説明

プラズマエッチング方法

【課題】安定したエッチングレートを得ることができるプラズマエッチング方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るプラズマエッチング方法は、スパッタ用のターゲット材30が設置されたプラズマチャンバ内で、表面にマスクパターンが形成された基板Wをエッチングし、基板のエッチングの途中またはエッチング後に、プラズマチャンバ内で酸素系ガスのプラズマを発生させて、ターゲット材30の表面をアッシングする。ターゲット材の表面のアッシング工程は、プラズマチャンバ内で生成され、かつターゲット材の表面に付着した各種反応生成物の除去を目的とする。本発明では、このアッシング工程をエッチング途中またはエッチング後に実行することによって、ターゲット材の表面に堆積した反応生成物のスパッタ作用に起因するエッチングレートの低下を防止し、安定したエッチングレートを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板の表面に高アスペクト比の孔やディープトレンチを形成するのに好適なプラズマエッチング方法に関し、更に詳しくは、安定したエッチングレートが得られ、生産性に優れたプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板の表面の加工には、プラズマエッチング(ドライエッチング)方法が広く用いられている。室温における原子状(ラジカル)フッ素とシリコンの反応は自発的であり、比較的高いエッチングレートが得られることから、シリコン基板のエッチングでは、エッチングガスとしてSF、NF、COF、XeF等のフッ素を含むガスが多用されている。
【0003】
一方、フッ素を含むエッチングガスを用いたシリコン基板のドライエッチングは等方的であるため、形成されたエッチングパターン(凹部)の側壁部にもエッチングが進行する。このため、スルーホールやディープトレンチなどの微細でアスペクト比の高いビアを高精度に形成することが困難であった。
【0004】
そこで近年、エッチングパターンの側壁部に保護膜を形成しながら基板をエッチングすることで、エッチングの横方向の広がりを抑え、パターン側壁部の垂直性を維持できるシリコン基板の深掘り加工技術が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、エッチング工程と保護膜形成工程を交互に繰り返すことで、エッチングパターンの側壁部にポリマー層からなる保護膜を形成しながらエッチングする方法が開示されている。特に、保護膜の成膜として、基板に対向配置されたスパッタターゲット材に対するアルゴンガスを用いたスパッタ法が開示されている。
【0006】
保護膜形成工程でエッチングパターンの側壁部に形成されたポリマー層は、エッチングパターンの底部に形成されたポリマー層に比べて、エッチング工程において除去される量が少ないため、このパターン側壁部に形成されたポリマー層が保護膜として機能し、エッチング方向をパターンの深さ方向に制限する異方性エッチングが実現可能となる。
【0007】
【特許文献1】WO2006/003962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、シリコン基板の深掘り加工技術の必要性が高まっており、これに伴って生産性の向上が求められている。しかしながら、特許文献1に記載の構成では、エッチング工程と保護膜形成工程の処理サイクルを繰り返すにつれて、エッチングレートが徐々に低下する。その理由は、ターゲット材の表面に生成物が堆積し、エッチング工程の際に上記堆積膜のスパッタ物がエッチングパターンの開口部に堆積することによってエッチングの進行を妨げるからである。したがって、従来の方法では、処理開始時におけるエッチングレートを安定して維持することができないという問題がある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、安定したエッチングレートを得ることができるプラズマエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するに当たり、本発明に係るプラズマエッチング方法は、スパッタ用のターゲット材が設置されたプラズマチャンバ内で、表面にマスクパターンが形成された基板をエッチングし、前記基板のエッチングの途中またはエッチング後に、前記プラズマチャンバ内で酸素系ガスのプラズマを発生させて、前記ターゲット材の表面をアッシングする。
【0011】
ターゲット材の表面のアッシング工程は、プラズマチャンバ内で生成され、かつターゲット材の表面に付着した各種反応生成物の除去を目的とする。本発明では、このアッシング工程をエッチング途中またはエッチング後に実行することによって、ターゲット材の表面に堆積した反応生成物のスパッタ作用に起因するエッチングレートの低下を防止し、安定したエッチングレートを得ることができる。
【0012】
上記反応生成物は、ターゲット材の表面だけでなく、基板の表面にも付着することがある。そこで、アッシング工程では、基板およびターゲット材のそれぞれに高周波電力を印加することによって、基板およびターゲット材に付着した反応生成物を効率よく除去することができる。この場合、エッチングパターンの形状制御性を確保する観点から、基板に印加する高周波電力よりも、ターゲット材に印加する高周波電力を大きくすることが好ましい。
【0013】
具体的に、本発明は、シリコン基板の深掘りエッチングに好適に用いられる。この場合、スパッタリング用ターゲット材には、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂を用いることができる。アッシング工程に用いられる酸素系ガスとしては、O、O、COx、NOx、HO、SOxの何れか又はこれらの混合ガスが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、ターゲット材の表面に付着した反応生成物に起因して発生するエッチングレートの低下を防止でき、安定したエッチングレートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づき説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態によるプラズマエッチング方法に適用されるプラズマエッチング装置20の概略構成図である。図示するプラズマエッチング装置20は、NLD(磁気中性線放電:magnetic Neutral Loop Discharge)型のプラズマエッチング装置として構成されており、基板表面のエッチング機能と、基板表面のエッチングパターンの側壁部に保護膜を形成する機能とを兼ね備えている。
【0017】
図1において、21は真空槽であり、内部にプラズマ形成空間21aを含む真空チャンバ(プラズマチャンバ)が形成されている。真空槽21にはターボ分子ポンプ(TMP)等の真空ポンプが接続され、真空槽21の内部が所定の真空度に真空排気されている。
【0018】
プラズマ形成空間21aの周囲には、真空槽21の一部を構成する筒状壁22によって区画されている。筒状壁22は石英等の透明絶縁材料で構成されている。筒状壁22の外周側には、第1高周波電源RF1に接続されたプラズマ発生用の高周波コイル(アンテナ)23と、この高周波コイル23の外周側に配置された三つの磁気コイル群24(24A,24B,24C)がそれぞれ配置されている。なお、高周波コイル23は本発明の「電場形成手段」を構成し、磁気コイル群24は本発明の「磁場形成手段」を構成している。
【0019】
磁気コイル24Aと磁気コイル24Cにはそれぞれ同一方向に電流が供給され、磁気コイル24Bには他の磁気コイル24A,24Cと逆方向に電流が供給される。その結果、プラズマ形成空間21aにおいて、磁場ゼロとなる磁気中性線25が環状に連続して形成される。そして、高周波コイル23により磁気中性線25に沿った誘導電場(高周波電場)が形成されることで、放電プラズマが形成される。
【0020】
特に、NLD方式のプラズマエッチング装置においては、磁気コイル24A〜24Cに流す電流の大きさによって、磁気中性線25の形成位置および大きさを調整することができる。すなわち、磁気コイル24A,24B,24Cに流す電流をそれぞれI,I,Iとしたとき、I>Iの場合は磁気中性線25の形成位置は磁気コイル24C側へ下がり、逆に、I<Iの場合は磁気中性線25の形成位置は磁気コイル24A側へ上がる。また、中間の磁気コイル24Bに流す電流Iを増していくと、磁気中性線25のリング径は小さくなると同時に、磁場ゼロの位置での磁場の勾配が緩やかになる。これらの特性を利用することで、プラズマ密度分布の最適化を図ることができる。
【0021】
一方、真空槽21の内部には、半導体ウエハ(シリコン(Si)基板)Wを支持するステージ26が設置されている。ステージ26は、導電体で構成されており、コンデンサ27を介して第2高周波電源RF2に接続されている。なお、ステージ26には、基板Wを所定温度に加熱するためのヒータ等の加熱源が内蔵されている。
【0022】
プラズマ形成空間21aの上部には、天板29が設置されている。天板29は、ステージ26の対向電極として構成されており、コンデンサ28を介して第3高周波電源RF3に接続されている。天板29のプラズマ形成空間21a側の面には、スパッタにより基板を成膜するためのターゲット材(スパッタリングターゲット)30が取り付けられている。ターゲット材32は、本実施形態では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が用いられているが、これ以外の合成樹脂材料、あるいは珪素材、炭素材、炭化珪素材、酸化珪素材、窒化珪素材等が適用可能である。
【0023】
天板29の近傍には、真空槽21の内部にプロセスガスを導入するためのガス導入管31が設置されている。本実施形態において、プロセスガスは、エッチング工程用のガス、スパッタ工程用のガス、そして、後述するアッシング工程用のガスが含まれる。
【0024】
エッチングガスとしては、SF、NF、SiF、XeFの少なくとも何れか一種又は不活性ガスとの混合ガスが用いられる。本実施形態では、エッチングガスとして、SFとArの混合ガスが用いられる。スパッタ用のプロセスガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)や窒素(N)などの希ガスあるいは不活性ガスを用いることができる。
【0025】
本実施形態のプラズマエッチング装置20においては、ステージ26上に載置された基板Wに対してエッチング工程と保護膜形成工程を交互に繰り返し行うことで、基板Wの表面に高アスペクト比の孔またはディープトレンチ等からなるビアを形成する。
【0026】
図2は、本実施形態のプラズマエッチング装置20の一動作例を示すタイミングチャートである。図2において、Aは、高周波コイル23に供給される第1高周波電源RF1の電力印加タイミング、Bは、ステージ26に供給される第2高周波電源RF2の電力印加タイミング、Cは、天板29に供給される第3高周波電源RF3の電力印加タイミング、Dは、真空槽21の内部における圧力変化をそれぞれ示している。この例では、エッチング工程の処理圧力(プロセスガス導入量)は、保護膜形成工程のそれよりも高く設定されている。
【0027】
基板Wの表面にはあらかじめ、マスクパターンが形成されている。このマスクパターンには、有機レジストやメタルマスク等のエッチングマスクが含まれる。エッチング工程および保護膜形成工程では、プラズマ形成空間21aに、磁気コイル群24による環状磁気中性線25が形成され、更に、第1高周波電源RF1から高周波コイル23への電力投入により、環状磁気中性線25に沿って誘導結合プラズマが形成される。
【0028】
エッチング工程において、真空槽21の内部に導入されたエッチングガス(SFとArの混合ガス)は、プラズマ形成空間21aでプラズマ化し、生成されたイオンとラジカルによりステージ26上の基板Wをエッチング処理する。このとき、第2高周波電源RF2からの電力投入で基板バイアスがONとなり、イオンをステージ26側へ加速させ、基板W上のラジカル生成物をスパッタ除去してエッチング性を高める。すなわち、フッ素ラジカルがシリコンと反応してラジカル生成物を形成し、これをプラズマ中のイオンによるスパッタ作用で除去することで、シリコン基板Wのエッチング処理が進行する。
【0029】
一方、エッチング処理を所定時間行った後、真空槽21の内部に残留するエッチングガスが排気される。そして、保護膜形成用のプロセスガス(Ar)が真空槽21の内部に導入されることで保護膜形成工程が開始される。導入されたプロセスガスは、プラズマ形成空間21aでプラズマ化される。このとき、基板バイアス(RF2)はOFFとなり、代わりに、第3高周波電源(RF3)からの電力投入で天板バイアスがONとなる。その結果、天板29に設置されたターゲット30はプラズマ中のイオンによりスパッタされ、そのスパッタ物が基板Wの表面および上述のエッチング工程で形成されたエッチングパターンに付着する。以上のようにして、エッチングパターンの底部および側壁部に、保護膜として機能するポリマー層が形成される。
【0030】
ここで、ターゲット30から叩き出されたスパッタ粒子は、プラズマ形成空間21aに形成されているNLDプラズマを通過して基板へ到達する。このとき、スパッタ粒子は、環状磁気中性線25が形成される高密度プラズマ領域で分解、再励起されることにより、化学的蒸着法(CVD法)に類似する成膜形態で、基板の表面に対して等方的に入射する。したがって、本実施形態によって得られるエッチングパターンの段差被膜(保護膜)は、カバレッジ性が高く、面内均一性に優れる。
【0031】
なお、保護膜形成工程のプロセスガスとして、例えば、Arとフロロカーボン系ガス(C、CHF等)の混合ガスを用いることで、プロセスガス中の反応ガスがプラズマ形成空間21aにおいてプラズマ化し、そのラジカル生成物が基板表面に堆積することによって、保護膜として機能するポリマー層を形成する。更に、プロセスガスとして上記混合ガスを用いることで、Arガスのみをプロセスガスとして用いる場合に比べてスパッタレートの向上を図ることができる。
【0032】
保護膜形成工程を所定時間行った後、再び上述したエッチング工程が行われる。このエッチング工程の初期段階は、エッチングパターンの底部を被覆する保護膜の除去作用に費やされる。その後、保護膜の除去により露出したエッチングパターンの底部のエッチング処理が再開される。このとき、プラズマ中のイオンは、基板バイアス作用によって基板に対して垂直方向に入射する。このため、エッチングパターンの側壁部を被覆する保護膜に到達するイオンは、エッチングパターンの底部に到達するイオンに比べて少ない。したがって、エッチング工程の間、エッチングパターンの側壁部を被覆する保護膜は完全に除去されることなく残留する。これにより、エッチングパターンの側壁部とフッ素ラジカルとの接触が回避され、エッチングパターンの側壁部のエッチングによる侵食が防止される。
【0033】
以後、上述のエッチング工程と保護膜形成工程が交互に繰り返し行われることで、基板表面に対して垂直方向の異方性エッチングが実現される。以上のようにして、基板Wの内部に高アスペクト比のビア(コンタクトホール、トレンチ)が作製される。
【0034】
次に、本発明に係るターゲット材30の表面のアッシング工程について説明する。
【0035】
基板のエッチング処理および保護膜の成膜処理を続けると、プラズマ形成空間21a内で生成されるエッチングガス(SF/Ar)、ターゲット材(PTFE)、基板材料(シリコン)等に関連する反応生成物がターゲット材30の表面に堆積する。この種の堆積膜は、プラズマの照射を受けてスパッタされて、基板の表面に形成されたエッチングパターンに付着する。エッチング工程の際に上記堆積膜のスパッタ物がエッチングパターンの開口部に堆積することによってエッチングの進行を妨げる。
【0036】
図3は、エッチングパターンの開口部に堆積した上記スパッタ物の影響でエッチングレートが低下する様子を模式的に示している。図において、Wは基板、Hはエッチングパターン(孔)、Mは基板表面に形成されたエッチングマスク、Pはエッチングパターンの側壁部に形成された保護膜、Dはエッチングパターンの開口部に付着したスパッタ物である。
【0037】
基板Wの表面にはあらかじめエッチングマスクMが形成されている。時刻t0でエッチングが開始される。このとき、ターゲット材30の表面は、清浄な状態とされる。エッチング開始(時刻t0)から時刻t1の間は、上述したエッチング工程と保護膜形成工程が交互に行われることで、図示するように安定したエッチングレートで基板の深掘り工程が実現される。
【0038】
一方、時刻t1を経過した後は、エッチングレートが徐々に低下する。これは、エッチング工程の継続によりターゲット材30の表面が反応生成物の付着で徐々に汚染され、パターン開口部に、ターゲット表面でスパッタされた反応生成物のスパッタ物Dが付着して、開口部の開口面積を減少させるからである(時刻t2)。このスパッタ物Dの堆積は、エッチング工程および保護膜形成工程においても進行する。このため、エッチング工程では除去できないスピードで開口部に堆積し、最終的に、当該開口部を閉塞する(時刻t3)。
【0039】
そこで本実施形態では、エッチング工程の途中またはエッチング後に、真空槽21内の雰囲気ガスを酸素系ガスに置換して、ターゲット材30の表面を清浄化するためのクリーニング工程が実施される。このクリーニング工程では、真空槽21内で酸素系ガスのプラズマを発生させて、ターゲット材30の表面に付着した反応生成物をアッシングによって除去する。
【0040】
このアッシング工程で用いられるプロセスガスとしては、O、O、COx、NOx、HO、SOxの何れか又はこれらの混合ガスが用いられる。また、これら酸素系ガスと希ガスとの混合ガスを用いてもよい。プロセス圧力は、エッチング工程と同程度に設定され、例えば1.0Pa〜6.0Paである。酸素系ガスのプラズマは、第1高周波電源RF1に接続された高周波コイル23および磁気コイル群24を用いて発生される。
【0041】
図2では、ターゲット材30のクリーニング(アッシング)工程を、基板Wの深掘り加工の途中で実施する例を示している。エッチング工程と保護膜形成工程を所定サイクル(例えば50〜100サイクル)実施する毎に、ターゲット材30の表面のクリーニング処理が実行される。本実施形態によれば、ターゲット30の表面を清浄な状態に維持しながら、基板の深掘り加工を実施することが可能となる。また、処理開始時の高いエッチングレートを安定して維持することができるので、生産性の向上を図ることが可能となる。更に、パターン開口部への異物の付着を防止できるので、形状精度に優れたエッチングパターンを形成することができる。
【0042】
上記反応生成物は、ターゲット材30の表面だけでなく、基板Wの表面にも付着することがある。そこで、ターゲット材30のクリーニング工程(アッシング工程)では、図2に示すように、基板Wおよびターゲット材30(天板29)のそれぞれに高周波電力を印加することによって、基板Wおよびターゲット材30に付着した反応生成物を効率よく除去することができる。
【0043】
この場合、エッチングパターンの形状制御性を確保する観点から、基板に印加する高周波電力よりも、ターゲット材30に印加する高周波電力を大きくするのが好ましい。具体的には、基板Wに対する印加電力を200Wとした場合、ターゲット材30に対する印加電力を500Wとする。
【0044】
アッシング工程の処理時間は特に限定されない。処理時間が長いとターゲット材30の清浄度は高まるが、生産性が低下する。好適には、安定したエッチングレートが得られる範囲でアッシング工程の処理時間を設定する。
【0045】
なお、このアッシング条件によっては、エッチングパターンを含む基板Wの表面に、酸化膜が形成される。この酸化膜は、エッチングパターンの側壁保護膜として同様の機能を有するため、基板の表面から除去される必要はない。
【0046】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態によるプラズマエッチング方法に適用されるプラズマエッチング装置の概略構成図である。なお、図において上述の第1の実施形態と対応する部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態では、基板Wは石英基板で構成され、ターゲット材32はシリコン(Si)プレートで構成されている。また、天板29は、コンデンサ28を介して、高周波アンテナ23用の第1高周波電源RF1と接続される。これにより、プラズマ形成空間21a内でプラズマが形成されている間、天板29にもバイアス電力が印加される。なお、コンデンサ28の容量を適切に設定することによって、
【0048】
石英からなる基板Wのエッチングガスには、CやCF、CHF等のフロロカーボン系ガスが用いられる。プラズマ形成空間21aでエッチングガスのプラズマを発生させて、表面にマスクパターンが形成された基板Wをエッチングする。エッチング時、シリコンプレート32に高周波電力が印加されることで、プラズマ中のイオンが天板29へ引き込まれ、シリコンプレート32をスパッタする。スパッタされたシリコン粒子はエッチングガスの一部と反応し、チャンバ内におけるエッチャント濃度を調整する機能を果たす。これにより、基板Wの適切なエッチング処理が可能となり、形状制御性に優れたパターン加工を実現する。
【0049】
このような構成のプラズマ処理装置においても、エッチング中に生じた各種反応物がターゲット材32の表面に付着、堆積する場合がある。この場合、上述した効果が安定して得られなくなるため、定期的にターゲット材32のクリーニング処理(アッシング処理)が実行される。ターゲット材32のクリーニング方法は、上述の第1の実施形態と同様にして行われる。これにより、基板Wの適切なエッチング処理を安定して維持することが可能となる。
【0050】
本実施形態において、ターゲット材32のアッシング処理は、基板Wのエッチング途中に行ってもよいし、基板Wのエッチング後に行ってもよい。具体的に、上記アッシング処理は、エッチング処理を所定時間実施する毎に実施してもよいし、所定枚数の基板をエッチング処理する毎に実施してもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0052】
例えば以上の実施形態では、電場形成手段としての高周波コイル23と磁場形成手段としての磁気コイル群24を用いてプラズマを発生させるNLD方式のプラズマ発生源を説明したが、これに限られず、高周波コイル23のみを用いたICP方式のプラズマ発生源を採用してもよい。
【0053】
また、以上の実施形態では、アッシング工程用のプロセスガスとして、O、O、COx、NOx、HO、SOxの何れか又はこれらの混合ガスを用いたが、これ以外にも、N、H等のガスを用いてもターゲット材に対する同様なアッシング機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態において用いられるプラズマエッチング装置の概略構成図である。
【図2】図1に示したプラズマエッチング装置の動作例を説明するタイミングチャートである。
【図3】従来技術の問題点であるエッチングレートの低下の原因を説明する図である。
【図4】本発明の第2の実施形態において用いられるプラズマエッチング装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0055】
20 プラズマエッチング装置
21 真空槽
22 筒状壁
23 高周波コイル
24 磁気コイル群
25 磁気中性線
26 ステージ
30,32 ターゲット材
31 ガス導入管
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタ用のターゲット材が設置されたプラズマチャンバ内で、表面にマスクパターンが形成された基板をエッチングし、
前記基板のエッチングの途中またはエッチング後に、前記プラズマチャンバ内で酸素系ガスのプラズマを発生させて、前記ターゲット材の表面をアッシングする
プラズマエッチング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記ターゲットの表面をアッシングする工程は、前記基板および前記ターゲット材のそれぞれに高周波電力を印加する
プラズマエッチング方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記ターゲットの表面をアッシングする工程は、前記基板に印加する高周波電力よりも、前記ターゲット材に印加する高周波電力を大きくする
プラズマエッチング方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記基板のエッチング工程は、
前記プラズマチャンバ内でエッチングガスのプラズマを発生させて前記基板をエッチングする工程と、
前記ターゲット材をスパッタして、前記基板に形成されたエッチングパターンの側壁部に保護膜を形成する工程とを交互に繰り返す
プラズマエッチング方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記基板はシリコンで構成されており、
前記ターゲット材はフッ素樹脂で構成されている
プラズマエッチング方法。
【請求項6】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記基板のエッチング工程は、前記基板および前記ターゲット材のそれぞれに高周波電力を印加する
プラズマエッチング方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記基板は石英で構成されており、
前記ターゲット材はシリコンで構成されている
プラズマエッチング方法。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記酸素系ガスは、O、O、COx、NOx、HO、SOxの何れか又はこれらの混合ガスである
プラズマエッチング方法。
【請求項9】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法であって、
前記プラズマは、前記プラズマチャンバ内に磁気中性線を形成する磁場形成手段と、前記磁気中性線に沿って交番電場を形成する電場形成手段を用いて発生させる
プラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−267250(P2009−267250A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117585(P2008−117585)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】