説明

ナビゲーション装置および経路探索方法

【課題】煩わしい操作や画面表示の確認を行うことなく、現在の車線から進行可能な脱出方向に向けて交差点を通過したときの誘導経路を、当該交差点を通過する前に設定可能な「ナビゲーション装置および経路探索方法」を提供する。
【解決手段】交差点Xを通過する前に経路探索の指示があったときに、その交差点Xへの進入リンクAに設けられている各車線について定められた脱出方向の交通規制情報と、車両の現在の車線位置情報とに基づいて、現在の車線位置から進行不可能な脱出リンクC,Dの通過コストを増加させて経路探索を行うことにより、自車が進行することのできる脱出リンクBのみを経路として使用する誘導経路を、利用者による煩わしい操作や画面表示の確認を行うことなく、交差点Xを通過する前にあらかじめ作成することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行案内を行って運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにした車載用のナビゲーション装置および経路探索方法に関し、特に、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶ最もコストが小さな経路を自動探索する経路誘導機能を備えたナビゲーション装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車載用のナビゲーション装置では、自律航法センサやGPS(Global Positioning System)受信機などを用いて車両の現在位置を検出し、その近傍の地図データを記録媒体から読み出して画面上に表示する。そして、画面上の所定箇所に自車位置を示す自車位置マークを重ね合わせて表示することにより、車両の現在位置を一目で分かるようにしている。
【0003】
また、ナビゲーション装置の殆どには経路誘導機能が搭載されている。この経路誘導機能では、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶコストが最も小さな経路を探索する。そして、経路の探索が完了すると、作成した経路に従って目的地までの経路案内を開始する。経路案内では、作成した経路を誘導経路として地図画面上で他の道路とは色を変えて太く描画する。また、車両が誘導経路上の案内交差点や案内分岐点などに一定距離以内に近づいたときに、進行方向を音声で案内したり、交差点拡大図を表示して進行方向を矢印で示したりするなどの案内を行うことにより、運転者を目的地まで案内する。経路案内は、目的地に到着するか利用者が経路案内の中止を指示することで終了する。
【0004】
経路案内では、交差点の手前で走行すべき車線の案内を行うことで、利用者が誘導経路に従って安全に交差点を通過できるようにしている。例えば、片側二車線の道路で、左側の車線は左折と直進、右側の車線は右折の規制がされている交差点があるとする。誘導経路が当該交差点を右折することになっている場合、利用者は事前に右側の車線を走行している必要があるので、ナビゲーション装置は利用者が当該交差点に接近する前に右側の車線を走行するように案内を行う。
【0005】
ところが、利用者が左車線を走行しているときに案内された右側の車線が渋滞していた場合、利用者は車線を変更することができないので、現在の左側の車線上を走行せざるを得ない。この場合、利用者は当該交差点を右折することができず、誘導経路から逸脱することになる(これを「オフルート」と言う)。多くのナビゲーション装置では、自車が誘導経路から外れた場合、オフルート直後の現在位置から目的地までの新しい経路を作成して案内を再開する。
【0006】
図5は、自車が誘導経路に沿って交差点を曲がることができずにオフルートする場合の一例を示す図である。図5において、実線で示す矢印IRは、ナビゲーション装置が事前に作成した誘導経路を示している。また、点線で示す矢印ORは、自車が交差点の交通規制に従って車線位置PLを走行したときのオフルートする走行経路を示している。
【0007】
図5の例は、ナビゲーション装置が作成した誘導経路IRは交差点を右折することを示しており、本来であれば、自車は当該交差点へ進入する片側三車線の道路において最も右側の右折車線を走行している必要があるのだが、最も左の左折車線を走行してしまっている様子を示している。すなわち、自車は誘導経路から逸脱し、オフルートするので、目的地までの経路が新たに作成されることになる。しかし、オフルートした後に新たに経路が作成され案内が再開されるまでの間は案内が無い状態で走行することとなり、利用者に不安を抱かせてしまうという問題があった。
【0008】
また、従来のナビゲーション装置では、利用者の車両が複数の車線のいずれかにいるときに目的地を設定して経路探索を行うと、走行車線の交通規制を無視した誘導経路を作成してしまう。図6は、利用者が交差点で停車中に経路探索を行った場合の一例を示す図である。図6において、実線で示す矢印IRは、利用者が直進車線PLに停車しているときに、ナビゲーション装置を用いて目的地への経路探索を行った場合に作成された誘導経路を示している。また、点線で示す矢印ORは、交差点の交通規制に従って走行する場合の実際の走行経路を示している。
【0009】
図6の例において、利用者は直進車線に停車しているので、本来は交差点を直進してから目的地に向かう経路が必要となる。ところが、従来のナビケーション装置は、この交差点から目的地へ最短で到達できるルートとして、当該交差点を左折する誘導経路を作成するのだが、利用者は車線の交通規制により左折することができず、当該交差点を直進することになる。やがて、ナビゲーション装置はオフルートを検出し、当該交差点を直進した場合の誘導経路を再探索して案内を再開することとなり、利用者は、オフルートした後に案内が再開されるまでの間は案内が無い状態で走行することとなるので、不安を抱いてしまうという問題があった。
【0010】
なお、車両が交差点に近づいたときに、当該交差点を通過するまでの間に、各車線を進行して交差点を通過した場合の誘導経路をそれぞれ探索し、それぞれの到着時間等を車線構成と共に表示するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術によると、利用者が画面表示された車線構成の中から何れかの車線をタッチして選択すると、当該選択された車線の誘導経路情報が表示される。その後、利用者が誘導経路情報を確認して画面上の決定ボタンをタッチすると、選択した車線についての経路を誘導経路として確定するように構成されている。
【特許文献1】特開2003−337037号公報
【0011】
この特許文献1に記載の技術を用いれば、現在の車線位置に対応する画面上の車線をタッチすることによって、その車線からオフルートによって進行せざるを得ない脱出方向への新たな誘導経路を、実際にオフルートが発生する前に決定することができる。しかしながら、そのような新たな誘導経路を決定するためには、利用者は画面表示された車線構成の中から所望の車線をタッチして選択した後、それに応じて表示される所望の車線を走行した場合の誘導経路情報を画面上で確認し、さらに決定ボタンをタッチすることとなるので、運転中の操作が煩わしく、かつ、運転の安全性も損なわれるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、交差点において煩わしい操作や画面表示の確認を行うことなく、現在の車線から進行が許可されている脱出方向に向けて交差点を通過したときの誘導経路を、当該交差点を通過する前に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置では、交差点を通過する前に経路探索の指示があったときに、当該交差点への進入道路に設けられている車線毎の脱出方向を定めた交通規制情報と、車両の現在の走行あるいは停車している車線位置情報とに基づいて、現在の車両の車線位置から進行可能な脱出方向に従って交差点を通過した場合の経路を探索するようにしている。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、利用者が走行あるいは停車している車線の交通規制を考慮に入れた、実際に走行することのできる誘導経路が交差点を通過する前に探索されることとなる。これにより、経路案内を中断することなく提供することができるので、利用者は安心して走行することができるようになる。また、このような交通規制を考慮した誘導経路が、煩わしい操作や画面表示の確認を行うことなく自動的に作成されることとなるので、利用者は運転以外のことに注意をとられることなく安全に走行することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるナビゲーション装置の主要構成例を示すブロック図である。図1において、11はDVD−ROM等の地図記録媒体であり、地図表示や経路探索などに必要な各種の地図データを記憶している。なお、ここでは地図データを記憶する記録媒体としてDVD−ROM11を用いているが、CD−ROM、ハードディスクなどの他の記録媒体を用いても良い。
【0016】
ここで、DVD−ROM11に記録された地図データの詳細について説明する。DVD−ROM11に記録された地図データには、地図表示に必要な各種のデータから成る描画ユニットと、マップマッチングや経路探索等の各種の処理に必要なデータから成る道路ユニットと、交差点の詳細データから成る交差点ユニットとが含まれている。また、上述した描画ユニットには、建物あるいは河川等を表示するために必要な背景レイヤのデータと、市町村名や道路名等を表示するために必要な文字レイヤのデータとが含まれている。
【0017】
上述の道路ユニットは、交差点や分岐など、複数の道路が交わる点に対応するノードに関する情報と、道路上のあるノードとこれに隣接する他のノードとの間を接続する、道路や車線等に対応するリンクに関する情報とを含んでいる。このうちノード情報には、ノードの正規化経度・緯度、接続ノードレコードなどの情報が含まれている。正規化経度・緯度は、経度方向・緯度方向のノードの相対位置を示す。接続ノードレコードは、そのノードが一方端となっている各リンクのリンク番号を、リンク本数分だけ示す。
【0018】
また、道路リンク情報には、道路リンクID、リンクの長さ、リンクの幅員、進入交差点の車線数、進入交差点の車線情報などが含まれている。図2は、本実施形態による道路リンク情報の構成例を示す図である。なお、この図2は、交差点に接続している道路の道路リンク情報の例を示している。図2(a)は、当該交差点の形状を示している。図2(a)に示すように、十字路の交差点Xには、4つの道路A,B,C,Dが接続されている。また、道路Aには、左折・直進・右折の3つの車線がある。
【0019】
図2(b)は、道路Aに関する道路リンク情報の例を示している。この道路リンク情報に含まれる各種情報のうち、道路リンクIDは、道路Aを特定するためのユニークな識別情報である。リンクの長さは、当該リンクに対応した実際の道路の距離を示す。リンクの幅員は、当該リンクに対応した実際の道路幅員を示す。進入交差点の車線数は、道路Aから交差点Xへ進入する方向の当該交差点近傍での車線数を示す。進入交差点の車線情報は、上述の車線数に対応した数の車線(交差点Xへの進入道路Aに設けられた各車線)に関する脱出方向の交通規制を示す。この車線情報は、本発明の交通規制情報に該当する。
【0020】
図2(a)のような交差点Xに接続している道路Aの場合、道路リンクIDとして“A”という識別情報が格納され、道路の長さとして例えば500m、幅員として例えば20m、道路Aから交差点Xへ進入する方向の車線数として“3”という情報が格納される。また、進入交差点の車線情報としては、車線番号0,1,2に対応して、それぞれの車線を走行した場合に自車が交差点Xを脱出できる方向と、脱出した場合に走行する次の道路の道路リンクIDとが格納される。例えば、車線番号0の車線を走行して交差点Xを通過した場合の脱出方向は左折となり、左折をしたときに走行する次の道路のリンクIDは“B”であることが示されている。
【0021】
例えば自車が道路Aにいるときに経路探索を実施する場合、図2(b)のように格納された道路リンク情報は、図2(c)のような進入交差点Xの形状として扱われる。すなわち、自車の交差点Xに対する位置関係から、交差点Xに接続されている道路リンクA,B,C,Dのうち、自車がいる道路リンクが進入リンクA、自車が進入交差点Xを通過した直後に走行する道路リンクが脱出リンクB,C,Dとして扱われる。
【0022】
図1に戻り、12は地図データ取得部であり、上述のような道路リンク情報が含まれている地図データをDVD−ROM11から取得する。13は車両の現在位置を検出する車両位置検出部であり、自律航法センサ、GPS受信機、位置計算用CPU等で構成されている。自律航法センサは、所定走行距離毎に1個のパルスを出力して車両の移動距離を検出する車速センサ(距離センサ)と、車両の回転角度(移動方位)を検出する振動ジャイロ等の角速度センサ(相対方位センサ)とを含む。自律航法センサは、これらの車速センサおよび角速度センサによって車両の相対的な移動量および方位を検出する。
【0023】
位置計算用CPUは、自律航法センサから出力される自車の相対的な移動量および方位のデータに基づいて、絶対的な自車位置(推定車両位置)および車両方位を計算する。また、GPS受信機は、複数のGPS衛星から送られてくる電波をGPSアンテナで受信して、3次元測位処理あるいは2次元測位処理を行って車両の絶対位置および方位を計算する(車両方位は、現時点における自車位置と1サンプリング時間ΔT前の自車位置とに基づいて計算する)。
【0024】
本実施形態の車両位置検出部13は、自律航法センサやGPS受信機を用いて上述のように測定した自車位置情報(自車位置の絶対経緯度)と、地図データとを使用して、交差点近傍において自車が存在する道路の車線位置を特定する。すなわち、車両位置検出部13は、上述のように測定した自車位置の絶対経緯度と、地図データのノード情報として含まれているノードの正規化経度・緯度とを照合して、自車位置近傍の交差点ノードを特定する。そして、その特定したノードに関する接続ノードレコード情報に基づいて、自車が走行している道路の道路リンクIDを特定する。また、上述のように測定した自車位置の絶対経緯度と、特定した道路リンクIDに対応して格納されている道路の長さ・幅員の情報とに基づいて、自車が走行している車線の車線番号を特定する。
【0025】
14は地図情報メモリであり、地図データ取得部12の制御によってDVD−ROM11から読み出された地図データを一時的に格納する。すなわち、地図データ取得部12は、車両位置検出部13から車両現在位置の情報を取得し、地図表示や経路探索に必要な地図データをDVD−ROM11から読み出して地図情報メモリ14に格納する。車両位置検出部13が交差点近傍において自車が存在する道路の車線位置を特定する際には、この地図情報メモリ14に格納された地図データが利用される。
【0026】
15はリモートコントローラ(リモコン)等の操作部であり、利用者がナビゲーション装置に対して各種の情報(例えば、経路誘導の目的地)を設定したり、各種の操作(例えば、メニュー選択操作、拡大/縮小操作、手動地図スクロール、数値入力、経路探索の指示など)を行ったりするための各種操作子(ボタンやジョイスティック等)を備えている。16はリモコンインタフェースであり、リモコン15からその操作状態に応じた赤外線信号を受信する。
【0027】
17は経路探索部であり、経路探索の指示があったときに、地図データ取得部12により取得され地図情報メモリ14に格納された地図データに基づいて、現在地から目的地までの誘導経路を探索する。その際に経路探索部17は、地図データ中に含まれている道路リンク情報(主に、各車線の交通規制情報)と、車両位置検出部13により特定された車両の現在の車線位置情報(道路リンクIDおよび車線番号)とに基づいて、現在の車線位置から進行可能な脱出方向に従って交差点を通過した場合の経路を探索する。
【0028】
経路探索部17は、現在地から目的地までの経路を構成する道路リンクの通過コストの合計が最も小さくなるように、誘導経路の作成を行う。通過コストとは、脱出リンクを通過するときの通過のしやすさを数値で表したものであり、誘導経路として適正の程度を数値化したものである。この通過コストは、例えば道路の長さや道幅、道路種別(一般道か高速道路かなど)、法定速度、右折および左折、交通規制、混雑状況等々を考慮に入れて決定する。脱出リンクの決定は、候補となる複数の脱出リンク毎に計算した通過コストを比較することにより行う。
【0029】
すなわち、経路探索部17は、現在車両が存在する道路を出発リンクとして、当該出発リンクに接続されている交差点に進入したときの全ての脱出リンクのうち、通過コストが最小の脱出リンクを誘導経路の一部として決定する。そして、この誘導経路の一部として決定した脱出リンクを次の交差点に対する進入リンクとし、当該次の交差点に接続されている全ての脱出リンクの中から通過コストが最も小さい脱出リンクを誘導経路の一部として更に決定する。このような動作を繰り返し行うことで、現在地から目的地までの誘導経路を順次作成していく。
【0030】
経路探索部17は、通過コスト変更部17aを備えている。通過コスト変更部17aは、道路リンク情報の一部を成す各車線の交通規制情報によって現在の車線位置から進行不可能とされている脱出リンクの通過コストを、当該脱出リンクが誘導経路として選択されなくなる程度まで充分に増加させる。経路探索部17は、通過コスト変更部17aによって通過コストを適宜変更した上で、誘導経路の探索を行う。
【0031】
ただし、通過コスト変更部17aは、現在地から経路上にある最初の交差点で脱出リンクを決定するときだけ、各車線の交通規制情報によって現在の車線位置から進行不可能とされている脱出リンクの通過コストを増加させる。経路探索の過程で同じ交差点を再び通過することとなったときに脱出リンクを決定するときには、脱出リンクの通過コストは増加させない。
【0032】
ここで、経路探索部17によって行われる経路探索の動作を、図2を参照して具体的に説明する。例えば、図2(c)で示した進入リンクAに自車がいるときに経路探索の指示があったとすると(進入リンクAは出発リンクに相当する)、経路探索部17は、進入リンクAを介して交差点Xに進入したときの全ての脱出リンクB,C,Dの情報を地図情報メモリ14から取得し、あらかじめ設定されている経路探索の条件(時間優先、距離優先、高速道路優先などの何れかの条件)を考慮して、いずれかの脱出リンクを誘導経路の一部として決定する。
【0033】
このとき通過コスト変更部17aは、出発リンクAから交差点Xを介して接続されている全ての脱出リンクB,C,Dのうち、出発リンクAにおける車線の交通規制と自車が存在する車線位置との関係によって自車が交差点Xを通過後に走行することができない脱出リンクの通過コストを充分に大きい値に変更する。具体的には、通過コスト変更部17aは、出発リンクAから交差点Xを介して接続されている各脱出リンクB,C,Dに対して、自車の走行可否を判断する。自車の走行可否の判断は、車両位置検出部13によって特定された車両が走行あるいは停車している道路リンクIDと車線番号および、地図情報メモリ14から取得した道路リンク情報(車線の交通規制情報)を使用して行う。
【0034】
例えば、図2(a)で示した道路Aの車線番号0に自車がいる場合、通過コスト変更部17aは、道路Aの道路リンク情報を地図情報メモリ14から取得し、その道路リンク情報に含まれている車線情報の中から、自車が存在していない車線番号1と車線番号2に対応する脱出リンクの道路リンクIDを抽出する。そして、抽出した道路リンクIDで示される道路リンクC,Dが、自車が交差点Xの通過後に走行することのできない脱出リンクであると判断する。
【0035】
通過コスト変更部17aは、自車が交差点Xの通過後に走行することができないと判断した脱出リンクC,Dの通過コストを、通過コストとして取り得る値の最大値に設定する。または、元々の通過コストに対して所定の係数をかける等して、経路探索部17が当該脱出リンクC,Dを誘導経路の一部として選択することがなくなるまで通過コストを増加させる。
【0036】
なお、ここでは自車が存在していない車線番号に対応して記憶されている道路リンクIDの道路リンクを、自車が交差点通過後に走行することのできない脱出リンクであると判断する例について説明したが、これに限定されない。例えば、各車線番号に対応して記憶されている脱出リンクの道路リンクIDのうち、自車が存在している車線番号に対応する道路リンクID以外の道路リンクIDによって示される道路リンクを、自車が交差点通過後に走行することのできない脱出リンクであると判断するようにしても良い。
【0037】
18はオフルート予測部であり、地図情報メモリ14より読み出される地図データの道路リンク情報中に含まれている車線情報(各車線の交通規制情報)と、車両位置検出部13により検出された車両の現在の車線位置情報(道路リンクIDおよび車線番号)と、既に設定されている誘導経路情報とに基づいて、誘導経路から自車が逸脱することを予測する。そして、自車のオフルートが予測された段階で、実際にオフルートが生じる前に経路探索の指示を経路探索部17に与える。
【0038】
例えば、図2(a)で示した道路Aの車線番号0に自車がいる場合、既に設定されている誘導経路は進入リンクAから交差点Xを右折して脱出リンクDに入るルートであったとする。この場合にオフルート予測部18は、道路リンクAの道路リンク情報を地図情報メモリ14から取得し、その道路リンク情報に含まれている車線情報の中から、自車が存在している車線番号0に対応する脱出リンクの道路リンクIDを抽出する。そして、抽出した道路リンクIDで示される脱出リンクBと、誘導経路として設定されている脱出リンクDとを比較し、両者が一致しない場合にオフルートが生じると予測する。オフルートが生じると予測した場合には、オフルート予測部18は直ちに経路探索の指示を経路探索部17に与える。
【0039】
上述のように、経路探索部17は、経路探索の指示が与えられたときに、車両の現在位置がある道路リンクを出発リンクとして、現在地から目的地までの経路を構成する道路リンクの通過コストの合計が最も小さくなるように、誘導経路の作成を行う。このとき通過コスト変更部17aは、出発リンクから交差点を介して接続されている全ての脱出リンクのうち、自車が交差点を通過後に走行することができない脱出リンクの通過コストを充分に大きい値に変更する。
【0040】
経路探索部17に対して経路探索の指示が与えられるタイミングは、オフルート予測部18によってオフルートの発生が予測されたときか、利用者がリモコン15を操作して経路探索の要求を出したときの何れかである。前者の場合の探索指示は、図5のように元々の誘導経路に沿って自車が走行することができなくなることが予想されたときに発生する。後者の場合の探索指示は、図6のように交差点の手前で自車が停車中または走行中のときに利用者がリモコン15を操作して経路探索を要求したときに発生する。
【0041】
19はディスプレイコントローラであり、地図情報メモリ14に格納された地図データに基づいて、表示装置20への表示に必要な地図画像データを生成し、表示装置20に出力する。また、ディスプレイコントローラ19は、経路探索部17によって探索された誘導経路を他の道路とは色を変えて太く描画するように表示装置20を制御する。また、ディスプレイコントローラ19は、車両が誘導経路上の案内交差点や案内分岐点などに一定距離以内に近づいたときに、交差点拡大図を表示装置20に表示するように制御する。
【0042】
21は音声発生部であり、車両が誘導経路上の案内交差点や案内分岐点などに一定距離以内に近づいたときに、進行方向を案内するための音声を発生する。スピーカ22は、音声発生部21により発生された音声を外部に出力する。
【0043】
次に、上記のように構成した本実施形態のナビゲーション装置による経路探索の動作について説明する。図3は、本実施形態の経路探索処理によって決定される誘導経路の一部を示す図である。また、図4は、本実施形態のナビゲーション装置により行われる経路探索の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すように、十字路の交差点Xには、4つの道路A,B,C,Dが接続されている。道路Aには、交差点Xを左折・直進・右折するように規制された3つの車線(車線番号0,1,2)があり、自車は車線番号0の左折車線にいるものとする。
【0044】
図4において、経路探索部17は、経路探索の指示の有無を判定する(ステップS1)。例えば、交差点Xに接続している道路Aの車線番号0に自車がいるときに、利用者がリモコン15を操作して経路探索をナビゲーション装置に要求すると、当該要求は、リモコンインタフェース16を経由して経路探索部17に対して経路探索指示として伝えられる。また、元々誘導経路が設定されているときに、オフルート予測部18によってオフルートの発生が予測されたときにも、経路探索部17に対して経路探索の指示が与えられる。
【0045】
経路探索の指示が与えられると、これに応じて経路探索部17は、自車が現在存在している道路の道路リンクIDを車両位置検出部13から取得し、これを誘導経路の最初の道路リンクA(出発リンク)として図示しない誘導経路メモリに記憶する(ステップS2)。
【0046】
さらに経路探索部17は、上述の出発リンクAを、交差点Xへの進入リンクとみなし、その進入リンクAに関する道路リンク情報を地図情報メモリ14から取得する(ステップS3)。そして、取得した道路リンク情報から脱出リンクB,C,Dを特定するとともに、当該脱出リンクB,C,Dの情報(道路リンクID、長さ、幅員等)を取得する(ステップS4)。
【0047】
経路探索部17は、取得した道路リンクの情報を基に、各脱出リンクB,C,Dの通過コストを計算する(ステップS5)。次に、経路探索部17は、各脱出リンクB,C,Dが接続されている交差点Xが、経路上の最初の交差点であることを判定する(ステップS6)。交差点Xが最初の交差点であると判断した場合、経路探索部17は、その交差点Xに接続されている全ての脱出リンクB,C,Dの道路リンクIDとステップS5で計算した通過コストとを通過コスト変更部17aに渡して、各脱出リンクB,C,Dの通過コストの変更を要求する。
【0048】
通過コスト変更部17aは、通過コスト変更の要求を受け取ると、車線の交通規制によって自車が進行することのできない脱出リンクの抽出を開始する。すなわち、通過コスト変更部17aは、自車が現在存在している道路の道路リンクIDと車線番号を車両位置検出部13から取得し、取得した道路リンクIDに該当する道路リンク情報を地図情報メモリ14から取得する。さらに、通過コスト変更部17aは、取得した道路リンク情報の車線情報の中から、車両位置検出部13から取得した自車の車線番号と一致しない車線番号を抽出する。そして、その抽出した各車線番号に対応して格納されている脱出リンクを、自車が進行することのできない道路として特定する。ここでは、2つの脱出リンクC,Dを、自車が交差点Xの通過後に進行することのできない道路として特定する。
【0049】
さらに通過コスト変更部17aは、上記特定した進行することのできない脱出リンクC,Dが誘導経路として選択されなくなるまで通過コストを増加させる(ステップS7)。なお、上記ステップS6で、現在自車が存在している進入リンクに接続している交差点が最初の交差点でないと判断した場合には、ステップS7による通過コストの変更は行わない。
【0050】
次に、経路探索部17は、各脱出リンクB,C,Dの通過コストを比較し、最も通過コストが小さい脱出リンクを誘導経路の一部として決定する(ステップS8)。ここでは、各脱出リンクB,C,Dのうち、脱出リンクC,DについてはステップS7で通過コストが増加され、脱出リンクBの通過コストは増加されていないので、最も通過コストが小さくなる脱出リンクBを誘導経路の一部として決定する(図3に示す実線矢印)。
【0051】
経路探索部17は、ステップS8で決定した脱出リンクBを、図示しない誘導経路メモリに既に記憶してある道路リンク(ここまでの段階では出発リンクAのみが記憶されている)に続く次の道路リンクとして記憶する。次に、経路探索部17は、目的地まで誘導経路が到達したことを判定する(ステップS9)。ここで、まだ目的地まで誘導経路が引かれていないと判断した場合は、ステップS8で決定した脱出リンクBを次の交差点への進入リンクとして(ステップS10)、ステップS3の処理に戻る。そして、ステップS3〜S10の処理を繰り返し行うことで、目的地までの誘導経路を順次作成していく。
【0052】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、自車がいる進入リンクの車線の交通規制に応じて、脱出リンクの通過コストを変更することにより、自車が進行することのできる脱出リンクのみを経路として使用する誘導経路を作成することができるようになる。さらに、このような誘導経路を、交差点を通過する前にあらかじめ作成することができるので、経路案内を中断することなく提供することができ、利用者は安心して走行することができるようになる。また、交通規制を考慮した誘導経路を、利用者による煩わしい操作や画面表示の確認を行うことなく自動的に作成することができるので、利用者は運転以外のことに注意をとられることなく安全に走行することができるようになる。
【0053】
なお、上記実施形態では、1本の道路リンクに対して複数の車線番号を持つように構成する例について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数の車線がある場合に、各車線をそれぞれ異なる道路リンクとして表現し、それぞれの道路リンクに対して脱出可能な方向を表す交通規制情報を格納するようにしても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、現在の車線位置から進行不可能な脱出リンクの通過コストを増加させて経路探索を行う例について説明したが、本発明はこれに限定されない。逆に、現在の車線位置から進行可能な脱出リンクの通過コストを減少させて経路探索を行うようにしても良い。
【0055】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、地図データを用いて現在地から目的地までを結ぶ最もコストが小さな経路を自動探索する経路誘導機能を備えたナビゲーション装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態によるナビゲーション装置の要部構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による道路リンク情報の構成例を示す図である。
【図3】本実施形態の経路探索処理によって決定される誘導経路の一部を示す図である。
【図4】本実施形態のナビゲーション装置により行われる経路探索の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】従来のナビゲーション装置で誘導経路の設定中に交差点でオフルートしたときの様子を示す図である。
【図6】従来のナビゲーション装置で交差点の手前で誘導経路を設定したときの様子を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
12 地図データ取得部
13 車両位置検出部
17 経路探索部
17a 通過コスト変更部
18 オフルート予測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点への進入道路に設けられた各車線について脱出方向の交通規制情報を有する地図データを取得する地図データ取得部と、
車両の現在位置を検出する車両位置検出部と、
経路探索の指示があったときに、上記地図データ取得部により取得された地図データ中に含まれている上記交通規制情報と、上記車両位置検出部により検出された車両の現在の車線位置情報とに基づいて、現在の車線位置から進行可能な脱出方向に従って交差点を通過した場合の経路を探索する経路探索部とを備えたことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
上記経路探索部は、上記交通規制情報によって上記現在の車線位置から進行不可能とされている脱出リンクの通過コストを増加させて経路の探索を行うことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
上記経路探索部は、上記現在の車線位置から経路上の最初の交差点で脱出リンクを決定するときだけ、上記交通規制情報によって上記現在の車線位置から進行不可能とされている脱出リンクの通過コストを増加させ、経路探索の過程で同じ交差点を再び通過することとなったときに脱出リンクを決定するときには、脱出リンクの通過コストを増加させずに経路の探索を行うことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
上記地図データ取得部により取得された地図データ中に含まれている上記交通規制情報と、上記車両位置検出部により検出された車両の現在の車線位置情報と、既に設定されている誘導経路情報とに基づいて、誘導経路から自車が逸脱することを上記交通規制情報が設定されている交差点毎に予測し、自車の逸脱が予測された段階で、上記経路探索の指示を上記経路探索部に与えるオフルート予測部を備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
車両位置検出部によって車両の現在位置を検出する第1のステップと、
交差点への進入道路に設けられた各車線について脱出方向の交通規制情報を有する地図データを地図データ取得部によって取得する第2のステップと、
経路探索の指示があったときに、上記地図データ取得部により取得された地図データ中に含まれている上記交通規制情報と、上記車両位置検出部により検出された車両の現在の車線位置情報とに基づいて、現在の車線位置から進行可能な脱出方向に従って交差点を通過した場合の経路を経路探索部によって探索する第3のステップとを有することを特徴とする経路探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−132828(P2007−132828A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326940(P2005−326940)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】