説明

ディスク原盤の製造方法、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の移動距離差検出方法、およびディスク原盤の移動距離差検出装置

曲率をもって移動する水平移動デバイスを使用して正確なディスク原盤の送り精度を実現する、ディスク原盤の製造方法を提供すること。 レジスト原盤108を自転させる工程と、前記レジスト原盤108を移動させる工程と、前記移動に伴う前記レジスト原盤108の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる工程と、前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記レジスト原盤108の中心点の直線上の移動距離との差を検出する工程と、前記検出結果に基づいて、所定の製造パラメータを制御する工程とを備える、ディスク原盤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光ディスクなどのように原盤上に螺旋状に信号を精度良く記録する場合に有用であるディスク原盤の製造方法、ディスク原盤の移動距離差検出方法、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の移動距離差検出装置、ディスク原盤の検査方法、ディスク原盤の検査装置に関する。
【背景技術】
一般的に、光ディスクの製造工程は、レーザや電子線などを源とした光ディスク原盤記録装置を使用してフォトレジストが塗布されたディスク原盤を露光し、露光されたディスク原盤を現像することによって表面に情報ピットや溝などの凹凸パターンが形成された光ディスク原盤を作製する工程と、光ディスク原盤から凹凸パターンを転写したスタンパと呼ばれる金属金型を作製する工程と、スタンパを使用して樹脂製の成形基板を作製する工程と、成形基板に記録膜や反射膜などを成膜し、貼りあわせる工程とを備える。
光ディスクの情報ピットや溝などのパターンを記録するための原盤記録装置の一例として、記録ビームとして電子線を用いる電子線記録装置の一般例を図17に示す。
電子線記録装置は、電子線を発生させる電子線源201と、放出された電子線をレジスト原盤210に収束させ、入力される情報信号に応じてレジスト原盤210上に情報パターンを記録するための電子光学系202とを備えて構成されている電子カラム203が、真空槽213内に設けられた構造となっている。
電子線源201は、電流を流すことで電子を放出させるフィラメントや、放出された電子を閉じ込める電極、電子線を引き出し、加速する電極などを有し、電子を一点から放出することができる。
電子光学系202は、電子線を収束させるレンズ204、電子線のビーム径を決定するアパーチャ205、入力される情報信号に応じて電子線を偏向させる電極206、207、電極206で偏向された電子線が遮蔽される遮蔽板208、レジスト原盤210表面に電子線を収束させるレンズ209を有している。
レジスト原盤210は、自転デバイス211上に保持されており、水平移動デバイス212によって、自転デバイス211ごと水平移動される。レジスト原盤210を回転させながら、水平移動させると、電子線をレジスト原盤210に螺旋状に照射することが可能となり、光ディスクの情報信号を原盤に螺旋状に記録することができる。
レジスト原盤210の表面と略同じ高さには焦点調整用グリッド214が設けられている。これは、レジスト原盤210の表面に電子線を収束させるため、レンズ209の焦点位置を調整するために設けられている。電子線が焦点調整用グリッド214上に照射され、焦点調整用グリッド214で反射する反射電子や、放出される2次電子などを検出器で検出することによって、焦点調整用グリッド214は、グリッド像をモニタし、像の見え方によって、レンズ209の焦点位置を調整することができる。
電極206は、電子線を水平移動デバイス212の移動方向と略垂直方向に偏向するように設けられている。電極206に入力される信号に応じて、電極206が電子線を遮蔽板208の方に偏向することによって、電子線をレジスト原盤210に照射するか、しないかを選択することができ、レジスト原盤210に情報ピットパターンなどを記録することができる。
電極207は、電極206に対して略垂直方向に電子線を偏向するように設けられており、電極に入力される信号に応じて、電子線を水平移動デバイス212の移動方向と略同じ方向に偏向することができる。水平移動デバイス212の移動方向は、記録されるレジスト原盤210の半径方向に相当し、電極207に入力する信号によって、光ディスクのトラックピッチの変動などを補正することが可能となる。
水平移動デバイス212としては、例えば図18に示すように、ネジ301をモータ302で回転させ、レジスト原盤303を保持したステージ304に刻まれたネジピッチによって、直線的にレジスト原盤303を送るネジ送り式のものや、あるいは図19に示すように一点401を中心とし、レジスト原盤402を回転させながらアーム403によって曲率を持って送るスイングアーム式などの構造を持つものがある。水平移動デバイス212の送り精度などを高めるために用いられる水平移動デバイス212の位置検出装置としては、レーザ干渉測長計などの測長装置が主に用いられる。図18のような直線的な送り構造を持つものでは、レーザ干渉測長計などによって、外部からレーザを水平移動デバイス212に設けられたターゲットに照射し、その反射光などによる干渉パターンなどから水平移動デバイス212の位置を測長し、所望の位置からのずれ量を検出する。そして、検出されたずれを補正するように水平移動デバイス212を駆動させたり、また電極207などを駆動させ電子ビームの照射位置を制御することによって補正することが可能である(例えば特開2002−141012号公報参照)。
図19に示すようなスイングアーム式の水平移動デバイス212では、位置測定点が曲率をもって動く特性から、直線的な送りの場合とは異なりレーザ干渉測長計などを用いることが困難である。CDやDVD程度の情報密度を有する光ディスクを作成する場合、そのトラックピッチの変動量の許容値は大きく、スイングアーム式のような曲率を持って移動する水平移動デバイス212を用いても、レーザ干渉計などの測長器を用いることなく、アームを駆動するモータの精度や、回転軸に設けられているエンコーダなどの出力のモニタだけで十分な精度で記録することが可能であった。
しかし、デジタルハイビジョン情報などの大容量を記録する次世代光ディスクにおいては、そのトラックピッチもDVDに比べ、約半分程度となり、トラックピッチ変動量の許容値も非常に小さくなってきている。そのため、スイングアーム式などのように曲率をもって移動するような水平移動デバイス212においても、正確な位置検出をし、サーボによって位置制御をするシステムの導入が必要となった。
すなわち、スイングアーム式の場合、水平移動デバイス212の移動に伴う電子線の軌跡は、図19に示す点線となる。この軌跡は、点401を中心とする円弧状であるため、レジスト原盤402の半径方向の直線とずれを生じる。このずれが大きくなる程、トラックピッチのずれが大きくなってしまう。上記大容量の次世代光ディスクを作成する場合は、このようなトラックピッチのずれが問題となっていた。例えば、図19に示す例では、レジスト原盤402の縁部の方が中心付近よりもトラックピッチが狭くなっていた。
また、このようにトラックピッチが狭くなる領域において、振動等により、トラックピッチが変動することもあり、このようなトラックピッチの変動も、大容量の次世代光ディスクを作成する際に問題となっていた。
また、図20は、図18に示すネジ送り式の水平移動デバイス212を備える電子線記録装置の断面を示す。レーザ干渉測長計305を固定している部分(例えば電子線記録装置の場合、水平移動デバイス212のベースが固定されている真空槽底面306など)に対する水平移動デバイス212の位置補正は可能であるが、実際に記録ビームを集束させる記録ビーム集束デバイス(例えば電子線記録装置の場合、電子カラム)と水平移動デバイス212との相対的な位置関係を補正するまでには至らない場合がある。その場合、記録ビームがレジスト原盤210に照射されることによって形成される光ディスクなどの螺旋状パターンの送り精度を向上させるためには不充分であった。
【発明の開示】
本発明は、従来の課題に鑑み、曲率をもって移動する水平移動デバイスを使用して正確なディスク原盤の送り精度を実現する、ディスク原盤の製造方法、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の移動距離差検出方法、ディスク原盤の移動距離差検出装置、ディスク原盤の検査方法、およびディスク原盤の検査装置を提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、水平移動デバイスと記録ビーム集束デバイスとの相対的な位置関係を把握することができる、ディスク原盤の製造方法、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の検査方法、ディスク原盤の検査装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、第1の本発明は、ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる工程と、
前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する工程と、
前記検出結果に基づいて、所定の製造パラメータを制御する工程と、を備える、ディスク原盤の製造方法である。
第2の本発明は、前記ディスク原盤の移動は、前記ディスク原盤の中心点とは異なる回転中心のまわりに回転する公転である、第1の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第3の本発明は、前記ディスク原盤の自転は、長手形状を有するアームの一端で行い、前記ディスク原盤の公転は、前記アームの回転中心の廻りの公転であり、
前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた所定のパターンを利用して行う、第2の本発明ディスク原盤の製造方法である。
第4の本発明は、前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた、前記中心点の軌跡に相似する形状のホログラムパターンにレーザ光を照射することにより、その回折光の干渉縞を計数することにより行う、第3の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第5の本発明は、前記中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた磁気パターンを磁気ヘッドにより計数することにより行う、第3の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第6の本発明は、前記中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた、直線形状のホログラムパターンにレーザ光を照射することにより、その回折光の干渉縞の間隔を計測することにより行う、第3の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第7の本発明は、前記干渉縞の間隔の計測は、前記アームの回転の限界点を基準としてなされる、第6の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第8の本発明は、前記所定の製造パラメータを制御する工程は、前記ディスク原盤へのビーム照射の位置を制御する工程である、第1の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第9の本発明は、前記ビーム照射の位置の制御は、電子線を電界により偏向させることにより行う、第8の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第10の本発明は、前記ビーム照射の位置の制御は、レーザ光をAODを用いて偏向することにより行う、第8の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第11の本発明は、前記ビーム照射の位置の制御は、レーザ光をEODを用いて偏向することにより行う、第8の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第12の本発明は、前記ビーム照射の位置の制御は、レーザ光源を圧電素子を用いて偏向することにより、前記レーザ光源から照射されるレーザ光の偏向を行うものである、第8の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第13の本発明は、前記所定の製造パラメータを制御する工程は、前記移動速度を制御する工程である、第1の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第14の本発明は、前記所定の製造パラメータを制御する工程は、前記自転速度を制御する工程である、第6の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第15の本発明は、前記回折光の干渉縞の間隔の計測値、記録線速度、および送りピッチに基づいて、前記自転速度を制御する、第14の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第16の本発明は、ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる移動距離読みとりデバイスと、を備え、
前記移動距離読みとりデバイスにより読みとられた前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する検出デバイスと、
前記検出結果に基づいて、所定の製造パラメータを制御する制御デバイスと、を備える、ディスク原盤の製造装置である。
第17の本発明は、ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる工程と、
前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する工程と、を備える、ディスク原盤の移動距離差検出方法である。
第18の本発明は、ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる移動距離読みとりデバイスと、
前記移動距離読みとりデバイスにより読みとられた前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する検出デバイスと、を備える、ディスク原盤の移動距離差検出装置である。
第19の本発明は、ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記ディスク原盤にビームを照射するビーム照射デバイスから、前記ディスク原盤にビームを照射する工程と、
前記ビーム照射デバイスと所定の関係にある基準からの前記ディスク原盤の移動距離を読みとる工程と、を備え、
前記読みとった前記ディスク原盤の移動距離に基づいて、所定の製造パラメータを制御する、ディスク原盤の製造方法である。
第20の本発明は、前記基準は、前記ビーム照射デバイス上に設けられたものである、第19の本発明のディスク原盤の製造方法である。
第21の本発明は、ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記ディスク原盤にビームを照射するビーム照射デバイスと、
前記ディスク原盤の移動距離を読み取る移動距離読み取りデバイスと、
前記ビーム照射デバイスと所定の関係にある、前記移動距離の読み取りのための基準と、を備え、
前記移動距離の読み取りは、前記基準と前記ディスク原盤との距離を読み取ることにより行われ、
前記読みとった前記ディスク原盤の移動距離に基づいて、所定の製造パラメータが制御される、ディスク原盤製造装置である。
第22の本発明は、ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記ディスク原盤にビームを照射するビーム照射デバイスから、前記ディスク原盤にビームを照射する工程と、
前記ビーム照射デバイスと所定の関係にある基準からの前記ディスク原盤の移動距離を読みとる工程と、
所定の期間において、前記ディスク原盤が移動すべき距離と、前記読み取り工程において読みとられた移動距離とを比較する工程と、を備える、ディスク原盤の検査方法である。
第23の本発明は、ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記ディスク原盤にビームを照射するビーム照射デバイスと、
前記ビーム照射デバイスと所定の関係にある基準からの前記ディスク原盤の移動距離を読みとる移動距離読み取りデバイスと、
所定の期間において、前記ディスク原盤が移動すべき距離と、前記読みとられた移動距離とを比較する比較デバイスと、を備える、ディスク原盤の検査装置である。
第24の本発明は、ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記ディスク原盤の位置に基づいて、所定の製造パラメータを制御する工程と、を備える、ディスク原盤の製造方法である。
第25の本発明は、ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記ディスク原盤の位置に基づいて、所定の製造パラメータを制御する制御器と、を備える、ディスク原盤の製造装置である。
本発明によれば、曲率をもって移動する水平移動デバイスを使用して正確なディスク原盤の送り精度を実現する、ディスク原盤の製造方法、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の移動距離差検出方法、ディスク原盤の移動距離差検出装置、ディスク原盤の検査方法、およびディスク原盤の検査装置を提供することができる。
また、別の本発明によれば、水平移動デバイスと記録ビーム集束デバイスとの相対的な位置関係を把握することができる、ディスク原盤の製造方法、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の検査方法、ディスク原盤の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施の形態1におけるディスク原盤製造装置の一例を示す図
図2は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である水平移動デバイスを記録ビーム集束デバイス側から見た模式図
図3は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である記録点変動検出デバイスの実施の形態1を示す模式図
図4は、本発明のディスク原盤製造方法において原盤上の記録ビームの照射位置と測定したい記録点の軌道を説明する図
図5は、本発明のディスク原盤製造装置の構成要素である記録点変動検出デバイスの一例を示す図
図6は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である記録点変動制御装置の一例を示す図
図7は、本発明のディスク原盤製造装置の一部であるレーザ記録装置の一例を示す図
図8は、本発明のディスク原盤製造装置の一部であるAODの動作を示す図
図9は、本発明のディスク原盤製造装置の一部であるEODの動作を示す図
図10は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である半導体レーザ光源の構造を示す図
図11は、本発明の実施の形態2のディスク原盤製造装置の一部である記録点変動検出デバイスの一例を示す図
図12は、本発明のディスク原盤製造方法において原盤移動量検出デバイスの動きを拡大して示した図
図13は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である、複数のスケールとスケール情報検出デバイスを設けた記録点変動検出デバイスの一例を示す図
図14は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である原盤移動量検出デバイスの拡大図
図15は、本発明のディスク原盤製造装置の一部である、直線的な動きをする水平移動デバイスにおける記録点変動検出デバイスの一例を示す図
図16は、本発明の実施の形態3のディスク原盤製造装置の断面構成図
図17は、従来のディスク原盤製造装置の装置構成を示す図
図18は、従来のディスク原盤製造装置における、直線的な動きをする水平移動デバイスの一例を示す図
図19は、従来のディスク原盤製造装置における、曲率を持って動く水平移動デバイスの一例を示す図
図20は、直線的な動きをする水平移動デバイスを利用した従来のディスク原盤製造装置の断面構成図
【符号の説明】
101 レーザ光源
102 レーザ受光部
103 干渉パターン計測装置
104 原盤移動量検出デバイス
105 スケール
106 水平移動デバイス
108 原盤
109 自転デバイス
112 記録点移動量補正デバイス
201 電子線源
202 電子光学系
203 電子カラム
204 レンズ
205 アパーチャ
206、207 電極
210 レジスト原盤
211 自転デバイス
212 水平移動デバイス
213 真空槽
214 焦点調整用グリッド
301 ネジ
302 モータ
403 スイングアーム
514 記録点変動検出デバイス
604 錘
703 原盤の自転中心
704 原盤の自転軌道
705 原盤の公転軌道
1502 記録ビーム偏向デバイス(AOD)
1504 記録ビーム集束デバイス
1602 トランスデューサ
1604 0次透過レーザ光
1605 1次回折レーザ光
1701 記録ビーム偏向デバイス(EOD)
1702 コントローラ
1802 圧電素子
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1に本実施の形態1におけるディスク原盤の製造装置の一例として電子線記録装置500を示す。電子線記録装置500は、電子線を発生させる電子線源501と、放出された電子線を本発明のディスク原盤に一例として対応するレジスト原盤510に収束させ、入力される情報信号に応じてレジスト原盤510上に情報パターンを記録するための電子光学系502を備えて構成されている電子カラム503が、真空槽513内に設けられた構造となっている。
電子線源501は、電流を流すことで電子を放出させるフィラメントや、放出された電子を閉じ込める電極、電子線を引き出し、加速する電極などを有し、電子を一点から放出することができる。
電子光学系502は、電子線を収束させるレンズ504、電子線のビーム径を決定するアパーチャ505、入力される情報信号に応じて電子線を偏向させる電極506、507、電極506で偏向された電子線が遮蔽される遮蔽板508、レジスト原盤510表面に電子線を収束させるレンズ509を有している。
また、レジスト原盤510は自転デバイス511上に保持されており、本発明の移動デバイスに一例として対応する水平移動デバイス512によって、自転デバイス511ごと水平移動される。レジスト原盤510を回転させながら、水平移動させると、電子線をレジスト原盤510に螺旋状に照射することが可能となり、光ディスクの情報信号をレジスト原盤510に螺旋状に記録することができる。
電極506は、電子線を水平移動デバイス512の移動方向と略垂直方向に偏向するように設けられている。電極506に入力される信号に応じて、電極506が電子線を遮蔽板508側に偏向することによって、電子線をレジスト原盤510に照射するか、しないかを選択することができ、レジスト原盤510に情報ピットパターンなどを記録することができるようになっている。
電極507は、電極506に対して略垂直方向に電子線を偏向するように設けられており、電極に入力される信号に応じて、電子線を水平移動デバイス512の移動方向と略同じ方向に偏向することができる。水平移動デバイス512の移動方向は、記録されるレジスト原盤510の半径方向に相当し、電極507に入力する信号によって、光ディスクのトラックピッチのずれや変動などを補正することが可能となる。また、電子カラム503と水平移動デバイス512との相対的な位置関係を測定する記録点変動検出デバイス514(本発明の移動距離読み取りデバイスに一例として対応)が電子カラム503(ビーム照射装置)に設けられている。
水平移動デバイス512は、図2に示すように電子カラム503側から見ると、中心軸601を中心として、アーム602が延びた構造となっており、自転デバイス603がアーム602の一先端部に保持されており、またアーム602の自転デバイス603の反対側先端部には自転デバイス603と略同じ質量の錘604を載せ、天秤のように重量バランスを取っている。自転デバイス603上において、中心軸601を中心としてアーム602が回転することによってレジスト原盤510の電子線が照射される位置が送られる。すなわち、レジスト原盤510は自転デバイス603により自転しながら、中心軸601を中心として公転する。そのため、水平移動デバイス512によって自転デバイス603の水平位置が動かされると、電子カラム503の中心位置606(電子線が照射される位置)は、図2の点線に示すように、自転デバイス603の中心点を通り、中心軸601を中心とする円弧にそって動く。
図1、図2に示す電子線記録装置500において、電子カラム503と水平移動デバイス512との相対的な位置関係を測定する記録点変動検出デバイス514を図3に示す。
記録点変動検出デバイス514は、レーザ光源101とレーザ受光部102と干渉パターン計測装置103とを有する原盤移動量検出デバイス104と、本発明の所定のパターンの一例であるホログラムパターンが形成されたスケール105を備える。原盤移動量検出デバイス104は、電子カラム503に接続されており、スケール105は、水平移動デバイス106に接続されている。レジスト原盤108は自転デバイス109上に保持されており、自転デバイス109は水平移動デバイス106上に設けられている。水平移動デバイス106は回転中心107を中心に回転し、自転デバイス109を曲率をもって移動させる。スケール105は、水平移動デバイス106の回転軌道110と相似する形状を有した側面部111の表面に設けられている。すなわち、側面部111は、回転中心107を中心とした回転軌道110と同心の円弧上に形成される。スケール105に設けられたホログラムパターンにレーザ光を照射し、反射してくる回折光を干渉させることによって生じる干渉縞の明暗パターンを干渉パターン計測装置103で計数することで水平移動デバイス106の位置を検出することができる。本発明の検出デバイスに一例として対応する原盤移動量検出デバイス104からの情報は記録点移動量補正デバイス112に入力される。
この記録点変動検出デバイス514は、次のように動作を行う。すなわち、レジスト原盤108の移動距離差検出方法は次の動作により行う。
図4に原盤上の記録ビームが照射されるべき位置の軌道と、レジスト原盤701の曲率を有した移動に伴う記録点の軌道を示す。レジスト原盤701上に記録される光ディスクのトラックピッチは、直線軌道702の矢印が示すように、レジスト原盤701の回転中心703を通り、本来、レジスト原盤701の自転軌道704と垂直に交わる方向に等間隔に直線的に記録される必要がある。しかし、レジスト原盤701が曲率を持って移動させられると、実際に記録ビームが照射される位置は軌道705上を通る。この軌道705は、レジスト原盤701を回転中心107を中心に回転(すなわち公転)させたときのレジスト原盤701の回転中心703の軌跡でもある。図3に示す、水平移動デバイス106の側面部111に設けられた等間隔に格子を設けられたスケール105に、レーザを照射してその干渉パターンを計測すると、軌道705上の位置を測定できる。測定された軌道705上の位置から、実際に測定したい直線軌道702上の位置を求めるためには、軌道705上および直線軌道702上の、回転中心703からの距離のずれを補正する必要がある。
図3における符号113に示すように、水平移動デバイス106の回転中心107から記録ビームの照射位置までの距離をr(m)、符号114に示すように、水平移動デバイス106の回転中心107から、スケール105までの距離をR(m)とし、符号115に示すようにスケール105が検出できる最小単位だけ水平移動デバイス106が移動したときの移動角度をθ(rad)とすると、スケール105で測定される原盤中心からの移動距離はnRθ(m)で表される(n=0,1,2,3,・・・)。しかし、実際に記録ビームが照射されている位置は、原盤中心から、2rcos[(π−nθ)/2]の位置となり、スケール105の測定値からずれが生じる。そのため、記録点移動量補正デバイス112においてずれ量を補正する。
スケール105ではRθずつ等間隔に移動距離を計測できる。つまり等速で水平移動デバイスが回転すると、スケールがRθずつ移動する毎に干渉縞が計数されていく。しかし、記録ビームが照射される位置は、原盤中心から2rcos[(π−nθ)/2]となるため、スケールでRθずつ等間隔に移動しても、実際は、2r[cos{(π−nθ)/2}−cos{[π−(n−1)θ]/2}]ずつ移動していることになる。そのため、これらの比を、記録点移動量補正デバイス112において計算することでずれ量を補正できる。 また、記録点移動量補正デバイス112でずれ量を補正するためには、基準点(原点)を設ける必要がある。基準点は、次のような方法で決定できる。例えば、水平移動デバイス106が移動できる範囲を例えばリミット116で機械的に制限する。移動範囲の限界点において記録点移動量補正デバイス112の原点をその都度確認し、もし原点がずれていれば原点を再設定し、その位置からの干渉パターンを計数していく。
また、基準点測定用のレーザ干渉測長器などを真空槽内に設け、水平移動デバイスの側面部との距離を測定できるように配置する。水平移動デバイスが基準点に移動したときの水平移動デバイスとの距離を計測する。決められた距離に来たときに記録点移動量補正デバイスの原点をその都度確認し、もし原点がずれていれば原点を再設定し、その位置からの干渉パターンを計数していく。
このように原点をその都度確認することにより、より正確な水平移動デバイスの移動距離が計測できる。
もし原点がずれていれば原点を再設定し、このような構成を取ると、水平移動デバイス106の回転中心107からスケール105までの距離Rと、回転中心107から記録ビームの照射位置までの距離rとの比R/rだけ、スケール105の分解能を向上させることができる。
また、この機能を用いることによって、記録したレジスト原盤108のトラックピッチ変動をモニタすることができるため、記録した原盤の良否を記録中に判断することが可能となる。
例えば、次のようにして光ディスク原盤の良否を判断できる。
レーザ受光部102で検出される干渉縞の間隔は、レーザ光の波長、スケール105上に形成されているホログラムパターンの格子間隔によって決定される。この隣接している干渉縞の間隔が、測定できる記録点変動の分解能を決定することとなるため、許容されるトラックピッチのずれ以下となるように干渉縞間隔を設定すれば、トラックピッチのずれが許容値以下かどうかを判断することができる。レジスト原盤108を実際に記録しているときの記録点変動検出デバイス514の位置情報と、所望の位置情報との差分信号をモニタしつづけていれば、このレジスト原盤108のトラックピッチのずれが許容値以内で作製できているかどうかの判断を見積もることが可能となる。
また、ここでは原盤移動量の検出ために、ホログラムスケールを用いた例を説明したが、図5に示すように、スケール805を磁気記録したパターンとし、磁気ヘッド801で、スケール805の磁化パターンを読みとる方法でも同様の効果が得られる。
また、次の方法により検出した記録点変動を抑制し、原盤に記録するパターンのトラックピッチムラを低減することが可能である。図6にその一例を示す。
記録点変動検出デバイス914で検出される、電子カラム903と水平移動デバイス912との間の実際の相対位置と、原盤へ記録される際の所望の相対位置との差分を、本発の比較部に一例として対応する、誤差信号検出デバイス915によって計算する。すなわち、レジスト原盤910の中心点の軌跡上の移動距離と、レジスト原盤910の中心点の直線上の移動距離との差を求める。両者の差は、あらかじめ決定しておくことができるので、軌跡上の距離を求めた後、あらかじめ対応関係を表にしておいてそこから求めてもよい。この誤差信号から観測されるトラックピッチムラの情報を、電子線偏向電極907にフィードバックする。電子線偏向電極907では、電極中心を通過する電子線を水平移動デバイス912の移動方向と略同じ方向に偏向することが可能であり、誤差信号検出デバイス915で計測された誤差分を電子線を偏向させることによって相殺する。この構成によりレジスト原盤910に記録される光ディスクのトラックピッチの変動などを補正することが可能となる。
上記のようなディスク原盤の製造方法によれば、曲率をもって移動する水平移動デバイスと記録ビーム収束デバイスとの相対的な位置情報を正確に計測することができる。そして、この相対的な位置情報に基づいて、送りピッチのずれや変動を制御することにより、ディスクの送りパターンの精度を向上することができる。
また、上記では電子線記録装置500を使用する例を示したが、レーザを光源としたレーザ記録装置を使用しても同様の記録点変動検出が可能である。図7にレーザ記録装置1500の一例を示す。レーザ光源1501から出射されたレーザ光は、AOD(音響光学偏向器)1502を透過した後、ミラー1503によって、レジスト原盤1507の方にビームが曲げられ、記録ビーム集束デバイス1504によってレジスト原盤1507上に絞り込まれる。レジスト原盤1507は自転デバイス1508によって保持されている。記録ビーム集束デバイス1504は、スイングアーム1509に固定されており、回転軸1510を中心としてスイングアーム1509を回転させることによって、レジスト原盤1507との相対的な位置が曲率を持って動かされる。記録ビーム集束デバイス1504の側面部にはスケール1505が設けられており、スケール情報検出デバイス1506によって、スケール1505の情報を検出する。スケール1505、スケール情報検出デバイス1506は、レーザの干渉を用いて測定するものや、磁気記録パターンを読みとって測定するものなどが用いられる。
AOD1502は、レーザ光をスイングアーム1509の送り方向に偏向することが可能である。図8にAODの構造を示す。AOD素子1601にトランスデューサ1602から超音波を入力する。その超音波によって素子内に屈折率分布が生じ、回折格子を構成する。そこにレーザ光1603を入力すると回折が生じる。回折光1605は、AOD素子1601に入力する信号によってその回折角が変化するので、入力信号に応じてレーザ光1603を偏向することが可能となる。このように偏向されたレーザ光を記録ビームとして使用する。このような動作により、スケール1505とスケール情報検出デバイス1506によって測定されるレーザ光とレジスト原盤1507との実際の相対的な位置関係と、所望の位置関係とに誤差が生じた場合、AOD1502を駆動することで誤差を補正することが可能である。
また、記録ビームの偏向デバイスとしては、図8に示すようなAODだけでなく、図9に示すようなEOD素子1701も用いることができる。図9では、コントローラ1702からEOD素子1701に入力する信号によってEOD素子1701内の屈折率分布をコントロールし、レーザ光1703を方向1704に偏向させることができる。また、図10に示すように光源として使用する半導体レーザ1801の向きを圧電素子1802などで動かすことによってレーザ光の方向1803を方向1804に偏向させてもよい。
(実施の形態2)
図11に本発明の実施の形態2のディスク原盤の製造装置の一部を構成する記録点変動検出デバイスの一例を示す。
レジスト原盤1006は自転デバイス1007上に保持されており、自転デバイス1007は水平移動デバイス1004上に設けられている。水平移動デバイス1004は回転中心1005を中心に回転し、自転デバイス1007を曲率をもって移動させる。直線状でその長手方向がレジスト原盤1006の周方向と略同じであり、略同じ間隔でホログラム格子が刻まれたスケール1001が、水平移動デバイス1004の回転軌道1008と相似形状を有する側面部1003に接するように設けられている。スケール1001と水平移動デバイス1004との接点は、図11に示すように水平移動デバイスの回転中心1005とレジスト原盤1006の回転中心1013とを結ぶ直線上に設けられている。またスケール1001には、レーザ光源とレーザ受光部と干渉パターン計測装置とを有するスケール情報検出デバイス1002が、スケール1001の表面と対向するように自転デバイス1007上に設けられている。このようにスケール1001とスケール情報検出デバイス1002で1つの原盤移動量検出デバイスを形成している。
原盤移動量検出デバイスの出力信号は、記録点移動量補正デバイス1009に入力される。
スケール情報検出デバイス1002は電子カラム503に接続されており、スケール1001は水平移動デバイス1004に接続されている。
スケール情報検出デバイス1002では、スケール1001に設けられたホログラムパターンにレーザ光を照射し、反射してくる回折光を干渉させることによって生じる干渉縞の明暗パターンを干渉パターン計測装置で計数することで位置を検出することができる。
原盤移動量検出デバイスの動きを拡大して示した図が図12である。スケール1101には格子状のホログラムパターンが形成されており、スケール情報検出デバイス1102から、レーザ光を照射し、回折光を干渉させて、干渉縞をスケール情報検出デバイス1102内のレーザ受光部で検出する。その干渉縞の明暗を計数することによって水平移動デバイス1004の位置を測定する。水平移動デバイス1004が回転軌道1103にそって、曲率を持って方向1104に移動したとき、スケール情報検出デバイス1102は、位置1105に移動していく。このとき、スケール1101と位置1105におけるスケール情報検出デバイス1102は、図12に示されるとおり角度を持って対向する。
レジスト原盤1006の回転中心を符号1108に示すと、レジスト原盤1006の半径方向1106に示される方向である。レジスト原盤1006には、この方向に等間隔にトラックピッチが記録される必要がある。しかし、レジスト原盤1006上に照射される記録ビームの軌跡は軌道1107を通るため、補正が必要となってくる。
しかしながら、図12のようにレジスト原盤1006の回転中心1108と水平移動デバイス1004の回転中心1109を結ぶ直線上と略垂直に交わるようにスケール1101を設けた場合、スケール1101に照射されるレーザ光の位置も軌道1110に示すように、水平移動デバイス1004の回転軌道1103や記録ビームの軌跡1107と相似する軌跡の曲率を持って動くため、干渉縞の間隔もスケール1101とスケール情報検出デバイス1102との傾きが大きくなるほど、広くなってくる。この干渉縞の広くなる割合は、記録ビームの照射位置が曲率によるレジスト原盤1006の半径方向1106の移動量の変化の割合と同じであるため、干渉縞の間隔が等しくなるように水平移動デバイス1004を駆動すると、光ディスクのトラックピッチも等間隔に記録されることになる。
また、スケールの基準点(原点)位置は、次のような方法で決定できる。例えば、水平移動デバイス1004が移動できる範囲を機械的に制限し、移動範囲の限界点において原点とする。また、基準点測定用のレーザ干渉測長器などを真空槽内に設け、水平移動手段の側面部との距離を測定できるように配置する。水平移動デバイスが基準点に移動したときの水平移動デバイスとの距離を計測して、決められた距離に来たときに原点とする。
スケール1101は、水平移動デバイス1004によってレジスト原盤1006が移動するにつれ、スケール情報検出デバイス1102に対する向きが、位置1105に示すように傾いていくため、スケール1101の長さや幅は物理的な制約を受ける。また、格子パターンとレーザおよびレーザ受光部との傾きが大きくなりすぎると、干渉縞が検出できなくなるため、その点でも制約を受ける。
例えば、水平移動デバイス1004の回転中心1109からスケール1101と水平移動デバイス1004との接点までの距離を50cm、回転中心1109からレジスト原盤1006の回転中心1108までの距離が40cm、レジスト原盤1006に記録する光ディスクの記録半径が0mmから60mmまでとすると、スケール1101に必要な大きさは、長さとして水平移動デバイス1004との接点から約7.5cmが必要であり、幅は最低でも5.5mmが必要となる。そして、スケール情報検出デバイス1102はこの5.5mm幅のスケール情報を検出するようなストロークが必要となる。またスケール情報検出デバイス1102がスケール1101の情報を検出するための傾きとしては0.15radを許容するものでなければならない。
また、レジスト原盤1006上に記録されるパターンの記録領域が大きくなったり、またスケール情報検出デバイス1102とスケール1101との傾きの許容値が小さい場合などは、ひとつのスケール1101とスケール情報検出デバイス1102だけでは、記録点変動を検出できない場合が考えられる。その場合、図13に示すように複数のスケール1201、1202とスケール情報検出デバイス1203、1204を設けることによって測定が可能となる。
レジスト原盤1208は自転デバイス1209上に保持されており、自転デバイス1209は水平移動デバイス1206上に設けられている。水平移動デバイス1206は回転中心1207を中心に回転し、自転デバイス1209を曲率をもって移動させる。直線状で表面がレジスト原盤1208の表面と略同じ向きをもち、略同じ間隔でホログラム格子が刻まれたスケール1201とスケール1202とが、水平移動デバイス1206の回転軌道1210と略同じ曲率を持った側面部1205に接するように設けられている。スケール1201と水平移動デバイス1206との接点は、図13に示すように水平移動デバイス1206の回転中心1207とレジスト原盤1208の回転中心1216とを結ぶ直線上に設けられている。また、スケール1202は、スケール1201とR方向にずれた位置に設けられ、水平移動デバイス1206の移動方向にもずれた位置に設けられている。
また各スケールは原盤表面側からみて互いの一部が重なり合うように設けられている。2つのスケールの重ね方は、スケール1201の長さが、スケール1202と側面部1205の接点と回転中心1207とを結ぶ直線の所まで至るような長さに設定している。また、レーザ光源とレーザ受光部と干渉パターン計測装置とを有するスケール情報検出デバイス1203が、スケール1201の表面と対向するように設けられている。
また、スケール1202には、同様にスケール情報検出デバイス1204が設けられている。このようにスケール1201とスケール情報検出デバイス1203で1つの原盤移動量検出デバイスを形成し、スケール1202とスケール情報検出デバイス1204で1つの原盤移動量検出デバイスを形成している。それぞれの原盤移動量検出デバイスの出力信号は、原盤移動量検出信号選択装置1211に入力され、各原盤移動量検出デバイスの出力信号のうち、どちらか一方を選択し、記録点移動量補正デバイス1212に入力する。 また、スケール情報検出デバイス1203、1204は電子カラム503に接続されており、スケール1201、1202は水平移動デバイス1206に接続されている。スケール情報検出デバイス1203、1204では、スケール1201、1202に設けられたホログラムパターンにレーザ光を照射し、反射してくる回折光を干渉させることによって生じる干渉縞の明暗パターンを干渉パターン計測装置で計数することで水平移動デバイス1206の位置を検出することができる。
スケール1201とスケール情報検出デバイス1203で構成される原盤移動量検出デバイスでの記録点変動検出方法は、先に述べた通りである。
次に、スケール1201とスケール情報検出デバイス1203で構成される原盤移動量検出デバイスから、スケール1202とスケール情報検出デバイス1204で構成される原盤移動量検出デバイスへの切替動作時の動きを説明する。
図14に原盤移動量検出デバイスの拡大図を示す。記録ビームがレジスト原盤1208の回転中心1308から、水平移動デバイス1206の回転中心1309とスケール1305と水平移動デバイス1206との接点1313とを結ぶ直線と軌跡1307と交わる位置1314まで移動する間は、スケール1301とスケール情報検出デバイス1302で構成される原盤移動量検出デバイスでレジスト原盤1208の移動量を検出する。これは先に説明したとおり、スケール情報検出デバイス1302で得られる干渉縞の間隔が、レジスト原盤1208上の測定しなければならない半径方向1106の移動間隔と比例関係にあるため、干渉縞の間隔が等間隔となるように水平移動デバイス1206を駆動させれば、レジスト原盤1208上に記録されるトラックピッチも等間隔となる。
すなわち、水平移動デバイス1206の回転に伴い、計測された干渉縞の間隔と、レジスト原盤1208への記録線速度と送りピッチから決定される基準間隔とを比較し、両者の差がなくなるように水平移動デバイス1206を駆動させれば、レジスト原盤1208上に記録されるトラックピッチも等間隔となる。このように、水平移動デバイス1206の回転に伴う計測された干渉縞の間隔と基準間隔との差を算出することは、結局、水平移動デバイス1206の回転に伴う、レジスト原盤1208の中心点の軌跡上の移動距離と直線上の移動距離の差を算出することと等価となる。
記録ビームが位置1314に来たとき、スケール1305とスケール情報検出デバイス1311で構成される原盤移動量検出デバイスに切り替える。この構成にすれば、スケール1305の内、スケール1305と側面部との接点1313より半分の部分を使用することになる。このようにすれば、測定しなければならない方向1306での送り間隔の広がり方と、スケール1305から出力される干渉縞の間隔の広がり方が比例関係となり、トラックピッチの補正が容易となる。
スケール情報検出デバイス1311で検出される干渉縞の間隔は、レジスト原盤1208上の測定しなければならない方向1306の移動間隔と比例関係にある。しかしスケール情報検出デバイス1302の出力とは係数が異なるため、両者の出力を整合させるためには補正が必要となる。水平移動デバイス1206の回転中心1309とスケール1301および水平移動デバイス1206の接点1312とを結ぶ直線と、水平移動デバイス1206の回転中心1309とスケール1305および水平移動デバイス1206の接点1313とを結ぶ直線とのなす角1315をφとすると、スケール情報検出デバイス1302の出力信号と、スケール情報検出デバイス1311の出力信号との比はcosφ倍異なる。そのため、原盤移動量検出デバイスが切り替わった瞬間、記録点移動量補正デバイスで、スケール情報検出デバイスの出力にcosφをかける補正を行う。この構成を用いることにより、長く精度の高いスケールを作製するのが困難な場合や、あるいは温度変化などによってスケールが伸縮することで長いスケールの精度を維持することが困難な場合においても、短く精度の高いスケールを用いて広範囲な記録点変動検出が可能となる。
なお、本実施の形態では、ホログラム格子を持ったスケールを用いて位置検出を行ったが、スケールを磁気記録したパターンとし、磁気ヘッドで、スケールの磁化パターン(本発明の所定のパターンの別の一例として対応する。)を読みとる方法を用いても同様の効果が得られる。
また、以上までの説明において、水平移動デバイスは長手形状アームであるとしてきたが、円形など他の形状もあり得る。その場合も、ディスク原盤の中心と、水平移動デバイスの回転中心とが異なっており、水平移動デバイスの端部において、ディスク原盤の中心点の移動距離を読みとることができれば、上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、上記では曲率をもって移動する水平移動デバイスを用いて記録点変動の検出をする方法を説明したが、図15に示すように、ネジ送り式のように直線的に矢印1405の方向に移動する水平移動デバイスにおいても、スケール1401、1403とスケール情報検出デバイス1402、1404を図のように配置することによって、短く精度の良いスケールを用いて広範囲な位置検出を行うことが可能である。
また原盤移動量検出デバイスは2つだけではなく、3つ以上を用いても同様である。
また、検出した記録点変動情報を利用し、記録ビーム偏向デバイスを駆動させることによって、記録点変動を抑制し、レジスト原盤に記録するパターンのトラックピッチムラを低減することが可能である。
また、本実施の形態において、直線状のホログラムパターンから干渉縞の間隔を読みとり、干渉縞の間隔の広がりを、原盤の回転速度にフィートバックさせる代わりに、実施の形態1の場合と同様にビームの制御にフィードバックをする方法も考えられる。そのような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
なお、以上までの説明において、各レジスト原盤の水平移動は、アームによる公転であるとしたが、それ以外の移動の仕方もある得る。そのような場合でも、レジスト原盤の中心点の軌跡の移動距離と、直線上の移動距離との差を検出することができれば、上記と同様の効果を得ることができる。
また、以上までの説明において、本発明の所定のパターンとは、ホログラムパターンまたは、磁気パターンであるとしたが、他のパターンが形成されていてよい。そのような場合も、パターンから中心点の軌跡の移動距離を算出することができれば、上記と同様の効果を得ることができる。
また、以上までの説明に加えて、各レジスト原盤の中心点の軌跡上の移動距離と直線上の移動距離との差に基づいて、各自転デバイスの自転速度を制御する方法も考えれる。そのような場合でも、上記と同様の効果を得ることかできる。ただし、この場合は、各ピットにおける電子線またはレーザの照射量が自転速度の変動により変化するので、この変化が許容範囲に入ることが条件となる。
(実施の形態3)
図16に本発明の実施の形態3のディスク原盤の製造装置を示す。図20に示す装置と同一の構成要素には同一の参照符号を付与している。本実施の形態のディスク原盤の製造装置と、図20に示す装置との違いは、本発明の移動距離読み取りデバイスの一例であるレーザ干渉測長計1325を電子カラム203に設置した点にある。このように、水平移動デバイス212の移動距離を電子カラム203に固定したレーザ干渉測長計1325で測定し、測定結果を制御デバイス1316によって電子ビームの照射位置を制御することにより、電子カラム203の振動、ずれ等によるビームのずれを補正することができ、より正確なトラックピッチをレジスト原盤210に形成することができる。この制御デバイス1316においては、例えば、所定の時間において水平移動デバイス212が移動すべき距離の情報をあらかじめ格納しており、実際にその所定時間に移動した水平移動デバイス212の距離とを比較することにより、ビームのずれを検出する等の制御動作が考えられる。
なお、本実施の形態において、レーザ干渉測長計1325は必ずしも電子カラム203に固定されていなくてもよい。すなわち、レーザ干渉測長計1325が電子カラム203から間隔を空けて設置されていても、レーザ干渉測長計1325と電子カラム203との距離、およびその距離の変動を計測することができれば、上記と同様の効果が得られる。この場合、本発明の基準は、レーザ干渉測長計1325にも対応する。
さらに、レーザ干渉測長計1325とは別に電子カラム203の振動等を検出するための基準があることも考えられる。その場合もこの基準と電子カラム203が所定の関係(すなわち、固定されているか、または両者の間の距離を読みとることができる関係)があれば、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、実施の形態1、2においては、記録点変動検出デバイス514、914は、電子カラム503、903に固定されているとして説明したが、上記のように、記録点変動検出デバイス514、914と電子カラム503、903とが、両者の間の距離が読みとられる関係で設置されていてもよい。
なお、以上までの説明において、所定の製造パラメータを制御するとは、ディスク原盤へのビームの照射を制御すること、水平移動デバイスの移動速度を制御すること、または、自転デバイスの自転速度を制御することに対応する。
また、以上までの説明においては、次世代記録媒体等の高記録密度の光ディスク原盤を製造する場合を想定してきたが、CDやDVD等の従来型の光ディスク原盤を製造する場合に本発明が利用される場合もあり得る。その場合は、記録点変動検出デバイス514、914は必要ではなく、水平移動デバイスの移動距離は、水平移動デバイスを駆動するモータの精度が十分であれば、例えばアームの回転軸に設けられているエンコーダの出力をモニタすることにより算出することができる。経過時間に対応する水平移動デバイスの絶対位置をあらかじめテーブルに格納しておき、この格納された絶対位置と、エンコーダ出力とを比較デバイスが比較して、制御器がビーム照射位置のずれを、上記のように補正することも考えられる。
また、以上までは、ディスク原盤の製造装置、およびそれを用いたディスク原盤の製造方法を説明してきたが、水平移動デバイスの移動のずれを補正しなければ、本発明はディスク原盤の検査装置、ディスク原盤の検査方法、ディスク原盤の移動距離差検出装置、ディスク原盤の移動距離差検出方法でもあり得る。
【産業上の利用可能性】
本発明にかかるディスク原盤の製造方法によれば、曲率をもって移動する水平移動デバイスを使用して正確なディスク原盤の送り精度を実現することができ、また、水平移動デバイスと記録ビーム集束デバイスとの相対的な位置関係を把握することができ、ディスク原盤の製造装置、ディスク原盤の移動距離差検出方法、ディスク原盤の移動距離差検出装置、ディスク原盤の検査方法、およびディスク原盤の検査装置等として有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる工程と、
前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する工程と、
前記検出結果に基づいて、所定の製造パラメータを制御する工程と、を備える、ディスク原盤の製造方法。
【請求項2】
前記ディスク原盤の移動は、前記ディスク原盤の中心点とは異なる回転中心のまわりに回転する公転である、請求の範囲1項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項3】
前記ディスク原盤の自転は、長手形状を有するアームの一端で行い、前記ディスク原盤の公転は、前記アームの回転中心の廻りの公転であり、
前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた所定のパターンを利用して行う、請求の範囲2項に記載ディスク原盤の製造方法。
【請求項4】
前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた、前記中心点の軌跡に相似する形状のホログラムパターンにレーザ光を照射することにより、その回折光の干渉縞を計数することにより行う、請求の範囲3項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項5】
前記中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた磁気パターンを磁気ヘッドにより計数することにより行う、請求の範囲3項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項6】
前記中心点の軌跡上の移動距離の読みとりは、前記アームの端面に設けられた、直線形状のホログラムパターンにレーザ光を照射することにより、その回折光の干渉縞の間隔を計測することにより行う、請求の範囲3項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項7】
前記干渉縞の間隔の計測は、前記アームの回転の限界点を基準としてなされる、請求の範囲6項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項8】
前記所定の製造パラメータを制御する工程は、前記ディスク原盤へのビーム照射の位置を制御する工程である、請求の範囲1項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項9】
前記ビーム照射の位置の制御は、電子線を電界により偏向させることにより行う、請求の範囲8項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項10】
前記ビーム照射の位置の制御は、レーザ光をAODを用いて偏向することにより行う、請求の範囲8項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項11】
前記ビーム照射の位置の制御は、レーザ光をEODを用いて偏向することにより行う、請求の範囲8項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項12】
前記ビーム照射の位置の制御は、レーザ光源を圧電素子を用いて偏向することにより、前記レーザ光源から照射されるレーザ光の偏向を行うものである、請求の範囲8項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項13】
前記所定の製造パラメータを制御する工程は、前記移動速度を制御する工程である、請求の範囲1項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項14】
前記所定の製造パラメータを制御する工程は、前記自転速度を制御する工程である、請求の範囲6項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項15】
前記回折光の干渉縞の間隔の計測値、記録線速度、および送りピッチに基づいて、前記自転速度を制御する、請求の範囲14項に記載のディスク原盤の製造方法。
【請求項16】
ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる移動距離読みとりデバイスと、を備え、
前記移動距離読みとりデバイスにより読みとられた前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する検出デバイスと、
前記検出結果に基づいて、所定の製造パラメータを制御する制御デバイスと、を備える、ディスク原盤の製造装置。
【請求項17】
ディスク原盤を自転させる工程と、
前記ディスク原盤を移動させる工程と、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる工程と、
前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する工程と、を備える、ディスク原盤の移動距離差検出方法。
【請求項18】
ディスク原盤を自転させる自転デバイスと、
前記ディスク原盤を移動させる移動デバイスと、
前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の軌跡上の移動距離を読みとる移動距離読みとりデバイスと、
前記移動距離読みとりデバイスにより読みとられた前記中心点の軌跡上の移動距離と、前記移動に伴う前記ディスク原盤の中心点の直線上の移動距離との差を検出する検出デバイスと、を備える、ディスク原盤の移動距離差検出装置。

【国際公開番号】WO2005/024807
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【発行日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513723(P2005−513723)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013180
【国際出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】