説明

ハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法

【課題】 ハイブリッド車両において内燃機関を効率良く動作させる。
【解決手段】 ハイブリッドシステム10において、制御装置100のトルク算出部100bはモータジェネレータMG1のトルク反力からエンジン200のトルクを算出することが可能に構成されている。また、燃費率算出部100cは、係る算出されたエンジントルクと、燃料噴射量及びエンジン回転数とに基づいて、エンジン200における瞬間的な燃料消費率を算出することが可能に構成されている。動作線更新部100dは、この算出された燃料消費率に基づいた動作点学習処理を実行することによって、エンジン200の動作点を燃料消費率が最小となる点に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関及びモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において内燃機関の動作状態を制御する、ハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、特許文献1に開示された車両の駆動力制御装置(以下、「従来の技術」と称する)がある。従来の技術によれば、ハイブリッド車において、予め設定された最適燃費線に基づいてエンジンの動作状態が制御されるため、目標となるエンジン回転数に応じて、燃料消費率が最小となるようなエンジントルクを求めることが可能であるとされている。
【0003】
尚、ハイブリッド車において、駆動パワー要求値に対し、予め記憶されたエンジン特性マップより最適効率点となる動作点を取得し、この動作点が維持されるようにスロットル開度を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、ハイブリッド車において、消費電力と蓄電状態とに基づいて、運転領域全体でエンジンの燃料消費率が最小となるように内燃機関及び電動機の動作状態を制御する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
更に、ディーゼルエンジンにおいて、燃料の噴射量と走行距離から瞬間的な燃料消費率を算出する技術も提案されている(例えば、特許文献4又は5参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−179371号公報
【特許文献2】特開平10−98803号公報
【特許文献3】特開2002−171604号公報
【特許文献4】特開平8−334052号公報
【特許文献5】特開平8−334051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
内燃機関における最適燃費線は、例えば大気圧や湿度などの環境条件によって変化する。然るに、従来の技術においてはこのような変化が考慮されていない為、予め設定された最適燃費線に基づいて燃料消費率が最小となるように内燃機関を動作させても、効率が最適化されずに燃料が無駄に消費されることがある。
【0008】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、ハイブリッド車両において内燃機関を効率良く動作させ得るハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置は、動力源として内燃機関及びモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定手段と、該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出手段と、該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新手段と、該更新された動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
本発明における「内燃機関」とは、燃料の燃焼を動力に変換する機関を総称するが、好適にはガソリン、ディーゼル、LPG等を燃料とするエンジンなどを指す。
【0011】
また、本発明におけるモータジェネレータは、バッテリから供給される電気エネルギを機械エネルギに変換することによって、電動機として動作する機能と、機械エネルギを電気エネルギに変換することによって、例えばバッテリ等に電力を供給する発電機として動作する機能とを有する。尚、モータジェネレータは予め、主として電動機(モータ)として使用されるモータジェネレータと、主として発電機(ジェネレータ)として使用されるモータジェネレータの二種類搭載されていてもよい。このような内燃機関とモータジェネレータとを具備する本発明に係るハイブリッド車両においては、モータジェネレータによって適宜内燃機関の動力をアシストすることが可能な所謂パラレル方式の制御が好適に行われる。
【0012】
内燃機関には予め動作線が設定されており、制御手段は、この動作線に従って内燃機関の動作状態を制御している。ここで、本発明における「動作線」とは、内燃機関のトルク及び内燃機関の回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で内燃機関の動作状態を規定する線であり、予め内燃機関の出力値に対応付けられて設定された複数の動作点によって規定される線を表す。制御手段は、より具体的には、動作線上で動作点を決定し、内燃機関を該決定された動作点によって規定される動作状態に制御している。
【0013】
尚、動作線は、好適には、これら予め設定された動作点を相互に繋げて得られる線である。この際、個々の出力値に対応する動作点間は適当に補間されていてもよい。また、動作線を規定する個々の動作点は、通常、対応関係にある内燃機関の出力値において燃料消費率(以下、適宜「燃費率」と称する)が最小となる、即ち効率が最大となるトルクと回転数との組み合わせを表す点として設定されている。
【0014】
ここで特に、燃料消費率が最小となる動作点(燃費率最小動作点)は、例えば、大気圧、湿度、或いは内燃機関の燃料性状などに応じて若干、或いは明らかに変化する。従って、従来の技術の如く動作線が予め設定された固定な動作線である場合、内燃機関は、燃料消費率が最小とならない動作点で使用される可能性がある。
【0015】
然るに、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置(以下、適宜「内燃機関制御装置」と称する)によれば、以下に説明する如く動作線の更新が可能となっている。即ち、本発明に係る内燃機関制御装置によれば、その動作時には、先ずトルク特定手段により内燃機関のトルクが特定される。更に、燃料消費率算出手段により、この特定されたトルク、内燃機関の回転数及び内燃機関の燃料噴射量に基づいて内燃機関の瞬間的な燃料消費率が算出される。
【0016】
本発明における「トルク特定手段」とは、例えば、直接的又は間接的に内燃機関のトルクを測定又は検出する態様を有していてもよいし、これら測定又は検出されたトルクを単に電気信号として数値的に取得する態様を有していてもよいし、或いは、直接的又は間接的に測定又は検出された、トルク又はトルクとの関連性を有する何らかの物理量、電気量、又は化学量からトルクを数値演算的に算出する態様を有していてもよく、最終的に内燃機関のトルクを特定可能である限りにおいてその態様は自由に決定されてよい趣旨である。尚、直接的又は間接的にトルクを測定又は検出する際には、例えば公知である接触式又は非接触式のトルクセンサが使用されてもよい。尚、ハイブリッド車両が、ハイブリッド車両に備わるモータジェネレータによって、内燃機関のトルクを所謂トルク反力と称される形で検出することが可能に構成されている場合には、トルクセンサ等を別個に設ける必要はなく極めて効率的である。
【0017】
本発明における「燃料消費率」とは、内燃機関における単位電力量(例えば、単位はkWh)当りの燃料噴射量を表す指標値である。内燃機関の出力(即ち、電力)は、内燃機関のトルクと回転数との積に比例する。尚、「瞬間的な」とは、予め定められた条件下において、固定又は可変である所定種類の周期毎に訪れる時刻に、或いは全く任意の時刻において燃料消費率を算出することが可能であることを表す趣旨である。
【0018】
本発明に係る動作線更新手段は、このようにして得られる瞬間的な燃料消費率に基づいて動作線を更新することが可能に構成されている。即ち、従来固定されていた動作線(動作点)を自由に設定し直すことが可能となっているのである。この際、動作線の更新は、算出された燃料消費率を反映する限りにおいてどのように行われてもよいが、例えば、動作線を規定する動作点の燃料消費率が小さくなるように更新されるのが好適である。尚、動作点は動作線を規定するものであるから、動作点を更新することによって動作線は更新される。但し、同様に瞬間的な燃料消費率に基づいて動作線が更新され、その結果として動作点が更新されてもよい。
【0019】
このように、本発明に係る内燃機関制御装置は、動作線を更新可能とすることによって、その時点における内燃機関の環境条件や制御条件に応じて、内燃機関を効率良く動作させることが可能となっているのである。
【0020】
尚、ここで述べられる「動作線の更新」とは、動作線を単に変更するのみに限らず、変更された動作線を随時記憶することも含む趣旨である。このように変更された動作線を記憶することにより、動作線を常に最適な形に維持することも容易にして可能である。尚、この際、動作線は、更新が行われた際の条件を示す何らかの情報と対応付けられる形で記憶されてもよい。また、このように動作線の変更を記憶しておく期間は何ら限定されない。例えば、ハイブリッド車両が一定期間不使用状態であれば記憶内容が消去されて、再び動作点が予め設定されていた初期値に戻ってもよい。この場合には、次回ハイブリッド車両が運転される際に、その時の状況に応じて動作線が更新されることとなる。一方、動作線はハイブリッド車両の使用環境、使用目的、又は使用頻度などに適応する形で常にアクティブに更新され続けてもよい。即ち、動作線の更新を何ら行わない場合と比較して、燃料の消費量を幾らかなりとも低減し得る(効率を改善し得る)限りにおいて、動作線の更新は一時的なものであっても永続的なものであってもよい。
【0021】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記トルク特定手段は、前記モータジェネレータを介して検出される前記内燃機関のトルク反力に基づいて前記トルクを特定する。
【0022】
この態様によれば、内燃機関のトルクは、ハイブリッド車両に備わるモータジェネレータによってトルク反力として検出される。従って、トルク特定手段はこの検出されたトルクに基づいてトルクを特定すればよいのに加えて、既に述べたように、トルクセンサなどのトルク検出手段を別途設置する必要もなくなり、極めて効率的且つ経済的である。
【0023】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線は、外気温、大気圧、及び湿度のうち少なくとも一つを含む前記内燃機関の環境条件並びに前記内燃機関の制御条件のうち少なくとも一方に対応付けられて予め複数種類設定されており、前記動作線更新手段は、前記複数種類設定された動作線のうち、現時点における前記環境条件又は前記制御条件に対応するものについて前記更新を行う。
【0024】
この態様によれば、動作線は予め内燃機関の制御条件及び内燃機関の環境条件のうち少なくとも一方に対応付けられて複数種類設定されている。内燃機関を動作させる際には、その時点における環境条件や制御条件に対応する動作線が適宜選択され、該選択された動作線に基づいて動作点が決定される。これら複数種類の動作線は、予め制御マップなどの形で然るべき記憶手段に格納されている。
【0025】
この態様によれば、比較的大きな環境条件又は制御条件の変化に対しては、動作線を切替えることによってある程度対応することが可能であり、そのように予め大まかに動作線を合わせこんだ後に、動作線更新手段による動作線の更新を行うことも可能である。従って、例えば、動作線が予め一種類しか設定されてない場合と比べれば、動作線の更新に付随する負荷を著しく軽減することが可能となる。また、動作線を更新する時間も短縮されるから、その間の燃料消費率の悪化も低減されて好適である。
【0026】
尚、本発明における「内燃機関の環境条件」とは、外気温、大気圧、及び湿度の少なくとも一つを含み、内燃機関の動作に幾らかなりとも影響を与え得る限りにおいて、如何なる条件であってもよい。また、本発明における「内燃機関の制御条件」とは、内燃機関の動作を制御するための条件であり、例えば、内燃機関の冷却水温や点火プラグによる点火時期遅角量、燃料性状、又は潤滑剤の粘度などを指す。
【0027】
例えば、ハイブリッド車両においては、内燃機関の負荷状態に応じて高水温制御及び低水温制御と称される冷却水温制御が行われることがある。この場合、内燃機関が高負荷(高出力)状態では、低水温制御によって積極的に内燃機関が冷却され、ノックの発生が防止されると共に、低負荷(低出力)状態では、高水温制御によって冷却が弱まり、内燃機関の熱損失やフリクションロスが低減される。この際、これら2種類の制御に対応する動作線が予め設定されていれば、好適に内燃機関の効率を高めることが可能となる。また、点火プラグの点火時期遅角量は、内燃機関のクランクシャフトの回転角に対応付けられて制御されている。例えば、内燃機関にノックが生じた場合には点火時期は遅角制御されるから、遅角量に応じて動作線が設定されていれば効果的である。
【0028】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記動作線の更新の少なくとも一部として、(i)前記座標平面で前記内燃機関の一の出力値について前記トルクと前記回転数との相互関係を表してなる等出力線上において、前記内燃機関の動作点を前記予め設定された動作線上における前記一の出力値に対応する動作点から離散的又は連続的に変化させる第1処理、(ii)前記第1処理において前記動作点を離散的又は連続的に変化させた結果として得られる複数の動作点各々について前記燃料消費率算出手段により算出される燃料消費率各々を比較することにより前記燃料消費率が最小となる燃費率最小動作点を特定する第2処理、及び(iii)前記一の出力値についての等出力線上において、前記一の出力値に対応する動作点を前記燃費率最小動作点に更新する第3処理を含んでなる学習処理を行う。
【0029】
この態様によれば、動作線更新手段は、動作線の更新の少なくとも一部として第1処理、第2処理、及び第3処理を含んでなる学習処理を行う。
【0030】
第1処理は、動作線が規定されている座標平面上において、内燃機関の等出力線上で動作点を変化させる処理である。ここで、「等出力線」とは、内燃機関の一の出力値について、トルクと回転数との相互関係を表した曲線であり、係る座標平面上で、内燃機関の出力値に応じて複数規定することができる。
【0031】
等出力線上で動作点を変化させる際には、例えばスロットルバルブの開度などが制御され一の出力値が維持される。動作線更新手段は、動作線上でこの一の出力値に対応する動作点から離散的又は連続的に動作点を変化させる。この際、動作点を離散的に変化させるか、連続的に変化させるかは逐次選択されてよい。また、離散的に変化させる際に、等出力線上で如何なる動作点を選択するのかも自由に決定されてよい。更に、等出力線上で動作点を変化させる範囲も自由に設定されてよい。或いは、動作点を変化させる範囲は、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって決定されていてもよい。
【0032】
第2処理は、動作点を等出力線上で離散的又は連続的に変化させた結果としての動作点各々に対して燃料消費率算出手段が算出した燃料消費率を相互に比較し、燃料消費率が最小となる動作点(即ち、燃費率最小動作点)を特定する処理である。この際、燃料消費率算出段は、前述した、一の出力値に対応する動作点に対しても燃料消費率を算出している。この一の出力値に対応する動作点に対して算出された燃料消費率は、言わばリファレンスとしての燃料消費率となる。
【0033】
尚、第2処理においては、燃料消費率が算出された複数の動作点の中に、等出力線上で真に燃料消費率が最小となる動作点が含まれていなくてもよい。即ち、あくまで比較された動作点の中から燃費率最小動作点が特定されればよい。但し、燃料消費率が算出されていない動作点であっても、相前後する他の動作点の燃料消費率から経験的に、或いはシミュレーションなどによって燃料消費率が最小となる動作点を推定し得る場合には、係る動作点が燃費率最小動作点として特定されてもよい。
【0034】
第3処理においては、このようにして特定された動作点が、新たに一の出力値に対応する動作点、即ち動作線を規定する動作点として設定され、動作点が更新される。この更新された動作点は、次回学習処理が行われる際の「一の出力値に対応する動作点」となる。この動作点の更新によって、結果的に動作線は更新される。次回、この動作線について学習処理が行われる場合における「予め設定された動作線」とは、この更新された動作線となる。尚、第3処理に際して、一の出力値に対応する動作点のみが更新されてもよいし、この動作点の更新を反映して、他の出力値に対して適当に動作点が更新されてもよい。尚、このようにして更新された動作点は、例えば、学習処理が行われた際の環境条件や制御条件と対応付けられて記憶されていてもよい。
【0035】
この態様によれば、等出力線上で燃費率最小動作点が特定され、動作点が更新されるため、内燃機関の出力が変化することがない。内燃機関の出力が変化しなければ、ハイブリッド車両を運転する運転者に与える違和感は比較的小さくて済むと共に比較的正確に燃料消費率の算出を行うことが可能となり、比較的正確に動作点の更新を行うことが可能となる。
【0036】
尚、学習処理において、第1処理、第2処理及び第3処理は、夫々並列処理されてもよいし、順次行われてもよい。順次行われる際には、第1処理において変化させた動作点各々における燃料噴射量が然るべき記憶手段に一時的に記憶されていればよい。
【0037】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記一の出力値についての等出力線における前記動作線を挟む2領域のうち、前記燃費率最小動作点の属する領域を推定する推定手段を更に具備し、前記動作線更新手段は、前記第1処理を行う場合に、前記動作点を、優先的に前記推定された領域に属する動作点に変化させる。
【0038】
この態様によれば、学習処理において、燃費率最小動作点が等出力線上で動作線を挟んだ2領域のうち何れに存在するかが推定手段によって推定される。動作線更新手段は、第2処理において動作点を変化させる際、燃費率最小動作点があると推定された領域から優先的に動作点を変化させる。従って、比較的速やかに燃費率最小動作点を特定することが可能となり、効率良く学習処理を行うことが可能となる。
【0039】
推定手段を備える本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記推定手段は、前記燃費率最小動作点の属する領域を、前記一の出力値についての等出力線とは異なる他の等出力線における、前記燃費率最小動作点と前記動作線との位置関係に基づいて推定する。
【0040】
学習処理は等出力線上で行われるが、例えば、一の等出力線とは異なる他の等出力線において、燃費率最小動作点が動作線を挟んで高トルク側(又は低回転側)に存在する場合には、一の等出力線においても同様に高トルク側に燃費率最小動作点が存在する可能性が高い。この態様によれば、推定手段が過去の学習処理における動作点の更新結果を参照して動作点の存在領域を推定するため、効率的に学習処理を行うことが可能となる。
【0041】
他の等出力線を参照する本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記動作線更新手段は、前記一の出力値についての等出力線において前記燃費率最小動作点の属する領域が、前記推定された領域とは異なる場合に、前記一及び他の等出力線とは異なる等出力線に対して前記学習処理を行う。
【0042】
燃費率最小動作点が等出力線上で動作線を挟んで何れの領域にあるかの傾向は、等出力線間で相互に等しい場合が多い(即ち、動作線の形状変化は少ない)が、場合によっては一の等出力線と他の等出力線でその傾向が異なることもある。この場合には、動作線の形状は比較的大きく変化していると推定される。
【0043】
この態様によれば、このような場合に、動作線更新手段が速やかに係る一及び他の等出力線とは異なる等出力線において学習処理を行うため効果的である。
【0044】
学習処理を行う本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記ハイブリッド車両が定常的な走行状態にある場合に前記学習処理を行う。
【0045】
ここで、「定常的な走行状態」とは、ハイブリッド車両が一定速度で巡航している状態、又はそれに準じる状態を含み、ハイブリッド車両が外乱的な事象に影響されずに一又はそれに準じる状態を保って走行している状態を広く規定する概念である。尚、「準じる」とは、必ずしも厳密に走行状態が変化していない場合のみを指すものではないことを表す。
【0046】
ハイブリッド車両がこのような定常的な走行状態にあるか否かは、例えば、車速センサなどによって検出されるハイブリッド車両の速度に基づいて判別されてもよいし、ハイブリッド車両の傾斜角に基づいて判別されてもよいし、加速度センサなどによって検出されるハイブリッド車両の加速状態若しくは減速状態に基づいて判別されてもよい。或いは、ハイブリッド車両がカーナビゲーションシステム若しくはそれに準じる測位システムを搭載しているならば、それらによって予測される道路状態に基づいて判別されてもよい。
【0047】
ハイブリッド車両が定常的な走行状態にある場合には、内燃機関に要求される出力は一定又はそれに準じる状態であり、等出力線上で動作点を変化させるに適した状態である。また、燃料消費率自体も高精度に算出することが可能となる。従って、この態様によれば、学習処理の精度が低下することがなく、極めて高精度に学習処理を行うことが可能となる。
【0048】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記制御手段は更に、前記学習処理が行われている期間において、前記内燃機関及び前記モータジェネレータに対し、前記内燃機関に要求される出力値に応じて、前記一の出力値を維持するための出力維持制御を行う。
【0049】
学習処理はハイブリッド車両が定常的な運転状態にある場合に行われるのが好ましいが、実際の走行中には、意識的か無意識かの別によらず、大抵の場合運転者の微妙なアクセルワークが発生する。この場合、内燃機関の出力は上昇又は下降を繰り返すため、総体的には一定の速度が維持されていて定常的な走行状態が維持されているように見えても、学習処理を高精度に行うことが難しくなる。
【0050】
この態様によれば、制御手段によって、学習処理が行われている期間中は、内燃機関及びモータジェネレータに対し、内燃機関の一の出力値を維持するための出力維持制御が行われる。より具体的には、例えば、内燃機関に要求される出力値(出力要求値)が、現在学習処理が行われている出力値よりも小さい場合には、モータジェネレータを発電機(ジェネレータ)として機能させることによって、又は主として発電機として機能させるように設定されたモータジェネレータを駆動することによって、余分な出力をバッテリの充電に使用するような制御が行われる。或いは、内燃機関の出力要求値が、現在学習が行われている出力値よりも大きい場合には、モータジェネレータを電動機(モータ)として機能させることによって、又は主として電動機として機能させるように設定されたモータジェネレータを駆動することによって、不足する出力をモータジェネレータによりアシストするような制御が行われる。
【0051】
従って、制御手段によって、積極的に定常的な走行状態を作り出すことが可能となり、学習処理を行うことのできる機会が著しく増加する。即ち、動作線をより細密に更新することが可能となるのである。
【0052】
制御手段を備える本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記制御手段は更に、前記モータジェネレータに電源を供給するバッテリの現時点における蓄電状態に基づいて前記出力維持制御が可能か否かを判別すると共に、前記出力維持制御が不可能であると判別した場合に前記出力維持制御を禁止し、前記動作線更新手段は、前記学習処理を行っている期間中に前記出力維持制御が禁止された場合には前記学習処理を中止する。
【0053】
出力維持制御を行うためには、モータジェネレータに電源を供給するバッテリの蓄電状態は常にそれが可能な状態である必要がある。例えば、バッテリが既に満充電かそれに近い状態では、更に発電を行うとバッテリが過充電となってバッテリ性能が劣化する可能性がある。このような状態は、例えば下りの坂道が連続するような場合に生じ得る。或いは、内燃機関の出力不足を補うために必要な電力がバッテリの残容量或いは最大容量を超えてしまえば、モータジェネレータによるアシストは不可能である。このような状態は、例えば急加速が要求された場合に生じ得る。
【0054】
この態様によれば、ハイブリッド車両の走行状態が過度に変化して、制御手段が出力維持制御を維持できないと判断した場合には、出力維持制御が禁止される。更に、動作線更新手段は、学習処理中に出力維持制御が禁止された場合には学習処理を中止する。従って、バッテリの保全を図ることが可能であると共に、誤学習が防止される。尚、このように出力維持制御が禁止された場合、速やかに内燃機関の出力を現状態に適応させることが可能となるから、結果的には、内燃機関の効率劣化も防止される。
【0055】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、外気温、大気圧、及び湿度のうち少なくとも一つを含む前記内燃機関の環境条件を規定する指標値が、前回前記一の出力値についての等出力線において前記第3処理が行われた際の前記指標値から所定値以上乖離した場合に、前記一の出力値についての等出力線において再度前記学習処理を行う。
【0056】
ここで述べられる「環境条件を規定する指標値」とは、前述した環境条件を数値化したものを指し、例えば、大気圧の値、外気温の値、或いは湿度の値などを指す。例えば、ある等出力線において学習処理が行われ、動作点が更新された際の指標値が、現在における指標値と大きく乖離している場合には、燃費率最小動作点は変化している可能性が高い。
【0057】
この態様によれば、現時点における環境条件の指標値が、一の出力値についての等出力線に対応する動作点の更新(即ち、第3処理)が行われた際の指標値から所定値以上乖離した場合には、係る等出力線において再度学習処理が行われるので、内燃機関の環境条件に応じて適切に動作点を更新することが可能となり効果的である。
【0058】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記内燃機関の制御条件を規定する指標値が、前回前記一の出力値についての等出力線において前記第3処理が行われた際の前記指標値から所定値以上乖離した場合に、前記一の出力値についての等出力線において再度前記学習処理を行う。
【0059】
ここで述べられる「制御条件を規定する指標値」とは、環境条件と同様の趣旨であり、例えば、点火遅角量などを指す。このような指標値が前回一の出力値についての等出力線において学習処理が行われた際の指標値から大きく乖離した場合には、燃料消費率が最小となる動作点も変化している可能性が高いと考えられる。特に、ノックが生じた場合には、燃料の燃焼状態は大きく変化している場合があり、速やかに動作線を更新する必要が生じる。この態様によれば、そのように内燃機関の制御条件に予め定められた以上の変化が生じたと考えられる場合に再度学習処理が行われるので効果的である。
【0060】
尚、この態様において、前記内燃機関の制御条件を規定する指標値は、前記内燃機関にノックが生じた場合に前記内燃機関の点火時期を学習制御するノック制御手段における前記点火時期の学習値を含んでいてもよい。
【0061】
ノックが生じた場合には、例えば、KCS(Knocking Control System)などのノック制御手段により、内燃機関の点火時期が遅角制御される。この遅角制御における遅角学習値の変化量が大である場合には、当然ながら内燃機関における燃料消費率の分布を変化している可能性がある。従って、このような学習値を、上述した内燃機関の制御条件を規定する指標値とした場合にも、効率的に動作線の更新を行うことが可能である。
【0062】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記一の出力値についての等出力線上において、前記内燃機関におけるスロットル開度又は前記内燃機関のトルクが予め定められた下限値以上となる範囲で前記第1処理を行う。
【0063】
内燃機関のスロットルバルブを絞り過ぎた状態又は内燃機関のトルクが小さすぎる状態では、一般に内燃機関の効率は低下する。従って、等出力線上で動作点を変化させる際に、燃費率最小動作点がこのような動作領域にある可能性は低いと考えられる。一方で、学習処理に要する時間は短い程好ましい。
【0064】
この態様によれば、内燃機関のスロットル開度又はトルクが予め定められた下限値以上となる範囲で第1処理が行われるため、学習処理を効率的に行うことが可能となると共に、内燃機関の効率が低い動作点を誤学習する可能性が明らかに低減するので好適である。
【0065】
尚、このようなスロットル開度又はトルクの下限値は、内燃機関の出力値毎に変化する。従って、好適には、係る下限値は等出力線毎に適切な値に設定されている。
【0066】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記内燃機関において潤滑剤の交換が行われた場合、該交換が行われた時刻からの経過時間が所定値に満たない場合に、(i)前記学習処理を禁止するか、又は(ii)前記トルク特定手段により特定されたトルクを前記経過時間に応じて補正する。
【0067】
潤滑剤が交換された後、然るべき時間が経過しない間は、潤滑剤によるフリクションロスが低減されるため、内燃機関のトルクが安定しない。このような状態において学習処理を行ったとしても、更新された動作点の信憑性が担保されない場合がある。
【0068】
この態様によれば、潤滑剤の交換が行われた時刻からの経過時間が所定値に満たない場合には、例えば学習処理が禁止されるので動作点の誤学習が防止される。一方、このような期間内において学習処理を行う場合には、トルク特定手段によって特定されたトルクが係る経過時間に応じて補正されるので、トルクを比較的正確に特定することが可能となり、動作点を誤学習する可能性が低減される。
【0069】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記内燃機関における冷却水温が予め定められた範囲外である場合には前記学習処理を禁止する。
【0070】
この態様によれば、冷却水温が所定範囲外である場合には、学習処理が禁止されるので、動作点の更新値(学習値)の信憑性が担保される。尚、係る冷却水温の範囲は、予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによって予め決定されていてもよい。
【0071】
学習処理が行われる本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線更新手段は、前記内燃機関におけるノック強度が所定値以上である場合には前記学習処理を禁止する。
【0072】
ノック強度が所定値以上である場合には、例えば、点火時期の遅角量によって燃料消費率は激しく変化する。従って、このような条件下では、学習処理を行っても処理負荷が増加してかえって燃料消費率の悪化を招く可能性もある。この態様によれば、このような場合には学習処理が禁止されるので効果的である。
【0073】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御方法は、動力源として内燃機関及びモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御方法であって、前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定工程と、該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出工程と、該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新工程と、該更新された動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御工程とを具備することを特徴とする。
【0074】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御方法によれば、その動作時には、上述した本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置における動作を実現する各工程により、本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置と同様の効果を得ることが可能である。
【0075】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記内燃機関は、(i)前記内燃機関の排気系の少なくとも一部と前記内燃機関の吸気系の少なくとも一部とを相互に連通させる管路及び(ii)該管路の一部に設けられ、開度に応じて前記管路を流れるガスの流量を調節することが可能なバルブを備え、前記ガスとして前記内燃機関の排気ガスの少なくとも一部を前記管路及びバルブを介して前記吸気系に再循環させる排気ガス再循環手段を具備し、前記ハイブリッド車両の内燃機関制御装置は、前記算出される燃料消費率に基づいて前記開度を決定する開度決定手段と、前記開度が前記決定された開度となるように前記バルブを制御するバルブ制御手段とを更に具備する。
【0076】
本発明に係る「排気ガス再循環手段」とは、内燃機関の排気ガスの少なくとも一部を管路及びバルブを介して吸気系に再循環させることが可能な機構、装置又はシステムを包括する概念であり、典型的にはEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置を指す。この場合、管路及びバルブは、例えば、夫々EGRパイプ及びEGRバルブなどの形態を採る。また、これら管路及びバルブを備える限りにおいて、本発明に係る排気ガス再循環手段には、排気ガスを冷却して循環効率を改善するための冷却手段(例えば、EGRクーラなど)が備わっていてもよい。
【0077】
排気ガス再循環手段に備わるバルブは、その開度に応じて排気ガスの流量(還流する排気ガス量)を調節することが可能に構成される。即ち、本発明に係るバルブにおける開閉状態は、好適には、全開状態及び全閉状態の他に、更に中間開度状態を備える。このようなバルブの開度は、バルブ制御手段によって制御される。ここで、バルブを開閉する際の制御態様は、排気ガスの流量を調節可能な限りにおいて何ら限定されない。例えば、ステッピングモータなどの駆動ステップ数に応じて段階的に制御されてもよいし、印加する電圧又は電流などに応じてシームレスに制御されてもよい。
【0078】
一方、係るバルブの開度は、例えば、内燃機関の機関回転数及び負荷(例えば、吸入空気量或いは吸入空気量を規定するスロットル開度)などに対応付けられる形で予めマップなどとして保持されている。一般に、燃料を効率的に使用する観点から言えば、排気ガス再循環手段の管路を流れる排気ガスの流量は多い程よい。然るに、再循環する排気ガス量が過剰になると、内燃機関の燃焼が不安定となるため、通常、バルブの開度は、燃焼状態の悪化を招かない程度に大きい値に設定される。
【0079】
ここで特に、このような排気ガス再循環手段を利用する際の燃料消費率は、内燃機関の動作条件に影響を受け易い。従って、バルブの開度が固定値である場合、必ずしも燃料消費率は最小とはならず、内燃機関は効率的に使用され難い。
【0080】
この態様によれば、バルブの開度は、開度決定手段によって決定される。この際、開度決定手段は、算出される燃料消費率に基づいて開度を決定する。バルブ制御手段は、バルブの開度が、この決定された開度となるようにバルブを制御する。
【0081】
従って、バルブの開度は、一定又は不定に訪れるタイミング毎に随時更新可能であり、内燃機関の動作条件或いは経時的な変化に応じて、燃料消費率が最小となるような、或いは燃料消費率が比較的小さくなるような値に設定することが可能となる。即ち、この態様によれば、内燃機関が排気ガス再循環装置を備える場合であっても、内燃機関を効率良く動作させることが可能となるのである。
【0082】
尚、この態様では、前記内燃機関の出力と前記開度とを各軸に表してなる座標系において前記内燃機関の出力に対する前記開度の軌跡として規定される開度動作線を、前記算出された燃料消費率に基づいて更新する開度動作線更新手段を更に具備し、前記開度決定手段は、前記更新された開度動作線に従って前記開度を決定してもよい。
【0083】
ここで述べられる「開度動作線」とは、内燃機関の出力に対するバルブの開度の軌跡(即ち、特性線)を表す。但し、開度動作線を規定する動作点の個数は何ら限定されない。即ち、開度動作線は、離散的な出力値に対応する動作点を相互に繋げたものであってもよい。離散的な動作点を繋げることによって開度動作線が規定される場合、これら離散的な動作点間は適宜補間されてよい。この場合、補間の態様も何ら限定されない。
【0084】
尚、係る開度動作線は、無論然るべき記憶手段に記憶され、適宜読み出されて使用される類のものであってもよいが、必ずしも開度動作線そのものとして記憶されておらずともよい。例えば、単に、内燃機関の出力とバルブの開度とが数値的に対応付けられているだけであってもよい。この場合、開度動作線更新手段が、これら数値的な対応関係にある両要素から数値演算の結果として開度動作線に相当する対応関係を取得してもよい。明確に開度動作線として記憶されている場合であっても、仮想的に開度動作線が取得される場合であっても、内燃機関の前述した動作線上で動作点が設定された場合、係る動作点が表す内燃機関の出力に対応する開度が採用される。
【0085】
開度動作線更新手段は、係る開度動作線を、算出される燃料消費率に基づいて更新する手段である。ここで、開度動作線を更新する態様は、算出される燃料消費率に基づいて、内燃機関を幾らかなりとも効率良く動作させ得る態様である限りにおいて何ら限定されない。開度動作線が定義され且つ燃料消費率に基づいて更新される場合、バルブの開度を簡便且つ効率的に決定し得るため、内燃機関を一層効率良く動作させることが可能である。
【0086】
尚、開度動作線更新手段を具備する態様では、前記開度動作線更新手段は、前記開度動作線において前記内燃機関の一の出力値に対応する前記開度を、予め設定される更新範囲内で前記算出される燃料消費率が最小となる燃費率最小開度に設定することによって前記開度動作線を更新してもよい。
【0087】
この場合、内燃機関の一の出力値に対応する開度が、燃費率最小開度に設定されるため、開度動作線に従って、最適な開度を効率的に設定することが可能となる。即ち、内燃機関を効率良く使用することが可能となる。
【0088】
尚、「予め設定される更新範囲で」とは、このようにして得られる燃費率最小開度が、必ずしも最も燃費率が小さい開度でなくともよい、即ち、限定的な意味で最小の燃費率を与える開度を含む趣旨である。無論、予め設定される更新範囲が、バルブの開度範囲全域であるならば、この態様における燃費率最小開度とは、文字通り最小の燃費率を与える開度となるが、排気ガスの再循環量が増加すると、内燃機関の燃焼が不安定となって、ドライバビリティが低下し易い。従って、係る更新範囲は、例えば、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて、内燃機関における他の性能の低下を招かない程度の開度範囲として設定されていてもよい。また、更新範囲は、必ずしも固定値でなくてよく、例えば、内燃機関の出力に応じて、又は内燃機関の各種状態に応じて或いは経時変化などを考慮して適宜決定されてもよい。
【0089】
尚、燃費率最小開度に設定される開度動作線上の動作点は、元々開度動作線を規定するものとして設定された動作点であっても、これら動作点が相互に補間された結果として得られる動作点であってもよい。
【0090】
一方、このような開度動作線の更新は、基本的には、前述した内燃機関の動作線と同様、内燃機関の動作期間中であれば如何なるタイミングで行ってもよい。但し、更新のタイミングは、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて、開度動作線を比較的正確に更新し得るタイミングが規定され得るならば、そのようなタイミングに設定されるのが好適である。
【0091】
尚、開度が燃費率最小開度に設定される態様では、前記開度動作線更新手段は、前記開度動作線の傾きの絶対値が所定値未満に収まるように前記開度動作線を更新してもよい。
【0092】
開度動作線の傾きの絶対値とは、即ち、内燃機関の出力に対するバルブの開度の変化率であるが、係る変化率が大きいと、吸気系に再循環してくる排気ガス量が急激に変化し、内燃機関の燃焼状態が不安定になり易い。係る問題は、とりわけ内燃機関の過渡的な動作期間(例えば、負荷の急激な増加などが発生する期間)において顕著に発生する。
【0093】
予め開度動作線の傾きの絶対値が所定値未満に収まるように開度動作線が更新される場合、このような問題が解消され、内燃機関の燃焼状態が不安定になり難くなるため効果的である。尚、係る傾きの絶対値の限界(上限)を規定する所定値は、内燃機関の出力に応じて変化する値であってもよい。例えば、スロットルバルブが中間開度状態である場合、WOT(Wide Open Throttle:全開開度)状態である場合と比較して吸気管負圧が大きくなり易い。吸気管負圧が大きくなると、吸気管よりも圧力の高い排気系から流入する排気ガスの量は、排気ガス再循環手段のバルブの開度に対して敏感になり易い。このような場合に備え、開度動作線の傾きの絶対値の上限値は、スロットルバルブの状態に応じて、例えば、スロットルバルブが中間開度である場合にはより小さくなるように設定されていてもよい。
【0094】
尚、開度が燃費率最小開度に設定される態様では、前記開度動作線更新手段は、前記内燃機関の一の出力値に対し前記燃費率最小開度が設定された場合に、該一の出力値を含む所定範囲内における他の出力値に対応する前記開度を、前記一の出力値に対して設定された燃費率最小開度に基づいて設定することにより前記開度動作線を更新してもよい。
【0095】
開度動作線において、内燃機関の一の出力に対応する開度のみが燃費率最小開度に設定される場合、開度動作線の全体的なバランスが崩れることがある。また、燃費率最小開度が、予め設定された開度(即ち、デフォルトの開度動作線上で規定される開度)と異なる場合、他の出力についても、燃費率最小開度が開度動作線から外れている可能性が考えられる。
【0096】
このような場合、燃費率最小開度に設定された出力値を含む、所定範囲内の他の出力値に対しても、開度を再設定することによって、開度動作線を簡便且つ効果的に更新することが可能となる。この際、更に、一の出力について設定された燃費率最小開度に基づいて係る再設定が行われるため、実際に燃費率の比較が行われずとも相応の信頼性が担保される。
【0097】
尚、ここで述べられる「所定範囲」とは、例えば、一の出力における開度設定の影響が、無視し得ない程度に及び得る出力範囲に設定されるのが好適であるが、必ずしもこれに限定されず、例えば、極端な場合、一の出力値に対する開度の設定に伴って、開度動作線全体を変化させてもよい。例えば、開度動作線全体に対し、一の出力値における燃費率最小開度と従前の開度との差分に相当するオフセットを与えることによって、開度動作線の形状を維持したまま開度動作線をかさ上げしてもよい。また、係る差分に対し、一の出力値から離れるに連れて徐々に減少するような補正係数を乗じて或いは加算して、局所的に開度動作線の形状を変更してもよい。開度動作線の更新態様は、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて設定されていてもよい。
【0098】
尚、このように、開度が燃費率最小開度に設定された出力値の近傍の出力値に対しても開度が再設定される場合には、前述したような、開度の急激な変化、即ち開度動作線の傾きの急激な変化も結果的に抑制されるので効果的である。
【0099】
尚、開度が燃費率最小開度に設定される態様では、気温、大気圧及び湿度のうち少なくとも一つを含む前記内燃機関の環境条件の変化に対する前記燃費率最小開度の変化特性を推定する変化特性推定手段と、前記環境条件に変化が生じた場合に、前記推定された変化特性に基づいて前記燃費率最小開度を補正する補正手段とを更に具備してもよい。
【0100】
燃費率最小開度は、内燃機関の環境条件によって変化し易い。従って、開度を燃費率最小開度に設定すべく学習が行われた時点の環境条件から、環境条件が変化した場合には、係る燃費率最小開度は、真に最小の燃費率を与える開度であるか不明である。一方で、刻々と変化する環境条件に応じて、開度の学習を繰り返すことは非効率である。
【0101】
この態様によれば、補正手段は、予め推定手段によって推定された、環境条件の変化に対する燃費率最小開度の変化特性に基づいて燃費率最小開度を補正する。従って、燃費率最小開度を取得するための処理が軽減され、最適な開度を効率良く設定することが可能となる。即ち、内燃機関を効率良く動作させることが可能となるのである。
【0102】
尚、推定手段は、係る変化特性をどのように推定してもよいが、燃費率最小開度を決定するための学習プロセス中に、その時点の環境条件が取得可能である場合には、係る環境条件を規定する値と燃費率最小開度との対応関係に基づいて、比較的正確且つ簡便に変化特性を推定することが可能である。
【0103】
尚、ここで述べられる「環境条件」とは、気温、大気圧及び湿度のうち少なくとも一つを含む限りにおいて、更に他の条件、例えば、冷却水温などが含まれていてもよい。
【0104】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
以下、図面を参照して本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
<1−1−1:ハイブリッドシステムの構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッドシステム10のブロック図である。
【0106】
図1において、ハイブリッドシステム10は、制御装置100、エンジン200、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、及び車速センサ600を備え、ハイブリッド車両20を制御するシステムである。
【0107】
制御装置100は、動作状態制御部100a、トルク算出部100b、燃料消費率算出部100c、動作線更新部100d及び記憶部100eを備えると共に、ハイブリッドシステム10の動作全体を制御する、例えばECU(Engine Controlling Unit)等の制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の内燃機関制御装置」の一例として機能する。
【0108】
動作状態制御部100aは、エンジン200、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2各々の動作状態を制御することが可能に構成された、本発明に係る「制御手段」の一例である。
【0109】
トルク算出部100bは、エンジン200のトルクを算出することが可能に構成された、本発明に係る「トルク特定手段」の一例である。
【0110】
燃料消費率算出部100cは、エンジン200の燃料消費率を算出することが可能に構成された、本発明に係る「燃料消費率算出手段」の一例である。
【0111】
動作線更新部100dは、記憶部100eに格納される制御プログラムに従って、本発明に係る「動作線の更新」の一例たる動作点学習処理を実行することが可能に構成された、本発明に係る「動作線更新手段」の一例である。尚、動作点学習処理については後述する。
【0112】
記憶部100eは、例えばROM(Read Only Memory)などで構成された不揮発性記憶領域と、RAM(Random Access Memory)などで構成された揮発性記憶領域を有する記憶媒体である。記憶部100eにおいて、不揮発性領域には、予め定められた各種制御プログラムや、後述する制御マップなどが格納されている。また、揮発性領域には、後述する動作点学習処理が行われた際の学習結果が適宜記憶される。
【0113】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両20の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。
【0114】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「モータジェネレータ」の一例であり、バッテリ500を充電するための発電機として、或いはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。
【0115】
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「モータジェネレータ」の他の一例であり、エンジン200の出力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
【0116】
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
【0117】
動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。これら各ギアのうち、内周にあるサンギアの回転軸はモータジェネレータMG1に連結されており、外周にあるリングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジン200に連結されており、エンジン200の回転は、このプラネタリキャリアと更にピニオンギアとによって、サンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割されるように構成されている。ハイブリッド車両20において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両20における伝達機構21に連結されており、この伝達機構21を介して車輪22に駆動力が伝達される。
【0118】
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。
【0119】
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。バッテリ500には、バッテリ500の残容量を検出するSOCセンサ510が設置されており、制御装置100と電気的に接続されている。
【0120】
車速センサ600は、ハイブリッド車両20の速度を検出するセンサであり、制御装置100と電気的に接続されている。
【0121】
<1−1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図2を参照して、エンジン200の詳細な構成を、その基本動作と共に説明する。ここに、図2は、エンジン200の半断面システム系統図である。
【0122】
図2において、エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を動作と共に説明する。
【0123】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、燃料(ガソリン)が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料を、制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
【0124】
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過して排気管210を介して排気される。
【0125】
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
【0126】
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルポジションセンサ215が電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットルバルブ214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットルバルブ214を駆動するスロットルバルブモータ217も配設されている。
【0127】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転状態に基づいて、シリンダ201内部におけるピストン203の位置、及びエンジン200の回転数など取得することが可能に構成されている。また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
【0128】
排気管210には、三元触媒222が設置されている。三元触媒222は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管210における三元触媒222の上流側には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。
【0129】
<1−2:実施形態の動作>
<1−2−1:ハイブリッドシステムの基本動作>
図1のハイブリッドシステム10においては、主として発電機として機能するモータジェネレータMG1と、主として電動機として機能するモータジェネレータMG2と、エンジン200とのそれぞれの駆動力配分が動作状態制御部100a及び動力分割機構300により制御されてハイブリッド車両20の走行状態が制御される。以下に、幾つかの状況に応じたハイブリッドシステム10の動作について説明する。
【0130】
<1−2−1−1:始動時>
例えば、ハイブリッド車両20の始動時においては、バッテリ500の電気エネルギを用いて駆動されるモータジェネレータMG1が電動機として機能する。この動力によって、エンジン200がクランキングされエンジン200が始動する。
【0131】
<1−2−1−2:発進時>
発進時には、バッテリ500の蓄電状態に応じて2種類の態様を採り得る。バッテリ500の蓄電状態は、SOCセンサ510の出力信号に基づいて動作状態制御部100aによって把握されている。例えば、通常の(即ち、SOCが良好な)発進時においては、モータジェネレータMG1によってバッテリ500を充電する必要は生じないため、エンジン200は暖機のためだけに始動し、ハイブリッド車両20は、モータジェネレータMG2による駆動力により発進する。一方、蓄電状態が良好ではない(即ち、SOCが低下している)場合、エンジン200の動力によりモータジェネレータMG1が発電機として機能し、バッテリ500が充電される。
【0132】
<1−2−1−3:軽負荷走行時>
例えば、低速走行や緩やかな坂を下っている場合には、比較的エンジン200の効率が悪い為、エンジン200は停止され、ハイブリッド車両20は、モータジェネレータMG2による駆動力のみで走行する。尚、この際、SOCが低下していれば、エンジン200はモータジェネレータMG1を駆動するために始動し、モータジェネレータMG1によりバッテリ500の充電が行われる。
【0133】
<1−2−1−4:通常走行時>
エンジン200の効率が比較的良好な運転領域においては、ハイブリッド車両20は主としてエンジン200の動力によって走行する。この際、エンジン200の動力は、動力分割機構300によって2系統に分割され、一方は、伝達機構21を介して車輪22に伝達され、他方は、モータジェネレータMG1を駆動して発電を行う。更に、この発電された電力により、モータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2によりエンジン200の動力がアシストされる。尚、この際、SOCが低下している場合には、エンジン200の出力を上昇させて、モータジェネレータMG1により発電された電力の一部がバッテリ500へ充電される。
【0134】
<1−2−1−5:制動時>
減速が行われる際には、車輪22から伝達される動力によってモータジェネレータMG2を回転させ、発電機として動作させる。これにより、車輪22の運動エネルギが電気エネルギに変換され、バッテリ500が充電される、所謂「回生」が行われる。
【0135】
<1−2−2:実施形態におけるエンジンの基本制御動作>
次に、エンジン200の基本的な制御動作について説明する。
【0136】
動作状態制御部100aは、エンジン200に要求される出力であるエンジン要求出力を一定の周期で繰り返し演算している。動作状態制御部100aは、スロットルポジションセンサ215及び車速センサ600の出力信号に基づいてアクセル開度と車速とを取得し、記憶部100eの不揮発性領域に記録されたマップを参照してアクセル開度及び車速に対応した出力軸トルク(伝達機構21に出力されるべきトルク)を求める。また、動作状態制御部100aはSOCセンサ510の出力信号に基づいて要求発電量を求める。そして、要求発電量と各種の補機類(A/Cやパワーステアリングなど)の要求量とを参照して出力軸トルクを補正することにより、エンジン要求出力を求める。なお、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更してよい。
【0137】
<1−2−3:動作点学習処理>
<1−2−3−1:動作線及び動作点の詳細>
次に、図3を参照して、本発明の動作点学習処理に係る動作線及び動作点の詳細について説明する。ここに、図3は、制御マップ30の模式図である。
【0138】
図3において、制御マップ30は、縦軸(即ち、本発明に係る「第1軸」の一例)にエンジン200のトルクTe、横軸(即ち、本発明に係る「第2軸」の一例)にエンジン200の回転数Neを表してなる座標平面であり、本発明に係る「座標平面」の一例である。制御マップ30は、予め制御装置100の記憶部100eにおける不揮発性領域に格納されている。
【0139】
制御マップ30上には、様々なパラメータに対するエンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係を表すことが可能である。このうち、等出力線Pi(i=1,2,・・・,9)はエンジン200の出力値を一定とした場合の、エンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係線である。尚、本実施形態中においては、等出力線Piに対応するエンジン200の出力を適宜「出力Pi」と称することとする。また、図3においては、説明の簡略化のため、等出力線は9本しか描かれていないが、実際にはより細かく設定することが可能である。
【0140】
動作状態制御部100aは、エンジン200を動作させる際、エンジン200が、その都度求められる要求出力値に対応する等出力線上で予め設定されている動作点によって表されるエンジントルクTe及びエンジン回転数Neの組み合わせとなるように動作状態を決定する。動作線は、これら動作点を繋げたものとして規定される。
【0141】
図3において、動作線Qは、初期値として設定された動作線であり、等出力線Piに対応する動作点Qi(i=1,2,・・・,9)によって規定されている。夫々の等出力線上において、動作点Qiは、予め燃料消費率が最小となる(即ち、最も効率が高い)点に設定されており、例えば、工場出荷時などにおいて、標準的な環境条件で最適化されている。
【0142】
しかしながら、ハイブリッド車両20の使用条件は、画一的なものとなり得ないから、このように予め設定された動作点でエンジン200を動作させる場合には、エンジン200の燃費率は必ずしも最小とはならない。これは、制御マップ30上で燃費率が等しい領域を表した等燃費率線Sの分布が、エンジン200の環境条件や制御条件に応じて変化してしまうことによる。等燃費率線Sの分布が変化した結果、例えば、夫々の等出力線Piにおける動作点は、動作点Ri(i=1,2,・・・,9)へと変化する。その結果、エンジン200の動作線は動作線Rへと変化する。
【0143】
このような、燃費率が最小となる動作点が諸条件に応じて変化してしまう事態に対応するために、本実施形態に係るハイブリッドシステム10においては、動作線更新部100dによって動作点学習処理が行われる。この動作点学習処理により、ハイブリッドシステム10は、常に効率良くエンジン200を動作させることが可能となっている。
【0144】
<1−2−3−2:動作点学習処理の概要>
本実施形態に係る動作点学習処理は、以下(1)〜(3)の工程を備える。
【0145】
(1)等出力線Pi上でエンジン200の動作点を変化させる工程(即ち、本発明に係る「第1処理」の一例)。
【0146】
(2)変化させた動作点各々における燃費率を算出する工程(即ち、本発明に係る「第2処理」の一例)。
【0147】
(3)最も燃費率が小さい動作点(燃費率最小動作点)を確定して当該等出力線Pi上の動作点として再設定(即ち、更新)する工程(即ち、本発明に係る「第3処理」の一例)。
【0148】
本実施形態において、動作状態制御部100aは、制御マップ30を記憶部100eの不揮発性領域から揮発性領域へとコピーし、このコピーされた制御マップ30を使用してエンジン200の制御を行っている。動作点学習処理は、この揮発性領域上で適宜制御マップ30を書き換える処理である。上記(1)〜(3)の工程が行われることにより、一の等出力線Pi上においてエンジン200を動作させる際の動作点が、燃費率最小動作点に更新される。従って、エンジン200は比較的効率の良い状態を、或いは最も効率の良い状態を維持し続けることが可能となる。尚、本実施形態においては、一旦動作点学習処理が行われれば、エンジン200においてバッテリ500がリセットされるまで動作点の更新結果は保存される。但し、動作点学習処理の効力が及ぶ時間範囲は上述のものに限定されない。例えば、運転者の要求に応じて、或いはエンジン200が停止する毎に、動作線はリセットされ初期状態(記憶部100eの不揮発性領域に格納される制御マップ30によって規定される状態)に復帰してもよい。
【0149】
<1−2−3−3:動作点学習処理の詳細>
次に、図4を参照して、本実施形態に係る動作点学習処理の詳細について説明する。ここに図4は、動作点学習処理のフローチャートである。
【0150】
図4において、動作線更新部100dは、例えばハイブリッド車両20の通常走行中に、エンジン200の動作点を現在の等出力線Pi上で比較対象の一となる動作点に設定する(ステップA11)。これに応じて、エンジン200の制御状態は、動作状態制御部100aにより、この設定された動作点によって規定される動作状態に制御される。ここで、「比較対象の一となる動作点」とは、動作点学習処理を行うための燃費率の比較対象となる動作点のうちの一つを指す。動作点学習処理が開始されて最初に訪れるステップA11においては、その時点で等出力線Pi上で動作点として設定されている動作点(即ち、前回の動作点学習処理による更新値又は初期値Qi)が動作点として設定される。
【0151】
次に、燃料消費率算出部100cが、設定された動作点におけるエンジン200の燃費率を算出する(ステップA12)。燃費率は、エンジン200の単位電力量当りの燃料噴射量である。従って、インジェクタ207の燃料噴射量を、エンジン200の出力値(kW)から算出される電力量(kWh)で除算したものと等価である。
【0152】
燃料噴射量は、動作状態制御部100aが、エンジン200の回転数及び負荷率から記憶部100eの不揮発性領域に格納される基本噴射量マップに基づいて決定する基本噴射量に対して更に様々な補正を行った結果として得られる。燃料消費率算出部100cは、この燃料噴射量を動作状態制御部100aから取得する。
【0153】
一方、トルク算出部100bは、モータジェネレータMG1を介して検出されるエンジン200のトルク反力からエンジン200のトルクを算出する。燃料消費率算出部100cは、この算出されたトルクを取得すると共に、クランクポジションセンサ218の出力値に基づいて算出されるエンジン200の回転数を動作状態制御部100aから取得して、これらの値からエンジン200の出力を算出する。
【0154】
燃料消費率算出部100cは、このエンジン200における燃料噴射量とエンジン200の出力とに基づいて、現在設定されている動作点における燃費率を算出する。
【0155】
一の動作点について燃費率が算出されると、動作線更新部100dは、燃費率最小動作点が確定したか否かを判別する(ステップA13)。
【0156】
この判別は、予め実験的、経験的、或いはシミュレーションなどにより与えられてなる判断基準に基づいてなされる。例えば、等出力線上で一定の方向に動作点を動かした際に、燃費率が徐々に小さくなり、ある動作点を境に徐々に大きくなっている場合には、図3における等燃費率線Sの形状から言っても、係る動作点を燃費率最小動作点と考えてよい。
【0157】
従って、ステップA13に係る判別は、明確に何らかの閾値と比較して大小関係を判別すると言うよりも、燃費率の算出値の前後関係から判断されるべきものであり、一の動作点学習処理毎に態様は異なるものである。但し、動作点学習処理の開始後最初に訪れるステップA13に係る処理では、比較対象は存在しないので、条件分岐は「NO」となる。
【0158】
燃費率最小動作点が確定しない場合には(ステップA13:NO)、動作線更新部100dは、動作状態制御部100aが現在の出力値を維持することが可能であるか否かを判別する(ステップA14)。
【0159】
エンジン200に要求される要求出力は、例えば、運転者がアクセルペダル226を意識的又は無意識的に操作することによって変化する。要求出力が変化すると、エンジン200の出力値は、動作点学習処理が行われている出力値から変化するので、等出力線上で動作点学習処理を継続することが困難になる。そこで、動作点学習処理においては、動作状態制御部100aが、モータジェネレータMG2(又はモータジェネレータMG1、或いは両方)を適宜使用することによって、動作点学習処理が行われている出力値を維持するための出力維持制御を実行している。
【0160】
具体的には、例えば、現在等出力線P5上で(即ち、出力P5で)動作点学習処理が実行されているとする。ここで、要求出力が出力P6であった場合、エンジン200の出力が出力P5と出力P6との差分だけ不足する。この場合には、動作状態制御部100aは、例えばモータジェネレータMG2を電動機として使用してエンジン200のトルクの不足分をアシストする。一方、要求出力が出力P4であれば、エンジン200の出力は出力P5と出力P4の分だけ余剰となる。この場合には、動作状態制御部100aは、例えば、モータジェネレータMG2を発電機として使用して、この余剰な出力をバッテリ500への充電に使用する。このようにして、動作状態制御部100aは、動作点学習処理が行われている出力を維持している。
【0161】
しかしながら、ハイブリッド車両20の運転状況が変化して、例えば急激な加減速が必要となった場合には、モータジェネレータMG2によるアシスト又は吸収が不可能となる。例えば、バッテリ500の容量を超えてエンジン200をアシストすることは不可能であり、バッテリ500が満充電に近い状態で余剰な出力を吸収するとバッテリ500の性能劣化を招く懸念がある。
【0162】
従って、動作状態制御部100aは、一定の周期毎にSOCセンサ510の出力を監視して、係る出力維持制御が可能であるか否かの判別を行っている。ステップA14では、動作線更新部100dが、この判別の結果を参照することによって条件分岐が行われる。
【0163】
この結果、出力維持制御が不可能である場合(ステップA14:NO)、動作線更新部100dは、動作状態制御部100aに対して、直ちに出力維持制御の終了を指示する。この指示により動作状態制御部100aは出力維持制御を中止し、要求出力に見合ったエンジン制御を実行する。一方、動作線更新部100dは、出力維持制御が中止された時点で動作点学習処理を終了する。この場合、燃費率最小動作点は確定していないため、動作点学習処理が行われていた等出力線に係る動作点の更新は行われない。即ち、動作点は、予め設定された値に保持される。
【0164】
尚、この時点で、予め設定されていた動作点(即ち、前回の更新値或いは初期値)よりも明らかに燃費率が小さい動作点が存在するならば、動作線更新部100dによって、暫定的な動作点として、暫定的に動作点の更新が行われてもよい。或いは、中断する前の学習結果(即ち、暫定的な動作点)に関する情報を、制御マップ30に対応付ける形で、揮発性領域の他の部分に記憶しておいてもよい。この場合、次回該当する等出力線で動作点学習処理が行われる際に、係る暫定的な動作点から学習を行うことによって、効率良い学習を行うことも可能である。
【0165】
一方、出力維持制御が可能である場合(ステップA14:YES)には、処理は再びステップA11に復帰して、ステップA11からステップA13に係る処理が繰り返される。この際、ステップA11において設定される動作点は、例えば、等出力線上における離散的な、即ち、適当に距離の離れた動作点であってもよいし、連続的な、即ち極めて近接した動作点であってもよい。これら動作点をどのように変化させるかについては、例えば予め実験的に、経験的に、或いはシミュレーションなどによりその手法が与えられていてもよいし、その都度、動作線更新部100dが動作点学習処理の進捗に鑑みて決定してもよい。
【0166】
尚、動作線を変化させる際に、スロットルバルブ214を絞り過ぎた領域又はトルクの小さ過ぎる領域には、燃費率最小動作点は存在しないと考えてよく、従って、動作線更新部100dは、スロットルバルブ214の開度又はエンジン200のトルクが予め定められた下限値以上となる範囲で動作点を設定している。尚、係る下限値はエンジン200の出力値毎に異なり、予めエンジン200の出力値毎に適切な値が定められている。
【0167】
このような過程を繰り返した結果、燃費率最小動作点が確定されると(ステップA13:YES)、動作線更新部100dは動作点を更新する(ステップA15)。この際、揮発性領域にコピーされた制御マップ30において、この動作点学習処理が行われた等出力線上における動作点が書き換わり、動作線がそれに応じて変化する。
【0168】
動作点が更新されると、動作線更新部100dは、更に更新情報を記憶部100eに記憶する(ステップA16)。ここで、更新情報とは、エンジン200の出力値、ハイブリッド車両20の外気温(吸気温)、又はエンジン200の冷却水温度など、動作点学習処理が行われた環境条件又は制御条件などに関する情報である。更新情報の記憶が終了すると、動作点学習処理は終了する。
【0169】
このように、ハイブリッドシステム10においては、制御部100における動作線更新部100dが動作点学習処理を行うことによって、ハイブリッド車両20が走行中であってもエンジン200の動作点を燃費率が最小となる点に設定することが可能であり、エンジン200を効率良く動作させることが容易にして可能となっているのである。
<2:第2実施形態>
上述したように、動作点学習処理は基本的に等出力線上で行われる。動作点学習処理に要する時間は、例えば、通常走行中における数十秒程度であるが、この所要時間は短い程好ましいのは自明である。そこで、動作点学習処理の所要時間を短縮し得る本発明の第2実施形態について図5を参照して説明する。ここに、図5は、第2実施形態に係る動作点学習処理のフローチャートである。尚、図5において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。また、第2実施形態に係るハイブリッドシステムの構成は、第1実施形態に係るハイブリッドシステム10と等しいものとする。
【0170】
図5において、始めに、例えばハイブリッド車両20の通常走行中に、動作線更新部100dは燃費率最小動作点の存在する領域を推定する(ステップB11)。ここで、「燃費率最小動作点の存在する領域」について、図6を参照して説明する。ここに、図6は、動作線の模式図である。尚、図6において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0171】
図6において、例えば、現在の動作線が動作線Rであり、等出力線P5についての動作点学習処理が行われるものとする。この場合、動作点を等出力線上で変化させる方向は2種類考えられる。即ち、動作線Rを挟んで高トルク側の領域Aに向う方向と、動作線Rを挟んで低トルク側の領域Bに向う方向である。
【0172】
ここで、例えば、実際には領域Bにある燃費率最小動作点を確定するのに、領域Aから順次動作点を設定していると、動作点学習処理に要する時間は無駄に増えることとなる。一方、領域Bから順次動作点を設定していれば、領域Aにある動作点については、燃費率を算出する必要は生じないので比較的短時間で燃費率最小動作点を確定することが可能である。即ち、燃費率最小動作点が領域Aと領域Bとのいずれの領域に存在するかが事前に推測されていればよいこととなる。
【0173】
ここで、動作線更新部100dは、前回動作点学習処理が行われた等出力線に関する動作点更新結果を参照して、燃費率最小動作点の存在領域を推定する。例えば、前回、等出力線P1上で動作点学習処理が行われ、その結果、動作点が動作点R1から動作点M1へ更新されたとする。動作線更新部100dは、この等出力線P1に関する最新の動作点学習結果を、記憶部100eに格納された更新情報から取得することができる。この場合、動作線更新部100dは、取得した情報から、現在動作点学習処理が行われている等出力線P5において、燃費率最小動作点は領域Bに存在すると推定する(図6「動作点M5」参照)。このように、第2実施形態においては、動作線更新部100dによって燃費率最小動作点の存在領域が推定される。
【0174】
図5に戻って、動作線更新部100dは、燃費率最小動作点が存在すると推定された領域が領域Aであるか否かを判別する(ステップB12)。燃費率最小動作点の存在が推定された領域が領域Aである場合(ステップB12:YES)、動作線更新部100dは、領域A優先処理を実行する(ステップB13)。一方、領域Bである場合(ステップ1B2:NO)、動作線更新部100dは、領域B優先処理を実行する(ステップB14)。ステップB13又はステップB14のいずれかが実行されると、動作状態制御部100aは、既に述べたように、動作点を設定する(ステップA11)。
【0175】
ここで「領域A(B)優先処理」とは、ステップA11において、領域A(B)から優先的に動作点を設定するための処理である。これにより、例えば、領域B優先処理が実行された場合には、動作線更新部100dは領域B内から優先的に動作点が設定される。ここで「優先的に」とは、領域B優先処理が実行されても、実際に燃費率最小動作点が領域Aに存在している可能性もあることを意味する。即ち、比較対象となる動作点は、優先的に領域Bから設定されるが、燃費率最小動作点が確定されない場合には、領域A内から動作点が設定されてもよい。ステップA11以降は、ステップA16に至るまで第1実施形態と同等の処理が実行される。
【0176】
ステップA16によって、更新情報が記憶されると、動作線更新部100dは、燃費率最小動作点が優先処理された領域に存在したか否かを判別する(ステップB15)。優先処理された領域に存在していた場合には(ステップB15:YES)、第2実施形態に係る動作点学習処理は終了する。一方で、優先処理された領域に燃費率最小動作点が存在しなかった場合には(ステップB15:NO)、他の等出力線で動作点学習処理を実行するための準備処理が行われ(ステップB16)、第2実施形態に係る動作点学習処理が終了する。
【0177】
ここで、ステップB16が実行される理由は、優先された領域(即ち、燃費率最小動作点が存在すると推定された領域)に燃費率最小動作点が存在しなかった場合には、動作線の形状が大きく変化している可能性があると考えられ、直ちに他の等出力線でも動作点学習処理を行う必要があると考えられるからである。
【0178】
また、例えば、図6における等出力線P1での学習結果を参照して等出力線P5で学習を行った結果、燃費率最小動作点が推定された領域になく、更に、それに基づいて等出力線P6で学習を行った結果、燃費率最小動作点が等出力線P5の学習結果と同じ側であった場合には、リファレンスとして使用した等出力線P1の学習結果は古いものとなっている可能性がある。この場合には、再び等出力線P1における動作点学習処理が行われてもよい。
【0179】
尚、動作線更新部100dが燃費率最小動作点の存在領域を推定する態様は、上述したものに限定されない。何らこのような推定を行わない場合と比較して、動作点学習処理に要する時間を短縮可能な限りにおいて、推定の態様は自由に決定されてよい。
<3:第3実施形態>
上述したように、動作点学習処理は基本的に等出力線上で行われる。また、動作点学習処理を行うタイミングも自由である。しかしながら、例えば通常走行中に動作点学習処理を行うタイミングを最適化することができれば、無駄に動作点学習処理を行う可能性は低減する。換言すれば、動作点学習を行うべき時に速やかに動作点学習処理を行うことが可能となる。そこで、動作点学習処理を行うタイミングを制御することが可能な本発明の第3実施形態に係るハイブリッドシステム11について説明する。
【0180】
始めに、図7を参照して、ハイブリッドシステム11の構成を説明する。ここに、図7はハイブリッドシステム11のブロック図である。尚、図7において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略することとする。
【0181】
図7において、ハイブリッドシステム11は、大気圧センサ710、湿度センサ720、及びカーナビゲーション処理系730を備える点において、ハイブリッドシステム10と異なっている。
【0182】
大気圧センサ710は、公知の大気圧計であり、ハイブリッド車両20周辺の大気圧を計測して、絶えず制御装置100に計測結果を出力している。
【0183】
湿度センサ720は、公知の湿度計であり、ハイブリッド車両20周辺の湿度を計測して、絶えず制御装置100に計測結果を出力している。
【0184】
カーナビゲーション処理系730は、公知のカーナビゲーションシステムを制御する処理ユニットであり、該カーナビゲーションシステムに付帯するGPS(Global Positioning System)測位システムなどによって検出されるハイブリッド車両20の現在位置情報を取得することが可能に構成されている。カーナビゲーション処理系730は、制御装置100に対し、絶えずハイブリッド車両20の現在位置情報を出力している。
【0185】
以上の構成の下、動作線更新部100dは、以下に説明する基本処理を行っている。以下、図8を参照して、基本処理の詳細について説明する。ここに、図8は、基本処理のフローチャートである。
【0186】
図8において、始めに動作線更新部100dは、開始条件判定処理を実行する。ここで、図9を参照して開始条件判定処理の詳細について説明する。ここに、図9は、開始条件判定処理のフローチャートである。尚、開始条件判定処理とは、動作点更新処理を行うべきタイミングであるか(開始条件であるか)を判定する処理である。
【0187】
図9において、始めに、例えばハイブリッド車両20の通常走行中に、動作線更新部100dは、大気圧センサ710から現在のハイブリッド車両20周辺における大気圧の値を取得すると共に、現在のエンジン200の出力値に対する前回の動作点学習処理における大気圧の値と比較し、その差分(大気圧変化)が所定レベル以上であるかを判別する(ステップD11)。ここで、「所定レベル」とは、動作線或いは動作点が無視できない程変化していると考え得るレベルであり、予め適切な指標値が与えられている。尚、一度も動作点学習処理が行われていない場合には、動作点の初期値(例えば、図3における動作点Qi)が規定された際の環境条件との乖離が所定レベル以上であるか否かが判別される。大気圧変化が所定レベル以上であった場合には(ステップD11:YES)、動作線更新部100dは、動作点学習処理の開始条件であると判定する(ステップD16)。
【0188】
大気圧変化が所定レベル未満である場合には(ステップD11:NO)、動作線更新部100dは、湿度センサ720からハイブリッド車両20周辺における湿度の値を取得すると共に、大気圧の場合と同様に、湿度変化が所定レベル以上であるか否かを判別する(ステップD12)。湿度変化が所定レベル以上であった場合には(ステップD12:YES)、動作線更新部100dは、動作点学習処理の開始条件であると判定する(ステップD16)。
【0189】
湿度変化が所定レベル未満である場合には(ステップD12:NO)、動作線更新部100dは、吸気温センサ213から現在のハイブリッド車両20周辺における外気温を取得すると共に、大気圧及び湿度の場合と同様に、外気温変化が所定レベル以上であるか否かを判別する(ステップD13)。外気温変化が所定レベル以上であった場合には(ステップD13:YES)、動作線更新部100dは、動作点学習処理の開始条件であると判定する(ステップD16)。
【0190】
外気温変化が所定レベル未満である場合には(ステップD13:NO)、動作線更新部100dは、ノックセンサ219から、現在のエンジン200におけるノックレベルを取得すると共に、不図示のKCSによる点火プラグ202の点火遅角制御量(遅角量)を取得して、大気圧、湿度、及び外気温と同様に、点火遅角量変化が所定レベル以上であるか否かを判別する(ステップD14)。点火遅角量変化が所定レベル以上であった場合には(ステップD14:YES)、動作線更新部100dは、動作点学習処理の開始条件であると判定する(ステップD16)。
【0191】
点火遅角量変化が所定レベル未満であった場合には(ステップD14:NO)、動作線更新部100dは、動作点学習処理の開始条件ではないと判定する(ステップD15)。ステップD15又はステップD16により、動作点学習処理の開始条件であるか否かの判定が終了すると、開始条件判定処理は終了する。
【0192】
図8に戻り、動作線更新部100dは、開始条件判定処理が終了すると、開始条件判定処理の結果に基づいて、動作点学習処理の開始条件であるか否かを判別する(ステップC11)。開始条件判定処理の結果、開始条件ではなかった場合(ステップC11:NO)、動作線更新部100dは、開始条件が満たされるまで開始条件判定処理を繰り返すと共に、開始条件であった場合には(ステップC11:YES)、定常状態判定処理を実行する。尚、定常状態判定処理とは、ハイブリッド車両20が定常状態であるか否かを判定する処理であり、「定常状態」とは、ハイブリッド車両20が、一定又はそれに準じる速度で走行中であると共に、ハイブリッド車両20に加わる負荷条件に概ね変化がない状態を指す。
【0193】
ここで、図10を参照して、定常状態判定処理の詳細について説明する。ここに、図10は、定常状態判定処理のフローチャートである。
【0194】
始めに、動作線更新部100dは、例えばハイブリッド車両20の走行中に、カーナビゲーション処理系730から出力される位置情報からハイブリッド車両20の傾斜角度を取得すると共に、傾斜角度が所定値以上であるか否かを判別する(ステップE11)。傾斜角度が所定値以上であった場合(ステップE11:YES)、動作線更新部100dは、ハイブリッド車両20が定常状態ではないと判定する(ステップE17)。
【0195】
傾斜角度が所定値以上ではなかった場合(ステップE11:NO)、動作線更新部100dは、ハイブリッド車両20が制動中であるか否かを判別する(ステップE12)。制動中であるか否かの判別は、例えば、図示せぬブレーキセンサやESC(Electric Skid Control)の制御信号などを参照して行われる。制動中であった場合(ステップE12:YES)、動作線更新部100dは、ハイブリッド車両20が定常状態ではないと判定する(ステップE17)。
【0196】
制動中ではなかった場合(ステップE12:NO)、動作線更新部100dは、ハイブリッド車両20におけるハンドル切れ角が所定値以上であるか否かを判別する(ステップE13)。ハンドル切れ角が所定値以上であった場合(ステップE13:YES)、動作線更新部100dはハイブリッド車両20が定常状態ではないと判定する(ステップE17)。
【0197】
ハンドル切れ角が所定値以上ではなかった場合(ステップE13:NO)、動作線更新部100dは、再びカーナビゲーション系730から位置情報を取得し、ハイブリッド車両20の走行進路に山道があるか否かを判別する(ステップE14)。進路上に山道が存在する場合、動作線更新部100dはハイブリッド車両20が定常状態ではないと判定する(ステップE17)。
【0198】
進路上に山道が存在しない場合(ステップE14:NO)、動作線更新部100dは、ハイブリッド車両20が巡航中であるか否かを判別する(ステップE15)。巡航中であるか否かの判別は、車速センサ600の出力値の変動が所定の範囲であるか否かに基づいて行われる。巡航中ではなかった場合(ステップE15:NO)、動作線更新部100dはハイブリッド車両20が定常状態ではないと判定する(ステップE17)。
【0199】
巡航中であった場合(ステップE15:YES)、動作線更新部100dはハイブリッド車両20が定常状態であると判定する(ステップE16)。ステップE16又はステップE17によって、ハイブリッド車両20が定常状態であるかの判定がなされると、定常状態判定処理が終了する。
【0200】
図8に戻り、定常状態判定処理が終了すると、動作線更新部100dは、定常状態判定処理の結果に基づいて、ハイブリッド車両20が定常状態であるか否かを判別する(ステップC12)。定常状態ではない場合(ステップC12:NO)、動作線更新部100dは処理を再び開始条件判定処理まで戻すと共に、定常状態であった場合には(ステップC12:YES)、更に禁止条件判定処理を実行する。尚、禁止条件とは、誤学習防止の観点から、動作点学習処理を行うことが禁止されている条件を指す。
【0201】
ここで、図11を参照して、禁止条件判定処理の詳細について説明する。ここに、図11は、禁止条件判定処理のフローチャートである。
【0202】
図11において、動作線更新部100dは、例えばハイブリッド車両20の通常走行中に、水温センサ220の出力値から、エンジン200の冷却水温を取得し、冷却水温度が所定の温度範囲外にあるか否かを判別する(ステップF11)。尚、係る温度範囲は、動作点学習処理を行わない方が良いとされる温度範囲として、予め適切に設定されている。冷却水温が所定の温度範囲外にあった場合(ステップF11:YES)、動作線更新部100dは、禁止条件であると判定する(ステップF15)。
【0203】
冷却水温が所定の温度範囲内にある場合(ステップF11:NO)、動作線更新部100dはノックセンサ219の出力値から、ノック強度を取得し、ノック強度が所定値以上であるか否かを判別する(ステップF12)。ノック強度に係る所定値も予め適切な値に設定されている。ノック強度が所定値以上であった場合(ステップF12:YES)、動作線更新部100dは、禁止条件であると判定する(ステップF15)。
【0204】
ノック強度が所定値未満である場合(ステップF12:NO)、動作線更新部100dは、ハイブリッド車両20において最後にエンジンオイルの交換がおこなわれてから所定の時間が経過したか否かを判別する(ステップF13)。係る所定の時間とは、オイル交換直後のフリクション低減によるエンジントルクの増加が無視できない程度である時間として規定される。また、エンジンオイル交換後からの経過時間は、動作線更新部100dが内蔵するタイマなどに関連付けて記憶している。所定の時間が経過していない場合(ステップF13:NO)、動作線更新部100dは、禁止条件であると判定する。
【0205】
エンジンオイル交換後所定の時間が経過している場合には(ステップF13:YES)、動作線更新部100dは禁止条件ではないと判定する(ステップF14)。ステップF14及びステップF15のいずれかによって禁止条件であるか否かの判定が行われると、禁止条件判定処理は終了する。
【0206】
再び、図8に戻り、禁止条件判定処理が終了すると、動作線更新部100dは、禁止条件判定処理の結果に基づいて、禁止条件であるか否かを判別する(ステップC13)。禁止条件である場合には(ステップC13:YES)、動作線更新部100dは処理を再び開始条件判定処理に戻すと共に、禁止条件ではない場合には(ステップC13:NO)、動作点学習処理を実行する。
【0207】
このように、第3実施形態によれば、開始条件を満たし、定常状態にあると共に、禁止条件を満たさない場合に限って動作点学習処理が行われるので、誤学習の可能性が低減すると共に、極めて効率良く動作点の学習を行うことが可能となっているのである。
【0208】
尚、禁止条件判定処理において、エンジンオイル交換後所定の時間が経過しない場合であっても、フリクション低減によるエンジントルクの増加量を係る経過時間に応じて補正可能である場合には、禁止条件と判定せずともよい。この場合、所定の時間が経過するまでの期間内においては、動作点学習処理における燃費率算出において、補正されたエンジントルク値が使用されればよい。
<4:変形例>
上述した各種実施形態においては、制御マップは予め1種類であり、環境条件や制御条件の変化に応じて常に係る制御マップについて動作点が更新されているが、例えば、制御マップは、何らかの条件に対応付けられた形で予め複数用意されていてもよい。このような本発明の変形例について、図12を参照して説明する。ここに、図12は、制御マップ31の模式図である。
【0209】
図12においては、制御マップ31は、外気温Taに夫々対応付けられた制御マップ31a、31b及び31cからなる。動作線更新部100dは、外気温度が比較的大きく変化した場合には、動作状態制御部100aが参照すべき制御マップをこれら3種類のマップの中から切替える。従って、動作点学習処理を効率的に実行することが可能となっている。尚、制御マップは、動作点学習処理を効率的に実行可能である限りにおいて、外気温に限らず、如何なる条件に対応付けられて用意されていてもよい。例えば、ハイブリッドシステムにおいて、電子サーモによる冷却水温(低水温制御及び高水温制御)の切換え制御が行われる場合には、これらに対応する2種類の制御マップが用意されていてもよい。
<5:第4実施形態>
<5−1:実施形態の構成>
次に、本発明の第4実施形態に係るハイブリッドシステムについて説明する。ここに、図13は、ハイブリッドシステム12のブロック図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0210】
図13において、ハイブリッドシステム12は、エンジン200の代わりにエンジン900を備える点において、図1に示すハイブリッドシステム11と相違している。
【0211】
次に、図14を参照して、エンジン900の詳細な構成を、その基本動作と共に説明する。ここに、図14は、エンジン900の半断面システム系統図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0212】
図14において、エンジン900は、EGR装置1000を備える点で、図2に示すエンジン200と相違している。
【0213】
EGR装置1000は、EGRパイプ1010及びEGRバルブ1020を備える。
【0214】
EGRパイプ1010は、一方の端部が排気管210と連通し、他方の端部がスロットルバルブ214の下流において吸気管206と連通するように配置された管状部材であり、本発明に係る「管路」の一例である。
【0215】
EGRバルブ1020は、EGRパイプ1010上に設置されたソレノイドバルブであり、本発明に係る「バルブ」の一例である。EGRバルブ1020は、駆動源としてリニアソレノイドを有し、リニアソレノイドへの通電量に応じて連続的に開閉状態が変化する構成となっている。尚、EGRバルブ1020は、制御装置100と電気的に接続されており、係る通電量が制御装置100の動作状態制御部100aによって制御される構成となっている。即ち、動作状態制御部100aは、本発明に係る「バルブ制御手段」の一例としても機能するように構成されている。
【0216】
係る構成の下、シリンダ201から排気バルブ202を介して排気される排気ガスの一部は、EGRパイプ1010を循環して再び吸気管206に戻され燃焼に供される。この際、再循環する排気ガスの量は、EGRバルブ1020の開度に応じて変化し、基本的には、開度が大きい程排気ガスがより多く再循環する構成となっている。
【0217】
EGRバルブ1020の開度たるEGRバルブ開度EAは、エンジン900の出力に対応付けられて設定される。ここで、図15を参照して、EGRバルブ開度EAの詳細について説明する。ここに、図15は、制御マップ32の模式図である。
【0218】
図15において、制御マップ32は、縦軸にEGRバルブ開度EA、横軸にエンジン出力を表してなる座標系である。制御マップ32は、予め制御装置100の記憶部100eにおける不揮発性領域に格納されている。
【0219】
制御マップ32では、相互に異なる複数のエンジン出力Pi(i=1,2,・・・,9)について夫々対応する開度動作点Si(i=1,2,・・・,9)が設定されている。開度動作線Sは、これら開度動作点Si相互間を補間して繋げたものとして規定される。尚、制御マップ32上では、一の開度動作点Siによって、EGRバルブ開度EAi(i=1,2,・・・,9)が一義的に決定される。
【0220】
動作状態制御部100aは、エンジン900に要求される出力に応じて、係る制御マップ32に表される開度動作線Sに従って開度動作点Siを選択し、EGRバルブ1020の開度を、係る開度動作点Siによって一義的に規定されるEGRバルブ開度EAiに制御している。即ち、動作状態制御部100aは、本発明に係る「開度決定手段」の一例として機能するように構成されている。尚、制御マップ32上では、開度動作点Siの一例として9個の開度動作点Siが示されるが、開度動作点Siの個数は何ら限定されない。
【0221】
<5−2:実施形態の動作>
<5−2−1:開度動作線更新の概要>
EGRバルブ開度EAの基本値は、予め制御マップ32上でデフォルトとして設定される開度動作線Sに従ったものとなる。基本的に、デフォルトとして設定される開度動作線Sは、燃費率が小さくなるような開度を与えるように設定される。ところが、経時的には、またエンジン900の使用状況によっては、デフォルトの開度動作線S上の開度動作点Siが表すEGRバルブ開度EAiは、必ずしも燃費率が最小となる開度とはならない。ここで、図16を参照して、このことについて説明する。ここに、図16は、EGRバルブ開度EAに対する燃費率の特性を表す模式図である。
【0222】
図16において、例えば、エンジン900の出力がP3であり、図15に示す開度動作線S上で、出力値P3に対応する開度動作点S3が設定されているものとする。従って、EGRバルブ開度EAが、係る開度動作点S3によって規定されるEA3に設定されている。図16では、EGRバルブ開度EAが、EA3’(EA3’>EA3)の場合に、燃費率が最小となっており、開度動作線Sに従って開度が設定された場合には、エンジン900は真に効率的な動作を行えないことになる。本実施形態では、このような場合に備え、動作線更新部100dが開度動作線Sを更新することにより、エンジン900を効率良く動作させることが可能となっている。即ち、動作線更新部100dは、本発明に係る「開度動作線更新手段」の一例として機能する。
【0223】
次に、図17を参照して、開度動作線の更新の概要について説明する。ここに、図17は、制御マップ32の他の模式図である。尚、同図において、図15と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0224】
図17において、開度動作線Sの更新の様子が示される。尚、図17では、図16に例示したエンジン出力P3に対応する開度動作点S3に関する更新を表している。尚、本実施形態では、開度動作線Sを規定する開度動作点Siを変更することによって、開度動作線Sが更新されるものとする。一のエンジン出力に対応する開度動作点Siが変更されることにより、必然的に、一のエンジン出力に対応するEGRバルブ開度EAが変更される。
【0225】
図17において、エンジン出力P3に対応する開度動作点が、従前(即ち、更新前)のS3から、新たにS3’に変更され、その結果、開度動作線Sは、図示破線部分が、図示実線の如くに更新される。この結果、エンジン出力P3に対応するEGRバルブ開度EAは、EA3からEA3’へと変化する。以後、この更新された開度動作線Sに従ってEGRバルブ開度EAが設定されることによって、エンジン900における燃費率は最小或いは最小とみなし得る程度に小さい値に制御される。
【0226】
尚、開度動作線の更新は、上述の各実施形態における動作線の更新と同様に、記憶部100eの不揮発性領域に格納される制御マップ32が記憶部100eの揮発性領域へコピーされ、係るコピーされた制御マップ32が、開度学習処理の結果を反映して適宜書き換えられることによって実現される。
【0227】
<5−2−2:開度学習処理の詳細>
本実施形態において、動作線更新部100dは、以下に説明する開度学習処理を実行することによって、上述した開度動作線の更新を行っている。ここで、図18を参照して、開度学習処理の詳細について説明する。ここに、図18は、開度学習処理のフローチャートである。
【0228】
図18において、動作線更新部100dは、学習タイミングであるか否かを判別する(ステップG10)。ここで、開度学習処理における学習タイミングとは、EGRバルブ1020の開度が燃費率に与える影響を正確に特定することが可能であるとみなし得るタイミングであり、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションなどに基づいて、その判断基準が適切に与えられている。例えば、動作線更新部100dによって、上述した各実施形態に係る動作線の更新が実行されている場合には、係る開度学習処理が禁止されてもよい。また、エンジン900が過渡的な動作期間にある場合には、誤学習防止の観点から、開度学習処理が禁止されてもよい。また、開度学習処理は、エンジン900の出力が一定に保たれている場合に実行されてもよい。更には、一旦開度学習処理が実行されたエンジン出力については、一定期間学習処理が禁止されてもよい。
【0229】
学習タイミングではない場合(ステップG10:NO)、動作線更新部100dは、ステップG10に係る処理を繰り返し、開度学習処理を待機状態に設定する。一方で、学習タイミングが訪れた場合(ステップG10:YES)、EGRバルブ開度EAの学習を開始する。具体的には、先ず、学習対象となる開度動作点が設定される(ステップG11)。尚、開度動作点の設定に伴い、EGRバルブ開度EAは、必然的に開度動作点によって表される開度に設定される。
【0230】
ここで、最初に訪れるステップG11では、開度動作点は、現在の開度動作線S上でエンジン900の出力値に対応する開度動作点に設定される。開度動作点が設定されると、燃費率算出部100cによって、係る開度動作点における燃費率が算出される(ステップG12)。算出された燃費率は、記憶部100eの揮発性領域に開度動作点の情報(即ち、典型的にはEGRバルブ開度EA)と共に一時的にバッファリングされる。
【0231】
燃費率が算出されると、算出された燃費率が最小の値であるか、即ち、設定された開度動作点に対応するEGRバルブ開度EAが、燃費率最小開度であるか否かが判別される(ステップG13)。開度学習処理において最初に訪れるステップG13では、係る判断分岐は必然的に「NO」となり、処理は再びステップG11に戻される。以後、燃費率最小開度が確定するまで、ステップG11からステップG13に至る一連のループ処理が繰り返される。
【0232】
ここで、ステップG13に係る、燃費率最小開度であるか否かの判別については、予め適切な判断基準が与えられている。例えば、最も新しく設定された開度動作点における燃費率と、その1ループ前に設定された開度動作点における燃費率とが比較され、前者の燃費率の方が小さい値である限り係るループ処理が繰り返される。この結果、燃費率最小開度が確定する。
【0233】
燃費率最小開度が確定すると(ステップG13:YES)、開度動作線Sにおける開度動作点が、係る燃費率最小開度を与える開度動作点に設定された場合の、開度動作線Sの傾きαnが算出される(ステップG14)。傾きαnが算出されると、係る傾きαnの絶対値|αn|が、予め設定された上限値αnmax未満であるか否かが判別される(ステップG15)。
【0234】
ここで、図19を参照して、開度動作線Sの傾きについて説明する。ここに、図19は、制御マップ32の他の模式図である。尚、同図において、図17と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0235】
図19において、開度学習処理が実行されているエンジン出力をPnとする。また、更新前の開度動作線においてエンジン出力Pnに対応する開度動作点をSnとし、開度学習処理において確定した燃費率最小開度を規定する開度動作点をSn’とする。
【0236】
更新前の開度動作線S(図示実線)に従えば、EGRバルブ開度EAは、開度動作点Snによって表されるEAnに設定される。ここで、エンジン出力Pnに対応する開度動作点が、開度動作点Snから燃費率最小開度に対応する開度動作点Sn’(EGRバルブ開度は、EAn’(EAn’>EAn))に変更された場合、開度動作線Sは、一部が図示破線で示される如く更新される。この際、更新された場合の開度動作線Sの傾きαn(即ち、傾きαのうち、エンジン出力Pnに対応する傾き)は、下記(1)及び(2)式で表される。
【0237】
αn=(EAn’−EAn−1)/(Pn−Pn−1)・・・(1)
αn=(EAn+1−EAn’)/(Pn+1−Pn)・・・(2)
(1)式によって表されるαnは、エンジン出力がPn−1からPnへ推移する場合の開度動作線Sの傾きであり、(2)式によって表されるαnは、エンジン出力がPnからPn+1へ推移する場合の開度動作線Sの傾きである。即ち、これらαnは、EGRバルブ開度EAの変化率を表している。係る変化率が過剰に大きい場合、エンジン900の燃焼状態が不安定になるため、ハイブリッド車両20におけるドライバビリティが悪化し易い。従って、前述のαnmaxは、エンジン900の燃焼状態の悪化を許容し得る限界値であり、エンジン出力毎に予め設定されている。
【0238】
一旦図18に戻り、ステップG15に係る判別の結果、傾きαnの絶対値がαnmax未満である場合(ステップG15:YES)、動作線更新部100dは、開度動作点を、燃費率最小開度を与える開度動作点Sn’に設定する(ステップG16)。一方、傾きαnの絶対値がαnmax以上である場合(ステップG15:NO)、動作線更新部100dは、開度動作点を、開度動作線Sの傾きがαnmaxとなる開度動作点Snmaxに設定する(ステップG17)。いずれかの開度動作点が設定されることによって、開度動作線Sは更新される。
【0239】
ここで、図19に戻り、ステップG16に係る処理によって、開度動作点が燃費率最小開度を与える開度動作点Sn’に設定された場合、例えば、図示破線の如く開度動作線Sは更新される。一方、ステップG17に係る処理によって、開度動作点がSnmaxに設定された場合、例えば、図示鎖線の如く開度動作線Sは更新される。
【0240】
再び図18に戻り、ステップG16又はG17に係る処理によって開度動作線Sが更新されると、処理はステップG10に戻され、一連の処理が繰り返される。
【0241】
以上説明したように、本実施形態に係る開度学習処理によれば、EGR装置を備えるエンジンを含むハイブリッドシステムにおいても、最適なEGRバルブ開度EAを設定することが可能となり、エンジンを真に効率良く動作させることが可能となるのである。
【0242】
<変形例>
尚、開度動作線Sが更新される際、上記実施形態の如く一の出力値に対応する開度動作点のみが変更の対象とされなくともよい。ここで、このような本実施形態の変形例について説明する。
【0243】
ここで、図20は、本実施形態の第1変形例に係る開度動作線の更新態様を示す模式図である。尚、同図において、図19と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0244】
図20において、エンジン出力Pnに対応する開度動作点が開度動作点Sn’に変更されたとする。この際、開度動作点Snによって規定されるEGRバルブ開度EAnと、開度動作点Sn’によって規定されるEGRバルブ開度EAn’との差分をxとする。
【0245】
開度動作線Sを、このエンジン出力Pnにおける開度学習処理の結果を反映して更新する際、動作線更新部100dは、エンジン出力Pnに隣接するエンジン出力Pn−1及びPn+1に対応する開度動作点Sn−1及びSn+1を、夫々従前のEGRバルブ開度EAn−1及びEAn+1(不図示)から0.6xだけ増加させたEGRバルブ開度EAn−1’及びEAn+1’(不図示)を規定する開度動作点Sn−1’及びSn+1’に変更する。同様に、エンジン出力Pn−1及びPn+1に夫々隣接するエンジン出力Pn−2及びPn+2に対応する開度動作点Sn−2及びSn+2(不図示)を、夫々従前のEGRバルブ開度EAn−2及びEAn+2(不図示)から0.4xだけ増加させたEGRバルブ開度EAn−2’及びEAn+2’(不図示)を規定する開度動作点Sn−2’及びSn+2’に変更する。即ち、開度学習処理が行われたエンジン出力Pnから遠ざかるに連れて減少する割合で、エンジン出力Pnに関する開度学習処理の結果が反映される。
【0246】
このように、開度学習処理の対象となるエンジン出力の近傍のエンジン出力に対応する開度動作点を、開度学習処理の結果を反映して変更することによって、開度動作線Sの概略的な形状を維持しつつ開度動作線Sを更新することが可能となる。また、このように、一のエンジン出力に関して行われた開度学習処理によって、他のエンジン出力に関してもある程度正確に開度動作点を更新することが可能となるため効果的である。更に、このように開度動作線Sをある程度の範囲について同時に更新することによって、前述した開度動作線の傾きは緩やかとなり、エンジン900の燃焼状態が不安定になることが防止される。
【0247】
一方、図21は、本実施形態の第2変形例に係る開度動作線の更新態様を示す模式図である。尚、同図において、図20と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0248】
図21において、エンジン出力Pnについて開度学習処理が実行された結果、第1変形例と同様に開度動作点がSnからSn’に変更されたとする。ここで、動作線更新部100dは、開度動作線Sを規定する全ての開度動作点について、従前のEGRバルブ開度EAからxだけ増量させたEGRバルブ開度を規定する開度動作点に変更する。この場合、開度動作線Sは、その形状を保ったまま更新される。即ち、開度動作線Sに対し、一の出力についての開度学習処理に基づいたオフセットが与えられることになる。この場合、開度動作線Sの形状が維持されるため、開度動作線の更新に関する処理負荷が軽減される。
<6:第5実施形態>
<6−1:実施形態の構成>
次に、本発明の第5実施形態に係るハイブリッドシステムについて説明する。ここに、図22は、ハイブリッドシステム13のブロック図である。尚、同図において、図7及び図13と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0249】
図22において、ハイブリッドシステム13は、エンジン200の代わりにエンジン900を備え、カーナビゲーション処理系730を有さず、外気温センサ800を備える点において、図7に示されるハイブリッドシステム11と相違している。
【0250】
外気温センサ800は、ハイブリッド車両20の車外の温度(即ち、外気温)を測定することが可能に構成されたセンサである。外気温センサ800は、制御装置100と電気的に接続されており、外気温を表す外気温センサ800のセンサ出力信号が、制御装置100に送信されることによって、制御装置100では、常に外気温を把握することが可能である。
【0251】
<6−2:実施形態の動作>
ハイブリッド車両20を取り巻く環境条件は刻々と変化する。また、EGRバルブ開度EAと燃費率との相互関係は、係る環境条件に影響を受け易い。従って、前述した開度学習処理の結果、例え燃費率最小開度を規定する開度動作点が設定されても、異なる環境条件下での信頼性は必然的に低くなる。この場合、環境条件が変化する毎に開度学習処理を実行してもよいが、開度学習処理の実行回数が増えることによって動作線更新部100dに加わる負荷が大きくなって好ましくない。そこで、動作線更新部100dは、以下に説明する開度補正処理を実行し、上述した開度学習処理において設定された開度(開度動作点)を環境条件に応じて補正することが可能に構成されている。
【0252】
ここで、図23を参照して、開度補正処理の詳細について説明する。ここに、図23は、開度補正処理のフローチャートである。
【0253】
図23において、動作線更新部100dは、開度学習処理の実行中であるか否かを判別する(ステップH10)。開度学習処理の実行中である場合(ステップH10:YES)、動作線更新部100dは、開度学習処理において燃費率最小開度が確定したか否かを判別する(ステップH11)。開度学習処理は、動作線更新部100dによって実行されるから、係る判別は容易に行われる。
【0254】
燃費率最小開度が確定しない間は(ステップH11:NO)、ステップH11が繰り返され、燃費率最小開度が確定した場合(ステップH11:YES)、その時点における環境条件が記憶部100eに記憶される。ここで、「環境条件が記憶される」とは、水温センサ220、大気圧センサ710、湿度センサ720及び外気温センサ800によって検出される、冷却水温、大気圧、湿度及び外気温が記憶されることを表す。
【0255】
環境条件が記憶されると、動作線更新部100dは、これら環境条件と燃費率最小開度との関係を表す開度補正用マップを生成又は更新する(ステップH13)。
【0256】
ここで図24を参照して、係る開度補正用マップについて説明する。ここに、図24は、開度補正用マップ33の模式図である。
【0257】
図24において、開度補正用マップ33は、縦軸及び横軸に、夫々EGRバルブ開度EA及び外気温を表したマップである。図24において、幾度かの開度学習処理を経て、例えば、外気温Ta、Tb(Tb>Ta)及びTc(Tc>Tb)について、一のエンジン出力Pnに対する燃費率最小開度(夫々EAa、EAb及びEAc)が取得されたとする。この場合、燃費率最小開度は、外気温に対し、外気温が高い程大きくなる変化特性(図示プロファイルETn)を有するものと推定される。
【0258】
動作線更新部100dは、開度補正用マップ33のみならず、他の環境条件、例えば、湿度や大気圧などに相当する複数の開度補正用マップを生成し、記憶部100eの揮発性領域に記憶する。当然ながら、開度学習処理が繰り返される過程で、係る開度補正用マップの信頼性は向上することになる。尚、一の環境条件に対応する開度補正用マップは、複数のエンジン出力に対応する複数の開度補正用マップから構成される。ステップH13に係る処理では、係る開度補正用マップが、最新の開度学習処理の結果を反映して生成又は更新される。開度補正用マップが生成又は更新されると、処理はステップH10に戻される。
【0259】
一方、ステップH10において、開度学習処理の実行中ではない場合(ステップH10:NO)、開度動作線に従って設定される開度動作点によって規定されるEGRバルブ開度EAが、現時点における環境条件に応じて補正される。即ち、開度学習処理の実行中ではない場合、上述した各センサのセンサ出力に基づいて、環境条件が取得される(ステップH14)。環境条件が取得されると、動作線更新部100dは、取得した環境条件に基づいてEGRバルブ開度EAを補正する(ステップH15)。
【0260】
ここで、再び図24を参照して、EGRバルブ開度EAの補正について説明する。図24において、ステップH14で取得された外気温がTd(Tb>Td>Ta)であったとする。この際、推定されるプロファイルETnに従えば、外気温Tdにおける燃費率最小開度は、EAdであると推定される。従って、動作線更新部100dは、開度学習処理を経ることなく、外気温Tdにおける燃費率最小開度をEGRバルブ開度EAdと推定し、開度動作点を、EGRバルブ開度EAdを規定する開度動作点に設定することによって、一のエンジン出力に対応するEGRバルブ開度EAを補正する。即ち、動作線更新部100dは、本発明に係る「変化状態推定手段」及び「補正手段」の夫々一例として機能する。EGRバルブ開度EAが環境条件に応じて補正されると、処理はステップH10に戻され、一連の処理が繰り返される。
【0261】
このように、本実施形態に係る開度補正処理によれば、ハイブリッドシステム13を取り巻く様々な環境条件に応じて、開度動作線に従って設定されるEGRバルブ開度EA(即ち、開度動作点)を補正し、常に、最適なEGRバルブ開度でEGR装置1000を駆動させることが可能となる。従って、一層効率良くエンジン900を動作させることが可能となるのである。この際、環境条件の変化に応じて逐次開度学習処理を実行する必要はないため好適である。
【0262】
尚、開度補正用マップの信頼性は、基本的に開度学習処理が実行される程向上する。その反面、開度学習処理の回数が増えれば、動作線更新部100dの処理負荷は増大する。従って、本実施形態においては、開度学習処理を実行すべきか否かについての判断(即ち、図18ステップG10に相当する処理)は、開度補正用マップの信頼性や、EGRバルブ開度EAに要求される精度などに鑑みてその都度選択的に行われてもよい。例えば、図24に示す開度補正用マップ33を例にと挙げると、外気温Ta、Tb及びTcのうち2点が取得された段階で、プロファイルETnを推定することも可能である。この場合、外気温Ta及びTbのみが取得されている状況で、外気温がTcとなった場合に、開度学習処理を実行せずに、プロファイルETnに基づいて上述した補正を行ってもよい。
【0263】
また、各環境条件について開度補正用マップが生成される場合、各マップから推定される補正値が異なる場合がある。このような場合には、開度補正用マップ各々について何らかの判断基準に基づいて与えられる優先順位に従って、優先順位の高いマップを使用してもよいし、各マップの信頼性に明確な差異がある場合には、信頼性の高いマップを採用してもよいし、或いは、複数のマップに基づいた総合的な判断によって、補正値を推定してもよい。
【0264】
尚、環境条件に応じた補正の態様は、環境条件の変化による燃費率最小開度の変化を幾らかなりとも補正し得る限りにおいて、本実施形態のものに限定されることなく自由に決定されてよい。
【0265】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の内燃機関制御装置及び方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
【図2】図1のハイブリッドシステムにおけるエンジンの半断面システム系統図である。
【図3】図1のハイブリッドシステムにおける制御マップの模式図である。
【図4】図1のハイブリッドシステムにおける動作点学習処理のフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る動作点学習処理のフローチャートである。
【図6】図5の動作点学習処理に係る動作線の模式図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
【図8】図7のハイブリッドシステムにおける基本処理のフローチャートである。
【図9】図8の基本処理における開始条件判定処理のフローチャートである。
【図10】図8の基本処理における定常状態判定処理のフローチャートである。
【図11】図8の基本処理における禁止条件判定処理のフローチャートである。
【図12】本発明の変形例に係る制御マップの模式図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
【図14】図13のハイブリッドシステムにおけるエンジンの半断面システム系統図である。
【図15】EGRバルブ開度を制御するための制御マップの模式図である。
【図16】EGRバルブ開度に対する燃費率の特性を表す模式図である。
【図17】EGRバルブ開度を制御するための制御マップの他の模式図である。
【図18】開度学習処理のフローチャートである。
【図19】EGRバルブ開度を制御するための制御マップの他の模式図である。
【図20】第4実施形態の第1変形例に係る開度動作線の更新態様を示す模式図である。
【図21】第4実施形態の第2変形例に係る開度動作線の更新態様を示す模式図である。
【図22】本発明の第5実施形態に係るハイブリッドシステムのブロック図である。
【図23】開度補正処理のフローチャートである。
【図24】開度補正処理において生成又は更新される開度補正用マップの模式図である。
【符号の説明】
【0267】
10…ハイブリッドシステム、11…ハイブリッドシステム、12…ハイブリッドシステム、13…ハイブリッドシステム、20…ハイブリッド車両、21…伝達機構、22…車輪、30…制御マップ、100…制御装置、200…エンジン、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、300…動力分割機構、400…インバータ、500…バッテリ、510…SOCセンサ、600…車速センサ、800…外気温センサ、900…エンジン、1000…EGR装置、1010…EGRパイプ、1020…EGRバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として内燃機関及びモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定手段と、
該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出手段と、
該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新手段と、
該更新された動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御手段と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記トルク特定手段は、前記モータジェネレータを介して検出される前記内燃機関のトルク反力に基づいて前記トルクを特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記動作線は、外気温、大気圧、及び湿度のうち少なくとも一つを含む前記内燃機関の環境条件並びに前記内燃機関の制御条件のうち少なくとも一方に対応付けられて予め複数種類設定されており、
前記動作線更新手段は、前記複数種類設定された動作線のうち、現時点における前記環境条件又は前記制御条件に対応するものについて前記更新を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記動作線更新手段は、前記動作線の更新の少なくとも一部として、(i)前記座標平面で前記内燃機関の一の出力値について前記トルクと前記回転数との相互関係を表してなる等出力線上において、前記内燃機関の動作点を前記予め設定された動作線上における前記一の出力値に対応する動作点から離散的又は連続的に変化させる第1処理、(ii)前記第1処理において前記動作点を離散的又は連続的に変化させた結果として得られる複数の動作点各々について前記燃料消費率算出手段により算出される燃料消費率各々を比較することにより前記燃料消費率が最小となる燃費率最小動作点を特定する第2処理、及び(iii)前記一の出力値についての等出力線上において、前記一の出力値に対応する動作点を前記燃費率最小動作点に更新する第3処理を含んでなる学習処理を行う
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記一の出力値についての等出力線における前記動作線を挟む2領域のうち、前記燃費率最小動作点の属する領域を推定する推定手段を更に具備し、
前記動作線更新手段は、前記第1処理を行う場合に、前記動作点を、優先的に前記推定された領域に属する動作点に変化させる
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記推定手段は、前記燃費率最小動作点の属する領域を、前記一の出力値についての等出力線とは異なる他の等出力線における、前記燃費率最小動作点と前記動作線との位置関係に基づいて推定する
ことを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項7】
前記動作線更新手段は、前記一の出力値についての等出力線において前記燃費率最小動作点の属する領域が、前記推定された領域とは異なる場合に、前記一及び他の等出力線とは異なる等出力線に対して前記学習処理を行う
ことを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項8】
前記動作線更新手段は、前記ハイブリッド車両が定常的な走行状態にある場合に前記学習処理を行う
ことを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は更に、前記学習処理が行われている期間において、前記内燃機関及び前記モータジェネレータに対し、前記内燃機関に要求される出力値に応じて、前記一の出力値を維持するための出力維持制御を行う
ことを特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は更に、前記モータジェネレータに電源を供給するバッテリの現時点における蓄電状態に基づいて前記出力維持制御が可能か否かを判別すると共に、前記出力維持制御が不可能であると判別した場合に前記出力維持制御を禁止し、
前記動作線更新手段は、前記学習処理を行っている期間中に前記出力維持制御が禁止された場合には前記学習処理を中止する
ことを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項11】
前記動作線更新手段は、外気温、大気圧及び湿度のうち少なくとも一つを含む前記内燃機関の環境条件を規定する指標値が、前回前記一の出力値についての等出力線において前記第3処理が行われた際の前記指標値から所定値以上乖離した場合に、前記一の出力値についての等出力線において再度前記学習処理を行う
ことを特徴とする請求項4から10のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項12】
前記動作線更新手段は、前記内燃機関の制御条件を規定する指標値が、前回前記一の出力値についての等出力線において前記第3処理が行われた際の前記指標値から所定値以上乖離した場合に、前記一の出力値についての等出力線において再度前記学習処理を行う
ことを特徴とする請求項4から11のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項13】
前記内燃機関の制御条件を規定する指標値は、前記内燃機関にノックが生じた場合に前記内燃機関の点火時期を学習制御するノック制御手段における前記点火時期の学習値を含んでなる
ことを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項14】
前記動作線更新手段は、前記一の出力値についての等出力線上において、前記内燃機関におけるスロットル開度又は前記内燃機関のトルクが予め定められた下限値以上となる範囲で前記第1処理を行う
ことを特徴とする請求項4から13のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項15】
前記動作線更新手段は、前記内燃機関において潤滑剤の交換が行われた場合、該交換が行われた時刻からの経過時間が所定値に満たない場合に、(i)前記学習処理を禁止するか、又は(ii)前記トルク特定手段により特定されたトルクを前記経過時間に応じて補正する
ことを特徴とする請求項4から14のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項16】
前記動作線更新手段は、前記内燃機関における冷却水温が予め定められた範囲外である場合には前記学習処理を禁止する
ことを特徴とする請求項4から15のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項17】
前記動作線更新手段は、前記内燃機関におけるノック強度が所定値以上である場合には前記学習処理を禁止する
ことを特徴とする請求項4から16のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項18】
動力源として内燃機関及びモータジェネレータを備えるハイブリッド車両において、前記内燃機関を制御するハイブリッド車両の内燃機関制御方法であって、
前記内燃機関のトルクを特定するトルク特定工程と、
該特定されたトルク、前記内燃機関の回転数及び前記内燃機関における燃料噴射量に基づいて、前記内燃機関における瞬間的な燃料消費率を算出する燃料消費率算出工程と、
該算出された燃料消費率に基づいて、前記トルク及び前記回転数を夫々第1軸及び第2軸とする座標平面上で予め設定された動作線の更新を行う動作線更新工程と、
該更新された動作線に従って前記内燃機関の動作状態を制御する制御工程と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御方法。
【請求項19】
前記内燃機関は、(i)前記内燃機関の排気系の少なくとも一部と前記内燃機関の吸気系の少なくとも一部とを相互に連通させる管路及び(ii)該管路の一部に設けられ、開度に応じて前記管路を流れるガスの流量を調節することが可能なバルブを備え、前記ガスとして前記内燃機関の排気ガスの少なくとも一部を前記管路及びバルブを介して前記吸気系に再循環させる排気ガス再循環手段を具備し、
前記ハイブリッド車両の内燃機関制御装置は、
前記算出される燃料消費率に基づいて前記開度を決定する開度決定手段と、
前記開度が前記決定された開度となるように前記バルブを制御するバルブ制御手段と
を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から17に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項20】
前記内燃機関の出力と前記開度とを各軸に表してなる座標系において前記内燃機関の出力に対する前記開度の軌跡として規定される開度動作線を、前記算出された燃料消費率に基づいて更新する開度動作線更新手段を更に具備し、
前記開度決定手段は、前記更新された開度動作線に従って前記開度を決定する
ことを特徴とする請求項19に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項21】
前記開度動作線更新手段は、前記開度動作線において前記内燃機関の一の出力値に対応する前記開度を、予め設定される更新範囲内で前記算出される燃料消費率が最小となる燃費率最小開度に設定することによって前記開度動作線を更新する
ことを特徴とする請求項20に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項22】
前記開度動作線更新手段は、前記開度動作線の傾きの絶対値が所定値未満に収まるように前記開度動作線を更新する
ことを特徴とする請求項21に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項23】
前記開度動作線更新手段は、前記内燃機関の一の出力値に対し前記燃費率最小開度が設定された場合に、該一の出力値を含む所定範囲内における他の出力値に対応する前記開度を、前記一の出力値に対して設定された燃費率最小開度に基づいて設定することにより前記開度動作線を更新する
ことを特徴とする請求項21又は22に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項24】
気温、大気圧及び湿度のうち少なくとも一つを含む前記内燃機関の環境条件の変化に対する前記燃費率最小開度の変化特性を推定する変化特性推定手段と、
前記環境条件に変化が生じた場合に、前記推定された変化特性に基づいて前記燃費率最小開度を補正する補正手段と
を更に具備する
ことを特徴とする請求項21から23のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−193137(P2006−193137A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259255(P2005−259255)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】