説明

ポジ型レジスト組成物、サーマルフロー用ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】ArFエキシマレーザーリソグラフィー等に使用されるレジスト組成物を用いたサーマルフロープロセスにおいて、レジストパターンサイズの制御性に優れるサーマルフロー用に適したポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】樹脂成分(A)と、酸発生剤成分とを含むポジ型レジスト組成物であって、前記(A)成分は、第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリレート構成単位(a0)と、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)とを含む高分子化合物(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型レジスト組成物、サーマルフロー用ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィー技術においては、例えば基板の上にレジスト材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対し、所定のパターンが形成されたマスクを介して、光、電子線等の放射線にて選択的露光を行い、現像処理を施すことにより、前記レジスト膜に所定形状のレジストパターンを形成する工程が行われる。露光した部分が現像液に溶解する特性に変化するレジスト材料をポジ型、露光した部分が現像液に溶解しない特性に変化するレジスト材料をネガ型という。
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。
微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザーや、ArFエキシマレーザーを用いた半導体素子の量産が開始されている。また、これらエキシマレーザーより短波長のFエキシマレーザー、電子線、EUV(極紫外線)やX線などについても検討が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。このような要求を満たすレジスト材料として、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤とを含有する化学増幅型レジストが用いられている。たとえばポジ型の化学増幅型レジストは、ベース樹脂として、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂と酸発生剤とを含有しており、レジストパターン形成時に、露光により酸発生剤から酸が発生すると、露光部がアルカリ可溶性となる。
これまで、化学増幅型レジストのベース樹脂としては、KrFエキシマレーザー(248nm)に対する透明性が高いポリヒドロキシスチレン(PHS)やその水酸基を酸解離性の溶解抑制基で保護した樹脂(PHS系樹脂)が用いられてきた。しかし、PHS系樹脂は、ベンゼン環等の芳香環を有するため、248nmよりも短波長、たとえば193nmの光に対する透明性が充分ではない。そのため、PHS系樹脂をベース樹脂成分とする化学増幅型レジストは、たとえば193nmの光を用いるプロセスでは解像性が低いなどの欠点がある。
そのため、現在、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等において使用されるレジストのベース樹脂としては、193nm付近における透明性に優れることから、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を主鎖に有する樹脂(アクリル系樹脂)が主に用いられている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
一方、レジスト材料の面からの超微細化対応策に加え、パターン形成方法の面からも、レジスト材料のもつ解像度の限界を超える技術の研究・開発が行われている。
そのような微細化技術の1つとして、最近、通常のリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した後、該レジストパターンに熱処理を行い、パターンサイズを微細化するサーマルフロープロセスが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
サーマルフロープロセスは、ホトリソグラフィー技術により一旦レジストパターンを形成した後、レジストパターンを加熱し、軟化させ、パターンの隙間方向にフローさせることにより、レジストパターンのパターンサイズ、つまり、レジストパターンが形成されていない部分のサイズ(ホールパターンの孔径やラインアンドスペース(L&S)パターンのスペース幅など)を小さくする方法である。
【特許文献1】特開2003−241385号公報
【特許文献2】特開2000−188250号公報
【特許文献3】特開2000−356850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のArFエキシマレーザーリソグラフィー等に使用されるレジスト組成物では、ベース樹脂のガラス転移温度が高いために、サーマルフロープロセスにおける加熱温度によるベース樹脂の軟化が不充分であり、サーマルフローによるレジストパターンの形成が困難であるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等に使用されるレジスト組成物を用いたサーマルフロープロセスにおいて、レジストパターンサイズの制御性に優れるサーマルフロー用に適したポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために以下の手段を提案する。
すなわち、本発明の第一の態様は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むポジ型レジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)は、下記一般式(a0)で表される構成単位(a0)と、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)とを含む高分子化合物(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物である。
【0007】
【化1】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;Yは脂肪族環式基を示し;Zは第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基を示し;aは1〜3の整数を示し、bは0〜2の整数を示し、かつa+b=1〜3であり;c、d、eはそれぞれ独立して0〜3の整数を示す。]
【0008】
また、本発明の第二の態様は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むサーマルフロー用ポジ型レジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)は、下記一般式(a0)’ で表される構成単位(a0)’を含む高分子化合物(A2)を含有することを特徴とするサーマルフロー用ポジ型レジスト組成物である。
【0009】
【化2】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;Yは脂肪族環式基を示し;Z’は酸解離性溶解抑制基を示し;aは1〜3の整数を示し、bは0〜2の整数を示し、かつa+b=1〜3であり;c、d、eはそれぞれ独立して0〜3の整数を示す。]
【0010】
また、本発明の第三の態様は、前記第一および第ニの態様のポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程、サーマルフロー処理を行う工程を含むレジストパターン形成方法である。
【0011】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「構成単位」とは、樹脂成分(重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等に使用されるレジスト組成物を用いたサーマルフロープロセスにおいて、レジストパターンサイズの制御性に優れるサーマルフロー用に適したポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
≪ポジ型レジスト組成物≫
本発明のポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)(以下、(A)成分という。)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という。)とを含むものである。
また、本発明は、特にサーマルフロープロセス用として好適なポジ型レジスト組成物である。
本発明のポジ型レジスト組成物において、(A)成分は、露光前はアルカリ不溶性であり、露光により前記(B)成分から発生した酸が作用すると、酸解離性溶解抑制基が解離し、これによって(A)成分全体のアルカリ溶解性が増大し、アルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化する。そのため、レジストパターンの形成において、ポジ型レジスト組成物を用いて得られるレジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することができる。
【0014】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、前記一般式(a0)で表される構成単位(a0)と、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)とを含む高分子化合物(A1)を含有する。
好ましくは、前記高分子化合物(A1)は、さらに、前記構成単位(a0)に該当しない、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を含む。
【0015】
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含む概念とする。置換基としては、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
なお、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「低級アルキル基」は、炭素原子数1〜5のアルキル基である。
アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としての低級アルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
本発明において、アクリル酸エステルのα位に結合しているのは、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、低級アルキル基またはフッ素化低級アルキル基であることがより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0016】
・構成単位(a0)
前記高分子化合物(A1)は、前記一般式(a0)で表される構成単位(a0)を含む。構成単位(a0)を含むことにより、高分子化合物(A1)のガラス転移温度が下がり、本発明の効果が得られる。また、前記高分子化合物(A1)は、構成単位(a0)を含まない樹脂に比べて、ガラス転移温度が下がるとともに、分解温度は同程度もしくは高くなる。
【0017】
前記一般式(a0)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基である。このハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基については、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよいハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。Rは、中でもメチル基であることが好ましい。
【0018】
前記一般式(a0)中、Yは脂肪族環式基を示す。
ここで、本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
構成単位(a0)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)、等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。好ましくは多環式基である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
【0019】
前記一般式(a0)中、Zは第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基を示す。
ここで「第三級アルキル基」とは、第三級炭素原子を有するアルキル基を示す。「アルキル基」とは、上述のように1価の飽和炭化水素基を示し、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)のアルキル基および環状構造を有するアルキル基を包含する。
本発明のポジ型レジスト組成物は、露光により、その露光部においてZが解離して水素原子となることにより、高分子化合物(A1)の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部のアルカリ溶解性が向上して解像性等が向上すると推測される。
Zとしては、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができ、環状構造を有さず、鎖状の第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基、環状構造を有する第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基等が挙げられる。
【0020】
環状構造を有さず、鎖状の第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基において、鎖状の第三級アルキル基は分岐鎖状のアルキル基であり、炭素数は、3〜7であることが好ましく、3〜6であることがより好ましく、4〜5であることが最も好ましい。具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基等が好ましく挙げられ、tert−ブチル基がより好ましい。
環状構造を有さず、鎖状の第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基としては、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)、tert−アミルオキシカルボニル基等の第三級アルキルオキシカルボニル基;tert−ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチルオキシカルボニルエチル基等の第三級アルキルオキシカルボニルアルキル基;tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐鎖状の第三級アルキル基が挙げられる。中でも、第三級アルキルオキシカルボニル基、第三級アルキルオキシカルボニルアルキル基が好ましく、第三級アルキルオキシカルボニル基がさらに好ましい。これらの中でも、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が最も好ましい。
【0021】
環状構造を有する第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基において、環状構造の環を構成する炭素数は、4〜12であることが好ましく、5〜10であることがより好ましく、6〜10であることが最も好ましい。
環状構造としては、例えばモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。好ましくは、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
環状構造を有する第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基としては、例えば、シクロアルキル基(環上)の炭素原子に、鎖状のアルキル基又は分岐鎖状のアルキレン基が結合している酸解離性溶解抑制基等が挙げられる。
なお、分岐鎖状のアルキレン基が結合している酸解離性溶解抑制基におけるシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0022】
鎖状のアルキル基が結合している環状構造を有する第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基においては、鎖状のアルキル基が結合している環上の炭素原子が第三級炭素原子となる。鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることが最も好ましい。具体例としては、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−1−シクロアルキル基、1−エチル−1−シクロアルキル基等が挙げられる。
分岐鎖状のアルキレン基が結合している環状構造を有する第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基においては、アルキレン基の炭素原子が第三級炭素原子となる。具体例としては、下記化学式(a0−0−1)で表される基が好ましい。
【0023】
【化3】

【0024】
式(a0−0−1)中、R15、R16はそれぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜5である。
14はシクロアルキル基である。また、R14は、置換基を有していてもよい。置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0025】
以上の酸解離性溶解抑制基(Z)の中でも、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が最も好ましい。
【0026】
前記一般式(a0)中、aは1〜3の整数を示し、好ましくは1である。
また、bは0〜2の整数を示し、好ましくは0である。
また、a+b=1〜3であり、好ましくは1である。
また、cは0〜3の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。また、dは0〜3の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。また、eは0〜3の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
【0027】
中でも、構成単位(a0)としては、下記一般式(a0−1)で表される構成単位が特に好ましい。
【化4】

[式中、R,Z,c,d,eは前記と同じである。]
【0028】
構成単位(a0)を誘導するモノマーは、例えばアルコール性水酸基を1〜3個有する(メタ)アクリレート化合物の水酸基を、公知の手法を用いて、第三級アルキル基を含む保護基で保護することにより合成することができる。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、α位に水素原子が結合したアクリレートと、α位にメチル基が結合したメタクリレートの一方あるいは両方を意味する。
【0029】
高分子化合物(A1)において、構成単位(a0)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)中の構成単位(a0)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、10〜60モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a0)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0030】
・構成単位(a2)
前記高分子化合物(A1)は、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を含む。構成単位(a2)を含むことにより、解像性等のリソグラフィー特性が向上し、また、高分子化合物(A1)のガラス転移温度の制御に寄与する。
ここで、ラクトン含有環式基とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、高分子化合物(A1)をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりするうえで有効なものである。
【0031】
構成単位(a2)としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。
【0032】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0033】
【化5】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり、R’は水素原子、低級アルキル基、または炭素数1〜5のアルコキシ基であり、mは0または1の整数である。]
【0034】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRは、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
R’の低級アルキル基としては、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよいRの低級アルキル基と同じである。
一般式(a2−1)〜(a2−5)中、R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
以下に、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)の具体的な構成単位を例示する。
【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
これらの中でも、一般式(a2−1)〜(a2−5)から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましく、一般式(a2−1)〜(a2−3)から選択される少なくとも1種以上を用いることがより好ましい。具体的には、化学式(a2−1−1)、(a2−1−2)、(a2−2−1)、(a2−2−2)、(a2−3−1)、(a2−3−2)、(a2−3−9)及び(a2−3−10)から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
さらに、ガラス転移温度の制御性の点から、単環式基を有する構成単位が好ましく、前記一般式(a2−1)で表される構成単位が特に好ましい。具体的には、化学式(a2−1−1)、(a2−1−2)が好ましく、化学式(a2−1−1)が最も好ましい。
【0041】
高分子化合物(A1)において、構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)中の構成単位(a2)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、5〜70モル%が好ましく、20〜60モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0042】
・構成単位(a1)
前記高分子化合物(A1)は、さらに、前記構成単位(a0)に該当しない、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を含むことが好ましい。構成単位(a1)を含むことにより、高分子化合物(A1)全体のアルカリ溶解性が向上する。
構成単位(a1)としては、酸解離性溶解抑制基(Z)の解離後に脂肪族環式基(Y)を有する前記構成単位(a0)よりも、高分子化合物(A1)全体のアルカリ溶解性を向上させる効果が高いものが好適である。
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、解離前は高分子化合物(A1)全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、解離後はこの高分子化合物(A1)全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、または環状または鎖状のアルコキシアルキルエステルを形成する基などが広く知られている。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、α位に水素原子が結合したアクリル酸エステルと、α位にメチル基が結合したメタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
【0043】
ここで、第3級アルキルエステルとは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状または環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状または環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、前記鎖状または環状のアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基」という。
また、環状または鎖状のアルコキシアルキルエステルとは、カルボキシ基の水素原子がアルコキシアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O―)の末端の酸素原子に前記アルコキシアルキル基が結合している構造を示す。このアルコキシアルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子とアルコキシアルキル基との間で結合が切断される。
【0044】
構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−0−1)で表される構成単位と、下記一般式(a1−0−2)で表される構成単位からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0045】
【化11】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示す。)
【0046】
【化12】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示し;Yはアルキレン基または脂肪族環式基を示す。)
【0047】
一般式(a1−0−1)において、Rのハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基については上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよいハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
は、酸解離性溶解抑制基であれば特に限定することはなく、例えばアルコキシアルキル基、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基が好ましい。第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が挙げられる。
ここで「脂肪族環式基」とは、上記構成単位(a0)と同様の定義であり、好ましくは多環式基である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
そして、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
また、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基としては、例えば環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、下記一般式(a1−0−3)で示す構成単位の様に、アダマンチル基の様な脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0048】
【化13】

[式中、R,R15,R16は前記と同じである。]
【0049】
また、前記アルコキシアルキル基としては、下記一般式(a1−0−4)で示される基が好ましい。
【0050】
【化14】

(式中、R17、R18はそれぞれ独立して直鎖状または分岐状のアルキル基または水素原子であり、R19は直鎖状、分岐状または環状のアルキル基である。または、R17とR19の末端が結合して環を形成していてもよい。)
【0051】
17、R18において、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特にR17、R18の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
19は直鎖状、分岐状または環状のアルキル基であり、炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
19が直鎖状、分岐鎖状の場合は炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
19が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的にはフッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、上記式においては、R17及びR19がそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であってR19の末端とR17の末端とが結合していてもよい。
この場合、R17とR19と、R19が結合した酸素原子と、該酸素原子およびR17が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(a1−0−2)において、Rについては上記と同様である。Xについては、式(a1−0−1)中のXと同様である。
は好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基又は2価の脂肪族環式基である。
は2価の脂肪族環式基である場合、水素原子が2個以上除かれた基が用いられる以外は、前記構成単位(a1)においての「脂肪族環式基」の説明と同様のものを用いることができる。
【0053】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0054】
【化15】

[上記式中、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基を表し、Yは炭素数1〜5の低級アルキル基、または脂肪族環式基を表し;nは0〜3の整数を表し;mは0または1を表し;Rは前記と同じであり、R’、R’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0055】
前記R’、R’は好ましくは少なくとも1つが水素原子であり、より好ましくは共に水素原子である。nは好ましくは0または1である。
【0056】
X’は前記Xにおいて例示した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基と同様のものである。
Yの脂肪族環式基については、上述の「脂肪族環式基」の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
【0058】
【化16】

【0059】
【化17】

【0060】
【化18】

【0061】
【化19】

【0062】
【化20】

【0063】
【化21】

【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
【化24】

【0067】
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、一般式(a1−1)で表される構成単位が好ましく、具体的には(a1−1−1)〜(a1−1−6)または(a1−1−35)〜(a1−1−41)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、構成単位(a1)としては、特に式(a1−1−1)〜式(a1−1−4)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−01)で表されるものや、式(a1−1−35)〜(a1−1−41)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−02)も好ましい。
【0068】
【化25】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R11は低級アルキル基を示す。)
【0069】
【化26】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R12は低級アルキル基を示す。hは1〜3の整数を表す)
【0070】
一般式(a1−1−01)において、Rについては上記と同様である。R11の低級アルキル基はRにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0071】
一般式(a1−1−02)において、Rについては上記と同様である。R12の低級アルキル基はRにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基が最も好ましい。hは1又は2が好ましく、2が最も好ましい。
【0072】
高分子化合物(A1)中、構成単位(a1)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0073】
・構成単位(a3)
高分子化合物(A1)は、本願発明の効果を損なわない範囲で、さらに極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を含んでいてもよい。構成単位(a3)を含むことにより、(A)成分の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
【0074】
構成単位(a3)における極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0075】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)で表される構成単位、(a3−2)で表される構成単位、(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0076】
【化27】

(式中、Rは前記に同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。)
【0077】
式(a3−1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0078】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基はノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0079】
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらはアクリル酸のカルボキシ基の末端に2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールはノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0080】
構成単位(a3)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)が構成単位(a3)を含む場合、構成単位(a3)の割合は、当該高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、5〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜25モル%がさらに好ましい。
【0081】
・構成単位(a4)
高分子化合物(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成単位(a0)、(a1)、(a2)、(a3)以外の他の構成単位(a4)を含んでいてもよい。
構成単位(a4)は、上述の構成単位(a0)、(a1)、(a2)、(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
構成単位(a4)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。該多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖又は分岐状のアルキル基で置換されていてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)の構造のものを例示することができる。
【0082】
【化28】

(式中、Rは前記と同じである。)
【0083】
かかる構成単位(a4)を高分子化合物(A1)に含有させる際には、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a4)を1〜30モル%、好ましくは10〜20モル%含有させると好ましい。
【0084】
高分子化合物(A1)は、少なくとも構成単位(a0)および(a2)を有する共重合体であり、好ましくは、さらに構成単位(a1)を有する共重合体である。係る共重合体としては、例えば、上記構成単位(a0)、(a2)および(a1)からなる共重合体等が例示できる。
本発明においては、高分子化合物(A1)としては、特に下記式(A1−11)の様な構成単位の組み合わせを含むものが好ましい。
【0085】
【化29】

[式中、R、R12、c、e、hは前記と同じである。]
【0086】
高分子化合物(A1)は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、高分子化合物(A1)には、上記重合の際に、たとえばHS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された高分子化合物は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0087】
高分子化合物(A1)の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定するものではないが、2000〜50000が好ましく、3000〜30000がより好ましく、5000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限よりも小さいと、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限よりも大きい、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
また、分散度(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が最も好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0088】
(A)成分中、高分子化合物(A1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
(A)成分中、高分子化合物(A1)の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0089】
<(B)成分>
(B)成分としては、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0090】
オニウム塩系酸発生剤として、例えば下記一般式(b−0)で表される酸発生剤を好適に用いることができる。
【0091】
【化30】

【0092】
[式中、R51は、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、または直鎖、分岐鎖若しくは環状のフッ素化アルキル基を表し;R52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、または直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基であり;R53は置換基を有していてもよいアリール基であり;u’’は1〜3の整数である。]
【0093】
一般式(b−0)において、R51は、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、または直鎖、分岐鎖若しくは環状のフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、炭素数4〜12であることが好ましく、炭素数5〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、該フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中全水素原子の個数に対する置換したフッ素原子の個数の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
51としては、直鎖状のアルキル基またはフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0094】
52は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基、直鎖若しくは分岐鎖状のハロゲン化アルキル基、または直鎖若しくは分岐鎖状のアルコキシ基である。
52において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子が好ましい。
52において、アルキル基は、直鎖または分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、特に1〜4、さらには1〜3であることが望ましい。
52において、ハロゲン化アルキル基は、アルキル基中の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。ここでのアルキル基は、前記R52における「アルキル基」と同様のものが挙げられる。置換するハロゲン原子としては上記「ハロゲン原子」について説明したものと同様のものが挙げられる。ハロゲン化アルキル基において、水素原子の全個数の50〜100%がハロゲン原子で置換されていることが望ましく、全て置換されていることがより好ましい。
52において、アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状であり、その炭素数は好ましくは1〜5、特に1〜4、さらには1〜3であることが望ましい。
52としては、これらの中でも水素原子が好ましい。
【0095】
53は置換基を有していてもよいアリール基であり、置換基を除いた基本環(母体環)の構造としては、ナフチル基、フェニル基、アントラセニル基などが挙げられ、本発明の効果やArFエキシマレーザーなどの露光光の吸収の観点から、フェニル基が望ましい。
置換基としては、水酸基、低級アルキル基(直鎖または分岐鎖状であり、その好ましい炭素数は5以下であり、特にメチル基が好ましい)などを挙げることができる。
53のアリール基としては、置換基を有しないものがより好ましい。
u’’は1〜3の整数であり、2または3であることが好ましく、特に3であることが望ましい。
【0096】
一般式(b−0)で表される酸発生剤の好ましいものは以下の様なものを挙げることができる。
【0097】
【化31】

【0098】
一般式(b−0)で表される酸発生剤は1種または2種以上混合して用いることができる。
【0099】
また一般式(b−0)で表される酸発生剤の他のオニウム塩系酸発生剤として、例えば下記一般式(b−1)または(b−2)で表される化合物も好適に用いられる。
【0100】
【化32】

[式中、R”〜R”,R”〜R”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し;R”は、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはフッ素化アルキル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0101】
式(b−1)中、R”〜R”はそれぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n‐ブチル基、tert‐ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R”〜R”は、それぞれ、フェニル基またはナフチル基であることが最も好ましい。
【0102】
”は、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また、該フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中のフッ素原子の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
”としては、直鎖または環状のアルキル基、またはフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0103】
式(b−2)中、R”〜R”はそれぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
”〜R”のアリール基としては、R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”はすべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR”としては上記式(b−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0104】
式(b−1)、(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。また、これらのオニウム塩のアニオン部がメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0105】
また、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部を下記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は(b−1)又は(b−2)と同様)。
【0106】
【化33】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0107】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0108】
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0109】
【化34】

(式(B−1)中、R31、R32はそれぞれ独立に有機基を表す。)
【0110】
31、R32の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
31の有機基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していても良い。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0111】
32の有機基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R32のアルキル基、アリール基としては、前記R31で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0112】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0113】
【化35】

[式(B−2)中、R33は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R34はアリール基である。R35は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。]
【0114】
【化36】

[式(B−3)中、R36はシアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R37は2または3価の芳香族炭化水素基である。R38は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。p’’は2または3である。]
【0115】
前記一般式(B−2)において、R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが好ましい。
【0116】
34のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントラセル(anthracyl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、およびこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
34のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していても良い。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
【0117】
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、部分的にフッ素化されたアルキル基が最も好ましい。
35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0118】
前記一般式(B−3)において、R36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p’’は好ましくは2である。
【0119】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、WO2004/074242A2(65〜85頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
【0120】
【化37】

【0121】
上記例示化合物の中でも、下記の4つの化合物が好ましい。
【0122】
【化38】

【0123】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0124】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、中でも(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。具体的には、ジ(1−ナフチル)モノフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート等である。
本発明のポジ型レジスト組成物における(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0125】
<(D)成分>
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合することができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNHの水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)が挙げられる。その具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミン等が挙げられる。
これらの中でも、アルキルアルコールアミン及びトリアルキルアミンが好ましく、トリアルキルアミンが最も好ましい。トリアルキルアミンの中でもトリ−n−ペンチルアミンが最も好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0126】
<任意成分>
本発明のポジ型レジスト組成物には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0127】
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0128】
本発明のポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤(以下、(S)成分ということがある)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類及びその誘導体;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼンン、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0129】
≪サーマルフロー用ポジ型レジスト組成物≫
本発明のサーマルフロー用ポジ型レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)(以下、(A)成分という。)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分という。)とを含むものである。
【0130】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、前記一般式(a0)’で表される構成単位(a0)’を含む高分子化合物(A2)を含有する。
【0131】
・構成単位(a0)’
前記高分子化合物(A2)は、前記一般式(a0)’ で表される構成単位(a0)’を含む。構成単位(a0)’を含むことにより、高分子化合物(A2)のガラス転移温度が下がり、本発明の効果が得られる。また、前記高分子化合物(A2)は、構成単位(a0)’を含まない樹脂に比べて、ガラス転移温度が下がるとともに、分解温度は同程度もしくは高くなる。
【0132】
前記一般式(a0)’中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基である。このハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基については、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよいハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。Rは、中でもメチル基であることが好ましい。
【0133】
前記一般式(a0)’中、Yは脂肪族環式基を示す。
ここで「脂肪族環式基」とは、前記一般式(a0)中のYの脂肪族環式基と同様であり、好ましくは多環式基であり、中でもアダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
【0134】
前記一般式(a0)’中、Z’は酸解離性溶解抑制基を示す。
本発明のポジ型レジスト組成物は、露光により、その露光部においてZ’が解離して水素原子となることにより、高分子化合物(A2)の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上して解像性等が向上する。
Z’としては、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。
具体的には、前記一般式(a0)中のZで説明した環状構造を有さず、鎖状の第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基(第三級アルキルオキシカルボニル基、第三級アルキルオキシカルボニルアルキル基、分岐鎖状の第三級アルキル基)、環状構造を有する第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基と同様のものが挙げられる。さらに、環状または鎖状のアルコキシアルキル基等も挙げられる。
【0135】
環状または鎖状のアルコキシアルキル基としては、前記構成単位(a1)の一般式(a1−0−4)で示される基と同様である。
【0136】
以上の酸解離性溶解抑制基(Z’)の中でも、第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基が好ましい。その中でも、第三級アルキルオキシカルボニル基が好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)がより好ましい。
【0137】
前記一般式(a0)’中、aは1〜3の整数を示し、好ましくは1である。
また、bは0〜2の整数を示し、好ましくは0である。
また、a+b=1〜3であり、好ましくは1である。
また、cは0〜3の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。また、dは0〜3の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。また、eは0〜3の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
【0138】
中でも、構成単位(a0)’としては、下記一般式(a0−1)’で表される構成単位が特に好ましい。
【化39】

[式中、R,Z’,c,d,eは前記と同じである。]
【0139】
構成単位(a0)’を誘導するモノマーは、例えばアルコール性水酸基を1〜3個有する脂肪族多環式基含有(メタ)アクリレート化合物の水酸基を、公知の手法を用いて、第三級アルキル基を含む保護基で保護することにより合成することができる。
【0140】
高分子化合物(A2)において、構成単位(a0)’としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A2)中の構成単位(a0)’の割合は、高分子化合物(A2)を構成する全構成単位の合計に対して、10〜60モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましく、15〜30モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a0)’を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0141】
・構成単位(a2)、構成単位(a1)
前記高分子化合物(A2)は、さらに、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を含むことが好ましい。
また、前記高分子化合物(A2)は、さらに、前記構成単位(a0)’ に該当しない、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を含むことが好ましい。
構成単位(a2)および構成単位(a1)としては、上記≪ポジ型レジスト組成物≫の構成単位(a2)および(a1)(ただし、前記構成単位(a0)’ に該当するものを除く。)と同様であり、説明を省略する。
また、前記高分子化合物(A2)は、さらに、構成単位(a0)’、(a2)、(a1)以外の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、上記≪ポジ型レジスト組成物≫の構成単位(a3)、(a4)と同様のものを用いることができる。
【0142】
高分子化合物(A2)は、少なくとも構成単位(a0)’を有する重合体であり、好ましくは、さらに構成単位(a2)及び/又は(a1)を有する共重合体である。係る共重合体としては、例えば、上記構成単位(a0)’、(a2)および(a1)からなる共重合体等が例示できる。
【0143】
本発明においては、高分子化合物(A2)としては、前記式(A1−11)の様な構成単位の組み合わせを含むものが特に好ましい。
高分子化合物(A2)の製法、質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)は、前記高分子化合物(A1)と同様であり、説明を省略する。
【0144】
(A)成分中、高分子化合物(A2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
(A)成分中、高分子化合物(A2)の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
(B)成分、その他の成分((D)成分、任意成分)については、上記≪ポジ型レジスト組成物≫と同様であり、説明を省略する。
【0145】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明のレジストパターン形成方法は例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、まずシリコンウェーハのような基板上に、上記ポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベーク(PAB)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、これに例えばArF露光装置などにより、ArFエキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、マスクパターンに忠実なレジストパターンを得ることができる。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
また、露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本発明にかかるポジ型レジスト組成物は、特に、ArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0146】
[サーマルフロー工程(サーマルフロープロセス)]
本発明のレジストパターン形成方法においては、上述のようにしてレジストパターンを形成した後、さらに、サーマルフロー処理を行う。
サーマルフロー処理は、例えば以下の様にして行うことができる。
すなわち、現像処理後のレジストパターンを少なくとも1回、好ましくは2〜3回加熱して軟化させ、レジストをフローさせることにより、レジストパターンのパターンサイズ(例えばホールパターンの孔径やラインアンドスペースのスペース幅)を現像直後のサイズより縮小(狭小)させる。
好適な加熱温度は、レジスト組成物の組成に依存し、レジストパターンの軟化点以上であれば特に制限はないが、好ましくは80〜180℃、より好ましくは110〜170℃の範囲内であり、さらに好ましくは130〜170℃である。加熱温度をこの範囲内とすることにより、パターンサイズの制御が容易である、既存の装置に用いやすい等の利点がある。
また、好適な加熱時間は、スループットに支障がなく、所望のパターンサイズが得られる範囲内であればよく、特に制限はないが、通常の半導体素子の製造ライン工程から判断すれば、1回の加熱につき、好ましくは10〜300秒、より好ましくは30〜180秒程度とすることが好ましい。
【0147】
本発明のサーマルフロー用に適したポジ型レジスト組成物は、ArFエキシマレーザーリソグラフィー等に使用されるレジスト組成物を用いたサーマルフロープロセスにおいて、レジストパターンサイズの制御性に優れるという効果を有する。その理由は明らかではないが、次のように推測される。
従来ArFエキシマレーザーリソグラフィー等に使用されるレジスト組成物の中には、現像液との親和性を高めることにより露光部でのアルカリ溶解性を向上させる等の目的のために、極性基含有脂肪族炭化水素基、例えば「−Y(脂肪族環式基)−OH」という構造を有する構成単位を含む樹脂が用いられているものがある。
この「−Y(脂肪族環式基)−OH」という構造を有する構成単位を含む樹脂は、サーマルフロープロセスにおける加熱温度によるレジストパターンの軟化が不充分であり、サーマルフローによるレジストパターンの形成が困難である。
これは、樹脂のガラス転移温度が高いためであると考えられ、樹脂中の極性基含有脂肪族炭化水素基である「−Y−OH」同士の間の水素結合力の作用によりガラス転移温度が高くなると推測される。
本発明に用いられる樹脂は、「−Y−O−Z(酸解離性溶解抑制基)」という構造を有する構成単位(a0)を含むものである。この「−Y−O−Z」同士の間の水素結合力は、前記の「−Y−OH」同士の間の水素結合力よりも弱いために、樹脂のガラス転移温度が従来よりも下がり、サーマルフロー処理によりレジストパターンが充分に軟化されると考えられる。
レジスト組成物において、構成単位(a0)中の「−Y−O−Z」という構造は、露光により、露光部は「−Y−OH」となって親水性が高まり、現像液との親和性が高くなり、一方、未露光部は「−Y−O−Z」のまま変化せず、アルカリ不溶性であると考えられる。この未露光部からなるレジストパターンは、上述の理由から樹脂のガラス転移温度が従来よりも下がり、サーマルフロー処理によりレジストパターンが充分に軟化されるために、より微細なレジストパターンが形成でき、パターンサイズの制御性が向上すると推測される。
【0148】
また、本発明に用いられる樹脂は、従来の樹脂に比べてガラス転移温度が低いとともに、分解温度が同程度もしくは若干高くなる。これにより、本発明においては、サーマルフロー処理の際のレジストパターンの加熱温度を通常の条件、もしくは通常よりも低い温度に設定することができ、既存の装置に用いやすい等の使用性に優れる効果も得られる。
【0149】
また、本発明においては、良好なリソグラフィー特性(解像性、焦点深度幅(DOF)等)が得られる。サーマルフロープロセスにおけるレジストパターンを軟化させやすくする手段として、低分子体等の添加剤をレジスト組成物中に配合する方法が考えられる。
しかしながら、この方法では、リソグラフィー特性が低下する問題がある。
本発明においては、前記構成単位(a0)を含む樹脂を用いることにより充分にレジストパターンが軟化されるため、前記添加剤をレジスト組成物中に配合する必要がないことから良好なリソグラフィー特性が得られると推測される。
【実施例】
【0150】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0151】
≪サーマルフロー特性の評価≫
下記化学式で表されるモノマーの化合物1〜6を用いて、共重合体(A)−1〜(A)−3を以下に示す方法により合成した。また、化合物1の製法も合わせて示した。
【0152】
【化40】

【0153】
[合成例]
・化合物1の合成
ナスフラスコにTHF(テトラヒドロフラン)150mLを入れ、上記化合物4のメタクリル酸1−(3−ヒドロキシルアダマンチル)20gとトリエチルアミン10gを加えた。その後、氷冷しながら、t−ブトキシカルボン酸無水物22gを加え、室温で3時間撹拌した。次に、その反応溶液を酢酸エチルで抽出した後、濃縮して上記化合物1を得た。
【0154】
・化合物6の合成
ナスフラスコにTHF100mLを入れ、上記化合物5を10gとトリエチルアミン4.6gを加えた。その後、氷冷しながら、t−ブトキシカルボン酸無水物8.0gを加え、室温で3時間撹拌した。次に、その反応溶液を酢酸エチルで抽出した後、濃縮して上記化合物6を得た。
H−NMR(400MHz、DMSO―d6);σ(ppm)=6.04(s,1H,C=CH),5.67(s,1H,C=CH),3.75(s,2H,OCH),3.66(s,2H,OCH),1.89(s,3H,CH),1.59−1.30(m,12H,adamantyl CH or CH),1.41(s,9H,C(CH
【0155】
・共重合体(A)−1の合成
ナスフラスコにTHF250mLを入れ、上記合成により得られた化合物1を4g、上記化合物2を4.5g、上記化合物3を4gそれぞれ加えた。
その後、重合開始剤AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を0.5g加えて6時間還流した。反応終了後、減圧濃縮し、その濃縮液を0.6Lのヘプタンに加えて再沈殿させた。その後、ろ過および減圧乾燥を経て、目的の共重合体(A)−1を得た。
得られた共重合体を下記化学式(A)−1に示す。
その質量平均分子量(Mw)は10000、分散度(Mw/Mn)は2.0であり、組成比(モル比)は、l/m/n=30/50/20であった。
【0156】
【化41】

【0157】
・共重合体(A)−2の合成
ナスフラスコにTHF250mLを入れ、上記化合物4を4g、上記化合物2を6.4g、上記化合物3を5.8gそれぞれ加えた。
その後、重合開始剤AIBNを0.7g加えて6時間還流した。反応終了後、減圧濃縮し、その濃縮液を0.6Lのヘプタンに加えて再沈殿させた。その後、ろ過および減圧乾燥を経て、目的の共重合体(A)−2を得た。
得られた共重合体を下記化学式(A)−2に示す。
その質量平均分子量(Mw)は10000、分散度(Mw/Mn)は2.0であり、組成比(モル比)は、l/m/n=30/50/20であった。
【0158】
【化42】

【0159】
・共重合体(A)−3の合成
ナスフラスコにTHF200mLを入れ、上記化合物6を3.0g、上記化合物2を3.1g、上記化合物3を2.8gそれぞれ加えた。
その後、重合開始剤AIBNを0.3g加えて6時間還流した。反応終了後、減圧濃縮し、その濃縮液を0.6Lのヘプタンに加えて再沈殿させた。その後、ろ過および減圧乾燥を経て、目的の共重合体(A)−3を得た。
得られた共重合体を下記化学式(A)−3に示す。
その質量平均分子量(Mw)は10000、分散度(Mw/Mn)は2.0であり、組成比(モル比)は、l/m/n=30/50/20であった。
【0160】
【化43】

【0161】
(実施例1〜2、比較例1)
[ガラス転移温度(Tg)、分解温度(Td)の評価]
上記で得られた共重合体(A)−1〜(A)−3について、Tdは熱分析装置DSC6200(Seiko Instrument社製)にて10℃/min.の昇温条件で測定を行った。また、Tgは熱分析装置TG/DTA6200(Seiko Instrument社製)にて10℃/min.の昇温条件で測定を行った。結果を表1に示す。
【0162】
【表1】

【0163】
表1から、実施例1、2の共重合体(A)−1、(A)−3は、比較例1の共重合体(A)−2に比べてガラス転移温度が低く、分解温度が若干高いことが確認された。
【0164】
(実施例3、比較例2)
表2に示す各成分を混合し、溶解してポジ型レジスト組成物溶液を調製した。
【0165】
【表2】

【0166】
表2中の各略号は以下の意味を示す。また、[]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1〜(A)−2:上記共重合体(A)−1〜(A)−2をそれぞれ示す。
(B)−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
(D)−1:トリエタノールアミン
(S)−1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)
【0167】
得られたポジ型レジスト組成物溶液を用いて以下の評価を行った。
8インチのシリコンウェーハ上に、有機反射防止膜用材料(製品名:ARC−29、ブリューワー社製)を塗布し、205℃で60秒間焼成して、膜厚77nmの反射防止膜を形成して基板とした。
その基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物を、スピンナーを用いて均一に塗布し、ホットプレート上で100℃(PAB温度)、60秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚200nmのレジスト層を形成した。
【0168】
次いで、ArF露光装置(波長193nm)NSR−S302(製品名、Nikon社製、NA(開口数)=0.60,σ=0.75)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターンを介して選択的に露光した。
そして、100℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて現像液(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)で60秒間現像し、その後15秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行った。
その後、100℃で60秒間加熱して乾燥させてレジストパターンを形成した。
その結果、複数の直径200nmのホールパターンを得た。
【0169】
[サーマルフロー処理によるレジストパターンサイズの制御性の評価]
上記で得られたレジストパターンについて、以下の温度条件で、それぞれサーマルフロー処理を行い、ホールパターンの直径(nm)の変化を評価した。
実施例3:1)155℃、90秒;2)160℃、90秒;3)165℃、90秒
比較例2:1)175℃、90秒;2)180℃、90秒;3)185℃、90秒
【0170】
上記評価において、直径200nmホールパターンのフローレートを図1にグラフで示す。
横軸はサーマルフロー処理の温度(℃)、縦軸はサーマルフロー処理を行った後のホールの直径の寸法(直径,nm)を示している。
【0171】
図1に示したグラフから、本発明に係る実施例3は、比較例2よりも低い温度でのサーマルフロー処理により、ホールの直径の寸法が比較例2と同程度変化し、レジストパターンサイズを制御できることが確認できた。
【0172】
≪リソグラフィー特性の評価≫
以下に示すポジ型レジスト組成物を用いて、ラインアンドスペースのレジストパターン(以下、L/Sパターンということがある。)を形成して露光量マージン(ELマージン)と解像性の評価を行った。
また、コンタクトホールのレジストパターン(以下、CHパターンということがある。)を形成してELマージン、マスクリニアリティ、焦点深度幅(DOF)の評価をそれぞれ行った。なお、CHパターンにおいては、サーマルフロー処理によるレジストパターンサイズの制御性の評価も行った。
【0173】
(実施例4、比較例3〜5)
表3に示す各成分を混合し、溶解してポジ型レジスト組成物溶液を調製した。
【0174】
【表3】

【0175】
表3中の各略号は以下の意味を示す。また、[]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:上記共重合体(A)−1を示す。
(A)−4〜(A)−6:下記共重合体(A)−4〜(A)−6をそれぞれ示す。
【0176】
【化44】

構成単位の比率 l:m:n=40:40:20(モル比)
Mw=10000,Mw/Mn=2.0
【0177】
【化45】

構成単位の比率 l:m:n=30:50:20(モル比)
Mw=10000,Mw/Mn=2.0
【0178】
【化46】

構成単位の比率 l:m:n=40:40:20(モル比)
Mw=10000,Mw/Mn=2.0
【0179】
(B)−2:ジ(1−ナフチル)モノフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホ
ネート
(D)−2:トリ−n−ペンチルアミン
(E)−1:サリチル酸
Add−A:リトコール酸
(S)−1:PGMEA/PGME=6/4(質量比)
【0180】
得られたポジ型レジスト組成物溶液を用いて以下の評価を行った。
<ラインアンドスペース(L/S)パターンにおける評価>
有機系反射防止膜組成物「AR46」(商品名、Rohm and Haas社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で、215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚29nmの有機系反射防止膜を形成した。
その反射防止膜上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物溶液を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、表4に示すPAB温度で60秒間のプレベーク(PAB)を行い、乾燥することにより、膜厚200nmのレジスト膜を形成した。
【0181】
次いで、ArF露光装置NSR−S306D(商品名、Nikon社製;NA(開口数)=0.78,Y−Dipole)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターン(ハーフトーン)を介して選択的に照射した。
そして、表4に示すPEB温度で60秒間のPEB(露光後加熱)を行い、さらに23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、その後、30秒間水洗して乾燥して、さらに100℃、60秒の条件でポストベークを行うことにより、ラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0182】
[ELマージン(露光量マージン)の評価]
ライン幅80nm、ピッチ160nmのL/Sパターンが形成される際の最適露光量(Eop)(単位:mJ/cm(エネルギー量))を求めた。
得られたL/Sパターンを側長SEM(日立製作所社製,製品名「S−9220」)により観察し、各パターンをターゲット寸法±10%の範囲内の寸法で形成できる露光量が、上記で求めたEopの何%以内であるか(ELマージン)を求めた。
なお、ELマージンはその値が大きいほど、露光量の変動に伴うパターンサイズの変化量が小さいことを示す。結果は表4に示した。
【0183】
[解像性の評価]
前記Eopにおいて、パターンサイズを140nm、130nm、120nm、110nm、100nm、90nm(以上、ラインとスペースの比率が1:1のパターン)、80nmのラインとスペースの比率が1:1のパターン、1.2:1のパターン、1.5:1のパターン、すなわちスペース幅を固定してライン幅が太くなっていくパターン)に変更し、解像するパターンの最小寸法(nm)およびL/S比を評価した。結果は表4に示した。
【0184】
【表4】

【0185】
表4から、ELマージンについて、実施例4は比較例3〜5に比べて同程度以上であり、良好であることが確認された。
また、解像性について、実施例4は比較例3〜5から、近接効果が良好であり、解像性が良好であることが確認された。
また、レジストパターン形状について、実施例4は比較例3〜5に比べて同程度であり、良好であることが確認された。
【0186】
得られたポジ型レジスト組成物溶液を用いて以下の評価を行った。
<コンタクトホール(CH)パターンにおける評価>
有機系反射防止膜組成物「AR46」(商品名、Rohm and Haas社製)を、スピンナーを用いて8インチシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で、215℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚29nmの有機系反射防止膜を形成した。
その反射防止膜上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物溶液を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、表5に示すPAB温度で60秒間のプレベーク(PAB)を行い、乾燥することにより、膜厚200nmのレジスト膜を形成した。
【0187】
次いで、ArF露光装置NSR−S306D(商品名、Nikon社製;NA(開口数)=0.78,2/3輪帯照明)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、マスクパターンを介して選択的に照射した。
そして、表5に示すPEB温度で60秒間のPEB(露光後加熱)を行い、さらに23℃にて、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像し、その後、30秒間水洗して乾燥して、さらに100℃、60秒の条件でポストベークを行うことにより、コンタクトホール(CH)パターンを形成した。
【0188】
[感度]
100nmのCHパターンが、ピッチ200nmで形成される際の最適露光量(Eop)(単位:mJ/cm)を求めた。
【0189】
[焦点深度幅(DOF)の評価]
露光量を上記で求めたEop(mJ/cm)で一定とし、焦点を適宜上下にずらしてCHパターンを形成し、ホールパターンが形成されている範囲の焦点深度(DOF)の幅(nm)を求めた。結果は表5に示した。
【0190】
【表5】

【0191】
表5から、DOFについては、実施例4は比較例3〜5に比べて良好であることが確認された。
なお、ELマージンは、露光量(mJ/cm)に対するホールの直径(nm)の変化をグラフ(横軸:光量,縦軸:ホールの直径)に表した際、そのグラフの傾きが小さいことから、実施例4は比較例3〜5と同程度以上であり、良好であることが確認された。
また、マスクリニアリティについても、実施例4は比較例3〜5に比べてマスク再現性が同程度以上であり、良好であることが確認された。
【0192】
[サーマルフロー処理によるレジストパターンサイズの制御性の評価]
上記で得られたコンタクトホール(CH)パターンについて、以下の温度条件で、それぞれサーマルフロー処理を行い、ホールの直径(nm)の変化を評価した。
1)100℃、90秒;2)145℃、90秒
【0193】
上記評価において、サーマルフロー処理により、実施例4では、ホールの直径が190.8nmから156.6nmへと変化し、レジストパターンサイズが制御されることが確認された。
一方、比較例3〜5においては、ホールの直径の寸法変化は認められなかった。
【0194】
以上の結果から、本発明にかかる(A)成分を含有する実施例4は、サーマルフロープロセスにおいてレジストパターンサイズの制御性に優れることが確認された。また、本発明にかかる添加剤が未配合の実施例4は、リソグラフィー特性も良好であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】実施例3のサーマルフロー特性の結果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むポジ型レジスト組成物であって、
前記樹脂成分(A)は、下記一般式(a0)
【化1】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;Yは脂肪族環式基を示し;Zは第三級アルキル基を含む酸解離性溶解抑制基を示し;aは1〜3の整数を示し、bは0〜2の整数を示し、かつa+b=1〜3であり;c、d、eはそれぞれ独立して0〜3の整数を示す。]
で表される構成単位(a0)と、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)とを含む高分子化合物(A1)を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物(A1)は、さらに、前記構成単位(a0)に該当しない、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を含む請求項1記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
サーマルフロープロセス用である請求項1または2記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)とを含むサーマルフロー用ポジ型レジスト組成物であって、
前記樹脂成分(A)は、下記一般式(a0)’
【化2】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;Yは脂肪族環式基を示し;Z’は酸解離性溶解抑制基を示し;aは1〜3の整数を示し、bは0〜2の整数を示し、かつa+b=1〜3であり;c、d、eはそれぞれ独立して0〜3の整数を示す。]
で表される構成単位(a0)’を含む高分子化合物(A2)を含有することを特徴とするサーマルフロー用ポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
さらに含窒素有機化合物(D)を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程、サーマルフロー処理を行う工程を含むレジストパターン形成方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−114613(P2007−114613A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307688(P2005−307688)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】