーニング層を構成する材料は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。添加剤の具体例としては、界面活性剤、可塑剤、酸化防止剤、導電性付与材、紫外線吸収剤、光安定化剤が挙げられる。用いる添加剤の種類および/または量を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有するクリーニング層が得られ得る。
【0052】
≪B.クリーニング機能付搬送部材の製造方法≫
本発明のクリーニング機能付搬送部材の製造方法は、実質的に粘着力を有さないクリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材の製造方法であって、該クリーニング層を、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成する。
【0053】
クリーニング層を、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。
【0054】
上記クリーニング層の形成方法としては、例えば、(1)搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法と、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法と、搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法とが同じようにする形成方法、(2)搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法と、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法および搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法とを異なるようにする形成方法、が挙げられる。
【0055】
上記(1)搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法と、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法と、搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法とが同じようにする形成方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。好ましくは、例えば、クリーニング層を形成する材料を入れた槽に搬送部材を浸漬してクリーニング層を形成するディッピング法、クリーニング層を形成する材料を真空蒸着によって搬送部材に固着させる真空蒸着法、エネルギー線硬化性樹脂を搬送部材に塗布した後にエネルギー線を照射する方法、が挙げられる。
【0056】
上記ディッピング法を採用する場合は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うようにクリーニング層が形成するように、ディッピングを行う際の搬送部材の方向や向きを適宜調整する。
【0057】
上記真空蒸着法を採用する場合は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うようにクリーニング層が形成するように、真空蒸着を行う際の搬送部材の方向や向きを適宜調整する。
【0058】
上記エネルギー線を照射する方法を採用する場合は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うようにクリーニング層が形成するように、選択的にエネルギー線を照射すればよい。選択的にエネルギー線を照射する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、エネルギー線遮光性材料を用いて所定のパターンのマスクを作製し、そのマスクを介してエネルギー線照射を行う方法;クリーニング層側のセパレーターに予め部分的にエネルギー線遮光印刷を施したものを使用し、該クリーニング層側のセパレーターを介してエネルギー線照射を施す方法が挙げられる。また、エネルギー線を遮光するパターンは、目的に応じて適宜設定され得る。具体例としては、格子状、水玉状、市松状、モザイク状が挙げられる。
【0059】
上記エネルギー線としては、目的に応じて任意の適切なエネルギー線が採用され得る。具体例としては、紫外線、電子線、放射線、熱等が挙げられる。好ましくは、紫外線である。紫外線の波長は、目的に応じて適宜選択され、好ましくは、中心波長が320〜400nmである。紫外線発生源としては、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、Xe−Hgランプ、ディープUVランプ等が挙げられる。紫外線積算光量は目的に応じて適宜設定される。具体的には、紫外線積算光量は、好ましくは100〜8000mJ/cm2であり、さらに好ましくは500〜5000mJ/cm2である。
【0060】
上記(2)搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法と、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法および搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法とを異なるようにする形成方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法としてコーティング式の塗布手段を採用し、搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法として噴射式の塗布手段を採用する形成方法が挙げられる。
【0061】
上記コーティング式の塗布手段としては、任意の適切なコーティング式の塗布方法を採用し得る。代表的には、例えば、スピンコート法、サイクルコート法が挙げられる。
【0062】
噴射式の塗布手段としては、任意の適切な噴射式の塗布方法を採用し得る。代表的には、例えば、ノズル噴射によるエッジ近傍コート法が挙げられる。
【0063】
本発明においては、搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法としてスピンコート法を採用し、搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法としてノズル噴射によるエッジ近傍コート法を採用することが好ましい。このような方法を採用することにより、効率的に、搬送部材の一方の面の全面と搬送部材のエッジ部分と搬送部材のもう一方の面の一部とに、より均一なクリーニング層を形成することができるからである。
【0064】
本発明においては、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法として、エッジコート法を採用することが好ましい。エッジコート法は、搬送部材のエッジ部分へのコーティング機能を有する装置などを用いて、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層の材料をコーティングする方法である。
【0065】
本発明においては、また、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成するための独立した方法を採用することなく、搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成しても良い。例えば、上述した噴射式の塗布方法によって、搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層の材料が塗布されるとともに、搬送部材のエッジ部分へもクリーニング層の材料が浸入塗布され、結果として、搬送部材のエッジ部分および搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層が形成される。
【0066】
本発明においては、搬送部材の一方の面の全面へ形成するクリーニング層の材料と、搬送部材のエッジ部分へ形成するクリーニング層の材料および搬送部材のもう一方の面の一部へ形成するクリーニング層の材料とが異なっていても良い。例えば、搬送部材のエッジ部分へ形成するクリーニング層の材料として、異物付着や汚れ付着がより一層効果的に防止できる材料を採用することにより、ウェハのハンドリング部であるウェハエッジ部分付近への異物付着や汚れ付着が効果的に防止でき、機械式固定方式におけるウェハ接触部への異物付着や汚れ付着が効果的に防止できる。
【0067】
本発明においては、搬送部材の一方の面の全面へのクリーニング層の形成と、搬送部材のエッジ部分へのクリーニング層の形成と、搬送部材のもう一方の面の一部へのクリーニング層の形成とが同時に行われても良い。同時に行うことによって、生産性良くクリーニング機能付搬送部材を製造し得る。また、形成されるクリーニング層の均一性が向上することもあり得る。
【0068】
≪C.クリーニング方法≫
本発明のクリーニング機能付搬送部材を用いた、好ましい実施形態によるクリーニング方法は、上記クリーニング機能付搬送部材を所望の基板処理装置内に搬送して、その被洗浄部位に接触させることにより、当該被洗浄部位に付着した異物を簡便かつ確実にクリーニング除去することができる。
【0069】
上記クリーニング方法により洗浄される基板処理装置は、特に限定されない。基板処理装置の具体例としては、本明細書ですでに記載した装置に加えて、回路形成用の露光照射装置、レジスト塗布装置、イオン注入装置、ドライエッチング装置、ウェハプローバなどの各種の製造装置や検査装置、さらに、オゾンアッシャー、PVD装置、酸化拡散炉、常圧CVD装置、減圧CVD装置、プラズマCVD装置などの高温下で使用される基板処理装置などが挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例における「部」は重量基準である。
【0071】
〈引張弾性率〉
JIS K7127に準じて測定した。具体的には、所定の基材上にクリーニング層を形成した後、当該クリーニング層を剥離し、動的粘弾性測定装置を用いて測定した。
【0072】
〔実施例1〕
ポリエーテルジアミン(サンテクノケミカル製、XTJ−510(D4000))44.0g、および、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル25.3gを、NMP(N−メチルピロリドン)397.4g中で溶解した。次に、PMDA(ピロメリット酸二無水物)30.0gを加え、反応させた。冷却し、樹脂溶液のワニスAを得た。
このワニスAを、8インチシリコンウェハのミラー面全面、エッジ部分、裏面の一部(端部から10mm幅の部分)に、該ミラー面全面にはスピンコート法にて、該エッジ部分はエッジコート法にて、該裏面の一部はノズル噴射によるエッジ近傍コート法にて、ウェット厚みが約40μmとなるようにそれぞれ同時に塗布した。
レーザー式厚み測定器でウェット厚みを測定したところ、平均で39.5μmであった。
ウェハのエッジ部分の近傍にはクラウン状の凸部は見られなかった。
次いで、ホットプレートにて110℃で10分乾燥後、真空乾燥炉にて280℃×180分でキュアし、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うようにクリーニング層が形成された、8インチウェハ状のクリーニング機能付搬送部材Aを得た。
クリーニング層の引っ張り弾性率(JIS K7127に準ずる)を測定した結果、200MPaであった。
クリーニング機能付搬送部材Aのエッジ部分の周辺を全周にわたり、キーエンス社製のマイクロスコープで観察したところ、ウェハベベルと呼ばれるエッジ部分に途切れなく均一にクリーニング層が形成されていることが確認できた。
クリーニング機能付搬送部材Aを、ウェハエッジハンドラー機構と機械式固定方式を有するウェハ処理装置に、クリーニング面を下側に向けて搬送した後,ウェハエッジハンドラー部、機械式固定方式のウェハ接触部、およびチャックテーブルを確認したところ、ウェハエッジハンドラー部、およびチャックテーブルの汚れは除去されていたが、機械式固定方式のウェハ接触部の汚れは部分的に除去できていなかった。
【0073】
〔実施例2〕
クリーニング層の引っ張り弾性率が150MPaになるようD−4000の配合量を増やし、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルを減らした以外は実施例1と同様にして、ポリアミド酸のワニスBを得た。
ワニスBをエッジ部分および裏面の一部(端部から10mm幅の部分)のコートに用いた以外は実施例1と同様にして、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うようにクリーニング層が形成された、8インチウェハ状のクリーニング機能付搬送部材Bを得た。
クリーニング機能付搬送部材Bのエッジ部分の周辺を全周にわたり、キーエンス社製のマイクロスコープで観察したところ、ウェハベベルと呼ばれるエッジ部分に途切れなく均一にクリーニング層が形成されていることが確認できた。
クリーニング機能付搬送部材Bを、ウェハエッジハンドラー機構と機械式固定方式を有するウェハ処理装置に、クリーニング面を下側に向けて搬送した後,ウェハエッジハンドラー部、機械式固定方式のウェハ接触部、およびチャックテーブルを確認したところ、ウェハエッジハンドラー部、およびチャックテーブルの汚れのみならず機械式固定方式のウェハ接触部の汚れも完全に除去できていた。
【0074】
〔比較例1〕
ワニスAを、8インチシリコンウェハのミラー面全面にスピンコート法にてウェット厚みが約40μmとなるように塗布した以外は実施例1と同様にして塗布した。搬送部材の一方の面の全面を連続的に覆うように形成されたクリーニング層の、エッジ部分近傍の塗布厚みを測定したところ、60μm〜70μmの厚みであった。
ホットプレートにて110℃で10分乾燥後、真空乾燥炉にて280℃×180分でキュアし、搬送部材の一方の面の全面を連続的に覆うようにクリーニング層が形成された、8インチウェハ状のクリーニング機能付搬送部材Cを得た。
クリーニング機能付搬送部材Cのエッジ部分を全周にわたり、キーエンス社製のマイクロスコープで観察したところ、ウェハベベルと呼ばれるエッジ部分にはところどころクリーニング層が見られたが、ほとんどの部分でシリコン面が露出していた。
クリーニング機能付搬送部材Cを、ウェハエッジハンドラー機構と機械式固定方式を有するウェハ処理装置に、クリーニング面を下側に向けて搬送した後,ウェハエッジハンドラー部、機械式固定方式のウェハ接触部、およびチャックテーブルを確認したところ、ウェハエッジハンドラー部および機械式固定方式のウェハ接触部には汚れが固着したままであった。また、チャックテーブルも、中心部付近は汚れが除去されていたが、エッジ部分近傍付近は汚れが固着したままであった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のクリーニング機能付搬送部材は、各種の製造装置や検査装置のような基板処理装置のクリーニングに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるクリーニング機能付搬送部材の概略断面図である。
【図2】本発明の別の好ましい実施形態によるクリーニング機能付搬送部材の概略断面図である。
【符号の説明】
【0077】
20 クリーニング層
21 搬送部材の一方の面の全面を覆うクリーニング層部分
22 搬送部材のエッジ部分を覆うクリーニング層部分
23 搬送部材のもう一方の面の一部を覆うクリーニング層部分
50 搬送部材
51 搬送部材の一方の面
52 搬送部材のエッジ部分
53 搬送部材のもう一方の面
200 クリーニング機能付搬送部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材であって、
該クリーニング層は実質的に粘着力を有さず、
該クリーニング層は、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成されている、
クリーニング機能付搬送部材。
【請求項2】
前記搬送部材の一方の面の全面へ形成されたクリーニング層と、前記搬送部材のエッジ部分へ形成されたクリーニング層および前記搬送部材のもう一方の面の一部へ形成されたクリーニング層とが異なる、請求項1に記載のクリーニング機能付搬送部材。
【請求項3】
実質的に粘着力を有さないクリーニング層を有するクリーニング機能付搬送部材の製造方法であって、
該クリーニング層を、搬送部材の一方の面の全面と、搬送部材のエッジ部分と、搬送部材のもう一方の面の一部とを連続的に覆うように形成する、
クリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項4】
前記搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法と、前記搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法および前記搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法とが異なる、請求項3に記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項5】
前記搬送部材の一方の面の全面へクリーニング層を形成する方法がコーティング式の塗布方法であり、前記搬送部材のもう一方の面の一部へクリーニング層を形成する方法が噴射式の塗布方法である、請求項4に記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング式の塗布方法がスピンコート法である、請求項5に記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項7】
前記噴射式の塗布方法がノズル噴射によるエッジ近傍コート法である、請求項5または6に記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項8】
前記搬送部材のエッジ部分へクリーニング層を形成する方法がエッジコート法である、請求項4から7までのいずれかに記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項9】
前記搬送部材の一方の面の全面へ形成するクリーニング層の材料と、前記搬送部材のエッジ部分へ形成するクリーニング層の材料および前記搬送部材のもう一方の面の一部へ形成するクリーニング層の材料とが異なる、請求項3から8までのいずれかに記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。
【請求項10】
前記搬送部材の一方の面の全面へのクリーニング層の形成と、前記搬送部材のエッジ部分へのクリーニング層の形成と、前記搬送部材のもう一方の面の一部へのクリーニング層の形成とが同時に行われる、請求項3から9までのいずれかに記載のクリーニング機能付搬送部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−153575(P2010−153575A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329839(P2008−329839)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】