説明

チェックパターン及び実装評価装置

【課題】ガードリングの外側に発生した損傷を簡単で確実に検出して、半導体チップの実装評価を行うことができるチェックパターン及び実装評価装置を提供する。
【解決手段】ダイシングを行うためのスクライブ領域6からガードリング4の外側領域に、半導体チップ5aの内側に向かって電気回路2を所定の間隔を隔てて複数並列接続、又は複数並列配置されてなる検出部20と、当該検出部20に接続され、前記ガードリング4の外側に配設される出力端子3とを備え、電気回路2の断線によるインピーダンスの変化量に基づいて、ガードリング4の外側領域に発生した損傷の状態を解析する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの実装評価を行うためのチェックパターンに関し、特に、ダイシング工程における実装評価を行うためのチェックパターン及びその評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩留まりの低下を減らすために、ウェハテスト以降の工程において、ウェハへのダメージの発生状況を確認して評価する必要がある。しかしながら、ウェハテスト以降の工程においては、ウェハへのダメージの発生状況を確認して評価する標準的な手法が確立されていない。
【0003】
特に、次世代半導体デバイスの高速化を実現させるために一般的に用いられている低誘電率(以下、Low−kとする)材料については、その構造上機械的な強度が脆く、実装時に膜破断や剥離などに伴う配線の断線等を引き起こしやすく、品質の向上に大きな課題を抱えている。
【0004】
そこで、上記課題に関する技術として特許文献1に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、ガードリングが損傷していること、および、その損傷箇所を特定することができる半導体チップおよびそのテスト方法に関する技術であり、半導体チップは、半導体基板と、半導体基板の表面に形成された回路素子と、回路素子に電気的に接続された配線を含む配線層と、配線層と半導体基板との間に設けられた中間絶縁層と、回路素子の周囲を取り囲むように中間絶縁層中に設けられたガードリングと、ガードリングと回路素子との間、または、ガードリングの外側にある中間絶縁層中に、互いに間隔をおいて設けられたキャパシタ電極と、キャパシタ電極のそれぞれに電気的に接続されたパッドとを備えるものである。
また、ガードリングの外側に評価素子を配置した検査技術として特許文献2に示す技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−228854号公報
【特許文献2】特開2006−339549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す技術は、ガードリングの損傷やその損傷箇所を特定することができるが、ガードリングの外側の損傷箇所については特定することができない。ガードリングの外側の損傷については、テスト時には問題なくても将来的に回路に影響を及ぼすような損傷に繋がる可能性もあり、完全に無視することはできず、半導体チップの信頼性の欠如に繋がる。従って、特許文献1に示す技術では、テストが不十分になってしまうという課題を有する。
また、上記特許文献1に示す技術は、半導体チップにクラック等の損傷が発生した場合に、その深さを検証するには不向きである。
特許文献2に示す技術は、ガードリングの外側に評価素子を配置したものであるが、特許文献1に示す技術と同様に、クラック等の損傷の深さを検証するには不向きである。
【0006】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、ガードリングの外側に発生した損傷を簡単で確実に検出して、半導体チップの実装評価を行うことができるチェックパターン及び実装評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1.ガードリングの外側領域の評価)
本願に開示するチェックパターンは、ダイシングを行うためのスクライブ領域からガードリングの外側領域に、半導体チップの内側に向かって電気回路を所定の間隔を隔てて複数並列接続、又は複数並列配置されてなる検出部と、当該検出部に接続され、前記ガードリングの外側に配設される出力部とを備えるものである。
【0008】
このように、本願に開示するチェックパターンは、ガードリングの外側領域に、半導体チップの内側に向かって電気回路を所定の間隔を隔てて複数並列接続、又は複数並列配置されてなる検出部を備えるため、クラック等の亀裂が入った場合に、当該電気回路の断線により電気回路の特性の変化させることができる。つまり、損傷の状態を、機械的ではなく電気的な変化により解析が可能となり、解析作業の手間を省いて処理を簡潔に行うことができるという効果を奏する。
【0009】
また、電気回路が所定の間隔を隔てて複数並列接続、又は複数並列配置されるため、半導体チップの損傷がそのチップの内部のどこまで深く広がっているかを検出して損傷の度合いを解析することができるという効果を奏する。
【0010】
さらに、検出部に接続され、ガードリングの外側に配設される出力部を備えるため、半導体チップに損傷が起こったことによる電気的な変化に関する情報を抽出して解析することが可能となる。
【0011】
さらにまた、テスト時には影響がない損傷であっても、将来的に回路動作に影響を及ぼし兼ねないようなガードリングの外側の損傷を解析できるため、信頼性が高い半導体チップの開発に繋げることができるという効果を奏する。
【0012】
(2.層間で電気回路を構成)
本願に開示するチェックパターンは、前記半導体チップが積層構造を有しており、当該積層の各層間で前記電気回路を構成するものである。
このように、本願に開示するチェックパターンは、半導体チップが積層構造を有している場合に、当該積層の各層間で前記電気回路を構成するため、電気回路のレイアウトの自由度を上げて、半導体チップの損傷について詳細に解析を行うことができるという効果を奏する。
【0013】
(3.各層ごとに電気回路を構成)
本願に開示するチェックパターンは、前記半導体チップが積層構造を有しており、当該積層の各層ごとに前記電気回路を構成するものである。
このように、本願に開示するチェックパターンは、半導体チップが積層構造を有している場合に、当該積層の各層ごとに前記電気回路を構成するため、例えば、各層ごとに機械的な強度が異なるような場合には、各層ごとに損傷の解析が可能となり、半導体チップの損傷について詳細に解析を行うことができるという効果を奏する。
【0014】
(4.出力部の配置)
本願に開示するチェックパターンは、前記ガードリング内に配設され、半導体チップの集積回路に接続される出力パッドと、前記ガードリングの外側に配設される出力部とを所定の間隔で隣接配置するものである。
【0015】
このように、本願に開示するチェックパターンは、前記ガードリング内に配設され、半導体チップの集積回路に接続される出力パッドと、前記ガードリングの外側に配設される出力部とを所定の間隔で隣接配置するため、プローブによるテストを行う場合に、出力パッドを用いた集積回路のテストと、出力を用いた損傷の解析を一括して同時に行うことができ、処理の効率を格段に上げることができるという効果を奏する。
【0016】
(5.low−k材料)
本願に開示するチェックパターンは、前記電気回路がlow−k材料の絶縁膜に形成されるものである。
このように、本願に開示するチェックパターンは、前記電気回路がlow−k材料の絶縁膜に形成されるため、low−k材料のように機械的に脆く損傷を受けやすい材質についての解析を詳細に行うことで、半導体の実装評価を正確に行うことができるという効果を奏する。
なお、low−k材料とは、従来層間絶縁素材として主に利用されていたSiO2の誘電率以下の誘電率である材料とする。
【0017】
(6.ガードリングを周回して配設)
本願に開示するチェックパターンは、前記電気回路が前記ガードリングの外側を周回するように配設されているものである。
このように、本願に開示するチェックパターンは、電気回路が前記ガードリングの外側を周回するように配設されているため、電気回路特性を解析することで半導体チップの損傷箇所を特定することができるという効果を奏する。
【0018】
また、電気回路が周回されているため、ダイシングにより半導体チップのどこの箇所から損傷が発生した場合であっても損傷を確実に検出し確認することができるという効果を奏する。
【0019】
(7.実装評価装置)
本願に開示する実装評価装置は、前記チェックパターンの出力値に基づいて、予め設定された回路特性値と比較して前記ダイシングによる損傷の状態を検出する損傷検出部を備えるものである。
このように、本願に開示する実装評価装置は、チェックパターンの出力値に基づいて、予め設定された回路特性値と比較して前記ダイシングによる損傷の状態(例えば、損傷の深さ、損傷箇所等)を検出するため、半導体チップの損傷等がある場合に、その半導体チップの実装評価を正確に行うことができるという効果を奏する。
【0020】
これまで、本発明をチェックパターン及び装置として示したが、所謂当業者であれば明らかであるように本発明を方法として捉えることもできる。すなわち、本願に開示するチェックパターン及び実装評価装置の構成要素または構成要素の任意の組合せを方法に適用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。従って、本実施形態の記載内容のみで本発明を解釈すべきではない。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
以下の実施の形態では、主にチェックパターン及び装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明は方法としても実施できる。
【0022】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るチェックパターンについて、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るチェックパターンの構成を示す図、図2は、本実施形態に係るチェックパターンの拡大図である。
【0023】
図1(a)は、半導体ウェハ1を示す図であり、図1(b)は、ダイシングによりカットされた半導体チップ5の拡大図である。半導体チップ5a、5b、5c、5dは、ダイシングブレードを当接させるためのスクライブ領域6を挟んで上下左右に隣接配置されている。ダイシングによりカットされたそれぞれの半導体チップ5a、5b、5c、5dには、電気回路2と出力端子3とガードリング4とが少なくとも形成されている。図示しなが、ガードリング4の内側には集積回路が形成される。
【0024】
半導体ウェハ1は、例えば、シリコン等の半導体材料を結晶化させて生成されたインゴットを薄くスライスしたものに、集積回路が形成されている。形成された集積回路を検査した後に、ダイシングブレードを用いて半導体ウェハ1をカットして複数のチップに切り分ける。
【0025】
なお、半導体ウェハ1の材料として、ガリウム砒素、インジュウムリン、ガリウムナイトライド等を用いてもよい。
また、半導体ウェハ1をカットする方法は、ダイシングブレードによるカット以外にもレーザーによるカット、又はそれらの併用による方法等何でもよい。
【0026】
さらに、本実施形態に係るチェックパターンでは、電気回路2や集積回路が形成される層の材料としてlow−k材料を用いるようにしてもよい。このlow−k材料は、構造上機械的な強度が脆く、実装時に膜破断や剥離等の損傷が発生し、製品の品質を下げてしまう可能性があるため、損傷の状態を解析して品質を向上させる技術が望まれている。
【0027】
電気回路2は、図に示すようにコンデンサが並列に複数接続された構成になっており、出力端子3a、3bから最短距離にある、スクライブ領域6と半導体チップ5aとの境界から、平行で且つ異なる距離に重ならないように水平部2aが形成され、その一方の端部を連結する連結部2bが出力端子3a又は3bと接続している。このような櫛状の2つのパターンが相互に対向して配置され、それぞれの水平部2aが並設されて図に示すようなコンデンサを形成している。
【0028】
なお、ここでは、水平部2aがスクライブ領域6と半導体チップ5aとの境界から平行に形成されているが、必ずしも平行にする必要はない。
また、水平部2aは直線に形成されているが、必ずしも直線ではなく、曲線や波線のように様々に形成可能である。
【0029】
さらに、水平部2a及び連結部2bの材料は、好ましくは導電性が高い材料を用い、さらに好ましくは銅を用いるのが望ましい。
ガードリング4は、出力端子3a、3bと電気回路2を接続するために、出力端子3a、3bの内側に形成されている。また、その他の出力端子3は、内部の集積回路と接続するために、ガードリング4の内側に配設されるように形成されている。
【0030】
図2に、電気回路2及び出力端子3a、3bの拡大図を示す。図2(a)は通常の状態を示しており、図2(b)は、ダイシングによりクラック8が発生して電気回路2の一部が断線した状態を示している。また、図中の斜線部分7はコンデンサにより発生している電気容量を示している。図2(b)に示すように、クラック8によりスクライブ領域6と半導体チップ5aとの境界に近い方から5箇所で断線が発生している。図2(b)の場合、断線後は太線部分のみが導電体として機能するため、斜線部分7が示す電気容量が図2(a)の場合と比較して減少し、断線が発生したことを電気的に確認することができる。また、併せて、電気容量の値を解析することで、何れの箇所で断線が発生しているかを特定することができ、クラックの深さを特定することができる。
【0031】
このように、本実施形態に係るチェックパターンによれば、ガードリング4の外側領域に、半導体チップ5aの内側に向かって電気回路2を所定の間隔を隔てて複数並列配置されてなる検出部を備えるため、クラック等の亀裂が入った場合に、当該電気回路2の断線により電気回路の特性の変化させることができる。つまり、損傷の状態を、機械的ではなく電気的な変化により解析が可能となり、解析作業の手間を省いて処理を簡潔に行うことができる。
【0032】
また、電気回路2が所定の間隔を隔てて複数並列配置されるため、半導体チップ5aの損傷がそのチップの内部のどこまで深く広がっているかを検出して損傷の度合いを解析することができる。
【0033】
さらに、検出部に接続され、ガードリング4の外側に配設される出力端子3を備えるため、半導体チップ5aに損傷が起こったことによる電気的な変化に関する情報を抽出して解析することが可能となる。
【0034】
さらにまた、テスト時には影響がない損傷であっても、将来的に回路動作に影響を及ぼし兼ねないようなガードリング4の外側の損傷を解析できるため、信頼性が高い製品の開発に繋げることができる。
【0035】
さらにまた、電気回路2がlow−k材料の絶縁膜に形成される場合、low−k材料のように機械的に脆く損傷を受けやすい材質についての解析を詳細に行うことで、半導体の実装評価を正確に行うことができる。
【0036】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るチェックパターンについて、図3及び図4を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るチェックパターンの構成を示す図、図4は、本実施形態に係るチェックパターンの拡大図である。
なお、ここでは、第1の実施形態に係るチェックパターンと同様の箇所についての説明は省略する。
【0037】
図3において、第1の実施形態に係るチェックパターンと異なるのは、電気回路2が抵抗を並列に複数接続した構成となっている点である。つまり、電気回路2における連結部2bが、水平部2aの両方の端部と連結されており、水平部2aの間には抵抗を備え、それぞれの連結部2bは、それぞれ異なる出力端子3a、3bに接続されている。
【0038】
図4に、本実施形態に係る電気回路2及び出力端子3a、3bの拡大図を示す。図4(a)は通常の状態を示しており、図4(b)は、ダイシングによりクラック8が発生して電気回路2の一部が断線した状態を示している。図4(b)に示すように、クラック8によりスクライブ領域6と半導体チップ5aとの境界に近い方から3箇所で断線が発生している。図4(b)の場合、断線後は太線部分のみが導電体として機能するため、出力端子3a、3b間の抵抗値が図3(a)の場合と比較して減少し、断線が発生したことを電気的に確認することができる。また、併せて、抵抗値を解析することで、何れの箇所で断線が発生しているかを特定することができ、クラックの深さを特定することができる。
【0039】
このように、本実施形態に係るチェックパターンによれば、前記電気回路2が抵抗であるため、電気回路2の特性の変化を確実に検出して、半導体チップ5aの損傷について正確な解析を行うことができる。
【0040】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係るチェックパターンについて、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態に係るチェックパターンの上面図及び断面図である。図5(a)は、本実施形態に係るチェックパターンの上面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるA−A線におけるの断面図であり、図5(c)は、図5(a)におけるB−B線におけるの断面図である。
【0041】
なお、ここでは、第1の実施形態又は第2の実施形態に係るチェックパターンと同様の箇所についての説明は省略する。
ここでは、電気回路2及び集積回路のパターン形成を集積回路製造工程の絶縁膜形成法及びメタライゼーション法を利用して行っている。図5(b)及び図5(c)において、半導体ウェハ1には、絶縁層11(11a、11b及び11c)が積層されており、絶縁層11aには水平部2a、連結部2bからなるパターン2A、絶縁層11bには水平部2c、連結部2dからなるパターン2B、絶縁層11cには出力端子3aがそれぞれ形成されている。つまり、各層間で電気回路2を形成している。
【0042】
ガードリング4は各層ごとに形成され、パターンや絶縁層11の材質に基づいて任意の太さで形成される。つまり、丈夫な層は薄いガードリング4が形成され、脆い層は厚いガードリング4が形成される。
【0043】
ダイシングによりクラックが発生した場合は、図2の場合と同様に、スクライブ領域6と半導体チップ5aとの境界に近い方から水平部2a又は2cが断線し、各層間に発生していた電気容量が減少することで、クラックの発生を確認することができると共に、電気容量の値を解析してクラックの深さを確認することができる。
【0044】
また、上記第1の実施形態及び第2の実施形態においては、電気回路2を形成する際に水平部が重ならないように形成する必要があるが、本実施形態においては、同一層内の水平部が重ならないように形成すればよく、異層間の水平部(水平部2aと水平部2c)については、上面から見て重なるように形成してもよい。すなわち、パターンのレイアウトの自由度が増し、半導体チップ5aの損傷を電気的に様々な視点から解析することが可能となる。
【0045】
このように、本実施形態に係るチェックパターンによれば、半導体チップ5aが積層構造を有している場合に、当該積層の各層間で前記電気回路2を構成するため、電気回路2のレイアウトの自由度を上げて、半導体チップ5aの損傷について詳細に解析を行うことができる。
【0046】
(本発明の第4の実施形態)
本実施形態に係るチェックパターンについて、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係るチェックパターンの斜視図である。図中の2つの層は実際には積層されて密着した状態で形成されているが、ここではわかりやすくするために、それぞれの層を別々に図示している。図6に示す通り、本実施形態に係るチェックパターンは、半導体チップ5aが積層構造を有する場合に、各層ごとに電気回路2が形成されている。
【0047】
なお、ここでは、第1の実施形態、第2の実施形態又は第3の実施形態に係るチェックパターンと同様の箇所についての説明は省略する。
各層ごとに形成された複数の電気回路2は、最上層のそれぞれ異なる出力端子3(3a、3b、3c、3d)と接続されており、各層ごとに電気回路2の回路特性を確認して解析することができる。半導体チップ5が積層構造を有する場合には、層によって強度や撓み率が異なる場合がある。つまり、クラックが発生しやすい層と発生しにくい層があるため、各層ごとにクラックの深さが異なってくる。
【0048】
また、層によって集積回路のパターンが異なるため、ガードリング4の内側ぎりぎりにパターンが配設されている層もあれば、内側の中心付近にのみパターンが配設される層も考えられる。そのような場合に、前者であれば、僅かなクラックでも回路の動作に影響を及ぼす可能性があり、後者であれば、多少のクラックでも回路の動作に影響を及ぼす可能性は少なくなる。
【0049】
つまり、本実施形態に係るチェックパターンによれば、図6に示すように、半導体チップ5aが積層構造を有している場合に、当該積層の各層ごとに前記電気回路2を構成するため、各層ごとに損傷の解析が可能となり、半導体チップの損傷について詳細に解析を行うことができる。そして、解析を行った結果、損傷を受けやすい層が判明した場合には、例えば、ガードリング4の広狭を調整して、各層に応じた耐久性を保証できるようにしてもよい。
【0050】
(本発明の第5の実施形態)
本実施形態に係るチェックパターンについて、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態に係るチェックパターンの出力端子とガードリングの配置図である。
なお、ここでは、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態又は第4の実施形態に係るチェックパターンと同様の箇所についての説明は省略する。
【0051】
図7に示すように、半導体チップ5aには、出力端子3がチップの内部を周回するように配設されている。出力端子3は、主にガードリングの内部に形成される集積回路(図示しない)と接続されており、外部とはワイヤボンディングにより細い導電線を介して接続される。しかし、出力端子3の中には、集積回路や外部との接続を行わないダミー端子(3a、3b、3c、3d)があり、本実施形態に係るチェックパターンにおいては、電気回路2をそのダミー端子を出力端子として形成する。
【0052】
つまり、ガードリング4の外側に配設される出力端子とガードリング4の内側に配設される出力端子を隣接して配置する。そうすることでガードリング4の内側に配設され、集積回路と接続されている出力端子3を利用して行う集積回路の動作テスト及びガードリング4の外側に配設され、電気回路2と接続されている出力端子3aないし3dを利用して行う損傷の電気的な解析を、プローブ等を利用して同時に一括で行うことができ、処理の効率化を図ることができる。
【0053】
(本発明の第6の実施形態)
本実施形態に係るチェックパターンについて、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係るチェックパターンの上面図である。図8(a)は電気回路2がコンデンサの場合であり、図8(b)は電気回路2が抵抗の場合である。
なお、ここでは、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態又は第5の実施形態に係るチェックパターンと同様の箇所についての説明は省略する。
【0054】
図8に示すように、電気回路2がガードリング4の外側を周回するようにして配設されており、半導体チップ5aにクラックが発生した場合に、ほぼ全てのクラックを検出し、その深さを確認することができる。また、図8(a)のようにコンデンサを形成した場合には、電気容量値を算出することで、クラックが発生した位置も特定することができる。つまり、図8(a)において、クラックAにより断線した場合とクラックBにより断線した場合では、クラックの深さは同じであっても電気容量の値には差が生じるため、損傷の箇所を特定することが可能となる。
【0055】
このように、本実施形態に係るチェックパターンによれば、電気回路2がガードリング4の外側を周回するように配設されているため、電気容量値を解析することで半導体チップの損傷箇所を特定することができる。
また、電気回路2が周回されているため、ダイシングにより半導体チップ5aのどこの箇所から損傷が発生した場合であっても損傷を検出して確実に確認することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
本実施形態に係る実装評価装置について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る実装評価装置の機能ブロック図、図10は、本実施形態に係る実装評価装置の動作を示すフローチャートである。
【0057】
なお、ここでは、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態又は第6の実施形態に係るチェックパターンと同様の箇所についての説明は省略する。
【0058】
図9において、本実施形態に係る実装評価装置10は、電気回路2と出力端子3と入力部15と検出部20と回路特性情報25とを備え、検出部20により検出された結果が損傷情報30として出力される。
電気回路2及び出力端子3については、前記第1ないし第6の実施形態と同様であるため説明は省略する。
【0059】
入力部15は、出力端子3で出力された情報を受け付ける処理を行う。
検出部20は、入力部15に入力された情報と回路特性情報25に格納されている情報に基づいて、半導体チップ5aが受けたクラック等の損傷を検出する処理を行う。
【0060】
回路特性情報は、電気回路2の回路特性に関する情報を格納するデータベースである。この回路特性に関する情報は、回路設計時の理論値を予め登録してもよいし、ダイシングを行う直前に回路特性を測定して登録するようにしてもよい。
損傷情報30は、検出部20が検出した損傷に関する情報である。例えば、半導体チップ5aに発生したクラックの深さ、クラックの位置、損傷の度合いを示す情報等である。
【0061】
次に、図10のフローチャートに基づいて本実施形態に係る実装評価装置10の動作を説明する。まず、電気回路2の回路情報を回路特性情報25に登録する(ステップ1)。回路特性情報の登録は、上述したように理論値を登録してもよいし、実際に測定した値を登録するようにしてもよい。回路特性情報には、コンデンサの電気容量値や抵抗値等を含む、電気回路2に関する様々な情報が含まれる。回路特性情報が登録されると、ダイシングを行って(ステップ2)、ウェハ1を複数の半導体チップに切り分ける。
【0062】
半導体チップに切り分けられたら、それぞれの半導体チップに損傷がないかを確認するために、プローブによる測定を行い(ステップ3)、入力部15に入力される(ステップ4)。入力された測定データと回路特性情報25に登録された回路特性情報とを比較し(ステップ5)、半導体チップに損傷が有るかどうかを判定する(ステップ6)。
【0063】
なお、損傷の有無の判定は、前記で示すように電気容量値や抵抗値といったインピーダンスの変化によって判定する。測定データと回路特性情報25に登録された回路特性情報とを比較することで、インピーダンスの変化量を算出し、その変化量から電気回路2に断線が発生しているかどうかを求めて、クラックの発生を検出することができる。
【0064】
ステップ6の判定の結果、損傷がなければそのまま処理を終了する。損傷があれば損傷の状態を解析し(ステップ7)、損傷情報30を出力して(ステップ8)、処理を終了する。
なお、損傷の状態の解析は、ステップ5で比較した結果算出されたインピーダンスの変化量から、電気回路2の状態を求める。具体的には、インピーダンスの変化量から断線が発生している箇所を特定し、クラックの深さや位置を解析する。
【0065】
また、実装評価装置10に、クラックの深さや位置に関する情報と、集積回路の配線とガードリング4との距離、ガードリングの広狭、絶縁層の強度等の半導体チップ5に関する様々な情報を関連付けるテーブルを用意し(図示しない)、そのテーブルに基づいて、半導体チップ5を総合的に解析できるようにしてもよい。そうすることで、半導体チップ5の品質の向上に繋げることができる。
【0066】
このように、本実施形態に係る実装評価装置によれば、電気回路2の出力値に基づいて、予め設定された回路特性値と比較してダイシングによる損傷の状態を検出するため、半導体チップ5に損傷等がある場合に、その半導体チップ5の実装評価を正確に行うことができる。
【0067】
なお、一般的には、ダイシングによるクラックの発生は、半導体チップ5aの四隅やスクライブ領域に残存しているテストパターンを起点にして起こる可能性が高いため、それらの箇所周辺には電気回路2が配設されることが望ましい。
【0068】
以上の前記各実施形態により本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は実施形態に記載の範囲には限定されず、これら各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そして、かような変更又は改良を加えた実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。このことは、特許請求の範囲及び課題を解決する手段からも明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1の実施形態に係るチェックパターンの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るチェックパターンの拡大図である。
【図3】第2の実施形態に係るチェックパターンの構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係るチェックパターンの拡大図である。
【図5】第3の実施形態に係るチェックパターンの上面図及び断面図である。
【図6】第4の実施形態に係るチェックパターンの斜視図である。
【図7】第5の実施形態に係るチェックパターンの出力端子とガードリングの配置図である。
【図8】第6の実施形態に係るチェックパターンの上面図である。
【図9】その他の実施形態に係る実装評価装置の機能ブロック図である。
【図10】その他の実施形態に係る実装評価装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 半導体ウェハ
2 電気回路
2a 水平部
2b 連結部
3(3a、3b、3c、3d) 出力端子
4 ガードリング
5(5a、5b、5c、5d) 半導体チップ
6 スクライブ領域
7 斜線部
8 クラック
10 実装評価装置
11(11a、11b、11c) 絶縁層
15 入力部
20 検出部
25 回路特性情報
30 損傷情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングを行うためのスクライブ領域からガードリングの外側領域に、半導体チップの内側に向かって電気回路を所定の間隔を隔てて複数並列接続、又は複数並列配置されてなる検出部と、
当該検出部に接続され、前記ガードリングの外側に配設される出力部とを備えることを特徴とするチェックパターン。
【請求項2】
請求項1に記載のチェックパターンにおいて、
前記半導体チップが積層構造を有しており、当該積層の各層間で前記電気回路を構成することを特徴とするチェックパターン。
【請求項3】
請求項1に記載のチェックパターンにおいて、
前記半導体チップが積層構造を有しており、当該積層の各層ごとに前記電気回路を構成することを特徴とするチェックパターン。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のチェックパターンにおいて、
前記ガードリング内に配設され、半導体チップの集積回路に接続される出力パッドと、前記ガードリングの外側に配設される出力部とを所定の間隔で隣接配置することを特徴とするチェックパターン。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のチェックパターンにおいて、
前記電気回路がlow−k材料の絶縁膜に形成されることを特徴とするチェックパターン。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のチェックパターンにおいて、
前記電気回路が前記ガードリングの外側を周回するように配設されていることを特徴とするチェックパターン。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のチェックパターンの出力値に基づいて、予め設定された回路特性値と比較して前記ダイシングによる損傷の状態を検出する損傷検出部を備えることを特徴とする実装評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−56428(P2010−56428A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221948(P2008−221948)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(508262836)株式会社ウォルツ (4)
【出願人】(391043332)財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 (53)
【Fターム(参考)】