説明

スイッチングレギュレータ

【課題】 小型・低雑音のスイッチングレギュレータを提供する。
【解決手段】 導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数のトランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、各々の遷移時間は、出力信号の電位があらかじめ設定された電位に達したことを判定して変化させることを特徴とするスイッチングレギュレータとして構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の電源電圧を効率的に生成するスイッチングレギュレータにおいて、特に出力段の遷移時間に発生する瞬時電流を削減することで、低雑音化可能な低雑音スイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
全地球測位システム(GPS)やブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの無線インターフェースは、電池駆動の携帯端末に内蔵するために、その消費電力を極力低減することが求められている。近年は、高性能の微細CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor )デバイスを用いて低電力化が実現されるようになってきている。しかしながら、微細化が進むにつれ、素子の耐圧が低下し、システムの他ブロックの電源より低い電圧を有する電源を準備する必要がでてきた。電圧変換機能を持つ回路の代表のひとつであるリニアレギュレータは雑音が低く、従来アナログ回路に用いられてきているが、効率が悪いことが課題である。例えば、3.3Vからリニアレギュレータを用いて1.2Vを生成しようとした場合には、それだけで30%程度に変換効率が低下してしまうために、無駄な電力を消費してしまう。
【0003】
電圧変換のもう一つの代表であるスイッチングレギュレータは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの能動素子をスイッチとして用い、それらのスイッチのオン/オフにより入力直流電圧を一旦交流電圧に変換するものである。変換された電圧はインダクタなどを用いた、整流回路、及び平滑回路を順に通して安定な直流電圧に変換、出力される。この回路では、入力電圧に対する出力電圧の比(電圧変換率)がスイッチのオン/オフの時間比率で実質的に決定され、スイッチの切換による電力損失(スイッチング損失)は一般に小さいので、スイッチング電源装置は高効率で電力を供給できる。
【0004】
しかしながら、このスイッチングレギュレータはスイッチング時に発生する雑音が大きいという問題がある。そのため、デジタル部に関しては、電池から効率的に所望の電位を作成するためにスイッチングレギュレータを内蔵することができる。しかしながら、雑音に敏感なRFアナログ部では、スイッチングレギュレータを内蔵することができないために、外部に別にスイッチングレギュレータを用意する必要があった。
【0005】
ここで、従来のスイッチングレギュレータにおいて、雑音が発生する理由を以下に説明する。図1は従来の降圧型スイッチングレギュレータの最終出力段の回路構成を示す図である。P型MOSトランジスタによって構成されたスイッチングトランジスタ202のソース端子が直流電源201に接続され、そのドレイン端子はスイッチングトランジスタ203のドレイン端子に接続される。スイッチングトランジスタ203はN型MOSトランジスタによって構成され、そのドレイン端子はスイッチングトランジスタ202のドレイン端子、ソース端子は接地電圧(GND)に接続されている。
【0006】
2つのスイッチングトランジスタ202、203のゲート端子には共に入力端子207に接続されている。スイッチングトランジスタ202、203のドレイン端子からの出力は、インダクタ204とコンデンサ205で構成されるロウパスフィルタに入力される。スイッチングトランジスタ202、203のドレイン端子はインダクタ204の1つの端子に接続され、インダクタ204の他の端子はコンデンサ205の1つの端子に接続され、コンデンサ205の他の端子は接地電圧(GND)に接続される。インダクタ204の他の端子とコンデンサ205の1つの端子とが接続された出力端子206からは平滑された出力が得られる。
【0007】
このスイッチングレギュレータで、高い変換効率を維持するためには、スイッチングトランジスタ202、203のオン抵抗をできるだけ下げるためにトランジスタサイズを大きくなるように設計される。または、スイッチング周波数を上げて高速スイッチングを行うことによって交流損失を減らす方法がとられる。ところが、スイッチングトランジスタ202、203のソース・ドレイン間電圧が大きい遷移開始時に入力信号が急激に変化したり、スイッチングトランジスタが同時に導通したりする。このような場合には、スイッチング動作による急激な電流変化によって、電源の寄生インダクタに誘導ノイズが発生する。このノイズはスイッチングの度に電源端子の電圧レベルを揺らし、その結果、出力電圧にも同様のノイズが現れる。
【0008】
このようなスイッチングノイズを低減するために、入力信号のタイミングを高精度に制御する方法がある。しかしながら、このようなレギュレータは、その制御回路の構成が非常に複雑であり、またタイミング制御も容易ではない。
【0009】
一方、特許文献1に開示された降圧型レギュレータの例を図2に示した。この例では、オン抵抗が互いに異なる複数のスイッチングトランジスタを設けて、出力スイッチングトランジスタがオン動作のときはオン抵抗の大きいものから順にオンし、オフ動作のときはオン抵抗の小さいものから順にオフするように、動作するように構成されている。
【0010】
図2に示すスイッチングレギュレータでは、P型MOSトランジスタによって構成された複数のスイッチングトランジスタスタ21、22、23のソース端子はそれぞれ直流電源1に接続され、N型MOSトランジスタによって構成されたスイッチングトランジスタ31、32、33のソース端子はそれぞれ、接地電圧(GND)に接続されている。スイッチングトランジスタ21、22、23及び、スイッチングトランジスタ31、32、33のそれぞれのドレイン端子は、ダイオード11、並びにインダクタンス素子12およびコンデンサ13を有する平滑回路10に接続されている。
【0011】
制御部15は平滑回路10から出力される当該スイッチングレギュレータの出力電圧Voutに応じて、各スイッチングトランジスタ21〜23、31〜33のオン・オフ動作を制御する。制御部15において、電圧比較器4は出力電圧Voutと基準電圧Vrefとを比較し、この比較結果を示す信号SGを出力する。パルス生成回路16はこの信号SGを受けて、各スイッチングトランジスタ21〜23、31〜33のオン・オフ動作を制御するための信号SA1〜SA3、SB1〜SB3を出力する。
【0012】
各スイッチングトランジスタ21〜23、31〜33に対して、それぞれ、駆動回路40が設けられている。各駆動回路40は制御部15からの出力信号SA1〜SA3、SB1〜SB3を駆動信号として受けて、対応するスイッチングトランジスタ21〜23、31〜33を動作させる。スイッチングトランジスタ21〜23、31〜33のドレイン端子の電圧は平滑回路10によって平滑され、出力電圧Voutとして負荷5へ出力される。インダクタ102は電源の寄生インダクタである。
【0013】
ここで、スイッチングトランジスタ21〜23は、トランジスタ幅が互いに異なっており、21<22<23の順にトランジスタ幅が大きくなっている。これにより、スイッチングトランジスタ21〜23のオン抵抗は、23<22<21の順に大きくなっている。また同様に、スイッチングトランジスタ31〜33もトランジスタ幅が互いに異なっており、31<32<33の順にトランジスタ幅が大きくなっている。そして、これにより、スイッチングトランジスタ31〜33のオン抵抗は、33<32<31の順に大きくなっている。
【0014】
この例では、複数のスイッチングトランジスタ21〜23および複数のスイッチングトランジスタ31〜33を、そのオン動作およびオフ動作において、所定の順に動作させる。これによって、スイッチング動作時における急激な電流変化を抑え、スイッチングノイズを低減している。しかしながら、出力段は、非常に大きな面積を占有するので、この方法では、チップサイズが大きくなってしまう欠点がある。
【0015】
さらに特許文献2には、出力バッファの信号レベル変化が比較的緩慢、あるいは急峻に駆動する手段を選択することで、動作条件に応じて伝送速度とノイズの低減とのいずれかを優先して動作させる回路が開示されている。特許文献3には、出力レベルと基準電圧とを比較した結果で、出力のレベル変化を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】再公表特許WO2000/13318号公報
【特許文献2】特開2002−111476号公報
【特許文献3】特開2007−236194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記したように、出力トランジスタの急激な電流変化によるスイッチングノイズを低減するために、入力信号を正確なタイミングで制御したり、オン抵抗の異なる複数の出力トランジスタを段階的に動作させたりする技術が採用されている。これらの技術を用いることにより、低雑音スイッチングレギュレータを実現することが可能であるが、しかしそのために複雑な制御が必要、あるいは大きなチップ面積が必要になるという問題が起こる。
【0018】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決することであって、その目的は、雑音に敏感なRFアナログ回路とオンチップに集積可能な、小型・低雑音スイッチングレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1つの観点によれば、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段において、その出力信号が遷移する場合に、遮断状態から導通状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力信号の遷移時間より長くし、導通状態から遮断状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力信号の遷移時間より短く設定することを特徴とするスイッチングレギュレータが得られる。
【0020】
本発明の他の観点によれば、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路を備え、当該駆動回路にハイレベル信号が入力された場合に、第1の駆動回路がロウレベル出力となることで、第1の出力段トランジスタを導通から遮断状態へ変化させ、第2の駆動回路が第1の駆動回路がロウレベル出力に変化する遷移時間に比べて長い遷移時間でゆっくりとロウレベルに変化することで第2の出力段トランジスタを遮断から導通状態へ変化させ、さらに、当該駆動回路にロウレベル信号が入力された場合に、第2の駆動回路がハイレベル出力となることで、第2の出力段トランジスタを導通から遮断状態へ変化させ、第1の駆動回路が第2の駆動回路がハイレベル出力に変化する遷移時間に比べて長い遷移時間でゆっくりとハイレベルに変化することで第1の出力段トランジスタを遮断から導通状態へ変化させることを特徴とするスイッチングレギュレータの動作制御方法が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スイッチングレギュレータ最終段の出力が、ロウレベルからハイレベルへ、またはハイレベルからロウレベルへ遷移する場合に、出力段トランジスタへの入力信号の遷移時間が出力段の遷移時間より長くなるように設定する。そのため出力段の急激な電流変化が抑制され、低雑音なスイッチングレギュレータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来のスイッチングレギュレータの最終段の1例を示す回路図である。
【図2】従来のスイッチングレギュレータの最終段の他の例を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態のスイッチングレギュレータの最終段の回路図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態のスイッチングレギュレータの最終段の回路図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態のスイッチングレギュレータの最終段の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図3は、本発明の第1の実施の形態を説明するためのスイッチングレギュレータの最終段の回路図である。以下の実施の形態において、同一のものには同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略するものとする。
【0025】
最終段は、出力段トランジスタからなるCMOSインバータと、その出力段トランジスタを個別に駆動する駆動回路と、平滑された出力を得るためのロウパスフィルタから構成される。出力段のCMOSインバータは、出力段トランジスタとしてのP型MOSトランジスタ202と、N型MOSトランジスタ203を備え、2つの出力段トランジスタ202と203とのドレイン端子が接続された節点が出力節点Nである。P型MOSトランジスタ202のソース端子が直流電源201に、ドレイン端子が出力節点Nに、ゲート端子が前段の駆動回路の出力に接続されている。N型MOSトランジスタ203のソース端子が接地電圧GNDに、ドレイン端子が出力節点Nに、ゲート端子が前段の駆動回路の出力に接続されている。
【0026】
出力節点Nは、インダクタ204とコンデンサ205で構成されるロウパスフィルタに接続される。出力節点Nはインダクタ204の1つの端子に接続され、インダクタ204の他の端子はコンデンサ205の1つの端子に接続され、コンデンサ205の他の端子は接地電圧(GND)に接続される。インダクタ204の他の端子とコンデンサ205の1つの端子とが接続された出力端子206からは平滑された出力が得られる。最終の出力は出力端子207から出力されるが、以下の説明においては、出力節点Nを最終段出力と表すことがある。
【0027】
出力段トランジスタを個別に駆動する駆動回路は、CMOSインバータで構成されている。P型MOSトランジスタ202のゲート端子に接続された駆動回路は、P型MOSトランジスタ208及びN型MOSトランジスタ209から構成されたCMOSインバータである。一方、N型MOSトランジスタ203のゲート端子に接続された駆動回路は、P型MOSトランジスタ210及びN型MOSトランジスタ211から構成されたCMOSインバータである。これらの駆動CMOSインバータのゲート端子は、共に入力端子207に接続される。入力端子207には、目標とする電源電圧が出力端子に生成されるように、デュティー比が制御されたパルス波形が入力されるようになっている。
【0028】
最終出力段P型MOSトランジスタ202を駆動する前段駆動インバータのN型MOSトランジスタ209は、駆動能力を通常より小さく設計し、当該前段駆動インバータのP型MOSトランジスタ208は、十分な駆動能力を持つように設計されている。一方、最終出力段N型MOSトランジスタ203を駆動する前段駆動インバータのP型MOSトランジスタ210は、駆動能力を通常より小さく設計し、当該前段駆動インバータのN型MOSトランジスタ211は、十分な駆動能力を持つように設計されている。
【0029】
この回路の動作を回路図に併記した各接点の動作波形を用いて、以下に説明する。入力端子207には、所定の出力レベルが得られるように、ある一定のデュティー比を持つパルス信号が印加されている。MOSトランジスタ208及び209で構成された前段の駆動インバータは、立ち下り(tf)駆動能力が低い一方で、立ち上がり(tr)の駆動能力が高くなるように設定されている。従って、最終段出力が、ロウレベルからハイレベルへ遷移する場合には、P型MOSトランジスタ202を駆動する入力信号の遷移時間が出力段の遷移時間より長くなるように設定され、P型MOSトランジスタ202からの電流が緩やかに変化するように設定されている。
【0030】
一方で、MOSトランジスタ210及び211で構成された前段の駆動インバータは、立ち上がり(tr)駆動能力が低い一方で、立下り(tf)の駆動能力が高い。従って、最終段出力が、ハイレベルからロウレベルへ遷移する場合には、N型MOSトランジス203を駆動する入力信号の遷移時間が出力段の遷移時間より長くなるように設定され、N型MOSトランジス203の電流が緩やかに変化するように設定されている。
【0031】
このように出力段トランジスタ202の駆動インバータの立ち上がり(tr)駆動能力を高く、立下り(tf)駆動能力を低くし、出力段トランジスタ203の駆動インバータの立ち上がり(tr)駆動能力を低く、立下り(tf)駆動能力を高く設定する。このように設定することで、出力節点Nの電位が遷移する場合に、出力段トランジスタが遮断状態から導通状態へ変化する遷移時間を出力段トランジスタへの入力信号の遷移時間より長くできる。一方出力段トランジスタが導通状態から遮断状態へ変化する遷移時間は出力段トランジスタへの入力信号の遷移時間より短くする。
【0032】
本実施の形態のスイッチングレギュレータは、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成された出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成されている。その出力信号が遷移する場合に、遮断状態から導通状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力信号の遷移時間より長くし、導通状態から遮断状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力時間の遷移時間より短く設定することを特徴とする。そのため駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定されている。
【0033】
各々の動作状態で遮断される出力段トランジスへの入力信号の遷移時間が短く、出力段トランジスは直ちに遮断されることから、貫通電流が流れない。また導通状態となる出力段トランジスへの入力信号の遷移時間が長いことから、流れる電流が緩やかに変化することで、スイッチングノイズが低減される。最終段のデバイスサイズを大きくしても、瞬時に大きな突入電流が流れることなく、さらには最終段以外の大きな駆動デバイスも不要であることから、小型で低雑音なスイッチングレギュレータが得られる。その結果、雑音に敏感なRFアナログ回路とのオンチップ集積が可能となる。
【0034】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施の形態を説明するためのスイッチングレギュレータの最終段の回路図である。この回路は、図3で説明した出力段トランジスを駆動する前段駆動インバータにおいて、各々長く設定された遷移時間が、出力段の電位(出力節点Nの電位)があらかじめ設定された電位に達したことを判定して変化させることを示した実施形態である。本実施形態では第1の実施の形態に比べて、最終段出力のレベルを検出する論理素子214及び215と、前段の駆動インバータの駆動能力を可変にするMOSトランジスタ212及び213が付加されている。
【0035】
論理素子214は、出力節点Nと入力端子207とを入力とするアンド(AND)回路214であり、その出力はN型MOSトランジスタ212のゲート電極に接続される。N型MOSトランジスタ212のドレイン電極はN型MOSトランジスタ209のドレイン電極に、ソース電極は接地電圧(GND)に接続されている。論理素子215は、出力節点Nと入力端子207とを入力とするオア(OR)回路215であり、その出力はP型MOSトランジスタ213のゲート電極に接続される。P型MOSトランジスタ213のドレイン電極はP型MOSトランジスタ210のドレイン電極に、ソース電極は直流電源201に接続されている。
【0036】
図4の回路の動作として最初に、最終段出力がロウレベルからハイレベルに遷移する場合を考える。まず入力端子207の電位は、ロウレベルからハイレベルに遷移するが、この時点では、最終段出力接点Nの電位は変化していないので、アンド回路である論理回路214の出力はロウレベルを維持している。次に前段駆動インバータの出力レベルが反転するに伴い、最終段出力節点Nがロウレベルからハイレベルに変化をはじめる。その後、論理回路の論理しきい値を越え、論理回路214の出力がハイレベルに変化することで、N型MOSトランジスタ212が導通状態になり、前段駆動インバータの立ち下がり駆動能力が大きくなる。一方、オア回路である論理回路215の出力は、最終段出力に関係なく、入力信号207のハイレベルへの遷移でハイレベルに変化する。従って、P型MOSトランジスタ213は、入力信号207のハイレベルへの遷移で遮断状態となることから、最終段N型MOSトランジスタ203のスイッチング動作への影響はない。
【0037】
次に、最終段出力が、ハイレベルからロウレベルに遷移する場合を考える。まず入力端子207の電位は、ハイレベルからロウレベルに遷移するが、この時点では、最終段出力接点Nは変化していないので、論理回路215の出力はハイレベルを維持している。次に前段駆動インバータの出力レベルが反転するに伴い、最終段出力接点Nがハイレベルからロウレベルに変化をはじめる。その後、最終段出力節点Nが論理回路の論理しきい値を越え、論理回路215の出力がロウレベルに変化することで、P型MOSトランジスタ213が導通状態になり、前段駆動インバータの立ち上がり駆動能力が大きくなる。一方アンド回路である論理回路214の出力は、最終段出力に関係なく、入力信号207のロウレベルへの遷移でロウレベルへ変化する。従って、N型MOSトランジスタ212は遮断状態となることから、最終段P型MOSトランジスタ202の動作への影響はない。
【0038】
本実施の形態においては、入力信号と出力信号(出力節点N)とを入力とする論理回路を用いて、出力信号レベルがあらかじめ設定された電位である論理回路の閾値電圧を超えた場合には、駆動インバータの駆動能力を変化させる実施形態である。出力信号レベルがハイレベルに遷移する場合にはアンド回路を用い、出力信号レベルが閾値電圧を超えた場合にはアンド回路をハイレベルに変化させ、付加されたトランジスタを導通させることで、駆動インバータの駆動能力を高める。出力信号レベルがロウレベルに遷移する場合にはオア回路を用い、出力信号レベルが閾値電圧を超えた場合にはオア回路をロウレベルに変化させ、付加されたトランジスタを導通させることで、駆動インバータの駆動能力を高める。このように、駆動インバータにおいて、各々長く設定された遷移時間が、出力段の電位があらかじめ設定された電位に達したことを判定して変化させることができる小型で低雑音なスイッチングレギュレータが得られる。
【0039】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3の実施の形態を説明するためのスイッチングレギュレータの最終段の回路図である。第3の実施形態例では、図4で説明した論理回路へ入力される出力信号(出力節点)の電位を調整するレベル変換機構を備えている。本実施形態では第2の実施の形態に比べて、MOSトランジスタ216と219、抵抗217、218、220、221が付加されている。
【0040】
N型MOSトランジスタ216は、ゲート電極が出力節点Nに、ドレイン電極が直流電源201に、ソース電極が抵抗217の一端に、それぞれ接続されている。抵抗217の他方の一端は論理回路214の入力端子及びに抵抗218の一端に、さらに抵抗218の他方の一端は接地電圧に接続されている。N型MOSトランジスタ216と抵抗217と218からなるレベル変換回路は、出力節点Nがハイレベルの場合にN型MOSトランジスタ216が導通し、ソース電極の電位を抵抗217と218により電位変換した電位を、論理回路214に出力する。
【0041】
P型MOSトランジスタ219は、ゲート電極が出力節点Nに、ソース電極が直流電源201に、ドレイン電極が抵抗220の一端に、それぞれ接続されている。抵抗220の他方の一端は論理回路215の反転入力端子及びに抵抗221の一端に、さらに抵抗221の他方の一端は接地電圧に接続されている。P型MOSトランジスタ219と抵抗220と221からなるレベル変換回路は、出力節点Nがロウレベルの場合にP型MOSトランジスタ216が導通し、ソース電極の電位を抵抗220と221により電位変換した電位を、論理回路215に出力する。
【0042】
本実施形態例では、最終段出力節点Nの出力レベルをN型MOSトランジスタ216及び抵抗217、218を用いて、レベル変換を行なうことで、論理回路214の見かけの論理しきい値を変えている。同様にP型MOSトランジスタ219及び抵抗220、221で構成された回路によりレベル変換を行ない、論理回路215の見かけの論理しきい値を変えている。
【0043】
本実施の形態においては、出力節点Nの電位をレベル変換し、レベル変換された電位と入力信号とを入力とする論理回路を用いて、そのレベル変換した電圧が論理回路の閾値電圧を超えた場合には、駆動インバータの駆動能力を変化させる実施形態である。このように、出力節点Nの電位をレベル変換し、論理回路の入力とすることで駆動インバータの駆動能力を変化させる出力信号レベルを自由に設定することができる。これにより、最終段出力の遷移が完了する電位を調整することが可能である。このように、駆動インバータの駆動能力を変化させる出力信号レベルを自由に設定することで、出力レベルの遷移時間が自由の設定できるスイッチングレギュレータが得られる。
【0044】
本発明によれば、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数のトランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段は、その出力電位が遷移する場合に、遮断状態から導通状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力信号の遷移時間より長くし、導通状態から遮断状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力時間の遷移時間より短く設定することを特徴とする。各々の動作状態で遮断される出力段トランジスへの入力信号の遷移時間が短いことから、貫通電流が流れない。また導通状態となる出力段トランジスへの入力信号の遷移時間が長いことから、流れる電流が緩やかに変化することで、スイッチングノイズが低減される。本発明によれば、低雑音のスイッチングレギュレータが得られる。その結果、雑音に敏感なRFアナログ回路とオンチップに集積可能な、小型・低雑音スイッチングレギュレータを提供することが可能になる。
【0045】
本発明によれば、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数のトランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定されていることを特徴とするスイッチングレギュレータが得られる。
【0046】
さらには、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数のトランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移が、導通から遮断への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、各々の遷移時間を出力段の電位に応じて変化させることを特徴とするスイッチングレギュレータが得られる。
【0047】
また、導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数のトランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、各々の遷移時間は、出力段の電位があらかじめ設定された電位に達したことを判定して変化させることを特徴とするスイッチングレギュレータが得られる。
【0048】
以上、好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜の変更が可能なものである。例えば、実施の形態では論理回路を単純な2入力のアンド(AND)回路やオア(OR)回路で実現していたが、これに限定されず、複数の入力信号を受ける論理回路を用いても良い。
【符号の説明】
【0049】
1、201 直流電源
10 平滑回路
102 寄生インダクタ
11 ダイオード
12、204 インダクタ
13、205 容量
15 制御部
16 パルス生成回路
21、22、23、202、208、210、213、219 P型MOSトランジスタ
31、32、33、203、209、211、212、216 N型MOSトランジスタ
217、218、220、221 抵抗
214 論理(アンド)回路
215 論理(オア)回路
206 出力端子
207 入力端子
4 電圧比較器
40 駆動回路
5 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段において、その出力信号が遷移する場合に、遮断状態から導通状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力信号の遷移時間より長くし、導通状態から遮断状態へ変化する出力段トランジスタの入力信号の遷移時間を出力信号の遷移時間より短く設定することを特徴とするスイッチングレギュレータ。
【請求項2】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定されていることを特徴とする請求項1記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項3】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、各々の遷移時間を出力信号の電位に応じて変化させることを特徴とする請求項2記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項4】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、各々の遷移時間は、出力信号の電位があらかじめ設定された電位に達したことを判定して変化させることを特徴とする請求項3記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項5】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタにおける遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、出力信号と駆動回路への入力信号とを入力とする論理回路とを用いて、出力段トランジスタが遮断から導通状態へ遷移する場合に、出力信号の電位が論理回路の閾値よりも高いか、または低いかに応じた論理回路の出力レベルにより、各々の駆動回路の遷移時間を変化させることを特徴とする請求項4に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項6】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路から構成され、当該駆動回路は、各々出力段トランジスタが遮断から導通状態への遷移時間が、導通から遮断状態への遷移時間に比べて長くなるように立ち上がり、立ち下がり時の駆動能力をアンバランスに設定され、出力信号の電位をレベル変換した電位と駆動回路への入力信号を入力とする論理回路とを用いて、出力段トランジスタが遮断から導通状態へ遷移する場合に、出力信号の電位をレベル変換した電位が論理回路の閾値よりも高いか、または低いかに応じた論理回路の出力レベルにより、各々の駆動回路の遷移時間を変化させることを特徴とする請求項4に記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項7】
導通、遮断の2状態が交互に切り替わる複数の出力段トランジスタで構成されたスイッチングレギュレータの出力段と、その出力段トランジスタを各々個別に駆動するための駆動回路を備え、当該駆動回路にハイレベル信号が入力された場合に、第1の駆動回路がロウレベル出力となることで、第1の出力段トランジスタを導通から遮断状態へ変化させ、第2の駆動回路が第1の駆動回路がロウレベル出力に変化する遷移時間に比べて長い遷移時間でゆっくりとロウレベルに変化することで第2の出力段トランジスタを遮断から導通状態へ変化させ、
さらに、当該駆動回路にロウレベル信号が入力された場合に、第2の駆動回路がハイレベル出力となることで、第2の出力段トランジスタを導通から遮断状態へ変化させ、第1の駆動回路が第2の駆動回路がハイレベル出力に変化する遷移時間に比べて長い遷移時間でゆっくりとハイレベルに変化することで第1の出力段トランジスタを遮断から導通状態へ変化させることを特徴とするスイッチングレギュレータの動作制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−172389(P2011−172389A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34200(P2010−34200)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】