説明

コンプレッサハウジング及び排気タービン過給機

【課題】コンプレッサハウジングをダイカスト成形する場合であれ、インペラの回転軸の軸線方向における体格を的確に小さくすることができる。
【解決手段】コンプレッサハウジング2aは、インレット部11とフランジ部15とを有するスクロール部材10、及びシュラウド部21とシュラウド部21からインレット部11に向けて延びてインレット部11の内周面11aに嵌合する嵌合部25とを有するシュラウド部材20を備える。還流通路2cは、フランジ部15の内周面15aに開口するとともにインペラ2bに近接するように軸線方向Cに対して傾斜して延びる傾斜部16、インレット部11の内周面11aに形成される凹部17、及び嵌合部25の外周面において凹部17に対向する対向部25aを有する。また、凹部17と嵌合部25の端部25bとにより形成される連通部17aを通じて凹部17の内部とインレット部11の内部とが連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプレッサハウジング及び同コンプレッサハウジングを備える排気タービン過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンプレッサハウジングとしては例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載のものも含めて従来一般のコンプレッサハウジングは、インペラの上流に位置してインペラに向けて空気を導入するインレット部と、インペラの外周を覆うシュラウド部と、インペラの下流に位置するスクロール空間を区画するスクロール部とを有している。
【0003】
また、コンプレッサハウジングの内部には、インペラの下流側の空気をインペラの上流側に還流する還流通路、同還流通路を開閉する弁体、及び同弁体が設けられるフランジ部とが形成されている。
【0004】
こうしたコンプレッサハウジングを備える排気タービン過給機では、例えばアクセルオフによりインレット部からインペラに向けて空気が導入されなくなると、アクチュエータによって弁体が開方向に駆動されることでインペラの下流側から還流通路を通じて上流側に空気の一部が戻されるようになる。これにより、サージングの発生が回避される。
【0005】
ちなみに、こうした従来のコンプレッサハウジングは、内部に還流通路等を設ける必要があることから、砂型鋳造にて形成されている。また、還流通路は中子を用いて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010―174806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンプレッサハウジングを砂型鋳造にて形成する場合には、コンプレッサハウジングを1つ製造する毎に新たな砂型が必要となるため製造工程が複雑なものとなるばかりか、当該製造に多くの時間を要するといった問題が生じる。
【0008】
これに対して、コンプレッサハウジングの製造に要する時間を短縮すべく、コンプレッサハウジングをダイカスト成形にて形成することが考えられる。しかしながら、ダイカスト成形では、コンプレッサハウジングの内部に還流通路を形成することが困難となる。
【0009】
そこで、コンプレッサハウジングをダイカスト成形にて形成した後、例えば弁体が設けられるフランジ部からドリル加工により還流通路を形成することが考えられる。ただしこの場合、ドリル加工をするためには、インペラの回転軸の軸線方向(以下、軸線方向)に対する還流通路の傾斜角をある程度小さくする必要がある。しかも、還流通路はインペラの上流側に空気を戻すものでなければならない。従って、これらの要求を満足するコンプレッサハウジングは、インレット部やフランジ部の軸線方向における体格が大きなものとなり、コンプレッサハウジングの小型化を好適に図ることができない。
【0010】
尚、こうした問題はコンプレッサハウジングがダイカスト成形にて形成されるものに限定されず、他の成形方法にて形成されるコンプレッサハウジングにおいても概ね共通して生じ得る。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンプレッサハウジングをダイカスト成形する場合であれ、インペラの回転軸の軸線方向におけるコンプレッサハウジングの体格を的確に小さくすることのできるコンプレッサハウジング及び排気タービン過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、インペラの下流側の空気をインペラの上流側に還流する還流通路と、同還流通路を開閉する弁体が設けられるフランジ部とを有するコンプレッサハウジングにおいて、インペラに向けて空気を導入するインレット部と前記フランジ部とを一体として有するスクロール部材と、前記スクロール部材とは別体とされ、インペラの外周を覆うシュラウド部と同シュラウド部から前記インレット部に向けて延びて前記インレット部の内周面に嵌合する嵌合部とを一体として有するシュラウド部材と、を備え、前記還流通路は、前記フランジ部の内周面に開口するとともにインペラに近接するようにインペラの回転軸の軸線方向に対して傾斜して延びる傾斜部と、前記インレット部の内周面に形成される凹部と、前記嵌合部の外周面において前記凹部に対向する対向部とを有し、前記凹部と前記嵌合部の端部とにより形成される連通部を通じて同凹部の内部と前記インレット部の内部とが連通されてなることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、還流通路を通じて還流される空気は、傾斜部から凹部に流入し、シュラウド部材の嵌合部の外周面の一部である対向部に衝突する。この衝突によって空気の流れ方向が変更され、凹部と嵌合部の端部とにより形成される連通部を通じてインレット部の内部に空気が戻される。このように還流通路は傾斜部を有してはいるものの嵌合部の対向部によって空気の流れ方向が変更されるため、インペラの回転軸の軸線方向に対する傾斜部の傾斜角度を小さくすることが可能となる。すなわち、インペラの回転軸の軸線方向におけるインレット部やフランジ部の体格を大きくしなくとも還流通路を容易に形成することができる。従って、コンプレッサハウジングをダイカスト成形する場合であれ、インペラの回転軸の軸線方向におけるコンプレッサハウジングの体格を的確に小さくすることができる。
【0014】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記凹部はインペラの回転軸の軸線方向において前記シュラウド部材の端面に当接する当接面に開口してなることをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、型成形する場合であれ、切削加工する場合であれ、スクロール部材に対して凹部を容易に形成することができる。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記スクロール部材の前記当接面と前記シュラウド部材の前記端面との間にはシール部材及びシール剤の少なくとも一方が設けられてなることをその要旨としている。
【0016】
スクロール部材の上記当接面に凹部が開口する構成にあっては、当該凹部が存在しない場合に比べて上記当接面とこれに接するシュラウド部材の端面との接触面積が少なくなることでシール性が低下するおそれがある。その結果、上記当接面と上記端面との間から空気の漏出が生じるおそれがある。
【0017】
この点、上記構成によれば、スクロール部材の当接面とシュラウド部材の端面との間にはシール部材及びシール剤の少なくとも一方が設けられているため、こうした空気の漏出を的確に抑制することができる。
【0018】
(4)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明は、請求項4に記載の発明によるように、前記スクロール部材は鋳造にて形成されてなるといった態様をもって具体化することができる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記スクロール部材はダイカスト成形されてなることをその要旨としている。
単一構造のコンプレッサハウジングをダイカスト成形にて形成する場合、コンプレッサハウジングの内部に還流通路を形成すると、インペラの回転軸の軸線方向におけるコンプレッサハウジングの体格が増大することとなる。
【0020】
この点、本発明によれば、スクロール部材が対向部を有するシュラウド部材とは別体とされるため、コンプレッサハウジングを構成するスクロール部材をダイカスト成形により容易に形成することができる。また、還流通路は対向部を有しているため、インペラの回転軸の軸線方向におけるコンプレッサハウジングの体格を的確に小さくすることができる。
【0021】
(6)
請求項4又は請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明によるように、前記傾斜部はドリル加工により形成されてなるといった態様をもって具体化することができる。本発明によれば、インペラの回転軸の軸線方向に対する傾斜部の傾斜角度を小さくすることが可能となるため、ドリル加工によって傾斜部を容易に形成することができる。
【0022】
(7)
請求項4又は請求項5に記載の発明は、請求項7に記載の発明によるように、前記傾斜部は鋳抜きされてなるといった態様をもって具体化することができる。本発明によれば、インペラの回転軸の軸線方向に対する傾斜部の傾斜角度を小さくすることが可能となるため、鋳抜きによって傾斜部を容易に形成することができる。
【0023】
(8)
請求項8に記載の発明は、請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングにおいて、前記凹部は当該鋳造に際して型成形されてなることをその要旨としている。
【0024】
同構成によれば、スクロール部材を鋳造にて形成する際、凹部を同時に形成することができる。
(9)
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の発明は、請求項9に記載の発明によるように、前記シュラウド部材は鋳造にて形成されてなるといった態様をもって具体化することができる。この場合、特に、シュラウド部材は構造が単純であるため、これをダイカスト成形することが製造時間を短縮する上では望ましい。
【0025】
(10)
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングを備え、排気のエネルギによってインペラを回転させて過給を行なう排気タービン過給機であることをその要旨としている。
【0026】
同構成によれば、請求項1〜請求項9に記載の発明の作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態について、排気タービン過給機を中心とした内燃機関の概略構成を示す概略図。
【図2】同実施形態におけるコンプレッサハウジングの断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態におけるコンプレッサハウジングの断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1〜図3を参照して、本発明に係るコンプレッサハウジング及び排気タービン過給機を具体化した一実施形態について詳細に説明する。
図1に、本実施形態の排気タービン過給機(以下、過給機1)を中心とした内燃機関の概略構成を示す。
【0029】
図1に示すように、過給機1は、内燃機関の吸気通路に設けられるコンプレッサ2と、排気通路に設けられるタービン3とを備えている。
コンプレッサ2は、遠心式圧縮機であり、大きくは吸気通路の途中に設けられるインペラ2b、及びこれを囲繞するコンプレッサハウジング2aを備えている。
【0030】
タービン3は、タービンホイール3b、及びこれを囲繞するタービンハウジング3aを備えている。
インペラ2bとタービンホイール3bとはシャフト4を介して連結されている。尚、シャフト4はベアリングハウジング5の内部に配置されたベアリングにより回転可能に支持されている。
【0031】
コンプレッサハウジング2aの内部にはインペラ2bを迂回する通路であって、インペラ2bの下流側の空気をインペラ2bの上流側に還流する還流通路2cが形成されている。還流通路2cの途中には同通路を開閉する弁体2dが設けられている。
【0032】
次に、図2及び図3を参照して、コンプレッサハウジング2aの具体的な構造について説明する。尚、以降では、インペラ2bの回転軸の軸線方向(以下、軸線方向C)において、インペラ2bに近接する側(図2及び図3中における下側)を基端側と称し、インペラ2bから離間する側(図2及び図3中における上側)を先端側と称する。
【0033】
図2及び図3に併せ示すように、コンプレッサハウジング2aは、スクロール部材10とこれとは別体のシュラウド部材20との分割構造とされている。
スクロール部材10は、インペラ2bに向けて空気を導入するインレット部11と、還流通路2cを開閉する弁体2dが設けられるフランジ部15と、インペラ2bの下流側に位置するスクロール空間Sを区画するスクロール部19とを一体として有している。インレット部11及びフランジ部15はスクロール部19から先端側に突出するとともに互いに並設されている。インレット部11及びフランジ部15の内部空間はそれぞれ略円柱状をなしている。また、フランジ部15の内部とスクロール空間Sとは連通孔14により連通されており、弁体2dが開弁されることによりフランジ部15の内部とスクロール部19の内部とが連通される。尚、弁体2dは周知の駆動機構により開閉される。具体的には、弁体2dを閉弁側に常時付勢するばね2eが設けられている。また、負圧室に対して吸気マニホルド内の負圧を導入するための導入通路が設けられている。この負圧室に導入される負圧は弁体2dに対してこれを開弁させる方向に作用する。
【0034】
インレット部11とフランジ部15との間には共通する側壁をなす共通壁13が形成されている。
シュラウド部材20は全体として略円筒状をなしている。シュラウド部材20の基端側の内周面はインペラ2bの外周を覆うシュラウド部21とされている。また、シュラウド部材20の基端側の外周面はスクロール空間Sを区画するスクロール部29とされている。また、シュラウド部材20は、シュラウド部21からインレット部11に向けて延びてインレット部11の内周面11aに嵌合する円筒状の嵌合部25を有している。嵌合部25の外径はスクロール部29の外径よりも小さくされており、嵌合部25の先端側の端部25bとスクロール部29の先端側の端面28とは段差形状をなしている。
【0035】
スクロール部材10とシュラウド部材20との組み付けは以下のようにして行なわれる。すなわち、インレット部11の内周面11aに対して、基端側からシュラウド部材20の嵌合部25の外周面が嵌合される。このとき、インレット部11(共通壁13)の基端側の端面である当接面18は、スクロール部29の先端側の端面28に当接する。
【0036】
さて、スクロール部材10の共通壁13には、フランジ部15の内周面15aに開口するとともにインレット部11に近接するほど基端側に位置するように傾斜して延びる傾斜部16が形成されている。すなわち、傾斜部16はインペラ2bに近接するように軸線方向Cに対して傾斜して延びている。
【0037】
また、インレット部11の内周面11aには軸線方向Cに沿って延びる凹部17が形成されている。この凹部17の基端部は上記当接面18に開口している。また、凹部17の基端側の部分は嵌合部25の外周面によって覆われている。以下、嵌合部25の外周面のうち凹部17を覆う部位、換言すれば凹部17に対向する部位を対向部25aと称する。また、凹部17の先端部は嵌合部25の端部25bよりも先端側に位置するとともに共通壁13によって閉塞されている。このため、凹部17と嵌合部25の基端側の端部25bとにより形成される連通部17aを通じて凹部17の内部とインレット部11の内部とが連通されている。
【0038】
還流通路2cは、連通孔14、フランジ部15の内部、傾斜部16、凹部17、嵌合部25における対向部25a、及び連通部17aにより構成される。
本実施形態では、スクロール部材10及びシュラウド部材20は共にダイカスト成形にて形成されている。ここで、凹部17はスクロール部材10をダイカスト成形する際に型によって同時に形成される。一方、スクロール部材10がダイカスト成形されただけの状態、すなわち傾斜部16が形成されていない状態のものに対してドリル加工により傾斜部16が形成される。
【0039】
ところで、スクロール部材10の上記当接面18に凹部17が開口する構成にあっては、当該凹部17が存在しない場合に比べて上記当接面18と端面28との接触面積が少なくなることでシール性が低下するおそれがある。その結果、当接面18と端面28との間から空気の漏出が生じるおそれがある。
【0040】
そこで、本実施形態では、こうした空気の漏出を的確に抑制するために、スクロール部材10の当接面18とシュラウド部材20の端面28との間にはシール剤が塗布されている。具体的には、液状ガスケットが用いられている。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
こうした過給機1では、燃焼室から排出される排気のエネルギによってタービンホイール3bが回転駆動されると、タービンホイール3bに軸連結されたインペラ2bが回転する。これにより、吸気通路を経由してインレット部11から導入される空気がインペラ2bとの間を通過する際にインペラ2bによって圧縮されて燃焼室に供給される。
【0042】
また、例えばアクセルオフによりインレット部11からインペラ2bに向けて空気が導入されなくなると、吸気マニホルド内の負圧が導入通路を通じて弁体2dの負圧室に導入されることで弁体2dが開弁される。これにより、インペラ2bの下流側から上流側に還流通路2cを経由して空気の一部が戻されるようになり、サージングの発生が回避される。
【0043】
さて、本実施形態では前述したように、還流通路2cは、フランジ部15の内周面15aに開口するとともにインペラ2bに近接するようにインペラ2bの回転軸の軸線方向Cに対して傾斜して延びる傾斜部16と、インレット部11の内周面11aに形成される凹部17と、嵌合部25の外周面において凹部17に対向する対向部25aとを有している。また、凹部17と嵌合部25の端部25bとにより形成される連通部17aを通じて凹部17の内部とインレット部11の内部とが連通されている。このため、還流通路2cを通じて還流される空気は、傾斜部16から凹部17に流入し、シュラウド部材20の対向部25aに衝突する。この衝突によって空気の流れ方向が変更され、凹部17と嵌合部25の端部25bとにより形成される連通部17aを通じてインレット部11の内部に戻される。
【0044】
このように還流通路2cは傾斜部16を有してはいるものの嵌合部25の対向部25aによって空気の流れ方向が変更されるため、軸線方向Cに対する傾斜部16の傾斜角度αを小さくすることが可能となる。すなわち、軸線方向Cにおけるインレット部11やフランジ部15の体格を大きくしなくとも還流通路2cを容易に形成することができる。
【0045】
以上説明した本実施形態に係るコンプレッサハウジング及び排気タービン過給機によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)コンプレッサハウジング2aは、インペラ2bに向けて空気を導入するインレット部11とフランジ部15とを一体として有するスクロール部材10を備えている。また、コンプレッサハウジング2aは、スクロール部材10とは別体とされ、インペラ2bの外周を覆うシュラウド部21とシュラウド部21からインレット部11に向けて延びてインレット部11の内周面11aに嵌合する嵌合部25とを一体として有するシュラウド部材20を備えている。還流通路2cは、フランジ部15の内周面15aに開口するとともにインペラ2bに近接するように軸線方向Cに対して傾斜して延びる傾斜部16と、インレット部11の内周面11aに形成される凹部17と、嵌合部25の外周面において凹部17に対向する対向部25aとを有している。また、凹部17と嵌合部25の端部25bとにより形成される連通部17aを通じて凹部17の内部とインレット部11の内部とが連通されている。また、スクロール部材10及びシュラウド部材20は共にダイカスト成形にて形成されている。こうした構成によれば、ダイカスト成形によりコンプレッサハウジング2aが形成されるものにあって、適切な還流通路2cを形成しつつ、軸線方向Cにおけるコンプレッサハウジング2aの体格を的確に小さくすることができる。
【0046】
(2)凹部17は軸線方向Cにおいてシュラウド部材20の端面28に当接する当接面18に開口している。こうした構成によれば、スクロール部材10をダイカスト成形する際に凹部17を容易に形成することができる。
【0047】
(3)スクロール部材10の当接面18とシュラウド部材20の端面28との間にはシール剤が設けられている。こうした実施形態によれば、スクロール部材10の当接面18とシュラウド部材20の端面28との間にはシール剤、具体的には液状ガスケットが設けられているため、こうした空気の漏出を的確に抑制することができる。
【0048】
(4)傾斜部16はドリル加工により形成されている。前述したように、本実施形態によれば、軸線方向Cに対する傾斜部16の傾斜角度αを小さくすることが可能となるため、ドリル加工によって傾斜部16を容易に形成することができる。
【0049】
(5)凹部17は型成形(ダイカスト成形)されている。こうした構成によれば、スクロール部材10をダイカスト成形する際、凹部17を同時に形成することができる。
尚、本発明に係るコンプレッサハウジング及び排気タービン過給機は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0050】
・上記実施形態では、シュラウド部材20がダイカスト成形にて形成されるものとしたが、これに代えて、シュラウド部材を樹脂製のものとし、これを射出成形にて形成するようにしてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、スクロール部材10をダイカスト成形にて形成する際に型によって凹部17が同時に形成されるものとした。しかしながら、これに代えて、ダイカスト成形の際には凹部を形成せず、切削加工により同凹部を形成するようにすることもできる。
【0052】
・上記実施形態では、傾斜部16がドリル加工により形成されるものとした。これに代えて、傾斜部が鋳抜きにより形成されるものとしてもよい。すなわち、ダイカスト成形の際に鋳抜きピンを用いて形成されるものとしてもよい。この場合であっても、軸線方向Cに対する傾斜部の傾斜角度を小さくすることが可能となるため、鋳抜きによって傾斜部を容易に形成することができる。
【0053】
・上記実施形態によるように、スクロール部材10をダイカスト成形にて形成することがスクロール部材10の製造に要する時間を短縮する上では望ましい。しかしながら、本発明に係るスクロール部材はダイカスト成形によるものに限定されず、他の金型鋳造成形にて形成されるものであってもよい。また、スクロール部材は鋳造成形されるものに限定されるものではなく、切削加工により形成されるものであってもよい。
【0054】
・上記実施形態では、コンプレッサハウジング2aをスクロール部材10とシュラウド部材20との2分割構造としたが、これを3分割構造とすることもできる。すなわち、スクロール部材10のスクロール部19のうち基端側の部位を別体とすることもできる。
【0055】
・上記実施形態では、スクロール部材10の当接面18とシュラウド部材20の端面28との間にシール剤(液状ガスケット)が塗布されるものについて例示したが、これら当接面18と端面28との間をシールするものはこれに限定されない。他に例えば金属製のガスケット等、他のシール部材を採用することもできる。
【0056】
・上記実施形態及びその変形例によるように、スクロール部材10の当接面18とシュラウド部材20の端面28との間にはシール剤及びシール部材の少なくとも一方を設けることが、当接面18と端面28との間からの空気の漏出を的確に抑制する上では望ましい。しかしながら、こうした空気の漏出が問題にはならない場合には、こうしたシール剤、或いはシール部材を割愛することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1…過給機、2…コンプレッサ、2a…コンプレッサハウジング、2b…インペラ、
2c…還流通路、2d…弁体、2e…ばね、3…タービン、3a…タービンハウジング、3b…タービンホイール、4…シャフト、5…ベアリングハウジング、10…スクロール部材、11…インレット部、11a…内周面、13…共通壁、14…連通孔、15…フランジ部、15a…内周面、16…傾斜部、17…凹部、17a…連通部、18…当接面、19…スクロール部、20…シュラウド部材、21…シュラウド部、25…嵌合部、25a…対向部、25b…端部、28…端面、29…スクロール部、S…スクロール空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラの下流側の空気をインペラの上流側に還流する還流通路と、同還流通路を開閉する弁体が設けられるフランジ部とを有するコンプレッサハウジングにおいて、
インペラに向けて空気を導入するインレット部と前記フランジ部とを一体として有するスクロール部材と、
前記スクロール部材とは別体とされ、インペラの外周を覆うシュラウド部と同シュラウド部から前記インレット部に向けて延びて前記インレット部の内周面に嵌合する嵌合部とを一体として有するシュラウド部材と、を備え、
前記還流通路は、前記フランジ部の内周面に開口するとともにインペラに近接するようにインペラの回転軸の軸線方向に対して傾斜して延びる傾斜部と、前記インレット部の内周面に形成される凹部と、前記嵌合部の外周面において前記凹部に対向する対向部とを有し、前記凹部と前記嵌合部の端部とにより形成される連通部を通じて同凹部の内部と前記インレット部の内部とが連通されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項2】
請求項1に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記凹部はインペラの回転軸の軸線方向において前記シュラウド部材の端面に当接する当接面に開口してなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項3】
請求項2に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記スクロール部材の前記当接面と前記シュラウド部材の前記端面との間にはシール部材及びシール剤の少なくとも一方が設けられてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記スクロール部材は鋳造にて形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項5】
請求項4に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記スクロール部材はダイカスト成形されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記傾斜部はドリル加工により形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項7】
請求項4又は請求項5に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記傾斜部は鋳抜きされてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項8】
請求項4〜請求項7のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記凹部は当該鋳造に際して型成形されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングにおいて、
前記シュラウド部材は鋳造にて形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッサハウジング。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のコンプレッサハウジングを備え、排気のエネルギによってインペラを回転させて過給を行なう排気タービン過給機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−60878(P2013−60878A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199745(P2011−199745)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000185488)株式会社オティックス (305)
【Fターム(参考)】