説明

ハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物、これを用いるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグおよびハニカムサンドイッチパネル

【課題】靭性が高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れ、粘度が適切であり作業性に優れ、ゲル化し難いハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1種のエポキシ樹脂Aと、ゴムマスターバッチと、充填剤と、硬化剤とを含有し、前記ゴムマスターバッチが、前記エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有した固形ゴムと、液状ゴムとを少なくとも含むハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物、これを用いるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ、およびハニカムサンドイッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物、これを用いるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグおよびハニカムサンドイッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハニカムパネル製造時にフィルム接着剤を適用することなくパネル生産性を向上可能な自己接着プリプレグにおいては、マトリックス樹脂の高靭性化及び樹脂流れ特性が極めて重要である。
従来、ゴム又はスーパーエンジニアリングプラスチックによるエポキシ樹脂の高靭性化検討が進められている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−57130号公報
【特許文献2】特開平9−118738号公報
【特許文献3】国際公開第99/02586号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ゴムを用いた配合及びスーパーエンジニアリングプラスチックを用いた配合はそれぞれにおいて下記の欠点・課題を有しており、現在までに上市された材料がないのが現状である。
(ゴム配合系のエポキシ樹脂組成物の製造上の欠点・課題)
従来エポキシ樹脂組成物に添加可能なゴム成分として固形ゴム又は液状ゴムがある。
ゴム成分として固形ゴムを使用する場合、十分な自己接着性を発現させるにはエポキシ樹脂100質量部に対し高分子量の固形ゴムを8〜10質量部又はそれ以上配合する必要がある。
一般的に固形ゴムをエポキシ樹脂に混合させるには、例えば溶剤により固形ゴムを溶液化してエポキシ樹脂に混合する手法がある。この場合、最終配合後にエポキシ樹脂組成物から溶剤除去を行うか、又は後工程(プリプレグ含浸等)で溶剤を除去する必要がある。プリプレグまたはプリプレグ用樹脂の製造工程においてこのような溶剤除去工程がある場合、プリプレグまたはプリプレグ用樹脂の生産性が低くなり、更に溶剤残留は製品特性に悪影響を及ぼす。また、環境的観点からも望ましくない。
このようなことから本願発明者は溶剤を使用せずにエポキシ樹脂と固形ゴムとを混合させることに想到した。
多量の固形ゴムを溶剤を使用せずにエポキシ樹脂に混合させるには、通常、ニーダ又はロール等専用の混練装置で固形ゴムとエポキシ樹脂とを加熱混合する必要がある。エポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂と硬化剤と固形ゴムとを含有する場合、組成物を上記のような混練装置で混合すると系内が高温となるためエポキシ樹脂組成物が容易にゲル化することから混合自体が困難であり、エポキシ樹脂組成物自体が硬化してしまうという問題がある。
(液状ゴム配合系のエポキシ樹脂組成物の欠点・課題)
液状ゴムを用いた配合系では、専用混練装置は必要としないが、ゴム自身の分子量が小さいため、多量添加してもエポキシ樹脂の高靭性化を図ることが出来ない。
(スーパーエンジニアリングプラスチック配合系のエポキシ樹脂組成物を使用するハニカムサンドイッチパネル用プリプレグにおける欠点・課題)
スーパーエンジニアリングプラスチックスによって、十分な自己接着性を発現可能なレベルまでエポキシ樹脂の高靭性化を図るには、エポキシ樹脂100質量部に対しエンジニアリングプラスチックを40〜50質量部又はそれ以上添加する必要がある。しかし、その結果得られるマトリックス樹脂は硬く扱い難いものとなり、その後のプリプレグ生産性を下げるだけでなく、出来たプリプレグの作業性(タック、ドレイプ)低下や硬化時の成形欠陥(ボイド)を生じ易い。
また、大量のエンジニアリングプラスチックをエポキシ樹脂に添加する手法として、微粒子化したエンジニアリングプラスチックを粒子状態で配合する技術も紹介されているが、エポキシ樹脂に可溶な粒子の場合、樹脂またはプリプレグ製造時の加熱により粒子が容易に溶解してしまうことから、プリプレグにおける粒子の溶解レベルを管理することが困難であること、また出来た粒子含有型プリプレグのタック性が消失し易い課題を残す。またエポキシ樹脂に溶解しないエンジニアリングプラスチック粒子の場合には、マトリックスとしての靭性向上効果が少ない点と、やはり粒子含有型プリプレグとして、タックが消失し易い課題を残す。
さらに本願発明者は、ハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物が充填剤を含有しない場合、エポキシ樹脂組成物の最低粘度を必要以上に高くする必要があり作業性が悪く、靭性が低いことを見出した。
そこで、本発明は、第1に、靭性が高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れ、粘度が適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れ、ゲル化し難いハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
第2に、本発明は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性、生産性(例えば、溶剤を使用する必要がなく除去工程が不要であること、汎用の混合装置によって容易に製造することができること)に優れ、ゲル化が生じ難いハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
第3に、本発明は、作業性(例えば、タック、ドレイプ、)に優れ、強靭なハニカムサンドイッチパネルが得られるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグを提供することを目的とする。
最後に、本発明は、強靭なハニカムサンドイッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、少なくとも1種のエポキシ樹脂Aと、ゴムマスターバッチと、充填剤と、硬化剤とを含有し、前記ゴムマスターバッチが、前記エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有した固形ゴムと、液状ゴムと、を少なくとも含むハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物が、靭性が高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れ、粘度が適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れることを見出した。
また、本願発明者は、前記固形ゴムと前記液状ゴムとを少なくとも混練して前記ゴムマスターバッチを得るマスターバッチ化工程と、前記ゴムマスターバッチと、前記エポキシ樹脂Aと、前記充填剤と、前記硬化剤とを混合して本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を得る混合工程とを有するハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法が、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性、生産性(例えば、溶剤を使用する必要がなく除去工程が不要であること、汎用の混合装置によって容易に製造することができること)に優れ、ゲル化が生じ難いことを見出した。
また、本願発明者は、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物と繊維基材とを用いて得られるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグが、作業性(例えば、タック、ドレイプ、)に優れ、強靭なハニカムサンドイッチパネルが得られることを見出した。
また、本願発明者は、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグとハニカムコアとを積層し接着させることによって得られるハニカムサンドイッチパネルが、強靭であることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜15を提供する。
1. 少なくとも1種のエポキシ樹脂Aと、ゴムマスターバッチと、充填剤と、硬化剤とを含有し、
前記ゴムマスターバッチが、前記エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有した固形ゴムと、液状ゴムとを少なくとも含むハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
2. 前記固形ゴムの含有量が、前記エポキシ樹脂A100質量部に対して、3〜15質量部である上記1に記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
3. 前記エポキシ樹脂Aが、2官能以下のエポキシ樹脂(a−1)と3官能以上のエポキシ樹脂(a−2)とを含み、
前記エポキシ樹脂(a−1)の量が、前記エポキシ樹脂A100質量部中、20〜80質量部であり、前記エポキシ樹脂(a−2)の量が、前記エポキシ樹脂A100質量部中、20〜80質量部である上記1または2に記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
4. 前記液状ゴムの含有量が、前記エポキシ樹脂A100質量部に対して、1.5〜30質量部である上記1〜3のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
5. 前記充填剤が、ヒュームドシリカ、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記1〜4のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
6. 前記エポキシ樹脂Aが、室温での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の30〜100質量部であり、
前記エポキシ樹脂Aが、室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の0〜70質量部である上記1〜5のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
7. 前記エポキシ樹脂(a−1)および/または前記エポキシ樹脂(a−2)が、室温での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の30〜100質量部であり、
前記エポキシ樹脂(a−1)および/または前記エポキシ樹脂(a−2)が、室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の0〜70質量部である上記3〜6のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
8. 前記充填剤の量が、前記エポキシ樹脂A100質量部に対して、0.5〜10質量部である上記1〜7のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
9. 実質的に溶剤を含有しない上記1〜8のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
10. 前記固形ゴムと前記液状ゴムとを少なくとも混練して前記ゴムマスターバッチを得るマスターバッチ化工程と、
前記ゴムマスターバッチと、前記エポキシ樹脂Aと、前記充填剤と、前記硬化剤とを混合して上記1〜9のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を得る混合工程とを有するハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
11. 少なくとも前記マスターバッチ化工程において溶剤を実質的に使用しない上記10に記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
12. 上記1〜9のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物と繊維基材とを用いて得られるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ。
13. 前記繊維基材は、弾性率が230GPa以上の炭素繊維である上記12に記載のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ。
14. 上記12または13に記載のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグとハニカムコアとを積層し接着させることによって得られるハニカムサンドイッチパネル。
15. 前記ハニカムコアが、アラミドハニカム、アルミハニカム、ペーパーハニカムおよびガラスハニカムからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記14に記載のハニカムサンドイッチパネル。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、靭性が高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れ、粘度が適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れる。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性、生産性(例えば、溶剤を使用する必要がなく除去工程が不要であること、汎用の混合装置によって容易に製造することができること)に優れ、ゲル化が生じ難い。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、作業性(例えば、タック、ドレイプ、)に優れ、強靭なハニカムサンドイッチパネルが得られる。
本発明のハニカムサンドイッチパネルは強靭である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明のハニカムサンドイッチパネルの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、ハニカムサンドイッチパネルをハニカムコアの角柱の側面と平行に切断した断面の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、
少なくとも1種のエポキシ樹脂Aと、ゴムマスターバッチと、充填剤と、硬化剤とを含有し、
前記ゴムマスターバッチが、前記エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有した固形ゴムと、液状ゴムとを少なくとも含む組成物である。
【0010】
エポキシ樹脂Aについて以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物に含有される、エポキシ樹脂Aはエポキシ基を1個または2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0011】
エポキシ樹脂Aは、靭性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)により優れ、耐熱性に優れるという観点から、前記エポキシ樹脂Aが、2官能以下のエポキシ樹脂(a−1)と3官能以上のエポキシ樹脂(a−2)とを含むのが好ましい。
【0012】
エポキシ樹脂(a−1)について以下に説明する。
本発明において、エポキシ樹脂Aに含まれるエポキシ樹脂(a−1)は、1分子中エポキシ基を1個または2個有する化合物である。
【0013】
エポキシ樹脂(a−1)としてのモノエポキシ化合物は、例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェニルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル、スチレンオキサイドが挙げられる。
【0014】
エポキシ樹脂(a−1)としての2官能のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物のような2官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;またはダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0015】
エポキシ樹脂(a−1)は、靭性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)により優れ、更に耐熱性にも優れるという観点から、低粘度タイプのビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0016】
エポキシ樹脂(a−1)は、複合材のマトリックスとして靭性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、作業性確保のための低粘度性に優れ、更に耐熱性も確保できるという観点から、2官能型エポキシ樹脂を主として必要に応じてモノエポキシを添加する形が望ましい。
2官能型エポキシ樹脂およびモノエポキシの種類はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
エポキシ樹脂(a−2)について以下に説明する。
本発明において、エポキシ樹脂Aに含まれるエポキシ樹脂(a−2)は、1分子中エポキシ基を3個以上有する化合物である。
エポキシ樹脂(a−2)としては、例えば、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)のようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノクレゾールのようなアミノフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型のような多官能タイプのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
エポキシ樹脂(a−2)は、耐熱性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れるという観点から、液状または半固形状のエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂(a−2)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
エポキシ樹脂(a−1)の量は、靭性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性を維持し、更に耐熱性確保の観点から、エポキシ樹脂A100質量部中、20〜80質量部であるのが好ましく、30〜70質量部であるのがより好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂(a−2)の量は、靭性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性を維持し、更に耐熱性確保の観点から、エポキシ樹脂A100質量部中、20〜80質量部であるのが好ましく、30〜70質量部であるのがより好ましい。
【0021】
エポキシ樹脂Aは、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性を維持させるため、室温(25℃)での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂を含むことが望ましい。
室温での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂の量は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性を維持させるため、エポキシ樹脂A100質量部中、30〜100質量部(エポキシ樹脂A中の30〜100質量%)であるのが好ましく、40〜70質量部であるのがより好ましい。
エポキシ樹脂Aは、耐熱性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れるという観点から、室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂を含むのが好ましい。
室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂の量は、耐熱性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れるという観点から、エポキシ樹脂A100質量部中の0〜70質量部であるであるのが好ましく、30〜60質量部であるのがより好ましい。
本発明において、エポキシ樹脂の粘度は、25℃の条件下においてE型粘度計を用いて測定されたものである。
【0022】
室温において5,000mPa・s以下の粘度を有するエポキシ樹脂は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性維持の観点から、その粘度が、3000mPa・s以下であるのが好ましく2000mPa・s以下であるのがより好ましい。
【0023】
粘度が5,000mPa・s以下の2官能以下のエポキシ樹脂としては、例えば、ジグリシジルレゾルシノールのようなレゾルシノール型エポキシ樹脂;ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレートのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、モノエポキシ樹脂が挙げられる。
粘度が5,000mPa・s以下の3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジル−p−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノクレゾールのようなアミノフェノール型エポキシ樹脂;水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
粘度が5,000mPa・sを超える2官能以下のエポキシ樹脂としては、例えば、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を含有するゴム変性エポキシ樹脂が挙げられる。
粘度が5,000mPa・sを超える3官能以上のエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂(a−1)の一部または全部を室温で5,000mPa・s以下の粘度を有するエポキシ樹脂とすることができる。エポキシ樹脂(a−1)の一部または全部を室温で5,000mPa・sを超える粘度を有するエポキシ樹脂とすることができる。エポキシ樹脂(a−2)についても同様である。
【0024】
エポキシ樹脂(a−1)および/またはエポキシ樹脂(a−2)は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性を維持させるため、室温での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂を含むのが好ましい。
室温での粘度が5,000mPa・s以下の、エポキシ樹脂(a−1)および/またはエポキシ樹脂(a−2)の量[エポキシ樹脂(a−1)およびエポキシ樹脂(a−2)の場合これらの合計量。以下同様。]は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、良好な作業性(例えば、繊維基材への含浸性)を確保するための低粘度性を維持させるため、エポキシ樹脂A100質量部中の30〜100質量部であるのが好ましく、40〜70質量部であるのがより好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂(a−1)および/またはエポキシ樹脂(a−2)は、耐熱性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れるという観点から、室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂を含むのが好ましい。
室温での粘度が5,000mPa・sを超える、エポキシ樹脂(a−1)および/またはエポキシ樹脂(a−2)の量は、耐熱性がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れるという観点から、エポキシ樹脂A100質量部中の0〜70質量部であるであるのが好ましく、30〜60質量部であるのがより好ましい。
【0026】
ゴムマスターバッチについて以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂に含有されるゴムマスターバッチは、前記エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有した固形ゴムと、液状ゴムとを少なくとも含む。
本発明において、固形ゴムは室温(23℃)において固体であるゴムをいう。また、液状ゴムは室温(23℃)において液体であるゴムをいう。
【0027】
ゴムマスターバッチに含まれる固形ゴムは、エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有するゴムである。
エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基はエポキシ基と反応することができるものであれが特に制限されない。例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基(−COOH)、グリシジル基等が挙げられる。
なかでも、靭性向上効果がより高く、エポキシ樹脂との混合性に優れるという観点から、カルボキシル基を含有したゴムが特に好ましい。
固形ゴム1分子が有する官能基比率は、エポキシ樹脂との配合物におけるゲル化抑制の観点から6質量%以下であるのが好ましい。
【0028】
固形ゴムが有する骨格としてのゴムは特に制限されない。例えば、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびその水素添加物、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム等が挙げられる。
固形ゴムが有する骨格は、なかでも、靭性向上効果がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れるという観点から、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。固形ゴムは靭性向上効果がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れるという観点から、カルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴムが好ましい。
【0029】
好ましいカルボキシ含有アクリロニトリルブタジエンゴムとして、例えば、日本ゼオン社製ニポール1072、DN631等が挙げられる。
【0030】
固形ゴムの分子量は、100,000以上であることが好ましい。分子量がこのような範囲内にある場合、靭性向上効果がより優れる。なお、本発明において、固形ゴムの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる重量平均分子量である。
固形ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
前記固形ゴムの含有量は、靭性向上効果が優れ、エポキシ樹脂との混合性により優れ、配合後樹脂の作業性(例えば、繊維基材への含浸性)維持の観点から、エポキシ樹脂A100質量部に対して、3〜15質量部であるのが好ましく、5〜10質量部であるのがより好ましい。
【0032】
液状ゴムについて以下に説明する。
ゴムマスターバッチに含まれる液状ゴムは特に制限されない。
液状ゴムは、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れることに加え、靭性向上効果も兼ね備えられる点からエポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基はエポキシ基と反応することができるものであれが特に制限されない。例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基等が挙げられる。
なかでも、靭性向上効果がより高く、エポキシ樹脂との混合性に優れるという観点から、カルボキシル基またはグリシジル基を含有したゴムが特に好ましい。
【0033】
液状ゴムが有する骨格としてのゴムは特に制限されない。例えば、アクリロニトリルブタジエンゴムおよびその水素添加物、アクリルゴム、エチレン−アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム等が挙げられる。
液状ゴムは、なかでも、靭性向上効果がより高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れるという観点から、末端カルボキシル変性ブタジエン−アクリロニトリルゴム(CTBN)、エポキシ変性ブタジエン−アクリロニトリルゴムが好ましい。
【0034】
液状ゴムの分子量は、1,000以上であることが好ましい。分子量がこのような範囲内にある場合、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れるという観点から好ましい。なお、本発明において、液状ゴムの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で表わされる重量平均分子量である。
液状ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0035】
液状ゴムの含有量は、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性と作業性(例えば、繊維基材への含浸性)確保の観点から、エポキシ樹脂A100質量部に対して、1.5〜30質量部であるのが好ましく、5〜20質量部であるのがより好ましい。
【0036】
固形ゴムと液状ゴムとの質量比(固形ゴム/液状ゴム)は、靭性向上効果が優れ、エポキシ樹脂との混合性により優れ、配合後樹脂の作業性(例えば、繊維基材への含浸性)維持の観点から、1/1〜1/5であるのが好ましく、1/1〜1/3であるのがより好ましい。
【0037】
本発明において、ゴムマスターバッチは固形ゴムと液状ゴムとを少なくとも含む。ゴムマスターバッチは必要に応じてさらに、エポキシ樹脂Aの一部もしくは全部、または充填剤の一部もしくは全部を含むことができる。
【0038】
充填剤について以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物に含有される充填剤はエポキシ樹脂組成物に含有されるものであれば特に制限されない。例えば、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。耐熱性により優れるという観点から無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ(例えば、ヒュームドシリカ、湿式シリカ)、カーボンナノチューブ、珪砂、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、アルミナ、モンモリロナイト、チッ化アルミニウム、チッ化ホウ素、炭酸カルシウム、酸化チタンが挙げられる。
【0039】
なかでも、エポキシ樹脂との混合性により優れ、チクソ性発現によりハニカムパネル製作時の樹脂流れ性制御に優れるという観点から、ヒュームドシリカ、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
充填剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
充填剤の量は、エポキシ樹脂との混合性により優れ、粘度がより適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)確保の観点から、エポキシ樹脂A100質量部に対して、0.5〜10質量部であるのが好ましく、0.5〜5質量部であるのがより好ましい。
【0041】
硬化剤について以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物に含有される硬化剤はエポキシ樹脂に対して使用することできるものであれば特に制限されない。
硬化剤として、例えば、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、イミダゾール化合物、テトラメチルグアニジンのようなアミン系化合物;チオ尿素付加アミン;ポリアミド;ポリオール;ポリメルカプタン;ポリカルボン酸;酸無水物;カルボン酸ヒドラジド;カルボン酸アミド;ポリフェノール化合物;ノボラック樹脂;潜在性硬化剤(例えば、ケチミン、ジシアンジアミド)が挙げられる。
硬化剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
硬化剤の量は、硬化樹脂の靭性、耐熱性他の機械的物性のバランスが取れ、またプリプレグの可使時間を十分に確保する観点から、エポキシ樹脂Aに対して、0.5〜1.2当量であるのが好ましく、0.6〜1.1当量であるのがより好ましい。
【0043】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、プリプレグを硬化させる際に欠陥となり得る揮発成分の含有を最小限に留る観点から、実質的に溶剤を含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明において、実質的に溶剤を含有しないとは、溶剤の量が本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物全量中の0.5質量%以下であることをいう。
【0044】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂A、ゴムマスターバッチ、充填剤、硬化剤の他に、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の効果を損なわない範囲で必要に応じて、添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、熱可塑性樹脂、三フッ化ホウ素/アミン塩触媒のような硬化触媒、老化防止剤、難燃剤、反応遅延剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤が挙げられる。
【0045】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法については次の本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法において説明する。
【0046】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、例えば、ゴムマスターバッチとエポキシ樹脂Aと充填剤とを含む第1液と、硬化剤を含む第2液とを有する2液型とすることができる。添加剤は第1液および第2液のうちの片方または両方に加えることができる。
【0047】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は熱によって硬化することができる。本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を硬化させる際の温度は、160〜200℃であるのが好ましい。
【0048】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を硬化させた後に得られる硬化物を用いて、ASTM−D5045−99に準じて測定される破壊靭性値は、強靭性がより高く、はく離強度[例えば、プリプレグのような面板と他の部材(例えば、ハニカムコア)との自己接着強後のはく離強度]を高くすることができるという観点から、1.8MPa・m1/2以上が好ましく、2.0MPa・m1/2以上がより好ましい。
【0049】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、昇温速度2℃/分における動的粘弾性測定による最低粘度が、1〜100Pa・sであるのが好ましく、5〜40Pa・sであるのがより好ましい。動的粘弾性測定の最低粘度を上記の範囲とする場合、プリプレグの生産性及び自己接着性を発現する上で好ましい。1Pa・s以上にする場合良好なフィレットを形成することができ自己接着性が向上する。100Pa・s以下にする場合フィレットの形成性を保ちつつ、プリプレグ製造時に繊維基材に樹脂組成物を容易に含浸させることができる。
なお、本発明において動的粘弾性測定による最低粘度は、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を試料にして、温度25℃から200℃までの間で、昇温速度2℃/分、周波数10rad/秒、ひずみ1%の動的粘弾性測定における複素粘性率の最低値をいうものとする。
【0050】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物は、昇温速度2℃/分における動的粘弾性測定による40℃での粘度が、5,000Pa・s以下であるのがプリプレグ製造に用いる樹脂フィルムの塗工作業性に優れるという観点から好ましい。
なお、本発明において動的粘弾性測定による40℃での粘度は、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を試料にして、温度25℃から200℃までの間で、昇温速度2℃/分、周波数10rad/秒、ひずみ1%の動的粘弾性測定における複素粘性率の40℃での値をいうものとする。
【0051】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の用途としては、例えば、ハニカムサンドイッチパネルのパネルに使用されるプリプレグ用のマトリックス樹脂、接着剤、プライマー、シーリング材、注型材、封止剤、塗料などが挙げられる。
【0052】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を用いることができる被着体は特に制限されない。例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維のような繊維基材、プラスチック、ゴム、ガラス、セラミック、コンクリート、モルタル、アルミニウム合金、チタン合金、ステンレス合金、スチールなどが挙げられる。
【0053】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法について以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法は、
前記固形ゴムと前記液状ゴムとを少なくとも混練して前記ゴムマスターバッチを得るマスターバッチ化工程と、
前記ゴムマスターバッチと、前記エポキシ樹脂Aと、前記充填剤と、前記硬化剤とを混合して本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を得る混合工程とを有する製造方法である。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法を以下「本発明の製造方法」ということがある。
【0054】
本発明の製造方法は、マスターバッチ化工程を有することによって、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性、生産性(例えば、溶剤を使用する必要がなく除去工程が不要であること、汎用の混合装置によって容易に製造することができること)に優れ、混合工程における温度上昇が抑制されて組成物のゲル化が生じ難い。
【0055】
マスターバッチ化工程について以下に説明する。
本発明の製造方法が有するマスターバッチ化工程は、前記固形ゴムと前記液状ゴムとを少なくとも混練して前記ゴムマスターバッチを得る工程である。
【0056】
マスターバッチ化工程において使用される、固形ゴム、液状ゴムは上記と同義である。
マスターバッチ化工程において使用される混練装置は、ゴムの混練に使用されるものであれば特に制限されない。例えば、ニーダー、ロール(2軸ロールなど)が挙げられる。
【0057】
マスターバッチ化工程においては、前記固形ゴムと前記液状ゴムとを少なくとも混練する。また、マスターバッチ化工程において必要に応じてさらに、エポキシ樹脂Aの一部もしくは全部、または充填剤の一部もしくは全部を固形ゴムおよび液状ゴムとともに混練することができる。
マスターバッチ化工程において溶剤を実質的に使用しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。溶剤を実施的に使用しないとは、溶剤の量が本発明の製造方法によって得られるハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物全量中の0〜0.5質量%であることをいう(以下同様)。
マスターバッチ化工程における温度は、30〜60℃であるのが好ましい。
【0058】
混合工程について以下に説明する。
混合工程は、前記ゴムマスターバッチと、前記エポキシ樹脂Aと、前記充填剤と、前記硬化剤とを混合して本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を得る工程である。
【0059】
混合工程において使用される、エポキシ樹脂Aと、充填剤と、硬化剤は上記と同義である。
混合工程において使用される混合装置は、エポキシ樹脂組成物の製造に使用されるものであれば特に制限されない。例えば、高トルク型混合装置(ダルトン型混合機、プラネタリ型混合機など)が挙げられる。
【0060】
混合工程においては、ゴムマスターバッチと、エポキシ樹脂Aと、充填剤と、硬化剤とを混合する。マスターバッチ化工程においてエポキシ樹脂Aの一部を使用した場合はエポキシ樹脂Aの残りを混合する。マスターバッチ化工程において充填剤の一部を使用した場合は充填剤の残りを混合する。
混合工程において溶剤を実質的に使用しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。混合工程における温度は、50〜100℃であるのが好ましい。
【0061】
次に、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグについて以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、
本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物と繊維基材とを用いて得られるものである。
【0062】
具体的には、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグはハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸させることにより得られるものである。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグに使用されるマトリックス用組成物は、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物であれば特に制限されない。
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂をマトリックス樹脂として使用することによって、作業性(例えば、タック、ドレイプ)に優れ、強靭なハニカムサンドイッチパネルが得られる。
【0063】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグに使用される繊維基材は、特に制限されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。なかでも、強度および弾性率の観点から、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、炭素繊維であるのがより好ましい。アラミド繊維としては、例えば、ケブラーが挙げられる。
【0064】
繊維は、その形態について特に制限されず、例えば、織物、ロービング、不織布、編物、チュールなどが挙げられる。繊維の目付量は、形態や用途により最適値が異なるが、例えば炭素繊維織物の場合、150〜400g/m2であるのが好ましい。
【0065】
市販されている繊維としては、例えば、東レ社製のカーボン繊維T−300、T−700、東邦レーヨン社製のカーボン繊維HTA、UT−500などが挙げられる。
【0066】
繊維基材の弾性率は、成形品の剛性、強度に優れる点と軽量化の観点から、230GPa以上であるのが好ましい。繊維基材は弾性率が230GPa以上の炭素繊維であるのが好ましい。
【0067】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、その製造方法について特に制限されない。例えば、溶剤を使用するウェット法、無溶剤法であるホットメルト法のいずれかを採用することができる。溶剤を使用しないという観点から、ホットメルト法が好ましい。
【0068】
ホットメルト法の場合、使用されるハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を予めフィルムコータにより離型紙上にフィルム化し、このフィルムにより繊維基材を上下からはさみこんだ上加熱して、基材中に樹脂を含浸させる。
マトリックス樹脂を加熱する際の温度は、用いる硬化剤により変動するが含浸後のプリプレグの作業性(タック、ドレイプ)確保の点から80〜120℃であるのが好ましい。
【0069】
ウェット法で本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグの製造を行う場合は、ハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を溶媒に溶解させ、ワニスを調製してから含浸させる。
ワニス調製時に使用する溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノールのようなアルコール類;メチルエチルケトン(MEK)のようなケトン類が挙げられる。
溶剤の使用量は、乾燥時間を短縮しうるという観点から、ハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の固形分100質量部に対して、80〜200質量部であるのが好ましい。
【0070】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグにおけるマトリックス樹脂の含有量は、使用する繊維の比重により最適範囲が変動するが、作業性(例えば、タック、ドレイプ)に優れ、硬化後外観に優れ、更に耐熱性、機械的特性に優れるという観点から、プリプレグ中の30〜60質量%であるのが好ましい。
【0071】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、その使用方法について特に制限されない。例えば、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグをそのまま熱硬化させる方法、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグを半硬化させさらに硬化させる方法が挙げられる。硬化の際の温度は用いる硬化剤により変動するが、特に耐熱性を必要とする用途においては、最終硬化温度を160〜200℃とするのが好ましい。
【0072】
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、ハニカムサンドイッチパネルの表面板に使用することができる。本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグをハニカムコアと積層し、加熱硬化して接着させることによってハニカムサンドイッチパネルを作製することができる。
【0073】
また、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは、ハニカムサンドイッチパネルの表面板用以外の繊維強化複合材料に使用することができる。例えば、フェアリング、フラップ、リーディングエッジ、フロアパネル、プロペラ、胴体などの航空機部品;オートバイフレーム、カウル、フェンダー等の二輪車部品;ドア、ボンネット、テールゲート、サイドフェンダー、側面パネル、フェンダー、エネルギー吸収部材、トランクリッド、ハードップ、サイドミラーカバー、スポイラー、ディフューザー、スキーキャリアー、エンジンシリンダーカバー、エンジンフード、シャシー、エアースポイラー、プロペラシャフト等の自動車部品;先頭車両ノーズ、ルーフ、サイドパネル、ドア、台車カバー、側スカートなどの車輌用外板;荷物棚、座席等の鉄道車輌部品;インテリア、ウイングトラックにおけるウイングのインナーパネル、アウターパネル、ルーフ、フロアー等、自動車や単車に装着するサイドスカートなどのエアロパーツ;ノートパソコン、携帯電話等の筐体用途;X線カセッテ、天板等のメディカル用途;フラットスピーカーパネル、スピーカーコーン等の音響製品用途;ゴルフヘッド、フェースプレート、スノーボード、サーフィンボード、プロテクター等のスポーツ用品用途;板バネ、風車ブレード、エレベーター(籠パネル、ドア)のような一般産業用途が挙げられる。
【0074】
次に、本発明のハニカムサンドイッチパネルについて以下に説明する。
本発明のハニカムサンドイッチパネルは、
本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグとハニカムコアとを積層し接着させることによって得られるものである。
【0075】
本発明のハニカムサンドイッチパネルに使用されるプリプレグは、本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグであれば特に制限されない。本発明のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグは高い強度を有するフィレットを形成することから優れた接着性を有し、プリプレグ−ハニカムコア間に接着剤を使用することなく、強靭なハニカムパネルを得ることができる。
【0076】
本発明のハニカムサンドイッチパネルに使用されるハニカムコアは、特に制限されない。例えば、アラミドハニカム、アルミハニカム、ペーパーハニカムおよびガラスハニカムからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0077】
ハニカムコアの蜂の巣状の構造体の六角柱の大きさは特に制限されず、強度、軽量化の観点から、ハニカムコアのセルサイズの長さが1/8〜3/8インチのものが好ましい。
【0078】
本発明のハニカムサンドイッチパネルは、その製造について特に制限されない。
本発明のハニカムサンドイッチパネルの製造方法の一例について、添付の図面を用いて以下に説明する。
図1は、本発明のハニカムサンドイッチパネルの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、ハニカムサンドイッチパネルをハニカムコアの角柱の側面と平行に切断した断面の一例を模式的に示す断面図である。図2のa部は、従来のプリプレグシート用樹脂組成物で形成したプリプレグを接着させたハニカムサンドイッチパネルである。図2のb部は、本発明のハニカムサンドイッチパネルの一例である。
【0079】
図1において、ハニカムサンドイッチパネル1は、ハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10とハニカムコア11とを接着させて得られる。より詳しくは、ハニカムサンドイッチパネル1は、蜂の巣状の構造を有するハニカムコア11の端部12の一方または両方に本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物で形成したハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10を積層し、両端から圧着しながらオートクレーブ等で加熱硬化して接着させることによって作製することができる。
【0080】
図2において、従来の組成物をハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物として使用したプリプレグを用いる場合、図2のa部に示すとおり、加熱硬化の際に、ハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10とハニカムコア11とを均等に圧着しても、ハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物が全て下面部13’に落ちて上面部13にフィレットが形成されなかったり、部分的にハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10とハニカムコア11との接着面に隙間(図示せず。)が生じる場合がある。
これに対して、本発明のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を用いる場合、図2のb部に示すとおり、ハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10とハニカムコア11との接着が完全に行われ、しかもプリプレグからハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物が流出し過ぎて樹脂成分がプリプレグ中から組成物がなくなることなく、プリプレグに適量の組成物が存在することができる。
したがって、上部フィレット14は適切な形状を維持しながら硬化を完了することができる。また、下面においても粘度が一度低下したときに表面張力によって下部フィレット14’が形成されハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物が適度に保持されて硬化を完了することができる。
【0081】
ハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10とハニカムコア11とを接着させる際の加熱温度は、硬化物の耐熱性の観点から、160〜200℃であるのが好ましく、170〜190℃であるのがより好ましい。
【0082】
ハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ10とハニカムコア11とを接着させる際の硬化条件は、2〜5℃/分、圧力2.5〜4.0kg/cm2で、160〜185℃まで昇温させた後、160〜185℃で1〜2時間維持し、その後2〜5℃/分で室温まで降下させる方法が好ましい態様の1つとして挙げられる。
このような方法により本発明のハニカムサンドイッチパネルを製造することができる。
【0083】
本発明のハニカムサンドイッチパネルは、強靭であり、フィレット形成性、フィレットの強度、機械的強度、作業性に優れる。
本発明のハニカムサンドイッチパネルは、例えば、航空機、自動車の構造材料として使用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
<評価>
下記のようにして得られた各組成物について、以下に示す方法で、粘度(最低粘度、40℃粘度)、プリプレグ接着性(樹脂靭性の指標)(クライミングドラム剥離強度:CDP)、含浸性、プリプレグ作業性を評価した。結果を第1表に示す。
【0085】
1.粘度(最低粘度、40℃粘度)
下記のようにして得られた各エポキシ樹脂組成物を試料にして、温度25℃から200℃までの間で、昇温速度2℃/分、周波数10rad/秒、ひずみ1%の条件の動的粘弾性測定における複素粘性率の最低値および40℃における粘度を測定した。
【0086】
2.プリプレグ作業性
下記のようにして得られた各エポキシ樹脂組成物をフィルムコーターにより60℃で目付量64g/m2の樹脂フィルムとし、得られたフィルムを繊維基材(東レ(株)社製T 300−3000による平織織物、目付量193g/m2、弾性率230GPaの炭素繊維)の両面に配置して100℃で加熱含浸し樹脂含有率40%のプリプレグとした。
得られたプリプレグを23℃の条件下で2枚貼り合わせて各評価用サンプルを作製した。タックの評価基準は、タック評価用サンプルから1枚のプリプレグを再度引き剥がすことが出来ないレベルであれば「強タック」、プリプレグ2枚が十分に貼り付き且つその後引き剥がすことが可能であれば「中タック」、プリプレグ2枚が貼り付かないレベルであれば「タック不良」とした。
また得られたプリプレグをチャンファ加工されたハニカムコア上に積層してドレイプ評価用サンプルを作製した。ドレイプの評価基準は、ドレイプ評価用サンプルが有するプリプレグに皺がなくハニカムコア上にプリプレグが積層可能な場合は「ドレイプ良好」、チャンファ形状にプリプレグが馴染まず皺が残る場合には「ドレイプ不良」とした。
なお、プリプレグ作業性の評価において、樹脂粘度が高過ぎ、またはコーター上の加熱でゲル化を生ずる等の理由でプリプレグが製造出来なかった場合には「プリプレグ製造不可」とした。
【0087】
3.プリプレグ接着性(クライミングドラム剥離強度:CDP)
(1)ハニカムサンドイッチパネルの作製
上記のようにして得られたプリプレグを2枚積層し、これをハニカムコア(昭和飛行機工業社製ノーメックスハニカム(アラミドハニカム)SAH−1/8−8.0、厚み12.7mm)の両面に配置した後、真空バッグに入れ、これをオートクレーブ内で温度180℃、2時間(昇温速度2.8℃/分)加熱硬化して接着させてハニカムサンドイッチパネルを作製した。この間、オートクレーブ内を圧空で0.32MPaに加圧した。
【0088】
(2)クライミングドラム剥離試験(CDP:Climbing Drum Peel Test)
得られたハニカムサンドイッチパネルを用いて、ASTM D1781−98に従い、所定の寸法に切断加工して試験片とし、ハニカムコアの上側(Bag side:バキュームバッグに接触する面)及び下側(Tool side:成形治具に接触する面)に配置された面板それぞれについて温度23℃(乾燥状態)における剥離強度(クライミングドラムピール強度、lb−in/3in)を測定した。ハニカムコアの上側における剥離強度とハニカムコアの下側における剥離強度の平均値を算出し、得られた平均値をクライミングドラム剥離強度として第1表に示す。平均値が15[lb−in/3in]以上の場合クライミングドラム剥離強度が高いと言える。
【0089】
4.含浸性
クライミングドラム剥離試験用に作製したハニカムパネルの断面を研磨し倍率50倍の光学顕微鏡により観察した。
含浸性の評価基準は、観察の結果繊維内部まで樹脂が十分に含浸し、ボイドや樹脂欠損といった欠陥がなければ含浸性「◎」、欠陥があっても極僅かであれば含浸性「○」、顕著な欠陥が観察された場合には含浸性「×」とした。
【0090】
<組成物の製造>
第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で用いて、次に示す方法で組成物を製造した。
1.マスターバッチ化工程ありの場合
まず、マスターバッチ化工程において、固形ゴムおよび液状ゴムを2軸ロールに投入して50℃の条件下で30分間混練し、そこへ更に充填材の全量およびエポキシ樹脂(a−1−1)の半量を加えて30分間混練してゴムマスターバッチを製造した。
次いで、混合工程において、ゴムマスターバッチと、エポキシ樹脂Aの残りと、硬化剤とをプラネタリ型混合装置に投入し、これらを70℃の条件下において1時間混合して各エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0091】
2.マスターバッチ化工程なしの場合
第1表に示す成分をプラネタリ形混合装置に投入し、これらを70℃の条件下において2時間混合して各エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0092】
【表1】

【0093】
第1表に示されている各成分の詳細は下記第2表のとおりである。なお第2表においてエポキシ当量の単位はg/当量である。
【表2】

【0094】
第1表に示す結果から明らかなように、充填剤を含有しない比較例1は靭性が低いため接着強度が低い値となった。ゴムマスターバッチを含有せず固形ゴムを含有する比較例2は、組成物の製造の際組成物がゲル化してしまい、プリプレグを製造することができなかった。ゴムマスターバッチを含有せず代わりに熱可塑性樹脂を含有する比較例3は、40℃における組成物の粘度が高い点からも判るとおり固く扱い難い樹脂組成物となり、繊維基材への含浸性が不良であり、またプリプレグとした際のタック、ドレイプも不良であった。
これに対して、実施例1〜4の組成物は接着強度が高く、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性に優れ、粘度が適切であり作業性(例えば、繊維基材への含浸性)に優れ、ゲル化し難いハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物であった。
また、実施例1〜4のエポキシ樹脂組成物の製造方法によれば、固形ゴムとエポキシ樹脂との混合性、生産性(例えば、溶剤を使用する必要がなく除去工程が不要であること、汎用の混合装置によって容易に製造することができること)に優れ、ゲル化が生じ難いハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を製造することができた。
実施例1〜4のプリプレグは、作業性(例えば、タック、ドレイプ)に優れ強靭なハニカムサンドイッチパネルが得られるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグとなった。
実施例1〜4のハニカムサンドイッチパネルは、強靭であった。
【0095】
以上のように、液状ゴムを作業性確保の為に利用しマスターバッチ化することで、専用混練装置を不要とし、汎用混合設備で最終樹脂混合が可能となった。
また、固形ゴム添加量6〜8質量部(エポキシ樹脂を100質量部に対して)のケースで、エンジニアリングプラスチック添加量45〜60重量部に相当する靭性を発現することが可能となった。
また、充填剤(フィラー)の効果を活用することにより、樹脂の最低粘度を必要以上に高く維持させる必要が無く、作業性を犠牲にしないレベルでのマトリックス混合が可能である。
本発明において使用されるマトリックス樹脂は、作業領域(100℃以下)において低粘度性を有しており、プリプレグ製造時の作業性のみならず、プリプレグ化後の作業性(タック、ドレイプ)もエンジニアリングプラスチック配合系に大きく勝る。また、硬化時の成形欠陥(ボイド)も生じ難い。
【符号の説明】
【0096】
1 ハニカムサンドイッチパネル
10 ハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ
11 ハニカムコア
12 端部
13 上面部
13’ 下面部
14 上部フィレット
14’ 下部フィレット
a 従来のハニカムサンドイッチパネル
b 本発明のハニカムサンドイッチパネル
c セルサイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のエポキシ樹脂Aと、ゴムマスターバッチと、充填剤と、硬化剤とを含有し、
前記ゴムマスターバッチが、前記エポキシ樹脂Aと反応し得る官能基を有した固形ゴムと、液状ゴムとを少なくとも含むハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記固形ゴムの含有量が、前記エポキシ樹脂A100質量部に対して、3〜15質量部である請求項1に記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂Aが、2官能以下のエポキシ樹脂(a−1)と3官能以上のエポキシ樹脂(a−2)とを含み、
前記エポキシ樹脂(a−1)の量が、前記エポキシ樹脂A100質量部中、20〜80質量部であり、前記エポキシ樹脂(a−2)の量が、前記エポキシ樹脂A100質量部中、20〜80質量部である請求項1または2に記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記液状ゴムの含有量が、前記エポキシ樹脂A100質量部に対して、1.5〜30質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、ヒュームドシリカ、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂Aが、室温での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の30〜100質量部であり、
前記エポキシ樹脂Aが、室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の0〜70質量部である請求項1〜5のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂(a−1)および/または前記エポキシ樹脂(a−2)が、室温での粘度が5,000mPa・s以下のエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の30〜100質量部であり、
前記エポキシ樹脂(a−1)および/または前記エポキシ樹脂(a−2)が、室温での粘度が5,000mPa・sを超えるエポキシ樹脂を含み、その量が前記エポキシ樹脂A100質量部中の0〜70質量部である請求項3〜6のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記充填剤の量が、前記エポキシ樹脂A100質量部に対して、0.5〜10質量部である請求項1〜7のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
実質的に溶剤を含有しない請求項1〜8のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記固形ゴムと前記液状ゴムとを少なくとも混練して前記ゴムマスターバッチを得るマスターバッチ化工程と、
前記ゴムマスターバッチと、前記エポキシ樹脂Aと、前記充填剤と、前記硬化剤とを混合して請求項1〜9のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物を得る混合工程とを有するハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
少なくとも前記マスターバッチ化工程において溶剤を実質的に使用しない請求項10に記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載のハニカムサンドイッチパネル用エポキシ樹脂組成物と繊維基材とを用いて得られるハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ。
【請求項13】
前記繊維基材は、弾性率が230GPa以上の炭素繊維である請求項12に記載のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグ。
【請求項14】
請求項12または13に記載のハニカムサンドイッチパネル用プリプレグとハニカムコアとを積層し接着させることによって得られるハニカムサンドイッチパネル。
【請求項15】
前記ハニカムコアが、アラミドハニカム、アルミハニカム、ペーパーハニカムおよびガラスハニカムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項14に記載のハニカムサンドイッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−140596(P2011−140596A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3053(P2010−3053)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】