説明

ポリシラン類の処理方法

【課題】CVD法により微結晶シリコン膜を形成する際に副生成物として形成されるポリシラン類を安全に処理する方法の提供。
【解決手段】プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、真空ポンプ内へ潤滑油から選ばれた有機溶媒を注入・充填し、所定の時間放置し、次いで真空ポンプを分解し、ポリシラン分散有機溶媒が付着している分解された構成部品を洗浄油で洗浄することからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシラン類の処理方法に関し、特にCVD法により微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を形成する際に副生成物として形成されるポリシラン類を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー源として太陽電池が脚光を浴びており、エネルギーを効率的に利用できることから、その普及には目覚ましいものがある。この太陽電池には、種々のタイプがあるが、その中でも単結晶Siタイプ及び多結晶Siタイプが大半を占めており、単結晶Siタイプの太陽電池(光電変換装置)は、単位面積当たりのエネルギー変換効率に優れている。
【0003】
また、従来からのa−Si(アモルファスシリコン)タイプのみの薄膜太陽電池に加えて、近年、a−Si膜とμc−Si(微結晶シリコン)とを積層して変換効率の向上を図るタンデム型薄膜太陽電池が開発されている。微結晶SiはアモルファスSiと比べて、その電子移動度が極めて高いからである。
【0004】
上記Si薄膜は、プラズマCVD法により形成される。このような薄膜を形成するための装置として、多くの従来技術が知られているが、例えば、製造コストやメンテナンスコストを低くすることを目的としたCVD装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかるに、例えば微結晶Si膜を形成する場合には、シランガスを用いて、プラズマCVD法により形成するが、微結晶Si膜を形成する際に副生成物としてポリシラン類が生成されてしまう。この生成ポリシラン類は、例えば、粒径37nm程度の超微粉であり、装置内やその内壁に、装置内部品に、排気用等の配管内やその内壁に、また、真空ポンプ内に堆積・付着する。そのため、雰囲気の状態により、最悪の場合には粉塵爆発を起こす危険性があるので、各種の対策が取られている。
【0006】
例えば、アモルファスSi膜を形成する際に反応容器内に大量のポリシラン類が発生することから、急激に反応容器内を排気する場合、粉塵爆発などを起こす危険性があるために、通常スロー排気を行うが、それでもスロー排気径路が詰まるという問題が生じるので、スロー排気径路に不活性ガス導入用配管を設け、スロー排気時に不活性ガスをスロー排気する径路に流すことが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、スロー排気径路の詰まりが防止されたとしても、粉塵災害の可能性はなくならないという問題がある。
【0007】
また、被処理物上に堆積膜を形成するための反応容器と反応容器内を排気する排気手段との間に切り替え手段を介し、この排気手段が、膜堆積時に使用する膜堆積用排気系と、反応容器のクリーニング時に使用するドライエッチング用排気系の少なくとも2つの排気系を有し、膜堆積時と反応容器のクリーニング時において、排気系を切り替え可能に構成し、この反応容器と切り替え手段との間に設けられた粉体トラップにより、膜堆積時に発生する副生成物を捕獲することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献には、オイルトラップを用いることが記載されているが、オイルが何であるかは示唆されていない。
【0008】
しかしながら、特許文献3のように、反応容器と切り替え手段との間に、粉体トラップを設けたとしても、排気しながら成膜しているので、成膜プロセスの径路全体に形成されるポリシラン類等の副生成物を必ずしも全て処理することはできず、ポリシラン類による粉塵爆発の危険性は残っている。従って、より完全にポリシラン類を処理することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−139524号公報
【特許文献2】特開平08−283946号公報
【特許文献3】特開2008−214660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、特にCVD法により微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を形成する際に副生成物として形成されるポリシラン類を安全に処理する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリシラン類の処理方法は、プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、該真空ポンプ内へ潤滑油から選ばれた有機溶媒を注入・充填し、所定の時間放置し、次いで該真空ポンプを分解し、ポリシラン分散有機溶媒が付着している分解された構成部品を洗浄油で洗浄することを特徴とする。
【0012】
本発明のポリシラン類の処理方法はまた、プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、該真空チャンバー内に設置されている部品に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、該部品に対して潤滑油から選ばれた有機溶媒を適用し、次いで洗浄油を入れたシンク内にポリシラン分散有機溶媒が付着している部品を入れ、この部品を洗浄油で洗浄することを特徴とする。
【0013】
本発明のポリシラン類の処理方法はさらに、プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、該真空チャンバー内、該真空チャンバー内に配置された部品、該真空チャンバーから該真空排気系までの配管内、及び該真空排気系の真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を有機溶媒に分散させ、処理することを特徴とする。
【0014】
本発明のポリシラン類の処理方法はさらにまた、Si基板が載置され、真空排気系を備えた減圧可能な真空チャンバーを用いて、シランガスを導入し、プラズマCVD法により、該基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、該真空チャンバー内で副生成物として生成し、該真空チャンバー内、該真空チャンバー内に配置された部品、該真空チャンバーから該真空排気系までの配管内、及び該真空排気系の真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を有機溶媒に分散させ、処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、CVD法により微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を形成する際に副生成物として形成されるポリシラン類を安全に処理することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光電変換装置の製造方法の一形態を説明するための断面図。
【図2】光電変換装置の製造方法の別の形態を説明するための断面図。
【図3】実施例1における真空ポンプ内のポリシラン類の処理プロセスを説明するための写真。
【図4】実施例1において得られた構成部品の洗浄結果を示す写真。
【図5】実施例2における真空ポンプ内のポリシラン類の処理プロセスを説明するための写真。
【図6】実施例3におけるポリシラン類の付着した部品の処理プロセスを説明するための写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るポリシラン類の処理方法の第一の実施の形態によれば、この処理方法は、Si基板が載置され、真空排気系を備えた減圧可能な真空チャンバーを有する成膜装置を用いて、真空チャンバー内にシランガスを導入し、プラズマCVD法により、Si基板上に微結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、真空排気系のドライポンプ等の真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、真空チャンバーから取り外した真空ポンプ内へ、以下述べるような鉱物油等の潤滑油から選ばれた有機溶媒を注入・充填し、所定の時間放置し、次いで真空ポンプを分解し、ポリシラン分散潤滑油が付着している分解された構成部品を、以下述べるような洗浄油で洗浄処理することからなる。
【0018】
本発明に係るポリシラン類の処理方法の第二の実施の形態によれば、この処理方法は、Si基板が載置され、真空排気系を備えた減圧可能な真空チャンバーを有する成膜装置を用いて、真空チャンバー内にシランガスを導入し、プラズマCVD法により、Si基板上に微結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、真空チャンバー内に設置されている各種部品(例えば、基板を載置し、搬送する搬送用トレイ、電極等)に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、部品に対して、以下述べるような鉱物油(例えば、潤滑油)等から選ばれた有機溶媒を適用し(例えば、真空チャンバー内へ有機溶媒を供給し)、このポリシラン分散有機溶媒が付着している部品を取り出し、次いで以下述べるような洗浄油を入れたシンク内にポリシラン分散潤滑油が付着している部品を入れ、この部品を洗浄油で洗浄処理することからなる。配管に関しても、部品の場合と同様にシンク浸漬で処理できる。
【0019】
本発明に係るポリシラン類の処理方法の第三の実施の形態によれば、この処理方法は、Si基板が載置され、真空排気系を備えた減圧可能な真空チャンバーを有する成膜装置を用いて、真空チャンバー内にシランガスを導入し、プラズマCVD法により、Si基板上に微結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、真空チャンバー内やその内壁、真空チャンバー内に配置された上記した各種部品、真空チャンバーから真空排気系までの排気用配管内やその内壁、並びに真空排気系のドライポンプ等の真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を、以下述べるような鉱物油等から選ばれた有機溶媒に分散させ、次いで以下述べるような洗浄油で洗浄処理することからなる。
【0020】
上記したような副生成物としてのポリシラン類は、例えば、枚葉式PE−CVD装置、インライン型PE−CVD装置、バッチ型PE−CVD装置等のプラズマCVD装置を用い、太陽電池等で利用するSi膜(半導体層)を形成する際に形成される。
【0021】
以下プラズマCVD装置の例について説明し、形成されたポリシラン類の処理について言及する。
【0022】
上記プラズマCVD装置の第一の例として、例えば、真空中で基板に所望の膜を成膜する成膜室(真空チャンバー)と、成膜室に第一開閉部を介して固定され、真空排気可能な仕込・取出室とを備えた成膜装置であって、仕込・取出室の第一開閉部と対向する面に設けられた第二開閉部と、基板を被成膜面が重力方向と略並行を成すように保持するキャリアとを有し、キャリア又は基板が第二開閉部を通って仕込・取出室に搬入・搬出され、仕込・取出室に、複数のキャリアが並列に配置され、仕込・取出室と成膜室との間で、複数のキャリアが並列に搬入・搬出され、成膜室で、複数のキャリアに保持された複数の基板に同時に成膜を行うことからなる成膜装置を用いて、基板上に、例えば微結晶シリコン膜を形成する場合、微結晶シリコン層の形成時に副生成物としてポリシラン類が大量に形成される。
【0023】
上記したポリシラン類は、成膜室内、その内壁及び成膜室内に設置された各種部品に堆積・付着すると共に、排気用配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ内に堆積・付着し、上記したような粉塵爆発等という問題が発生する可能性が高いので、その対策が必要になる。
【0024】
また、上記プラズマCVD装置の第二の例として、真空中で基板に対して所望の膜を成膜する成膜室(真空チャンバー)と、成膜室に第一開閉部を介して固定され、真空排気可能な仕込・取出室と、仕込・取出室と第二開閉部を介して固定され、基板を保持可能に構成されたキャリアに対して基板を脱着する基板脱着室とを備えた成膜装置であって、キャリアが、基板を被成膜面が重力方向と略並行を成すように保持し、基板脱着室内に、複数のキャリアが並列に配置され、基板脱着室と仕込・取出室との間で、複数のキャリアが並列に搬入・搬出され、仕込・取出室と成膜室との間で、複数のキャリアが並列に搬入・搬出され、成膜室で、複数のキャリアに保持された複数の基板に同時に成膜を行う成膜装置を用いて、基板上に、例えば微結晶シリコン膜を形成する場合、微結晶シリコン層の形成時に副生成物としてポリシラン類が大量に形成される。
【0025】
この第二の例のCVD装置の場合にも、ポリシラン類が、成膜室内、その内壁及び成膜室内に設置された各種部品に堆積・付着すると共に、排気用配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ内に堆積・付着し、上記したような粉塵爆発等という問題が発生する可能性が高いので、その対策が必要になる。
【0026】
次に、上記した微結晶シリコン膜等を堆積して、太陽電池に利用する光電変換装置を作製する場合について、WO2010/02947を参照して説明し、副生成物として生成されるポリシラン類の処理について言及する。
【0027】
この光電変換装置の第一製造システムを図1に示す。第一製造システムは、図1に示すように、インライン型の第一成膜装置(真空チャンバー)60と、バッチ式の第二成膜装置(真空チャンバー)70Aと、第一成膜装置60で処理したSi基板のような基板を大気(空気)に曝した後に第二成膜装置70Aへ移動する暴露装置80Aとから構成される。
【0028】
第一製造システムにおける第一成膜装置60には、基板が搬入され、内部圧力を減圧するロード室(L)61が配置されている。なお、ロード室61の後段に、成膜プロセスに応じて、基板温度を一定温度まで加熱する加熱チャンバーを設けても良い。
【0029】
引き続き、第一光電変換ユニットのp型半導体層を形成するp層成膜反応室62、i型シリコン層(非晶質シリコン層)を形成するi層成膜反応室63、n型半導体層を形成するn層成膜反応室64、第二光電変換ユニットのp型半導体層を形成するp層成膜反応室65が連続して直線状に配置されている。
【0030】
最後に、減圧雰囲気を大気雰囲気に戻して基板を搬出するアンロード室(UL:搬出装置)66がp層成膜反応室65に接続されている。
【0031】
これにより、ロード室61、p層成膜反応室62、i層成膜反応室63、n層成膜反応室64、p層成膜反応室65、アンロード室66の間は、減圧雰囲気を維持して基板を搬送することができる。
【0032】
この際、図1に示すA地点においては、透明導電膜が形成された絶縁性透明基板が準備される。
【0033】
また、図1に示すB地点においては、透明導電膜上に、上記第一光電変換ユニットのp型半導体層、i型シリコン層(非晶質シリコン層)、及びn型半導体層と、第二光電変換ユニットのp型半導体層が設けられた光電変換装置の第一中間品が形成される。
【0034】
また、第一製造システムにおける暴露装置80Aは、大気雰囲気(空気雰囲気)において、p型半導体層の表面が露出している第一中間品を一時的に載置したり或いは保管したりするために用いる棚である。また、暴露装置80Aは、複数の第一中間品を一つの纏まりとして取り扱うために用いる基板収容カセットでもよい。また、暴露装置80Aは、第一成膜装置60から第二成膜装置70Aに向けて第一中間品を大気雰囲気において搬送する搬送機構(大気搬送機構)を有してもよい。また、第一製造システムがクリーンルームにおいて稼動している場合には、湿度、温度、或いは単位体積あたりのパーティクル量等が制御されたクリーンルーム内の空気雰囲気において、暴露装置80Aは第一中間品を暴露させている。
【0035】
さらに、第一製造システムにおける第二成膜装置70Aは、ロード・アンロード室(L/UL)71とin層成膜反応室72とを有する。このロード・アンロード室は、第一成膜装置60で処理された光電変換装置の第一中間品を搬入し、基板が搬入された後に内部圧力を減圧したり、基板を搬出する際に、減圧雰囲気を大気雰囲気に戻したりする機能を有する。このin層成膜反応室72は、ロード・アンロード室71に続いて接続されている。
【0036】
in層成膜反応室72においては、第二光電変換ユニットのp型半導体層上に、第二光電変換ユニットのi型シリコン層(結晶質シリコン層)及びn型半導体層が順次に同じ反応室内で形成される。
【0037】
また、この成膜処理は複数の基板に対して同時に行われる。
【0038】
この際、図1に示すC地点において、第一光電変換ユニット上に、第二光電変換ユニットが設けられた光電変換装置の第二中間品が形成される。
【0039】
また、図1に示すように、インライン型の第一成膜装置60においては、2つの基板に対して同時に成膜処理が行われ、i層成膜反応室63は4つの反応室63a、63b、63c、63dによって構成されている。
【0040】
また、図1において、バッチ型の第二成膜装置70Aは、6つの基板を同時に処理するように構成されている。
【0041】
上記したように、インライン型の第一成膜装置(CVD装置:真空チャンバー)60においてアモルファスシリコンのpin発電層と微結晶シリコンのp層とを形成した後、バッチ型の第二成膜装置(CVD装置:真空チャンバー)70Aにおいて微結晶シリコンのin層を形成する。この微結晶シリコン層の形成時に、特にバッチ型のCVD装置での微結晶シリコン層の形成時に、副生成物としてポリシラン類が大量に形成される。そして、このポリシラン類が、成膜装置(真空チャンバー)内、その内壁及び成膜装置内に設置された各種部品に堆積・付着すると共に、排気用配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ内に堆積・付着し、上記したような粉塵爆発等の問題が発生する可能性が高いので、その対策が必要になる。なお、インライン型の装置の場合も、副生成物としてポリシラン類が形成されるので、この場合もバッチ型のCVD装置の場合と同様な問題が生じる可能性があるので、その対策が必要である。インライン装置で対策してもよい。
【0042】
次に、上記光電変換装置の第二製造システムを図2に示す。第二製造システムは、図2に示すように、第一成膜装置(CVD装置:真空チャンバー)60と、第二成膜装置(CVD装置:真空チャンバー)70Bと、第一成膜装置60で処理した基板を大気(空気)に曝した後に第二成膜装置70Bへ移動する暴露装置80Bとから構成される。
【0043】
第二製造システムにおける第一成膜装置60は、第一製造システムにおける第一成膜装置60と同様に、基板が搬入された後に内部圧力を減圧するロード室(L)61を有する。なお、ロード室61の後段に、プロセスに応じて、基板温度を一定温度まで加熱する加熱チャンバーを設けても良い。
【0044】
引き続き、第一光電変換ユニットのp型半導体層を形成するp層成膜反応室62、i型シリコン層(非晶質シリコン層)を形成するi層成膜反応室63、n型半導体層を形成するn層成膜反応室64、第二光電変換ユニットのp型半導体層を形成するp層成膜反応室65が連続して直線状に配置されている。
【0045】
最後に、減圧雰囲気を大気雰囲気に戻して基板を搬出するアンロード室(UL)66がp層成膜反応室65に接続されている。
【0046】
これにより、ロード室61、p層成膜反応室62、i層成膜反応室63、n層成膜反応室64、p層成膜反応室65、アンロード室66の間は、減圧雰囲気を維持して基板を搬送することができる。
【0047】
この際、図2に示すD地点において、透明導電膜が成膜された絶縁性透明基板が準備される。
【0048】
また、図2に示すE地点においては、透明導電膜上に第一光電変換ユニットのp型半導体層、i型シリコン層(非晶質シリコン層)、及びn型半導体層と、第二光電変換ユニットのp型半導体層の各層が設けられた光電変換装置の第一中間品が形成される。
【0049】
また、第二製造システムにおける暴露装置80Bの構成は、第一製造システムにおける暴露装置80Aと同じである。この暴露装置80Bは、第一成膜装置60から第二成膜装置70Bに向けて第一中間品を大気雰囲気において搬送する搬送機構(大気搬送機構)を有してもよい。
【0050】
また、第二製造システムにおける第二成膜装置70Bは、環状に配置されたロード・アンロード室73、i層成膜反応室74、n層成膜反応室75、及び中間室77を有する。
【0051】
ロード・アンロード室73は、第一成膜装置60で処理された光電変換装置の第一中間品が搬入された後に内部圧力を減圧したり、基板を搬出する際に減圧雰囲気を大気雰囲気に戻したりする。
【0052】
引き続き、このロード・アンロード室73を介して、基板は、中間室77に搬入される。また、中間室77とi層成膜反応室74との間、中間室77とn層成膜反応室75との間を搬送される。
【0053】
i層成膜反応室74においては、第二光電変換ユニットのp型半導体層上に、第二光電変換ユニットのi型シリコン層(結晶質シリコン層)が形成される。また、n層成膜反応室75においては、i型シリコン層(結晶質シリコン層)上に、n型半導体層が形成される。
【0054】
i層成膜反応室74及びn層成膜反応室75の各々においては、i型シリコン層、及びn型半導体層のうちの一つの層が一枚の基板に形成される。
【0055】
また、中間室77に設けられた搬送装置(不図示)は、i型シリコン層及びn型半導体層を積層するために、反応室74および75の各々に基板を搬送したり、反応室の各々から基板を搬出したりする。
【0056】
なお、第二成膜装置70Bは、成膜プロセスに応じて、基板温度を一定温度まで加熱する加熱チャンバーを有しても良い。
【0057】
この際、図2に示すF地点において、第一光電変換ユニット上に第二光電変換ユニットが設けられた光電変換装置の第二中間品が形成される。
【0058】
また、図2において、インライン型の第一成膜装置60においては、2つの基板に対して同時に成膜処理が行われ、i層成膜反応室63は4つの反応室63a、63b、63c、63dによって構成されている。
【0059】
また、図2において、枚葉型の第二成膜装置70Bにおいては、7つの基板が同時に各反応室において処理される。
【0060】
そして、図2において、i層成膜反応室74は6つの反応室74a、74b、74c、74d、74e、及び74fによって構成されている。
【0061】
第二光電変換ユニットを構成するi型シリコン層は、n型半導体層に比べて膜厚が大きいため、n型半導体層を形成する場合よりも成膜時間が長い。
【0062】
そのため、i層成膜反応室74の反応室の個数に依存して、光電変換装置を生産するスループットが決まる。
【0063】
上記のように枚葉型の第二成膜装置70Bにおいては、i層成膜反応室74が6つの反応室を有することにより、複数の基板に対して同時にi型シリコン層を形成することが可能となり、スループットが向上する。
【0064】
以上のような光電変換装置の製造方法によれば、第一成膜装置60において非晶質光電変換装置である第一光電変換ユニットのp層、i層、n層の上に結晶質光電変換装置である第二光電変換ユニットのp層を形成している。また、第二成膜装置70A、70Bにおいて第二光電変換ユニットのi層、n層を形成している。これによって、第二光電変換ユニットのi層の結晶化率分布のコントロールを容易にすることができる。
【0065】
また、上記においては、大気中に露呈されたp型半導体層上に、第二光電変換ユニットを構成するi型シリコン層(結晶質シリコン層)、n型半導体層を形成する際、このi層を形成する前に、大気中に露呈された第二光電変換ユニットのp層を、水素ラジカルを含むプラズマに曝すことが望ましい(水素ラジカルプラズマ処理)。
【0066】
水素ラジカルプラズマ処理として、水素ラジカルプラズマ処理室を予め準備し、第二光電変換ユニットのp層が形成された基板をこのプラズマ処理室に搬送し、p層をプラズマに曝す方法が挙げられる。また、水素ラジカルプラズマ処理の後には、第二光電変換ユニットを構成するi型シリコン層(結晶質シリコン層)及びn型半導体層が個別の反応室で成膜される。
【0067】
一方、水素ラジカルプラズマ処理として、水素ラジカルプラズマ処理と、第二光電変換ユニットのi層及びn層を形成する処理とを連続して同じ反応室内において行なってもよい。
【0068】
ここで、第二光電変換ユニットのi層及びn層を形成する処理と水素ラジカルプラズマ処理と連続して同じ処理室内で行なう場合、i層を形成する前に、反応室の内壁を、水素ラジカルを含むプラズマに曝すことにより、前回のn層を成膜する際に導入された残留不純物ガスPHを分解して除去することが可能である。
【0069】
従って、第二光電変換ユニットのi層及びn層の成膜工程を同じ処理室内で繰り返して行なった場合であっても、良好な不純物プロファイルが得られ、良好な発電効率の積層薄膜光電変換装置を得ることができる。
【0070】
また、第二光電変換ユニットのp層に対して施す水素ラジカルプラズマ処理においては、プロセスガスとしてHガス(水素ガス)を用いると望ましい。すなわち、水素ラジカルプラズマを生成するには、Hを処理室内に流入させた状態で、処理室内の電極間に、例えば13.5MHz、27MHz、40MHz等の高周波を印加することにより有効にプラズマを生成することができる。
【0071】
また、上述した第二成膜装置70A、70Bにおいては、水素ラジカルプラズマ処理に用いるHガスを処理室(反応室)内に供給するガスボックス(ガス導入部)及びガスライン(ガス導入部)が設けられている。また、処理室には、マスフローコントローラ(ガス導入部)が接続されており、ガスボックス及びガスラインを通じて供給されたHガスの流量が制御され、制御された流量のガスが処理室内に供給される。
【0072】
このように水素ラジカルプラズマ処理を施すと、Oラジカルに比して穏やかな反応が生じるため、下層にダメージを与えることなく、第二光電変換ユニットのp層の表面を活性化させる効果がある。
【0073】
従って、第二光電変換ユニットのp層の表面を活性化させることが可能となり、その上に積層される第二光電変換ユニットのi層及びn層の結晶を有効に生成することができる。大面積の基板に第二光電変換ユニットを形成する場合であっても、均一な結晶化率分布を得ることが可能となる。
【0074】
また、第一光電変換ユニットのn層と第二光電変換ユニットのp層としては、非晶質のアモルファスシリコン(a−Si)層に微結晶シリコン(μc−Si)が分散された層でも、非晶質のアモルファス酸化シリコン(a−SiO)層に微結晶シリコン(μc−Si)が分散された層でもよい。
【0075】
しかし、基板の大面積化の際に必要とされる均一な結晶化分布率、即ち、結晶質光電変換層のi層とn層の結晶成長核の生成による均一な結晶化分布率を得るためには、非晶質のアモルファス酸化シリコン(a−SiO)層に微結晶シリコン(μc−Si)が分散された層を採用することが好ましい。
【0076】
このように、非晶質のアモルファス酸化シリコン(a−SiO)層に微結晶シリコン(μc−Si)が分散された層は、アモルファスシリコン(a−Si)半導体層よりも低い屈折率が得られるように調整することが可能である。
【0077】
そこで、この層を波長選択反射膜として機能させ、短波長光をトップセル側に閉じ込めることによって変換効率を向上させることが可能である。
【0078】
また、この光を閉じ込める効果の有無に拠らず、非晶質のアモルファス酸化シリコン(a−SiO)層に微結晶シリコン(μc−Si)が分散された層は、水素ラジカルプラズマ処理によって第二光電変換ユニットのi層とn層の結晶成長核の生成を有効に働かせ、大面積の基板においても均一な結晶化率分布を得ることが可能となる。
【0079】
また、本発明においては、第一光電変換ユニットを構成するn層として、結晶質のシリコン系薄膜を形成してもよい。すなわち、アモルファスシリコンの第一光電変換ユニットのp層、i層の上に、微結晶シリコンのn層及び微結晶シリコンの第二光電変換ユニットのp層を形成する。
【0080】
この際、非晶質の第一光電変換ユニットのp層、p層の上に形成される非晶質のi層、i層の上に形成される結晶質のn層、及びn層の上に形成される第二光電変換ユニットのp層は、大気開放することなく連続して形成することが望ましい。
【0081】
特に、第一光電変換ユニットのp層、i層、及びn層を形成した後に大気開放し、別の反応室で第二光電変換ユニットのp層、i層、n層を形成する方法では、基板を大気開放し放置する時間、温度、雰囲気等に起因して、第一光電変換ユニットのi層が劣化し、素子性能が低下してしまう。
【0082】
従って、第一光電変換ユニットのp層、i層を形成した後、大気開放することなく連続して結晶質のn層、及び第二光電変換ユニットのp層を形成する。
【0083】
このように、結晶質のn層、及び第二光電変換ユニットのp層を形成した基板を、個別の反応室又は同じ反応室において水素ラジカルプラズマ処理を行い、表面を活性化させて結晶核を生成し、引き続いて結晶質の第二光電変換ユニットのi層、n層を積層することにより、良好な発電効率の積層薄膜光電変換装置を得ることができる。
【0084】
なお、図2には、第二光電変換ユニットのi層、n層の各々を、個別の反応室74、75において成膜する例が示されているが、個別の反応室74、75の各々において、i層、n層を連続して成膜する方式を採用してもよい。
【0085】
上記した第二製造システムにおいても、微結晶シリコン層(n層、p層)を形成する際に、第一製造システムの場合と同様に、微結晶シリコン層の形成時に副生成物としてポリシラン類が大量に形成される。そして、このポリシラン類が、装置内やその内壁及び装置内に設置された各種部品に堆積・付着すると共に、排気用配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ内に堆積・付着し、上記したような粉塵爆発等の問題が発生する可能性が高いので、その対策が必要になる。
【0086】
上記したCVD装置以外の公知の微結晶シリコン膜を形成するプラズマCVD装置の場合にも、微結晶シリコン膜の形成時に、副生成物としてポリシラン類が形成され、上記と同様な問題が生じる可能性が高いので、同様な対策を取ることが必要であることは議論するまでもないであろう。
【0087】
次に、微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜の形成時に副生成物として形成されるポリシラン類の処理方法について説明する。
【0088】
太陽電池等の技術分野で、プラズマCVD法により、シランを用いて微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を形成する際に、真空チャンバー内で副生成物としてポリシラン類が生成し、このポリシラン類がチャンバー内やその内壁、チャンバー内に設置されている各種部品に堆積・付着すると共に、排気用等の配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ(ドライポンプ)内に堆積・付着して、所定の濃度になると粉塵爆発の恐れがあることは知られている。
【0089】
本発明者の検討によれば、上記のような粉塵爆発は、例えば、真空チャンバー内に配置されている電極等の影響で、付着したポリシラン類がチャンバー内壁から剥離(崩落)する際に発生する静電気(崩落電位)により、このポリシラン類に着火して惹起されることが解った。また、配管内や真空ポンプ(ドライポンプ等)内に堆積したポリシラン類も静電気などを着火源として爆発する可能性がある。なお、真空ポンプ内にポリシラン類が堆積してしまうと、ポンプが動かなくなるので、オーバーホールが必要となるが、その際にオーバーホール工場等に搬送する途中でも爆発の危険性がある。
【0090】
ポリシラン類を単に燃焼させるだけでは危険であるので、従来は、上記したように、このポリシラン類の生成を抑制したり、トラップして除去したりしているが、満足すべき解決策はない。例えば、上記崩落電位を消失させるために、水やスチームで処理しても、ポリシラン類が疎水性であるために、完全に水で濡らすことが困難であるため、問題の解決にはならない。その上、水が存在すると水素ガスが発生する恐れがあるために、別の意味で危険である。
【0091】
本発明者の検討によれば、上記問題を解決するには、例えば、(1)アニオン系、カチオン系、及び/又はノニオン系界面活性剤(水系)により処理する方法、(2)鉱物油等の油系材料+ノニオン系界面活性剤により処理する方法、(3)鉱物油等を含む有機溶媒により処理する方法、(4)精製油等の香料用溶剤(油系材料)により処理する方法、及び(5)燃焼法等が考えられる。
【0092】
(1)の処理方法は、1剤で不燃化でき、低コストであるという利点はあるが、界面活性剤が水系であれば、ポリシラン類が水分と接触すると、アルカリ性でも酸性でも水素ガスが発生する恐れがあるので、危険がないとは言えないと共に、使用する界面活性剤の種類によっては高価であるという欠点がある。この界面活性剤としては、上記したようなものを使用できるが、泡立ちが少なく、臨界ミセル濃度(CMC)が小さいため洗浄力が強いノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0093】
(2)の処理方法は、不燃化洗浄が簡単にでき、界面活性剤廃液の処理が楽であるという利点はあるが、高コスト(油を洗浄する界面活性剤は高価)であり、かつ界面活性剤が水系であれば、ポリシラン類がその水分と接触すると、上記と同様に水素ガスを発生する恐れがある。
【0094】
(3)の処理方法は、水素発生がなく、低コストであり、使用する油を繰り返し使用することができる(ポリシラン類は、油中に凝集して分散しているので、濾過が可能である)という利点はあるが、2剤の搬送油/洗浄油が必要であると共に、洗浄後の廃油処理が必要であるという欠点がある。
【0095】
(4)の処理方法は、1剤で不燃化洗浄ができ、水素発生がないという利点はあるが、高コスト、廃溶剤処理が必要であると共に、引火点が常温付近であり、取り扱い方に難点がある。
【0096】
(5)の処理方法は、特に真空ポンプ(ドライポンプ)の場合はその構造が複雑であることから、燃え残りができ、また、その作業が危険であるという欠点がある。
【0097】
上記処理方法において、特に真空ポンプの場合は、真空チャンバーから取り外し、オーバーホール工場等へ搬送し、そこで解体・洗浄処理を行うが、その輸送途中でも爆発の危険があるので、そのような危険を回避できる対策を考えることが必要である。
【0098】
従って、ポリシラン類の処理には、一応、上記(1)〜(4)の処理方法が可能であり、特に、近年の廃油処理工場の増加に鑑みれば、上記(3)の処理方法が好ましい。
【0099】
以下、上記(3)の処理方法を主体に説明する。
【0100】
生成するポリシラン類は、粒径37nm程度の超微粉であるので、鉱物油等を含めた有機溶媒中に分散する。
【0101】
そこで、真空チャンバー内に堆積し、その内壁に付着しているポリシラン類に対しては、有機溶媒を吹き付けて剥離させ、この有機溶媒中に分散せしめたポリシラン類を取り出して、輸送し、所定の場所で処理する。すなわち、ポリシラン類含有有機溶媒を濾過し、ポリシラン類を取り除いて、この有機溶媒を再利用する。
【0102】
また、真空チャンバー内に配置された部品に対しては、取り外した後、シンクなどに入れた鉱物油等の有機溶媒中に浸漬して輸送し、所定の場所で、部品に付着したポリシラン類分散有機溶媒を洗浄油で洗浄処理する。また、配管に関しても、部品の場合と同様に洗浄処理可能である。
【0103】
さらに、真空ポンプ(ドライポンプ)に対しては、真空チャンバーから取り外し、上部シリンダーの吸気口を開け、鉱物油等の有機溶媒を注入・充填し、吸気口を閉じ、処理工場等へ輸送し、所定の時間放置した後、分解し、ポリシラン類分散有機溶媒を洗浄油で洗浄して、オーバーホールする。その後、組み立てて再使用する。
【0104】
以下、本発明で用いることができる鉱物油等の有機溶媒について説明する。ポリシラン類は、疎水性の物質であり、有機溶媒に分散可能である。この有機溶媒は、ポリシラン類を分散した状態で水素ガスを発生しないものであれば良く、例えば、水分を含んでいないものが好ましい。また、引火点は、処理作業中に引火しないものであれば良く、室温以上、例えば40〜45℃以上であれば好ましく、動粘度は、真空ポンプ内への浸透性を考えれば、低い方が好ましく、例えば40℃で65mm/s以下、好ましくは40mm/s以下であれば良い。さらに、この有機溶媒は、成分中に不飽和結合を有していない方が好ましい。なお、粘度が高いものについては、使用時に所定の温度に加熱して、粘度を下げて使用することができる。
【0105】
本発明で用いることができる有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシン−4−メチル−2−ペンタノン、3,5,5−トリメチル−2−シクロセキセン−1−オン、2,6−ジメチル−4−ヘブタノン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒;ヘビーアロマティック(HA−100、HA−150、HA−180)、メシチレン、エチルベンゼン、クロルベンゼン、オルト−ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、トリクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロルエチレン、1,2−ジクロルベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロセルブ(エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒;コールタール、石油ベンゼン、テレビン油、及びミネラルスピリット等の石油系溶媒;シリコンオイル;流動パラフィン等のパラフィン系溶媒等;N,N−ジメチルホルムアミド、4−メチルアミノラクタム、ジメチルスルフォキシド等の溶媒;アルコール系溶媒;及びこれら溶媒の2種以上の組み合わせたものを挙げることができる。その他に、香油、例えば、天然の芳香物質及び合成の芳香物質の混合物でも良いし、上記しなかったものでも、本発明の目的を達成できるものであれば使用できることは勿論である。
【0106】
さらに、上記と一部重複するが、機械油として使用されているタービン油、ギヤー油、スピンドル油、及び潤滑油等も、また、これらのベース油も使用できる。
【0107】
上記潤滑油としては、例えば、出光興産株式会社製のダフニー(登録商標)オイル及びダフニーメカニックオイル32、46(商品名)並びにダイアナフレシアW−8(商品名)等、また、ダフニーメカニックオイルやダイアナフレシア等から添加物を抜いたベースオイル等を使用できる。また、油回転真空ポンプ用のポンプ油としての石油系鉱物油であるアルボイルR−4、R−7、R−80(株式会社アルバック製;商品名)等及びそのベースオイル等も使用できる。
【0108】
本発明によれば、上記部品や配管や真空ポンプに付着したポリシラン類分散有機溶媒を洗浄油で洗浄する。
【0109】
この洗浄油としては、ポリシラン類分散有機溶媒を洗浄できれば良く、上記した有機溶媒の中から、適宜選択して使用できる。但し、動粘度は低い方が好ましい。例えば、パラフィン系溶剤が好ましい。具体的には、例えば、石油系溶媒出光興産株式会社製のダフニーアルファクリーナーM及びH(商品名)並びにクリンスルーL841(商品名)等を使用できる。
【0110】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0111】
公知のプラズマCVD装置を用い、真空チャンバー内に、公知のプロセス条件で、シランガスを流し、Si基板上に微結晶シリコン膜を形成したところ、副生成物としてポリシラン類が大量に形成され、真空ポンプ(ドライポンプ)内にも大量に堆積していた。そこで、図3(a)〜(f)に示すプロセスを経て真空ポンプ内のポリシラン類を処理した。
【0112】
すなわち、真空チャンバーから真空ポンプを取り外し、上部シリンダーの吸気口を開け、潤滑油として、出光興産株式会社製のダフニー(登録商標)メカニックオイル32及び46(商品名)のそれぞれを真空ポンプ内へ注入して充填し、吸気口を閉じ、処理工場へ輸送し、一晩放置した後、真空ポンプを分解し、各構成部品に付着していたポリシラン類分散有機溶媒を、洗浄油として出光興産株式会社製のダフニーアルファクリーナーM及びH(商品名)を用いて洗浄した。
【0113】
本実施例で用いた潤滑油としてのダフニーメカニックオイル32及び46のいずれも、また、洗浄油としてのダフニーアルファクリーナーM及びHのいずれも同じ結果が得られたので、以下、ダフニーメカニックオイル32及びダフニーアルファクリーナーMを用いた場合の結果を代表として説明することにする。
【0114】
図3(a)は、処理工場で真空ポンプを分解する際に、ポンプの上部シリンダー吸気口を開けた状態を示し(茶色のものが、ポリシラン分散潤滑油である)、図3(b)は、ポンプ上部シリンダー吸気口をウエスで拭き取った状態を示し、図3(c)〜(f)は、ポンプを分解した後の各構成部品の状態を示す。すなわち、図3(c)は、ポンプ内のドライ上部シリンダーに付着したポリシラン分散潤滑油の状態を示し、図3(d)は、ポンプ内のドライ下部シリンダーローターに付着したポリシラン分散潤滑油の状態を示し、図3(e)は、ポンプ内のドライローターに付着したポリシラン分散潤滑油の状態を示し、図3(f)は、ポンプ内のドライ下部シリンダーに付着したポリシラン分散潤滑油の状態を示す。
【0115】
図3(c)〜(f)から明らかなように、真空ポンプ内の構成部品全体にポリシラン分散潤滑油が浸透し、付着していることが解る。
【0116】
次いで、こられのポリシラン分散潤滑油が付着した構成部品を上記したようにして洗浄した。各構成部品のうちドライローターを例に取り、その洗浄状態を図4(a)〜(d)に示す。図4(a)〜(d)から明らかなように、ローターの表面から付着物が全て取り除かれ、清浄な表面が得られていることが解る。その他の構成部品の場合も同様な結果が得られていることが確認された。
【0117】
かくしてオーバーホールの終了した各構成部品を組み立てた。この真空ポンプを用い、上記したようにして、プラズマCVD法によりSi基板上に微結晶シリコン膜を形成した。新品の真空ポンプを用いた場合と同様に成膜プロセスを実施できた。
【実施例2】
【0118】
実施例1に記載の方法を繰り返した。但し、潤滑油としてはダフニーメカニックオイル68を用い、また、洗浄油としてはダフニーアルファクリーナーMを用いて、真空ポンプ内に堆積したポリシランを処理した。
【0119】
その結果を、図5(a)〜(f)に示す。図5(a)は、真空ポンプ吸気口からポンプ内への潤滑油を注入する状態を示し、図5(b)は、潤滑油注入後に一晩放置した後にポンプ吸気口を開けた状態を示し、図5(c)〜(f)は、それぞれ、ポンプを分解した後の各構成部品(ローター、シリンダー)の状態を示す。
【0120】
図5(c)〜(f)から明らかなように、潤滑油が真空ポンプの2段目までしか浸透していないことが解る。2段目までしかポリシランが到達していない場合でも、ある程度有効に処理されたものと考えられる。
【0121】
かくして得られた各構成部品を、実施例1に記載の方法で洗浄したところ、綺麗に洗浄でき、清浄な表面が得られた。
【実施例3】
【0122】
実施例1に記載の方法を繰り返した。但し、真空チャンバー内に設置されている構成部品のうち部品に付着したポリシラン類の処理を行った。
【0123】
真空チャンバー内に潤滑油としてダフニーメカニックオイル32を導入し、このオイルが適用されたポリシラン類の付着した部品を取り出し、洗浄油としてダフニーアルファクリーナーMを用いて、部品表面に付着しているポリシラン類分散潤滑油を洗浄処理した。
【0124】
図6に示すように、シンク内に洗浄油を注入し(図6(a))、このシンク内にポリシラン分散潤滑油が付着した部品を浸漬し(図6(b))、シンク内で洗浄した(図6(c))。この洗浄の結果、部品は清浄になり(図6(d)〜(f))、再利用可能であった。また、配管に関しても、上記部品と同様に処理すると清浄な面が得られた。
【実施例4】
【0125】
上記した第一及び第二の例のプラズマCVD装置を用いて、Si基板上に、微結晶シリコン膜を形成した。微結晶シリコン層の形成時に副生成物としてポリシラン類が大量に形成され、このポリシラン類は、成膜室内、その内壁及び成膜室内に設置された各種部品に堆積・付着すると共に、排気用配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ内に堆積・付着していた。
【0126】
実施例1記載の方法に準じて、形成されたポリシラン類を処理したところ、真空ポンプ内に堆積・付着していたポリシラン類は洗浄され、清浄な面を有するポンプ構成部品が得られた。
【0127】
また、図1及び2にそれぞれ示す第一及び第二製造システムを用い、Si基板上に、微結晶シリコン膜を形成した。微結晶シリコン層の形成時に副生成物としてポリシラン類が大量に形成され、このポリシラン類は、成膜室内、その内壁及び成膜室内に設置された各種部品に堆積・付着すると共に、排気用配管内やその内壁に堆積・付着し、また、真空ポンプ内に堆積・付着していた。
【0128】
実施例1記載の方法に準じて、形成されたポリシラン類を処理したところ、真空ポンプ内に堆積・付着していたポリシラン類は洗浄され、清浄な面を有するポンプ構成部品が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明によれば、プラズマCVD法により微結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を形成する際に副生成物として形成されるポリシラン類を安全に処理することができるので、微結晶シリコン膜及び/又はアモルファスシリコン膜を利用する産業分野、特に太陽電池の産業分野で有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0130】
60 第一成膜装置 61 ロード室
62 層成膜反応室 63 層成膜反応室
63a、63b、63c、63d 反応室
64、65 層成膜反応室 66 アンロード室
70A、70B 第二成膜装置
71 ロード・アンロード室 72 層成膜反応室
73 ロード・アンロード室 74、75 反応室
74a、74b、74c、74d、74f 反応室
77 中間室 80A、80B 暴露装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、該真空ポンプ内へ潤滑油から選ばれた有機溶媒を注入・充填し、所定の時間放置し、次いで該真空ポンプを分解し、ポリシラン分散有機溶媒が付着している分解された構成部品を洗浄油で洗浄することを特徴とするポリシラン類の処理方法。
【請求項2】
プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、該真空チャンバー内に設置されている部品に堆積・付着するポリシラン類を処理する方法であって、該部品に対して潤滑油から選ばれた有機溶媒を適用し、次いで洗浄油を入れたシンク内にポリシラン分散有機溶媒が付着している部品を入れ、この部品を洗浄油で洗浄することを特徴とするポリシラン類の処理方法。
【請求項3】
プラズマCVD法により、基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、真空チャンバー内で副生成物として生成し、該真空チャンバー内、該真空チャンバー内に配置された部品、該真空チャンバーから該真空排気系までの配管内、及び該真空排気系の真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を有機溶媒に分散させ、処理することを特徴とするポリシラン類の処理方法。
【請求項4】
Si基板が載置され、真空排気系を備えた減圧可能な真空チャンバーを用いて、シランガスを導入し、プラズマCVD法により、該基板上に微結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜を堆積する際に、該真空チャンバー内で副生成物として生成し、該真空チャンバー内、該真空チャンバー内に配置された部品、該真空チャンバーから該真空排気系までの配管内、及び該真空排気系の真空ポンプ内に堆積・付着するポリシラン類を有機溶媒に分散させ、処理することを特徴とするポリシラン類の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158815(P2012−158815A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20229(P2011−20229)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】