説明

ハイブリッドシステムの制御装置

【課題】この発明は、ハイブリッドシステムの制御装置に関し、内燃機関の始動性向上を図るとともに、蓄電池への充電を好適に行うことのできるハイブリッドシステムの制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アルコール混合燃料を使用可能な内燃機関と、電力が供給されることにより内燃機関の冷却水を加熱する冷却水加熱装置と、冷却水加熱装置に電力を供給可能であり、少なくとも外部電源に接続されて充電可能な蓄電池とを有するハイブリッドシステムを備える。燃料中のアルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定する。内燃機関が停止状態にあり、蓄電池が外部電源に接続されている場合に、冷却水の水温が要求水温に達するまで、冷却水加熱装置に電力を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッドシステムの制御装置に係り、特に、車両に搭載されるプラグインハイブリッドシステムの制御を実行するのに好適なハイブリッドシステムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、内燃機関とモータとを有し、該モータに電力を供給すると共に少なくとも外部電源を用いて充電可能な蓄電池とを備えたプラグイン型のハイブリッドシステムが知られている。また、特許文献2には、電力の供給を受けて内燃機関の冷却水を加熱するヒータが開示されている。ヒータにより冷却水が加熱されることで内燃機関の始動性向上を図ることができる。さらに、特許文献3には、アルコールとガソリンとの混合燃料を使用する内燃機関が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167875号公報
【特許文献2】特開2004−324544号公報
【特許文献3】特開2009−180130号公報
【特許文献4】特開2008−274824号公報
【特許文献5】特開2004−52691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したハイブリッドシステムの内燃機関に、上述したアルコールとガソリンとの混合燃料を使用する内燃機関が用いられる場合がある。しかし、アルコールはガソリンに比して気化しにくく内燃機関の始動性を悪化させる可能性がある。これに対して、上述したヒータを用いて内燃機関の冷却水を加熱して暖機を図り、燃料の気化を促進することが考えられる。
【0005】
この場合、暖機に必要な冷却水の熱量を確保するために、内燃機関の始動時までに冷却水の温度を高めておく必要がある。しかしながら、次の始動に備えて、ヒータを用いて冷却水を高温に保つには蓄電池の電力を消費する。蓄電池の電力が消費された状態では、車両走行開始後の燃費の悪化を招くこととなる。また、給油される燃料のアルコール濃度は必ずしも一定ではなく、暖機に必要な冷却水の熱量も変化することとなる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、アルコール混合燃料が使用される内燃機関と、外部電源を用いて充電可能な蓄電池と、電力供給を受けて内燃機関の冷却水を加熱する装置とを備えたハイブリッドシステムにおいて、内燃機関の始動性向上を図るとともに、蓄電池への充電を好適に行うことのできるハイブリッドシステムの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、アルコールが混合された燃料を使用可能な内燃機関と、電力が供給されることにより前記内燃機関の冷却水を加熱する冷却水加熱装置と、前記冷却水加熱装置に電力を供給可能であり、少なくとも外部電源に接続されて充電可能な蓄電池と、を備えるハイブリッドシステムの制御装置において、
前記燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、
前記アルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定する要求水温設定手段と、
前記内燃機関が停止状態にあるか否かを判定する内燃機関停止状態判定手段と、
前記蓄電池が外部電源に接続されているか否かを判定する外部電源接続判定手段と、
前記内燃機関が停止状態にあり、前記蓄電池が外部電源に接続されている場合に、前記冷却水の水温が前記要求水温に達するまで、前記冷却水加熱装置に電力を供給する冷却水プレヒート手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記冷却水プレヒート手段は、前記要求水温が高いほど前記冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させる手段、を更に備えること、を特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記冷却水プレヒート手段は、外部電源から供給される電力量が一定である場合に、前記要求水温が高いほど前記冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させると共に、前記蓄電池に充電される電力量を減少させる充電比率変更手段、を更に備えること、を特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、
外気温度を取得する外気温度取得手段を備え、
前記要求水温設定手段は、前記外気温度が低く前記アルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定すること、を特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、
現在から所定時間後までの予測されている最低外気温度を取得する最低外気温度取得手段を備え、
前記要求水温設定手段は、前記最低外気温度が低く前記アルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、アルコール濃度が高いほど要求温度が高く設定され、内燃機関が停止状態であり、蓄電池が外部電源に接続されている場合に、要求温度に達するまで冷却水を加熱することができる。そのため、暖機に必要な冷却水の熱量を確保し、内燃機関の始動性を高めることができる。一方、アルコール濃度が低いほど要求温度が低く設定されため、暖機に必要とされる冷却水の熱量が少ない状況下では、冷却水加熱装置への不必要な電力供給を抑制することができる。そのため、外部電源による蓄電池の充電を好適に行うことができ、車両走行開始後の燃費向上を図ることができる。
【0013】
第2の発明によれば、要求水温が高いほど冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させることができる。冷却水が高温であるほど、時間あたりの温度低下は大きくなる(図11、図12参照)。そのため、要求水温が高いほど冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させることで、好適に冷却水を昇温させることができる。
【0014】
第3の発明によれば、外部電源から供給される電力量が一定である場合に、要求水温が高いほど冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させると共に、前記蓄電池に充電される電力量を減少させることができる。そのため、暖機に必要な冷却水の熱量を確保し、内燃機関の始動性を高めることができる。
【0015】
第4の発明によれば、外気温度が低いほど要求水温を高く設定することができる。そのため、外気温度が低く、内燃機関の始動性が悪化する状況下であっても、暖機に必要な冷却水の熱量を確保し、内燃機関の始動性を高めることができる。
【0016】
第5の発明によれば、現在から所定時間後までの最低外気温度が低いほど要求水温を高く設定することができる。そのため、小型小容量の冷却水加熱装置を用いる場合であっても、十分に冷却水を昇温させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に適用されたプラグイン型ハイブリッド車両の駆動システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1のハイブリッドシステムが備える冷却システム56及び蓄熱システム58について説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態1の制御に用いられる外気温度thaoutと燃料中のエタノール濃度Eと要求温水温度kthwとの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1において、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2のシステムにおいて用いられる蓄熱温水昇温優先マップについて説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態2において、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態3のシステムにおいて用いられる蓄熱温水昇温優先マップについて説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態3において、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態4のシステムにおいて用いられる要求温水温度マップについて説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態4において、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。
【図11】エンジン停止後のエンジン12内の水温変化を示す図である。
【図12】エンジン停止後の蓄熱タンク74に貯蔵された温水の温度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
実施の形態1.
[ハイブリッドシステムの構成]
図1は、本発明が適用されたプラグイン型ハイブリッド車両の駆動システムの概略構成を示す図である。この駆動システム10は、車両の動力源として内燃機関(以下、単に「エンジン」という。)12と車両駆動用モータ(以下、単に「モータ」という。)14とを備えている。エンジン12の燃料として、ガソリン、アルコールの他、ガソリンとアルコールとの混合燃料が用いられる。アルコールとしては、例えばエタノールが用いられる。また、駆動システム10は、駆動力の供給を受けて電力を発生する発電機16も備えている。
【0020】
エンジン12、モータ14、および発電機16は、動力分割機構18を介して相互に連結されている。動力分割機構18につながるモータ14の回転軸には、減速機20が接続されている。減速機20は、モータ14の回転軸と駆動輪22につながる駆動軸24とを連結している。動力分割機構18は、内燃機関12の駆動力を発電機16側と減速機20側とに分割する装置である。動力分割機構18による駆動力の配分は、任意に変更することができる。
【0021】
駆動システム10には、更に、インバータ26、コンバータ28、およびバッテリ30が含まれている。インバータ26は、発電機16およびモータ14に接続されているとともに、コンバータ28を介してバッテリ30にも接続されている。発電機16で発電された電力は、インバータ26を介してモータ14に供給することもできるし、インバータ26およびコンバータ28を介してバッテリ30に充電することもできる。また、バッテリ30に充電されている電力は、コンバータ28およびインバータ26を介してモータ14に供給することができるほか、後述する図2に示す電動式ウォータポンプ72、ヒータ76にも供給することができる。
【0022】
また、バッテリ30は、車両外の外部電源(家庭用電源や、充電ステーションにある専用電源など)から電力の供給を受けられるように構成されている。バッテリ30は、充電回路32を介して充電プラグ34に接続されている。充電プラグ34が外部電源に差し込まれることにより、外部電源からの電力供給を受けてバッテリ30を充電することができる。つまり、本実施形態の駆動システム10は、いわゆるプラグイン型のハイブリッド車両の駆動システムとして構成されたものである。
【0023】
以上説明した駆動システム10によれば、所定の条件に基づいて、モータ14を停止させて内燃機関12の駆動力のみによって駆動輪22を回転させることもできるし、逆に、内燃機関12を停止させてモータ14の駆動力のみによって駆動輪22を回転させることもできる。更に、モータ14と内燃機関12の双方を作動させ、双方の駆動力によって駆動輪22を回転させることもできる。
【0024】
また、駆動システム10によれば、モータ14を内燃機関12のスタータとして機能させることもできる。つまり、内燃機関12の始動時に、モータ14の駆動力の一部或いは全部を、動力分割機構18を介して内燃機関12に入力することで、内燃機関12をクランキングすることができる。
【0025】
[冷却システム及び蓄熱システムの構成]
図2は、本実施形態のハイブリッドシステムが備える冷却システム56及び蓄熱システム58について説明するための図である。まず、エンジン12に設けられる冷却システム56について説明する。エンジン12には、冷却水を循環させるための冷却通路60が接続されている。冷却通路60の上流端は、エンジン12のシリンダヘッド63内に形成された水路に接続されている。シリンダヘッド63下流の冷却通路60は、ラジエータ64に接続されている。
【0026】
ラジエータ64は、流入された冷却水と外気との間で熱交換を行う熱交換器であり、熱交換後の冷却水をラジエータ64下流の冷却通路60に排出するように構成されている。ラジエータ64下流の冷却通路60には、冷却通路温度センサ66が配置されている。冷却通路温度センサ66下流の冷却通路60は、機械式ウォータポンプ68の冷却水吸込口に接続されている。
【0027】
機械式ウォータポンプ68は、エンジン12の出力軸の回転トルクを駆動源として冷却水の流れを発生させるポンプであり、冷却水吸込口から吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出するように構成されている。機械式ウォータポンプ68の冷却水吐出口は、エンジン12のシリンダブロック70内に形成された水路に接続されている。
【0028】
シリンダブロック70とシリンダヘッド63とは締結されており、これらの水路は接続されている。シリンダブロック70に流入された冷却水は、シリンダヘッド63から流出されてラジエータ64に還流される。
【0029】
次に、エンジン12に設けられる蓄熱システム58について説明する。エンジン12には、冷却水が循環する加熱通路62が接続されている。加熱通路62の上流端は、シリンダブロック70内に形成された水路に接続されている。シリンダブロック70下流の加熱通路62は、電動式ウォータポンプ72の冷却水吸込口に接続されている。
【0030】
電動式ウォータポンプ72は、バッテリ30から出力される電力を駆動源として冷却水の流れを発生させるポンプであり、冷却水吸込口から吸い込んだ冷却水を冷却水吐出口から吐出するように構成されている。
【0031】
電動式ウォータポンプ72の冷却水吐出口下流の加熱通路62には、蓄熱タンク74が設けられている。蓄熱タンク74は、冷却水を蓄熱状態で貯蔵する容器であり、内部には貯蔵された冷却水を加熱するためのヒータ76が設けられている。ヒータ76として、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが用いられる。ヒータ76は、バッテリ30から電力の供給を受けて冷却水を加熱するように構成されている。以下、蓄熱タンク74に蓄熱状態で貯蔵された冷却水を単に「温水」とも記す。
【0032】
蓄熱タンク74の流出口近傍には、蓄熱タンク74に貯蔵されている冷却水の水温を検出する加熱通路温度センサ78が設けられている。蓄熱タンク74下流の加熱通路62には、流路切換弁80が設けられている。流路切換弁80には分岐通路82の一端が接続されており、分岐通路82の他端は電動式ウォータポンプ72上流の加熱通路62に接続されている。また、分岐通路82には運転室内ヒータ84が設けられている。流路切換弁80は、電動モータ等により駆動され、加熱通路62と分岐通路82とを選択的に開閉することができる。
【0033】
流路切換弁80下流の加熱通路62はシリンダヘッド63内に形成された水路に接続されている。シリンダヘッド63に流入された冷却水は、冷却通路60及び加熱通路62に還流される。
【0034】
本実施形態のシステムはECU(Electronic Control Unit)50(図1)を備えている。ECU50の入力側には、上述の充電回路32、冷却通路温度センサ66、加熱通路温度センサ78の他、外気の温度を検出する外気温度センサ86(図1)、点火スイッチ88(図1)、燃料中のエタノール濃度を検出するエタノール濃度センサ90(図1)等の各種センサが接続されている。また、ECU50の出力側には、充電回路32、電動式ウォータポンプ72、ヒータ76、流路切換弁80等の各種アクチュエータが接続されている。
【0035】
ECU50は、各種センサからの入力情報に基づいて所定のプログラムを実行し、各種アクチュエータを作動させることにより、駆動システム10及び蓄熱システム58を制御する。ECU50は、駆動システム10について、エンジン12、モータ14、発電機16、動力分割機構18、インバータ26、およびコンバータ28、充電回路32等を含む全体を総合的に制御してEV走行、HV走行等を実施させることもできる。
【0036】
また、ECU50は、蓄熱システム58について、電動式ウォータポンプ72をON状態にすることができる。ON状態とされることで、蓄熱タンク74に新たな冷却水が流入され、蓄熱タンク74に貯蔵されている温水は押し出される。さらに、流路切換弁80によって加熱通路62が開かれることで、押し出された温水はエンジン12に供給される。エンジン12の始動に際して、エンジン12に温水を供給することで、供給される温水の総熱量(水量及び水温)に応じて、エンジン12(吸気ポート、気筒等)の暖機を図ることができる。
【0037】
さらに、ECU50は、蓄熱システム58について、ヒータ76をON状態にすることができる。ON状態とされることで、ヒータ76はバッテリ30からの電力供給を受けて発熱する。これにより、蓄熱タンク74に貯蔵されている温水は加熱される。
【0038】
[実施の形態1における特徴的制御]
ところで、エンジン12の水温や蓄熱タンク74の水温は、ソーク時間(エンジン停止時から次に始動するまでの時間)が長いほど低下する。図11は、エンジン停止後のエンジン12内の水温変化を示す図である。図11に示す通り、エンジン12内の水温はエンジン停止後、急激に低下する。水温が大きく低下すればエンジン12を再始動させる際の始動性が悪化する要因となる。
【0039】
また、図12は、エンジン停止後の蓄熱タンク74に貯蔵された温水の温度変化を示す図である。図12に示す通り、蓄熱タンク74に貯蔵された温水はエンジン停止後、緩やかに低下する。蓄熱タンクは保温タンクではあるが、ソーク期間が長くなれば温水の温度低下は避けられない。そのため、エンジン12を再始動させる際に、エンジン12に温水を供給してもエンジン12の暖機のために要する熱量が不足する場合が生じる。
【0040】
特に、駆動システム10のエンジン12には、上述した通り、エタノールが混合された混合燃料が使用させる。エタノールはガソリンに比して気化しにくいため、給油される燃料のエタノール濃度によって暖機のために要する温水の熱量は異なることとなる。
【0041】
これに対して、ヒータ76により温水を常時高温に保っておくことも考えられるが、それでは、バッテリ30の電力消費が大きくバッテリ30の充電不足が生じうる。バッテリ30が充電不足となれば、車両走行開始後の燃費が悪化することとなる。
【0042】
そこで、本実施形態のシステムでは、プラグイン型ハイブリッドシステムの駆動システム10に蓄熱システム58を用いた構成において、燃料中のエタノール濃度や外部電源の接続状態等に応じて、蓄熱タンク74に貯蔵される温水を、ソーク時に暖機に要する温度まで加熱する制御を実施することとした。
【0043】
より具体的な制御の概要について説明する。図3は、実施の形態1のシステムにおいて用いられる「要求温水温度マップ」について説明するための図である。図3の要求温水温度マップには、外気温度thaoutと燃料中のエタノール濃度Eと要求温水温度kthwとの関係が表されている。要求温水温度kthwとは、エンジン12を好適に始動させるために、暖機に必要とされる熱量を確保するための温度であり、蓄熱タンク74に貯蔵された温水の温度である。
【0044】
外気温度が高いほど燃料は気化し易く、エンジン12の始動性は高まるため、図3に示す通り、外気温度thaoutが高いほど要求温水温度kthwは低く設定されている。また、エタノールはガソリンよりも気化し難いため、エタノール濃度Eが高いほど燃料の気化を促進すべく、要求温水温度kthwは高く設定されている。
【0045】
本実施形態のシステムでは、外部電源に接続された場合において、外気温度thaoutが低くエタノール濃度Eが高いほど要求温水温度kthwを高く設定し、要求温水温度kthwに達するまで温水を加熱させることで、エンジン12の暖機に要する熱量を確保することとした。一方、温水の温度が要求温水温度kthwに達している場合には、必要以上の加熱を停止し、外部電源によるバッテリ30の充電を促進することとした。
【0046】
図4は、上述の動作を実現するために、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。蓄熱温水プレヒート制御ルーチンは所定時間毎に実行される。図4に示すルーチンでは、まず、ステップ100において、イグニションOFF状態であるか否かが判定される。具体的には、点火スイッチ88がOFF状態である場合には、イグニションOFF状態であると判定される。なお、イグニションON状態であると判定された場合には、本ルーチンの処理は終了される。
【0047】
イグニションOFF状態であると判定された場合には、次にステップ110において、バッテリ30と外部電源とが接続されているか否かが判定される。具体的には、充電回路32によりバッテリ30と外部電源との接続状態が検出される。上述した通り、バッテリ30が外部電源に接続されると、外部電源からの電力供給を受けてバッテリ30への充電が行われる。
【0048】
外部電源が接続されていると判定された場合には、次にステップ120において、蓄熱タンク74の温水の温度である蓄熱タンク温水温度thw1が取得される。蓄熱タンク温水温度thw1は、加熱通路温度センサ78により検出される。
【0049】
続いて、ステップ130において、燃料中のエタノール濃度Eが取得される。エタノール濃度Eは、エタノール濃度センサ90により検出される。また、ステップ140において、外気温度thaoutが取得される。外気温度thaoutは外気温度センサ86により検出される。
【0050】
その後、ステップ150において、要求温水温度kthwが算出される。具体的には、ECU50には、上記図3で述べた「要求温水温度マップ」が記憶されている。要求温水温度マップから、ステップ130で取得されたエタノール濃度Eとステップ140で取得された外気温度thaoutとに対応する要求温水温度kthwが取得される。なお、要求温水温度kthwは、エンジン12の材質・構造や蓄熱タンク74に貯蔵される水量等も鑑みて、エンジン12の暖機に要する熱量を確保できるように予め実験等により定められている。
【0051】
続いて、ステップ160において、温水プレヒート実行フラグXHEATERが0であるか否かが判定される。温水プレヒート実行フラグXHEATERは、ECU50に記憶されており、初期値は0に設定されている。
【0052】
温水プレヒート実行フラグXHEATERが0であると判定された場合には、次にステップ170において、要求温水温度kthwが、上記ステップ120で取得された蓄熱タンク温水温度thw1よりも高いか否かが判定される。要求温水温度kthwが蓄熱タンク温水温度thw1よりも高いと判定された場合には、ECU50は、蓄熱タンク74内の温水が暖機に要する熱量を確保できるほど高くないと判断することができる。この場合、ステップ180において、温水プレヒート実行フラグXHEATERに1がセットされる。
【0053】
温水プレヒート実行フラグXHEATERに1がセットされている場合には、ECU50は温水プレヒートを実行する(ステップ190)。具体的には、ECU50は、ヒータ76をON状態とする。その後、本ルーチンの処理は終了される。
【0054】
一方、ステップ170において、要求温水温度kthwが蓄熱タンク温水温度thw1以下であると判定された場合には、ECU50は、蓄熱タンク74内の温水が暖機に要する熱量を十分確保できていると判断することができる。この場合、温水プレヒート実行フラグXHEATERに0がセットされる(ステップ210)。温水プレヒート実行フラグXHEATERに0がセットされている場合には、温水プレヒートが中止される(ステップ220)。具体的には、ECU50は、ヒータ76をOFF状態とする。その後、本ルーチンの処理は終了される。
【0055】
また、次回以降の本ルーチンにおいて、ステップ160の処理で温水プレヒート実行フラグXHEATERが1であると判定された場合には、次にステップ200において、要求温水温度kthwに所定値αを加えた温度が蓄熱タンク温水温度thw1よりも高いか否かが判定される。所定値αは、加熱通路温度センサ78の検出誤差を吸収するための値である。所定値αを加えることで、ヒータ76が短時間にON/OFF状態を繰り返すことを防止することができる。
【0056】
ステップ200の判定条件が成立する場合には、上述したステップ190の処理により温水プレヒートが実行される。一方、ステップ200の判定条件が成立しない場合には、上述したステップ210〜ステップ220の処理により、温水プレヒートが中止される。
【0057】
なお、上述したステップ110において、外部電源が接続されていないと判定された場合には、次にステップ230において、バッテリ30の充電量SOCが取得される。充電量SOCは、充電回路32により検出される。
【0058】
続いて、ステップ240において、バッテリ30の充電量SOCが規定値よりも高いか否かが判定される。規定値として例えば30%が設定される。充電量SOCが規定値よりも高いと判定された場合には、ECU50はバッテリ30の充電量SOCに余裕があると判断できる。この場合、上述したステップ120以降の処理が実行される。一方、充電量SOCが規定値以下であると判定された場合には、ECU50はバッテリ30の充電量SOCが不足していると判断できる。この場合、上述したステップ210以降の処理がなされ、温水プレヒートは実行されることなく、本ルーチンの処理は終了される。
【0059】
以上説明したように、図4に示すルーチンによれば、エタノール濃度Eが高く外気温度thaoutが低いほど、要求温水温度kthwを高く設定することができる。要求温水温度kthwが高く設定され温水プレヒートが実行されることで、暖機に必要な熱量を確実に確保することができる。そのため、エンジン12の始動性低下を抑制することができる。
【0060】
また、図4に示すルーチンによれば、エタノール濃度Eが低く外気温度thaoutが高いほど、要求温水温度kthwを低く設定することができる。エタノール濃度Eが低く外気温度thaoutが高い場合には、暖機のために加える熱量は少なくて済むため、要求温水温度kthwを低く設定することで、ヒータ76による電力消費を抑制することができる。そのため、外部電源に接続されたバッテリ30の充電を好適に促進することができる。
【0061】
このように、本実施形態のシステムによれば、エタノール濃度Eや外気温度thaoutに応じて適切に要求温水温度kthwを設定することで、暖機に必要な熱量を確保すると共に、不必要な電力消費を抑制してバッテリ30の充電を好適に行うことができる。そのため、内燃機関の始動性向上と、車両走行開始後の燃費の向上とを実現することができる。
【0062】
ところで、上述した実施の形態1のシステムにおいては、温水プレヒートをヒータ76のON/OFF状態を切り替えることで実現することとしているが、温水プレヒートの実施方法はこれに限定されるものではない。例えば、消費電力を変更可能なヒータ76を備え、上記ステップ190において、要求温水温度kthwが高いほどヒータ76に供給する電力量を増大させることとしても良い。図11、図12に示す通り、冷却水が高温域であるほど時間あたりの温度低下は大きくなる。そのため、要求温水温度kthwが高いほどヒータ76に供給される電力量を増大させることで、好適に冷却水を昇温させることができる。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
【0063】
また、上述した実施の形態1のシステムにおいて、外部電源からバッテリ30とヒータ76に供給される電力の比率を変更することとしてもよい。具体的には、外部電源から供給される電力量を一定とする回路が設けられ、当該回路は充電回路32とヒータ76とに接続されている。上記ステップ190において、要求温水温度kthwが高いほどヒータ76に供給する電力量を増大させることとしても良い。これにより、前記バッテリ30に充電される電力量を相対的に減少させて、冷却水の加熱を優先させることができる。なお、この点は以下の実施の形態でも同様である。
【0064】
尚、上述した実施の形態1においては、エンジン12が前記第1の発明における「内燃機関」に、モータ14が前記第1の発明における「モータ」に、ヒータ76が前記第1の発明における「冷却水加熱装置」に、バッテリ30が前記第1の発明における「蓄電池」に、エタノール濃度センサ90が前記第1の発明における「アルコール濃度検出手段」に、外気温度センサ86が前記第4の発明における「外気温度取得手段」に、それぞれ相当している。
【0065】
また、ここでは、ECU50が、上記ステップ150の処理を実行することにより前記第1の発明における「要求水温設定手段」が、上記ステップ100の処理を実行することにより前記第1の発明における「内燃機関停止状態判定手段」が、上記ステップ110の処理を実行することにより前記第1の発明における「外部電源接続判定手段」が、上記ステップ190の処理を実行することにより前記第1乃至第3の発明における「冷却水プレヒート手段」が、上記ステップ190の処理を実行することにより前記第3の発明における「充電比率変更手段」が、それぞれ実現されている。
【0066】
実施の形態2.
[実施の形態2のシステム構成]
次に、図5〜図6を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のシステムは図1及び図2に示す構成において、ECU50に後述する図6のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0067】
[実施の形態2における特徴的制御]
図1に示す駆動システム10において、ECU50は、バッテリ30の充電量が一定値(例えば30%)以下になった場合、HV走行によりバッテリ30の充電量を一定値以上に保つように制御することができる。上述した通り、燃料中のエタノール濃度が低いほどエンジン12の始動性は悪化するため、始動性の確保をバッテリ30の充電量よりも優先すべき場合がある。そこで、本実施形態のシステムでは、エタノール濃度が高い場合ほど、優先的に蓄熱タンク74に貯蔵される温水を加熱する制御(以下、単に温水プレヒートとも記す。)を実施することとした。
【0068】
より具体的な制御の概要について説明する。図5は、実施の形態2のシステムにおいて用いられる「蓄熱温水昇温優先マップ」について説明するための図である。図5の蓄熱温水昇温優先マップには、燃料中のエタノール濃度Eと蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1との関係が表されている。蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1は、エタノール濃度が高いほど低く設定されている。
【0069】
本実施形態のシステムでは、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1を判定値として用い、燃料が気化しにくいエタノール濃度Eが高い場合ほど判定値ksoc1を低く設定して、温水プレヒートを実行させやすくする。一方、エタノール濃度Eが低いほど判定値ksoc1を高く設定して、温水プレヒートの実行を抑制して、必要以上の加熱を停止し、外部電源によるバッテリ30の充電を促進することとした。
【0070】
図6は、上述の動作を実現するために、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ステップ110〜ステップ130の処理がステップ300〜350に置き換えられ、ステップ230〜ステップ240の処理がステップ360に置き換えられている点を除き、図4に示すルーチンと同様である。以下、図6において、図4に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0071】
図6に示すルーチンでは、ステップ100の処理後、バッテリ30の充電量SOCが取得される(ステップ300)。充電量SOCは、充電回路32により検出される。また、燃料中のエタノール濃度Eが取得される(ステップ310)。エタノール濃度Eは、エタノール濃度センサ90により検出される。
【0072】
その後、ステップ320において、バッテリ30と外部電源とが接続されているか否かが判定される。具体的には、充電回路32によりバッテリ30と外部電源との接続状態が検出される。上述した通り、バッテリ30が外部電源に接続されると、外部電源からの電力供給を受けてバッテリ30は充電される。
【0073】
外部電源が接続されていると判定された場合には、次に、ステップ330において、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1が算出される。具体的には、ECU50には、上記図5で述べた、「蓄熱温水昇温優先マップ」が記憶されている。蓄熱温水昇温優先マップから、ステップ310で取得されたエタノール濃度Eに対応する蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1が取得される。
【0074】
続いて、ステップ300で取得されたバッテリ30の充電量SOCが蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1よりも大きいか否かが判定される(ステップ340)。充電量SOCが蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1よりも大きいと判定された場合には、蓄熱タンク74の温水の温度である蓄熱タンク温水温度thw1が取得される(ステップ350)。蓄熱タンク温水温度thw1は、加熱通路温度センサ78により検出される。その後、図4のステップ140以降と同様の処理がなされ、条件を満たす場合には、温水プレヒートが実行される(ステップ190)。
【0075】
一方、ステップ340において、バッテリ30の充電量SOCが蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1以下であると判定された場合には、その後、図4のステップ210以降と同様の処理がなされ、温水プレヒートは中止される。
【0076】
なお、上述したステップ320において、外部電源が接続されていないと判定された場合には、続いて、ステップ360において、バッテリ30の充電量SOCが規定値よりも高いか否かが判定される。規定値として例えば30%が設定される。充電量SOCが規定値よりも高いと判定された場合には、ECU50はバッテリ30の充電量SOCに余裕があると判断できる。この場合、上述したステップ350以降と同様の処理が実行される。一方、充電量SOCが規定値以下であると判定された場合には、ECU50はバッテリ30の充電量SOCが不足していると判断できる。この場合、上述したステップ210以降と同様の処理がなされ、温水プレヒートは実行されることなく、本ルーチンの処理は終了される。
【0077】
以上説明したように、図6に示すルーチンによれば、エタノール濃度Eが高いほど蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1を低く設定することができる。エタノール濃度Eが高いほど燃料は気化しにくくエンジン12の始動性は悪化するところ、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1が低く設定されることで、バッテリ30の充電量の確保よりも、暖機に必要な熱量の確保を優先的に行うことができる。
【0078】
また、図6に示すルーチンによれば、エタノール濃度Eが低いほど蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1を高く設定することができる。エタノール濃度Eが低い場合には、エンジンの始動性は確保されるため、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1を高く設定することで、ヒータ76による電力消費を抑えることができる。そのため、バッテリ30の充電を好適に促進することができる。
【0079】
このように、本実施形態のシステムによれば、エタノール濃度Eに応じて適切に蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1を設定することで、内燃機関の始動性向上と、車両走行開始後の燃費の向上とを実現することができる。
【0080】
尚、上述した実施の形態2においては、ECU50が、上記ステップ320の処理を実行することにより前記第1の発明における「外部電源接続判定手段」が実現されている。
【0081】
実施の形態3.
[実施の形態3のシステム構成]
次に、図7〜図8を参照して本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のシステムは図1及び図2に示す構成において、ECU50に後述する図8のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0082】
[実施の形態3における特徴的制御]
上述した実施の形態2のシステムによれば、エタノール濃度Eが高いほど蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc1を低く設定し、優先的に温水プレヒートを実行させることができる。ところで、エンジン12内の冷却水の温度が高い場合には、エンジン12の始動性は確保されるため、これも考慮されることが望ましい。そこで、本実施形態のシステムでは、エンジン12内の水温とエタノール濃度とに基づいて蓄熱温水昇温優先判定充電量を設定することとする。
【0083】
具体的な制御の概要について説明する。図7は、実施の形態3のシステムにおいて用いられる「蓄熱温水昇温優先マップ」について説明するための図である。図7の蓄熱温水昇温優先マップには、エンジン12の水温thwと、燃料中のエタノール濃度Eと、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2との関係が表されている。蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2は、エンジン12の水温thwが高いほど高く設定されている。また、燃料中のエタノール濃度Eが低いほど高く設定されている。
【0084】
本実施形態のシステムでは、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2を判定値として用い、燃料が気化しやすい水温thwが高くエタノール濃度Eが低い場合ほど判定値ksoc2を高く設定して、温水プレヒートの実行を抑制することとした。一方、燃料が気化しにくい水温thwが低くエタノール濃度Eが高い場合ほど判定値ksoc2を低く設定して、温水プレヒートの実行を促進することとした。
【0085】
図8は、上述の動作を実現するために、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ステップ320〜ステップ340の処理がステップ400〜430に置き換えられている点を除き、図6に示すルーチンと同様である。以下、図8において、図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0086】
図8に示すルーチンでは、ステップ310の処理後、エンジン12の水温thwが取得される(ステップ400)。水温thwは、冷却通路温度センサ66により検出される。
【0087】
その後、ステップ410において、バッテリ30と外部電源とが接続されているか否かが判定される。具体的には、充電回路32によりバッテリ30と外部電源との接続状態が検出される。上述した通り、バッテリ30が外部電源に接続されると、外部電源からの電力供給を受けてバッテリ30は充電される。
【0088】
外部電源が接続されていると判定された場合には、次に、ステップ420において、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2が算出される。具体的には、ECU50には、上記図7で述べた、蓄熱温水昇温優先マップが記憶されている。蓄熱温水昇温優先マップから、ステップ310で取得されたエタノール濃度Eとステップ400で取得された水温thwとに対応する蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2が取得される。
【0089】
続いて、ステップ300で取得されたバッテリ30の充電量SOCが蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2よりも大きいか否かが判定される(ステップ430)。充電量SOCが蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2よりも大きいと判定された場合には、その後、図6のステップ350以降と同様の処理がなされ、条件を満たす場合には、温水プレヒートが実行される(ステップ190)。
【0090】
一方、ステップ430において、バッテリ30の充電量SOCが蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2以下であると判定された場合には、その後、図6のステップ210以降と同様の処理がなされ、温水プレヒートは中止される。
【0091】
以上説明したように、図8に示すルーチンによれば、水温thwが高くエタノール濃度Eが低いほど、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2を高く設定することができる。水温thwが高くエタノール濃度Eが低いほど、燃料は気化しやすくエンジン12の始動性は良好であるため、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2を高く設定することで、温水プレヒートの優先度を下げてヒータ76による電力消費を抑制することができる。そのため、バッテリ30の充電を好適に促進することができる。
【0092】
また、図8に示すルーチンによれば、水温thwが低くエタノール濃度Eが高いほど、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2を低く設定することができる。水温thwが低く燃料中のエタノール濃度Eが高いほど、燃料は気化しにくくエンジン12の始動性は悪化するため、蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2を低く設定することで、温水プレヒートを優先的に実行し、暖機に必要な熱量の確保を優先的に行うことができる。
【0093】
このように、本実施形態のシステムによれば、水温thwとエタノール濃度Eとに応じて適切に蓄熱温水昇温優先判定充電量ksoc2を設定することで、内燃機関の始動性向上と、車両走行開始後の燃費の向上とを実現することができる。
【0094】
尚、上述した実施の形態3においては、ECU50が、上記ステップ410の処理を実行することにより前記第1の発明における「外部電源接続判定手段」が実現されている。
【0095】
実施の形態4.
[実施の形態4のシステム構成]
次に、図9〜図10を参照して本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態のシステムは図1及び図2に示す構成において、ECU50に後述する図10のルーチンを実施させることで実現することができる。
【0096】
[実施の形態4における特徴的制御]
蓄熱システム58を車両に搭載する場合には、ヒータ76の小型小容量化、蓄熱タンク74の小型化が望まれる。しかし、上述した通り暖機には所定の熱量を要する。小型の蓄熱タンク74を用いる場合には、水量が少ないため、必要な熱量を得るために水温を高める必要性が生じる。この場合、小型小容量のヒータ76では、水温は上昇し難いため温水プレヒートが長時間なされていることを要する。そこで、本実施形態のシステムでは、外部情報を用いて、現在から所定時間後までの最低外気温度を見越して温水プレヒートを実行することとした。
【0097】
より具体的な制御の概要について説明する。図9は、実施の形態4のシステムにおいて用いられる「要求温水温度マップ」について説明するための図である。図9の要求温水温度マップには、現在から所定時間後までの予測されている最低外気温度thaoutminと、燃料中のエタノール濃度Eと、要求温水温度kthwとの関係が表されている。最低外気温度thaoutminとは、外部情報(気象情報など)から予測されている所定時間後の外気温度である。要求温水温度kthwとは、エンジン12を好適に始動させるために、暖機に必要とされる熱量を確保するための温度であり、蓄熱タンク74に貯蔵された温水の温度である。
【0098】
図9に示す通り、要求温水温度kthwは、最低外気温度thaoutminが低いほど高く設定されている。また、燃料中のエタノール濃度Eが高いほど高く設定されている。本実施形態では、最低外気温度thaoutminが低くエタノール濃度が高いほど、要求温水温度kthwを高く設定し、温水プレヒートを実行することとした。
【0099】
図10は、上述の動作を実現するために、ECU50が実行する蓄熱温水プレヒート制御ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、ステップ140〜ステップ150の処理がステップ500〜510に置き換えられている点を除き、図4に示すルーチンと同様である。以下、図10において、図4に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0100】
図10に示すルーチンでは、ステップ130の処理後、外部情報より、現在から所定時間後までに予測される最低外気温度thaoutminが取得される(ステップ500)。外部情報として、例えば通信回線を通じて取得される気象予報情報や過去の統計データ等が用いられる。本実施形態のシステムは、気象予報情報等を取得可能な通信設備を備えており、取得されたデータから、現在から所定時間後までの最低外気温度thaoutminを取得する。なお、上述の所定時間は、予め実験等により定められる。一例として、完全暖機後から水温が常温まで低下するまでの時間が設定される。
【0101】
続いて、ステップ150において、要求温水温度kthwが算出される。具体的には、ECU50には、上記図9で述べた「要求温水温度マップ」が記憶されている。要求温水温度マップから、ステップ130で取得されたエタノール濃度Eとステップ500で取得された最低外気温度thaoutminとに対応する要求温水温度kthwが取得される。なお、要求温水温度kthwは、エンジン12の構造や蓄熱タンク74に貯蔵される水量等も鑑みて、エンジン12の十分な暖機に要する熱量を確保できるように予め実験等により定められている。
【0102】
その後、図4のステップ160以降と同様の処理がなされ、条件を満たす場合には、温水プレヒートが実行される(ステップ190)。
【0103】
以上説明したように、図10に示すルーチンによれば、最低外気温度thaoutminが低くエタノール濃度Eが高いほど、要求温水温度kthwを高く設定することができる。エタノール濃度Eに加え、現在から所定時間後までに予測される最低外気温度thaoutminに基づいて温水プレヒートを実行することができるため、小型の蓄熱タンク74や小型小容量のヒータ76が用いられる場合であっても、将来の外気温度の低下を見越して、暖機に必要な熱量を確実に得ることができる。また、常に最低外気温度を更新することで、外気温度変化が激しい場合であっても、最適な始動性を確保することができる。
【0104】
尚、上述した実施の形態4においては、ECU50が、上記ステップ500の処理を実行することにより前記第5の発明における「最低外気温度取得手段」が、上記ステップ510の処理を実行することにより前記第5の発明における「要求水温設定手段」が、それぞれ実現されている。
【符号の説明】
【0105】
10 駆動システム
12 内燃機関、エンジン
14 モータ
30 バッテリ
32 充電回路
34 充電プラグ
56 冷却システム
58 蓄熱システム
60 冷却通路
62 加熱通路
63 シリンダヘッド
64 ラジエータ
66 冷却通路温度センサ
68 機械式ウォータポンプ
70 シリンダブロック
72 電動式ウォータポンプ
74 蓄熱タンク
76 ヒータ
78 加熱通路温度センサ
86 外気温度センサ
88 点火スイッチ
90 エタノール濃度センサ
E エタノール濃度
ksoc1、ksoc2 蓄熱温水昇温優先判定充電量
kthw 要求温水温度
SOC 充電量
thaout 外気温度
thaoutmin 最低外気温度
thw 水温
thw1 蓄熱タンク温水温度
XHEATER 温水プレヒート実行フラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールが混合された燃料を使用可能な内燃機関と、
電力が供給されることにより前記内燃機関の冷却水を加熱する冷却水加熱装置と、
前記冷却水加熱装置に電力を供給可能であり、少なくとも外部電源に接続されて充電可能な蓄電池と、を備えるハイブリッドシステムの制御装置において、
前記燃料のアルコール濃度を検出するアルコール濃度検出手段と、
前記アルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定する要求水温設定手段と、
前記内燃機関が停止状態にあるか否かを判定する内燃機関停止状態判定手段と、
前記蓄電池が外部電源に接続されているか否かを判定する外部電源接続判定手段と、
前記内燃機関が停止状態にあり、前記蓄電池が外部電源に接続されている場合に、前記冷却水の水温が前記要求水温に達するまで、前記冷却水加熱装置に電力を供給する冷却水プレヒート手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項2】
前記冷却水プレヒート手段は、前記要求水温が高いほど前記冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させる手段、を更に備えること、
を特徴とする請求項1記載のハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項3】
前記冷却水プレヒート手段は、
外部電源から供給される電力量が一定である場合に、前記要求水温が高いほど前記冷却水加熱装置に供給される電力量を増大させると共に、前記蓄電池に充電される電力量を減少させる充電比率変更手段、を更に備えること、
を特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項4】
外気温度を取得する外気温度取得手段を備え、
前記要求水温設定手段は、前記外気温度が低く前記アルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定すること、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のハイブリッドシステムの制御装置。
【請求項5】
現在から所定時間後までの予測されている最低外気温度を取得する最低外気温度取得手段を備え、
前記要求水温設定手段は、前記最低外気温度が低く前記アルコール濃度が高いほど要求水温を高く設定すること、
を特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のハイブリッドシステムの制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−149314(P2011−149314A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10291(P2010−10291)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】