ゲート絶縁膜、有機トランジスタ、有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイ
【課題】 より高品質なゲート絶縁膜の製造方法、これを有する有機トランジスタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイを提供することを提供する。
【解決手段】 ゲート電極52と、ゲート絶縁膜54、有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60とから形成されている有機TFT50は、ゲート絶縁膜54について、金属酸化物粒子30とバインダー樹脂とを含み、前記ゲート絶縁膜54の構成材料となる塗布膜32を塗布し、モールド表面42により塗布された塗布膜32の表面を押圧して製造する。
【解決手段】 ゲート電極52と、ゲート絶縁膜54、有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60とから形成されている有機TFT50は、ゲート絶縁膜54について、金属酸化物粒子30とバインダー樹脂とを含み、前記ゲート絶縁膜54の構成材料となる塗布膜32を塗布し、モールド表面42により塗布された塗布膜32の表面を押圧して製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート絶縁膜の製造方法、有機トランジスタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ(以下、有機TFT(Thin Film Transistors)ともいう)は様々な用途に用いられている。例えば、有機TFTは、有機EL表示装置における有機EL素子を駆動する手段として用いられている。
【0003】
有機EL素子は、基板上に、電極及び電極間に少なくとも発光層を備えた有機固体層を備え、両側の電極から有機固体層中の発光層に電子と正孔を注入し、有機発光層で発光を起こさせる素子であり、高輝度発光が可能である。また有機化合物の発光を利用しているため発光色の選択範囲が広いなどの特徴を有し、光源や有機EL表示装置などとして期待されている。特に有機EL表示装置は、一般に、広視野、高コントラスト、高速応答性および視認性に優れ、薄型・軽量で、低消費電力のフラットパネルディスプレイなどとして期待されている。
【0004】
有機EL表示装置は、少なくとも陽極、有機発光層、陰極を備える有機EL素子からなる画素と前記有機EL素子を点灯・制御する有機トランジスタが備えられるものである。有機EL表示装置において、マトリクス状に配置した有機EL素子を、互いに直交したストライプ状の走査電極およびデータ電極(信号電極)により外部から駆動するパッシブマトリクス方式と、画素ごとに有機トランジスタからなるスイッチング素子とメモリ素子を備え、有機EL素子を点灯させるアクティブマトリクス方式とがある。
【0005】
有機トランジスタを用いたアクティブマトリクス方式は、一般に、画素数の増大に伴いパッシブマトリックス方式に比べ、TFTにより有機EL素子が駆動されるアクティブマトリクス方式のほうが優位とされている。これは、パッシブマトリクス方式は、走査電極が選択された期間のみ各画素の有機EL素子が点灯し、画素数が多くなるに従い、有機EL素子の点灯期間が短くなって平均輝度が低下する傾向にあるのに対し、アクティブマトリクス方式は、画素ごとにTFTからなるスイッチング素子とメモリ素子を備えているため有機EL素子の点灯状態が保持され、高輝度、高効率で長寿命の動作が可能であり、ディスプレイの高精細化や大型化に有利である傾向にあるなどの理由による。
【0006】
図1には、背景技術に係る有機EL表示装置PAが示される。有機EL表示装置PAは、基板10と、基板10上に形成されたバリア膜12と、バリア膜12上に形成された有機EL素子100および有機TFT50と、有機EL素子100および有機TFT50を覆う保護膜(パッシベーション膜)20とを有する。
【0007】
有機TFT50は、ソース電極58及びドレイン電極60は、互いに分離して設けられ、ソース電極58とドレイン電極60の間に有機半導体層56を介在させ、ゲート絶縁膜54を介してソース電極58、ドレイン電極60、有機半導体層56と対向されて配置されたゲート電極52を有する構造である。
【0008】
有機TFT自体の性能は、アモルファスシリコンTFT程度である場合が多いが、液晶や電気泳動型の駆動用の素子として用いる分には、有機TFTの性能としては、on/off比がある程度あれば低電流駆動が可能であるため、ゲート絶縁膜における絶縁性の確保などの問題ない場合が多い。
【0009】
ところが一方で、自発光素子である有機EL素子をアクティブマトリクス方式により駆動するには、発光させるために大電流を供給できるトランジスタが必要となる。このため、ゲート絶縁膜としてTa2O5といった高比誘電率の材料を用い、誘引されて発生する多くのキャリアによる大電流を供給できる有機TFTの開発が進められている。
【0010】
一方で様々な利点があることから、塗布液を被塗布材表面に塗布して、固化させることでゲート絶縁膜を形成させる印刷技術でゲート絶縁膜を形成させる方法も検討されている。印刷技術で高比誘電率のゲート絶縁膜を形成するためには、固化後ゲート絶縁膜となる塗布液の選定が問題となる。塗布液としてはバインダー樹脂だけでは一般的に高比誘電率を確保できない傾向にあるので、バインダー樹脂よりも高比誘電率を有する高比誘電率物質を含有させた塗布液を採用する。下記特許文献1には、バインダー樹脂中に単に比誘電率の高い金属酸化物粒子を分散させる方法が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−110999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1のようにバインダー樹脂中に単に金属酸化物粒子を分散させる塗布液でゲート絶縁膜を形成した場合には、含有される金属酸化物粒子により不具合が生じる場合がある。例えば、ゲート絶縁膜表面に突き出した金属酸化物粒子により、ゲート絶縁膜の表面が粗くなり、有機TFTの性能が低下する原因となる場合がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より高品質なゲート絶縁膜の製造方法、高性能な有機トランジスタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、有機トランジスタにおけるゲート絶縁膜の製造方法であって、金属酸化物粒子とバインダー樹脂とを含み、前記ゲート絶縁膜の構成材料となる塗布液を塗布する塗布工程と、前記塗布された塗布膜の表面を押圧する表面押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、ゲート絶縁膜を含む有機トランジスタの製造方法であって、前記ゲート絶縁膜は、請求項1から5のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法により製造されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、少なくとも陽極、有機発光層、陰極を備える有機EL素子と前記有機EL素子を駆動する有機トランジスタを含む有機EL表示装置の製造方法であって、前記有機トランジスタは、請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法によって製造されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法で製造された有機トランジスタを含むディスプレイであることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「ゲート絶縁膜の製造工程の改良」
本発明者は、有機TFTにおけるバインダー樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた塗布液を塗布して形成したゲート絶縁膜をより高品質なゲート絶縁膜とするべく改良を行った。
【0018】
その結果、本発明者が一例として考察するに、バインダー樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた塗布液を塗布して形成したゲート絶縁膜では、金属酸化物粒子によるゲート絶縁膜表面の粗度増加がその性能劣化を生じさせている要因であることを見いだすに至った。すなわち、金属酸化物粒子によるゲート絶縁膜表面の粗度増加が起こると、その粗面が形成されることで、平坦面と比較して電荷移動度が減少するなどが起こることを見いだした。
【0019】
図2には、バインダー樹脂中に金属酸化物粒子30を分散させた塗布液を塗布して形成したゲート絶縁膜54を有する有機TFT50が示される。なお、以下、同符号は同様の部材を示すこととし、その説明を省略する。ゲート絶縁膜54と有機半導体層56との界面40を超えて、金属酸化物粒子30が有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60側へ突出し、金属酸化物粒子30により、界面40が粗面化されている様子がわかる。
【0020】
本発明者は、この金属酸化物粒子30により、界面40が粗面化されるのを防止する方法を鋭意検討した結果、金属酸化物粒子30を含有する、塗布した塗布膜をインプリンティング法などで表面を押圧することで界面40から金属酸化物粒子30が有機半導体層56側へ突出してしまうことを防止することができることを見いだすに至った。その結果、より高品質なゲート絶縁膜を提供でき、これを備える高性能な有機トランジスタ、さらにはこの有機トランジスタを備える有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイを見いだすことができた。
【0021】
「有機EL表示装置」
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態については、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
図3には、本実施形態に係る有機EL表示装置P1の概略断面図が示される。有機EL表示装置P1は、フィルム基板10と、基板10上に形成されたバリア膜12と、バリア膜12上に形成された有機EL素子100および有機TFT50と、有機TFT50を覆い、有機EL素子100および有機TFT50を外部からの浸食から保護する保護膜20とを有する。
【0023】
<基板>
基板10は、その構成する材料は適宜選択して用いればよい。例えば、樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレートポリエステル、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体けん化物、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等として様々な基板を用いることができる。また、樹脂を主成分とする基板ではなく、ガラス基板や、ガラスとプラスティックの貼り合せ基板でもよく、また基板表面にアルカリバリア膜や、ガスバリア膜がコートされていてもよい。また、これら透明基板に反対側から光を射出するトップエミッション型である場合などには、基板10は必ずしも透明でなくともよい。
【0024】
<バリア膜>
バリア膜12は必ずしも形成しなくともよいが、形成すると基板側からの水分や酸素などによる浸食から保護することができるので好適である。バリア膜12を形成する場合には、材料は適宜選択して用いることができる。
【0025】
バリア膜12は、多層構造であってもよく単層構造であってもよく、無機膜であってもよく、有機膜であってもよいが無機膜が含まれていると水分や酸素などによる浸食からのバリア性が向上するので好適である。
【0026】
無機膜としては、例えば、窒化膜、酸化膜又は炭素膜又はシリコン膜等が採用可能であり、より具体的には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、又はダイヤモンド状カーボン(DLC)膜、アモルファスカーボン膜などが挙げられる。すなわち、SiN、AlN、GaN等の窒化物、SiO、Al2O3、Ta2O5、ZnO、GeO等の酸化物、SiON等の酸化窒化物、SiCN等の炭化窒化物、金属フッ素化合物、金属膜、等があげられる。
【0027】
有機膜としては、例えば、フラン膜、ピロール膜、チオフェン膜或いは、ポリパラキシレン膜エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシレン、フッ素系工分子(パーフルオロオレフィン、パーフルオロエーテル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン等)、金属アルコキシド(CH3OM、C2H5OM等)、ポリイミド前駆体、ペリレン系化合物などの重合膜等があげられる。
【0028】
バリア膜12は、2種類以上の物質からなる積層構造、無機保護膜、シランカップリング層、樹脂封止膜からなる積層構造、無機材料からなるバリア層、有機材料からなるカバー層からなる積層構造、Si−CXHY等の金属または半導体と有機物との化合物、無機物からなる積層構造、無機膜と有機膜を交互に積層した構造、Si層上にSiO2またはSi3N4を積層した構造等の積層構造としたものなどが挙げられる。
【0029】
<有機EL素子>
図4には有機EL表示装置P1の有機EL素子100付近の拡大図が示される。有機EL素子100は、バリア膜12側から陽極14/有機固体層16/陰極18とから積層されて構成されている。
【0030】
陽極14は、正孔を注入しやすいエネルギーレベルを持つ層を用いればよく、ITO(Indium tin oxide:酸化インジウム錫膜)などの透明電極を用いることができるが、有機EL表示装置がトップエミッション型である場合には透明電極でなくとも一般的な電極を用いればよい。
【0031】
ITOなどの透明導電性材料を例えば150nmの厚さにスパッタリングなどによって形成する。ITOに限らず、代わりに酸化亜鉛(ZnO)膜、IZO(インジウム−亜鉛合金)金、よう化銅等を採用することもできる。
【0032】
有機固体層16は、陽極14側から正孔注入層162/正孔輸送層164/発光層166/電子輸送層168とから構成されている。
【0033】
正孔注入層162は、陽極14と発光層166との間に設けられ、陽極14からの正孔の注入を促進させる層である。正孔注入層162により、有機EL素子100の駆動電圧は低電圧化することができる。また、正孔注入を安定化し素子を長寿命化するなどの役割を担ったり、陽極14の表面に形成された突起などの凹凸面を被覆し素子欠陥を減少させる、などの役割を担う場合もある。
【0034】
正孔注入層162の材質については、そのイオン化エネルギーが陽極14の仕事関数と発光層166のイオン化エネルギーの間になるように適宜選択すればよい。例えば、トリフェニルアミン4量体(TPTE)、銅フタロシアニンなどを用いることができる。
【0035】
正孔輸送層164は、正孔注入層162と発光層166の間に設けられ、正孔の輸送を促進させる層であり、正孔を発光層166まで適切に輸送する働きを持つ。
【0036】
正孔輸送層164の材質については、そのイオン化エネルギーが正孔注入層162と発光層166の間になるように適宜選択すればよい。例えば、TPD(トリフェニルアミン誘導体)を採用することができる。
【0037】
発光層166は、輸送された正孔と同じく輸送された後述の電子とを再結合させ、蛍光発光または燐光発光させる層のことである。発光層166は上記発光態様に対応できる性質を満たすものになるようにその材料を適宜選択すればよい。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)や、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体(Eu(DBM)3(Phen))、ジトルイルビニルビフェニル(DTVBi)、ポリ(p−フェニレンビニレン)や、ポリアルキルチオフェンのようなπ共役高分子などを用いることができる。例えば緑色に発光させたければアルミキノリノール錯体(Alq3)を用いることができる。
【0038】
例えば、燐光発光型素子においては、陰極18と陽極14からそれぞれ電子と正孔を燐光発光層166に注入してここで再結合させると、ホスト材料を介して再結合エネルギがドーパント材料に供給され、このドーパントが燐光を発光する。ここで、注入電流密度が低い条件下では、この燐光発光型の有機EL素子は、ドーパントに起因した赤色発光が得られる。また、注入電流密度の高い条件下では、発光機能を備える本発明にかかるホスト材料も発光し、ホスト材料の発光色とドーパント材料の発光色の加色光が得られる。例えば、水色に発光する化合物を用いると、ドーパントは、赤色に発光するため、この有機EL素子では、水色と赤色が合成された白色光を外部に射出することができる。
【0039】
電子輸送層168は、陰極18と発光層166との間に設けられ、陰極18からの電子の注入を促進する機能を有し、有機EL素子100の駆動電圧を低電圧化する。また、電子注入を安定化し素子を長寿命化したり、陰極18と発光層166との密着性を強化したり、発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させたりする場合がある。
【0040】
電子輸送層168の材質については、陰極18の仕事関数と発光層166の電子親和力の間になるように適宜選択すればよい。例えば、電子輸送層168はLiF(フッ化リチウム)、Li2O(酸化リチウム)などの薄膜(例えば0.5nm)などが採用できる。
【0041】
これら有機固体層16を構成する各層は通常、有機物からなり、更に、低分子の有機物からなる場合、高分子の有機物からなる場合がある。低分子の有機物からなる有機機能層は一般に蒸着法等のドライプロセス(真空プロセス)によって、高分子の有機物からなる有機機能層は一般にスピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレー法そして印刷法等のウエットプロセスによって、それぞれ形成するなどすることができる。
【0042】
有機固体層16を構成する各層に用いる有機材料として、例えば高分子材料として、PEDOT、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアルキルフェニレン、ポリアセチレン誘導体、などが挙げられる。
【0043】
なお、本実施形態において、有機固体層16は、正孔注入層162、正孔輸送層164、発光層166、電子輸送層168から構成されるものを挙げたがこの構成に限定されることはなく、少なくとも発光層166を含んで構成されていればよい。
【0044】
例えば、採用する有機材料等の特性に応じて、発光層の単層構造等の他、正孔輸送層/発光層、発光層/電子輸送層等の2層構造、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の3層構造や、更に電荷(正孔、電子)注入層などを備える多層構造などから構成することができる。
【0045】
さらに有機固体層16には発光層166と電子輸送層168の間に正孔ブロック層を設けてもよい。正孔は発光層166を通り抜け、陰極18へ到達する可能性がある。例えば、電子輸送層168にAlq3等を用いている場合、電子輸送層に正孔が流れ込むことでこのAlq3が発光したり、正孔を発光層に閉じこめることができずに発光効率が低下する可能性がある。そこで、正孔ブロック層を設け、発光層166から電子輸送層168に正孔が流れ出てしまうことを防止してもよい。
【0046】
陰極18は、有機固体層16への電子注入を良好にするため、仕事関数又は電子親和力の小さな材料を選定すればよい。例えば、Mg:Ag合金、Al:Li合金などの合金型(混合金属)等を好適に用いることができる。陰極18は、AlやMgAgなどの金属材料を例えば150nmの厚さに真空蒸着などで形成することができる。
【0047】
<有機トランジスタ(有機TFT)>
図5には、有機EL表示装置P1の有機TFT50付近の拡大図が示される。有機TFT50は、バリア膜12側からバリア膜12上に形成されたゲート電極52と、ゲート電極52の表面を覆うように形成されたゲート絶縁膜54とを有している。ゲート絶縁膜54上には有機半導体層56、左端縁側にソース電極58、右端縁側にドレイン電極60が形成されている。ここで、ドレイン電極60は、有機EL素子100の陽極14に電気的に接続される。すなわち、有機TFT50は、ソース電極58及びドレイン電極60は、互いに分離して設けられ、ソース電極58とドレイン電極60の間に有機半導体層56を介在させ、ゲート絶縁膜54を介してソース電極58、ドレイン電極60、有機半導体層56と対向されて配置されたゲート電極52を有する構造である。
【0048】
ゲート電極52は、ゲート電極材料としては陽極酸化可能な金属であれば良く、Al、Mg、Ti、Nb、Zr等の単体もしくはそれらの合金を用いることができるがこれに限定されない。ゲート電極としては、十分な導電性があればよく、例えば、Pt、Au、W、Ru、Ir、Al、Sc、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Pd、Ag、Cd、Ln、Sn、Ta、Re、Os、Tl、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属単体もしくは積層もしくはその化合物でも良い。また、ITO、IZOのような金属酸化物粒子、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類などの共役性高分子化合物を含む有機導電材料でもよい。
【0049】
ゲート電極52の製造方法は、基板10上に、ゲート電極52の配線パターンを形成する一般的な方法であればよい。スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スピンコート法、スプレー法、CVD等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0050】
ゲート絶縁膜54は、後述で説明されるようにバインダー樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた塗布液を塗布して形成される。
【0051】
バインダー樹脂としては、塗布液のバインダーとなる樹脂成分を適宜選択して用いることができ、特に限定されることはないが、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー等の樹脂などが使用できる。例えば、ポリビニルフェノールとメチル化メラミンホルムアルデヒド共重合体の混合物または、ポリメチルメタアクリレート、絶縁性であればよい。その他の例として、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フェノールノボラック、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、ポリクロロピレン、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリサルフォン、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール等、ポリアクリレートなどを用いることができる。
【0052】
バインダー樹脂には、塗布液を固化する際に、好適なものを選定すると好適である。すなわち、塗布液の硬化方法に基づいて光硬化法、熱硬化法、電子線硬化法、冷却法、乾燥法、などが挙げられるが、これらに好適なバインダー樹脂を選定すると好適である。
【0053】
光硬化法を用いる場合には、光硬化性樹脂として適宜選択して用いることができる。例えば、主成分として紫外線硬化性の樹脂を用いることが好適例としてあげられる。
【0054】
電子線硬化法を用いる場合には、電子線硬化性樹脂として適宜選択して用いることができる。電子線硬化法は、塗布液に電子線を照射して硬化させる方法である。主成分として電子線硬化性樹脂を用いることが好適例としてあげられる。
【0055】
これら電子線硬化性樹脂、光効硬化性樹脂は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有する、紫外線などの光、電子線等の電離放射線により硬化し得る樹脂であって、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した組成物などが用いられる。これらの組成物としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0056】
熱硬化法を用いる場合には、熱硬化性樹脂として適宜選択して用いることができる。熱硬化法は、塗布液を高温化して熱硬化させる方法である。主成分として熱硬化性樹脂を用いることが好適例としてあげられる。
【0057】
熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。例えばエポキシ樹脂の一例として、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−AD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0058】
冷却法を用いる場合には、冷却により硬化する樹脂を適宜選択して用いることができる。冷却法は、塗布液を冷却して硬化させる方法であって、送風による気化熱の利用、周囲温度低下などの冷却手段で冷却する方法、冷却手段によらず時間を経過させて自然冷却させる方法ともに含むものである。
【0059】
主成分として熱可塑性樹脂を用いることが好適例としてあげられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリブタジエン、スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、複合プラスチック等が挙げられる。
【0060】
乾燥法を用いる場合には、乾燥により硬化しやすい樹脂を適宜選択して用いることができる。乾燥法は、塗布液中の揮発成分を揮発させる方法であって、加熱などの揮発エネルギー付与による乾燥手段により乾燥させる方法、加熱手段によらず時間を経過させて自然乾燥させる方法ともに含むものである。揮発性溶媒を用いた塗布液であると好適である。
【0061】
これらバインダー樹脂は、高比誘電率を有する樹脂であると好適である。高比誘電率を有する有機高分子またはオリゴマー材料としては、例えば、シアノエチルセルロース(比誘電率16)、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース(比誘電率18)、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース(比誘電率14)、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース(比誘電率23)、シアノエチルアミロース(比誘電率17)、シアノエチルスターチ(比誘電率17)、シアノエチルジヒドロキシプロピルスターチ(比誘電率18)、シアノエチルプルラン(比誘電率18)、シアノエチルグリシドールプルラン(比誘電率20)、シアノエチルポリビニルアルコール(比誘電率20)、シアノエチルポリヒドロキシメチレン(比誘電率10)、シアノエチルシュクロース(比誘電率25)、シアノエチルソルビトール(比誘電率40)等のシアノエチル基含有高分子またはオリゴマー、ポリフッ化ビニリデン(比誘電率11)、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(55/45:比誘電率18、75/25:比誘電率10)等のビニリデン系高分子が挙げられる。
【0062】
塗布液に含まれる金属酸化物粒子としては特に限られず、適宜選択して用いればよい。
【0063】
金属酸化物粒子に含まれる金属酸化物としては適宜選択して用いることができ、特に限られないが、例えば、Ta2O5、TiO2、ZrO2、BaTiO3、PbTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaZrO3、PbZrO3、SrZrO3、CaZrO3、LaTiO3、LaZrO3、BiTiO3、LaPbTiO3、Y2O3等、または、これらの固溶体、より具体的にはチタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、ジルコニウム酸鉛、ジルコニウム酸バリウム、ジルコニウム酸ストロンチウム、ジルコニウム酸カルシウムが挙げられる。他にも、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ビスマス、チタン酸ランタン、フッ化バリウムマグネシウム等の複合酸化物粒子や、二酸化チタン、五酸化二タンタル、三酸化二イットリウム等の金属酸化物粒子が挙げられる。これらの金属酸化物粒子は1種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
金属酸化物粒子の比誘電率としてはTiO2など高比誘電率であるほど好ましく、具体的には比誘電率が10以上のものが好適である。なお本願において比誘電率とはJISC6481による比誘電率測定法で得られるものである。
【0065】
金属酸化物粒子の形状は特に限られず、例えば楕円状、鱗片形状、針状、球状、平板状、針状、不定形などいずれであっても良い。また、長径と短径の平均値を金属酸化物粒子の粒径とした時、平均粒径が500nm以下のものを使用することが望ましく、さらには平均粒径が100nm以下のものを使用することがより望ましい。平均粒径が500nmよりも大きいと、ゲート絶縁膜54中の金属酸化物粒子の分散が均一にならず、その結果ゲート絶縁膜54の比誘電率が均一にならなる場合や、ゲート絶縁膜54の表面平滑性が損なわれる恐れがある。この粒子の平均粒径は、小さいほどゲート絶縁膜54の平滑性や、比誘電率の均一性は向上するので好適であるが、平均粒径が5nmよりも小さいと金属酸化物粒子の比誘電率が低下する恐れがある。したがって、平均粒径が5nm以上の高比誘電率無機化合物粒子を使用することが望ましい。
など適宜選択して用いればよい。
【0066】
塗布液中に配合される金属酸化物粒子は、塗布液100重量部に対して2〜8重量部であることが好適である。
【0067】
ゲート絶縁膜54は、ゲート電極52の表面に直接接すると好適であるが、ゲート絶縁膜54とゲート電極52との層間に例えば、チャネル生成半導体層など他の層が形成されていてもよい。ゲート絶縁膜54は、有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60の少なくとも1つ、好適には有機半導体層56と表面が接していればよい。
【0068】
ソース電極58、ドレイン電極60は、Al、Mg、Ti、Nb、Zr等の単体もしくはそれらの合金を用いることができるがこれに限定されない。ゲート電極としては、十分な導電性があればよく、例えば、Pt、Au、W、Ru、Ir、Al、Sc、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Pd、Ag、Cd、Ln、Sn、Ta、Re、Os、Tl、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属単体もしくは積層もしくはその化合物でも良い。また、ITO、IZOのような金属酸化物粒子、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類などの共役性高分子化合物を含む有機導電材料でもよい。
【0069】
ソース電極58、ドレイン電極60は一般的な方法により製造すればよい。スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スプレー法、スピンコート法、CVD、リフトオフ、等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0070】
有機半導体56としては、ペンタセンなど半導体特性を示す有機材料であれば良く、特に限定されないが、例えば、フタロシアニン系誘導体、ナフタロシアニン系誘導体、アゾ化合物系誘導体、ペリレン系誘導体、インジゴ系誘導体、キナクリドン系誘導体、アントラキノン類などの多環キノン系誘導体、シアニン系誘導体、フラーレン類誘導体、あるいはインドール、カルバゾール、オキサゾール、インオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサアジアゾール、ピラゾリン、チアチアゾール、トリアゾールなどの含窒素環式化合物誘導体、ヒドラジン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、スチルベン類、アントラキノンジフェノキノン等のキノン化合物誘導体、アントラセン、ビレン、フェナントレン、コロネンなどの多環芳香族化合物誘導体などでその構造がポリエチレン鎖、ポリシロキサン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリアミド鎖、ポリイミド鎖等の高分子の主鎖中に用いられた物あるいは側鎖としてペンダント状に結合したもの、もしくはポリパラフェニレン等の芳香族系共役性高分子、ポリアセチレン等の脂肪族系共役性高分子、ポリピノールやポリチオフェン率の複素環式共役性高分子、ポリアニリン類やポリフェニレンサルファイド等の含ヘテロ原子共役性高分子、ポリ(フェニレンビニレン)やポリ(アニーレンビニレン)やポリ(チェニレンビニレン)等の共役性高分子の構成単位が交互に結合した構造を有する複合型共役系高分子等の炭素系共役高分子が用いられる。また、ポリシラン類やジシラニレンアリレンポリマー類、(ジシラニレン)エテニレンポリマー類、(ジシラニレン)エチニレンポリマー類のようなジシラニレン炭素系共役性ポリマー構造などのオリゴシラン類と炭素系共役性構造が交互に連鎖した高分子類などが用いられる。他にもリン系、窒素系等の無機元素からなる高分子鎖でも良く、さらにフタロシアナートポリシロキサンのような高分子鎖の芳香族系配位子が配位した高分子類、ペリレンテトラカルボン酸のようなペリレン類を熱処理して縮環させた高分子類、ポリアクリロニトリルなどのシアノ基を有するポリエチレン誘導体を熱処理して得られるラダー型高分子類、さらにペロブスカイト類に有機化合物がインターカレートした複合材料を用いてもよい。
【0071】
有機半導体56の形成方法としては、スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スプレー法、スピンコート法、CVD等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0072】
<保護膜>
保護膜20は、必ずしも形成しなくともよいが、形成すると水分や酸素などによる浸食から保護することができるので好適である。保護膜20は、多層構造であってもよく単層構造であってもよく、無機膜であってもよく、有機膜であってもよいが無機膜が含まれていると水分や酸素などによる浸食からのバリア性が向上するので好適である。
【0073】
無機膜としては、例えば、窒化膜、酸化膜又は炭素膜又はシリコン膜等が採用可能であり、より具体的には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、又はダイヤモンド状カーボン(DLC)膜、アモルファスカーボン膜などが挙げられる。すなわち、SiN、AlN、GaN等の窒化物、SiO、Al2O3、Ta2O5、ZnO、GeO等の酸化物、SiON等の酸化窒化物、SiCN等の炭化窒化物、金属フッ素化合物、金属膜、等があげられる。
【0074】
有機膜としては、例えば、フラン膜、ピロール膜、チオフェン膜或いは、ポリパラキシレン膜エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシレン、フッ素系工分子(パーフルオロオレフィン、パーフルオロエーテル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン等)、金属アルコキシド(CH3OM、C2H5OM等)、ポリイミド前駆体、ペリレン系化合物などの重合膜等があげられる。
【0075】
保護膜20は、2種類以上の物質からなる積層構造、無機保護膜、シランカップリング層、樹脂封止膜からなる積層構造、無機材料からなるバリア層、有機材料からなるカバー層からなる積層構造、Si−CXHY等の金属または半導体と有機物との化合物、無機物からなる積層構造、無機膜と有機膜を交互に積層した構造、Si層上にSiO2またはSi3N4を積層した構造等の積層構造としたものなどが挙げられる。
【0076】
バリア膜12、保護膜20は、その構成される有機膜が無機膜に形成されたピンホールや表面凹凸を埋め、表面を平坦化させる。また、無機膜の膜応力を緩和させたりする役割を担う場合もある。
【0077】
保護膜20の製造方法は、スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スプレー法、スピンコート法、CVD等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0078】
<有機EL表示装置の発光態様>
上述の有機EL表示装置P1の発光態様について説明する。
【0079】
ゲート電極52とソース電極58の間に電圧が印加されると有機半導体56とゲート絶縁膜54との界面40(数nm程度の領域)に正孔が生成する。正孔が生成後、ソース電極58とドレイン電極60間に電圧をかけると正孔を輸送させることができる。一方で、ゲート電極52とソース電極58の間に電圧が印加されないと正孔は輸送されない。このように非導通状態(スイッチがオフの状態)と導通状態(スイッチがオン状態)を利用して、スイッチングを行うことができる。
【0080】
ソース電極58からホール(正孔)がゲート絶縁膜54を通じて、ドレイン電極60へ供給される。ドレイン電極60を通じて正孔は、有機EL素子100の陽極14へ伝えられる。
【0081】
有機EL素子100において、陽極14から正孔が有機固体層16中の正孔注入層162へと輸送される。輸送された正孔は、正孔輸送層164へと注入される。正孔輸送層164へ注入された正孔は、発光層166へと輸送される。
【0082】
また、有機EL素子100において、陰極18から電子が有機固体層16中の電子輸送層168へと輸送される。輸送された電子は、発光層166へと輸送される。
【0083】
輸送された正孔および電子は、発光層166中で再結合する。再結合の際、発せられるエネルギーにより、ELによる発光が発生する。この発光は、順に正孔輸送層164、正孔注入層162、陽極14、バリア膜12、基板10を通じて外部へと導出され、その発光を視認することができる。
【0084】
陰極18にAlが用いられている場合などは、陰極層18と電子輸送層168との界面が反射面となり、この界面で反射され、陽極14側へと進み、基板10を透過して外部へと射出される。したがって、以上のような構成の有機EL素子をディスプレイなどに採用した場合、基板10側が表示の観察面となる。
【0085】
例えば、有機ELパネルで、フルカラーディスプレイを実現しようとする場合、例えば、RGB各色を発光する有機EL素子を塗り分けにより製造する方式(塗り分け法)、白色発光の単色発光の有機EL素子とカラーフィルタを組み合わせた方式(カラーフィルタ法)、青色発光若しくは白色発光等の単色発光の有機EL素子と色変換層とを組み合わせた方式(色変換法)、単色の有機EL素子であって、有機発光層に電磁波を照射する等して複数発光を実現する方式(フォトブリーチング方式)などが挙げられるが特に限定されない。
【0086】
本実施形態の有機EL表示装置P1は、高品質なゲート絶縁膜54を含む高性能な有機TFTにより、有機EL素子100が駆動されるので、より高性能な有機EL表示装置を提供できる。
【0087】
上記実施形態では、有機EL素子を備える有機EL表示装置およびこれに用いられる有機TFTを示したが、これに限られることなく、有機EL素子以外を駆動する有機トランジスタであっても本実施形態は適用できる。すなわち、上記実施形態において、有機EL素子を他の有機トランジスタによって駆動される駆動素子に置き換えてもよく、有機EL素子などの駆動素子を省略して有機トランジスタ単独としてもよい。このような有機トランジスタは、ディスプレイ一般、例えば、液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、電子ペーパー、トナーディスプレイなどに適用できる。
【0088】
「有機EL表示装置の製造方法」
図2に示される有機EL表示装置P1の製造方法を説明する。基板10上にバリア膜12を形成し、バリア膜12上に有機EL素子および有機TFT50を作製する。有機TFT50のドレイン電極60と有機EL素子100の陽極14とは電気的に導通するように、接触させて作製する。次に、有機EL素子100、有機TFT50の表面を覆うように保護膜20を形成して有機EL表示装置P1を製造する。
【0089】
「ゲート絶縁膜の形成方法」
有機TFT50のゲート絶縁膜54の製造方法について一例を述べる。バインダー樹脂を液化させ、液化したバインダー樹脂中に金属酸化物30を投入し、攪拌して、溶液中に金属酸化物30を分散させ、塗布液32を作製する。
【0090】
塗布液32のバインダー樹脂の液化方法はバインダー樹脂自体を液化させる方法(無溶剤タイプの塗布液)、バインダー樹脂とは別にバインダー樹脂を溶かす溶媒を用いる方法が挙げられる。
【0091】
溶媒は、適宜選択して用いればよく特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、が用いられる。
【0092】
水系塗布液の溶媒としては、水やアルコール等の水溶性有機溶剤を用いることができる。水としては、通常の工業用水を使用することができる。また、水とアルコール等からなる水溶性有機溶剤として、水のほかにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を使用して調整することができる。なお、該低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等は、5〜20重量%位の割合で含有していることが望ましい。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等の溶剤は、インキの流動性改良、被印刷体である基材シートへの濡れの向上、乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定されるものである。
【0093】
溶剤系塗布液の溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の非水溶性有機溶剤、またはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0094】
図6に示されるように、作製した塗布液32をゲート電極52表面およびゲート電極52が形成された基板10上、バリア膜12表面に塗布する(塗布工程)。
【0095】
塗布液32の塗布方式としては、適宜選択して用いればよく特に限定されるものではないが、インクジェット、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ダイコート、リップコート、キャストコート、ロールコート、エアーナイフコート、メイヤーバーコート、押し出しコート、オフセット、紫外線硬化オフセット、フレキソ、孔版、シルク、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の各種印刷方式が適用できる。
【0096】
塗布液32を塗布後、図7に示されるように、表面平坦化を行うモールド45を用意する。作製した塗布膜32(塗布液の塗布後の塗布状態としても塗布膜という表現を用いている)表面であって、表面平坦化したい位置にモールド表面42が来るようにモールド45の位置調整を行う。
【0097】
モールド45は、適宜選択して用いればよく特に限定されないが、例えば、モールド表面がSi製のモールドを用いたが、金属、金属酸化物、ダイヤモンドなどであってもよい。例えば、石英、サファイアなどの光線、特に紫外線を透過するものであれば、光硬化性樹脂を用い光硬化により、後述の固化工程を行う場合などに光線、特に紫外線を照射させやすく、好適である。
【0098】
モールド表面42は、塗布膜32の表面を押圧できればよく、特に限られるものではないが、ゲート絶縁膜54の界面と対応した形状にすると好適である。また、表面形状は、フラットであることに限られず、微細でない表面凹凸があってもよいが、表面が平坦であるほど好適である。
【0099】
次にモールド表面42を塗布膜32中へ押し下げて、図8の状態とする。図8の状態ではモールド表面42によって、塗布膜32表面は押圧される(表面押圧工程)。表面押圧工程によって、塗布膜32表面(界面40)に突出していた金属酸化物30は塗布膜32内部へ移動させられる。この移動によって、塗布膜32の表面から金属酸化物30が突出することを防止でき、界面における金属酸化物30の突出を防止している。
【0100】
本実施形態では、前記塗布膜が液状状態である場合に表面押圧工程を行っているがこれに限られることがない。表面押圧工程は、前記塗布膜が液状状態である場合、固体となった状態の両方に行うことができる。
【0101】
例えば、図6の状態で固体となった状態であっても、モールド表面42で押圧するまでに表面が液状化していればよく、例えば熱可塑性樹脂であれば、モールド表面42によって熱溶融させ、界面40に突出していた金属酸化物30を塗布膜32内部へ移動させることができる。
【0102】
次に、図8の状態を保ったまま、図9に示されるようにゲート絶縁膜とするべき箇所34を固化させる(固化工程)。
【0103】
固化工程は、ゲート絶縁膜54を形成する所望の箇所34の全体を固化すると好適であるがこれに限られない。少なくとも前記押圧された塗布膜の表面を固化させる工程であれば塗布膜32の表面から金属酸化物30が突出することを防止でき、界面における金属酸化物30の突出を防止できる。
【0104】
この固化は、特に限られるものではないが、紫外線硬化法などの光硬化法、熱硬化法、電子線硬化法、冷却法、乾燥法のうち少なくとも一つ、複数組み合わせた硬化法により固化すると固化しやすいなどの観点から好適である。
【0105】
例えば、紫外線の発生源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。また、電子線源としてはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keVのエネルギーを持つ電子線を照射することができる。
【0106】
なお、固化工程は必須となる工程ではない。表面押圧工程において、界面40の金属酸化物30の突出は防止することができ、固化工程はその突出防止などをさらに好適に防止することができるものである。
【0107】
固化後、モールド45を引き上げ、図10の状態とする。
【0108】
図10の状態となった後、酸素リアクティブイオンエッチングなどエッチング工程によって塗布膜32の部分を溶剤で洗い流すなどして除去し(除去工程)、固化して洗い流されなかった箇所34が図11に示されるゲート絶縁膜54となり、ゲート絶縁膜54が形成される。
【0109】
エッチング用の溶剤としては適宜選択して用いればよい。シリコーンラダーポリマーに対して良溶媒である芳香族系有機溶剤(アニソール、トルエン等)、アルコール系有機溶剤(ブタノール等)、エステル系有機溶剤(酢酸ブチル等)、エーテル系有機溶剤(テトラヒドロフラン等)、及び、ケトン系有機溶剤(メチルイソブチルケトン等)などが挙げられる。具体例を挙げれば、芳香族系有機溶剤としては、ベラトール、トルエン、及び、フェネトールなどがあり、その他の材料として、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラリン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、及び、ジメチルホルムアミドなども挙げられる。
【0110】
このゲート絶縁膜54を形成した後、フォトリソグラフィーなどによって有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60を形成し有機TFT50が形成される。
【0111】
本実施形態における有機TFTはこのように粒子が分散されており比誘電率が大きく、かつ、表面粗度が悪くなる原因である金属酸化物粒子が表面に突出することを防止されているゲート絶縁膜を備えているので電荷移動度が大きいなど高性能な有機TFTを提供期できる。
【0112】
また、押圧工程と固化工程とを行えば、有機TFTのゲート絶縁膜をより簡単にパターニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】従来技術における有機EL表示装置の模式的な断面図である。
【図2】従来技術における有機TFTの模式的な断面図である。
【図3】本実施形態における有機EL表示装置の模式的な断面図である。
【図4】本実施形態における有機EL表示装置の有機EL素子付近の模式的な拡大図である。
【図5】本実施形態における有機EL表示装置の有機TFT付近の模式的な拡大図である。
【図6】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図7】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図8】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図9】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図10】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図11】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0114】
10 基板
16 有機固体層
18 陰極
20 保護膜
50 有機TFT
54 ゲート絶縁膜
100 有機EL素子
P1,PA 有機EL表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート絶縁膜の製造方法、有機トランジスタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタ(以下、有機TFT(Thin Film Transistors)ともいう)は様々な用途に用いられている。例えば、有機TFTは、有機EL表示装置における有機EL素子を駆動する手段として用いられている。
【0003】
有機EL素子は、基板上に、電極及び電極間に少なくとも発光層を備えた有機固体層を備え、両側の電極から有機固体層中の発光層に電子と正孔を注入し、有機発光層で発光を起こさせる素子であり、高輝度発光が可能である。また有機化合物の発光を利用しているため発光色の選択範囲が広いなどの特徴を有し、光源や有機EL表示装置などとして期待されている。特に有機EL表示装置は、一般に、広視野、高コントラスト、高速応答性および視認性に優れ、薄型・軽量で、低消費電力のフラットパネルディスプレイなどとして期待されている。
【0004】
有機EL表示装置は、少なくとも陽極、有機発光層、陰極を備える有機EL素子からなる画素と前記有機EL素子を点灯・制御する有機トランジスタが備えられるものである。有機EL表示装置において、マトリクス状に配置した有機EL素子を、互いに直交したストライプ状の走査電極およびデータ電極(信号電極)により外部から駆動するパッシブマトリクス方式と、画素ごとに有機トランジスタからなるスイッチング素子とメモリ素子を備え、有機EL素子を点灯させるアクティブマトリクス方式とがある。
【0005】
有機トランジスタを用いたアクティブマトリクス方式は、一般に、画素数の増大に伴いパッシブマトリックス方式に比べ、TFTにより有機EL素子が駆動されるアクティブマトリクス方式のほうが優位とされている。これは、パッシブマトリクス方式は、走査電極が選択された期間のみ各画素の有機EL素子が点灯し、画素数が多くなるに従い、有機EL素子の点灯期間が短くなって平均輝度が低下する傾向にあるのに対し、アクティブマトリクス方式は、画素ごとにTFTからなるスイッチング素子とメモリ素子を備えているため有機EL素子の点灯状態が保持され、高輝度、高効率で長寿命の動作が可能であり、ディスプレイの高精細化や大型化に有利である傾向にあるなどの理由による。
【0006】
図1には、背景技術に係る有機EL表示装置PAが示される。有機EL表示装置PAは、基板10と、基板10上に形成されたバリア膜12と、バリア膜12上に形成された有機EL素子100および有機TFT50と、有機EL素子100および有機TFT50を覆う保護膜(パッシベーション膜)20とを有する。
【0007】
有機TFT50は、ソース電極58及びドレイン電極60は、互いに分離して設けられ、ソース電極58とドレイン電極60の間に有機半導体層56を介在させ、ゲート絶縁膜54を介してソース電極58、ドレイン電極60、有機半導体層56と対向されて配置されたゲート電極52を有する構造である。
【0008】
有機TFT自体の性能は、アモルファスシリコンTFT程度である場合が多いが、液晶や電気泳動型の駆動用の素子として用いる分には、有機TFTの性能としては、on/off比がある程度あれば低電流駆動が可能であるため、ゲート絶縁膜における絶縁性の確保などの問題ない場合が多い。
【0009】
ところが一方で、自発光素子である有機EL素子をアクティブマトリクス方式により駆動するには、発光させるために大電流を供給できるトランジスタが必要となる。このため、ゲート絶縁膜としてTa2O5といった高比誘電率の材料を用い、誘引されて発生する多くのキャリアによる大電流を供給できる有機TFTの開発が進められている。
【0010】
一方で様々な利点があることから、塗布液を被塗布材表面に塗布して、固化させることでゲート絶縁膜を形成させる印刷技術でゲート絶縁膜を形成させる方法も検討されている。印刷技術で高比誘電率のゲート絶縁膜を形成するためには、固化後ゲート絶縁膜となる塗布液の選定が問題となる。塗布液としてはバインダー樹脂だけでは一般的に高比誘電率を確保できない傾向にあるので、バインダー樹脂よりも高比誘電率を有する高比誘電率物質を含有させた塗布液を採用する。下記特許文献1には、バインダー樹脂中に単に比誘電率の高い金属酸化物粒子を分散させる方法が挙げられる。
【特許文献1】特開2002−110999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1のようにバインダー樹脂中に単に金属酸化物粒子を分散させる塗布液でゲート絶縁膜を形成した場合には、含有される金属酸化物粒子により不具合が生じる場合がある。例えば、ゲート絶縁膜表面に突き出した金属酸化物粒子により、ゲート絶縁膜の表面が粗くなり、有機TFTの性能が低下する原因となる場合がある。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、より高品質なゲート絶縁膜の製造方法、高性能な有機トランジスタの製造方法、有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、有機トランジスタにおけるゲート絶縁膜の製造方法であって、金属酸化物粒子とバインダー樹脂とを含み、前記ゲート絶縁膜の構成材料となる塗布液を塗布する塗布工程と、前記塗布された塗布膜の表面を押圧する表面押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、ゲート絶縁膜を含む有機トランジスタの製造方法であって、前記ゲート絶縁膜は、請求項1から5のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法により製造されてなることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、少なくとも陽極、有機発光層、陰極を備える有機EL素子と前記有機EL素子を駆動する有機トランジスタを含む有機EL表示装置の製造方法であって、前記有機トランジスタは、請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法によって製造されてなることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法で製造された有機トランジスタを含むディスプレイであることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
「ゲート絶縁膜の製造工程の改良」
本発明者は、有機TFTにおけるバインダー樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた塗布液を塗布して形成したゲート絶縁膜をより高品質なゲート絶縁膜とするべく改良を行った。
【0018】
その結果、本発明者が一例として考察するに、バインダー樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた塗布液を塗布して形成したゲート絶縁膜では、金属酸化物粒子によるゲート絶縁膜表面の粗度増加がその性能劣化を生じさせている要因であることを見いだすに至った。すなわち、金属酸化物粒子によるゲート絶縁膜表面の粗度増加が起こると、その粗面が形成されることで、平坦面と比較して電荷移動度が減少するなどが起こることを見いだした。
【0019】
図2には、バインダー樹脂中に金属酸化物粒子30を分散させた塗布液を塗布して形成したゲート絶縁膜54を有する有機TFT50が示される。なお、以下、同符号は同様の部材を示すこととし、その説明を省略する。ゲート絶縁膜54と有機半導体層56との界面40を超えて、金属酸化物粒子30が有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60側へ突出し、金属酸化物粒子30により、界面40が粗面化されている様子がわかる。
【0020】
本発明者は、この金属酸化物粒子30により、界面40が粗面化されるのを防止する方法を鋭意検討した結果、金属酸化物粒子30を含有する、塗布した塗布膜をインプリンティング法などで表面を押圧することで界面40から金属酸化物粒子30が有機半導体層56側へ突出してしまうことを防止することができることを見いだすに至った。その結果、より高品質なゲート絶縁膜を提供でき、これを備える高性能な有機トランジスタ、さらにはこの有機トランジスタを備える有機EL表示装置の製造方法、ディスプレイを見いだすことができた。
【0021】
「有機EL表示装置」
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態については、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
【0022】
図3には、本実施形態に係る有機EL表示装置P1の概略断面図が示される。有機EL表示装置P1は、フィルム基板10と、基板10上に形成されたバリア膜12と、バリア膜12上に形成された有機EL素子100および有機TFT50と、有機TFT50を覆い、有機EL素子100および有機TFT50を外部からの浸食から保護する保護膜20とを有する。
【0023】
<基板>
基板10は、その構成する材料は適宜選択して用いればよい。例えば、樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタレートポリエステル、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体けん化物、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等として様々な基板を用いることができる。また、樹脂を主成分とする基板ではなく、ガラス基板や、ガラスとプラスティックの貼り合せ基板でもよく、また基板表面にアルカリバリア膜や、ガスバリア膜がコートされていてもよい。また、これら透明基板に反対側から光を射出するトップエミッション型である場合などには、基板10は必ずしも透明でなくともよい。
【0024】
<バリア膜>
バリア膜12は必ずしも形成しなくともよいが、形成すると基板側からの水分や酸素などによる浸食から保護することができるので好適である。バリア膜12を形成する場合には、材料は適宜選択して用いることができる。
【0025】
バリア膜12は、多層構造であってもよく単層構造であってもよく、無機膜であってもよく、有機膜であってもよいが無機膜が含まれていると水分や酸素などによる浸食からのバリア性が向上するので好適である。
【0026】
無機膜としては、例えば、窒化膜、酸化膜又は炭素膜又はシリコン膜等が採用可能であり、より具体的には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、又はダイヤモンド状カーボン(DLC)膜、アモルファスカーボン膜などが挙げられる。すなわち、SiN、AlN、GaN等の窒化物、SiO、Al2O3、Ta2O5、ZnO、GeO等の酸化物、SiON等の酸化窒化物、SiCN等の炭化窒化物、金属フッ素化合物、金属膜、等があげられる。
【0027】
有機膜としては、例えば、フラン膜、ピロール膜、チオフェン膜或いは、ポリパラキシレン膜エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシレン、フッ素系工分子(パーフルオロオレフィン、パーフルオロエーテル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン等)、金属アルコキシド(CH3OM、C2H5OM等)、ポリイミド前駆体、ペリレン系化合物などの重合膜等があげられる。
【0028】
バリア膜12は、2種類以上の物質からなる積層構造、無機保護膜、シランカップリング層、樹脂封止膜からなる積層構造、無機材料からなるバリア層、有機材料からなるカバー層からなる積層構造、Si−CXHY等の金属または半導体と有機物との化合物、無機物からなる積層構造、無機膜と有機膜を交互に積層した構造、Si層上にSiO2またはSi3N4を積層した構造等の積層構造としたものなどが挙げられる。
【0029】
<有機EL素子>
図4には有機EL表示装置P1の有機EL素子100付近の拡大図が示される。有機EL素子100は、バリア膜12側から陽極14/有機固体層16/陰極18とから積層されて構成されている。
【0030】
陽極14は、正孔を注入しやすいエネルギーレベルを持つ層を用いればよく、ITO(Indium tin oxide:酸化インジウム錫膜)などの透明電極を用いることができるが、有機EL表示装置がトップエミッション型である場合には透明電極でなくとも一般的な電極を用いればよい。
【0031】
ITOなどの透明導電性材料を例えば150nmの厚さにスパッタリングなどによって形成する。ITOに限らず、代わりに酸化亜鉛(ZnO)膜、IZO(インジウム−亜鉛合金)金、よう化銅等を採用することもできる。
【0032】
有機固体層16は、陽極14側から正孔注入層162/正孔輸送層164/発光層166/電子輸送層168とから構成されている。
【0033】
正孔注入層162は、陽極14と発光層166との間に設けられ、陽極14からの正孔の注入を促進させる層である。正孔注入層162により、有機EL素子100の駆動電圧は低電圧化することができる。また、正孔注入を安定化し素子を長寿命化するなどの役割を担ったり、陽極14の表面に形成された突起などの凹凸面を被覆し素子欠陥を減少させる、などの役割を担う場合もある。
【0034】
正孔注入層162の材質については、そのイオン化エネルギーが陽極14の仕事関数と発光層166のイオン化エネルギーの間になるように適宜選択すればよい。例えば、トリフェニルアミン4量体(TPTE)、銅フタロシアニンなどを用いることができる。
【0035】
正孔輸送層164は、正孔注入層162と発光層166の間に設けられ、正孔の輸送を促進させる層であり、正孔を発光層166まで適切に輸送する働きを持つ。
【0036】
正孔輸送層164の材質については、そのイオン化エネルギーが正孔注入層162と発光層166の間になるように適宜選択すればよい。例えば、TPD(トリフェニルアミン誘導体)を採用することができる。
【0037】
発光層166は、輸送された正孔と同じく輸送された後述の電子とを再結合させ、蛍光発光または燐光発光させる層のことである。発光層166は上記発光態様に対応できる性質を満たすものになるようにその材料を適宜選択すればよい。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)や、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体(Eu(DBM)3(Phen))、ジトルイルビニルビフェニル(DTVBi)、ポリ(p−フェニレンビニレン)や、ポリアルキルチオフェンのようなπ共役高分子などを用いることができる。例えば緑色に発光させたければアルミキノリノール錯体(Alq3)を用いることができる。
【0038】
例えば、燐光発光型素子においては、陰極18と陽極14からそれぞれ電子と正孔を燐光発光層166に注入してここで再結合させると、ホスト材料を介して再結合エネルギがドーパント材料に供給され、このドーパントが燐光を発光する。ここで、注入電流密度が低い条件下では、この燐光発光型の有機EL素子は、ドーパントに起因した赤色発光が得られる。また、注入電流密度の高い条件下では、発光機能を備える本発明にかかるホスト材料も発光し、ホスト材料の発光色とドーパント材料の発光色の加色光が得られる。例えば、水色に発光する化合物を用いると、ドーパントは、赤色に発光するため、この有機EL素子では、水色と赤色が合成された白色光を外部に射出することができる。
【0039】
電子輸送層168は、陰極18と発光層166との間に設けられ、陰極18からの電子の注入を促進する機能を有し、有機EL素子100の駆動電圧を低電圧化する。また、電子注入を安定化し素子を長寿命化したり、陰極18と発光層166との密着性を強化したり、発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させたりする場合がある。
【0040】
電子輸送層168の材質については、陰極18の仕事関数と発光層166の電子親和力の間になるように適宜選択すればよい。例えば、電子輸送層168はLiF(フッ化リチウム)、Li2O(酸化リチウム)などの薄膜(例えば0.5nm)などが採用できる。
【0041】
これら有機固体層16を構成する各層は通常、有機物からなり、更に、低分子の有機物からなる場合、高分子の有機物からなる場合がある。低分子の有機物からなる有機機能層は一般に蒸着法等のドライプロセス(真空プロセス)によって、高分子の有機物からなる有機機能層は一般にスピンコート法、ブレードコート法、ディップ法、スプレー法そして印刷法等のウエットプロセスによって、それぞれ形成するなどすることができる。
【0042】
有機固体層16を構成する各層に用いる有機材料として、例えば高分子材料として、PEDOT、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアルキルフェニレン、ポリアセチレン誘導体、などが挙げられる。
【0043】
なお、本実施形態において、有機固体層16は、正孔注入層162、正孔輸送層164、発光層166、電子輸送層168から構成されるものを挙げたがこの構成に限定されることはなく、少なくとも発光層166を含んで構成されていればよい。
【0044】
例えば、採用する有機材料等の特性に応じて、発光層の単層構造等の他、正孔輸送層/発光層、発光層/電子輸送層等の2層構造、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の3層構造や、更に電荷(正孔、電子)注入層などを備える多層構造などから構成することができる。
【0045】
さらに有機固体層16には発光層166と電子輸送層168の間に正孔ブロック層を設けてもよい。正孔は発光層166を通り抜け、陰極18へ到達する可能性がある。例えば、電子輸送層168にAlq3等を用いている場合、電子輸送層に正孔が流れ込むことでこのAlq3が発光したり、正孔を発光層に閉じこめることができずに発光効率が低下する可能性がある。そこで、正孔ブロック層を設け、発光層166から電子輸送層168に正孔が流れ出てしまうことを防止してもよい。
【0046】
陰極18は、有機固体層16への電子注入を良好にするため、仕事関数又は電子親和力の小さな材料を選定すればよい。例えば、Mg:Ag合金、Al:Li合金などの合金型(混合金属)等を好適に用いることができる。陰極18は、AlやMgAgなどの金属材料を例えば150nmの厚さに真空蒸着などで形成することができる。
【0047】
<有機トランジスタ(有機TFT)>
図5には、有機EL表示装置P1の有機TFT50付近の拡大図が示される。有機TFT50は、バリア膜12側からバリア膜12上に形成されたゲート電極52と、ゲート電極52の表面を覆うように形成されたゲート絶縁膜54とを有している。ゲート絶縁膜54上には有機半導体層56、左端縁側にソース電極58、右端縁側にドレイン電極60が形成されている。ここで、ドレイン電極60は、有機EL素子100の陽極14に電気的に接続される。すなわち、有機TFT50は、ソース電極58及びドレイン電極60は、互いに分離して設けられ、ソース電極58とドレイン電極60の間に有機半導体層56を介在させ、ゲート絶縁膜54を介してソース電極58、ドレイン電極60、有機半導体層56と対向されて配置されたゲート電極52を有する構造である。
【0048】
ゲート電極52は、ゲート電極材料としては陽極酸化可能な金属であれば良く、Al、Mg、Ti、Nb、Zr等の単体もしくはそれらの合金を用いることができるがこれに限定されない。ゲート電極としては、十分な導電性があればよく、例えば、Pt、Au、W、Ru、Ir、Al、Sc、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Pd、Ag、Cd、Ln、Sn、Ta、Re、Os、Tl、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属単体もしくは積層もしくはその化合物でも良い。また、ITO、IZOのような金属酸化物粒子、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類などの共役性高分子化合物を含む有機導電材料でもよい。
【0049】
ゲート電極52の製造方法は、基板10上に、ゲート電極52の配線パターンを形成する一般的な方法であればよい。スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スピンコート法、スプレー法、CVD等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0050】
ゲート絶縁膜54は、後述で説明されるようにバインダー樹脂中に金属酸化物粒子を分散させた塗布液を塗布して形成される。
【0051】
バインダー樹脂としては、塗布液のバインダーとなる樹脂成分を適宜選択して用いることができ、特に限定されることはないが、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド、エチレンー酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー等の樹脂などが使用できる。例えば、ポリビニルフェノールとメチル化メラミンホルムアルデヒド共重合体の混合物または、ポリメチルメタアクリレート、絶縁性であればよい。その他の例として、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フェノールノボラック、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、ポリクロロピレン、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリサルフォン、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール等、ポリアクリレートなどを用いることができる。
【0052】
バインダー樹脂には、塗布液を固化する際に、好適なものを選定すると好適である。すなわち、塗布液の硬化方法に基づいて光硬化法、熱硬化法、電子線硬化法、冷却法、乾燥法、などが挙げられるが、これらに好適なバインダー樹脂を選定すると好適である。
【0053】
光硬化法を用いる場合には、光硬化性樹脂として適宜選択して用いることができる。例えば、主成分として紫外線硬化性の樹脂を用いることが好適例としてあげられる。
【0054】
電子線硬化法を用いる場合には、電子線硬化性樹脂として適宜選択して用いることができる。電子線硬化法は、塗布液に電子線を照射して硬化させる方法である。主成分として電子線硬化性樹脂を用いることが好適例としてあげられる。
【0055】
これら電子線硬化性樹脂、光効硬化性樹脂は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有する、紫外線などの光、電子線等の電離放射線により硬化し得る樹脂であって、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、及び/又は単量体を適宜混合した組成物などが用いられる。これらの組成物としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート、シロキサン等の珪素樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0056】
熱硬化法を用いる場合には、熱硬化性樹脂として適宜選択して用いることができる。熱硬化法は、塗布液を高温化して熱硬化させる方法である。主成分として熱硬化性樹脂を用いることが好適例としてあげられる。
【0057】
熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。例えばエポキシ樹脂の一例として、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−AD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0058】
冷却法を用いる場合には、冷却により硬化する樹脂を適宜選択して用いることができる。冷却法は、塗布液を冷却して硬化させる方法であって、送風による気化熱の利用、周囲温度低下などの冷却手段で冷却する方法、冷却手段によらず時間を経過させて自然冷却させる方法ともに含むものである。
【0059】
主成分として熱可塑性樹脂を用いることが好適例としてあげられる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリブタジエン、スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、複合プラスチック等が挙げられる。
【0060】
乾燥法を用いる場合には、乾燥により硬化しやすい樹脂を適宜選択して用いることができる。乾燥法は、塗布液中の揮発成分を揮発させる方法であって、加熱などの揮発エネルギー付与による乾燥手段により乾燥させる方法、加熱手段によらず時間を経過させて自然乾燥させる方法ともに含むものである。揮発性溶媒を用いた塗布液であると好適である。
【0061】
これらバインダー樹脂は、高比誘電率を有する樹脂であると好適である。高比誘電率を有する有機高分子またはオリゴマー材料としては、例えば、シアノエチルセルロース(比誘電率16)、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース(比誘電率18)、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース(比誘電率14)、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース(比誘電率23)、シアノエチルアミロース(比誘電率17)、シアノエチルスターチ(比誘電率17)、シアノエチルジヒドロキシプロピルスターチ(比誘電率18)、シアノエチルプルラン(比誘電率18)、シアノエチルグリシドールプルラン(比誘電率20)、シアノエチルポリビニルアルコール(比誘電率20)、シアノエチルポリヒドロキシメチレン(比誘電率10)、シアノエチルシュクロース(比誘電率25)、シアノエチルソルビトール(比誘電率40)等のシアノエチル基含有高分子またはオリゴマー、ポリフッ化ビニリデン(比誘電率11)、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体(55/45:比誘電率18、75/25:比誘電率10)等のビニリデン系高分子が挙げられる。
【0062】
塗布液に含まれる金属酸化物粒子としては特に限られず、適宜選択して用いればよい。
【0063】
金属酸化物粒子に含まれる金属酸化物としては適宜選択して用いることができ、特に限られないが、例えば、Ta2O5、TiO2、ZrO2、BaTiO3、PbTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaZrO3、PbZrO3、SrZrO3、CaZrO3、LaTiO3、LaZrO3、BiTiO3、LaPbTiO3、Y2O3等、または、これらの固溶体、より具体的にはチタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、ジルコニウム酸鉛、ジルコニウム酸バリウム、ジルコニウム酸ストロンチウム、ジルコニウム酸カルシウムが挙げられる。他にも、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ビスマス、チタン酸ランタン、フッ化バリウムマグネシウム等の複合酸化物粒子や、二酸化チタン、五酸化二タンタル、三酸化二イットリウム等の金属酸化物粒子が挙げられる。これらの金属酸化物粒子は1種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
金属酸化物粒子の比誘電率としてはTiO2など高比誘電率であるほど好ましく、具体的には比誘電率が10以上のものが好適である。なお本願において比誘電率とはJISC6481による比誘電率測定法で得られるものである。
【0065】
金属酸化物粒子の形状は特に限られず、例えば楕円状、鱗片形状、針状、球状、平板状、針状、不定形などいずれであっても良い。また、長径と短径の平均値を金属酸化物粒子の粒径とした時、平均粒径が500nm以下のものを使用することが望ましく、さらには平均粒径が100nm以下のものを使用することがより望ましい。平均粒径が500nmよりも大きいと、ゲート絶縁膜54中の金属酸化物粒子の分散が均一にならず、その結果ゲート絶縁膜54の比誘電率が均一にならなる場合や、ゲート絶縁膜54の表面平滑性が損なわれる恐れがある。この粒子の平均粒径は、小さいほどゲート絶縁膜54の平滑性や、比誘電率の均一性は向上するので好適であるが、平均粒径が5nmよりも小さいと金属酸化物粒子の比誘電率が低下する恐れがある。したがって、平均粒径が5nm以上の高比誘電率無機化合物粒子を使用することが望ましい。
など適宜選択して用いればよい。
【0066】
塗布液中に配合される金属酸化物粒子は、塗布液100重量部に対して2〜8重量部であることが好適である。
【0067】
ゲート絶縁膜54は、ゲート電極52の表面に直接接すると好適であるが、ゲート絶縁膜54とゲート電極52との層間に例えば、チャネル生成半導体層など他の層が形成されていてもよい。ゲート絶縁膜54は、有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60の少なくとも1つ、好適には有機半導体層56と表面が接していればよい。
【0068】
ソース電極58、ドレイン電極60は、Al、Mg、Ti、Nb、Zr等の単体もしくはそれらの合金を用いることができるがこれに限定されない。ゲート電極としては、十分な導電性があればよく、例えば、Pt、Au、W、Ru、Ir、Al、Sc、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ga、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Rh、Pd、Ag、Cd、Ln、Sn、Ta、Re、Os、Tl、Pb、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の金属単体もしくは積層もしくはその化合物でも良い。また、ITO、IZOのような金属酸化物粒子、ポリアニリン類、ポリチオフェン類、ポリピロール類などの共役性高分子化合物を含む有機導電材料でもよい。
【0069】
ソース電極58、ドレイン電極60は一般的な方法により製造すればよい。スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スプレー法、スピンコート法、CVD、リフトオフ、等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0070】
有機半導体56としては、ペンタセンなど半導体特性を示す有機材料であれば良く、特に限定されないが、例えば、フタロシアニン系誘導体、ナフタロシアニン系誘導体、アゾ化合物系誘導体、ペリレン系誘導体、インジゴ系誘導体、キナクリドン系誘導体、アントラキノン類などの多環キノン系誘導体、シアニン系誘導体、フラーレン類誘導体、あるいはインドール、カルバゾール、オキサゾール、インオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサアジアゾール、ピラゾリン、チアチアゾール、トリアゾールなどの含窒素環式化合物誘導体、ヒドラジン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、スチルベン類、アントラキノンジフェノキノン等のキノン化合物誘導体、アントラセン、ビレン、フェナントレン、コロネンなどの多環芳香族化合物誘導体などでその構造がポリエチレン鎖、ポリシロキサン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリアミド鎖、ポリイミド鎖等の高分子の主鎖中に用いられた物あるいは側鎖としてペンダント状に結合したもの、もしくはポリパラフェニレン等の芳香族系共役性高分子、ポリアセチレン等の脂肪族系共役性高分子、ポリピノールやポリチオフェン率の複素環式共役性高分子、ポリアニリン類やポリフェニレンサルファイド等の含ヘテロ原子共役性高分子、ポリ(フェニレンビニレン)やポリ(アニーレンビニレン)やポリ(チェニレンビニレン)等の共役性高分子の構成単位が交互に結合した構造を有する複合型共役系高分子等の炭素系共役高分子が用いられる。また、ポリシラン類やジシラニレンアリレンポリマー類、(ジシラニレン)エテニレンポリマー類、(ジシラニレン)エチニレンポリマー類のようなジシラニレン炭素系共役性ポリマー構造などのオリゴシラン類と炭素系共役性構造が交互に連鎖した高分子類などが用いられる。他にもリン系、窒素系等の無機元素からなる高分子鎖でも良く、さらにフタロシアナートポリシロキサンのような高分子鎖の芳香族系配位子が配位した高分子類、ペリレンテトラカルボン酸のようなペリレン類を熱処理して縮環させた高分子類、ポリアクリロニトリルなどのシアノ基を有するポリエチレン誘導体を熱処理して得られるラダー型高分子類、さらにペロブスカイト類に有機化合物がインターカレートした複合材料を用いてもよい。
【0071】
有機半導体56の形成方法としては、スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スプレー法、スピンコート法、CVD等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0072】
<保護膜>
保護膜20は、必ずしも形成しなくともよいが、形成すると水分や酸素などによる浸食から保護することができるので好適である。保護膜20は、多層構造であってもよく単層構造であってもよく、無機膜であってもよく、有機膜であってもよいが無機膜が含まれていると水分や酸素などによる浸食からのバリア性が向上するので好適である。
【0073】
無機膜としては、例えば、窒化膜、酸化膜又は炭素膜又はシリコン膜等が採用可能であり、より具体的には、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、又はダイヤモンド状カーボン(DLC)膜、アモルファスカーボン膜などが挙げられる。すなわち、SiN、AlN、GaN等の窒化物、SiO、Al2O3、Ta2O5、ZnO、GeO等の酸化物、SiON等の酸化窒化物、SiCN等の炭化窒化物、金属フッ素化合物、金属膜、等があげられる。
【0074】
有機膜としては、例えば、フラン膜、ピロール膜、チオフェン膜或いは、ポリパラキシレン膜エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシレン、フッ素系工分子(パーフルオロオレフィン、パーフルオロエーテル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン等)、金属アルコキシド(CH3OM、C2H5OM等)、ポリイミド前駆体、ペリレン系化合物などの重合膜等があげられる。
【0075】
保護膜20は、2種類以上の物質からなる積層構造、無機保護膜、シランカップリング層、樹脂封止膜からなる積層構造、無機材料からなるバリア層、有機材料からなるカバー層からなる積層構造、Si−CXHY等の金属または半導体と有機物との化合物、無機物からなる積層構造、無機膜と有機膜を交互に積層した構造、Si層上にSiO2またはSi3N4を積層した構造等の積層構造としたものなどが挙げられる。
【0076】
バリア膜12、保護膜20は、その構成される有機膜が無機膜に形成されたピンホールや表面凹凸を埋め、表面を平坦化させる。また、無機膜の膜応力を緩和させたりする役割を担う場合もある。
【0077】
保護膜20の製造方法は、スパッタリング法やCVD法等があげられるが、特に限定されることはなく、適宜適切なものを用いればよい。例えば、真空蒸着、イオンプレーティング、ゾルゲル法、スプレー法、スピンコート法、CVD等の一般的な薄膜作成方法にても可能である。
【0078】
<有機EL表示装置の発光態様>
上述の有機EL表示装置P1の発光態様について説明する。
【0079】
ゲート電極52とソース電極58の間に電圧が印加されると有機半導体56とゲート絶縁膜54との界面40(数nm程度の領域)に正孔が生成する。正孔が生成後、ソース電極58とドレイン電極60間に電圧をかけると正孔を輸送させることができる。一方で、ゲート電極52とソース電極58の間に電圧が印加されないと正孔は輸送されない。このように非導通状態(スイッチがオフの状態)と導通状態(スイッチがオン状態)を利用して、スイッチングを行うことができる。
【0080】
ソース電極58からホール(正孔)がゲート絶縁膜54を通じて、ドレイン電極60へ供給される。ドレイン電極60を通じて正孔は、有機EL素子100の陽極14へ伝えられる。
【0081】
有機EL素子100において、陽極14から正孔が有機固体層16中の正孔注入層162へと輸送される。輸送された正孔は、正孔輸送層164へと注入される。正孔輸送層164へ注入された正孔は、発光層166へと輸送される。
【0082】
また、有機EL素子100において、陰極18から電子が有機固体層16中の電子輸送層168へと輸送される。輸送された電子は、発光層166へと輸送される。
【0083】
輸送された正孔および電子は、発光層166中で再結合する。再結合の際、発せられるエネルギーにより、ELによる発光が発生する。この発光は、順に正孔輸送層164、正孔注入層162、陽極14、バリア膜12、基板10を通じて外部へと導出され、その発光を視認することができる。
【0084】
陰極18にAlが用いられている場合などは、陰極層18と電子輸送層168との界面が反射面となり、この界面で反射され、陽極14側へと進み、基板10を透過して外部へと射出される。したがって、以上のような構成の有機EL素子をディスプレイなどに採用した場合、基板10側が表示の観察面となる。
【0085】
例えば、有機ELパネルで、フルカラーディスプレイを実現しようとする場合、例えば、RGB各色を発光する有機EL素子を塗り分けにより製造する方式(塗り分け法)、白色発光の単色発光の有機EL素子とカラーフィルタを組み合わせた方式(カラーフィルタ法)、青色発光若しくは白色発光等の単色発光の有機EL素子と色変換層とを組み合わせた方式(色変換法)、単色の有機EL素子であって、有機発光層に電磁波を照射する等して複数発光を実現する方式(フォトブリーチング方式)などが挙げられるが特に限定されない。
【0086】
本実施形態の有機EL表示装置P1は、高品質なゲート絶縁膜54を含む高性能な有機TFTにより、有機EL素子100が駆動されるので、より高性能な有機EL表示装置を提供できる。
【0087】
上記実施形態では、有機EL素子を備える有機EL表示装置およびこれに用いられる有機TFTを示したが、これに限られることなく、有機EL素子以外を駆動する有機トランジスタであっても本実施形態は適用できる。すなわち、上記実施形態において、有機EL素子を他の有機トランジスタによって駆動される駆動素子に置き換えてもよく、有機EL素子などの駆動素子を省略して有機トランジスタ単独としてもよい。このような有機トランジスタは、ディスプレイ一般、例えば、液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、電子ペーパー、トナーディスプレイなどに適用できる。
【0088】
「有機EL表示装置の製造方法」
図2に示される有機EL表示装置P1の製造方法を説明する。基板10上にバリア膜12を形成し、バリア膜12上に有機EL素子および有機TFT50を作製する。有機TFT50のドレイン電極60と有機EL素子100の陽極14とは電気的に導通するように、接触させて作製する。次に、有機EL素子100、有機TFT50の表面を覆うように保護膜20を形成して有機EL表示装置P1を製造する。
【0089】
「ゲート絶縁膜の形成方法」
有機TFT50のゲート絶縁膜54の製造方法について一例を述べる。バインダー樹脂を液化させ、液化したバインダー樹脂中に金属酸化物30を投入し、攪拌して、溶液中に金属酸化物30を分散させ、塗布液32を作製する。
【0090】
塗布液32のバインダー樹脂の液化方法はバインダー樹脂自体を液化させる方法(無溶剤タイプの塗布液)、バインダー樹脂とは別にバインダー樹脂を溶かす溶媒を用いる方法が挙げられる。
【0091】
溶媒は、適宜選択して用いればよく特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、が用いられる。
【0092】
水系塗布液の溶媒としては、水やアルコール等の水溶性有機溶剤を用いることができる。水としては、通常の工業用水を使用することができる。また、水とアルコール等からなる水溶性有機溶剤として、水のほかにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコール等の低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等を使用して調整することができる。なお、該低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等は、5〜20重量%位の割合で含有していることが望ましい。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類等の溶剤は、インキの流動性改良、被印刷体である基材シートへの濡れの向上、乾燥性の調整等の目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量等が決定されるものである。
【0093】
溶剤系塗布液の溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の非水溶性有機溶剤、またはこれらの混合溶剤等が用いられる。
【0094】
図6に示されるように、作製した塗布液32をゲート電極52表面およびゲート電極52が形成された基板10上、バリア膜12表面に塗布する(塗布工程)。
【0095】
塗布液32の塗布方式としては、適宜選択して用いればよく特に限定されるものではないが、インクジェット、グラビアコート、グラビアリバースコート、コンマコート、ダイコート、リップコート、キャストコート、ロールコート、エアーナイフコート、メイヤーバーコート、押し出しコート、オフセット、紫外線硬化オフセット、フレキソ、孔版、シルク、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗り等の各種印刷方式が適用できる。
【0096】
塗布液32を塗布後、図7に示されるように、表面平坦化を行うモールド45を用意する。作製した塗布膜32(塗布液の塗布後の塗布状態としても塗布膜という表現を用いている)表面であって、表面平坦化したい位置にモールド表面42が来るようにモールド45の位置調整を行う。
【0097】
モールド45は、適宜選択して用いればよく特に限定されないが、例えば、モールド表面がSi製のモールドを用いたが、金属、金属酸化物、ダイヤモンドなどであってもよい。例えば、石英、サファイアなどの光線、特に紫外線を透過するものであれば、光硬化性樹脂を用い光硬化により、後述の固化工程を行う場合などに光線、特に紫外線を照射させやすく、好適である。
【0098】
モールド表面42は、塗布膜32の表面を押圧できればよく、特に限られるものではないが、ゲート絶縁膜54の界面と対応した形状にすると好適である。また、表面形状は、フラットであることに限られず、微細でない表面凹凸があってもよいが、表面が平坦であるほど好適である。
【0099】
次にモールド表面42を塗布膜32中へ押し下げて、図8の状態とする。図8の状態ではモールド表面42によって、塗布膜32表面は押圧される(表面押圧工程)。表面押圧工程によって、塗布膜32表面(界面40)に突出していた金属酸化物30は塗布膜32内部へ移動させられる。この移動によって、塗布膜32の表面から金属酸化物30が突出することを防止でき、界面における金属酸化物30の突出を防止している。
【0100】
本実施形態では、前記塗布膜が液状状態である場合に表面押圧工程を行っているがこれに限られることがない。表面押圧工程は、前記塗布膜が液状状態である場合、固体となった状態の両方に行うことができる。
【0101】
例えば、図6の状態で固体となった状態であっても、モールド表面42で押圧するまでに表面が液状化していればよく、例えば熱可塑性樹脂であれば、モールド表面42によって熱溶融させ、界面40に突出していた金属酸化物30を塗布膜32内部へ移動させることができる。
【0102】
次に、図8の状態を保ったまま、図9に示されるようにゲート絶縁膜とするべき箇所34を固化させる(固化工程)。
【0103】
固化工程は、ゲート絶縁膜54を形成する所望の箇所34の全体を固化すると好適であるがこれに限られない。少なくとも前記押圧された塗布膜の表面を固化させる工程であれば塗布膜32の表面から金属酸化物30が突出することを防止でき、界面における金属酸化物30の突出を防止できる。
【0104】
この固化は、特に限られるものではないが、紫外線硬化法などの光硬化法、熱硬化法、電子線硬化法、冷却法、乾燥法のうち少なくとも一つ、複数組み合わせた硬化法により固化すると固化しやすいなどの観点から好適である。
【0105】
例えば、紫外線の発生源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等を用いることができる。また、電子線源としてはコックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keVのエネルギーを持つ電子線を照射することができる。
【0106】
なお、固化工程は必須となる工程ではない。表面押圧工程において、界面40の金属酸化物30の突出は防止することができ、固化工程はその突出防止などをさらに好適に防止することができるものである。
【0107】
固化後、モールド45を引き上げ、図10の状態とする。
【0108】
図10の状態となった後、酸素リアクティブイオンエッチングなどエッチング工程によって塗布膜32の部分を溶剤で洗い流すなどして除去し(除去工程)、固化して洗い流されなかった箇所34が図11に示されるゲート絶縁膜54となり、ゲート絶縁膜54が形成される。
【0109】
エッチング用の溶剤としては適宜選択して用いればよい。シリコーンラダーポリマーに対して良溶媒である芳香族系有機溶剤(アニソール、トルエン等)、アルコール系有機溶剤(ブタノール等)、エステル系有機溶剤(酢酸ブチル等)、エーテル系有機溶剤(テトラヒドロフラン等)、及び、ケトン系有機溶剤(メチルイソブチルケトン等)などが挙げられる。具体例を挙げれば、芳香族系有機溶剤としては、ベラトール、トルエン、及び、フェネトールなどがあり、その他の材料として、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラリン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、及び、ジメチルホルムアミドなども挙げられる。
【0110】
このゲート絶縁膜54を形成した後、フォトリソグラフィーなどによって有機半導体層56、ソース電極58、ドレイン電極60を形成し有機TFT50が形成される。
【0111】
本実施形態における有機TFTはこのように粒子が分散されており比誘電率が大きく、かつ、表面粗度が悪くなる原因である金属酸化物粒子が表面に突出することを防止されているゲート絶縁膜を備えているので電荷移動度が大きいなど高性能な有機TFTを提供期できる。
【0112】
また、押圧工程と固化工程とを行えば、有機TFTのゲート絶縁膜をより簡単にパターニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】従来技術における有機EL表示装置の模式的な断面図である。
【図2】従来技術における有機TFTの模式的な断面図である。
【図3】本実施形態における有機EL表示装置の模式的な断面図である。
【図4】本実施形態における有機EL表示装置の有機EL素子付近の模式的な拡大図である。
【図5】本実施形態における有機EL表示装置の有機TFT付近の模式的な拡大図である。
【図6】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図7】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図8】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図9】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図10】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【図11】本実施形態におけるゲート絶縁膜の製造方法の模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0114】
10 基板
16 有機固体層
18 陰極
20 保護膜
50 有機TFT
54 ゲート絶縁膜
100 有機EL素子
P1,PA 有機EL表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機トランジスタにおけるゲート絶縁膜の製造方法であって、
金属酸化物粒子とバインダー樹脂とを含み、前記ゲート絶縁膜の構成材料となる塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布された塗布膜の表面を押圧する表面押圧工程と、を含むゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
少なくとも前記押圧された塗布膜の表面を固化させる固化工程を含むゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
前記固化は、光硬化法、熱硬化法、電子線硬化法、冷却法、乾燥法のうち少なくとも一つの硬化法により固化するゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
前記固化後に、固化していない塗布膜を除去する除去工程を含むゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
前記金属酸化物粒子の比誘電率が10以上であるゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項6】
ゲート絶縁膜を含む有機トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート絶縁膜は、請求項1から5のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法により製造されてなる有機トランジスタの製造方法。
【請求項7】
少なくとも陽極、有機発光層、陰極を備える有機EL素子と前記有機EL素子を駆動する有機トランジスタを含む有機EL表示装置の製造方法であって、
前記有機トランジスタは、請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法によって製造されてなる有機EL表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法で製造された有機トランジスタを含むディスプレイ。
【請求項1】
有機トランジスタにおけるゲート絶縁膜の製造方法であって、
金属酸化物粒子とバインダー樹脂とを含み、前記ゲート絶縁膜の構成材料となる塗布液を塗布する塗布工程と、
前記塗布された塗布膜の表面を押圧する表面押圧工程と、を含むゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
少なくとも前記押圧された塗布膜の表面を固化させる固化工程を含むゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
前記固化は、光硬化法、熱硬化法、電子線硬化法、冷却法、乾燥法のうち少なくとも一つの硬化法により固化するゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
前記固化後に、固化していない塗布膜を除去する除去工程を含むゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法であって、
前記金属酸化物粒子の比誘電率が10以上であるゲート絶縁膜の製造方法。
【請求項6】
ゲート絶縁膜を含む有機トランジスタの製造方法であって、
前記ゲート絶縁膜は、請求項1から5のいずれか1つに記載のゲート絶縁膜の製造方法により製造されてなる有機トランジスタの製造方法。
【請求項7】
少なくとも陽極、有機発光層、陰極を備える有機EL素子と前記有機EL素子を駆動する有機トランジスタを含む有機EL表示装置の製造方法であって、
前記有機トランジスタは、請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法によって製造されてなる有機EL表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の有機トランジスタの製造方法で製造された有機トランジスタを含むディスプレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−140786(P2008−140786A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91656(P2005−91656)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】
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