説明

コネクター一体型燃料用ホースおよびその製法

【課題】エタノール添加ガソリン等の燃料の耐透過性に優れているとともに、低コストで、耐衝撃性等にも優れるコネクター一体型燃料用ホースおよびその製法を提供する。
【解決手段】樹脂ホース1と、上記樹脂ホース1の端部をそれ自体の開口端縁内に埋設することにより一体化する略筒状のゴム製コネクター2とを備えたコネクター一体型燃料用ホースであって、上記樹脂ホース1が、管状のアミン変性ポリアミド樹脂製の内層3と、その外周面に接して設けられる燃料低透過層4と、さらにその外周面に接して設けられるアミン変性ポリアミド樹脂製の外層5とからなり、上記ゴム製コネクター2が、ゴム組成物を用いて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクター一体型燃料用ホースおよびその製法に関するものであり、詳しくは、自動車等において、ガソリン,アルコール混合ガソリン(ガソホール),アルコール,水素,軽油,ジメチルエーテル,ディーゼル,CNG(圧縮天然ガス),LPG(液化石油ガス)等の燃料の輸送等に用いられるコネクター一体型燃料用ホースおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界的な環境意識の高まりから、自動車燃料用ホースからの炭化水素蒸散量の規制が強化されてきており、なかでも米国ではかなり厳しい蒸散規制が法制化されている。このような状況の中、現行仕様のゴムホースでは、メタノールやエタノール等のアルコール混合ガソリンが透過しやすい等の難点があるため、このようなアルコール混合ガソリンの輸送等においては、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の、燃料低透過性に優れた樹脂を用いたホースのほうが、その使用に適している。しかし、上記のような樹脂は、剛性が高く、さらにコストも高い。そこで、上記樹脂からなる燃料低透過層と、ポリアミド樹脂等からなる熱可塑性樹脂層との積層構造とし、上記燃料低透過層の厚みを薄くした樹脂ホースが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、上記のような樹脂ホースは、ゴムホースと違って弾性が少ないために、ホース端部(開口部)の内径を拡径し、金属スリーブと連結するといった取り付け作業が困難である。そのため、従来、上記ホース端部の締結部には、コネクターを別途用意し、その取り付け作業が行われている(例えば、特許文献2および3参照)。
【特許文献1】特開平7−299855号公報
【特許文献2】特開2005−308211公報
【特許文献3】特開2001−200963公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、コネクターは、ホースとは別部材であり、その部品点数も多いことからコスト削減に限界がある。そのうえ、上記コネクターは、割れやすい樹脂材からなるものであったり、複雑な構造を有することから、耐衝撃性に劣る傾向がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、エタノール添加ガソリン等の燃料の耐透過性に優れているとともに、低コストで、耐衝撃性等にも優れるコネクター一体型燃料用ホースおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、樹脂ホースと、上記樹脂ホースの端部をそれ自体の開口端縁内に埋設することにより一体化する略筒状のゴム製コネクターとを備えたコネクター一体型燃料用ホースであって、上記樹脂ホースが、管状のアミン変性ポリアミド樹脂製内層と、その外周面に接して設けられる燃料低透過層と、さらにその外周面に接して設けられるアミン変性ポリアミド樹脂製外層とからなり、上記ゴム製コネクターが、下記の(A)および(B)を必須成分とするゴム組成物を用いて構成されているコネクター一体型燃料用ホースを第一の要旨とする。
(A)アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンドゴム。
(B)アミン系加硫剤。
【0007】
また、本発明は、上記第一の要旨のコネクター一体型燃料用ホースの製法であって、上記樹脂ホースの端部を、コネクター形成用の金型内に配設した後、上記コネクター形成用のゴム組成物を金型内に注型し、上記ゴム組成物の加硫、およびその加硫による樹脂ホースの端部内周面および端部外周面への加硫接着により、上記樹脂ホースの端部に略筒状のゴム製コネクターを一体形成するコネクター一体型燃料用ホースの製法を第二の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、コネクターを、従来のように別部材とするのではなく、ホースと一体形成し、更に、金属スリーブとの連結を容易かつ確実にするため、上記コネクターを略筒状のゴム製コネクターとすることを想起した。また、上記ホースに関しては、エタノール添加ガソリン等の燃料の耐透過性や、ホースの可撓性、低コスト化等を目的とし、ポリアミド系樹脂製の内層および外層の間に、フッ素系樹脂,ポリフェニレンサルファイド(PPS)等からなる燃料低透過層が介在された層構成とすることを想起した。そして、上記ホースの端部が、上記コネクターの開口端縁内に埋設された状態となるよう構成し、上記コネクター形成用のゴム組成物の加硫接着により、上記ホース内層および外層のポリアミド系樹脂に対し、接着剤レスで強固に一体形成することができるよう、上記コネクター形成用のゴム組成物について研究を重ねた。その結果、上記コネクター形成用のゴム組成物の必須成分として、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンドゴムと、アミン系加硫剤とを用い、さらに、上記ホース内層および外層を構成するポリアミド系樹脂をアミン変性ポリアミド樹脂とし、上記ゴム組成物の加硫(架橋)によりコネクターを形成すると、上記アクリルゴムの架橋基と、上記アミン変性ポリアミド樹脂の末端アミノ基やアミン系加硫剤中のアミノ基とが、結合等の相互作用をするため、コネクターとホースとの界面に接着剤レスで優れた接着力が得られるとともに、コネクターとしての機能も良好に得られることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明のコネクター一体型燃料用ホースは、そのホースが、管状のアミン変性ポリアミド樹脂製内層と、その外周面に接して設けられる燃料低透過層と、さらにその外周面に接して設けられるアミン変性ポリアミド樹脂製外層とを備えた樹脂ホースであり、上記樹脂ホースの端部が、略筒状のゴム製コネクターの開口端縁内に埋設され、一体化されている。そのため、エタノール添加ガソリン等の燃料の耐透過性や、ホースの可撓性に優れ、コスト面でも有利である。しかも、金属スリーブと連結する際に、金属スリーブの径が多少異なっていた場合であっても、上記ゴム製コネクターの弾性により容易に連結することが可能となるため、上記コネクター一体型燃料用ホースは、その適用範囲が広がる。そして、上記ゴム製コネクターが、アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンドゴムと、アミン系加硫剤とを必須成分とするゴム組成物によって構成されているため、上記ホース内周面および外周面のアミン変性ポリアミド樹脂との間に優れた接着力が得られるとともに、コネクターとしての機能も良好に得られるようになる。さらに、本発明のコネクター一体型燃料用ホースは、環境規制対象となるポリ塩化ビニル(PVC)等のハロゲンポリマーを用いない仕様であり、この点でも有用である。
【0010】
特に、上記コネクター形成に使用のブレンドゴムにおいて、そのアクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンド割合が、特定範囲内に設定されていると、耐燃料油性、樹脂接着性等により優れるようになる。
【0011】
また、上記コネクター形成に使用のブレンドゴムにおいて、そのアクリロニトリル−ブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量が、特定範囲内に設定されていると、燃料低透過により優れるようになる。
【0012】
さらに、上記コネクター形成に使用のブレンドゴムにおいて、そのアミン架橋系アクリルゴムのSP値が、特定範囲内に設定されていると、低温性に優れるようになり、寒冷地仕様の燃料用ホースに適用することができる。
【0013】
また、上記コネクター一体型燃料用ホースの製法であって、上記樹脂ホースの端部を、コネクター形成用の金型内に配設した後、上記コネクター形成用のゴム組成物を金型内に注型し、上記ゴム組成物の加硫、およびその加硫による樹脂ホースの端部内周面および端部外周面への加硫接着により、上記樹脂ホースの端部に略筒状のゴム製コネクターを一体形成すると、上記ゴム製コネクターの金型成形と同時に、上記ホース内層および外層のアミン変性ポリアミド樹脂に対し、コネクターを接着剤レスで強固に一体形成することができるため、その製造工程を簡略化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0015】
本発明のコネクター一体型燃料用ホースは、例えば、図1に示すように、燃料を流通させる管状のアミン変性ポリアミド樹脂製の内層3と、その外周面に接して設けられる燃料低透過層4と、さらにその外周面に接して設けられるアミン変性ポリアミド樹脂製の外層5とからなる樹脂ホース1と、上記樹脂ホース1の端部をそれ自体の開口端縁内に埋設することにより一体化する略筒状のゴム製コネクター2とを備えている。そして、上記ゴム製コネクター2が、下記の(A)および(B)を必須成分とするゴム組成物を用いて構成されている。なお、図において、上記樹脂ホース1が蛇腹構造を有しており、これにより柔軟性、衝撃吸収性等が向上するが、本発明はこれに限定されず、ストレート形状のホースであってもよい。また、本発明では、上記ゴム製コネクター2は、上記樹脂ホース1の片端部のみに設けられていても、両端部に設けられていてもよい。
(A)アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンドゴム。
(B)アミン系加硫剤。
【0016】
上記樹脂ホース1において、その内層3および外層5の材料であるアミン変性ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)、ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)等のポリアミド樹脂をアミン変性したものがあげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。上記アミン変性ポリアミド樹脂は、その末端アミノ基量の多いものが好ましい。
【0017】
上記内層3と外層5との層間に介在される燃料低透過層4の材料としては、好ましくは、フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0018】
上記フッ素系樹脂としては、特に限定するものではなく、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、ビニリデンフルオライド樹脂(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、加工性に優れる点で、ETFE、THV、PVDFが好適に用いられる。なお、上記フッ素系樹脂に、官能基を有するグラフト性化合物をグラフトさせたり、フッ素系樹脂の主鎖中あるいは末端に、官能基を有する化合物を共重合させること等により、官能基を導入してもよい。上記官能基としては、特に限定はないが、エポキシ基、水酸基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸基、アクリレート基、カーボネート基、アミノ基が好ましい。
【0019】
上記PPSとしては、特に限定はなく、リニア型、セミリニア型、架橋型等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、リニア型、セミリニア型が好適に用いられる。なお、上記PPSは、官能基で変性してあってもよい。上記官能基としては、特に限定はないが、エポキシ基、水酸基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸基、アクリレート基、カーボネート基、アミノ基が好ましい。
【0020】
前記図1に示した樹脂ホース1は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、先に述べたような、内層3用材料、燃料低透過層4用材料、および外層5用材料をそれぞれ準備する。つぎに、内層3用押出機、燃料低透過層4用押出機、および外層5用押出機を用いて、各材料を押し出して1つのダイに合流させ、この共押出した溶融チューブをサイジングダイスに通すことにより、内層3の外周面に燃料低透過層4が形成され、さらにその外周面に外層5が積層形成されてなるホースを作製することができる。なお、上記ホースを蛇腹状に形成する場合には、上記共押出した溶融チューブをコルゲーター(コルゲート成形機)に通すことにより、所定寸法の蛇腹状ホースを作製することが可能である。
【0021】
このようにして得られる樹脂ホース1において、ホース内径は2〜40mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは2.5〜36mmの範囲内であり、ホース外径は3〜44mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは4〜40mmの範囲内である。また、内層3の厚みは0.1〜1.8mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.2〜1.6mmの範囲内である。燃料低透過層4の厚みは、0.05〜0.3mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.2mmの範囲内である。また、外層5の厚みは、0.1〜1.8mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.2〜1.6mmの範囲内である。
【0022】
上記樹脂ホース1の端部に設けられる略筒状のゴム製コネクター2は、先にも述べたように、下記の(A)および(B)を必須成分とするゴム組成物を用いて構成されている。
(A)アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンドゴム。
(B)アミン系加硫剤。
【0023】
上記(A)成分のブレンドゴムとしては、そのブレンドに用いられるアクリルゴム(ACM)が、上記のようにアミン架橋系であることを要する。上記アミン架橋系アクリルゴムの架橋基は、アミン加硫で加硫する架橋基であれば特に限定はないが、好ましくは、カルボキシル基である。このようなアクリルゴムは、アクリル酸等のようなカルボキシル基含有モノマー等を、ACMに共重合させることにより、得ることができる。
【0024】
また、上記(A)成分のブレンドゴムにおいて、そのアミン架橋系アクリルゴム(ACM)のSP値が、18.9〜19.1 の範囲であると、低温性に優れるようになることから、寒冷地仕様の燃料用ホースに適用することができる。ここで、SP値とは、溶解性パラメータとも言われ、物質の極性を示す指標である。
【0025】
また、上記(A)成分のブレンドゴムにおいて、そのアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)のアクリロニトリル含有量(AN量)が、30〜80重量%の範囲内に設定されていると好ましく、より好ましくは、35〜60重量%の範囲内である。すなわち、このような範囲内にAN量が設定されていると、燃料低透過により優れるようになる。
【0026】
そして、上記(A)成分のブレンドゴムにおいて、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とアミン架橋系アクリルゴム(ACM)とのブレンド割合が、重量比で、NBR/ACM=40/60〜90/10の範囲になるよう設定するのが好ましい。すなわち、ACMの混合割合が上記範囲未満である(NBRの混合割合が上記範囲を超える)と、低温性および耐サワー性に劣る傾向がみられるからである。逆に、ACMの混合割合が上記範囲を超える(NBRの混合割合が上記範囲未満である)と、耐燃料油性および樹脂接着性に劣る傾向がみられるからである。
【0027】
上記(A)成分とともに用いられるアミン系加硫剤〔(B)成分〕としては、例えば、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート〔N+ 3 (CH2 6 NHCOO- 〕、エチレンジアミンカルバメート、脂環式アミン塩等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、加工安全性、物性バランスの点で、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンが好適に用いられる。
【0028】
上記アミン系加硫剤の配合割合は、上記(A)成分のブレンドゴム100重量部(以下、「部」と略す)に対して、0.2〜5部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜3部の範囲である。すなわち、上記アミン系添加剤が0.2部未満であると、樹脂接着性に乏しく、逆に5部を超えると、ゴム製コネクター2の機械的物性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0029】
なお、上記ゴム製コネクター2形成用のゴム組成物には、上記(A)および(B)成分に加えて、カーボンブラック、プロセスオイル等を配合することが好ましい。
【0030】
また、上記特殊なゴム組成物には、上記各成分に加えて、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、白色充填剤、反応性モノマー、発泡剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。
【0031】
上記特殊なゴム組成物は、上記(A)および(B)成分を配合し、必要に応じてその他の成分も配合し、これをロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより調製することができる。
【0032】
そして、前記図1に示したコネクター一体型燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前述のようにして製造した樹脂ホース1を用意し、上記樹脂ホース1の端部を、コネクター形成用の金型内に配設した後、上記コネクター形成用のゴム組成物を、インジェクション成形法等の手段により上記金型内に注型し、上記ゴム組成物の加硫、およびその加硫による樹脂ホース1の端部内周面(内層端部3aの内周面)および上記樹脂ホース1の端部外周面(外層端部5aの外周面)への加硫接着により、上記樹脂ホース1の端部に、図1に示すように略筒状のゴム製コネクター2を一体形成し、目的とするコネクター一体型燃料用ホースを製造することができる。
【0033】
上記のようにして製造することにより、ゴム製コネクター2を、その金型成形と同時に、上記樹脂ホース1の内層および外層のアミン変性ポリアミド樹脂に対し、接着剤レスで強固に一体形成することができるため、その製造工程を簡略化することができる。
【0034】
上記ゴム製コネクター2の内径は1〜36mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは1.5〜30mmの範囲内であり、外径は4〜64mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは5〜54mmの範囲内である。また、上記ゴム製コネクター2の厚みは、3〜20mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは5〜15mmの範囲内である。
【0035】
本発明のコネクター一体型燃料用ホースは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、CNG(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の自動車用燃料の輸送用ホースとして好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、メタノールや水素、ジメチルエーテル(DME)等の燃料電池自動車用の燃料輸送用ホースとしても使用可能である。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0038】
〔NBR−ACM(A成分)〕
アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのアロイ〔NBR/ACM=70/30(重量比),NBRのAN量:50%,ACMのSP値:19.0〕、日本ゼオン社製、ニポールD4018
【0039】
〔加工助剤〕
花王社製、ルーナックS30
【0040】
〔MAFカーボンブラック〕
東海カーボン社製、シースト116
【0041】
〔合成可塑剤〕
旭電化社製、アデカサイザーRS−107
【0042】
〔アミン系加硫剤(B成分)〕
日本ヒドラジン工業社製、ADH
【0043】
〔加硫促進剤(i)〕
大内新興社製、ノクセラーD
【0044】
〔加硫促進剤(ii)〕
花王社製、ファーミン80
【0045】
〔実施例1、比較例1〜3〕
下記の表1に示す材料をそれぞれ準備し、表1に示す割合で配合し、これらを5Lニーダーを用いて混練することにより、コネクター形成用ゴム組成物aを調製した。
【0046】
【表1】

【0047】
つぎに、樹脂ホースの内層用材料および外層用材料として、下記に示す材料を準備した。
【0048】
〔PA(i)〕
アミン変性PA12(宇部興産社製、UBESTA3024JIX3)
【0049】
〔PA(ii)〕
非アミン変性PA12(アトフィナ・ ジャパン社製、Rilsan AESN P20TL)
【0050】
また、上記樹脂ホースの燃料低透過層用材料として、下記に示す材料を準備した。
【0051】
〔PPS〕
大日本インキ社製、FZ−2200−A5
【0052】
そして、後記の表2に示す組み合わせで、内層用材料、燃料低透過層用材料および外層用材料を、押出機を用いて共押出し成形し、内層(厚み0.4mm)の外周面に燃料低透過層(厚み0.1mm)が形成され、さらにその外周面に外層(厚み0.5mm)が形成されてなる樹脂ホース(内径20mm、長さ10m)を作製した(後記の表2に層形成材料の記載がないものは、その層の形成は行っていない。)。なお、上記ホースの一部には、コルゲーターにより、蛇腹構造も形成した(図1参照)。
【0053】
続いて、上記のようにして得られた実施例および比較例の樹脂ホースの端部を、コネクター形成用の金型内に配設した後、上記金型内に、上記調製のコネクター形成用ゴム組成物aを用い(比較例3を除く)、インジェクション成形(170℃×10分の加硫)を行った。これにより、図1に示すような筒状のゴム製コネクター(内径10mm、厚み15mm、長さ3cm)を備えた、コネクター一体型燃料用ホースを製造した。なお、上記コネクターは、上記樹脂ホースの両端部に設けた。
【0054】
このようにして得られた実施例品および比較例品のコネクター一体型燃料用ホースを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表2に併せて示した。
【0055】
〔接着力〕
コネクターと樹脂ホースとの間の接着力を見るため、コネクター一体型燃料用ホースを長手方向に4分割し、そのうちの1つを用いて、上記樹脂ホースの内層側とコネクターゴムとの界面を剥離して接着力(N/cm)を測定した。また、上記樹脂ホースの外層側とコネクターゴムとの接着力(N/cm)も、上記と同様にして測定した。
【0056】
〔ガソリン透過量〕
コネクター一体型燃料用ホースの両端部を、端部の外周をR処理した外径12mmの金属製パイプ(だだし、外径15mmに拡径されたバルジ加工部を2箇所有する)を2本準備し、上記コネクターの端部に1本ずつ挿入した。そして、一方の金属製パイプにはネジ式の目くら栓を装着し、他方の金属製パイプには金属製バルブを装着した。ついで、上記金属製バルブを装着した金属製パイプ側から、燃料用ホース内にエタノール10体積%含有したインドレンガソリンを封入し、40℃で3000時間処理(なお、1週間毎に、エタノール10体積%含有したインドレンガソリンを交換)した。そして、CARBSHED法DBLパターンで、3日間ガソリン透過量を測定し、ガソリン透過量が最大であった日の、燃料ホース1m当たりのガソリン透過量を算出した。
【0057】
【表2】

【0058】
上記結果から、実施例品は、エタノール添加ガソリンの耐透過性に優れているとともに、コネクターと樹脂ホースとの間の接着力も、接着剤レスで良好に得られた。
【0059】
これに対して、比較例1品は、樹脂ホースの内層および外層がポリアミド樹脂であるが、アミン変性されたものでないことから、コネクターと樹脂ホースとの間の接着力が、実施例品ほど得られなかった。比較例2品は、樹脂ホースの内層がポリアミド樹脂でないことから、内層側でコネクターとの接着力が得られなかった。比較例3品は、チューブがポリアミド12の単層仕様であることから、ガソリン透過量が著しく多かった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のコネクター一体型燃料用ホースおよびその製法は、ガソリン,アルコール混合ガソリン(ガソホール),アルコール,水素,軽油,ジメチルエーテル,ディーゼル,CNG(圧縮天然ガス),LPG(液化石油ガス)等の燃料の輸送等に用いられるコネクター一体型燃料用ホースおよびその製法に利用可能である。そして、上記ホースは、従来公知の乗用車や燃料電池自動車等において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のコネクター一体型燃料用ホースの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 樹脂ホース
2 ゴム製コネクター
3 内層
4 燃料低透過層
5 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ホースと、上記樹脂ホースの端部をそれ自体の開口端縁内に埋設することにより一体化する略筒状のゴム製コネクターとを備えたコネクター一体型燃料用ホースであって、上記樹脂ホースが、管状のアミン変性ポリアミド樹脂製内層と、その外周面に接して設けられる燃料低透過層と、さらにその外周面に接して設けられるアミン変性ポリアミド樹脂製外層とからなり、上記ゴム製コネクターが、下記の(A)および(B)を必須成分とするゴム組成物を用いて構成されていることを特徴とするコネクター一体型燃料用ホース。
(A)アクリロニトリル−ブタジエンゴムとアミン架橋系アクリルゴムとのブレンドゴム。
(B)アミン系加硫剤。
【請求項2】
上記(A)成分における、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)と、アミン架橋系アクリルゴム(ACM)との割合が、重量比で、NBR/ACM=40/60〜90/10の範囲でブレンドされている請求項1記載のコネクター一体型燃料用ホース。
【請求項3】
上記(A)成分におけるアクリロニトリル−ブタジエンゴムのアクリロニトリル含有量が、30〜80重量%の範囲である請求項1または2記載のコネクター一体型燃料用ホース。
【請求項4】
上記(A)成分におけるアミン架橋系アクリルゴムのSP値が、18.9〜19.1 の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載のコネクター一体型燃料用ホース。
【請求項5】
上記(A)成分におけるアミン架橋系アクリルゴムの架橋基が、カルボキシル基である請求項1〜4のいずれか一項に記載のコネクター一体型燃料用ホース。
【請求項6】
上記燃料低透過層が、下記の(a)を用いて構成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のコネクター一体型燃料用ホース。
(a)フッ素系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)およびポリブチレンナフタレート(PBN)からなる群から選ばれた少なくとも一方。
【請求項7】
上記樹脂ホースが、蛇腹構造を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のコネクター一体型燃料用ホース。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のコネクター一体型燃料用ホースの製法であって、上記樹脂ホースの端部を、コネクター形成用の金型内に配設した後、上記コネクター形成用のゴム組成物を金型内に注型し、上記ゴム組成物の加硫、およびその加硫による樹脂ホースの端部内周面および端部外周面への加硫接着により、上記樹脂ホースの端部に略筒状のゴム製コネクターを一体形成することを特徴とするコネクター一体型燃料用ホースの製法。
【請求項9】
上記樹脂ホースの成形を、その内層用材料と、燃料低透過層用材料と、外層用材料との溶融押出成形をした後、コルゲーターに通して蛇腹構造となるよう、その成形を行う請求項8記載のコネクター一体型燃料用ホースの製法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−270877(P2007−270877A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94639(P2006−94639)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】