パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】接合材の腐食を抑制して、気密性に優れたパッケージ、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供する。
【解決手段】リッド基板用ウエハ50の裏面に形成されたアルミニウムを主成分とする材料からなる接合材と、ベース基板用ウエハ40の表面とを陽極接合する接合工程と、接合材を酸化させる酸化工程とを有し、酸化工程では、接合材を所定温度に加熱した状態で、接合材から接合材を挟む何れかのウエハへの方向へ電流が流れるように電圧を印加することを特徴とする。
【解決手段】リッド基板用ウエハ50の裏面に形成されたアルミニウムを主成分とする材料からなる接合材と、ベース基板用ウエハ40の表面とを陽極接合する接合工程と、接合材を酸化させる酸化工程とを有し、酸化工程では、接合材を所定温度に加熱した状態で、接合材から接合材を挟む何れかのウエハへの方向へ電流が流れるように電圧を印加することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
ベース基板とリッド基板とを直接接合させる方法として、陽極接合が提案されている。陽極接合は、ベース基板及びリッド基板のうち、一方の基板の内面に形成された接合材と、他方の基板との間に電圧を印加することにより、接合材と他方の基板の内面とを接合する方法である。接合材の材料として、抵抗値が比較的低いアルミニウム(Al)を採用する場合がある。このように、接合材にAlを採用することで、接合材の全面に対して均一に電圧を印加でき、接合材と他方の基板の内面とを確実に陽極接合できると考えられる。また、特許文献1には、接合材の耐電圧性を高めるために、Alに銅(Cu)が含有されたAl合金を接合材として採用する構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−339840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Alは耐腐食性が低い(イオン化傾向が比較的高い)材料であるため、Alからなる接合材が圧電振動子の外面から露出していると、接合材が腐食しやすいという問題がある。
特に、接合材に水分が付着すると、Alと水分との酸化還元反応により表面のAlが電子を失ってイオン化(電離)し、生じたAlイオンが水分中の水酸化物(OH)イオンと反応して水酸化アルミニウム(Al(OH3))となって溶け出す。この反応が接合材の奥まで進行すると、キャビティの内部と外部とが連通して、圧電振動子の気密性(接合材のガスバリア性)が低下する虞がある。すなわち、連通した箇所を通って大気がキャビティ内に侵入することで、圧電振動片の振動特性が低下するという問題がある。なお、特許文献1のようにAlにCuを含有したAl合金を接合材に採用しても、上述した問題は同様に発生する。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、接合材の腐食を抑制して、気密性に優れたパッケージ、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、前記第1基板の接合面に形成されたアルミニウムを主成分とする材料からなる接合材と、前記第2基板の接合面とを陽極接合する接合工程と、前記接合材を酸化させる酸化工程とを有し、前記酸化工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記接合材を挟む何れかの前記基板への方向へ電流が流れるように電圧を印加することを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、アルミニウムを主成分とする材料からなる接合材を介して、第1基板と第2基板とを陽極接合することで、接合材の全面に対して均一に電圧を印加することができ、両基板の接合面同士が強固に陽極接合されたパッケージを簡単に形成できる。
特に、陽極接合後の酸化工程において、接合材を酸化させることで、接合材は酸化アルミニウムからなる接合材酸化膜となる。酸化アルミニウムは非常に緻密で化学的安定性に優れているため、パッケージの外面から露出しても、腐食することはない。そのため、大気や大気中の水分等がキャビティ内に流入するのを抑制して、パッケージの気密を長期に亘って安定した状態に維持できる。
【0009】
また、前記接合工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記第2基板に向けて電流が流れるように電圧を印加することで、前記接合材と前記第2基板とを陽極接合し、前記酸化工程は、前記接合工程の時間を延長することによって行うことを特徴としている。
この構成によれば、接合工程の時間を延長するだけで接合材を酸化させることができる。具体的に、接合工程の終了後、接合材を加熱した状態で、接合材から第2基板に向けて電流が流れるように電圧を印加し続けると、接合材と第2基板とが陽極接合された後、第2基板から発生して接合材側に移動する負電荷(酸素イオン)によって接合材は酸化され、酸化アルミニウムとなる。これにより、接合工程と同じ設備を用いて酸化工程を行うことができ、設備コストの増加を抑制できる。また、別途他の装置に搬送する手間も省けるので、工数増加に伴う製造効率の低下を可能な限り抑制できる。
【0010】
また、前記酸化工程では、前記第1基板の外面に陽極となる接合補助材を配置し、前記第2基板の外面に陰極を配置した状態で電圧を印加し、前記接合補助材は、前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、接合補助材と陰極との間に電圧を印加することで、接合補助材と第1基板の外面との間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材と第2基板の内面との間が陽極接合される。これにより、接合材の全面に対して均一に電圧を印加することが可能になり、接合材と第2基板の内面との間をより確実に陽極接合することができる。
ここで、酸化工程において第2基板で発生した負電荷(酸素イオン)は、接合補助材に向かって接合材を厚さ方向に透過していき、この際に接合材と酸素イオンとが反応して接合材が酸化する。そのため、接合材の厚さ方向全体を確実に酸化させることができる。
【0011】
また、本発明のパッケージは、互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、前記第1基板及び前記第2基板は、接合材を介して陽極接合され、前記接合材は、酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、酸化アルミニウムからなる接合材は非常に緻密で化学的安定性に優れているため、パッケージの外面から露出しても、腐食することはない。そのため、大気や大気中の水分等がキャビティ内に流入するのを抑制して、パッケージの気密を長期に亘って安定した状態に維持できる。
【0012】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、気密性に優れたパッケージを備えているので、キャビティ内の気密性を長期に亘って確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供できる。
【0013】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、パッケージの気密を長期に亘って安定した状態に維持できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密性を長期に亘って確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に特性及び信頼性に優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態を示す圧電振動片の平面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】接合工程の説明図であり、図6のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【図8】接合反応の説明図である。
【図9】接合補助材除去工程の説明図であり、図6のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【図10】本発明に係る発信器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図13】接合工程の他の方法を示す説明図であり、図6のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板(第2基板)3が接合材酸化膜23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0020】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0021】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材酸化膜23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0022】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0023】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0024】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。なお外部電極6,7の側面は、ベース基板2の側面よりも内側に位置している。
【0025】
貫通電極8,9は、焼成によってスルーホール21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、スルーホール21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0026】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、スルーホール21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0027】
ここで、図2,図4に示すように、リッド基板3の額縁領域3c(ベース基板2との接合面)には、酸化アルミニウム(アルミナ)からなる接合材酸化膜23が形成されている。後述するように、この接合材酸化膜23は、アルミニウムからなる接合材23a(図7参照)が酸化されてなり、アルミニウムの状態の接合材23aとベース基板2とを陽極接合した後、酸化させることで形成されている。
【0028】
また、ベース基板2の表面2b上には、キャビティC内に収容されるようにゲッター材34が形成されている。ゲッター材34は、レーザー照射により活性化して周囲のガスを吸着するものであり、例えばアルミニウム(Al)やチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)等の金属、またはそれらの合金等で形成することが可能である。ゲッター材34は、圧電振動子1の外部からレーザー照射しうる位置に配置されている。本実施形態において、ゲッター材34は、ベース基板2の厚さ方向から見て圧電振動片5における一対の振動腕部24,25の両外側に配置されている。なお、ゲッター材34には、後述するゲッタリング工程時に、レーザー光が照射されて除去されることで、レーザー照射痕30が形成されている。
【0029】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0030】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0031】
初めに、図5に示すように、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0032】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。
【0033】
そして、リッド基板用ウエハ50の裏面50a側に接合材23aを形成する(S24)。具体的に、まずリッド基板用ウエハ50の裏面50a(凹部3aの内面全体及び凹部3aの周囲の額縁領域3c)全体にアルミニウムからなる接合材23aを成膜する。そして、凹部3aの内面に相当する領域の接合材23aをパターニングして除去することで、額縁領域3c上に接合材23aが形成される。なお、接合材23aは、上述したようにリッド基板用ウエハ50との接合領域(例えば額縁領域3c)のみに形成してもよいが、接合材23aの成膜後にパターニングせず、リッド基板用ウエハ50の裏面50a全体に残存させても構わない。これにより、製造工数を削減して製造コストを低減できる。また、接合材形成工程(S24)の前に研磨工程(S23)を行っているので、接合材23aの表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0034】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハに一対の貫通電極8,9を配置するためのスルーホール21,22を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面40bから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール21,22を形成することができる。
【0035】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40b(図6における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。次に、一対の貫通電極8,9に電気的接続された引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。
このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0036】
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0037】
図7及び図8は、接合工程及び酸化工程の説明図であって、図6のC−C線に沿った断面の部分拡大図である。
図7(a)に示すように、本実施形態の接合工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50の表面50bに陽極となる接合補助材72を配置するとともに、ベース基板用ウエハ40の裏面40bを陰極とする方式(いわゆる、対向電極方式)を採用している。接合補助材72は、接合補助材72とリッド基板用ウエハ50との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されている。具体的には、接合補助材とガラスと電極とを重ね合わせ、加熱すると同時に、接合補助材側を陽極とし電極側を陰極として電圧を印加した場合に、ガラスに含まれるナトリウムイオンを陰極に向かって移動させ、ガラスの接合補助材側(陰極側)に負電荷(酸素イオン)層を発生させる材料である接合材。より具体的には、接合補助材72の材料として、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)バルク材、クロム(Cr)、カーボン(C)等の、薄膜やバルク材を採用することができ、本実施形態ではカーボンが好適に用いられている。なおバルク材とは、相当な厚さを有する基板状の部材である。
【0038】
電極71は、ステンレスやカーボン(C)等で形成されている。なお、電極71は、ベース基板用ウエハ40の裏面40bで貫通電極8,9を避けるように配置されている。これにより、貫通電極8,9からの放電を防止できる。次に、治具(不図示)を用いて接合補助材72と電極71との間を押圧し、ウエハ接合体60に圧力をかける(例えば、3インチのウエハ接合体60に対して100N)。次に、治具ごとウエハ接合体60を陽極接合装置の内部に入れる。次に、陽極接合装置の内部を所定温度(例えば、200〜250℃)に保持して、ウエハ接合体60を加熱する。同時に、接合補助材72が陽極となり電極71が陰極となるように直流電源70を接続して、ウエハ接合体60に電圧を印加する。
【0039】
これにより、図8に示すように、リッド基板用ウエハ50のガラス材料に含まれるナトリウムイオンが接合材23aに向かって移動する。これに連動して、ベース基板用ウエハ40のガラス材料に含まれるナトリウムイオンも電極71に向かって移動することで、接合材23aからベース基板用ウエハ40に向かって電流が流れる。そのため、ベース基板用ウエハ40の接合材23a側には、ナトリウムイオンが欠乏した負電荷層が形成される。この負電荷層と接合材23aとの間に静電引力が発生して、ベース基板用ウエハ40と接合材23aとの界面F2が陽極接合される。そして、所定時間(例えば、30分程度)経過後に、ベース基板用ウエハ40と接合材23aが全て陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。なお、リッド基板用ウエハ50の接合補助材72側にも、ナトリウムイオンが欠乏した負電荷層が形成される。そのため、リッド基板用ウエハ50と接合補助材72との界面F1も陽極接合される。
【0040】
ここで、ベース基板用ウエハ40に陽極接合された接合材23aを酸化させる酸化工程(S70)を行う。具体的には、上述した接合工程(S60)と同様の条件で、ウエハ接合体60を加熱した状態で、ウエハ接合体60に電圧を印加し続ける。
【0041】
ところで、通常の陽極接合では、ウエハ接合体60を所定温度に加熱した状態で、電荷(Q=電流(I)×時間(t))制限をかけた状態でウエハ接合体60に電圧を印加する。これは、陽極接合後に接合部分から放出されるアウトガス(例えば、酸素)の発生を抑制するためである。
これに対して、本実施形態では、接合工程(S60)から酸化工程(S70)にかけて、電荷制限を外した状態でウエハ接合体60に電圧を印加する。
【0042】
すると、接合材23aとベース基板用ウエハ40とが陽極接合された後、ベース基板用ウエハ40から発生して接合材23a側に移動する負電荷(酸素イオン)は、接合材23aを透過して、リッド基板用ウエハ50側に移動する。接合材23aは、酸素イオンが透過する際に酸化されることで、酸化アルミニウム(AlO3)となる。そして、接合工程(S60)の終了後から所定時間(例えば、90分程度)経過後、接合材23aが全て酸化され、酸化アルミニウムからなる接合材酸化膜23が形成される。ここで、本実施形態では陽極接合を対向電極方式で行っているため、ベース基板用ウエハ40で発生した酸素イオンは、接合補助材72に向かって接合材23aを厚さ方向に透過していき、この際に接合材23aと酸素イオンとが反応して接合材23aが酸化する。そのため、後述する直接電極方式に比べて接合材23aを効率的に酸化させることができるため、接合材23a全体を確実に酸化させることができる。なお、本実施形態の酸化工程(S70)では、接合工程(S60)と同様に、ウエハ接合体60に対して圧力をかけた状態で行ったが、接合後には圧力を解除しても構わない。
【0043】
図9は、接合補助材除去工程の説明図であって、図6のC−C線に沿った断面の部分拡大図である。
図9に示すように、接合補助材除去工程(S80)では、リッド基板用ウエハ50に陽極接合された接合補助材72を除去する接合補助材76及び接合補助基板77を研削等によって除去する。具体的には、グラインダ装置等を使用して、破線79で示すリッド基板用ウエハ50の表層まで研削する。研削によれば、接合補助材72が厚い場合でも、比較的短時間で除去することができる。
【0044】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成する(S70)。
【0045】
ところで、上述した接合工程(S60)の終了後には、陽極接合時に発生したアウトガスがキャビティC内に存在する。特に、本実施形態では、酸化工程(S70)の追加に伴い、電荷制限を外したため、比較的多量のアウトガスがキャビティC内に残存している可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、キャビティC内の真空度の向上を図るため、ウエハ接合体60の各キャビティC内に収容されたゲッター材34を活性化させてキャビティC内の真空度を調整するゲッタリング工程を行う(S100)。
ゲッタリング工程(S100)では、ベース基板用ウエハ40側からレーザー光Lを照射してゲッター材34を加熱することで、ゲッター材34が蒸発して活性化する。このように、ゲッター材34にレーザー光を照射すると、ゲッター材34の表面が蒸発し、その蒸発した部分にはレーザー照射痕30(図1参照)が残る。そして、レーザー照射により蒸発したゲッター材34は、キャビティC内を飛散してキャビティC内の酸素を吸着することで、金属酸化物が生成される。これにより、キャビティC内の酸素が消費されるので、真空度を一定レベル以上に向上させることができる。ここで、一定レベルとは、それ以上真空度を向上させても、実効抵抗値に大きな変動がない状態を意味する。なお、ゲッタリングは、圧電振動子1の等価抵抗値をモニタリングしながら行う。この場合、上述したように本実施形態では、酸化工程(S70)の追加に伴い、比較的多量のアウトガスが残存している可能性があるが、従来のゲッタリングに比べてレーザー光の照射面積(ゲッタリング面積)を増加させることで、適正な実効抵抗値を確保することができる。
【0047】
その後、圧電振動子1の周波数を微調整した後(S110)、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S120)を行う。
【0048】
そして、電気特性検査工程(S130)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0049】
このように、本実施形態では、接合工程(S60)の終了後、接合材23aを酸化させる酸化工程(S70)を有する構成とした。
この構成によれば、まず陽極接合に抵抗値が比較的低いアルミニウムを用いているため、接合材23aの全面に対して均一に電圧を印加することができ、両ウエハ40,50の接合面同士が強固に陽極接合されたウエハ接合体60を簡単に形成することができる。また、陽極接合を比較的低電圧で行うことができるため、エネルギー消費量の低減を図り、製造コストを低減させることができる。
また、対向電極方式を採用することで、接合補助材72とリッド基板用ウエハ50の裏面50bとの間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材23aとベース基板用ウエハ40の表面40aとの間が陽極接合される。これにより、接合材23aの全面に対してより均一に電圧を印加することが可能になり、接合材23aとベース基板用ウエハ40の表面40aとの間を確実に陽極接合することができる。
【0050】
特に、陽極接合後の酸化工程(S70)において、接合材23aを酸化させることで、接合材23aは酸化アルミニウムからなる接合材酸化膜23となる。酸化アルミニウムは非常に緻密で化学的安定性に優れているため、仮にパッケージ10の外面から露出しても、腐食することはない。そのため、大気や大気中の水分等がキャビティC内に流入するのを抑制して、パッケージ10の気密を長期に亘って安定した状態に維持でき、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0051】
しかも、本実施形態の酸化工程(S70)では、接合工程(S60)を同様の条件で延長するだけなので、接合工程(S60)と同じ設備を用いることができる。そのため、設備コストの増加を抑制できる。また、別途他の装置に搬送する手間も省けるので、工数増加に伴う製造効率の増加を可能な限り抑制できる。
【0052】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0053】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0054】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0055】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0056】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図11に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0057】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0058】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0059】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0060】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0061】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0062】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0063】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0064】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図12に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0065】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0066】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0067】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0068】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度に時刻をカウントすることができる。
【0069】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0070】
例えば、上述した実施形態では、リッド基板用ウエハ50の裏面50aに接合材23aを形成したが、これとは逆にベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23aを形成しても構わない。この場合、接合材23aの成膜後にパターニングすることで、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50との接合面のみに形成することが好ましい。
【0071】
上述した実施形態では、酸化工程(S70)において、接合工程(S60)と同様に接合材23aからベース基板用ウエハ40に向けて電流が流れるように電圧を印加したが、これに限らず、ベース基板用ウエハ40と接合材23aの接合後には、電極71を置き換えて、接合材23aからリッド基板用ウエハ50に向けて電流が流れるようにしても構わない。
【0072】
さらに、上述した接合工程(S60)及び酸化工程(S70)における対向電極方式の変形例として、図13に示す方法も可能である。
具体的に、図13に示す変形例では、接合補助材76としてSi膜を採用している。なお、ガラス等の絶縁材料からなる接合補助基板77の表面にSi膜を形成することで、Si膜を接合補助材76として取り扱うことができる。この変形例では、治具を用いて接合補助基板77と電極71との間を押圧し、ウエハ接合体60に圧力をかける。そして、Si膜に直流電源70を接続し、電極71との間に電圧を印加する。なお、Si膜の膜厚を厚く形成すれば、Si膜の抵抗値が小さくなるので、Si膜内部での電圧降下を抑制することができる。この変形例でも同様に、ベース基板用ウエハ40と接合材23aとの間を陽極接合することができる。ただし変形例では、接合補助基板77に固着した状態の接合補助材76が、リッド基板用ウエハ50に陽極接合されることになる。
また、対向電極方式に限らず、接合材23aを陽極とし、リッド基板用ウエハ50の表面50bに陰極を配置し、接合材23aに対して電圧を直接印加する方式(いわゆる、直接電極方式)を採用しても構わない。直接電極方式を採用することで、対向電極方式で必要となる接合補助材除去工程が不要になるので、製造工数を削減することができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0073】
また上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…圧電振動子 2…ベース基板(第2基板) 3…リッド基板(第1基板) 5…圧電振動片(電子部品) 10…パッケージ 23a…接合材 23…接合材酸化膜 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、パッケージ、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装型の圧電振動子が知られている。この種の圧電振動子は、例えば互いに接合されたガラス材料からなるベース基板及びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された状態で収納された圧電振動片(電子部品)とを備えている。
【0003】
ベース基板とリッド基板とを直接接合させる方法として、陽極接合が提案されている。陽極接合は、ベース基板及びリッド基板のうち、一方の基板の内面に形成された接合材と、他方の基板との間に電圧を印加することにより、接合材と他方の基板の内面とを接合する方法である。接合材の材料として、抵抗値が比較的低いアルミニウム(Al)を採用する場合がある。このように、接合材にAlを採用することで、接合材の全面に対して均一に電圧を印加でき、接合材と他方の基板の内面とを確実に陽極接合できると考えられる。また、特許文献1には、接合材の耐電圧性を高めるために、Alに銅(Cu)が含有されたAl合金を接合材として採用する構成も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−339840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、Alは耐腐食性が低い(イオン化傾向が比較的高い)材料であるため、Alからなる接合材が圧電振動子の外面から露出していると、接合材が腐食しやすいという問題がある。
特に、接合材に水分が付着すると、Alと水分との酸化還元反応により表面のAlが電子を失ってイオン化(電離)し、生じたAlイオンが水分中の水酸化物(OH)イオンと反応して水酸化アルミニウム(Al(OH3))となって溶け出す。この反応が接合材の奥まで進行すると、キャビティの内部と外部とが連通して、圧電振動子の気密性(接合材のガスバリア性)が低下する虞がある。すなわち、連通した箇所を通って大気がキャビティ内に侵入することで、圧電振動片の振動特性が低下するという問題がある。なお、特許文献1のようにAlにCuを含有したAl合金を接合材に採用しても、上述した問題は同様に発生する。
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、接合材の腐食を抑制して、気密性に優れたパッケージ、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るパッケージの製造方法は、互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、前記第1基板の接合面に形成されたアルミニウムを主成分とする材料からなる接合材と、前記第2基板の接合面とを陽極接合する接合工程と、前記接合材を酸化させる酸化工程とを有し、前記酸化工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記接合材を挟む何れかの前記基板への方向へ電流が流れるように電圧を印加することを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、アルミニウムを主成分とする材料からなる接合材を介して、第1基板と第2基板とを陽極接合することで、接合材の全面に対して均一に電圧を印加することができ、両基板の接合面同士が強固に陽極接合されたパッケージを簡単に形成できる。
特に、陽極接合後の酸化工程において、接合材を酸化させることで、接合材は酸化アルミニウムからなる接合材酸化膜となる。酸化アルミニウムは非常に緻密で化学的安定性に優れているため、パッケージの外面から露出しても、腐食することはない。そのため、大気や大気中の水分等がキャビティ内に流入するのを抑制して、パッケージの気密を長期に亘って安定した状態に維持できる。
【0009】
また、前記接合工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記第2基板に向けて電流が流れるように電圧を印加することで、前記接合材と前記第2基板とを陽極接合し、前記酸化工程は、前記接合工程の時間を延長することによって行うことを特徴としている。
この構成によれば、接合工程の時間を延長するだけで接合材を酸化させることができる。具体的に、接合工程の終了後、接合材を加熱した状態で、接合材から第2基板に向けて電流が流れるように電圧を印加し続けると、接合材と第2基板とが陽極接合された後、第2基板から発生して接合材側に移動する負電荷(酸素イオン)によって接合材は酸化され、酸化アルミニウムとなる。これにより、接合工程と同じ設備を用いて酸化工程を行うことができ、設備コストの増加を抑制できる。また、別途他の装置に搬送する手間も省けるので、工数増加に伴う製造効率の低下を可能な限り抑制できる。
【0010】
また、前記酸化工程では、前記第1基板の外面に陽極となる接合補助材を配置し、前記第2基板の外面に陰極を配置した状態で電圧を印加し、前記接合補助材は、前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、接合補助材と陰極との間に電圧を印加することで、接合補助材と第1基板の外面との間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材と第2基板の内面との間が陽極接合される。これにより、接合材の全面に対して均一に電圧を印加することが可能になり、接合材と第2基板の内面との間をより確実に陽極接合することができる。
ここで、酸化工程において第2基板で発生した負電荷(酸素イオン)は、接合補助材に向かって接合材を厚さ方向に透過していき、この際に接合材と酸素イオンとが反応して接合材が酸化する。そのため、接合材の厚さ方向全体を確実に酸化させることができる。
【0011】
また、本発明のパッケージは、互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、前記第1基板及び前記第2基板は、接合材を介して陽極接合され、前記接合材は、酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、酸化アルミニウムからなる接合材は非常に緻密で化学的安定性に優れているため、パッケージの外面から露出しても、腐食することはない。そのため、大気や大気中の水分等がキャビティ内に流入するのを抑制して、パッケージの気密を長期に亘って安定した状態に維持できる。
【0012】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、気密性に優れたパッケージを備えているので、キャビティ内の気密性を長期に亘って確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供できる。
【0013】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に特性及び信頼性に優れた製品を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るパッケージ及びパッケージの製造方法によれば、パッケージの気密を長期に亘って安定した状態に維持できる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、キャビティ内の気密性を長期に亘って確保し、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子を提供することができる。
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、圧電振動子と同様に特性及び信頼性に優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。
【図2】圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態を示す圧電振動片の平面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1に示す圧電振動子を製造する際の流れを示すフローチャートである。
【図6】図5に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収容した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ接合体の分解斜視図である。
【図7】接合工程の説明図であり、図6のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【図8】接合反応の説明図である。
【図9】接合補助材除去工程の説明図であり、図6のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【図10】本発明に係る発信器の一実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図13】接合工程の他の方法を示す説明図であり、図6のC−C線に沿う断面の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板(第1基板)2及びリッド基板(第2基板)3が接合材酸化膜23を介して陽極接合された箱状のパッケージ10と、パッケージ10のキャビティC内に収納された圧電振動片(電子部品)5とを備えた表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の裏面2a(図3中下面)に設置された外部電極6,7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8,9によって電気的に接続されている。
【0020】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8,9が形成される一対のスルーホール21,22が形成されている。スルーホール21,22は、ベース基板2の裏面2aから表面2b(図3中上面)に向かって漸次径が縮径した断面テーパ形状をなしている。
【0021】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3の内面3b(図3中下面)側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、ベース基板2及びリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティCを形成する。そして、リッド基板3は、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合材酸化膜23を介して陽極接合されている。すなわち、リッド基板3の内面3b側は、中央部に形成された凹部3aと、凹部3aの周囲に形成され、ベース基板2との接合面となる額縁領域3cとを構成している。
【0022】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24,25と、一対の振動腕部24,25の基端側を一体的に固定する基部26とからなる音叉型で、一対の振動腕部24,25の外表面上には、振動腕部24,25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極と後述する引き回し電極27,28とを電気的に接続する一対のマウント電極とを有している(何れも不図示)。
【0023】
このように構成された圧電振動片5は、図2,図3に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の表面2bに形成された引き回し電極27,28上にバンプ接合されている。より具体的には、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極及びバンプBを介して一方の引き回し電極27上にバンプ接合され、第2の励振電極が他方のマウント電極及びバンプBを介して他方の引き回し電極28上にバンプ接合されている。これにより、圧電振動片5は、ベース基板2の表面2bから浮いた状態で支持されるとともに、各マウント電極と引き回し電極27,28とがそれぞれ電気的に接続された状態となる。
【0024】
外部電極6,7は、ベース基板2の裏面2aにおける長手方向の両側に設置されており、各貫通電極8,9及び各引き回し電極27,28を介して圧電振動片5に電気的に接続されている。より具体的には、一方の外部電極6は、一方の貫通電極8及び一方の引き回し電極27を介して圧電振動片5の一方のマウント電極に電気的に接続されている。また、他方の外部電極7は、他方の貫通電極9及び他方の引き回し電極28を介して、圧電振動片5の他方のマウント電極に電気的に接続されている。なお外部電極6,7の側面は、ベース基板2の側面よりも内側に位置している。
【0025】
貫通電極8,9は、焼成によってスルーホール21,22に対して一体的に固定された筒体32及び芯材部31によって形成されたものであり、スルーホール21,22を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、外部電極6,7と引き回し電極27,28とを導通させる役割を担っている。具体的に、一方の貫通電極8は、外部電極6と基部26との間で引き回し電極27の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7と振動腕部25との間で引き回し電極28の下方に位置している。
【0026】
筒体32は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体32は、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体32の中心には、芯材部31が筒体32の中心孔を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール21,22の形状に合わせて、筒体32の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体32は、スルーホール21,22内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール21,22に対して強固に固着されている。
上述した芯材部31は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体32と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。なお、貫通電極8,9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0027】
ここで、図2,図4に示すように、リッド基板3の額縁領域3c(ベース基板2との接合面)には、酸化アルミニウム(アルミナ)からなる接合材酸化膜23が形成されている。後述するように、この接合材酸化膜23は、アルミニウムからなる接合材23a(図7参照)が酸化されてなり、アルミニウムの状態の接合材23aとベース基板2とを陽極接合した後、酸化させることで形成されている。
【0028】
また、ベース基板2の表面2b上には、キャビティC内に収容されるようにゲッター材34が形成されている。ゲッター材34は、レーザー照射により活性化して周囲のガスを吸着するものであり、例えばアルミニウム(Al)やチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)等の金属、またはそれらの合金等で形成することが可能である。ゲッター材34は、圧電振動子1の外部からレーザー照射しうる位置に配置されている。本実施形態において、ゲッター材34は、ベース基板2の厚さ方向から見て圧電振動片5における一対の振動腕部24,25の両外側に配置されている。なお、ゲッター材34には、後述するゲッタリング工程時に、レーザー光が照射されて除去されることで、レーザー照射痕30が形成されている。
【0029】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極6,7に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片5の各励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部24,25を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部24,25の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0030】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る圧電振動子の製造方法のフローチャートである。図6は、ウエハ接合体の分解斜視図である。以下には、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50との間に複数の圧電振動片5を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図6に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)とを有している。そのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0031】
初めに、図5に示すように、圧電振動片作製工程を行って図1〜図4に示す圧電振動片5を作製する(S10)。また、圧電振動片5を作製した後、共振周波数の粗調を行っておく。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、マウント後に行う。
【0032】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図5,図6に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
次に、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。
【0033】
そして、リッド基板用ウエハ50の裏面50a側に接合材23aを形成する(S24)。具体的に、まずリッド基板用ウエハ50の裏面50a(凹部3aの内面全体及び凹部3aの周囲の額縁領域3c)全体にアルミニウムからなる接合材23aを成膜する。そして、凹部3aの内面に相当する領域の接合材23aをパターニングして除去することで、額縁領域3c上に接合材23aが形成される。なお、接合材23aは、上述したようにリッド基板用ウエハ50との接合領域(例えば額縁領域3c)のみに形成してもよいが、接合材23aの成膜後にパターニングせず、リッド基板用ウエハ50の裏面50a全体に残存させても構わない。これにより、製造工数を削減して製造コストを低減できる。また、接合材形成工程(S24)の前に研磨工程(S23)を行っているので、接合材23aの表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0034】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハに一対の貫通電極8,9を配置するためのスルーホール21,22を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面40bから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール21,22を形成することができる。
【0035】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール21,22内に貫通電極8,9を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。これにより、スルーホール21,22内において、芯材部31がベース基板用ウエハ40の両面40a,40b(図6における上下面)に対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極8,9を形成することができる。次に、一対の貫通電極8,9に電気的接続された引き回し電極27,28を形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。
このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0036】
次に、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極27,28上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片5を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(S40)。そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0037】
図7及び図8は、接合工程及び酸化工程の説明図であって、図6のC−C線に沿った断面の部分拡大図である。
図7(a)に示すように、本実施形態の接合工程(S60)では、リッド基板用ウエハ50の表面50bに陽極となる接合補助材72を配置するとともに、ベース基板用ウエハ40の裏面40bを陰極とする方式(いわゆる、対向電極方式)を採用している。接合補助材72は、接合補助材72とリッド基板用ウエハ50との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されている。具体的には、接合補助材とガラスと電極とを重ね合わせ、加熱すると同時に、接合補助材側を陽極とし電極側を陰極として電圧を印加した場合に、ガラスに含まれるナトリウムイオンを陰極に向かって移動させ、ガラスの接合補助材側(陰極側)に負電荷(酸素イオン)層を発生させる材料である接合材。より具体的には、接合補助材72の材料として、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)バルク材、クロム(Cr)、カーボン(C)等の、薄膜やバルク材を採用することができ、本実施形態ではカーボンが好適に用いられている。なおバルク材とは、相当な厚さを有する基板状の部材である。
【0038】
電極71は、ステンレスやカーボン(C)等で形成されている。なお、電極71は、ベース基板用ウエハ40の裏面40bで貫通電極8,9を避けるように配置されている。これにより、貫通電極8,9からの放電を防止できる。次に、治具(不図示)を用いて接合補助材72と電極71との間を押圧し、ウエハ接合体60に圧力をかける(例えば、3インチのウエハ接合体60に対して100N)。次に、治具ごとウエハ接合体60を陽極接合装置の内部に入れる。次に、陽極接合装置の内部を所定温度(例えば、200〜250℃)に保持して、ウエハ接合体60を加熱する。同時に、接合補助材72が陽極となり電極71が陰極となるように直流電源70を接続して、ウエハ接合体60に電圧を印加する。
【0039】
これにより、図8に示すように、リッド基板用ウエハ50のガラス材料に含まれるナトリウムイオンが接合材23aに向かって移動する。これに連動して、ベース基板用ウエハ40のガラス材料に含まれるナトリウムイオンも電極71に向かって移動することで、接合材23aからベース基板用ウエハ40に向かって電流が流れる。そのため、ベース基板用ウエハ40の接合材23a側には、ナトリウムイオンが欠乏した負電荷層が形成される。この負電荷層と接合材23aとの間に静電引力が発生して、ベース基板用ウエハ40と接合材23aとの界面F2が陽極接合される。そして、所定時間(例えば、30分程度)経過後に、ベース基板用ウエハ40と接合材23aが全て陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。なお、リッド基板用ウエハ50の接合補助材72側にも、ナトリウムイオンが欠乏した負電荷層が形成される。そのため、リッド基板用ウエハ50と接合補助材72との界面F1も陽極接合される。
【0040】
ここで、ベース基板用ウエハ40に陽極接合された接合材23aを酸化させる酸化工程(S70)を行う。具体的には、上述した接合工程(S60)と同様の条件で、ウエハ接合体60を加熱した状態で、ウエハ接合体60に電圧を印加し続ける。
【0041】
ところで、通常の陽極接合では、ウエハ接合体60を所定温度に加熱した状態で、電荷(Q=電流(I)×時間(t))制限をかけた状態でウエハ接合体60に電圧を印加する。これは、陽極接合後に接合部分から放出されるアウトガス(例えば、酸素)の発生を抑制するためである。
これに対して、本実施形態では、接合工程(S60)から酸化工程(S70)にかけて、電荷制限を外した状態でウエハ接合体60に電圧を印加する。
【0042】
すると、接合材23aとベース基板用ウエハ40とが陽極接合された後、ベース基板用ウエハ40から発生して接合材23a側に移動する負電荷(酸素イオン)は、接合材23aを透過して、リッド基板用ウエハ50側に移動する。接合材23aは、酸素イオンが透過する際に酸化されることで、酸化アルミニウム(AlO3)となる。そして、接合工程(S60)の終了後から所定時間(例えば、90分程度)経過後、接合材23aが全て酸化され、酸化アルミニウムからなる接合材酸化膜23が形成される。ここで、本実施形態では陽極接合を対向電極方式で行っているため、ベース基板用ウエハ40で発生した酸素イオンは、接合補助材72に向かって接合材23aを厚さ方向に透過していき、この際に接合材23aと酸素イオンとが反応して接合材23aが酸化する。そのため、後述する直接電極方式に比べて接合材23aを効率的に酸化させることができるため、接合材23a全体を確実に酸化させることができる。なお、本実施形態の酸化工程(S70)では、接合工程(S60)と同様に、ウエハ接合体60に対して圧力をかけた状態で行ったが、接合後には圧力を解除しても構わない。
【0043】
図9は、接合補助材除去工程の説明図であって、図6のC−C線に沿った断面の部分拡大図である。
図9に示すように、接合補助材除去工程(S80)では、リッド基板用ウエハ50に陽極接合された接合補助材72を除去する接合補助材76及び接合補助基板77を研削等によって除去する。具体的には、グラインダ装置等を使用して、破線79で示すリッド基板用ウエハ50の表層まで研削する。研削によれば、接合補助材72が厚い場合でも、比較的短時間で除去することができる。
【0044】
その後、一対の貫通電極8,9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6,7を形成する(S70)。
【0045】
ところで、上述した接合工程(S60)の終了後には、陽極接合時に発生したアウトガスがキャビティC内に存在する。特に、本実施形態では、酸化工程(S70)の追加に伴い、電荷制限を外したため、比較的多量のアウトガスがキャビティC内に残存している可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、キャビティC内の真空度の向上を図るため、ウエハ接合体60の各キャビティC内に収容されたゲッター材34を活性化させてキャビティC内の真空度を調整するゲッタリング工程を行う(S100)。
ゲッタリング工程(S100)では、ベース基板用ウエハ40側からレーザー光Lを照射してゲッター材34を加熱することで、ゲッター材34が蒸発して活性化する。このように、ゲッター材34にレーザー光を照射すると、ゲッター材34の表面が蒸発し、その蒸発した部分にはレーザー照射痕30(図1参照)が残る。そして、レーザー照射により蒸発したゲッター材34は、キャビティC内を飛散してキャビティC内の酸素を吸着することで、金属酸化物が生成される。これにより、キャビティC内の酸素が消費されるので、真空度を一定レベル以上に向上させることができる。ここで、一定レベルとは、それ以上真空度を向上させても、実効抵抗値に大きな変動がない状態を意味する。なお、ゲッタリングは、圧電振動子1の等価抵抗値をモニタリングしながら行う。この場合、上述したように本実施形態では、酸化工程(S70)の追加に伴い、比較的多量のアウトガスが残存している可能性があるが、従来のゲッタリングに比べてレーザー光の照射面積(ゲッタリング面積)を増加させることで、適正な実効抵抗値を確保することができる。
【0047】
その後、圧電振動子1の周波数を微調整した後(S110)、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断する個片化工程(S120)を行う。
【0048】
そして、電気特性検査工程(S130)では、圧電振動子1の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等も併せてチェックする。最後に、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。
以上により、圧電振動子1が完成する。
【0049】
このように、本実施形態では、接合工程(S60)の終了後、接合材23aを酸化させる酸化工程(S70)を有する構成とした。
この構成によれば、まず陽極接合に抵抗値が比較的低いアルミニウムを用いているため、接合材23aの全面に対して均一に電圧を印加することができ、両ウエハ40,50の接合面同士が強固に陽極接合されたウエハ接合体60を簡単に形成することができる。また、陽極接合を比較的低電圧で行うことができるため、エネルギー消費量の低減を図り、製造コストを低減させることができる。
また、対向電極方式を採用することで、接合補助材72とリッド基板用ウエハ50の裏面50bとの間に陽極接合反応が発生し、これに連動して接合材23aとベース基板用ウエハ40の表面40aとの間が陽極接合される。これにより、接合材23aの全面に対してより均一に電圧を印加することが可能になり、接合材23aとベース基板用ウエハ40の表面40aとの間を確実に陽極接合することができる。
【0050】
特に、陽極接合後の酸化工程(S70)において、接合材23aを酸化させることで、接合材23aは酸化アルミニウムからなる接合材酸化膜23となる。酸化アルミニウムは非常に緻密で化学的安定性に優れているため、仮にパッケージ10の外面から露出しても、腐食することはない。そのため、大気や大気中の水分等がキャビティC内に流入するのを抑制して、パッケージ10の気密を長期に亘って安定した状態に維持でき、振動特性に優れた信頼性の高い圧電振動子1を提供できる。
【0051】
しかも、本実施形態の酸化工程(S70)では、接合工程(S60)を同様の条件で延長するだけなので、接合工程(S60)と同じ設備を用いることができる。そのため、設備コストの増加を抑制できる。また、別途他の装置に搬送する手間も省けるので、工数増加に伴う製造効率の増加を可能な限り抑制できる。
【0052】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図10を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図10に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0053】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0054】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0055】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図11を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0056】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図11に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0057】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0058】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0059】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0060】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0061】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0062】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしてもよい。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0063】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0064】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図12を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図12に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0065】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0066】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。 続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0067】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0068】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、キャビティC内の気密が確保された圧電振動子1を備えているため、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期に亘って安定した高精度に時刻をカウントすることができる。
【0069】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0070】
例えば、上述した実施形態では、リッド基板用ウエハ50の裏面50aに接合材23aを形成したが、これとは逆にベース基板用ウエハ40の表面40aに接合材23aを形成しても構わない。この場合、接合材23aの成膜後にパターニングすることで、ベース基板用ウエハ40におけるリッド基板用ウエハ50との接合面のみに形成することが好ましい。
【0071】
上述した実施形態では、酸化工程(S70)において、接合工程(S60)と同様に接合材23aからベース基板用ウエハ40に向けて電流が流れるように電圧を印加したが、これに限らず、ベース基板用ウエハ40と接合材23aの接合後には、電極71を置き換えて、接合材23aからリッド基板用ウエハ50に向けて電流が流れるようにしても構わない。
【0072】
さらに、上述した接合工程(S60)及び酸化工程(S70)における対向電極方式の変形例として、図13に示す方法も可能である。
具体的に、図13に示す変形例では、接合補助材76としてSi膜を採用している。なお、ガラス等の絶縁材料からなる接合補助基板77の表面にSi膜を形成することで、Si膜を接合補助材76として取り扱うことができる。この変形例では、治具を用いて接合補助基板77と電極71との間を押圧し、ウエハ接合体60に圧力をかける。そして、Si膜に直流電源70を接続し、電極71との間に電圧を印加する。なお、Si膜の膜厚を厚く形成すれば、Si膜の抵抗値が小さくなるので、Si膜内部での電圧降下を抑制することができる。この変形例でも同様に、ベース基板用ウエハ40と接合材23aとの間を陽極接合することができる。ただし変形例では、接合補助基板77に固着した状態の接合補助材76が、リッド基板用ウエハ50に陽極接合されることになる。
また、対向電極方式に限らず、接合材23aを陽極とし、リッド基板用ウエハ50の表面50bに陰極を配置し、接合材23aに対して電圧を直接印加する方式(いわゆる、直接電極方式)を採用しても構わない。直接電極方式を採用することで、対向電極方式で必要となる接合補助材除去工程が不要になるので、製造工数を削減することができ、製造効率の向上を図ることができる。
【0073】
また上述した実施形態では、本発明に係るパッケージの製造方法を使用しつつ、パッケージの内部に圧電振動片を封入して圧電振動子を製造したが、パッケージの内部に圧電振動片以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…圧電振動子 2…ベース基板(第2基板) 3…リッド基板(第1基板) 5…圧電振動片(電子部品) 10…パッケージ 23a…接合材 23…接合材酸化膜 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、
前記第1基板の接合面に形成されたアルミニウムを主成分とする材料からなる接合材と、前記第2基板の接合面とを陽極接合する接合工程と、
前記接合材を酸化させる酸化工程とを有し、
前記酸化工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記接合材を挟む何れかの前記基板への方向へ電流が流れるように電圧を印加することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記第2基板に向けて電流が流れるように電圧を印加することで、前記接合材と前記第2基板とを陽極接合し、
前記酸化工程は、前記接合工程の時間を延長することによって行うことを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記酸化工程では、前記第1基板の外面に陽極となる接合補助材を配置し、前記第2基板の外面に陰極を配置した状態で電圧を印加し、
前記接合補助材は、前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、
前記第1基板及び前記第2基板は、接合材を介して陽極接合され、
前記接合材は、酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板の間に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、
前記第1基板の接合面に形成されたアルミニウムを主成分とする材料からなる接合材と、前記第2基板の接合面とを陽極接合する接合工程と、
前記接合材を酸化させる酸化工程とを有し、
前記酸化工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記接合材を挟む何れかの前記基板への方向へ電流が流れるように電圧を印加することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記接合工程では、前記接合材を所定温度に加熱した状態で、前記接合材から前記第2基板に向けて電流が流れるように電圧を印加することで、前記接合材と前記第2基板とを陽極接合し、
前記酸化工程は、前記接合工程の時間を延長することによって行うことを特徴とする請求項1記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記酸化工程では、前記第1基板の外面に陽極となる接合補助材を配置し、前記第2基板の外面に陰極を配置した状態で電圧を印加し、
前記接合補助材は、前記接合補助材と前記第1基板との間に陽極接合反応を発生させる材料で形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
互いに接合された絶縁体からなる第1基板及び第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に形成されたキャビティとを備え、前記キャビティ内に電子部品を封入可能なパッケージであって、
前記第1基板及び前記第2基板は、接合材を介して陽極接合され、
前記接合材は、酸化アルミニウムを主成分とする材料で形成されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4記載のパッケージの前記キャビティ内に、圧電振動片が気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5記載の前記圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5記載の前記圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5記載の前記圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−172109(P2011−172109A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35231(P2010−35231)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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