説明

ヘテロ界面にミスフィット転位を有する部分的または完全に緩和された合金上の半極性窒化物ベースの素子

ヘテロ界面周辺のミスフィット転位を空間的に制限することによって、緩和された格子定数を有する、転位のない高品質テンプレート。これは、高In組成の素子のためのテンプレート層として使用することができる。具体的には、本発明は、高品質InGaNテンプレート(In組成は、約5〜10%である)を調製し、別様に可能であるよりも非常に高いIn組成のInGaN量子井戸(QW)(または多重量子井戸(MQW))を、これらのテンプレート上に成長させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、次の同時係属の同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張し、これらの出願の開示は、本明細書に参照により援用される:Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,058号(名称「SEMIPOLAR NITRIDE−BASED DEVICES ON PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALLOYS WITH MISFIT DISLOCATIONS AT THE HETEROINTERFACE」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.317−US−P1(2009−742−1))、ならびにHiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,059号(名称「ANISOTROPIC STRAIN CONTROL IN SEMIPOLAR NITRIDE QUANTUM WELLS BY PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALUMINUM INDIUM GALLIUM NITRIDE LAYERS WITH MISFIT DISLOCATIONS」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.318−US−P1(2009−743−1))。
【0002】
本願は、次の同時係属の同一人に譲渡された米国実用特許出願に関連し、この出願は、本明細書に参照により援用される:Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国実用特許出願第xx/xxx,xxx号(名称「ANISOTROPIC STRAIN CONTROL IN SEMIPOLAR NITRIDE QUANTUM WELLS BY PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALUMINUM INDIUM GALLIUM NITRIDE LAYERS WITH MISFIT DISLOCATIONS」、本願と同日の出願、代理人整理番号30794.318−US−U1(2009−743−2))であって、この出願は、Hiroaki Ohta、Feng Wu、Anurag Tyagi、Arpan Chakraborty、James S.Speck、Steven P.DenBaars、およびShuji Nakamuraによる米国仮特許出願第61/236,059号(名称「ANISOTROPIC STRAIN CONTROL IN SEMIPOLAR NITRIDE QUANTUM WELLS BY PARTIALLY OR FULLY RELAXED ALUMINUM INDIUM GALLIUM NITRIDE LAYERS WITH MISFIT DISLOCATIONS」、2009年8月21日出願、代理人整理番号30794.318−US−P1(2009−743−1))の米国特許法第119条第(e)項の利益を主張する出願。
【0003】
(1.発明の分野)
本発明は、ヘテロ界面周辺の空間的に制限されたミスフィット転位(MD)を使用することによって、緩和された格子定数を有する、転位のない高品質なエピタキシャルに成長させたテンプレートに関し、テンプレート層は、紫外線(UV)、緑色、琥珀色、または赤色発光ダイオード(LED)、および緑色またはUVレーザダイオード(LD)等の、高In/Al組成の素子のエピタキシャル成長のために使用することができる。
【背景技術】
【0004】
(2.関連技術の記述)
従来、全ての窒化物ベースの素子は、素子層を通過する転位が、不十分な素子性能を引き起こすので、一般的にコヒーレントに成長させている。例えば、InGaNをコヒーレントにGaN上に成長させた(すなわち、MDを有しない)場合、InGaNの面内格子定数は、GaNと同じ値に拘束されるが、これは、InGaN層が面内圧縮歪みを受けることを意味する(GaN上でのAlGaNのコヒーレントな成長の場合、AlGaNエピタキシャル層は、それぞれの格子定数の差のために面内引張歪みを受ける)。
【0005】
GaN光電子素子の中の分極効果を低減または可能な限り除去するアプローチは、結晶の半極性平面上で素子を成長させるものである。「半極性平面」という用語は、非ゼロh、i、またはkミラー指数および非ゼロlミラー指数の2つをどちらも有する、あらゆる平面を指すために使用することができる。したがって、半極性平面は、(hkil)ミラー−ブラベ指数定義則において、非ゼロのh、k、またはi指数および非ゼロのl指数を有する結晶平面として定義される。c平面GaNヘテロエピタキシにおける半極性平面のいくつかの一般的に観察される例は、(11−22)、(10−11)、および(10−13)平面を含み、これらは、ピットの面の中に見出される。これらの平面はまた、偶然に発明者らが平面膜の形態で成長させた平面と同じものである。ウルツ鉱型結晶構造の半極性平面の他の例は、(10−12)、(20−21)、および(10−14)であるが、それらに限定されない。窒化物結晶の分極ベクトルは、そのような平面内にも、そのような平面に対する法線にもなく、むしろ平面の表面垂線に対してある角度傾いている。例えば、(10−11)および(10−13)平面は、それぞれ、c平面に対して62.98°および32.06°である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ヘテロ界面周辺でMDを空間的に制限することによる、緩和された格子定数を有する、転位のない高品質テンプレートを開示する。このテンプレート層は、以降の高In組成の素子のエピタキシャル成長のために使用することができる。本発明は、高品質InGaNテンプレート(In組成は、約5〜10%である)を調製し、別様に可能であるよりも非常に高いIn組成のInGaN量子井戸(QW)(または多重量子井戸(MQW))を、これらのテンプレート上に成長させることができる。
【0007】
先行技術の制限を克服するために、および本明細書を読み、理解することにより明らかになる他の制限を克服するために、本発明は、部分的または完全に緩和された格子定数を有する半極性窒化物(AlInGaN)層であり、第2の層上に蒸着される第1の層を開示し、第1の層と第2の層との間のヘテロ界面には1つ以上の転位がある。
【0008】
転位は、MDであり得る。転位は、ヘテロ界面周辺に局所化されてもよく、またはヘテロ界面の上側の層を貫通しなくてもよい。
【0009】
第1の層の成長平面は、(11−22)、(10−1−1)、または(10−1−3)平面である半極性平面であってもよい。
【0010】
第2の層は、例えば、バルクAlInGaN、GaN基板、m−サファイヤ、またはスピネル基板であってもよい。
【0011】
例えば、第1の層は、少なくとも数パーセント(例えば、3〜10%)のIn組成を有するInGaNであってもよく、第2の層は、GaNである。代替として、例えば、第1の層は、少なくとも数パーセントのAl組成を有するAlGaNであってもよく、第2の層は、GaNであってもよい。第1の層は、2つを超える層を備えていてもよく、各界面には、緩和されたエピタキシャル膜を可能にする転位が存在する。
【0012】
第1の層上でIII族窒化物光学素子が製造されてもよい。III族窒化物光学素子は、1つ以上のAlInxGaN(x>0)QWを含んでもよく、xは、20%を超える。光学素子は、緑色の波長範囲でピーク強度を有する発光を可能にする高In組成のQWを備える、緑色LDであってもよい。
【0013】
QWは、厚さが少なくとも3nmであってもよい。
【0014】
III族窒化物光学素子は、n型層とp型層との間に発光活性層を備える、LEDまたはLDであってもよい。
【0015】
III族窒化物光学素子は、素子構造内部、特に光学素子の1つ以上の活性層の周辺にはいかなる新しい転位も含まなくてもよく、または転位は、活性層から少なくとも50nmであってもよい。基板層の中の単位面積当たりの貫通転位の数(n)は、10〜10/cmの範囲であってもよい。
【0016】
本発明は、III族窒化物素子をIII族窒化物テンプレート上でコヒーレントに成長させるステップを含む、III族窒化物素子を製造する方法であって、III族窒化物テンプレートは、III族窒化物テンプレートとは異なる材料組成を有する基板上で非コヒーレントに成長させる方法をさらに開示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
全体を通して類似参照数字が対応する部品を表す図面を参照する。
【図1】図1は、GaNを有するAlGaN/GaN超格子(SL)の下方部分の界面の周辺でg=01−10の回折条件で撮影した、界面のMDを示す、透過型電子顕微鏡(TEM)の明視野画像であり、目盛りは100ナノメートル(nm)である。
【図2】図2(a)は、[1−100]晶帯軸周辺のTEM画像であり、SLを含むLD素子エピタキシャル層(上から下まで)を見ることができ、目盛りは0.2マイクロメートル(μm)であり、図2(b)は、対応する電子ビーム回折パターン(DP)を表す。
【図3】図3(a)−(c)は、前述の素子(図1、図2(a)に記載)の異なるエピタキシャル層のTEM画像を示し、(a)は、100周期のp−AlGaN/GaNのSLおよび厚さ100nmのp−GaNを示し、SLの中のp−AlGaNは厚さ3nmであり、超格子の中のGaNは厚さ2nmであり、(b)は、2周期のInGaNのQWを有する活性領域であり、(c)は、QWの下側のn−AlGaN/GaNのSLであり、目盛りは100nmである。
【図4】図4は、黒色矢印が付されたヘテロ界面で主に生成され、破線矢印が付された層の中にわずかに見出される、MDを示すTEM画像であり、目盛りは50nmである。
【図5】図5(a)は、晶帯軸[2−1−10]から撮影したTEM画像であり、目盛りは0.2μmであり、図5(b)は、対応する電子ビームDPを表す[1]。
【図6】図6(a)は、g=01−10で撮影したTEM明視野画像であり、MDは、[1−100]から[2−1−10]への試料の傾斜に起因するセグメントとみなされ、目盛りは50nmであり、図6(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【図7】図7は、本発明の概念の概略断面図である。
【図8】図8は、本発明の応用例(例えば、高輝度緑色LEDまたは緑色LD)の概略断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態の概略断面図である。
【図10】図10は、本発明による、GaN基板上のInGaNテンプレートの概略断面図である。
【図11】図11は、本発明による、素子を製造する方法を示す。
【図12】図12は、図9の実施形態を使用して製造される素子の概略断面図である。
【図13】図13は、(11−22)GaN基板に基づき、厚いQWを備える、緑色LDの概略断面図である。
【図14】図14は、薄いQWを有する緑色LDの概略断面図である。
【図15】図15は、薄いQWおよび電子ブロッキング層を有する緑色LDの概略断面図である。
【図16】図16は、異なる厚さ(それぞれ、50/500nm)のInGaNテンプレート上で成長させた2つのInGaN単一QW素子からの、室温(RT)フォト発光(PL)スペクトルを示し、強度(任意単位)対波長(nm)をプロットしている。
【図17】図17は、前述の図16の素子の(10−10)切断面のTEM画像を示し、(a)は、厚さ50nmのn−InGaNテンプレート上の素子(B−[11−00]で撮影)、(b)は、厚さ50nmのn−InGaNテンプレート上の素子(g=10−10で撮影)、(c)は、厚さ500nmのn−InGaNテンプレート上の素子(B−[11−00]で撮影)、(d)は、厚さ500nmのn−InGaNテンプレート上の素子(g=10−10で撮影)であり、MDは、(d)のInGaN/GaNヘテロ界面で明確に観察される[2]。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の発明を実施するための形態において、本明細書の一部を形成し、かつ本発明が実践され得る特定の実施形態を例示目的で示す添付図面を参照する。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられてもよく、また、構造的な変更が行われてもよいことを理解されたい。
【0019】
(概要)
別の層(Y)(層Yは、それ自体がエピタキシャル、または基板であり得る)上に成長させたエピタキシャル層(X)は、Yに対して、コヒーレントであること、部分的に緩和、または完全に緩和されることができる。コヒーレントな成長の場合、Xの面内格子定数は、下側にある層Yと同一に拘束される。Xが完全に緩和された場合、Xの格子定数は、それらの自然の(すなわち、いかなる歪みもない)値を取る。XがYに対してコヒーレントでもなく、完全に緩和されていない場合、部分的に緩和されたと考えられる。いくつかの場合では、基板は、いくつかの残存歪みを有し得る。
【0020】
本発明は、半極性(11−22)窒化物の中のヘテロ界面においてMDの存在を発見した(図1、図2(a)〜図2(b)、図3(a)〜図3(c)、図4、図5(a)〜図5(b)、および図6(a)〜図6(b)を参照)。この新しい発見では、MDの存在は、格子定数不整合を有する(異なる合金および/または合金組成を有する)層の間のヘテロ界面周辺だけに制限された。この界面(MDを有する)上で成長させた層は、部分的または完全に緩和されていると考えられた。結果として、本発明を使用してInGaN(比較的に高いIn組成(例えば、5〜10%))を成長させたとき、緩和されたInGaNテンプレート層(緩和される:格子定数がその自然値になる)が達成される。
【0021】
InGaNをコヒーレントにGaN上に成長させた(すなわち、MDを伴わない)場合、InGaNの面内格子定数は、GaNと同じ値に拘束されるが、これは、InGaN層が面内圧縮歪みを受けることを意味する(GaN上でのAlGaNのコヒーレントな成長の場合、AlGaNエピタキシャル層は、それぞれの格子定数の差のために、面内引張歪みを有する)。予備実験におけるTEM画像に基づいて(図1、図2(a)〜図2(b)、図3(a)〜図3(c)、図4、図5(a)〜図5(b)、および図6(a)〜図6(b)を参照)、MD上の層は、界面周辺の転位を除いて、層を通る、および成長方向に向かういかなる明らかな転位も有しなかった。これは、本発明が、基板上に、緩和された格子定数を有する、転位のない合金を達成できることを示す。
【0022】
緩和された層について、本発明は、臨界成長厚さに関係なく、厚い層を成長させることができる。1つの応用例は、GaN上の高品質InGaNテンプレートである。このテンプレートは、緑色LED、琥珀色LED、赤色LED、および緑色LD等の、極めて高いIn組成の素子構造を成長させるために使用することができる。
【0023】
(技術的説明)
(命名法)
(Al、Ga、In)N、III族窒化物、またはAlInGaNという用語は、本明細書で使用される場合、単一の種、Al、Ga、およびInのそれぞれの窒化物、ならびにそのようなIII族金属種の二元、三元、および四元組成を含むと広義に解釈される。したがって、(Al、Ga、In)N、AlInGaN、またはIII族窒化物という用語は、そのような命名法に含まれる種として、化合物AlN、GaN、およびInN、ならびに三元化合物AlGaN、GaInN、およびAlInN、および四元化合物AlGaInNを包含する。(Ga、Al、In)構成種のうちの2つ以上が存在するとき、(組成に存在する(Ga、Al、In)構成種のそれぞれを表す相対モル分率に関して)化学量論的割合ならびに「化学量論外の」割合を含む、全ての可能な組成を本発明の広義の範囲内に採用することができる。したがって、主にGaN材料に関する、以降の本発明の論議は、種々の他の(Al、Ga、In)N材料種の形成に適用可能であることが理解されるであろう。さらに、本発明の範囲内の(Al、Ga、In)N材料は、軽微な数量のドーパントおよび/または他の不純物あるいは包含物質をさらに含んでもよい。
【0024】
(素子構造)
図1は、GaN104を有するAlGaN/GaNのSL102の下方部分の界面100の周辺でg=01−10の回折条件で撮影した、界面のMD106を示す、TEMの明視野画像である(これは、[1]の図3(b)と同じである)。
【0025】
図2(a)は、[1−100]晶帯軸周辺のTEM画像であり、SLを含むLD素子エピタキシャル層(上から下まで)を見ることができ、図2(b)は、対応する電子ビーム回折パターン(DP)を表す。
【0026】
図3(a)〜(c)は、前述の素子(図1、図2(a)に記載)の異なるエピタキシャル層のTEM画像を示し、(a)は、100周期のp−AlGaN/GaNのSL300および厚さ100nmのp−GaN302を示し、SL300の中のp−AlGaNは厚さ3nmであり、SL300の中のGaNは厚さ2nmであり、(b)は、2周期のInGaNのQWを有する活性領域304であり、(c)は、QWの下側のn−AlGaN/GaNのSL306である。
【0027】
図4は、n−AlGaN/GaNのSL400と、SL400上のn−GaN層402と、n−GaN層402上のn−InGaN層404と、n−InGaN層404上のInGaNのQW406と、QW406上のp−AlGaN電子ブロッキング層(EBL)408と、EBL408上のp−InGaN層410と、p−InGaN層410上のp−GaN層412と、p−GaN層412上のp−AlGaN/GaNのSL414とを備える、エピタキシャル構造を示すTEM画像である。TEM画像は、黒色矢印418、420、422、424が付されたヘテロ界面で主に生成され、破線矢印426が付された層の中にわずかに見出される、MD416をさらに示す。
【0028】
図5(a)は、晶帯軸[2−1−10]から撮影したTEM画像であり、図5(b)は、対応する電子ビームDPを表す[1]。
【0029】
図6(a)は、g=01−10で撮影したTEM明視野画像であり、MD600は、[1−100]から[2−1−10]への試料の傾斜に起因するセグメントとみなされ、図6(b)は、対応する電子ビームDPを表す。
【0030】
本発明は、高品質InGaNテンプレート(In組成は、約5〜10%)を調製することができ、そして、このテンプレート上に非常高いIn組成のInGaNのQW(MQW)を成長させることができる。図7は、GaN層702上にヘテロエピタキシャルに成長させた厚いInGaNテンプレート層700(5〜10%のInを有する)と、(11−22)GaN基板704上にホモエピタキシャルに成長させたGaN層702とを備える、この本発明の概念を具現化する構造を示す。GaN層702とInGaNテンプレート層700との間のヘテロ界面706は、局所化された(すなわち、界面706付近に閉じ込められた)MD708を含有し、InGaNテンプレート700(例えば、素子のための)は、部分的または完全に緩和された格子定数を有する。図7において、[11−22]および[11−23]と付された矢印は、それぞれ、[11−23]および[11−23]方向を示し、円内の黒丸は[10−10]方向(紙の平面から外に)を示す。
【0031】
図8は、図7に示されるInGaNテンプレート700上に成長させたInGaN層802a、802b、802c、802d、802e(5〜10%のインジウム(In)を有する)と、高In含有量(例えば、In0.3GaN)のQW層804a、804b、804c、804dとを備える本発明の応用例である、高輝度緑色LEDまたはLD構造800を示す。QWは、緑色光(例えば、緑色の波長範囲(例えば、510nm〜540nm)、または波長範囲490nm〜560nmにピーク強度を有する光)を放出することに十分な高いIn組成を有する発光活性層である。テンプレート700は、緩和された格子定数を備え、この緩和は、MDの線の方向(図7で矢印[11−23]で示される)に直角な方向[10−10]に生じる。層802aは、p型層(例えば、Mgドープ)であり、層802eは、n型層(例えば、Siドープ)であり、層802b〜802dは、活性領域(非ドープまたはnドープ)の中のバリア層である。図8は、MQWを有するpnダイオードのような、素子の応用例である。
【0032】
より一般には、本発明は、図9に示されるように、第2の層904(層B)上に第1の層902(層A)を備えるエピタキシャル構造900を開示し、第1の層902は、部分的または完全に緩和された格子定数と、第1の層902と第2の層904との間のヘテロ界面908での1つ以上の転位906(例えば、MD)とを備える、窒化物(AlInGaN)層である。層A902は、緩和された格子定数を有する層A902を達成するために、層B904に対してコヒーレントに成長させられない。層A902の格子定数は、層B904の格子定数よりも低く、または高くすることができる。この格子不整合を達成するために、層A902とB904とは、異なる合金で作製されてもよい。第2の層904はまた、それ自体が部分的に緩和されてもよい。層Aの厚さは、MDを生成するために、臨界膜厚よりも大きい。臨界膜厚は、例えば、数nmから数マイクロメートルまでの範囲であり得、組成、ドーピング、および結晶配向に依存し得る(後者の依存性が、非常に重要である)。
【0033】
よって、本発明によれば、第1の層902は、第2の層904に対して緩和される。換言すれば、水平方向の第1の層902の格子定数は、第2の層904の格子定数と同じではない。
【0034】
転位906は、MDを含み得るが、それに限定されない。一般的に、転位は、ヘテロ界面908周辺に局所化され、ヘテロ界面908の上側の層を貫通しない。基板または第2の層B904の単位面積当たりの貫通転位の数(n)は、単位面積当たり10〜10(例えば、10〜10/cm)の範囲であることが望ましいが、これは、n>10に対して素子性能が悪化し、n<10に対してMDを有効に生成できないからである。
【0035】
図10は、第1の層1002の成長平面(または頂面)1000が、それらに限定されないが、(11−22)、(10−1−1)、または(10−1−3)平面等のような半極性平面である実施例を示す。換言すれば、以降の素子層(例えば、n型、p型、および活性層)をその上に成長させる層A1002の頂面1000は、半極性平面である。半極性平面は、(hkil)ミラー−ブラベ指数定義則において、非ゼロのh、k、またはi指数および非ゼロのl指数を有する結晶平面として定義される。一般的に、層A1002の成長方向1004は、半極性成長方向である。図10の場合、第1の層1002は、第2の層1008の半極性(11−22)平面1006上に成長させたInGaN(11−22)テンプレートであり、第2の層1008は、GaN(11−22)基板である。図10は、MD1012を有する(第1の層1002と第2の層1008との間の)界面1010をさらに示す。[11−23](c軸の面内投影)に向かう(InGaNテンプレート1002の)格子定数は緩和される一方で、m軸に向かう(InGaNテンプレート1002の)格子定数は緩和されない。これは、[11−23]に沿った格子不整合のため、MDをさらに拘束できることを示す。
【0036】
したがって、(11−22)半極性テンプレートは、[11−23]方向(c軸の平面投影方向)に沿って緩和されて、m軸に沿って緩和されなくてもよく。異なる平面または結晶配向について、緩和される方向と緩和されない方向とは、異なっていてもよく、導出することができる[1]。しかしながら、緩和は、一般的に、一方向に沿ったものであり、直角な方向には緩和されない[1]。一般に、MDの形成のための臨界膜厚は、両方向に対して計算することができる。
【0037】
一般的に、c投影に平行な面内格子定数は緩和されるが、緩和される方向および緩和されない方向は、下層および/または基板の半極性配向および/または合金組成に依存する。一般に使用される半極性平面について、コヒーレントでない格子定数は、一般的に、c軸の投影(a、cのどちらとも異なる)に平行な面内格子定数である。
【0038】
このように、緩和される方向は、常時c投影に沿っているとは限らず、また、緩和されない方向は、常時c投影に対して直角であるとは限らない。しかしながら、基底面スリップは、半極性ウルツ鉱型III族窒化物の結晶構造のため、支配的な歪み緩和機構であるので、おそらくは、c投影に対して直角である線方向を有するMDが最初に形成される。結果的に、初期の緩和は、c投影に沿ったものである(緩和方向は、MD方向に対して直角である)。膜の歪みエネルギーが十分に大きい場合、c軸に直角な面内方向も、緩和を受けることができる。一実施形態では、本発明は、両方向に対して、MDの形成のための臨界膜厚を計算してもよい。次いで、層厚さが対応する臨界膜厚に到達したときにMDが生じる。したがって、ある方向に対して層厚さが臨界膜厚に到達すると、層は、対応する方向に緩和される。
【0039】
緩和の程度は、格子定数および配向および格子の方向による機械的性質に依存してもよい[1]。
【0040】
(プロセスステップ)
図11は、本発明(例えば、III族窒化物素子)のエピタキシャル構造を製造する方法を示すフローチャートである。方法は、以下のステップを含む。
【0041】
ブロック1100は、例えば、後に成長させたテンプレート層を有するヘテロ界面を形成する基板、すなわち高品質半極性GaN基板を提供または用いることを表す(ブロック1102)。例えば、テンプレート層が第1の層であってもよく、基板が第2の層であってもよい。基板層の単位面積当たり(例えば、cm当たり)の貫通転位の数(n)は、単位面積当たり(例えば、cm当たり)10〜10の範囲であってもよいが、これは、これは、n>10に対して素子性能が悪化し、n<10に対してMDを有効に生成できないからである。
【0042】
ブロック1104は、基板上にテンプレート層を成長させるステップ、すなわち、部分的または完全に緩和された格子定数を有する窒化物(AlInGaN)層である第1の層を、第2に層上に蒸着または成長させるステップを表し、第1の層と第2の層との間のヘテロ界面には1つ以上の転位がある。テンプレートは、GaN基板上に非コヒーレントに成長させてもよく(すなわち、テンプレート層の面内格子定数が、基板層の格子定数と同じではない)、その結果、テンプレート層は、緩和された格子定数を有する。したがって、III族窒化物テンプレートは、III族窒化物テンプレートとは異なる材料組成を有する基板上で非コヒーレントに成長させてもよい。第1の層は、In0.1GaN/In0.05GaN/GaN等の、2つを超える層を備えてもよく、各界面には、緩和されたエピタキシャル膜を可能にする転位があってもよい。
【0043】
ブロック1106は、前述のステップの最終結果、すなわち、部分的または完全に緩和された格子定数を有する半極性窒化物(AlInGaN)層であり、第2の層(例えば、基板)上に蒸着される、少なくとも第1の層(テンプレート層)を備えるエピタキシャル構造を表し、第1の層と第2の層との間のヘテロ界面には1つ以上の転位がある。転位は、MDであってもよく、転位は、ヘテロ界面(第1の層が2つを超える層を備える場合は、複数のヘテロ界面)周辺に局所化されてもよく、また、転位は、ヘテロ界面の上側の層を貫通しなくてもよい。
【0044】
第1の層(テンプレート)の成長平面(すなわち、素子層等の以降の層をその上で成長させる、頂面)は、(11−22)、(10−1−1)、または(10−1−3)等の半極性平面、および他の種々の半極性平面であってもよい。
【0045】
ブロック1108は、例えばテンプレート層上に転位を伴わずに、素子構造を成長させるステップを表す。成長ステップは、III族窒化物テンプレート上でIII族窒化物素子をコヒーレントに成長させるステップを含んでもよい。
【0046】
ブロック1110は、方法の最終結果、すなわち、第1の層上に製造されるIII族窒化物光学素子または素子構造を表す。III族窒化物光学素子または構造は、AlInGaN(x>0)QWまたは障壁/活性を含んでもよい。AlInGaN(x>0)QWまたは障壁/活性層は、(例えば、Alの有無に関わらず)20%を超えるxを含んでもよい。III族窒化物光学素子は、n型層とp型層との間に発光活性層を備えるLEDまたはLDであってもよい。例えば、光学素子は、緑色の波長範囲のピーク強度を有する発光を可能にする高In組成のQWを備える、緑色LDであってもよい。
【0047】
QWは、厚さが少なくとも3nmであってもよい。
【0048】
例えば、III族窒化物光学素子は、一般的に、素子構造内部、特に光学素子の1つ以上の活性層の周辺にはいかなる新しい転位も含まなくてもよく、または転位が活性層から離れている(例えば、活性層から少なくとも50nm)。
【0049】
構造は、例えば、一般的に、従来の分子ビームエピタキシ(MBE)または有機金属化学蒸着(MOCVD)によって成長させられるが、他の蒸着方法も可能である。
【0050】
光電子素子を製造するために、当技術分野において周知であるような、付加的な層、構造、接点、または要素を加えてもよい。
【0051】
(可能な修正例)
第2の層は、それらに限定されないが、バルクAlInGaN、高品質GaN基板、またはm−サファイヤもしくはスピネル基板等の異種基板等の、異なる材料を含んでもよい。
【0052】
前述のように、第1の層は、一般的に、少なくとも数パーセント(例えば、少なくとも3〜10%)のIn組成を有するInGaNである。この場合、第2の層は、例えばGaNであり得る。しかしながら、第1の層Aは、他の材料を含んでもよい。例えば、第1の層は、少なくとも数パーセントのAl組成を含むAlGaNであってもよい。この場合、第2の層は、例えばGaNであり得る。Al組成が小さければ、臨界膜厚は大きい。しかし、この後者の場合、本発明は、厚い層を成長させることによってMDを導入してもよい。
【0053】
第1の層は、In0.1GaN/In0.05GaN/GaN等の、2つを超える層を備えてもよく、層間の各界面には、緩和されたエピタキシャル膜を可能にする転位がある。
【0054】
本発明は、半極性成長に基づく超高輝度緑色LED、緑色LD、琥珀色色LED、赤色LED、およびAlGaNベースの深UV LEDおよびGaNに基づくLDの製造を可能にする。
【0055】
図12は、(例えば、図9に示されるような)第1の層902(層A)上の光学素子構造1200(例えば、それに限定されないが、LEDまたはLD)の実施例を示す。光学素子1200は、例えば、AlInGaN(x>0)活性層、またはQW(0.2(20%)を超えるIn組成xを有する)を含んでもよい。活性層のIn組成は、より長い波長(例えば、緑色の波長)に対応する光を放出するために十分高くてもよい。しかしながら、光学素子構造にはいかなる新しい転位も含まないことが好ましい。
【0056】
InGaNテンプレート902により、本発明は、高い(例えば、15%〜30%)In組成を有する、厚い(厚さ3nmを超える)、高品質のQWを成長させることができる。図13は、厚い(例えば、厚さ1302が8nm)、高In組成(15〜30%)の、発光活性層であるQW1304a、1304b、1304c、1304d、1304eを有する、緑色LD1300(緑色光、または緑色の波長でピーク放出強度を有する光を放出する)を示す。InGaNテンプレートの役割を果たす第1の層1306はまた、厚く(例えば、厚さ1308が1000nm)、5%〜10%のInを含有し、クラッディング層の役割を果たす。層1304a上には、p型(例えば、Mgドープ)で、厚さ1310が700nmである、InGaN(5〜10%のIn組成)層1312がある。InGaNテンプレート1306は、(11−22)GaN基板1316上で成長させた標準的な再成長GaNテンプレート1314上でエピタキシャルに成長させる。素子層は、5〜10%のIn組成(例えば、QW障壁として機能する)を伴い、例えば8nmの厚さ1320を有する、InGaN層1318a、1318b、1318c、1318dをさらに含む。素子層では、格子不整合は、一般的に、素子層のMDを防止するために小さく保たれる。また、テンプレート1306と標準的な再成長GaN1314との間の界面には、MD1322が示されている。また、層1314および1316をその上に成長させる頂面1324(頂面1324は、(11−22)半極性平面である)、および活性層1304a〜1304eをその上に成長させるテンプレート1306の頂面1328(頂面1328も同様に、(11−22)半極性平面である)も示されている。しかしながら、論議されているように、他の半極性または無極性平面が使用されてもよい。
【0057】
図14は、薄い(例えば、厚さ1402が3nm)QW1404a、1404b(発光活性層)を有する緑色LD1400(例えば、緑色光、または緑色の波長でピーク放出強度を有する光を放出する)を示し、(11−22)GaN基板1406と、GaN基板1406上の標準的なGaNテンプレート1408と、標準的な再成長層1408上の厚さ1410が1000nmのInGaNテンプレート層1412(例えば、5%のIn組成を伴い、クラッディング層の役割も果たす)と、その後の、薄いQW1404a、1404b(例えば、30%のInを有するInGaN)と、InGanテンプレート1412上のInGaN分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層1414a、1414b(例えば、10%のInを有するInGaN)とを備える。QW1404a、1404bおよびSCH1414a、1414bは、InGaNテンプレート1412およびクラッディングよりも高In組成を有する。SCH層1414bの上には、厚さ1416が50nmのInGaN層1418(5%のIn)がある。層1418の上には、厚さ1420が700nmのInGaN層1422(2%のIn組成、p型、例えばMgドープ)がある。また、テンプレート1412と標準的な再成長GaN1408との間の界面には、MD1424も示されている。活性領域1404a、1404bとクラッディング層1412との間の屈折率差Δnは、Δn=0.05である。
【0058】
無極性または半極性の場合について、本発明は、QCSEを伴わずに、またはより少ないQCSEで、QWの厚さを3nmを超えるまで増大させることができる。
【0059】
好ましくは、光学素子1300、1400は、素子構造内部、特に活性層1304a〜1304eおよび1404a〜1404bの周辺に、いかなる転位も含まない。代替として、図13および図14に示されるように、転位は、活性層1304a〜1304e、1404a〜1404bから離れている(例えば、MD1322、1424とQW1304a〜1304e、1404a〜1404bとの間の距離は、50nm、好ましくは100nmを超える)。図14の素子では、例えば、格子定数は、底部1426から活性領域1404aに向かって増加する。しかしながら、面内の格子定数は、活性層1404aの直下では一定のままであり、電子ブロッキング層等のいくつかの層を除いて、QW活性層1404bの上側から光学素子1400の頂部1428に向かって減少する。換言すれば、活性領域1404a、1404bを、下側にある層1412上でコヒーレントに成長させて、MD1424を有する任意のヘテロ界面を、活性領域1404a〜1404bから十分に(50〜100nm)除去する。図14には、テンプレート層1412とSCH層1414aとの間の、5%のInを有するInGaN層1430、およびQW障壁層1432も示されている。
【0060】
図15は、1つ以上の薄いQW1502a、1502bと、(例えば、電子オーバーフローを防止するために)比較的に低いAl含有量(例えば10〜15%または5〜15%)を有するAlGaN電子ブロッキング層(EBL)1504とを有する、緑色LD構造1500(すなわち、緑色光、または緑色の波長でピーク放出強度を有する光を放出する)を示す。LD1500は、(11−22)GaN基板1506と、GaN基板1506上の標準的なGaNテンプレート1508と、GaNテンプレート1508上のInGaNテンプレート層1510(例えば5%のIn組成を伴い、1000nmの厚さ1512を有する)と、その後の、InGaN層1516a、1516b、1516c(10%のIn組成を有する)と、InGaN層1516bによって分離された薄いQW1502a、1502b(3nmの厚さ1514を有し、15〜20%または30%のIn組成を有する)とを備える。10%のInを有するInGaN層1516a、1516b、1516cはまた、QW1502a、1502bにおけるキャリアの量子閉じ込めを提供する、QW障壁の役割も果たす。層1516aおよび1516cはまた、SCH層であってもよい。20nmの厚さ1518を有するEBL1504は、In0.05GaN層1520(5%のIn組成で、50nmの厚さ1522を有する)と、700nmの厚さ1526を有するIn0.05GaN(5%のIn組成、p型、例えばMgドープ)層1524との間にある。活性領域1502a、1502bとクラッディング層1510との間の屈折率差Δnは、Δn=0.05である。AlGaNのEBL層1504は、Mgでドープしてもよいが、これは、必須ではない。
【0061】
図15に示されるように、本発明については、EBL1504の界面でMDを拘束することが好ましい。したがって、転位を防止するために、低Al組成を有するEBL層1504の組成を勾配させることによってEBL1504を製造すること、またはGaNのEBL1504もしくは薄い(および/または格子整合された)AlInNのEBL層1504を使用することが好ましい。EBL1504は、例えば、Al組成、AlInNまたは低Al組成で勾配させてもよい。
【0062】
代替として、または加えて、図15に示されるように、EBL1504は、(それらの周囲で非発光性再結合を引き起こす、MDの影響を防止するために)活性層1502a、1502bから離して(例えば、少なくとも50nm)位置付けるべきであり、それによって、高い内部効率を保つ。加えて、同じく図15に示されるように、任意の他のヘテロ界面(加えて、QW/障壁ヘテロ界面)は、活性層1502a、1502bから離しておくべきである。図15にはまた、InGaNテンプレート層1510とGaNテンプレート層1508との間の界面に、MD1528も示されている。
【0063】
前述のように、本発明の1つの応用例は、緑色LED、琥珀色LED、赤色LED、および緑色発光LD等の、非常に高いIn組成の素子構造を成長させるために使用される、GaN上の高品質InGaNテンプレートである。例えば、図16および図17は、実験結果を示す。
【0064】
図16は、(11−22)GaN上で成長させた厚さ500nmのInGaN(5〜7%のIn)上で成長させた高In含有量の単一量子井戸(SQW)から得られる、より明るいフォト発光(PL)(70%の強度増大)、およびより長い放出波長を示す。具体的には、厚さ50nmのInGaN層上で成長させたQWからのPL強度は、491nmの波長でピークに達し、半値全幅(FWHM)(Δλ)=33nmおよび1の積分強度を有するが、厚さ500nmのInGaN層上で成長させたQWからのPL強度は、503nmの波長でピークに達し、FWHM(Δλ)=35nmおよび1.7の積分強度を有する。図16のデータは、室温で取得し、405nmの波長での励起により生じたものである。
【0065】
図17(a)〜(d)[2]は、図16で測定した素子の画像である。図17(b)は、厚さ50nmのInGaNテンプレート上の素子の(10−10)断面を示し、図17(d)は、図16の厚さ500nmのn型InGaN層上の試料のTEM画像((10−10)断面)が、SQWの活性領域1704から十分に離れた、InGaN/GaNヘテロ界面1702でのMD1700が認められることを示す。SQWのInGaN活性領域1704付近にはいかなる転位もない。
【0066】
また、無極性テンプレートおよび基板が使用されてもよい。
【0067】
素子は、GaN基板の配向と同じ配向を有する。例えば、m平面基板を使用した場合、m平面素子が成長する。本発明が(11−22)GaN基板を使用する場合は、(11−22)半極性素子を基板上で成長させる。
【0068】
MDまたは任意の種類の欠陥は、LEDの出力を下げることになる。GaN上での高In%のInGaNの成長は、大きい格子不整合が存在するので、非常に困難である。本発明より前には、30%を超えるIn%を有する高品質のInGaNを成長させることはできなかった。本発明の方法を使用することで、30%を超えるIn%を有するInGaNを、GaN上で成長させることができる。
【0069】
(利点および改良点)
これまで、半極性および無極性配向に基づいた、緑色スペクトル領域(または青色を超えるより長い波長領域)で放出する、いかなる超高輝度LEDおよび高性能LDも報告されていなかった。これは、部分的には、ヘテロ界面、特に障壁層とQWとの間の界面でのMDまたは積層不良が原因(換言すれば、材料の問題)である。さらに、以前の研究は、(低In組成を有する)GaNまたはInGaN障壁を使用していた。したがって、現在の素子は、QW周辺で極めて大きい格子不整合を有する。これは、不十分な結晶品質または転位/積層不良を引き起こす。同じ現象は、LDの導波層とクラッディング層(例えば、InGaN導波とAlGaNクラッディング)との間で観察することができる。
【0070】
無極性および半極性配向を使用する理由は、以前の結果に基づいて明らかである。小さい、または削減されたQCSE(量子閉じ込めシュタルク効果)は、より高い内部効率をもたらし、青色を超える領域における高出力LEDおよびLD(窒化物に基づく緑色/琥珀色/赤色LED、および緑色LD)の製造を可能にする。しかしながら、実際には、高性能光学素子は、前述の材料の問題が解決されるまで達成することはできない。
【0071】
本発明は、MDを含むヘテロ界面を使用することによって、緩和された格子定数を有する高品質テンプレート層を供給することができる。本発明は、GaN上で直接的に成長させる(すなわち、中間層としてのInGaNテンプレートの使用を伴わない)場合と比較して、緩和された層(例えば、緩和されたInGaNテンプレート)上で高In組成の層(高In組成のQW)をより容易に成長させることができる。これは、本発明が、半極性配向で成長させた高性能LEDおよびLD(例えば、GaNの(11−22)平面に基づいて、またはその上で成長させて、例えば緑色光を放出する、LEDまたはLD)を製造することを可能にする。しかしながら、前述のように、他の半極性平面が使用されてもよい。
【0072】
しかしながら、光電子素子(LED、LDを含むこと)、太陽電池、および電子素子(例えば、高電子移動度トランジスタ等のトランジスタ)を、本発明のテンプレート層上で成長させてもよい。
【0073】
本発明についてのさらなる情報を[1],[2]および[3]に見出すことができる。
【0074】
(参考文献)
以下の参考文献は、参照することにより本明細書にその全体が援用される。
【0075】
【表1】

【0076】
(結論)
これは、本発明の好適な実施形態の説明を締めくくるものである。本発明の1つ以上の実施形態の上述の説明は、図解および説明のために示したものである。この記述は、網羅的であること、または本発明を開示された形態に限定することを意図したものではない。さらに、本発明が本明細書に記載される科学法則または理論のうちのいずれかに拘束されることを意図したものではない。上述の教示に照らして、多数の修正および変形が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、むしろ本明細書に添付された請求項によって限定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル構造であって、
部分的または完全に緩和された格子定数を有する半極性窒化物(AlInGaN)層である第1の層を備え、該第1の層は、第2の層上に蒸着され、該第1の層と該第2の層との間のヘテロ界面に1つ以上の転位が存在する、エピタキシャル構造。
【請求項2】
前記転位は、ミスフィット転位である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項3】
前記転位は、ヘテロ界面周辺に局所化される、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項4】
前記転位は、前記ヘテロ界面の上側の層を貫通しない、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項5】
前記第1の層の成長平面は、(11−22)、(10−1−1)、または(10−1−3)平面である半極性平面である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項6】
前記第2の層は、バルクAlInGaNである、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項7】
前記第2の層は、GaN基板である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項8】
前記第2の層は、m−サファイヤまたはスピネル基板である、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項9】
前記第1の層は、少なくとも3〜10%のIn組成を有するInGaNであり、前記第2の層は、GaNである、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項10】
前記第1の層は、少なくとも数パーセントのAl組成を有するAlGaNであり、前記第2の層は、GaNである、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項11】
前記第1の層は、2つを超える層を備え、各界面に、緩和されたエピタキシャル膜を可能にする転位が存在する、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項12】
前記第1の層上にIII族窒化物光学素子構造が製造される、請求項1に記載のエピタキシャル構造。
【請求項13】
前記III族窒化物光学素子構造は、1つ以上のAlInGaN(x>0)量子井戸を含む、請求項12に記載のエピタキシャル構造。
【請求項14】
xは、20%を超える、請求項13に記載のエピタキシャル構造。
【請求項15】
前記量子井戸は、厚さが少なくとも3nmである、請求項13に記載のエピタキシャル構造。
【請求項16】
前記III族窒化物光学素子構造は、n型層とp型層との間に発光活性層を備える発光ダイオードまたはレーザダイオード構造である、請求項12に記載のエピタキシャル構造。
【請求項17】
前記光学素子は、緑色の波長範囲内にピーク強度を有する発光を可能にする高In組成の量子井戸を備える、緑色レーザダイオードである、請求項16に記載のエピタキシャル構造。
【請求項18】
前記III族窒化物光学素子は、前記素子構造内部、特に前記光学素子の1つ以上の活性層の周辺にはいかなる新しい転位も含まないか、または、転位は、該活性層から少なくとも50nm離れている、請求項12に記載のエピタキシャル構造。
【請求項19】
前記基板層の中の単位面積当たりの貫通転位の数(n)は、10〜10/cmである、請求項12に記載のエピタキシャル構造。
【請求項20】
III族窒化物素子を製造する方法であって、
該III族窒化物素子をIII族窒化物テンプレート上にコヒーレントに成長させることを含み、該III族窒化物テンプレートは、該III族窒化物テンプレートとは異なる材料組成を有する基板上に非コヒーレントに成長させられる、方法。
【請求項21】
エピタキシャル構造を製造する方法であって、
部分的または完全に緩和された格子定数を有する窒化物(AlInGaN)層である第1の層を蒸着または成長させることを含み、該第1の層は、第2の層上にあり、該第1の層と該第2の層との間のヘテロ界面に1つ以上の転位が存在する、方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a−3c】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−502730(P2013−502730A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525753(P2012−525753)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/046341
【国際公開番号】WO2011/022724
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】