説明

ポリマー安定化リポソーム組成物および使用方法

本発明は、粒子全体にわたって親油性生分解性ポリマー、例えば、アミノ酸含有ポリエステルアミド(PEA)、ポリエステルウレタン(PEUR)、およびポリエステルウレア(PEU)を組み込み、組み込まれた生物学的薬剤のインビボ送達について組成物を安定化させる、リポソーム粒子組成物を提供する。経口送達について、インスリンなどのバイオロジックは、ポリマーへ直接結合される。粒子中の脂質は、製作および消化の間、該組成物をさらに安定化させるように選択され、ネイティブな活性を有するバイオロジックの持続性送達を提供する。生物学的薬剤をインビボで投与するための、本発明の組成物を製造および使用する方法も含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に、リポソーム技術および薬物療法の分野、より具体的には、ポリマー安定化リポソーム製剤、ならびに薬物療法における使用のためにリポソーム製剤を安定化させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
リポソームは、個体へのリポソーム粒子の投与後の生物活性剤の制御放出を達成する意図を持って、生物活性剤、例えば、薬物およびバイオロジック(biologic)が封入され得る、水性内部空洞を取り囲んでいる人工脂質またはリン脂質小胞である。
【0003】
その極性の性質に起因して、リン脂質の頭部は親水性であり、無極性尾部は疎水性である。水中に置かれると、リン脂質は、「脂質二重層」として公知の二重層を形成し、ここで、疎水性尾部は互いに向かい合って並んでおり、両側の親水性頭部が水中へ広がっている脂質二重層が形成される。(この挙動のため、リン脂質は、自然に小胞またはリポソームを形成する)。これらの電気的性質に起因して、水中へ添加された水溶性生物活性剤は、疎水性末端の集合体内に封入され、脂溶性生物活性剤は、小胞またはリポソーム中の脂質二重層中へ封入される。
【0004】
数タイプのリポソームが記載されている(米国特許第4,552,803号、Lenk;米国特許第4,310,506号、Baldeschwieler;米国特許第4,235,871号、Papahadjopoulos;米国特許第4,224,179号、Schneider;米国特許第4,078,052号、Papahadjopoulos;米国特許第4,394,372号、Taylor;米国特許第4,308,166号、Marchetti;米国特許第4,485,054号、Mezei;および米国特許第4,508,703号、Redziniak;Szoka, et al. (1980) Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9:465-508;Liposomal particles, Marc J. Ostro, Ed., Marcel-Dekker, Inc., New York, 1983;Poznansky and Juliano, Pharmacol. Rev. (1984) 36:277-236;Kim, et al. Biochim. Biophys. Acta (1983) 728:339-348;Kim et al. Biochim. Biophys. Acta (1981) 646: 1-10)。
【0005】
単層リポソームは、水性体積を取り囲む単一の二重層膜を有し(Huang, 1969, Biochemistry (1969) 8:334-352)、一方、多層リポソームは、「オニオンスキン」構造に配置された複数の同心の膜を有し、この間に、シェル様の同心の水性区画がある(Bangham et al. J. Mol. Biol. (1965) 13:238-252)。多小胞リポソームは、複数の同心でない水性空洞を取り囲み、かつ、二重層膜のリーフレットを分離する中性脂質を特徴とする、交差する脂質二重層膜からなる、微視的な脂質小胞である(Kim et al. Biochim. Biophys. Acta (1983) 728:339-348)。
【0006】
リポソームは、身体への多くの分子(例えば、インスリンおよびいくつかの抗癌剤)の送達について、および免疫系の食細胞に影響を与える疾患を治療することについて記載されており、何故ならば、リポソームは、それらを異物として認識する食細胞に蓄積する傾向にあるためである。このため、リポソームはまた、ワクチンにおいて有用であると記載された(Reddy, R. et al. J. Immunol. (1992) 148: 1585およびRock, K. L., Immunol Today (1996) 17: 131)。
【0007】
しかし、リポソームの用途研究は、活性薬剤の早期放出に起因して、食塩水中および血清中における薬物保持時間の落胆する差異を示した。例えば、化学療法剤であるビンクリスチンをカプセル化するリポソームは、食塩水中において8週間を超える保持時間を示したが、血清中においては1時間未満の保持時間を示した(Webb et al., Cancer Chemotherapy and Pharmacology 42:461 (1998))。別の研究において、抗生物質であるシプロフロキサシンをカプセル化するリポソームは、食塩水中において4週間を超える保持時間を示したが、血清中においては30分未満の保持時間を示した(Bakker-Woudenberg et al., Antimicrobial Agents (2001) 45: 1487)。
【0008】
全身投与の際の活性薬剤の早期放出の問題を克服するために、種々の方法および化合物が、リポソームを安定化するために使用されてきた。血液中における滞留時間を延長するためにリポソーム製剤へ添加される化合物の中でも特に、短鎖脂肪酸(米国特許第5,653,998号)、膜流動性を低下させるコレステロールなどのステロールを含む安定剤;グリセロール、または多糖類、例えば、スクロース;脂質界面活性剤、例えば、リソリピド(lysolipid)(米国特許第5,882,679号);および親水性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、デキストラン、プルラン、フィコール、ポリビニルアルコール合成ポリアミノ酸、アミロース、アミロペクチン、キトサン、マンナン、シクロデキストリン、ペクチン、およびカラゲナン(米国特許第6,228,391号および第6,660,525号)が挙げられる。
【0009】
全身投与の際のリポソームからの活性薬剤の早期放出を防ぐために設計された当該分野における多くの発見にもかかわらず、新規のおよびより良いリポソーム組成物ならびにこのようなリポソーム組成物からの生物活性剤の放出速度を安定化させるための方法についての必要性が存在している。
【0010】
有機または無機薬物および小さなバイオロジック(例えば、短いペプチド)とは異なり、生体高分子の機能、特にタンパク質の機能は、分子の三次元構造の不変性に依存する。高分子鎖の空間的立体配座的折り畳みは、各々が高分子鎖自体の共有結合よりも遥かに弱い、力の共同作用によって一緒に保持されている。これらの非共有結合力の全ては、基本的に性質が電子的である:静電気的イオン力(水素結合を含む)または電気力学的分散力(短距離疎水性)。
【0011】
オープンな製剤、例えば、ヒドロゲルは、生体分子を天然の水性環境に浸すことによって、治療的機能を保存させるように働く。ある場合は局所的な疎水性相互作用でカップリングされた、ゲルポリマーとバイオロジックとの間の、広範囲の直接的な水で架橋された水素結合は、ゲルを通っての拡散によってバイオロジックの放出を制限する。しかし、多くの場合、このようなオープンな製剤は、ゲルの同様のサイズの細孔を通って浸透し得る分解酵素の進入を可能にし、構造的にインタクトな生体高分子の送達について固有の問題を提示する。
【0012】
より強い保護が、高分子バイオロジックのマトリクス化またはカプセル化についてより高密度の構造を与える疎水性ポリマーによって、高分子バイオロジックへ提供された。しかし、疎水性ポリマーは水をはじき、このような合成ポリマー製剤は、分子の活性な(例えば、ネイティブな)折り畳み状態を保存するに役立つ分子間相互作用について限られた能力を今まで実証している。例えば、疎水性ポリエステル(例えば、PLGA)は、限られたイオン結合能しか有さない。特に、ポリエステルは、水素結合供与体を欠いている。同様に、メタクリレートは、疎水性であり、他の非共有性結合能を導入するために広範囲に誘導体化されなければならない。さらに、大抵の合成疎水性ポリマーは、乏しい生物腐食性を有しているか、または水/酸加水分解によって分解し、分解産物を生じさせ、これは、高分子バイオロジックを修飾し得、その保護が求められる。
【0013】
化学者、生化学者および化学工学者は全て、他の革新的な薬物輸送システムを見出すために、伝統的なポリマー網目構造の先を見ている。従って、高分子バイオロジックを含む、種々の異なるタイプの生物活性剤の制御送達のための新規のおよびより良いポリマー組成物についての必要性が、当該分野において依然として存在している。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、親油性特性を有するポリマー、特に、個々の水分子へ水素結合し得るもの、例えば、全体のアミノ酸を組み込むものが、リポソーム粒子を安定化するために使用され得るという発見に基づく。本発明の組成物のリポソーム粒子中の親油性特性を有する安定性付与ポリマーは、全粒子に浸透し、そして粒子の脂質および脂質作用(lipid-acting)成分と相互作用することが発見された。従って、真のリポソームとは異なり、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物の粒子は、分離した脂質区画および水性区画を欠いており、隔離された(sequestered)生物活性剤の活性の実質的な損失なしに凍結乾燥され得る。
【0015】
本発明の組成物中の安定性付与ポリマーはまた、インビボで、例えば、全身的に投与されると、そのなかに封入された生物活性剤と相互作用し、一貫したかつ制御された様式で、生物活性剤の放出を促進する。安定性付与ポリマーとリポソーム粒子中の他の成分との相互作用は、粒子製作の間、統合されかつ安定した物理的構造を提供するだけでなく、組成物がインビボに投与された際に、隔離された生物活性剤の活性構造を、例えば、「折り畳まれた」タンパク質として、安定化させかつ維持させ続ける。
【0016】
従って、1態様において、本発明は、粒子全体にわたって一体的に配置された親油性特性を有する安定性付与ポリマーと少なくとも1つの小胞形成性脂質または脂質作用化合物とを含有するリポソーム粒子が、その実質的にネイティブな活性を維持するために少なくとも1つの生物活性剤を隔離する、ポリマー安定化リポソーム組成物を提供する。用語「リポソームの」は、その粒子を含む本発明の組成物を記載するために本明細書およびその中の特許請求の範囲にわたって使用される場合、該粒子が、リポソームのある特徴を共有するが、真のリポソームではないことを意味し、何故ならば、本発明の組成物の粒子は、真のリポソームを特徴付ける、分離した脂質区画および水性区画を欠いているためである。
【0017】
別の態様において、本発明は、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物をインビボで被験体へ投与し、その結果、該組成物が、生分解し、実質的にネイティブな活性を有する隔離された生物活性剤を制御速度で該被験体へインビボで放出することによる、生物活性剤を被験体へ送達するための方法を提供する。
【0018】
なお別の態様において、本発明は、第1液体において以下の成分を混合し、第1均質液体溶液を形成することによる、ポリマー安定化リポソーム組成物を製造するための方法を提供する:
a)ネイティブな活性を有する生物活性剤;
b)親油性特性を有する安定性付与ポリマー;ならびに
c)以下より選択される少なくとも1つの脂質または脂質作用化合物:
クラスI、非膨潤性・非極性有機系安定剤;
クラスII、膨潤性両親媒性物質である有機系界面活性剤;および
クラスIV、コレステロールまたはコレステロール系化合物。
次いで、前記成分が可溶性でない第2液体中において第1均質液体溶液を乳化し、第2液体中において第1均質液体溶液の液滴のエマルジョンを得る。エマルジョンから第1液体を蒸発させ、成分a)、b)およびc)を含む安定なリポソーム粒子を得、ここで、前記生物活性剤は、前記安定性付与ポリマーおよび前記少なくとも1つの脂質または脂質作用化合物によって協力して封入され、実質的にネイティブな活性を保持している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】構造式(IV)のPEAポリマーへ結合された少数のインスリンプロトマーによる遊離インスリンの安定化を示す略図である。
【図2】バイオロジックの経口送達のための本発明の組成物の成分へのキーである。
【図3】図2に示されるように濃淡を付けたセグメントを有する本発明の組成物の成分の相対的割合(wt%)を示す円グラフである。
【図4】消化酵素の作用による、ナノ粒子への、図3由来のポリマー安定化リポソームマイクロ粒子の生物学的変換を示す略図である。粒子の成分の相対的割合は、図2および3におけるように濃淡を付けられている。
【図5】本発明の組成物の粒子で経口的に送達されたインスリンの生物活性およびバイオアベイラビリティを示すグラフである。該製剤を含有する腸溶コーティングされたゼラチンカプセル剤を、絶食ラットへ経口投与し、そして血中グルコースおよびインスリン濃度を5時間にわたって測定した。
【図6】本発明の組成物の粒子で経口的に送達されたインスリンの生物活性を示すグラフである。該粒子を含有する溶液を、経口強制飼養によってラットに投与し、そして血中グルコース濃度を5時間にわたって測定した。3つの異なる用量を試験し、そして用量反応を観察し、ここで、ラット体重1 kg当たり30および60 IUインスリンが、グルコース濃度を低下させた。試験グルコース濃度を、各用量について時間ゼロの値のパーセンテージとして示す。
【図7】1.5 g/kgの経口グルコースチャレンジ(challenge)の15分前に、ヒトインスリンを含有する本発明のポリマー安定化リポソーム組成物の粒子を経口投与したマウスにおける時間に対するグルコース濃度を示すグラフである。(■)=コントロールマウス(製剤無し);(◆)=本発明の組成物の粒子中に配合された10 IU/kg インスリンを経口投与されたマウス。
【図8】1.5 g/kgの経口グルコースチャレンジの15分前に、ヒトインスリンを含有する本発明のポリマー安定化リポソーム組成物の腸溶コーティングされた粒子を経口投与したマウスにおける時間に対するグルコース濃度を示すグラフである。(■)=コントロールマウス(製剤無し);(◆)=本発明の腸溶コーティングされた粒子中に配合された10 IU/kg インスリンを経口投与されたマウス。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明は、親油性セグメントを有しかつ好ましくはまた水分子へ水素結合し得る生分解性ポリマー、例えば、本明細書に開示されるポリ(エステルアミド)(PEA)、ポリ(エステルウレタン)(PEUR)およびポリ(エステルウレア)(PEU)ポリマーが、インビボで投与されると一貫したかつ制御された様式での組み込まれた生物活性剤の放出についてリポソーム粒子組成物を安定化させるという発見に基づく。本発明の組成物および方法において使用されるバイオアナログなPEA、PEURおよびPEUは、非毒性構築ブロック、例えば、これらの安定性付与ポリマーを親油性にする、炭化水素セグメントを含む脂肪族ジオールおよびジカルボン酸ならびに疎水性αアミノ酸を含む。同時に、該ポリマーは、酵素制御速度で分解することによって、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物からの、隔離された生物活性剤の放出速度を制御する。
【0021】
従って、1態様において、本発明は、少なくとも1つの脂質二重層を有するリポソーム粒子と、該リポソーム粒子によって組み込まれた少なくとも1つの生物活性剤と、該リポソーム粒子の該脂質二重層中に含まれる親油性特性を有する生分解性の安定性付与ポリマーとを含むポリマー安定化リポソーム組成物であって、ここで、該生物活性剤がその官能基を介して該安定性付与ポリマーへ直接結合されている、ポリマー安定化リポソーム組成物を提供する。1態様において、安定性付与ポリマーは、本明細書に記載されるPEA、PEURおよびPEUポリマーの少なくとも1つまたはブレンドを含む。
【0022】
親油性特性を有する生分解性安定性付与ポリマー
本発明のポリマー安定化リポソーム組成物において有用な安定性付与ポリマーは、少なくともその中のセグメント中において、親油性特性を有し、好ましくは水分子へ水素結合する。これらの安定性付与ポリマーは、さらに、生物活性剤が、例えば共有結合によって、結合され得る、遊離官能基を特徴とし得る。当該分野に公知の多くの生分解性および/または生体適合性親油性ポリマーが、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物の製造において使用され得、これらとしては以下が挙げられる:脂肪族ポリエステル、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびそれらのコポリマー;ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、より長い(即ち、C15〜C25)炭化水素鎖を有するポリエステル;修飾された末端ヒドロキシルを含むポリエステルの樹枝状ポリマー;脂肪族および芳香族ポリカーボネート(PC);脂肪族ポリアミド、ポリペプチド(例えば、水溶性ドメインおよび水不溶性ドメインの両方を含むポリマー性両親媒性物質である、ジブロック−コポリペプチド);ポリエステルアミド;ポリウレタン;シリコーン、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン);親油性シクロおよびポリ(ホスファゼン);ポリ(メタクリル酸)、ポリ(スチレン)ならびに疎水性ポリアクリリック、ポリビニルおよびポリスチレン担体。
【0023】
本明細書に構造的に記載されるPEA、PEURおよびPEURポリマーは、該安定性付与ポリマーがリポソーム粒子の脂質中へ組み込まれるに十分な親油性特性(即ち、親油性セグメント)と、リポソーム粒子の疎水性領域への結合のための疎水性セグメントと、リポソーム粒子の極性領域を安定化させるための親水性セグメントとを含む。さらに、これらのPEA、PEURおよびPEURポリマーはまた、安定性付与ポリマーへの生物活性剤の結合に好適な遊離官能基をその中に有する。被験体の組織への生物活性剤の送達のための使用の間、本発明の組成物中の安定性付与ポリマーの親油性セグメントはまた、細胞脂質膜へ結合し、組織への生物活性剤の送達を助ける。
【0024】
従って、1態様において、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物中の安定性付与ポリマーは、以下の少なくとも1つまたはブレンドを含む:
構造式(I)によって表される化学式を有するPEA:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり;R1は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、およびそれらの組み合わせより選択され;ここで、式(III)中のR5およびR6は、独立して、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより選択され;個々のnモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルおよび-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される;

または、構造式(IV)によって表される化学式を有するPEA:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり、mは、約0.1〜0.9の範囲にあり、pは、約0.9〜0.1の範囲にあり;式中、R1は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、およびそれらの組み合わせより選択され;ここで、式(III)中のR5およびR6は、独立して、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンより選択され;各R2は、独立して、水素、(C1-C12)アルキル、(C2-C8)アルキルオキシ、(C2-C20)アルキル(C6-C10)アリールまたは保護基であり;個々のmモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルおよび-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;R7は、独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニル、例えば、(C3-C6)アルキルまたは(C3-C6)アルケニルである;
または、構造式(V)によって表される化学式を有するPEUR:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり;式中、個々のnモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルおよび-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4およびR6は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される;
または、一般構造式(VI)によって表される化学構造を有するPEUR:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり、mは、約0.1〜約0.9の範囲にあり、pは、約0.9〜約0.1の範囲にあり;R2は、独立して、水素、(C1-C12)アルキル、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキル、(C6-C10)アリールまたは保護基であり;個々のmモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルおよび-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4およびR6は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせより選択され;R7は、独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニル、例えば、(C3-C6)アルキルまたは(C3-C6)アルケニルである;
または、構造式(VII)によって表される化学式を有するPEU:

式中、nは、約10〜約150であり;個々のnモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルおよび-(CH2)2SCH3より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、構造式(VIII)によって表される化学式を有するPEU:

式中、mは、約0.1〜約1.0であり;pは、約0.9〜約0.1であり;nは、約10〜約150であり;各R2は、独立して、水素、(C1-C12)アルキル、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキル、(C6-C10)アリールまたは保護基であり;個々のmモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキルおよび-(CH2)2SCH3より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、またはそれらの組み合わせより選択され;R7は、独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニル、例えば、(C3-C6)アルキルまたは(C3-C6)アルケニルである。
【0025】
例えば、PEAポリマーの1態様において、少なくとも1つのR1は、(C2-C20)アルキレン、またはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカンの残基であり、R4は、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメントである。別の選択肢において、PEAポリマー中のR1は、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカンの残基、または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、またはそれらの組み合わせである。なお別の選択肢において、PEAポリマー中において、R1は、残基α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、例えば、1,3-ビス(4-カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)、または4,4'-(アジポイルジオキシ)二ケイ皮酸であり、R4は、一般式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)、の二環式フラグメントである。
【0026】
PEURポリマーにおける1選択肢において、R4またはR6の少なくとも1つは、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、例えば、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール(DAS)、の二環式フラグメントである。
【0027】
PEUポリマーにおける別の選択肢において、少なくとも1つのR4は、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトール、例えばDAS、の二環式フラグメントである。
【0028】
PEA、PEURまたはPEUポリマー中における非常に疎水性のセグメントについて、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトールのジ-L-ロイシンエステルまたはα,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカンなどの剛直な(rigid)芳香族二酸などの成分が、ポリマー繰り返し単位に含まれ得る。
【0029】
構造式(IおよびIV〜VIII)のPEA、PEURおよびPEUポリマーを記載するために、本明細書において使用される場合、用語「アミノ酸」および「α-アミノ酸」は、アミノ基、カルボキシル基、ならびに本明細書に定義されるR3およびR5基などのR基を含む化合物を意味する。本明細書において使用される場合、用語「生物学的α-アミノ酸」は、合成において使用されるアミノ酸を意味し、フェニルアラニン、ロイシン、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、メチオニン、またはそれらの混合物より選択される。コポリマーの製作において使用されるさらなる生物学的アミノ酸としては、リジンおよびオルニチンが挙げられ、しかし、これらは、ポリマー骨格においてアディレクションに(adirectionally)(即ち、非生物学的配向に)配向され、その結果、アミノ酸のカルボキシル基は、ペプチド骨格中に組み込まれるのではなくペンディングしている。本発明の組成物を形成することにおいて有用な生分解性PEA、PEURおよびPEUポリマーは、単一ポリマー分子中に複数の異なるα-アミノ酸、例えば、1繰り返し単位当たり少なくとも2つの異なるアミノ酸を含み得、または単一ポリマー分子は、該分子のサイズに依存して、ポリマー分子中に複数の異なるアミノ酸を含み得る。
【0030】
用語「生分解性」および「生体適合性」は、安定性付与PEA、PEURおよびPEUポリマー(それらの混合物およびブレンドを含む)を記載するために本明細書において使用される場合、該ポリマーが、本明細書に記載されるように使用されると、哺乳動物被験体、例えば、ヒト、ならびに種々の他の哺乳動物被験体、例えば、ペット(例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、フェレット)、家畜(例えば、ブタ、ウマ、ラバ、乳牛および肉牛)および競走馬の組織中に見られる水および/または酵素によって体の正常な作用で無毒性産物へ分解され得ることを意味する。
【0031】
用語「親油性特性」は、本発明の組成物の製作において有用な安定性付与ポリマーのある特性を記載するために本明細書において使用される場合、該ポリマーが、疎水性であるかまたはその中に疎水性セグメントを有し、かつ、極性相互作用可能であることを意味する。
【0032】
用語「制御された」は、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物からの生物活性剤の放出を記載するために本明細書において使用される場合、安定性付与ポリマーが、所望の期間にわたって分解し、隔離された生物活性剤の滑らかかつ規則的な(即ち、「制御された」)時間放出プロフィールを提供することを意味する(例えば、薬物放出の最初の不規則な上昇を回避し、その代わりに、本発明の組成物の生分解にわたって実質的に滑らかな放出変化率を提供する)。本発明のポリマー安定化リポソーム組成物において使用される生分解性ポリマーは、安定性付与ポリマーの生分解速度を調整するように設計され、選択された期間にわたって、リポソーム粒子中に隔離された生物活性剤を放出し得る。式(IおよびIV〜VIII)によって本明細書に記載される安定性付与PEA、PEURまたはPEUポリマーは、インビボで使用されると、約5〜12時間〜約8時間〜5ヶ月;好ましくは、約5〜8時間〜約12〜36時間;例えば、約12時間〜約36時間;または約8時間〜約12時間より選択される時間範囲にわたって生分解する。これらの範囲内のより長い期間が、適切な治療、診断または緩和結果を得るために組成物を繰り返し注射する必要性を排除するリポソーム組成物を得るために特に好適である。
【0033】
本発明の組成物の安定性付与ポリマーとしての使用に好適であると本明細書において記載されるPEU、PEURおよびPEUは、生分解性を提供する加水分解性エステル結合および酵素切断性アミド結合を含み、典型的に、主としてアミノ基で鎖が終わっている。任意で、ポリマーのアミノ末端は、アセチル化され得、またはそうでなければ、任意の他の酸含有生体適合性分子への結合によってキャッピングされ得、これらとしては、有機酸、生物不活性バイオロジック、および本明細書に記載される生物活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
1選択肢において、本発明の組成物および方法において使用される安定性付与ポリマーの製作に使用されるα-アミノ酸の少なくとも1つは、生物学的α-アミノ酸である。例えば、R3がCH2Phである場合、合成に使用される生物学的α-アミノ酸は、L-フェニルアラニンである。R3がCH2-CH(CH3)2である選択肢において、ポリマーは、生物学的α-アミノ酸、L-ロイシンを含有する。本明細書に記載されるモノマー中のR3を変化させることによって、他の生物学的α-アミノ酸、例えば、グリシン(R3がHである場合)、アラニン(R3がCH3である場合)、バリン(R3がCH(CH3)2である場合)、イソロイシン(R3がCH(CH3)-CH2-CH3である場合)、フェニルアラニン(R3がCH2-C6H5である場合)、またはメチオニン(R3が-(CH2)2SCH3である場合)、およびそれらの混合物も使用され得る。なお別の代替の態様において、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物の作製に使用される安定性付与ポリマー中に含まれる種々のα-アミノ酸は全て、本明細書に記載されるように、生物学的α-アミノ酸である。安定性付与ポリマーの生体適合性は、ポリマーの製作に使用されるアミノ酸が生物学的L-α-アミノ酸である場合、特に当てはまる。
【0035】
PEA、PEURおよびPEUポリマーにおける使用に好適な保護基としては、t-ブチル、または当該分野において公知である別のものが挙げられる。一般式(II)の好適な1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールとしては、糖アルコール、例えば、D-グルシトール、D-マンニトール、またはL-イジトールから誘導されるものが挙げられる。ジアンヒドロソルビトールは、本発明の組成物の製作において使用されるPEA、PEURおよびPEUポリマー中における使用のための、現在好ましい、1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメントである。
【0036】
用語「アリール」は、本明細書中の構造式を参照して使用され、フェニル基、または、少なくとも1つの環が芳香族である、約9〜10環原子を有するオルト融合した二環式炭素環式基を意味する。ある態様において、1または複数の環原子が、1または複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで置換され得る。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびニトロフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
用語「アルケニレン」は、本明細書中の構造式を参照して使用され、主鎖または側鎖に少なくとも1つの不飽和結合を含む二価の分岐または非分岐炭化水素鎖を意味する。本明細書に開示されるポリマー(例えば、構造式(IおよびIV〜VIII)を有するもの)は、酵素分解の際に、生物学的または非生物学的アミノ酸を提供し、一方、他の分解産物は、脂肪酸および糖についてのものと等価の生化学的経路で代謝され得る。インビボでのポリマーの取り込みは安全である:研究によって、被験体が前記ポリマー分解産物を代謝/排出し得ることが示された。従って、これらのポリマーおよびこのようなポリマーを使用する本発明のポリマー安定化リポソーム組成物は、投与の部位で、注射自体によって引き起こされた外傷から離れて、そして全身的に、被験体に対して実質的に非炎症性であり、そして特に経口または鼻腔内送達に適している。
【0038】
分子量および多分散度は、本明細書において、ポリスチレン標準を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。より特には、数および重量平均分子量(MnおよびMw)は、例えば、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 486 UV検出器およびWaters 2410示差屈折率検出器を備えたModel 510ゲル浸透クロマトグラフィー(Water Associates, Inc., Milford, MA)を使用して測定される。テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)またはN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)が溶離剤(1.0 mL/分)として使用される。狭い分子量分布を有するポリスチレンまたはポリ(メタクリル酸メチル)標準を較正のために使用した。
【0039】
一般式中にα-アミノ酸を含むポリマーを作製するための方法は、当該分野において周知である。例えば、R4がα-アミノ酸中へ組み込まれている構造式(I)のポリマーの態様について、ポリマー合成のために、ペンダントR3を有するα-アミノ酸が、例えば、ペンダントR3を含むα-アミノ酸とジオールHO-R4-OHとを縮合することによって、ビス-α,ω-ジアミンへエステル化により変換され得る。結果として、反応性α,ω-ジアミン基を有するジエステルモノマーが形成される。次いで、ビス-α,ω-ジアミンは、セバシン酸などの二酸、またはビス-活性化エステル、またはビス-アシルクロリドと重縮合反応され、エステル結合およびアミド結合の両方を有する最終ポリマーが得られる(PEA)。または、例えば、構造(I)のポリマーについて、二酸の代わりに、活性化二酸誘導体、例えば、ビス-p-ニトロフェニルジエステルが、活性化二酸として使用され得る。さらに、ビス-ジ-カーボネート、例えば、ビス(p-ニトロフェニル)ジカーボネートが、二酸の残基を含むポリマーを得るために活性化種として使用され得る。PEURポリマーの場合、エステル結合およびウレタン結合の両方を有する最終ポリマーが得られる。
【0040】
より特には、上記に開示される構造式(I)の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステルアミド)(UPEA)の合成が記載され、ここで、(a)

は、

であり、および/または(b)R4は、-CH2-CH=CH-CH2-である。(a)が存在しかつ(b)が存在しない場合、(I)中のR4は、-C4H8-または-C6H12-である。(a)が存在せずかつ(b)が存在する場合、(I)中のR1は、-C4H8-または-C8H16-である。
【0041】
UPEAは、(1)不飽和ジオールのビス(α-アミノ酸)ジ-エステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩および飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステル、または(2)飽和ジオールのビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩および不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステル、または(3)不飽和ジオールのビス(α-アミノ酸)ジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩および不飽和ジカルボン酸のジ-ニトロフェニルエステル、のいずれかの溶液中重縮合によって作製され得る。
【0042】
ジアミンのアリールスルホン酸塩は、アミノ酸残基を含有するポリマーを合成することにおける使用について公知である。p-トルエンスルホン酸塩が、遊離ジアミンの代わりに使用され、何故ならば、ビス(α-アミノ酸)ジエステルのアリールスルホン酸塩は、再結晶によって容易に精製され、そして後処理にわたって反応性の低いトシル酸アンモニウムとしてアミノ基を与えるためである。重縮合反応において、前記求核性アミノ基は、有機塩基、例えばトリエチルアミンの添加によって容易に現われ、ビス-求電子性モノマーと反応し、その結果、ポリマー生成物が高収率で得られる。
【0043】
ビス-求電子性モノマー、例えば、不飽和ジカルボン酸のジ-p-ニトロフェニルエステルは、例えば、トリエチルアミンおよびp-ニトロフェノールをアセトンに溶解し、そして-78℃で撹拌しながら不飽和ジカルボン酸クロリドを滴下し、そして水中へ注ぎ、生成物を沈殿させることによって、p-ニトロフェニルおよび不飽和ジカルボン酸クロリドから合成され得る。好適な酸クロリドとしては、フマル酸クロリド、マレイン酸クロリド、メサコン酸クロリド、シトラコン酸クロリド、グルタコン酸クロリド、イタコン酸クロリド、エテニル-ブタンジオン酸クロリド2-プロペニル-ブタンジオン酸クロリドが挙げられる。構造(V)および(VI)のポリマーについて、飽和または不飽和ジオールのビス-p-ニトロフェニルジカーボーネートが、活性化モノマーとして使用される。一般構造(XIII)のジカーボネートモノマーが、構造式(V)および(VI)のポリマーについて使用される:

式中、各R5は、独立して、1または複数のニトロ、シアノ、ハロ、トリフルオロメチル、またはトリフルオロメトキシで任意で置換された(C6-C10)アリールであり;R6は、独立して、(C2-C20)アルキレンまたは(C2-C20)アルキルオキシ、または(C2-C20)アルケニレンである。
【0044】
α-アミノ酸と不飽和ジオールとのジエステルのジ-アリールスルホン酸塩は、トルエン中にα-アミノ酸、例えば、p-アリールスルホン酸一水和物、および飽和または不飽和ジオールを混合し、水放散が最小になるまで、還流温度へ加熱し、次いで冷却することによって作製され得る。不飽和ジオールとしては、例えば、2-ブテン-1,3-ジオールおよび1,18-オクタデカ-9-エン-ジオールが挙げられる。
【0045】
ジカルボン酸の飽和ジ-p-ニトロフェニルエステルおよびビス-α-アミノ酸エステルの飽和ジ-p-トルエンスルホン酸塩は、米国特許第6,503,538 B1に記載されるように作製され得る。
【0046】
上記に開示される構造式(I)の生分解性ポリマーとして有用な不飽和ポリ(エステルアミド)(UPEA)の合成をここで記載する。構造式(I)を有するUPEAは、6,503,538の(III)のR4および/または6,503,538の(V)のR1が上記に記載される(C2-C20)アルケニレンである場合を除いて、米国特許第6,503,538 B1の化合物(VII)と類似の様式で作製され得る。反応は、例えば、室温で乾燥N,N-ジメチルアセトアミド中の6,503,538の(III)および(IV)ならびに6,503,538の(V)の混合物へ乾燥トリエチルアミンを添加し、次いで、温度を80℃へ上げ、そして16時間撹拌し、次いで反応溶液を室温へ冷却し、エタノールで希釈し、水へ注ぎ、ポリマーを分離し、分離されたポリマーを水で洗浄し、減圧下で約30℃へ乾燥し、次いでp-ニトロフェノールおよびp-トルエンスルホネートにおける陰性試験まで精製することによって行われる。6,503,538の好ましい反応物(IV)は、リジンベンジルエステルのp-トルエンスルホン酸塩であり、ベンジルエステル保護基は、好ましくは、生分解性を与えるために(II)から除去されるが、それは、米国特許第6,503,538の実施例22におけるように水素化分解によって除去されるべきではなく、何故ならば、水素化分解は、所望の二重結合を飽和するためであり;むしろ、ベンジルエステル基は、不飽和を保存する方法によって酸基へ変換されるべきである。または、6,503,538のリジン反応物(IV)は、不飽和を保存しながら最終生成物中において容易に除去され得る、ベンジルとは異なる保護基によって保護され得、例えば、リジン反応物は、t-ブチルと反応され得(即ち、該反応物は、リジンのt-ブチルエステルであり得る)、そして該t-ブチルは、酸での生成物(II)の処理によって不飽和を保存しながらHへ変換され得る。
【0047】
構造式(I)を有する化合物の実施例は、6,503,538の実施例1における(III)の代わりにビス(L-フェニルアラニン)2-ブテン-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩を使用することによって、または6,503,538の実施例1における(V)の代わりにジ-p-ニトロフェニルフマレートを使用することによって、または6,503,538の実施例1におけるIIIの代わりにビス(L-フェニルアラニン)2-ブテン-1,4-ジエステルのp-トルエンスルホン酸塩を使用することによって、およびまた6,503,538の実施例1における(V)の代わりにビス-p-ニトロフェニルフマレートを使用することによって、提供される。
【0048】
構造式(I)または(IV)を有する不飽和化合物において、以下が適用できる。アミノ置換アミノキシル(Nオキシド)基を保有する基、例えば、4-アミノTEMPOが、縮合剤として、カルボニルジイミダゾール、または好適なカルボジイミドを使用して結合され得る。本明細書に記載される生物活性剤は、二重結合官能基へ結合され得る。
【0049】
生分解性PEA、PEURおよびPEUポリマーは、1ポリマー分子当たり1〜複数の異なる生物活性剤およびα-アミノ酸を含み得、好ましくは、約20,000 Da〜約300,000 Da、例えば、65,000 Da〜約130,000 Daの範囲の重量平均分子量を有し;これらのポリマーおよびコポリマーは、典型的に、標準粘度測定法によって測定した場合、0.3〜4.0の範囲の、例えば0.5〜3.5の範囲の、25℃での固有粘度を有する。
【0050】
本発明の実施における使用が考えられるPEAおよびPEURポリマーは、当該分野において周知の種々の方法によって合成され得る。例えば、トリブチルスズ(IV)触媒が、ポリエステル、例えば、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド)などを形成するために一般的に使用される。しかし、広範囲の種々の触媒が本発明の実施における使用に好適なポリマーを形成するために使用され得ることが、理解される。
【0051】
使用が考えられるこのようなポリ(カプロラクトン)は、以下のような例示的な構造式(XIV)を有する。

【0052】
使用が考えられるポリ(グリコリド)は、以下のような例示的な構造式(XV)を有する。

【0053】
使用が考えられるポリ(ラクチド)は、以下のような例示的な構造式(XVI)を有する。

【0054】
アミノキシル部分を含む好適なポリ(ラクチド-コ-ε-カプロラクトン)の例示的な合成を、以下のように記載する。第1工程は、触媒としてオクタン酸第一スズ(stannous octoate)を使用してベンジルアルコールの存在下でラクチドおよびε-カプロラクトンを共重合し、構造式(XVII)のポリマーを形成することを含む。

【0055】
次いで、ヒドロキシ末端ポリマー鎖を、無水マレイン酸でキャップし、構造式(XVIII)を有するポリマー鎖が形成され得る。

【0056】
この時点で、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシが、カルボキシル末端基と反応され、アミノキシル部分が、4-アミノ基と該カルボキシル末端基との反応から生じるアミド結合を介して前記コポリマーへ共有結合され得る。または、前記マレイン酸キャップされたコポリマーは、ポリアクリル酸とグラフトされ、さらなるアミノキシル基の引き続いての結合についてさらなるカルボン酸部分を提供し得る。
【0057】
PEUについての構造式(VII)を有する不飽和化合物において、以下が適用できる:アミノ置換アミノキシル(Nオキシド)基を保有する基、例えば、4-アミノTEMPOは、縮合剤として、カルボニルジイミダゾール、または好適なカルボジイミドを使用して結合され得る。本明細書に記載されるさらなる生物活性剤などが、二重結合官能基を介して任意で結合され得る。
【0058】
例えば、構造式(VII)を有する本発明の高分子量半結晶性PEUは、下記反応スキーム(2)に示すように、クロロホルム/水系中においてビス-求電子性モノマーとしてホスゲンを使用することによって、界面的に作製され得る。

【0059】
アディレクションな(adirectional)アミノ酸のエステル、例えばL-リジンエステルを含み、かつ、構造式(VII)を有するコポリ(エステルウレア)(PEU)の合成は、類似のスキーム(3)によって行われ得る。

【0060】
トルエン中のホスゲン(ClCOCl)(高毒性)の20%溶液、例えば市販(Fluka Chemie, GMBH, Buchs, Switzerland)は、ジホスゲン(トリクロロメチルクロロホルメート)またはトリホスゲン(ビス(トリクロロメチル)カーボネート)によって置換され得る。より毒性の低いカルボニルジイミダゾールも、ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンの代わりにビス-求電子性モノマーとして使用され得る。
【0061】
PEUの合成についての一般的手順
高分子量のPEUを得るためにモノマーの冷却された溶液を使用することが必要である。例えば、水150 mL中のビス(α-アミノ酸)-α,ω-アルキレンジエステルのジ-p-トルエンスルホン酸塩の懸濁液へ、無水炭酸ナトリウムを添加し、室温で約30分間撹拌し、そして約2〜0℃へ冷却し、第1溶液を形成する。並行して、クロロホルム中のホスゲンの第2溶液を約15〜10℃へ冷却する。第1溶液を界面重縮合のためにリアクターへ配置し、そして第2溶液を直ちに迅速に添加し、そして約15分間活発に撹拌する。次いで、クロロホルム層を分離し、Na2SO4で乾燥し、そして濾過し得る。得られた溶液をさらなる使用のために保存し得る。
【0062】
作製した全ての例示的なPEUポリマーをクロロホルム中の溶液として得、そしてこれらの溶液は保存の間安定である。しかし、あるポリマー、例えば、1-Phe-4は、分離後、クロロホルム中に不溶性となる。この問題を克服するために、ポリマーは、滑らかな疎水性表面上にキャストし、そしてクロロホルムを蒸発乾固させることによって、クロロホルムから分離され得る。得られたPEUのさらなる精製は必要とされない。
【0063】
上述されるように、本発明の組成物は、親油性特性を有する安定性付与ポリマー、例えば、式(IおよびIV〜VIII)のPEA、PEURおよびPEU安定性付与ポリマーの少なくとも1つまたはブレンドを含有する。下記により非常に詳細に記載されるように、このような親油性ポリマー鎖は、このような脂質含有溶液中に安定性付与ポリマーを約1重量%〜90重量%溶解することによって、脂質(例えば、本明細書に記載のクラスI、II、III、およびIV)と同一の液体溶液中へ混合され、その後、このような第1溶液は第2液体中へ乳化され、リポソーム粒子が得られる。
【0064】
リポソーム粒子
本発明の組成物中のリポソーム粒子は、天然または合成脂質および脂質のように作用する他の化合物(即ち、「脂質作用化合物」)を含み、これは、該組成物によって送達される生物活性剤の安定化を助ける。用語「脂質」および「脂質作用化合物」は、本発明の組成物において使用される成分を記載するために本明細書において使用される場合、(a)リン脂質によって例示されるように、水中において二重層小胞へと自然に形成し得る化合物、または(b)その疎水性部分を二重層膜の内部疎水性領域と接触させ、頭部基部分を膜の外部極性表面へ向かって配向させて、脂質二重層中へ安定して組み込まれ得る化合物を意味する。しかし、本発明の組成物中のリポソーム粒子は、典型的な先行技術のリポソームにおいて見られるタイプの分離した水性充填区画によって粒子構造を維持しておらず、従って、ポリマー安定化された脂質層が破壊されることなく、凍結乾燥され得る。
【0065】
本発明の組成物の作製における使用に好適なリン脂質の例は、極性または非極性頭部基、典型的に長さが約14〜22炭素原子の2つの炭化水素鎖を含む、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、およびスフィンゴミエリンを含み、種々の程度の不飽和を有する。本発明の組成物を作製における使用のためのさらなるジアシル鎖脂質としては、ジアシルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)などが挙げられる。それらのアシル鎖が種々の程度の飽和を有するこれらの脂質およびリン脂質は、商業的に得られ得るか、または公開された方法に従って作製され得る。
【0066】
小胞形成性脂質は、特定の程度の流動性または剛性を達成し、血清中のリポソーム粒子の安定性を制御し、かつ、リポソーム製剤中の隔離された生物活性剤の放出速度を制御するように、選択され得る。小胞形成性脂質によって決定される、リポソーム粒子の剛性は、標的細胞へのリポソーム粒子の融合において役割を果たし得る。より剛直な脂質二重層、または液晶二重層を有するリポソーム粒子は、比較的剛直な脂質、例えば、比較的高い相転移温度(例えば、60℃まで)を有する脂質の組込みによって達成される。剛直な、例えば、飽和した、脂質は、脂質二重層中においてより高い膜剛性に寄与する。コレステロールなどの他の脂質成分もまた、脂質二重層構造における膜剛性に寄与することが公知である。他方で、脂質流動性は、比較的流動的な脂質、典型的に、比較的低い液体−液晶相転移温度(例えば、室温または室温未満)を有する脂質相を有するもの組込みによって達成され得る。
【0067】
ある態様において、小胞、即ち、リポソーム粒子中の、脂質二重層を形成する脂質はまた、親油性部分、例えば、ステロールまたはアシルもしくはジアシル鎖を有する、カチオン性脂質を含み得、ここで、脂質は全体的な正味の正電荷を有する。好ましくは、この場合、脂質の頭部基は、正電荷を有する。例示的なカチオン性脂質としては、1,2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP);N-[1-(2,3,-ジテトラデシルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE);N-[1-(2,3,-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE);N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);3β[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);およびジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)が挙げられる。
【0068】
小胞形成性脂質はまた、中性脂質、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、または両親媒性脂質、例えば、カチオン性脂質、例えば、ポリリジンまたは他のポリアミン脂質で誘導体化されたリン脂質であり得る。例えば、中性脂質(DOPE)は、カチオン性脂質を形成するために、ポリリジンで誘導体化され得る。
【0069】
現在好ましい合成および天然小胞形成性脂質、および脂質作用分子としては、以下のクラスが挙げられる(クラス間には、特にクラスIおよびクラスII小胞形成性脂質間には、かなりの重複があることが、注意されるべきである)。
クラスI:非膨潤性・非極性安定剤
非イオン化脂肪酸、例えば、オレイン酸およびオレイン酸メチルエステル;トリグリセリド、例えば、綿実油(トリオレイン);ならびにコレステロールエステル、例えば、パルミトイルコレステロールエステルなど。
クラスII:極性・不溶性・膨潤性両親媒性物質
両親媒性脂質、例えば、リン脂質、糖脂質、タンパク脂質など:両親媒性バイオロジック(例えば、膜結合タンパク質);および両親媒性ペプチド(例えば、ホスホペプチド、グリコペプチド、短い(例えば、C5-C10)炭化水素鎖リポペプチド);レシチン−ホスファチジルコリン、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルセリン;モノグリセリド;イオン化されたおよび/または部分的にイオン化された脂肪酸など。
クラスIII:可溶性両親媒性物質(リオトロピック中間相(liotropic mesomorphism))
短い炭化水素鎖(例えば、C5-C10)脂質、例えば、リン脂質、糖脂質、タンパク脂質など;両親媒性バイオロジック(例えば、膜結合タンパク質);および両親媒性ペプチド(例えば、ホスホペプチド、グリコペプチド、短い炭化水素鎖リポペプチド);両親媒性ポリマー(例えば、ポリオール、ポリエーテル、ポリグリコール、多糖類):例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレン)グリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトールなど;デンプンおよびキトサン系ポリマー、アルギネート、ペクチン、ヒアルロネート、およびヘパリン、全てが親水性であるが、ポリマー性両親媒性物質において使用され得る;ポリエーテル、例えば、PEG;およびリポソーム組成物の腸溶コーティングのためのポリマー(例えば、Sureteric(商標)、pHthalavin(商標)、Acryl-eze MP(商標)、Eurdragit L100(登録商標)、Opadry Enteric(商標)またはCellacefate(商標))。
クラスIV;リポソーム粒子安定剤としての可溶性両親媒性物質
コレステロール、およびコレステロール系化合物、例えば、胆汁酸塩、例えば、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムなど。
【0070】
封入された生物活性剤を含有する脂質小胞は、周知の方法、例えば、ダブルエマルジョンおよびエバポレーション、脂質膜の水和、逆相蒸発、ならびに溶媒注入を使用して作製され得る。送達される生物活性剤は、親油性生物活性剤の場合、脂質相に含まれ得、または、水溶性生物活性剤の場合、水和媒体に含まれ得る。リポソーム粒子を作製することについて以前記載された技術としては、以下が挙げられる:米国特許第4,522,803号--Lenk、第4,310,506号--Baldeschwieler、第4,235,871号--Papahadjopoulos、第4,224,179号--第4,078,052号--Papahadjopoulos、第4,394,372号--Taylor、第4,308,166号--Marchetti、第4,485,054号--Mezei、および第4,508,703号--Redziniak。種々のリポソーム作製方法の概説については、Szokaら(Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9:467-508, 1980)を参照のこと。
【0071】
しかし、本発明の方法によって作製されるリポソーム粒子は、真のリポソームではなく、何故ならば、該粒子の構造は、分離した脂質区画および水性区画の存在によってではなく、プロダクトリポソーム粒子にわたって浸透している親油性特性を有する安定性付与ポリマーによって組織化されるためである。実際に、本発明のポリマー安定化リポソーム粒子は、分離した脂質区画および水性区画を有していない(しかし、全体の水分子は、該粒子が凍結乾燥された場合であっても、好ましくは、該ポリマーへ水素結合されている)。従って、本発明の組成物は、粒子構造が喪失ことなく、かつ、隔離された生物活性剤(例えば、バイオロジック)のネイティブな活性が喪失することなく、凍結乾燥され得る。下記に詳細に記載されるように、生物活性剤は、疎水性または親水性にかかわらず、本発明の組成物中の脂質および安定性付与ポリマーによって協力して隔離されている。安定性付与ポリマーが遊離官能基を提供する本発明の態様において、粒子の形成のための成分を混合する前に、生物活性剤、例えば、高分子バイオロジックは、安定性付与ポリマーへ予め結合され得る。一般的に、安定性付与ポリマーは、粒子の構造をそれらの形成の間および後に安定化させるだけでなく、バイオロジックの折り畳み構造を安定化させ、本発明の組成物内においておよびそれからの放出についてこのような複合分子のネイティブな活性を保持する。
【0072】
例えば、ポリマー鎖の末端のアミド基、またはカルボキシル基保有ポリマー、例えば、構造式(IV、VIおよびVIII)のものは、生物活性剤(例えば、親和性部分、ペプチド抗原、インスリン分子、または他の高分子バイオロジック)を生分解性ポリマーへ共有結合するために使用され得る、多数の相補的な官能基と容易に反応し得る。別の例において、ペプチド中のアミノ部分は、これらのポリマー中のカルボキシル基と容易に反応し、得られるアミド基を介してペプチドをポリマーへ共有結合させ得る。構造式(I、V、およびVII)のホモポリマーは、ポリマー鎖の2末端にのみ遊離官能基を含み、一方、構造式(IV、VIおよびVIII)のコポリマーは、各アディレクションなアミノ酸ベースの部分において遊離のカルボキシル部分を有するので、コポリマーが、ホモポリマーよりもより大きなロードの生物活性剤を結合することについて適している。
【0073】
ポリマー−生物活性剤または高分子バイオロジック結合
従って、1態様において、本明細書に記載される本発明のポリマー安定化リポソーム組成物を作製するために使用されるポリマーは、ポリマーに直接連結された1または複数の高分子バイオロジックまたは生物活性剤を有する。ポリマーの残基は、1または複数のバイオロジックまたは生物活性剤の残基へ連結され得る。例えば、ポリマーの1残基は、高分子バイオロジックまたは生物活性剤の1残基へ直接連結され得る。ポリマーおよび高分子バイオロジックまたは生物活性剤は、各々、1つのオープンな価数(open valence)を有し得る。または、異なる治療または緩和活性を有する高分子バイオロジックおよび生物活性剤の1より多く、複数、または混合物が、ポリマーへ直接連結され得る。しかし、各々の高分子バイオロジックまたは生物活性剤の残基は、ポリマーの対応の残基へ連結され得るので、前記1または複数の高分子バイオロジックまたは生物活性剤の数は、ポリマーの残基におけるオープンな価数に対応し得る。
【0074】
本明細書において使用される場合、「ポリマーの残基」は、1つまたは複数のオープンな価数を有するポリマーの基を指す。本発明のポリマーの(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上の)任意の合成的に実行可能な原子、原子、または官能基は、オープンな価数を提供するために除去され得、但し、該基が生物活性剤の残基へ結合される場合、生物活性は実質的に保持される。さらに、任意の合成的に実行可能な官能基(例えば、カルボキシル)が、オープンな価数を提供するために、ポリマー上に(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上に)作製され得、但し、該基が生物活性剤の残基へ結合される場合、生物活性は実質的に保持される。望まれる連結に基づいて、当業者は、当該分野において公知である手順を使用して本発明のポリマーから誘導され得る適切に官能化された出発材料を選択し得る。
【0075】
本明細書において使用される場合、「構造式(*)の化合物の残基」は、1または複数のオープンな価数を有する本明細書に記載のポリマー式(I)および(IV〜VIII)の化合物の基を指す。化合物の(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上の)任意の合成的に実行可能な原子、原子、または官能基は、オープンな価数を提供するために除去され得、但し、該基が生物活性剤の残基へ結合される場合、生物活性は実質的に保持される。さらに、任意の合成的に実行可能な官能基(例えば、カルボキシル)が、オープンな価数を提供するために、式(I)および(IV〜VIII)の化合物上に(例えば、ポリマー骨格またはペンダント基上に)作製され得、但し、該基が生物活性剤の残基へ結合される場合、生物活性は実質的に保持される。望まれる連結に基づいて、当業者は、当該分野において公知である手順を使用して式(I)および(IV〜VIII)の化合物から誘導され得る適切に官能化された出発材料を選択し得る。
【0076】
例えば、生物活性剤の残基は、アミド(例えば、-N(R)C(=O)-または-C(=O)N(R)-)、エステル(例えば、-OC(=O)-または-C(=O)O-)、エーテル(例えば、-O-)、アミノ(例えば、-N(R)-)、ケトン(例えば、-C(=O)-)、チオエーテル(例えば、-S-)、スルフィニル(例えば、-S(O)-)、スルホニル(例えば、-S(O)2-)、ジスルフィド(例えば、-S-S-)、または直接(例えば、C-C結合)連結(ここで、各Rは、独立して、Hまたは(C1-C6)アルキルである)を介して、構造式(I)または(IV)の化合物の残基へ連結され得る。このような連結は、当該分野において公知である合成手順を使用して、本明細書に記載されるような、適切に官能化された安定性付与ポリマーと生物活性剤とから形成され得る。望まれる連結に基づいて、当業者は、当該分野において公知である手順を使用して、構造式(I)または(IV)の化合物の残基と生物活性剤の所定の残基とから誘導され得る、適切に官能性の出発材料を選択し得る。生物活性剤またはアジュバントの残基は、構造式(I)または(IV)の化合物の残基上の任意の合成的に実行可能な位置へ連結され得る。さらに、本発明はまた、構造式(I)または(IV)の化合物へ直接連結された生物活性剤の1より多くの残基を有する化合物を提供する。
【0077】
ポリマー分子へ連結され得る生物活性剤の分子の数は、典型的に、ポリマーの分子量および組み込まれる官能基の当量に依存し得る。例えば、nが約5〜約150、好ましくは約5〜約70である構造式(I)の化合物について、約150までの高分子バイオロジックまたは生物活性剤分子(即ち、それらの残基)が、該生物活性剤と該安定性付与ポリマーの遊離官能基とを反応させることによって、該ポリマー(即ち、それらの残基)へ直接連結され得る。不飽和ポリマーにおいて、生物活性剤はまた、ポリマー中の二重(または三重)結合と反応され得る。
【0078】
生物活性剤が安定性付与ポリマーへ結合されている本発明の態様において、このような結合は、リポソーム粒子中へ安定性付与ポリマーを組み込む前に、本明細書に記載されるように行われる。従って、リポソーム粒子の合成についての条件は、結合された生物活性剤、例えばバイオロジックが、リポソーム粒子の形成の間に変性されないように選択されることが重要である。
【0079】
生物活性剤が、その生物活性が特定の三次元構造の維持に依存する、バイオロジック(例えば、高分子バイオロジック)である1態様において、好ましい安定性付与ポリマーは、構造式(I)および(IV〜VIII)によって記載されるPEA、PEURまたはPEURである。これらのポリマーは、特に、この目的に適しており、何故ならば、一般的に、折り畳まれたバイオロジック(例えば、タンパク質)の表面がそうであるように、それらは、交互の親油性および極性セグメントを含むためである。さらに、全体のアミノ酸残基である、ポリマー極性セグメントは、バイオロジックおよびバイオロジック結合された水分子の両方へ水素結合し得、これは、バイオロジックの折り畳み構造の、従って活性の、保存に必須であることが当該分野において公知である因子である。
【0080】
プログラムされた生体内変化
特定の経路、例えば、胃腸管、または鼻腔を介してのインビボ投与に意図される組成物において、本発明の組成物中に含まれる脂質および脂質作用化合物は、両方とも、天然のものであり、かつ、ネイティブな分子の役割を模倣するように選択されることが好ましく、その機能は、(i)体内の特定の投与経路内においてネイティブな分子を全体的にまたは部分的に安定化することおよび/または(ii)体内におけるネイティブな分子の輸送を全体的にまたは部分的に媒介することである。
【0081】
例えば、バイオロジック、例えば、インスリンの経口送達について、脂肪酸、トリグリセリドおよび胆汁酸塩が、リポソーム粒子の安定性を増強するために選択され得る。これらのクラスの分子は、消化の間の脂肪性食物材料のエマルジョンの生成および安定化において身体によって使用される。
【0082】
従って、1態様において、本発明は、例えば経口的に、胃腸管へバイオロジックを送達することが意図されるポリマー安定化リポソーム組成物を提供する。この態様において、ポリマー安定化リポソーム組成物は、クラスI、II、IIIおよびIV化合物より選択される脂質または脂質作用化合物、好ましくは、クラスI、II、IIIおよびIVの各々由来の少なくとも1つのこのような化合物(少なくとも1つの胆汁酸塩、内因性浸透エンハンサーを含む)を含む。胆汁酸塩は実質的な脂質成分を含有するので、胆汁酸塩は、リポソーム粒子の脂質二重層中へ分配される。この態様において、本明細書に記載される、ポリマー安定化リポソーム組成物は、酵素分解(例えば、タンパク質分解)からそれを保護することによって、吸収のために、腸の微絨毛へ濃縮量で、生物活性剤を経口的に送達するために使用され得る。腸における通常の生理学的条件下で、円柱上皮によるタンパク質またはタンパク質フラグメントの吸収は、非常に低い。本発明のこの代替の態様において、バイオロジックを隔離するリポソーム粒子中に1または複数の胆汁酸塩を含めることは、恐らくはリポソーム粒子の表面でのステロール様分子の存在に起因して、腸壁を横切る浸透性を増強する。従って、本発明のリポソーム粒子組成物中の胆汁酸塩は、それが腸の管腔を通って移動する際、リポソーム粒子内のバイオロジックに対する安定性に寄与し、かつ、これを保護する。さらに、胆汁酸塩はまた、腸の刷子縁の生理学的条件へ供されると、リポソーム粒子からのバイオロジックの迅速な放出を増強する。
【0083】
実際に、放出されたバイオロジックが、バイオロジックの周りにミセルが自然に形成されることによって保護されること、および、バイオロジックの吸収が、絨毛の粘膜細胞を通ってのバイオロジックの送達について、カイロミクロン様粒子の形成によって増強されることが予想される。正確な機構が何であれ、バイオロジックの濃縮されたボーラスが、リポソーム粒子によって、単層円柱上皮を覆っている粘膜層およびグリコカリックス層中へ、迅速に放出され得る。そこから、胆汁酸塩でコーティングされたバイオロジックは、リポソーム粒子組成物が例えば経口的に胃腸管へ投与されると、カイロミクロン様粒子として、上皮細胞および粘膜固有層を通って効率的に拡散し、そして血流によって肝門脈を通って肝臓の肝細胞へ迅速に輸送される。
【0084】
1または複数の胆汁酸塩が、バイオロジックを隔離するリポソーム粒子の脂質中にある本発明の態様において、小腸および大腸から肝臓へのバイオロジックの取り込みについて、主要な循環経路である、腸肝循環経路が利用される。この経路は、腸を介して胆汁酸塩を再循環させ、食物の消化および吸収を助けることにおいて重要である。腸管腔から血液循環中へのインタクトな生物学的に活性な高分子の輸送は、食物消化吸収の通常のプロセスとは異なる特有の現象である。生物活性ペプチドおよび種々のタンパク質の腸吸収が、報告されている(Ziv, E., et al. Biochemical Pharmacology (1987) 36(7): 1035-1039)。タンパク質分解に対する保護が、「敵対する」腸管腔中においてポリペプチドおよびタンパク質をインタクトのまま維持することに関与する第1段階であることが示された(上記のZiv中の参考文献を参照のこと)。第2段階は、小分子の選択的吸収に関与する機構の変更を伴い、高分子量分子の吸収を可能にする。それらは内因性であるので、これらの天然の特殊な両親媒性浸透エンハンサーは、他のタイプの両親媒性分子よりも、個体において重篤な副作用を生じさせる可能性が低い。
【0085】
胆汁は、2つの主要な機能を有するようである肝臓分泌物である:第1に、腸からの脂質の消化吸収を促進すること、および、第2に、腎臓によって排出されない血液および肝臓からの多くの内因性および外因性物質の除去を増強すること(Strange, R.C., Hepatic bile flow, Physiological Reviews, (1984) 64(4): 1055-1102)。胆汁の主成分である、胆汁酸塩は、2〜45 mMの胆汁中の濃度を有し、酸性ステロールであり、これは、哺乳動物において、C24化合物、コール酸に基づく。本発明において有用な胆汁酸塩としては、コール酸に基づく普通に存在する胆汁酸塩:コール酸塩、ケノデオキシコール酸塩およびリトコール酸が挙げられ、これらは、コール酸環構造におけるヒドロキシル基の数が異なる。本発明のリポソーム粒子組成物中において任意で使用される天然の胆汁酸塩は、胆汁のそれ自体の産生のために肝臓によって再使用される。これらの塩の再吸収は、主に、十二指腸および回腸終端部において生じ、小腸壁の細胞を通過した後、胆汁酸塩は、門脈循環を介して肝臓へ戻る。ヒトにおいて、胆汁酸塩プールの99%が、腸肝循環内に維持され、各24時間の期間の間、約40 g(100 mmol)の胆汁酸塩が肝臓によって門脈血から取り出される。過剰の胆汁酸塩は、腸によって排除される(上記Strange)。
【0086】
胆汁酸塩は主に門脈を介して肝臓へ達するので、本発明のリポソーム粒子組成物へ少なくとも1つの胆汁酸塩を添加することは、そこに含まれるバイオロジックの肝細胞への送達に顕著に寄与し、これらは、1細胞厚のシート状に配置されており、かつ、輸入性および輸出性血液供給の間に位置する。組成物は、インスリン、グリコーゲンおよび胆汁酸塩を含む、いくつかのホルモンについての受容体系の部位である、肝細胞の洞様血管表面に先ず接触する。洞様血管表面上の微絨毛は、血液と肝細胞との間の分子の交換に利用可能な表面積をかなり増加させる。
【0087】
さらに、食事脂肪のマイクロエマルジョンは、小腸の内張りの微小陥入(micro-invagination)(絨毛)の間を通過し得、そして恐らくそれらの間に捕捉され得ることが公知である。しかし、腸壁中へ通過するためには、これらのマイクロエマルジョンは、絨毛の表面を覆う微絨毛間に捕捉され得るナノエマルジョンへさらに乳化されなければならない。ナノエマルジョンへのこのようなマイクロエマルジョンの変換は、通常の消化の間、体内の酵素によって媒介される。例えば、胃、膵臓および腸リパーゼは、マイクロ乳化された食事脂質を脂肪酸へ分解する。これらのデノボ脂肪酸の一部が、マイクロエマルジョン液滴から失われ、バルクを最終的にナノエマルジョンへ縮小する。デノボ脂肪酸分子の残りは、縮まる液滴中に留まりそしてそれに対する安定性に寄与し、何故ならば(i)胃酸中において、脂肪酸分子は、プロトン化によって中和され、従って、それらの水溶解度を低下し、(ii)脂肪酸分子は、消化酵素阻害剤として作用し、(iii)脂肪酸は、コレステロールへのエステル化によって、ナノエマルジョンへ結合されるようになるためである。
【0088】
従って、バイオロジックの経口送達のために、天然リン脂質のレシチン群(ホスファチジルコリン)(クラスII脂質および脂質作用分子)が、組成物の製作の間の乳化を促進するために、粒子結合界面活性剤として選択され得る。クラスIIリン脂質のこの特定のセットはまた、インビボで、膵臓および腸ホスホリパーゼについての天然基質として機能し、これは、リン脂質を切断し、デノボ脂肪酸を産生する。従って、このようなクラスII脂質および脂質作用分子を含む本発明のポリマー安定化リポソーム組成物は、マイクロ粒子から、微絨毛による捕捉に好適なナノ粒子へ哺乳動物の胃および次いで小腸内で自然に変換され、それによって、本発明の組成物中のポリマー結合バイオロジック(例えば、インスリン)を腸壁中へ送達すると考えられる。
【0089】
バイオロジックの経口送達のための本発明のリポソーム粒子の作製において使用される他の脂質および脂質作用分子、脂肪酸、トリグリセリド(クラスI)および胆汁酸塩(クラスIV)が選択され得、本明細書に記載される組成物の作製のための所望の特性に寄与するだけでなく、消化酵素、例えば、リパーゼおよび他の加水分解酵素の作用を妨害および/または阻害する。従って、これらのクラスIおよびクラスIV脂質および脂質作用分子は、消化の間、ポリマー安定化リポソームナノ製剤を保護する。さらに、これらの脂質および脂質作用分子は、門脈血系中への放出のための腸壁を通ってのバイオロジックの輸送を促進および/または媒介する。
【0090】
本明細書の実施例1のようにバイオロジックインスリンの経口送達のために配合しそして作製した本発明の組成物の生物学的変換の略図を、図4に図示する。
【0091】
バイオロジック、例えば、高分子バイオロジックの安定化のための本発明のポリマー安定化リポソーム組成物を作製するための好ましい方法
工程1--安定性付与ポリマーへ結合されたバイオロジックの濃縮および安定化:先ず、親油性ポリマーを使用し、上述のように、そこへ結合されたバイオロジックの単量体を安定化させる。この安定化は、ポリマーを可溶化するに十分に疎水性であり、しかし、その生物活性な折り畳み形態でバイオロジックを可溶化するに十分に極性である、溶媒、または混和性溶媒の混合液にバイオロジックおよびポリマーの両方を先ず可溶化することによって達成される。
【0092】
開示されるポリマーのいずれもがこの目的のために使用され得るが、リポソーム粒子中のバイオロジックの活性および脂質層の両方を安定化するために有用な好ましいポリマーは、R3の少なくともいくつかがHである構造式(I、VおよびVII)または構造式(IV、VIおよびVIII)によって記載されるものである。コポリマー中へ組み込まれたアディレクションなアミノ酸残基のカルボキシレートおよびR3のうちの1つまたは両方が、合成または天然バイオロジックの分子を結合するために有用である。例えば、バイオロジックの単量体は、このようなコポリマー中のアディレクションなリジンのカルボキシレートへ結合され得る。
【0093】
結合されたバイオロジックは、次いで、オリゴマー化および/または結晶化によるバイオロジックの自己安定化を促進する条件下で、ポリマーの存在下において、濃縮される。例えば、遊離インスリンは、インスリン六量体の形成およびインスリン六量体の結晶化の助けとなる条件下で、コ-PEAポリマー-インスリン単量体結合体の存在下において、溶液から濃縮され得る。バイオロジックの濃縮および安定化は、バイオロジックのオリゴマー化および/または結晶化を促進する第2液相での前記溶媒または混和性溶媒の混合液の制御された置換によって達成される。例えば、第1の溶媒または混和性溶媒の混合液は、有機相であり得、第2相は水性であり得る。この二相系は、一般的に、本発明のポリマー安定化リポソーム製剤によるバイオロジックのパッケージングおよび送達のために使用される。第2液相は、本明細書に記載されるバイオロジックのオリゴマー化および/または結晶化を保存するおよび/または促進することが公知であるかまたは実証される追加の分子、例えば、カルシウムまたは遷移金属の原子を任意で含有し得る。
【0094】
得られた濃縮物は、凍結乾燥され、この間に、最初の溶媒または混和性溶媒の混合液が蒸発され、図1に示される化学構造を有する水性の凍結乾燥された粉末が残り、ここで、ポリマーへ結合されたバイオロジックは、インスリン単量体である。プロダクト組成物中のバイオロジックの濃度は、約5重量%〜約60重量%の範囲内にある。
【0095】
工程2−乳化のための液体の調製:先ず、上記のように作製された凍結乾燥粉末の濃縮溶液ならびにリポソーム粒子の脂質相のための脂質および脂質作用化合物を、溶媒Aに溶解する。これらの脂質および脂質作用化合物は、少なくとも1つの以下の特性を有する:
1)クラスI 有機系安定剤(非膨潤性・非極性)は、ポリマー、またはポリマー−インスリン単量体結合体と協力して、溶媒A中のカーゴバイオロジック(cargo biologic)を安定化させる、
2)クラスII 有機系界面活性剤(膨潤性両親媒性物質)は、液体B中の溶媒Aのマイクロおよび/またはナノ乳化された液滴を安定化させ、従って、溶媒液滴Aと液体Bとの間の界面で界面活性剤として作用することによって、乳化を助ける。
【0096】
クラスIII(水性界面活性剤および/またはコーティング)由来の1または複数の化合物が、乳化の前に、液体Bへ添加され得る。これらの賦形剤は、液体B中の溶媒Aのマイクロおよび/またはナノ乳化された液滴を安定化させる能力を有することが必要とされ、液体Bと溶媒液滴Aとの間の界面で界面活性剤として作用することによって乳化を助けるだけでなく、工程3の間、残存する液体Bの存在下でリポソーム粒子を安定化させる。
【0097】
乳化のために、溶媒Aおよび液体Bは、非混和性である必要はない。例えば、溶媒Aは有機相であり得、溶媒Bは水性であり得る。しかし、工程2についての溶媒Aは、工程1における第1溶媒と同一の特性(例えば、脂質または水性)を有することが必要とされ、しかし、これら2つは同一である必要はない。従って、乳化における溶媒Aは、クラスIIIの水性界面活性剤および/またはコーティング以外の、リポソーム製剤の内容物の全てが顕著な溶解性を有する液体、例えば、HFIPおよび/またはDMSOなどの有機溶媒でなければならない。溶媒Bは、クラスIIIの水性界面活性剤および/またはコーティングが顕著な溶解性を有するが、製剤の他の内容物の全ては顕著な溶解性を有さない液体(例えば、水性)でなければならない。
【0098】
小さな、マイクロおよび/またはナノ粒子への乳化は、撹拌、超音波処理などによるアジテーションによって提供されるような、せん断力の形態のエネルギー入力によって達成される。安定性付与ポリマーの存在による、またはコ−ポリマー−バイオロジック単量体結合体による、溶媒Aのマイクロおよび/またはナノ液滴の安定化は、本発明のこの態様の重要な特徴である。乳化後、Aは、乳化された液滴からB中へ拡散し、何故ならば、ここではAおよびBは混和性であるためである。安定性付与ポリマーが存在しない場合、液滴A中のクラスI、IIおよびIV脂質および脂質作用分子は、AがB中に拡散する際に、準安定なミセルリポソーム粒子を形成するだろう。しかし、安定性付与ポリマーの存在下において、これらの脂質は、AがB中に拡散する際に、ポリマー安定化リポソーム粒子として一緒に結合されたままである。
【0099】
さらに、大抵の折り畳まれたバイオロジックは水溶性であるので、折り畳まれたバイオロジックは、AがB中に拡散する際に、乳化された液滴から失われることが予想され得る(何故ならば、ここではAおよびBは混和性であるため)。しかし、それらはポリマーによって一緒に全て安定化されているので、インスリン分子および脂質は一緒のままであることが、示された(本明細書の実施例1を参照のこと)。
【0100】
工程3−−蒸発および凍結乾燥−−マイクロおよび/またはナノ粒子のエマルジョンを、減圧下での蒸発によって濃縮し、その結果、溶媒Aが蒸発によって失われ、ポリマー安定化リポソーム粒子の水性凍結乾燥粉末が残る。
【0101】
本明細書に定義される、1または複数のクラスIV脂質または脂質作用分子が、乳化の前に溶媒Aへ添加され得、蒸発の間、残存する液体Bの存在下でバイオロジックを安定化させる。
【0102】
本明細書に定義される、1または複数のクラスIII脂質作用分子が、乳化の前に液体Bへ添加され得、液体Bと溶媒液滴Aとの間の界面で界面活性剤として作用することによって乳化を助けるだけでなく、蒸発および凍結乾燥の間、残存する液体Bの存在下でリポソーム粒子を安定化させる。
【0103】
工程4−凍結乾燥粉末の再構築−使用のために、工程3由来の凍結乾燥粉末は、タイプB液体へ溶解することによって再構築される。再構築の間、製剤中におけるクラスIII分子の存在は、ポリマー安定化リポソーム粒子の水分散を促進する。インビボで、このようなタイプB液体は、生物学的環境と適合性であり、また、生物学的環境によって提供される。
【0104】
生物活性剤
本発明のポリマー安定化リポソーム組成物は、被験体へ生物活性剤を送達することにおいて使用され、少なくとも1つの生物活性剤を含む。生物活性剤は、リポソーム粒子中に封入され得る任意の多数の治療または緩和薬剤であり得、これとしては、下記に遥かにより詳細に説明されるように、粒子中の安定性付与ポリマーの極性セグメントによって安定的に封入され得る水溶性薬剤、脂質相中へ安定的に分配し得る親油性薬剤、ならびに、例えば、安定性付与ポリマー分子上の官能基への静電気または共有結合によって、安定的に結合され得る薬剤(例えば、ターゲッティングバイオロジック)が挙げられる。この場合、生物活性剤、典型的にバイオロジック(例えば、ターゲッティング分子)は、リポソーム粒子の外表面に提示され、安定性付与ポリマーは、リポソーム粒子を安定化するだけでなく、生物活性剤も安定化する。
【0105】
本明細書において使用される場合、用語「生物学的薬剤(biologic agent)」は、生物学的プロセスに影響を与える種々の分子を含む。隔離された生物活性剤はまた、診断アッセイにおける使用のための、レポーター分子または診断分子、例えば、酵素またはフルオロフォアであり得る。水溶性生物活性剤の例としては、小さな水溶性有機化合物、例えば、薬物、アジュバント、および当該分野において公知の種々の賦形剤が挙げられる。用語「バイオロジック」は、本明細書において使用される場合、「生物学的薬剤」のサブセットであり、天然に産生されるかまたは合成的であって、生物学的プロセスに関与する分子、例えば、ペプチド抗原、ペプチド、タンパク質、タンパク質フラグメント、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド、および遺伝子フラグメントを指す。用語「ペプチド」または「ペプチド抗原」は、本明細書において使用される場合、10,000ダルトン未満の分子量を有するペプチド配列およびその誘導体を、1または複数のペプチド鎖から構成され得、かつ、「タンパク質」と呼ばれる、より長いアミノ酸含有分子と区別する。
【0106】
「高分子バイオロジック」は、該用語が本明細書において使用される場合、「バイオロジック」のサブセットを指し、ここで、該高分子は、1または複数のポリマー鎖から構成され、ネイティブなまたは合成によって作製されるタンパク質およびポリ核酸において見られるような、非共有結合力、疎水性およびイオン性の両方によって、一緒に保持された三次元構造を形成する。高分子バイオロジックの例としては、オリゴマー、例えば、タンパク質またはポリ核酸の二量体およびセクステット、ならびにそれらの結晶が挙げられる。このような高分子立体配置において、生体分子は、生物学的活性に必要な三次元構造、または本発明のリポソーム粒子組成物の溶解時にこのような三次元構造を取り戻す能力を保存する。
【0107】
封入された生物学的薬剤を有するリポソーム粒子は、例えば、血流中におけるリポソーム粒子の分解によって、標的細胞への融合によって、または標的細胞の受容体へのリポソーム粒子中に含まれる標的指向性親和性リガンドの結合によって、封入された生物学的薬剤を全身的に送達し得る。
【0108】
リポソーム粒子
本発明の1態様において、リポソーム粒子は、制御速度で被験体へインビボで生物活性剤を投与することにおいて使用され、リポソーム粒子によって封入された生物活性剤を含む。隔離された生物活性剤は、脂質小胞中に封入され得る、本明細書に記載されるおよび当該分野において公知の任意の多数の生物活性剤であり得、これらとしては、水溶性生物活性剤、親油性生物活性剤、および、例えば、脂質二重層中に含まれる安定性付与ポリマー中の官能基への共有結合によって、安定的に結合され得、従ってリポソーム粒子の外表面上に存在する薬剤が挙げられる。例示的な水溶性化合物としては、小さな、有機化合物、ペプチド、タンパク質、DNAプラスミド、オリゴヌクレオチド、および遺伝子フラグメントが挙げられる。PEA、PEURまたはPEUポリマーの構築ブロックの賢明な選択によって、安定性付与ポリマーの電気的特性は、特定の生物活性剤の封入の助けとなるように調整され得る。例えば、DNAは、負に帯電しており、カチオン性成分を提供する脂質二重層中に容易に封入される。
【0109】
生物活性剤は、安定性付与ポリマーへの化学的連結なしにリポソーム粒子内に封入され得る一方、ある態様において、生物活性剤は、多種多様の適切な官能基によって生分解性安定性付与ポリマーへ共有結合され得ることも考えられる。例えば、生分解性ポリマーがポリエステルである場合、カルボキシル基鎖末端が、生物活性剤の相補的な(complimentary)部分、例えば、ヒドロキシ、アミノ、チオなどと反応させるために使用され得る。多種態様の好適な試薬および反応条件は、例えば、March 's Advanced Organic Chemistry, Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, (2001);およびComprehensive Organic Transformations, Second Edition, Larock (1999)に開示されている。
【0110】
他の態様において、生物活性剤は、アミド、エステル、エーテル、アミノ、ケトン、チオエーテル、スルフィニル、スルホニル、ジスルフィド結合を介して、PEA、PEURまたはPEUポリマーへ結合され得る。このような結合は、当該分野において公知である合成手順を使用して、適切に官能化された出発材料から形成され得る。
【0111】
例えば、1態様において、生物活性剤は、ポリマーの末端アミドまたはペンダントカルボキシル基(例えば、COOH)を介して安定性付与ポリマーへ連結され得る。構造IV、VI、およびVIIIの化合物は、生物活性剤のアミノ官能基またはヒドロキシル官能基と反応され得、それぞれ、アミド結合またはカルボン酸エステル結合を介して結合された生物活性剤を有する生分解性安定性付与ポリマーが得られる。別の態様において、ポリマーのカルボキシル基は、ベンジル化されるか、またはハロゲン化アシル、アシル無水物/「混合」無水物、もしくは活性エステルへ変換され得る。他の態様において、ポリマー分子の遊離-NH2末端は、生物活性剤がポリマーの該遊離末端へではなくポリマーのカルボキシル基を介してのみ結合することを確実にするために、アシル化され得る。
【0112】
親和性部分、例えば、抗体、抗原およびリガンドもまた、ポリマー分子へ結合され得、従って、当該分野において公知でありかつ下記においてより完全に記載される特定の身体部位へのリポソーム粒子の標的送達のために、リポソーム粒子の表面脂質二重層上に曝露される。
【0113】
線形ポリマー−ポリペプチド結合体は、ポリペプチド骨格上の可能性のある求核基を保護し、そしてポリマーまたはポリマーリンカー構築物へ結合されるたった1つの反応基を残すことによって作製される。脱保護は、ペプチドの脱保護について当該分野において周知の方法に従って行われる(例えば、BocおよびFmoc化学)。
【0114】
本発明の1態様において、ポリペプチド生物活性剤は、逆反転(retro-inverso)または部分的逆反転ペプチドとして提示される。
【0115】
ポリマー分子へ連結され得る生物活性剤の数は、典型的に、ポリマーの分子量に依存し得る。例えば、nが約5〜約150、好ましくは約5〜約70である構造式(I)の化合物について、約150までの生物活性剤分子(即ち、その残基)が、該生物活性剤と該ポリマーの側鎖基とを反応させることによって、該ポリマー(即ち、その残基)へ直接連結され得る。不飽和ポリマーにおいて、生物活性剤はまた、ポリマー中の二重(または三重)結合と反応し得る。
【0116】
本発明のリポソーム粒子組成物における使用について好適な生物活性剤としては、抗増殖剤(anti-proliferant)、ラパマイシンおよび任意のそのアナログまたは誘導体、パクリタキセルまたは任意のそのタキセン(taxene)アナログもしくは誘導体、エベロリムス、シロリムス、タクロリムス、またはその-リムスと命名されたファミリーの薬物、およびスタチン、例えば、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ゲルダナマイシン、例えば、17AAG(17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン);エポチロン(Epothilone)Dおよび他のエポチロン、17-ジメチルアミノエチルアミノ-17-デメトキシ-ゲルダナマイシンおよび他の熱ショックタンパク質90(Hsp90)のポリケチド阻害剤、シロスタゾール(Cilostazol)などが挙げられる。
【0117】
本発明のリポソーム粒子組成物における使用について好適なさらなる生物活性剤(例えば、小分子薬物)としては、抗菌剤および抗炎症剤ならびに特定の治癒促進剤、例えば、ビタミンAおよび脂質過酸化の合成阻害剤が挙げられる。
【0118】
種々の抗生物質が、本発明のリポソーム粒子組成物中において使用され得、感染を予防するかまたは制御することによって、自然治癒プロセスを間接的に促進する。好適な抗生物質としては、多くのクラス、例えば、アミノグリコシド抗生物質またはキノロンまたはβラクタム、例えば、セファロスポリン、例えば、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、エリスロマイシン、バンコマイシン、オキサシリン、クロキサシリン、メチシリン、リンコマイシン、アンピシリン、およびコリスチンが挙げられる。好適な抗生物質は、文献に記載されている。
【0119】
好適な抗菌剤としては、例えば、Adriamycin PFS/RDF(登録商標)(Pharmacia and Upjohn)、Blenoxane(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、Cerubidine(登録商標)(Bedford 、Cosmegen(登録商標)(Merck)、DaunoXome(登録商標)(NeXstar)、Doxil(登録商標)(Sequus)、Doxorubicin Hydrochloride(登録商標)(Astra)、Idamycin(登録商標)PFS(Pharmacia and Upjohn)、Mithracin(登録商標)(Bayer)、Mitamycin(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)、Nipen(登録商標)(SuperGen)、Novantrone(登録商標)(Immunex)およびRubex(登録商標)(Bristol-Myers Squibb Oncology/Immunology)が挙げられる。1態様において、ペプチドは、グリコペプチドであり得る。「グリコペプチド」は、サッカリド基で任意で置換された複数環ペプチドコアを特徴とする、オリゴペプチド(例えば、ヘプタペプチド)抗生物質、例えば、バンコマイシンを指す。
【0120】
このカテゴリーの抗菌剤に含まれるグリコペプチドの例は、Raymond C. RaoおよびLouise W. Crandallによる"Glycopeptides Classification, Occurrence, and Discovery" ("Bioactive agents and the Pharmaceutical Sciences" Volume 63、Ramakrishnan Nagarajanによって編集、Marcal Dekker, Inc.によって出版)において見られ得る。グリコペプチドのさらなる例は、米国特許第4,639,433号;第4,643,987号;第4,497,802号;第4,698,327号;第5,591,714号;第5,840,684号;および第5,843,889号;EP 0 802 199;EP 0 801 075;EP 0 667 353;WO 97/28812;WO 97/38702;WO 98/52589;WO 98/52592;ならびにJ. Amer. Chem. Soc. (1996) 118: 13107-13108;J. Amer. Chem. Soc. (1997) 119: 12041-12047;およびJ. Amer. Chem. Soc. (1994) 116:4573-4590に開示されている。代表的なグリコペプチドとしては、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB-65、Actaplanin、Actinoidin、Ardacin、Avoparcin、Azureomycin、Balhimyein、Chloroorientiein、Chloropolysporin、Decaplanin、-デメチルバンコマイシン、Eremomycin、Galacardin、Helvecardin、Izupeptin、Kibdelin、LL-AM374、Mannopeptin、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA-7653、Orenticin、Parvodicin、Ristocetin、Ristomycin、Synmonicin、Teicoplanin、UK-68597、UD-69542、UK-72051、Vancomycinなどとして同定されるものが挙げられる。用語「グリコペプチド」または「グリコペプチド抗生物質」は、本明細書において使用される場合、糖部分が存在しない上記に開示されるグリコペプチドの一般的なクラス、即ち、グリコペプチドのアグリコンシリーズを含むようにも意図される。例えば、穏やかな加水分解による、バンコマイシン上のフェノールへ付加されたジサッカリド部分の除去によって、バンコマイシンアグリコンが得られる。アルキル化およびアシル化された誘導体を含む、上記に開示されるグリコペプチドの一般的なクラスの合成誘導体もまた、用語「グリコペプチド抗生物質」の範囲内に含まれる。さらに、この用語の範囲内にあるのは、バンコサミンと同様の様式で、さらなるサッカリド残基がさらに付加されているグリコペプチド、特に、アミノグリコシドである。
【0121】
用語「脂質化グリコペプチド」は、脂質置換基を含むように合成的に修飾されているグリコペプチド抗生物質を具体的に指す。本明細書において使用される場合、用語「脂質置換基」は、5個またはそれ以上の炭素原子、好ましくは10〜40個の炭素原子を含む任意の置換基を指す。脂質置換基は、任意で、ハロ、酸素、窒素、硫黄、およびリンより選択される1〜6個のヘテロ原子を含有し得る。脂質化グリコペプチド抗生物質は、当該分野において周知である。例えば、米国特許第5,840,684号、第5,843,889号、第5,916,873号、第5,919,756号、第5,952,310号、第5,977,062号、第5,977,063号、EP 667,353、WO 98/52589、WO 99/56760、WO 00/04044、WO 00/39156を参照のこと;これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0122】
抗炎症性生物活性剤もまた、本発明の組成物および方法に含めることについて有用である。標的送達部位および治療される疾患に依存して、このような抗炎症性生物活性剤は、例えば、鎮痛剤(例えば、NSAIDSおよびサリシレート(salicyclate))、ステロイド、抗リウマチ薬、胃腸薬、痛風用調製物、ホルモン(糖質コルチコイド)、鼻用調製物、眼用調製物、耳用調製物(例えば、抗生物質およびステロイド組み合わせ)、呼吸器用薬剤、ならびに皮膚および粘膜薬剤を含む。Physician's Desk Reference, 2006版を参照のこと。具体的には、抗炎症性薬剤は、

9-フルオロ-11,17,21-トリヒドロキシ-16-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンと化学的に呼ばれる、デキサメタゾンを含み得る。または、抗炎症性生物活性剤は、ストレプトマイセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)より単離されるトリエンマクロライド抗生物質である、シロリムス(ラパマイシン)であり得るかまたはこれを含み得る。
【0123】
本発明のポリマー安定化リポソーム組成物中の安定性付与ポリマーへ結合された、生物活性剤、または高分子バイオロジックはまた、粘膜伝染される病原体を含む、多種多様の病原体に対して免疫応答を惹起する、抗原性セグメントを含有するタンパク質またはペプチド抗原であり得る。抗原が、それ自体、弱い免疫原性である場合であっても、組成物は、激しい免疫応答を提供する。本発明の方法によって作製されたワクチン組成物は、本明細書に記載される任意の病原体に対して免疫応答を提供することについて広く適用可能であるが、インフルエンザウイルスおよびHIVを参照することによって、本明細書において本発明を例示する。
【0124】
細胞性免疫、および/または液性抗体応答を生じさせるペプチド抗原は、本発明のリポソーム粒子組成物中におけるカプセル化について好適な生物活性剤のカテゴリーである。従って、本発明の方法は、抗体、ヘルパーT細胞活性およびT細胞細胞傷害性活性を誘導し得る、ウイルス、細菌、真菌および寄生性病原体由来の抗原を含む、細胞性および/または液性免疫応答が望まれる任意の抗原で使用できる。従って、「免疫応答」は、本明細書において使用される場合、使用されるペプチド抗原に対して特異的な、抗体、ヘルパーT細胞活性またはT細胞細胞傷害性活性を生じさせることを意味する。このような抗原としては、ヒトまたは動物病原体によってコードされるものが挙げられるが、これらに限定されず、構造または非構造タンパク質、ポリサッカリド−ペプチド結合体、またはDNAに対応し得る。
【0125】
例えば、本発明は、単純疱疹ウイルス(HSV)1型および2型由来のタンパク質、例えば、HSV-1およびHSV-2糖タンパク質gB、gDおよびgH;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)由来の抗原、例えば、CMV gBおよびgH;ならびに他のヒトヘルペスウイルス由来の抗原、例えば、HHV6およびHHV7を含む、ヘルペスウイルスファミリー由来の多種多様なタンパク質に対する免疫応答を刺激することについて使用できる(例えば、サイトメガロウイルスのタンパク質コードコンテントの概説については、Chee et al., Cytomegaloviruses (J. K. McDougall, ed., Springer-Verlag 1990) pp. 125-169;種々のHSV-1コードされるタンパク質の議論については、McGeoch et al., J. Gen. Virol. (1988) 69: 1531-1574;HSV-1およびHSV-2 gBおよびgDタンパク質ならびにそれらをコードする遺伝子の議論については、米国特許第5,171,568号;EBVゲノムにおけるタンパク質コード配列の同定については、Baer et al., Nature (1984) 310:207-211;ならびにVZVの概説については、Davison and Scott, J. Gen. Virol. (1986) 67: 1759-1816を参照のこと)。
【0126】
A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)を含む、肝炎ファミリーのウイルス由来の抗原もまた、本明細書に記載される技術において、好都合なことに、使用され得る。例えば、HCVのウイルスゲノム配列が、該配列を得るための方法がそうであるように、公知である。例えば、国際公開公報WO 89/04669;WO 90/11089;およびWO 90/14436を参照のこと。HCVゲノムは、E1(Eとしても公知)およびE2(E2/NSIとしても公知)ならびにN末端ヌクレオカプシドタンパク質(「コア」と呼ばれる)を含む、いくつかのウイルスタンパク質をコードする(E1およびE2を含む、HCVタンパク質の議論については、Houghton et al., Hepatology (1991) 14:381-388を参照のこと)。これらのタンパク質の各々、ならびにそれらの抗原性フラグメントは、本発明の方法において使用できる。同様に、HDV由来のδ抗原についての配列が公知であり(例えば、米国特許第5,378,814号を参照のこと)、この抗原もまた、本発明の方法において好都合なことに使用され得る。さらに、HBV由来の抗原、例えば、コア抗原、表面抗原、sAg、ならびにプレ表面(presurface)配列、pre-S1およびpre-S2(以前はpre-Sと呼ばれた)、ならびに上記の組み合わせ、例えば、sAg/pre-S1、sAg/pre-S2、sAg/pre-S1/pre-S2、およびpre-S1/pre-S2が、本明細書において使用できる。例えば、HBV構造の議論については、Mackett, M. and Williamson, J.D., Human Vaccines and Vaccination, pp. 159-176中の"HBV Vaccines--from the laboratory to license: a case study";ならびに米国特許第4,722,840号、第5,098,704号、第5,324,513号(参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる);Beames et al., J. Virol. (1995) 69:6833-6838, Birnbaum et al., J. Virol. (1990) 64:3319-3330;およびZhou et al., J. Virol. (1991) 65:5457-5464を参照のこと。
【0127】
他のウイルス由来の抗原、例えば、非限定的に、特に、以下の科のメンバー由来のタンパク質もまた、特許請求される組成物および方法において使用できる:ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど);オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスA型、B型およびC型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例えば、HTLV-I;HTLV-II;HIV-1(HTLV-III LAV、ARV、hTLRなどとしても公知))、単離株HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN由来の抗原が挙げられるがこれらに限定されない);HIV-1CM235、HIV-1US4;HIV-2;サル免疫不全ウイルス(SIV)。さらに、抗原は、ヒトパピローマウイルス(HPV)およびダニ媒介脳炎ウイルス由来であり得る。これらおよび他のウイルスの説明については、例えば、Virology、第3版(W. K. Joklik編、1988);Fundamental Virology、第2版(B. N. FieldsおよびD. M. Knipe編、1991)を参照のこと。
【0128】
より特には、HIVの種々の遺伝的サブタイプのメンバーを含む、任意の上記HIV単離株由来のエンベロープタンパク質が、公知であり、かつ、報告されており(種々のHIV単離株のエンベロープ配列の比較については、例えば、Myers et al., Los Alamos Database, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, N.Mex. (1992);Myers et al., Human Retroviruses and Aids, 1990, Los Alamos, N.Mex.: Los Alamos National Laboratory;およびModrow et al., J. Virol. (1987) 61:570-578を参照のこと)、任意のこれらの単離株由来の抗原が、本発明の方法において使用できる。具体的には、gp120のV3ループ由来であり、かつ、配列RIQRGPGRAFVTIGK(SEQ ID NO: 1)を有する、合成ペプチド、R15K(Nehete et al. Antiviral Res. (2002) 56:233-251)が、本発明の組成物および方法において使用できる。さらに、本発明は、任意の種々のエンベロープタンパク質、例えば、gp160およびgp41、gag抗原、例えば、p24gagおよびp55gag、ならびにpol領域由来のタンパク質を含む、任意の種々のHIV単離株由来の他の免疫原性タンパク質に等しく適用可能である。さらに、HIVタンパク質由来の種々のエピトープを有する本発明の組成物のマルチエピトープカクテルが考えられる。例えば、gp120およびgp41由来の6つの保存ペプチドが、rhesus/SHIVモデルにおいてウイルス量を減らし感染を予防することが示された:


本発明の組成物および方法において試験した抗原のアミノ酸配列はIFPGKRTIVAGQRGR(SEQ ID NO: 8)であり、ここで、全てのアミノ酸が天然のL-アミノ酸である。
【0129】
上記で説明したように、インフルエンザウイルスは、本発明が特に有用であるウイルスの別の例である。具体的には、インフルエンザAのエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAは、核タンパク質がそうであるように、免疫応答を生じさせることについて特に興味深い。インフルエンザAの多数のHAサブタイプが同定されている(Kawaoka et al., Virology (1990) 12:759-767;Webster et al., "Antigenic variation among type A influenza viruses," p. 127-168. In: P. Palese and D. W. Kingsbury (ed.), Genetics of influenza viruses. Springer-Verlag, New York)。従って、任意のこれらの単離株由来のタンパク質もまた、本明細書に記載される免疫化技術において使用され得る。特に、HAの保存13アミノ酸配列が、本発明のワクチン組成物および方法において使用され得る。現在のワクチン製剤において使用されるH3株において、このアミノ酸配列は、PRYVKQNTLKLAT(SEQ ID NO: 9)であり、H5株において、それは、主に、PKYVKSNRLVLAT(SEQ ID NO: 10)である。
【0130】
本明細書に記載される組成物および方法はまた、多数の細菌抗原、例えば、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百日咳、髄膜炎を引き起こす生物、および他の病原性生物(髄膜炎菌A、BおよびC、B型インフルエンザ(HIB)、およびヘリコバクターピロリを含むが、これらに限定されない)由来のもで使用できる。寄生性抗原の例としては、マラリアおよびライム病を引き起こす生物由来のものが挙げられる。
【0131】
さらに、本明細書に記載される方法は、種々の悪性癌を治療する手段を提供する。例えば、本発明の組成物は、問題の癌に特異的な特定のタンパク質、例えば、活性化癌遺伝子、胎児性抗原、または活性化マーカーに対して液性免疫応答および細胞性免疫応答の両方を惹起するために使用され得る。このような腫瘍抗原としては、特に、任意の種々のMAGE(メラノーマ関連抗原E)、例えば、MAGE 1、2、3、4など(Boon, T. Scientific American (March 1993):82-89);任意の種々のチロシナーゼ;MART 1(T細胞によって認識されるメラノーマ抗原)、突然変異体ras;突然変異体p53;p97メラノーマ抗原;CEA(癌胎児性抗原)が挙げられる。本発明の組成物および組成物において有用なさらなるメラノーマペプチド抗原としては、以下が挙げられる。

GP100は、メラノーマ関連ME20抗原とも呼ばれる。
【0132】
免疫応答を刺激することを助けるために、抗原の送達を増加させること、サイトカイン産生を刺激すること、および/または抗原提示細胞を刺激することによって、ペプチド抗原に対する、免疫応答、特に細胞性免疫応答を増大し得る、当該分野において公知の任意のタイプのアジュバントもまた、本発明のリポソーム粒子組成物中に組み込まれ得る。アジュバントは、本明細書に記載されるように、リポソーム粒子の水相または脂質相に封入され得るか(アジュバントの電気的特性に依存する)、または安定性付与ポリマーへ結合され得る。このようなアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)アルミニウム塩(ミョウバン)、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなど;(2)水中油型乳剤(他の特定の免疫刺激剤、例えば、ムラミルペプチドまたは細菌細胞壁成分有りまたは無し)、例えば、(a)MF59(国際公開公報WO 90/14837)、5%スクアレン、0.5%Tween 80(商標)、および0.5%Span 85を含有、任意で種々の量のMTP-PBを含有、Model 110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics, Newton, Mass.)などのマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子へ製剤化、(b)SAF、10%スクアラン、0.4%Tween 80(商標)、5%プルロニックブロック化(pluronic-blocked)ポリマーL121、およびthr-MDPを含有、サブミクロンエマルジョンへマイクロ流動化またはより大きな粒子サイズのエマルジョンを作製するためにボルテックス、および(c)Ribi(商標)アジュバント組成物(RAS)、(Ribi Immunochem, Hamilton, Mont.)、2%スクアレン、0.2%Tween 80(商標)、ならびに、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)からなる群からの1または複数の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含有;(3)サポニンアジュバント、例えば、Stimulon(商標)(Cambridge Bioscience, Worcester, Mass.)が使用され得る、または、そこから作製される粒子、例えば、ISCOM(免疫刺激複合体);(4)完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA);(5)サイトカイン、例えば、インターロイキン(IL-1、IL-2など)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)など;(6)細菌ADPリボシル化毒素の解毒された突然変異体、例えば、コレラ毒素(CT)、百日咳毒素(PT)、大腸菌易熱性毒素(LT)、特に、LT-K63(ここで、リジンが、63位の野生型アミノ酸の代わりに使用されている)、LT-R72(ここで、アルギニンが、72位の野生型アミノ酸の代わりに使用されている)、CT-S109(ここで、セリンが、109位の野生型アミノ酸の代わりに使用されている)、およびPT-K9/G129(ここで、リジンが、9位の野生型アミノ酸の代わりに使用され、グリシンが129位で使用されている)(例えば、国際公開公報W093/13202およびW092/19265を参照のこと);ならびに(7)QS21、サポニンおよび3D-モノホスホリルリピドA(MPL)の精製形態、リポ多糖類(LPS)の非毒性誘導体、細胞性および液性免疫応答を増強するため(Moore, et al., Vaccine. 1999 Jun 4;17(20-21):2517-27)。
【0133】
特に望ましい免疫刺激アジュバントは、免疫刺激性薬物(即ち、小分子)、ポリマー、脂質、脂質/糖類、脂質/塩、糖類、塩およびバイオロジックであり、これらの例を下記表1にタイプによってまとめる。これらの中でも特に、Toll様受容体(TLR)アゴニストが挙げられる。
【0134】
TLRアゴニストは、TLRファミリーの特定のメンバーによって認識され、TLRに特定の所定の分子機構によって免疫応答を活性化させる、あるリガンド(多くは合成)である。例えば、TLR-3は、合成薬物または小分子ポリI:Cを認識し;TLR-4は、LPSおよびその特定の変異体を認識し;TLR-7および8は、特定の薬物または小分子リガンド、例えば、イミキモドおよびレジキモド(resiquimod)を認識する。このレベルで免疫応答を活性化することは、実験的に誘導されたアジュバントを使用することと類似しているが、分子機構はより十分に規定されている。
【0135】
【表1】


【0136】
本発明の組成物および方法において使用されるペプチド、タンパク質および他のアミノ酸含有生物活性剤はまた、「ペプチド模倣物」を含み得る。本明細書において「ペプチド模倣物」または「ペプチドミメティック」と呼ばれる、このようなペプチドアナログは、製薬産業において一般的に使用され、テンプレートペプチドのそれと類似の特性を有し(Fauchere, J. (1986) Adv. Bioactive agent Res., 15:29;Veber and Freidinger (1985) TINS p.392;およびEvans et al. (1987) J. Med. Chem., 30: 1229)、通常、コンピュータ化分子モデリングの助けを借りて開発される。一般的に、ペプチドミメティックは、パラダイムポリペプチド(即ち、生化学特性または薬理学的活性を有するポリペプチド)と構造的に類似しており、しかし、当該分野において公知でありかつ下記の参考文献にさらに記載されている方法によって、--CH2NH--、--CH2S--、CH2-CH2--、--CH=CH--(シスおよびトランス)、--COCH2--、--CH(OH)CH2--、および--CH2SO--よりなる群より選択される結合によって任意で置換された1または複数のペプチド結合を有している。

このようなペプチド模倣物は、天然のポリペプチド態様に比べて顕著な利点を有し得る:例えば、より経済的な作製、より大きな化学的安定性、より増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、効能など)、変化された特異性(例えば、広域の生物活性)、低下された抗原性など。
【0137】
さらに、ペプチド内の1または複数のアミノ酸の置換(例えば、L-リジンの代わりにD-リジン)が、より安定なペプチドおよび内因性ペプチダーゼに耐性のペプチドを作製するために使用され得る。または、生分解性ポリマーへ共有結合された合成ポリペプチドもまた、反転(inverso)ペプチドと呼ばれる、D-アミノ酸から作製され得る。ペプチドがネイティブなペプチド配列と反対方向に組み立てられる場合、それは逆(retro)ペプチドと呼ばれる。一般的に、D-アミノ酸から作製されたポリペプチドは、酵素加水分解に対して非常に安定である。多くのケースが、逆反転または部分的逆反転ポリペプチドについて保存された生物活性を報告した(米国特許第6,261,569 B1号およびその中の参考文献;B. Fromme et al. Endocrinology (2003)144:3262-3269)。
【0138】
親和性部分
親和性部分は、下記に説明するように、リポソーム粒子による送達が目的とする標的上に保有されるリガンド結合性分子、例えば、細胞膜、細胞基質、組織、または標的表面もしくは領域へ特異的にかつ高親和性で結合するに有効なペプチドまたはポリマーリガンドである。親和性部分は、本明細書に記載されるように、安定性付与ポリマー分子へのまたは安定性付与ポリマー分子へ結合されたリガンドへの共有結合によって、リポソーム粒子外表面へ結合される。例えば、親和性部分は、PEA、PEURまたはPEUR親油性特性ポリマー鎖の遠位末端へ、またはポリマー分子の遊離官能基へ、結合され得る。
【0139】
1態様において、親和性部分は、固形腫瘍中の腫瘍特異的抗原へ結合するに有効であり、別の態様において、親和性部分は、炎症部位の細胞へ結合するに有効である。別の態様において、親和性部分は、細胞結合事象を阻害する、即ち、第1結合メンバーと第2結合メンバーとの間の結合を妨げるに有効な、ポリペプチドまたはポリサッカリドエフェクター分子である。例えば、第1結合メンバーは、血流中の病原体または細胞であり得、第2結合メンバーは、標的細胞または細胞基質であり得る。
【0140】
【表2】

【0141】
表2中のリガンドは、特定の標的細胞タイプへリポソーム粒子を標的化するためにリポソーム粒子中の安定性付与ポリマー分子へ結合され得、ここで、リポソーム粒子中に封入された生物活性剤は、標的細胞へ送達される。例えば、リポソーム粒子中のPEA安定性付与ポリマー分子へ結合された表面結合化葉酸リガンドは、上皮細胞上の葉酸受容体へ結合し、上皮癌の治療用の封入された新生物剤を送達する。
【0142】
本発明の組成物および方法において有用な表面結合された親和性部分のさらなるカテゴリーは、自然免疫のメディエーターとして有効である、種々の周知のポリペプチドサイトカイン、例えば、IFN-αまたはβである。
【0143】
高分子バイオロジックのインビボ投与用の本発明の組成物の作製における使用について好ましいポリマーは、式(IおよびIV〜VIII)によって記載される化学構造を有するPEA、PEURおよびPEUポリマーである。このようなポリマーは、ネイティブな高分子バイオロジック、およびそれらの集合体内に見られるのと同一の非共有結合力を介して、カーゴ生体高分子の三次元構造を安定化させるに十分な親油性特性を有する。これらの安定化させる力は、ポリマー鎖に沿った個々の疎水性セグメント(これは、短距離分散力を生じさせる)、およびポリマーの帯電したまたは部分的に帯電した領域(これは、水素結合を含む局在化イオン相互作用を生じさせる)から生じる。特に、高分子バイオロジック用の本発明のポリマー組成物中において、水素結合は、ポリマーと高分子バイオロジックとの間に直接生じ得るか、または、ネイティブな生体高分子の表面で見られ、かつ、その集合体(例えば、結晶)中において高分子間に架橋を形成する、徐々に交換可能な結合された水分子と等価の様式で、個々の水分子を介して架橋され得る。
【0144】
リポソーム粒子中の高分子バイオロジックのポリマー増強されたオリゴマー化または結晶化によるローディングおよび安定性の増強
その中に含まれる炭化水素セグメントに起因して、本明細書に記載される合成PEA、PEUR、およびPEUは、水に可溶性ではない。しかし、それらは部分的に湿潤性であり、何故ならば恐らく、個々の水分子がアミノ酸残基へ水素結合し、それによってより多くの水分子に対して水素結合化架橋を形成し得るためである。個々の結合された水分子が、高分子バイオロジック構造およびより高次の構造(例えば、オリゴマーおよび結晶)の安定化に必須であると実証されたのとほぼ同一の様式で、これらの結合された水分子は、ポリマーと高分子バイオロジックとの相互作用の安定化のために重要であると考えられる。
【0145】
クリスタリットが穏やかな条件下で形成される生体分子の結晶配列は、高分子構造を安定化させつつ、最適な充填密度を達成し得る、天然または準天然立体配置を示す。実際に、あるタンパク質、例えば、プロインスリンは、微結晶集合体として、貯蔵顆粒内に天然に保存されている。
【0146】
自然において、多くの高分子バイオロジックは四次構造として存在し、この構造は、しばしば、活性な生物学的立体配置を示す。四次構造として存在する高分子バイオロジックの例としては、いくつかの核酸(アンチパラレルな二重らせん二量体)、多くの遺伝子調節タンパク質(2つのプロトマーのDNA結合性二量体)、輸送タンパク質ヘモグロビンおよびトランスサイレチン(各々、プロトマーのカルテット)、酵素アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ(6つの調節および触媒プロトマー)、イソコサヘドラル(iscosahedral)ウイルス外皮(60プロトマーの倍数)、らせんウイルス外皮(タバコモザイクウイルスは2130プロトマーを有する)、および細胞構造集合体、例えば、アクチンおよびチューブリンケーブル(何千ものプロトマーから構成される)が挙げられる。
【0147】
高分子バイオロジックにおいて、2つまたはそれ以上のこのような同一のタンパク質分子またはプロトマーが、非共有結合的に、しかし特異的に、一緒に結合し、タンパク質オリゴマーを形成し得る。プロトマーの空間的配置は、オリゴマーの四次構造と呼ばれる。生物活性を有する大部分のオリゴマーにおいて、プロトマーは、単純な回転対称によって空間的に関連している。しかし、多くのオリゴマータンパク質が、結晶学的に非対称な単位で2以上のプロトマーで結晶化し、従って、これらの対称性は必ずしも正確ではない。オリゴマータンパク質の結晶構造中において一般的に観察されるプロトマーの四次立体配置の例は、さらなる回転対称によって関連する二量体のそれである。生物学的に活性な立体配置を示すかもしれないし、または示さないかもしれない、得られるオリゴマーは、プロトマーの単純な翻訳結晶性集合体よりも、より安定であり、かつ、より低い自由エネルギー最小値を有する。例えば、ヒトインスリンは、容易に二量化し、そして、亜鉛原子の存在下で、3つの二量体が、三回対称軸(three-fold axis of symmetry)周りに集まり、分子の安定な六量体を形成する。適切な条件下で、これらの可溶性六量体は、集合し結晶を形成し得、ここで、六量体−六量体相互作用が、亜鉛原子によってさらに安定化される。インスリン以外の高分子バイオロジックについて、他の遷移金属またはカルシウムの原子が、オリゴマーの凝集を促進し、結晶を形成させ得る。高分子バイオロジックの結晶化の分野は、事実上任意のポリペプチドまたはタンパク質のオリゴマーまたは結晶が結晶学の分野の当業者によって得ることができる程度に、進歩した。
【0148】
インスリンの結晶化の例を、高分子バイオロジック(例えば、タンパク質)の結晶化の重要な一般的特徴を示すために本明細書に記載する。結晶を結合する非共有結合性電子力は、オリゴマーの四次構造を安定化させ、実際にタンパク質分子(即ち、プロトマー)自体の三次元折り畳みを維持するものと種類および強度が類似している。
【0149】
従って、高分子バイオロジックの三次元折り畳み構造は、以下に対する高分子バイオロジックの疎水性結合およびイオン結合の組み合わせによって、本明細書に記載される本発明のPEA、PEURおよびPEUポリマー粒子組成物中において保存され得る:1)ポリマー、2)高分子バイオロジック自体の空間的に隣接するコピー(即ち、オリゴマー化を伴うまたは伴わない、微結晶化)、ならびに、任意で、3)高分子バイオロジック自体の空間的に隣接するコピー(即ち、オリゴマー化を伴うまたは伴わない、結晶化);ここで、少数のプロトマーがポリマーへ結合されている。本明細書において図1に図示しそして実施例1に例示するように、これらのポリマー結合化プロトマーは、種分子として作用し、オリゴマー化を伴ってまたは伴わずに穏やかな条件下で、周囲の遊離プロトマーの結晶化を促進し、それによって、プロトマーの三次元構造を安定化させ、従って、高分子バイオロジックの生物学的機能を保存すると考えられる。
【0150】
従って、1態様において、本発明は、少なくとも1つの高分子バイオロジックが、本発明の組成物および方法において使用される生分解性ポリマー、例えば、構造式(I)または(III〜VII)のいずれか1つによって表される化学式を有する少なくとも1つのPEA、PEURまたはPEUを含むもの中に分散されている、リポソーム粒子組成物を提供する。少なくとも1つの高分子バイオロジックは、リポソーム粒子を製剤化するために使用される脂質および脂質作用化合物を含有する溶液へポリマーを導入する前に、ポリマーへ結合され得る。高分子バイオロジック−ポリマー結合体の形成を、PEAへのインスリン単量体の結合によって、本明細書中、実施例において示す。次いで、高分子バイオロジック含有結合体は、本明細書の実施例1に記載されかつ当該分野において公知である透析法を使用して、オリゴマー(例えば、亜鉛を有するインスリン六量体)へ濃縮されそして結晶化され得る。この手順を完了し、その後、ポリマー−バイオロジック結合体を、リポソーム粒子形成の間使用される脂質相へ導入する。この手順は、リポソーム粒子形成の間にわたって、該結合体中の高分子バイオロジックの「折り畳み」(即ち、三次元構造)を保護するに十分に穏やかな条件を使用する。
【0151】
なお別の態様において、本発明は、構造式(I)または(IV〜VIII)の安定性付与ポリマーを含み、かつ、そこへ結合された少なくとも1つの高分子バイオロジック単量体を有する、本発明のポリマー安定化リポソーム組成物をインビボで被験体へ投与することによって、被験体へ、実質的にネイティブな活性を有する高分子バイオロジックを送達するための方法を提供し、該組成物は、インビボで酵素作用によって生分解し、実質的にネイティブな活性を有する高分子バイオロジックを制御様式で放出する。
【0152】
組成物は、一般的に、経口、経粘膜または皮下送達に好適な1または複数の「薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル」、例えば、水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどを含む。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質、矯味矯臭剤などが、このようなビヒクル中に存在し得る。
【0153】
本発明の組成物は、例えば、経口的にまたは経鼻投与によって、凍結乾燥粉末として投与され得る。例えば、鼻腔内および経肺製剤は、通常、鼻粘膜に対して刺激を引き起こさず、線毛機能を顕著には妨害しないビヒクルを含む。他の態様において、希釈剤、例えば、水、食塩水、または他の公知の物質が、本発明の組成物および製剤について使用され得る。肺内製剤はまた、防腐剤、例えば、非限定的に、クロロブタノールおよび塩化ベンザルコニウムを含有し得る。鼻粘膜による吸収を増強するために、界面活性剤が存在し得る。
【0154】
固体−液体表面張力および自由エネルギー変化を低下させ、腸壁を通っての浸透性を促進する好ましい物理化学的特性を有するが、負の生理学的/毒性特性が最小であるかまたは存在しない、経口送達のために使用され得るさらなる分子およびビヒクルとしては、不活性成分に関するFDAガイドライン(FDA Guidelines for Inactive Ingredients)に列挙される、一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe (GRAS))化合物、または、公的な医薬品規制機関によって規定された必要な毒性および許容性試験を経た化合物が挙げられる。腸の浸透性に対する効果を有する分子およびビヒクルのカテゴリーは、胆汁酸塩、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、脂肪酸、グリセリド、アシルカルニチン、コリン、サリシレート、キレート剤、および膨潤性ポリマーである。このカテゴリーに入るこれらの分子およびビヒクルの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:天然、半合成、および合成リン脂質、ポリエチレントリグリセリド、ゼラチン、イオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)、非イオン性界面活性剤、例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ツイーン(Tween)およびクレマフォア(Cremaphore)、胆汁酸および胆汁酸誘導体、消化可能な油、例えば、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、およびオリーブ油、クエン酸、EDTA、ステアロイルマクロゴグリセリド(stearoyl macrogoglyceride)、ラウロイルマクロゴグリセリド(lauroyl macrogoglyceride)、プロピレングリコール誘導体、即ち、プロピレングリコールカプリレートおよびモノカプリレート、プロピレングリコールラウレートおよびモノラウレート、オレオイルマクロゴールグリセリド、カプリロカプロイルマクロゴールグリセリド、グリセロールモノリノレエート、グリセリルモノオレエート、ポリグリセリルオレエート、脂肪酸のグリセロールエステル、中鎖トリグリセリド、カプリン酸ナトリウム、アシルカルニチンおよびコリン、サリシレート、例えば、サリチル酸ナトリウムおよびメトキシサリシレート、キトサン、デンプン、ポリカルボフィル、N-アセチル化α-アミノ酸、N-アセチル化非α-アミノ酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ならびにジエチレングリコールモノエチルエーテル。競合的基質およびプロテアーゼ阻害剤、例えば、膵インヒビター(pancreatic inhibitor)、ダイズトリプシンインヒビター、FK-448、メシル酸カモスタット、アプロチニン、p-クロロメリクリベンゾエート(p-chloromericuribenzoate)、およびバシトラシンなどの化合物もまた、このリストに含まれる。
【0155】
さらに、経口送達について、pH開始される分解からリポソーム粒子を保護するのを助けるコーティングとしては、シェラック、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、メタクリル酸コポリマー、例えば、ポリメタクリレートアミノエステルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、およびポリビニルアセテートフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。種々の腸溶コーティングが市販されている。
【0156】
特定の送達様式について使用するための好適なビヒクルのさらなる議論については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995を参照のこと。当業者は、特定の高分子バイオロジック/ポリマー粒子組み合わせ、粒子サイズ、および投与様式について使用するための適切なビヒクルを容易に決定し得る。
【0157】
任意の好適かつ有効な量の少なくとも1つの生物学的薬剤が、本発明の組成物から経時的に放出され得、典型的に、例えば、特定の安定性付与ポリマー、脂質組成、およびリポソーム粒子またはポリマー/生物活性剤結合(存在する場合)のタイプに依存する。典型的に、約100%までの生物活性剤が、インビボで投与された本発明の組成物から放出され得る。具体的には、その約90%まで、75%まで、50%まで、または25%までが、組成物から放出され得る。本発明のポリマー安定化リポソーム組成物からの放出速度に典型的に影響を与える因子は、安定性付与ポリマーの性質および量、リポソーム粒子二重層の組成、組成物が製剤化されているリポソーム粒子のタイプ、ポリマー/生物活性剤結合のタイプ、ならびに製剤中に存在する追加の物質の性質および量である。
【0158】
ポリマー安定化リポソーム組成物は、種々の特性を提供するように製剤化され得る。1態様において、リポソーム粒子は、例えば、皮下に、筋内に、または身体内部(例えば、器官)へ、インビボで注射されると、インビボで塊になり、周囲組織/細胞への生物活性剤の局所送達についての徐放ポリマーデポット(depot)を形成するようにサイズ化される。約19〜約27ゲージのサイズ範囲の薬学的注射針、例えば、約1μm〜約100μmの範囲の平均直径を有するものを通過し得るサイズの本発明のリポソーム粒子が、身体内部へ注射され得、そして、デポットを形成し、生物活性剤を局所的におよび全身的に分配する。他の態様において、本発明の組成物は、標的化された徐々の全身的な放出のために循環中への生物活性剤についての担体として作用する。約10 nm〜約500 nmのサイズ範囲内のリポソーム粒子は、このような目的のために循環へ直接入る。
【0159】
本発明のポリマー安定化リポソーム組成物中において使用される生分解性ポリマーは、ポリマーの生分解速度を調整し、選択された期間にわたって生物活性剤を連続送達させるように設計され得る。例えば、典型的には、本発明の組成物は、本明細書に記載されるように、組成物が投与される身体部位に依存して、約15日〜約5ヶ月より選択される期間にわたって生分解するが、隔離された生物活性剤は、この時間範囲にわたって組成物中に存在しないこともある。上記範囲内のより長い期間が、適切な治療または緩和反応を得るために組成物を繰り返し注射する必要性を排除する組成物を得るために特に好適である。
【0160】
いったん本発明の組成物が上記のように作製されると、該組成物は、引き続いてのインビボ送達のために製剤化され、そして一般的に、全身投与に好適な1または複数の「薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル」、例えば、水、食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノールなどを含む。さらに、補助物質、例えば、湿潤剤、pH緩衝物質などが、このようなビヒクル中に存在し得る。特定の送達様式についての使用するために好適なビヒクルのさらなる議論については、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 19th edition, 1995を参照のこと。当業者は、特定の生物活性剤/リポソーム粒子組み合わせ、リポソーム粒子サイズ、および投与様式について使用するために適切なビヒクルを容易に決定し得る。
【0161】
本発明の方法において使用される組成物は、「有効量」の問題の生物活性剤を任意で含み得る。即ち、症状を予防、軽減または排除するために十分な治療または緩和応答を被験体に生じさせる量の生物活性剤が、組成物中に含まれ得る。必要な正確な量は、他の因子の中でも特に、治療される被験体;治療される被験体の年齢および全般的な状態;治療される状態の重篤度;選択される特定の生物活性剤ならびに製剤に依存して、変化する。好適な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。従って、「有効量」は、型通りの試行によって決定され得る比較的広い範囲内にある。例えば、本発明の目的について、有効量は、典型的に、1用量当たり送達される生物活性剤約1μg〜約100 mg、例えば約5μg〜約1 mg、または約10μg〜約500μgの範囲にある。
【0162】
いったん製剤化されると、本発明のリポソーム粒子組成物は、当該分野において公知の任意の経路によって、例えば、静脈内、非経口、腹腔内、経口、経鼻、皮下、経直腸、または経眼送達によって、例えば、眼への、硝子体内、結膜下、局所、テノン嚢下または眼窩周囲送達によって、全身的に投与され得る。投薬治療は、当該分野において公知であるように、本発明のリポソーム粒子組成物の単回投与、または複数回投与スケジュールであり得る。投薬レジメンはまた、少なくとも一部は、被験体の要求によって決定され、実施者の判断に依存する。
【0163】
投薬治療は、当該分野において公知であるように、本発明のリポソーム粒子組成物の単回投与、または複数回投与スケジュールであり得る。投薬レジメンはまた、少なくとも一部は、リポソーム粒子中に封入された生物活性剤、被験体の要求によって決定され、実施者の判断に依存する。さらに、疾患の予防が望まれる場合、リポソーム粒子組成物は、原発性疾患発現より前に、または問題の疾患の症状より前に、生物活性剤の送達について一般的に投与される。治療(例えば、症状または再発の減少)が望まれる場合、リポソーム粒子組成物は、原発性疾患発現に続いての生物活性剤の送達について一般的に投与される。
【0164】
製剤は、経口、皮下、または経粘膜送達の研究のために開発された多数の動物モデルにおいてインビボで試験され得る。血液サンプルが、当該分野において公知の、標準技術を使用して、高分子バイオロジックについて評価され得る。
【0165】
下記の実施例は、本発明を例示するように意図され、本発明を限定するようには意図されない。
【0166】
実施例1
ポリマー−インスリン結合体の作製
PEAの活性化:PEA(65kD)コポリマー(386 mg, 209μmol CO2H)を、DMF(1.0 mL)に溶解し、そしてRTで24時間、N-ヒドロキシスクシンアミド(13.22 mg, 115μmol)およびDCC(23.78 mg, 115μmol)と共に撹拌した。反応混合物をフリット(0.2μm)で濾過し、そして0.5 mLのDMFで洗浄した。
【0167】
結合(PEA-Ins):DMF中の活性化エステルを、DMSO(3 mL)およびジイソプロピルエチルアミン(54μL, 3.0当量)中の1当量のインスリン(597 mg)と混合し、そして48時間撹拌した。PEA−インスリン(PEA-Ins)結合体溶液をGPCによって検査し、そして次の工程、コア材料の合成へ送った。
【0168】
ポリマー安定化リポソーム粒子の製作(オイルインウォーター法)
工程1:ポリマーでのバイオロジックの安定化(コア材料PEA-Ins-Ins[Hex]):全ての溶液および透析を脱気溶液中に4℃で保存した。
ストック溶液A:硫酸亜鉛650mgおよびフェノール490mgを水20mlに溶解し、濃度32.5 mg/mlが得られ、そしてpH 5.6に平衡化した。
ストック溶液B:0.5 mlのストック溶液Aを水0.5Lに溶解し、そしてpHを3.7へ調節した。
ストック溶液C:4mlのストック溶液Aを水4Lと混合し、そしてpHを6.6.へ調節した。
ストック溶液D:インスリンを濃度20 mg/mlまでストック溶液Bに溶解し、そしてpHを3.7へ再調節した。
次いで、90 mLのインスリン含有ストック溶液Dを透析チャンバへ添加し、続いて、DMSO/DMF中のPEA-Insプロトマー結合体10 mLを添加した。チャンバ内容物を、4 Lのストック溶液Cに対して透析した。バッファーを1日2回交換し、透析を3日間行った。次いで、透析袋からの材料を回収し、そして凍結乾燥し、所望の生成物が得られた。GPC(PS)およびHPLCクロマトグラムから算出されたPEAコアバッチ中のインスリン含有量は、82%〜94%の範囲であった。
【0169】
ポリスチレン標準で較正したGPC測定を、Refractive Index Detector(Waters 2414)および2つのStyragel HR 5E DMFカラム(7.8 x 300mm, Waters)およびWaters Styragel Guardカラム(4.6 x 30mm)を備えたWaters 2487システムを使用して、ジメチルアセトアミド/LiCl(0.1%)中において行った。HPLC測定については、Jupiter 5μm C4, 300A, 250 x 4.6 mmカラムを、security Guard Cartridge: Millipore C4(AVO-4330)と共に使用した。移動相A:80%水+0.1%TFAを含む20%アセトニトリル。移動相B:下記の方法に従って、80%アセトニトリル+0.1%TFAを含む20%水。

【0170】
工程2:乳化:相Aについて、成分を1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)またはジクロロメタンDCMに溶解し、その後、一緒に添加し、以下のような均質溶液(相A)を形成した:(1)27.76 ml HFIP中に1388 mg PEA-Ins-Ins[Hex](工程1より)、(2)4.16 mL HFIP中に416 mgのコール酸ナトリウム、(3)0.833 mL DCM中に83.3 mgの綿実油、(4)6.94 mL DCM中に694.1 mgのレシチン、(5)0.555 mL DCM中に55.5 mgのコレステロール、および(6)0.555 mL HFIP中に55.5 mgのオレイン酸。いったん全ての成分が均質溶液となると、次いで、相Aを、20ゲージ針を備えた40 mL注射器を介して、溶解されたポリ(ビニル)アルコール(139 mg)を含有する500 mL脱イオン水(液体B)中へ、60秒間にわたって25 Wの出力で超音波処理(Fisher Scientific Sonic Dismembrator, model 100)しながら4℃にて注射した。
【0171】
工程3:安定化:前記エマルジョンを、600秒間、約11 mm Hg真空で、ロトエバポレーションし、有機溶媒を除去し、次いで液体窒素中で凍結させ、そして最終的に一晩凍結乾燥した。回収された収率は87±7%の範囲であった。収率の範囲は、恐らく、最終生成物の凍結乾燥前のより大きな粒子の除去の結果であった。安定化された粒子を、動的光散乱(Malvern ZS 90)、TLC、GPCおよびHPLC技術によって分析した。製剤は、強度によって測定した場合196.7±3.6 nmの平均直径、および-43.8±2.7 mVの平均ゼータ電位(23℃、1 mg/mLの濃度で、DI水中)を有した。移動相(v/v)クロロホルム(72%)、メタノール(25%)、H2O(3%)での薄層クロマトグラフィー(TLC)によって、以下の化合物Rfが同定された:大豆レシチン(0.12)、コール酸ナトリウム(0.28)、コレステロール(0.80)、および綿実油トリグリセリド(0.94)。アニスアルデヒド染色を使用して、綿実油、オレイン酸、コレステロール、コール酸、およびレシチンを視覚化した:18.4 mL p-アニスアルデヒド、3.75 mL酢酸、338 mL 95%エタノール、および12.5 mL硫酸のミックス。製剤中の推定インスリン(六量体)含有量は、HPLCによって431±26μg/mg、GPCによって454±38μg/mgと測定された。
【0172】
工程4(任意):インビトロでの再構築 :インビトロ試験のために、前記最終生成物を、脱イオン水、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、PBS、およびマンニトール溶液を含む種々の水性媒体において、乾燥粉末から再構築した。
【0173】
インスリン放出
速放(quick release)となるように設計した製剤からのインスリンの放出を、それぞれ腸および胃における条件への曝露をシミュレートするために中性および酸性pHのバッファー中においてインビトロで試験した。簡単に記載すると、既知量のポリマー安定化リポソーム粒子製剤を、0.5 mg/mLの標準化インスリン濃度で、PBS pH 7.4または10 mM HCl pH 1.8のいずれかに懸濁させた。粒子懸濁液を4℃で5分間撹拌し、次いで4℃で10分間13,000 rcfで遠心分離した。上澄みおよびペレットの両方を、HPLCによって、インスリン含有量について分析した。測定によって、4℃において5分間で、84±3.2%インスリンがpH 7.4 PBSバッファー中に放出され、92±4%がpH 1.8の10 mM HCl溶液中に放出されたことが示された。
【0174】
リポソーム製剤のための脂質相の作製
クラス(I〜IV)からの脂質相の作製において使用した脂質および/または脂質作用分子は、以下の通りであった:
クラスI、オレイン酸および綿実油;
クラスII、レシチン-ホスファチジルコリン;
クラスIII、ポリ(ビニルアルコール);
クラスIV、コレステロール、およびコール酸ナトリウム。
【0175】
ポリマー安定化リポソーム粒子の種々の成分を、図2に図示する。ポリマー安定化リポソーム粒子当たりのこれらの成分の算出された平均割合(wt%)を、図2と同一の濃淡を付ける図式を使用して、図3に示す。
【0176】
さらに、組成物は小腸の壁を通ってそして従って門脈血中へのインスリンの送達に意図されるため、食物の成分である天然分子のみをこの実施例において使用した。このタイプの経口製剤の使用のための臨床的指標は、I型および2型糖尿病である。
【0177】
実施例2
腸溶コーティングで覆われたゼラチンカプセル中にカプセル化されたPEA-安定化リポソーム製剤中において経口送達されるインスリンの生物活性
上記実施例1に記載されるように作製したPEA−インスリン製剤を、ゼラチンカプセル中にカプセル化し、次いでこれを腸溶コーティングで包んだ。各ラットが60 IU/kgインスリンの用量を受容するように、カプセルを絶食ラットへ投与した。図5AおよびBに示す時点で、血液を回収し、血中グルコースおよびインスリン濃度を、皮下に注射した1 IU/kgのポリマーカプセル化されていないインスリン用量(subQ)と比較した。
【0178】
造影剤が充填されたカプセルを使用する別の研究によって、カプセルは5時間内に常には胃から出ないことが示された。従って、造影剤研究の結果に基づいて、図5AおよびBに示される結果は、グルコース低下および血中インスリンが測定された場合、「送達された」カプセルと別々に指定され、これは、カプセルがインスリンペイロード(payload)を血流中へ最終的に送達したことを意味している。インスリンペイロードが血中に測定で検出することができなかった場合、カプセルは「保持された」と指定され、カプセルが研究期間にわたって胃から出なかったかもしれないことを示している。
【0179】
グルコース濃度およびインスリン濃度の顕著な持続した低下が、それらの小腸において本発明のPEA安定化インスリンリポソーム製剤を受容したラットにおいて測定され、その結果、ラットを、重篤な低血糖症に苦しむことを防ぐために安楽死させた。投与後1時間から開始し3時間にわたって、送達された推定インスリンは、図5Aおよび5Bに示されるそれぞれの曲線の下の面積によって測定した場合、1 IU/Kg Sub Q用量によって送達されたものと比べて20倍(2,000%)であった。さらに、腸溶コーティングされたカプセルを使用してのインスリンの送達は、全身的に、インスリンのさらなるバイオアベイラビリティまたは生物活性を生じさせない。
【0180】
PEA粒子中のインスリン経口送達の生物活性
上記の実施例1におけるように作製したPEA-インスリン製剤を、リン酸緩衝食塩水に懸濁し、10、30および60 IU/kgの用量を絶食ラットへ送達した。溶液を経口強制飼養によって投与し、そして1 IU/kgのポリマーカプセル化されていないインスリン用量をポジティブコントロールとして皮下注射した(subQ)。
【0181】
グルコース濃度の測定を約3時間にわたって行った。結果を、各用量について時間ゼロでのグルコース濃度のパーセンテージとして算出した(図6)。約3時間にわたる血中グルコース濃度の40%低下が、体重1 kg当たり60 IUのインスリンの用量の経口送達によって生じた。約2時間にわたる血中グルコース濃度の20%低下が、30 IU/kgの経口送達から生じ、ラット体重1 kg当たり10 IUのインスリン用量では、低下は測定されなかった。従って、この実施例は、インスリンが本発明のPEA安定化リポソーム組成物から経口送達され、引き続いて腸を通って吸収され、血中グルコース濃度を低下させることにおいて生物活性であったことを示している。
【0182】
実施例3
オイルインオイル法によるポリマー安定化リポソーム粒子の製作
レシチン(25.8 mg)、コール酸(15.5 mg)、コレステロール(2.1 mg)、capmul C10(3.1 mg)、およびオレイン酸(2.1 mg)をメタノール0.5 mLに溶解した。次いで、この溶液を、HFIP 1.0 mLに溶解されたPEA-Ins-Ins[Hex](53.1 mg)と混合し、不連続相が形成された。綿実油80 mL中へ0.4%Span 80を混合することによって、連続相を作製した。前記不連続相を12体積%の前記連続相とプレ混合し、プレエマルジョンを得た。このプレエマルジョンを前記連続相へ添加し、そして6000 rpmで15分間、室温において乳化した。有機溶媒をロトエバポレーションによって除去した。物質を0.8μmナイロンフィルター上に回収した。凍結乾燥後、6バッチの平均質量収量は、白色粉末として得られた物質61±2 mgであり、収率61±2%(wt/wt)が得られた。粒子中におけるインスリンローディング(wt/wt)は、HPLCによって67±4%、GPCによって63±3%であると測定された。DLS分析によって、ピーク1=136.2 nm(51.1%)およびピーク2=525.6 nm(45.9%)を有する双峰性ピーク分布が得られた。4℃でPBS,pH=7.4中5分間で放出されたインスリンの量は、84%±3.2%であった。4℃でPBS,pH=1.8中5分間で放出されたインスリンの量は、91.2%±4.3%であった。TLC分析によって、PEA-Ins-Ins[Hex]、レシチン、コール酸およびトリグリセリドの存在が検出された。
【0183】
オイルインオイル法を使用して作製した経口送達されたポリマー安定化リポソーム粒子の生物活性を、記載されるように試験した(図7)。一晩絶食させた後、マウスの群(n=6)に、10 IU/kg インスリンを含有する製剤有りおよび無しで、経口強制飼養を与えた。投薬の15分後、マウスに2.5 g/kgの経口グルコースチャレンジを与えた。製剤無し(■)コントロールマウスにおいて、グルコース濃度は、45分で約450 mg/dLの最大値へ顕著に増加した。しかし、製剤(◆)を受容したマウスにおいて、グルコース濃度は、製剤によって送達されたヒトインスリンの存在に起因して、250 mg/dLに達しただけであった。
【0184】
実施例4
腸溶コーティングを有するポリマー安定化リポソーム粒子の製作
メタノール中10%コール酸、MeOH中10%Eudragit L100およびHFIP中5%PEA-Ins-Ins[Hex]のストック溶液を作製した。綿実油80 mL中へ0.5%Span 80を混合することによって、連続相を作製した。超音波処理しながら1.0 mLのPEA-Ins-Ins[Hex]と300μLのコール酸ストック溶液とを混合することによって不連続相を調製し、次いで1.2 mLのEudragit L100を添加した。不連続相を前記連続相へ添加し、8000 rpmで15分間室温において乳化した。揮発性有機溶媒をロトエバポレーションによって除去し、次いでヘキサン80 mLで希釈し、そして4℃で一晩保存した。粒子を0.8μmナイロンフィルター上に回収し、ヘキサンでリンスした。凍結乾燥後、2バッチの平均質量収量は、白色粉末として得られた物質152±3 mgであり、収率76±1%(wt/wt)が得られた。粒子中におけるインスリンローディング(wt/wt)は、HPLCによって22%であると測定された。
【0185】
ペプシン(pH 1.8)中37℃で15分後の製剤分解研究によって、107±5%の分解されていないインスリンが粒子中に存在したことが示された(HPLC)。DLS分析によって、389±94 nm(>90%)直径を有する単峰性ピーク分布が得られた。4℃でPBS,pH=7.4中5分間で放出されたインスリンの量は、100%であった。4℃でPBS,pH=2.0中5分間で放出されたインスリンの量は、0%であった。
【0186】
腸溶コーティングがコーティングされた経口送達されたポリマー安定化リポソーム粒子の生物活性を、記載されるように試験した(図8)。一晩絶食させた後、マウスの群(n=6)に、10 IU/kg インスリンで製剤有り(◆)および無し(■)で、経口強制飼養を与えた。投薬の15分後、マウスに2.5 g/kgの経口グルコースチャレンジを与えた。製剤無しコントロールマウスにおいて、グルコース濃度は、投薬後45分で約450 mg/dLの最大値へ顕著に増加した。しかし、本発明の組成物を受容したマウスにおいて、グルコース濃度は、組成物によって送達されたヒトインスリンの存在に起因して、230 mg/dLに達しただけであった。
【0187】
本明細書に記載される本発明のポリマー安定化リポソーム粒子組成物の特定の個々の成分は公知であったが、成分のこのような組み合わせが、成分が別々に使用される場合に達成されるレベルを超えて、組み込まれた生物活性剤の徐放性全身送達の効率を上げることは、予想外であり驚くべきことであった。
【0188】
全ての刊行物、特許、および特許文献は、参照により個々に組み入れられるかのように、参照により本明細書に組み入れられる。種々の特定の好ましい態様および技術を参照して、本発明を記載した。しかし、多くの種々の変更および修正が、本発明の精神および範囲内にありつつ行われ得ることが、理解される。
【0189】
上記実施例を参照して本発明を記載したが、修飾および変更が本発明の精神および範囲内に含まれることが理解される。従って、本発明は、下記の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)リポソーム粒子であって、
親油性特性を有する安定性付与ポリマーであって、該ポリマーが、該リポソーム粒子全体にわたって一体的に配置されて、それへ構造的サポートを提供している、安定性付与ポリマー;および
少なくとも1つの小胞形成性脂質または脂質作用化合物
を含む、リポソーム粒子と、
b)該安定性付与ポリマーおよび該脂質または脂質作用化合物によって協力して封入され、その実質的にネイティブな活性を保持している、少なくとも1つの生物活性剤と
を含む、ポリマー安定化リポソーム組成物。
【請求項2】
凍結乾燥されている、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
リポソーム粒子をカプセル化する腸溶コーティングをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
安定性付与ポリマーが、以下のポリマー:
構造式(I)によって表される化学式を有するPEA:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり;R1は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;ここで、式(III)中のR5およびR6は、独立して、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンであり;個々のnモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;ならびに、R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される;

または、構造式(IV)によって表される化学式を有するPEA:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり、mは、約0.1〜0.9の範囲にあり、pは、約0.9〜0.1の範囲にあり;式中、R1は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、α,ω-ビス(4-カルボキシフェノキシ)(C1-C8)アルカン、3,3'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸または4,4'-(アルカンジオイルジオキシ)二ケイ皮酸の残基、式(III)のα,ω-アルキレンジカルボキシレートの残基からなる群より選択され;ここで、式(III)中のR5およびR6は、独立して、(C2-C12)アルキレンまたは(C2-C12)アルケニレンであり;各R2は、独立して、水素、(C1-C12)アルキル、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキル、(C6-C10)アリール、および保護基からなる群より選択され;個々のmモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;ならびに、R7は、独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニルである;
または、構造式(V)によって表される化学式を有するポリ(エステルウレタン)(PEUR):

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり;式中、個々のnモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4およびR6は、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキルからなる群より選択され、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される;
または、一般構造式(VI)によって表される化学構造を有するPEUR:

式中、nは、約5〜約150の範囲にあり、mは、約0.1〜約0.9の範囲にあり、pは、約0.9〜約0.1の範囲にあり;R2は、独立して、水素、(C1-C12)アルキル、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキル、(C6-C10)アリール、および保護基からなる群より選択され;個々のmモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4およびR6は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキル、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせより選択され;ならびに、R7は、独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニルである;
または、構造式(VII)によって表される化学式を有するポリ(エステルウレア)(PEU):

式中、nは、約10〜約150であり;個々のnモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせより選択される;
または、構造式(VIII)によって表される化学式を有するPEU:

式中、mは、約0.1〜約1.0であり;pは、約0.9〜約0.1であり;nは、約10〜約150であり;R2は、独立して、水素、(C1-C12)アルキル、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキル、(C6-C10)アリール、および保護基からなる群より選択され;個々のmモノマー中のR3は、独立して、水素、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C6-C10)アリール(C1-C6)アルキル、および-(CH2)2SCH3からなる群より選択され;R4は、独立して、(C2-C20)アルキレン、(C2-C20)アルケニレン、(C2-C8)アルキルオキシ(C2-C20)アルキレン、または構造式(II)の1,4:3,6-ジアンヒドロヘキシトールの二環式フラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され;ならびに、R7は、独立して、(C1-C20)アルキルまたは(C2-C20)アルケニルである;
の少なくとも1つまたはブレンドを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
安定性付与ポリマーおよび生物活性剤へ水素結合された個々の水分子をさらに含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
安定性付与ポリマーが、構造式(IV)、(VI)、または(VIII)によって表される化学構造を有し、生物活性剤が、該ポリマーのアミドまたはカルボキシル基を介してそれへ共有結合されている、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
約5〜12時間から約8時間〜5ヶ月の期間にわたって生分解する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
リポソーム粒子が、約100μm〜約10 nmのサイズ範囲の平均直径を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つの生物活性剤が、安定性付与ポリマー中の官能基へ結合されているバイオロジック(biologic)を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項10】
バイオロジックが、単量体ペプチド、タンパク質、またはオリゴヌクレオチドである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
クラスIII可溶性両親媒性界面活性剤および/またはコーティングをさらに含み、脂質または脂質作用分子が、
クラスI 非極性・非膨潤性安定剤;
クラスII 極性・不溶性・膨潤性両親媒性物質;および
クラスIV コレステロールまたはコレステロール系化合物、
の少なくとも1つまたは組み合わせである、
請求項4記載の組成物。
【請求項12】
バイオロジックが、その実質的にネイティブな活性を維持するために生分解性安定性付与ポリマーへ結合される高分子バイオロジック単量体を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項13】
高分子バイオロジックがインスリン単量体である、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
高分子バイオロジック単量体が、該高分子バイオロジックのさらなる未結合単量体を含む、そのタンパク質集合体または結晶へ組み込まれている、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
プロダクト組成物中のバイオロジックの濃度が、約5重量%〜約60重量%の範囲内にある、請求項4記載の組成物。
【請求項16】
生物活性剤が親水性である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
生物活性剤が疎水性薬物である、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
生物活性剤がペプチド抗原であり、組成物が、その中に封入された免疫刺激アジュバントをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
請求項1記載の組成物をインビボで被験体へ投与する段階を含み、該組成物は、生分解し、制御速度で実質的にネイティブな活性を伴って被験体へインビボで生物活性剤を放出する、実質的にネイティブな活性を有する生物活性剤を被験体へ送達するための方法。
【請求項20】
投与する段階が、静脈内、非経口、腹腔間(interperitoneal)、経口、経鼻、皮下、経直腸、および経眼経路からなる群より選択される経路による、請求項19記載の方法。
【請求項21】
組成物を凍結乾燥粉末として投与する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
ポリマー安定化リポソーム組成物を製造するための方法であって、
a)第1の均質な液体溶液を形成するために、第1の液体において以下の成分を混合する段階:
i)ネイティブな活性を有する少なくとも1つの生物活性剤、
ii)親油性特性を有する安定性付与ポリマー、および
iii)以下からなる群より選択される少なくとも1つの脂質または脂質作用化合物:
クラスI 非膨潤性・非極性安定剤;
クラスII 極性・不溶性・膨潤性両親媒性物質;および
クラスIV コレステロールまたはコレステロール系化合物;
b)第2の液体中において第1の均質な液体溶液の液滴のエマルジョンを得るために、前記成分が可溶性でない第2の液体中において第1の均質な液体溶液を乳化する段階;ならびに
c)、成分i)、ii)、およびiii)を含む安定なリポソーム粒子を得るため、液滴のエマルジョンから第1の液体を蒸発させる段階;ここで、生物活性剤は、実質的にネイティブな活性を保持するため、安定性付与ポリマーおよび少なくとも1つの脂質または脂質作用化合物によって協力して封入されている;
を含む、方法。
【請求項23】
安定性付与ポリマーが、化学構造が構造式(IおよびIV〜VIII)によって表されるポリマーの少なくとも1つまたはブレンドである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの生物活性剤がバイオロジックを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの生物活性剤がインスリン単量体を含み、過剰のインスリン単量体の存在下で、そのオリゴマーを形成するための種として、前記ポリマーへ結合された該インスリン単量体を使用する段階をさらに含む、請求項22記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−502822(P2010−502822A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527522(P2009−527522)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/077561
【国際公開番号】WO2008/082721
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】