説明

パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計

【課題】簡単に形成でき信頼性の高い貫通電極を有するパッケージの製造方法、このパッケージの製造方法により製造された圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計を提供する。
【解決手段】ベース基板2を厚さ方向に貫通する貫通電極形成工程を備え、貫通電極形成工程は、1個の圧電振動子1(パッケージ)に含まれる全ての貫通電極32,33となる複数の芯材部7と、複数の芯材部7を連結する接続部とを備えた導電部材を形成する導電部材形成工程と、ベース基板2に複数の貫通孔30,31(凹部)を形成する凹部形成工程と、複数の芯材部7をそれぞれ複数の貫通孔30,31に挿入する芯材部挿入工程と、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間隙を封止する封止工程と、ベース基板2の第1面U側および第2面L側を研磨して第1面U側および第2面L側から芯材部7を露出させる研磨工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器および電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型の圧電振動子が知られている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、第1基板と第2基板とが直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品が収納されている。このような2層構造タイプの圧電振動子の1つとして、ベース部材(本願の「第1基板」に相当)の一方の面に外部接続電極を備え、ベース部材の他方の面に水晶接続用電極を備え、この水晶接続用電極に水晶振動子を搭載するとともに、ベース部材に貫通させた金属部材(本願の「芯材部」に相当)で貫通電極を形成し、前記外部接続電極及び水晶接続用電極を電気的に接続した水晶振動子が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、特許文献1には、ピン状金属部材を用いることにより貫通電極を形成することが記載されている。貫通電極を形成する具体的な方法としては、ベース部材に小径の貫通孔を開け、ベース部材を加熱し、ベース部材が熱軟化状態にあるうちにピン状の金属部材を打ち込むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−124845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている貫通電極の形成方法は、基板が熱軟化状態にあるうちに全ての貫通孔に対して、個別にピン状金属部材を打ち込んで挿入する必要がある。したがって、多大な工数を要するという問題がある。
また、個別にピン状金属部材を挿入するため、ピン状金属部材の挿入忘れや、挿入ミスによるピン状金属部材の位置ずれの発生等の製造不良が生じるおそれがある。これにより、貫通電極の導通が確保できないおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、簡単に形成でき信頼性の高い貫通電極を有するパッケージの製造方法、このパッケージの製造方法により製造された圧電振動子、発振器、電子機器、および電波時計の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージの製造方法は、互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、前記複数の基板のうち第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する複数の貫通電極を形成する貫通電極形成工程を備え、 前記貫通電極形成工程は、1個の前記パッケージに含まれる全ての前記貫通電極となる複数の芯材部と、前記複数の芯材部を連結する接続部とを備えた導電部材を形成する導電部材形成工程と、前記第1基板に複数の凹部を形成する凹部形成工程と、前記導電部材における前記複数の芯材部をそれぞれ前記凹部に挿入する芯材部挿入工程と、前記凹部の内面と前記芯材部の外面との間隙を封止する封止工程と、前記第1基板の第1面側および第2面側を研磨して、前記接続部を除去すると共に、前記第1面側および前記第2面側から前記芯材部を露出させる研磨工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、導電部材は、1個のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部を備え、各芯材部は接続部により連結されているので、芯材部挿入工程では、1個のパッケージに含まれる全ての凹部に、複数の芯材部を一度に挿入することができる。したがって、第1基板の1個のパッケージに含まれる全ての凹部内に、芯材部を簡単に配置できるので、貫通電極を簡単に形成できる。
また、各芯材部は接続部により連結されているので、1個のパッケージに含まれる全ての凹部に各芯材部を一度に挿入することにより、芯材部の挿入忘れが発生しない。さらに、各芯材部を挿入したときに、1個のパッケージに配置される各芯材部間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極を形成できる。
【0010】
また、前記貫通電極形成工程では、複数の前記第1基板を形成する第1基板用ウエハに、複数の前記パッケージに含まれる前記貫通電極を形成し、前記芯材部挿入工程では、前記第1基板用ウエハにおける前記第1基板の形成領域ごとに前記導電部材を配置して、前記導電部材における前記複数の芯材部をそれぞれ前記凹部に挿入することが望ましい。
【0011】
例えば、複数のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部を連結した導電部材を用いて、複数のパッケージに含まれる複数の芯材部をそれぞれ凹部に、一度に挿入することが考えられる。しかし、複数のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部を連結した導電部材の場合、各芯材部は大きく離間している。このため、製造時の温度変化等により導電部材が熱膨張すると、熱膨張による各芯材部の位置ずれが累積し、各芯材部の位置ずれが大きくなる傾向にある。したがって、貫通電極の形成位置に誤差が生じ、貫通電極の確実な導通が確保できないおそれがある。
これに対して、本発明の芯材部挿入工程では、1個のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部を連結した導電部材を用いて、1個の第1基板ごとに、各芯材部をそれぞれ各凹部に挿入している。このため、複数の第1基板間では、各芯材部の熱膨張による位置ずれの累積は発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極を形成できる。
【0012】
また、前記封止工程では、前記加圧型で前記第1基板の表面を押圧すると共に、前記第1基板の軟化点よりも高温に前記第1基板を加熱することにより、前記芯材部の外面に前記第1基板を溶着させることが望ましい。
本発明によれば、1個のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部は接続部により連結されているので、芯材部の外面に第1基板を溶着させても、1個のパッケージに配置される各芯材部間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極を形成できる。さらに、芯材部の外面に第1基板を溶着させているので、気密度の高い貫通電極を形成することができる。
【0013】
また、前記凹部は、貫通孔であり、前記芯材部挿入工程では、前記第1面側および前記第2面側のうち一方面側における前記貫通孔の開口部から、前記芯材部を前記貫通孔に挿入し、前記封止工程は、前記第1面側および前記第2面側のうち他方面側における前記貫通孔の開口部から、前記貫通孔の内面と前記芯材部の外面との間隙に、ガラスフリットを充填するガラスフリット充填工程と、前記間隙に充填された前記ガラスフリットを焼成して硬化させる焼成工程と、を有していることが望ましい。
本発明によれば、1個のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部は接続部により連結されているので、貫通孔内にガラスフリットを充填しても、1個のパッケージに配置される各芯材部間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極を形成できる。さらに、貫通孔の内面と芯材部の外面との間隙に充填したガラスフリットを焼成して硬化させているので、気密度の高い貫通電極を形成することができる。
【0014】
また、前記導電部材は、鍛造により形成されることが望ましい。
また、前記導電部材は、ブロック体の前記一方面側から他方面側に向かって前記ブロック体を半抜き加工することにより前記芯材部が形成され、前記芯材部以外の前記ブロック体により前記接続部が形成されることが望ましい。
また、前記導電部材は、平板部材から前記芯材部および前記接続部を打ち抜き、前記接続部の法線方向に沿うように前記芯材部を曲げることにより形成されることが望ましい。
本発明によれば、精度よく低コストに導電部材を形成することができる。特に、平板部材から打ち抜いて導電部材を形成する場合には、一度に多数個の導電部材を形成することができるので、さらに低コストに導電部材を形成することができる。
【0015】
また、本発明の圧電振動子は、上述のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、簡単に形成でき信頼性の高い貫通電極を有するパッケージの内部に圧電振動片が封入されているので、低コストで信頼性に優れた圧電振動子を提供できる。
【0016】
また、本発明の発振器は、上述のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片と集積回路とが封入されていることが望ましい。
本発明の集積回路が封入された発振器では、貫通電極の数が多くなるため、芯材部を簡単に配置できるという本発明の効果が特に有効となる。また、本発明の発振器によれば、簡単に形成でき信頼性の高い貫通電極を有するパッケージの内部に圧電振動片と集積回路とが封入されているので、低コストで信頼性に優れた発振器を提供できる。
【0017】
本発明の発振器は、上述した圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電子機器は、上述した圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明の電波時計は、上述した圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の発振器、電子機器および電波時計によれば、簡単に形成でき信頼性の高い貫通電極を有する圧電振動子を備えているので、低コストで信頼性に優れた発振器、電子機器および電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導電部材は、1個のパッケージに含まれる全ての貫通電極となる複数の芯材部を備え、各芯材部は接続部により連結されているので、芯材部挿入工程では、1個のパッケージに含まれる全ての凹部に、複数の芯材部を一度に挿入することができる。したがって、第1基板の1個のパッケージに含まれる全ての凹部内に、芯材部を簡単に配置できるので、貫通電極を簡単に形成できる。
また、各芯材部は接続部により連結されているので、1個のパッケージに含まれる全ての凹部に各芯材部を一度に挿入することにより、芯材部の挿入忘れが発生しない。さらに、各芯材部を挿入したときに、1個のパッケージに配置される各芯材部間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】第1実施形態における圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図6】ウエハ体の分解斜視図である。
【図7】第1実施形態の導電部材の斜視図である。
【図8】導電部材形成工程の説明図であり、図8(a)は、導電部材形成前の側面断面図であり、図8(b)は導電部材形成後の側面断面図である。
【図9】凹部形成工程の説明図であり、図9(a)はベース基板用ウエハの斜視図であり、図9(b)は、図9(a)のB−B線における断面図である。
【図10】芯材部挿入工程の説明図である。
【図11】封止工程の説明図であり、図11(a)は封止前の説明図であり、図11(b)は封止時の説明図である。
【図12】研磨工程の説明図である。
【図13】第1実施形態の第1変形例の説明図であり、図13(a)は導電部材形成前の説明図であり、図13(b)は導電部材形成後の説明図である。
【図14】第1実施形態の第2変形例の説明図であり、図14(a)は打ち抜きの説明図であり、図14(b)は芯材部の立ち上げの説明図である。
【図15】第2実施形態の圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図16】貫通孔形成工程の説明図である。
【図17】芯材部挿入工程の説明図である。
【図18】封止工程のうち、ガラスフリット充填工程の説明図である。
【図19】研磨工程の説明図である。
【図20】第3実施形態の導電部材の斜視図である。
【図21】第3実施形態の導電部材を用いた発振器の説明図であり、図21(a)は側面断面図であり、図21(b)は平面図である。
【図22】発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図23】電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図24】電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態、圧電振動子)
以下、本発明の第1実施形態に係る圧電振動子を、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、第1基板用ウエハをベース基板用ウエハとして説明する。また、パッケージ(圧電振動子)におけるベース基板のリッド基板との接合面を第1面Uとし、ベース基板の外側の面を第2面Lとして説明する。
図1は、圧電振動子1の外観斜視図である。
図2は、圧電振動子1の内部構成図であって、リッド基板3を取り外した状態の平面図である。
図3は、図2のA−A線における断面図である。
図4は、図1に示す圧電振動子1の分解斜視図である。
なお、図4においては、図面を見易くするために、後述する励振電極13,14、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21の図示を省略している。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2およびリッド基板3が接合膜35を介して陽極接合されたパッケージ9と、パッケージ9のキャビティ3aに収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0022】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、水晶やタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。圧電振動片4は、平行に配置された一対の振動腕部10,11と、前記一対の振動腕部10,11の基端側を一体的に固定する基部12と、一対の振動腕部10,11の両主面上に形成された溝部18とを備えている。この溝部18は、振動腕部10,11の長手方向に沿って振動腕部10,11の基端側から略中間付近まで形成されている。
【0023】
励振電極13,14および引き出し電極19,20は、後述するマウント電極16,17の下地層と同じ材料のクロム(Cr)により単層膜が形成されている。これにより、マウント電極16,17の下地層を成膜するのと同時に、励振電極13,14および引き出し電極19,20を成膜することができる。
【0024】
励振電極13,14は、一対の振動腕部10,11を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極である。第1の励振電極13および第2の励振電極14は、一対の振動腕部10,11の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。
【0025】
マウント電極16,17は、Crと金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いCr膜を下地層として成膜した後に、表面にAuの薄膜を仕上げ層として成膜することにより形成される。
【0026】
一対の振動腕部10,11の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bとに分かれている。これら粗調膜21aおよび微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部10,11の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0027】
(パッケージ)
図1から図4に示すように、ベース基板2およびリッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティ3aが形成されている。
【0028】
リッド基板3におけるベース基板2との接合面側の全体に、陽極接合用の接合膜35(接合材)が形成されている。すなわち接合膜35は、キャビティ3aの内面全体に加えて、キャビティ3aの周囲の額縁領域に形成されている。本実施形態の接合膜35はアルミニウム(Al)により形成されているが、シリコン(Si)やCr等で接合膜35を形成することも可能である。接合膜35とベース基板2とが陽極接合され、キャビティ3aが真空封止されている。
【0029】
図3に示すように、圧電振動子1は、ベース基板2を厚さ方向に貫通し、キャビティ3aの内側と圧電振動子1の外側とを導通する貫通電極32,33を備えている。貫通電極32,33は、貫通孔30,31の中心軸Oに沿うように配置され、圧電振動片4と外部とを電気的に接続する芯材部7により形成されている。芯材部7の外周面には、製造過程において溶融されたベース基板2が強固に固着している。これにより、貫通電極32,33はキャビティ内の気密を維持している。
【0030】
貫通電極32,33となる芯材部7は、例えば、銀(Ag)やAl、Ni合金、コバール等の金属材料により形成される。芯材部7は貫通電極32,33としてベース基板2に挿入されるため、線膨張係数がベース基板2のガラス材料と近い金属、例えば、鉄(Fe)を58重量パーセント、Niを42重量パーセント含有する合金(42アロイ)で形成することが望ましい。
芯材部7は、略円柱形状をしており、貫通電極32,33の形成位置に合わせて形成される。なお、芯材部7は、略円柱形状に限られることはなく、例えば角柱形状でもよい。
【0031】
ベース基板2の第1面U側には、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。また、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれAu等からなる先細り形状のバンプBが形成されており、前記バンプBを利用して圧電振動片4の一対のマウント電極が実装されている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極16が、一方の引き回し電極36を介して一方の貫通電極32に導通し、他方のマウント電極17が、他方の引き回し電極37を介して他方の貫通電極33に導通するようになっている。
【0032】
ベース基板2の第2面Lには、一対の外部電極38,39が形成されている。一対の外部電極38,39は、ベース基板2の長手方向の両端部に形成され、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0033】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極13および第2の励振電極14に電圧を印加することができるので、一対の振動腕部10,11を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部10,11の振動を利用して、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として利用することができる。
【0034】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子1の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図5は本実施形態の圧電振動子1の製造方法のフローチャートである。
図6は、ウエハ体60の分解斜視図である。なお、図6に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子1の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。各工程のうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することができる。
【0035】
(圧電振動片作製工程S10)
圧電振動片作製工程S10では、圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスし、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、所定の厚みのウエハとする。続いて、フォトリソグラフィ技術によって圧電振動片4の外形形状にパターニングするとともに、金属膜の成膜およびパターニングを行って、励振電極13,14、引き出し電極19,20、マウント電極16,17および重り金属膜21を形成する。その後、圧電振動片4の共振周波数の粗調を行う。以上で、圧電振動片作製工程S10が終了する。
【0036】
(リッド基板用ウエハ作製工程S20)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ3aを複数形成する。キャビティ3aの形成は、加熱プレス成型やエッチング加工などによって行う。次に、接合面研磨工程S23では、ベース基板用ウエハ40との接合面を研磨する。
【0037】
次に、接合膜形成工程S24では、後述のベース基板用ウエハ40との接合面に、Alからなる接合膜35(図3参照)を形成する。接合膜35は、ベース基板用ウエハ40との接合面に加えて、キャビティ3aの内面全体に形成されていてもよい。これにより、接合膜35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。接合膜35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。なお、接合膜形成工程S24の前に接合面研磨工程S23を行っているので、接合膜35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
【0038】
(ベース基板用ウエハ作製工程S30)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、後にベース基板となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0039】
(貫通電極形成工程S32)
次に、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程S32を行う。
貫通電極形成工程S32は、芯材部7と接続部6とを有する導電部材5を形成する導電部材形成工程S33と、ベース基板用ウエハ40の第1面Uに凹部30a,31a(図9参照)を形成する凹部形成工程S34と、芯材部7を凹部30aに挿入する芯材部挿入工程S35と、凹部30a,31aの内面と芯材部7の外面との間隙を封止する封止工程と、ベース基板用ウエハ40を研磨して芯材部7を露出させる研磨工程S37と、を有している。なお、導電部材形成工程S33は、芯材部挿入工程S35の前に終了していればよく、貫通電極形成工程S32とは独立して行ってもよい。
【0040】
(導電部材形成工程S33)
図7は、本実施形態の導電部材5の斜視図である。
図8は、導電部材形成工程S33の説明図であり、図8(a)は、導電部材形成前の側面断面図であり、図8(b)は導電部材形成後の側面断面図である。
次に、図7に示す導電部材5を形成する導電部材形成工程S33を行う。本実施形態の導電部材形成工程S33では、鍛造により導電部材5を形成している。なお、導電部材形成工程S33は冷間鍛造および熱間鍛造のいずれでもよい。
本実施形態の導電部材5は、貫通電極32,33となる一対の芯材部7と、一対の芯材部7を連結する接続部6とを備えている。導電部材5は、前述の芯材部7と同様に、銀(Ag)やAl、Ni合金、コバール等の金属材料により形成される。
【0041】
本実施形態の貫通電極形成工程S32では、後述する凹部形成工程S34で、ベース基板用ウエハ40に有底凹部30a,31a(図9等参照)を形成し、凹部30a,31a内に芯材部7を挿入している。したがって、芯材部7の長さは、ベース基板2の厚さよりも短く、かつ凹部30a,31aに芯材部7を挿入したときに、凹部30a,31aの底部と干渉しない長さ(例えば約500μm程度)に形成される。また、芯材部7の直径は、貫通電極32,33を通電する電流の大きさに応じて適宜設定される。
【0042】
芯材部7の一端側は、接続部6により連結されている。接続部6は、例えば平面視略矩形状をした平板部材である。接続部6の外形は、パッケージ9の外形(例えば3.2mm×1.5mm)よりも若干小さく形成される。なお、接続部6は、略矩形状に限られることはなく、全ての芯材部7の一端側を接続していればよい。
【0043】
上述の導電部材5は、以下のように形成される。
図8(a)に示すように、導電部材形成工程S33で使用される成型装置は、キャビティ型67とコア型65とにより構成されている。キャビティ型67には、導電部材5の材料である母材55を受け入れ可能なように、導電部材5の外形よりも若干大きく形成された開口を有する受部67bと、芯材部7を形成するための孔部67aとが形成されている。コア型65は平板の金型であり、キャビティ型67に向かって押圧するための不図示のプレス機が接続されている。
【0044】
具体的な導電部材形成工程S33の手順としては、まず、受部67bに母材55をセットする。続いて、コア型65をキャビティ型67側に移動させて、キャビティ型67の受部67bにセットされた母材55を押圧する。これにより、図8(b)に示すように、母材55が変形してキャビティ型67の孔部67a内に母材55の一部が入り込み、芯材部7が形成される。また、これと同時に、キャビティ型67の受部67bに残った母材55により、接続部6が形成される。以上により、図7に示す導電部材5が形成される。
【0045】
(凹部形成工程S34)
図9は、凹部形成工程S34の説明図であり、図9(a)はベース基板用ウエハ40の斜視図であり、図9(b)は、B−B線に沿った断面図である。なお図8に示す点線は、切断線Mである。
次に、ベース基板用ウエハ40の第1面Uに、芯材部7を挿入するための凹部30a,31aを形成する凹部形成工程S34を行う。なお、凹部30a,31aは、ベース基板用ウエハ40の第2面Lに形成してもよい。
【0046】
本実施形態では、図2に示すように、1個のベース基板2には一対の貫通電極32,33が形成される。したがって、図9(a)に示すように、ベース基板用ウエハ40の切断線Mで囲まれた、1個のベース基板2に相当する領域に、一対の貫通電極32,33に対応した一対の凹部30a,31aを形成している。
凹部30a,31aは、熱プレス加工やサンドブラスト法、エッチング等により形成される。本実施形態では、図9(b)に示すように、ベース基板用ウエハ40の第2面L側から第1面U側にかけて内径が漸次大きくなるように、凹部30a,31aを形成している。
【0047】
(芯材部挿入工程S35)
図10は、芯材部挿入工程S35の説明図である。
次に、凹部30a,31aに導電部材5の芯材部7を配置する芯材部挿入工程S35を行う。
具体的な芯材部挿入工程S35の手順としては、まず、配置治具74に導電部材5をセットする。
配置治具74は例えば平板状の部材であり、導電部材5を並べて配置できるようになっている。このような配置治具74に、導電部材5の接続部6を当接させ、芯材部7を上方に向けてセットする。
【0048】
続いて、凹部30a,31の開口側となるベース基板用ウエハ40の第1面Uを配置治具74側に向け、位置を合わせつつ配置治具74とベース基板用ウエハ40とを重ね合わせる。これにより、凹部30a,31内に芯材部7を配置することができる。なお、次の封止工程S36では、配置治具74とベース基板用ウエハ40とを重ね合わせた状態で行っている。
【0049】
(封止工程S36)
図11は封止工程S36の説明図であり、図11(a)は封止前の説明図であり、図11(b)は封止時の説明図である。
次に、凹部30a,31aの内面と芯材部7の外面との間隙を封止する封止工程S36を行う。本実施形態の封止工程S36は、芯材部7にベース基板用ウエハ40を溶着させる溶着工程S36Aと、溶着後にベース基板用ウエハ40を冷却する冷却工程S36Bとを有している。
【0050】
(溶着工程S36A)
溶着工程S36Aは、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40を保持する受型凹部72aを有する受型72と、受型凹部72aに配置されたベース基板用ウエハ40を押圧する加圧型70と、を用いて行う。受型72の受型凹部72aは、ベース基板用ウエハ40の外形よりも若干大きく形成された開口部を有している。加圧型70は、ベース基板用ウエハ40を押圧する平板状の型で、受型凹部72aの開口形状よりも若干小さい外形となるように形成されている。加圧型70の端部には、加圧型70を貫通する不図示のスリットが形成されており、ベース基板用ウエハ40を加熱し押圧した時の空気やベース基板用ウエハ40の余剰なガラス材料の逃げ孔としている。
【0051】
溶着工程S36Aでは、まず、受型72にベース基板用ウエハ40をセットする。具体的には、受型凹部72aの底部から開口側に向かって、導電部材5、ベース基板用ウエハ40の順に重なった状態で、導電部材5およびベース基板用ウエハ40を受型凹部72aにセットする。
【0052】
続いて、受型72にセットされた導電部材5およびベース基板用ウエハ40を、不図示の加熱炉内に入れて加熱する。そして、加熱炉内に配置された不図示のプレス機等を利用して、加圧型70によって、ベース基板用ウエハ40を例えば30〜50g/cm2の圧力で押圧する。加熱温度は、ベース基板用ウエハ40のガラスの軟化点(例えば545℃)よりも高い温度とし、例えば約900℃とする。
このようにベース基板用ウエハ40を加熱しつつ押圧することで、ベース基板用ウエハ40を変形させ、凹部30a,31aの内面と芯材部7の外面との間隙を埋めることができる。
【0053】
なお、加熱温度は、徐々に上昇させ、ガラスの軟化点より約5℃ほど高い、例えば550℃の時点で上昇を一旦停止して保持し、その後、約900℃まで再上昇させるのが望ましい。このようにガラスの軟化点よりも約5℃ほど高い温度で温度上昇をいったん停止して保持することにより、ベース基板用ウエハ40の軟化を均一にすることができる。
【0054】
(冷却工程S36B)
次に、ベース基板用ウエハ40を冷却する冷却工程S36Bを行う。
ベース基板用ウエハ40の冷却は、溶着工程S36Aの加熱時の約900℃から徐々に温度を下げる。この際、ベース基板用ウエハ40がセットされている受型72を、加熱炉の内部から取り出してから冷却する。ベース基板用ウエハ40が冷却されて固まることにより、芯材部7の外面にベース基板用ウエハ40を固着させ、凹部30a,31aの内面と芯材部7の外面との間隙を封止することができる。
【0055】
なお、冷却速度は、約900℃からベース基板用ウエハ40を形成するガラスの歪点+50℃までの冷却速度よりも、歪点+50℃から歪点−50℃間の冷却速度が遅くなるようにするのが望ましい。歪点+50℃から歪点−50℃間の冷却は、例えば、ベース基板用ウエハ40を炉に移動させて行う。これにより、ベース基板用ウエハ40に歪が生じることを防ぐことができる。
【0056】
(研磨工程S37)
図12は、研磨工程S37の説明図である。
次に、受型72からベース基板用ウエハ40を取出し、ベース基板用ウエハ40の第1面U側および第2面L側を研磨する研磨工程S37を行う。ベース基板用ウエハ40の第1面U側を研磨することで、導電部材5の接続部6が除去されると共に、芯材部7が第1面Uから露出する。また、ベース基板用ウエハ40の第2面L側を研磨することで、凹部30a,31aの底部(図11参照)が除去されると共に、芯材部7が第2面Lから露出する。研磨工程S37により、第1面Uおよび第2面Lから芯材部7の端部を確実に露出させることができる。
研磨工程S37を行った時点で、貫通電極形成工程S32が終了する。
【0057】
次に、貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極36,37を第1面U上に複数形成する引き回し電極形成工程S40を行う(図6参照)。そして、引き回し電極36,37上に、それぞれ金等からなる先細り形状のバンプB(図3参照)を形成する。なお、図6では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。この時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0058】
(マウント工程S50以降の圧電振動子組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極36,37上に、バンプBを介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4の基部12をバンプB上に載置し、バンプBを所定温度に加熱しながら、圧電振動片4をバンプBに押し付けつつ超音波振動を印加する。これにより、図3に示すように、圧電振動片4の振動腕部10,11がベース基板用ウエハ40の第1面Uから浮いた状態で、基部12がバンプBに機械的に固着される。また、マウント電極16,17と引き回し電極36,37とが電気的に接続された状態となる。
【0059】
圧電振動片4の実装が終了した後、図6に示すように、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40に実装された圧電振動片4が、キャビティ3a内に収容された状態となる。
【0060】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。接合膜35とベース基板用ウエハ40との間に所定の電圧を印加すると、接合膜35とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティ3a内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合したウエハ体60を得ることができる。なお、図6においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示している。
【0061】
次に、ベース基板用ウエハ40の第2面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39(図3参照)を複数形成する外部電極形成工程S80を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極32,33を介して外部電極38,39と導通する。
【0062】
次に、ウエハ体60の状態で、キャビティ3a内に封止された個々の圧電振動子1の周波数を微調整して所定の範囲内に収める微調工程S90を行う。具体的には、外部電極38,39から所定電圧を継続的に印加して、圧電振動片4を振動させつつ周波数を計測する。この状態で、ベース基板用ウエハ40の外部からレーザ光を照射し、図2に示す重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、圧電振動子1の周波数を微調整して、公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0063】
周波数の微調が終了後、接合されたウエハ体60を切断線Mに沿って切断する切断工程S100を行う。具体的には、まずウエハ体60のベース基板用ウエハ40の表面にUVテープを貼り付ける。次に、リッド基板用ウエハ50側から切断線Mに沿ってレーザを照射する(スクライブ)。次に、UVテープの表面から切断線Mに沿って切断刃を押し当て、ウエハ体60を割断する(ブレーキング)。その後、UVを照射してUVテープを剥離する。これにより、ウエハ体60を複数の圧電振動子1に分離することができる。なお、これ以外のダイシング等の方法によりウエハ体60を切断してもよい。
【0064】
なお、切断工程S100を行って個々の圧電振動子1にした後に、微調工程S90を行う工程順序でも構わない。但し、上述したように、微調工程S90を先に行うことで、ウエハ体60の状態で微調を行うことができるため、複数の圧電振動子1をより効率良く微調することができる。よって、スループットの向上化を図ることができるため好ましい。
【0065】
その後、内部の電気特性検査S110を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数や共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数および共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0066】
(第1実施形態の効果)
本実施形態によれば、導電部材5は、1個の圧電振動子1に含まれる全ての貫通電極32,33となる複数の芯材部7を備え、各芯材部7は接続部6により連結されているので、芯材部挿入工程S35では、1個の圧電振動子1に含まれる全ての凹部30a,31aに、複数の芯材部7を一度に挿入することができる。したがって、ベース基板用ウエハ40の1個の圧電振動子1に含まれる全ての凹部30a,31a内に、芯材部7を簡単に配置できるので、貫通電極32,33を簡単に形成できる。また、各芯材部7は接続部6により連結されているので、1個の圧電振動子1に含まれる全ての凹部30a,31aに各芯材部7を一度に挿入することにより、芯材部7の挿入忘れが発生しない。さらに、各芯材部7を挿入したときに、1個の圧電振動子1に配置される各芯材部7間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極32,33の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極32,33を形成できる。
【0067】
また、本実施形態の芯材部挿入工程S35では、1個の圧電振動子1に配置される各芯材部7を連結した導電部材5を用いて、1個のベース基板形成領域ごとに、各芯材部7をそれぞれ各凹部30a,31aに挿入している。このため、複数のベース基板形成領域間における各芯材部7の位置誤差の累積は発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極32,33の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極32,33を形成できる。
【0068】
(第1実施形態の第1変形例、他の導電部材形成工程)
次に、第1実施形態の第1変形例について説明する。
図13は、第1実施形態の第1変形例の説明図であり、図13(a)は導電部材形成前の説明図であり、図13(b)は導電部材形成後の説明図である。
第1実施形態の導電部材形成工程S33では、鍛造により導電部材5を形成していた。しかし、第1実施形態の第1変形例では、半抜き加工により導電部材5を形成している点で、第1実施形態と異なっている。なお、導電部材形成工程S33以外は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0069】
図13に示すように、第1変形例の導電部材形成工程S33では、上型75と下型78とを用い、ブロック体56から導電部材5を形成している。
ブロック体56は、AgやAl、Ni合金、コバール等の金属材料からなる、肉厚が例えば500μmから700μm程度の部材である。ブロック体56の外形は、パッケージ9の外形(例えば3.2mm×1.5mm)よりも若干小さく形成される。
【0070】
上型75には、芯材部7の形成位置に対応して、円柱状のパンチ75aが立設されている。半抜き加工では、パンチ75aがブロック体56を抜き落とす直前に止まる必要がある。したがって、パンチ75aの長さは、ブロック体56の肉厚よりも若干短く形成される。また、パンチ75aの直径は、芯材部7の直径と略同一か若干小径に形成される。
【0071】
下型78には、ブロック体56を保持可能な下型凹部78bが形成されている。下型凹部78bは、ブロック体56の外形よりも若干大きく形成された開口部を有している。また、下型凹部78bの底部には、パンチ75aに対応した位置に、下型78を貫通するダイス78aが形成されている。ダイス78aには、パンチ75aで半抜き加工されたブロック体56の一部が入り込み、芯材部7を形成している。
【0072】
第1変形例の導電部材形成工程S33の手順としては、まず、下型凹部78bにブロック体56をセットする。続いて、上型75を下型78側に移動させて、不図示のプレス機等により、上型75のパンチ75aで下型78の下型凹部78bにセットされたブロック体56を押圧する。このとき、パンチ75aでブロック体56を打ち抜かないように、上型75を下型78側にゆっくりと移動させる。これにより、図13(b)に示すように、ブロック体56のパンチ75aに対応した部分が塑性変形し、いわゆる半抜きの状態となって、芯材部7が形成される。また、これと同時に、下型凹部78bに残ったブロック体56が接続部6となる。以上により、芯材部7と接続部6とを有する導電部材5が形成される。
【0073】
(第1実施形態の第2変形例、他の導電部材形成工程)
次に、第1実施形態の第2変形例について説明する。
図14は、第1実施形態の第2変形例の説明図であり、図14(a)は打ち抜きの説明図であり、図14(b)は芯材部の立ち上げの説明図である。
第1実施形態の導電部材形成工程S33では、母材55を鍛造することで導電部材5を形成していた。また、第1実施形態の第1変形例では、ブロック体56を半抜き加工することで導電部材5を形成していた。しかし、第1実施形態の第2変形例では、平板部材57を打ち抜き、その後曲げ加工することで導電部材5を形成している点で、第1実施形態および第1実施形態の第1変形例と異なっている。なお、導電部材形成工程S33以外は上述した実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0074】
平板部材57は、AgやAl、Ni合金、コバール等の金属材料からなる、板厚が例えば100μmから150μm程度の部材である。
第2変形例の導電部材形成工程S33の手順としては、まず、図14(a)に示すように、例えばプレスにより、平板部材57から略クランク形状の導電板部材5aを打ち抜く。導電板部材5aは、平面視略矩形状の接続部形成部6aと、接続部形成部6aから水平方向に突出した芯材部形成部7aと、を有している。導電板部材5aの打ち抜き加工は、不図示のブランク型を用いて行う。なお、本第2変形例では、平板部材57から1個の導電板部材5aを打ち抜いているが、一度に複数の導電板部材5aを打ち抜く、いわゆる多数個取りをしてもよい。また、順送型を用いることで、平板部材57から導電板部材5aを効率よく打ち抜くことができる。
続いて、接続部形成部6aの法線方向に沿うように、芯材部形成部7aを折り曲げる。芯材部形成部7aの曲げ加工は不図示のベンド型を用いて行う。以上により、図14(b)に示すように、芯材部7と接続部6とを有する導電部材5が形成される。
【0075】
(効果)
第1実施形態の第1変形例および第2変形例によれば、半抜き加工や打ち抜き加工等により精度よく低コストに導電部材5を形成することができる。特に、平板部材57から打ち抜いて導電部材5を形成する場合には、一度に多数個の導電部材5を形成することができるので、さらに低コストに導電部材5を形成することができる。
【0076】
(第2実施形態、他の貫通電極形成工程)
図15は、第2実施形態の圧電振動子1の製造方法のフローチャートである。
第1実施形態の貫通電極形成工程S32では、ベース基板用ウエハ40に凹部として有底凹部30a,31aを形成し、ベース基板用ウエハ40を芯材部7に溶着させて凹部30a,31aを封止することにより貫通電極32,33を形成していた。しかし、第2実施形態では、凹部として貫通孔30,31を形成し、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間にガラスフリット46(図18参照)を充填して貫通孔30,31を封止することにより貫通電極32,33を形成している点で、第1実施形態とは異なっている。なお、貫通電極形成工程S32以外の構成は上述した第1実施形態と同一であるため説明を省略する。
【0077】
(貫通孔形成工程S34A)
図16は、貫通孔形成工程S34Aの説明図である。
第2実施形態の貫通孔形成工程S34Aでは、ベース基板用ウエハ40の第1面Uと第2面Lとを貫通する貫通孔30,31の形成を行う。貫通孔30,31の形成は、第1実施形態と同様に、熱プレス加工やサンドブラスト法、エッチング等により形成される。なお、ベース基板用ウエハ40の第2面L側から第1面U側にかけて内形が次第に大きくなるように、略円錐台形状に貫通孔30,31を形成するのが望ましい。これにより、後のガラスフリット充填工程S36Cにおいて、開口の広い第1面U側から、貫通孔30,31内にガラスフリットを容易に充填できる。
【0078】
(芯材部挿入工程S35)
図17は、芯材部挿入工程S35の説明図である。
第2実施形態の芯材部挿入工程S35では、貫通孔30,31に導電部材5の芯材部7を配置している。なお、芯材部7の長さは、ベース基板用ウエハ40の厚さ(例えば約600μm)よりも若干短く(例えば550μm程度)なるように形成される。これにより、後述するガラスフリット充填工程S36Cでは、スキージ79と芯材部7とが干渉することなく、貫通孔30,31内にガラスフリット46を充填できる。
【0079】
芯材部7の配置は、第1実施形態と同様に、配置治具74に、芯材部7を上方に向けてセットした後、配置治具74とベース基板用ウエハ40とを重ね合わせて行う。ただし、図17に示すように、第2面L側から貫通孔30,31に芯材部7を挿入するのが望ましい。これにより、開口の広い第1面U側からガラスフリットを充填できる。なお、貫通孔30,31における第2面L側の開口は、接続部6および配置治具74により覆われて閉塞される。
【0080】
(封止工程S36)
図18は、封止工程S36のうち、ガラスフリット充填工程S36Cの説明図である。
第2実施形態の封止工程S36は、貫通孔30,31内にガラスフリット46を充填するガラスフリット充填工程S36Cと、ガラスフリット46を焼成して硬化させる焼成工程S36Dとを有している。
【0081】
(ガラスフリット充填工程S36C)
まず、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間隙にガラスフリット46を充填するガラスフリット充填工程S36Cを行う。
ガラスフリット46は、主に粉末状のガラスと溶媒である有機溶剤とで構成されている。
具体的なガラスフリット充填工程S36Cとしては、不図示のスクリーン印刷機のチャンバー内に、ベース基板用ウエハ40を搬送してセットし、チャンバー内の真空引きを行って減圧雰囲気とする。
続いて、図18に示すように、第1面Uに沿ってスキージ79を走査して、ガラスフリット46をベース基板用ウエハ40の第1面U側から塗布する。第1面U側の貫通孔30,31の外形は、第2面L側の貫通孔30,31の外形よりも大きく形成されているので、貫通孔30,31内にガラスフリット46を容易に充填することができる。また、貫通孔30,31における第2面L側の開口は、接続部6により閉塞されているので、ガラスフリット46が漏洩するのを防止できる。
【0082】
(焼成工程S36D)
続いて、貫通孔30,31に充填したガラスフリット46を焼成する焼成工程S36Dを行う。例えば、ベース基板用ウエハ40を焼成炉に搬送した後、610℃程度の雰囲気下に30分程度保持する。これにより、ガラスフリット46が固化し、貫通孔30,31、ガラスフリット46および芯材部7が互いに固着し、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間隙が封止される。
【0083】
(研磨工程S37)
図19は、研磨工程S37の説明図である。
次に、第1実施形態と同様に、ベース基板用ウエハ40の第1面U側および第2面L側を研磨する研磨工程S37を行う。ベース基板用ウエハ40の第1面U側を研磨することで、芯材部7が第1面Uから露出する。また、ベース基板用ウエハ40の第2面L側を研磨することで、導電部材5の接続部6が除去されると共に、芯材部7が第2面Lから露出する。研磨工程S37により、第1面Uおよび第2面Lから芯材部7の端部を確実に露出させることができる。
研磨工程S37を行った時点で、第2実施形態の貫通電極形成工程S32が終了する。
【0084】
(第2実施形態の効果)
本実施形態によれば、1個の圧電振動子1に配置される各芯材部7は接続部6により連結されているので、貫通孔30,31内にガラスフリット46を充填しても、1個の圧電振動子1に配置される各芯材部7間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極32,33の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極32,33を形成できる。さらに、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間隙に充填したガラスフリット46を焼成して硬化させているので、気密度の高い貫通電極32,33を形成することができる。
【0085】
(第3実施形態、多数の芯材部を有する導電部材およびその実施例)
図20は、第3実施形態の導電部材5の斜視図である。
図21は、図20の導電部材5を用いた発振器150の説明図であり、図21(a)は側面断面図であり、図21(b)は平面図である。なお、図21(b)では、図面をわかりやすくするために、リッド基板3および圧電振動片4の図示を省略している。
第1実施形態および第2実施形態では、一対の芯材部7を有する導電部材5を用いて圧電振動子1を形成していた。しかし、第3実施形態では、6本の芯材部7を有する導電部材5を用いて、圧電振動片4とICチップ152(請求項の「集積回路」に相当)とをパッケージ内に封入した発振器150を形成している点で、第1実施形態および第2実施形態とは異なっている。なお、第1実施形態および第2実施形態と同一の内容については詳細な説明を省略する。
【0086】
図20に示すように、第3実施形態の導電部材5は、6本の芯材部7と、各芯材部7を連結する接続部6とを備えている。芯材部7は、図21に示すベース基板2に形成された複数の内部電極155に対応した位置に、接続部6から立設されている。
接続部6は、例えば平面視略矩形状をした平板部材である。接続部6の外形は、発振器の外形よりも若干小さく形成され、なおかつICチップ152の外形よりも大きく形成される。これにより、ICチップ152の外側に芯材部7を配置できる。なお、第3実施形態の導電部材5の材料や製造方法等は、第1実施形態および第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0087】
図21に示すように、発振器150は、ベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティ3a内に圧電振動片4と、ICチップ152とが封入されて形成されている。
第3実施形態のベース基板2には、キャビティ3aが形成されている。また、キャビティ3aには、キャビティ3aの開口側から底面側に向かって1段の段差部159が形成されている。
【0088】
段差部159におけるキャビティ3aの開口側は振動片搭載部159aとなっており、キャビティ3aの底部はICチップ搭載部160となっている。振動片搭載部159aとICチップ搭載部160との間には、引き回し電極156が配索されている。圧電振動片4は、振動片搭載部159a上に形成された引き回し電極156に、バンプBを介して実装されている。
ICチップ搭載部160には、ICチップ152が実装される。ICチップ152は、例えば、周波数信号を出力して圧電振動片4を制御している。ICチップ152には複数の電極パッド154が形成されており、ICチップ152の周辺に形成された内部電極155および引き回し電極156と、ワイヤ153を介してワイヤボンディングされている。
【0089】
内部電極155と、外部電極157とは、ベース基板2を厚さ方向に貫通する貫通電極158により接続されている。貫通電極158は、第1実施形態および第2実施形態と同様に、導電部材5の芯材部7により形成されている。貫通電極158は、第1実施形態および第2実施形態と同様に、製造過程で芯材部7を凹部(または貫通孔)に挿入し、凹部の内面と芯材部7の外面との間隙を封止した後、導電部材5の接続部6を研磨等して除去することにより形成される。
【0090】
(第3実施形態の効果)
このように、複数の入出力信号を有するICチップ152をパッケージ内に封入し、多数の貫通電極158を形成する場合であっても、多数の芯材部7を有する導電部材5を使用することで、第1実施形態および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、ベース基板2の1個のパッケージに含まれる全ての凹部(または貫通孔)内に、芯材部7を簡単に配置できるので、貫通電極158を簡単に形成できる。また、各芯材部は接続部により連結されているので、各芯材部7間での位置ずれが発生しない。したがって、製造不良を防止して貫通電極158の導通が確保できるので、信頼性の高い貫通電極を形成できる。
また、第3実施形態の発振器によれば、簡単に形成でき信頼性の高い貫通電極158を有するパッケージの内部に圧電振動片4とICチップとが封入されているので、低コストで信頼性に優れた発振器150を提供できる。
【0091】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図22を参照しながら説明する。
なお、前述した第3実施形態の発振器150は、パッケージ9の内部で圧電振動片と集積回路とを接続し、発振器としていた。しかし、以下に述べる発振器110は、第1実施形態および第2実施形態の圧電振動子を発振子として、外部の集積回路と電気的接続したものであり、第3実施形態の発振器150とは異なるものである。
【0092】
本実施形態の発振器110は、図22に示すように、圧電振動子1を、集積回路111に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器110は、コンデンサ等の電子素子部品112が実装された基板113を備えている。基板113には、発振器用の前記集積回路111が実装されており、この集積回路111の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片が実装されている。これら電子素子部品112、集積回路111および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0093】
このように構成された発振器110において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路111に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路111によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路111の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0094】
本実施形態の発振器110によれば、キャビティ内の気密を維持しつつ、貫通電極の確実な導通を確保することができる製造方法で製造された圧電振動子1を備えているので、性能が良好で信頼性に優れた発振器110を提供することができる。
【0095】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図23を参照して説明する。なお電子機器として、前述した圧電振動子1を有する携帯情報機器120を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器120は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0096】
次に、本実施形態の携帯情報機器120の構成について説明する。この携帯情報機器120は、図23に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部121とを備えている。電源部121は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部121には、各種制御を行う制御部122と、時刻等のカウントを行う計時部123と、外部との通信を行う通信部124と、各種情報を表示する表示部125と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部126とが並列に接続されている。そして、電源部121によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0097】
制御部122は、各機能部を制御して音声データの送信や受信、現在時刻の計測、表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部122は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0098】
計時部123は、発振回路やレジスタ回路、カウンタ回路、インターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部122と信号の送受信が行われ、表示部125に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0099】
通信部124は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部127、音声処理部128、切替部129、増幅部130、音声入出力部131、電話番号入力部132、着信音発生部133および呼制御メモリ部134を備えている。
無線部127は、音声データ等の各種データを、アンテナ135を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部128は、無線部127又は増幅部130から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部130は、音声処理部128又は音声入出力部131から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部131は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0100】
また、着信音発生部133は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部129は、着信時に限って、音声処理部128に接続されている増幅部130を着信音発生部133に切り替えることによって、着信音発生部133において生成された着信音が増幅部130を介して音声入出力部131に出力される。
なお、呼制御メモリ部134は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部132は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0101】
電圧検出部126は、電源部121によって制御部122等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部122に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部124を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部126から電圧降下の通知を受けた制御部122は、無線部127、音声処理部128、切替部129および着信音発生部133の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部127の動作停止は、必須となる。更に、表示部125に、通信部124が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0102】
すなわち、電圧検出部126と制御部122とによって、通信部124の動作を禁止し、その旨を表示部125に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部125の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部124の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部136を備えることで、通信部124の機能をより確実に停止することができる。
【0103】
本実施形態の携帯情報機器120によれば、キャビティ内の気密を維持しつつ、貫通電極の確実な導通を確保することができる製造方法で製造された圧電振動子1を備えているので、性能が良好で信頼性に優れた携帯情報機器120を提供することができる。
【0104】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図24を参照して説明する。
本実施形態の電波時計140は、図24に示すように、フィルタ部141に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、前述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0105】
以下、電波時計140の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ142は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ143によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部141によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、前記搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部148、149をそれぞれ備えている。
【0106】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路144により検波復調される。
続いて、波形整形回路145を介してタイムコードが取り出され、CPU146でカウントされる。CPU146では、現在の年や積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC148に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部148、149は、前述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0107】
なお、前述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計140を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0108】
本実施形態の電波時計140によれば、キャビティ内の気密を維持しつつ、貫通電極の確実な導通を確保することができる製造方法で製造された圧電振動子1を備えているので、性能が良好で信頼性に優れた電波時計140を提供することができる。
【0109】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
第1実施形態および第2実施形態では、音叉型の圧電振動片4を用いた圧電振動子1を例に挙げて、本発明のパッケージ9の製造方法を説明した。しかし、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)を用いた圧電振動子に、上述した本発明のパッケージ9の製造方法を採用しても構わない。
【0110】
第1実施形態および第2実施形態では、本発明に係るパッケージ9の製造方法を使用しつつ、パッケージ9の内部に圧電振動片4を封入して圧電振動子1を製造した。しかし、パッケージ9の内部に圧電振動片4以外の電子部品を封入して、圧電振動子以外のデバイスを製造することもできる。
【0111】
第1実施形態の貫通電極形成工程S32では、ベース基板用ウエハ40に凹部30a,31aを形成し、ベース基板用ウエハ40を芯材部7に溶着させて貫通電極32,33を形成していた。しかし、例えば、ベース基板用ウエハ40に貫通孔を形成し、ベース基板用ウエハ40を芯材部7に溶着させて貫通電極32,33を形成してもよい。
【0112】
第1実施形態および第2実施形態の導電部材5は、一対の芯材部7を有し、第3実施形態の導電部材5は、6本の芯材部7を有していた。しかし、導電部材5の芯材部7の本数はこれに限られず、さらに多くの芯材部7を有してもよい。
【0113】
第1実施形態および第1実施形態の各変形例では、鍛造や半抜き加工、プレスにより導電部材5を形成していた。しかし、導電部材5の製造方法は、鍛造や半抜き加工、プレスの製造方法に限られることはない。
【0114】
第1実施形態では、ベース基板用ウエハ40を加熱して溶融させ、凹部30a,31aの内面と芯材部7の外面との間隙を封止していた。また、第2実施形態では、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間にガラスフリット46を充填して、貫通孔30,31の内面と芯材部7の外面との間隙を封止していた。しかし、凹部30a,31a(貫通孔30,31)の内面と芯材部7の外面との間隙の封止方法は、第1実施形態および第2実施形態の封止方法に限られることはない。
【符号の説明】
【0115】
1・・・圧電振動子 2・・・リッド基板(第1基板) 3a・・・キャビティ 4・・・圧電振動片 5・・・導電部材 6・・・接続部 7・・・芯材部 9・・・パッケージ 30,31・・・貫通孔 30a,31a・・・凹部 32,33・・・貫通電極 40・・・ベース基板用ウエハ(第1基板用ウエハ) 46・・・ガラスフリット 56・・・ブロック体 57・・・平板部材 70・・・加圧型 110・・・発振器 120・・・携帯情報機器(電子機器) 123・・・計時部 140・・・電波時計 141・・・フィルタ部 150・・・発振器 L・・・第2面 S32・・・貫通電極形成工程 S33・・・導電部材形成工程 S34・・・凹部形成工程 S35・・・芯材部挿入工程 S36・・・封止工程 U・・・第1面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合された複数の基板の間に形成されたキャビティ内に、電子部品を封入可能なパッケージの製造方法であって、
前記複数の基板のうち第1基板を厚さ方向に貫通し、前記キャビティの内側と前記パッケージの外側とを導通する複数の貫通電極を形成する貫通電極形成工程を備え、
前記貫通電極形成工程は、
1個の前記パッケージに含まれる全ての前記貫通電極となる複数の芯材部と、前記複 数の芯材部を連結する接続部とを備えた導電部材を形成する導電部材形成工程と、
前記第1基板に複数の凹部を形成する凹部形成工程と、
前記導電部材における前記複数の芯材部をそれぞれ前記凹部に挿入する芯材部挿入工程と、
前記凹部の内面と前記芯材部の外面との間隙を封止する封止工程と、
前記第1基板の第1面側および第2面側を研磨して、前記接続部を除去すると共に、 前記第1面側および前記第2面側から前記芯材部を露出させる研磨工程と、
を有することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージの製造方法であって、
前記貫通電極形成工程では、複数の前記第1基板を形成する第1基板用ウエハに、複数の前記パッケージに含まれる前記貫通電極を形成し、
前記芯材部挿入工程では、前記第1基板用ウエハにおける前記第1基板の形成領域ごとに前記導電部材を配置して、前記導電部材における前記複数の芯材部をそれぞれ前記凹部に挿入することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパッケージの製造方法であって、
前記封止工程では、加圧型で前記第1基板の表面を押圧すると共に、前記第1基板の軟化点よりも高温に前記第1基板を加熱することにより、前記芯材部の外面に前記第1基板を溶着させることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のパッケージの製造方法であって、
前記凹部は、貫通孔であり、
前記芯材部挿入工程では、前記第1面側および前記第2面側のうち一方面側における前記貫通孔の開口部から、前記芯材部を前記貫通孔に挿入し、
前記封止工程は、
前記第1面側および前記第2面側のうち他方面側における前記貫通孔の開口部から、 前記貫通孔の内面と前記芯材部の外面との間隙に、ガラスフリットを充填するガラスフ リット充填工程と、
前記間隙に充填された前記ガラスフリットを焼成して硬化させる焼成工程と、
を有していることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法であって、
前記導電部材は、鍛造により形成されることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法であって、
前記導電部材は、ブロック体の前記一方面側から他方面側に向かって前記ブロック体を半抜き加工することにより前記芯材部が形成され、前記芯材部以外の前記ブロック体により前記接続部が形成されることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法であって、
前記導電部材は、平板部材から前記芯材部および前記接続部を打ち抜き、前記接続部の法線方向に沿うように前記芯材部を曲げることにより形成されることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法により製造した前記パッケージの内部に、圧電振動片と集積回路とが封入されていることを特徴とする発振器。
【請求項10】
請求項8に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項8に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項12】
請求項8に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−80460(P2012−80460A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225945(P2010−225945)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】