説明

スピンバルブ構造体およびその製造方法、ならびに磁気再生ヘッドおよびその製造方法

【課題】低保持力(Hc<5×103 /(4π)A/m)、低磁歪(λs<5×10-6)および高MR比(dR/R≧10%)が得られる磁気再生ヘッドを提供する。
【解決手段】CPP−GMR磁気再生ヘッドに適用されるスピンバルブ構造体1のフリー層27が、組成Cov Fe(100-v) (v=20原子%〜70原子%)で表される高Fe含有量の下部FeCo層25と、組成Niw Fe(100-w) (w=85原子%〜100原子%)で表される高Ni含有量の上部NiFe層26とを含んでいる。v=20原子%未満およびw=85原子%未満である場合と比較して、保持力が低く維持されたまま、磁歪が低くなると共に、MR比が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンド層、フリー層および非磁性スペーサ層を有するスピンバルブ構造体およびその製造方法、ならびにスピンバルブ構造体を備えた磁気再生ヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクドライブは、磁気ディスクと、複合型磁気ヘッド(磁気再生・記録ヘッド)ヘッドとを備えている。磁気ディスクは、円形状のデータトラックを有しており、磁気ディスクドライブの動作時に回転可能である。複合型磁気ヘッドは、ポジショニングアームにより支持されたスライダに取り付けられており、磁気ディスクドライブの動作時にエアベアリング面(ABS:air bearing surface )が磁気ディスクから離れることにより、その磁気ディスク上を浮遊する。磁気再生ヘッドのセンサは、磁気抵抗効果を利用して磁界信号を抵抗変化として検出するものであり、再生動作を実行する上で重要な構成要素である。
【0003】
磁気抵抗効果は、2つの強磁性層により非磁性導電層が挟まれた積層構造を有するスピンバルブ構造体において、スピンバルブ磁気抵抗(SVMR:spin valve magnetoresistance)または巨大磁気抵抗(GMR:giant magnetoresisttance)により生じる。2つの強磁性層のうちの一方は、隣接する反強磁性(AFM:anti-ferromagnetic)層(いわゆるピンニング層)との間の交換結合によって磁化方向が固定されたピンド層であり、他方は、磁化ベクトルが外部磁界に応じて回転可能なフリー層である。非磁性導電層は、一般に、非磁性スペーサ層と呼ばれている。スピンバルブ構造体にセンス電流が流れている状態において、ピンド層の磁化に対してフリー層の磁化が回転すると、電圧変化として検出可能な抵抗変化が生じる。膜面直交電流(CPP:current perpendicular to the plane)型の磁気再生ヘッドでは、スピンバルブ構造体の膜面に直交する方向にセンス電流が流れる。GMRを利用したCPP型の磁気再生ヘッドは、一般に、CPP−GMR磁気再生ヘッドと呼ばれている。これに対して、膜面内電流(CIP:current in the plane)型の磁気再生ヘッドでは、スピンバルブ構造体の膜面に沿った方向にセンス電流が流れる。
【0004】
100Gb/in2 を超える超高密度記録を実現するためには、高感度の磁気再生ヘッドが要求される。この要求に応えるために、磁気再生ヘッドの構造としては、従来の磁気ディスクドライブに採用されていたCIP型に代わり、CPP型が有力になりつつある。このCPP型は、センササイズが小さくなった場合においても強い出力信号および高い磁気抵抗効果比(いわゆるMR比)が得られることから、超高密度記録用途に適している。CPP−GMR磁気再生ヘッドに関しては、単一のスピンバルブ構造体において得られる出力信号よりも強い出力信号を得るために、複数のスピンバルブ構造体を連結させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】米国特許第5627704号明細書
【0005】
CPP−GMR磁気再生ヘッドにおけるスピンバルブ構造体の積層構造としては、ピンド層が非磁性スペーサ層の下方に位置し、フリー層が非磁性スペーサ層の上方に位置するボトムスピンバルブ型と、そのボトムスピンバルブ型とはピンド層およびフリー層の位置関係が逆転したトップスピンバルブ型とがある。一般には、トップスピンバルブ型よりもボトムスピンバルブ型が広く採用されている。また、フリー層の構造としては、CIP型で採用されていた積層構造(シンセティック構造)が継承されており、CoFe/NiFeなどの複合構造が広く採用されている。
【0006】
CPP−GMR磁気再生ヘッドの重要な特性は、上記したMR比(dR/R)である。dRはスピンバルブ構造体の抵抗変化であり、Rはスピンバルブ構造体の抵抗変化時における抵抗値である。感度を高めるためには、MR比を増加させる必要がある。このMR比は、センス電流中の電子がスピンバルブ構造体中の磁気的活性層に滞留する時間が長くなるほど増加する。特に、スピンバルブ構造体中の層間界面における電子の界面反射はMR比および感度に大きな影響を及ぼし、その電子が鏡面反射されるとMR比および感度が向上する。
【0007】
Toshiba は、シンセティック反平行(SyAP:synthetic anti-parallel )ピンド層に関して、CoFeでCuを挟んでAP1層を構成することにより、CPP−GMR磁気再生ヘッドのMR比が改善されることを紹介している。このCPP−GMR磁気再生ヘッドにおけるスピンバルブ構造体は、シード層/AFM層/SyAPピンド層(AP2層/結合層(Ru)/AP1層(CoFe/Cu/CoFe))/非磁性スペーサ層(Cu)/フリー層(CoFe/NiFe)/保護層で表されるボトムスピンバルブ型の積層構造を有している。
【0008】
また、CPP−GMR磁気再生ヘッドのMR比をより向上させるために、Cuからなる非磁性スペーサ層に電流路制限(CCP:confining current path)層を挿入する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このCCP層は、酸化物からなり、金属(Cu)の電流路を分離するものである。この技術では、さらに、NiリッチであってCoを含む合金、例えばNi0.80 Co0.15 Fe0.05 およびNi0.68 Co0.20 Fe0.12 など、あるいは高Co含有量を有する合金、例えばCo0.9 Fe0.1 およびCo0.7 Ni0.1 Fe0.2 などで軟磁性膜(フリー層)を構成している。
【特許文献2】米国特許第5715121号明細書
【0009】
CPP型の動作モードでは、トンネル磁気抵抗(TMR:tunnel magnetoresistance )を利用する磁気再生ヘッド(いわゆるTMR磁気再生ヘッド)において感度をより向上させることが可能である。このTMR磁気再生ヘッドは、ピンド層とフリー層との間に非磁性スペーサ層に代えてトンネルバリア層が設けられた積層構造を有しており、トンネル磁気接合(TMJ:tunnel magnetic junction)を利用するものである。このトンネルバリア層は、AlOx などの絶縁材料からなり、その厚さは低抵抗(R<5Ω・μm2 )を実現するために薄いことが望ましい。
【0010】
CPP−GMR磁気再生ヘッドは、一般に、インピーダンスが低いため、TMR磁気再生ヘッドよりも超高密度記録用途に適していると言われている。ところが、従来のCPP−GMR磁気再生ヘッドでは、スピンバルブ構造体の抵抗およびMR比が低く(R<100mΩ・μm2 ,dR/R<5%)、しかも抵抗変化に基づく出力電圧が低すぎる。この抵抗変化を増加させるためには、スピンバルブ構造体の構成および材料を最適化すればよい。
【0011】
フリー層の特性としては、応力磁気異方性を減少させるために、低保持力(Hc<10×103 /(4π)A/m(=10Oe))により良好な軟磁気特性が得られると共に、低磁歪(λs=1×10-8〜5×10-6のオーダー)であることが要求される。工業的なトレンドは、MR比を向上させるために、Fe含有量が20原子%よりも大きいCoFeや、Fe含有量が50原子%よりも大きいNiFeや、Fe含有量が25原子%以上のCoFeを含む[(CoFe)0.8 0.2 ]などの高スピン偏極材料を使用することである。ところが、強磁性層の高スピン偏極は、一般に、許容し難い高保持力および高磁歪をもたらす高飽和磁化(Ms)と関係している。
【0012】
CPP−GMR磁気再生ヘッドの性能改善に関しては、既にいくつかの技術が提案されている。具体的には、CoFe/NiFeで表される積層構造を有する極めて薄いフリー層が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。CoFeのFe含有量は約10原子%、NiFeのFe含有量は約19原子%であり、低保持力および低磁歪が得られる。ところが、MR比は、超高密度記録用途においては十分でない。
【特許文献3】米国特許第6888707号明細書
【0013】
また、NiFe/CoFeで表される積層構造を有するフリー層が提案されている(例えば、特許文献4,5参照。)。このフリー層では、各層のFe含有量が不明であり、高スピン偏極のCoFe成分に起因する高磁歪を解決し得ない。
【特許文献4】米国特許第6519124号明細書
【特許文献5】米国特許第6529353号明細書
【0014】
また、Niリッチ(Ni含有量=60原子%〜90原子%)のNiCoFeからなるフリー層が提案されている(特許文献6,7参照。)。このフリー層は、CoFeと一緒に使用されておらず、一般的な軟磁性層である。
【特許文献6】米国特許公開2004/0047190
【特許文献7】米国特許公開2003/0197505
【0015】
また、下部CoFe層(Fe含有量=16原子%)および上部NiFe層(Fe含有量=13.5原子%)からなる積層構造を有するフリー層が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。このフリー層では、磁歪が僅かな負の値となるように最適化されているが、Fe含有量が小さすぎるために十分なMR比が得られない。
【特許文献8】米国特許公開2004/0091743
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
CoFe/NiFeで表される積層構造を有するフリー層を備えた従来のスピンバルブ構造体およびそれを備えた磁気再生ヘッドでは、低保持力(Hc〜5×103 /(4π)A/m)および低磁歪(λs〜2×10-6)であるが、MR比が低いため(dR/R<10%)、再生性能の改善においては十分と言えない。この性能改善においては、低保持力および低磁歪(λs<5×10-6)である上、少なくとも10%を超えるMR比が要求される。
【0017】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、低保持力(Hc<5×103 /(4π)A/m)、低磁歪(λs<5×10-6)および高MR比(dR/R≧10%)を得ることが可能なスピンバルブ構造体および磁気再生ヘッドを提供することにある。
【0018】
また、本発明の第2の目的は、上記した低保持力、低磁歪および高MR比が得られるスピンバルブ構造体の製造方法および磁気再生ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係るスピンバルブ構造体の製造方法は、磁気再生ヘッドのセンサとして使用されるスピンバルブ構造体を製造する方法であり、(a)基板上に、ピンド層と、下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、ピンド層およびフリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを有するスピンバルブ積層体を形成し、(b)スピンバルブ積層体をパターニングしてスピンバルブ構造体を形成するものである。
【0020】
本発明に係る磁気再生ヘッドの製造方法は、(a)基板としての第1磁気シールド上に、ピンド層と、下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、ピンド層およびフリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを有するスピンバルブ積層体を形成し、(b)スピンバルブ積層体をパターニングして側壁および上面を有するスピンバルブ構造体を形成し、(c)スピンバルブ構造体の側壁に隣接するように絶縁層を形成し、(d)スピンバルブ構造体の上面に第2磁気シールドを形成するものである。
【0021】
本発明に係るスピンバルブ構造体は、磁気再生ヘッドのセンサとして使用されるものであり、(a)ピンド層と、(b)下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、(c)ピンド層およびフリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを備えたものである。
【0022】
本発明に係る磁気再生ヘッドは、(a)第1磁気シールドと、(b)第1磁気シールド上に形成され、ピンド層と、下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、ピンド層およびフリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを有すると共に側壁および上面を有するスピンバルブ構造体と、(c)スピンバルブ構造体の上面に形成された第2磁気シールドとを備えたものである。
【0023】
これらのスピンバルブ構造体またはその製造方法、あるいは磁気再生ヘッドまたはその製造方法では、フリー層が下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含んでいるため、v=20原子%未満およびw=85原子%未満である場合と比較して、保持力が低く維持されたまま、磁歪が低くなると共に、MR比が高くなる。
【0024】
本発明に係るスピンバルブ構造体の製造方法では、基板が磁気再生ヘッドの第1磁気シールドであり、スピンバルブ積層体を構成する全ての層がスパッタ成膜装置を使用して形成されてもよい。ピンド層が、隣接する反強磁性層によりピン止めされると共に、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、第2反平行層がCoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、結合層がRuを含み、第1反平行層が[CoFe/Cu]n /CoFe(CoFeのFe含有量=70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有してもよい。下部Fev Co(100-v) 層が0.5nm〜3nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層が1nm〜6nmの厚さを有してもよい。この場合には、下部Fev Co(100-v) 層がv=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層がw=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有してもよい。非磁性スペーサ層が、下部Cu層と、上部Cu層と、下部Cu層および上部Cu層により挟まれ、部分酸化されたAlCuを含む電流路制限層とを有してもよい。この場合には、下部Cu層上にAlCu層を成膜し、RFプラズマまたはRFイオン処理によってAlCu層を0.1nm〜0.3nm除去したのち、RFプラズマ酸化またはRFイオンアシスト酸化処理によってAlCu層を酸化し、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx 層を形成することにより電流路制限層を形成してもよい。基板上に、シード層と、反強磁性層と、ピンド層と、非磁性スペーサ層と、フリー層と、保護層とをこの順に成膜してスピンバルブ積層体を形成し、ボトムスピンバルブ型の積層構造を有するようにスピンバルブ構造体を形成してもよい。非磁性スペーサ層がCuを含み、スピンバルブ構造体が巨大磁気抵抗効果または非磁性スペーサ層がトンネルバリア層であってトンネル磁気抵抗効果を利用して動作してもよい。スピンバルブ構造体がトップスピンバルブ型、ボトムスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造を有してもよい。
【0025】
本発明に係る磁気再生ヘッドの製造方法では、スピンバルブ積層体を構成する全ての層がスパッタ成膜装置を使用して形成されてもよい。ピンド層が、隣接する反強磁性層によりピン止めされると共に、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、第2反平行層がCoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、結合層がRuを含み、第1反平行層が[CoFe/Cu]n /CoFe(CoFeのFe含有量=70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有してもよい。下部Fev Co(100-v) 層が0.5nm〜3nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層が1nm〜6nmの厚さを有してもよい。この場合には、下部Fev Co(100-v) 層がv=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層がw=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有してもよい。非磁性スペーサ層が、下部Cu層と、上部Cu層と、下部Cu層および上部Cu層により挟まれ、部分酸化されたAlCuを含む電流路制限層とを有してもよい。さらに、(d)の前に、スピンバルブ構造体の各側壁に近い絶縁層内に、フリー層に縦方向バイアスを供給するバイアス層を形成してもよい。基板上に、シード層と、反強磁性層と、ピンド層と、非磁性スペーサ層と、フリー層と、保護層とをこの順に成膜してスピンバルブ積層体を形成し、ボトムスピンバルブ型の積層構造を有するようにスピンバルブ構造体を形成してもよい。センス電流が、フリー層の磁気状態を読み出すために膜面直交電流方式により第1磁気シールドと第2磁気シールドとの間に流されてもよい。スピンバルブ構造体がトップスピンバルブ型、ボトムスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造を有してもよい。
【0026】
本発明に係るスピンバルブ構造体では、磁気再生ヘッドの第1磁気シールド上に形成されていてもよい。ピンド層が第1磁気シールド上に順に積層されたシード層および反強磁性層上に形成され、フリー層上に保護層が形成され、ボトムスピンバルブ型の積層構造を有してもよい。ピンド層が、隣接する反強磁性層によりピン止めされていると共に、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、第2反平行層がCoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、結合層がRuを含み、第1反平行層が[CoFe/Cu]n /CoFe(CoFeのFe含有量=70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有してもよい。下部Fev Co(100-v) 層が0.5nm〜3nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層が1nm〜6nmの厚さを有してもよい。この場合には、下部Fev Co(100-v) 層がv=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層がw=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有してもよい。非磁性スペーサ層が、下部Cu層と、上部Cu層と、下部Cu層および上部Cu層により挟まれ、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx を含む電流路制限層とを有してもよい。非磁性スペーサ層が非磁性導電層であり、巨大磁気抵抗効果を利用して動作してもよいし、あるいは非磁性スペーサ層が絶縁層であり、トンネル磁気抵抗効果を利用して動作してもよい。ピンド層、フリー層および非磁性スペーサ層がボトムスピンバルブ型、トップスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造の一部であってもよい。
【0027】
本発明に係る磁気再生ヘッドでは、ピンド層が第1磁気シールド上に順に形成されたシード層および反強磁性層上に形成され、スピンバルブ構造体が最上層として保護層を有してもよい。この場合には、シード層がTa/Ruで表される積層構造を有し、反強磁性層がIrMnを含み、保護層がCu/Ru/Ta/Ruで表される積層構造を有してもよい。ピンド層が第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、第2反平行層がCoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、結合層がRu、RhまたはIrを含み、第1反平行層が[CoFe/Cu]n /CoFe(n=2または3)で表される積層構造を有してもよい。下部Fev Co(100-v) 層が0.5nm〜3nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層が1nm〜6nmの厚さを有してもよい。この場合には、下部Fev Co(100-v) 層がv=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、上部Niw Fe(100-w) 層がw=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有してもよい。非磁性スペーサ層が、下部Cu層と、上部Cu層と、下部Cu層および上部Cu層により挟まれ、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx を含む電流路制限層とを有してもよい。さらに、スピンバルブ構造体の側壁に隣接するように形成された絶縁層と、スピンバルブ構造体の各側壁に近い絶縁層内に形成され、フリー層に縦方向バイアスを供給するバイアス層とを備えてもよい。スピンバルブ構造体がボトムスピンバルブ型、トップスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造を有してもよい。vがスピンバルブ構造体の磁気抵抗効果を最適化するための制御因子であり、wがスピンバルブ構造体の保持力および磁歪を低くするために調整されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るスピンバルブ構造体または磁気再生ヘッドによれば、フリー層が下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含んでいるので、低保持力(Hc<5×103 /(4π)A/m)、低磁歪(λs<5×10-6)および高MR比(dR/R≧10%)を得ることができる。また、本発明に係るスピンバルブ構造体の製造方法または磁気再生ヘッドの製造方法によれば、上記した低保持力、低磁歪および高MR比が得られるスピンバルブ構造体または磁気再生ヘッドを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係るスピンバルブ構造体の構成について説明する。図1は、スピンバルブ構造体1のエアベアリング面に平行な断面構成を表している。
【0031】
スピンバルブ構造体1は、例えば、CPP−GMR磁気再生ヘッドまたはTMR磁気再生ヘッドなどの各種磁気再生ヘッドのセンサとして使用されるものであり、記録密度が約100Gbit/in2 を超える超高密度記録用途に適している。
【0032】
このスピンバルブ構造体1は、シード層11と、AFM層12と、ピンド層20と、非磁性スペーサ層24と、フリー層27と、保護層28とがこの順に積層されたものであり、基板10上に設けられている。すなわち、スピンバルブ構造体1は、ピンド層20がフリー層27よりも基板10に近い側(下側)に位置するボトムスピンバルブ型の積層構造を有している。
【0033】
基板10は、例えば、磁気再生ヘッドの一部を構成する第1磁気シールド(S1)である。この基板10の一面には、例えば、電気めっきされたNiFe(いわゆるパーマロイ)からなる薄い層が設けられており、その層の厚さは約2μmである。
【0034】
シード層11は、その上に形成される層(MR比を向上させるための層)の結晶構造の平坦性および均一性を促進させるものである。このシード層11は、例えば、約1nm〜6nm、好ましくは約5nmの厚さを有する下部Ta層と、約0.5nm〜4nm、好ましくは約2nmの厚さを有する上部Ru層とを含む積層構造(図示せず)を有している。
【0035】
AFM層12は、ピンド層20の磁化方向を固定(ピン止め)するものである。このAFM層12は、例えば、Ir含有量が約18原子%〜22原子%のIrMnを含み、約5nm〜7.5nmの厚さを有していてもよいし、あるいはMn含有量が約55原子%〜65原子%のMnPtを含み、約12.5nm〜17.5nmの厚さを有していてもよい。なお、AFM層12は、例えば、上記したIrMnやMnPtに代えて、NiMn、OsMn、RuMn、RhMn、RuRhMnまたはPtPdMnなどを含んでいてもよい。
【0036】
ピンド層20は、第2反平行(AP2)層13/結合層14/第1反平行(AP1)層50で表される積層構造を有するSyAPピンド層である。
【0037】
AP2層13は、例えば、CoFe(Co含有量=約75原子%〜90原子%)を含み、約2nm〜5nmの厚さを有している。ここでは、AP2層13は、例えば、CoFe(Fe含有量=25原子%)を含んでいる。このAP2層13の磁気モーメントは、隣接するAFM層12により、AP1層50の磁気モーメントに対して反平行方向に固定されている。一例を挙げれば、AP1層50が−x軸方向に磁気モーメントを有している場合、AP2層13は+x軸方向に磁気モーメントを有している。このAP2層13の厚さは、例えば、ピンド層20が小さなネット磁気モーメントを有するために、AP1層50の厚さよりも僅かに薄くなっている。
【0038】
結合層14は、例えば、Ruを含み、AP2層13とAP1層50との間の交換結合を促進させるために約0.75nmの薄い厚さを有している。なお、結合層14は、例えば、上記したRuに代えて、RhやIrを含んでいてもよい。
【0039】
AP1層50は、例えば、[CoFe/Cu]n CoFe(CoFeのFe含有量=約70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有している。ここでは、例えば、n=2であり、AP1層50は、CoFe層15と、Cu層16と、CoFe層17と、Cu層18と、CoFe層19とがこの順に積層された積層構造を有している。CoFe層15,17,19は、例えば、約0.7nm〜1.5nm、好ましくは約1.2nmの厚さを有している。Cu層16,18は、例えば、約0.05nm〜0.3nm、好ましくは約0.2nmの厚さを有している。MR特性を向上させるためにAP1層50が−x軸方向に磁気モーメントを有している場合、CoFe層15,17,19は−x軸方向に磁気モーメントを有している。
【0040】
非磁性スペーサ層24は、例えば、Cuを含み、約2nm〜5nmの厚さを有している。この非磁性スペーサ層24は、例えば、下部Cu層21と、CCP層22と、上部Cu層23とがこの順に積層された積層構造を有している。下部Cu層21は、例えば、約0.2nm〜0.8nm、好ましくは約0.52nmの厚さを有している。CCP層22は、MR特性を向上させるものであり、例えば、部分酸化されたAlCu(Al含有量=約90原子%)を含み、約0.6nm〜1nm、好ましくは約0.85nmの厚さを有している。この部分酸化されたAlCuは、例えば、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOxを含んでいる。上部Cu層23は、例えば、約0.2nm〜0.6nm、好ましくは約0.3nmの厚さを有している。この非磁性スペーサ層24は、例えば、上記したCuを含む非磁性導電層であり、スピンバルブ構造体1は、巨大磁気抵抗効果を利用して動作するようになっている。
【0041】
なお、非磁性スペーサ層24は、例えば、上記した下部Cu層21、CCP層22および上部Cu層23を含む積層構造に代えて、Cu層と、酸素界面活性剤層とがこの順に積層された積層構造(図示せず)を有していてもよい。この酸素界面活性剤層の詳細については、ヘッドウェイ株式会社の特許出願(整理番号HT03−009)に記載されている。この酸素界面活性剤層は、その上に形成される磁性層(ここではフリー層27)とCu層との間の格子整合を改善するためのものであり、約1原子層未満の厚さを有している。すなわち、酸素界面活性剤層は、スピンバルブ構造体1の応力を取り除くと共に、その上に磁性層を平坦に成長させる機能を有している。
【0042】
フリー層27は、下部FeCo層25および上部NiFe層26とを含む積層構造を有している。下部FeCo層25は、Fev Co(100-v) (v=約20原子%〜70原子%)で表される組成および約0.5nm〜3nmの厚さを有している。上部NiFe層26は、Niw Fe(100-w) (w=約85原子%〜100原子%)で表される組成および約1nm〜6nmの厚さを有している。
【0043】
ここでは、例えば、下部FeCo層25は、v=20原子%のFe20Co80またはv=25原子%のFe25Co75を含み、約2nmの厚さを有しており、上部NiFe層26は、w=90原子%のNi90Fe10を含み、約2.8nmの厚さを有している。Ni90Fe10では、磁気モーメントが極めて小さいと共に磁歪が負であるのに対して、Fe25Co75では、磁気モーメントがFe10Co90の磁気モーメントよりも僅かに大きいと共に磁歪が僅かに正であるため、それらは下部FeCo層25および上部NiFe層26の組成として好ましい。下部FeCo層25および上部NiFe層26がそれぞれFe25Co75,Ni90Fe10を含む場合には、それぞれFe10Co90,Ni82.5Fe17.5を含む場合と比較してバルク散乱の寄与が大きくなり、良好な軟磁気特性(低保持力)および低磁歪が得られると共に、MR比が向上する。
【0044】
フリー層27の磁気モーメントは、例えば、静止状態においてy軸に沿って配向しており、スピンバルブ構造体1がz軸に沿って磁気ディスク上を移動する際に信号磁界の影響を受けてx軸に沿って回転可能であるのが好ましい。
【0045】
保護層28は、例えば、Cu/Ru/Ta/Ruで表される積層構造(図示せず)を有している。各層の厚さは、例えば、Cu層から順に、約1nm〜4nm,約1nm〜3nm,約4nm〜8nm,約1nm〜3nmである。なお、保護層28の構成は上記した場合に限られず、任意に設定可能である。
【0046】
次に、図1および図2を参照して、スピンバルブ構造体1の製造方法について説明する。図2は、スピンバルブ構造体1の製造工程における一工程を説明するためのものであり、図1に対応する断面構成を示している。なお、スピンバルブ構造体1の一連の構成要素の材質や厚さについては既に詳細に説明したので、以下ではそれらの説明を随時省略する。
【0047】
スピンバルブ構造体1は、基板10上に一連の構成要素を順次形成して積層させることにより製造される。このスピンバルブ構造体1を構成する全ての層は、例えば、スパッタ成膜装置を使用して形成される。このスパッタ成膜装置としては、例えば、アネルバ株式会社製の超高真空タイプのものを使用するのが好ましい。この超高真空タイプの装置は、従来のCVC装置よりも1桁小さい約133.322×10-8Pa(=1×10-8torr)、好ましくは約666.61×10-9Pa(=5×10-9torr)の底面圧が得られるDCマグネトロンスパッタ装置である。底面圧が低いと、スパッタ膜の均一性および再現性が高まるため望ましい。スパッタチャンバは、定圧放電カソードのマルチターゲットであってもよい。スパッタガスとしては、例えば、Arガスなどを使用可能である。スパッタ膜は、同一のスパッタチャンバ内で成膜されてもよいし、あるいは異なるスパッタチャンバ内で成膜されてもよい。
【0048】
スピンバルブ構造体1を製造する際には、まず、図2に示したように、基板10の一面を覆うようにシード層11およびAFM層12をこの順に形成したのち、そのAFM層12上にピンド層20を形成する。このピンド層20を形成する際には、AP2層13/結合層14/AP1層50で表される積層構造を有すると共に、そのAP1層50が[CoFe/Cu]n /CoFe(n=2または3)で表される積層構造を有するようにする。
【0049】
続いて、ピンド層20上に、非磁性スペーサ層24を形成する。この非磁性スペーサ層24を形成する際には、下部Cu層21と、部分酸化されたAlCuを含むCCP層22と、上部Cu層23とをこの順に積層させる。この場合には、特に、スパッタ成膜装置の別チャンバにおいて、下部Cu層21上にAlCu層(図示せず)を約0.6nm〜1nmの厚さとなるように成膜し、RFプラズマまたはRFイオン(RF−PIT:plasma or ion )処理によってAlCu層を約0.1nm〜0.3nmエッチングして除去したのち、RFプラズマ酸化またはRFイオンアシスト(RF−IAO:plasma oxidation or ion assisted oxidation)処理によってAlCu層を酸化し、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx を形成するようにする。
【0050】
RF−PIT処理は、例えば、低圧のプラズマエッチングまたはイオンエッチングを含む処理である。このRF−PIT処理の条件としては、例えば、RFパワー=約17W〜20W、Arガスの流速=約300×10-53 /h(=50sccm)、処理時間=約20秒間〜60秒間とする。一方、RF−IAO処理は、低圧のプラズマ酸化またはイオンアシスト酸化を含む処理である。このRF−IAO処理の条件としては、例えば、RFパワー=約20W〜30W、Arガスの流速=約180×10-53 /h〜300×10-53 /h(=30sccm〜50sccm)、O2 ガスの流速=約1.8×10-53 /h〜6×10-53 /h(=0.3sccm〜1sccm)、処理時間=約15秒間〜45秒間とする。これらのRF−PIT処理およびRF−IAO処理の詳細については、ヘッドウェイ株式会社の特許出願(整理番号HT03−043)に記載されている。
【0051】
続いて、非磁性スペーサ層24上に、フリー層27を形成する。このフリー層27を形成する際には、下部Fev Co(100-v) 層25(v=約20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層26(w=約85原子%〜100原子%)を含むようにする。続いて、フリー層27上に、保護層28を形成する。これにより、基板10上に、シード層11から保護層28に至る積層構造を有するスピンバルブ積層体100が形成される。
【0052】
最後に、フォトリソグラフィ法およびイオンビームエッチング(IBE:ion beam etching)法などを使用してスピンバルブ積層体100をパターニングすることにより、図1に示したように、ボトムスピンバルブ型の積層構造を有するスピンバルブ構造体1が完成する。
【0053】
本実施の形態に係るスピンバルブ構造体では、フリー層27がCov Fe(100-v) (v=20原子%〜70原子%)で表される組成を有する下部FeCo層25およびNiw Fe(100-w) (w=85原子%〜100原子%)で表される組成を有する上部NiFe層26を含むようにしたので、以下の理由により、v=20原子%未満およびw=85原子%未満である場合と比較して、保持力、磁歪およびMR比の観点において利点が得られる。
【0054】
FeCo/NiFeで表される積層構造を有する従来のフリー層では、保持力、磁歪およびMR比を適正化するために、FeCoおよびNiFeの組成を制御していた。具体的には、FeCoのFe含有量が20原子%以上、特に35原子%以上になると保持力および磁歪が高くなるため、そのFe含有量を20原子%未満に抑えていた。その一方で、フリー層中のFe含有量が大きくなるとMR比が向上するため、上記した保持力および磁歪に与える影響を考慮しつつ、NiFeのFe含有量を85原子%未満に抑えていた。
【0055】
これに対して、本実施の形態のフリー層27では、Cov Fe(100-v) で表される組成を有する下部FeCo層25においてv=20原子%〜70原子とすることにより、その高Fe含有量の下部FeCo層25によってMR比が向上する。また、Niw Fe(100-w) で表される組成を有する上部NiFe層26においてw=85原子%〜100原子%とすることにより、その高Ni含有量のNiFe層26によって保持力および磁歪が低くなる。
【0056】
したがって、本実施の形態では、従来のフリー層において適正範囲外とされていた含有量範囲となるように、下部FeCo層25のFe含有量および上部NiFe層26のNi含有量を意図的に設定することにより、保持力が低く維持されたまま、磁歪が従来よりも低くなると共に、MR比が従来よりも高くなる。これにより、低保持力(Hc<5×103 /(4π)A/m)、低磁歪(λs<5×10-6)および高MR比(dR/R≧10%)を得ることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係るスピンバルブ構造体の製造方法では、上記した低保持力、低磁歪および高MR比が得られるスピンバルブ構造体を製造することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、図1に示したように、スピンバルブ構造体1が、ピンド層20がフリー層27よりも基板10に近い側(下側)に位置するボトムスピンバルブ型の積層構造を有するようにしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、シード層11からフリー層27に至る積層順を図1に示した場合とは逆転させることにより、スピンバルブ構造体1が、ピンド層20がフリー層27よりも基板10から遠い側(上側)に位置するトップスピンバルブ型の積層構造を有するようにしてもよい。このトップスピンバルブ型では、単にシード層11からフリー層27に至る積層順だけでなく、ピンド層20、非磁性スペーサ層24およびフリー層27を構成する各層の積層順も逆転される。また、例えば、上記したボトムスピンバルブ型またはトップスピンバルブ型の積層構造を複数重ねることにより、スピンバルブ構造体1が多層スピンバルブ型の積層構造を有するようにしてもよい。これらの場合においても、ボトムスピンバルブ型の積層構造を有する場合と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、非磁性スペーサ層24を非磁性導電層とすることにより、スピンバルブ構造体1が巨大磁気抵抗効果を利用して動作するようにしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、非磁性スペーサ層24を絶縁層(いわゆるトンネルバリア層)とすることにより、スピンバルブ構造体1がトンネル磁気抵抗効果を利用して動作するようにしてもよい。このトンネルバリア層としての非磁性スペーサ層24は、例えば、AlOxなどを含み、約0.5nm〜1.5nm、好ましくは約0.5nm〜0.6nmの厚さを有している。この種の非磁性スペーサ層24は、例えば、Al層を成膜したのち、そのAl層を自然酸化またはラジカル酸化して、Al2 3 に近い化学量論を有するAlOx に変換することにより形成可能である。この場合においても、非磁性層スペーサ層24が非磁性導電層である場合と同様の効果を得ることができる。なお、非磁性スペーサ層24がトンネルバリア層である場合におけるスピンバルブ構造体1の構成は、非磁性スペーサ層24の構成材料が非磁性導電材料から絶縁材料に変更される点を除いて図1に示した場合と同様であるので、その構成の図示を省略している。
【0060】
次に、本実施の形態に係る磁気再生ヘッドおよびその製造方法について説明する。図3は、各種磁気再生ヘッドを代表して、スピンバルブ構造体1を備えたCPP−GMR磁気再生ヘッド40のエアベアリング面に平行な断面構成を表している。なお、スピンバルブ構造体1の詳細な構成(図1参照)については既に詳細に説明したので、以下ではその説明を随時省略する。
【0061】
CPP−GMR磁気再生ヘッド40は、主に、第1磁気シールド10(S1)と、スピンバルブ構造体1と、第2磁気シールド31(S2)とがこの順に積層されたものである。これらの第1磁気シールド10および第2磁気シールド31は、いずれもスピンバルブ構造体1に電流を流すための導電リードとして機能する。このCPP−GMR磁気再生ヘッド40では、フリー層27(図1参照)の磁気状態を読み出すために、CCP方式により第1磁気シールド10と第2磁気シールド31との間にセンス電流が流される。なお、第1の磁気シールドは上記した基板に相当するものであるため、その第1磁気シールドに基板と同一の符号(10)を付している。
【0062】
スピンバルブ構造体1は、第1磁気シールド10および第2磁気シールド31よりも狭い幅を有しており、そのスピンバルブ構造体1の各側壁1Wに隣接するように絶縁層30が形成されている。この絶縁層30は、例えば、第1磁気シールド10および第2磁気シールド31とスピンバルブ構造体1とにより囲まれる空間に埋め込まれている。
【0063】
このCPP−GMR磁気再生ヘッド40では、フリー層27を構成する下部FeCo層25および上部NiFe層26(図1参照)の組成が再生性能に寄与している。具体的には、下部FeCo層25の組成を表すFev Co(100-v) 中のvは、スピンバルブ構造体1の磁気抵抗効果を最適化するための制御因子である。また、上部NiFe層26の組成を表すNiw Fe(100-w) 中のwは、スピンバルブ構造体1の保持力および磁歪を低くするために調整されている。
【0064】
なお、CPP−GMR磁気再生ヘッド40は、磁気記録ヘッドが併設された複合型磁気ヘッドの一部であってもよいし、あるいは磁気記録ヘッドが併設されていない再生専用の磁気再生ヘッドであってもよい。
【0065】
このCPP−GMR磁気再生ヘッド40は、以下の手順により製造される。すなわち、まず、基板としての第1磁気シールド10上に、上記したスピンバルブ構造体の製造方法を使用して、側壁29および上面28aを有するスピンバルブ構造体1を形成する。続いて、スピンバルブ構造体1上にリフトオフマスク(図示せず)を形成したのち、そのリフトオフマスクおよびその周辺を覆うように、絶縁層30を形成する。これにより、スピンバルブ構造体1が周囲から絶縁される。続いて、リフトオフマスクを除去(リフトオフ)したのち、化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing )法などを使用して、スピンバルブ構造体1および絶縁層30を平坦化する。このスピンバルブ構造体1は、必要に応じてアニールされてもよい。アニール条件としては、例えば、アニール温度=約250℃〜300℃、アニール時間=約2時間〜5時間、印加磁界=約8000×103 /(4π)A/m〜12000×103 /(4π)A/m(=8000Oe〜12000Oe)である。最後に、スピンバルブ構造体1の上面28aおよびその周辺に第2磁気シールド31を形成することにより、CPP−GMR磁気再生ヘッド40が完成する。
【0066】
本実施の形態に係る磁気再生ヘッドおよびその製造方法では、上記したスピンバルブ構造体1を備えるようにしたので、CPP−GMR磁気再生ヘッド40において低保持力、低磁歪および高MR比を得ることができると共に、そのCPP−GMR磁気再生ヘッド40を製造することができる。これにより、CPP−GMR磁気再生ヘッド40の再生性能を向上させることができる。
【0067】
なお、図3では、第1磁気シールド10および第2磁気シールド31とスピンバルブ構造体1とにより囲まれる空間に絶縁層30を埋め込むようにしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、図3に対応する図4に示したように、スピンバルブ構造体1の各側壁29に近い絶縁層30内に、フリー層27(図1参照)に縦方向バイアスを供給するバイアス層32を設けてもよい。このバイアス層32の構成材料は、任意に設定可能である。この場合においても、図3に示した場合と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、上記では、スピンバルブ構造体1をCPP−GMR磁気再生ヘッド40に適用する場合について説明したが、そのCPP−GMR磁気再生ヘッド40に代えてTMR磁気再生ヘッドに適用してもよいことは言うまでもない。
【実施例】
【0069】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0070】
(実施例)
フリー層を構成する下部FeCo層および上部NiFe層としてそれぞれFe25Co75,Ni90Fe10を使用することにより、以下の積層構造を有するスピンバルブ構造体を備えたCPP−GMR磁気再生ヘッドを製造した。なお、かっこ内の数字は、各層の厚さを示している。「AlCu/RF−PIT/RF−IAO」とは、AlCuを成膜したのちにRF−PIT処理およびRF−IAO処理を順に施したことを表している。
シード層=Ta(5nm)/Ru(2nm)
AFM層=IrMn(7nm)
ピンド層=Fe25Co75(4.6nm)/Ru(0.75nm)/[Fe70Co30(1.2nm)/Cu(0.2nm)]2 Fe70Co30(1.2nm)
非磁性スペーサ層=Cu(0.52nm)/AlCu(0.85nm)/RF−PIT/RF−IAO/Cu(0.3nm)
フリー層=Fe25Co75(2nm)/Ni90Fe10(2.8nm)
保護層=Cu(3nm)/Ru(1nm)/Ta(6nm)/Ru(1nm)
【0071】
(比較例)
フリー層を構成する下部FeCo層および上部NiFe層としてそれぞれFe25Co75(1nm),Ni82.5Fe17.5(3.5nm)を使用した点を除き、実施例と同様の積層構造を有するスピンバルブ構造体を備えたCPP−GMR磁気再生ヘッドを製造した。
【0072】
実施例および比較例のCPP−GMR磁気再生ヘッドについて、フリー層の構成の違いによる諸特性の差異を調べたところ、表1に示した結果が得られた。表1は、CPP−GMR磁気再生ヘッドの諸特性として、抵抗R、MR比dR/R(%)、保持力Hc(×103 /(4π)A/m)および磁歪λsを示している。なお、実施例および比較例においてCCP層を形成する際には、RF−PIT処理時の条件として、RFパワー=20W、Arガスの流速=300×10-53 /h(=50sccm)、処理時間=40秒間とし、RF−IAO処理時の条件として、RFパワー=27W、Arガスの流速=300×10-53 /h、O2 ガスの流速=4.8×10-53 /h(=0.8sccm)、処理時間=30秒間とした。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示した結果から判るように、抵抗R、MR比dR/R、保持力Hcおよび磁歪λsは、比較例においてそれぞれ0.25,8.6%,4.6×103 /(4π)A/m,2.3×10-6であり、実施例においてそれぞれ0.26,10.0%,4.9×103 /(4π)A/m,7.0×10ー8であった。すなわち、実施例では、抵抗Rおよび保持力Hcが比較例とほぼ同等に維持されたまま、MR比dR/Rが比較例よりも約16%高くなったと共に、磁歪λsが比較例よりも低くなった。なお、比較例のフリー層においてFe25Co75をFe10Co90に置き換えると、MR比dR/Rが8.6%よりも小さくなることは明らかである。このことから、実施例のCPP−GMR磁気再生ヘッドでは、フリー層が組成Cov Fe(100-v) (v=20原子%〜70原子%)で表される下部FeCo層および組成Niw Fe(100-w) (w=85原子%〜100原子%)で表される上部NiFe層を含むことにより、低保持力(Hc<5×103 /(4π)A/m)、低磁歪(λs<5×10-6)および高MR比(dR/R≧10%)が得られることが確認された。
【0075】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、本発明の効果が得られることにより目的が達成されるのであれば、種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係るスピンバルブ構造体およびその製造方法は、例えばCPP−GMR磁気再生ヘッドまたはTMR磁気再生ヘッドなどの各種磁気再生ヘッドおよびその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスピンバルブ構造体の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示したスピンバルブ構造体の製造方法における一工程を説明するための断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る磁気再生ヘッドの構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した磁気再生ヘッドの構成に関する変形例を表す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10…基板,第1磁気シールド、11…シード層、12…AFM層、13…AP2層、14…結合層、15,17,19…CoFe層、16,18…Cu層、20…ピンド層、21…下部Cu層、22…CCP層、23…上部Cu層、24…非磁性スペーサ層、25…下部FeCo層、26…上部NiFe層、27…フリー層、28…保護層、28a…上面、29…側壁、30…絶縁層、31…第2磁気シールド、32…バイアス層、40…CPP−GMR磁気再生ヘッド、50…AP1層、100…スピンバルブ積層体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気再生ヘッドのセンサとして使用されるスピンバルブ構造体を製造する方法であって、
(a)基板上に、ピンド層と、下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、前記ピンド層および前記フリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを有するスピンバルブ積層体を形成し、
(b)前記スピンバルブ積層体をパターニングしてスピンバルブ構造体を形成する
ことを特徴とするスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項2】
前記基板は、磁気再生ヘッドの第1磁気シールドであり、
前記スピンバルブ積層体を構成する全ての層は、スパッタ成膜装置を使用して形成される
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項3】
前記ピンド層は、隣接する反強磁性層によりピン止めされると共に、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、
前記第2反平行層は、CoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、
前記結合層は、Ruを含み、
前記第1反平行層は、[CoFe/Cu]n /CoFe(CoFeのFe含有量=70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有する
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項4】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、0.5nm〜3nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、1nm〜6nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、v=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、w=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項4記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項6】
前記非磁性スペーサ層は、下部Cu層と、上部Cu層と、前記下部Cu層および前記上部Cu層により挟まれ、部分酸化されたAlCuを含む電流路制限層とを有する
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項7】
前記下部Cu層上にAlCu層を成膜し、
RFプラズマまたはRFイオン処理によって前記AlCu層を0.1nm〜0.3nm除去したのち、RFプラズマ酸化またはRFイオンアシスト酸化処理によって前記AlCu層を酸化し、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx 層を形成することにより、前記電流路制限層を形成する
ことを特徴とする請求項6記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記基板上に、シード層と、反強磁性層と、前記ピンド層と、前記非磁性スペーサ層と、前記フリー層と、保護層とをこの順に成膜して前記スピンバルブ積層体を形成し、
ボトムスピンバルブ型の積層構造を有するように前記スピンバルブ構造体を形成する
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記非磁性スペーサ層は、Cuを含み、
前記スピンバルブ構造体は、巨大磁気抵抗効果、または前記非磁性スペーサ層がトンネルバリア層であってトンネル磁気抵抗効果を利用して動作する
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記スピンバルブ構造体は、トップスピンバルブ型、ボトムスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造を有する
ことを特徴とする請求項1記載のスピンバルブ構造体の製造方法。
【請求項11】
(a)基板としての第1磁気シールド上に、ピンド層と、下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、前記ピンド層および前記フリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを有するスピンバルブ積層体を形成し、
(b)前記スピンバルブ積層体をパターニングして、側壁および上面を有するスピンバルブ構造体を形成し、
(c)前記スピンバルブ構造体の側壁に隣接するように絶縁層を形成し、
(d)前記スピンバルブ構造体の上面に第2磁気シールドを形成する
ことを特徴とする磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記スピンバルブ積層体を構成する全ての層は、スパッタ成膜装置を使用して形成される
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記ピンド層は、隣接する反強磁性層によりピン止めされると共に、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、
前記第2反平行層は、CoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、
前記結合層は、Ruを含み、
前記第1反平行層は、[CoFe/Cu]n /CoFe(CoFeのFe含有量=70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、0.5nm〜3nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、1nm〜6nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、v=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、w=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項14記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記非磁性スペーサ層は、下部Cu層と、上部Cu層と、前記下部Cu層および前記上部Cu層により挟まれ、部分酸化されたAlCuを含む電流路制限層とを有する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項17】
さらに、(d)の前に、前記スピンバルブ構造体の各側壁に近い前記絶縁層内に、前記フリー層に縦方向バイアスを供給するバイアス層を形成する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記基板上に、シード層と、反強磁性層と、前記ピンド層と、前記非磁性スペーサ層と、前記フリー層と、保護層とをこの順に成膜して前記スピンバルブ積層体を形成し、
ボトムスピンバルブ型の積層構造を有するように前記スピンバルブ構造体を形成する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項19】
センス電流は、前記フリー層の磁気状態を読み出すために、膜面直交電流方式により前記第1磁気シールドと第2磁気シールドとの間に流される
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項20】
前記スピンバルブ構造体は、トップスピンバルブ型、ボトムスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造を有する
ことを特徴とする請求項11記載の磁気再生ヘッドの製造方法。
【請求項21】
磁気再生ヘッドのセンサとして使用されるスピンバルブ構造体であって、
(a)ピンド層と、
(b)下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、
(c)前記ピンド層および前記フリー層により挟まれた非磁性スペーサ層と
を備えたことを特徴とするスピンバルブ構造体。
【請求項22】
磁気再生ヘッドの第1磁気シールド上に形成されている
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項23】
前記ピンド層は、前記第1磁気シールド上に順に積層されたシード層および反強磁性層上に形成され、
前記フリー層上に保護層が形成され、
ボトムスピンバルブ型の積層構造を有する
ことを特徴とする請求項22記載のスピンバルブ構造体。
【請求項24】
前記ピンド層は、隣接する反強磁性層によりピン止めされていると共に、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、
前記第2反平行層は、CoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、
前記結合層は、Ruを含み、
前記第1反平行層は、[CoFe/Cu]n /CoFe(CoFeのFe含有量=70原子%,n=2または3)で表される積層構造を有する
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項25】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、0.5nm〜3nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、1nm〜6nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項26】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、v=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、w=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項25記載のスピンバルブ構造体。
【請求項27】
前記非磁性スペーサ層は、下部Cu層と、上部Cu層と、前記下部Cu層および前記上部Cu層により挟まれ、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx を含む電流路制限層とを有する
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項28】
前記非磁性スペーサ層は非磁性導電層であり、
巨大磁気抵抗効果を利用して動作する
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項29】
前記非磁性スペーサ層は絶縁層であり、
トンネル磁気抵抗効果を利用して動作する
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項30】
前記ピンド層、前記フリー層および前記非磁性スペーサ層は、ボトムスピンバルブ型、トップスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造の一部である
ことを特徴とする請求項21記載のスピンバルブ構造体。
【請求項31】
(a)第1磁気シールドと、
(b)前記第1磁気シールド上に形成され、ピンド層と、下部Fev Co(100-v) 層(v=20原子%〜70原子%)および上部Niw Fe(100-w) 層(w=85原子%〜100原子%)を含むフリー層と、前記ピンド層および前記フリー層により挟まれた非磁性スペーサ層とを有すると共に、側壁および上面を有するスピンバルブ構造体と、
(c)前記スピンバルブ構造体の上面に形成された第2磁気シールドと
を備えたことを特徴とする磁気再生ヘッド。
【請求項32】
前記ピンド層は、前記第1磁気シールド上に順に形成されたシード層および反強磁性層上に形成され、
前記スピンバルブ構造体は、最上層として保護層を有する
ことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。
【請求項33】
前記シード層は、Ta/Ruで表される積層構造を有し、
前記反強磁性層は、IrMnを含み、
前記保護層は、Cu/Ru/Ta/Ruで表される積層構造を有する
ことを特徴とする請求項32記載の磁気再生ヘッド。
【請求項34】
前記ピンド層は、第2反平行層/結合層/第1反平行層で表される積層構造を有し、
前記第2反平行層は、CoFe(Fe含有量=25原子%)を含み、
前記結合層は、Ru、RhまたはIrを含み、
前記第1反平行層は、[CoFe/Cu]n /CoFe(n=2または3)で表される積層構造を有する
ことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。
【請求項35】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、0.5nm〜3nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、1nm〜6nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。
【請求項36】
前記下部Fev Co(100-v) 層は、v=20原子%であると共に2nmの厚さを有し、
前記上部Niw Fe(100-w) 層は、w=90原子%であると共に2.8nmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項35記載の磁気再生ヘッド。
【請求項37】
前記非磁性スペーサ層は、下部Cu層と、上部Cu層と、前記下部Cu層および前記上部Cu層により挟まれ、孔がCuで埋め込まれた多孔質のAlOx を含む電流路制限層とを有する
ことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。
【請求項38】
さらに、
前記スピンバルブ構造体の側壁に隣接するように形成された絶縁層と、
前記スピンバルブ構造体の各側壁に近い前記絶縁層内に形成され、前記フリー層に縦方向バイアスを供給するバイアス層と
を備えたことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。
【請求項39】
前記スピンバルブ構造体は、ボトムスピンバルブ型、トップスピンバルブ型または多層スピンバルブ型の積層構造を有する
ことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。
【請求項40】
前記vは、前記スピンバルブ構造体の磁気抵抗効果を最適化するための制御因子であり、
前記wは、前記スピンバルブ構造体の保持力および磁歪を低くするために調整される
ことを特徴とする請求項31記載の磁気再生ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−27736(P2007−27736A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191899(P2006−191899)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】