説明

スイッチング素子の駆動回路

【課題】定電流制御に異常が生じる場合、スイッチング素子S*#が熱破損するおそれが生じたり、スイッチング状態の切替に伴うサージが過度に大きくなったりするおそれがあること。
【解決手段】電源20から出力される正の電荷は、異常検出用抵抗体22、定電流用抵抗体24および充電用スイッチング素子32を介してスイッチング素子S*#のゲートに充電される。この際、定電流用抵抗体24の電圧降下量が規定値となるように、オペアンプ36によって充電用スイッチング素子32のゲート電圧が操作される。異常検出用抵抗体22の電圧降下量は、充電側異常判断部62に取り込まれ、これに基づき定電流制御の異常の有無が判断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするスイッチング素子の駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング素子の駆動回路としては、たとえば下記特許文献1に見られるように、定電流回路を用いてスイッチング素子のゲートに電荷を充電するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−11049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、定電流回路に異常が生じる場合には、次の不都合が生じる。まず第1に、スイッチング素子をオン・オフ駆動することができなくなることがある。第2に、定電流値が過度に小さくなる場合、スイッチング状態の切替速度が過度に小さくなることから、スイッチング素子が熱破損するおそれがある。第3に、定電流値が過度に大きくなる場合、スイッチング状態の切替速度が過度に大きくなることから、スイッチング状態の切替に伴うサージが過度に大きくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する過程でなされたものであり、その目的は、電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子として、定電流制御によってこれを駆動するに際し、定電流制御手段の異常の有無を判断することのできる新たなスイッチング素子の駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、およびその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするスイッチング素子の駆動回路において、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に電荷を充電するための電気経路を備えて且つ、該電気経路を流れる電流を一定値に制御する定電流制御手段と、前記電気経路に備えられた異常検出用抵抗体と、該異常検出用抵抗体の両端の電圧に基づき、前記定電流制御手段の異常の有無を判断する異常判断手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
電気経路を流れる電流が一定値に制御される場合、その電流に応じて異常検出用抵抗体の両端の電圧は一義的に定まる。このため、一定値に制御される場合に想定される上記両端の電圧と実際の電圧とのずれに基づき異常の有無を判断することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記定電流制御手段は、前記異常検出用抵抗体とは別の定電流用抵抗体と、該定電流用抵抗体に直列接続された定電流用スイッチング素子と、前記定電流用抵抗体の両端の電圧を規定値に制御すべく前記定電流用スイッチング素子の開閉制御端子に信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記定電流用抵抗体の両端の電圧が規定値に制御される場合、電気経路に流れる電流は一定値となる。ここで、定電流用抵抗体の抵抗値が経年変化等によって変化する場合、電気経路に流れる電流は一定値となるものの目標値に対してずれを生じることとなる。ただし、この場合であっても定電流用抵抗体の両端の電圧は規定値となるため、定電流用抵抗体の両端の電圧によってはその異常の有無を判断することができない。この点、上記発明では、異常検出用抵抗体を定電流用抵抗体とは別とすることで、こうした問題を回避することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記定電流制御手段の備える電気経路は、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に正の電荷を充電するための充電用電気経路と該駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子から前記正の電荷を放電する放電用電気経路とのうちの少なくとも前記充電用電気経路を備え、前記定電流制御手段は、前記充電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する充電用定電流制御手段を備え、前記異常検出用抵抗体は、前記充電用電気経路に設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記定電流制御手段の備える電気経路は、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に正の電荷を充電するための充電用電気経路と該駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子から前記正の電荷を放電する放電用電気経路とのうちの少なくとも前記放電用電気経路を備え、前記定電流制御手段は、前記放電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する放電用定電流制御手段を備え、前記異常検出用抵抗体は、前記放電用電気経路に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記電気経路は、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に正の電荷を充電するための充電用電気経路と、該駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子から前記正の電荷を放電する放電用電気経路とを備え、前記充電用電気経路および前記放電用電気経路はその一部が共通経路となって且つ該共通経路が前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に接続されており、前記定電流制御手段は、前記充電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する充電用定電流制御手段と、前記放電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する放電用定電流制御手段とを備え、前記異常検出用抵抗体は、前記共通経路に設けられていることを特徴とする。
【0014】
上記発明では、充電用電気経路と放電用電気経路とで、異常検出用抵抗体を共有化することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、前記駆動対象スイッチング素子の駆動を制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、異常事態に対処することができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、前記出力手段が前記異常検出用抵抗体の両端の電圧を予め定められた値に制御するように切り替える切替手段をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、定電流用抵抗体の抵抗値に異常が生じた場合であっても、異常検出用抵抗体を用いて定電流制御を継続することができる。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の発明において、前記異常検出用抵抗体の抵抗値と前記定電流用抵抗体の抵抗値とが同一であることを特徴とする。
【0020】
上記発明では、抵抗値を同一とすることで、切替の前後における設定変更を簡素化することが可能となる。
【0021】
請求項9記載の発明は、請求項7または8記載の発明において、前記切替手段による切り替え後に前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、前記駆動対象スイッチング素子の駆動を制限する制限手段を備えることを特徴とする。
【0022】
上記発明では、異常事態に対処することができる。
【0023】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、その旨を通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【図3】同実施形態にかかる定電流制御異常の有無の判断処理の手順を示す流れ図。
【図4】第2の実施形態にかかるドライブユニットの回路構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
以下、本発明にかかるスイッチング素子の駆動回路を車載主機としての回転機に接続されたインバータの駆動回路に適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1に、本実施形態にかかる制御システムの全体構成を示す。モータジェネレータ10は、車載主機であり、図示しない駆動輪に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータIVおよび昇圧コンバータCVを介して高電圧バッテリ12に接続されている。ここで、昇圧コンバータCVは、コンデンサCと、コンデンサCに並列接続された一対のスイッチング素子Scp,Scnと、一対のスイッチング素子Scp,Scnの接続点と高電圧バッテリ12の正極とを接続するリアクトルLとを備えている。そして、スイッチング素子Scp,Scnのオン・オフによって、高電圧バッテリ12の電圧(例えば百V以上)を所定の電圧(例えば「666V」)を上限として昇圧するものである。一方、インバータIVは、スイッチング素子Sup,Sunの直列接続体と、スイッチング素子Svp,Svnの直列接続体と、スイッチング素子Swp,Swnの直列接続体とを備えており、これら各直列接続体の接続点がモータジェネレータ10のU,V,W相にそれぞれ接続されている。これらスイッチング素子S*#(*=u,v,w,c;#=p,n)として、本実施形態では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられている。そして、これらにはそれぞれ、ダイオードD*#が逆並列に接続されている。
【0027】
制御装置18は、低電圧バッテリ16を電源とする制御装置である。制御装置18は、モータジェネレータ10を制御対象とし、その制御量を所望に制御すべく、インバータIVやコンバータCVを操作する。詳しくは、コンバータCVのスイッチング素子Scp,Scnを操作すべく、操作信号gcp、gcnをドライブユニットDUに出力する。また、インバータIVのスイッチング素子Sup,Sun,Svp,Svn,Swp,Swnを操作すべく、操作信号gup,gun,gvp,gvn,gwp,gwnをドライブユニットDUに出力する。ここで、高電位側の操作信号g*pと、対応する低電位側の操作信号g*nとは、互いに相補的な信号となっている。換言すれば、高電位側のスイッチング素子S*pと、対応する低電位側のスイッチング素子S*nとは、交互にオン状態とされる。
【0028】
ここで、高電圧バッテリ12を備える高電圧システムと低電圧バッテリ16を備える低電圧システムとは、互いに絶縁されており、これらの間の信号の授受は、例えばフォトカプラ等の絶縁素子を備えるインターフェース14を介して行われる。
【0029】
図2に、上記ドライブユニットDUの構成を示す。
【0030】
図示されるように、ドライブユニットDUは、電源20を備えている。電源20は、たとえば低電圧バッテリ16を電源とするフライバックコンバータとすればよい。ドライブユニットDUは、さらに、半導体集積回路(ドライブIC30)を備えている。ドライブIC30の端子T1は、異常検出用抵抗体22および定電流用抵抗体24を介して電源20の出力端子に接続されている。端子T1には、PチャネルMOS電界効果トランジスタ(充電用スイッチング素子32)の入力端子(ソース)に接続され、充電用スイッチング素子32の出力端子(ドレイン)は、端子T2を介してスイッチング素子S*#の開閉制御端子(ゲート)に接続されている。
【0031】
差動増幅回路34は、定電流用抵抗体24および異常検出用抵抗体22の接続点に接続される端子T3と端子T1と間の電圧(定電流用抵抗体24の両端の電圧)に応じた電圧を出力する回路である。差動増幅回路34の出力電圧Vicは、オペアンプ36のプラス入力端子に印加され、オペアンプ36のマイナス入力端子には、基準電源35の基準電圧Vrefが印加される。そして、オペアンプ36の出力端子は、充電用スイッチング素子32の開閉制御端子(ゲート)に接続されている。これにより、充電用スイッチング素子32のゲート電圧は、差動増幅回路34の出力電圧Vicを基準電圧Vrefに一致させるように操作される。そしてこれにより、定電流用抵抗体24の電圧降下量が規定値に制御され、ひいては定電流用抵抗体24を流れる電流が目標値に制御される。
【0032】
なお、オペアンプ36の出力端子は、誤動作防止用抵抗体38および端子T4を介して電源20にプルアップされている。これは、オペアンプ36の誤動作を防止するためのものである。また、充電用スイッチング素子32のゲートおよびソース間には、保護用抵抗体40が設けられている。これは、充電用スイッチング素子32のソースおよびゲート間に耐圧を超える電圧が印加される事態を回避するためのものである。
【0033】
上記スイッチング素子S*#のゲートには、端子T5を介してNチャネルMOS電界効果トランジスタ(放電用スイッチング素子42)の入力端子(ドレイン)が接続され、放電用スイッチング素子42の出力端子(ソース)は、端子T6、定電流用抵抗体26および異常検出用抵抗体28を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続されている。
【0034】
差動増幅回路44は、定電流用抵抗体26および異常検出用抵抗体28の接続点に接続される端子T10と端子T6との間の電圧(定電流用抵抗体26の両端の電圧)に応じた電圧を出力する回路である。差動増幅回路44の出力電圧Vidは、オペアンプ46のマイナス入力端子に印加され、オペアンプ46のプラス入力端子には、基準電源35の基準電圧Vrefが印加される。そして、オペアンプ46の出力端子は、放電用スイッチング素子42の開閉制御端子(ゲート)に接続されている。これにより、放電用スイッチング素子42のゲート電圧は、差動増幅回路44の出力電圧Vidを基準電圧Vrefに一致させるように操作される。そしてこれにより、定電流用抵抗体26の電圧降下量が規定値に制御され、ひいては定電流用抵抗体26を流れる電流が目標値に制御される。
【0035】
なお、オペアンプ46の出力端子は、誤動作防止用抵抗体48および端子T9を介してスイッチング素子S*#のエミッタに接続されている。これは、オペアンプ46の誤動作を防止するためのものである。また、放電用スイッチング素子42のゲートおよびソース間には、保護用抵抗体50が設けられている。これは、放電用スイッチング素子42のソースおよびゲート間に耐圧を超える電圧が印加される事態を回避するためのものである。
【0036】
駆動制御部52は、操作信号g*#に応じてオペアンプ36,46を駆動するものである。すなわち、操作信号g*#がオン操作指令である場合、オペアンプ36を駆動状態として且つオペアンプ46を停止状態とし、操作信号g*#がオフ操作指令である場合、オペアンプ36を停止状態として且つオペアンプ46を駆動状態とする。
【0037】
差動増幅回路60は、異常検出用抵抗体22と電源20との接続点に接続される端子T8と端子T3との間の電圧(異常検出用抵抗体22の両端の電圧)に応じた電圧を出力する。充電側異常判断部62は、差動増幅回路60の出力電圧Vucに基づき、スイッチング素子S*#のゲート充電時における定電流制御の異常の有無を判断する。
【0038】
充電側異常判断部62は、セレクタ64を操作して、オペアンプ36のプラス入力端子に差動増幅回路60の出力電圧Vucを印加するように切り替える機能を有する。ここで、本実施形態では、異常検出用抵抗体22の抵抗値R1と定電流用抵抗体24の抵抗値R2とを同一に設定しており、差動増幅回路60,34による入力電圧と出力電圧との変換比率を同一としている。このため、差動増幅回路60への切替後においても、定電流用抵抗体24を流れる電流を目標値に制御することが可能となる。
【0039】
一方、差動増幅回路66は、端子T9と端子T10との間の電圧(異常検出用抵抗体28の両端の電圧)に応じた電圧を出力する。放電側異常判断部68は、差動増幅回路66の出力電圧Vudに基づき、スイッチング素子S*#のゲート放電時における定電流制御の異常の有無を判断する。
【0040】
放電側異常判断部68は、セレクタ70を操作して、オペアンプ46のマイナス入力端子に差動増幅回路66の出力電圧Vudを印加するように切り替える機能を有する。ここで、本実施形態では、異常検出用抵抗体28の抵抗値R4と定電流用抵抗体26の抵抗値R3とを同一に設定しており、差動増幅回路66,44による入力電圧と出力電圧との変換比率を同一としている。このため、差動増幅回路66への切替後においても、定電流用抵抗体26を流れる電流を目標値に制御することが可能となる。
【0041】
図3に、充電側異常判断部62の処理の手順を示す。この処理は、たとえば所定周期で繰り返し実行される。
【0042】
この一連の処理では、まずステップS10において、操作信号g*#がオン操作指令であるか否かを判断する。そしてオン操作指令であると判断される場合、ステップS12において、差動増幅回路60の出力電圧Vucと基準電圧Vrefとの乖離量が所定値(下回り量Δ1、上回り量Δ2)以下であるか否かを判断する。この処理は、定電流制御の異常の有無を判断するためのものである。ここで、下回り量Δ1は、定電流制御による実際の電流が目標値を下回る際の許容下限値を定めるものであり、上回り量Δ2は、定電流制御による実際の電流が目標値を上回る際の許容上限値を定めるものである。上記ステップS12において否定判断される場合、定電流制御に異常があると判断し、ステップS14においてFB切替フラグがオンであるか否かを判断する。FB切替フラグは、先の図2に示したオペアンプ36のプラス入力端子に差動増幅回路60を接続するようにセレクタ64が切替操作されている場合にオンとなり、切替操作されていない場合にオフとなるものである。
【0043】
上記ステップS14において否定判断される場合、ステップS16において、先の図2に示したオペアンプ36のプラス入力端子に差動増幅回路60を接続するようにセレクタ64を切り替え操作するとともに、FB切替フラグをオンとする。
【0044】
一方、上記ステップS14において肯定判断される場合、差動増幅回路60を用いても定電流制御を行うことができないとして、ステップS18において、フェール信号を出力する。これにより、先の図2に示す論理合成部72を介してフェール信号FLが制御装置18に出力される。制御装置18では、異常が生じた旨、ユーザに通知する処理を行ったり、異常時において退避走行をする処理を行なったりする。また、このフェール信号FLによって、先の図1に示すフェール処理部14aでは、インバータIVやコンバータCVをシャットダウンする。ちなみに、フェール処理部14aの構成は、例えば特開2009−60358号公報の図3に記載のものとすればよい。
【0045】
なお、上記ステップS16,S18の処理が完了する場合や、ステップS10において否定判断される場合、さらにステップS12において肯定判断される場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0046】
ちなみに、上記放電側異常判断部68の処理も、図3と同様である。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0048】
(1)定電流用抵抗体24,26とは別に、異常検出用抵抗体22,28を備え、その電圧降下量(差動増幅回路60,66の出力電圧Vuc,Vud)に基づき、定電流制御の異常の有無を判断した。これにより、定電流用抵抗体24,26の抵抗値が経年劣化等によって大きく変化しつつも電流を流すことが可能な異常等の場合であっても、その異常の有無を適切に判断することができる。
【0049】
(2)定電流用抵抗体24,26の電圧降下(差動増幅回路34,44の出力電圧Vic,Vid)に基づく定電流制御に異常があると判断される場合、異常検出用抵抗体22,28の電圧降下量(差動増幅回路60,66の出力電圧Vuc,Vud)に基づく定電流制御を行なった。これにより、定電流用抵抗体24,26の抵抗値に異常が生じた場合であっても、異常検出用抵抗体22,28を用いて定電流制御を継続することができる。
【0050】
(3)異常検出用抵抗体22の抵抗値R1と定電流用抵抗体24の抵抗値R2とを同一として且つ、異常検出用抵抗体28の抵抗値R4と定電流用抵抗体26の抵抗値R3とを同一とした。これにより、セレクタ64,70の切替の前後における設定変更を簡素化することが可能となる。
【0051】
(4)セレクタ64,70の切り替え後に異常があると判断される場合、インバータIVやコンバータCVをシャットダウンした。これにより、異常事態に対処することができる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0052】
図4に、本実施形態にかかるドライブユニットDUの構成を示す。なお、図4において先の図2に示した部材に対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0053】
本実施形態では、異常検出用抵抗体80を、スイッチング素子S*#のゲートの充電経路および放電経路の共通部分に設ける。そして、差動増幅回路82において、異常検出用抵抗体80およびゲート間に接続される端子T11と端子T2との間の電圧(異常検出用抵抗体80の両端の電圧)に応じた電圧を異常判断部84に出力する。異常判断部84は、上記充電側異常判断部62、放電側異常判断部68および論理合成部72と同様の機能を備えるものである。
【0054】
なお、異常検出用抵抗体80の抵抗値R5は、定電流用抵抗体24,26の抵抗値R2,R3と同一とし、差動増幅回路82と差動増幅回路34,44とで、入力電圧に対する出力電圧の変換比率を同一とする。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記各効果に加えて、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0056】
(5)異常検出用抵抗体80を、充電経路および放電経路の共通経路に設けた。これにより、充電用電気経路と放電用電気経路とで異常検出用抵抗体80を共有化することができる。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0057】
「異常検出用抵抗体について」
異常検出用抵抗体としては、定電流用抵抗体と完全に別部材であるものに限らない。たとえば先の図2に示した構成において、定電流用抵抗体24および異常検出用抵抗体22を定電流用抵抗体として且つ、異常検出用抵抗体22を異常検出用抵抗体としてもよい。この場合であっても、抵抗値の経年変化等が定電流用抵抗体の全部分に一律に生じないなら、異常検出用抵抗体の両端の電圧によって異常の有無を判断することは可能である。
【0058】
「異常検出用抵抗体と定電流用抵抗体との配置について」
たとえば、先の図2において、異常検出用抵抗体22と定電流用抵抗体24との配置を入れ替えたり、異常検出用抵抗体28と定電流用抵抗体26との配置を入れ替えたりしてもよい。
【0059】
またたとえば、異常検出用抵抗体22や異常検出用抵抗体28をドライブIC30に内蔵してもよい。もっともドライブIC30に対して外付けした方が、抵抗値の微調整を容易に行なえるというメリットがある。
【0060】
さらにたとえば、定電流用抵抗体24や定電流用抵抗体26をドライブIC30に内蔵してもよい。もっともドライブIC30に対して外付けした方が、抵抗値の微調整を容易に行なえるというメリットがある。
【0061】
「出力手段の入力信号の規格化について」
定電流用抵抗体24,26の電圧降下量を規定値に制御する処理と、異常検出用抵抗体22,28の電圧降下量を規定値に制御する処理との双方において、定電流の目標値を同一とするための設定としては、上記各実施形態において例示した手法に限らない。たとえば差動増幅回路34,60を備えることなく、オペアンプ36に入力される電流検出に関する信号として、端子T1の電位または端子T3の電位を切り替えつつ用いるものとして且つ、切替の前後でオペアンプ36に入力される閾値に関する信号の電位を変更してもよい。ただし、この場合、異常検出用抵抗体22と定電流用抵抗体24との配置関係は、先の図2に示したものとする。
【0062】
「切替前後の定電流の目標値について」
上記各実施形態では、切替前後における定電流の目標値を同一としたがこれに限らない。たとえば先の図2に示した構成において、異常検出用抵抗体22の抵抗値R1と定電流用抵抗体24の抵抗値R2を相違させるなら、切替前後で目標値を相違させることができる。
【0063】
「切替手段について」
上記各実施形態では、定電流用抵抗体24,26の電圧降下量の検出値を用いた定電流制御に異常があると判断される場合に、異常検出用抵抗体22,28の電圧降下量の検出値を用いた定電流制御に必ず切り替えたがこれに限らない。たとえば、電圧降下量がゼロであることで電流が流れない異常時等にあっては、切替を行なっても定電流制御を行うことができないと考えられることから、切り替えを行なわなくてもよい。
【0064】
もっとも、切替手段を備えなくてもよい。
【0065】
「定電流用スイッチング素子について」
定電流用スイッチング素子としては、MOS電界効果トランジスタのように電圧制御形のトランジスタに限らない。たとえばバイポーラトランジスタのように電流制御形のトランジスタであってもよい。ただしこの場合、その開閉制御端子(ベース)に出力する信号は、電流信号となる。
【0066】
「通知手段について」
通知手段としては、異常が生じたか否かについての2値的な情報を出力するものに限らない。たとえば、異常の種類を併せて通知するものであってもよい。すなわちたとえば、異常検出用抵抗体22,28の両端の電圧が過度に大きい場合やゼロではないが小さい場合(定電流制御による目標値の制御性の低下異常)と、上記両端の電圧がゼロとなる場合(電流が流れない異常)とのいずれであるかを通知してもよい。
【0067】
「制限手段について」
制限手段としては、異常が生じることで電力変換回路(インバータIV,コンバータCV)を一律シャットダウンするものに限らない。たとえば、定電流制御による定電流が目標値よりも大きくなる場合、インバータIVの入力電圧の制限によってスイッチング素子S*#の耐圧を超える電圧の印加を回避しつつ、スイッチング素子S*#を駆動してもよい。これにより、モータジェネレータ10を用いた退避走行が容易となる。なお、この処理を制御装置18が行うためには、通知手段を、異常の種類を通知するものに変更すればよい。
【0068】
「駆動対象スイッチング素子について」
駆動対象スイッチング素子としては、IGBTに限らず、たとえばパワーMOS電界効果トランジスタ等であってもよい。この際、Nチャネルにも限らず、Pチャネルであってもよい。ただしこの場合、ソース電位に対してゲート電位を低下させることでオン状態となるため、ゲートから正の電荷を放電させることで駆動対象スイッチング素子がオン状態となる。
【0069】
「定電流制御手段について」
定電流制御手段としては、定電流用抵抗体の両端の電圧を規定値に制御するものに限らない。たとえば、スイッチング素子S*#のゲートへの電荷の充電経路に、定電流ダイオードと、スイッチング素子とを備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
18…制御装置、22,28,80…異常検出用抵抗体、24,26…定電流用抵抗体、32…充電用スイッチング素子(定電流用スイッチング素子の一実施形態)、42…放電用スイッチング素子(定電流用スイッチング素子の一実施形態)、36,46…オペアンプ(出力手段の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧制御形のスイッチング素子を駆動対象スイッチング素子とするスイッチング素子の駆動回路において、
前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に電荷を充電するための電気経路を備えて且つ、該電気経路を流れる電流を一定値に制御する定電流制御手段と、
前記電気経路に備えられた異常検出用抵抗体と、
該異常検出用抵抗体の両端の電圧に基づき、前記定電流制御手段の異常の有無を判断する異常判断手段とを備えることを特徴とするスイッチング素子の駆動回路。
【請求項2】
前記定電流制御手段は、前記異常検出用抵抗体とは別の定電流用抵抗体と、該定電流用抵抗体に直列接続された定電流用スイッチング素子と、前記定電流用抵抗体の両端の電圧を規定値に制御すべく前記定電流用スイッチング素子の開閉制御端子に信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする請求項1記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項3】
前記定電流制御手段の備える電気経路は、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に正の電荷を充電するための充電用電気経路と該駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子から前記正の電荷を放電する放電用電気経路とのうちの少なくとも前記充電用電気経路を備え、
前記定電流制御手段は、前記充電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する充電用定電流制御手段を備え、
前記異常検出用抵抗体は、前記充電用電気経路に設けられていることを特徴とする請求項2記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項4】
前記定電流制御手段の備える電気経路は、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に正の電荷を充電するための充電用電気経路と該駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子から前記正の電荷を放電する放電用電気経路とのうちの少なくとも前記放電用電気経路を備え、
前記定電流制御手段は、前記放電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する放電用定電流制御手段を備え、
前記異常検出用抵抗体は、前記放電用電気経路に設けられていることを特徴とする請求項2記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項5】
前記電気経路は、前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に正の電荷を充電するための充電用電気経路と、該駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子から前記正の電荷を放電する放電用電気経路とを備え、
前記充電用電気経路および前記放電用電気経路はその一部が共通経路となって且つ該共通経路が前記駆動対象スイッチング素子の開閉制御端子に接続されており、
前記定電流制御手段は、前記充電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する充電用定電流制御手段と、前記放電用電気経路を流れる電流を一定値に制御する放電用定電流制御手段とを備え、
前記異常検出用抵抗体は、前記共通経路に設けられていることを特徴とする請求項2記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項6】
前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、前記駆動対象スイッチング素子の駆動を制限する制限手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項7】
前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、前記出力手段が前記異常検出用抵抗体の両端の電圧を予め定められた値に制御するように切り替える切替手段をさらに備えることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項8】
前記異常検出用抵抗体の抵抗値と前記定電流用抵抗体の抵抗値とが同一であることを特徴とする請求項7記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項9】
前記切替手段による切り替え後に前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、前記駆動対象スイッチング素子の駆動を制限する制限手段を備えることを特徴とする請求項7または8記載のスイッチング素子の駆動回路。
【請求項10】
前記異常判断手段によって異常があると判断される場合、その旨を通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のスイッチング素子の駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135144(P2012−135144A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286076(P2010−286076)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】