説明

フレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント回路板、およびそれらの製造方法

【課題】搭載する半導体チップの熱を有効に発散することができ、しかも電磁波のシールド性に優れ、屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成すべく、材料コストが安く、製造工程数が少なく製作が容易で、しかも高価な装置を必要とせず、多層や両面に配線パターンを設けることができるフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】銅やアルミニウムなどよりなる金属基材50上に、例えば熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂シートを熱と圧力とを加えることによりラミネートして接着剤である絶縁材52を設け、その絶縁材を介してその上に配線パターン53aを形成して後、その配線パターンのグランド配線部分に、ボンディングツール56を押し当てるなどによって熱と圧力とを加え、グランド配線部分を変形することにより、熱により軟化した絶縁材52中に埋没して金属基材50と接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓性を有する短尺または長尺のシート基材上にプリントによって導体パターンを形成するフレキシブルプリント配線板に関する。および、そのようなフレキシブルプリント配線板上に半導体チップを搭載するフレキシブル回路板に関する。ならびに、それらフレキシブルプリント配線板およびフレキシブル回路板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフレキシブル回路板は、例えば図11(A)に示すように構成していた。図中符号1は絶縁基材であり、その上に配線パターン2を形成し、その配線パターン2をソルダーレジスト3で被って保護するとともに、配線パターン2のチップ接続端子2aに半導体チップ4のバンプ5を接続して絶縁基材1上に半導体チップ4をフリップチップ実装し、絶縁基材1と半導体チップ4との間に封止樹脂6を充填して樹脂封止していた。
【0003】
図11(B)には、そのフレキシブル回路板から打ち抜いて形成した半導体モジュール7の使用例を示す。図示するように、半導体モジュール7は、半導体チップ4を搭載する側を内側として湾曲し、例えば配線パターン2の別の一部接続端子2bを液晶パネル8に接続し、別の他部接続端子2cを他のプリント配線板9に接続していた。
【0004】
ところで、このような半導体モジュール7では、使用により、半導体チップ4に熱を発生する。その半導体チップ4に発生した熱は、半導体チップ4に接触しているまわりの空気に伝わり、また半導体チップ4に直接接触している配線パターン2や封止樹脂6へと伝わり、さらにそれらに接続している部品へと順に伝わる。そして、半導体チップ4に直接または間接的に接続しているそれら部品を介して次々とまわりの空気に放熱していた。
【0005】
ここで、熱伝導に関しては、フーリエの法則があり、θを熱抵抗、Lを経路長、λを熱伝導率、Aを伝熱面積とすると、
θ=L/λ・A
の式が成り立つ。もちろん、熱抵抗θが小さいほど熱が伝わりやすくなり、発熱体の温度を下げることができる。
【0006】
よって、このフーリエの法則から判るとおり、図11に示すような従来の半導体モジュール7では、半導体チップ4は小さいものであり、半導体チップ4に直接または間接的に接続している封止樹脂6や絶縁基材1の熱伝導率λも小さいものであることから、放熱効果を期待することはできなかった。特に、昨今では、液晶画面の高密度化や高精細化にともない、配線パターン2が細線化されて厚さも薄くなっており、配線パターン2を介しての放熱も悪くなる傾向にある。
【0007】
この結果、半導体チップ4で発生した熱が下がりにくくなって、例えば半導体チップ4の動作スピードが遅くなったり、信頼性が低下したりするなどの弊害を生ずることとなった。
【0008】
なお、このような半導体モジュール7において、絶縁基材1は、その製造工程中に受ける熱や薬品に耐える必要があり、通常ポリイミドが用いられている。しかし、ポリイミドは、高価であり、製造元が限られていることから供給不安がある問題があった。また、リサイクルが困難であり、今日の環境保護の要請に応えることが難しい問題があり、しかもきわめて帯電しやすく、塵や異物を吸着しやすく、半導体チップ4への悪影響が懸念されている。
【0009】
さらに、使用時において図11(B)に示すように湾曲したときにも、ポリイミドよりなる絶縁基材1が塑性変形しにくくなお弾性を保持することから、元の形状に戻ろうとする力が働いて、今日の小型化や高密度化や高精細化にともない特に狭くて複雑な空間に実装するときにはなおさら、作業能率が低下する問題があった。加えて、配線パターン2から発生する電磁波によって別の配線パターン2に悪影響を及ぼしたり、外部に悪影響を与えたりするおそれがあり、また反対に外部からの電磁波の影響を受けるおそれもあった。
【0010】
このため、従来のフレキシブルプリント回路板の中には、半導体チップの放熱効果を高めるべく、図12に示す製造方法により形成したフレキシブルプリント配線板に、図13に示すように半導体チップを実装して形成するものがある。そして、そのフレキシブルプリント回路板から打ち抜いて形成した半導体モジュールを、例えば図14に示すように使用していた。
【0011】
すなわち、図12(A)に示すように、例えば長尺の絶縁基材10の一面に配線形成用銅箔11を、他面にベタ銅箔12を有する両面配線用基材28を使用し、(B)に示すようにその両面配線用基材28のベタ銅箔12の一部を丸く除去して円形除去部12aを形成し、そののちケミカルエッチングやレーザ照射により、(C)に示すように絶縁基材10の一部を除去して絶縁基材除去部10aを形成していた。ここで、レーザ照射により絶縁基材除去部10aを形成するときは、完全に除去できずに配線形成用銅箔11の裏にスミアが残るため、ケミカルエッチング法によりデスミア処理を行う必要があり、さらに後に行う電解めっき処理のための導電性付与処理を行う必要があった。
【0012】
次いで、(D)に示すように絶縁基材除去部10aに電解めっきを行い、銅めっき13を付けて配線形成用銅箔11とベタ銅箔12とを接続し、ブラインドビアホール14を形成して後、(E)に示すように配線形成用銅箔11をエッチングして、グランド配線部分を銅めっき13と接続した配線パターン11aを形成し、その配線パターン11aにすずめっきや金めっきを行うとともにソルダーレジスト15を設け、フレキシブルプリント配線板16を形成していた。
【0013】
その後、図13(A)に示すように、フレキシブルプリント配線板16を長さ方向に搬送可能に設けて順次加熱ステージ17の上に乗せ、その配線パターン11aのチップ接続端子11bに半導体チップ18の金バンプ19を位置合わせし、ボンディングツール20で加熱するとともに加圧してそれらを接続し、フリップチップ実装することによりフレキシブルプリント配線板16上に半導体チップ18を搭載する。それから、(B)に示すように塗布ノズル21を用いて封止樹脂22を流し込み、(C)に示すように半導体チップ18を封止してフレキシブルプリント回路板23を完成していた。
【0014】
そして、使用するときには、一定間隔で半導体チップ18を搭載する長尺のフレキシブルプリント回路板23から打ち抜いて半導体モジュール26を形成し、その半導体モジュール26を、図14に示すように同様に半導体チップ18を搭載する側を内側として湾曲し、例えば配線パターン11aの別の一部接続端子11cを液晶パネル24に接続し、別の他部接続端子11dを他のプリント配線板25に接続していた。
【0015】
これにより、半導体チップ18が発生した熱を金バンプ19から配線パターン11aに伝え、その配線パターン11aから銅めっき13を介して表面積の大きなベタ銅箔12に伝達していた。ここで、上述したフーリエの法則を考えると、経路上にある金バンプ19、配線パターン11a、銅めっき13、ベタ銅箔12は、いずれも熱伝導率λが大きく、ベタ銅箔12の伝熱面積Aも大きいから、熱抵抗θを小さくし、半導体チップ17の放熱効果を上げることができる。
【0016】
また、図示のような半導体モジュール26では、配線パターン11aのグランド配線部分をベタ銅箔12に接続するから、絶縁基材10の裏面側全面に設けるベタ銅箔12により電磁波シールド効果を生じ、配線パターン11aから発生する電磁波ノイズを低減し、また外部からの電磁波ノイズの影響を受けにくくすることができる。さらに、図14に示すように半導体モジュール26を湾曲して組み付けるとき、ベタ銅箔12が塑性変形して元の形状に戻ろうとする弾性力を低減するから、組み付け作業性を高めることができる利点もある。
【0017】
しかしながら、上述した図12および図13に示すような製造方法では、高価な両面配線用基材28を使用し、製造工程数も多く、しかも絶縁基材10の一部を除去するためにケミカルエッチング装置やレーザ照射装置などの高価な装置を必要とするから、コスト高となって費用対効果の点で問題があった。加えて、絶縁基材10上に配線パターンを多層に設け、絶縁基材10の両面に配線パターンを設けることが困難である問題もあった。
【0018】
なお、従来のフレキシブルプリント配線板の中には、高価な両面配線用基材を使用せず、製造工程数も比較的少なく、しかもケミカルエッチング装置やレーザ照射装置などの高価な装置を必要とせず、多層や両面で配線パターンを設けることも可能な製造方法も提案されている。
【0019】
例えば図15(A)に示すように金属板30の表面を絶縁材31で被覆し、(B)に示すように絶縁材31の上に、銅ペーストをスクリーン印刷して後、加熱硬化することにより配線パターン32を形成する。
【0020】
2層の回路を形成するときは、(C)に示すように配線パターン32を覆って絶縁材31上に感光性樹脂を塗布し、加熱硬化することにより絶縁層33を形成する。その後、マスクを介して露光現像を行い、(D)に示すように絶縁層33のパターンを形成し、(E)に示すように絶縁層33のくぼみに銅ペースト34を埋め込み硬化する。その後、再び上記工程(B)ないし(D)を繰り返して2層目の配線パターン35を形成して後、2層目の絶縁層36を形成し、(F)に示すように配線パターン35にニッケルめっきおよび金めっき37を施してフレキシブルプリント配線板を得る。
【0021】
この図15に示す製造方法により作成したフレキシブルプリント配線板によれば、塑性変形しやすく湾曲しやすい金属板30を使用するから、組み付け時の作業性を向上することができる。ところが、金属板30に配線パターン32・35が接続されていないことから、肝心な放熱効果を期待することができなかった。
【0022】
仮に、1層目の配線パターン32と2層目の配線パターン35とを銅ペースト34を用いて接続したように、スクリーン印刷で銅ペーストを形成して金属板30と配線パターン32とを接続したとしても、印刷では微細な配線ピッチを形成することができず、また空気を閉じ込めないように真空状態にして印刷しなければならず、その後硬化させなければならないから、大変多くの工程を必要とする。さらに、絶縁層33・36の形成に感光体樹脂を用いると、電気的絶縁特性が悪くなり、熱収縮率も高いために反りが大きくなる、などの多くの問題を生ずる。
【0023】
また、従来のフレキシブルプリント配線板の中には、図16(A)に符号40で示すように、ベースフィルム41の上に金属回路パターン42を形成してなり、その金属回路パターン42上に熱可塑性樹脂43を設けて金属回路パターン42を、プリント配線板44の基材45上の銅箔パターン46に位置合わせし、(B)に示すように超音波ホーン47のチップ48で押して超音波溶着により容易に接続するものがある。
【0024】
しかし、このようなフレキシブルプリント配線板では、プリント配線板44の基材45を金属基材として放熱効果を向上しても、ベースフィルム41が存在するから、金属回路パターン42に接続して半導体チップを搭載することができず、また多層に形成しても金属回路パターン42同士を接続することは困難である。さらに、超音波ホーン47のチップ48を用いてベースフィルム41を介して押すから、金属回路パターン42の小面積を押すことができず、金属回路パターン42の1つの配線のみを押してそれを対応する銅箔パターン46に接続することが困難である問題があった。
【0025】
【特許文献1】特開平2−177493号公報
【特許文献2】特開平4−186697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
以上のとおり、搭載する半導体チップが発生する熱を有効に発散することができ、しかも電磁波のシールド性に優れ、屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成する製造方法においては、高価な両面配線用基材を使用し、製造工程数も多く、しかも絶縁基材の一部を除去するためにケミカルエッチング装置やレーザ照射装置などの高価な装置を必要とするから、コスト高となって費用対効果の点で問題があった。加えて、絶縁基材上に配線パターンを多層に設け、絶縁基材の両面に配線パターンを設けることが困難である問題もあった。
【0027】
そこで、この発明の第1の目的は、搭載する半導体チップの熱を有効に発散することができ、しかも電磁波のシールド性に優れ、屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成すべく、材料コストが安く、製造工程数が少なく製作が容易で、しかも高価な装置を必要とせず、多層や両面に配線パターンを設けることができるフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0028】
この発明の第2の目的は、配線パターンのグランド配線部分と金属基材との接続の信頼性を向上し、半導体チップの熱の発散を確実として放熱効果を一層向上したフレキシブルプリント回路板を作成可能とするフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0029】
この発明の第3の目的は、配線パターンの多層化を図り、複雑な回路構成を持つフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0030】
この発明の第4の目的は、配線パターンの両面化を図り、複雑な回路構成を持つフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することにある。
【0031】
この発明の第5の目的は、搭載する半導体チップが発生する熱を有効に発散することができ、しかも電磁波のシールド性に優れ、屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成可能なフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【0032】
この発明の第6の目的は、搭載する半導体チップが発生する熱を有効に発散することができ、しかも電磁波のシールド性に優れ、屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成すべく、材料コストが安く、製造工程数が少なく製作が容易で、しかも高価な装置を必要とせず、多層や両面に配線パターンを設けることができるフレキシブルプリント回路板の製造方法を提供することにある。
【0033】
この発明の第7の目的は、搭載する半導体チップが発生する熱を有効に発散することができ、しかも電磁波のシールド性に優れ、屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成可能なフレキシブルプリント回路板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0034】
そのため、請求項1に記載の発明は、フレキシブルプリント配線板の製造方法にかかり、上述した第1の目的を達成すべく、
銅やアルミニウムなどよりなる短尺や長尺のフレキシブルなシート状の金属基材上に、例えば熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂シートを熱と圧力とを加えることによりラミネートして接着剤である絶縁材を設け、その絶縁材を介してその上に、例えば銅箔ラミネート、フォトレジスト塗布、露光、現像、エッチングレジスト塗布、エッチング、エッチングレジスト除去を行って配線パターンを形成して後、
その配線パターンのグランド配線部分に、ボンディングツールを押し当てるなどによって熱と圧力とを加え、グランド配線部分を変形することにより、熱により軟化した前記絶縁材中に埋没して前記金属基材と接続する、
ことを特徴とする。
【0035】
そして、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を、配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がす。
【0036】
請求項2に記載の発明は、上述した第2の目的も達成すべく、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法において、グランド配線部分に熱と圧力とを加えるとともに、超音波振動を加える、ことを特徴とする。
【0037】
そして、配線パターンのグランド配線部分を金属基材に接続するときは、ボンディングツールなどを用いてグランド配線部分に熱と圧力とを加えるとともに同時に超音波振動も加え、グランド配線部分を変形することにより絶縁材中に埋没して金属基材に当て、それらを金属溶着する。
【0038】
請求項3に記載の発明は、上述した第3の目的も達成すべく、請求項1または2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
配線パターン上に、第2絶縁材を介して第2配線パターンを形成して後、
その第2配線パターンに、ボンディングツールを押し当てるなどによって熱と圧力とを加え、その第2配線パターンを変形することにより第2絶縁材中に埋没して配線パターンと接続する、
ことを特徴とする。
【0039】
そして、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を、第2配線パターンを介して1層目の配線パターンに導き、その1層目の配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がす。
【0040】
請求項4に記載の発明は、上述した第3の目的も達成すべく、請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
下層の配線パターン上に、上層の絶縁材を介して上層の配線パターンを形成して後、
その上層の配線パターンに熱と圧力とを加え、その上層の配線パターンを変形することにより前記上層の絶縁材中に埋没して前記下層の配線パターンと接続して配線パターンを多層に設ける、
ことを特徴とする。
【0041】
そして、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を、上層の配線パターンを介して順に下層の配線パターンに導き、多層の配線パターンを介して1層目の配線パターンのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がす。
【0042】
請求項5に記載の発明は、上述した第4の目的も達成すべく、請求項1ないし4のいずれか1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法において、
金属基材の表面に表側絶縁材を介して表側配線パターンを形成する一方、裏面にも裏側絶縁材を介して裏側配線パターンを形成して後、
それらの表側および裏側配線パターンのグランド配線部分に熱と圧力とを加え、それらのグランド配線部分を変形することにより各々前記表側または裏側絶縁材中に埋没して前記金属基材の表面または裏面と接続する、
ことを特徴とする。
【0043】
そして、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を、表側配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすとともに、その金属基材に逃がした熱を裏側配線パターンのグランド配線部分を介して裏側配線パターンにも伝える。
【0044】
請求項6に記載の発明は、フレキシブルプリント配線板にかかり、上述した第5の目的を達成すべく、請求項1ないし5のいずれか1に記載の製造方法により形成する、ことを特徴とする。
【0045】
請求項7に記載の発明は、フレキシブルプリント回路板の製造方法にかかり、上述した第6の目的を達成すべく、請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板上に半導体チップを搭載する、ことを特徴とする。
【0046】
請求項8に記載の発明は、フレキシブルプリント回路板にかかり、上述した第7の目的を達成すべく、請求項7に記載の製造方法により形成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
したがって、請求項1に記載の発明によれば、両面配線用基材などの高価な材料を用いないので材料コストが安く、製造工程数が比較的に少なく製作が容易で、しかもケミカルエッチング装置やレーザ照射装置といった高価な装置を必要とせず、多層や両面に配線パターンを設けることができるフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することができる。この発明により製造したフレキシブルプリント配線板は、マイクロストリップ構造と呼ばれるものであり、絶縁材の誘電率、絶縁材の厚さ、配線パターンの幅と厚さを設定することにより、特性インピーダンスをコントロールすることが可能である。
【0048】
そして、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすので、搭載する半導体チップの熱を有効に発散することができ、しかも金属基材を用いることから、電磁波のシールド性に優れ、加えて屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成することができる。
【0049】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、配線パターンのグランド配線部分を金属基材に接続するときは、グランド配線部分に熱と圧力とを加えるとともに超音波振動を加え、グランド配線部分を変形することにより金属基材に当ててそれらを金属溶着するので、電気的にも機械的にも信頼性の高い接続を行い、半導体チップの熱の発散を確実として放熱効果を一層向上したフレキシブルプリント回路板が作成可能なフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0050】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を第2配線パターンを介して1層目の配線パターンに導き、その1層目の配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすので、配線パターンの2層化を図り、複雑な回路構成を持つフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0051】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を上層の配線パターンを介して順に下層の配線パターンに導き、多層の配線パターンを介して1層目の配線パターンのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすので、配線パターンの多層化を図り、一層複雑な回路構成を持つフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0052】
請求項5に係る発明によれば、請求項1ないし4のいずれか1に記載の発明の効果に加えて、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を表側配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすとともに、その金属基材に逃がした熱を裏側配線パターンのグランド配線部分を介して裏側配線パターンにも伝えるので、半導体チップの放熱効果を一層高めるとともに、配線パターンの両面化を図り、複雑な回路構成を持つフレキシブルプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0053】
請求項6に係る発明によれば、フレキシブルプリント配線板にかかり、請求項1ないし5のいずれか1に記載の製造方法により形成するので、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすので、搭載する半導体チップが発生する熱を有効に発散することができ、しかも金属基材を用いることから、電磁波のシールド性に優れ、加えて屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成可能なフレキシブルプリント配線板を提供することができる。また、この発明によるフレキシブルプリント配線板は、マイクロストリップ構造と呼ばれるものであり、同様に絶縁材の誘電率、絶縁材の厚さ、配線パターンの幅と厚さを設定することにより、特性インピーダンスをコントロールすることが可能である。
【0054】
請求項7に記載の発明によれば、フレキシブルプリント回路板の製造方法にかかり、請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板上に半導体チップを搭載するので、両面配線用基材などの高価な材料を用いないので材料コストが安く、製造工程数が比較的に少なく製作が容易で、しかもケミカルエッチング装置やレーザ照射装置といった高価な装置を必要とせず、多層や両面に配線パターンを設けることができるフレキシブルプリント回路板の製造方法を提供することができる。この発明により製造したフレキシブルプリント回路板は、マイクロストリップ構造と呼ばれるものであり、同様に特性インピーダンスをコントロールすることが可能である。
【0055】
そして、半導体チップが発生する熱を配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすので、搭載する半導体チップの熱を有効に発散することができ、しかも金属基材を用いることから、電磁波のシールド性に優れ、加えて屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を作成することができる。
【0056】
請求項8に記載の発明によれば、フレキシブルプリント回路板にかかり、請求項7に記載の製造方法により形成するので、半導体チップが発生する熱を配線パターンを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がすので、搭載する半導体チップが発生する熱を有効に発散することができ、しかも金属基材を用いることから、電磁波のシールド性に優れ、加えて屈曲性に富んで使用時の組み付け作業性のよいフレキシブルプリント回路板を提供することができる。また、この発明によるフレキシブルプリント回路板は、マイクロストリップ構造と呼ばれるものであり、同様に特性インピーダンスをコントロールすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態について説明する。
図1(A)ないし(D)には、この発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造工程を示す。
【0058】
この発明に係るフレキシブルプリント配線板を形成するときには、図1(A)に示すように金属基材50を使用する。金属基材50は、銅やアルミニウムなどよりなり、短尺でもよいが、図示例では長尺のフレキシブルなシート状のものを用い、適度な強度を有するとともに、折り曲げた場合に塑性変形しやすい特性を持つ金属組成のものを使用する。折り曲げやすさを考えると、薄い方がよいが、製造しやすさを考えると、強度も必要であり、厚さは10〜300μm、好適には10〜100μmのものを用いる。
【0059】
この金属基材50の片面にのみ配線パターンを形成する場合には、図中仮想線で示すように金属基材50の裏面に反り防止材51を貼り付けてもよい。反り防止材51としては、後述の絶縁材52と熱収縮率がほぼ同等なもの、例えば後述の絶縁材52に用いると同じ、熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂シートを使用し、そのシートを金属基材50の裏面にラミネートして後、後の工程で軟化することのないように、あらかじめ加熱して完全に硬化させておく。
【0060】
金属基材50の表面には、接着剤としての働きもする絶縁材52を設ける。絶縁材52は、半硬化状態(いわゆるBステージ)の熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂シートを熱と圧力とを加えることによりラミネートして形成する。また、別の方法としては、液状の絶縁材52をロールコータにより塗布して形成してもよい。このようにして形成した後、絶縁材52に加える熱処理の温度と時間を調整し、再び熱を加えることで軟化できる状態にする。例えば、室温〜100℃では固形であり、100℃以上に加熱すると軟化し、さらに加熱すると、熱硬化反応が進んで硬化するものを使用する。
【0061】
絶縁材52としては、厚さが1〜50μm、好適には2〜20μmのものを用いる。熱硬化性ではなく熱可塑性の樹脂を用いることも、後述の半導体チップの接続条件を調整することにより可能である。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、変性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマなどが好適である。
【0062】
このような絶縁材52の上には、厚さ5〜25μmの配線形成用銅箔53をラミネートし、全体で金属ベース基板材料54を形成する。それから、配線形成用銅箔53の表面にフォトレジストを塗布して後、長さ方向に搬送しながら、一定間隔置きに露光を行ってから現像を行う。そして、反り防止材51をラミネートした場合を除き、金属基材50の裏面にエッチングレジストを塗布して後、エッチングを行い、その後アルカリ溶液などを用いてフォトレジストとエッチングレジストを除去することにより、周知の工程を用いて図1(B)に示すように一定間隔置きに同一の配線パターン53aを形成する。
【0063】
次に、図1(C)に示すように、長さ方向に搬送しながら、順にアンビル55の上にセットし、所定の温度に加熱したボンディングツール56を個別の配線パターン53aごとに位置合わせして下降し、各配線パターン53aのグランド配線部分に押し当てて熱と圧力を加える。これにより、時間の経過とともに、ボンディングツール56の熱を配線パターン53aを介して伝達して絶縁材52を軟化し、配線パターン53aを変形することにより絶縁材52中に埋没して金属基材50に接続する。
【0064】
ボンディングツール56を用いてグランド配線部分に熱と圧力を加えるとき、同時に超音波振動を加えるようにしてもよく、そのようにすると、配線パターン53aのグランド配線部分と金属基材50とを金属溶着して、電気的にも機械的にも信頼性の高い接続を行うことができる。
【0065】
そして、以上のように配線パターン53aのグランド配線部分と金属基材50とを接続して後、絶縁材52として熱硬化性樹脂を用いる場合には、全体を加熱して絶縁材52の硬化反応を進めて完全に硬化する。熱可塑性樹脂を用いる場合には、全体の加熱は行わない。
【0066】
ところで、配線パターン53aのグランド配線部分と金属基材50との接続目的が、電気的な導通を要しない、単に熱伝導のみを必要とするものである場合には、ボンディングツール56を超音波振動させずに熱と圧力のみを加えるようにする。このとき、グランド配線部分と金属基材50とを接続して後、ボンディングツール56を離すと、接続部分まわりの絶縁材52の温度が下がり、接続部分まわりの絶縁材52を硬化するとともにその線膨張係数にしたがって収縮する。これによって、グランド配線部分と金属基材50との接続部分に、絶えずそれらを圧接する力が働くこととなる。
【0067】
次には、半導体チップとの電気的接続を良好とし、また防錆効果を高めるために、配線パターン53aと金属基材50の裏面に、すずめっき、金めっき、ニッケル下地の金めっき、インジュウムめっきなどの金属めっきを行う。また、その金属めっきと前後して、必要に応じ、配線パターン53aを保護するために、図1(D)に示すようにチップ接続端子53bその他の接続端子部分を除いて、配線パターン53aに印刷によって、可撓性に優れたソルダーレジスト57を設けてフレキシブルプリント配線板58を形成する。
【0068】
このようなフレキシブルプリント配線板58の製造方法によれば、両面配線用基材などの高価な材料を用いないので材料コストが安く、製造工程数が比較的に少なく製作が容易で、しかもケミカルエッチング装置やレーザ照射装置といった高価な装置を必要とせず、多層や両面にも配線パターンを設けることができる。そして、形成したフレキシブルプリント配線板58は、マイクロストリップ構造と呼ばれるものであり、絶縁材52の誘電率、絶縁材52の厚さ、配線パターン53aの幅と厚さを設定することにより、特性インピーダンスをコントロールすることが可能である。
【0069】
図2(A)ないし(C)には、図1の製造工程により形成したフレキシブルプリント配線板58を用いて、この発明によるフレキシブルプリント回路板60を形成する製造工程を示す。
【0070】
図2(A)に示すように、フレキシブルプリント配線板58を長さ方向に搬送可能に設けて順次、所定の温度に設定した加熱ステージ61上にセットし、所定の温度に設定したボンディングツール62で半導体チップ63を保持して、その半導体チップ63に金めっきにより形成した金属バンプ64を、配線パターン53aのチップ接続端子53bに位置合わせして下降し、半導体チップ63を介して熱とともに圧力を加えて金属バンプ64とチップ接続端子53bとをAu−Sn共晶接合して接続する。
【0071】
なお、絶縁材52に熱可塑性樹脂を用いた場合には、半導体チップ63を介して熱とともに圧力を加える時間を長くすると、伝わった熱により絶縁材52が軟化してチップ接続端子53bが絶縁材52中に埋没してしまうこととなるから、少し埋没した時点でボンシングツール62を上昇するように調整する。
【0072】
それから、図2(B)に示すように、塗布ノズル65を用いて半導体チップ63の側面に沿って周囲を描画するように封止樹脂66を塗布し、毛細管現象により注入して絶縁材52と半導体チップ63との間に充填する。そして、(C)に示すように、封止樹脂66を熱硬化して半導体チップ63を樹脂封止し、フレキシブルプリント回路板60を完成する。
【0073】
そして、使用するときは、一定間隔で半導体チップ63を搭載する長尺のフレキシブルフレキシブルプリント回路板60から、各半導体チップ63を含む単位ごとに所定形状に打ち抜いて半導体モジュール67を形成し、その半導体モジュール67を、図3に示すように半導体チップ63を搭載する側を内側として湾曲し、例えば配線パターン53aの別の一部接続端子53cを液晶パネル68に接続し、別の他部接続端子53dを他のプリント配線板69に接続する。
【0074】
このようなフレキシブルプリント回路板60とすれば、半導体チップ63が発生する熱を金属バンプ64から、配線パターン53aを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材50に逃がすので、搭載する半導体チップ63の熱を、熱伝導率のよい金属バンプ64および配線パターン53aで効率よく伝達して、熱伝導率がよく広い金属基材50からまわりの空間に有効に発散することができる。これにより、半導体チップ63の動作スピードが低下したり、半導体チップ63の信頼性が低下したりするおそれを解消することができる。
【0075】
しかも、配線パターン53aのグランド配線部分を電気的に接続して金属基材50を用いることから、電磁波のシールド性に優れ、配線パターン53aから発生する電磁波ノイズを低減し、また外部からの電磁波ノイズの影響を受けにくくすることができる。加えて、屈曲性に富み、図3に示すように半導体モジュール67を湾曲して組み付けるとき、金属基材50が塑性変形して元の形状に戻ろうとする弾性力を低減し、特に昨今では小型化が進んで筐体内に折り曲げて組み付けることが多くなっており、このようなときの組み付け作業性を高めることができる。
【0076】
そして、配線パターン53aのグランド配線部分を金属基材50に接続するとき、グランド配線部分に熱と圧力とを加えるとともに超音波振動を加え、グランド配線部分と金属基材50とを金属溶着したフレキシブルプリント配線板58を用いてフレキシブルプリント回路板60を形成すると、電気的にも機械的にも信頼性の高い接続を行い、半導体チップ63の熱の発散を確実として放熱効果を一層向上することができる。
【0077】
図4(A)ないし(D)には、この発明に係る2層フレキシブルプリント配線板の製造工程を示す。
【0078】
図示2層フレキシブルプリント配線板の製造工程では、まず図1(A)ないし(C)と同様の製造工程を経て、金属基材50上に絶縁材52を介して配線パターン53aを形成して後、配線パターン53aのグランド配線部分を金属基材50に接続する。その後、配線パターン53a上に、厚さが1〜50μm、好適には2〜20μmの第2絶縁材70と第2配線形成用銅箔71をラミネートして形成する。
【0079】
なお、この例の場合には、1層目の絶縁材52に熱硬化性の樹脂を用い、熱可塑性樹脂は用いない。1層目の絶縁材52に熱可塑性樹脂を用いると、後述する第2配線パターン71aと配線パターン53a間の接続時に加える熱により、下層の配線パターン53aも埋没してしまい、適切な接続を行うことができなくなるからである。
【0080】
第2絶縁材70と第2配線形成用銅箔71は、例えば図5に示すように、矢示方向に搬送しながら、第2配線形成用銅箔71に第2絶縁材70を塗布したものを、所定の温度に加熱したラミネートローラ72を用いて加熱とともに加圧しながらラミネートする。このとき、配線パターン53aと金属基材50との接続部には凹み73が形成されており、その凹み73にエア溜りが発生しないように真空ラミネータを使用することが好ましい。
【0081】
または、例えば図6(A)に示すように、矢示方向に搬送しながら、カバーフィルム74に第2絶縁材70を塗布したものを、所定の温度に加熱したラミネートローラ72を用いて加熱とともに加圧しながらラミネートする。この場合も、同様な理由から、真空ラミネータを使用することが好ましい。その後、図6(B)に示すように、同様に矢示方向に搬送しながら、カバーフィルム74を剥離しながら、連続して第2配線形成用銅箔71を、加熱したラミネートローラ72を用いて加熱とともに加圧しながらラミネートする。なお、カバーフィルム74を剥離した第2絶縁材70の表面には、凹みが存在しないから、このときは真空ラミネータを用いる必要はなく、通常のラミネータを用いてラミネートを行う。
【0082】
第2絶縁材70と第2配線形成用銅箔71とのラミネートは、ラミネートローラ72を用いる他、加熱した平板を用いて挟むプレス方式で行ってもよい。このとき用いる第2絶縁材70には、熱可塑性樹脂を用いることも可能である。
【0083】
それから、第2配線形成用銅箔71の表面にフォトレジストを塗布して後、長さ方向に搬送しながら、一定間隔置きに露光を行ってから現像を行う。そして、金属基材50の裏面にエッチングレジストを塗布して後、エッチングを行い、その後アルカリ溶液などを用いてフォトレジストとエッチングレジストを除去することにより、周知の工程を用いて図4(B)に示すように一定間隔置きに同一の第2配線パターン71aを形成する。
【0084】
次に、図4(C)に示すように、長さ方向に搬送しながら、順にアンビル55の上にセットし、所定の温度に加熱したボンディングツール56を個別の第2配線パターン71aごとに位置合わせして下降し、各第2配線パターン71aに押し当てて熱と圧力を加える。これにより、時間の経過とともに、ボンディングツール56の熱を第2配線パターン71aを介して伝達して第2絶縁材70を軟化し、第2配線パターン71aを変形することにより第2絶縁材70中に埋没して下層の配線パターン53aに接続する。
【0085】
この場合も、前例と同様に、ボンディングツール56を用いて各第2配線パターン71aに熱と圧力を加えるとき、同時に超音波振動を加えるようにしてもよく、そのようにすると、各第2配線パターン71aと下層の配線パターン53aとを金属溶着して、電気的にも機械的にも信頼性の高い接続を行うことができる。
【0086】
そして、以上のように各第2配線パターン71aと下層の配線パターン53aとを接続して後、第2絶縁材70として熱硬化性樹脂を用いる場合には、全体を加熱して第2絶縁材70の硬化反応を進めて完全に硬化する。熱可塑性樹脂を用いる場合には、全体の加熱は行わない。
【0087】
ところで、第2配線パターン71aと下層の配線パターン53aとの接続目的が、電気的な導通を要しない、単に熱伝導のみを必要とするものである場合には、ボンディングツール56を超音波振動させずに熱と圧力のみを加えるようにする。このとき、第2配線パターン71aと下層の配線パターン53aとを接続して後、ボンディングツール56を離すと、接続部分まわりの第2絶縁材70の温度が下がり、接続部分まわりの第2絶縁材70を硬化するとともにその線膨張係数にしたがって収縮する。これによって、第2配線パターン71aと下層の配線パターン53aとの接続部分に、絶えずそれらを圧接する力が働くこととなる。
【0088】
次には、これも前例と同様に、半導体チップとの電気的接続を良好とし、また防錆効果を高めるために、第2配線パターン71aと金属基材50の裏面に、すずめっき、金めっき、ニッケル下地の金めっき、インジュウムめっきなどの金属めっきを行う。また、その金属めっきと前後して、必要に応じ、配線パターン53aを保護するために、図4(D)に示すようにチップ接続端子71bその他の接続端子部分を除いて、第2配線パターン71aに印刷によって、可撓性に優れたソルダーレジスト57を設けて2層フレキシブルプリント配線板76を形成する。
【0089】
図7(A)ないし(C)には、図4の製造工程により形成した2層フレキシブルプリント配線板76を用いて、この発明による2層フレキシブルプリント回路板60を形成する製造工程を示す。
【0090】
図7(A)に示すように、2層フレキシブルプリント配線板76を長さ方向に搬送可能に設けて順次、所定の温度に設定した加熱ステージ61上にセットし、所定の温度に設定したボンディングツール62で半導体チップ63を保持して、その半導体チップ63に金めっきにより形成した金属バンプ64を、第2配線パターン71aのチップ接続端子71bに位置合わせして下降し、半導体チップ63を介して熱とともに圧力を加えて金属バンプ64とチップ接続端子71bとをAu−Sn共晶接合して接続する。
【0091】
なお、第2絶縁材70に熱可塑性樹脂を用いた場合には、半導体チップ63を介して熱とともに圧力を加える時間を長くすると、伝わった熱により第2絶縁材70が軟化してチップ接続端子71bが第2絶縁材70中に埋没してしまうこととなるから、少し埋没した時点でボンディングツール62を上昇するように調整する。
【0092】
それから、図7(B)に示すように、塗布ノズル65を用いて半導体チップ63の側面に沿って周囲を描画するように封止樹脂66を塗布し、毛細管現象により注入して第2絶縁材70と半導体チップ63との間に充填する。そして、(C)に示すように、封止樹脂66を熱硬化して半導体チップ63を樹脂封止し、2層フレキシブルプリント回路板77を完成する。
【0093】
そして、使用するときは、一定間隔で半導体チップ63を搭載する長尺の2層フレキシブルフレキシブルプリント回路板77から、各半導体チップ63を含む単位ごとに所定形状に打ち抜いて半導体モジュールを形成し、その半導体モジュールを、半導体チップ63を搭載する側を内側として湾曲し、例えば第2配線パターン71aの別の一部接続端子を液晶パネルに接続し、別の他部接続端子を他のプリント配線板に接続する。
【0094】
このような2層フレキシブルプリント回路板77とすれば、半導体チップ63が発生する熱を金属バンプ64から、第2配線パターン71aを介して1層目の配線パターン53aに導き、その1層目の配線パターン53aを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材50に逃がすので、搭載する半導体チップ63の熱を、熱伝導率のよい金属バンプ64、第2配線パターン71a、および1層目の配線パターン53aで効率よく伝達して、熱伝導率がよく広い金属基材50からまわりの空間に有効に発散することができる。これにより、半導体チップ63の動作スピードが低下したり、半導体チップ63の信頼性が低下したりするおそれを解消することができる。
【0095】
しかも、第2配線パターン71aのグランド配線部分を下層の配線パターン53aに電気的に接続し、その下層の配線パターン53aを介して金属基材50に電気的に接続することができるので、前例と同様に、電磁波のシールド性に優れ、配線パターン53aから発生する電磁波ノイズを低減し、また外部からの電磁波ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0096】
加えて、これも前例と同様に、屈曲性に富み、半導体モジュールを湾曲して組み付けるとき、金属基材50が塑性変形して元の形状に戻ろうとする弾性力を低減し、特に昨今では小型化が進んで筐体内に折り曲げて組み付けることが多くなっており、このようなときの組み付け作業性を高めることができる。さらに、この例によれば、配線パターンの2層化を図るので、より複雑な回路構成とすることができる。
【0097】
図4ないし図7に示す例では、1層目の配線パターン53a上に、第2絶縁材70を介して第2配線パターン71aを形成して後、その第2配線パターン71aに、ボンディングツール62を押し当てて熱と圧力とを加え、その第2配線パターン71aを変形することにより第2絶縁材70中に埋没して1層目の配線パターン53aと接続する。そして、フリップチップ接続で半導体チップ63を搭載したとき、半導体チップ63が発生する熱を、第2配線パターン71aを介して1層目の配線パターン53aに導き、その1層目の配線パターン53aを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材50に逃がす2層のフレキシブルプリント回路板77について説明した。
【0098】
しかし、下層の配線パターン上に、上層の絶縁材を介して上層の配線パターンを形成して後、その上層の配線パターンに熱と圧力とを加え、その上層の配線パターンを変形することにより上層の絶縁材中に埋没して下層の配線パターンと接続して配線パターンを多層に設けるようにする。そして、フリップチップ接続で半導体チップを搭載したとき、半導体チップが発生する熱を、上層の配線パターンを介して順に下層の配線パターンに導き、多層の配線パターンを介して1層目の配線パターンのグランド配線部分が接続する金属基材に逃がし、3層以上の多層のフレキシブルプリント回路板とすることもできる。
【0099】
図8には、この発明に係る両面フレキシブルプリント回路板80の縦断面を示す。
この例では、図1(A)ないし(C)と同様の製造工程を経て、金属基材50の表面に表側絶縁材52を介して表側配線パターン53aを形成するとき同時に、金属基材50の裏面にも裏側絶縁材82を介して裏側配線パターン83aを形成する。それから、ボンディングツールを用いて表側および裏側配線パターン53a・83aのグランド配線部分に熱と圧力とを加えることにより、それらのグランド配線部分を各々表側および裏側絶縁材52・82中に埋没して金属基材50の表面または裏面に接続する。
【0100】
その後、表側配線パターン53a上に表側第2絶縁材70をラミネートすると同時に、裏側配線パターン83a上に裏側第2絶縁材84をラミネートし、さらに表側第2絶縁材70の上に表側第2配線形成用銅箔をラミネートすると同時に、裏側第2絶縁材84の上に裏側第2配線形成用銅箔をラミネートする。そして、表側および裏側の第2配線形成用銅箔から、周知の工程を経て表側および裏側第2配線パターン71a・85aを片面ずつまたは同時に形成する。それから、ボンディングツールを用いて表側および裏側第2配線パターン71a・85aに熱と圧力とを加えることにより、それらの第2配線パターン71a・85aを各々表側および裏側第2絶縁材70・84中に埋没して金属基材50の表面または裏面に接続する。
【0101】
次いで、金属めっきを行い、必要に応じてその金属めっきに前後してソルダーレジスト57・86を形成する。そして、半導体チップ63を搭載し、封止樹脂66を充填して樹脂封止し、両面フレキシブルプリント回路板80を完成する。
【0102】
このような両面フレキシブルプリント回路板80とよれば、半導体チップ63が発生する熱を金属バンプ64から、表側第2配線パターン71aを通して下層の表側配線パターン53aに伝え、表側配線パターン53aを介してそのグランド配線部分が接続する金属基材50に逃がすとともに、その金属基材50に逃がした熱を裏側配線パターン83aのグランド配線部分を介して裏側第2配線パターン85aにも伝えるので、上述した例の効果に加え、半導体チップ63の放熱効果を一層高めるとともに、配線パターンの両面化を図り、複雑な回路構成とすることができる。
【0103】
さて、この発明で用いる配線形成用銅箔53・71は、配線パターン53a・71aを形成して金属基材50や下層の配線パターン53aと接続するとき、ボンディングツール56により変形して引きのばすため、断線を防止すべく、柔らかくまた伸び率の高い圧延銅箔やそれに類似する物性の電解銅箔を用いることが望ましい。
【0104】
また、ボンディングツール56は、ステンレスなどの耐熱性を有する金属を用いてつくる。そして、その先端形状は、方式により異なるが、圧力と熱と超音波振動を加える場合は、例えば図9に示すように溝を設けて横ずれを防ぐようにすることが好ましい。他方、熱と圧力のみを加える場合には、配線パターン53a・71aに傷を付けることのないように、平面状または滑らかな半球形状などとすることが好ましい。そして、微細な配線パターン53a・71aを変形させて金属基材50や下層の配線パターン53aと接続するためには、先端を細くする必要がある。しかし、例えば図10(A)ないし(E)に示すように、最先端部以外は極力太い方が、ツール全体の強度を確保する上から、また温度を安定させるために必要とされる熱容量を確保する上からも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】(A)ないし(D)は、この発明に係るフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【図2】(A)ないし(C)は、図1の製造工程により形成したフレキシブルプリント配線板を用いて、この発明によるフレキシブルプリント回路板を形成する製造工程図である。
【図3】図2の製造工程により形成したフレキシブルプリント回路板の使用状態図である。
【図4】(A)ないし(D)は、この発明に係る2層フレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【図5】その2層目の配線パターンを形成するための、第2絶縁材と第2配線形成用銅箔のラミネート工程の一例を示す図である。
【図6】(A)および(B)は、ラミネート工程の他例を示す図である。
【図7】(A)ないし(C)は、図4の製造工程により形成した2層フレキシブルプリント配線板を用いて、この発明による2層フレキシブルプリント回路板を形成する製造工程図である。
【図8】この発明に係る両面フレキシブルプリント回路板の縦断面図である。
【図9】この発明に係る製造方法で使用するボンディングツールの一例の正面図およびその先端を示す底面図である。
【図10】(A)ないし(E)は、それぞれこの発明に係る製造方法で使用するボンディングツールの他例の正面図およびその先端を示す底面図である。
【図11】(A)は従来のフレキシブルプリント回路板の縦断面図、(B)はその使用状態図である。
【図12】(A)ないし(E)は、従来の別のフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【図13】(A)ないし(C)は、図12の従来の製造工程により形成したフレキシブルプリント配線板を用いて、フレキシブルプリント回路板を形成する製造工程図である。
【図14】図13の製造工程により形成したフレキシブルプリント回路板の使用状態図である。
【図15】(A)ないし(F)は、従来のさらに別のフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【図16】(A)および(B)は、従来のまたさらに別のフレキシブルプリント配線板の製造工程図である。
【符号の説明】
【0106】
50 金属基材
52 (表側)絶縁材
53a (表側)配線パターン
56 ボンディングツール
58 フレキシブルプリント配線板
60 フレキシブルプリント回路板
62 ボンディングツール
63 半導体チップ
64 金属バンプ
70 第2絶縁材
71a 第2配線パターン
76 フレキシブルプリント配線板
77 フレキシブルプリント回路板
80 フレキシブルプリント回路板
82 裏側絶縁材
83a 裏側配線パターン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材上に絶縁材を介して配線パターンを形成して後、
その配線パターンのグランド配線部分に熱と圧力とを加えることにより、そのグランド配線部分を前記絶縁材中に埋没して前記金属基材と接続する、
ことを特徴とする、フレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記グランド配線部分に熱と圧力とを加えるとともに、超音波振動を加えることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記配線パターン上に第2絶縁材を介して第2配線パターンを形成して後、
その第2配線パターンに熱と圧力とを加えることにより、その第2配線パターンを前記第2絶縁材中に埋没して前記配線パターンと接続する、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
下層の配線パターン上に、上層の絶縁材を介して上層の配線パターンを形成して後、
その上層の配線パターンに熱と圧力とを加えることにより、その上層の配線パターンを前記上層の絶縁材中に埋没して前記下層の配線パターンと接続して配線パターンを多層に設ける、
ことを特徴とする、請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記金属基材の表面に表側絶縁材を介して表側配線パターンを形成する一方、裏面にも裏側絶縁材を介して裏側配線パターンを形成して後、
それらの表側および裏側配線パターンのグランド配線部分に熱と圧力とを加えることにより、それらのグランド配線部分を各々前記表側または裏側絶縁材中に埋没して前記金属基材の表面または裏面と接続する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1に記載の製造方法により形成することを特徴とする、フレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板上に半導体チップを搭載することを特徴とする、フレキシブルプリント回路板の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により形成することを特徴とする、フレキシブルプリント回路板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−110010(P2007−110010A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301560(P2005−301560)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(391022186)新藤電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】