説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】走行経路に登坂路がある場合に、エンジンで車両を走行させながら電動機で発電を行う発電走行を効率良く行って、走行中の総合的な燃料消費率を良好に維持するようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーションシステム40に予め登録された走行経路に基づき走行経路中の登坂路を判定し、運転者の要求トルクTrと、次に到着が予測される登坂路で電動機6に配分される登坂電動機トルクTmとの和である発電走行トルクTg1をエンジン2が出力可能であると共に、エンジン2が要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg1を出力するときの方が燃料消費率が改善する場合に、当該登坂路に到着する前にエンジン2から発電走行トルクTg1を出力させると共に、発電機として作動する電動機6を駆動するためのトルクを登坂電動機トルクTmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の動力源としてエンジンと電動機とが搭載されたハイブリッド電気自動車のための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、走行用の動力源としてエンジンと電動機とを車両に搭載したハイブリッド電気自動車が開発され実用化されている。
このようなハイブリッド電気自動車では、アクセルペダルの操作量などに基づき運転者の要求トルクが求められ、求められた要求トルクが、ハイブリッド電気自動車の運転状態などに応じて電動機とエンジンとに配分されるようになっている。このとき、要求トルクの一部をエンジンに配分すると共に残部を電動機に配分するだけではなく、要求トルクの全部をエンジン及び電動機のいずれか一方のみに割り当てるような場合もある。
【0003】
また、要求トルクの全部または一部が電動機に割り当てられた場合、電動機に電力を供給するバッテリの充電率が低下していくため、これを補うべく電動機を発電機として作動させ、電動機が発電した電力をバッテリに蓄えるようにしている。このような電動機による発電は、車両を制動する際の回生制動のほか、走行に必要な要求トルクを全てエンジンに割り振った上で、更に発電機として作動する電動機をエンジンで駆動することによって行われる場合もある。以下では、このようにエンジンの駆動トルクで車両を走行させながら、発電機として作動する電動機による発電でバッテリの充電を行うような運転を発電走行モードの運転という。
【0004】
発電走行モードによる運転を可能としたハイブリッド電気自動車は、例えば特許文献1に示されている。特許文献1のハイブリッド電気自動車では、バッテリの充電率が低下したときに、発電走行モードで車両を走行させるようにして、バッテリの充電率が過度に低下するのを防止している。また、電動機の駆動トルクを用いて登坂路を走行しているときには、バッテリからの放電量が増大するため、バッテリの充電率が早く低下するおそれがあるが、特許文献1のハイブリッド電気自動車では、発電走行モードで走行中に登坂路を走行していることを検知すると、充電率の上限値を増大させることにより、できるだけ多くの電力をバッテリに蓄えることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−307995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電走行モードで車両を走行させる場合、車両の走行に必要な駆動トルクに加え、電動機の発電に必要な駆動トルクもエンジンから供給されるため、エンジンの駆動トルクが運転者の要求トルクよりも増大することになる。発電走行モードへの移行に伴ってエンジンの駆動トルクを増大させる場合にエンジンの燃料消費率が改善方向に変化しないと、発電走行によって蓄えた電気エネルギの利用によりエンジンの燃料消費率を改善しようとしても、発電走行時における燃料消費率の悪化により、走行中の総合的な燃料消費率を良好に維持することができなくなる。
【0007】
また、特許文献1のハイブリッド電気自動車のように、登坂路走行中であることを検知してから、発電走行時の電動機による発電量を増大させるようにした場合、実際に登坂路を走行してからでないと、発電走行時におけるエンジンの駆動トルクの増大量を把握することができないため、上述のように発電走行モードへの移行に伴ってエンジンの駆動トルクを増大させる場合にエンジンの燃料消費率が改善方向に変化するか否かが判らない。このため、走行中の総合的な燃料消費率を良好に維持することが一層困難となる。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、走行経路に登坂路がある場合に、エンジンで車両を走行させながら電動機で発電を行う発電走行を効率良く行って、走行中の総合的な燃料消費率を良好に維持するようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置は、走行用の動力源として車両に搭載されたエンジンと、上記車両に搭載され、モータとして作動するときに走行用の動力源となると共に、発電機として作動するときには上記エンジンの駆動トルクを受けて発電を行う電動機と、上記電動機がモータとして作動するときに上記電動機に電力を供給すると共に、上記電動機が発電機として作動するときに上記電動機の発電電力を蓄えるバッテリと、上記車両の走行経路を予め設定するための走行経路設定手段と、上記走行経路設定手段により設定された走行経路における登坂路の有無を判定する登坂路判定手段と、上記車両に対して運転者が要求する要求トルクを求める要求トルク演算手段と、上記エンジンが出力可能な上限駆動トルクと上記要求トルク演算手段が求めた上記要求トルクとの偏差を余裕トルクとして求める余裕トルク演算手段と、上記登坂路判定手段によって判定された登坂路を走行するために必要な登坂駆動トルクを求める登坂駆動トルク演算手段と、上記登坂駆動トルク演算手段が求めた登坂駆動トルクに基づき、上記電動機に配分される駆動トルクとして登坂電動機トルクを求める電動機駆動トルク演算手段と、上記余裕トルク演算手段が求めた上記余裕トルクに基づき、上記要求トルクに上記登坂電動機トルクを加えた発電走行トルクを上記エンジンが出力可能であるか否かを判定する発電走行判定手段と、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能であると上記発電走行判定手段が判定すると、上記エンジンが上記要求トルクを出力するときの第1燃料消費率に対し、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力するときの第2燃料消費率の方が改善方向にあるか否かを判定する燃料消費率判定手段と、上記第2燃料消費率の方が上記第1燃料消費率より改善方向にあると上記燃料消費率判定手段が判定すると、上記車両が上記登坂路判定手段によって判定された登坂路を走行する前の走行中において、上記発電走行トルクを出力するように上記エンジンを制御すると共に、上記電動機を駆動するための駆動トルクが上記登坂電動機トルクとなるように上記電動機を発電機として制御する制御手段とを備えることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、走行経路設定手段により予め設定された走行経路に登坂路があると登坂路判定手段が判定すると、この登坂路を走行するために必要な登坂駆動トルクを登坂駆動トルク演算手段が求め、この登坂駆動トルクに基づき、電動機に配分される駆動トルクとして登坂電動機トルクを電動機駆動トルク演算手段が求める。また、エンジンが出力可能な上限駆動トルクと、要求トルク演算手段が求めた運転者の要求トルクとの偏差を余裕トルク演算手段が余裕トルクとして求める。そして、この余裕トルクに基づき、要求トルクに登坂電動機トルクを加えた発電走行トルクをエンジンが出力可能であると発電走行判定手段が判定すると共に、エンジンが要求トルクを出力するときの第1燃料消費率に対し、エンジンが発電走行トルクを出力するときの第2燃料消費率の方が改善方向にあると燃料消費率判定手段が判定すると、車両が上記登坂路を走行する前の走行中において、制御手段により、発電走行トルクを出力するようにエンジンが制御されると共に、駆動に必要な駆動トルクが登坂電動機トルクとなるように電動機が発電機として制御される。
【0011】
これにより、エンジンが発電走行トルクを出力すると共に、エンジンが出力した発電走行トルクのうちの登坂電動機トルクが、発電機として作動する電動機によって電力に変換される。従って、エンジンが出力した発電走行トルクのうちの残りの駆動トルク、即ち要求トルク分の駆動トルクが車両の走行に用いられる。この結果、予め設定された走行経路に登坂路があると判定した場合には、この登坂路に到達する前の走行状態において、運転者の要求する駆動トルクで車両を走行させながら、発電機として作動する電動機によって得られた電力をバッテリに蓄えることが可能となる。
【0012】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記発電走行判定手段は、上記余裕トルクが上記登坂電動機トルク以上であるときに上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能であると判定する一方、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではないと判定した場合に、上記余裕トルクが予め定められた基準トルク以上であるか否かを更に判定し、上記燃料消費率判定手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルク以上であると上記発電走行判定手段が判定したときに、上記第1燃料消費率に対し、上記エンジンが上記上限駆動トルクを出力するときの第3燃料消費率の方が改善方向にあるか否かを判定し、上記制御手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルク以上であると上記発電走行判定手段が判定すると共に、上記第3燃料消費率の方が上記第1燃料消費率より改善方向にあると上記燃料消費率判定手段が判定すると、上記車両が上記登坂路判定手段によって判定された登坂路を走行する前の走行中において、上記上限駆動トルクを出力するように上記エンジンを制御すると共に、上記電動機を駆動するための駆動トルクが上記余裕トルクとなるように上記電動機を発電機として制御することを特徴とする(請求項2)。
【0013】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力することはできないが、余裕トルクが基準トルク以上であると発電走行判定手段が判定すると共に、第1燃料消費率に対し、エンジンが上限駆動トルクを出力しているときの第3燃料消費率の方が改善方向にあると燃料消費率判定手段が判定すると、車両が上記登坂路を走行する前の走行中において、制御手段により、上限駆動トルクを出力するようにエンジンが制御されると共に、駆動に必要な駆動トルクが余裕トルクとなるように電動機が発電機として制御される。この結果、エンジンが発電走行トルクを出力することはできないが、余裕トルクが基準トルク以上であれば、予測される登坂路に到達する前の走行状態において、運転者の要求する駆動トルクで車両を走行させながら、発電機として作動する電動機によって余裕トルクから変換された電力をバッテリに蓄えることが可能となる。
【0014】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記登坂駆動トルク演算手段は、上記車両の重量と、上記車両の実際の走行速度と、上記登坂路判定手段によって判定された登坂路の勾配とに基づき、上記登坂駆動トルクを求めるようにしてもよい(請求項3)。
【0015】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記制御手段は、上記第1燃料消費率に対し上記第2燃料消費率が改善方向にないと上記燃料消費率判定手段が判定した場合、上記電動機の発電機としての作動を中止させると共に、上記エンジン及び上記電動機が出力する駆動トルクの総和が上記要求トルクとなるように、上記エンジン及び上記電動機を制御することを特徴とする(請求項4)。
【0016】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、要求トルクに登坂電動機トルクを加えた発電走行トルクをエンジンが出力可能であると発電走行判定手段が判定した場合であっても、エンジンが要求トルクを出力しているときの第1燃料消費率に対し、エンジンが発電走行トルクを出力しているときの第2燃料消費率の方が改善方向になければ、制御手段は電動機を発電機として作動させず、エンジン及び電動機が出力する駆動トルクの総和が要求トルクとなるように、エンジン及び電動機を制御する。
【0017】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記制御手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルク以上であると上記発電走行判定手段が判定した場合に、上記第1燃料消費率に対し上記第3燃料消費率が改善方向にないと上記燃料消費率判定手段が判定したときには、上記電動機の発電機としての作動を中止させると共に、上記エンジン及び上記電動機が出力する駆動トルクの総和が上記要求トルクとなるように、上記エンジン及び上記電動機を制御することを特徴とする(請求項5)。
【0018】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力することはできないが、余裕トルクが基準トルク以上であると発電走行判定手段が判定した場合であっても、第1燃料消費率に対し、エンジンが上限駆動トルクを出力しているときの第3燃料消費率の方が改善方向になければ、制御手段は電動機を発電機として作動させず、エンジン及び電動機が出力する駆動トルクの総和が要求トルクとなるように、エンジン及び電動機を制御する。
【0019】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記制御手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルクに満たないと上記発電走行判定手段が判定した場合に、上記電動機の発電機としての作動を中止させると共に、上記エンジン及び上記電動機が出力する駆動トルクの総和が上記要求トルクとなるように、上記エンジン及び上記電動機を制御することを特徴とする(請求項6)。
【0020】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ余裕トルクが基準トルクに満たないと発電走行判定手段が判定すると、制御手段は電動機を発電機として作動させず、エンジン及び電動機が出力する駆動トルクの総和が要求トルクとなるように、エンジン及び電動機を制御する。
【0021】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記走行経路設定手段は、上記車両に搭載されたナビゲーションシステムであってもよい。この場合、上記登坂路判定手段は、上記ナビゲーションシステムに予め登録された上記車両の走行経路に対応して上記ナビゲーションシステムから得た情報に基づき、上記走行経路における登坂路の有無を判定する(請求項7)。
【0022】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記登坂路判定手段は、上記ナビゲーションシステムから得た上記走行経路における標高差が予め設定された基準標高差以上であるときに、上記走行経路に登坂路があると判定するようにしてもよい(請求項8)。
【発明の効果】
【0023】
本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、予め設定された走行経路に登坂路があると判定した場合には、この登坂路に到達する前の走行状態において、運転者の要求する駆動トルクである要求トルクで車両を走行させながら、発電機として作動する電動機によって得られた電力をバッテリに蓄える発電走行を実行することが可能となる。従って、登坂路に達する前に発電走行を行うことによってバッテリに蓄えた電力を登坂路走行時に電動機に供給し、モータとして作動する電動機の駆動トルクを登坂路の走行に用いることで、登坂時におけるエンジンの燃料消費率を抑制することが可能となる。
【0024】
また、このような発電走行は、運転者の要求トルクにその登坂路で電動機が出力する登坂電動機トルクを加えた発電走行トルクをエンジンが出力可能であると共に、要求トルクを出力するときよりも発電走行トルクを出力するときの方が燃料消費率が改善すると判定したときに行われるので、上述のような登坂路走行時の燃料消費率の抑制と相俟って、ハイブリッド電気自動車における走行中の総合的な燃料消費率を良好に維持することが可能となる。
【0025】
更に、発電走行を行う際には、登坂路走行時に電動機に配分される登坂電動機トルクで発電機として作動する電動機を駆動するように電動機が制御されるので、登坂路を走行する際に電動機が発生すると想定される駆動トルクの大小に応じて、適切な電力を登坂路の走行前に確保しておくことが可能となる。従って、登坂路走行の途中でバッテリが完全に放電してしまって、電動機に電力を供給することができなくなるような事態の発生を大幅に抑制することができる。更に、このようにしてバッテリが完全放電状態となる可能性が低下するので、バッテリの寿命も延ばすことが可能となる。
【0026】
また、請求項2のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力することはできないが、余裕トルクが基準トルク以上であれば、要求トルクを出力するときよりも発電走行トルクを出力するときの方が燃料消費率が改善すると判定したときに上述の発電走行が行われるので、予測される登坂路を走行する前に、より多くの電力を予めバッテリに蓄えておくことが可能となる。この結果、ハイブリッド電気自動車における走行中の総合的な燃料消費率をより一層良好に維持することが可能となる。
【0027】
また、請求項4のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力可能である場合でも、エンジンが要求トルクを出力しているときの第1燃料消費率に対し、エンジンが発電走行トルクを出力しているときの第2燃料消費率の方が改善方向になければ、上述した発電走行を行わないようにしているので、発電走行を行うことによってかえって燃料消費率が悪化してしまうような事態を防止することができる。
【0028】
また、請求項5のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力可能である場合でも、エンジンが要求トルクを出力しているときの第1燃料消費率に対し、エンジンが上限駆動トルクを出力しているときの第3燃料消費率の方が改善方向になければ、上述した発電走行を行わないようにしているので、発電走行を行うことによってかえって燃料消費率が悪化してしまうような事態を防止することができる。
【0029】
また、請求項6のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンが発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ余裕トルクが基準トルクに満たない場合には、上述した発電走行が行われないので、エンジンに過大な負荷が加わるのを確実に防止することができる。
【0030】
また、請求項7及び請求項8のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、ナビゲーションシステムに予め登録された車両の走行経路に対応し、ナビゲーションシステムから得た情報に基づき、上記走行経路における登坂路の有無を判定するようにしているので、登坂路の存在を、当該登坂路を実際に走行する前の段階で確実且つ正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されたハイブリッド電気自動車の全体構成図である。
【図2】車両ECUが実行する発電走行制御のフローチャートの一部である。
【図3】車両ECUが実行する発電走行制御のフローチャートの残部である。
【図4】発電走行制御に対応した車両ECUの制御ブロック図である。
【図5】エンジンの駆動トルク、エンジン回転数及び燃料消費率の関係の一例を示すグラフである。
【図6】発電走行制御によるエンジン及び電動機の駆動トルクの変化の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されたハイブリッド電気自動車1の全体構成図である。
ディーゼルエンジンであるエンジン2の出力軸にはクラッチ4の入力軸が連結され、クラッチ4の出力軸には、永久磁石式同期電動機(以下電動機という)6の回転軸を介して自動変速機(以下変速機という)8の入力軸が連結されている。また、変速機8の出力軸は、プロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左の駆動輪16及び右の駆動輪18にそれぞれ連結されている。
【0033】
従って、クラッチ4が接続されているときには、エンジン2の出力軸と電動機6の回転軸の両方が、変速機8を介して左右の駆動輪16,18と機械的に連結可能となり、クラッチ4が切断されているときには電動機6の回転軸のみが変速機8を介して左右の駆動輪16,18と機械的に連結可能となる。
【0034】
電動機6は、バッテリ20に蓄えられた直流電力がインバータ22によって交流電力に変換されて供給されることによりモータとして作動する。電動機6の駆動トルクは、変速機8によって適切な速度に変速された後に左右の駆動輪16,18に伝達される。また、ハイブリッド電気自動車1の減速時には、電動機6が発電機として作動し、ハイブリッド電気自動車1の運動エネルギが変速機8を介し電動機6に伝達されて交流電力に変換される。そして、このとき電動機6が発生する回生制動トルクが変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達される。
このように電動機8が発電機として作動することによって得られた交流電力は、インバータ22によって直流電力に変換された後、バッテリ20に充電され、ハイブリッド電気自動車1の運動エネルギが電気エネルギとして回収されるようになっている。
【0035】
一方、エンジン2の駆動トルクは、クラッチ4が接続されているときに電動機6の回転軸を経由して変速機8に伝達され、適切な速度に変速された後に左右の駆動輪16,18に伝達されるようになっている。従って、エンジン2の駆動トルクが左右の駆動輪16,18に伝達されているときに電動機6がモータとして作動する場合には、エンジン2の駆動トルクと電動機6の駆動トルクとがそれぞれ変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達されることになる。即ち、クラッチ4が接続されているときには、ハイブリッド電気自動車1の駆動のために左右の駆動輪16,18に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン2から供給されると共に、残部が電動機6から供給される。
【0036】
また、バッテリ20の充電率(以下SOCという)が低下してバッテリ20を充電する必要があるときには、電動機6が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて電動機6を駆動することにより発電が行われる。こうして発電された交流電力は、インバータ22によって直流電力に変換された後に、バッテリ20に充電される。なお、エンジン2の駆動力を用いてハイブリッド電気自動車1を走行させながら、上述のようにエンジン2の駆動力の一部を用いて電動機6を駆動して発電を行うことを、以下では発電走行という。
【0037】
車両ECU24は、ハイブリッド電気自動車1やエンジン2の運転状態、及びエンジンECU26、インバータECU28並びにバッテリECU30からの情報などに応じて、クラッチ4の接続・切断制御及び変速機8の変速段切換制御を行うと共に、これらの制御状態やハイブリッド電気自動車1の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン2や電動機6を適切に運転するための統合制御を行う。
そして、このような制御を行うために、車両ECU24には図示しないアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ32のほか、エンジン2の回転数(以下、エンジン回転数という)を検出するエンジン回転数センサ34、ハイブリッド電気自動車1の走行速度を検出する車速センサ36及びハイブリッド電気自動車1の車両重量を検出する車重センサ38などが接続されている。
【0038】
エンジンECU26は、エンジン2の始動・停止制御やアイドル制御、或いは排ガス浄化装置(図示せず)の再生制御など、エンジン2自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU24によって設定されたエンジン2に必要とされるトルクをエンジン2が発生するよう、エンジン2の燃料の噴射量や噴射時期などを制御する。
【0039】
一方、インバータECU28は、車両ECU24によって設定された電動機6が発生すべきトルクに基づきインバータ22を制御することにより、電動機6をモータ作動または発電機作動させて電動機6の運転を制御する。また、電動機6やインバータ22の温度を検出する温度センサ(図示せず)からの出力信号を受けて、電動機6の温度を車両ECU24に送るほか、電動機6やインバータ22の作動状態を監視して、その情報を車両ECU24に送っている。
【0040】
バッテリECU30は、バッテリ20の温度や、バッテリ20の電圧、インバータ22とバッテリ20との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ20のSOCを求めると共に、バッテリ20の作動状態を監視している。そして、求めたSOCやバッテリ20の作動状態を上記検出結果と共に車両ECU24に送っている。
【0041】
本実施形態のハイブリッド電気自動車1には、予め登録された目的地までの走行経路に従い、ハイブリッド電気自動車1を目的地まで案内するナビゲーションシステム40が搭載されている。このナビゲーションシステム40自体は、既に広く用いられているものと同様の機能を有するものであり、現在位置に関する情報を得るためのGPS受信機42、及び目的地までの走行経路を登録するための入力装置44が接続されている。そして、ナビゲーションシステム40は、後述する発電走行制御を行う際に必要となる情報を供給するため、車両ECU24に接続されている。
【0042】
このように構成されたハイブリッド電気自動車1において、ハイブリッド電気自動車1を走行させる際に車両ECU24を中心として行われる制御の概要は以下の通りである。
ハイブリッド電気自動車1が走行しているとき、車両ECU24はアクセル開度センサ32によって検出されたアクセルペダルの踏込量、車速センサ36によって検出された走行速度、及び変速機8で選択されている変速段に基づき、運転者の要求トルクを求める。この要求トルクは、アクセルペダルの踏込量に応じ、エンジン2及び電動機6からなるパワートレーンから出力すべき駆動トルクである。
【0043】
車両ECU24は、予め設定されている配分ルールに従い、ハイブリッド電気自動車1の運転状態に応じて要求トルクをエンジン2と電動機6とに配分し、配分した駆動トルクをエンジンECU26やインバータECU28に指示すると共に、必要に応じて変速機8やクラッチ4を制御する。
なお、ここで用いられる配分ルールは、ハイブリッド電気自動車1の運転状態に応じ、ハイブリッド電気自動車1の運転特性や、エンジン2の燃料消費率及び排ガス特性が可能な限り適正となるように、エンジン2及び電動機6への駆動トルクの配分を定めるものとして予め設定されている。
【0044】
エンジンECU26及びインバータECU28は、車両ECU24が配分した駆動トルクの指令を受けてエンジン2及び電動機6をそれぞれ制御する。そして、エンジン2及び電動機6のそれぞれ駆動トルクが配分された場合は、エンジン2及び電動機6がそれぞれ出力する駆動トルクが変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達される。また、電動機6に駆動トルクが配分されなかった場合は、電動機6から駆動トルクは発生せず、エンジン2のみによって要求トルクが出力される。一方、電動機6にのみ駆動トルクが配分された場合は、クラッチ4が切断された状態で電動機6により要求トルクの出力が行われる。こうしてパワートレーンから出力された駆動トルクが変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達され、ハイブリッド電気自動車1が走行する。
【0045】
なお、発電走行を行う場合、車両ECU24はクラッチ4を接続した状態で電動機6を発電機として作動させるよう、負の駆動トルクを電動機6に配分してインバータECU28に指示すると共に、電動機の駆動に必要な駆動トルクとして、この負の駆動トルクの絶対値に等しい正の駆動トルクを要求トルクに加算した発電走行トルクをエンジン2に配分し、エンジンECU26に指示する。
【0046】
インバータECU28は、車両ECU24からの指示を受け、電動機6を発電機として作動させると共に、電動機6を駆動するためのトルクの大きさが電動機6に配分された負の駆動トルクの絶対値と等しくなるように電動機6を制御する。一方、エンジンECU26は、車両ECU24からの指示を受け、エンジン2の出力する駆動トルクが車両ECU24から指示された発電走行トルクに等しくなるように、エンジン2を制御する。
【0047】
この結果、エンジン2が出力した発電走行トルクに相当する駆動トルクの一部を用い、発電機として作動する電動機6が駆動され、残りの駆動トルクは要求トルクに相当する大きさとなる。この要求トルクに相当する駆動トルクは、変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達され、ハイブリッド電気自動車1が走行する。このとき電動機6で発電された電力は、インバータ22を介して直流電力に変換された後、バッテリ20に供給されてバッテリ20の充電が行われる。
【0048】
このような発電走行において、エンジン2が出力する駆動トルクは、ハイブリッド電気自動車1の走行に必要な駆動トルクに、電動機6の発電に必要な駆動トルクを上乗せしたものとなるため、エンジン2の運転状態によっては所望の駆動トルクをエンジン2から得ることができない場合がある。また、常に発電走行を行うようにすると、バッテリ20の充電状態によってはバッテリ20が過充電となるおそれがあるほか、エンジン2の駆動トルクの増大によってエンジン2の燃料消費率が悪化するおそれもある。そこで、本実施形態では、バッテリ20の充電率が低下した場合と、ハイブリッド電気自動車1が走行する走行経路に登坂路がある場合とのそれぞれにおいて発電走行を行うようにしている。
【0049】
以下では、特に走行経路に登坂路がある場合に発電走行を行うべく、車両ECU24が実行する発電走行制御について、図2乃至図6に基づき詳細に説明する。なお、図2及び図3は車両ECU24が実行する発電走行制御のフローチャートであり、図4は発電走行制御に対応した車両ECU24の制御ブロック図である。また、図5はエンジン2の駆動トルク、エンジン回転数及び燃料消費率の関係の一例を示すグラフであり、図6は発電走行制御によるエンジン2及び電動機6の駆動トルクの変化の一例を示すタイムチャートである。
【0050】
車両ECU24は、入力装置44を用いて目的地までの走行経路がナビゲーションシステム40に登録されると、登録された目的地に到着するまでの間、図2及び図3のフローチャートに従い、所定の制御周期で発電走行制御を実行する。
車両ECU24は、登録された走行経路中に登坂路があるか否かを判定する登坂路判定部(登坂路判定手段)24aを有している。この登坂路判定部24aは、ナビゲーションシステム40に目的地までの走行経路が登録されると、ナビゲーションシステム40に予め記憶されている標高の情報から、登録された走行経路における標高の変化を求め、登録された走行経路における標高差が、予め設定された基準標高差以上であるときに、走行経路中に登坂路があると判定する。
【0051】
車両ECU24は、ナビゲーションシステム40に目的地までの走行経路が登録されると、登坂路判定部24aにおいて、上述のようにして走行経路中の登坂路の有無を判定する。そして、走行経路中に登坂路がある場合、車両ECU24は更に登坂路判定部24aにおいて登坂路の標高差と距離とから勾配を求め、走行経路における登坂路の位置とその勾配とを登坂路判定部24aに記憶させた上で、発電走行制御を開始する。なお、以下では登録された走行経路中に登坂路があると登坂路判定部24aが判定したものとして、発電走行制御の詳細を説明する。
【0052】
発電走行制御を開始すると、車両ECU24はステップS1において、バッテリECU30から得たバッテリ20の充電率SOCが、予め設定した上限充電率H以下であるか否かを判定する。充電率SOCが既に上限充電率Hを上回っている場合、発電走行によって更にバッテリ20を充電すると、バッテリ20が過充電となるおそれがあるので、車両ECU24はステップS14に処理を進め、発電走行を中止してその制御周期を終了する。
次の制御周期で車両ECU24は再びステップS1から処理を行うので、バッテリ20の充電率SOCが上限充電率Hを上回っている間は、発電走行が中止されることになる。従って、発電走行によりバッテリ20が過充電となるような事態が確実に防止される。
【0053】
なお、このようにして発電走行を中止すると、車両ECU24は発電走行制御における電動機6の発電機としての作動を中止する。そして、車両ECU24は別の制御により、前述したように予め設定されている配分ルールに従い、総和が運転者の要求する要求トルクとなるように、エンジン2及び電動機6に駆動トルクを配分し、エンジン2及び電動機6を制御する。
【0054】
ステップS1においてバッテリ20の充電率SOCが上限充電率H以下であると判定すると、車両ECU24はステップS2に処理を進め、ナビゲーションシステム40からハイブリッド電気自動車1の現在位置の情報を取得し、登坂路判定部24aに記憶させる。
次のステップS3に処理を進めると、車両ECU24は、ステップS2で取得して記憶したハイブリッド電気自動車1の現在位置に基づき、次に到着が予測される登坂路よりも前の走行経路を走行しているか否かを登坂路判定部24aにより判定する。そして、既にこの登坂路に達している場合、車両ECU24はステップS3の判定によって処理をステップS14に進め、発電走行を中止してその制御周期を終了する。
【0055】
次の制御周期で車両ECU24は、再びステップS1から処理を行い、バッテリ20の充電率SOCが上限充電率H以下であれば、ステップS2でナビゲーションシステム40からハイブリッド電気自動車1の現在位置の情報を取得して、登坂路判定部24aに記憶している現在位置を更新する。そして車両ECU24は、次のステップS3において登坂路判定部24aにより上述のような判定を行う。従って、ハイブリッド電気自動車1が既に登坂路を走行している場合には、バッテリ20の充電率SOCが上限充電率H以下であっても、登坂路の走行を完了するまでの間、ステップS14に処理が進められ、発電走行は行われないことになる。
【0056】
なお、このようにして発電走行を中止した場合も、車両ECU24は発電走行制御における電動機6の発電機としての作動を中止する。そして、車両ECU24は別の制御により、前述したように予め設定されている配分ルールに従い、総和が運転者の要求する要求トルクとなるように、エンジン2及び電動機6に駆動トルクを配分し、エンジン2及び電動機6を制御する。
【0057】
一方、ステップS3において、次に到着が予測される登坂路よりも前の走行経路を走行していると登坂路判定部24aによって判定すると、車両ECU24はステップS4に処理を進め、登坂駆動トルク演算部(登坂駆動トルク演算手段)24bを用い、次に到着が予測される登坂路を走行するために必要な登坂駆動トルクTcを求める。即ち、登坂駆動トルク演算部24bは、現在の走行速度で登坂路を走行するものと想定し、車速センサ36が検出した走行速度V、車重センサ38が検出したハイブリッド電気自動車1の車両重量W、及び登坂路判定部24aから得た次に到着が予測される登坂路の傾斜を取得し、これらの情報を用いて登坂駆動トルクTcを演算する。
【0058】
次のステップS5に処理を進めると、車両ECU24は、ステップS4で登坂駆動トルク演算部24bが求めた登坂駆動トルクTcを用い、電動機駆動トルク設定部(電動機駆動トルク演算手段)24cにおいて、次に到着が予測される登坂路を走行する際に電動機6に配分される駆動トルクとして登坂電動機トルクTmを求める。前述したように、ハイブリッド電気自動車1の走行に必要な駆動トルクが定まると、予め設定されている配分ルールに従ってエンジン2及び電動機6に駆動トルクが配分されるようになっており、ここでも電動機駆動トルク設定部24cが、この配分ルールに従い、登坂駆動トルク演算部24bによって求められた登坂駆動トルクTcから、電動機6に配分される登坂電動機トルクTmを設定する。従って、この登坂電動機トルクTmは、次に到着が予測される登坂路を登坂する際に電動機6に配分が見込まれる駆動トルクということになる。
【0059】
次のステップS6で車両ECU24は、要求トルク演算部(要求トルク演算手段)24dを用い、ハイブリッド電気自動車1に対し運転者が要求する要求トルクTrを求める。即ち、要求トルク演算部24dは、車速センサ36が検出した走行速度V、アクセル開度センサ32が検出したアクセルペダルの踏込量θ、及び変速機8で選択されている変速段Gに基づき、予め設定されている要求トルクマップから要求トルクTrを求める。
【0060】
次に車両ECU24は、ステップS7において余裕トルク演算部(余裕トルク演算手段)24eを用い、エンジン2が出力可能な上限トルクTuと、要求トルク演算部24dで求めた要求トルクTrとの偏差を余裕トルクTsとして求める。余裕トルク演算部24eは、図5のグラフに示すようにエンジン回転数に応じて変化する上限駆動トルクTuを予め記憶しており、エンジン回転数センサ34が検出したエンジン回転数Neに基づき、そのエンジン回転数Neでエンジン2が出力可能な上限駆動トルクTuを求める。そして、余裕トルク演算部24eは、この上限駆動トルクTuから要求トルクTrを減じることによって余裕トルクTsを求める。
【0061】
更に次のステップS8に処理を進めると、車両ECU24は発電走行判定部(発電走行判定手段)24fを用い、ステップS7で求めた余裕トルクTsが予め定められた正の値を有する基準トルクΔT以上であるか否かを判定する。上述したように、余裕トルクTsは上限駆動トルクTuと要求トルクTrとの偏差であって、この基準トルクΔTは、要求トルクTrと上限駆動トルクTuとを実質的に同等と見なしてもよいものとしてその大きさが予め設定されている。従って、基準トルクΔTは正の値とせずに0としてもよい。
【0062】
ステップS8において、余裕トルクTsが基準トルクΔTに満たないと発電走行判定部24fが判定した場合、車両ECU24は処理をステップS14に進め、発電走行を中止する。余裕トルクTsが基準トルクΔTに満たない場合、要求トルクTrと上限駆動トルクTuとが実質的に同等と見なしてもよいか、もしくは要求トルクTrの方が上限駆動トルクTuより大きいことになる。従って、このような場合にはエンジン2に駆動トルクを更に増大する余裕がないので、ステップS14に処理を進めて発電走行が中止されるようにして、エンジン2に過大な負荷が加わるのを確実に防止するようにしている。
【0063】
なお、このようにして発電走行を中止した場合も、車両ECU24は発電走行制御における電動機6の発電機としての作動を中止する。そして、車両ECU24は別の制御により、前述したように予め設定されている配分ルールに従い、総和が運転者の要求する要求トルクとなるように、エンジン2及び電動機6に駆動トルクを配分し、エンジン2及び電動機6を制御する。
【0064】
一方、ステップS8において、余裕トルクTsが基準トルクΔT以上であると発電走行判定部24fが判定した場合、車両ECU24は処理をステップS9に進める。ステップS9で車両ECU24は、ステップS7において求めた余裕トルクTsが、ステップS5において求めた登坂電動機トルクTm以上であるか否かを、発電走行判定部24fによって判定する。
そして、余裕トルクTsが登坂発電機トルクTm以上である場合、車両ECU24は処理をステップS9からステップS10に進め、燃料消費率判定部(燃料消費率判定手段)24gにおいて、要求トルクTrに登坂発電機トルクTmを加算することにより、発電走行トルクTg1を求める。
一方、余裕トルクTsが登坂発電機トルクTmより小さい場合、車両ECU24は処理をステップS9からステップS11に進め、燃料消費率判定部(燃料消費率判定手段)24gにおいて、要求トルクTrに余裕トルクTsを加算した駆動トルク、即ち上限駆動トルクTuを発電走行トルクTg2として設定する。
【0065】
車両ECU24は、こうしてステップS10またはステップS11の処理を終えると、ステップS12に処理を進め、エンジン2から要求トルクTrを出力させたときの燃料消費率(以下、第1燃料消費率という)に対し、ステップS10で求めた発電走行トルクTg1をエンジン2から出力させたときの燃料消費率(以下、第2燃料消費率という)、またはステップS11で求めた発電走行トルクTg2、即ち上限駆動トルクTuをエンジン2から出力させたときの燃料消費率(以下、第3燃料消費率という)が改善方向にあるか否かを、燃料消費率判定部24gにおいて判定する。
【0066】
前述したように、エンジン2が出力可能な上限駆動トルクとエンジン回転数との間には図5のグラフに例示するような関係があり、図中に一点鎖線で示す曲線は、エンジン2の駆動トルクとエンジン回転数との関係において燃料消費率が等しくなる等燃料消費率線となっている。そして、駆動トルクとエンジン回転数とによって定まる動作点が、図中に矢印で示す方向に移動するほど燃料消費率が増大するように、即ち燃料消費率が悪化するようになっている。本実施形態では、このような駆動トルクとエンジン回転数との関係において、燃料消費率が予め定めた基準燃料消費率よりも良好となる領域として、網掛けした低燃料消費率領域Rを予め設定し、燃料消費率判定部24gに記憶している。
【0067】
上述のようにステップS9からステップS10に処理が進められて発電走行トルクTg1が設定された場合、ステップS12において燃料消費率判定部24gは、エンジン回転数センサ34が検出したエンジン回転数Ne1と要求トルクTrとによって図5のグラフ中に定まる動作点P1と、このエンジン回転数Ne1と発電走行トルクTg1とによって図5のグラフ中に定まる動作点P2とを求める。そして、燃料消費率判定部24gは、動作点P2が動作点P1から低燃料消費率領域Rに向けて燃料消費率を改善する方向にある場合に、ステップS12において第2燃料消費率が第1燃料消費率に対して改善方向にあると判定する。
【0068】
また、上述のようにステップS9からステップS11に処理が進められて発電走行トルクTg2が設定された場合も、ステップS12において燃料消費率判定部24gは同様の方法で、第3燃料消費率が第1燃料消費率に対して改善方向にあるか否かの判定を行う。即ち、この場合には動作点P2がエンジン回転数センサ34が検出したエンジン回転数Ne1と発電走行トルクTg2とによって定められ、発電走行トルクTg2は上限駆動トルクTuであるから、動作点P2は図5中に上限駆動トルクを示す実線の曲線上にあることになる。そして、燃料消費率判定部24gは、この動作点P2が動作点P1から低燃料消費率領域Rに向けて燃料消費率が改善する方向にある場合に、ステップS12において第3燃料消費率が第1燃料消費率に対して改善方向にあると判定する。
【0069】
こうしてステップS12において、第1燃料消費率に対し第2または第3燃料消費率が改善方向にあると判定すると、車両ECU24は処理をステップS13に進め、制御部24hにより発電走行を実行する。即ち、上述のようにステップS9からステップS10に処理が進められて発電走行トルクTg1が設定された場合、制御部24hはクラッチ4を接続状態に制御した上で、発電走行トルクTg1をエンジン2から出力するようにエンジンECU26に指示すると共に、登坂発電機トルクTmと同じ絶対値を有する負の駆動トルクである発電トルク(−Tm)をインバータECU28に指示する。
【0070】
エンジンECU26は、車両ECU24の制御部24hからの指示を受け、エンジン2の出力する駆動トルクが発電走行トルクTg1に等しくなるように、エンジン2を制御する。一方、インバータECU28は、車両ECU24の制御部24hからの指示を受け、電動機6を発電機として作動させると共に、電動機6を駆動するためのトルクの大きさが発電トルク(−Tm)の絶対値、即ち登坂発電機トルクTmと等しくなるように電動機6を制御する。
【0071】
この結果、エンジン2が出力した発電走行トルクTg1のうち、登坂発電機トルクTmが電動機6の駆動に用いられ、残りの要求トルクTrが変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達される。発電機として作動する電動機6によって登坂発電機トルクTmに相当する機械エネルギから変換された電力は、インバータ22を介して直流電力に変換された後、バッテリ20に供給され、バッテリ20が充電される。
【0072】
このようにして発電走行を行っているときのエンジン2の駆動トルク(エンジントルク)と、電動機6の駆動トルク(電動機トルク)の変化の一例を図6のタイムチャートに示している。時間t0において平坦路での走行が開始され、上述のようにしてステップS13の処理によって発電走行が行われると、エンジン2が出力する駆動トルクは要求トルクTrに登坂電動機トルクTmを加算した発電走行トルクTg1となる。このとき、電動機6は発電機として作動し、登坂電動機トルクTmで駆動される。
【0073】
また、上述のようにステップS9からステップS11に処理が進められて発電走行トルクTg2が設定された場合も、制御部24hはクラッチ4を接続状態に制御した上で、発電走行トルクTg2、即ち上限駆動トルクTuをエンジン2から出力するようにエンジンECU26に指示すると共に、余裕トルクTsと同じ絶対値を有する負の駆動トルクである発電トルク(−Ts)をインバータECU28に指示する。
【0074】
エンジンECU26は、車両ECU24の制御部24hからの指示を受け、エンジン2の出力する駆動トルクが発電走行トルクTg2、即ち上限駆動トルクTuに等しくなるように、エンジン2を制御する。一方、インバータECU28は、車両ECU24の制御部24hからの指示を受け、電動機6を発電機として作動させると共に、電動機6を駆動するためのトルクの大きさが発電トルク(−Ts)の絶対値、即ち余裕トルクTsと等しくなるように電動機6を制御する。
【0075】
この結果、エンジン2が出力した発電走行トルクTg2のうち、余裕トルクTsが電動機6の駆動に用いられ、残りの要求トルクTrが変速機8を介して左右の駆動輪16,18に伝達される。発電機として作動する電動機6によって余裕トルクTsに相当する機械エネルギから変換された電力は、インバータ22を介して直流電力に変換された後、バッテリ20に供給され、バッテリ20が充電される。
【0076】
こうしてステップS13で発電走行を実行すると、車両ECU24はその制御周期を終了し、次の制御周期で再びステップS1から同様に処理を開始する。従って、バッテリ20の充電率SOCが上限充電率H以下であれば、次に到着が予測される登坂路に達するまでの間は同様の処理が行われ、ステップS12に処理が進んで上述のように燃料消費率が改善方向にあると判定する限りは発電走行が行われることになる。
【0077】
一方、ステップS12において、第1燃料消費率に対し、第2または第3燃料消費率が改善方向にないと燃料消費率判定部24gが判定した場合、車両ECU24は処理をステップS14に進め、上述のような発電走行を中止する。即ち、上述のように発電走行トルクTg1またはTg2に対応する図5中の動作点P2が、要求トルクTrに対応する図5中の動作点P1から低燃料消費率領域Rに向けて燃料消費率が改善する方向にない場合には、上述のようにして発電走行を行うとエンジン2の燃料消費率が悪化してしまうため、ステップS14の処理により発電走行を中止している。これにより、発電走行に伴うエンジン2の燃料消費率の悪化が生じないようにしている。
【0078】
なお、このようにして発電走行を中止した場合も、車両ECU24は発電走行制御における電動機6の発電機としての作動を中止する。そして、車両ECU24は別の制御により、前述したように予め設定されている配分ルールに従い、総和が運転者の要求する要求トルクとなるように、エンジン2及び電動機6に駆動トルクを配分し、エンジン2及び電動機6を制御する。
【0079】
また、バッテリ20の充電率SOCが上限充電率H以下であって、ステップS12において燃料消費率が改善方向にあると判定して発電走行を行っている場合でも、次に到着が予測されていた登坂路に実際に到着したことをステップS2において判定したときには、車両ECU24は処理をステップS14に進めて発電走行を中止する。
【0080】
この場合も、車両ECU24は発電走行制御における電動機6の発電機としての作動を中止する。そして、車両ECU24は別の制御により、前述したように予め設定されている配分ルールに従い、総和が運転者の要求する要求トルクとなるように、エンジン2及び電動機6に駆動トルクを配分し、エンジン2及び電動機6を制御する。従って、図6のタイムチャートに示すように、時間t1で登坂路に到着したとすると、その後は総和が要求トルクの大きさとなるようにエンジン2及び電動機6に駆動トルクが配分されて、ハイブリッド電気自動車1が登坂路を走行していく。そして、登坂路の走行を完了した後に次の登坂路がある場合には、次の登坂路に関して同様の発電走行制御が行われる。
【0081】
また、登坂路に到着する前であって上述のようにして発電走行を実行しているときに、電動機6からの電力供給によってバッテリ20の充電率SOCが上昇し、ステップS1において充電率が上限充電率Hを上回った判定した場合にも、前述したように車両ECU24は処理をステップS14に進めて発電走行を中止し、バッテリ20が過充電にならないようにしている。
【0082】
このようにして発電走行を中止した場合も、車両ECU24は発電走行制御における電動機6の発電機としての作動を中止する。そして、車両ECU24は別の制御により、前述したように予め設定されている配分ルールに従い、総和が運転者の要求する要求トルクとなるように、エンジン2及び電動機6に駆動トルクを配分し、エンジン2及び電動機6を制御する。
【0083】
以上のようにして車両ECU24が発電走行制御を実行することにより、予めナビゲーションシステム40に登録された走行経路に登坂路があると判定した場合には、この登坂路に到達する前の走行状態において、エンジン2の駆動トルクを用い、運転者の要求トルクTrでハイブリッド電気自動車1を走行させながら、発電機として作動する電動機6によって得られた電力をバッテリに蓄える発電走行を実行することが可能となる。従って、登坂路に達する前に発電走行を行うことによってバッテリに蓄えた電力を、登坂路走行時に電動機6に供給し、モータとして作動する電動機6の駆動トルクを登坂路の走行に用いることで、登坂時におけるエンジン2の燃料消費率を抑制することが可能となる。
【0084】
また、このような発電走行は、運転者の要求トルクTrにその登坂路で電動機6に配分される登坂電動機トルクTmを加えた発電走行トルクTg1をエンジン2が出力可能であると共に、エンジン2が要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg1を出力するときの方が燃料消費率が改善する場合、または余裕トルクTsが基準トルクΔT以上であると共に、エンジン2が要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg2を出力するときの方が燃料消費率が改善する場合に行われるので、上述のような登坂路走行時の燃料消費率の抑制と相俟って、ハイブリッド電気自動車1における走行中の総合的な燃料消費率を抑制して良好に維持することが可能となる。
【0085】
更に、発電走行の際に発電走行トルクTg1をエンジン2が出力可能である場合は、登坂路走行時に電動機6に配分される登坂電動機トルクTmに相当する機械エネルギを電力に変換するように電動機6が制御されるので、実際に登坂路を走行する際に電動機6が発生する駆動トルクの大小に応じて、適切な電力を登坂路の走行前に確保しておくことが可能となる。従って、登坂路走行中にバッテリ20が完全に放電してしまって、電動機6に電力を供給することができなくなるような事態の発生を大幅に抑制することができる。更に、バッテリ20が完全放電状態となる可能性が低下するので、バッテリ20の寿命も延ばすことが可能となる。
【0086】
また、上述のように、エンジン2が要求トルクTrに登坂電動機トルクTmを加えた発電走行トルクTg1を出力することはできない場合であっても、余裕トルクTrが基準トルクΔT以上であれば、エンジン2が要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg2を出力するときの方が燃料消費率が改善すると判定したときに発電走行が行われるので、エンジン2が発電走行トルクTg1を出力可能な場合にのみ発電走行を行うものに比べ、より多くの電力を予めバッテリ20に蓄えておくことが可能となる。この結果、ハイブリッド電気自動車1における走行中の総合的な燃料消費率をより一層良好に維持することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、ナビゲーションシステム40に予め登録された走行経路に対応し、ナビゲーションシステム40から得た情報に基づき、上記走行経路における登坂路の有無を判定するようにしているので、登坂路の存在を、当該登坂路を実際に走行する前の段階で確実に把握することができる。
なお、ハイブリッド電気自動車1にナビゲーションシステム40が搭載されていない場合には、例えば運転者が入力装置44などを用い、走行経路や登坂路の位置及び傾斜を車両ECU24に事前に登録し、GPS受信機42を用いて取得した現在位置に基づき、同様の発電走行制御を行うようにしてもよい。
【0088】
以上で本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の制御装置についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、要求トルクTrに次の登坂路で電動機6に配分される登坂電動機トルクTmを加えた発電走行トルクTg1をエンジン2が出力可能であると共に、要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg1を出力するときの方が燃料消費率が改善する場合に加え、余裕トルクTsが基準トルクΔT以上であると共に、要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg2を出力するときの方が燃料消費率が改善する場合に発電走行を行うようにした。しかしながら、発電走行トルクTg1をエンジン2が出力可能であると共に、要求トルクTrを出力するときよりも発電走行トルクTg1を出力するときの方が燃料消費率が改善する場合にのみ発電走行を行うようにしてもよい。このようにすることで、登坂路に到達する前に発電走行で確保可能な電力量は減少するものの、発電走行が行われる頻度を減らすことができる。
【0089】
また、上記実施形態の説明では、予め登録された走行経路中に登坂路がある場合に行う発電走行について詳細に説明したが、上記実施形態の説明で述べたように、この他にも、例えばバッテリ20の充電率が低下してきた場合など登坂路の有無に関わりなく、別の条件が成立したときに発電走行を行うことも可能であり、このような登坂路とは関わりなく行う発電走行については、既に知られている様々な形態のものを採用することができる。
【0090】
また、上記実施形態では、図3に示すフローチャートのステップS12で燃料消費率が改善方向にあるか否かの判定を行う際、エンジン回転数センサ34が検出したエンジン回転数Ne1と要求トルクTrとによって図5のグラフ中に定まる動作点P1と、このエンジン回転数Ne1と発電走行トルクTg1またはTg2とによって図5のグラフ中に定まる動作点P2とを求め、動作点P1から低燃料消費率領域Rに向けて燃料消費率が改善する方向に動作点P2がある場合に、燃料消費率が改善方向にあると判定するようにした。しかしながらこれに代えて、動作点P2が図5中の低燃料消費率領域R内にある場合に、燃料消費率が改善方向にあると判定するようにしてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、発電走行制御を行っているときにバッテリ20の充電率SOCが上限充電率H以下であるときには、その後の演算処理で前述したような実行条件が成立したときに発電走行を行い、充電率SOCが上限充電率Hを上回ると発電走行を中止するようにした。しかしながら、これに代えて、上限充電率H及び上限充電率Hより小さい値に設定された下限充電率Lをバッテリ20の充電率に関する判定値として予め設定し、発電走行制御を行っているときにバッテリ20の充電率SOCが下限充電率L以下になると、その後の演算処理で前述したような実行条件が成立したときに発電走行を行い、充電率SOCが上限充電率Hを上回ると発電走行を中止するようにしてもよい。
【0092】
なお、上記実施形態では、エンジン2の出力側に配設されたクラッチ4と変速機8との間に電動機6を配設するようにしたが、エンジン2と電動機6との位置関係はこれに限定されるものではなく、エンジン2及び電動機6をそれぞれハイブリッド電気自動車1の走行のための動力源として使用可能であると共に、発電機として作動する電動機6をエンジン2より駆動可能であれば、どのようなものであっても本発明を適用可能である。
また、上記実施形態では、エンジン2をディーゼルエンジン、電動機6を永久磁石式同期電動機としたが、エンジン2及び電動機6の形式はこれに限定されるものではなく、様々な形式のものを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 ハイブリッド電気自動車
2 エンジン
6 電動機
20 バッテリ
24 車両ECU
24a 登坂路判定部(登坂路判定手段)
24b 登坂駆動トルク演算部(登坂駆動トルク演算手段)
24c 電動機駆動トルク設定部(電動機駆動トルク演算手段)
24d 要求トルク演算部(要求トルク演算手段)
24e 余裕トルク演算部(余裕トルク演算手段)
24f 発電走行判定部(発電走行判定手段)
24g 燃料消費率判定部(燃料消費率判定手段)
24h 制御部(制御手段)
40 ナビゲーションシステム(走行経路設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力源として車両に搭載されたエンジンと、
上記車両に搭載され、モータとして作動するときに走行用の動力源となると共に、発電機として作動するときには上記エンジンの駆動トルクを受けて発電を行う電動機と、
上記電動機がモータとして作動するときに上記電動機に電力を供給すると共に、上記電動機が発電機として作動するときに上記電動機の発電電力を蓄えるバッテリと、
上記車両の走行経路を予め設定するための走行経路設定手段と、
上記走行経路設定手段により設定された走行経路における登坂路の有無を判定する登坂路判定手段と、
上記車両に対して運転者が要求する要求トルクを求める要求トルク演算手段と、
上記エンジンが出力可能な上限駆動トルクと上記要求トルク演算手段が求めた上記要求トルクとの偏差を余裕トルクとして求める余裕トルク演算手段と、
上記登坂路判定手段によって判定された登坂路を走行するために必要な登坂駆動トルクを求める登坂駆動トルク演算手段と、
上記登坂駆動トルク演算手段が求めた登坂駆動トルクに基づき、上記電動機に配分される駆動トルクとして登坂電動機トルクを求める電動機駆動トルク演算手段と、
上記余裕トルク演算手段が求めた上記余裕トルクに基づき、上記要求トルクに上記登坂電動機トルクを加えた発電走行トルクを上記エンジンが出力可能であるか否かを判定する発電走行判定手段と、
上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能であると上記発電走行判定手段が判定すると、上記エンジンが上記要求トルクを出力するときの第1燃料消費率に対し、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力するときの第2燃料消費率の方が改善方向にあるか否かを判定する燃料消費率判定手段と、
上記第2燃料消費率の方が上記第1燃料消費率より改善方向にあると上記燃料消費率判定手段が判定すると、上記車両が上記登坂路判定手段によって判定された登坂路を走行する前の走行中において、上記発電走行トルクを出力するように上記エンジンを制御すると共に、上記電動機を駆動するための駆動トルクが上記登坂電動機トルクとなるように上記電動機を発電機として制御する制御手段と
を備えることを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
上記発電走行判定手段は、上記余裕トルクが上記登坂電動機トルク以上であるときに上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能であると判定する一方、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではないと判定した場合に、上記余裕トルクが予め定められた基準トルク以上であるか否かを更に判定し、
上記燃料消費率判定手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルク以上であると上記発電走行判定手段が判定したときに、上記第1燃料消費率に対し、上記エンジンが上記上限駆動トルクを出力するときの第3燃料消費率の方が改善方向にあるか否かを判定し、
上記制御手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルク以上であると上記発電走行判定手段が判定すると共に、上記第3燃料消費率の方が上記第1燃料消費率より改善方向にあると上記燃料消費率判定手段が判定すると、上記車両が上記登坂路判定手段によって判定された登坂路を走行する前の走行中において、上記上限駆動トルクを出力するように上記エンジンを制御すると共に、上記電動機を駆動するための駆動トルクが上記余裕トルクとなるように上記電動機を発電機として制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
上記登坂駆動トルク演算手段は、上記車両の重量と、上記車両の実際の走行速度と、上記登坂路判定手段によって判定された登坂路の勾配とに基づき、上記登坂駆動トルクを求めることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
上記制御手段は、上記第1燃料消費率に対し上記第2燃料消費率が改善方向にないと上記燃料消費率判定手段が判定した場合、上記電動機の発電機としての作動を中止させると共に、上記エンジン及び上記電動機が出力する駆動トルクの総和が上記要求トルクとなるように、上記エンジン及び上記電動機を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項5】
上記制御手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルク以上であると上記発電走行判定手段が判定した場合に、上記第1燃料消費率に対し上記第3燃料消費率が改善方向にないと上記燃料消費率判定手段が判定したときには、上記電動機の発電機としての作動を中止させると共に、上記エンジン及び上記電動機が出力する駆動トルクの総和が上記要求トルクとなるように、上記エンジン及び上記電動機を制御することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記エンジンが上記発電走行トルクを出力可能ではなく、且つ上記余裕トルクが上記基準トルクに満たないと上記発電走行判定手段が判定した場合に、上記電動機の発電機としての作動を中止させると共に、上記エンジン及び上記電動機が出力する駆動トルクの総和が上記要求トルクとなるように、上記エンジン及び上記電動機を制御することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項7】
上記走行経路設定手段は、上記車両に搭載されたナビゲーションシステムであって、
上記登坂路判定手段は、上記ナビゲーションシステムに予め登録された上記車両の走行経路に対応して上記ナビゲーションシステムから得た情報に基づき、上記走行経路における登坂路の有無を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項8】
上記登坂路判定手段は、上記ナビゲーションシステムから得た上記走行経路における標高差が予め設定された基準標高差以上であるときに、上記走行経路に登坂路があると判定することを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−126321(P2011−126321A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284002(P2009−284002)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】