ソース、ドレイン、及びゲートを有する電気機械的ナノチューブトンネル装置
本発明は、長手方向及び横方向の延長部を有するナノチューブと、ナノチューブの少なくとも第1部分を支持する構造と、その横方向の延長部によって定義されている第1方向においてナノチューブに対して力を作用させる第1手段と、を有するナノチューブ装置(100)に関するものである。ナノチューブの少なくとも第2部分は、力が一定のレベルを超過した際に、ナノチューブの第2部分がその横方向の延長部の方向において曲がり、これによって第1電気回路を閉じるように、構造の支持部を超えて突出している。好適には、力をナノチューブに対して作用させる第1手段は、電気的な手段であり、この力は、電圧をこの手段に印加することによって生成される。本装置は、ソース及びドレイン電極の両方において量子力学トンネル現象を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーコンポーネントに関するものであり、更に詳しくは、コンポーネントを通じた小電流の流れに影響を与える手段を具備したナノ電気機械的コンポーネントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーは、拡大している研究分野であり、これには、NEMS(NanoElectroMecanical System)の開発が含まれている。NEMSは、ナノメートル程度の長さのスケールを有するシステム内における、電気機械的な結合に基づいている。これらのシステムの小さな長さのスケールにより、高い固有の機械的周波数を実現可能であり、GHzレンジの電気機械的な共振が可能である。これらの共振を使用することにより、ナノメートルのスケールにおいて高周波電子コンポーネントを設計可能である。
【0003】
本発明は、「A Nanomechanical Relay Device」という名称の国際特許出願PCT/SE02/00853号に提示されているシステムの更なる拡張であり、発明者中の3名を共通としており、オリジナル又は変更されたもののいずれかを内蔵するコンポーネント及び高周波数における動作設計に関するものである。先行技術には、Infineon Technologies AG社に発行された独国特許公開第DE1004315号及び国際特許公開第WO 0161753A1号も含まれている。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、ナノ電気機械的装置である。この装置は、ナノチューブを有しており、これは、好ましくは、導電性ナノチューブであり、好適には、カーボンナノチューブである。
【0005】
本装置は、例えば、シリコン(Si)などの非導電性材料から製造された非導電性の支持構造を更に含んでおり、この支持構造は、ナノチューブの少なくとも第1部分を支持して、ナノチューブの別の第2部分は、支持構造を超えて突出し、従って、支持されてはいない。ナノチューブの支持されている第1部分は、特殊な特性を具備したソース/チューブ接続によって電極に接続されており、以下においては、この電極をソース電極と呼ぶこととする。
【0006】
このソース/チューブ接続は、導電性ソース電極と導電性ナノチューブ間におけるソースからチューブへの距離が量子力学現象(これは、具体的には、所謂トンネル現象であり、量子漏れとも呼ばれている)が発生可能なレンジ内にある接続である。
【0007】
又、本発明による装置は、トンネル現象の大きさを制御する手段をも提供している。この手段は、好ましくは、1つ又は複数のゲート電極を有している(詳細については、以下を参照されたい)。
【0008】
ソース/チューブ接合部におけるこのようなトンネル接触の提供は、・ナノチューブ内における電子の正確な数の制御が可能であり、且つ、・電位が一様になる前に、ナノチューブ内にトンネリングされたすべての新しい更なる量の電荷がナノチューブの特定の機械的な平衡位置に対応するようにシステムを考案可能であるという利点を具備している。この結果、ある種の「ステッパモーター」として使用可能な正確な搬送メカニズムが得られる。
【0009】
支持構造は、好適には、台地として成形されており、従って、「階段」状の構造を具備し、上部レベルと下部レベルを有しており、これら2つのレベルが支持構造の壁状の形状によって相互接続されている。壁の高さによって定義される構造の2つのレベル間の高さの差は、文字hによって表記される。尚、本明細書における「レベル」という用語の使用は、装置の水平又は垂直のいずれかの向きにおいて好ましくは階段状の形態を構造に付与する寸法における差を意味していることに留意されたい。
【0010】
構造の下部レベルには、複数の追加電極が配置されており、この中のいくつかは、ゲート電極と呼ばれ、その他のものは、ドレイン電極と呼ばれる。ゲート電極は、壁の最も近い部分に対する距離LGに配置されており、ドレイン電極の対応する距離は、LDと表記され、ここで、LGは、好適には、LDよりも小さい。
【0011】
ナノチューブの突出部の合計延長は、好ましくは、50〜150nmのインターバル内にあり、好適には、約100nmのレベルにあり、高さhは、略3nmのサイズのレベルにある。
【0012】
ゲート電極に電圧が印加された際に結果的に得られる容量性の力は、ゲート電極に向かう方向においてナノチューブに対して作用することになり、従って、この方向は、ナノチューブの横方向の延長部によって定義されている方向である。前述の力が作用した際に、ナノチューブは、ゲート電極に向かって偏向することになり、これにより、ナノチューブとドレイン電極間におけるチューブからドレインへの距離が減少する。偏向の量は、チューブの先端とドレイン電極間における距離が、非常に高いインピーダンスを有している距離から、トンネル現象が支配的である距離を経て、チューブの先端がドレイン電極に当接してインピーダンスが非常に低いゼロの距離にまで変化可能なものになっている。
【0013】
後述するように、異なる振幅及び周波数の電圧を印加することにより、本装置を制御してソース電極からチューブを通じてドレイン電極に流れるソース/ドレイン電流の様々な特性を付与可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照し、本発明について詳細に説明することとする。
【0015】
基本システムの図が図1に示されており、対応した等価回路が図2に示されている。長さLのナノチューブ又はナノウィスカー120(これは、好ましくは、導電性ナノチューブであり、好適には、カーボンナノチューブである)は、台地状の非導電性基板130上に配置されおり、この結果、先端部160は、移動自在であり、基端部170は、台地の相対的に高い(この「相対的に高い」という用語は、形状を意味しており、特定の空間的な向きを意味するものではない)部分上の台地状の非導電性基板130に対して堅固に接続されている。チューブ/ソース接触は、Δzs>0に対応したトンネル接合であるか、或いは、Δzs=0である場合に連続的な電荷転送を許容する接触であってよい。チューブ/ソース接触のインピーダンスは、Zによって表記され、ソース、ゲート、及びドレイン電極上の静電電位は、それぞれ、Vs、Vg、Vdと表記される。チューブ上の電位はVである。チューブの軸に沿った方向は、zと表記され、チューブの先端160は、z=Lに位置している。2つの追加電極(ゲート及びドレイン)が、それぞれ、zg<L及びzd=L+Δzにおいて、チューブの自由端の下に配置されている。比率zg/L=zrは、チューブの先端と比較したゲートの相対的な位置を付与しており、Δz≧0が、2つの動作モードを弁別している。「接触モード」は、Δz=0によって定義され、「非接触モード」は、Δz>>λの場合に発生し、ここで、λ≒0.5Åがトンネル長である。
【0016】
図3は、複数のゲート及びドレイン電極を具備した構造の様子を上から示している。
【0017】
図3aは、2つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極は、ナノチューブ120のそれぞれの側部の下に1つずつ配置されている。
【0018】
ドレイン電極dも、ナノチューブ120のそれぞれの側部の下であって、ゲート電極gよりもチューブの先端に近いところに1つずつ配置されている。この電極配置によれば、ナノチューブ120の振動モードの制御において相対的に大きな自由を実現可能である。
【0019】
図3bは、1つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極gは、ナノチューブ120の真下に配置されており、2つのドレイン電極dは、ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている。
【0020】
図3cは、2つのゲート電極gと1つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極は、ナノチューブ120のそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている。
【0021】
図3dは、4つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極gは、ペアとして正方形又は矩形の形態でナノチューブ120のそれぞれの側部に2つずつ配置されており。ドレイン電極dは、ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている。
【0022】
図3eは、2つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示しており、この場合には、ゲート電極gは、図3aと同様に配置されており、ドレイン電極dは、ナノチューブ120を超えたこのチューブ120の仮想的な延長線のそれぞれの側部に1つずつ配置されている。
【0023】
図3fは、2つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示しており、ゲート電極は、ナノチューブ120を基準として非対称に配置されている。
【0024】
図3a〜図3fの構成によれば、ナノチューブの振動モードの制御において相対的に大きく且つ異なる自由を実現可能である。これらの構成によれば、図1との関連において前述した偏向とは異なるチューブ120の延長部に対して直交する方向に移動を重畳可能である。
【0025】
チューブの先端は、電極の電圧を制御することによってチューブ上に過剰な電荷qを誘発することにより、ドレイン電極に向かって電気的に折り曲げ可能である。このチューブの先端の偏向は、基板に向かって垂直に計測され、これをxと表記する。接触モードにおいては、チューブは、x=hの際にドレイン電極と機械的に接触することになり、この場合に、hは、まっすぐなチューブから接触までの垂直距離である。非接触モードにおいては、チューブは、決して電極にまで到達しない。チューブの先端/ドレインの接触は、トンネル接合であり、チューブとドレイン電極間における距離を減少させることにより、トンネル抵抗RT(x,V)が減少し、接合上におけるトンネル電流Isdの流れが実現する。従って、動作の基本原理は、容量性結合によって障壁の幅を機械的に低減するというものであり、これがシステム内における電流に結びついている。
【0026】
換言すれば、図1は、長さLの導電性ナノチューブ又はナノウィスカーの一端が、上部に追加電極(ゲート及びドレイン)が(チューブの下に)配置された台地状の非導電性基板上に突き出た自由な状態にある様子を示している。チューブの他端は、ソース電極に電気的に接続されており、距離Δzsにより、ソース接合のトンネル抵抗を制御している。オーム接触は、Δzs=0の場合に可能である。まっすぐなチューブとゲート及びドレイン電極間における垂直の距離は、hであり、チューブの先端と電極間における水平距離は、Δzである。チューブの先端は、電極上の電圧によって垂直方向に距離xだけ偏向可能である。十分に大きな偏向は、チューブの先端からドレイン電極へのトンネル電流を実現するのに十分なだけ、トンネル抵抗を低減する。図2は、本システムの対応した等価回路を示している。破線内の部分は、図1のコンポーネントの等価回路であり、破線外の部分は、外部の部分である。以下においては、この「ボックス表記」を使用することとする。チューブ/ソース接合は、その上部を電荷qが流れるインピーダンスZを具備しており、チューブ/ゲート結合は、純粋に容量Cg(x)を有する容量性であり、チューブは、トンネル抵抗RT(x,V)及び容量Cg(x)を有するトンネル接合によってドレインに接続されている。確率論的なトンネル電流Isd(x,V)がチューブとドレイン電極間を流れている。
【0027】
(概論)
本システム内の電気的及び機械的な自由度の間には、強力な結合が存在している。本システムの形状は、電極上における静電電位に依存しており、電気的な特性は、本システムの形状に依存している。通常の接触モードシステムの場合には、ゲート電圧の関数としての平衡チューブ位置を図4Aから推定可能であり、これに対応した電流電圧特性が図4Bに示されている。非接触モードシステムにおける対応するプロットは、図5A及び図5Bに示されている。
【0028】
(複数のナノチューブ)
一実施例においては、このような構造を通じた可能な電流を増大させるべく、いくつかのナノリレーを互いに並列に配置している。
【0029】
(材料及び構造)
代替実施例においては、チューブ120は、カーボンナノチューブ、シリコンカーバイドナノチューブ、ナノワイヤ、又はナノウィスカーである。
【0030】
図4Aは、代表的な接触モードシステムにおける近距離表面力を有する及び有していない安定度図を示している。この曲線は、ゲート電圧(これは、一定のVs=0.01Vにおけるものである)及び偏向x(これは、hのものを単位としている)の関数としてチューブ上のゼロの真の力(又は、局所的な平衡)の位置を示している。大きな矢印は、曲線のそれぞれの側部における力の方向を示しており、これは、3つの平衡が存在している領域内において1つの局所的な平衡が不安定であることを示している。チューブを表面に向かって引っ張るのに必要な電圧(プルイン電圧)は、A(≒6.73V)によって付与される。この電圧は、表面力の大きな影響を受けない。表面に位置したチューブは、電圧が、図中の解放電圧B及びCを下回るまで、表面から離れない。A>B、Cであり、これは、IVg特性におけるヒステリシス動作(表面力によって大幅に機能拡張された特性)を示していることに留意されたい。図4Bは、図4Aの表面力を有する安定度のプロットに対応した電流電圧特性を示している。
【0031】
図5Aは、非接触モードシステムにおける安定度図を示している。矢印は、2つの領域内のチューブの先端上の力の方向を示している。この設計パラメータの組の場合に、それぞれの電圧ごとに観察されるのは、1つの平衡位置のみであり、システム特性は、ヒステリシスを具備していない。図5Bは、図5Aの安定度図に対応したソース/ドレイン電流対ソース/ゲート電圧特性を示している。
【0032】
図5Cは、本発明の別の実施例500の平面図を示している。この実施例500は、図1に示されている前述のものと類似したナノチューブを有しているが、支持している台地状の構造530が、第3レベル上に構造530’’を更に有しており、この第3レベル530’’は、第2レベル530’と基本的に平行であるが、ナノチューブ520の突出部の反対側上に配置されている。
【0033】
又、実施例500は、ソース510とナノチューブ520間における距離Δzsに起因してトンネルソース/チューブ接合をも有している。
【0034】
実施例500は、図1の装置のすべての特徴を基本的に有しており、力が特定のレベルを超過した際に、ナノチューブの第2部分が、その横方向の延長部の第2方向において曲がり、これにより、第2電気回路を閉じる(又は、この内部にトンネル接合を生成する)ように、その横方向の延長部によって定義されている第2方向においてナノチューブ520に対して力を作用させる第2手段540’を更に有している。この第2方向は、図5からわかるように、手段540’に向かう方向であり(この手段は、好ましくは、第2ゲート電極である)、ナノチューブ520の第2の突出部は、その横方向の延長部の第2方向において曲がり、これにより、第2電気回路を閉じる。この第2電気回路は、好適には、図1との関連で説明したソース電極510と、支持構造530の第3レベル530’’上に配置された第2ドレイン電極550’によって定義されている。
【0035】
第2ゲート及びドレイン電極は、台地状の構造の壁から、それぞれ、距離LG2及びLD2のところに配置されている。
【0036】
(近距離力)
近距離表面力(クーロン相互作用よりも強力な距離従属性を有する力)は、チューブが任意の時点で、ソース電極を含んでいない構造のいずれかの部分との機械的な接触から数ナノメートル以内に近接した場合に動作特性に影響を及ぼす。これらの力の主な真の効果は、ヒステリシスを増大させることにある。この結果、特に接触モード構造の場合に、メモリ要素が、非常に興味深いアプリケーションとなる。このようなメモリ要素は、例えば、「A Mechanical Relay Device」という名称の特許出願第PCT/SE02/00853号の3端子接触モードシステム又は5端子構造を使用することにより、揮発性又は不揮発性となるように設計可能である。この観点において、「揮発性」とは、ナノチューブが機械的な剛性を具備するように設計されており、この結果、この剛性に起因した機械的な力が、Vgがゼロに近くなった際にドレイン電極からナノチューブを解放する十分なものになっている実施例を意味している。この剛性は、例えば、短いナノチューブ又は大きな直径を有するナノチューブによって実現可能である。「不揮発性」とは、ドレイン電極からナノチューブを解放するために、電流パルスを印加して電極を加熱することが必要な実施例を意味している。このような電流パルスは、ソースに接続されたパルス生成装置から供給可能である。
【0037】
(高周波特性)
本装置の高い固有の機械的周波数を使用することにより、GHzレベルに到達する共振周波数を有するナノ電気機械的共振に基づいたコンポーネントを設計可能である。
【0038】
(電気機械的共振)
(接触モード)
図4A及び図5Aから推定可能なチューブの平衡位置は、合計チューブ電位の局所的な最小値によって判定される。機械的共振周波数は、電位の最小値近傍の合計電位の曲率によって判定される(調和近似法)。合計電位は、外部電位によって制御可能であるため、チューブの平衡位置と機械的な共振周波数は、いずれも、静電気的手段によって制御可能である。従って、共振周波数は、接触モードの装置の場合には、図6にプロットされているように、ゲート電圧の関数である。f*によって表記された最低機械共振周波数は、ゲート電圧バイアスをチューニングすることにより、数GHzにわたって変更可能である。共振を考慮する際には、非線形効果が重要である。これらの非線形効果は、主共振ピークの場所を変化させ、共振周波数の1/2又は2倍における共振を可能にする。これらの共振は、それぞれ、f*1/2及びf*2によって表記される。
【0039】
換言すれば、図6は、代表的な接触モードの最低共振周波数をゲート電圧の関数として示している。これらの値を電位プロファイルに対する調和近似法に基づいた予測と比較している。
【0040】
図7は、変調振幅δVの様々な値における変調周波数の関数として接触モードシステムの振動振幅(ピークツーピーク)を示している。振幅が小さい場合には、ラインの形状は、対称であるが、大きな振幅の場合には、形状が非対称であり、ピークの位置がシフトしている。
【0041】
高周波変調を接触モード構造のゲート電極に印加した場合には、2つの定性的な異なる結果を得ることができる。第1のケースにおいては、位相空間におけるシステムの軌跡が限度サイクルに接近し、この場合には、チューブは、決して表面に機械的に接触しないが、かなりの振幅で発振する。大きなチューブ/ドレインの離隔における非常に高いトンネル抵抗に起因し、本システムを通じたトンネル電流は無視可能である。但し、構造の形状が時間と共に変化するため、形状的な容量も変化し、チューブ上の電荷も、同一の周波数において時間的に変化する。この結果、機械的な発振周波数に対応した周波数を有するソース及びドレイン接点におけるAC変位電流が得られる。この場合のシステムの周波数応答が図8Aに示されており、is,eff=max(∂t/√2)として正弦波電荷転送を仮定することによって判定される変位電流の有効値is,effが挿入図に示されている。図示のように、共振には、変位電流の大きな変化が伴っている。第2のケースにおいては、発振振幅が十分に大きい場合に、本システムは、ある周波数レンジにおいてドレイン接点に衝突することになる。チューブとドレイン電極間における相互作用により、チューブは、そのエネルギーのいくらかを消失し、チューブは、表面近傍の静止状態にトラップされることになる。表面近傍の電位の最小値は、表面から離れた最小値に比較される高い周波数に対応しており、これは、ゲート変調周波数がもはや共振状態にはなく、接触位置におけるチューブに対するエネルギー転送が無効であることを意味している。装置は、変調の結果、その状態を変化させており、トンネル電流を実現可能である。チューブは、ゲート変調が除去された後にも、表面に存在することを継続することになる。従って、本システムは、組み込み型のメモリを具備しており、これは、特定の周波数レンジ内の変調が適用された場合に、記憶することになる。このケースにおける周波数スキャンが、図8Bに示されており、この場合には、共振周波数近傍の狭いインターバルにおいて、チューブは、最終的に接点の近傍に位置している。非ゼロのトンネル電流を取得するのは、この狭い領域内においてのみである。いずれのケースにおいても、1/2及び2倍の周波数に、明瞭に可視状態の共振が存在しており、且つ、主共振のラインの形状は非対称である。これらの特徴は、いずれも、二次の電位形状からの逸脱に起因している。
【0042】
換言すれば、図8は、ゲート電圧バイアス(a)Vg0=5V及び(b)Vg0=6Vとゲート電圧変調δV=0.1Vと周波数fmodにおいて安定状態にある接触モード構造における最大及び最小変位を示している。最大ピークは、共振周波数に対応しており、1/2及び2倍周波数のピークは相対的に小さい。図8Aの挿入図は、周波数の関数としてソース接合変位電流の振幅を示している。図8Bには、チューブが、いくつかの周波数において、状態を表面近傍の位置に切り替え、これにより、チューブからドレインへの非ゼロのトンネル電流を実現する方法が示されている(即ち、「状態の切り替え」とは、発振の振幅が周波数に依存しているため、チューブが、基板をヒットし、特定の周波数においてくっ付くことを意味している)。図8Bの挿入図は、有効変位電流Is,eff及びドレイントンネル電流Isdの両方を示している。
【0043】
(非接触モード)
接触モードの場合には、電位に対する調和近似法を使用して特定のゲート電圧における共振周波数を予測可能である。この予測は、図9の破線である。この予測をゲート電圧及び変調周波数の両方の関数としての観察された発振振幅と比較している。暗いエリアは、共振に対応している。観察された共振は、調和近似法の定性的な振る舞いに略準拠しており、主共振の周波数は、非接触モードシステムにおいて可能であったものよりも更に大きく変化可能である。又、このケースにおいても可視状態であるf*1/2及びf*2ブランチに留意されたい。
【0044】
換言すれば、図9は、本システムの非接触動作モードにおける観察された共振を変調周波数及びゲート電圧バイアスの関数として示している。調和近似法(破線)は、低バイアス領域内において、観察された共振と良好に一致しており、相対的に大きな電圧の場合には、予測値を逸脱している。明瞭に可視状態のf*1/2及びf*2ブランチに留意されたい。
【0045】
非接触モードにおける本システムを通じた電流は、接触モードシステムにおける電流とは大幅に異なっている。大きなソース/ドレイン電圧が、機械的な接触を伴うことなしに電流を実現し、すべての周波数において、非ゼロのトンネル電流が予想される。電流は、チューブの振動に起因して共振において変化し、且つ、バイアス電圧に応じて増大又は減少可能である(非発振位置が結果的に大きな電流をもたらす場合には、発振は、これを減少させる傾向を有しており、この逆も同様である)。これらの2つの異なるケースが図10に示されており、この図は、限度サイクル内における最小及び最大チューブ偏向を示しており、挿入図は、対応したトンネル電流を示している。これらの図における最も重要な結論は、共振が電流を変化させるということであり、これは、共振を電気的に検出可能であることを意味している。共振のライン形状は、高度な非対称性を有しており、これは、電流が共振周波数の一側において突然変化することを意味している。
【0046】
換言すれば、図10は、非接触動作モードにおける周波数応答を示している。バイアスポイントは、(a)Vg0=4.3V及び(b)Vg0=4.8Vであり、AC変調の振幅は、δV=0.1Vである。主共振ピークは、高度な非対称性を有しており、2倍周波数及び1/2周波数ピークは、いずれも可視状態にある。挿入図は、平均トンネル電流を周波数の関数として示している。この平均電流は、図10Aにおいては、共振において増大しており、図10Bにおいては、減少している。電流変化の符号及び大きさは、電位の形状に依存している。
【0047】
(寸法)
寸法は、アプリケーションと力学の期待値によって変化する。理論的には、代表的な長さは、80〜100ナノメートルであり、台地の高さhは、通常、8ナノメートルであり、直径は、通常、8ナノメートルである。
【0048】
(アプリケーションの例)
以下は、上述のシステムを使用して設計可能なコンポーネントの例である。
【0049】
(ボックス表記)
わかりやすくするべく、ボックス表記を使用し、一例について説明する。ボックスは、接触又は非接触モードにおけるナノ機械的リレー装置を含んでおり、ソース、ゲート、及びドレイン接点を通じて外部回路に接続されている(図11を参照されたい)。即ち、3つ又は5つの電極を通じて外部回路に接続されたボックスとして本システムを見なしているのである。リレーが、その他の構成(例えば、前出の特許出願第PCT/SE02/00853号に記述されている5端子構成など)を利用している場合には、いくつかのゲート及びドレイン接点が存在している。
【0050】
(メモリ要素)
メモリ要素アプリケーションは、リレーの潜在的なアプリケーションである。接触モードシステム内のチューブとドレイン電極間における非弾性衝突に起因し、非常に高速の書き込み時間を実現可能である。メモリセルは、外部電圧源によるその値の保存を必要とする揮発性であるか、或いは、外部電圧が存在しない場合にもその状態を保持する能力を有する不揮発性であってよい。メモリアプリケーションにおいては、ボックスは、図4Bに示されているように、十分なヒステリシスを有する接触モードのリレーを含んでいる必要がある。チューブの端部がドレイン電極に近接している導電状態は、論理「1」であり、非接触状態は、論理「0」である。メモリセルは、図4BのBによって表記されているヒステリシスループの下端が正である場合に、揮発性である。ヒステリシスループが、ゼロのゲート電圧まで延長している場合には、メモリ要素は、外部電圧を有していない場合にもその状態を保持することになり、不揮発性である。不揮発性メモリ要素は、大きな電圧パルスVsdを印加してチューブ/ドレイン接点を加熱することにより、非導電状態にリセット可能である。結果的に得られる活発な電子の移動により、ドレイン電極からチューブが解放されることになる。
【0051】
(フィルタ)
電気機械的共振を利用し、入力AS信号をゲートに印加すると共にドレインにおいて出力信号を読み取ることにより、本システムをフィルタとして使用可能である。いくつかの周波数成分を有する信号によってゲート電圧を変調することにより、共振外の周波数を有する周波数成分が抑圧される。共振周波数は、ゲート電圧バイアスVg0を使用してチューニング可能であるため、本システムは、チューニング可能なフィルタとして機能する。このケースにおけるナノ電気機械的要素は、接触又は非接触モードのいずれであってもよく、フィルタの周波数レンジは、図6及び図9から読み取ることができる。
【0052】
図12は、リレーのフィルタアプリケーションを概略的に示している。内部容量は、時間の関数であり、これは、チューブが発振する周波数によってこちらも時間と共に変化する出力電圧をもたらす。ゲート電圧変調器1210が電圧入力Vmとゲートの間に接続されており、AC電圧を加えている。
【0053】
(可変帯域幅検出器)
本システムは、共振周波数に十分に近接した信号を検出する検出器(図13)として使用可能である。装置1600のゲートは、ゲート電圧変調器1310に接続されている。適切な周波数を有するゲート電圧変調により、応答が誘発される。この応答の特徴は、動作モードに依存している。接触モードシステムの場合には、チューブは、その論理的な状態(これは、結果的にトンネル抵抗の変化をもたらす)と、結果的に、図8Bに示されているように、ドレインにおけるDC電流を変化させる。ゲート変調がターンオフされた場合に、チューブは、(ゲートバイアスが除去されない限り、或いは、設計パラメータが不揮発性メモリ要素のものに対応している場合には、ゲートバイアスが存在していない場合にも)表面に留まり、検出器はメモリを具備することになる。検出器の帯域幅は、ゲートバイアス及び信号振幅の両方の関数であり、チューニング可能である。前述のように、共振周波数は、ゲートバイアスの関数である。従って、検出器の帯域幅及び応答周波数は、いずれも、チューニング可能である。ナノ電気機械的コンポーネントが非接触モードにある場合には、ドレインにおける電流応答は、いずれかの符号を具備可能であり(図10を参照されたい)、検出器は、組み込み型メモリを具備しない。
【0054】
図13は、検出器アプリケーションを概略的に示している。適切な周波数を有する信号がゲートに印加されると、本システムは、その論理的な状態を変化させ、この結果、ソース(ドレイン)電流がもたらされる。本システムは、信号が印加された場合に本システムが記憶するように、組み込み型メモリを有するように設計可能である。
【0055】
(発振器)
チューブとドレイン電極間の容量は、時間の関数である。ドレイン電極と接地の間に容量を挿入することにより、時間依存電圧Vout(t)が付与される。ドレインとゲート電圧変調器1410の間に接続されたフィードバック回路1420により、この時間依存電圧をゲート電圧バイアス(これは、チューブの振動周波数に対応した周波数を有する変調電圧を付与する)に重畳可能である。
【0056】
この構造が図14に示されている。この結果、フィードバックにより、チューブは、共振状態において発振を開始する。この発振は、ステップパルスをゲート電極に印加することによって開始可能である。発振周波数は、ゲートバイアスによってチューニング可能である。この例におけるナノ電気機械的コンポーネントは、接触モード又は非接触モードのいずれであってもよい。
【0057】
換言すれば、図14は、共振周波数によって決定される周波数を具備した出力信号をフィードバック回路1420を介してフィードバックすることにより、ゲート信号を変調する方法を示している。適切な位相シフトにより、この信号は発振を駆動する。
【0058】
(可変コンデンサ)
チューブとドレイン間における容量は、ゲート電圧の関数である。従って、本システムは、チューニング可能なコンデンサとして機能可能であり、これは、電気的な共振回路内において使用可能である(図15を参照されたい)。インダクタンスLを有する誘導性コンポーネント1520が、ソースとドレインの間に接続されている。小さなVsdを使用するか、或いは、適切な位相シフトを有するゲートに対するフィードバックを使用してチューブの発振を能動的に減衰させることにより(図示されてはいない)、チューブの機械的な発振を極小化可能である。
【0059】
換言すれば、図15は、可変コンデンサを示しており、この場合に、チューブ/ドレイン容量は、ゲート電圧に依存している。本システムは、電気的な共振回路の共振周波数を変更するのに使用可能な可変コンデンサである。
【0060】
(パルス生成器)
接触モードシステムは、1つのサイクルにおいて、チューブの先端が、このサイクルの一部にわたってドレイン電極に接触するように、適切な振幅及び周波数を有するAC信号をゲートに印加することにより、パルス生成器として使用可能である。
【0061】
(電気機械的ミキサ)
チューブの相対的に高い機械的な動作モードを許容すると共に、適切な周波数を有するAC信号を適切に配置されたゲート電極に印加することにより、本システムは、結合された機械的動作を示すことになり、これを機械的な周波数ミキサとして使用可能である。
【0062】
(更なる装置)
多数の個々の装置を互いに接続することにより、更なるアプリケーションを構築可能である。
【0063】
(空洞共振器)
図16は、本発明によるナノ電気機械的コンポーネントの別の実施例を示している。基板130には、ナノチューブの下に、定義表面1630、1640、及び1650が提供された空洞共振器1610が提供されている。この空洞共振器は、好ましくは、チューブが、矢印1620によって示されているように大きな振幅によって発振した場合に、チューブ120を収容するのに十分な深さhcと長さLcと幅(図示されではいない)を具備しており、これにより、チューブ120を基板130と接触させることなしに、ナノチューブの相対的に大きな運動を可能にしている。この実施例においては、ドレイン電極150は、チューブ120を超えたところに配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の好適な実施例によるナノ電気機械的コンポーネントの概略側面図を示している。
【図2】図1のコンポーネントの等価回路図を示している。
【図3】a〜fは、いくつかのゲート及びドレイン電極を有する様々な構成を具備したコンポーネントを概略的に示している。
【図4A】異なるゲート電圧における図1のコンポーネントのチューブ上におけるゼロの真の力の位置を示す安定度図を示している。
【図4B】図4Aの安定度プロットに対応した電流をゲート電圧の関数として示している。
【図5A】非接触モードシステムにおける安定度図を示している。
【図5B】図5Aの安定度図に対応した電流の図をソース/ゲート電圧の関数として示している。
【図5C】図1のコンポーネントを改良したものを示している。
【図6】非接触モードシステムにおける共振周波数の図をゲート電圧の関数として示している。
【図7】接触モードシステムにおける振動のピークツーピーク振幅の図を変調周波数の関数として示している。
【図8A】接触モードシステムにおけるチューブの最大及び最小変位の図を変調周波数の関数として示している。
【図8B】いくつかの周波数においてチューブが表面に近い位置に状態を切り替えた際における図8Aの図に類似した図を示している。
【図9】非接触モードシステムにおける観察される共振の図を変調周波数及びゲート電圧バイアスの関数として示している。
【図10A】動作の際の非接触モードにおける周波数応答の図を示している。
【図10B】動作の際の非接触モードにおける周波数応答の図を示している。
【図11】本発明によるコンポーネントをボックスとして示している。
【図12】本発明のフィルタ回路の実施例の概略図を示している。
【図13】本発明の一実施例の検出器アプリケーションの概略図を示している。
【図14】本発明の一実施例による電圧制御発振器の概略図を示している。
【図15】本発明の一実施例による可変コンデンサ回路の概略図を示している。
【図16】ナノチューブの相対的に大きな発振を可能にする空洞共振器が提供されたナノ電気機械的コンポーネントを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーコンポーネントに関するものであり、更に詳しくは、コンポーネントを通じた小電流の流れに影響を与える手段を具備したナノ電気機械的コンポーネントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノテクノロジーは、拡大している研究分野であり、これには、NEMS(NanoElectroMecanical System)の開発が含まれている。NEMSは、ナノメートル程度の長さのスケールを有するシステム内における、電気機械的な結合に基づいている。これらのシステムの小さな長さのスケールにより、高い固有の機械的周波数を実現可能であり、GHzレンジの電気機械的な共振が可能である。これらの共振を使用することにより、ナノメートルのスケールにおいて高周波電子コンポーネントを設計可能である。
【0003】
本発明は、「A Nanomechanical Relay Device」という名称の国際特許出願PCT/SE02/00853号に提示されているシステムの更なる拡張であり、発明者中の3名を共通としており、オリジナル又は変更されたもののいずれかを内蔵するコンポーネント及び高周波数における動作設計に関するものである。先行技術には、Infineon Technologies AG社に発行された独国特許公開第DE1004315号及び国際特許公開第WO 0161753A1号も含まれている。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、ナノ電気機械的装置である。この装置は、ナノチューブを有しており、これは、好ましくは、導電性ナノチューブであり、好適には、カーボンナノチューブである。
【0005】
本装置は、例えば、シリコン(Si)などの非導電性材料から製造された非導電性の支持構造を更に含んでおり、この支持構造は、ナノチューブの少なくとも第1部分を支持して、ナノチューブの別の第2部分は、支持構造を超えて突出し、従って、支持されてはいない。ナノチューブの支持されている第1部分は、特殊な特性を具備したソース/チューブ接続によって電極に接続されており、以下においては、この電極をソース電極と呼ぶこととする。
【0006】
このソース/チューブ接続は、導電性ソース電極と導電性ナノチューブ間におけるソースからチューブへの距離が量子力学現象(これは、具体的には、所謂トンネル現象であり、量子漏れとも呼ばれている)が発生可能なレンジ内にある接続である。
【0007】
又、本発明による装置は、トンネル現象の大きさを制御する手段をも提供している。この手段は、好ましくは、1つ又は複数のゲート電極を有している(詳細については、以下を参照されたい)。
【0008】
ソース/チューブ接合部におけるこのようなトンネル接触の提供は、・ナノチューブ内における電子の正確な数の制御が可能であり、且つ、・電位が一様になる前に、ナノチューブ内にトンネリングされたすべての新しい更なる量の電荷がナノチューブの特定の機械的な平衡位置に対応するようにシステムを考案可能であるという利点を具備している。この結果、ある種の「ステッパモーター」として使用可能な正確な搬送メカニズムが得られる。
【0009】
支持構造は、好適には、台地として成形されており、従って、「階段」状の構造を具備し、上部レベルと下部レベルを有しており、これら2つのレベルが支持構造の壁状の形状によって相互接続されている。壁の高さによって定義される構造の2つのレベル間の高さの差は、文字hによって表記される。尚、本明細書における「レベル」という用語の使用は、装置の水平又は垂直のいずれかの向きにおいて好ましくは階段状の形態を構造に付与する寸法における差を意味していることに留意されたい。
【0010】
構造の下部レベルには、複数の追加電極が配置されており、この中のいくつかは、ゲート電極と呼ばれ、その他のものは、ドレイン電極と呼ばれる。ゲート電極は、壁の最も近い部分に対する距離LGに配置されており、ドレイン電極の対応する距離は、LDと表記され、ここで、LGは、好適には、LDよりも小さい。
【0011】
ナノチューブの突出部の合計延長は、好ましくは、50〜150nmのインターバル内にあり、好適には、約100nmのレベルにあり、高さhは、略3nmのサイズのレベルにある。
【0012】
ゲート電極に電圧が印加された際に結果的に得られる容量性の力は、ゲート電極に向かう方向においてナノチューブに対して作用することになり、従って、この方向は、ナノチューブの横方向の延長部によって定義されている方向である。前述の力が作用した際に、ナノチューブは、ゲート電極に向かって偏向することになり、これにより、ナノチューブとドレイン電極間におけるチューブからドレインへの距離が減少する。偏向の量は、チューブの先端とドレイン電極間における距離が、非常に高いインピーダンスを有している距離から、トンネル現象が支配的である距離を経て、チューブの先端がドレイン電極に当接してインピーダンスが非常に低いゼロの距離にまで変化可能なものになっている。
【0013】
後述するように、異なる振幅及び周波数の電圧を印加することにより、本装置を制御してソース電極からチューブを通じてドレイン電極に流れるソース/ドレイン電流の様々な特性を付与可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照し、本発明について詳細に説明することとする。
【0015】
基本システムの図が図1に示されており、対応した等価回路が図2に示されている。長さLのナノチューブ又はナノウィスカー120(これは、好ましくは、導電性ナノチューブであり、好適には、カーボンナノチューブである)は、台地状の非導電性基板130上に配置されおり、この結果、先端部160は、移動自在であり、基端部170は、台地の相対的に高い(この「相対的に高い」という用語は、形状を意味しており、特定の空間的な向きを意味するものではない)部分上の台地状の非導電性基板130に対して堅固に接続されている。チューブ/ソース接触は、Δzs>0に対応したトンネル接合であるか、或いは、Δzs=0である場合に連続的な電荷転送を許容する接触であってよい。チューブ/ソース接触のインピーダンスは、Zによって表記され、ソース、ゲート、及びドレイン電極上の静電電位は、それぞれ、Vs、Vg、Vdと表記される。チューブ上の電位はVである。チューブの軸に沿った方向は、zと表記され、チューブの先端160は、z=Lに位置している。2つの追加電極(ゲート及びドレイン)が、それぞれ、zg<L及びzd=L+Δzにおいて、チューブの自由端の下に配置されている。比率zg/L=zrは、チューブの先端と比較したゲートの相対的な位置を付与しており、Δz≧0が、2つの動作モードを弁別している。「接触モード」は、Δz=0によって定義され、「非接触モード」は、Δz>>λの場合に発生し、ここで、λ≒0.5Åがトンネル長である。
【0016】
図3は、複数のゲート及びドレイン電極を具備した構造の様子を上から示している。
【0017】
図3aは、2つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極は、ナノチューブ120のそれぞれの側部の下に1つずつ配置されている。
【0018】
ドレイン電極dも、ナノチューブ120のそれぞれの側部の下であって、ゲート電極gよりもチューブの先端に近いところに1つずつ配置されている。この電極配置によれば、ナノチューブ120の振動モードの制御において相対的に大きな自由を実現可能である。
【0019】
図3bは、1つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極gは、ナノチューブ120の真下に配置されており、2つのドレイン電極dは、ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている。
【0020】
図3cは、2つのゲート電極gと1つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極は、ナノチューブ120のそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている。
【0021】
図3dは、4つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示している。ゲート電極gは、ペアとして正方形又は矩形の形態でナノチューブ120のそれぞれの側部に2つずつ配置されており。ドレイン電極dは、ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている。
【0022】
図3eは、2つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示しており、この場合には、ゲート電極gは、図3aと同様に配置されており、ドレイン電極dは、ナノチューブ120を超えたこのチューブ120の仮想的な延長線のそれぞれの側部に1つずつ配置されている。
【0023】
図3fは、2つのゲート電極gと2つのドレイン電極dを有する構成を示しており、ゲート電極は、ナノチューブ120を基準として非対称に配置されている。
【0024】
図3a〜図3fの構成によれば、ナノチューブの振動モードの制御において相対的に大きく且つ異なる自由を実現可能である。これらの構成によれば、図1との関連において前述した偏向とは異なるチューブ120の延長部に対して直交する方向に移動を重畳可能である。
【0025】
チューブの先端は、電極の電圧を制御することによってチューブ上に過剰な電荷qを誘発することにより、ドレイン電極に向かって電気的に折り曲げ可能である。このチューブの先端の偏向は、基板に向かって垂直に計測され、これをxと表記する。接触モードにおいては、チューブは、x=hの際にドレイン電極と機械的に接触することになり、この場合に、hは、まっすぐなチューブから接触までの垂直距離である。非接触モードにおいては、チューブは、決して電極にまで到達しない。チューブの先端/ドレインの接触は、トンネル接合であり、チューブとドレイン電極間における距離を減少させることにより、トンネル抵抗RT(x,V)が減少し、接合上におけるトンネル電流Isdの流れが実現する。従って、動作の基本原理は、容量性結合によって障壁の幅を機械的に低減するというものであり、これがシステム内における電流に結びついている。
【0026】
換言すれば、図1は、長さLの導電性ナノチューブ又はナノウィスカーの一端が、上部に追加電極(ゲート及びドレイン)が(チューブの下に)配置された台地状の非導電性基板上に突き出た自由な状態にある様子を示している。チューブの他端は、ソース電極に電気的に接続されており、距離Δzsにより、ソース接合のトンネル抵抗を制御している。オーム接触は、Δzs=0の場合に可能である。まっすぐなチューブとゲート及びドレイン電極間における垂直の距離は、hであり、チューブの先端と電極間における水平距離は、Δzである。チューブの先端は、電極上の電圧によって垂直方向に距離xだけ偏向可能である。十分に大きな偏向は、チューブの先端からドレイン電極へのトンネル電流を実現するのに十分なだけ、トンネル抵抗を低減する。図2は、本システムの対応した等価回路を示している。破線内の部分は、図1のコンポーネントの等価回路であり、破線外の部分は、外部の部分である。以下においては、この「ボックス表記」を使用することとする。チューブ/ソース接合は、その上部を電荷qが流れるインピーダンスZを具備しており、チューブ/ゲート結合は、純粋に容量Cg(x)を有する容量性であり、チューブは、トンネル抵抗RT(x,V)及び容量Cg(x)を有するトンネル接合によってドレインに接続されている。確率論的なトンネル電流Isd(x,V)がチューブとドレイン電極間を流れている。
【0027】
(概論)
本システム内の電気的及び機械的な自由度の間には、強力な結合が存在している。本システムの形状は、電極上における静電電位に依存しており、電気的な特性は、本システムの形状に依存している。通常の接触モードシステムの場合には、ゲート電圧の関数としての平衡チューブ位置を図4Aから推定可能であり、これに対応した電流電圧特性が図4Bに示されている。非接触モードシステムにおける対応するプロットは、図5A及び図5Bに示されている。
【0028】
(複数のナノチューブ)
一実施例においては、このような構造を通じた可能な電流を増大させるべく、いくつかのナノリレーを互いに並列に配置している。
【0029】
(材料及び構造)
代替実施例においては、チューブ120は、カーボンナノチューブ、シリコンカーバイドナノチューブ、ナノワイヤ、又はナノウィスカーである。
【0030】
図4Aは、代表的な接触モードシステムにおける近距離表面力を有する及び有していない安定度図を示している。この曲線は、ゲート電圧(これは、一定のVs=0.01Vにおけるものである)及び偏向x(これは、hのものを単位としている)の関数としてチューブ上のゼロの真の力(又は、局所的な平衡)の位置を示している。大きな矢印は、曲線のそれぞれの側部における力の方向を示しており、これは、3つの平衡が存在している領域内において1つの局所的な平衡が不安定であることを示している。チューブを表面に向かって引っ張るのに必要な電圧(プルイン電圧)は、A(≒6.73V)によって付与される。この電圧は、表面力の大きな影響を受けない。表面に位置したチューブは、電圧が、図中の解放電圧B及びCを下回るまで、表面から離れない。A>B、Cであり、これは、IVg特性におけるヒステリシス動作(表面力によって大幅に機能拡張された特性)を示していることに留意されたい。図4Bは、図4Aの表面力を有する安定度のプロットに対応した電流電圧特性を示している。
【0031】
図5Aは、非接触モードシステムにおける安定度図を示している。矢印は、2つの領域内のチューブの先端上の力の方向を示している。この設計パラメータの組の場合に、それぞれの電圧ごとに観察されるのは、1つの平衡位置のみであり、システム特性は、ヒステリシスを具備していない。図5Bは、図5Aの安定度図に対応したソース/ドレイン電流対ソース/ゲート電圧特性を示している。
【0032】
図5Cは、本発明の別の実施例500の平面図を示している。この実施例500は、図1に示されている前述のものと類似したナノチューブを有しているが、支持している台地状の構造530が、第3レベル上に構造530’’を更に有しており、この第3レベル530’’は、第2レベル530’と基本的に平行であるが、ナノチューブ520の突出部の反対側上に配置されている。
【0033】
又、実施例500は、ソース510とナノチューブ520間における距離Δzsに起因してトンネルソース/チューブ接合をも有している。
【0034】
実施例500は、図1の装置のすべての特徴を基本的に有しており、力が特定のレベルを超過した際に、ナノチューブの第2部分が、その横方向の延長部の第2方向において曲がり、これにより、第2電気回路を閉じる(又は、この内部にトンネル接合を生成する)ように、その横方向の延長部によって定義されている第2方向においてナノチューブ520に対して力を作用させる第2手段540’を更に有している。この第2方向は、図5からわかるように、手段540’に向かう方向であり(この手段は、好ましくは、第2ゲート電極である)、ナノチューブ520の第2の突出部は、その横方向の延長部の第2方向において曲がり、これにより、第2電気回路を閉じる。この第2電気回路は、好適には、図1との関連で説明したソース電極510と、支持構造530の第3レベル530’’上に配置された第2ドレイン電極550’によって定義されている。
【0035】
第2ゲート及びドレイン電極は、台地状の構造の壁から、それぞれ、距離LG2及びLD2のところに配置されている。
【0036】
(近距離力)
近距離表面力(クーロン相互作用よりも強力な距離従属性を有する力)は、チューブが任意の時点で、ソース電極を含んでいない構造のいずれかの部分との機械的な接触から数ナノメートル以内に近接した場合に動作特性に影響を及ぼす。これらの力の主な真の効果は、ヒステリシスを増大させることにある。この結果、特に接触モード構造の場合に、メモリ要素が、非常に興味深いアプリケーションとなる。このようなメモリ要素は、例えば、「A Mechanical Relay Device」という名称の特許出願第PCT/SE02/00853号の3端子接触モードシステム又は5端子構造を使用することにより、揮発性又は不揮発性となるように設計可能である。この観点において、「揮発性」とは、ナノチューブが機械的な剛性を具備するように設計されており、この結果、この剛性に起因した機械的な力が、Vgがゼロに近くなった際にドレイン電極からナノチューブを解放する十分なものになっている実施例を意味している。この剛性は、例えば、短いナノチューブ又は大きな直径を有するナノチューブによって実現可能である。「不揮発性」とは、ドレイン電極からナノチューブを解放するために、電流パルスを印加して電極を加熱することが必要な実施例を意味している。このような電流パルスは、ソースに接続されたパルス生成装置から供給可能である。
【0037】
(高周波特性)
本装置の高い固有の機械的周波数を使用することにより、GHzレベルに到達する共振周波数を有するナノ電気機械的共振に基づいたコンポーネントを設計可能である。
【0038】
(電気機械的共振)
(接触モード)
図4A及び図5Aから推定可能なチューブの平衡位置は、合計チューブ電位の局所的な最小値によって判定される。機械的共振周波数は、電位の最小値近傍の合計電位の曲率によって判定される(調和近似法)。合計電位は、外部電位によって制御可能であるため、チューブの平衡位置と機械的な共振周波数は、いずれも、静電気的手段によって制御可能である。従って、共振周波数は、接触モードの装置の場合には、図6にプロットされているように、ゲート電圧の関数である。f*によって表記された最低機械共振周波数は、ゲート電圧バイアスをチューニングすることにより、数GHzにわたって変更可能である。共振を考慮する際には、非線形効果が重要である。これらの非線形効果は、主共振ピークの場所を変化させ、共振周波数の1/2又は2倍における共振を可能にする。これらの共振は、それぞれ、f*1/2及びf*2によって表記される。
【0039】
換言すれば、図6は、代表的な接触モードの最低共振周波数をゲート電圧の関数として示している。これらの値を電位プロファイルに対する調和近似法に基づいた予測と比較している。
【0040】
図7は、変調振幅δVの様々な値における変調周波数の関数として接触モードシステムの振動振幅(ピークツーピーク)を示している。振幅が小さい場合には、ラインの形状は、対称であるが、大きな振幅の場合には、形状が非対称であり、ピークの位置がシフトしている。
【0041】
高周波変調を接触モード構造のゲート電極に印加した場合には、2つの定性的な異なる結果を得ることができる。第1のケースにおいては、位相空間におけるシステムの軌跡が限度サイクルに接近し、この場合には、チューブは、決して表面に機械的に接触しないが、かなりの振幅で発振する。大きなチューブ/ドレインの離隔における非常に高いトンネル抵抗に起因し、本システムを通じたトンネル電流は無視可能である。但し、構造の形状が時間と共に変化するため、形状的な容量も変化し、チューブ上の電荷も、同一の周波数において時間的に変化する。この結果、機械的な発振周波数に対応した周波数を有するソース及びドレイン接点におけるAC変位電流が得られる。この場合のシステムの周波数応答が図8Aに示されており、is,eff=max(∂t/√2)として正弦波電荷転送を仮定することによって判定される変位電流の有効値is,effが挿入図に示されている。図示のように、共振には、変位電流の大きな変化が伴っている。第2のケースにおいては、発振振幅が十分に大きい場合に、本システムは、ある周波数レンジにおいてドレイン接点に衝突することになる。チューブとドレイン電極間における相互作用により、チューブは、そのエネルギーのいくらかを消失し、チューブは、表面近傍の静止状態にトラップされることになる。表面近傍の電位の最小値は、表面から離れた最小値に比較される高い周波数に対応しており、これは、ゲート変調周波数がもはや共振状態にはなく、接触位置におけるチューブに対するエネルギー転送が無効であることを意味している。装置は、変調の結果、その状態を変化させており、トンネル電流を実現可能である。チューブは、ゲート変調が除去された後にも、表面に存在することを継続することになる。従って、本システムは、組み込み型のメモリを具備しており、これは、特定の周波数レンジ内の変調が適用された場合に、記憶することになる。このケースにおける周波数スキャンが、図8Bに示されており、この場合には、共振周波数近傍の狭いインターバルにおいて、チューブは、最終的に接点の近傍に位置している。非ゼロのトンネル電流を取得するのは、この狭い領域内においてのみである。いずれのケースにおいても、1/2及び2倍の周波数に、明瞭に可視状態の共振が存在しており、且つ、主共振のラインの形状は非対称である。これらの特徴は、いずれも、二次の電位形状からの逸脱に起因している。
【0042】
換言すれば、図8は、ゲート電圧バイアス(a)Vg0=5V及び(b)Vg0=6Vとゲート電圧変調δV=0.1Vと周波数fmodにおいて安定状態にある接触モード構造における最大及び最小変位を示している。最大ピークは、共振周波数に対応しており、1/2及び2倍周波数のピークは相対的に小さい。図8Aの挿入図は、周波数の関数としてソース接合変位電流の振幅を示している。図8Bには、チューブが、いくつかの周波数において、状態を表面近傍の位置に切り替え、これにより、チューブからドレインへの非ゼロのトンネル電流を実現する方法が示されている(即ち、「状態の切り替え」とは、発振の振幅が周波数に依存しているため、チューブが、基板をヒットし、特定の周波数においてくっ付くことを意味している)。図8Bの挿入図は、有効変位電流Is,eff及びドレイントンネル電流Isdの両方を示している。
【0043】
(非接触モード)
接触モードの場合には、電位に対する調和近似法を使用して特定のゲート電圧における共振周波数を予測可能である。この予測は、図9の破線である。この予測をゲート電圧及び変調周波数の両方の関数としての観察された発振振幅と比較している。暗いエリアは、共振に対応している。観察された共振は、調和近似法の定性的な振る舞いに略準拠しており、主共振の周波数は、非接触モードシステムにおいて可能であったものよりも更に大きく変化可能である。又、このケースにおいても可視状態であるf*1/2及びf*2ブランチに留意されたい。
【0044】
換言すれば、図9は、本システムの非接触動作モードにおける観察された共振を変調周波数及びゲート電圧バイアスの関数として示している。調和近似法(破線)は、低バイアス領域内において、観察された共振と良好に一致しており、相対的に大きな電圧の場合には、予測値を逸脱している。明瞭に可視状態のf*1/2及びf*2ブランチに留意されたい。
【0045】
非接触モードにおける本システムを通じた電流は、接触モードシステムにおける電流とは大幅に異なっている。大きなソース/ドレイン電圧が、機械的な接触を伴うことなしに電流を実現し、すべての周波数において、非ゼロのトンネル電流が予想される。電流は、チューブの振動に起因して共振において変化し、且つ、バイアス電圧に応じて増大又は減少可能である(非発振位置が結果的に大きな電流をもたらす場合には、発振は、これを減少させる傾向を有しており、この逆も同様である)。これらの2つの異なるケースが図10に示されており、この図は、限度サイクル内における最小及び最大チューブ偏向を示しており、挿入図は、対応したトンネル電流を示している。これらの図における最も重要な結論は、共振が電流を変化させるということであり、これは、共振を電気的に検出可能であることを意味している。共振のライン形状は、高度な非対称性を有しており、これは、電流が共振周波数の一側において突然変化することを意味している。
【0046】
換言すれば、図10は、非接触動作モードにおける周波数応答を示している。バイアスポイントは、(a)Vg0=4.3V及び(b)Vg0=4.8Vであり、AC変調の振幅は、δV=0.1Vである。主共振ピークは、高度な非対称性を有しており、2倍周波数及び1/2周波数ピークは、いずれも可視状態にある。挿入図は、平均トンネル電流を周波数の関数として示している。この平均電流は、図10Aにおいては、共振において増大しており、図10Bにおいては、減少している。電流変化の符号及び大きさは、電位の形状に依存している。
【0047】
(寸法)
寸法は、アプリケーションと力学の期待値によって変化する。理論的には、代表的な長さは、80〜100ナノメートルであり、台地の高さhは、通常、8ナノメートルであり、直径は、通常、8ナノメートルである。
【0048】
(アプリケーションの例)
以下は、上述のシステムを使用して設計可能なコンポーネントの例である。
【0049】
(ボックス表記)
わかりやすくするべく、ボックス表記を使用し、一例について説明する。ボックスは、接触又は非接触モードにおけるナノ機械的リレー装置を含んでおり、ソース、ゲート、及びドレイン接点を通じて外部回路に接続されている(図11を参照されたい)。即ち、3つ又は5つの電極を通じて外部回路に接続されたボックスとして本システムを見なしているのである。リレーが、その他の構成(例えば、前出の特許出願第PCT/SE02/00853号に記述されている5端子構成など)を利用している場合には、いくつかのゲート及びドレイン接点が存在している。
【0050】
(メモリ要素)
メモリ要素アプリケーションは、リレーの潜在的なアプリケーションである。接触モードシステム内のチューブとドレイン電極間における非弾性衝突に起因し、非常に高速の書き込み時間を実現可能である。メモリセルは、外部電圧源によるその値の保存を必要とする揮発性であるか、或いは、外部電圧が存在しない場合にもその状態を保持する能力を有する不揮発性であってよい。メモリアプリケーションにおいては、ボックスは、図4Bに示されているように、十分なヒステリシスを有する接触モードのリレーを含んでいる必要がある。チューブの端部がドレイン電極に近接している導電状態は、論理「1」であり、非接触状態は、論理「0」である。メモリセルは、図4BのBによって表記されているヒステリシスループの下端が正である場合に、揮発性である。ヒステリシスループが、ゼロのゲート電圧まで延長している場合には、メモリ要素は、外部電圧を有していない場合にもその状態を保持することになり、不揮発性である。不揮発性メモリ要素は、大きな電圧パルスVsdを印加してチューブ/ドレイン接点を加熱することにより、非導電状態にリセット可能である。結果的に得られる活発な電子の移動により、ドレイン電極からチューブが解放されることになる。
【0051】
(フィルタ)
電気機械的共振を利用し、入力AS信号をゲートに印加すると共にドレインにおいて出力信号を読み取ることにより、本システムをフィルタとして使用可能である。いくつかの周波数成分を有する信号によってゲート電圧を変調することにより、共振外の周波数を有する周波数成分が抑圧される。共振周波数は、ゲート電圧バイアスVg0を使用してチューニング可能であるため、本システムは、チューニング可能なフィルタとして機能する。このケースにおけるナノ電気機械的要素は、接触又は非接触モードのいずれであってもよく、フィルタの周波数レンジは、図6及び図9から読み取ることができる。
【0052】
図12は、リレーのフィルタアプリケーションを概略的に示している。内部容量は、時間の関数であり、これは、チューブが発振する周波数によってこちらも時間と共に変化する出力電圧をもたらす。ゲート電圧変調器1210が電圧入力Vmとゲートの間に接続されており、AC電圧を加えている。
【0053】
(可変帯域幅検出器)
本システムは、共振周波数に十分に近接した信号を検出する検出器(図13)として使用可能である。装置1600のゲートは、ゲート電圧変調器1310に接続されている。適切な周波数を有するゲート電圧変調により、応答が誘発される。この応答の特徴は、動作モードに依存している。接触モードシステムの場合には、チューブは、その論理的な状態(これは、結果的にトンネル抵抗の変化をもたらす)と、結果的に、図8Bに示されているように、ドレインにおけるDC電流を変化させる。ゲート変調がターンオフされた場合に、チューブは、(ゲートバイアスが除去されない限り、或いは、設計パラメータが不揮発性メモリ要素のものに対応している場合には、ゲートバイアスが存在していない場合にも)表面に留まり、検出器はメモリを具備することになる。検出器の帯域幅は、ゲートバイアス及び信号振幅の両方の関数であり、チューニング可能である。前述のように、共振周波数は、ゲートバイアスの関数である。従って、検出器の帯域幅及び応答周波数は、いずれも、チューニング可能である。ナノ電気機械的コンポーネントが非接触モードにある場合には、ドレインにおける電流応答は、いずれかの符号を具備可能であり(図10を参照されたい)、検出器は、組み込み型メモリを具備しない。
【0054】
図13は、検出器アプリケーションを概略的に示している。適切な周波数を有する信号がゲートに印加されると、本システムは、その論理的な状態を変化させ、この結果、ソース(ドレイン)電流がもたらされる。本システムは、信号が印加された場合に本システムが記憶するように、組み込み型メモリを有するように設計可能である。
【0055】
(発振器)
チューブとドレイン電極間の容量は、時間の関数である。ドレイン電極と接地の間に容量を挿入することにより、時間依存電圧Vout(t)が付与される。ドレインとゲート電圧変調器1410の間に接続されたフィードバック回路1420により、この時間依存電圧をゲート電圧バイアス(これは、チューブの振動周波数に対応した周波数を有する変調電圧を付与する)に重畳可能である。
【0056】
この構造が図14に示されている。この結果、フィードバックにより、チューブは、共振状態において発振を開始する。この発振は、ステップパルスをゲート電極に印加することによって開始可能である。発振周波数は、ゲートバイアスによってチューニング可能である。この例におけるナノ電気機械的コンポーネントは、接触モード又は非接触モードのいずれであってもよい。
【0057】
換言すれば、図14は、共振周波数によって決定される周波数を具備した出力信号をフィードバック回路1420を介してフィードバックすることにより、ゲート信号を変調する方法を示している。適切な位相シフトにより、この信号は発振を駆動する。
【0058】
(可変コンデンサ)
チューブとドレイン間における容量は、ゲート電圧の関数である。従って、本システムは、チューニング可能なコンデンサとして機能可能であり、これは、電気的な共振回路内において使用可能である(図15を参照されたい)。インダクタンスLを有する誘導性コンポーネント1520が、ソースとドレインの間に接続されている。小さなVsdを使用するか、或いは、適切な位相シフトを有するゲートに対するフィードバックを使用してチューブの発振を能動的に減衰させることにより(図示されてはいない)、チューブの機械的な発振を極小化可能である。
【0059】
換言すれば、図15は、可変コンデンサを示しており、この場合に、チューブ/ドレイン容量は、ゲート電圧に依存している。本システムは、電気的な共振回路の共振周波数を変更するのに使用可能な可変コンデンサである。
【0060】
(パルス生成器)
接触モードシステムは、1つのサイクルにおいて、チューブの先端が、このサイクルの一部にわたってドレイン電極に接触するように、適切な振幅及び周波数を有するAC信号をゲートに印加することにより、パルス生成器として使用可能である。
【0061】
(電気機械的ミキサ)
チューブの相対的に高い機械的な動作モードを許容すると共に、適切な周波数を有するAC信号を適切に配置されたゲート電極に印加することにより、本システムは、結合された機械的動作を示すことになり、これを機械的な周波数ミキサとして使用可能である。
【0062】
(更なる装置)
多数の個々の装置を互いに接続することにより、更なるアプリケーションを構築可能である。
【0063】
(空洞共振器)
図16は、本発明によるナノ電気機械的コンポーネントの別の実施例を示している。基板130には、ナノチューブの下に、定義表面1630、1640、及び1650が提供された空洞共振器1610が提供されている。この空洞共振器は、好ましくは、チューブが、矢印1620によって示されているように大きな振幅によって発振した場合に、チューブ120を収容するのに十分な深さhcと長さLcと幅(図示されではいない)を具備しており、これにより、チューブ120を基板130と接触させることなしに、ナノチューブの相対的に大きな運動を可能にしている。この実施例においては、ドレイン電極150は、チューブ120を超えたところに配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の好適な実施例によるナノ電気機械的コンポーネントの概略側面図を示している。
【図2】図1のコンポーネントの等価回路図を示している。
【図3】a〜fは、いくつかのゲート及びドレイン電極を有する様々な構成を具備したコンポーネントを概略的に示している。
【図4A】異なるゲート電圧における図1のコンポーネントのチューブ上におけるゼロの真の力の位置を示す安定度図を示している。
【図4B】図4Aの安定度プロットに対応した電流をゲート電圧の関数として示している。
【図5A】非接触モードシステムにおける安定度図を示している。
【図5B】図5Aの安定度図に対応した電流の図をソース/ゲート電圧の関数として示している。
【図5C】図1のコンポーネントを改良したものを示している。
【図6】非接触モードシステムにおける共振周波数の図をゲート電圧の関数として示している。
【図7】接触モードシステムにおける振動のピークツーピーク振幅の図を変調周波数の関数として示している。
【図8A】接触モードシステムにおけるチューブの最大及び最小変位の図を変調周波数の関数として示している。
【図8B】いくつかの周波数においてチューブが表面に近い位置に状態を切り替えた際における図8Aの図に類似した図を示している。
【図9】非接触モードシステムにおける観察される共振の図を変調周波数及びゲート電圧バイアスの関数として示している。
【図10A】動作の際の非接触モードにおける周波数応答の図を示している。
【図10B】動作の際の非接触モードにおける周波数応答の図を示している。
【図11】本発明によるコンポーネントをボックスとして示している。
【図12】本発明のフィルタ回路の実施例の概略図を示している。
【図13】本発明の一実施例の検出器アプリケーションの概略図を示している。
【図14】本発明の一実施例による電圧制御発振器の概略図を示している。
【図15】本発明の一実施例による可変コンデンサ回路の概略図を示している。
【図16】ナノチューブの相対的に大きな発振を可能にする空洞共振器が提供されたナノ電気機械的コンポーネントを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部と先端部を有し、且つ、長手方向及び横方向に延長部を有するナノチューブ(120)と、前記ナノチューブ(120)の少なくとも第1部分を支持する支持構造(130)と、その横方向の延長部によって定義されている第1方向において前記ナノチューブに力を作用させる第1手段(140)と、を有するナノチューブ装置(100)であって、前記ナノチューブ(120)の少なくとも第2部分は、前記力が特定のレベルを超過した際に、前記ナノチューブの前記第2部分が曲がり、これにより、前記チューブ(120)とドレイン電極(150)間におけるチューブからドレインへの距離を低減するように、前記構造(130)の前記支持部を超えて突出している、ナノチューブ装置(100)において、
前記チューブ(120)とソース電極(110)の間に量子力学現象を引き起こすことができるように、前記チューブ(120)に対する距離(Δzs)を具備した前記ソース電極(110)が配置されていることを特徴とするナノチューブ装置。
【請求項2】
前記ナノチューブに対して前記力を作用させる前記第1手段は、電気的手段であり、前記力は、電圧を前記手段に印加することによって生成され、
前記ナノチューブ(120)の寸法と、前記チューブ(120)と前記支持構造(130)間における垂直距離(h)のサイズと、チューブ(160)と前記ドレイン電極(150)間における水平距離(Δz)のサイズは、前記チューブ(120)と前記ドレイン電極(150)間に量子力学現象を引き起こすことができるようなものになっていることを特徴とする請求項1記載のナノチューブ装置。
【請求項3】
前記支持構造は、第1及び第2レベル上の構造を有する台地状の構造を有しており、前記ナノチューブの前記支持されている第1部分は、前記構造の前記第1レベルによって支持されており、前記力を作用させる手段は、前記第2レベル上に配置されている請求項1又は2記載のナノチューブ装置。
【請求項4】
前記力を印加する第1手段は、第1ゲート電極を有しており、そのインピーダンスが前記ナノチューブの前記曲がる段階の影響を受ける第1回路は、前記構造の前記第2レベル上に配置された第1ゲート電極と、前記構造の前記第1レベル上に配置された第1ソース電極と、を有する請求項1〜3の中のいずれか一項記載のナノチューブ装置。
【請求項5】
前記支持している台地状の構造は、第3レベル上の構造を更に有しており、前記第3レベルは、前記第2レベルと基本的に平行に配置されているが、前記ナノチューブの前記突出部の反対側に位置しており、前記ナノチューブ装置は、力が特定のレベルを超過した際に、前記ナノチューブの前記第2部分がその横方向の延長部の第2方向において曲がり、これにより、第2電気回路のインピーダンスに影響を与えるように、その横方向の延長部によって定義されている前記第2方向において前記ナノチューブに対して前記力を作用させる第2手段を有する請求項1〜4のいずれか一項記載のナノチューブ装置。
【請求項6】
前記ナノチューブに対して前記力を作用させる前記第2手段は、電気的手段であり、前記力は、電圧を前記手段に印加することによって生成される請求項5記載のナノチューブ装置。
【請求項7】
前記追加の支持構造は、第1及び第2レベル上の構造を有する台地状の構造を有しており、前記ナノチューブの前記支持されている第1部分は、前記構造の前記第1レベルによって支持されており、前記力を作用させる手段は、前記第2レベル上に配置されている請求項5又は6記載のナノチューブ装置。
【請求項8】
前記力を印加する第2手段は、第2ゲート電極を有しており、そのインピーダンスが前記ナノチューブの前記曲がる段階の影響を受ける第2回路は、前記構造の前記第3レベル上に配置された第2ドレイン電極を有する請求項5〜7の中のいずれか一項記載のナノチューブ装置。
【請求項9】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極は、前記ナノチューブ(120)のそれぞれの側部の下に1つずつ配置されており、前記ドレイン電極(d)は、前記ナノチューブ(120)に対して相対的にそれぞれの側部の下に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項10】
前記装置は、1つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極(g)は、前記ナノチューブ(120)の真下に配置されており、前記2つのドレイン電極(d)は、前記ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項11】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と1つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極は、前記ナノチューブ(120)のそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項12】
前記装置は、4つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極(g)は、ペアとして正方形又は矩形の形態で前記ナノチューブ(120)のそれぞれの側部に2つずつ配置されており、前記ドレイン電極(d)は、前記ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項13】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極(g)は、前記ナノチューブのそれぞれの側部の下であって、前記ゲート電極(g)よりも前記チューブの先端に近いところに1つずつ配置されており、前記ドレイン電極(d)は、前記ナノチューブ(120)を超えた前記チューブ(120)の仮想的な延長線のそれぞれの側部に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項14】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極は、前記ナノチューブ(120)を基準として非対称に配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項15】
請求項1記載の前記装置を有することを特徴とするメモリ要素。
【請求項16】
請求項1記載の前記装置を有しており、入力AC信号が前記装置の前記ゲートに印加され、出力信号が前記ドレインにおいて読み取られることを特徴とするフィルタ。
【請求項17】
ゲート電圧バイアスによって共振周波数をチューニング可能である請求項16記載のフィルタ。
【請求項18】
請求項1記載の前記装置を有しており、前記装置の前記ゲートは、ゲート電圧変調器(1310)に接続されていることを特徴とする可変帯域幅検出器。
【請求項19】
請求項1記載の前記装置を有することを特徴とする発振器。
【請求項20】
前記ドレインとゲート電圧変調器(1410)の間にフィードバック回路(1420)が接続されている請求項19記載の発振器。
【請求項21】
請求項1記載の前記装置を有することを特徴とする可変コンデンサ。
【請求項22】
前記ソースと前記ドレイン間に誘導性コンポーネント(1520)が接続されている請求項21記載のコンデンサ。
【請求項23】
前記チューブ(120)は、カーボン、シリコンカーバイド、又は金属から製造されていると共に/又は、ナノワイヤ又はナノウィスカーである請求項1〜22のいずれか一項記載の装置。
【請求項24】
前記装置には、前記ナノチューブ(120)の下の前記基板内に、前記ナノチューブ(120)の相対的に大きな運動を可能にする空洞共振器(1610)が提供されている請求項1記載のナノチューブ装置。
【請求項1】
基端部と先端部を有し、且つ、長手方向及び横方向に延長部を有するナノチューブ(120)と、前記ナノチューブ(120)の少なくとも第1部分を支持する支持構造(130)と、その横方向の延長部によって定義されている第1方向において前記ナノチューブに力を作用させる第1手段(140)と、を有するナノチューブ装置(100)であって、前記ナノチューブ(120)の少なくとも第2部分は、前記力が特定のレベルを超過した際に、前記ナノチューブの前記第2部分が曲がり、これにより、前記チューブ(120)とドレイン電極(150)間におけるチューブからドレインへの距離を低減するように、前記構造(130)の前記支持部を超えて突出している、ナノチューブ装置(100)において、
前記チューブ(120)とソース電極(110)の間に量子力学現象を引き起こすことができるように、前記チューブ(120)に対する距離(Δzs)を具備した前記ソース電極(110)が配置されていることを特徴とするナノチューブ装置。
【請求項2】
前記ナノチューブに対して前記力を作用させる前記第1手段は、電気的手段であり、前記力は、電圧を前記手段に印加することによって生成され、
前記ナノチューブ(120)の寸法と、前記チューブ(120)と前記支持構造(130)間における垂直距離(h)のサイズと、チューブ(160)と前記ドレイン電極(150)間における水平距離(Δz)のサイズは、前記チューブ(120)と前記ドレイン電極(150)間に量子力学現象を引き起こすことができるようなものになっていることを特徴とする請求項1記載のナノチューブ装置。
【請求項3】
前記支持構造は、第1及び第2レベル上の構造を有する台地状の構造を有しており、前記ナノチューブの前記支持されている第1部分は、前記構造の前記第1レベルによって支持されており、前記力を作用させる手段は、前記第2レベル上に配置されている請求項1又は2記載のナノチューブ装置。
【請求項4】
前記力を印加する第1手段は、第1ゲート電極を有しており、そのインピーダンスが前記ナノチューブの前記曲がる段階の影響を受ける第1回路は、前記構造の前記第2レベル上に配置された第1ゲート電極と、前記構造の前記第1レベル上に配置された第1ソース電極と、を有する請求項1〜3の中のいずれか一項記載のナノチューブ装置。
【請求項5】
前記支持している台地状の構造は、第3レベル上の構造を更に有しており、前記第3レベルは、前記第2レベルと基本的に平行に配置されているが、前記ナノチューブの前記突出部の反対側に位置しており、前記ナノチューブ装置は、力が特定のレベルを超過した際に、前記ナノチューブの前記第2部分がその横方向の延長部の第2方向において曲がり、これにより、第2電気回路のインピーダンスに影響を与えるように、その横方向の延長部によって定義されている前記第2方向において前記ナノチューブに対して前記力を作用させる第2手段を有する請求項1〜4のいずれか一項記載のナノチューブ装置。
【請求項6】
前記ナノチューブに対して前記力を作用させる前記第2手段は、電気的手段であり、前記力は、電圧を前記手段に印加することによって生成される請求項5記載のナノチューブ装置。
【請求項7】
前記追加の支持構造は、第1及び第2レベル上の構造を有する台地状の構造を有しており、前記ナノチューブの前記支持されている第1部分は、前記構造の前記第1レベルによって支持されており、前記力を作用させる手段は、前記第2レベル上に配置されている請求項5又は6記載のナノチューブ装置。
【請求項8】
前記力を印加する第2手段は、第2ゲート電極を有しており、そのインピーダンスが前記ナノチューブの前記曲がる段階の影響を受ける第2回路は、前記構造の前記第3レベル上に配置された第2ドレイン電極を有する請求項5〜7の中のいずれか一項記載のナノチューブ装置。
【請求項9】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極は、前記ナノチューブ(120)のそれぞれの側部の下に1つずつ配置されており、前記ドレイン電極(d)は、前記ナノチューブ(120)に対して相対的にそれぞれの側部の下に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項10】
前記装置は、1つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極(g)は、前記ナノチューブ(120)の真下に配置されており、前記2つのドレイン電極(d)は、前記ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項11】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と1つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極は、前記ナノチューブ(120)のそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項12】
前記装置は、4つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極(g)は、ペアとして正方形又は矩形の形態で前記ナノチューブ(120)のそれぞれの側部に2つずつ配置されており、前記ドレイン電極(d)は、前記ナノチューブのそれぞれの側部において互いに反対側に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項13】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極(g)は、前記ナノチューブのそれぞれの側部の下であって、前記ゲート電極(g)よりも前記チューブの先端に近いところに1つずつ配置されており、前記ドレイン電極(d)は、前記ナノチューブ(120)を超えた前記チューブ(120)の仮想的な延長線のそれぞれの側部に1つずつ配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項14】
前記装置は、2つのゲート電極(g)と2つのドレイン電極(d)を有しており、前記ゲート電極は、前記ナノチューブ(120)を基準として非対称に配置されている請求項1記載のナノチューブ装置(100)。
【請求項15】
請求項1記載の前記装置を有することを特徴とするメモリ要素。
【請求項16】
請求項1記載の前記装置を有しており、入力AC信号が前記装置の前記ゲートに印加され、出力信号が前記ドレインにおいて読み取られることを特徴とするフィルタ。
【請求項17】
ゲート電圧バイアスによって共振周波数をチューニング可能である請求項16記載のフィルタ。
【請求項18】
請求項1記載の前記装置を有しており、前記装置の前記ゲートは、ゲート電圧変調器(1310)に接続されていることを特徴とする可変帯域幅検出器。
【請求項19】
請求項1記載の前記装置を有することを特徴とする発振器。
【請求項20】
前記ドレインとゲート電圧変調器(1410)の間にフィードバック回路(1420)が接続されている請求項19記載の発振器。
【請求項21】
請求項1記載の前記装置を有することを特徴とする可変コンデンサ。
【請求項22】
前記ソースと前記ドレイン間に誘導性コンポーネント(1520)が接続されている請求項21記載のコンデンサ。
【請求項23】
前記チューブ(120)は、カーボン、シリコンカーバイド、又は金属から製造されていると共に/又は、ナノワイヤ又はナノウィスカーである請求項1〜22のいずれか一項記載の装置。
【請求項24】
前記装置には、前記ナノチューブ(120)の下の前記基板内に、前記ナノチューブ(120)の相対的に大きな運動を可能にする空洞共振器(1610)が提供されている請求項1記載のナノチューブ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−502125(P2008−502125A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513104(P2007−513104)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000691
【国際公開番号】WO2005/112126
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(307017408)チャルマーズ インテレクチュアル プロパティー ライツ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【国際出願番号】PCT/SE2005/000691
【国際公開番号】WO2005/112126
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(307017408)チャルマーズ インテレクチュアル プロパティー ライツ アクティエボラーグ (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]