説明

ハイブリッド車両の駆動装置

【課題】動力合成機構と共に駆動装置としての電動機をケース部材に組立てる際、電動機の効率を向上し、且つ作業性を向上する。
【解決手段】半割の浮き輪のような形状の収納半体15,16の内周に沿って電動機4のステータ14を嵌入収納し、収納半体15,16の底板中央部に開設されている円孔に軸受18,19を嵌入し、それらの軸受18,19で、軸部材12のフランジ体13の支持部を回転自在に支持するようにしながら、ステータ14の内側にロータ11を収納し、この収納半体15,16を重合して一つの筐体17とし、それをケース部材1の所定位置に収納し、それら収納半体15,16を貫通するボルト20でケース部材1に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の駆動装置に関するものであり、特にエンジンからの動力と電動機の動力とを合成する動力合成機構と当該電動機とを同一のケース部材内に収納するハイブリッド車両の駆動装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
このようなハイブリッド車両の駆動装置としては、例えば変速機ケースの内部に直接的に電動機を取付けるものがある(例えば特許文献1)。つまり、変速機ケース内に形成された収納部内に電動機のステータを収納し、その内側に電動機のロータを収納すると共に、ロータが取付けられている軸部材を前記変速機ケース内のステータ収納部に取付けられている軸受で回転自在に支持するようにしている。また、この従来装置では、変速機ケース内に、遊星歯車機構からなる動力合成機構やベルト式無段変速機構、減速歯車機構、ディファレンシャルギヤからなる差動歯車機構などを組込んで一体化を図っている。
【特許文献1】特開2000−92612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のハイブリッド車両の駆動装置では、電動機を取付ける変速機ケースに動力合成機構や減速歯車機構、差動歯車機構などを組込むようにしているため、どうしてもケースが大きくなってしまい、例えば電動機のロータやステータの取付位置における加工精度が低下し易い。このような加工精度の低い取付位置にロータやステータを取付けても、電動機の同軸度が低下してしまい、効率低下につながる。また、大きなケースに取付けられた状態の電動機の性能テストを行うことも困難で、作業性も極めてよくない。また、性能テストの作業性向上のために電動機をジグで支持すると、電動機の同軸状態が実装状態と異なってしまう。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、電動機自体の同軸度を確保して効率を向上することができると共に、電動機の性能テストなどの作業性を改善することができるハイブリッド車両の駆動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンと、軸部材に取付けられたロータ及びステータを有する電動機とを備え、前記エンジンの動力と電動機の動力とをケース部材内の動力合成機構で合成し、その合成された動力で走行するハイブリッド車両の駆動装置において、重合すると一つの筐体となる二つの収納半体の夫々に軸受を取付け、それらの収納半体内に前記電動機のステータを収納すると共に、そのステータの内側に前記ロータを収納し且つ夫々の収納半体に取付けられた軸受で前記ロータの軸部材を回転自在に支持し、二つの収納半体を重合した状態で、それらの収納半体からなる筐体を前記ケース部材内に収納固定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
而して、本発明のハイブリッド車両の駆動装置によれば、重合すると一つの筐体となる二つの収納半体の夫々に軸受を取付け、それらの収納半体内に電動機のステータを収納すると共に、そのステータの内側に電動機のロータを収納し且つ夫々の収納半体に取付けられた軸受でロータの軸部材を回転自在に支持し、二つの収納半体を重合した状態で、それらの収納半体からなる筐体を前記ケース部材内に収納固定したことにより、収納半体内に収納するのは電動機のステータ及びロータだけでよく、それら収納半体の加工精度を向上することができるので、電動機の同軸度が確保され、これにより効率を向上することができると共に、収納半体からなる筐体内に電動機のステータ及びロータが収納されている状態で、電動機の性能テストを行うことができるので、その作業性も改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のハイブリッド車両の駆動装置のうち、エンジンと変速機との間に介装され、内装する電動機の動力とエンジンからの動力とを合成して出力する駆動装置である。この駆動装置は、例えば特開2001−113969号公報に記載される電気式トルクコンバータと同様にして使用される。即ち、図1中の符号1は、ケース部材であり、このケース部材1内には、エンジン側から、ダンパ2、電動機4、遊星歯車機構6で構成される動力合成機構、油圧クラッチ7の順に配設される。なお、前記電動機4は、トルクと電流の方向を制御することによって、発電機としても作用する。また、エンジンに接続されるダンパ2及び前記電動機4及び遊星歯車機構6には主軸8が挿通されており、前記油圧クラッチ7の締結状態を制御することにより、前記主軸8に電動機4の動力を出力したり、主軸8からエンジンの動力を入力したりすることができるように構成されている。ちなみに、図中の符号10は、変速機の入力軸であり、符号9は、変速機入力軸10の回転方向を規制するワンウエイクラッチである。
【0007】
前記電動機4のロータ11の軸部材12内には、前記主軸8が回転自在に挿通されている。この軸部材12は、前記遊星歯車機構6のサンギヤ31と、その円筒部にスプライン結合されたフランジ体13とから構成され、このフランジ体13の外周にロータ11が取付けられている。一方、電動機4のステータ14は、二つの収納半体15,16内に収納されている。この収納半体15,16は、互いに重合させることにより一つの筐体17を構成するものであり、夫々の収納半体15,16は、半割の浮き輪のような形状をしている。そして、これら収納半体15,16の内周に沿って電動機4のステータ14が嵌入収納される。そして、収納半体15,16の底板中央部に開設されている円孔に軸受18,19を嵌入し、それらの軸受18,19で、前記軸部材12のフランジ体13の支持部を回転自在に支持するようにしながら、前記ステータ14の内側にロータ11を収納する。この収納半体15,16を重合して一つの筐体17とし、それをケース部材1の所定位置に収納し、それら収納半体15,16を貫通するボルト20でケース部材1に固定する。
【0008】
従って、この実施形態のハイブリッド車両の駆動装置によれば、重合すると一つの筐体17となる二つの収納半体15,16の夫々に軸受18,19を取付け、それらの収納半体15,16内に電動機4のステータ14を収納すると共に、そのステータ14の内側に電動機4のロータ11を収納し且つ夫々の収納半体15,16に取付けられた軸受18,19で前記ロータ11の軸部材12を回転自在に支持し、二つの収納半体15,16を重合した状態で、それらの収納半体15,16からなる筐体17をケース部材1内にボルト20で収納固定したことにより、収納半体15,16内に収納するのは電動機4のステータ14及びロータ11だけでよく、それら収納半体15,16の加工精度を向上することができるので、電動機4の同軸度が確保され、これにより効率を向上することができると共に、収納半体15,16からなる筐体17内に電動機4のステータ14及びロータ11が収納されている状態で、電動機4の性能テストを行うことができるので、その作業性も改善することができる(請求項1に係る発明の効果)。
【0009】
また、本実施形態のハイブリッド車両の駆動装置では、図1に明示するように、一方の収納半体15に取付けられる軸受18の径と、他方の収納半体16に取付けられる軸受19の径とが異なる。具体的には、一方の収納半体15に取付けられる軸受18の径のほうが、他方の収納半体16に取付けられる軸受19の径より小さい。このように、本実施形態のハイブリッド車両の駆動装置では、互いの収納半体15,16に取付けられる軸受18,19の径を異ならせて径方向にずらすことにより、二つの軸受18,19間の距離を短縮することが可能となり、収納半体15,16からなる筐体17に収納される電動機4の軸線方向の長さを短くすることができる(請求項2に係る発明の効果)。
【0010】
また、本実施形態のハイブリッド車両の駆動装置では、図1に示すように、一方の収納半体15の外形部、つまり外周に沿って、その肉内に冷却液を供給する冷却ジャケット21が形成されている。この冷却ジャケット21は、ケース部材1に形成された22に連結され、一方の収納半体15とケース部材1との間にはオイルシール23を介装している。このように、本実施形態のハイブリッド車両の駆動装置では、一方の収納半体15の外形部に冷却液を供給する冷却ジャケット21を形成したことにより、ケース部材に冷却用ジャケットを形成する場合に比べて、冷却効率を向上することができる。特に、収納半体15をボルト20でケース部材1に固定する場合には、電動機4のケース部材1への組付け性を向上すると共に、冷却効率を向上することができる(請求項3に係る発明の効果)。
【0011】
なお、本実施形態では、前記二つの収納半体15,16の下部形状を工夫して、ケース部材1の内部に空間ができないようにしている。これは、エンジンと変速機との間に位置するケース部材1内に、変速機内の作動油が流入しないようにするためである。もし、ケース部材1内に変速機内の作動油が流入してしまうと、変速機側では作動油の量が減少して、例えばポンプの吸い込み効率が低下するとか、ケース部材1内では、作動油によって撹拌抵抗が増大するといった問題が発生する。本実施形態では、ケース部材1内に変速機内の作動油が流入しないようにすることにより、これらの諸問題を回避することができる。また、この問題を回避するためには、例えば樹脂製のダミー部材を予め用意しておき、それをケース部材1と収納半体15,16との間に介装して、両者の隙間をふさぐ方法もある。
【0012】
また、前記実施形態では、収納半体15,16の図示しない位置に複数の貫通孔を形成し、その貫通孔から潤滑油を導入して電動機4を冷却する構造としているが、例えば前記軸受18,19を液密型とし、且つ二つの収納半体15,16間にシール部材を介装することによって、収納半体15,16を重合した筐体17内をドライ空間とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のハイブリッド車両の駆動装置の一実施形態を示す全体構成の断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1はケース部材
2はダンパ
4は電動機
6は遊星歯車機構(動力合成機構)
7は油圧クラッチ
8は主軸
9はワンウエイクラッチ
10は変速機入力軸
11はロータ
12は軸部材
13はフランジ体
14はステータ
15,16は収納半体
17は筐体
18,19は軸受
20はボルト
21は冷却ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、軸部材に取付けられたロータ及びステータを有する電動機とを備え、前記エンジンの動力と電動機の動力とをケース部材内の動力合成機構で合成し、その合成された動力で走行するハイブリッド車両の駆動装置において、重合すると一つの筐体となる二つの収納半体の夫々に軸受を取付け、それらの収納半体内に前記電動機のステータを収納すると共に、そのステータの内側に前記ロータを収納し且つ夫々の収納半体に取付けられた軸受で前記ロータの軸部材を回転自在に支持し、二つの収納半体を重合した状態で、それらの収納半体からなる筐体を前記ケース部材内に収納固定したことを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
前記二つの収納半体の夫々に取付けられる軸受を、互いに径方向にずらして配設したことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
前記二つの収納半体の少なくとも何れか一方の外形部に、冷却液を供給する冷却ジャケットを形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の駆動装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−104765(P2007−104765A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288985(P2005−288985)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】