説明

フィルムの厚み測定方法及びフィルム厚み測定装置

【課題】 フィルムの膜厚測定に関するものであり、フィルムの製膜上に起因するフィルムの波状の撓みによる影響を解消し、フィルムにキズを付けることなく高精度な測定方法、及び測定装置を実現する。
【解決手段】フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する方法において、膜厚を計測するセンサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面に、表と裏側、またはどちらか片側より空気を吹き付けるノズルを備え、フィルムの幅方向の膜厚を測定する際に該膜厚測定センサーと該吹き出しノズルをその位置や速度を同期させてフィルムの幅方向に移動させることを特徴とするフィルム厚み測定方法、およびフィルム厚み測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する方法、及びフィルムの厚み測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルムの厚みを非接触で測定する方法は光の干渉を原理とした光干渉方式や赤外線や放射線の吸収量から厚みを求めた赤外線吸収方式、放射線吸収方式などが一般的である。
【0003】
連続するフィルムの膜厚を測定する方法としては、例えば、図3に示すように片側よりフィルムを繰り出して反対側へフィルムを巻き取る工程で、上記の非接触膜厚装置を設置することが知られている。そしてフィルムの全幅の膜厚を測定する場合は、非接触膜厚装置のセンサー部をフィルムの幅方向に移動させて測定するのである。
【0004】
尚、この幅方向の厚みデータは、例えばフィルムの製膜工程で押出ダイやコータへフィードバックし膜厚制御をおこなったり、フィルムの品質管理や出荷検査に使用される重要なデータとなる。これらの技術に関しての先行文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【0005】
しかしながら、測定対象のフィルムはその製造過程で加熱され、また縦方向や幅方向に延伸されており、そのためフィルム内に内部応力や熱履歴による歪みが残留している。また、フィルムの厚みムラやフィルムが多層の場合には各層の熱収縮の違いにより部分的な反りも発生する。
【0006】
それらの要因によるフィルムの部分的な反りや撓みは、ガイドローラを通じてフィルムの繰り出し側と巻き取り側とに張力を印加して解消するのであるが、特にフィルムの幅方向に直角となす波状の撓みは解消できない。
【0007】
この波状の撓み部分に厚み測定センサーでフィルムの厚みを測定した場合、図4に示すように本来のフィルム厚みtに対して斜め方向の厚みを測定してしまい測定に誤差が生じることとなる。また、斜めに照射した赤外線や光源の光が斜めに入射することで受光素子に十分な光量が透過、または反射しないために測定ができないなどの不具合が生じる。
【0008】
そこでガイドローラ近傍の波状の撓みが小さい位置で厚み測定センサーを設置する方法があるが、センサーの筐体が大きなセンサー、例えば放射線吸収方式のセンサーはガイドローラ近傍に近づけて設置することができない。
【0009】
あるいはフィルムの張力とガイドローラのバックアップ効果で波状の撓みが解消されることは自明であるが、そのガイドローラ上でフィルムの膜厚を測定するためにガイドローラに対向してセンサーを設置する方法が考えられる。しかしながら、透過方式の光干渉方式や赤外線吸収方式や放射線吸収方式などの膜厚計は光源や赤外線、放射線を照射する照射素子とそれらを受光する受光素子を対向させて設置する必要があり困難である。
【0010】
また、センサーの近傍にローラを配して測定する部分のフィルムの撓みを延ばす方法もあるが、それらのローラもセンサーと同期してフィルムの幅方向に移動するためフィルムがローラに擦れてフィルムに傷が生じてしまう問題があった。
【特許文献1】特開2000−71309
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、精度良くフィルムの膜厚を測定する方法、及びフィルム厚み測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する方法において、膜厚を計測するセンサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面に、表と裏側、またはどちらか片側より空気を吹き付けるノズルで、フィルムの熱履歴等で生じた波状の撓み部分に空気を吹き付けることにより、フィルムの撓みを矯正して測定センサーに対して水平にすることにより、フィルムにキズを付けることなく精度良くフィルム膜厚が測定できることを見いだし、本発明の完成に至ったものである。
【0013】
本発明の第1は、フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する方法において、膜厚を計測するセンサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面に、表と裏側、またはどちらか片側より空気を吹き付けるノズルを備え、フィルムの幅方向の膜厚を測定する際に該膜厚測定センサーと該吹き出しノズルをその位置や速度を同期させてフィルムの幅方向に移動させてフィルムの膜厚を測定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第2は、フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する装置であって、膜厚を計測するセンサーと、当該センサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面に、表と裏側、またはどちらか片側より空気を吹き付けるノズルを備え、フィルムの幅方向の膜厚を測定する際に該膜厚測定センサーと該吹き出しノズルをその位置や速度を同期させてフィルムの幅方向に移動させる機構を備えるフィルム厚み測定装置であることを特徴とする。
【0015】
好ましい実施態様は、円筒形の吹き出しノズルでその内面から空気が吹き出す構造であり、その円筒内部に膜厚測定センサーを配した前記のフィルム厚み測定装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連続するフィルムの膜厚を非接触で測定する際に、フィルムの表と裏側、もしくはどちらか一方より測定センサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面をエアノズルで空気を吹き付けることでフィルムの製造工程に起因するフィルムの波状の撓みを測定センサーに対して水平にし、フィルムを傷つけることなく確実に精度良くフィルムの膜厚を測定できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明にかかるフィルムの膜厚測定方法、及びフィルム厚み測定装置につき、本発明の一実施例の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この一実施例により本発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施例の形態によるフィルムの膜厚測定装置を示す概略斜視図である。図1の膜厚測定装置では自由に回転することが可能なガイドローラ21によってフィルム10は導かれ、図1の左から繰り出され右へと巻き取られている。
【0019】
フィルム10は前述の繰り出しと巻き取りによって然るべき張力で張られているが、フィルムの製造工程に起因する波状の撓み11が発生する。
【0020】
円筒型のエアノズル32と膜厚測定センサー31とを一体化した測定ヘッド30は、フィルムの幅方向の膜厚を連続的に測定する目的でフィルムの幅方向を周期的に移動し、膜厚を測定する。
【0021】
次に図5を用いて、円筒型のエアノズル32と膜厚測定センサー31とを一体化した測定ヘッド30について説明する。円筒型エアノズル32は一般的に円筒の外周部の一部より圧縮エアを入力し、その円筒内部円周に加工された間隙よりエアを一方向に吹き出す構造となっている。これらの測定ヘッドは測定装置の仕様上、及びエアノズルから吹き出されるエアのバランスから対向させて設置するのが望ましい。
【0022】
一方、種々の膜厚測定方式の膜厚測定センサーで赤外線吸収方式や光干渉方式の膜厚測定センサーは一般的に円筒型をしており、前述の円筒型エアノズルに内挿することが可能である。尚、円筒型ノズルと膜厚測定センサーは内部より吹き出すエアの為のクリアランスは確保するのは言うまでもない。
【0023】
図2は、膜厚測定センサーが一般的に円筒型でない、例えば放射線吸収方式の測定センサーの場合を想定した実施例である。放射線吸収方式の測定センサー31は一般的に筐体が大きく円筒形ではないが、膜厚の測定範囲はφ30mm以下と小さい。よって、その測定範囲のフィルムの波状の撓みを水平にするための扁平型エアノズル33を配置することで解決する。
【0024】
測定センサー31と扁平型エアノズル33はフィルムの幅方向を移動する際は各々の移動速度を同期して移動することが必要であることは言うまでもない。
【0025】
一般的に膜厚測定装置は、赤外線や可視光、紫外線、放射線を照射する照射側とその吸収量や干渉波を受光する受光側で構成されていることが多いが、フィルムからの反射光を測定する場合、照射素子と受光素子が一体型になっているセンサーもあるが、そのようなセンサーの場合は、一方がエアノズルだけとなる。
【0026】
実施例は、フィルムの表側と裏側にエアノズルを配しているが、どちらか一方のノズルでフィルムの波状の撓みが解消できれば、そのような実施も可能である。また、エアノズルに入力する圧縮エアの圧力は、フィルムの厚みや材質、エアノズルの方式によって異なるが、高い圧力を印加するとその吹き出しエアによって乱流が発生し、フィルムのバタツキが出て、測定精度に悪影響を及ぼす場合がある。このため、圧縮エアの圧力は1MPa以下が望ましい。
【0027】
適応可能なフィルムは、赤外線吸収方式や光干渉方式、放射線吸収方式などの非接触で膜厚が測定できるフィルムすべてに適応が可能で、一部の赤外線吸収方式や光干渉方式の膜厚計を用いれば、多層のフィルムも測定できることから、単層フィルム、多層フィルムにかかわらず適応が可能である。
【0028】
更に膜厚を測定するフィルム表面にエアノズルで空気を吹き付けることにより、フィルムや膜厚測定センサーに付着した繊維や異物を除去でき、繊維や異物による膜厚の測定誤差や膜厚測定センサーの照射、受光素子表面を拭き取るなどのメンテナンス回数を減らす効果もある。
【0029】
尚、エアノズルで空気を吹き付ける膜厚測定範囲周辺の定義であるが、非接触の膜厚測定装置のフィルムの膜厚測定範囲がφ1mm〜φ50mm程度であり、少なくともその範囲を包括することは言うまでもない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明によるフィルムの膜厚測定方法、及びフィルムの膜厚測定装置について、更に具体的に説明する。
【0031】
(実施例1)
使用したフィルムは、厚みが25μm、幅方向の寸法が2mの単層のポリイミドフィルムである。フィルムにはフィルムの走行方向に高さ5mm、幅60mm程度の波状の撓みが数カ所発生している。フィルムの走行速度は12m/minである。
【0032】
使用した膜厚装置は、光干渉方式の膜厚装置で膜厚測定センサーの外径はφ8mmで照射素子は光源からの光を光ファイバーで導いている。受光素子もφ8mmでフィルムを透過した干渉波を光ファイバーで積算処理回路へ導いている。
【0033】
上記の膜厚測定センサーを図5のように円筒型エアノズルに内挿し、照射素子側と受光素子側を対向させた。エアノズルの内径はφ16mmで、0.2MPaの圧縮エアを入力している。円筒型エアノズルとフィルムの距離は10mmに設定した。膜厚測定センサーと円筒型エアノズルを一体化した測定ヘッドはフィルムの幅方向に4m/minで移動する。
【0034】
以上の条件で膜厚の測定をおこなった結果、測定のバラツキは0.08μm以下であった。
【0035】
(比較例1)
前述と同様の条件で、円筒型エアノズルに圧縮エアを入力しなかった場合、測定バラツキが0.5μmであったり、一部測定できない部位も発生した。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例の形態によるフィルム膜厚測定装置を示す概略斜視図
【図2】本発明の一実施例の形態によるフィルム膜厚測定装置を示す概略斜視図
【図3】従来の技術によるフィルム膜厚測定装置を示す概略斜視図
【図4】フィルムの波状の撓みによる測定誤差の発生を説明する為の模式図
【図5】測定センサーと円筒型エアノズルの一体型の測定ヘッドの概略断面図
【図6】図2に示す一実施例の測定センサーと扁平型エアノズルの配置を説明する模式図
【符号の説明】
【0037】
10 フィルム
11 フィルムの波状の撓み
21a、21b、21c、21d ガイドローラ
30a、30b 測定ヘッド
31a、31b 膜厚測定センサー
32a、32b 円筒型エアノズル
33a、33b 扁平型エアノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する方法において、膜厚を計測するセンサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面に、表と裏側、またはどちらか片側より空気を吹き付けるノズルを備え、フィルムの幅方向の膜厚を測定する際に該膜厚測定センサーと該吹き出しノズルをその位置や速度を同期させてフィルムの幅方向に移動させることを特徴とするフィルム厚み測定方法。
【請求項2】
フィルムの厚みを連続的に非接触で測定する装置であって、膜厚を計測するセンサーと、当該センサーで前記フィルムの膜厚を測定する範囲周辺の表面に、表と裏側、またはどちらか片側より空気を吹き付けるノズルを備え、フィルムの幅方向の膜厚を測定する際に該膜厚測定センサーと該吹き出しノズルをその位置や速度を同期させてフィルムの幅方向に移動させる機構を備えることを特徴とするフィルム厚み測定装置。
【請求項3】
円筒形の吹き出しノズルでその内面から空気が吹き出す構造であり、その円筒内部に膜厚測定センサーを一体化したことを特徴とする請求項2に記載のフィルム厚み測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−232793(P2008−232793A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72102(P2007−72102)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】