説明

ブレーキシステム

【課題】増圧装置の作動が正常であるかどうかをチェックする。
【解決手段】入力遮断弁148の閉状態、高圧遮断弁312の閉状態において、小径側室112の液圧を、増圧リニア制御弁172の制御により増加させた後に、減圧リニア制御弁316の制御により減少させて、目標液圧とする。その後、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁316を閉状態として、高圧遮断弁312を開状態に切り換える。小径側室112の液圧であるブレーキシリンダ液圧センサ226の検出値が増加した場合には、メカ式増圧装置96の作動が正常であると判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステムにおける制御系の検査に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(a)車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)マスタシリンダと、(c)アキュムレータと、(d)そのアキュムレータの液圧を利用して、電気アクチュエータの駆動により作動させられる増圧機構と、(e)その増圧機構の液圧とマスタシリンダの液圧とのうち高い方を選択して液圧ブレーキのブレーキシリンダに供給する選択バルブとを備えた液圧ブレーキシステムが記載されている。
特許文献2には、(a)車両の前後左右の車輪に設けられ、車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、(b)マスタシリンダと、(c)マスタシリンダと前輪の液圧ブレーキのブレーキシリンダとの間に設けられた機械式倍力機構と、(d)高圧源およびその高圧源の液圧を制御する電磁弁とを備えた液圧ブレーキシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−502645号公報
【特許文献2】特開平10−287227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、液圧ブレーキシステムの改良を図ることである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
本願発明に係る液圧ブレーキシステムは、マニュアル式液圧源の液圧により作動可能であり、動力式液圧源の液圧を利用して、マニュアル式液圧源の液圧より高い液圧を出力可能な増圧装置の作動が正常であるか否かをチェックするチェック装置を含むものであり、そのチェック装置は、増圧装置の入力側の液圧と出力側の液圧との関係に基づいてチェックしたり、出力側の液圧の変化に基づいてチェックしたりする。
増圧装置の作動が正常である場合には、増圧装置の入力側の液圧と出力側の液圧との間に予め定められた関係が成立する。そのため、これらの間の関係が成立するか否かに基づけば、増圧装置の作動が正常であるか否かをチェックすることができる。
また、増圧装置において、動力式液圧源の液圧の供給が阻止された状態から許可された状態に切り換えられた場合には、出力側の液圧が増加するはずである。そのため、動力式液圧源の液圧の供給が阻止された状態から許可された状態に切り換えられた場合の、出力側の液圧の増加状態に基づいて増圧装置の作動が正常であるか否かをチェックすることができる。
【特許請求可能な発明】
【0006】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付する形式で記載する。請求可能発明を構成する構成要素は、以下の各項に記載されたもの、各項の2つ以上の組に記載されたものとすることができる。また、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
【0007】
(1)運転者のブレーキ操作により液圧を発生させる少なくとも1つのマニュアル式液圧源と、
電気エネルギの供給により液圧を発生させる動力式液圧源と、
前記少なくとも1つのマニュアル式液圧源のうちの1つの液圧により作動させられ、前記動力式液圧源の液圧を利用して、前記1つのマニュアル式液圧源の液圧より高い液圧を出力可能な増圧装置と、
その増圧装置の作動が正常であるか否かのチェックを行う増圧装置チェック装置と
を含み、その増圧装置チェック装置が、(i)前記増圧装置の入力側の液圧と出力側の液圧との関係に基づいて前記チェックを行う第1チェック部と、(ii)前記増圧装置の出力側の液圧の変化に基づいて前記チェックを行う第2チェック部との少なくとも一方を含むことを特徴とする液圧ブレーキシステム。
増圧装置の作動が正常であるとは、「マニュアル式液圧源の液圧により作動し、動力式液圧源の液圧を利用して、マニュアル式液圧源の液圧より高い液圧を発生し得る」状態をいう。すなわち、増圧装置の作動が正常であると判定された場合には、増圧装置自体が正常に作動可能な状態にあり、かつ、マニュアル式液圧源も、動力式液圧源も、増圧装置に適切に液圧を供給し得る状態であると考えられる。
なお、増圧装置の入力側の液圧は、増圧装置内のマニュアル式液圧源の液圧が入力されるポート(あるいは入力側液圧室)の液圧であるが、入力側の液圧として、その入力側の液圧と同じ高さの他の部分の液圧、その入力側の液圧と1対1に対応する液圧(入力側の液圧の変化に伴って1対1に対応して変化する液圧)を採用することができる。増圧装置の出力側の液圧についても同様である。入力側の液圧と出力側の液圧との関係が正常な関係であるかどうか、出力側の液圧の変化が適正であるかどうかがわかる液圧を採用することができる。
また、入力側の液圧、出力側の液圧は、センサ等の検出値(実際値)であっても、推定値であってもよい。
さらに、増圧装置の作動が正常である状態には、チェックに用いられるセンサ等が正常であるとすることができる。
(2)前記第1チェック部が、前記増圧装置の入力側の液圧と前記出力側の液圧との間に、予め定められた関係が成立する場合に、前記増圧装置の作動が正常であると判定する第1正常判定部を含む。
例えば、入力側の液圧と出力側の液圧とを比較して、出力側の液圧が入力側の液圧に対して低い場合に、増圧装置の作動が正常でないと判定することができる。
(3)前記第1チェック部が、前記入力側の液圧を、前記少なくとも1つのマニュアル式液圧源の液圧と、前記ブレーキ操作状態との少なくとも一方に基づいて取得する入力側液圧取得部を含む。
例えば、マニュアル式液圧源が2つ設けられる場合において、増圧装置に一方のマニュアル式液圧源(増圧装置接続マニュアル式液圧源)が接続されている場合に、他方のマニュアル式液圧源の液圧を、増圧装置の入力側の液圧として採用することができる。
また、ブレーキ操作部材に加えられる操作力、操作ストロークに基づいて一方のマニュアル式液圧源の液圧、すなわち、増圧装置の入力側の液圧を推定することができる。
【0008】
(4)当該液圧ブレーキシステムが、前記増圧装置と前記1つのマニュアル式液圧源である増圧装置接続マニュアル式液圧源との間に設けられた入力側遮断弁を含み、
前記第2チェック部が、前記入力側遮断弁が閉状態にある状態で、前記チェックを行う入力遮断状態チェック実行部を含む。
第1チェック部においては、増圧装置の入力側の液圧が低い(例えば、マニュアル式液圧源の液圧が低い場合が該当する)場合には、作動が正常であるか否かの判断を正確に行うことが困難である。
それに対して、第2チェック部は、入力側の液圧とは関係なくチェックを行うことが可能であるため、入力側の液圧が低くても、作動が正常であるか否かのチェックを正確に行うことが可能となる。
また、入力側遮断弁を閉状態とすれば、ピストンの後退を抑制することができるため、制御圧室の液圧の変化を正確に検出することが可能となる。
入力側遮断弁は、少なくとも、開状態と閉状態とをとり得る電磁開閉弁である。電磁開閉弁は、ソレノイドに供給される電流量を連続的に制御することにより、前後の差圧(および/または開度)が連続的に制御可能とされるリニア制御弁としても、供給電流のON/OFF制御により、開状態と閉状態とのいずれかに切り換えられる単なる開閉弁としてもよい。以下、本明細書において、「リニア制御弁」、「単なる開閉弁」と記載しない限り、「弁」は、「リニア制御弁」であっても、「単なる開閉弁」であってもよいものとする。
(5)前記増圧装置が、(a)少なくとも、前記増圧装置接続マニュアル式液圧源の液圧により前進させられるピストンと、(b)そのピストンの前方に設けられた制御圧室と、(c)その制御圧室と、前記動力式液圧源が接続された高圧室との間に設けられた高圧供給弁とを含み、
当該液圧ブレーキシステムが、前記増圧装置と前記動力式液圧源との間に設けられた高圧遮断弁を含み、
前記第2チェック部が、前記制御圧室の液圧が、前記高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられる液圧である設定圧以上の状態で、前記高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換わる制御を行った場合に、前記制御圧室の液圧が増加した場合に、前記増圧装置の作動が正常であると判定する第2正常判定部を含む。
高圧供給弁の開状態において、高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換えられた場合には、制御圧室の液圧は増加するはずである。それに対して、制御圧室の液圧が増加しない場合には、例えば、高圧供給弁が閉状態のままであること、高圧遮断弁が閉状態のままであることに起因すると考えられる。
制御圧室の液圧の増加の態様については後述するが、例えば、(a)非サーボ状態からサーボ状態に移行して、制御圧室の液圧が増加する場合、(b)サーボ状態を保持した状態で、制御圧室の液圧が増加する場合、(c)過渡的に増加する場合等があり、これらの場合に、増圧装置の作動が正常であるとすることができる。
高圧遮断弁は電磁制御弁であり、ソレノイドへの供給電流の制御により開閉させられるものである。
高圧供給弁は、ピストンの移動によりメカ式に開閉させられるものである。
(6)前記高圧供給弁が、前記ピストンの前進に伴って閉状態から開状態に切り換えられるものであり、
前記増圧装置が、前記増圧装置接続マニュアル式液圧源に接続された入力側液圧室を含み、
前記ピストンが、そのピストン内に設けられ、前記制御圧室と前記入力側液圧室とを連通させるピストン内連通路を含み、前記入力側液圧室の液圧により前進させられ、前記高圧供給弁に当接することにより前記ピストン内連通路が塞がれるものである。
入力側液圧室の液圧が、ピストンを前進させ得る大きさ(作動開始圧と称することができる。ピストンを、摺動抵抗、リターンスプリングの付勢力等に抗して前進させ得る大きさであり、高圧供給弁を切り換え可能な大きさである。)以上になると、ピストンが前進させられる。ピストンが前進して、高圧供給弁に当接することにより、高圧供給弁は閉状態から開状態に切り換えられ、ピストン内連通路が塞がれ、制御圧室と入力側液圧室とが遮断される。
制御圧室の液圧が、入力側液圧室の液圧が作動開始圧以上となるように増圧制御されるのであり、前記設定圧は、入力側液圧室の作動開始圧に対応する液圧とすることができる。
(7)前記第2チェック部が、前記ピストンが前進して、前記高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられるように、前記制御圧室の液圧を制御するチェック前出力側液圧制御部を含む。
制御圧室の液圧を増加させることにより、制御圧室からピストン内連通路を通って入力側液圧室に液圧が供給される。入力側液圧室の液圧が増加させられ、ピストンが前進させられるはずである。ピストンの前進により高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられるはずである。
(8)前記増圧装置が、ヒステリシスを有するものであり、前記第2チェック部が、前記制御圧室の液圧を増加させた後に減少させることにより、前記制御圧室の液圧と前記入力側液圧室の液圧とをほぼ同じ大きさとするヒス利用型液圧制御部を含む。
(9)前記第2チェック部が、
(a)前記段付きピストンが前進して、前記制御圧室の液圧が前記入力側液圧室の液圧より大きいサーボ状態となるように、前記制御圧室の液圧を増圧制御する増圧制御部と、
(b)その増圧制御部により前記制御圧室の液圧が増加させられた後に、前記制御圧室の液圧と前記入力側液圧室の液圧とが同じである非サーボ状態となるように、前記制御圧室の液圧を減圧制御する減圧制御部と、
(c)その減圧制御部によって前記非サーボ状態にされた後に、前記高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換わるように制御した場合に、前記サーボ状態に移行した場合に、前記増圧装置の作動が正常であると判定するサーボ状態移行時正常判定部とを含む。
制御圧室の液圧が増圧させられることにより、入力側液圧室の液圧が増加させられると、段付きピストンが前進させられ、制御圧室と入力側液圧室とが遮断されるはずである。制御圧室の液圧は段付きピストンの形状で決まる比率(倍力比)だけ入力側液圧室の液圧より大きくなる。
制御圧室の液圧が減少させられると、増圧装置のヒステリシスにより、サーボ状態を維持したまま減少させられるのではなく、制御圧室の液圧と入力側液圧室の液圧とがほぼ同じになるはずである。
その状態で、高圧遮断弁を閉状態から開状態に切り換えて、制御圧室の液圧を増加させれば、サーボ状態に移行させられるはずである。サーボ状態に移行した後には、サーボ状態を保持した状態で、制御圧室の液圧が増加させられる。
(10)前記第2チェック部が、
(a)前記段付きピストンが前進して、前記制御圧室の液圧が前記入力側液圧室の液圧より大きくなるサーボ状態となるように、前記制御圧室の液圧を増圧制御する増圧制御部と、
(b)その増圧制御部によって前記サーボ状態とされた後に、前記高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換わるように制御した場合に、前記制御圧室の液圧が前記サーボ状態において増加した場合に前記増圧装置の作動が正常であると判定するサーボ状態増圧時正常判定部。
【0009】
(11)前記増圧装置が、前記増圧装置接続マニュアル式液圧源に接続された入力側液圧室を含み、
前記高圧供給弁が、前記ピストンの前進に伴って閉状態から開状態に切り換えられるものであり、
前記ピストンが、前記入力側液圧室の液圧により前進させられるものであり、
前記第2チェック部が、前記高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられるように、前記入力側液圧室の液圧を増圧制御するチェック前入力側液圧増圧制御部を含む。
ピストンにはピストン内連通路が設けられていない。
例えば、入力側液圧室をマニュアル式液圧源から遮断して、動力液圧制御装置に連通させて、入力側液圧室の液圧を制御することができる。
ピストンは前進させられ、高圧供給弁を開状態に切り換え、ストッパに当接すると考えられる。この状態で、高圧遮断弁を閉状態から開状態に切り換えられると、制御圧室の液圧は増加させられるはずである。
入力側液圧室の液圧は作動開始圧以上の大きさとされる。
(12)当該液圧ブレーキシステムが、前記入力側液圧室と前記制御圧室とを、前記ピストンをバイパスして連通させるピストン外連通路と、そのピストン外連通路に設けられた連通遮断弁とを含む。
制御圧室と入力側液圧室とがピストン外連通路によって接続されているため、連通遮断弁の開状態において、動力液圧制御装置を利用して入力側液圧室の液圧を制御することができる。
(13)前記第2チェック部が、(a)前記連通遮断弁が開状態となるように制御した状態で、前記動力液圧制御装置により、前記入力側液圧室の液圧を、前記ピストンが前進して高圧供給弁を閉状態から開状態に切り換える液圧まで増加制御する増圧制御部と、(b)その増圧制御部によって前記入力側液圧室の液圧が制御された状態で、前記連通遮断弁が閉状態に切り換わるように制御する連通遮断弁制御部と、(c)その連通遮断弁制御部により前記連通遮断弁が制御された後に、前記高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換わるように制御した場合に、前記制御圧室の液圧が増加した場合に、前記増圧装置の作動が正常であると判定する入力液圧制御時正常判定部とを含む。
(14)前記少なくとも1つのマニュアル式液圧源のうちの少なくとも1つが、運転者のブレーキ操作力に助勢力を加えて出力する助勢装置を含み、前記増圧装置の前記制御圧室の液圧が、前記助勢装置に供給されて、助勢力として作用する。
増圧装置の出力側の液圧は、助勢装置付きマニュアル式液圧源を経てブレーキシリンダに供給される。増圧装置の出力側の液圧と助勢装置付きマニュアル式液圧源の出力側の液圧との間には予め定められた関係が成立する。
この場合には、助勢装置付きマニュアル式液圧源の出力側の液圧を、増圧装置の出力側の液圧として採用することができる。例えば、助勢装置付きマニュアル式液圧源としての助勢装置付きマスタシリンダの加圧ピストンの後方の後方液圧室に前記増圧装置の制御圧室が接続される場合、加圧ピストンの前方の加圧室の液圧は、後方液圧室の液圧と関係がある。そのため、助勢装置付きマスタシリンダの加圧ピストンの前方の加圧室の液圧を、増圧装置の出力側の液圧として採用したり、前方の加圧室の液圧に基づいて増圧装置の出力側の液圧を推定したりすることができる。
なお、増圧装置に入力されるマニュアル式液圧源と、増圧装置の出力液圧が供給されるマニュアル式液圧源とは同じものであっても異なるものであってもよい。
【0010】
(15)前記第2チェック部が、前記チェックを行う場合に、前記制御圧室を含む部分を閉空間とする閉空間形成部を含む。
制御圧室を含む部分を閉空間とすれば、制御圧室の液圧の変化を正確に検出することができる。
閉空間(制御圧室を含む部分)を、リザーバ、マニュアル式液圧源、動力式液圧源から遮断した空間であり、閉空間内にブレーキシリンダが存在しても差し支えない。また、閉空間は、液圧センサを含む空間とされる。さらに、閉空間の容積が小さい方が、制御圧室の液圧の変化を正確に、かつ、速やかに検出することができる。
閉空間形成部は、1つ以上の電磁開閉弁を含むものとすることができる。
(16)当該液圧ブレーキシステムが、前記制御圧室の液圧を、前記動力式液圧源の液圧を利用して制御可能な動力液圧制御装置を含む。
制御圧室の液圧は、第2チェック部によって制御される場合は勿論、第1チェック部によって制御される場合もある。制御圧室の液圧が制御可能となれば、種々の態様でチェックを行うことが可能となる。
また、動力液圧制御装置は、動力式液圧源がポンプ装置を含む場合には、ポンプモータの制御により出力液圧を制御して制御圧室の液圧を制御可能なものとしたり、動力式液圧源と制御圧室との間に設けられた1つ以上の液圧制御弁を含み、その液圧制御弁の制御により制御圧室の液圧を制御可能なものとすることができる。例えば、増圧リニア制御弁、減圧リニア制御弁を含むものとすることができる。
(17)当該液圧ブレーキシステムが、前記車両の複数の車輪に対応してそれぞれ設けられ車輪の回転を抑制する液圧ブレーキのブレーキシリンダと、それら複数のブレーキシリンダが接続されるとともに前記増圧装置が接続された共通通路と、その共通通路の液圧を、前記動力式液圧源の液圧を利用して制御可能な動力液圧制御装置とを含み、前記増圧装置チェック装置が、前記制御圧室が前記共通通路に連通した状態で、前記チェックを行うものとすることができる。
制御圧室と共通通路とが連通状態にある場合には、動力液圧制御装置により制御圧室の液圧を制御することが可能となり、第2チェック部によるチェックを行うことができる。
また、動力液圧制御装置によって制御された液圧を複数のブレーキシリンダに供給することができるのであり、ブレーキシリンダ液圧の制御と第2チェック部によるチェックとを並行して行うことができる。
(18)前記増圧装置チェック装置が、前記複数の液圧ブレーキが作用状態にある場合に、前記増圧装置の作動が正常であるか否かのチェックを行う作用中チェック部を含む。
液圧ブレーキの作用中にチェックが行われるようにすれば、チェックのために動力液圧制御装置等を作動させる必要がなく、消費される電気エネルギ量を少なくすることができる。
【0011】
(19)外部液圧源と、
電気エネルギの供給により液圧を発生させる動力式液圧源と、
前記外部液圧源の液圧により作動させられ、前記動力式液圧源の液圧を利用して、前記外部液圧源の液圧より高い液圧を出力可能な増圧装置と、
その増圧装置と前記動力式液圧源との間に設けられた高圧遮断弁と、
前記増圧装置の作動が正常であるか否かのチェックを行う増圧装置チェック装置と
を含み、前記増圧装置が、(a)前記外部液圧源の液圧により前進させられるピストンと、(b)そのピストンの前方に設けられた制御圧室と、(c)その制御圧室と、前記動力式液圧源が接続された高圧室との間に設けられた高圧供給弁とを含み、
前記増圧装置チェック装置が、前記制御圧室の液圧が、前記高圧供給弁が開状態にされる液圧以上の状態で、前記高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換わる制御を行った場合に、前記制御圧室の液圧が増加した場合に、前記増圧装置の作動が正常であると判定する増圧装置正常判定部を含む液圧供給システム。
本項に記載の液圧供給システムには、(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の技術的特徴を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の共通の実施例である液圧ブレーキシステムが搭載された車両全体を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る液圧ブレーキシステムの液圧ブレーキ回路を表す回路図である。
【図3】上記液圧ブレーキ回路に含まれる増圧リニア制御弁、減圧リニア制御弁の断面図である。
【図4】上記液圧ブレーキ回路に含まれる入力側逆止弁を示す図である。(a)はカップシート式の逆止弁の断面図であり、(b-i)はボール式の逆止弁の断面図であり、(b-ii)は、(b-i)のAA断面図であり、(c)は、磁力式の逆止弁を概念的に示す図である。
【図5】上記液圧ブレーキシステムに含まれるブレーキECUの記憶部に記憶された液圧供給状態制御プログラムを表すフローチャートである。
【図6】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の状態を示す図である(システムが正常である場合)。
【図7】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(制御系が異常な場合)。
【図8】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(制御系が異常な場合)。
【図9】上記液圧ブレーキシステムにおいて、供給状態制御プログラムが実行された場合のさらに別の状態を示す図である(液漏れの可能性がある場合)。
【図10】上記液圧ブレーキシステムのブレーキECUの記憶部に記憶されたチェックプログラムを示すフローチャートである。
【図11】(a)上記液圧ブレーキシステムにおいて、チェックプログラムが実行される場合の状態を示す図である(チェック1)。(b)増圧装置の入力側の液圧と出力側の液圧との関係を示す図である。
【図12】上記液圧ブレーキシステムにおいて、チェックプログラムが実行される場合の状態を示す図である(チェック2−1)。
【図13】上記液圧ブレーキシステムにおいて、チェックプログラムが実行された場合の別の状態を示す図である(チェック2−2)。
【図14】チェック2が行われた場合の小径側室の液圧の変化を示す図である。(a)目標液圧となるように制御された場合の液圧の変化を示す図である。(b)高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換えられた場合の液圧の変化を示す図である。(c)チェック1,2とは別のチェックが行われる場合の小径側室の液圧の変化を示す図である。
【図15】前記チェックプログラムの一部を示すフローチャート(チェック2が実行される場合)である。
【図16】本発明の実施例10に係る液圧ブレーキシステムの液圧ブレーキ回路を示す回路図である。
【図17】上記液圧ブレーキ回路に含まれる増圧装置の断面図である。
【図18】上記液圧ブレーキシステムにおいて、チェックプログラムが実行された場合の状態を示す図である。
【図19】上記液圧ブレーキシステムにおいて、チェックプログラムが実行された場合の別の状態を示す図である。
【図20】前記チェックプログラムの一部を示すフローチャート(チェック2が実行される場合)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の複数の実施例である液圧ブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。
最初に、本発明の複数の実施例である液圧ブレーキシステムである液圧ブレーキシステムが搭載された車両について説明する。
本車両は、図1に示すように、駆動装置として電動モータとエンジンとを含むハイブリッド車両である。ハイブリッド車両において、駆動輪としての左右前輪2,4は、電気的駆動装置6と内燃的駆動装置8とを含む駆動装置10によって駆動される。駆動装置10の駆動力はドライブシャフト12,14を介して左右前輪2,4に伝達される。内燃的駆動装置8は、エンジン16,エンジン16の作動状態を制御するエンジンECU18等を含むものであり、電気的駆動装置6は電動モータ20,蓄電装置22,モータジェネレータ24,電力変換装置26,モータECU28、動力分割機構30等を含む。動力分割機構30には、電動モータ20、モータジェネレータ24、エンジン16が連結され、これらの制御により、出力部材32に電動モータ20の駆動トルクのみが伝達される場合、エンジン16の駆動トルクと電動モータ20の駆動トルクとの両方が伝達される場合、エンジン16の出力がモータジェネレータ24と出力部材32とに出力される場合等に切り換えられる。出力部材32に伝達された駆動力は、減速機、差動装置を介してドライブシャフト12,14に伝達される。
電力変換装置26は、インバータ等を含むものであり、モータECU28によって制御される。インバータの電流制御により、少なくとも、電動モータ20に蓄電装置22から電気エネルギが供給されて回転させられる回転駆動状態と、回生制動により発電器として機能することにより蓄電装置22に電気エネルギを充電する充電状態とに切り換えられる。充電状態においては、左右前輪2,4に回生制動トルクが加えられる。その意味において、電気的駆動装置6は回生ブレーキ装置であると考えることができる。
【0014】
液圧ブレーキシステムは、左右前輪2,4に設けられた液圧ブレーキ40のブレーキシリンダ42,左右後輪46,48(図2等参照)に設けられた液圧ブレーキ50のブレーキシリンダ52と、これらブレーキシリンダ42,52の液圧を制御可能な液圧制御部54等を含む。液圧制御部54は、コンピュータを主体とするブレーキECU56によって制御される。
また、車両には、ハイブリッドECU58が設けられ、これらハイブリッドECU58,ブレーキECU56,エンジンECU18,モータECU28は、CAN(Car area Network)59を介して接続されている。これらは、互いに通信可能とされており、適宜必要な情報が通信される。
【0015】
なお、本液圧ブレーキシステムは、ハイブリッド車輪に限らず、プラグインハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両に搭載することもできる。電気自動車においては、内燃的駆動装置8が不要となる。燃料電池車両においては、駆動用モータが燃料電池スタック等によって駆動される。
また、本液圧ブレーキシステムは、内燃駆動車両に搭載することもできる。電気的駆動装置6が設けられていない車両においては、駆動輪2,4に回生制動トルクが加えられることがないため、回生協調制御が行われることはない。
【0016】
以下、液圧ブレーキシステムについて説明するが、ブレーキシリンダ、液圧ブレーキ、後述する種々の電磁開閉弁等を、前後左右の車輪の位置に対応して区別する必要がある場合には、車輪位置を表す符号(FL,FR,RL,RR)を付して記載し、代表して、あるいは、区別する必要がない場合には、符号を付さないで記載する。
【実施例1】
【0017】
実施例1に係る液圧ブレーキシステムは、図2に示すブレーキ回路を含む。
60はブレーキ操作部材としてのブレーキペダルであり、62はブレーキペダル60の操作により液圧を発生させるマスタシリンダである。64はポンプ装置65とアキュムレータ66とを含む動力式液圧源である。液圧ブレーキ40,50は、ブレーキシリンダ42,52の液圧により作動させられ、車輪の回転を抑制するものであり、本実施例においては、ディスクブレーキである。
なお、液圧ブレーキ40,50は、ドラムブレーキとすることができる。また、前輪2,4の液圧ブレーキ40をディスクブレーキとし、後輪46,48の液圧ブレーキ50をドラムブレーキとすることもできる。
マスタシリンダ62は、2つの加圧ピストン68,69を備えたタンデム式のものであり、加圧ピストン68,69のそれぞれの前方が加圧室70,72とされる。本実施例においては、加圧室70,72がそれぞれマニュアル式液圧源に該当する。また、加圧室70には、それぞれ、マニュアル通路としてのマスタ通路76を介して、右前輪4の液圧ブレーキ40FRのブレーキシリンダ42FRが接続される。加圧室72には、後述するように、メカ式の増圧装置が接続される。
また、加圧室70,72は、加圧ピストン68,69が後退端に達した場合に、それぞれ、リザーバ78に連通させられる。リザーバ78の内部は、作動液を収容する複数の収容室80,82,84に仕切られている。収容室80,82は、それぞれ、加圧室70,72に対応して設けられ、収容室84はポンプ装置65に対応して設けられたものである。
【0018】
動力式液圧源64において、ポンプ装置65は、ポンプ90およびポンプモータ92を含み、ポンプ90によりリザーバ78の収容室84から作動液が汲み上げられて吐出されて、アキュムレータ66に蓄えられる。ポンプモータ92は、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の圧力が予め定められた設定範囲内にあるように制御される。また、リリーフ弁93により、ポンプ90の吐出圧が過大になることが防止される。
【0019】
動力式液圧源64とマスタシリンダ62の加圧室72とブレーキシリンダ42,52との間には増圧装置としてのメカ式増圧装置96が設けられる。本実施例においては、メカ式増圧装置96と加圧室72とはメカ弁入力通路310を介して接続される。
メカ式増圧装置96は、可動部としてのメカ式可動部98と、入力側逆止弁99と、高圧側逆止弁100とを含む。メカ式可動部98は、ハウジング102と、ハウジング102に液密かつ摺動可能に嵌合された段付きピストン104とを含み、段付きピストン104の大径側に大径側室110が設けられ、小径側に小径側室112が設けられる。大径側室110には加圧室72が接続されるのであり、本実施例においては、加圧室72が増圧装置接続マニュアル式液圧源(1つのマニュアル式液圧源)に対応する。
小径側室112には、動力式液圧源64に接続された高圧室114が連通させられ、小径側室112と高圧室114との間に、高圧供給弁116が設けられる。高圧供給弁116は、ハウジング102に形成された弁座122と、弁座122に対して接近、離間可能に設けられた弁子120と、スプリング124とを含み、スプリング124の付勢力が、弁子120を弁座122に押し付ける向きに作用する。高圧供給弁116は常閉弁である。
小径側室112には、弁子120に対向して開弁部材125が設けられ、開弁部材125と段付きピストン104との間にスプリング126が設けられる。スプリング126の付勢力は、開弁部材125と段付きピストン104とを互いに離間させる向きに作用する。開弁部材125は、高圧供給弁116の構成要素であると考えることもできる。
段付きピストン104の段部とハウジング102との間には、スプリング128(リターンスプリング)が設けられ、段付きピストン104を後退方向に付勢する。なお、段付きピストン104とハウジング102との間には図示しないストッパが設けられ、段付きピストン104の前進端位置を規制する。
また、段付きピストン104の内部には、大径側室110と小径側室112とを連通させるピストン内連通路129が形成され、ピストン内連通路129の途中にピストン内逆止弁130が設けられる。ピストン内逆止弁130は、大径側室110から小径側室112へ向かう作動液の流れを阻止し、小径側室112から大径側室110へ向かう作動液の流れを許容する。
【0020】
高圧側逆止弁100は、高圧室114と動力式液圧源64とを接続する高圧供給通路132の途中に設けられる。高圧側逆止弁100は、動力式液圧源64の液圧が高圧室114の液圧より高い場合には、動力式液圧源64から高圧室114への作動液の流れを許容するが、動力式液圧源64の液圧が高圧室114の液圧以下の場合には閉状態にあり、双方向の流れを阻止する。そのため、仮に、電気系統の異常により、動力液圧源64の液圧が低くなっても、小径側室112の液圧の低下が防止される。
【0021】
入力側逆止弁99は、メカ弁入力通路310とメカ式可動部98の出力側(小径側室112でもよい)とを、メカ式可動部98をバイパスして接続する可動部バイパス通路としてのバイパス通路136の途中に設けられる。バイパス通路136は、メカ弁入力通路310と共通通路94とを、メカ式可動部98をバイパスして接続する通路であると考えることもできる。
入力側逆止弁99は、メカ弁入力通路310からメカ式可動部98の出力側への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止するものであり、開弁圧が設定圧のものである。設定圧は、マスタリザーバ78とブレーキシリンダ42との間の高低差に起因する液圧差に基づいて決まる値である(マスタリザーバ78がブレーキシリンダ42より鉛直方向の上方にある)。設定圧は、高低差対応設定圧と称することができる。
ブレーキペダル60の非操作状態において、マスタシリンダ62の加圧室72はマスタリザーバ78に連通させられ、ほぼ大気圧である。また、ブレーキシリンダ42の液圧もほぼ大気圧であるが、これらの間には、高低差に起因する液圧差がある。
それに対して、入力側逆止弁99の開弁圧を高低差に起因する液圧差に基づいて決まる大きさとすれば、ブレーキペダル60の非操作状態におけるマスタリザーバ78からの作動液の流出を阻止することができるのであり、仮に、ブレーキシリンダ42の周辺に漏れがあったとしても、マスタリザーバ78からブレーキシリンダ42に向かう作動液の流れを阻止することができる。
また、ブレーキペダル60が作用操作(液圧ブレーキ40,50が作用状態になるように行われる操作であり、通常は、踏み込み操作である)され、加圧室72の液圧が高くなると、入力側逆止弁99の前後の差圧(マスタシリンダ側の液圧から共通通路側の液圧を引いた値)は高低差対応設定圧より大きくなり、入力側逆止弁99は開状態に切り換えられる。それにより、マスタシリンダ62からブレーキシリンダへ向かう作動液の流れが許容される。
【0022】
入力側逆止弁99は、例えば、図4に示す構造を成したものとすることができる。例えば、図4(a)に示すように、カップシール式の逆止弁99xとしたり、図4(b)に示すように、ボール式の逆止弁99yとしたり、図4(c)に示すように、磁力式の逆止弁99zとしたりすること等ができる。
図4(a)において、逆止弁99xは、バイパス通路136に固定的に設けられたハウジング140と、ハウジング140に支持された環状のシール部材142とを含む。シール部材142はゴム等の弾性変形し易い材料により成形されたものであり、矢印Xの方向に撓み易く、逆方向に撓み難い形状を成したものである。本実施例においては、矢印Xの上流側にメカ弁入力通路310が接続され、下流側に共通通路94が接続される。シール部材142は、前後の差圧(メカ弁入力通路310の液圧から共通通路94の液圧を引いた値)が高低差対応設定圧以下である場合には撓むことがない。逆止弁99xは閉状態にあり、マスタリザーバ78からの作動液の流出が阻止される。前後の差圧が高低差対応設定圧より大きくなるとシール部材142が撓む。逆止弁99xは開状態に切り換えられ、マスタシリンダ62からの流出が許容される。なお、逆向き、すなわち、共通通路94からメカ弁入力通路310へ向かう作動液の流れは阻止される。
【0023】
逆止弁99yは、図4(b)-(i)が示すように、(a)ハウジング142と、(b)ハウジング142に形成された弁座143と、(c)弁座143に対して接近・離間可能な弁子144とを含むシーティング弁である。
逆止弁99yにおいて、弁子144が球状を成したものであり、スプリングが設けられていない。また、図4(b)-(ii)に示すように、ハウジング142の弁座143が設けられた側との反対側には、抜け止め部145が設けられる。
本実施例において逆止弁99yは、図4(b)-(i)に示すように、逆止弁99yの軸線Lが水平線Hに対して角度θだけ傾いた姿勢で配設される。また、弁子144に作用する重力G(=mg)の軸線方向の成分Ga(=mgsinθ)の下流側にメカ弁入力通路310が接続され、上流側に共通通路94が接続される。
【0024】
逆止弁99yにおいて、前後の差圧(マスタリザーバ78の液圧から小径側室112の液圧を引いた値)が、成分Gaに対応する大きさ以下の場合には、弁子144は弁座143に着座した状態にある。逆止弁99yは閉状態にあり、マスタリザーバ78から増圧装置98の出力側への作動液の流れは阻止される。前後の差圧が、成分Gaに対応する大きさより大きくなると、弁子144が弁座143から離間させられ、逆止弁99yが開状態とされ、メカ弁入力通路310から共通通路94へ向かう作動液の流れが許容される。この場合に、抜け止め部145が設けられるため、弁子144が逆止弁99yから抜け出すことが防止される。また、共通通路94からメカ弁入力通路310に向かう作動液の流れが生じると、吸引力が作用し、弁子144は弁座143に向かって移動させられ、着座させられる。換言すれば、成分Gaが高低差対応設定圧に対応する力となる姿勢で(角度θだけ傾いた姿勢で)逆止弁99yが設けられる。
【0025】
図4(c)において、逆止弁99zは、弁子146と弁座147とを含むものであるが、スプリングを有していない。また、弁子146,弁座147のうち少なくとも一方は強磁性材料から製造された永久磁石であり、磁力によって互いに接近するようにされている。弁子146と弁座147との間に作用する磁力(吸引力)は、高低差対応設定圧に対応する大きさとされる。
磁力に対向する方向に、メカ弁入力通路310の液圧と共通通路94の液圧との差圧が作用するように、すなわち、矢印Zの上流側にメカ弁入力通路310が接続され、反対側に共通通路94が接続される。前後の差圧が高低差対応設定圧以下である場合には、逆止弁99zは閉状態にあり、マスタリザーバ78からの作動液の流出が阻止される。前後の差圧が、高低差対応設定圧より大きくなると、弁子146が磁力に抗して弁座147から離間し、逆止弁99zが開状態に切り換えられる。それにより、メカ弁入力通路310から共通通路96に向かう作動液の流れが許容される。
なお、逆止弁99zにおいても、図示を省略する抜け止め部を設けることができる。
本実施例においては、バイパス通路136,ピストン内連通路129により増圧装置内連通路が構成され、入力側逆止弁99x,99y,99z等により第1逆止弁が構成され、ピストン内逆止弁130により第2逆止弁が構成される。
【0026】
なお、メカ弁入力通路310の途中(加圧室72とメカ式増圧装置96との間)には、入力側遮断弁148が設けられる。入力側遮断弁148は、ソレノイドのコイルに電流(以下、ソレノイドに電流と略称する)が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である。
また、高圧供給通路132の途中には、高圧側逆止弁100と直列に高圧遮断弁312が設けられる。本実施例において、高圧遮断弁312は高圧側逆止弁110より動力式液圧源側に設けられる。高圧遮断弁312の開状態においては、高圧側逆止弁100の機能が発揮される。メカ式増圧装置96から動力式液圧源64へ向かう作動液の流れが阻止され、動力式液圧源64の液圧がメカ式増圧装置96の液圧より大きい場合に、動力式液圧源64からメカ式増圧装置96への作動液の流れが許容される。しかし、高圧遮断弁312の閉状態においては、高圧側逆止弁100の機能が発揮されない。高圧室114における作動液の流入・流出が阻止され、メカ式増圧装置96の作動が抑制される。
【0027】
一方、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FR、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRは、それぞれ、ブレーキ側通路、個別ブレーキ側通路としての個別通路150FL,FR,RL,RRを介して共通通路94に接続される。
個別通路150FL,FR,RL,RRには、それぞれ、保持弁(SHij:i=F,R、j=L,R)153FL,FR,RLa,RRaが設けられるとともに、ブレーキシリンダ42FL,FR、52RL,52RRとリザーバ78との間には、それぞれ、減圧弁(SRij:i=F,R、j=L,R)156FL,FR,RL,RRが設けられる。
本実施例においては、前後左右の4つの車輪2,4,46,48の各々に対応して設けられた保持弁153FL,FR,RLa,RRaが、ソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である。
また、左右前輪2,4に対応して設けられた減圧弁156FL,FRが、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁であり、左右後輪46,48に対応して設けられた減圧弁156RL,RRがソレノイドに電流が供給されない場合に開状態にある常開の電磁開閉弁である。
左右後輪46,48については、保持弁153RLa,RRaも減圧弁156RL,RRも常開の電磁開閉弁である。
【0028】
共通通路94には、ブレーキシリンダ42,52に加えて、動力式液圧源64、メカ式増圧装置96も接続される。
動力式液圧源64は、動力液圧通路170を介して共通通路94に接続される。動力液圧通路170に増圧リニア制御弁(SLA)172が設けられ、共通通路94とリザーバ78との間に減圧リニア制御弁(SLR)316が設けられる。増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁316は、構造が互いにほぼ同じものであり、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁であり、ソレノイドへの供給電流の大きさの連続的な制御により、共通通路94の液圧の大きさを連続的に制御可能なものである。
図3に示すように、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁316は、それぞれ、弁子180と弁座182とを含むシーティング弁と、スプリング184と、ソレノイド(コイルとプランジャとを含む)186とを含み、スプリング184の付勢力F2は、弁子180を弁座182に接近させる向きに作用し、ソレノイド186に電流が供給されることにより電磁駆動力F1が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用する。
また、増圧リニア制御弁172において、動力式液圧源64と共通通路94との差圧に応じた差圧作用力F3が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用する(F1+F3:F2)。ソレノイド186への供給電流の制御により、差圧作用力F3が制御され、動力液圧通路170(共通通路94)の液圧が制御される。減圧リニア制御弁316においては、共通通路94とリザーバ89との差圧に応じた差圧作用力F3が弁子180を弁座182から離間させる向きに作用する。ソレノイド186への供給電流の制御により、差圧作用力F3が制御され、共通通路94の液圧が制御される。
なお、増圧リニア制御弁172は、動力式液圧源64の出力液圧を制御する出力液圧制御弁と称することもできる。
本実施例においては、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁316等により動力液圧制御装置が構成される。
【0029】
一方、マスタ通路76が、それぞれ、右前輪4の個別通路150FRの保持弁153FRの下流側に接続される。すなわち、マスタ通路76は、メカ式増圧装置96、共通通路94をバイパスして、加圧室70と、右前輪4のブレーキシリンダ42とを直接接続するものである(マスタ通路76は直結型マニュアル通路と称することができる)。マスタ通路76の途中にそれぞれマニュアル遮断弁としてのマスタ遮断弁(SMCFR)194FRが設けられる。マスタ遮断弁194FRはソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁である。
また、メカ式増圧装置96には、バイパス通路136が設けられるため、加圧室72は、メカ弁入力通路310,バイパス通路136,サーボ圧通路190,共通通路94,個別通路150FL,150FRを介してブレーキシリンダ42FL,FRに接続されることになる(電磁開閉弁に電流が供給されない状態)。そのため、これらメカ弁入力通路310,バイパス通路136,サーボ圧通路190,共通通路94,個別通路150FL,FR等によりマスタ通路(メカ式増圧装置96をバイパスしない通路であり、非直結型マニュアル通路311と称することができる)が構成されると考えることができる。上述の入力側遮断弁148は、閉状態において、ブレーキシリンダへのマスタシリンダ62の作動液の流入を阻止するため、マスタ遮断弁に対応すると考えることができる。入力側遮断弁148は非直結型マニュアル通路に設けられるのであり、常開弁である。また、加圧室72にマスタ通路(直結型マスタ通路)が接続されていない。マスタ通路311(非直結型マスタ通路)が設けられているため、並行して、マスタ通路を設ける必要性は低いのである。
【0030】
メカ式増圧装置96は、サーボ圧通路190を介して共通通路94に直接接続される。サーボ圧通路190には、電磁開閉弁等が設けられていない。高圧遮断弁312の閉状態においてメカ式可動部98が作動し難くされる。また、入力側遮断弁148の閉状態においてマスタシリンダ62の液圧が大径側室110に供給されることがないのであり、マスタシリンダ62の液圧により段付きピストン104が前進させられることはない。
そのため、高圧遮断弁312が閉状態とされ、かつ、入力側遮断弁148が閉状態とされることにより、出力側遮断弁を閉状態にした場合とほぼ同様の効果が得られる。そのため、出力側遮断弁をメカ式増圧装置96の出力側に設ける必要性は低いのである。
また、共通通路94の、左右前輪2,4のブレーキシリンダ40FL,FRに対応する個別通路150FL,FRが接続された部分およびサーボ圧通路190が接続された部分と、左右後輪46,48のブレーキシリンダ50RL,RRに対応する個別通路150RL,RRが接続された部分との間に、分離弁320が設けられる。分離弁320は、ソレノイドに電流が供給されない場合に閉状態にある常閉の電磁開閉弁である。
さらに、メカ弁入力通路310には、ストロークシミュレータ200がシミュレータ制御弁202を介して接続される。シミュレータ制御弁202は常閉の電磁開閉弁である。
【0031】
以上のように、本実施例においては、ポンプ装置65,増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁316,マスタ遮断弁194,保持弁153,減圧弁156,入力側遮断弁148、高圧遮断弁312等により液圧制御部54が構成される。
液圧制御部54はブレーキECU56の指令に基づいて制御される。ブレーキECU56は、図1に示すように、実行部、入出力部、記憶部等を含むコンピュータを主体とするものであり、入出力部には、ブレーキスイッチ218,ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222,アキュムレータ圧センサ224,ブレーキシリンダ圧センサ226,レベルウォーニング228,車輪速度センサ230、イグニッションスイッチ234等が接続されるとともに液圧制御部54等が接続される。
ブレーキスイッチ218は、ブレーキペダル60が操作されるとOFFからONになるスイッチである。
ストロークセンサ220は、ブレーキペダル60の操作ストローク(STK)を検出するものであり、本実施例においては、2つのセンサが設けられ、同様に、ブレーキペダル60の操作ストロークが検出される。このように、ストロークセンサ220が2つ設けられるため、一方が故障しても他方により操作ストロークを検出することができる。
マスタシリンダ圧センサ222は、マスタシリンダ62の加圧室70の液圧(PMCFR)を検出するものであり、本実施例においては、マスタ通路76に設けられる。
【0032】
アキュムレータ圧センサ224は、アキュムレータ66に蓄えられている作動液の圧力(PACC)を検出するものである。
ブレーキシリンダ圧センサ226は、ブレーキシリンダ42,52の液圧(PWC)を検出するものであり、共通通路94に設けられる。保持弁153の開状態において、ブレーキシリンダ42,52と共通通路94とは連通させられるため、共通通路94の液圧をブレーキシリンダ42,52の液圧とすることができる。
レベルウォーニング228は、マスタリザーバ78に収容された作動液が予め定められた設定量以下になるとONとなるスイッチである。本実施例においては、3つの収容室80、82,84のいずれか1つに収容された作動液量が設定量以下になると、ONとなる。
車輪速度センサ230は、左右前輪2,4、左右後輪46,48に対応してそれぞれ設けられ、車輪の回転速度を検出する。また、4輪の回転速度に基づいて車両の走行速度が取得される。
イグニッションスイッチ(IGSW)234は、車両のメインスイッチである。
記憶部には、種々のプログラム、テーブル等が記憶されている。
【0033】
<液圧ブレーキシステムにおける作動>
本実施例において、正常である場合、漏れの可能性がある場合、制御系が異常である場合の各々において、ブレーキシリンダ42,52への液圧の供給状態が制御される。
図5のフローチャートで表される供給状態制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、制動要求があるか否かが判定される。ブレーキスイッチ218がONである場合、あるいは、自動ブレーキを作動させる要求がある場合等には制動要求があるとされて、判定がYESとなる。自動ブレーキは、トラクション制御、ビークルスタビリティ制御、車間距離制御、衝突回避制御において作動させられる場合があり、これらの制御開始条件が満たされた場合に、制動要求があるとされることがある。
制動要求がある場合には、S2、3において、液漏れの可能性があるか否か、制御系が異常であるか否かの判定結果が読み込まれる。
【0034】
液漏れの可能性の有無とは、液漏れの可能性の高低、液漏れの量の多少を問わない。そのため、液漏れの可能性が非常に低い場合、あるいは、漏れ量が非常に少ない場合であっても、液漏れでないと断定できない場合には可能性が有るとする。そのため、液漏れの可能性が有ると検出された場合であっても、液漏れが実際に生じていない場合がある{液漏れ以外の原因によって、後述する(b)〜(e)の条件が満たされる場合があり得る}。
例えば、(a)レベルウォーニングスイッチ228がONである場合、(b)ブレーキ操作が行われた場合において、ブレーキペダル60のストロークとマスタシリンダ62の液圧との間に予め定められた関係が成立する場合には液漏れがないとされるが、マスタシリンダ62の液圧がストロークに対して小さい場合には液漏れの可能性が有るとされる。また、(c)ポンプ92が予め定められた設定時間以上継続して作動してもアキュムレータ圧センサ224の検出値が液漏れ判定しきい値以上にならない場合、(d)回生協調制御が行われていない場合において、マスタシリンダ圧センサ222の検出値に対してブレーキシリンダ圧センサ226の検出値が小さい場合、(e)前回のブレーキ作動時に、液漏れの可能性が有ると検出された場合(左右前輪2,4のブレーキシリンダ42にマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52にポンプ圧が供給された場合)等には、液漏れの可能性が有るとされる。
【0035】
制御系の異常とは、ブレーキシリンダ42,52の液圧あるいは共通通路94の液圧を、動力式液圧源64の液圧を利用して制御できない状態をいう。
例えば、(i)電磁開閉弁等を指令通りに作動させることができない場合{増圧リニア制御弁172等の電磁開閉弁(例えば、保持弁153,減圧弁156,マスタ遮断弁194,出力側遮断弁192等)において断線が生じている場合等}、(ii)ブレーキシリンダ42,52の液圧の制御に必要な検出値が得られない場合(正確に得られない場合も含む)[
各センサ(ブレーキスイッチ218,ストロークセンサ220、マスタシリンダ圧センサ222、アキュムレータ圧センサ224,ブレーキシリンダ圧センサ226,車輪速度センサ230等)において断線が生じている場合等]、(iii)各電磁開閉弁、センサ等に電力(電気エネルギ、電流と称することもできる)を供給できない場合(蓄電装置22等の電源の異常、あるいは、配線の断線が生じている場合等)、(iv)動力式液圧源64から高圧の作動液を供給できない場合{例えば、ポンプモータ92の異常、ポンプモータ92に電力を供給できない場合(電源の異常に起因する場合を含む)等}が該当する。
【0036】
S2,3のいずれの判定もNOであり、当該液圧ブレーキシステムが正常である場合(本実施例においては、制御系が正常で、かつ、液漏れの可能性が無いとされた場合)には、S4において、正常時制御が行われる。動力式液圧源64の出力液圧が増圧リニア制御弁172によって制御されて、その動力制御圧が共通通路94に供給され、ブレーキシリンダ42,52に供給される。
制御系が異常である場合には、S3の判定がYESとなり、S5において、すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなくなることにより、原位置に戻される。また、ポンプモータ92は停止状態に保たれる。
液漏れの可能性が有ると検出された場合には、S2の判定がNOとなり、S6において、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42にマスタシリンダ62の液圧が供給され、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52に動力式液圧源64の出力液圧が制御されて供給される。制御系の異常と液漏れの可能性との両方が生じることは稀であるため、液漏れの可能性が有るとされても制御系は正常であり、各バルブの制御、ポンプモータ92の駆動は可能であると考えられる。
また、本実施例においては、制御系が異常であるとされた場合、液漏れの可能性が有るとされた場合には自動ブレーキは作動させられないようにされている。
【0037】
1)システムが正常な場合
図6に示すように、前後左右の4輪2,4,46,48のブレーキシリンダ42,52には、動力式液圧源64の液圧が制御されて(制御された液圧を動力制御圧と称する)供給されるのであり、原則として回生協調制御が行われる。
回生協調制御は、駆動輪2,4に加わる回生制動トルクと、駆動輪2,4と従動輪46,48との両方に加わる摩擦制動トルクとの和である総制動トルクが総要求制動トルクとなるように行われる制御である。
総要求制動トルクは、ストロークセンサ220,マスタシリンダ圧センサ222の検出値等に基づいて取得される場合(運転者が要求する制動トルク)、車両の走行状態に基づいて取得される場合(トラクション制御、ビークルスタビリティ制御において必要な制動トルク)等がある。そして、ハイブリッドECU58から供給された情報(電動モータ20の回転数等に基づいて決まる回生制動トルクの上限値である発電側上限値、蓄電装置22の充電容量等に基づいて決まる上限値である蓄電側上限値)と、上述の総要求制動トルク(要求値)とのうちの最小値が要求回生制動トルクとして決定され、この要求回生制動トルクを表す情報がハイブリッドECU58に供給される。
ハイブリッドECU58は要求回生制動トルクを表す情報をモータECU28に出力する。モータECU28は、電動モータ20によって左右前輪2,4に加えられる制動トルクが要求回生制動トルクとなるように、電力変換装置26に制御指令を出力する。電動モータ20は、電力変換装置26によって制御される。
電動モータ20の実際の回転数等の作動状態を表す情報がモータECU28からハイブリッドECU58に供給される。ハイブリッドECU58において、電動モータ20の実際の作動状態に基づいて実際に得られた実回生制動トルクが求められ、その実回生制動トルク値を表す情報をブレーキECU56に出力する。
ブレーキECU56は、総要求制動トルクから実回生制動トルクを引いた値等に基づいて要求液圧制動トルクを決定し、ブレーキシリンダ液圧が要求液圧制動トルクに対応する目標液圧に近づくように、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁316等を制御する。
【0038】
回生協調制御においては、原則として、前後左右の各輪2,4,46,48の保持弁153FL,FR,RLa,RRaがすべて開状態とされ、減圧弁156FL,FR,RL,RRがすべて閉状態とされる。また、マスタ遮断弁194FRは閉状態とされ、シミュレータ制御弁202が開状態とされ、入力側遮断弁148が閉状態とされ、高圧遮断弁312が閉状態とされる。右前輪4のブレーキシリンダ42FRがマスタシリンダ62から遮断された状態で、増圧リニア制御弁172、減圧制御弁316の制御により、動力式液圧源64の出力液圧が制御され、その動力制御圧が共通通路94に供給され、4輪のブレーキシリンダ42,52に共通に供給される。
【0039】
共通通路94とメカ式増圧装置96の小径側室112とは連通状態にあるが、入力側遮断弁148が閉状態にあるため、小径側室112の液圧がマスタ入力通路310に戻されることはない。また、高圧遮断弁312が閉状態にあるため、アキュムレータ66の液圧が高圧室114に供給されることはないのであり、小径側室112の液圧は保持される。
後述するように、小径側室112の液圧がピストン内逆止弁130を経て大径側室110に供給されることにより、段付きピストン104が前進させられ、開弁部材125に当接して、ピストン内連通路129が塞がれる。また、入力側遮断弁148が閉状態にあるため、原則として、段付きピストン104の後退は阻止される。そのため、このことが、共通通路94の液圧の制御に影響を与えることは殆どないと考えられる。換言すれば、高圧遮断弁312,入力側遮断弁148を閉状態とすることにより、実質的に、メカ式増圧室96の作動が禁止されるため、共通通路94とメカ式増圧装置96とが連通状態にあっても差し支えないのである。
また、本実施例においては、保持弁153RLa,RRaが常開弁とされるため、通常のブレーキ作動時にソレノイドに電流を供給する必要がなくなり、その分、消費電力の低減を図ることができる。
【0040】
さらに、本実施例においては、正常作動時に、入力側遮断弁148が閉状態とされる。
仮に、入力側遮断弁148が開状態にある場合を想定する。
出力側遮断弁192は閉状態にあるため、メカ式増圧装置96は非作動状態にあるのが原則である。しかし、高圧室114の容積と、小径側室112の容積と、大径側室110の容積との和がほぼ一定に保たれる範囲内で、段付きピストン104の前進は許容される。一方、シミュレータ制御弁202は開状態にあるため、メカ弁入力通路74の液圧がストロークシミュレータ200の作動開始圧より大きくなると、ストロークシミュレータ200が作動させられるが、本実施例において、ストロークシミュレータ200の作動開始圧は、メカ式可動部98の作動開始圧より小さい。
ブレーキペダル60が作用操作され、メカ弁入力通路310の液圧が、ストロークシミュレータ200の作動開始圧より大きくなると、ストロークシミュレータ200が作動させられ、ブレーキペダル60の前進が許容される。その後、メカ式可動部98の作動開始圧より大きくなると、段付きピストン104が前進させられ、それにより、ブレーキペダル60の入り込みが生じるのであり、運転者は違和感を感じる。
それに対して、本実施例においては、入力側遮断弁148が閉状態とされる。その結果、ブレーキペダル60はストロークシミュレータ200の作動に伴って前進が許容される。急激な入り込みが抑制されるのであり、運転者の違和感を軽減することができる。
また、入力側遮断弁148を閉状態とすることにより、振動を軽減したり、作動音を軽減したりすること等ができる。
ストロークシミュレータ200の作動開始圧は、スプリングのセット荷重、ピストンとハウジングとの間の摩擦等の摺動抵抗等で決まる値であり、ピストンに作用する液圧が作動開始圧より大きくなると、ピストンの移動が許容される。作動開始圧は、スプリングのセット荷重、摩擦力等で決まる。
メカ式可動部98の作動開始圧も同様であり、スプリング126のセット荷重、段付きピストン104とハウジング102との間に作用する摩擦力等の摺動抵抗等で決まる値である。
【0041】
なお、この状態で、車輪2,4,46,48のスリップが過大となり、アンチロック制御開始条件が満たされると、保持弁153、減圧弁156が別個独立にそれぞれ開閉させられ、各ブレーキシリンダ42,52の液圧が制御される。前後左右の各輪2,4,46,48のスリップ状態が適正な状態とされる。
また、液圧ブレーキシステムが電気的駆動装置8を備えていない車両に搭載された場合等回生協調制御が行われない車両においては、システムが正常である場合に、総要求制動トルクと液圧制動トルクとが等しくなるように、増圧リニア制御弁172等が制御される。
なお、ブレーキECU56の液圧供給状態制御プログラムのS4を記憶する部分、実行する部分等により、第1入力側遮断弁制御装置、第2入力側遮断弁制御装置が構成される。また、これらは、動力制御圧供給部と称することもできる。
また、ブレーキECU56のS4を記憶する部分、実行する部分、動力式液圧源64,増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁316,共通通路94,個別通路150、ブレーキシリンダ42,52等により動力液圧系が構成される。
【0042】
2)制御系が異常である場合
図7、8に示すように、すべてのソレノイドに電流が供給されなくなることにより原位置に戻される。
2−1)大径側室110の液圧がメカ式可動部98の作動開始圧以下の場合
図7に示すように、大径側室110の液圧がメカ式可動部98の作動開始圧以下の場合には、加圧室72の液圧は、メカ弁入力通路310,バイパス通路136、サーボ圧通路190を経て共通通路94に供給され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42に供給される。
入力側逆止弁99の開弁圧は非常に小さいため、ブレーキペダル60の操作に伴って速やかにブレーキシリンダ42に作動液を供給することが可能となり、液圧ブレーキ40の効き遅れを小さくすることができる。
このように、制御系の異常時に、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRが作動させられるため、車両の重心が左右方向のほぼ中心にある場合に、ヨーモーメントが生じ難くすることができる。
【0043】
2−2)加圧室72の液圧がメカ式可動部98の作動開始圧より大きい場合
2−2−1)アキュムレータ66に蓄えられた作動液の液圧が作動許可圧より大きい場合
ポンプ装置65の作動が停止させられても、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の液圧が作動許可圧より大きい場合には、メカ式可動部98の作動が許可される。
図8の実線が示すように、大径側室110の液圧によって段付きピストン104が前進させられ、開弁部材125に当接し、高圧供給弁116が開状態に切り換えられる。小径側室112が大径側室110から遮断され、アキュムレータ66から高圧側逆止弁100を経て高圧室114に高圧の作動液が供給される。小径側室112の液圧(サーボ圧)は、マスタシリンダ62の液圧より高くされ、共通通路94に供給され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,42RRに供給される。小径側室112の液圧は、大径側室110の液圧と、段付きピストン104の大径部と小径部との受圧面積の比率とで決まる大きさとされる。
小径側室112の液圧Poutは、仮に、作動開始圧が0であるとした場合に、マスタシリンダ62の液圧(大径側室110の液圧)Pinに、段付きピストン104の大径部側の受圧面積Sinと小径部側の受圧面積Soutとの比率(Sin/Sout)を掛けた値
Pout=Pin・(Sin/Sout)
となる。この液圧Poutをサーボ圧と称する。また、このことから、小径側室112は制御圧室と称することができる。
【0044】
2−2−2)アキュムレータ66に蓄えられた作動液の液圧が作動許可圧以下である場合
アキュムレータ66に蓄えられた作動液の液圧が設定圧以下である場合には、図7に示す場合と同様に、マスタシリンダ62の加圧室72の液圧は、メカ弁入力通路310,バイパス通路136,サーボ圧通路190,共通通路94を経て左右前輪2,4のブレーキシリンダ42に供給される。
一方、液圧ブレーキ40の作動当初は、アキュムレータ66に蓄えられた作動液の液圧が作動許可圧より高い状態にあったが、メカ式可動部98の作動によりアキュムレータ66に蓄えられた作動液の液圧が低下して作動許可圧より低くなると、アキュムレータ66から高圧室114に作動液が供給されなくなる。それにより、メカ式可動部98の作動が不能となる。例えば、ポンピングブレーキ操作が行われた場合には、アキュムレータ66の作動液の消費量が多くなり、アキュムレータ圧が低くなることがある。段付きピストン104の前進が阻止され(ストッパに当接すると考えられる)、小径側室112の液圧はそれ以上高くなることがないのであり、メカ式可動部98は倍力機能を発揮できなくなる。小径側室112の液圧より加圧室72の液圧の方が高くなり、図8の破線が示すように、マスタシリンダ62の加圧室72の液圧が、バイパス通路136,サーボ圧通路190を経て共通通路94に供給される。マスタシリンダ62の加圧室72の液圧は、倍力されることなく、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,42FRに供給される。
【0045】
また、分離弁320が閉状態にあるため、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL、52RRに、メカ式可動部98の液圧が供給されないようにされている。その結果、液不足が抑制され、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL、FRの増圧不足を抑制することができる。
さらに、マスタシリンダ62において加圧室72の容積を大きくすることができる。加圧室72の容積を大きくすれば、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRの両方に作動液が供給される場合であっても、液量不足が生じることを回避することができる。この場合には、運転者のブレーキペダル60のストロークが大きくなることもある。
【0046】
3)漏れの可能性がある場合
図9に示すように、入力側遮断弁148が開状態とされ、高圧遮断弁312が閉状態とされ、マスタ遮断弁194FRが開状態とされる。また、左右後輪46,48について減圧弁156RL,RRが閉状態とされる。また、分離弁320が閉状態とされ、右前輪4の保持弁153FRが閉状態とされる。
(a)左右後輪46,48のブレーキシリンダ52は、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42から遮断された状態で、動力式液圧源64の液圧が増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁316によって制御されて、供給される。
(b)右前輪4のブレーキシリンダ42FRには、3輪のブレーキシリンダ42FL、52RL、RRから遮断された状態で、マスタシリンダ62の加圧室70の液圧が供給される。
(c)左前輪2のブレーキシリンダ42FLには、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RR、右前輪4のブレーキシリンダ42FRから遮断された状態で、加圧室72の液圧が、メカ式増圧装置96を通って供給される。なお、この場合には、段付きピストン104が多少前進させられることもある。
この場合において、高圧遮断弁312が閉状態にあるため、入力側遮断弁148が開状態にあってもメカ式可動部98の作動が抑制される。そのため、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRには、等しい液圧が供給される。
【0047】
また、高圧遮断弁312が閉状態とされることにより、動力式液圧源64の液圧がメカ式増圧装置96に供給されることが阻止され、3つのブレーキ系統330FL,FR,Rを互いに独立にすることができる。
仮に、高圧遮断弁312が開状態にある場合(高圧遮断弁312が設けられていない場合)には、動力式液圧源64の液圧が、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52を含むブレーキ系統330Rにも、左前輪2のブレーキシリンダ42FLを含むブレーキ系統330FLにも供給され、これらブレーキ系統330R、330FLを独立にすることができない。そのため、仮に、ブレーキ系統330FLにおいて液漏れが生じたとした場合には、動力式液圧源64の液圧がブレーキ系統330FLにおいて消費され、ブレーキ系統330Rにも影響が及ぶ場合がある。
それに対して、高圧遮断弁312が閉状態とされれば、仮に、ブレーキ系統330FLにおいて液漏れが生じた場合であっても、動力式液圧源64からメカ式増圧装置96を経て流出させられることを阻止することができる。
【0048】
本実施例において、(左前輪2のブレーキシリンダ42FLを含むブレーキ系統330FL)、(右前輪4のブレーキシリンダ42FRを含むブレーキ系統330FR)、(左右後輪46,48のブレーキシリンダ52FL,RRを含むブレーキ系統330R)の3つのブレーキ系統が互いに遮断される。その結果、たとえ、これら3つのブレーキ系統のうちの1つに液漏れが生じた場合であっても、他のブレーキ系統に影響が及ばないようにすることができる。
ブレーキ系統330FRは、ブレーキシリンダ42FR、マスタ通路76,加圧室70,収容室80等を含むものであり、ブレーキ系統330FLは、ブレーキシリンダ42FL、非直結型マスタ通路311,加圧室72,収容室82等を含むものであり、ブレーキ系統330Rは、ブレーキシリンダ52RL,RR,個別通路150RL、RR,動力式液圧源64,収容室84等を含むものである。したがって、ブレーキ系統330FR,FL,Rが互いに独立にされるということは、リザーバ78の収容室80,82,84も互いに独立にされるということである。
【0049】
また、制御系が異常(例えば、ポンプ装置65の作動が不能であるが、電磁開閉弁の制御が可能)であり、かつ、アキュムレータ66に蓄えられた液圧が作動許可圧より低い場合には、図7の状態に切り換えるより、図9の状態に切り換えた方が有効な場合がある。メカ式可動部98の作動が禁止された状態においては、図7の状態において、左右前輪のブレーキシリンダ42FL,FRに、加圧室72の液圧が供給されるのに対して、図9の状態においては、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRに、それぞれ、加圧室72,70が連通させられる。それにより、ブレーキシリンダ42FL,FRの各々における作動液不足が生じ難くすることができる。
【0050】
4)液圧ブレーキが解除される場合
ブレーキ操作が解除されると、すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなくなることにより、図2の原位置に戻される。また、メカ式増圧装置96において、段付きピストン104が開弁部材125から離間させられる。左右前輪2,4のブレーキシリンダ42FL,FRの液圧はピストン内連通路129,ピストン内逆止弁130を経てマスタシリンダ62(マスタリザーバ78)に戻される。また、左右後輪46,48のブレーキシリンダ52RL,RRの液圧は、減圧弁156を経てリザーバ78に戻される。
【0051】
5)イグニッションスイッチ234のOFF状態
すべてのバルブのソレノイドに電流が供給されなるなることにより図2の原位置とされる。
a)図2に示すように、増圧リニア制御弁172が閉状態にあるため、動力式液圧源64が共通通路94から遮断される。そのため、たとえ、共通通路94より下流側(ブレーキシリンダ42FL,FR)において液漏れがあったとしても、リザーバ78の収容室84から動力液圧通路170を経て作動液が流出させられることは防止される。
b)マスタ遮断弁194FRが閉状態にあるため、仮に、右前輪4のブレーキシリンダ42FR周辺において液漏れがあったとしても、リザーバ収容室80からマスタ通路76を経て作動液が流出させられることは防止される。
c)入力側逆止弁99、ピストン内逆止弁130が設けられるため、仮に、共通通路94の下流側に液漏れがあったとしても、マスタリザーバ78の収容室82からメカ式増圧装置96を通る作動液の流出を防止することができる。マスタリザーバ78の収容室82からピストン内連通路129を通る作動液の流出が阻止されるのであり、入力側逆止弁99,ピストン内逆止弁130等により流出防止装置260が構成される。
【0052】
6)メカ式増圧装置96のチェック
本実施例においては、予め定められたチェック条件が成立すると、メカ式増圧装置96の作動が正常であるか否かのチェックが行われる。
図10のフローチャートで表されるチェックプログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。S11において、チェック条件が成立するか否かが判定される。チェック条件が成立しない場合には、チェックが行われることはないが、チェック条件が成立すると、S12においてメカ式増圧装置96の作動チェックが行われる。
本実施例においては、(i)イグニッションスイッチ234がOFFからONに切り換えられた後の最初にブレーキペダル60が作用操作された場合、(ii)車両が停止状態にある場合に成立したとされる。車輪速度センサ230の検出値に基づいて取得された車両の走行速度が停止状態にあるとみなし得る設定速度以下である場合に、車両が停止状態にあると考えることができる。
このように、チェックは、ブレーキペダル60の作用操作状態で行われる。また、チェックは車両の停止状態において行われることが望ましいが、停止状態に行うことは不可欠ではない。さらに、チェックにはチェック1,チェック2の2つの方法がある。チェック1,2は、適宜、選択的に行われるようにしても、チェック条件が成立した場合に、チェック1,2の両方が行われるようにしても、マスタシリンダ液圧が設定圧以上の場合にチェック1が行われ、設定圧より低い場合にチェック2が行われるようにすることができる。後述するように、マスタシリンダ液圧の設定圧は、チェック1によってメカ式増圧装置96の作動が正常であるか否かの判定を正確に行い得る大きさとすることができる。設定圧はチェック可能圧と称することができる。
【0053】
6−1)チェック1
チェック1においては、メカ弁可動部98の入力液圧Pin(Pm)とメカ弁可動部98の出力液圧Pout(Pwc)とを比較して、メカ式増圧装置96の作動が正常であるか否かが検出される。
図11(a)に示すように、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁316を閉状態として、入力側遮断弁148を開状態、高圧遮断弁314を開状態として、メカ式増圧装置96の作動を許可する。そして、マスタシリンダ圧センサ222FLの検出値Pm(メカ弁可動部98の入力液圧Pin)と、ブレーキシリンダ圧センサ226の検出値Pw(メカ弁可動部98の出力液圧Pout)とを比較する。これらが、図11(b)に示す正常領域R内に属する場合に、メカ式増圧装置96の作動は正常であると判定することができる。それに対して、正常領域R内にない場合には、メカ式増圧装置96の作動が異常であると判定される。図11(b)の実線は、メカ式増圧装置96の作動が正常である場合のPinとPoutとの関係を示す。
【0054】
メカ式増圧装置96の作動が異常であるのは、(a)動力式液圧源64の異常(動力式液圧源64の出力液圧が低い場合、動力式液圧源64から高圧の液圧が供給されない場合であり、例えば、アキュムレータ66の液漏れ、ポンプモータ92の故障、高圧通路132の液漏れ等の原因が考えられる)、(b)高圧遮断弁312の閉固着異常、(c)メカ式増圧装置96の異常(メカ式可動部98が作動しない場合であり、例えば、段付きピストン104の食い付き等の作動不能異常、高圧供給弁116の閉固着異常等の原因が考えられる)、(d)入力側遮断弁148の開固着異常等のうちの少なくとも1つが原因であると考えられる。また、マスタシリンダ圧センサ222FL、ブレーキシリンダ圧センサ226の異常、分離弁320の閉固着異常、液漏れ等も考えられる。
それに対して、メカ式増圧装置96の作動が正常である場合には、メカ式可動部98の作動が正常であり、かつ、動力式液圧源64から高圧の作動液が供給され、高圧遮断弁312,入力側遮断弁148が指令通りに開状態に切り換わったと考えられる。換言すれば、メカ式増圧装置96の作動が正常である場合には、メカ式増圧装置96が正常である場合のみならず、メカ式増圧装置96の作動に関連する部材、装置等も正常であると判定することができる。
【0055】
なお、入力液圧Pinとして、マスタシリンダ圧センサ222FLの検出値を利用したが、マスタシリンダ圧センサ222FRの検出値を利用したり、ストロークセンサ218の検出値に基づいて推定した値を利用したりすること等もできる。
また、上述の(a)動力式液圧源64、(b)高圧遮断弁312、(c)メカ式増圧装置96、(d)入力側遮断弁148のうちの少なくとも1つが正常であることが予めわかっている場合、あるいは、さらに詳細に、これらの構成部材が正常であることが分かっている場合において、メカ式増圧装置96の作動が異常であると判定された場合には、その異常の原因を取得することができる場合がある。
【0056】
6−2)チェック2
チェック2において、メカ式入力側遮断弁148の閉状態、高圧遮断弁312の閉状態で、段付きピストン104が前進して、高圧供給弁114が開状態に切り換わるように、小径側室112の液圧を増加させる。その後、高圧遮断弁312を開状態に切り換わるように制御した後の、小径側室112の液圧の変化に基づいて、メカ式増圧装置96の作動が正常であるか否かが判定される。
6−2−1)チェック前制御
図12に示すように、メカ式入力側遮断弁148、高圧遮断弁312の閉状態で、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁316の制御により、共通通路94の液圧が目標液圧Pref1とされる。目標液圧Pref1は、段付きピストン104の作動開始圧より大きい値であり、高圧供給弁116が開状態に切り換えられたはずの値である。
段付きピストン104が後退端位置にある場合には、ピストン内連通路129により、小径側室112と大径側室110とが連通した状態にある。小径側室112に液圧が供給されることにより、液圧がピストン内連通路129,ピストン内逆止弁130を経て大径側室110に供給される。大径側室110の液圧が作動開始圧より小さい場合には、ピストン内連通路129は開放状態に保たれ、図14(a)の実線に沿って、小径側室112の液圧の増加に伴って大径側室110の液圧が増加させられる。これらの液圧は同じ大きさにある(Pin=Pout)。
その後、大径側室110の液圧が作動開始圧に達すると、段付きピストン104が前進させられる。段付きピストン104が開弁部材125に当接することによりピストン内連通路129が塞がれ、開弁部材125が前進させられ、高圧供給弁116が開状態に切り換えられるはずである。小径側室112の液圧は、大径側室110の液圧より大きくなるのであり、サーボ圧となる。図14(a)の一点鎖線が示すように、小径側室112の液圧の増加に伴って大径側室110の液圧も大きくされる。そして、小径側室112の液圧(ブレーキシリンダ圧センサ226の検出値)が、増圧リニア制御弁172の制御により、目標液圧Pref1に近づけられる。
その後、主として減圧リニア制御弁316の制御により、小径側室112の液圧が減圧させられ、目標液圧Pref2に近づけられる。
図14(a)に示すように、メカ式可動部98のヒステリシスにより、小径側室112の液圧と大径側室110の液圧とがほぼ等しくなる。本実施例においては、小径側室112の液圧の増加により段付きピストン104が前進させられた後に、小径側室112の液圧を減少させるため、通常のブレーキ作動時と比較すると、液圧変化の向きが逆になる(ヒステリシスが逆になる)。
なお、ブレーキペダル60が作用操作された状態でチェックが行われるため、保持弁153は開状態、減圧弁156が閉状態にあるのであり、すべてのブレーキシリンダ42,52の液圧は目標液圧Pref1とされる。この意味において、目標液圧Pref1は、運転者の要求制動力で決まる大きさにすることができる。たいていの場合には、作動開始圧より大きいという要件は満たす。
【0057】
6−2−2)高圧遮断弁312の切換え
次に、図13に示すように、増圧リニア制御弁172、減圧リニア制御弁316を閉状態として、小径側室112の周辺に閉空間を形成する。小径側室112およびブレーキシリンダ液圧センサ226を含む空間を、リザーバ78,動力式液圧源64から遮断するとともに、マスタシリンダ62からも遮断する(マスタ遮断弁194FRは閉状態とされている)。この状態で、高圧遮断弁312が閉状態から開状態に切り換わるように、ソレノイドへの供給電流を制御する(供給電流を0とする)。
動力式液圧源64から高圧の作動液が小径側室112に供給されれば、小径側室112の液圧が直ちに増加させられる。本実施例においては、図14(b)に示すように、ブレーキシリンダ圧センサ226の検出値PwcがPref1まで増加させられ、その後、一点鎖線に沿って増加させられるはずである。
したがって、高圧遮断弁312が閉状態から開状態に切り換わるようにソレノイドへの供給電流を制御した後に、ブレーキシリンダ圧センサ226の検出値が、液圧Pref1より低い場合、換言すれば、検出値Pwcの増加量ΔPwcが判定しきい値ΔPth(=Pref1−Pref2)より小さい場合には、メカ式増圧装置96の作動が正常でないと判定される。
【0058】
S12において、チェック2が行われる場合についてのルーチンを図15に示す。
S21において、入力側遮断弁148が閉状態となるように制御するとともに、高圧遮断弁312が閉状態となるように制御する。S22において、増圧リニア制御弁172への供給電流の制御により、小径側室112(共通通路94、ブレーキシリンダ42,52)の液圧が増圧制御される。そして、S23において、ブレーキシリンダ液圧センサ226の検出値Pwcが目標液圧Pref1に近づいたか否かが判定される。目標液圧Pref1に近づくまでの間、S22,23が繰り返し実行される。目標液圧Pref1に近づいた場合には、S24において、主として減圧リニア制御弁316の制御により、小径側室112の液圧が減圧制御される。S25において、小径側室112の液圧がほぼ目標液圧Pref2に近づいたか否かが判定される。目標液圧Pref2に近づくまで減圧リニア制御弁316の制御が継続させられる。
その後、S26において、増圧リニア制御弁172,減圧リニア制御弁312が閉状態とされ、高圧遮断弁312が開状態とされることにより、閉空間が形成される。
そして、S27において、ブレーキシリンダ液圧センサ226の検出値PwcがPref1以上になったか否かが判定される。ブレーキシリンダ液圧が増加した場合には、S28において、メカ式増圧装置96の作動が正常であると判定され、増加しない場合には、S29において、メカ式増圧装置96の作動は正常でないと判定される。
【0059】
このように、本実施例においては、ブレーキペダル60が作用操作された状態で、すなわち、通常制動時にチェックを行うことができる。そのため、チェックの機会を増やすことができ、液圧ブレーキシステムの信頼性を向上させることができる。
また、入力側遮断弁148が閉状態にあるため、ブレーキペダル60に加えられる反力が、チェックに起因して変化することがなく、運転者の操作フィーリングの低下を抑制することができる。
さらに、入力側遮断弁148が閉状態にあるため、目標液圧Prefを運転者のブレーキ操作状態とは関係がない大きさとすることもできる。チェック1においては、入力液圧Pmがチェック可能圧より低い場合には、メカ式増圧装置96の作動が正常であるか否かの判定を正確に行うことができない。それに対して、チェック2においては、目標液圧Pref1,2を、任意の大きさ(作動開始圧より大きい範囲で)とすることができるため、メカ式増圧装置96の作動が正常であるか否かの判定を正確に行うことが可能となり、液圧ブレーキシステムの信頼性を向上させることができる。
【0060】
なお、S27が実行される前に、予め定められた設定時間が経過するまで待つこともできる。本実施例においては、小径室側112の液圧の変化の有無を正確に検出することができる。
また、目標液圧Pref1の大きさは、運転者の要求制動トルクに応じた大きさとすることは不可欠ではない。高圧供給弁116を開状態に切り換え可能な大きさ以上であれば、目標液圧の大きさは問わない。
さらに、チェック2は、ブレーキペダル60の非操作状態において、換言すれば、図示しないパーキングブレーキが作用状態にある場合(シフト位置がパーキング位置にある場合でもよい)に、実行することができる。その場合には、すべての保持弁153を閉状態としたり、左右後輪のブレーキシリンダ52に対応する保持弁153RL,RRを閉状態とすることができる。本実施例においては、小径側室112,ブレーキシリンダ圧センサ226を含む閉空間を狭くすることができ、小径側室112の液圧変化を正確に検出することができる。また、目標液圧Pref1の大きさを、運転者の要求制動トルクに応じた大きさとする必要性が低い。
【0061】
また、チェック2において、S24,25のステップは不可欠ではない。小径側室112の液圧が目標液圧Pref1に達した後に(S23の判定がYESの場合)、高圧側遮断弁312を閉状態から開状態に切り換える制御を行うことができる。その場合には、小径側室112の液圧、すなわち、ブレーキシリンダ液圧は、図14(c)に示すように、一点鎖線に沿って増加するはずである。そのため、高圧側遮断弁312が閉状態から開状態に切り換える制御が行われた後の予め定められた設定時間が経過した後の、ブレーキシリンダ液圧が、液圧Pref1より異常判定しきい値ΔPth以上増加した場合に、メカ式可動部98の作動が正常であるとされる。
【0062】
さらに、S23において、目標液圧Pref1に設定時間内に達しなかった場合、S25において、目標液圧Pref2に設定時間内に達したなかった場合にも、メカ式増圧装置96の作動が正常でないと判定することができる。
また、高圧遮断弁312を、閉状態から開状態に切り換わるように制御した後に、ブレーキシリンダ液圧Pwcが過渡的に増加した場合に、メカ式増圧装置の作動が正常であると判定することも可能である。
さらに、イグニッションスイッチ234がONからOFFに切り換えられた後にチェックが実行されるようにすることもできる。この場合には、小径側室112の目標液圧の大きさを任意の大きさとすることができる。
また、第1チェック部によってチェックが行われる場合においても小径側室112の液圧が制御されるようにすることも可能である。
さらに、本実施例は、液圧ブレーキシステムに限らず、広く液圧作動システムに適用することができる。
【0063】
本実施例においては、ブレーキECU56のチェックプログラムを記憶する部分、実行する部分により増圧装置チェック装置が構成される。そのうちの、S12を記憶する部分、実行する部分により、第1チェック部、第2チェック部が構成される。第1チェック部、第2チェック部は、入力遮断状態チェック実行部、作用中チェック部でもある。第1チェック部において、第1チェックを実行することによりメカ式増圧装置96の作動が正常であると判定する部分により第1正常判定部が構成され、第2チェック部において、S27,28を記憶する部分、実行する部分等により第2正常判定部、サーボ状態移行時正常判定部(S24,25が実行されなかった場合には、サーボ状態増圧時正常判定部)が構成され、S26を記憶する部分、実行する部分等により高圧遮断弁制御部が構成され、S22〜26を記憶する部分、実行する部分等により、チェック前出力側液圧制御部が構成され、そのうちの、S22,23を記憶する部分、実行する部分等により増圧制御部が構成され、S24,25を記憶する部分、実行する部分等により減圧制御部が構成される。また、S26を記憶する部分、実行する部分等により閉空間形成部が構成される。
【実施例2】
【0064】
増圧装置のチェックは、図16,17に示す液圧ブレーキ回路においても実行することができる。図17に示すメカ式増圧装置については、特開2001−225739号公報に記載されているため、簡単に説明する。また、それ以外の部分については、実施例1における場合と同様であるため、説明および図示を省略する。
図16において、マスタシリンダ500は、ハウジング502と、ハウジング502に摺動可能に嵌合された2つの加圧ピストン504,506と、加圧ピストン504,506の前方に設けられた加圧室510,512と、加圧ピストン504の後方に設けられた後方液圧室514とを含む。加圧ピストン504には、ブレーキペダル60が連携させられる。
加圧室510,512には、それぞれ、マスタ通路520,522が接続され、それぞれ、左右前輪2,4のブレーキシリンダ42、左右後輪46,48のブレーキシリンダ48が接続される。マスタ通路520にはブレーキシリンダ圧センサ524が設けられる。
本実施例に係る液圧ブレーキ回路においては、前後2系統とされており、前輪側系統において、ブレーキシリンダ42FL,FRと、加圧室510と図示しないリザーバとの間に、アンチロック制御装置525が設けられ、後輪側系統において、ブレーキシリンダ52RL,RRと、加圧室512と、リザーバとの間に、アンチロック制御装置526が設けられる。
【0065】
また、後方液圧室514には、増圧装置530と液圧制御装置532とが並列に接続されている。
増圧装置530,液圧制御装置532は、いずれも、動力式液圧源64の液圧を利用するものである。
液圧制御装置532は、増圧リニア制御弁540,減圧リニア制御弁542を含み、これらの制御により、動力式液圧源64の液圧が制御されて、後方液圧室514に供給される。増圧リニア制御弁540,減圧リニア制御弁542等の構造は、図3に示すものとほぼ同じである。
増圧装置530は、図17に示すように、ハウジング550に摺動可能に嵌合された段付きピストン552と、段付きピストン552の前方に設けられた高圧供給弁554とを含む。段付きピストン552の前方が小径側室556とされ、後方が大径側室558とされる。大径側室558にはマスタ通路520(マスタシリンダ500の加圧室510)が接続され、小径側室556には後方液圧室514が接続される。高圧供給弁554は、小径側室556と動力式液圧源64に接続された高圧室559との間に設けられ、ハウジング550に形成された弁座560と、弁座560に対して相対移動可能に配設された弁子562とを含む。弁子562には、小径側室556とリザーバポート566とを連通可能な貫通穴564が形成される。弁子562とハウジング550との間にはスプリング570が設けられ、弁子562を弁座564に着座させる向きに付勢する。また、段付きピストン552とハウジング550との間にはスプリング572が設けられ、段付きピストン552を後退端位置に付勢する。
段付きピストン552の後退端位置において、高圧供給弁554は閉状態にあり、小径側室556は高圧室559から遮断され、リザーバポート566に連通させられる。
段付きピストン552が前進させられると、弁子562の貫通穴564を塞ぎ、弁子562を弁座564から離間させ、小径側室556をリザーバポート566から遮断して高圧室559に連通させて、液圧を高くする。
また、増圧装置530と後方液圧室514との間には、出力側遮断弁574が設けられる。出力側遮断弁574は常開の電磁開閉弁である。
【0066】
一方、大径側室558とマスタ通路520とを接続するパイロット通路590には、常開弁であるパイロット遮断弁592が設けられ、小径側室556と大径側室558とを増圧装置530をバイパスして接続するバイパス通路(ピストン外連通路と称することができる)594には常閉弁である連通遮断弁596が設けられ、アキュムレータ66と高圧室559とを接続する高圧制御圧通路598には常閉弁である高圧遮断弁600が設けられる。
【0067】
<増圧装置530の作動が正常であるか否かのチェック>
本実施例においては、チェック2が実行される。また、本実施例においては、ブレーキペダル60が操作されていない状態で実行することが望ましい。例えば、イグニッションスイッチ234のがONからOFFに切り換えられた場合、または、車両の停止状態において、ブレーキペダル60が操作されていない場合に、実行することができる。
図18に示すように、パイロット遮断弁592を閉状態、連通遮断弁596を開状態、高圧遮断弁600を閉状態として、出力側遮断弁574を開状態とする。そして、増圧リニア制御弁540,減圧リニア制御弁542により、後方液圧室514の液圧を目標液圧Prefに近づくように制御する。
増圧装置530の小径側室556の液圧と大径側室558の液圧とは同じ大きさとされるのであり、目標液圧Prefとされる。大径側室558の液圧が段付きピストン552の作動開始圧より大きくなると、段付きピストン552が前進させられ、高圧供給弁554の弁子562に当接して、貫通穴564を塞ぐはずである。高圧供給弁554は開状態に切り換えられ、小径側室556はリザーバ78から遮断されるはずである。段付きピストン552は弁子562が図示しないストッパに当接するまで前進させられると考えられる。
また、出力側遮断弁574が開状態にあるため、小径側室556からの作動液の流出が許容され、それにより段付きピストン552の前進が許容される。さらに、小径側室556の液圧は出力側遮断弁574から後方液圧室514に供給され、後方液圧室514の液圧が増加させられる。それにより、加圧ピストン504が前進させられ、加圧室510の液圧が増加させられるのであり、加圧室510の液圧が、ブレーキシリンダ液圧センサ524によって検出される。後方液圧室514の液圧と加圧室510の液圧との間には予め定められた関係がある。本実施例においては、ブレーキシリンダ液圧センサ524の検出値が後方液圧室514の液圧が目標液圧Prefに対応する大きさに近づくように制御される。
【0068】
この状態から、図19に示すように、連通遮断弁596が閉状態となるようにソレノイドへの供給電流が制御されるとともに、高圧遮断弁600が開状態となるように制御される。小径側室556が大径側室558から遮断されて、小径側室556には、動力式液圧源64から高圧の液圧が供給されるはずである。ブレーキシリンダ液圧センサ524の検出値Pwcが増加したか否かが検出され、ブレーキシリンダ液圧センサ524の検出値Pwcが増加した場合には、増圧装置530の作動が正常であると判定される。段付きピストン556は、小径側室556の液圧、大径側室558の液圧により移動させられ、小径側室556の液圧は、大径側室558の液圧より、段付きピストン556の形状で決まる比率だけ大きい値となると考えられる。
このように、マスタシリンダ500の上流側に設けられた増圧装置であっても、本発明を適用することができる。
【0069】
図20に示すフローチャートに基づいてチェック2が行われる場合について簡単に説明する。
S31において、高圧遮断弁600,入力遮断弁592を閉状態、連通遮断弁596が開状態となるように、ソレノイドへの供給電流を制御する。S32、33において、増圧、減圧リニア制御弁540,542の制御により、ブレーキシリンダ液圧センサ524の液圧が目標液圧に近づくように制御する。S34において、増圧、減圧リニア制御弁540,542を閉状態として、連通遮断弁596が閉状態、高圧遮断弁600が開状態に切り換えられるように制御する。そして、S35において、ブレーキシリンダ液圧センサ524の液圧が増加したか否かを判定する。増加した場合には、S36において、増圧装置530の作動が正常であると判定し、増加しない場合には、S37において、増圧装置530の作動が正常でないと判定する。
本実施例においては、ブレーキECU56のS32,33を記憶する部分、実行する部分等によりチェック前入力側液圧増圧制御部が構成され、S35〜57を記憶する部分、実行する部分等により入力液圧制御時正常判定部が構成される。また、S31,34を記憶する部分、実行する部分等により連通遮断弁制御部が構成される。
【その他の実施例】
【0070】
なお、ブレーキ回路の構造は問わない。
例えば、メカ弁入力通路310にメカ式増圧装置96を直接接続することもできる。換言すれば、入力側遮断弁148は不可欠ではないのである。
また、流出防止装置260を設けることも不可欠ではない。
さらに、分離弁320は不可欠ではない。
また、保持弁153RLa,RRaは常閉弁とすることもできる。
さらに、減圧制御弁316を設けることは不可欠ではない。すべての保持弁153の開状態において、減圧弁156のうちの1つの制御により、共通通路94の液圧の減圧制御を行うことができる。
【0071】
以上、複数の実施例について説明したが、これら複数の実施例のうちの2つ以上を互いに組み合わせて実施することもできる。
その他、本発明は、複数の実施例を組み合わせた態様で実施することができる等、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
40,50:液圧ブレーキ 42,52:ブレーキシリンダ 54:液圧制御部 56:ブレーキECU 60:ブレーキペダル 62:マスタシリンダ 64:動力式液圧源 66:アキュムレータ 70,72:加圧室 74,76:マスタ通路 94:共通通路 96:メカ式増圧装置 98:メカ式可動部 99:入力側逆止弁 100:高圧側逆止弁 104:段付きピストン 110:大径側室 112:小径側室 116:高圧供給弁 132:高圧側逆止弁 136:バイパス通路 148:入力側遮断弁 150:個別通路 153:保持弁 156;減圧弁 170:動力液圧通路 172:増圧リニア制御弁 190:サーボ圧通路 218:ブレーキスイッチ 220:ストロークセンサ 222:マスタシリンダ圧センサ 226:ブレーキシリンダ圧センサ 228:レベルウォーニング 260:流れ抑制装置 312:高圧遮断弁 311:マスタ通路、320:分離弁 500:マスタシリンダ 514:後方液圧室 520:マスタ通路 530:増圧装置 532:液圧制御装置 596:出力側遮断弁 592:パイロット遮断弁 594:連通遮断弁 600:高圧遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作により液圧を発生させる少なくとも1つのマニュアル式液圧源と、
電気エネルギの供給により液圧を発生させる動力式液圧源と、
少なくとも、前記少なくとも1つのマニュアル式液圧源のうちの1つの液圧により作動させられ、前記動力式液圧源の液圧を利用して、前記1つのマニュアル式液圧源の液圧より高い液圧を出力可能な増圧装置と、
その増圧装置の作動が正常であるか否かのチェックを行う増圧装置チェック装置と
を含み、その増圧装置チェック装置が、(i)前記増圧装置の入力側の液圧と出力側の液圧との関係に基づいて前記チェックを行う第1チェック部と、(ii)前記増圧装置の出力側の液圧の変化に基づいて前記チェックを行う第2チェック部との少なくとも一方を含むことを特徴とする液圧ブレーキシステム。
【請求項2】
当該液圧ブレーキシステムが、前記増圧装置と前記1つのマニュアル式液圧源である増圧装置接続マニュアル式液圧源との間に設けられた入力側遮断弁を含み、
前記増圧装置チェック装置が前記第2チェック部を含み、その第2チェック部が、前記入力側遮断弁の閉状態において前記チェックを行う入力遮断状態チェック実行部を含む請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項3】
前記増圧装置が、(a)前記1つのマニュアル式液圧源である増圧装置接続マニュアル式液圧源の液圧により前進させられるピストンと、(b)そのピストンの前方に設けられた制御圧室と、(c)前記動力式液圧源が接続された高圧室と前記制御圧室との間に設けられた高圧供給弁とを含み、
当該液圧ブレーキシステムが、前記高圧室と前記動力式液圧源との間に設けられた高圧遮断弁を含み、
前記第2チェック部が、前記制御圧室の液圧が、前記高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられる液圧である設定圧以上である状態で、前記高圧遮断弁を閉状態から開状態に切り換える制御を行った場合に、前記制御圧室の液圧である前記出力側の液圧が増加した場合には、前記増圧装置の作動が正常であると判定する第2正常判定部を含む請求項1または2に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項4】
前記高圧供給弁が、前記ピストンの前進に伴って閉状態から開状態に切り換えられるものであり、
前記増圧装置が、前記増圧装置接続マニュアル式液圧源に接続された入力側液圧室を含み、
前記ピストンが、そのピストン内に設けられ、前記制御圧室と前記入力側液圧室とを連通させるピストン内連通路を含み、前記入力側液圧室の液圧により前進させられ、前記高圧供給弁に当接することにより前記ピストン内連通路が塞がれるものであり、
前記第2チェック部が、前記制御圧室の液圧を、前記ピストンが前進して、前記高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられる前記設定圧以上に制御するチェック前出力側液圧制御部を含む請求項3に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項5】
前記ピストンが、大径部と小径部とを有する段付き形状を成した段付きピストンであり、
前記制御圧室が前記段付きピストンの小径部側に設けられるとともに、前記入力側液圧室が前記段付きピストンの大径部側に設けられ、
前記増圧装置が、ヒステリシスを有するものであり、
前記第2チェック部が、
(a)前記段付きピストンが前進して、前記制御圧室の液圧が前記入力側液圧室の液圧より大きいサーボ状態となるように、前記制御圧室の液圧を前記設定圧以上に増圧制御する増圧制御部と、
(b)その増圧制御部により前記制御圧室の液圧が増加させられた後に、前記制御圧室の液圧と入力側液圧室の液圧とが同じである非サーボ状態となるように、前記制御圧室の液圧を減圧制御する減圧制御部と、
(c)その減圧制御部によって前記非サーボ状態にされた後に、前記高圧遮断弁が閉状態から前記開状態に切り換わるように制御した場合に、前記サーボ状態に移行した場合に、前記増圧装置の作動が正常であると判定するサーボ状態移行時正常判定部とを含む請求項4に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項6】
前記ピストンが、大径部と小径部とを有する段付き形状を成した段付きピストンであり、
前記制御圧室が前記段付きピストンの小径部側に設けられるとともに、前記入力側液圧室が前記段付きピストンの大径部側に設けられ、
前記第2チェック部が、
(a)前記段付きピストンが前進して、前記制御圧室の液圧が前記入力側液圧室の液圧より大きくなるサーボ状態となるように、前記制御圧室の液圧を前記設定圧以上に増圧制御する増圧制御部と、
(b)その増圧制御部によって前記サーボ状態とされた後に、前記高圧遮断弁が閉状態から開状態に切り換わるように制御した場合に、前記制御圧室の液圧が前記サーボ状態において増加した場合に前記増圧装置の作動が正常であると判定するサーボ状態増圧時正常判定部とを含む請求項4に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項7】
前記増圧装置が、前記増圧装置接続マニュアル式液圧源に接続された入力側液圧室を含み、
前記高圧供給弁が、前記ピストンの前進に伴って閉状態から開状態に切り換えられるものであり、
前記ピストンが、前記入力側液圧室の液圧により前進させられるものであり、
前記第2チェック部が、前記入力側液圧室の液圧を、前記高圧供給弁が閉状態から開状態に切り換えられる液圧以上に増圧制御するチェック前入力側液圧制御部を含む請求項3に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項8】
前記増圧装置チェック装置が前記第1チェック部を含み、その第1チェック部が、前記入力側の液圧と前記出力側の液圧との間に、予め定められた関係が成立する場合に、前記増圧装置の作動が正常であるとする第1正常判定部を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項9】
当該液圧ブレーキシステムが、前記増圧装置の前記制御圧室の液圧を、前記動力式液圧源の液圧を利用して制御可能な動力液圧制御装置を含む請求項1ないし8のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−116345(P2012−116345A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268324(P2010−268324)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】