説明

ナビゲーション装置およびナビゲーション装置のプログラム

【課題】ナビゲーション装置において、自然災害によって通行止めとなる可能性が高い道路の存在を勘案した誘導経路選択の技術を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置が、過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点のそれぞれについて、通行止めの原因となった自然災害の発生時における当該地点の自然環境(以下、災害時自然環境という)の情報を記録し、また、それら複数の地点のそれぞれについての現在の自然環境の情報を取得し(ステップ205)、それら複数の地点のうち、記録した災害時自然環境と取得した現在の自然環境とが合致する地点を、危険地点として抽出し(ステップ220)、抽出した危険地点の1つ以上を通る危険経路よりも、当該危険地点のいずれをも通らない安全経路を、優先的に誘導経路として選択する(ステップ250)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置およびナビゲーション装置のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地までの誘導経路を算出するナビゲーション装置においては、目的地までの所要時間、通行料金額、気象情報等に基づいて、最適な誘導経路を選択するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−337182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のナビゲーション装置は、河川氾濫、地盤沈下、土砂崩れ、雪崩等の自然災害によって通行止めとなる可能性が高い道路について、通行止めとなる可能性を勘案して誘導経路を選択するようにはなっていない。したがって、誘導経路に従って車両を走行させても、その道路が自然災害によって通行止めとなっているかもしれないという不安感をユーザに与えてしまう可能性がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、ナビゲーション装置において、自然災害によって通行止めとなる可能性が高い道路の存在を勘案した誘導経路選択の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明においては、目的地までの誘導経路を算出してユーザに提示するナビゲーション装置が、過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点のそれぞれについて、通行止めの原因となった自然災害の発生時における当該地点の自然環境(以下、災害時自然環境という)の情報を記録し、また、それら複数の地点のそれぞれについての現在の自然環境の情報を取得し、それら複数の地点のうち、記録した災害時自然環境と取得した現在の自然環境とが合致する地点を、危険地点として抽出し、抽出した危険地点の1つ以上を通る危険経路よりも、当該危険地点のいずれをも通らない安全経路を、優先的に誘導経路として選択する。
【0006】
このように、過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点における自然災害発生時の自然環境(天候、地震の有無、季節等)と、当該地点の現在の自然環境とが合致したときに、その地点を危険地点とし、そのような危険地点のいずれをも通らない安全経路を誘導経路として優先的に選択することで、自然災害によって通行止めとなる可能性が高い道路の存在を勘案して誘導経路を選択することができる。
【0007】
また、請求項2に記載のように、ナビゲーション装置は、安全経路の走行に要する時間が基準値を超えていることに基づいて、危険経路を誘導経路として選択すると共に、当該危険経路について、危険地点を通る旨の情報を提示するようになっていてもよい。
【0008】
また、請求項3に記載のように、ナビゲーション装置は、安全経路の走行に要する時間が基準値を超えていることに基づいて、安全経路と危険経路とを誘導経路に推奨する経路として共に提示し、危険経路については、危険地点を通る旨の情報も提示するようになっていてもよい。
【0009】
このような請求項2および3の作動は、安全経路であっても、あまりにも時間がかかるような遠回りをさせる経路を誘導経路に選択するよりは、ある程度の危険があっても、適正な時間で目的地に到着できる危険経路を選択した方が、ユーザのニーズを満たしている場合もあるという考えに基づくものである。そして、危険経路であっても、危険地点を通る旨の情報もユーザに提示すれば、ユーザはその情報に基づいて当該危険経路を通るか否かの判断を行うことができる。
【0010】
また、請求項4に記載のように、ナビゲーション装置は、ある経路が危険地点の属する道路上にない場合においても、当該経路が当該危険地点から基準距離内にある場合に、当該経路は危険地点を通るとみなすようになっていてもよい。このようにすることで、危険地点における自然災害が周辺の道路にも及ぶ可能性を勘案した経路選択が可能となる。
【0011】
また、請求項5に記載のように、ナビゲーション装置は、複数の地点のそれぞれについて、現在から遡って基準期間分の自然環境の情報を取得し、また、記録した複数の地点のうち、記録した災害時自然環境と、当該基準期間の自然環境の少なくとも1つと、が合致する地点を、危険地点として抽出するようになっていてもよい。
【0012】
このようにするのは、自然災害(土砂崩れ等)に繋がる自然環境(雨等)は、その自然災害発生の数日前に発生する可能性もあるからである。このようにすることで、自然災害による通行止めの可能性を勘案した誘導経路選択において、自然災害の予見性をより高くすることができる。
【0013】
また、請求項6に記載のように、ナビゲーション装置は、目的地までの誘導経路の候補となる候補経路を複数算出するようになっていてもよい。その場合、ナビゲーション装置は、過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点のそれぞれについて、災害時自然環境の情報と共に、当該複数の地点のそれぞれについて、自然災害による通行止めがあった頻度の情報を記録するようになっていてもよい。
【0014】
さらにナビゲーション装置は、複数の候補経路のすべてが、抽出した危険地点の1つ以上を通る危険経路である場合に、記録した危険地点に係る頻度の情報に基づいて、複数の候補経路のうち最も安全度の高い候補経路を、誘導経路として選択するようになっていてもよい。
【0015】
このように、ナビゲーション装置は、候補経路がすべて危険経路である場合であっても、危険地点の災害の発生頻度の情報を利用して、最も安全度の高い候補経路を誘導経路として選択することで、比較的安全な経路を誘導経路とすることができる。
【0016】
また、請求項7に記載のように、請求項1に記載のナビゲーション装置の特徴は、ナビゲーション装置用のプログラムの特徴としても捉えることができる。
【0017】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、天候・災害情報受信機15、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
【0019】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
【0020】
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザ(ドライバー等)に表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0021】
操作部13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路17に出力する。
【0022】
天候・災害情報受信機15は、FMラジオ放送局または道路沿いに設置された路上機から無線送信された天候・災害情報を定期的に受信して制御回路17に出力する。受信する天候・災害情報には、自然災害情報、各地の現在の天候の情報、各地の現在の地震の有無の情報、および、各地の現在の気象警報の情報が含まれる。
【0023】
自然災害情報は、自然災害によって発生した通行止めに関する情報であり、(1)通行止めの発生した地点の位置、(2)通行止めの発生原因となった自然災害の種別、(3)当該自然災害の発生時における当該地点の天候、(4)当該自然災害の発生時における当該地点における地震の有無、等の情報を含んでいる。なおここでは、自然災害とは、雪崩、土砂崩れ、地盤沈下、河川氾濫等、通行止めの直接原因となり得る自然の災害をいう。
【0024】
地図データ取得部16は、HDD等の不揮発性の書き込み可能な記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出しを行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0025】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別情報、ノードの位置情報、種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、土地地番情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0026】
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAMおよび地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、および天候・災害情報受信機15と信号の授受を行う。
【0027】
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、天候・災害情報記録処理、地図表示処理、誘導経路算出処理、経路案内処理等がある。
【0028】
天候・災害情報記録処理は、天候・災害情報受信機15から受けた天候・災害情報を、地図データ取得部16の記憶媒体に記録する処理である。この天候・災害情報記録処理のために、制御回路17は、図2に示すプログラム100を定期的に実行することで、天候・災害情報受信機15から天候・災害情報を取得し(ステップ110)、取得した天候・災害情報を当該記憶媒体に記録する(ステップ120)。
【0029】
ステップ120における天候・災害情報の記録方法は、以下の通りである。制御回路17は、天候・災害情報受信機15から取得した天候・災害情報中の各地の天候情報については、取得の時点の日付、取得の時点の天候、当該天候の対象となる地域の情報から成る組を、複数組記録していく。
【0030】
また、天候・災害情報受信機15から取得した天候・災害情報中の自然災害情報については、図3に示すような形式で当該記憶媒体に記録する。すなわち、通行止めの発生地点毎に、(1)当該地点において発生した自然災害の種別、(2)当該地点において当該自然災害が発生したときの当該地点の天候、(3)当該地点において当該自然災害が発生したときの当該地点の地震の有無、(4)当該地点において当該自然災害が発生したときの季節、(5)当該地点において当該自然災害が発生したときの気象警報、(6)当該地点における当該自然災害の発生率を、記録する。
【0031】
なお、当該地点において同じ自然災害が複数回発生している場合は、(2)の天候の情報としては、当該地点において当該自然災害が発生したときの当該地点の天候のすべてを記録するようになっていてもよいし、最新の回の天候のみを記録するようになっていてもよいし、最も頻度の高い天候のみを記録するようになっていてもよい。
【0032】
また、当該地点において同じ自然災害が複数回発生している場合、(3)の地震の有無の情報としては、当該地点において当該自然災害が発生したときの当該地点の地震の有無のすべてを記録するようになっていてもよいし、最新の回の地震の有無のみを記録するようになっていてもよいし、地震の有無のうち最も頻度の高い方のみを記録するようになっていてもよい。
【0033】
また、当該地点において同じ自然災害が複数回発生している場合は、(4)の季節の情報としては、当該地点において当該自然災害が発生したときの当該地点の季節のすべてを記録するようになっていてもよいし、最新の回の季節のみを記録するようになっていてもよいし、最も頻度の高い季節のみを記録するようになっていてもよい。
【0034】
また、当該地点において同じ自然災害が複数回発生している場合は、(5)の気象警報の情報としては、当該地点において当該自然災害が発生したときの当該地点の気象警報のすべて(気象警報がないことも含む)を記録するようになっていてもよいし、最新の回の気象警報(または気象警報がないこと)のみを記録するようになっていてもよいし、最も頻度の高い気象警報(または気象警報がないこと)のみを記録するようになっていてもよい。
【0035】
また、(6)の発生率は、当該地点において当該自然災害が発生した頻度を、日数単位で計算する。例えば、1年に1回のみ発生する場合、発生率は1回/365日=0.27%となる。
【0036】
このようなプログラム100を実行することで、制御回路17は、過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点のそれぞれについて、発生した自然災害の種別、通行止めの原因となった自然災害の発生時における当該地点の自然環境(すなわち、天候、地震の有無、季節)、および、通行止めの原因となった自然災害の発生頻度を記録する。
【0037】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0038】
地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。
【0039】
誘導経路算出処理は、操作部13からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0040】
経路案内処理は、誘導経路上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、誘導経路に沿った車両の運転を案内する処理である。
【0041】
以下、誘導経路算出処理の詳細について説明する。誘導経路算出処理において、制御回路17は、操作部13に対するユーザの操作に基づいて目的地を決定した後、図4に示すプログラム200の実行を開始し、まずステップ203で、自車両の現在位置から目的地までの経路を、目的地到着までにかかる所要時間(または走行距離、または走行料金額。以下同じ)が短い上位複数個(例えば5個)算出する。ここで算出された経路を、以下候補経路という。
【0042】
なお、ある経路の所要時間は、当該経路の長さを所定の速度(例えば30km/h)で除算したものであってもよいし、VICS等から取得する渋滞情報、道路におけるリアルタイムの走行速度情報等を更に加味して算出してもよい。
【0043】
図5に、現在位置20から目的地30までの候補経路群21〜24を示す。この例では、算出された候補経路は4つである。
【0044】
続いてステップ205では、リアルタイム情報を受信する。リアルタイム情報とは、各地の直近の天候情報、季節、および気象警報の情報をいう。直近の天候情報とは、具体的には、現在時刻から基準期間だけ遡った期間をいう。基準期間は、例えば、2日でもよいし、3日でもよい。これらリアルタイム情報のうち、現在の天候、地震の有無、気象警報は、天候・災害情報受信機15から取得し、現在および過去の季節は、現在の日付から特定し、現在を除く直近の天候、地震の有無、気象警報は、地図データ取得部16の記憶媒体から読み出す。
【0045】
続いて制御回路17は、ステップ203で算出した候補経路を、所要時間が短いものから順に1個ずつ抽出し、抽出した候補経路のそれぞれを対象として、ステップ210〜240のループ処理を実行する。なお、図5の例では、候補経路21、22、23、24の順に所要時間が短い。
【0046】
このループ処理の1回においては、まずステップ210で、記録した天候・災害情報記録処理中の複数の過去災害発生地点のうち、対象とする候補経路が通る過去災害発生地点を抽出する。なお、実際に対象候補経路上にある過去災害発生地点のみならず、対象候補経路上になくとも、対象候補経路から基準距離(例えば500メートル)以内にある過去災害発生地点も、対象候補経路が通る過去災害発生地点であるとみなす。
【0047】
このようにするのは、通行止めの発生原因となった自然災害は、その通行止めとなった道路のみならず、その通行止め地点に近接している道路にも影響が及ぶ可能性があるからである。なお、自然災害の種別によって影響が及ぶ範囲の広さが違うことに鑑み、自然災害の種別に応じて基準距離を変化させるようになっていてもよい。
【0048】
例えば、図5の例では、候補経路21については、過去危険発生地点31、32、33を通ると判定する。また、候補経路22については、過去危険発生地点34、35、36に加え、過去危険発生地点33をも通ると判定する。これは、候補経路22の一部が、過去危険発生地点33の影響範囲39内にある(すなわち、過去危険発生地点33から基準距離以内にある)からである。また、候補経路23については、過去危険発生地点37を通ると判定する。また、候補経路24については、過去危険発生地点37を通らないと判定する。
【0049】
続いてステップ215では、抽出した対象候補経路上の過去災害発生地点の記録のそれぞれについて、リアルタイム情報中の当該地点の天候、地震の有無、季節、気象警報と比較する。
【0050】
続いてステップ220で、対象候補経路上の過去災害発生地点の記録のうち、リアルタイム情報と合致する地点(すなわち危険地点)があるか否かを判定する。すなわち、対象候補経路が危険地点を通るか否かを判定する。
【0051】
なお、リアルタイム情報が、現在の分を含め複数日数分ある場合は、それらのうちの1つと合致すれば、その合致する地点はリアルタイム情報と合致する危険地点であるとする。すなわち、リアルタイム情報中の本日分の情報と合致する地点のみならず、前日、前々日等の情報と合致する地点も、危険地点とする。このようにするのは、土砂崩れ等の自然災害は、数日前の雨天が原因となる場合もあり得るからである。
【0052】
例えば、図3のような天候・災害情報が記録されている場合、過去災害発生地点Aについては、現在から遡って基準期間分のリアルタイム情報のいずれかにおいて、地点Aの天候が雨であり、現在の季節が春である場合に限り、当該地点Aが危険地点となる。
【0053】
また、過去災害発生地点Bについては、現在から遡って基準期間分のリアルタイム情報のいずれかにおいて、地点Bの天候が台風であり、現在の季節が秋であり、地点Bに暴風雨警報が出ている場合に限り、当該地点Bが危険地点となる。
【0054】
また、過去災害発生地点Cについては、現在から遡って基準期間分のリアルタイム情報のいずれかにおいて、地点Cで地震があった場合に限り、当該地点Cが危険地点となる。
【0055】
また、過去災害発生地点Dについては、現在から遡って基準期間分のリアルタイム情報のいずれかにおいて、地点Dの天候が雨であり、現在の季節が夏であり、地点Dに暴風雨警報が出ている場合に限り、当該地点Dが危険地点となる。
【0056】
また、過去災害発生地点Eについては、現在から遡って基準期間分のリアルタイム情報のいずれかにおいて、地点Eの季節が冬である場合に限り、当該地点Eが危険地点となる。
【0057】
なお、過去の天候や地震がどれくらいの期間をおいて自然災害の発生させ得るかは、自然災害の種別によって異なる。したがって、基準期間の値は、その基準期間を適用する対象の地点における災害種別に応じて変化するようになっていてもよい。すなわち、基準期間は、通行止めの原因となった自然災害の種別によって異なるようになっていてもよい。図5の例では、過去危険発生地点のうち、地点31、35、36、37が危険地点と判定されたものとする。
【0058】
対象候補経路が危険地点を通ると判定した場合、続いてステップ245を実行し、通らないと判定した場合、ループを抜けて続いてステップ245以降を実行する。
【0059】
従って、ステップ220〜240のループは、所要時間の短い候補経路から順に実行され、危険地点を通らない候補経路が対象となる直前まで繰り返され、危険地点を通らない候補経路が初めて対象となった時点で、制御回路17の処理はループを抜け出す。
【0060】
ステップ225では、所要時間差が許容時間より小さいか否かを判定し、小さい場合は続いてステップ230を実行し、小さくない場合は次のループのステップ210に進む。ここで、所要時間差とは、候補経路のうち最も所要時間が短い経路に対し、対象候補経路の所要時間がどれだけ長いかを示す値である。また、許容時間は、一定値(たとえば30分)でもよいし、あるいは、ユーザが操作部13を用いてあらかじめ設定可能な値であってもよい。
【0061】
ステップ230では、記憶媒体中の天候・災害情報に基づいて、対象候補経路が通る危険地点のうち、最も値が高い発生率(以下、経路内最高発生率という)を特定する。図5の例では、地点31、33、35、36、37の発生率がそれぞれ0.1%、0.08%、0.005%、0.002%、1.5%である場合、経路21の経路内最高発生率は0.1%であり、経路22の経路内最高発生率は0.08%であり、経路23の経路内最高発生率は0.002%となる。
【0062】
続いてステップ235では、経路内最高発生率が経路間最低発生率よりも低いか否かを判定し、低い場合は続いてステップ240を実行し、低くない場合は次のループのステップ210に進む。この経路間最低発生率の値は、プログラム200の実行開始時に100%にリセットされている。ステップ240では、経路間最低発生率に、経路内最高発生率の値を代入し、その後、次のループのステップ210に進む。
【0063】
このようなループ処理によって、最も所要時間の短い候補経路(以下、最短候補経路という)に対する対象候補経路の所要時間の遅れが許容範囲であり(ステップ230参照)、かつ、その対象候補経路の経路内最高発生率が経路間最低発生率よりも低い場合に(ステップ235参照)、その経路内最高発生率の値で経路間最低発生率を置き換える(ステップ240参照)。
【0064】
図5の例では、経路21(最短候補経路に相当する)、経路22、経路23が、遅れが許容時間内の経路であるとすると、これらの経路間最低発生率は、経路23の0.002%となる。
【0065】
このようなループ処理を1回以上行うことで、ループ処理の対象となった危険地点を通る候補経路であり、かつ、最短候補経路よりも所要時間が許容時間以上長くない候補経路のうち、最高発生率が最も低い候補経路(図5の例では経路23)を、安全度の最も高い候補経路とする。
【0066】
候補経路のすべてが危険地帯を通る場合、すべての候補経路についてステップ210〜240のループが実行された後、ステップ260では、経路間最低発生率と同じ経路内最高発生率を有する候補経路(すなわち、最短候補経路よりも所要時間が許容時間以上長くない候補経路のうち、安全度の最も高い候補経路)を、推奨経路として、画像表示装置12を用いてユーザに表示する。その表示と同時に、当該候補経路を誘導経路とするか否かを問い合わせるメッセージを表示する。さらに、当該推奨経路において、危険地点の位置、災害種別、発生率の情報を画像表示装置12に表示させる。そして、誘導経路とする旨の操作をユーザが操作部13に対して行ったことに基づいて、当該候補経路を誘導経路として確定する。その後、プログラム200の実行を終了する。
【0067】
このように、制御回路17は、複数の候補経路のすべてが、危険地点の1つ以上を通る経路(すなわち危険経路)である場合に、記録した危険地点に係る頻度の情報に基づいて、複数の候補経路のうち最も安全度の高い候補経路を、誘導経路として選択する。
【0068】
このように、候補経路がすべて危険経路である場合であっても、危険地点の災害の発生頻度の情報を利用して、最も安全度の高い(具体的には、経路内最高発生率が最も低い)候補経路を誘導経路として選択することで、危険経路のうちでも比較的安全な経路を誘導経路とすることができる。
【0069】
また、対象候補経路が危険経路でなかった場合、すなわち、安全経路であった場合、ステップ245で、対象候補経路の所要時間差が許容時間より短いか否かを判定し、短い場合は続いてステップ250を実行し、短くない場合は続いてステップ255を実行する。
【0070】
ステップ250では、対象候補経路を推奨経路として、画像表示装置12を用いてユーザに表示する。その表示と同時に、当該候補経路を誘導経路とするか否かを問い合わせるメッセージを表示し、誘導経路とする旨の操作をユーザが操作部13に対して行ったことに基づいて、当該候補経路を誘導経路として確定する。その後、プログラム200の実行を終了する。
【0071】
ステップ255では、対象候補経路と、経路間最低発生率と同じ経路内最高発生率を有する候補経路(すなわち、最短候補経路よりも所要時間が許容時間以上長くない危険経路のうち、安全度の最も高い危険経路)の2つの経路を、推奨経路として、画像表示装置12に表示させる。その表示と同時に、それら2つの推奨経路のうちどちらを誘導経路とするかを問い合わせるメッセージを表示する。さらに、当該推奨経路において、危険地点の位置、災害種別、発生率の情報を画像表示装置12に表示させる。
【0072】
そして、対象候補経路を誘導経路とする旨の操作をユーザが操作部13に対して行ったことに基づいて、当該対象候補経路を誘導経路として確定し、プログラム200の実行を終了する。また、最短候補経路よりも所要時間が許容時間以上長くない危険経路のうち、安全度の最も高い危険経路を誘導経路とする旨の操作をユーザが操作部13に対して行ったことに基づいて、当該危険経路を誘導経路として確定し、プログラム200の実行を終了する。
【0073】
以上説明した通り、車両用ナビゲーション装置1が、過去に自然災害による通行止めがあった複数の過去危険発生地点のそれぞれについて、通行止めの原因となった自然災害の発生時における当該地点の自然環境(以下、災害時自然環境という)の情報を記録し(図2、図3参照)、また、それら複数の過去危険発生地点のそれぞれについての現在の自然環境の情報を取得し、それら複数の地点のうち、記録した災害時自然環境と取得した現在の自然環境とが合致する地点(ステップ215参照)を、危険地点として抽出し、抽出した危険地点の1つ以上を通る危険経路よりも、当該危険地点のいずれをも通らない安全経路を、優先的に誘導経路として選択する(ステップ220→245→250参照)。
【0074】
このように、過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点における自然災害発生時の自然環境(天候、地震の有無、季節等)と、当該地点の現在の自然環境とが合致したときに、その地点を危険地点とし、そのような危険地点のいずれをも通らない安全経路を誘導経路として優先的に選択することで、自然災害によって通行止めとなる可能性が高い道路の存在を勘案して誘導経路を選択することができる。
【0075】
ただし、車両用ナビゲーション装置1は、安全経路の走行に要する時間が基準値(すなわち、最短候補経路の所要時間に許容時間を加えた値)を超えていることに基づいて(ステップ245参照)、危険経路のうち遅れが許容範囲内でありかつ最も安全度が高い経路と安全経路とを共にユーザに提示し、当該危険経路については、危険地点を通る旨の情報も提示する。そして、ユーザが当該危険経路を選択した場合は、当該危険経路を誘導経路として選択する(ステップ255参照)
このような作動は、安全経路であっても、あまりにも時間がかかるような遠回りをさせる経路を誘導経路に選択するよりは、ある程度の危険があっても、適正な時間で目的地に到着できる危険経路を選択した方が、ユーザのニーズを満たしている場合もあるという考えに基づくものである。そして、危険経路であっても、危険地点を通る旨の情報もユーザに提示すれば、ユーザはその情報に基づいて当該危険経路を通るか否かの判断を行うことができる。
【0076】
また、車両用ナビゲーション装置1は、候補経路がある危険地点の属する道路上にない場合においても、当該経路が当該危険地点から基準距離内にある場合に、当該経路は危険地点を通るとみなすようになっていている。このようにすることで、危険地点における自然災害が周辺の道路にも及ぶ可能性を勘案した経路選択が可能となる。
【0077】
また、車両用ナビゲーション装置1は、複数の地点のそれぞれについて、現在から遡って基準期間分の自然環境の情報を取得し、また、記録した複数の地点のうち、記録した災害時自然環境と、取得した自然環境の少なくとも1つと、が合致する地点を、危険地点として抽出するようになっている。
【0078】
このようにするのは、自然災害(土砂崩れ等)に繋がる自然環境(雨等)は、その自然災害発生の数日前に発生する可能性もあるからである。このようにすることで、自然災害による通行止めの可能性を勘案した誘導経路選択において、自然災害の予見性をより高くすることができる。
【0079】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0080】
例えば、上記の実施形態において、制御回路17は、プログラム200のステップ203において算出した候補経路以外にも、危険地点を通ることがない安全経路を算出するようになっていてもよい。この安全経路は、候補経路中の最短経路に比べて非常に遠回りの経路であってもよい。そして、ステップ260においては、当該安全経路も併せてユーザに提示し、安全度の最も高い危険経路と、当該安全経路のどちらを誘導経路とするかを、ユーザの選択操作に応じて選択してもよい。
【0081】
また例えば、ステップ260において、安全度の最も高い危険経路が2つある場合は、それら危険経路が通る危険地点の災害種別の重要度(例えば、河川氾濫よりも雪崩のほうが重要とする)が低い方を、推奨経路としてユーザに提示するようになっていてもよい。
【0082】
また例えば、制御回路17は、上記のような、過去災害発生地点を勘案した経路案内を行うか否かについて、ユーザの操作部13に対する操作に応じて切り替えるようになっていてもよい。
【0083】
また例えば、天候・災害情報等の、更新が必要なデータは、地図データ取得部16の記憶媒体に限らず、他の、車両用ナビゲーション装置1の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体(例えばフラッシュメモリ、EEPROM、バックアップRAM)に記憶されるようになっていてもよい。その場合、地図データ取得部16の記憶媒体は、HDD等の書き込み可能な記憶媒体である必要はなく、DVD、CD−ROM等の書き込み不可能な記憶媒体であってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0085】
また、上記実施形態においては、ナビゲーション装置は車載タイプのものであるが、ナビゲーション装置は、人が持ち運びできるタイプのものであってもよい。例えば、ナビゲーション装置の機能を有する携帯電話機やPDAも、本発明のナビゲーション装置に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1の構成図である。
【図2】制御回路17が実行するプログラム100のフローチャートである。
【図3】天候・災害情報の記録形式を例示する図表である。
【図4】制御回路17が実行するプログラム200のフローチャートである。
【図5】候補経路21〜24と危険地点31〜37を例示する図である。
【符号の説明】
【0087】
1 車両用ナビゲーション装置
12 画像表示装置
13 操作部
15 天候・災害情報受信機
16 地図データ取得部
17 制御回路
21〜24 候補経路
20 現在位置
30 目的地
31〜37 過去危険発生地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地までの誘導経路を算出してユーザに提示するナビゲーション装置であって、
過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点のそれぞれについて、通行止めの原因となった自然災害の発生時における当該地点の自然環境(以下、災害時自然環境という)の情報を記録する記録手段(100)と、
前記複数の地点のそれぞれについての現在の自然環境の情報を取得する取得手段(205)と、
前記複数の地点のうち、前記記録手段(100)が記録した災害時自然環境と前記取得手段(205)が取得した現在の自然環境とが合致する地点を危険地点として抽出し、抽出した前記危険地点の1つ以上を通る危険経路よりも、前記危険地点のいずれをも通らない安全経路を、優先的に前記誘導経路として選択する選択手段(215〜260)と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
前記選択手段(215〜260)は、前記安全経路の走行に要する時間が基準値を超えていることに基づいて、前記危険経路を前記誘導経路として選択すると共に、前記危険経路について、危険地点を通る旨の情報を提示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記優先提示手段(215〜260)は、前記安全経路の走行に要する時間が基準値を超えていることに基づいて、前記安全経路と前記危険経路とを誘導経路に推奨する経路として共に提示し、前記危険経路については、危険地点を通る旨の情報も提示することを特徴とする請求項1または2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記選択手段(215〜260)は、経路が前記危険地点の属する道路上にない場合においては、前記経路が前記危険地点から基準距離内にある場合に、前記経路は前記危険地点を通るとみなすことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記取得手段(205)は、前記複数の地点のそれぞれについて、現在から遡って基準期間分の自然環境の情報を取得し、
前記選択手段(215〜260)は、前記複数の地点のうち、前記記録手段(100)が記録した災害時自然環境と、前記取得手段(205)が取得した前記基準期間の自然環境の少なくとも1つと、が合致する地点を前記危険地点として抽出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記目的地までの誘導経路の候補となる候補経路を複数算出する候補経路算出手段(203)を備え、
前記記録手段(100)は、過去に自然災害による通行止めがあった前記複数の地点のそれぞれについて、災害時自然環境の情報と共に、前記複数の地点のそれぞれについて、自然災害による通行止めがあった頻度の情報を記録し、
前記選択手段(215〜260)は、前記複数の候補経路のすべてが、抽出した前記危険地点の1つ以上を通る危険経路である場合に、前記記録手段(100)が記録した前記危険地点に係る前記頻度の情報に基づいて、前記複数の候補経路のうち最も安全度の高い候補経路を、前記誘導経路として選択することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
目的地までの誘導経路を算出してユーザに提示するナビゲーション装置に用いるプログラムであって、
過去に自然災害による通行止めがあった複数の地点のそれぞれについて、通行止めの原因となった自然災害の発生時における当該地点の自然環境(以下、災害時自然環境という)の情報を記録する記録手段(100)、
前記複数の地点のそれぞれについての現在の自然環境の情報を取得する取得手段(205)、および、
前記複数の地点のうち、前記記録手段(100)が記録した災害時自然環境と前記取得手段(205)が取得した現在の自然環境とが合致する地点を危険地点として抽出し、抽出した前記危険地点の1つ以上を通る危険経路よりも、前記危険地点のいずれをも通らない安全経路を、優先的に前記誘導経路として選択する選択手段(215〜260)として、コンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−264934(P2009−264934A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115042(P2008−115042)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】