説明

プラズマ溶融処理装置

【課題】有害物質を含む少量の廃棄物を安全かつ確実に溶融無害化する装置において、溶融助剤を必要とせず、溶融部の冷却が不要で、取り扱い易く、さらに、例えば積載重量2トンのトラックで移動でき、廃棄物発生箇所において、車載状態で溶融処理が可能な溶融処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマト−チ17によって発生したア−クプラズマ15の直下に廃棄物を導くための廃棄物供給ガイド13、廃棄物の溶融状況に合わせて廃棄物の供給量を調整できる廃棄物供給装置11、廃棄物が溶融した後の溶湯を貯留せず、溶融後直ちに排出される構造を有する溶融部16、溶融部16から排出され固化したスラグを貯留する容器19が少なくとも配置されたことを特徴とする溶融処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストなどの有害廃棄物を、廃棄物が発生する場所で無害化するためのプラズマ溶融処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、都市ゴミ、下水汚泥、またはその他の廃棄物を焼却炉で焼却することによって発生する焼却灰は、多くの場合は、埋め立て処理されている。また、人体に有害なアスベストを含む廃棄物についても、現状では、そのほとんどが埋め立て処理されている。しかし、これらの廃棄物の埋立地の確保は年々困難になっているため、これらの埋め立てられる廃棄物の容積を小さくする方法、即ち、減容化処理が要望されている。また、焼却灰を処理することなくそのままの状態で埋立地に埋め立てる場合には、焼却灰自体には、様々の重金属等の有害物質が含まれているため、焼却灰から有害物質が雨水、地下水等に溶出し、二次公害を引き起こす原因になっている。また、アスベストについても、埋め立て処理では、アスベストそのものの有害性は何ら変わることはない。そこで、これらの有害廃棄物の無害化処理及至は減容化処理が要求されている。
【0003】
そこで、焼却灰を溶融炉でプラズマにより燃焼させて溶融し、減容化処理及至は無害化処理する焼却灰の処理方法が提案されている。
例えば、焼却灰などをプラズマ溶融炉内で溶融処理する方法において、安定した溶融を行うためにプラズマトーチを2本用いる方法(特許文献1〜2参照)、溶融炉内における圧力のシール構造を改善する方法(特許文献3参照)、溶融炉の設置スペースを小型化するために、円形の溶融炉を用いる方法(特許文献4参照)などが提案されている。
しかし、特許文献1〜4の提案は、いずれも大型の溶融処理装置であり、溶融炉内において高温の溶湯を貯留して、プラズマから得られる熱とともに溶湯からの熱を利用しながら溶融処理を行うものである。このため、高温の溶湯を貯留するために、溶融炉における耐火材を冷却するための大型の冷却装置が必要であり、また、溶湯自体にプラズマ電流を通電するタイプでは、そのための大型の電源を設ける必要がある。このため、小規模分散的に発生する廃棄物に対する、現地での溶融処理装置として用いることはできない。
【0004】
一方、廃棄物が発生する現地での溶融処理方法として、例えば、土壌を掘削して、その中に鋼製とセラミック製の容器を入れ、この中でプラズマ加熱を用いて溶融処理する方法(特許文献5参照)、あるいは電極を挿入して通電加熱する抵抗加熱を用いて溶融処理する方法(非特許文献1参照)が開発されている。
しかし、これらは、いずれも汚染土壌を対象としており、現地処理施設の設置から処理が終えるまでに数ヶ月の行程と大規模な経費をかけて行う溶融処理方法である。このため、小規模分散的に発生する廃棄物に対する処理方法としては適さない。
【0005】
また、移動式の小型の廃棄物処理装置を用いる方法も提案されており、例えば、車載式の焼却炉(特許文献6〜10参照)、移動可能な廃棄物の破砕装置(特許文献11〜13参照)などが提案されている。
しかし、特許文献6〜13の提案は、焼却炉などの処理装置を移動可能としたものであって、アスベストなどの有害物質を無害化できるものではない。
【0006】
このため、現状では、市街地において小規模分散的に発生するアスベストなどの有害廃棄物に対する処理技術はなく、現地で安価に処理する技術が望まれている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−336826公報
【特許文献2】特開2004−257631公報
【特許文献3】特開2004−278860公報
【特許文献4】特開平7−243623公報
【特許文献5】特表2001−502020号公報
【特許文献6】特開平10−122532号公報
【特許文献7】特開平7−198119号公報
【特許文献8】特開平5−240417号公報
【特許文献9】登録実用新案第3036799号公報
【特許文献10】登録実用新案第3002971号公報
【特許文献11】特開2002−18851号公報
【特許文献12】特開平10−137624号公報
【特許文献13】特開平9−192528号公報
【非特許文献11】安福、寺田、木川田、「ジオメルト工法によるダイオキシン類汚染土壌の無害化」、日本機械学会誌、vol.107、No.1023、pp.8〜12、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の廃棄物処理用のプラズマ溶融処理装置は、溶融物を貯留するようになっていたため、溶融炉を冷却するための大型の冷却装置を備える必要があり、設備の大型化により可搬性が損なわれる欠点であった。また、融点の高い廃棄物を溶融処理するためには、その溶融温度を低下させるために、廃棄物ではない溶融助剤を添加する必要があり、結果的に廃棄物発生量を増加させてしまう欠点があった。さらに、溶融物が必然的に溶融炉と長時間にわたり接触する構造となるため、溶融炉が溶融物により侵食され、定期的に大規模な溶融炉のメンテナンスが必要となり、処理コストを増加させる要因となっていた。
【0009】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、溶融部の大規模な冷却を必要とせず、融点の高い廃棄物に対しても溶融助剤を必要としないで、連続的に溶融処理でき、また、定期的なメンテナンスを極力必要としない、小型軽量化が可能となる安価な廃棄物溶融処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1>プラズマを発生可能なプラズマ発生装置と、該プラズマを対象物に照射させることにより該対象物を溶融して溶融物とする溶融部とを備えたプラズマ溶融処理装置において、前記溶融部は、溶融後の前記溶融物を貯留することなく、直ちに排出可能に構成されていることを特徴とするプラズマ溶融処理装置である。溶融後の溶融物を貯留することなく、直ちに排出可能に構成されていることで、融点の高い廃棄物の溶融処理においても溶融助剤を必要とせず、廃棄物の量を無用に増加することなく溶融処理できる。また、溶融物と長時間接することで生じる溶融部の腐食がなくなることで、溶融部のメンテナンスを極力低減できる。さらに、溶融部を冷却するための大型の冷却装置を備える必要がなくなるため、設備の小型化が可能となり、設備の可搬性が実現できるとともに、設備コストを低下できる。
<2>前記溶融部から排出された前記溶融物を冷却して処理物として貯留する回収部を備えている前記<1>に記載のプラズマ溶融処理装置である。該<2>に記載のプラズマ溶融処理装置においては、溶融処理物がガラス屑、または再生骨材として回収でき、処理物の回収と廃棄が容易となる、もしくは処理物の骨材としての再資源化が可能となる。
<3>前記溶融物は、気中を前記回収部まで落下して冷却されるように構成されている前記<2>に記載のプラズマ溶融処理装置である。該<3>に記載のプラズマ溶融処理装置においては、回収部の簡素化により設備を簡素化できるとともに、処理物を粒状として回収できることで、処理物の回収、廃棄、または再資源化に向けた取り扱いが容易となる。
<4>前記溶融部に前記対象物を順次供給する対象物供給装置を備えている前記<1>から<3>のいずれかに記載のプラズマ溶融処理装置である。該供給装置を備えていることで、該対象物の連続的な溶融処理が可能となる。
<5>車載されて移動可能に構成されている前記<1>から<4>のいずれかに記載のプラズマ溶融処理装置である。該プラズマ溶融処理装置が車載されて移動可能に構成されていることで、可搬による処理が可能となる。
<6>前記対象物が有害物質を含む廃棄物である前記<1>から<5>のいずれかに記載のプラズマ溶融処理装置である。該対象物が有害物質を含む廃棄物である場合は、該プラズマ溶融処理装置による無害化が可能となる。
<7>前記有害物質がアスベスト、ダイオキシン類、環境ホルモン及び重金属から選択される少なくとも1種である前記<1>から<6>のいずれかに記載のプラズマ溶融処理装置である。該有害物資がアスベストの場合、人体に有害なアスベストに含まれる針状物質を完全に消滅することができる。また、該有害物質がアスベストを含むスレート材などの廃棄物の場合、融点が高いために、従来のプラズマ溶融装置では安定した溶湯を貯留するために溶融助剤、すなわち融点降下材を多量に添加する必要があった。本発明のプラズマ溶融処理装置では、溶湯を貯留することなく溶融処理を行うので、従来必要であった溶融助剤は一切必要とせず、安定した溶融処理が可能となる。また、アスベストは、廃棄物として大量に発生する建材用途のみならず、少量ではあるものの多種多様な用途に用いられている。例えば、機材に使用されているアスベストの除去に伴い比較的少量のアスベスト廃棄物が発生し、さらには、アスベストを使用した機材の廃棄時においてもアスベスト廃棄物が発生する。これらのアスベスト廃棄物は、市街地において少量で分散的に発生するため、回収して中間処理施設、または埋設処分場に持ち込む処理方法では経済的に成り立たず、現状ではそのまま放置されている状況にある。このような、小規模分散的に発生するアスベスト廃棄物に対して、発生現位置において安価に溶融処理することが可能となり、中間処理施設または埋設処分地までの輸送時における事故による飛散リスクを完全に無くすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、溶湯を貯留させないことで融点の高い廃棄物に対しても溶融除剤を必要とせず溶融処理でき、さらに、溶湯が接する部分での冷却が不要、もしくは簡素化できることにより安全性、溶融システムの簡素化、処理システムのコンパクト化、システム全体の重量の軽量化が可能となることで、車載状態での溶融処理も可能となる、安価な廃棄物溶融処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0013】
(プラズマ溶融処理装置)
本発明のプラズマ溶融処理装置は、図1に示すように、少なくともプラズマ発生装置1、溶融対象物の供給装置2、溶融処理部3、溶融固化生成物回収部4、排ガス処理装置5から構成される。また、前記プラズマ発生装置は、図2に示すように、プラズマ発生用の電源6、プラズマガスを供給するためのガスボンベ7、プラズマトーチ10、前記プラズマトーチを冷却するための冷却水循環装置8、プラズマガス流量やプラズマ出力など制御する制御装置9から構成される。この内、前記供給装置、前記溶融処理部、前記プラズマトーチ、前記回収部、前記排ガス処理装置の構造を図3に示す。
【0014】
<供給装置>
前記供給装置11としては、溶融対象物が高温のプラズマ加熱源の直下に導かれるガイド13を有している限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、投入棒12を手動で操作する構造、または、加熱源の熱量に応じて供給速度を自動で制御する構造などが挙げられる。
【0015】
前記ガイド13は、管状構造であることが好ましく、また、メンテナンスが不要で耐久性のある材質が好ましい。
【0016】
前記供給ガイドの材質としては、加熱源からの輻射熱により構造的な影響を受けないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒鉛、金属、及びセラミックスなどが挙げられる。
前記金属としては、例えば、銅、ステンレス、炭素鋼、インコネル、及びニッケルなどが挙げられる。
前記セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ムライト、及び炭化珪素などが挙げられる。
これらの中でも、ステンレスが好ましい。
【0017】
−溶融対象物供給手段−
前記溶融対象物の供給方法としては、単純に投入棒12で押し込む方法以外に、スクリューフィーダー、バイブレーションフィーダーなどが挙げられる。
これらの中でも、投入棒12で自動的に押し込む方法が好ましい。
【0018】
−溶融対象物受け入れタンク−
前記供給装置に接続される溶融対象物受け入れタンク14としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、二重ダンパー方式により供給部と外部が直接接しない構造などが挙げられる。
【0019】
<プラズマ発生装置>
前記プラズマ発生装置は、アークプラズマ15を発生させる装置である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、直流放電を用いる方法が挙げられる。
【0020】
前記アークプラズマは、5,000〜10,000℃の超高温を有し、溶融対象物を極めて速く溶融できる。アークプラズマを採用することにより、ガイド13からアークプラズマ15の直下に供給された溶融対象物を数分で溶融することが可能となり、例えば、アスベストを含む廃棄物に対して、溶融物を貯留させないで溶融する場合に、20kg/時の処理速度を達成できる。
【0021】
前記アークプラズマは、プラズマトーチ17によって発生させることが多く、その電源は、主に直流で、一部交流も使用されている。該プラズマトーチは、(1)トーチから吹き出す非通電状態のプラズマ(プラズマジェット)を利用する非移行型、(2)被加熱物を一方の電極とし、トーチと被加熱物間に形成される通電状態のアークプラズマを利用する移行型の2種に大別される。これらの中でも、被加熱物を電極としないことで溶融処理部に通電用の電極を設ける必要がなく、溶融部の構造が簡易となる非移行型が好ましい。
【0022】
<溶融処理部>
前記溶融処理部3は、少なくとも非加熱物を溶融するための前記アークプラズマ15、溶融対象物を貯留しない構造を有する溶融部16から構成される。
【0023】
前記溶融部16は、溶融物を貯留しない構造である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、図4に示すように、傾斜を付けた板21を用いる方法が挙げられる。傾斜を付けた板を用いることで、被溶融物が溶融後直ちに溶融部から排出することができる。
【0024】
前記板21の傾斜角度は0度〜30度であることが好ましく、5度〜15度であることがより好ましい。
【0025】
前記板21は、例えば、図5に示すように、溶融物を回収部に導くための溝25、または穴を設けても良いし、被加熱物を確実にアークプラズマ26の直下に導くように堰27を設けても良い。
【0026】
前記板21は、溶融物の回収部に対して一定の高さ23を有することが好ましい。一定の高さ23を設けることで、溶融物が気中を落下する段階で冷却固化され、溶融固化物の回収が容易となる。
【0027】
前記板21の回収部に対する高さは20cm〜100cmであることが好ましく、30cm〜70cmであることがより好ましい。
【0028】
前記板21は、メンテナンスが不要で耐久性のある材質が好ましい。
【0029】
前記板21の材質としては、加熱源からの輻射熱により構造的な影響を受けないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、及びセラミックスなどの耐火物が挙げられる。
前記金属としては、例えば、銅、ステンレス、炭素鋼、インコネル、及びニッケルなどが挙げられる。これらは局所的な水冷構造24が設けられていても良いし、水冷構造がなくても良い。
前記耐火物としては、例えば、アルミナ、ムライト、及び炭化珪素などが挙げられる。
これらの中でも、アルミナ、ムライトなどの耐火物が好ましい。
【0030】
<回収部>
前記回収部19は、溶融固化物が回収できる構造である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、回収口を設けた箱型構造であることが好ましい。
【0031】
前記回収部19は、メンテナンスが不要で耐久性のある材質が好ましい。
【0032】
前記回収部19の材質としては、加熱源からの輻射熱により構造的な影響を受けないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、及びセラミックスなどの耐火物が挙げられる。
前記金属としては、例えば、銅、ステンレス、炭素鋼、インコネル、及びニッケルなどが挙げられる。
前記耐火物としては、例えば、アルミナ、ムライト、及び炭化珪素などが挙げられる。
これらの中でも、アルミナ、ムライトなどの耐火物が好ましい。
【0033】
−溶融固化生成物回収手段−
前記回収部における溶融固化生成物の回収手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば手動によりかき出す方法が挙げられる。
【0034】
<その他の装置>
−排ガス処理装置−
前記溶融処理部3には、その下流側に、該溶融処理部から排出されるガス中に含まれるダストを除去するフィルター20が配置されていることが好ましい。前記フィルターによって、被溶融物が溶融される際に蒸発した成分が凝縮することにより生成した微粒物を除去することができる。
また、被溶融物がビニールなどの可燃成分を含む場合においては、前記溶融処理部の下流側に、可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉、及びスクラバーが配置されていることが好ましい。前記燃焼炉及び前記スクラバーにより、前記排ガス中に含まれる可燃性ガスを完全に燃焼し、冷却して放出することができる。
【0035】
前記燃焼炉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バーナー式燃焼炉、電気ヒーター式燃焼炉などが挙げられる。
【0036】
前記スクラバーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溜水式、加圧水式、充填層式、回転式などのスクラバーが挙げられる。
【0037】
−ユーティリティー−
前記プラズマ溶融処理装置に付随する装置として、例えば、各機器用電源、計測制御用電源、などが挙げられる。これらの電源は処理現場において受電する、またはディーゼル発電機により供給される。
【0038】
−車載型装置−
本発明の溶融処理装置は、融点の高い廃棄物に対しても溶融助剤を必要とせず溶融処理でき、さらに、溶湯を貯留させないことで溶融処理システムの簡素化、処理システムのコンパクト化、安全性の向上、システム全体の重量の軽量化が可能となることで、例えば、2トントラックを用いた車載状態での溶融処理が可能となる。
【0039】
−不燃性有害廃棄物の溶融処理方法−
本発明のプラズマ溶融処理装置(図3)を車載型にした装置(図6)を用いた、不燃性有害廃棄物の溶融処理方法を説明する。
前記アークプラズマは、前記プラズマ発生装置1により生成され、アルゴンなどのプラズマガスを供給するためのガスボンベ29、プラズマ発生用電源30、前記プラズマトーチ32、プラズマトーチを冷却するための冷却水循環水装置31から構成される。前記プラズマトーチ32は、駆動機構を儲けても良いし、前記プラズマ溶融処理部33に固定されていても良い。
前記溶融処理部33は、前記廃棄物供給装置11、前記溶融部16、前記スラグ回収部19から構成される。前記溶融処理部33は不活性ガスで満たされており、窒素酸化物などの後処理が必要となる排ガスは発生しない。
前記廃棄物供給装置により供給された廃棄物は、前記供給ガイド13により前記溶融部16に導かれる。前記溶融部16に導かれた廃棄物はアークプラズマ15の照射により瞬時に溶融無害化される。溶融無害化された廃棄物は、前記溶融部16に留まることなくスラグ回収部19に排出される。前記溶融部16には前記供給ガイド13により導かれた新たな廃棄物が導入され、次々と効率よく溶融処理が行われる。上記の方法により、溶融処理されたアスベストなどの有害廃棄物は、完全に無害化された再資源化が可能となるスラグとして前記スラグ回収部19にて取り出すことができる。また、前記溶融処理部33から排出された排ガスは、微量のダストを除去するための前記フィルター34を介して、大気中に放出される。
【0040】
−アスベストの無害化−
前記車載型のプラズマ溶融処理装置を用いることで、有害物質を含む廃棄物の発生場所での溶融処理が可能となり、例えば、被溶融物として人体に有害なアスベストを含む廃棄物の場合、中間処理施設または埋設処分地までの輸送時における事故による飛散リスクを完全に無くすことができる。
【0041】
特別管理産業廃棄物に指定されているアスベスト廃棄物(図7)を前記プラズマ溶融処理装置を用いて溶融処理する実験を行い、溶融処理後に得られたスラグと溶融処理時に発生したダストの性状を調べた。
【0042】
走査型電子顕微鏡を用いて、スラグの表面を観察した結果を図8に示す。電子顕微鏡の写真からは、アスベスト特有の太さ0.02〜0.03マイクロメートル、長さ10〜30マイクロメートルの繊維構造は全く観察されない。
【0043】
さらに、マクロな視点からアスベストの有無を確認するために、X線回折分析装置を用いて、スラグ表面の結晶構造を解析した結果を図9に示す。アスベストの結晶を示唆するピーク(2θ=12°、24°、37°、60°)は全く観察されず、アスベストは完全に無害化された。
【0044】
同様に、走査型電子顕微鏡を用いて、フィルターから回収されたダストを観察した結果を図10に示す。
【0045】
ダストの電子顕微鏡の写真からは、フィルターの太い繊維は観察されるものの、スラグと同様、アスベスト特有の太さ0.02〜0.03マイクロメートル、長さ10〜30マイクロメートルの繊維構造は全く観察されない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のプラズマ溶融処理装置は、融点の高い廃棄物に対しても溶融助剤を必要とせず溶融処理でき、溶融物を貯留させないことで、メンテナンスの極小化、構造の簡素化が可能となり、溶融処理システムの簡素化、コンパクト化、安全性の向上、システム全体の重量の軽量化が可能となることで、車載状態での溶融処理が可能となり、少量で分散的に発生するアスベストなどの廃棄物に対する現地溶融無害化処理に好適に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、プラズマ溶融処理装置の構成図である。
【図2】図2は、アークプラズマ発生装置の構成図である。
【図3】図3は、プラズマ溶融処理装置の一例を示す構造図である。
【図4】図4は、溶融処理部の一例を示す構造図である。
【図5】図5は、溶融部の一例を示す構造図である。
【図6】図6は、車載型のプラズマ溶融処理装置の一例を示す概観図である。
【図7】図7は、アスベストを含むスレート材の概観写真である。
【図8】図8は、スラグの操作型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、スラグのX線回折分析結果である。
【図10】図10は、ダストの走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを発生可能なプラズマ発生装置と、該プラズマを対象物に照射させることにより該対象物を溶融して溶融物とする溶融部とを備えたプラズマ溶融装置において、
前記溶融部は、溶融後の前記溶融物を貯留することなく、直ちに排出可能に構成されていることを特徴とするプラズマ溶融処理装置。
【請求項2】
前記溶融部から排出された前記溶融物を冷却して処理物として貯留する回収部を備えている請求項1記載のプラズマ溶融処理装置。
【請求項3】
前記溶融物は、気中を前記回収部まで落下して冷却されるように構成されている請求項2記載のプラズマ溶融処理装置。
【請求項4】
前記溶融部に前記対象物を順次供給する対象物供給装置を備えている請求項1乃至3のいずれか1項記載のプラズマ溶融処理装置。
【請求項5】
車載されて移動可能に構成されている請求項1乃至4のいずれか1項記載のプラズマ溶融処理装置。
【請求項6】
前記対象物が有害物質を含む廃棄物である請求項1乃至5のいずれか1項記載のプラズマ溶融処理装置。
【請求項7】
前記有害物質がアスベスト、ダイオキシン類、環境ホルモン及び重金属から選択される少なくとも1種である請求項6記載のプラズマ溶融処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−225121(P2007−225121A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369662(P2005−369662)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】