説明

プラズマ処理装置、プラズマ処理方法及び記憶媒体

【課題】平行平板型のプラズマ処理装置において、上部電極40を温度調整機構47により設定温度に調整しながらプラズマ処理を行うにあたり、処理の環境雰囲気が変わることに起因する基板間の処理の均一性の低下を抑えること。
【解決手段】プラズマ処理を行うための処理レシピが格納されたレシピ格納部56と、新たな第2の電極の使用を開始した後におけるプラズマ処理の積算時間または基板の処理枚数と、第2の電極の設定温度の補正値と、を入力画面で設定する補正値設定部54と、補正された設定値を記憶する記憶部55と、処理レシピに書き込まれている上部電極40の設定温度を前記記憶部55内の補正値と加算し、補正後の設定温度に基づいて温度調整機構47を制御するプログラムとを備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行平板型のプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスに用いられる平行平板型のプラズマ処理装置は、真空容器内に下部電極を兼用する基板の載置台と、上部電極とを対向配置し、両電極間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化するように構成されている。そして一般的にガス供給部は処理ガスをシャワー状に吐出するガスシャワーヘッドとして構成されることから、上部電極はこのガスシャワーヘッドの最下部に位置する電極板により構成されている。
【0003】
この装置において基板の温度は、載置台側への放熱、プラズマからの入熱、及び上部電極からの輻射熱により決まってくるが、上部電極の温度はいくつかのプロセスに対しては適切であろうと考えられる温度に設定されている。上部電極及びその周辺部位には高周波が流れることなどから、温度検出部を設けることが難しく、このため例えばガスシャワーヘッドの上に配置した、上部電極を加熱するためのヒーターに供給する電力の値を予め適切な値に設定している。
【0004】
一方、プラズマ処理装置は、装置を稼動させるにつれて処理環境が変化していく。具体例としては、例えばプラズマエッチング装置において、エッチング時の反応生成物が部材に付着することの影響を挙げることができる。反応生成物が付着すると、載置台における基板載置領域を囲むように配置されたプラズマの状態調整用のリング部材(フォーカスリングという)の表面状態の変化、ガスシャワーヘッドのガス供給孔の口径の変化、真空容器の内壁面の状態の変化などが発生し、処理結果や処理速度などが変化する。また本発明者らの確認試験によれば、上部電極はプラズマに晒されることで板厚が小さくなるという現象も挙げられる。
【0005】
装置の運用にあたっては、定期的にクリーニングガスをプラズマ化して真空容器内をクリーニングしたり、あるいは部材を新品に交換したりするメンテナンスを行っている。しかしながら、こうしたいわば初期化した時点の状態とその後運転を行っている時点とでは処理の環境雰囲気が変わり、このため基板の間で処理の状態が揃わなくなる。さらにまた基板のロットを変更したときに、ロットの切り替わり初期とその後に基板の処理枚数が増えていった時点とでは、やはり前記環境雰囲気が異なり、基板聞における処理の均一性に影響が出る。
【0006】
特許文献1には、基板に対する処理結果を順次測定し、その測定結呆をフィードバックして処理レシピのパラメータを調整すると共に、高周波電力を印加する積算時間や装置の初期化後の経過時間などでフィードバック値の更新を管理する技術が記載されている。しかしこの手法は高額な測定機器を必要とする上、処理結果の測定に要する時間に基づくスループットの低下が避けられない。
【0007】
また特許文献2には、真空中で基板を搬送するトランスファーモジュールの周囲に、ドライエッチングなどのプラズマ処理を行う複数のプロセスモジュール(PM)を接続した基板処理装置を運転する技術が記載されている。特許文献1によれば、あるPMにおいて先にアクティブになったCJが当該PMにおいて実行可能なPJを有さないときに、初めて他のCJに属し、当該PMにおいて実行可能なPJの実行を許可する。これにより、PJを実行するたびに当該PM内の雰囲気が大幅に変化することを防止している。しかしながら特許文献2には、装置の稼動するにつれて変化する処理環境の影響を低減する技術についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−3712号公報
【特許文献2】特開2011−9342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような背景の下になされたものであり、その目的は、平行平板型(容量結合型)のプラズマ処理装置において、装置の使用により処理の環境雰囲気が変わることに起因する基板間の処理の均一性の低下を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプラズマ処理装置は、真空容器内に設けられた第1の電極を兼用する載置台に基板を載置し、前記第1の電極と第2の電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化し、得られたプラズマにより基板に対してプラズマ処理を行う平行平板型のプラズマ処理装置において、
前記第2の電極の温度を調整するための温度調整機構と、
プラズマ処理時における前記第2の電極の温度を設定する温度設定部と、
新たな第2の電極の使用を開始した後、使用時間の経過に伴い、当該第2の電極の設定温度を低くするように補正する設定温度補正部と、
前記第2の電極の設定温度に基づいて前記温度調整機構を制御するための制御信号を出力する温度制御部と、を備えたことを特徴とする。。
「第2の電極の使用時間の経過に伴い」とは、例えば新たな第2の電極の使用を開始した後におけるプラズマ処理の積算時間または基板の処理枚数などを挙げることができる。
【0011】
また他の発明は、真空容器内に設けられた第1の電極を兼用する載置台に基板を載置し、前記第1の電極と第2の電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化する平行平板型のプラズマ処理装置を用いて、基板に対してプラズマ処理を行う方法おいて、
プラズマ処理時における前記第2の電極の温度を設定する工程と、
新たな第2の電極の使用を開始した後、使用時間の経過に伴い、前記工程で設定された第2の電極の設定温度を低くするように補正する工程と、
この工程で補正された第2の電極の設定温度に基づいて、第2の電極の温度を調整するための温度調整機構を制御する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、基板の載置台を兼用する第1の電極とこれに対向する第2の電極とを設けた平行平板型(容量結合型)のプラズマ処理装置において、第2の電極の使用によりその厚さが小さくなることで当該第2の電極の温度が上昇する現象に着目し、新たな第2の電極の使用を開始した後、第2の電極の使用時間の経過に伴い、第2の電極の設定温度を低くするように補正している。従って第2の電極の使用に伴う当該第2の電極の温度変化が抑えられ、第2の電極の温度変化に起因する基板間の処理のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係わるプラズマエッチング装置の構成を示す縦断側面図である。
【図2】前記プラズマエッチング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】前記プラズマエッチング装置を稼動させる際に用いられるレシピに設定されている処理パラメータの例を示す説明図である。
【図4】前記処理パラメータを補正するための補正値テーブルである。
【図5】前記プラズマエッチング装置の動作の流れを示すフロー図である。
【図6】前記プラズマエッチング装置に設けられているヒーターの温度設定値の経時変化を示す説明図である。
【図7】前記プラズマエッチング装置によるフォトレジスト膜のエッチング速度の経時変化を示す説明図である。
【図8】フォトレジスト膜のエッチング速度の経時変化を確認するための実験結果を示す説明図である。
【図9】前記プラズマエッチング装置でウエハを処理したときの上部電極の温度変化を示す説明図である。
【図10】ヒーターの温度設定値を変化させたときの前記上部電極の温度変化を示す説明図である
【図11】第2の実施の形態に係わる背景技術の説明図である。
【図12】第2の実施の形態に係わるプラズマエッチング装置の平面図である。
【図13】第2の実施の形態に係わるプラズマエッチング装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図14】第2の実施の形態に係わるプラズマエッチング装置にて、ロット間の処理パラメータを補正するための補正値テーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明のプラズマ処理装置をプラズマエッチング装置に適用した実施形態を示し、1は例えばアルミニウムからなる気密な真空容器(処理容器)である。真空容器1の底部の中央部には、載置台2が設けられている。載置台2は、円柱体の上面部の周縁部が全周に亘って切り欠かれていて、段部8が形成された形状、即ち上面部において周縁部以外の部分が円柱状に突出した形状に構成されている。この突出した部位は基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wが載置される載置部20をなすものであり、この載置部20を囲む段部8には、プラズマの状態を調整するためのフォーカスリング21が配置される。
【0015】
載置部20の上面には、絶縁膜に不図示のチャック電極を配置してなる静電チャック22が設けられており、直流電源(不図示)からの電力の給断によりウエハWの吸着、解除を切り替えることができる。さらに静電チャック22には図示しない複数の吐出口が穿設されており、これらの吐出口から静電チャック22とウエハWとの間の伝熱を媒体するHeガスなどの熱媒体ガスが供給される。
【0016】
載置台2の内部には冷媒通流路231が形成されており、冷媒供給路232→冷媒通流路231→冷媒排出路233の経路で冷媒が通流するように構成される。冷媒排出路233から排出された冷媒は、チラーにより所定の温度設定値まで冷却され、冷媒供給路232から冷媒通流路231に戻ってくる。このため載置台2は、冷媒により予め設定された基準温度に維持されることになり、ウエハWはプラズマからの入熱と熱媒体ガスを介して載置台2へ放熱される熱とのバランスにより温度が決まる。
【0017】
さらに載置台2はプラズマエッチング装置の下部電極(第1の電極)として兼用されており、載置台2には、プラズマ生成用の第1の高周波電源部31、及びプラズマ中のイオンを引き込むためのバイアス電力を印加するための第2の高周波電源部32が、各々整合回路310、320を介して接続されている。
また、載置台2の内部には図示しない昇降ピンが設けられており、当該装置の外に設けられた図示しない搬送アームと載置台2の上面(静電チャック21)との間にてウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0018】
真空容器1の天井部には、絶縁部材11を介して、載置部20に対向するように、処理ガスを真空容器1内に供給するためのガス供給部であるシャワーヘッド4が設けられている。このシャワーヘッド4の下面には多数の吐出口41が穿設されており、真空容器1の外に設けられたガス供給系42よりガス供給路43及びバッファ室44並びに、当該吐出口41を介して所定の処理ガスが真空容器1内に供給される。
【0019】
このガスシャワーヘッド4は接地されており、その最下部には、下部電極である載置台2との間で平行平板を形成し、処理ガスをプラズマ化するための上部電極(第2の電極)40が設けられている。上部電極40は、プラズマが生成する空間に露出しており、プラズマとの接触により使用時間の経過に伴い消耗するため、取り替え自在な電極板として構成されている。前記吐出口41はこの上部電極40の下面側に、真空容器1内へ向けて開口している。
【0020】
シャワーヘッド4の上面には、上部電極40の温度を調整する温度調整機構47が設けられている。この温度調整機構47は、ペルチェ素子や冷却媒体を通流させる冷却流路を含むクーラー45と発熱抵抗体などからなる加熱部であるヒーター46とから構成され、両者の複合作用により、プロセス状況やチャンバー状況(真空容器1に設けられた各機器の状況)によって、上部電極40を所望の温度に調整する機能を有している。
【0021】
真空容器1の側壁にはシャッター12により開閉可能なウエハWの搬入出口13が設けられている。真空容器1の底部には排気ポート14が設けられており、この排気ポート14にはバルブなどの圧力調整部15が介設された排気管16を介して真空ポンプ17が接続されている。
【0022】
以上に説明したプラズマエッチング装置は、図1、図2に示すように制御部5と接続されている。図2のブロック図に示すように、制御部5は例えばCPU(Central Processing Unit)51とプログラム格納部52とを備えたコンピュータからなり、ガス供給系42や高周波電源部31、32、圧力調整部15などと接続されている。
【0023】
そして、前記プログラム格納部52には、本プラズマエッチング装置の作用、即ち真空容器1にウエハWを搬入して、真空排気し、真空容器1内に供給された処理ガスをプラズマ化してウエハWのエッチングを行った後、ウエハWを搬出するまでの制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0024】
上述の構成を備えるプラズマエッチング装置では、背景技術にて説明したように、稼動につれて処理環境が変化する現象が見られることがある。特に本発明者らは、運転時間の経過につれてウエハWの表面に形成された膜をエッチングする速度が徐々に低下する現象が見られることを把握している。
【0025】
このような現象が発生する原因を追求したところ、真空容器1内のプラズマに晒されることによって上部電極40の消耗が進行すると、当該上部電極40の温度が上昇し、この温度上昇がプラズマエッチングの速度を低下させることを発明者らは見出した。
【0026】
上部電極40の消耗は、その熱容量の低下を引き起こし、この結果、温度設定値を一定にして温度調整機構47による温度調整を行っていても上部電極40の温度が上昇するものと考えられる。そして、上部電極40の温度の上昇に伴って、デポ成分が上部電極40からウエハWへ移動し、エッチングに寄与する活性種のデポ性が上がりエッチング速度の低下につながるのではないかと推定している。
【0027】
このような現象の発生を改善するため、本例のプラズマエッチング装置は、上部電極40の使用時間の経過に伴い、温度調整機構47を介して上部電極40の温度上昇を抑え、エッチング速度の低下を防止する機能を備えている。特に、上部電極40は、高周波回路の一部を構成しており、熱電対などの簡便な手法で温度を測定することが難しい部材であるため、実際の温度測定を行わずに温度制御が行われる。具体的には温度調整機構47の調整量、例えばヒーター46への給電量やクーラー45への冷却媒体の流量などと上部電極40の温度との関係を予め把握しておき、この関係と設定温度に基づいて温度調整機構47が制御される。以下、その詳細について説明する。
【0028】
本実施の形態のプラズマ処理装置は制御部5を備えている。制御部5は、CPU51、プログラム53を格納するプログラム格納部52、パラメータ(処理パラメータ)の補正値を設定するための補正値設定部54と、パラメータ補正値テーブル551を記憶する記憶部55と、処理レシピを記憶するレシピ記憶部56と、ワークメモリ57とを備えている。
【0029】
プログラム53は、レシピ記憶部56から処理レシピを読み出して、レシピの内容を実行するように装置制御するためのプログラム、及び処理レシピに書き込まれているパラメータの値をパラメータ補正値テーブル551を参照して補正するためのプログラムなどを含んでおり、これらのプログラムを総称している。
【0030】
補正値設定部54は、タッチパネル式の液晶ディスプレイなどにより構成される入力画面541を介し、オペレータによるパラメータの補正値の入力を受け付ける。パラメータとしては後述のように例えば上部電極40の温度、高周波電力、処理圧力、処理時間などが挙げられる。図2中に入力画面541の構成例を示すように、本例の補正値設定部54に対しては、温度補正を行う補正間隔、及びその補正間隔の経過毎に補正される上部電極40の温度補正値を入力できる。補正値設定部54にて入力された補正間隔や温度補正値は、書き換え可能なメモリなどに記憶される。
【0031】
設定画面541に入力する補正間隔及び温度補正値は、例えば後述の実験結果に示すように、新しい上部電極40の使用を開始してから、上部電極40への高周波電力の印加時間と、上部電極40の温度やエッチング速度の変化との関係を予備実験などによって予め把握しておくことなどにより決定することができる。
【0032】
レシピ記憶部56は、処理対象のウエハWの表面に形成された膜をエッチングする際に実行される処理シーケンスをパラメータと対応付けて作成した処理レシピを記憶している。例えば、本例のプラズマエッチング装置は、処理ガスや圧力などの処理パラメータを切り替えて、ウエハWに形成された多層膜を連続してエッチングすることができるようになっており、処理レシピには、こうした連続エッチングを実行するためのステップが記憶されている。
【0033】
図3は、各レシピに設定された処理パラメータの設定例を模式的に示しており、上部電極40の温度や処理時間などが処理パラメータの設定項目となっている。そして、1つのレシピ内にて、例えばエッチング対象である多層膜の各膜に対応するステップごとにこれらの処理パラメータが設定され、これにより、種類の異なる膜に対して連続してエッチングを行うことが可能となる。
【0034】
パラメータ補正値テーブル551は、各レシピの処理パラメータのうち、例えば時間の経過と共に、その設定値を変更する必要がある設定項目について、図3に記載された設定値を補正するための補正値と補正を行うタイミングとを対応付けたテーブルとして作成されている。図4は、予め設定した開始時点から、本プラズマエッチング装置にて処理されたウエハWの積算のロット数がNロット目のときにおいて、当該ロット内のウエハの枚数とパラメータの補正値とを対応付けたパラメータ補正値テーブル551の一例を示している。なお、図4に示したパラメータ補正値テーブル551に記載された補正値は、説明のための便宜上の数値に過ぎない。
【0035】
このパラメータ補正値テーブル551は、補正値設定部54により図3に示した設定項目に対して、ステップやウエハWを指定してレシピの処理パラメータの補正値を入力することにより作成される。このようにパラメータ値を補正することにより例えば、当ロットの1枚目のウエハWに対しては、ステップS4、S5ではレシピに設定されているプロセス時間よりも3秒長く処理が行われ、2枚目のウエハWに対しては同レシピの設定値よりも2秒長く処理が行われることがわかる。
【0036】
さらにこのパラメータ補正値テーブル551には、上部電極40について既述の補正間隔や温度補正値に基づいて算出される補正温度を、当該処理パラメータ(上部電極40の温度)の補正値として設定することができる。本例では、パラメータ補正値テーブル551内には、上部電極40の温度補正値が設定されておらず、以下に説明する仕組みにより、当該N番目のロットの実行時に温度補正値が設定される。
【0037】
パラメータ補正値テーブル551に設定される、上部電極40の温度補正値の算出は例えば次のようにして行われる。制御部5は、上部電極40として新品なものの使用を開始した時点を計時開始点として、プラズマ生成用の第1の高周波電源部31から高周波電力が印加された時間を計時して積算する不図示の計時部を備えている。さらに制御部5は、前記補正間隔を加算し、この加算値と、計時部にて計時された高周波電力の印加時間の積算値(プラズマ処理の積算時間)と比較する機能を備えており、印加時間の積算が補正間隔の加算値を上回る度に、補正間隔の加算が実行されるようになっている。例えば、上部電極40の温度の補正間隔をI[秒]、高周波電力の印加時間の積算値T[秒]とすると、「nI>T(n=1,2,3,…)」の期間中は、制御部5はその状態で待機し、「T>nI」となったところで「n=n+1」に書き換えて次の比較を行う動作を繰り返す。
【0038】
そして制御部5は、「T>nI」となるたびに温度補正値を加算して、これを上部電極40の温度に関する処理パラメータの補正値としてパラメータ補正値テーブル551に書き込む機能を備えている。ここで温度補正値を「−1.5℃」、n=1のときの補正値を0℃とすれば、高周波電力の印加時間が「0≦T<I」の期間中に処理されるロットの補正値は0℃、「I≦T<2I」の期間中に処理されるロットの補正値は−1.5℃というように、高周波電力の印加時間の増加と共に補正値が順次加算されていくことになる。
【0039】
さらに制御部5は、このようにして生成したNロット目の補正値テーブルの各補正値をロットにて実施されるレシピの処理パラメータの各値に加算して実行レシピを生成する機能も備えている。
【0040】
プログラム53において、温度調整機構47を制御するためのプログラムについて述べておく。このプログラムは、レシピ格納部56から読み出したレシピに含まれているパラメータの値に、パラメータ補正値テーブル551に書き込まれた補正値を加算し、補正後のパラメータの値を例えばワークメモリ57に書き込む。レシピの実行については、ワークメモリ57内の補正後のパラメータ値を読み出して装置の各部が制御されることになる。そしてパラメータの値として上部電極40の設定温度も含まれ、プログラムは既述のようにして補正後の設定温度に基づいて、温度調整機構47を制御する制御信号を出力することになる。上部電極40の温度制御は、温度検出値をフィードバックしていないので、補正値設定部54にて設定された設定温度の補正値は、例えばヒーター46への給電量の補正給電量を温度換算した値であるということができる。なお、温度調整機構47における調整熱量と設定温度との関係は図示しない記憶部内にデータとして記憶されており、このデータと設定温度とに基づいて調整熱量を決定する、例えばヒーター46の給電量、クーラー45における冷却媒体の流量あるいはクーラー45がペルチェ素子で構成されている場合には給電量などが決定されることになる。
【0041】
ここで本実施の形態における各部と特許請求の範囲の構成要素との対応について述べておくと、レシピ格納部56内のレシピが上部電極40の温度を設定することから温度設定部に相当する。また補正値設定部54及びパラメータ補正テーブル551は設定温度補正部に相当し、プログラムは、設定温度に基づいて温度調整機構47を制御するための制御信号を出力する温度制御部に相当する。
【0042】
以下、上述の構成を備えたプラズマエッチング装置の作用について、図5に示すフロー図を参照しながら説明する。まず、実行するN番目のロットについて、高周波電力の印加時間の積算値と、補正間隔の加算値との比較を行い、各補正間隔あたりの単位温度補正値を加算して温度補正値を求める(ステップK1)。
【0043】
次いで処理パラメータの補正値テーブルに、上部電極40の温度補正値を書き込み(ステップK2)、レシピ記憶部56のレシピからヒーター46の温度設定値を読み出し、補正値テーブルの温度補正値により補正して、補正された温度設定値を実行レシピとしてワークメモリ57に書き込む(ステップK3)。
【0044】
ここで図4に示すように、ヒーター46の温度補正を行うときは、同一ロット内のすべてのウエハWについて、共通の温度補正を行うことにより、プラズマの生成状態の急激な変化を抑え、同一ロット内のウエハW間の処理結果に大きな違いが生じないようにしてもよい。
また、当該レシピ内の他の処理パラメータについても補正値パラメータの補正値に基づく補正が行われ、実行レシピとしてワークメモリ57に書き込まれる。
【0045】
一方、真空容器1には、外部の真空搬送室からウエハWを保持した不図示の搬送アームが進入し、図示しない昇降ピンを介してウエハWが載置台2に受け渡され、静電チャック22により吸着保持される。そして、載置台2(静電チャック21)とウエハWとの隙間には、熱媒体ガスが供給される。
【0046】
このウエハWの表面には、反射防止膜や有機膜、低誘電率膜などが積層されており、その最上面には、レジスト膜及びチタンナイトライド膜のパターンマスクが形成されている。
【0047】
しかる後、ワークメモリ57から実行レシピを読み出し、第1、第2の高周波電源部31、32からの電力供給、処理ガス供給系42からの処理ガスの供給、真空ポンプ17による真空排気や圧力調整部15による圧力調整が行われ、下部電極(載置台2)と上部電極40との間の処理雰囲気にプラズマが生成される。
【0048】
そしてバイアス電力によりプラズマ中のイオンがウエハWに引き込まれながら、ウエハWの表面の薄膜のエッチングが進行する。しかる後、実行レシピの処理パラメータに基づいて、処理ガスやその供給量、高周波電力やプロセス圧力を切り替えて、順次、下層側の膜のエッチングを実行する。
【0049】
このとき、上部電極40に設けられているヒーター46の出力についても、ワークメモリ57内の実行レシピから読み出された補正後の温度設定値に基づいて、温度調整機構47による温度調整が行われる(ステップK4)。即ち、上部電極40の消耗に伴う温度上昇を相殺するように例えば当該ヒーター46の発熱量を低減する調節が行われる。
【0050】
ここで実施の形態の理解を容易にするために、仮に各プロセスレシピにおいて上部電極40の設定温度が同一であるとしたとすると、図6に実線で示すようにヒーター46の温度設定値はステップ的に下げられて行き、上部電極40の実際の温度はほぼ一定の範囲内の温度に維持される。これにより、図7に実線で示すようにウエハW表面に形成された各種の膜のエッチング速度は、温度設定値のステップ変化に合わせて鋸歯状に一定の範囲内で変化することとなる。ここで、図7にはフォトレジスト(PR)からなる単一の膜をエッチングしたときのエッチング速度の様子を模式的に示してある。また、図6、図7に示した破線はヒーター46の温度設定値を補正しなかった場合の当該温度設定値、及びPRのエッチング速度を示している。従って、各レシピの間であるいはレシピ内の各ステップの間で上部電極40の温度設定値が異なっていた場合においても、適切な状態でエッチングされるはずが上部電極40の消耗による温度上昇により適切性が欠ける現象が、温度設定値の補正を行うことで抑制されることになる。
【0051】
このようにして、ウエハWの表面に形成された処理対象の積層膜がエッチングされたら、処理ガスや熱媒体ガスの供給を停止し、真空容器1内の真空状態やウエハWの吸着保持を解除して、搬入動作と逆の動作で真空容器1からウエハWを搬出する(エンド)。以上に説明した動作を、真空容器1内に搬入されるウエハWに対して繰り返すことにより、複数のウエハWへのエッチングを行うことができる。
【0052】
本実施の形態のプラズマエッチング装置によれば以下の効果がある。ウエハWの載置台2を兼用する下部電極(第1の電極)とこれに対向する上部電極40(第2の電極)とを設けた平行平板型(容量結合型)のプラズマエッチング装置において、上部電極40の使用によりその厚さが小さくなることで当該上部電極40の温度が上昇する現象に着目し、新たな上部電極40の使用を開始した後、上部電極40の使用時間の経過に伴い、上部電極40の設定温度を低くするように補正している。このため上部電極40の温度が消耗により高くなろうとする現象が概略的な言い方をすれば相殺され、上部電極40の使用に伴う当該上部電極40の温度変化が抑えられ、上部電極40の温度変化に起因するウエハW間の処理のばらつきを低減できる。
【0053】
上述の実施の形態では新たな上部電極40の使用を開始した後におけるプラズマ処理の積算時間に応じて上部電極40の設定温度を補正する例を示したが、時間の経過を計る手法はこれに限られない。例えば新たな上部電極40の使用開始後のウエハWの処理枚数の増加に応じて設定温度を補正してもよい。
【0054】
[第1の実施の形態における評価試験]
図1に示すプラズマエッチング装置と同様の装置を用い、上部電極40の温度補正を行わずに試験運転を行った。この試験運転は、試験用のウエハWを真空容器1に実際の運用と同様の間隔で搬入すると共に所定の試験用のプロセス環境を形成し、表面にPR膜が形成された試験用のウエハWに対する処理を所定の枚数分だけ行った。そしてこの試験用ウエハ上のPR膜について前記試験用のプロセス前後の膜厚を測定し、エッチング速度を求めた。
【0055】
試験用のプロセスの条件については、処理ガスとしてフルオロカーボンガス、アルゴンガス、酸素ガスを用い、真空容器1内の圧力を30[mTorr](3.99[Pa])に設定し、プラズマ生成用の第1の高周波電電源部31及びバイアス用の高周波電源部32から供給される電力を夫々12.88MHz、4500W及び40MHz、1200Wに設定し、プロセス時間を600秒間に設定した。
【0056】
各タイミングのエッチング速度の測定値をプロットし、それらプロット群に基づいてPR膜のエッチング速度の変化の傾向を示す直線を引いたところ、図8に示す結果が得られた。図8中A〜Dの符号を付した試験結果は、試験を行った真空容器1が互いに異なり、また試験開始のタイミングも異なっている。また各真空容器1は、この試験を行うまでに別のランニング試験を行っており、真空容器1ごとにランニング試験の履歴が異なることから、直線の傾きや始点が異なっているが、A〜Dのいずれの実験結果についても時間の経過と共にエッチング速度が低下する傾向があることを確認できた。
【0057】
この結果に基づいてフォーカスリング21の磨耗なども含めて、PR膜のエッチング速度の経時変化の寄与度を解析したところ、上部電極40の温度の寄与度がかなり大きいことが判明した。
【0058】
また同じ真空容器1で、新品の上部電極40と、実際の運用に使用して消耗した上部電極40とを付け替え、これら上部電極40ごとに5枚のウエハWに対して処理を行った。上部電極40の中央部に実験用の温度計を設けてその温度をモニターしたところ、図9に示す結果が得られた。
【0059】
図9に示した実験結果によれば、ウエハWに対するプラズマエッチング処理を開始すると、上部電極40の温度が上昇し、処理を終えるとその温度が低下する。この点については、上部電極40が新品の場合(図9に破線で示した)及び上部電極40が使用品である場合(同図に実線で示した)で共通であった。
【0060】
一方、プラズマエッチング処理中に上部電極40が到達する温度、及び処理後の温度はいずれも上部電極40が使用品である場合の方が高くなることを確認できた。この実験結果から、PR膜に対してエッチング速度が低下する現象(図8)には、上部電極40(上部電極40)の消耗に伴う当該上部電極40の温度上昇が影響していることがわかる。
【0061】
そこで、新品の上部電極40を使用し、上部電極40を加熱するヒーター46の温度設定値を変更して図9の場合と同様の実験を行った。その結果、図10に示すようにヒーター46の温度設定値を各々150℃(破線で示してある)、180℃(実線で示してある)にすると、プラズマエッチング時の上部電極40の温度についても、ヒーター46の温度設定値とほぼ同様の温度差が発生することが分かった。
【0062】
これら図8〜図10に示した実験結果により、上部電極40に対する高周波電力の印加時間が長くなるに連れ、ヒーター46の温度設定値を下げていくと、上部電極40の消耗に伴う温度上昇が相殺され、エッチング速度の低下を抑制できることを確認できた。
【0063】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態は、既述のヒーター46の温度設定値(ヒーターへの供給電力値)の補正に限らず、プラズマエッチング装置のレシピを構成する処理パラメータの補正をいかにして行うかという観点から検討した技術である。先ず、図11を参照しながら、ウエハに対する処理結果の変動について模式的に説明しておく。
【0064】
レジストマスクが形成されたウエハWの被エッチング膜をエッチングした場合におけるエッチング後の線幅に着目したとき、例えばT1の時点にてプラズマエッチング装置をクリーニングしてからの使用時間(プロセス時間)の経過につれて図11(a)のようにエッチング後の線幅がCD1からCD2へと太くなる傾向が見られることがある。
【0065】
図11(a)に示したクリーニングの直後の時点T1において実行されるプラズマエッチング処理をさらに詳しく見ると、同一のロット内でもウエハWの処理枚数の増加と共に、図11(b)に示すように線幅が徐々に太くなり、やがて線幅がCD3の太さで飽和する傾向が見られる。
【0066】
このように、プラズマエッチング装置の使用時間に依存する、いわばロット間の線幅の変化(図11(a))と、同一のロット内のウエハW間の線幅の変化(図11(b))とがある場合に、クリーニングを実施してから時間T2が経過した時点におけるエッチング後の線幅の変化を図11(c)に示す。この場合には、当該ロット開始時の線幅はCD2であり、この線幅が徐々に太くなってやがて「CD2+(CD3−CD1)」の線幅にて飽和する。
【0067】
ここで図11(a)〜図11(c)に示した例は、第2の実施の形態に係わる技術の背景の理解を容易にするために模式的に表現されたものであり、実際の特性に沿って説明したものではない。但し、このようにプラズマエッチング装置の使用時間の経過に従い、ロット間で処理結果が変化し、各ロット内のウエハW間で処理結果が変化するといった時間スケールの異なる2種類の変化が存在することは、エッチングの線幅に限らず、エッチング速度など他の制御項目においても分かっている。
【0068】
そこでロット間及び同一ロット内のウエハW間で処理結果を揃える(ばらつきを抑える)ための技術を図12のシステムを例にとって説明する。図12のプラズマ処理装置は、ローダーモジュール102内に設けられた搬送アーム103により、載置台101上のFOUP100からウエハWを取り出して、ロードロックモジュール104、真空搬送室105を介して、当該真空搬送室105に接続された各プラズマエッチングユニット111〜114にウエハWを搬送して処理を行う、マルチチャンバ型のプラズマエッチング装置の例を示している。
【0069】
各プラズマエッチングユニット111〜114は、図1に示した第1の実施の形態と同様の平行平板型のプラズマエッチングユニットとして構成されており、各プラズマエッチングユニット111〜114で独立してウエハWのエッチングを行うことができる。図12示した106は、真空搬送室105内に設けられた搬送アームである。
【0070】
このような構成を備えたマルチチャンバ型のプラズマエッチング装置において、FOUP100から取り出された1ロット分のウエハWが2つのプラズマエッチングユニット111、112に搬入され、並行してプラズマエッチングが行われる場合について説明する。例えばFOUP100には、25枚のウエハWを1枚ずつ保持することが可能な25個のスロットが形成されており、これらのスロットには上から順番に1番〜25番までのスロット番号が付されているものとする。
【0071】
プラズマエッチングユニット111、112では、並列してエッチング処理が行われるので、プラズマエッチングユニット111には「1番、3番、5番、…」の奇数番号のスロットのウエハWが搬入され、プラズマエッチングユニット112には「2番、4番、6番、…」の偶数番号のスロットのウエハWが搬入される。
【0072】
図13は、このような処理がおこなわれるプラズマエッチング装置の電気的構成を示している。本図では、第1の実施の形態に係わるプラズマエッチング装置と共通の構成要素には、図2に示した符と同じ符号を付している。第2の実施の形態に係わるプラズマエッチング装置では、記憶部55に、複数のロット間のパラメータを補正するパラメータ補正値テーブル552と、同一ロット内のウエハW間のパラメータを補正するパラメータ補正値テーブル551との2種類の補正値テーブル551、552を備えている点が第1の実施の形態と異なる。
【0073】
これらの補正値テーブル551、552のうち、同一ロット内のパラメータを補正する補正値テーブル551では、第1の実施の形態の図4に示した補正値テーブルと同様に、同一のロット内の1枚目、2枚目、…のウエハWに対する処理パラメータの補正値が記憶されている。但し、本例ではロット間で共通の補正値を採用する点が第1の実施の形態と異なっている。
【0074】
ここでロット内の補正値テーブル551は、プラズマエッチングユニット111、112の各々に設定されている。この結果、FOUP100の「1番、3番、5番…」の奇数番号のスロットのウエハWに対して、プラズマエッチングユニット111の補正値テーブル551の「1枚目、2枚目、3枚目、…」の補正値が使用される。また、FOUP100の「2番、4番、6番…」の偶数番号のスロットのウエハWに対しては、プラズマエッチングユニット112の補正値テーブル551の「1枚目、2枚目、3枚目、…」の補正値が使用される。
【0075】
ここで、1ロットに25枚のウエハWが含まれている場合には、次のロットではプラズマエッチングユニット112に奇数番号のスロットのウエハWが搬入され、プラズマエッチングユニット111に偶数番号のスロットのウエハWが搬入されることになる。これに合わせて、次のFOUP100における奇数番号のスロットのウエハWを処理する際には、プラズマエッチングユニット112の補正値テーブル551が用いられ、偶数番号のスロットのウエハWを処理する際には、プラズマエッチングユニット111の補正値テーブル551が用いられることになる。
【0076】
一方、ロット間の補正値テーブル552は、図14に示すように例えばクリーニング実施後に、始めに処理されるウエハWを1枚目として、複数のロットを跨がった積算のウエハW処理枚数に対する補正値が設定されている。例えば図14に示した例では、各プラズマエッチングユニット111、112搬入される積算のウエハW枚数、例えば100枚毎に各処理パラメータの補正値が設定されている。当該ロット間の補正値テーブル552についても、プラズマエッチングユニット111、112毎に補正値が設定されている。
【0077】
このように、制御部5はプログラム格納部52内のレシピ補正用プログラム53の設定に基づいて、レシピ記憶部56内の選択されたレシピの処理パラメータに対して、ロット内の補正値テーブル551、ロット間の補正値テーブル552の各補正値を加算する。こうしてプラズマエッチングユニット111、112毎の実行レシピを生成し、ワークメモリ57に書き込む。
【0078】
各プラズマエッチングユニット111、112は、実行レシピから読み出された処理パラメータに基づいてプラズマエッチング処理を実行する。この実行はプログラム格納部52内のプロセス用プログラム53aにより行われる。そして、ロットが切り替わるたびに新たな実行レシピを生成することにより、図11(a)〜図11(c)を用いて説明したロット間及びロット内のウエハW間のばらつきを抑え、処理結果を揃えることができる。
【0079】
ここで図4や図14に示した補正値テーブル551、552では、ウエハW枚数を基準に補正値を切り替える例を示したが、他の時間基準に基づいて補正値を切り替えてもよいことは勿論である。例えば、ロット間の補正値テーブル551において、処理を行った積算のロット数を基準に補正値を切り替えてもよいし、高周波電力の印加時間等、プラズマ処理を行った積算時間を基準に切り替えを行ってもよい。また、ロット内の補正テーブル552についても、処理を開始してからの経過時間や、高周波電力の印加時間の積算値などを基準に補正値の切り替えを行ってもよい。
【0080】
また第1の実施の形態においては上部電極40についてロット間の補正のみを行った例を示したが、これに第2の実施の形態を適用して同一ロット内で補正値を変化させる補正を加えてもよい。
【0081】
さらに、図12に示したマルチチャンバ型のプラズマエッチング装置において、例えばプラズマエッチングユニット111ではステップS1〜S3までのプラズマエッチングを行い、その後、ウエハWをプラズマエッチングユニット112に搬送してステップS4〜S6までのプラズマエッチングを行うといったように、異なるプラズマエッチングユニット111〜114で連続してエッチングを行う直列式のプラズマエッチング装置にも第2の実施の形態の技術は適用することができる。
【0082】
第2の実施の形態に係わる処理パラメータの補正方法は、プラズマエッチング装置やプラズマCVD装置、プラズマアッシング装置などの各種プラズマ処理装置に適用する場合に限られない。塗布、現像装置や縦型熱処理装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
W ウエハ
1 真空容器
15 圧力調整部
2 載置台
31 第1の高周波電源
32 第2の高周波電源
4 シャワーヘッド
40 上部電極
42 ガス供給系
47 温度調整機構
5 制御部
54 補正値設定部
55 補正値記憶部
56 レシピ記憶部
57 ワークメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に設けられた第1の電極を兼用する載置台に基板を載置し、前記第1の電極と第2の電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化し、得られたプラズマにより基板に対してプラズマ処理を行う平行平板型のプラズマ処理装置において、
前記第2の電極の温度を調整するための温度調整機構と、
プラズマ処理時における前記第2の電極の温度を設定する温度設定部と、
新たな第2の電極の使用を開始した後、使用時間の経過に伴い、当該第2の電極の設定温度を低くするように補正する設定温度補正部と、
前記第2の電極の設定温度に基づいて前記温度調整機構を制御するための制御信号を出力する温度制御部と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記設定温度補正部は、新たな第2の電極の使用を開始した後におけるプラズマ処理の積算時間または基板の処理枚数と、第2の電極の設定温度の補正値と、を対応付けた補正データを記憶する記憶部を備え、前記記憶部から前記プラズマ処理の積算時間または基板の処理枚数に応じた前記設定温度の補正値を読み出して、前記温度設定部にて設定された設定温度を補正するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記設定温度補正部は、新たな第2の電極の使用を開始した後におけるプラズマ処理の積算時間または基板の処理枚数と、第2の電極の設定温度の補正値と、を入力するための入力画面を備えていることを特徴する請求項3記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
真空容器内に設けられた第1の電極を兼用する載置台に基板を載置し、前記第1の電極と第2の電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化する平行平板型のプラズマ処理装置を用いて、基板に対してプラズマ処理を行う方法おいて、
プラズマ処理時における前記第2の電極の温度を設定する工程と、
新たな第2の電極の使用を開始した後、使用時間の経過に伴い、前記工程で設定された第2の電極の設定温度を低くするように補正する工程と、
この工程で補正された第2の電極の設定温度に基づいて、第2の電極の温度を調整するための温度調整機構を制御する工程と、を含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
第2の電極の設定温度を補正する工程は、新たな第2の電極の使用を開始した後におけるプラズマ処理の積算時間または基板の処理枚数と、第2の電極の設定温度の補正値と、を対応付けた補正データに基づいて行われることを特徴とする請求項4記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
真空容器内に設けられた第1の電極を兼用する載置台に基板を載置し、前記第1の電極と第2の電極との間に高周波電力を印加して処理ガスをプラズマ化し、得られたプラズマにより基板に対してプラズマ処理を行う平行平板型のプラズマ処理装置に用いられるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項4または5に記載されたプラズマ処理方法を実行するようにステップ群が設けられていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−216639(P2012−216639A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80133(P2011−80133)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】