説明

ポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】 サーマルフロープロセスにおいて、パターン制御性が良好な技術を提供する。
【解決手段】(A)酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するベース樹脂成分、及び(B)放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分を含有するポジ型レジスト組成物であって、
前記(A)成分は、193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下であり、分散度(Mw/Mn)が1.5以下である樹脂を含み、かつ
当該ポジ型レジスト組成物が、サーマルフロープロセス用であることを特徴とするポジ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルフロープロセス用のポジ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速に微細化が進んでいる。微細化の手法としては一般に露光光源の短波長化が行われている。具体的には、従来は、g線、i線に代表される紫外線が用いられていたが、現在では、KrFエキシマレーザ(248nm)が導入され、さらに、ArFエキシマレーザ(193nm)が導入され始めている。
【0003】
微細な寸法のパターンを再現可能な高解像性の条件を満たすレジスト材料の1つとして、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化するベース樹脂と、露光により酸を発生する酸発生剤を有機溶剤に溶解した化学増幅型レジスト組成物が知られている。
ArFエキシマレーザーを用いて露光する方法に好適なレジスト材料として提案されている化学増幅型ポジ型レジスト組成物は、一般に、ベース樹脂として、酸解離性溶解抑制基を有する(メタ)アクリル酸系樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、レジスト材料の面からの超微細化対応策に加え、パターン形成方法の面からも、レジスト材料のもつ解像度の限界を超える技術の研究・開発が行われている。
そのような微細化技術の1つとして、最近、通常のリソグラフィー技術によりレジストパターンを形成した後、該レジストパターンに熱処理を行い、パターンサイズを微細化するサーマルフロープロセスが提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。
サーマルフロープロセスは、ホトリソグラフィー技術により一旦レジストパターンを形成した後、レジストを加熱し、軟化させ、パターンの隙間方向にフローさせることにより、レジストパターンのパターンサイズ、つまり、レジストが形成されていない部分のサイズ(ホールパターンの孔径やラインアンドスペース(L&S)パターンのスペース幅など)を小さくする方法である。
【特許文献1】特開2003−164347号公報
【特許文献2】特開2000−188250号公報
【特許文献3】特開2000−356850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーマルフロープロセスにおいては、フロー時のパターンサイズの制御性が難しいという問題がある。フロー時のパターンサイズ制御性に劣ると、例えば加熱温度の変動に伴いパターンサイズが大きく変動したり、パターン寸法の面内均一性が低い等の問題を生じる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、サーマルフロープロセスにおいて、パターン制御性が良好な技術、即ちサーマルフロー時の小さいフローレート(温度変化に対するレジストパターンの寸法変化量)を示すポジ型レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明のポジ型レジスト組成物は、(A)酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するベース樹脂成分、及び(B)放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分を含有するポジ型レジスト組成物であって、
前記(A)成分は、193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下であり、分散度(Mw/Mn)が1.5以下の樹脂を含み、かつ
当該ポジ型レジスト組成物が、サーマルフロープロセス用であることを特徴とする。
また、本発明のレジストパターン形成方法は、ポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成した後、サーマルフロー処理を行うことを特徴とする。
【0007】
なお、本明細書において、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」とは、メタクリル酸エステル等のα−低級アルキルアクリル酸エステルと、アクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。ここで、「α−低級アルキルアクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルのα炭素原子に結合した水素原子が低級アルキル基で置換されたものを意味する。また、「構成単位」とは、重合体を構成するモノマー単位を意味する。また、「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、サーマルフロープロセスにおいて、フロー時のパターンサイズの制御性を向上させることができる。即ち小さいフローレートを示すポジ型レジスト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[ポジ型レジスト組成物]
(A)成分
本発明において、(A)成分は、193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下であり、かつ分散度(Mw/Mn)が1.5以下の樹脂[以下、(A−1)成分という場合がある]を含むことが必要である。
【0010】
まず、吸光度について説明する。「193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下である」とは、好ましくはArFエキシマレーザーを光源として用いる場合に、レジスト組成物に必要とされる解像性を達成するために必要とされる特性である。吸光度が小さいほど、透明性が高く、レジスト膜において基板底部まで露光光が到達し、解像性やレジストパターン形状に優れるので好ましい。その数値としては、好ましくは0.8(1/μm)以下、より好ましくは0.5(1/μm)以下、さらに好ましくは0.3(1/μm)以下である。なお、吸光度の求め方は、公知の吸光光度法にて測定すればよい。
具体的には、(A−1)成分を可溶な有機溶媒、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解して均一な溶液とし、ガラス基板上に膜厚1.0μmとなるよう塗布し、193nmの光を当て測定する。
【0011】
次に、分散度について説明する。
分散度は、質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)で表される値である。分散度が1.5以下であることにより、フロー時のパターン制御性が向上し、またPEBマージンやレジスト耐熱性が向上するので、小さいほど好ましい。分散度の数値としては、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。下限値は理論上1.0であるが、これに近づくほど好ましい。
【0012】
なお、(A)成分は、上記のように、吸光度と分散度を有する樹脂[(A−1)成分]を含んでいれば良い。
つまり、(A)成分は、上記(A−1)成分と、その他の樹脂を含むものであってもよいが、特には上記(A−1)成分の1種または2種以上からなるものであることが好ましい。
すなわち、特に分散度については、例えば分散度1.5以下の樹脂を2種又はそれ以上混合することによって、(A)成分(混合物)としては1.5を超えるの分散度となってもかまわない。要するに、混合する際のそれぞれの樹脂の少なくとも1種の分散度が1.5以下であればよく、特には混合する樹脂のそれぞれが全て分散度1.5以下であることが好ましい。
なお、(A)成分中に、分散度が1.5を超えるの樹脂を含む場合は、本発明の目的の達成される範囲内とされる。
吸光度については、(A)成分は、少なくとも(A−1)成分を1種含んでいればよいが、(A)成分全体として、上記した1.0(1/μm)以下の値を満足することが好ましい。
【0013】
なお、本発明の(A)成分の質量平均分子量(Mw;ゲルパーミネーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算基準)は、2000〜50000程度、好ましくは3000〜30000程度、より好ましくは5000〜15000程度の該樹脂が適度なアルカリ可溶性を有し、良好なレジストパターンを形成でき、また良好なフローレートを有するので、好ましい。
また、(A−1)成分の好ましい範囲も同様である。
【0014】
また、(A−1)成分は、以下の様なガラス転移点(Tg)を有することが好ましく、小さい分散度により、これを実現することができる。
すなわち、従来のArFレジスト用の樹脂としては、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、構成単位(a)と略記することがある)を含むものがある。なお、構成単位(a)において、α−低級アルキルアクリル酸のα炭素原子に結合した低級アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1のメチル基が挙げられる。
【0015】
構成単位(a)を含む樹脂として、より具体的には、下記(イ)〜(ハ)の3種が挙げられる。
(イ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、構成単位(aa)と略記することがある)のみからなるフルアクリル酸エステル単位の重合体、
(ロ)α−低級アルキルアクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下、構成単位(ma)と略記することがある)のみからなるフルα−低級アルキルアクリル酸エステル単位の重合体、
(ハ)構成単位(aa)と構成単位(ma)とからなるアクリル酸エステル・α−低級アルキルアクリル酸エステル単位の共重合体。
【0016】
そして、前記(イ)の重合体のTgは約110〜140℃、前記(ロ)の重合体のTgは約140〜180℃であり、前記(ハ)の共重合体のTgはその間の数値となる。
そして、本発明においては、(A)成分が構成単位(a)を含むことが好ましい。
本発明において、(A)成分に用いる分散度が1.5以下の樹脂(A−1)は、上述のような、分散度が1.5を越える従来の樹脂であって、同じMwを有している樹脂に比べて、Tgが10〜30℃位上昇していることが確認されている。そして、そのTgの上昇効果は前記(イ)、(ロ)及び(ハ)において、同様に共通していることも確認されている。
従って、(A−1)成分は、Tgが、好ましくは120℃以上、より好ましくは135℃以上であることにより特徴づけることができる。なお、より好ましくは(A)成分全体のTgが120℃以上であることである。
Tgの上限としては、樹脂の分解点以下であれば特に制限はないが、約200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下であることが好ましい。このようなTgを有することにより、PEBマージンやレジスト耐熱性が向上する。
特に、サーマルフロープロセスにおける制御性向上の点から、本発明においては、(A)成分[好ましくは(A−1)成分]において、(イ)の樹脂、(ハ)の樹脂を用いることが好ましく、特に(ハ)の樹脂が好ましい。
また、(A)成分[好ましくは(A−1)成分]において、構成単位(ma)を20モル%以上有することが好ましい。
また、(A)成分[好ましくは(A−1)成分]において、構成単位(aa)を40モル%以上有することが好ましい。
また、(ハ)の樹脂の場合には、(A)成分[好ましくは(A−1)成分]において、特には構成単位(aa)の割合が40〜80モル%、特には50〜70モル%、構成単位(ma)の割合が60〜20モル%、特には30〜50モル%であると好ましい。
【0017】
(A)成分における酸解離性溶解抑制基は、露光前は(A)成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に露光後は(B)成分から発生した酸の作用により解離することにより、(A)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであればよく、特に限定されず、これまで公知のものを使用することができる。
このような酸解離性溶解抑制基としては、例えば、従来、ArFエキシマレーザー用のレジスト組成物に用いられている(メタ)アクリル酸系樹脂等に用いられているものを1種又は2種以上を任意に組み合わせて使用可能であり、具体的には、鎖状アルコキシアルキル基、第3級アルキルオキシカルボニル基、第3級アルキル基、第3級アルコキシカルボニルアルキル基及び環状エーテル基等が挙げられる。
【0018】
鎖状アルコキシアルキル基としては、1−エトキシエチル基、1−メトキシメチルエチル基、1−イソプロポキシエチル基、1−メトキシプロピル基、1−n−ブトキシエチル基などが挙げられる。
第3級アルキルオキシカルボニル基としては、tert-ブチルオキシカルボニル基、tert-アミルオキシカルボニル基などが挙げられる。
第3級アルキル基としては、tert−ブチル基、tert-アミル基などの分岐鎖状第3級アルキル基、2−メチル−アダマンチル基、2−エチルアダマンチル基などの脂肪族多環式基含有第3級アルキル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基などの脂肪族単環式基含有第3級アルキル基などが挙げられる。
第3級アルコキシカルボニルアルキル基としては、tert-ブチルオキシカルボニルメチル基、tert-アミルオキシカルボニルメチル基などが挙げられる。
環状エーテル基としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられる。
【0019】
これらの中でも第3級アルキル基が好ましく、さらには脂肪族単環式又は多環式基含有第3級アルキル基がより好ましい。
【0020】
ここで、脂肪族単環式基、脂肪族多環式基は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基を示す。特に好ましくは脂膨族多環式基である。脂肪族単環式基、脂肪族多環式基は炭素、及び水素からなる基であることに限定はされず、置換基を有しても良いが、炭化水素基であることが好ましい。また、炭化水素基は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
【0021】
脂肪族多環式基としては、ArFレジストにおいて多数提案されているものの中から任意に選択して用いることができる。具体的には、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどとして、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個又は複数の水素原子を除いた基が挙げられる。中でもアダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基が工業上好ましい。
さらに、前記脂肪族多環式基含有第3級アルキル基としては、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエステル部分と結合する炭素原子が第3級アルキル基を形成した脂肪族多環式基含有第3級アルキル基が好ましい。
【0022】
このような酸解離性溶解抑制基は、通常、樹脂の側鎖に結合し、具体的には、カルボン酸エステルから誘導される構成単位のエステル部に結合していることが好ましい。中でも、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位のエステル部に結合していることが好ましく、この場合、(A)成分は、構成単位(a)を含む樹脂となる。
【0023】
・構成単位(a−1)
(A)成分[好ましくは(A−1)成分]は、構成単位(a)として、酸解離性溶解抑制基含有(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a−1)を含むことが好ましい。
構成単位(a−1)としては、下記一般式(I)、(II)及び(III)で表される、脂肪族多環式基含有第3級アルキル基を有する構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を含むものが、耐ドライエッチング性に優れ、高解像性に優れ好ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
上記式(I)〜(III)中、Rは水素原子又は低級アルキル基、Rは低級アルキル基、R及びRはそれぞれ独立して低級アルキル基、Rは第3級アルキル基である。
Rの低級アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1のメチル基が挙げられる。
、R、Rの低級アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは炭素原子数1〜5のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜2のメチル基やエチル基が挙げられる。
の第3級アルキル基としては、tert−ブチル基、tert-アミル基などの分岐鎖状第3級アルキル基が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、一般式(I)で表される構成単位、さらにその中でも2−メチルアダマンチル基、2−エチルアダマンチル基等の2−低級アルキルアダマンチル基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有すると、優れたレジストパターンが得られることから好ましい。
【0029】
・構成単位(a−2)
(A)成分[好ましくは(A−1)成分]は、さらに、構成単位(a)として、前記構成単位(a−1)に加えて、ラクトン含有脂肪族単環又は多環式基含有(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a−2)を有すると、レジスト膜と基板の密着性を高めたり、現像液との親水性を高めることができ、微細なレジストパターンにおいても膜はがれ等が起こらず、好ましい。
ここで、脂肪族単環式基、脂肪族多環式基は、上述の様に芳香族性を持たない環構造を示す。
また、ラクトン含有脂肪族単環又は多環式基とは、ラクトン環からなる単環式基またはラクトン環を有する多環式基である。なお、このときラクトン環とは、−CO−O−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合はラクトン含有単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらずラクトン含有多環式基と称する。
【0030】
構成単位(a−2)におけるラクトン含有脂肪族単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。構成単位(a−2)における脂肪族多環式基としては、構成単位(a−1)において例示したものと同様の多数の多環式基から適宜選択して用いることができる。好ましくは、次のような構造式を有するラクトン含有ポリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基が挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
構成単位(a−2)としては、ラクトン含有脂肪族単環式基又は脂肪族多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される次の一般式(IV)、(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0033】
【化5】

(式中、Rは前記に同じであり、Rは、水素原子又は低級アルキル基であり、kは1乃至4の整数である。)
としては、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは炭素原子数1〜5、より好ましくは1〜3のアルキル基が挙げられる。
【0034】
【化6】

(Rは前記に同じである。)
【0035】
【化7】

(Rは前記に同じである。)
【0036】
【化8】

(Rは前記に同じであり、oは0又は1である。)
【0037】
【化9】

(Rは前記に同じである。)
【0038】
これらの中でも、一般式(IV)、(V)、及び(VI)で表される構成単位が、特には、一般式(IV)で表される構成単位が、得られた(A−1)成分の単分散化に適しており、フロー制御性、解像性、PEBマージンに優れるため、最も好ましい。
一般式(IV)のより好ましいものとしては、次の一般式(IX)が挙げられる。
【0039】
【化10】

(Rは前記に同じである。)
【0040】
・構成単位(a−3)
また、(A)成分[好ましくは(A−1)成分]は、構成単位(a)として、前記構成単位(a−1)に加えて、或いは前記構成単位(a−1)単位及び構成単位(a−2)に加えて、極性基含有脂肪族炭化水素基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a−3)を有すると、(A)成分全体の現像液との親水性が高まり、露光部でアルカリ溶解性が向上する。従って、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基等が挙げられるが、水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の炭化水素基(アルキレン基)や脂肪族多環式基が挙げられる。なお、ここでの「脂肪族」は上述の場合と同様芳香族性を持たないものを示す。構成単位(a−3)における脂肪族多環式基としては、構成単位(a−1)において例示したものと同様の多数の多環式基から適宜選択して用いることができる。
【0041】
構成単位(a−3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における該炭化水素基が炭素数1〜10の鎖状炭化水素基のときは、(α−低級アルキル)アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位、該炭化水素基が脂肪族多環式基のときは、下記一般式(X)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0042】
【化11】

(式中、Rは前記に同じであり、nは1乃至3の整数である)
【0043】
これらの中でも、nの数が1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0044】
なお、各構成単位の割合は、構成単位(a−1)が30〜60モル%、好ましくは30〜50モル%の範囲であると解像性に優れ好ましい。構成単位(a−2)が20〜60モル%、好ましくは20〜50モル%の範囲であると解像性に優れ好ましい。構成単位(a−3)が0〜50モル%の範囲、好ましくは10〜40モル%の範囲であるとレジストパターン形状に優れ好ましい。
【0045】
・構成単位(a−4)
また、(A)成分[好ましくは(A−1)成分]は、構成単位(a−4)として、前記構成単位(a−1)、(a−2)、(a−3)以外の、脂肪族多環式基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位を含んでもよい。
ここで、構成単位(a−1)、(a−2)、(a−3)以外とは、これらと重複しないという意味であり、脂肪族多環式基としては、前記した(a−1)、(a−2)、(a−3)におけるものと同様な多数の脂肪族多環式基が挙げられる。このような構成単位(a−4)は、これまでArFポジレジスト材料として多数のものが知られているが、特には、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラシクロデカニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種から誘導される単位が工業上入手しやすい点で好ましい。
なお、これらの構成単位を以下に構造式として示す。
【0046】
【化12】

(Rは前記に同じである。)
【0047】
【化13】

(Rは前記に同じである。)
【0048】
【化14】

(Rは前記に同じである。)
【0049】
なお、4元系とする場合の各単位の割合は、構成単位(a−1)が25〜50モル%、好ましくは30〜40モル%の範囲であり、構成単位(a−2)が25〜50モル%、好ましくは30〜40モル%の範囲であり、構成単位(a−3)が10〜30モル%、好ましくは10〜20モル%の範囲であり、構成単位(a−4)が5〜25モル%、好ましくは10〜20モル%の範囲である場合が、孤立パターンの焦点深度幅を向上させ、近接効果の低減が可能であることから、好ましい。なお、この範囲を逸脱すると解像性が低下するといった不具合があり好ましくない。
【0050】
・(A−1)成分の合成法について
本発明において、(A−1)成分は、リビング・ラジカル重合法により合成される樹脂であるであることが好ましい。
従来の最もよく知られた慣用的な合成法はフリーラジカル重合である。しかし、フリーラジカル重合では、例えば、特開2001−48931号公報にあるように、狭(単)分散化できても1.8程度であり、それ以上の単分散化は困難であった。
また、リビング・アニオン重合という方法も知られている。しかし、リビング・アニオン重合では、例えばブチルリチウムのような触媒が用いられるが、ある種のモノマーに対しては、触媒が失括して連鎖反応が進行しない(モノマー選択性)という問題がある。より詳しくは、前記構成単位(a−2)に含まれる、γ−ブチロラクトン残基を含有するモノマーや、構成単位(a−3)に含まれる、水酸基を含有するモノマーを用いると、前記触媒が、エチレン性二重結合よりも、それらのカルボニル基や水酸基を優先的に攻撃するため、重合反応が進行しない。
これに対し、リビング・ラジカル重合では、リビング・アニオン重合に見られるモノマー選択性の問題がなく、広くモノマーが選択できる。また、フリーラジカル重合に比べて大幅に単分散化できる。
従って、本発明においては、(A−1)成分の各構成単位として、上述したリビング・アニオン重合では用いることが困難な、構成単位(a−2)に含まれるγ−ブチロラクトン残基や構成単位(a−3)に含まれる水酸基を含む場合に、特にリビング・ラジカル重合における長所が発揮される。
【0051】
リビング・ラジカル重合は、Macromolecular Symposia 1999, 143, 291やMacromolecules 2000, 34, 402等の文献に記載されるように、活性・不活性サイクルを制御する媒体物としてS=C−Z−SR’[式中、Zはアリール基を表し、R’はアルキル基を表す]で表されるジチオ化合物を用いる重合法であるReversible Addition Fragmentation chain Transfer polymerization(RAFT)にて行なうことができる。
具体的には、フリーラジカル重合において、上記ジチオ化合物を用いて重合行えばよく、より具体的には、各モノマーと重合開始剤と上記ジチオ化合物を有機溶剤に溶解し加熱・攪拌等により反応させればよい。重合の際の温度や時間はフリーラジカル重合とほぼ同様でよいし、目的とする構成単位を有する重合体やその質量平均分子量などにより適宜調整すればよい。
このようにして得られる(A−1)成分のMw、分散度(Mw/Mn)は、ポリスチレン換算基準のゲルパーミネーションクロマトグラフィにより求めることができる。
また、(A)成分を構成する1種また2種以上の樹脂の全てがリビング・ラジカル重合による合成される樹脂であることが好ましい。
【0052】
(B)成分
(B)成分は、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から特に限定せずに用いることができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類、ジアゾメタンニトロベンジルスルホネート類などのジアゾメタン系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。
【0053】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。これらの中で、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリルが好ましい。
【0054】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物A、分解点135℃)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(化合物B、分解点147℃)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物C、融点132℃、分解点145℃)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物D、分解点147℃)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(化合物E、分解点149℃)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(化合物F、分解点153℃)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(化合物G、融点109℃、分解点122℃)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(化合物H、分解点116℃)などを挙げることができる。
【0055】
【化15】

【0056】
本発明においては、中でも、(B)成分としてフッ素化アルキルスルホン酸イオンをアニオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。
【0057】
(B)成分としては、1種の酸発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜10質量部とされる。上記範囲より少ないとパターン形成が十分に行われないおそれがあり、上記範囲を超えると均一な溶液が得られにくく、保存安定性が低下する原因となるおそれがある。
【0058】
(D)含窒素有機化合物
本発明のポジ型レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0059】
(E)成分
また、前記(D)成分との配合による感度劣化を防ぎ、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0060】
架橋剤(F)
本発明のポジ型レジスト組成物を、サーマルフロー処理を含むサーマルフロープロセスに使用する場合、本発明のポジ型レジスト組成物は、さらに架橋剤(F)(以下、(F)成分という)を含有してもよい。
(F)成分としては、サーマルフロー処理に好適な化学増幅型レジスト組成物における架橋剤成分として知られているものを適宜使用することができる。
具体的には、(F)成分として、少なくとも2個の架橋性のビニルエーテル基を有する化合物を用いることができ、アルキレングリコールやジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールや、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、ペンタグリコールなどの多価アルコールの少なくとも2個の水酸基をビニルエーテル基で置換した化合物を用いることができる。好ましい(E)成分の具体例としては、シクロヘキシルジメタノールジビニルエーテルが挙げられる。
(F)成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(F)成分を用いる場合、(F)成分は、(A)成分に対して、通常0.1〜25質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲で用いられる。
【0061】
有機溶剤
本発明のポジ型レジスト組成物は、材料を有機溶剤に溶解させて製造することができる。
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
【0062】
例えば、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
【0063】
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜6:4の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは8:2〜2:8、より好ましくは7:3〜3:7であると好ましい。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
有機溶剤の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0064】
その他の任意成分
本発明のポジ型レジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤などを適宜、添加含有させることができる。
【0065】
本発明のポジ型レジスト組成物は、サーマルフロープロセスに用いると、感度、解像性、レジストパターンも良好な特性のまま、フロー時のパターンサイズの制御性が良好あり、小さいフローレートを有するという特性を有する。そのため、サーマルフロープロセス用ポジ型レジスト組成物として好適である。
【0066】
[レジストパターンの形成方法]
本発明に係るサーマルフロー処理を有するパターン形成方法は、ポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成した後、サーマルフロー処理を行うことを特徴とするものである。本明細書においては、パターン形成後、加熱してパターンを狭小化させる工程を、サーマルフロー処理という。
以下、詳細に説明する。
【0067】
まずシリコンウェーハ等の基板上に、本発明のポジ型レジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベークを行う。
次いで、露光装置などを用い、ポジ型レジスト組成物の塗膜に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に露光を行った後、PEB(露光後加熱)を行う。続いて、アルカリ現像液を用いて現像処理した後、リンス処理を行って、基板上の現像液および該現像液によって溶解したレジスト組成物を洗い流し、乾燥させる。
ここまでの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用するポジ型レジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
露光は、好ましくはArFエキシマレーザーを用いて行うが、KrFエキシマレーザーレジスト、電子線レジスト、X線レジストやEUV(極端紫外光)等にも有用である。
なお、基板とレジスト組成物の塗膜との間に、有機系または無機系の反射防止膜を設けることもできる。
【0068】
次いで、このようにして形成されたレジストパターンにサーマルフロー処理を施してレジストパターンを狭小化する。
サーマルフロー処理は、レジストパターンを1回以上、加熱することによって行われる。加熱の回数を多くした方が、単位温度当たりのレジストパターンサイズの変化量(以下、フローレートということもある)が小さくなるので好ましいが、工程数が増え、処理に要する時間が長くなって、スループットが悪化する面もある。
ここで、サーマルフロー処理におけるフローレートが小さい方が、狭小化されたレジストパターンにおける、ウエーハ上のパターン寸法の面内均一性が高く、レジストパターンの断面形状も優れたものとなる。レジスト膜厚が1000nm以下であれば、膜厚によるフローレートへの影響はほとんど無い。
【0069】
サーマルフロー処理における加熱温度は100〜200℃、好ましくは110〜180℃の範囲から、レジストパターンの組成に応じて選択される。加熱を2回以上行う場合、第2回目以降の加熱は、第1回目の加熱と同じ温度またはそれ以上の温度で行う。
加熱時間は、スループットに支障がなく、所望のレジストパターンサイズが得られる範囲であればよく、特に制限されないが、通常は、各回の加熱を30〜270秒間の範囲内とするのが好ましく、より好ましくは60〜120秒間の範囲内とする。
【0070】
サーマルフロー処理を有するレジストパターン形成方法は、通常の方法では形成が困難である、微細なレジストホールパターンの形成に好適に用いられる。
【0071】
本発明においては、サーマルフロープロセスにおいて、感度、解像性、レジストパターンも良好な特性のまま、フロー時のパターンサイズの制御性を向上させることができる。
そのため、例えば加熱温度の変動に伴いパターンサイズが大きく変動したり、パターン寸法の面内均一性が低い等の問題を解決することができる。
【実施例】
【0072】
(実施例1)
下記材料を混合して、固形分濃度10質量%のポジ型レジスト組成物を製造した。
【0073】
(A)成分:下記重合体(A1) 100質量部
【0074】
重合体(A1):下記化学式(1)、(2)、(3)で表されるモノマーを、40モル%:40モル%:20モル%の割合でリビング・ラジカル重合によって重合させた重合体であって、分散度が1.38、質量平均分子量が9200、Tgが145℃のもの。また、193nmにおける吸光度は0.32(1/μm)。
【0075】
【化16】

【0076】
(B)成分:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート (A)成分100質量部に対して3.5質量部
【0077】
(D)成分:トリエタノールアミン (A)成分100質量部に対して0.1質量部
【0078】
有機溶剤:PGMEA/EL=6/4(質量比)(A)成分100質量部に対して930質量部。
【0079】
(実施例2)
(A)成分を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を製造した。
【0080】
(A)成分:下記重合体(A2)と、下記重合体(A3)との質量比1:1の混合物(質量平均分子量:10300、分散度:2.1、Tg140℃) 100質量部また、193nmにおける吸光度は0.31(1/μm)。
【0081】
重合体(A2):前記化学式(1)、(2)、(3)で表されるモノマーを、40モル%:40モル%:20モル%の割合でリビング・ラジカル重合によって重合させた重合体であって、分散度が1.32、質量平均分子量が5600、Tgが137℃のもの。また、193nmにおける吸光度は0.32(1/μm)。
【0082】
重合体(A3):前記化学式(1)、(2)、(3)で表されるモノマーを、40モル%:40モル%:20モル%の割合でリビング・ラジカル重合によって重合させた重合体であって、分散度が1.41、質量平均分子量が15000、Tgが141℃のもの。また、193nmにおける吸光度は0.29(1/μm)。
【0083】
(実施例3)
(A)成分を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を製造した。
【0084】
重合体(A4):下記化学式(1’)、(2’)、(3’)で表されるモノマーを、40モル%:40モル%:20モル%の割合でリビング・ラジカル重合によって重合させた重合体であって、分散度が1.46、質量平均分子量が10900、Tgが127℃のもの。また、193nmにおける吸光度は0.28(1/μm)。
【0085】
【化17】

【0086】
(比較例1)
(A)成分を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を製造した。
【0087】
(A)成分:下記重合体(A5) 100質量部
重合体(A5):前記化学式(1)、(2)、(3)で表されるモノマーを、40モル%:40モル%:20モル%の割合でフリーラジカル重合によって重合させた重合体であって、分散度が2.24、質量平均分子量が11200、Tgが123℃のもの。また、193nmにおける吸光度は0.27(1/μm)。
【0088】
(比較例2)
(A)成分を以下のものに変更した以外は、実施例3と同様にしてポジ型レジスト組成物を製造した。
【0089】
(A)成分:下記重合体(A6) 100質量部
重合体(A6):前記化学式(1’)、(2’)、(3’)で表されるモノマーを、40モル%:40モル%:20モル%の割合でフリーラジカル重合によって重合させた重合体であって、分散度が2.25、質量平均分子量が10100、Tgが94℃のもの。また、193nmにおける吸光度は0.32(1/μm)。
【0090】
[評価]
(デンスホールパターンによる評価)
上記実施例1、2及び比較例1のポジ型レジスト組成物について、それぞれ以下の様に評価した。
8インチのシリコンウェーハ上に、有機反射防止膜(製品名ARC29、ブリューワサイエンス社製)を、材料を塗布し、205℃、60秒で加熱することにより、膜厚77nmに形成した基板を用意した。
ついで、ポジ型レジスト組成物を、上記基板上にスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で105℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚340nmのレジスト層を形成した。
【0091】
ついで、ArFエキシマレーザー露光装置Nikon S−302(製品名、Nikon社製、NA(開口数)=0.6,σ=0.75)により、ArFエキシマレーザー(193nm)を、デンスホールパターン(複数のホールどうしが、所定間隔で配置されたパターン)が描かれたバイナリーレチクルを介して選択的に照射した。
そして、90℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間パドル現像し、その後15秒間、純水を用いて水リンスした。振り切り乾燥を行った。その後、100℃で60秒間加熱して乾燥させてレジストパターンを形成した。
その結果、直径140nmのホールパターンが、複数、160nmの間隔で配置されたパターンを得た。
【0092】
この様にして得られたレジストパターンについて、以下の5つの温度条件で、それぞれサーマルフロー処理を行い、ホールパターンの直径の変化を調べた。
1)140℃、90秒
2)150℃、90秒
3)155℃、90秒
4)160℃、90秒
5)165℃、90秒
【0093】
実施例1、実施例2及び比較例1についての結果を図1にグラフで示した。横軸がサーマルフロー処理の温度、縦軸はサーマルフロー処理を行った後のホールの直径の寸法を示している。この結果より、実施例1、実施例2及び比較例1のフローレートは、それぞれ1.3nm/℃、1.5nm/℃、3.8nm/℃であった。
【0094】
実施例3と比較例2については、グラフは示していないが、プレベークを100℃、90秒間とし、PEBを85℃、90秒間に変え、さらにサーマルフロー処理を120℃〜140℃で各90秒間、5℃づつ昇温する条件に変更し、同様なフローレートをそれぞれ求めたところ、2.1nm/℃、3.2nm/℃であった。
【0095】
(アイソレートホールパターンによる評価)
直径140nmのアイソレートホールパターン(ホールがひとつ形成されたパターン)を形成し、これについてサーマルフロー処理を行った以外は、デンスホールパターンによる評価と同様にして評価した。
実施例1、実施例2及び比較例1についての結果を図2にグラフで示した。横軸がサーマルフロー処理の温度、縦軸はサーマルフロー処理を行った後のホールの直径の寸法を示している。この結果より、実施例1、実施例2及び比較例1のフローレートは、それぞれ1.0nm/℃、0.9nm/℃、1.5nm/℃であった。
実施例3と比較例2については、グラフは示していないが、プレベークを100℃、90秒間とし、PEBを85℃、90秒間に変え、さらにサーマルフロー処理を120℃〜140℃で各90秒間、5℃づつ昇温する条件に変更し、同様なフローレートをそれぞれ求めたところ、1.6nm/℃、4.1nm/℃であった。
【0096】
図1、図2に示したグラフ及びフローレートの値からわかる様に、本発明に係る実施例1、2、3ではサーマルフロー処理後のホール寸法の温度依存性が小さく、フロー制御性が良好であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】実施例の結果を示したグラフである。
【図2】実施例の結果を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大するベース樹脂成分、及び(B)放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分を含有するポジ型レジスト組成物であって、
前記(A)成分は、193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下であり、分散度(Mw/Mn)が1.5以下の樹脂を含み、かつ
当該ポジ型レジスト組成物が、サーマルフロープロセス用であることを特徴とするポジ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下であり、分散度(Mw/Mn)が1.5以下の樹脂のガラス転移点(Tg)が120℃以上である請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記酸解離性溶解抑制基が第3級アルキル基である請求項1又は2に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項4】
前記第3級アルキル基が、脂肪族多環式基含有第3級アルキル基である請求項3に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a)を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項6】
前記(A)成分が、前記構成単位(a)として、酸解離性溶解抑制基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a−1)を有する請求項5に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項7】
前記(A)成分が、前記構成単位(a)として、さらにラクトン含有単環又は多環式基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a−2)を有する請求項6に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
前記(A)成分が、前記構成単位(a)として、さらに極性基含有脂肪族炭化水素基を含有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a−3)を有する請求項6又は7に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項9】
前記構成単位(a−1)が、下記一般式(I)、(II)及び(III):
【化1】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基、Rは低級アルキル基である)
【化2】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基、R及びRはそれぞれ独立して低級アルキル基である)
【化3】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基、Rは第3級アルキル基である)
で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項6乃至8のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項10】
前記構成単位(a−2)が、下記一般式(IV)、(V)及び(VI):
【化4】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基、Rは水素原子又は低級アルキル基であり、kは1乃至4の整数である)
【化5】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基である。)
【化6】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基である。)
で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項7乃至9のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項11】
前記構成単位(a−3)が、下記一般式(VIII):
【化7】

(式中、Rは水素原子又は低級アルキル基であり、nは1乃至3の整数である)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種である請求項8乃至10のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項12】
前記(A)成分が、α−低級アルキルアクリル酸エステルから誘導される構成単位(ma)を有する樹脂を含む請求項5乃至11のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項13】
前記(A)成分の全構成単位の合計に対する前記構成単位(ma)の割合が20モル%以上である請求項12記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項14】
前記(A)成分が、アクリル酸エステルから誘導される構成単位(aa)を有する樹脂を含む請求項5乃至13のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項15】
前記(A)成分の全構成単位の合計に対する前記構成単位(aa)の割合が40モル%以上である請求項14記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項16】
前記193nmにおける吸光度が1.0(1/μm)以下であり、分散度(Mw/Mn)が1.5以下の樹脂が、リビングラジカル重合法によって得られる樹脂である請求項項1乃至15のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項17】
さらに含窒素有機化合物を、前記(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部含有する請求項1乃至16のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のポジ型レジスト組成物を基板上に塗布し、プレべークし、選択的に露光した後、PEB(露光後加熱)を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成した後、サーマルフロー処理を行うことを特徴とするレジストパターン形成方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−3781(P2006−3781A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182298(P2004−182298)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】