説明

スピン伝導素子

【課題】出力を向上可能なスピン伝導素子を提供する。
【解決手段】 このスピン伝導素子は、半導体層3と、半導体層3上に第1トンネル障壁層5Aを介して設けられた第1強磁性層1と、半導体層3上に、第1強磁性層1から離間し、且つ、第2トンネル障壁層5Bを介して設けられた第2強磁性層2と、を備え、半導体層3は、第1強磁性層1からその厚み方向に垂直な方向に沿って、第1強磁性層1から離れる方向へ広がる第1領域R1と、第1強磁性層1からその厚み方向に垂直な方向に沿って、第2強磁性層2に向かう方向に延びており、第1領域R1の不純物濃度よりも相対的に高い不純物濃度を有する第2領域R12と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体内へ導入されるスピンを利用したスピン伝導素子に関わる。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体、特にシリコン(Si)におけるスピン伝導の現象が、多くの注目を集めている。シリコンは、現在の主な半導体製品の中心となる材料であり、シリコンベースのスピントロニクスが実現できれば、既存技術を捨てることなく、シリコンデバイスに新しい機能を付加することができる。このような半導体スピン伝導素子として、例えば、Spin−MOSFETが挙げられる。半導体スピン伝導素子には、電流及びスピン流の双方を用いるもの(磁気抵抗効果型)と、スピン流のみを用いるもの(非局所構造型)がある。
【0003】
非局所構造型の半導体スピン伝導素子では、電流とスピン流の流れる経路が異なり、スピン流自体は電荷を持たずこれによる電圧を生じさせないため、高いS/Nの出力を得ることが期待される。しかしながら、非局所構造型の半導体スピン伝導素子の場合、一般的に出力が小さいという課題がある。出力を増大させるため、本願の発明者らは、半導体内の不純物濃度を調整する方法などを考えてきた(特許文献1参照)。この方法では、半導体の表面付近のみに高濃度の不純物を添加することで、界面抵抗を低下させ、出力向上をさせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−287666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非局所構造型のスピン伝導素子においては、更なる出力向上が期待されている。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、出力を向上可能なスピン伝導素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係るスピン伝導素子は、半導体層と、前記半導体層上に第1トンネル障壁層を介して設けられた第1強磁性層と、前記半導体層上に、前記第1強磁性層から離間し、且つ、第2トンネル障壁層を介して設けられた第2強磁性層と、を備え、前記半導体層は、前記第1強磁性層からその厚み方向に垂直な方向に沿って、前記第1強磁性層から離れる方向へ広がる第1領域と、前記第1強磁性層からその厚み方向に垂直な方向に沿って、前記第2強磁性層に向かう方向に延びており、前記第1領域の不純物濃度よりも相対的に高い不純物濃度を有する第2領域とを備えることを特徴とする。
【0007】
第1強磁性層から第1トンネル障壁層を介して半導体層内に注入されたスピンは、不純物濃度が高い領域の方向へ、より高い確率で拡散する。すなわち、第2領域は、第1強磁性層から第2強磁性層に向かう方向に延びているので、この方向の半導体領域のスピン抵抗が下がり、スピン流の多くの量は、第2強磁性層方向に流れることなる。第2強磁性層にスピン流が至ることにより発生する出力は、スピン流の大きさに依存するため、このスピン伝導素子では、出力を向上させることが可能となる。
【0008】
前記第2領域は、前記半導体層における、前記第1及び第2強磁性層の直下の領域を含むことを特徴とする。
【0009】
この場合、これらの直下の領域においてもスピン抵抗が低下し、スピン流が流れやすくなるため、第2強磁性層に至るスピン流が増加し、出力を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係るスピン伝導素子は、前記半導体層上における、前記第1及び第2強磁性層間の領域の外側の領域に設けられた第1参照電極と、前記半導体層上における前記外側の領域に設けられた第2参照電極と、前記第1強磁性層と前記第1参照電極との間に接続される電子流源と、前記第2強磁性層と前記第2参照電極との間に接続される電圧検出回路と、を備え、前記第1強磁性層と前記第1参照電極との間に、前記第1領域が位置していることを特徴とする。
【0011】
この場合、電子流源から電子が供給されると、第1強磁性層における第1トンネル障壁層の下の半導体内からスピン流が拡散する。スピン流は、第2強磁性層方向に流れ、この量に依存して、第2強磁性層と第2参照電極との間に電圧が発生する。電圧検出回路は、この電圧を、スピン伝導素子の出力として検出することができる。
【0012】
前記第1領域における不純物濃度は1×1013/cm以上1×1018/cm未満であり、前記第2領域における不純物濃度は1×1018/cm以上1×1020/cm以下であることを特徴とする。
【0013】
第2領域における不純物濃度は、第1領域の不純物濃度よりも高いが、これらの不純物濃度が上述の範囲にある場合、第2領域へのスピン流の流れ込みが大きくなるという効果がある。
【0014】
前記第1及び第2トンネル障壁層は、それぞれMgO、Al、SiO、ZnO、又は、MgAlからなることを特徴とする。これらの材料の場合、スピンの注入及び検出の効率が高いという利点がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスピン伝導素子によれば、不純物濃度差により、出力方向の領域においてスピン流を偏在させることができるので、出力を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スピン伝導素子の斜視図である。
【図2】図1に示したスピン伝導素子のII−II矢印線に沿った断面構成を示す図である。
【図3】図1に示したスピン伝導素子のIII−III矢印線に沿った断面構成を示す図である。
【図4】図1に示したスピン伝導素子のIV−IV矢印線に沿った断面構成を示す図である。
【図5】図2とは異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【図6】更に異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【図7】更に異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【図8】更に異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【図9】別の構造のスピン伝導素子の斜視図である。
【図10】更に別の構造のスピン伝導素子の斜視図である。
【図11】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図12】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図13】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図14】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図15】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図16】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図17】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図18】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図19】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図20】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図21】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図22】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子中間体の斜視図である。
【図23】スピン伝導素子の製造方法を説明するためのスピン伝導素子の斜視図である。
【図24】スピン伝導素子を用いた磁気ヘッド(磁気センサ)を示す図である。
【図25】スピン伝導素子を用いたスピントランジスタを示す図である。
【図26】強磁性層周辺の詳細断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態に係るスピン伝導素子について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する符号は省略する。
【0018】
図1はスピン伝導素子の斜視図、図2は図1に示したスピン伝導素子のII−II矢印線に沿った断面構成を示す図である。
【0019】
ベース基板10A上には、絶縁層4(厚さ200nm)が設けられている。絶縁層4上には、直方体或いは四角錐台形状の半導体層3が設けられている。半導体層3は、XYZ三次元直交座標系において、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とし、Z軸方向を厚み方向としている。半導体層3は、スピンが伝導し拡散するチャンネルとして機能する。半導体層3上には、第1強磁性層1、第2強磁性層2、第1参照電極1M、及び第2参照電極2Mが形成されている。第1強磁性層1、第2強磁性層2、第1参照電極1M、第2参照電極2M上には、それぞれ配線W1、W2、W1M、W2Mが設けられている。
【0020】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2の長手方向は、共にX軸方向であり、これらの磁化方向は、例えば、共にX軸の正方向に向いている(平行)。もちろん、これらの磁化方向を逆方向に設定する(反平行)こともできる。このようなスピン伝導素子は、伝播中のスピン流が受ける磁場を、出力側の電圧として間接的に検出することで、好適には磁気センサとして利用することができる。また、磁場、磁壁移動、あるいはスピン流によるトルクの効果によって、第1強磁性層1及び第2強磁性層2の磁化方向を任意に変化させることができる。これによって、メモリや演算機能を持たせることもできる。
【0021】
絶縁層4上には、電極パッドP1、P2、P1M、P2Mが設けられている。それぞれの電極パッドP1、P2、P1M、P2Mには、配線W1、W2、W1M、W2Mが電気的に接続されている。
【0022】
電極パッドP1と電極パッドP1Mとの間には、電子流源Eが接続され(図2参照)、配線W1,W1M間にバイアス電圧が印加される。これにより、第1強磁性層1内に電子流源Eから電子が注入され、第1強磁性層1の下に位置する第1トンネル障壁層5Aを透過した電子は、半導体層3内に導入される。このときの電子は、第1強磁性層1内の磁化方向に依存した偏極スピンを有している。半導体層3の内部に形成された内部電界にしたがって、注入された電子は、第1強磁性層1から半導体層3内を通り、第1参照電極1M内に流れる。
【0023】
一方、第1強磁性層1の直下の半導体層3内の領域から、スピンも拡散する。このスピンの拡散する方向は、半導体層3内のスピン抵抗Rに依存する。スピンは第1参照電極1Mに向けた+Y方向(矢印Sp1で示す)と、第2強磁性層2に向けた−Y方向(矢印Sp2で示す)の双方に拡散する。あるスピンの向きを有するスピン流が、第2強磁性層2方向に拡散すると、これと第2参照電極2Mとの間に電圧が発生する。第2強磁性層2と半導体層3との間には、第2トンネル障壁層5Bが介在しており、スピン流が直接的に第2強磁性層2に吸収されない構成になっている。スピンの拡散中に外部磁場の影響を受けて、スピンの向きが回転する場合、スピンの向きの第2強磁性層2の磁化方向との一致度に依存して、検出される電圧が変動する。
【0024】
電極パッドP2と電極パッドP2Mとの間には、電圧検出回路Vが接続されている(図2参照)、電圧検出回路Vによって配線W2,W2M間の電圧、すなわち第2強磁性層2と第2参照電極2Mとの間の電圧が検出される。
【0025】
ここで、半導体層3には、第1強磁性層1を通るXZ平面を基準として、非対称に不純物(ドーパント)が添加されている。すなわち、半導体層3は、第1強磁性層1からその厚み方向に垂直な方向に沿って、これから離れる方向へ広がる第1領域R1と、第1強磁性層1からその厚み方向に垂直な方向に沿って、第2強磁性層2に向かう方向に延びており、第1領域R1の不純物濃度よりも相対的に高い不純物濃度を有する第2領域R12とを備えている。第2領域R12においては、不純物濃度が相対的に高いため、スピン抵抗Rが小さくなり、拡散するスピン流のうちの大きな割合のものが、第2領域R12を流れることとなる。
【0026】
なお、スピン抵抗Rは以下の式で与えられる。
=(Pλρ)/A
【0027】
Pはスピンの注入・検出効率、λは半導体内のスピン拡散長、ρはスピン流の流れる半導体の電気抵抗率、Aはスピン流の流れる方向に垂直な半導体断面積である。不純物濃度が高くなると、ρが小さくなるため、Rは小さくなる。
【0028】
第1強磁性層1から第1トンネル障壁層5Aを介して半導体層3内に注入されたスピンは、不純物濃度が高い領域の方向へ、より高い確率で拡散する。すなわち、第2領域R12は、第1強磁性層1から第2強磁性層2に向かう方向に延びているので、この方向の半導体領域のスピン抵抗Rが下がり、スピン流の多くの量は、第2強磁性層2の方向に流れることなる。第2強磁性層2にスピン流が至ることにより発生する出力は、スピン流の大きさに依存するため、このスピン伝導素子では、出力を向上させることが可能となる。
【0029】
図1及び図2に示した第1領域R1は、不純物添加前の半導体層3の部分であり、面内方向においては、Y軸方向に関しては、第1強磁性層1における第2強磁性層2側のエッジから+Y方向に広がり、第1参照電極1Mのエッジまで広がっている。幅方向に関しては、第1領域R1は、第1強磁性層1及び第1参照電極1Mの幅方向(X軸方向)の寸法を含むように広がっている。また、厚み方向に関しては、第1領域R1は、絶縁層4に到達するまで広がっている。
【0030】
第2領域R12は、第1領域R1とは逆側に広がっている。図1及び図2に示した第2領域R12は、面内方向においては、Y軸方向に関しては、第1強磁性層1における第2強磁性層2側のエッジから広がり、第2強磁性層2のエッジまで広がっている。幅方向に関しては、第2領域R12は、第1及び第2強磁性層1,2の幅方向(X軸方向)の寸法を含むように広がっている。また、厚み方向に関しては、第2領域R12は、絶縁層4に到達するまで広がっている。
【0031】
なお、非対称の不純物分布は、これらの第1及び第2領域R1、R12があれば十分であるが、実施形態においては、更に不純物分布がある。
【0032】
第2領域R12よりも第2参照電極2M側に広がる半導体領域R2は、不純物添加前の半導体層3の部分であり、第1領域R1と同様に低不純物濃度である。図1及び図2に示した半導体領域R2は、面内方向においては、Y軸方向に関しては、第2強磁性層2における第1強磁性層1側のエッジから−Y方向に広がり、第2参照電極2Mのエッジまで広がっている。幅方向に関しては、半導体領域R2は、第2強磁性層2及び第2参照電極2Mの幅方向(X軸方向)の寸法を含むように広がっている。また、厚み方向に関しては、半導体領域R2は、絶縁層4に到達するまで広がっている。
【0033】
実施形態においては、第1参照電極1M及び第2参照電極2Mの直下の領域においても、第2領域R12と同様に不純物が添加され、それぞれ半導体領域R1M,R2Mを構成している。図1及び図2に示した半導体領域R1M,R2Mは、面内方向においては、それぞれ、第1参照電極1M及び第2参照電極2Mの直下の領域に位置している。また、厚み方向に関しては、半導体領域R1M,R2Mは、絶縁層4に到達するまで広がっている。
【0034】
電極直下の領域R1M,R2Mにおいて、不純物濃度が比較的高い場合、これらの領域において、電気抵抗が比較的低くなる。この場合、半導体層3と参照電極1M.2Mとが電気的に整合されやすくなる。
【0035】
半導体層3内における上述の各領域は、全て同一の導電型を有している。半導体層3をP型とする場合の不純物として、B、Al、Ga、Inなどが挙げられ、半導体層3をN型とする場合の不純物として、P、As、Sbなどが挙げられる。
【0036】
半導体層3の露出した側面上には、第1絶縁膜(酸化膜:SiO)IS1が形成されており、当該側面が保護されている。また、第1絶縁膜1ISS及び半導体層3の露出表面上には、更に、保護膜としての第2絶縁膜(酸化膜:SiO)IS2が形成されている。
【0037】
図3は、図1に示したスピン伝導素子のIII−III矢印線に沿った断面構成を示す図である。この断面は、参照電極を通るXZ断面である。第1参照電極1Mの直下の領域には、不純物が添加された半導体領域R1Mが存在している。また、配線W1Mは、電極1Mに接触し電気的に接続されると共に、第2絶縁膜IS2上を這って、電極パッドP1Mまで延びている。第2絶縁膜IS2は、この上を通る配線W1Mと半導体層3との不要な接触を防止している。
【0038】
図3は、第1参照電極1Mを通る断面構造を示しているが、第2参照電極2Mを通る断面構造もこれと同一である。
【0039】
すなわち、第2参照電極2Mの直下の領域には、不純物が添加された半導体領域R2Mが存在し、配線W2Mは、電極2Mに接触し電気的に接続されると共に、第2絶縁膜IS2上を這って、電極パッドP2Mまで延びている。第2絶縁膜IS2は、この上を通る配線W2Mと半導体層3との不要な接触を防止している。
【0040】
図4は、図1に示したスピン伝導素子のIV−IV矢印線に沿った断面構成を示す図である。この断面は、強磁性層を通るXZ断面である。第1強磁性層1の直下の領域には、不純物が添加されていない半導体領域R1が存在している。また、配線W1は、第1強磁性層1に接触し電気的に接続されると共に、第2絶縁膜IS2上を這って、電極パッドP1まで延びている。第2絶縁膜IS2は、この上を通る配線W1と半導体層3との不要な接触を防止している。
【0041】
図4は、第1強磁性層1を通る断面構造を示しているが、第2強磁性層2を通る断面構造もこれと同一である。
【0042】
すなわち、第2強磁性層2の直下の領域には、不純物が添加されていない半導体領域R2が存在している。また、配線W2は、第2強磁性層2に接触し電気的に接続されると共に、第2絶縁膜IS2上を這って、電極パッドP2まで延びている。第2絶縁膜IS2は、この上を通る配線W2と半導体層3との不要な接触を防止している。
【0043】
ここで、第1領域R1における不純物濃度は1×1013/cm以上1×1018/cm未満であり、第2領域R12における不純物濃度はPの場合において1×1018/cm以上1×1020/cm以下であることが好ましい。不純物濃度の条件はそれぞれの不純物に依存して決定される。第2領域R12における不純物濃度は、第1領域R1の不純物濃度よりも高いが、これらの不純物濃度が上述の範囲にある場合には、半導体のショットキー障壁の影響が小さいため低抵抗であり、高出力が得られるという効果がある。また、第2領域へのスピン流の流れ込みが大きくなるという効果もある。
【0044】
第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に存在するスピンの向きは、半導体層3に導入される磁場Bの影響を受けて回転し、第2強磁性層2側の電圧出力が変動する。第2強磁性層2側の出力を検出する方式としては、(1)磁気抵抗効果測定方式と、(2)スピン流方式がある。上述の方式はスピン流方式(2)であるが、磁気抵抗効果測定方式を採用することもできる。
【0045】
(1)磁気抵抗効果測定方式の場合、第1電極1Mと第2電極2Mは用いない。すなわち、これらの形成を省略するか、例え形成した場合においても利用しない。この場合、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に、電子流源を接続し、これらの間に電子流を供給する。注入された電子のスピンの偏極方向は、半導体層3の突出部3Bを介して内部に導入される磁場Bの向きに依存して、回転する。したがって、第1強磁性層1から第2強磁性層2に至る電子量、換言すれば分極率が変化するため、これらの間の半導体の結晶層を含む領域の磁気抵抗が変化する。したがって、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間の電圧を電圧測定回路によって計測することで、半導体層3内に導入された磁場Bの大きさを計測することができる。
【0046】
また、情報の読み出し速度を更に向上させる場合には、上述の図1〜図10に示したように、スピン流方式を用いる。
【0047】
(2)スピン流方式では、図1〜図10に示した通り、第1電極1Mと第2電極2Mとを用い、第1強磁性層1と第1電極1Mとの間には、電子流源Eを接続し、第2強磁性層2と第2電極2Mとの間には、電圧検出回路(手段)Vを接続する。
【0048】
電子流源Eから、第1強磁性層1と第1電極1Mとの間に電子流を供給する。この場合、第1強磁性層1の直下の半導体層3からスピン流Sp1,Sp2が拡散する。スピン流Sp2は、半導体層3をチャネル層として伝播し、第2強磁性層2側に至る。スピン流Sp2の伝播過程でスピンが受けた磁場Bに応じて、スピンの向きが回転して、第2強磁性層2と第2電極2Mとの間の電圧が変動する。この電圧は、電圧測定回路Vによって測定する。したがって、半導体層3内に導入された磁場Bの大きさを計測することができる。
【0049】
次に、第1及び第2強磁性層1,2周辺の詳細構造と、各要素の材料について説明する。
【0050】
図26は、強磁性層周辺の詳細断面構造を示す図である。
【0051】
磁化方向を固定する場合、図26(A)に示すように、第1トンネル障壁層5A上には、第1強磁性層1、第1反強磁性層1AF、及び、第1配線W1が順次積層されている。同様に、磁化方向を固定する場合、図26(B)に示すように、第2トンネル障壁層5A上には、第2強磁性層2、第2反強磁性層2AF、及び、配線層W2が順次積層されている。強磁性層1,2と、反強磁性層1AF,2AFとが交換結合することで、磁化方向が固定される。一方の強磁性層を磁化フリー層として機能させる場合には、反強磁性層を用いないで、且つ、強磁性層のアスペクト比を低下させることで、その長手方向に磁化方向が向きやすくなる傾向を抑制し、磁化方向が外部磁場に対して容易に回転するようにすることもできる。
【0052】
第1及び第2トンネル障壁層5A,5Bとして、金属と半導体のショットキー接触時に形成されるショットキー障壁を利用することもできるが、制御性の観点から、厚さが2nm以下のトンネル絶縁層を用いることが好適である。この場合、第1及び第2トンネル障壁層5A,5Bの材料としては、結晶質(単結晶又は多結晶:アモルファスを除く)のMgOの他、Al、SiO、ZnO、又は、MgAlなどを用いることができ、その厚みは、電子がトンネルするよう、2nm以下に設定することが好ましい。これらの材料の場合、スピンの注入及び検出の効率が高いという利点がある。
【0053】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2の材料は、それぞれCr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、群の元素を1以上含む合金、又は、群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物である。一例としては、これらの第1及び第2強磁性層1,2は、CoFe又はNiFeからなる。これらの材料はスピン分極率の大きい強磁性材料であるため、スピンの注入電極又はスピンの受け取り電極としての機能を好適に実現することが可能である。
【0054】
反強磁性層1AF,2AFの材料としては、IrMnやPtMnなどのMn合金を用いることができる。また、形状磁気異方性を利用して磁化方向を固定する場合には、反強磁性層1AF,2AFは省略することができる。
【0055】
電極或いは配線層W1、W2、W1M,W2Mの材料としては、非磁性の金属であればよいが、Al、Cu又はAuなどを用いることができる。
【0056】
半導体層3の材料としては、上述のように、結晶欠陥の少ないSiが好ましいが、その他Geなどの半導体の他、GaAs、AlGaAs、ZnO、ダイヤモンド(C)又はSiCなどの化合物半導体を採用することも可能である。この中で、半導体層3が、Si、Ge、GaAsからなる場合、これらは良質な単一ドメインの結晶を得ることができることが知られているため、好適である。半導体はスピン拡散長が比較的長いため、チャンネル内に好適にスピンを蓄積することができる。
【0057】
ベース基板10Aは、AlTiC、Al又はSiなどの半導体のように絶縁性の高い材料からなる。
【0058】
絶縁膜4の材料としては、SiO、SiNx、MgO、又はAlなどを用いることができるが、絶縁膜であれば特に制限されるものではない。
【0059】
以上、説明したように、上述の実施形態に係るスピン伝導素子は、半導体層3と、半導体層3上に第1トンネル障壁層5Aを介して設けられた第1強磁性層1と、半導体層3上に、第1強磁性層1から離間し、且つ、第2トンネル障壁層5Bを介して設けられた第2強磁性層2とを備えている。また、検出にスピン流のみを用いる場合、半導体層3上における、第1及び第2強磁性層1,2間の領域の外側の領域に設けられた第1参照電極1Mと、半導体層3上における前記外側の領域に設けられた第2参照電極2Mと、第1強磁性層1と第1参照電極1Mとの間に接続される電子流源Eと、第2強磁性層2と第2参照電極2Mとの間に接続される電圧検出回路Vと、を備え、第1強磁性層1と第1参照電極1Mとの間に、第1領域R1が位置している。
【0060】
この場合、電子流源Eから電子が供給されると、第1強磁性層1における第1トンネル障壁層5Aの下の半導体内からスピン流が拡散する。スピン流は、第2強磁性層2の方向に流れ、この量に依存して、第2強磁性層2と第2参照電極2Mとの間に電圧が発生する。電圧検出回路Vは、この電圧を、スピン伝導素子の出力として検出することができる。
【0061】
上記スピン伝導素子の製造方法について説明する。
まず、ベース基板10A上に絶縁層4及び半導体層3が積層されたSOI基板を用意する。半導体層3はSiからなる。次に、SOI基板上に、フォトリソグラフィ工程を用いてアライメントマークを形成する。しかる後、不純物添加予定領域(R1M、R12、R2M)のみが開口したマスク(SiO)を半導体層3上にパターニングし、このマスクを介して、半導体層3内に不純物を添加する。添加においては、拡散法又はイオン注入法を用いることができる。
【0062】
不純物を添加後、熱処理(アニール)を行うことで、不純物を活性化させると共に、半導体層3内部において拡散させる。アニール温度は900℃を用いることができる。不純物が添加されない第1領域R1における不純物濃度は1×1013/cm以上1×1018/cm未満とし、不純物が添加される第2領域R12、半導体領域R1M,R2Mにおける不純物濃度は1×1018/cm以上1×1020/cm以下に設定する。
【0063】
不純物が添加された後は、HF水溶液によってマスクを除去し、半導体層3の表面を洗浄する。すなわち、半導体層3の表面の付着物、有機物、酸化膜を除去する。アセトンなどの有機溶剤を用いた洗浄や、RCA洗浄、HF水溶液を適用することができる。RCA洗浄では、フッ酸水溶液(HF)を露出表面に接触させた後、アンモニア(NHOH)+過酸化水素(H)を露出表面に接触させ、次に、塩酸(HC1)+過酸化水素(H)を露出表面に接触させ、最後に純水で洗浄を行う。
【0064】
製造においては、かかる不純物添加の後、半導体層3上の各層を順次形成する。半導体層3上に絶縁層5A、5Bの元となる初期絶縁層を形成し、続いて、強磁性層を初期絶縁層上に形成し、必要に応じて、反強磁性層やバリア層を強磁性層上に形成する。これらの形成には、MBE法を用いることができる。例えば、半導体層3上に、MgO層、Fe層,Ti層、Ta層を順次形成する。しかる後、基板(ウェハ)の洗浄を行う。
【0065】
更に、半導体層3の平面形状が長方形となるように、フォトリソグラフィを用いて、長方形マスクを半導体層3上に形成し、長方形となる半導体層3の周囲のSiを、HF水溶液を用いてウェットエッチングして除去する。なお、半導体層3の周辺のSiを除去する前に、半導体層3上の各層は、イオンミリングやRIEなどのドライエッチングを用いて除去することができる。しかる後、整形された半導体層3の露出側面を酸化し、酸化膜を半導体層3の側面に形成し、これを絶縁層IS1とする。
【0066】
次に、露出した強磁性層(バリア層)上に、フォトリソグラフィによってマスクを形成する。このマスクは、強磁性層1,2の形成予定領域の周辺が開口した形状とする。更に、このマスクを用いて、強磁性層をミリング或いは反応性イオンエッチングなどのドライエッチングあるいはウェットエッチングにより除去し、強磁性層1,2を残留させる。このときのエッチングは、初期絶縁層が少なくとも露出するまで行うが、半導体層3が露出するまで行ってもよい。
【0067】
さらに、半導体層3上に電極形成予定領域が開口したマスクをフォトリソグラフィにより形成し、スパッタ法などにより、開口内に参照電極1,2を形成した後、マスクを除去する。参照電極1,2が半導体層3に接触するように、形成予定領域に初期絶縁層が存在している場合には、フォトリソグラフィによるパターニングを用いて、かかる領域における初期絶縁層を除去しておく。次に、半導体層3の露出表面及び強磁性層1、2の側面上に絶縁層IS2を更に形成する。
【0068】
電極パッドP1、P2、P1M,P2Mをスパッタ法又は蒸着法により、絶縁層4上に形成し、更に、配線W1、W2、W1M、W2Mをスパッタ法又は蒸着法により形成し、電極パッドP1、P2、P1M,P2Mと各層1,2,1M,2Mを配線W1、W2、W1M、W2Mによって電気的に接続する。これによりスピン伝導素子が完成する。スピン伝導素子における不純物添加領域は、添加時のマスク形状を変更することで、変えることができ、また、必要に応じて、スピン伝導素子の周囲に磁気シールドを形成することができる。磁気シールドの形成には、スパッタ法などを用いることができる。
【0069】
次に、上記スピン伝導素子において、不純物濃度分布のみを変更した例について、図5〜図8を用いて説明する。
【0070】
図5は、図2とは異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。この不純物濃度分布は、図2に示したスピン伝導素子において、熱処理を行うことで、内部の不純物を半導体層3内で拡散させたものであり、Y軸方向に沿って、不純物の分布領域が広がっている。
【0071】
上述の第2領域R12は、第1及び第2強磁性層1の直下領域に重複するように、Y軸方向に広がっている。また、元々の電極直下の半導体領域R1M,R2Mの不純物も、Y軸方向に若干拡散し、これらの不純物濃度分布のY軸方向の寸法が広がっている。半導体領域R1M,R2Mの不純物濃度分布は、大きく広がらなくてもよい。
【0072】
すなわち、第2領域R12は、半導体層3における、第1及び第2強磁性層1,2の直下の領域を一部分含んでいる。この場合、これらの直下の領域においてもスピン抵抗が低下し、スピン流が流れやすくなるため、第2強磁性層2に至るスピン流Sp2が増加し、出力を向上させることができる。
【0073】
図6は、更に異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【0074】
本例では、図2に示したものと比較して、第2領域R12を、第2参照電極側の半導体領域R2Mまで広げたものである。この場合においても、第1強磁性層1から第2強磁性層2に至るまでの第2領域R12の不純物濃度は、第1領域R1の不純物濃度よりも高いので、第2強磁性層2側に流れるスピン流Sp2は、第1参照電極1M側に流れる電流よりも多くなる。また、第2領域R12が、上記の如く広がった場合には、電圧ノイズが小さいという効果がある。
【0075】
図7は、更に異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【0076】
本例では、図6に示したものと比較して、各電極(第1強磁性層1、第2強磁性層2、第1参照電極1M、第2参照電極2M)の直下に全て不純物を添加したものである。なお、参照電極1M,2Mの直下においては、前述の例においても、不純物は添加されていたので、便宜上、これらの領域に関しては、参照電極1,2直下の浅い領域をR1M’、R2M’とし、深い領域をR1M,R2Mとする。浅い領域R1M’、R2M’と、深い領域R1M,R2Mの不純物濃度は同一であってもよいが、スピン抵抗が表層側で小さくなるように、浅い領域R1M’、R2M’の不純物濃度を、深い領域R1M,R2Mの不純物濃度よりも相対的に増加させることもできる。これにより電極1M,2Mと半導体層3の電気的整合を容易にとることができる。
【0077】
また、第1強磁性層1の直下の浅い領域をR121、第2強磁性層2の浅い領域をR122とすると、これらの領域よりも深い領域に位置する第2領域R12よりも高い不純物濃度とすることができる。もちろん、領域R12、R121、R122の不純物濃度は同一であってもよい。第1及び第2強磁性層1,2の直下の領域においてもスピン抵抗が低減されているので、多くのスピン流Sp2を第2強磁性層2の方向へ流すことができる。すなわち、第2領域R12は、半導体層3における、第1及び第2強磁性層1,2の直下の領域を全て含んでいるので、これらの直下の領域においてもスピン抵抗が低下し、スピン流が流れやすくなるため、第2強磁性層2に至るスピン流Sp2が増加し、出力を向上させることができる。
【0078】
図8は、更に異なる不純物濃度分布を有するスピン伝導素子の断面構成を示す図である。
【0079】
本例では、図7に示したものと比較して、不純物が添加されていない表層の領域をエッチングなどで除去するか、或いは、不純物が添加された浅い半導体領域R1M、R2M、R121、R122を、元々の半導体層3上にエピタキシャル成長したものである。この構造の場合、半導体層3の表層に低濃度領域がないため、かかる領域を伝播するスピン流がなくなり、スピン流Sp2の第2強磁性体2の方向への伝達効率が高くなる。なお、エッチングにはウェットエッチングの他、ミリングや反応性イオンエッチングなどのドライエッチングを用いることができ、また、エピタキシャル成長には、従来から知られるスパッタ法やCVD法を用いることができる。
【0080】
図9は、上述の基本構造を有すると共に、磁気センサとして機能するスピン伝導素子の斜視図である。電極パッドP1,P2,P1M,P2Mは、半導体層3を境界として同一の側に配置されており、これらの電極パッドP1,P2,P1M,P2Mとは逆側には、半導体層3は突出部3Bを有している。この素子の電気的な接続は、図2に示した通りである。
【0081】
半導体3は、本体部3Aと突出部3Bとを備えている。本体部3Aの形状はY軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とし、Z軸方向を厚み方向とする四角錐台或いは直方体である。突出部3Bの平面形状は、四角錐台或いは台形柱であり、平面視では、媒体対向面側の大きさが小さくなった台形である。この台形は、媒体対向面とXY平面との交線を上底とし、また本体部に連続しているため実際には下底はないが、仮想的には本体部3Aとの境界線を台形の下底とみなすことができる。突出部3Bは、磁気記録媒体に対向する部位であり、かかる箇所を通じて、半導体層3内に磁場Bが導入される。
【0082】
半導体層3内に磁場が導入されると、第1強磁性層1から強磁性層2に向かうスピン流Sp2は、磁場Bの影響を受け、スピンの向きが回転する。スピンの向きの回転量は、磁場の大きさに比例し、出力電圧は、回転したスピンの磁化方向と第2強磁性層2の磁化方向と一致するので、出力電圧は、間接的に磁場Bの大きさを計測していることになる。
【0083】
また、ベース基板10Aには、半導体層3の長手方向を囲むように、磁気シールドSHが設けられており、突出部3Bのみが磁気シールドSHを貫通して、磁気記録媒体に対向している。ここで、ベース基板10AをSiからなることとし、絶縁層4をAlなどとし、半導体層3を絶縁層4上にエピタキシャル成長したSi層とすると、この基板はSOI(Silicon on Insulator)基板を構成することとなる。SOI基板では、半導体層3の厚みを薄く設定することがでるので、通常の半導体基板のような深い位置の影響が少なく、ノイズが減少するという利点がある。半導体層3の厚みは、ノイズを抑制するという観点から、0.4nm以上70nm以下であることが好ましいが、これよりも大きな値、例えば100nmとすることも可能である。なお、ベース基板10Aを磁気シールド材料から構成することもできる。
【0084】
なお、不純物濃度分布については、上述の例(図1〜図8)のものと同じであるが、突出部3Bにおいては、スピン流Sp2を第2強磁性層2に向かわせる位置に存在していないので、格段に不純物を添加する必要はなく、不純物添加前の低不純物濃度の状態、すなわち上述の第1領域R1と同じ濃度でよい。
【0085】
ここで、半導体層3は、絶縁層4上に成長したエピタキシャル層からなるが、これはバルクから切り出した単一ドメインの結晶層からなる半導体膜を、絶縁層4に貼り付けることにより、構成することもできる。
【0086】
図10は、単一ドメインの半導体結晶層を半導体層3として用いたスピン伝導素子の斜視図である。
【0087】
図10に示すスピン伝導素子は、図9に示したベース基板10Aと絶縁層4との間に、磁気シールド10B及び絶縁層10Cが設けられ、半導体層3として単一ドメインの半導体結晶層を用いた点のみが、図9に示した磁気センサと異なり、その他の構成は、図9に示したものと同一である。なお、説明において、磁気シールドSHの詳細構造は、図23を参照する。また、この素子の電気的な接続は、図2に示した通りである。
【0088】
この磁気センサは、ベース基板10と、ベース基板10に絶縁膜4を介して貼り付けられた単一ドメインのバルクの結晶層からなる半導体層3とを備えている。ベース基板10は、下部ベース基板10A、下部磁気シールド10B、及び、上部ベース基板10Cを積層してなる。半導体層3における絶縁膜4とは反対側の表面上には、第1トンネル障壁層5Aを介して第1強磁性層1が形成されており、同様に、半導体層3における絶縁膜4とは反対側の表面上には、第2トンネル障壁層5Bを介して第2強磁性層2が形成されている。
【0089】
図23に示されるように、ベース基板10の外側からの磁場の半導体層3への導入は、磁気シールド10Bにより抑制され、媒体対向面側からの磁場の半導体層3への導入は、磁気シールドSH1により抑制され、ベース基板10の磁気シールド10Bとは逆側からの半導体層3への磁場の導入は、磁気シールドSH2により抑制される。
【0090】
ここで、本例の半導体層3は、絶縁層上への薄膜成長によって形成されるのではない。半導体層3は、CZ(Czochralski)法あるいはFZ(Floating Zone)法により作製された単結晶インゴッドをスライスして切り出したものを用いる。半導体層3は、必要に応じて、貼り合わせ後に研磨を行うことで、薄膜化することができる。すなわち、半導体層3を、単一ドメインの単結晶から製造するように、絶縁層上への結晶成長を用いず、別の工程において、半導体層3を作製しておき、これをベース基板10に絶縁膜4を介して貼り付ける。別工程としては、例えばMBE法を用いた結晶成長法を用いることができる。
【0091】
バルクの半導体結晶層の結晶性は、絶縁膜上への薄膜成長を用いて形成したものの結晶性よりも高くなる。したがって、この半導体層3をスピン伝導層として利用すれば、スピン伝導特性が改善し、出力の向上、磁場解像度の向上及び素子作製における制約が緩和される。
【0092】
第1強磁性層1と第2強磁性層2との間に電子を流した場合、そのスピンが上記磁場Bにより回転し、出力が変動するが、半導体層3は単一ドメインのバルク結晶からなるので、その結晶性は、結晶成長により作製したSOI基板の場合の半導体の結晶層よりも高くなる。したがって、スピン伝導特性を改善することができ、より精密な計測を行うことができる。
【0093】
この構造のスピン伝導型磁気センサでは、X軸の負方向側のYZ平面が、媒体対向面(ABS)を構成している。媒体対向面が対向する磁気記録媒体から、突出部3Bを介して半導体層3のチャネルである本体部3A内に磁場Bが導入される。半導体の結晶層本体部3Aにおいて、スピンの偏極が回転する。
【0094】
したがって、出力電圧は、半導体層3内に導入された磁場の大きさに依存することとなり、磁気センサとして機能する。ここで、半導体の結晶層はバルクからなるので、その結晶性は、結晶成長により作成したSOI基板の場合の半導体の結晶層の結晶性よりも高い。したがって、スピン伝導特性を改善することができ、より精密な計測を行うことができる。
【0095】
このように、半導体層3は、磁気ヘッドにおける媒体対向面側に先端部が位置する突出部3Bを有している。この場合、突出部3Bを介して、上記磁場Bを半導体層3内部に導入することができる。
【0096】
特に、突出部3B以外の半導体層3である本体部3Aは、磁気シールドSH(10Bを含む)によりY軸まわりに囲まれており、磁場の影響を受けにくくなっている。すなわち、この磁気センサは、突出部3Bが内部に位置する貫通孔TH(図23参照)を有する磁気シールドSH1(SH)を更に備えており、この貫通孔THは、半導体層3における第1強磁性層1と第2強磁性層2との間の領域の側方(X軸負方向)に位置している。媒体対向面における貫通孔THの一辺の長さ(Y軸方向の長さ)を例えば0.005μm〜0.1μmとし、他辺の長さ(Z軸方向の長さ)を例えば0.001μm〜0.1μmとすることができる。半導体層3の側方には磁気シールドSH(特に側部磁気シールドSH1:図23参照)が位置しているため、突出部3B以外からは磁場が内部に導入されず、正確な測定が可能となる。
【0097】
次に、磁気シールド等の材料について説明する。
【0098】
下部ベース基板10Aは、AlTiC、Al又はSiなどの半導体のように絶縁性の高い材料からなる。
【0099】
下部磁気シールド10Bを含む磁気シールドSHの材料は、例えばNi及びFeを含む合金、センダスト、Fe及びCoを含む合金、Fe、Co、及びNiを含む合金等の軟磁性体材料からなり、一例としてはNiFeからなる。なお、側部に立設された側部磁気シールドSH1のZ軸方向の厚みは、半導体層3の厚みよりも大きく、例えば0.02μm〜1μmである。同様に上部磁気シールドSH2と、下部磁気シールド10BのZ軸方向の厚みも、それぞれ0.02μm〜1μmである。
【0100】
上部ベース基板10Cは、下部磁気シールド10B内に埋め込まれた絶縁層からなり、SiO、SiNx、MgO、又はAlなどを用いることができる。なお、下部磁気シールド10Bは、上部ベース基板10Cの下面に接触する第1磁気シールド10B1と、側面に接触する第2磁気シールド10B2からなり、XZ断面の形状はL字型である。
【0101】
半導体層3の厚みは、0.4nm以上70nm以下である。この場合、バックグラウンド電圧を低く抑えることができるという利点がある。半導体層3の厚みが薄すぎる場合には、単結晶の膜として存在できないという課題があるため、これは0.4nm以上であることが好ましい。すなわち、磁気センサにおいて、半導体層3の厚みを薄くすることには利点がある。従来のSOI基板のように、絶縁層上に半導体の結晶層を結晶成長させた場合、薄くしすぎると、半導体の結晶層の結晶性が十分ではない。一方、バルクの半導体層3を用いた場合には、厚みを薄くしても、高い結晶性を有しているので、十分にノイズを低下させることができる。
【0102】
次に、磁気センサの製造方法について、図11〜図23を参照して説明する。
【0103】
まず、図11に示すように、下部ベース基板10Aを用意する。本例では、下部ベース基板10Aは、AlTiCからなることとする。同図では、長方形で板状の下部ベース基板10Aが示されているが、これは最終的にダイシングを行った後の形状であり、実際に最初に用意される基板は直径6インチのウェハである。また、下部ベース基板10Aとして、SOI基板を用いることも可能である。この下部ベース基板10Aに適当なアライメントマークを形成しておき、これを以後のパターニングの基準として使用する。
【0104】
次に、図12に示すように、下部磁気シールド10Bとなる磁性層10B’を下部ベース基板10A上に形成する。この磁性層10B’は、軟磁性体からなり、例えば、NiFeからなる。形成方法としては、スパッタ法などを用いることができる。
【0105】
しかる後、図13に示すように、磁性層10B’を、そのXZ断面がL字型となるように加工し、Y軸に平行に延びた境界線を有する段差を形成する。この加工には、Arを用いたイオンミリング法又は公知の反応性イオンエッチング(RIE)法を用いることができる。
【0106】
次に、図14に示すように、絶縁体からなる上部ベース基板10Cを、下部磁気シールド10Bの上面の全面上に形成した後、XY平面に平行な研磨面を有する研磨部材を用いて、絶縁体からなる上部ベース基板10Cを、第2磁気シールド10B2の表面が露出するまで化学機械研磨(CMP)し、露出表面を平坦化する。
【0107】
次に、貼り合わせ用のバルクの結晶層からなる半導体層(半導体基板)3を用意する。この半導体層3は、FZ法あるいはCZ法で作製された単結晶半導体基板であり、本例ではSiである。この半導体層3(例:厚さ100nm)の表面を熱酸化することで、表面にSiOからなる絶縁層4(例:厚さ20nm)を形成する。絶縁層4の形成方法はスパッタ法や化学的気相成長(CVD)法を用いてもよい。この半導体層3は必要に応じてダイシングして適当な大きさに加工され、図15に示すように、前述のベース基板10の表面に貼り付ける。
【0108】
ベース基板10の最表面には絶縁体からなる上部ベース基板10Cが位置しており、半導体層3の表面には絶縁層4が形成されている。したがって、これらの絶縁体を接触させて、熱と圧力を加えることで、ベース基板10に、半導体層3が固定される。
【0109】
更に、半導体層3の露出表面を洗浄する。この洗浄には、いわゆるRCA洗浄を用いることができる。RCA洗浄では、フッ酸水溶液(HF)を露出表面に接触させた後、アンモニア(NHOH)+過酸化水素(H)を露出表面に接触させ、次に、塩酸(HC1)+過酸化水素(H)を露出表面に接触させ、最後に純水で洗浄を行う。ここで、上述の不純物添加を行う。
【0110】
すなわち、不純物添加予定領域のみが開口したマスク(SiO)を半導体層3上にパターニングし、このマスクを介して、半導体層3内に不純物を添加する。添加においては、拡散法又はイオン注入法を用いることができる。不純物を添加後、熱処理(アニール)を行うことで、不純物を活性化させると共に、半導体層3内部において拡散させる。アニール温度は900℃を用いることができる。不純物が添加された後は、HF水溶液によってマスクを除去し、半導体層3の表面を洗浄する。製造においては、かかる不純物添加の後、半導体層3上の各層を順次形成する。
【0111】
しかる後、半導体層3の表面上に、分子線ビームエピタキシー(MBE)法を用いて、トンネル障壁層5としてMgO(1nm〜1.5nm)を形成し、続いて、トンネル障壁層5上に、Fe(5nm〜10nm)を形成し、この上にTi層(3nm)を形成し、更に、スパッタ法を用いて、この上にCoFe層、Ru層、CoFe層を順次形成して、強磁性層6(パターニング整形後に強磁性層1,2となる)を形成する。更に、必要に応じて、強磁性層6を構成する最表面のCoFe層上に反強磁性層(IrMn)を形成し(図26参照:反強磁性層1AF,2AF)、更に、Ru層及びTa層をバリア膜BRとして反強磁性層上に形成する(図26参照)が、構造の明瞭化のため図15には図示していない。
【0112】
次に、強磁性層6の磁化方向を固定するため、磁場下でのアニールを行う。例えば、Y軸負方向に磁化方向を固定することとする。
【0113】
次に、図15に示すように、フォトレジストを塗布してからこれのパターニングを行い、強磁性層6(バリア層)上にマスクR1を形成する。このマスクR1を用いて、マスクR1で被覆されていない各層6、5、3の領域をイオンミリングして除去し、図16に示すように、絶縁層4を露出させる。なお、イオンミリングと併用して化学的なエッチングを用いることもできる。
【0114】
しかる後、露出した半導体層3の側面を被覆する絶縁層IS1(厚さ20nm:図2〜図4参照)を形成してから、マスクR1を除去する。
【0115】
次に、図16に示すように、フォトレジストを塗布してからこれのパターニングを行い、強磁性層6(バリア層)上に第2のマスクR2を形成する。このマスクR2は、X軸方向に延びた一対の領域からなる。マスクR2を用いて、強磁性層6(バリア層)の露出領域を、イオンミリングあるいは化学的なエッチングによって、トンネル障壁層5或いは半導体層3が露出するまで除去し、露出した半導体層3を被覆する絶縁層IS2(厚さ20nm:図2〜図4参照)を形成してから、次に、マスクR2を除去する。
【0116】
図17に示すように、ここで残留した強磁性層を、第1強磁性1及び第2強磁性層2とする。スピン流型の検出を行う場合、図18に示すように、露出した半導体層3の表面上に、それぞれ第1電極1M及び第2電極2Mを形成する。この形成には、スパッタ法や蒸着法を用いることができる。なお、電極形成予定領域に、トンネル障壁層あるいは絶縁層が露出して残留している場合には、これらの領域のトンネル障壁層或いは絶縁層をフォトレジストを用いたパターニングとエッチングによって除去する。
【0117】
更に、図19に示すように、ベース基板10上の半導体層3から離間した適当な位置に、蒸着法などで4つの電極パッドP1,P2,P1M,P2Mを形成する。次に、これらの電極パッドP1,P2,P1M,P2Mと、上記第1強磁性層1、第2強磁性層2、第1電極1M、第2電極2Mを、それぞれ配線W1,W2,W1M,W2Mを用いて接続する。すなわち、配線W1,W2,W1M,W2Mの一端部は、図19に示すように、各層1、2、1M、2Mに電気的及び物理的に接続される。
【0118】
次に、図20に示すように、リフトオフプロセスを用いて、強磁性電極1,2及び電極1M,2Mの媒体対向面側の表面を覆うように、厚さ20nmの絶縁膜PFをこれらの上に形成する。これは強磁性層1,2及び電極1M,2Mが、次のプロセスで側部磁気シールド層SH1と電気的に接触することを防ぐためであり、絶縁膜PFは例えばSiOからなる。
【0119】
次に、図21に示すように、Y軸に沿って延びた側部磁気シールド層SH1によって、突出部3B形成領域以外の媒体対向面側の絶縁膜4の表面を被覆する。側部磁気シールド層SH1は、第2磁気シールド10B2上に、絶縁膜4を介して形成される。側部磁気シールド層SH1の形成においては、この形成領域のみが開口したマスクパターンをフォトレジストで基板表面上に形成し、開口内に側部磁気シールドを構成する軟磁性材料を堆積し、しかる後、フォトレジストを除去すればよい。軟磁性材料の堆積にはスパッタ法を用いることができる。
【0120】
次に、図22示すように、必要に応じてスペーサとしての絶縁膜SPを、スパッタ法を用いて露出した基板表面上に形成し、絶縁膜SPで各種配線を被覆し、絶縁膜SPの露出表面を化学機械研磨し、平坦化する。このとき、側部磁気シールドSH1と絶縁膜SPのZ軸方向の高さが同じになることが好ましい。
【0121】
次に、図23に示すように、側部磁気シールドSH1と絶縁膜SPのZ軸正方向の露出表面上に、上部磁気シールドSH2を形成する。この形成には、スパッタ法を用いることができる。以上の工程により、磁気センサが完成する。なお、上述の各磁気シールド10B、SH1,SH2は、磁気シールド層であり、一定の厚みを有している。
【0122】
図24は、磁気センサを備えた磁気ヘッドの縦断面図である。
【0123】
磁気記録媒体20は、記録面20aを有する記録層20bと、記録層20bに積層される軟磁性の裏打ち層20cとを含んで構成されており、図24中Z軸方向で示す方向に、薄膜磁気記録再生ヘッド100Aに対して相対的に進行する。薄膜磁気記録再生ヘッド100Aは、磁気記録媒体20から記録を読み取る読取ヘッド部100aの他に、磁気記録媒体20への記録を行う記録ヘッド部100bを備えている。読取ヘッド部100a及び記録ヘッド部100bは、支持基板101上に設けられており、アルミナ等の非磁性絶縁層INSにより覆われている。
【0124】
上述の磁気センサは、磁気ヘッド内に組み込まれ、読取ヘッド部100aを構成している。支持基板101上に、磁気センサが読取ヘッド部100aとして形成されており、その上に絶縁層INSを介して、書き込み用の記録ヘッド部100bが形成されている。記録ヘッド部100bにおいて、リターンヨーク30上にコンタクト部32及び主磁極33が設けられており、これらが磁束のパスを形成している。コンタクト部32を取り囲むように薄膜コイル31が設けられており、薄膜コイル31に記録電流を流すと主磁極33の先端から磁束が放出され、ハードディスク等の磁気記録媒体20の記録層20bに情報を記録することができる。
【0125】
なお、強磁性層の磁化方向は、上述のように、スピン流のみを用いる非局所配置の場合であっても、磁気抵抗効果を用いる場合であっても、どのような向きであっても使用することが可能であり、前者の非局所配置の場合には、磁化方向を平行とする場合と、反平行とする場合において、出力結果に差は生じないが、製造段階においては、同一方向に磁場をかけて強磁性層を加熱することで、磁化方向を平行とする方が容易であるため、第1及び第2強磁性層の磁化方向は平行であることが好ましい。一方、後者の磁気抵抗効果を用いる配置の場合には、第1及び第2強磁性層の磁化方向を反平行とした方が、平行とした場合よりも、大きな出力を得ることができるので、好ましい。
【0126】
また、第1強磁性層及び第2強磁性層の磁化方向は、これらの形状異方性(アスペクト比を高くする)か、あるいは反強磁性膜と強磁性層とを交換結合することで、固定することができる。また、半導体層3におけるスピン緩和時間は1nsec以上である。
【0127】
以上、単一ドメインの結晶層をスピン伝導チャネルとして用いた場合、Si以外の材料の場合においても、スピン伝導特性を改善することができるが、特に、Siなどの立方晶のダイヤモンド構造や、GaAsなどの閃亜鉛鉱構造の半導体は、良質なバルク結晶が数多く製造され、市販されているため、チャネル材料としては好ましい。
【0128】
以上、説明したように、上述のスピン伝導素子においては、半導体層3内において、均一にスピンを拡散させるのではなく、半導体中の不純物濃度を非対称に分布させることにより、半導体層3中に注入されたスピンの分流効果を抑制して、原理的には最大2倍の出力を得ることができる。
【0129】
図25は、スピン伝導素子を用いたスピン電界効果トランジスタ(FET)を示す図である。
【0130】
このスピンFETは、図1〜図8に示したスピン伝導素子における主要部(基板10A、絶縁層4、半導体層3、第1、2トンネル障壁層5A、5B、強磁性層1,2)を同様に備えている。ここで、半導体層3はP型に設定されており、これにN型の不純物が添加されたソース領域S及びドレイン領域Dが形成されている。上述のトンネル障壁層5A、5Bは、それぞれ半導体層3のソース領域S及びドレイン領域D上に形成され、それぞれのトンネル障壁層5A,5B上に、強磁性層1,2が形成されている。第1及び第2強磁性層1,2間における半導体層3の電位を制御するため、これらの間の領域上にはゲート絶縁膜IGを介してゲート電極Gが形成されている。
【0131】
ソースSからドレインDに流れるスピン偏極した電子流eの量は、ゲート電圧によって制御することができるが、このときのスピン流Sp2も大きくなるように、第1強磁性層1と第2強磁性層2との間の第2領域R12にN型の不純物が添加してあり、これとは逆側の第2領域R1には不純物は意図的には添加していない。また、第2強磁性層2は、フリー層とされており、図示しない外部磁場又はスピン注入構造により、その磁化方向を制御することができる。フリー層の磁化方向を制御することで、このフリー層内に流れ込む電子量を制御することができる。
【0132】
このトランジスタは、低濃度の不純物がゲート直下に添加されているため、ノーマリオンのトランジスタとして機能するが、ゲート電圧の印加によって、その電子量を調整することができる。また、上述のスピン伝導デバイスは、磁気センサ、スピントランジスタの他、メモリや論理回路にも応用することが可能と考えられる。
【0133】
なお、第1及び第2強磁性層1,2は、X方向とY方向のアスペクト比の違いによって反転磁場の差をつけることができる。
【符号の説明】
【0134】
3…半導体層、5A…第1トンネル障壁層、1…第1強磁性層、5B…第2トンネル障壁層、2…第2強磁性層、R1…第1領域、R12…第2領域。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層上に第1トンネル障壁層を介して設けられた第1強磁性層と、
前記半導体層上に、前記第1強磁性層から離間し、且つ、第2トンネル障壁層を介して設けられた第2強磁性層と、
を備え、
前記半導体層は、
前記第1強磁性層からその厚み方向に垂直な方向に沿って、前記第1強磁性層から離れる方向へ広がる第1領域と、
前記第1強磁性層からその厚み方向に垂直な方向に沿って、前記第2強磁性層に向かう方向に延びており、前記第1領域の不純物濃度よりも相対的に高い不純物濃度を有する第2領域と、
を備えることを特徴とするスピン伝導素子。
【請求項2】
前記第2領域は、前記半導体層における、前記第1及び第2強磁性層の直下の領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のスピン伝導素子。
【請求項3】
前記半導体層上における、前記第1及び第2強磁性層間の領域の外側の領域に設けられた第1参照電極と、
前記半導体層上における前記外側の領域に設けられた第2参照電極と、
前記第1強磁性層と前記第1参照電極との間に接続される電子流源と、
前記第2強磁性層と前記第2参照電極との間に接続される電圧検出回路と、
を備え、
前記第1強磁性層と前記第1参照電極との間に、前記第1領域が位置している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスピン伝導素子。
【請求項4】
前記第1領域における不純物濃度は1×1013/cm以上1×1018/cm未満であり、
前記第2領域における不純物濃度は1×1018/cm以上1×1020/cm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピン伝導素子。
【請求項5】
前記第1及び第2トンネル障壁層は、それぞれMgO、Al、SiO、ZnO、又は、MgAlからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のスピン伝導素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−227439(P2012−227439A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95423(P2011−95423)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】