説明

ナビゲーション装置およびナビゲーション装置用のプログラム

【課題】同じ施設名称を有する複数のポイントが地図データに記録されている場合に、ユーザの意図を反映し、かつ、従来よりも簡易に、当該施設への経路を算出する。
【解決手段】車両用ナビゲーション装置は、ユーザによって入力された施設名称に合致する施設を地図データから検索し(ステップ105)、その検索の結果、当該名称に合致する施設が複数あった場合(ステップ110)、合致する複数の施設のそれぞれについて(ステップ120、130、135)、当該施設への経路を算出し(ステップ125)、算出した全経路および同名施設を画像表示装置に表示させる(ステップ140)。さらに車両用ナビゲーション装置1は、表示したそれら経路のうちから、ユーザの選択に基づいて(ステップ145)1つを、案内対象の経路として決定する(ステップ150)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置およびナビゲーション装置用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置の技術において、ある施設の特定のポイントへ行くために、当該施設を目的地として設定しても、ユーザが望んだポイントへ案内されないという問題があった。例えば、特定の駅の南口に行くために当該駅の名称を目的地として入力しても、その駅の北口までの経路が算出されてしまい、その結果、大きく迂回した経路の案内を受けてしまうという場合があった。これは、同じ施設名称を有する複数のポイントが地図データに記録されており、ナビゲーション装置がそれらのうちの1つをユーザの意思とは無関係に決定していることに起因する。このような施設の例としては、駅以外にも、特定の高速道路出口の名称で、上り側出口と下り側出口という複数のポイントが記録されている場合が考えられる。
【0003】
このような問題を解決するための技術として、例えば、特定の駅の駅名をユーザが入力すると、その駅の南口か北口かをユーザに問い合わせ、ユーザの選択した方について経路の算出および案内を行うナビゲーション装置がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術では、ナビゲーション装置中の地図データが、施設の名称に対して、北口、南口等の別を示す情報を関連付けるようなツリー構造を有する必要がある。したがって地図データの構造、およびその構造に対応した処理内容が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、同じ施設名称を有する複数のポイントが地図データに記録されている場合に、ユーザの意図を反映し、かつ、従来よりも簡易に、当該施設への経路を算出する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、決定された目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が、入力された名称に合致する施設を地図データから検索し、その検索の結果、当該名称に合致する施設が複数あった場合、合致する複数の施設のそれぞれについて、当該施設への経路を算出して表示する。さらにナビゲーション装置は、表示したそれら経路のうちから、ユーザの選択に基づいて、1つを決定する。
【0007】
このようになっているので、ユーザは、複数の施設のそれぞれへの経路の表示のうち、自らが望むものを選択することができる。また、地図データは、同じ施設名称を有する複数のポイント間の関連性についてのデータを含む必要がないので、データ構造が簡易になる。また、そのような関連性についてのデータを処理する必要がないので、処理が簡易になる。
【0008】
なお、請求項2に記載のように、請求項1に記載の発明は、プログラムとしても捉えることができる。
【0009】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、スピーカ14、地図データ取得部16、および制御回路17を有している。
【0011】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない加速度センサ、地磁気センサ、ジャイロセンサ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置、向き、および速度を特定するための情報を制御回路17に出力する。
【0012】
画像表示装置12は、制御回路17から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0013】
操作部13は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置12の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御回路17に出力する。
【0014】
地図データ取得部16は、DVD、CD、HDD等の不揮発性の記憶媒体およびそれら記憶媒体に対してデータの読み出し(および可能ならば書き込み)を行う装置から成る。当該記憶媒体は、制御回路17が実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0015】
地図データは、道路データおよび施設データを有している。道路データは、リンクの位置情報、種別情報、ノードの位置情報、種別情報、および、ノードとリンクとの接続関係の情報等を含んでいる。施設データは、施設毎のレコードを複数有しており、各レコードは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、土地地番情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0016】
なお、施設データ中には、同じ名称を有する複数の施設(すなわちポイント)が記録されている場合がある。同じ名称を有する複数の施設の例としては、AAA駅の北口、同じAAA駅の南口に対応する2つの施設がある。これら施設の名称は、いずれも「AAA駅」である。同じ名称を有する複数の施設の他の例としては、高速道路のPPPインターチェンジの上り側の出口、および、高速道路のPPPインターチェンジの下り側の出口がある。これら施設の名称は、いずれも「PPPインターチェンジ出口」である。
【0017】
このように、1まとまりの構造物として同じ領域内にあるような複数のポイントが、施設データ中では、同じ名称を有する複数の施設として記録されている。
【0018】
制御回路(コンピュータに相当する)17は、CPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイコンである。CPUは、ROMまたは地図データ取得部16から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、および地図データ取得部16から情報を読み出し、RAMおよび(可能であれば)地図データ取得部16の記憶媒体に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、画像表示装置12、操作部13、およびスピーカ14と信号の授受を行う。
【0019】
制御回路17がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、地図表示処理、誘導経路算出処理、経路案内処理等がある。
【0020】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0021】
地図表示処理は、車両の現在位置の周辺等の特定の領域の地図を、画像表示装置12に表示させる処理である。この際、地図表示のために用いる情報は、地図データから取得する。
【0022】
誘導経路算出処理は、操作部13からユーザによる目的地の名称等の入力を受け付け、その入力内容に対応する目的地を決定し、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0023】
経路案内処理は、誘導経路上の右左折交差点等の案内ポイントの手前に自車両が到達したときに、右折、左折等を指示する案内音声をスピーカ14に出力させ、当該案内ポイントの拡大図を画像表示装置12に表示させることで、誘導経路に沿った車両の運転を案内する処理である。
【0024】
以下、誘導経路算出処理について詳述する。制御回路17は、誘導経路算出処理において、ユーザが操作部13を用いて施設の名称を入力すると、図2に示すようなプログラム100を実行することで、目的地および目的地までの経路を決定する。
【0025】
このプログラム100の実行において制御回路17は、まずステップ105で、当該施設名称に対応する施設(すなわちポイント)を検索する。続いてステップ110で、その検索の結果、当該施設名称を有する施設が複数見つかったか否かを判定する。
【0026】
ステップ110の判定の結果、1つだけ施設が見つかった場合、続いてステップ115で、当該施設を目的地として現在位置からの最適な経路を算出し、さらにステップ150で当該経路を誘導経路として決定する。
【0027】
ステップ110の判定の結果、当該施設名称を有するの施設が複数が見つかった場合、続いてステップ120で、繰り返し用の変数nを1に初期化する。続いてステップ125では、見つかった複数の同名施設のうち、n件目の施設を目的地として、現在位置からの最適な経路を算出する。
【0028】
続いてステップ130で、変数nの値を、それまでの値よりも1だけ大きい値に更新し、続いてステップ135で、変数nが、値Nより大きいか否かを判定し、大きくなければ再度ステップ125を実行し、大きければ続いてステップ140を実行する。ここで、値Nは、見つかった複数の同名施設の個数である。
【0029】
このようなステップ125〜135のループ処理により、見つかった複数の同名施設のそれぞれについて最適な経路が算出されることになる。
【0030】
ステップ140では、算出されたすべての施設および経路を、一度に画像表示装置12に表示させる。この際、施設および経路は、ユーザが操作部13を用いて選択可能なようにする。
【0031】
続いてステップ145では、それら施設または経路のうち1つをユーザが選択するまで待ち、選択されると、続いてステップ150を実行する。
【0032】
続いてステップ150では、選択された施設(または選択された経路に対応する施設)を目的地として決定し、選択された経路(または選択された施設に対応する経路)を誘導経路として決定する。このようにして決定された誘導経路は、後の経路案内処理において用いられる。
【0033】
以上のように、車両用ナビゲーション装置1は、ユーザによって入力された施設名称に合致する施設を地図データから検索し(ステップ105参照)、その検索の結果、当該名称に合致する施設が複数あった場合(ステップ110参照)、合致する複数の施設のそれぞれについて(ステップ120、130、135参照)、当該施設への経路を算出し(ステップ125参照)、算出した全経路および同名施設を画像表示装置12に表示させる(ステップ140参照)。さらに車両用ナビゲーション装置1は、表示したそれら経路のうちから、ユーザの選択に基づいて(ステップ145参照)1つを、誘導経路として(すなわち案内対象の経路として)決定する(ステップ150参照)。
【0034】
このようになっているので、ユーザは、表示された複数の施設およびそれら複数の施設のそれぞれへの経路のうち、自らが望むものを選択することができる。また、地図データは、同じ施設名称を有する複数のポイント間の関連性についてのデータを含む必要がないので、データ構造が簡易になる。また、そのような関連性についてのデータを処理する必要がないので、処理が簡易になる。
【0035】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0036】
例えば、上記の実施形態において、制御回路17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、ナビゲーション装置は車載タイプのものであるが、ナビゲーション装置は、人が持ち運びできるタイプのものであってもよい。例えば、ナビゲーション装置の機能を有する携帯電話機やPDAも、本発明のナビゲーション装置に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の構成図である。
【図2】制御回路17が実行するプログラム100のフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 車両用ナビゲーション装置
11 位置検出器
12 画像表示装置
13 操作部
14 スピーカ
15 交通情報受信機
16 地図データ取得部
17 制御回路
100 プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
決定された目的地までの経路を案内するナビゲーション装置であって、
入力された名称に合致する施設を地図データから検索する検索手段(105)と、
前記検索手段(105)による検索の結果、前記名称に合致する施設が複数あった場合、合致する複数の施設のそれぞれについて、当該施設への経路を算出して表示する経路算出表示手段(120〜140)と、
前記経路算出表示手段(120〜140)が表示した前記経路のうちから、ユーザの選択に基づいて、1つを決定する決定手段(145、150)と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
決定された目的地までの経路を案内するナビゲーション装置に用いるプログラムであって、
入力された名称に合致する施設を地図データから検索する検索手段(105)、
前記検索手段(105)による検索の結果、前記名称に合致する施設が複数あった場合、合致する複数の施設のそれぞれについて、当該施設への経路を算出して表示する経路算出表示手段(120〜140)、および
前記経路算出表示手段(120〜140)が表示した前記経路のうちから、ユーザの選択に基づいて、1つを決定する決定手段(145、150)として、コンピュータを機能させるナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−250841(P2009−250841A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100684(P2008−100684)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】