説明

ハンドガイド装置とその制御方法

【課題】単純作業はロボットに任せ、人の判断や経験を必要とする作業時のみ、人がロボットを操作して、組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けることができるハンドガイド装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】ワーク3を把持するワーク把持装置12と、ワーク把持装置を有する細長いハンド14と、ハンドの末端部を片持ち支持し末端部を所定のロボットエリア4a内で移動可能なロボット16と、ハンドのワーク把持装置近傍に設けられロボットの作動を操作するオンハンド操作盤18と、ロボットを制御するロボット制御装置20とを備える。ロボット制御装置20は、ロボット16を自動制御する自動モードと、ロボット16をオンハンド操作盤18により手動制御する協働モードとを有しており、人6の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けるためのハンドガイド装置とその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの自動車メーカが「モジュール化組付」を推進している。モジュール化組付とは、車体に組付ける複数の部品を1つのモジュールに予め組付けておき、このモジュールを車体に組付ける部品組付手段である。
このようなモジュール化組付により、部品組付のための車両内乗込み作業を低減することができるが、その反面、モジュールが大型化し、作業者の負担が増大していた。
【0003】
そこで、組立ライン上で移動する作業対象物(例えば、自動車の車体)にワーク(例えば、インストゥルメントパネルなどのモジュール)を組付ける際の、作業者の負担を軽減する手段が種々、提案されている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1、2)。
【0004】
非特許文献1、2及び特許文献3は、いわゆるパワーアシスト装置であり、作業全体を作業者が実施するが、これらの装置によりワークの重量を支持することで、作業員による重量物の扱いを容易にするものである。
特許文献1、2は、いわゆるハンドガイド装置であり、人の操作入力によりロボットを操作し、人とロボットが協働作業するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3872387号公報、「人間と共存するロボットの制御装置と制御方法」
【特許文献2】特許特開2008−213119号公報、「協調作業ロボットとその制御方法」
【特許文献3】特開2009−034758号公報、「パワーアシスト装置及びその制御方法」
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】鴻巣仁司,荒木勇,山田陽滋、「自動車組立作業支援装置スキルアシストの実用化」日本ロボット学会誌Vol.22 No.4,pp.508〜514, 2004
【非特許文献2】アイコクアルファ ラクラクハンド(リフトアシスト)、インターネット<URL:http://www.aikoku.co.jp/rh/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1) 非特許文献1、2は、本質的にパワーアシスト装置であり、重量物のハンドリングにおける作業者の負担は軽減されるが、供給装置など固定点に置かれたワークを把持するような単純作業であっても人が操作する必要があり、また操作の難易度も高い。
(2) 特許文献1、2は、いわゆるハンドガイド装置であり、組立ライン上を移動する作業対象物に対して人がロボットを操作してワークを近づける際、人は組付けなどの作業のための操作に加え、ライン速度に対応して、作業対象物に追従する操作を行なう必要がある。そのため、結果として動いている対象物に対する位置合わせ作業を実現する必要があり、操作の難易度がより高くなる。
【0008】
(3) 作業対象物にワークを挿入する作業、例えば自動車の車体組立工程におけるインパネ組付けなどの場合は、ワークが作業対象物の中に入った状態になるので、作業者の操作モードになった後は、作業者がワークをライン速度に対応して動かさないと、ワークと作業対象物が衝突することになる。
(4) 作業対象物が移動するので、アシスト装置の可動範囲内で組付け作業を完了する必要がある。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、(1)単純作業はロボットに任せ、人の判断や経験を必要とする作業時のみ、人がロボットを操作して、組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けることができ、(2)ライン速度に対応して、作業対象物に追従する操作を行なう必要がなく、(3)ワークと作業対象物の衝突を防止することができ、(4)装置の可動範囲内で組付作業を完了することができるハンドガイド装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けるためのハンドガイド装置であって、
ワークを把持するワーク把持装置と、該ワーク把持装置を有する細長いハンドと、該ハンドの末端部を片持ち支持し該末端部を所定のロボットエリア内で移動可能なロボットと、前記ハンドのワーク把持装置近傍に設けられロボットの作動を操作するオンハンド操作盤と、前記ロボットを制御するロボット制御装置とを備え、
前記ロボット制御装置は、ロボットを自動制御する自動モードと、ロボットをオンハンド操作盤により手動制御する協働モードとを有しており、
人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行する、ことを特徴とするハンドガイド装置が提供される。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記組立ライン及びロボットエリアの外側に設けられ前記ロボットに制御信号を出力する外部操作盤と、ロボットの作動状態を表示する状態表示装置とを備え、
前記自動モードにおいて、状態表示装置により協働モードに切替え可能な状態を協働作業可能状況として表示し、
前記外部操作盤により協働モードに切替え、
協働モードにおいてロボットをオンハンド操作盤により手動制御して作業対象物にワークを組付けた後に、前記外部操作盤により自動モードに切替える。
【0012】
また、前記自動モードにおいて、協働モード以外では、前記組立ライン内に人が入れないように遮断するライン遮断装置を備える。
【0013】
また、前記オンハンド操作盤は、安全を担保するために片手を占有するイネーブルスイッチと、直交3軸の並進入力と該3軸まわりの回転入力を片手操作で入力可能な片手操作入力デバイスとを備え、
前記協働モードにおいて、両手で前記イネーブルスイッチと片手操作入力デバイスを操作することによりロボットを手動制御できるようになっている。
【0014】
また本発明によれば、ワークを把持するワーク把持装置と、該ワーク把持装置を有する細長いハンドと、該ハンドの末端部を片持ち支持し該末端部を所定のロボットエリア内で移動可能なロボットと、前記ハンドのワーク把持装置近傍に設けられロボットの作動を操作するオンハンド操作盤とを備え、組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けるためのハンドガイド装置の制御方法であって、
ロボットを自動制御する自動モードと、ロボットをオンハンド操作盤により手動制御する協働モードとを有しており、
人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行する、ことを特徴とするハンドガイド装置の制御方法が提供される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記組立ライン上において、自動モード及び協働モードにおいて、手動制御入力がないときに組立ラインと同じ速さでワークを移動させる。
【0016】
また、前記協働モードにおいて、退避動作に必要な時間を常時監視し、前記時間が所定の第1閾値より短い場合にイエローゾーンと判断し、前記時間が第1閾値より短い所定の第2閾値より短い場合にレッドゾーンと判断し、それぞれアラームを発信する。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の装置と方法によれば、ロボット制御装置が、ロボットを自動制御する「自動モード」と、ロボットをオンハンド操作盤により手動制御する「協働モード」とを有しており、人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行するので、単純作業は自動モードにおいてロボットが自動で行ない、最終組立のような位置決めの難しい作業は、協働モードにおいて人が判断しながらロボットを手動制御することで作業を行なうことができる。
【0018】
また、協働モードにおいてロボットの作動を操作するオンハンド操作盤が、ハンドのワーク把持装置近傍に設けられているので、人(作業員)は作業対象物(例えば、自動車の車体内)に乗込み、ワーク近傍でワークを直接目視しながら作業することができ、組付け作業が容易に実現できる。
【0019】
また、同様に、人(作業員)は作業対象物(例えば、自動車の車体内)に乗込み、ワーク近傍でワークを直接目視しながら作業するので、ワークの組付けの途中に,ワークの確認(品種の正誤,外観,把持状態など)が人の目で実施できる。
【0020】
また、自動モード及び協働モードの両モードにおいて、手動制御入力がないときに組立ラインと同じ速さでワークを移動させるので、オンハンド操作盤の操作時にイネーブルスイッチの状態に関わらずロボットがライン速度に追従するので、人(作業員)がイネーブルスイッチを押すまでの間にロボットが作業対象物に干渉することもなく、また作業員が操作中もライン速度に追従することは気にせずに、相対的にロボットが把持するワークと作業対象は停止した状態で作業できるので、作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるハンドガイド装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明におけるロボットの構成図である。
【図3】本発明におけるオンハンド操作盤の構成図である。
【図4】本発明によるハンドガイド装置の制御方法のフロー図である。
【図5】本発明によるハンドガイド装置の作動説明図である。
【図6】本発明における干渉防止装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明によるハンドガイド装置の全体構成を示す平面図である。
本発明のハンドガイド装置10は、組立ライン1上を移動する作業対象物2にワーク3を組付けるためのハンドガイド装置である。この例における組立ライン1は、作業対象物2(この例で自動車の車体)にワーク3(この例でインストゥルメントパネルなどのモジュール)を組付けるラインであり、作業対象物2は所定の速度で左方(図で)に連続的に移動するようになっている。
作業対象物2(車体)には、開口部2a(車体のドア部)が設けられており、この開口部2aを通してワーク3を車内に挿入することができる。またこの図で4はロボットのハンド取付け部(後述するハンドの末端部)が移動するロボットエリア4aを仕切るロボットエリア安全柵、5は組立ライン1を仕切る人エリア安全柵である。
【0024】
また組立ライン1とロボットエリア4aの間隔は、人が退避できる幅の安全エリア1aに設定されており、この安全エリア1aには、人の侵入を検知する安全センサ(例えば安全マット等)が設置されている。
この構成により安全エリア1aへ人が入った場合でも、アラーム又は非常停止により、車体と安全柵の間に人が挟まれるのを防止することができる。
なお、この構成は必須ではなく、車体−安全柵間の挟まれリスクが回避もしくは低速等の場合に、幅を狭くし、或いは安全センサを省略することができる。
【0025】
図1において、本発明のハンドガイド装置10は、ワーク把持装置12、ハンド14、ロボット16、オンハンド操作盤18、及びロボット制御装置20を備える。
【0026】
図2は、本発明におけるロボットの構成図である。なおこの図は、ハンド14の長手方向から見ている。
図1及び図2において、ワーク把持装置12は、ワーク3を把持するエンドエフェクタである。
ハンド14は、ワーク把持装置12を中間位置に有する細長い部材であり、この例ではほぼ水平に位置する。ハンド14は、作業対象物2にワーク3を組付ける際に、ハンド14の末端部14aがロボットエリア4a内に位置する長さを有している。
ロボット16は、この例では多関節ロボットであり、ハンド14の末端部(図1で上端)を片持ち支持し、末端部14aを所定のロボットエリア4a内で移動可能に構成されている。本願において、ロボット16は、多関節ロボットに限定されず、その他の周知のロボットであってもよい。
オンハンド操作盤18は、ハンド14のワーク把持装置近傍(この例で中央位置)に設けられ、人6(例えば作業員)がオンハンド操作盤18を操作してロボット16の作動を操作するようになっている。
【0027】
ロボット制御装置20は、ロボット16を制御する。
本発明において、ロボット制御装置20は、ロボット16を自動制御する「自動モード」と、ロボット16をオンハンド操作盤18により手動制御する「協働モード」とを有している。
自動モードでは、人6(作業員)の操作なしに、所定のシーケンス又はプログラムに従い、ロボット16を自動制御する。
協働モードでは、人6(作業員)がオンハンド操作盤18を操作してロボット16の作動を操作するようになっている。
また、本発明のハンドガイド装置10は、人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行するようになっている。
この制御内容の詳細は後述する。
【0028】
図3は、本発明におけるオンハンド操作盤の構成図である。
本発明におけるオンハンド操作盤18は、イネーブルスイッチ18a、片手操作入力デバイス18b、表示灯18c及び押釦スイッチ18dを備える。
イネーブルスイッチ18aは、安全を担保するために片手を占有し、これを把持することでスイッチがONするようになっている。
片手操作入力デバイス18bは、直交3軸の並進入力と該3軸まわりの回転入力を片手操作で入力可能に構成されている。
また本発明の協働モードにおいて、両手でイネーブルスイッチ18aと片手操作入力デバイス18bを操作することによりロボット16を手動制御できるようになっている。
なお、片手操作入力デバイスの軸数は直交3軸の並進入力と該3軸まわりの回転入力に限定されず、操作内容に応じて軸数を減らした構成であってもよい。また、入力デバイスは片手操作入力デバイスに限定されず、2つの入力デバイスを両手で操作してロボット16を手動制御する構成であってもよい。
表示灯18cは、ハンドガイド装置10の種々の状態(例えば、後述するイエローゾーン及びレッドゾーン)を表示し、押釦スイッチ18dは種々の信号(例えば、非常停止信号)を出力するようになっている。
【0029】
図1において、本発明のハンドガイド装置10は、さらに外部操作盤22、状態表示装置24、ライン遮断装置26、ロボットエリア遮断装置27及び開口検出センサ28を備える。
【0030】
外部操作盤22は、組立ライン1に対しロボットの反対側の人エリア安全柵5の外側に設けられ、作業開始スイッチ、作業終了スイッチ、モード切替スイッチ、非常停止スイッチ等を備え、ロボット16(すなわちロボット制御装置20)にそれぞれの制御信号を出力する。
状態表示装置24は、ロボット16の作動状態を表示する。この作動状態は、例えば自動モードと協働モード、後述する協働作業可能状況、イエローゾーン、レッドゾーン、ライン停止のアラームなどである。
なお、図1では、外部操作盤22と状態表示装置24を同一位置に設置しているが、それぞれ別の位置に設置してもよい。
【0031】
本発明のハンドガイド装置10は、自動モードにおいて、状態表示装置24により協働モードに切替え可能な状態を「協働作業可能状況」として表示し、外部操作盤22上の作業開始スイッチによる作業開始信号により、「協働モード」に切替え、外部操作盤22上の作業完了スイッチによる作業完了信号により、「自動モード」に切替えるようになっている。
なお、作業開始スイッチ及び作業終了スイッチに連動せずに、モード切替スイッチで「自動モード」に切替えてもよい。
【0032】
ライン遮断装置26は、例えばライトカーテン又はシャッターであり、協働モード以外で、組立ライン1内に人が入れないように通路を遮断する。
【0033】
ロボットエリア遮断装置27は、例えばライトカーテン又はシャッターであり、本発明のハンドガイド装置10がロボットエリア4a内で作動中において、ロボットエリア内に人が入ったり、ロボットがロボットエリア外に出たりしないようにロボットエリアの開口部を遮断する。
【0034】
開口検出センサ28は、この例では、ロボットエリアの開口部近傍に設けられたCCDカメラであり、作業対象物2の開口部2aを検出する。なお、開口検出センサ28は、この例に限定されず、ハンド14の一端(図で下端)に設けたCCDカメラでもよく、或いは、その他のセンサ(例えば、リミットスイッチ、光電センサ、静電センサ等)であってもよい。
【0035】
図4は、本発明によるハンドガイド装置の作動説明図であり、(A)は前半の自動モード、(B)は協働モード、(C)は後半の自動モードを示している。
また図5は、本発明によるハンドガイド装置の制御方法のフロー図であり、S1〜S16のステップ(工程)からなる。
【0036】
本発明による制御では、初めにライン情報を取得し(S1)、自動モードを表示する(S2)。
【0037】
図4(A)は、前半の自動モードにおいて、作業対象物2の開口部2aを検出した状態(後述するS6)を示している。
前半の自動モードでは、ロボット16は自動制御される。この自動モードにおいて、作業対象物2の情報を取得し(S3)、供給位置でワーク3を把持し(S4)、開口部手前まで搬送し(S5)、開口検出センサ28により作業対象物2の開口部2aを検出し(S6)、ワーク3を開口部2aへ挿入し(S7)、ワーク3を組付位置に接近させ(S8)、ワーク3をライン速度に同期させ(S9)、状態表示装置24により協働作業可能状況を表示する(S10)。
【0038】
協働作業可能状況のときに外部操作盤で協働モードへの変更がなされるまで、人6(例えば作業員)は、組立ライン1の外側(図で下側)に退避しており、ライン遮断装置26により組立ライン1内に人が入れないように通路が遮断されている。
協働モードに変更されると、人6は、組立ライン1上の作業対象物2の内部に乗り込むことができ、オンハンド操作盤18を操作できる状態となる。
なお、人が乗り込み、オンハンド操作盤18の操作を開始するまでの間も、ロボット16による自動制御によりワーク3はライン速度に同期している(S9)。すなわち組立ライン上において、自動モード及び協働モードにおいて、手動制御入力がないときに組立ライン1と同じ速さでワーク3を移動させるようになっている。
【0039】
なお、自動モード及び協働モードにおけるワーク3の組立ライン1との同期制御は、必須ではなく、自動モード、協働モードの一方又は両方において、ワーク3を組立ライン1と同期させなくてもよい。
すなわち、ワークの同期制御は、以下の4通りのいずれであってもよい。
(1) 自動モード及び協働モードの両方で同期。
人が未操作時にロボットと作業対象が干渉しないように動作させ、人が操作時もライン速度を補正しつつ、人の操作を受け付ける。
(2) 自動モードで同期、協働モードで非同期。
人が未操作時にロボットと作業対象が干渉しないように動作させ、人が操作時はライン速度への追従を含め人が操作する。
(3) 自動モードで非同期、協働モードで同期。
人が未操作時にライン速度への追従を含め人が操作し、人が操作時はライン速度を補正しつつ、人の操作を受け付ける。
(4) 自動モード及び協働モードの両方で非同期。
人が未操作時にライン速度への追従を含め人が操作し、人が操作時もライン速度への追従を含め人が操作する。
【0040】
図4(B)は、協働モードにおいて、人6がロボット16(すなわちオンハンド操作盤18)を操作して、組立ライン1上を移動する作業対象物2にワーク3を組付ける状態(後述するS12)を示している。
この協働モードでは、ロボット16は人6(作業員)によるオンハンド操作盤18により手動制御される。
協働可能状況において、人6が外部操作盤22の作業開始スイッチをONし(S11)、組立ライン1上の作業対象物2の内部に乗り込んでオンハンド操作盤18を操作して、作業対象物2にワーク3を組付ける協働作業(組付作業)を実施する(S12)。
なお、作業開始信号の代わりに、人6の協働エリアへの侵入(又は存在)を人検知センサ(例えば赤外線センサ)を用いて検知してもよい。
【0041】
また、この協働モードにおいて、ロボット制御装置20により退避動作に必要な時間を常時演算し、この時間が所定の第1閾値より短い場合にイエローゾーンと判断し、この時間が第1閾値より短い所定の第2閾値より短い場合にレッドゾーンと判断し、それぞれアラームを発信する。
すなわち作業完了後に退避動作をするのに必要な距離を演算し、ロボット16の所定のロボットエリア4a内において、残りの可動範囲に対応して、作業完了を急がなければならないイエローゾーンと、これ回避不可となるレッドゾーンと、ライン停止信号とを発信し、状態表示装置24にアラームを表示する。
【0042】
この協働作業(組付作業)が完了し、人6が作業対象物2の内側から組立ライン1の外側(図で下側)に退避し、外部操作盤22の作業完了スイッチをONして作業完了信号(S13)を出力すると、ロボット制御装置20が作業完了信号を受信して協働モードが終了し、自動モードが表示され(S14)、後半の自動モードに切り替わる。
なお、外部操作盤22の作業完了スイッチをONする前に、人が操作してワーク3を開放し(後述するS15)、ロボットを少し退避させてもよい。
【0043】
図4(C)は、後半の自動モードにおいて、作業対象物2の開口部2aからワーク3が退避する状態(後述のS16)を示している。
後半の自動モードでは、ロボット16は自動制御される。後半の自動モードでは、ロボット16を自動制御してワーク3を開放し(S15)、ロボット制御装置20によりハンド14を開口部2a(車体のドア部)より離脱させる(S16)。
次いで、ロボット16を自動制御してロボットの初期位置(待機位置)まで復帰させる。
【0044】
上述したように本発明のハンドガイド装置の制御方法は、ロボットを自動制御する自動モードと、ロボットをオンハンド操作盤により手動制御する協働モードとを有しており、人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行するようになっている。
【0045】
図6は、本発明における干渉防止装置の構成図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。また、この図において、2bは作業対象物2の開口部2aの後方(図で右側)に位置する車体干渉部位である。
図6に示す干渉防止装置30は、遮断検出用の光電センサ32とセンサアーム34とアクチュエータ(図示せず)とからなる。センサアーム34は、光電センサ32を先端部に有し、ハンド14に取付けられ、後方と上方との間で揺動可能に構成されている。図示しないアクチュエータは、ハンド14に取付けられ、センサアーム34を揺動させる。
この構成により、センサアーム34を後方に揺動させた状態において、光電センサ32により車体干渉部位2bを幅方向に挟んで無接触で検知すると、ハンド14を一定量前進させることで、ワーク3をライン速度に同期させるようになっている。
なお、この構成において、ハンド14の挿入又は離脱の際は、センサアーム34を上方に揺動させて、車体干渉部位2bとの干渉を回避するようになっている。
【0046】
なお、ワーク3のライン同期(上述のS9)は、この構成に限定されず、例えばライン速度を直接計測しても、或いは上位システムからライン速度情報を取得してもよい。また、上記構成以外のセンサ(例えば、リミットスイッチ、光電センサ、静電センサ等)を用いてもよい。
【0047】
上述した本発明の装置と方法によれば、ロボット制御装置20が、ロボット16を自動制御する「自動モード」と、ロボット16をオンハンド操作盤18により手動制御する「協働モード」とを有しており、人6の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行するので、単純作業は自動モードにおいてロボット16が自動で行ない、最終組立のように位置決めの難しい作業は、協働モードにおいて人6が判断しながらロボットを手動制御することで作業を行なうことができる。
【0048】
また、協働モードにおいてロボット16の作動を操作するオンハンド操作盤18が、ハンド14のワーク把持装置近傍(中央部分)に設けられているので、人6(作業員)は作業対象物2(例えば、自動車の車体内)に乗込み、ワーク近傍でワーク3を直接目視しながら作業することができるので、ワーク組み付け時の視認性がよく、従来とほぼ同等の視認性を確保しながら作業ができる。
【0049】
また、同様に、人6(作業員)は作業対象物2(例えば、自動車の車体内)に乗込み、ワーク近傍でワーク3を直接目視しながら作業するので、ワークの組付けの途中に,ワークの確認(品種の正誤,外観,把持状態など)が人の目で実施できる。
【0050】
また、自動モード及び協働モードの両モードにおいて、手動制御入力がないときに組立ライン1と同じ速さでワーク3を移動させるので、オンハンド操作盤18の操作時にイネーブルスイッチの状態に関わらずロボット16がライン速度に追従するので、人6(作業員)がイネーブルスイッチを押すまでの間にロボット16が作業対象物2に干渉することもなく、また作業員が操作中もライン速度に追従することは気にせずに、相対的にロボットが把持するワークと作業対象は停止した状態で作業できるので、作業性を向上できる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1 組立ライン、1a 安全エリア、
2 作業対象物(自動車の車体)、
2a 開口部(車体のドア部)、2b 車体干渉部位、
3 ワーク(インストゥルメントパネル)、
4 ロボットエリア安全柵、4a ロボットエリア、
5 人エリア安全柵、6 人(作業員)、
10 ハンドガイド装置、
12 ワーク把持装置(エンドエフェクタ)、
14 ハンド、
16 ロボット(多関節ロボット)、
18 オンハンド操作盤、
18a イネーブルスイッチ、
18b 片手操作入力デバイス、
18c 表示灯、18d 押釦スイッチ、
20 ロボット制御装置、
22 外部操作盤、24 状態表示装置、
26 ライン遮断装置、
27 ロボットエリア遮断装置、
28 開口検出センサ、
30 干渉防止装置、32 光電センサ、
34 センサアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けるためのハンドガイド装置であって、
ワークを把持するワーク把持装置と、該ワーク把持装置を有する細長いハンドと、該ハンドの末端部を片持ち支持し該末端部を所定のロボットエリア内で移動可能なロボットと、前記ハンドのワーク把持装置近傍に設けられロボットの作動を操作するオンハンド操作盤と、前記ロボットを制御するロボット制御装置とを備え、
前記ロボット制御装置は、ロボットを自動制御する自動モードと、ロボットをオンハンド操作盤により手動制御する協働モードとを有しており、
人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行する、ことを特徴とするハンドガイド装置。
【請求項2】
前記組立ライン及びロボットエリアの外側に設けられ前記ロボットに制御信号を出力する外部操作盤と、ロボットの作動状態を表示する状態表示装置とを備え、
前記自動モードにおいて、状態表示装置により協働モードに切替え可能な状態を協働作業可能状況として表示し、
前記外部操作盤により協働モードに切替え、
協働モードにおいてロボットをオンハンド操作盤により手動制御して作業対象物にワークを組付けた後に、前記外部操作盤により自動モードに切替える、ことを特徴とする請求項1に記載のハンドガイド装置。
【請求項3】
前記自動モードにおいて、状態表示装置により協働作業可能状況が表示されるまで、前記組立ライン内に人が入れないように遮断するライン遮断装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のハンドガイド装置。
【請求項4】
前記オンハンド操作盤は、安全を担保するために片手を占有するイネーブルスイッチと、直交3軸の並進入力と該3軸まわりの回転入力を片手操作で入力可能な片手操作入力デバイスとを備え、
前記協働モードにおいて、両手で前記イネーブルスイッチと片手操作入力デバイスを操作することによりロボットを手動制御できるようになっている、ことを特徴とする請求項1に記載のハンドガイド装置。
【請求項5】
ワークを把持するワーク把持装置と、該ワーク把持装置を有する細長いハンドと、該ハンドの末端部を片持ち支持し該末端部を所定のロボットエリア内で移動可能なロボットと、前記ハンドのワーク把持装置近傍に設けられロボットの作動を操作するオンハンド操作盤とを備え、組立ライン上を移動する作業対象物にワークを組付けるためのハンドガイド装置の制御方法であって、
ロボットを自動制御する自動モードと、ロボットをオンハンド操作盤により手動制御する協働モードとを有しており、
人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行する、ことを特徴とするハンドガイド装置の制御方法。
【請求項6】
前記組立ライン上において、自動モード及び協働モードにおいて、手動制御入力がないときに組立ラインと同じ速さでワークを移動させる、ことを特徴とする請求項5に記載のハンドガイド装置の制御方法。
【請求項7】
前記協働モードにおいて、退避動作に必要な時間を常時監視し、前記時間が所定の第1閾値より短い場合にイエローゾーンと判断し、前記時間が第1閾値より短い所定の第2閾値より短い場合にレッドゾーンと判断し、それぞれアラームを発信する、ことを特徴とする請求項5に記載のハンドガイド装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93062(P2011−93062A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251156(P2009−251156)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】