説明

マイクロ構造体及びその製造方法

【課題】可動部の設計変位を生じ易くしながら、意図しない変形は生じ難くすることが可能なマイクロ構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロ構造体は、基板9と、基板9に固定された固定支持部4と、第1の可動部6と、第2の可動部3と、第1の可動部6と固定支持部4とを弾性的に連結する弾性支持部5を有する。第2の可動部3は第1の可動部6に固定され、第1の可動部6と第2の可動部3は、弾性支持部4により、固定支持部4に対して一体的に変位可能に弾性支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスによってウエハから作製される微小電気機械構造体(MicroElectro Mechanical Systems;MEMS)などのマイクロ構造体、それを複数配列したマイクロ構造体アレイ、それらの製造方法などに関する。特に、可動部を含む構造体を基板上に形成する技術に関する。ここで、マイクロ構造体とは、主に、マイクロメータオーダ等の微細なサイズの構造体で、可動部を有し、例えば、力学量センサ(加速度センサ、圧力センサ、ジャイロセンサなど)、光偏向器、光スイッチ、光変調素子等に用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微小電気機械構造体(MEMS)は、アクチュエータ、センサなどとして利用されている(特許文献1、特許文献2参照)。例えば、基板上に可動部を形成し、基板と可動部を静電容量可変なコンデンサとするものがある。このコンデンサを、静電アクチュエータとしたり、容量変化を検出するセンサとしたりできる。また、集積回路を含む基板上にマイクロ構造体を集積化したものがある。こうしたマイクロ構造体は、例えば、光を偏向する光偏向器として利用される。また、マイクロ構造体は、複数配列してアレイとして利用される。特に、反射面を有する可動部を含むマイクロ構造体が2次元に光を偏向するMEMSデバイスは、光スイッチ、空間的な強度変調器や位相変調器などとして用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO06−112387号公報
【特許文献2】特開2007−248731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、基板上に形成される可動部を含む微小構造体は、剛性が低く、意図しない変形が生じ易い。部材の製造時に発生する応力、温度変化による構成部材内部の応力、可動部の変位時の自重による慣性力、外部からの力などで変形し易かった。特に、例えば、可動部を可動に支持する弾性支持部の設計変位方向へのバネ定数を低くしながら、意図しない変形は防ぐといったことが容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明のマイクロ構造体は、基板と、前記基板に固定された固定支持部と、第1の可動部と、第2の可動部と、前記第1の可動部と前記固定支持部とを弾性的に連結する弾性支持部と、を有する。前記第2の可動部は前記第1の可動部に固定され、前記第1の可動部と前記第2の可動部は、前記弾性支持部により、前記固定支持部に対して一体的に変位可能に弾性支持される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のマイクロ構造体によれば、第2の可動部により、第1の可動部を含む構造体の剛性を調整することが可能になるので、可動部の設計変位を生じ易くしながら、意図しない変形は生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のマイクロ構造体の実施形態を説明する図。
【図2−1】本発明のマイクロ構造体の製造方法の実施形態を説明する図。
【図2−2】本発明のマイクロ構造体の製造方法の実施形態を説明する図。
【図3】本発明のマイクロ構造体の実施例及びマイクロ構造体アレイを説明する図。
【図4】本発明のマイクロ構造体の他の実施例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のマイクロ構造体は、第1の可動部と第2の可動部を含む2層構造の可動体が、固定支持部に対して、弾性支持部により、一体的に変位可能に弾性支持された構成を有する。第2の可動部は、剛性を補強するための手段として用いることができるので、第1の可動部を含む構造体の剛性が調整可能になり、設計変位を生じ易くしながら、意図しない変形は生じ難くできる。弾性支持部の構成や可動部の構成は、後述の実施形態や実施例で示すものの他に、種々あり得る。例えば、弾性支持部は、固定支持部に対して、1つのねじり軸の回りにねじり変位可能に第1の可動部を支持するねじりバネを含む形態を採り得る。これは、図1の形態において、弾性変形部5をねじりバネに置き換えて、このねじりバネのみで弾性支持部を構成する様な形態である。また、図1や図3の形態において、第1の可動部と固定支持部の配置を逆にして、矩形や円形等の形状の第1の可動部が、枠状の固定支持部内で変位可能に弾性支持される様な形態も採り得る。この構成では、第2の可動部の変位を妨げるものが無い構造に容易に出来て、この場合は、空隙を設けずに第2の可動部を第1の可動部に接して接着剤などで固定することもできる。
【0009】
以下、図を用いて本発明の実施形態及び実施例を説明する。
図1(a)〜(d)を用いて、本発明のマイクロ構造体の一実施形態を説明する。図1(a)は本実施形態のマイクロ構造体の垂直断面図、図1(b)、(c)、(d)は、夫々、図1(a)のA−A’線、B−B’線、C−C’線の高さでの水平断面図である。夫々、マイクロ構造体の第2の可動部3、第1の可動部6を含む構造体、固定電極8の形成された基板9の上面図でもある。特に、図1(a)の垂直断面の図1(b)、(c)、(d)での位置をD−D’線で示した。
【0010】
図1(a)に示す様に、本実施形態のマイクロ構造体は、基板9と第1及び第2の空隙12、13を有し、第1の可動部6を含む構造体と第2の可動部3を備える。第2の可動部3は、第1の可動部6を含む構造体の剛性を補強するもので、第1の可動部6より桁違いに大きい厚さを有する。図1(c)の様に、第1の可動部6を含む構造体は、更に、固定支持部4、弾性支持部である弾性撓み変形可能な弾性変形部5を有する。弾性変形部5は、固定支持部4とこれの外周に枠状に配置される第1の可動部6とを弾性的に連結して第1の可動部6を固定支持部4に対して可動に弾性支持する。基板9上の下引き層21と固定支持部4は、柱状の接続部10と接続受け部17の構造で互いに固定されている。また、第1の可動部6と第2の可動部3は、第2の空隙13を隔てて複数の結合部11で図示の通り固定され、一体的に変位する様になっている。図1(d)に示す様に、基板9は固定電極8を有する。
【0011】
本実施形態では、前記第1の可動部6と第2の可動部3は、後述する様に、SOI(Silicon on Insulator)基板のデバイス層とハンドル層から夫々形成される。従って、何れも単結晶シリコンである。第1の可動部6は、不純物のドーピングによって電気抵抗が低くなっている。下引き層21、接続部10、接続受け部17は何れも導電性の材料で形成されており、下引き層21に電圧を印加することで、第1の可動部6も同電位となる。よって、固定電極8と第1の空隙12を介して対向する第1の可動部6は、可動電極となり、静電容量可変なコンデンサを形成している。固定電極8と可動電極6間に電圧を印加すれば両者間に静電力が発生するので、この静電容量可変なコンデンサは、一体的な第1の可動部6と第2の可動部3を変位可能な静電アクチュエータとできる。また、基板9上の固定電極8の形成位置に、図示の様な平面電極ではなく、平面コイルを形成し、第1の可動部6の上記可動電極形成位置に、例えばニッケルなどの磁性体を配することもできる。この様な構成は、平面コイルに電流を通電することにより、コイルと磁性体の間に電磁力が作用する電磁アクチュエータとできる。磁性体と平面コイルの形成位置は逆にもでき、磁性体を基板9側に、平面コイルを第1の可動部6側に配置してもよい。
【0012】
また、本実施形態では、弾性変形部5は、固定支持部4に対して第1の可動部6を図1(c)の紙面法線方向に並行変位可能に弾性支持している。このとき、第1の可動部6に固定された第2の可動部3も第1の可動部6の変位に伴って変位可能であり、第2の空隙13の存在により、他の部分と機械的な干渉を生じないで変位できる。こうして、第1の可動部6と第2の可動部3は一体的に図1(a)のF方向に並行変位できる。
【0013】
本実施形態の効果について図を用いて詳細に説明する。
第一に、本実施形態のマイクロ構造体では、第1の可動部6を含む構造体が高剛性となり、設計した変位は生じ易いが、意図しない変形は低減することが可能となる。これは、空隙13を有する2層構造(第1の可動部6と剛性補強用の第2の可動部3の2層構造)で達成される。これにより、コンデンサの実効的な空隙12のばらつきや変化を低減することが可能となる。また、単結晶シリコンで構造体を構成すれば、ヤング率が大きく密度が小さいので、加速度が加わることで生じる変形を小さくできる。更に、弾性変形部5と同じ層に配される第1の可動部6を第2の可動部3が補強、支持するため、弾性変形部5のバネ定数に影響されずに、構造体の剛性を高くできる。
【0014】
この効果について更に説明する。マイクロ構造体は、弾性変形部5により、設計した方向に変位する。弾性変形部5のバネ定数を小さくすることで、設計した方向に変位が生じ易いマイクロ構造体とできる。バネ定数を小さくするためには、図1(c)に示す弾性変形部5の幅を小さくしたり、長さを長くしたり、第1の可動部6の厚さを薄くすることが考えられる。ここで、弾性変形部5の長さとは、固定支持部4と可動部6を結ぶ弾性変形部5の中心線の長さ、幅はその直角方向の寸法である。しかし、幅や長さのみでバネ定数を小さくするには、次の課題が存在する。幅を小さくする場合、小さな幅ほど加工精度が低減してしまう。そして、加工する厚さと幅の比(断面アスペクト比)が大きいほど、幅の厚さ方向断面に亘る加工精度が低減してしまう。これにより、バネ定数のばらつきが大きくなってしまうという課題がある。一方、弾性変形部5を長くすると、マイクロ構造体全体の面積が大きくなり、後述する様な製造方法で1枚のウエハから製造できる個数が低減してしまう。面積一定で、可動部6の領域を小さくしてもよいが、この場合、可動電極が小さくなり、コンデンサの容量変化が小さくなってしまう。これでは、静電アクチュエータとして用いた場合、駆動電圧が大きくなってしまう。また、電磁アクチュエータとして用いた場合は、平面コイルや磁性体の設置面積が小さくなり、駆動電流が大きくなってしまう。
【0015】
以上の様に、設計した方向に変位が生じ易いマイクロ構造体とするためには、弾性変形部5の幅、長さだけでなく、弾性支持部である弾性変形部5を薄くすることが効果的である。本実施形態のマイクロ構造体では、弾性変形部5を薄くしても、第2の空隙13を介して設けられた第2の可動部3により、弾性変形部5の変形を妨げずに、構造体全体の剛性を高く保つことができる。従って、設計した方向に変位が生じ易く、意図しない変形が生じ難い構成とできる。更に、第1の可動部6と弾性変形部5を同じ厚さとすることで、同一層の部材をエッチングして、このような構造体を形成することが可能となる。第1の可動部6と弾性変形部5は、一体的に作製されるため、マイクロ構造体の変形時に大きな変形応力が加わる第1の可動部6と弾性変形部5の接続部の強度を向上することが可能となる。そして、一回のエッチングで形成可能となるため製造工程が簡略化できる。
【0016】
駆動可能な微細な構造体の意図しない変形の主な要因は、駆動時の加速度による変形、構成材料の内部応力、外力の3つが考えられる。本実施形態では、これら3要因による何れの変形も低減ないし防止できる。まず、駆動時の加速度による変形について説明する。図1(a)の構造体の変位に伴って加速度が生じ、第1の可動部6と第2の可動部3は、自重により慣性力を受ける。慣性力で第1の可動部6が大きく変形してしまうと、第1の空隙12が一定値とならず分布を有することとなり、コンデンサの容量の誤差となる。これは、静電アクチュエータの場合、駆動電圧の誤差となる。更に変形が大きな場合は、可動電極が固定電極8へ着地するまで変位する所謂プルイン変位が、意図しない電圧で生じてしまう恐れがある。電磁アクチュエータの場合も、コイルと磁性体の距離が可動部6の変形により変化するため、駆動電流の誤差となってしまう。一方、慣性力は、自重が軽い部分ほど小さい。また、慣性力による変形は、剛性が高いほど小さい。従って、同じ形状でも、密度が小さくヤング率が高い材料で構成すれば、慣性力による変形が小さい。本実施形態のマイクロ構造体は、密度が小さくヤング率の大きい単結晶シリコンで構成したので、変位に伴う慣性力による変形を低減可能となる。
【0017】
次に、構成材料の内部応力による変形について説明する。一般的に、基板上に集積化される微小構造体は、構造体の形成部材の内部に残留した応力が構造体自体を大きく変形させることが知られている。特に、単一材料の薄膜構造体の厚み方向への応力の勾配や、多層の薄膜構造体の膜間での応力差により変形が生じる。本実施形態の構造体は、製造時に内部応力が殆ど残留しない単結晶シリコンで構成されているので、この様な応力による変形を低減できる。そして、第1及び第2の可動部の2層構成の何れの層も単結晶シリコンで構成したため、製造時の残留応力や温度変化に伴う伸びの差も殆ど発生しない。従って、温度変化などに起因する内部応力の発生が殆どなく、これによる変形も低減できる。また、第2の可動部3には、力を発生するための電極や磁石、コイル等のアクチュエータ機構を設ける必要がないので、異なる材料の積層構造とならず、残留応力や熱膨張係数差による変形を低減できる。また、力の発生に伴う発熱が生じないので、熱膨張係数差による変形を更に低減できる。
【0018】
最後に、外力による変形について説明する。マイクロ構造体が外部から力を受けると剛性の低い部分は大きく変形する。本実施形態の構造体では、剛性の高い第2の可動部3が、第1の可動部6の剛性を高く保っている。そのため、外力による可動部6の変形を低減できる。これにより、可動部6と基板9間で発生する力により、意図しない変形が生じるのが低減でき、変位を生じさせるための駆動電圧、駆動電流の誤差を低減できる。このとき、空隙13を有しているため、弾性変形部5を第2の可動部3の直下に配置しても、可動部を変位させられる。こうした配置では、構造体の面積を小さくできるため、高い集積率で構造体を配列でき、製造コストを低減することもできる。
【0019】
また、外部からの力として、製造工程時や使用時に異物が衝突、接触したりして、微細な構造を有し剛性が低い弾性変形部5などが破損してしまうことも考えられる。本実施形態では、上記の如く弾性変形部5を補強用の第2の可動部3の直下に配置でき、第2の可動部3が弾性変形部5を覆う構成であるため、弾性変形部5へ異物が衝突、接触したりして変形・破損するのを防止できる。また、第1及び第2の空隙12、13は、弾性変形部5の最大変位を規定し、これ以上弾性変形部5が変形しない構成となっている。つまり、第1の空隙12と第2の空隙13の何れかにより、弾性変形部5の破損前に接触する部分を作り、それと接触する位置以上変位しない構成となっている。図1(a)において、固定支持部4と第2の可動部3は、弾性変形部5が破損する前に接触するため、弾性変形部5の破損を低減できる。また、可動部6と基板9や結合部11と固定電極8をこの様な相互接触箇所として、破損を低減することもできる。特に、結合部11と固定電極8の場合、結合部11のみが電極8に接触するため、接触面積が小さくなり、接触した後の貼りつきを低減できる。
【0020】
第二に、本実施形態では、アクチュエータの発生力などを決定する第1の空隙12の製造ばらつきを小さくできる。これは、第1の可動部6の変形を低減することと、第1の可動部6を平滑な単結晶シリコン表面に形成することで達成可能となる。前述の通り、本実施形態のマイクロ構造体では、第1の可動部6の変形が生じにくい。そのため、静電アクチュエータの場合、可動電極6が湾曲して、コンデンサの実効的な空隙12が変化してしまうことを防げる。空隙の製造ばらつきや変化を低減できるので、空隙が小さいコンデンサを形成できる。つまり、静電アクチュエータの場合、平行平板型コンデンサの電極の表面粗さが大きいと、実効的な空隙が小さくなる。表面粗さが均質でない場合は、コンデンサの空隙のばらつきになってしまう。表面にこの様な凹凸が存在すると、凸部に電界が集中し易く、意図しない放電が生じる恐れもある。この点、本実施形態では、可動電極は、第1の可動部6の表面に形成される。この可動部6の表面は、後述する様に、SOI基板の単結晶シリコンのデバイス層の表面とでき、表面粗さの小さい均質な平滑面が得られる。そのため、実効的なコンデンサの空隙の製造ばらつきを低減でき、放電による短絡なども生じ難くできる。また、可動電極表面に絶縁層を形成する場合も、電極上の絶縁層の厚みばらつきが低減されるため、絶縁耐圧のばらつきを抑えることができる。また、電磁アクチュエータの場合でも、第1の可動部6に設置された磁性体や平面コイルの位置が湾曲により変化してしまうのを防げる。つまり、構造体全体の意図しない変形が生じ難いので、コイルや磁性体の残留応力や熱膨張係数との差で可動部が湾曲してコイルと磁性体の距離が変化してしまうのを防げる。よって、これらを近接させた電磁アクチュエータを構成できる。
【0021】
第三に、本実施形態は、変位の繰り返し安定性や長時間安定性が高い構造体とできる。これは、弾性変形部5を単結晶シリコンで構成することにより達成可能となる。単結晶シリコンは、広い応力範囲で理想的に線形な弾性特性を有する。また、繰り返し変形を受けて硬化する現象や、一度受けた変形応力が比較的長い時間をかけて緩和するといった多くの金属材料で見られる現象を示さない。そのため、弾性変形部5を単結晶シリコンで構成して、上記安定性を向上することができる。更に、固定支持部4、弾性変形部5、第1の可動部6を単一の層から一体的に形成することにより、これらの間の接続部の固定強度を高め、固定強度の製造ばらつきを低減できるため、駆動電圧のばらつきを低減できる。また、第1の可動部6を共振駆動する場合、共振のQ値を高くできる。
【0022】
第四に、本実施形態は、第1の可動部6と第2の可動部3の機械的干渉を低減することができる。これは、これらの可動部が互いに固定され、同じ方向へ一体的に変位する構造体とすることで達成できる。図1に示す様に、結合部11により、アクチュエータの発生力を直接受ける第1の可動部6と第2の可動部3は固定されている。従って、大きな変位が生じても、夫々の変位にばらつきが生じることは殆ど無く、機械的な干渉が生じる恐れを低減できる。第2の空隙13が小さくても機械的な干渉を低減でき、作製容易となる。
【0023】
第五に、本実施形態のマイクロ構造体によれば、第1の可動部6が、1つの固定支持部4で固定されることにより、弾性支持部である弾性変形部5が基板から応力を受けない構成とできる。つまり、基板9と第1の可動部との熱膨張係数の差で伸びの差が生じたり、基板が他の部材に固定されたときに変形を受けたりして、弾性変形部が伸縮されることを防ぐことができる。そのため、弾性支持部のバネ定数などの変化要因のうち、基板から弾性支持部が応力を受けることによる要因をほぼ取り除けるため、バネ定数などの変化を低減できる。従って、大規模なアレイを構成した場合もマイクロ構造体間でこの応力によりバネ定数などが変化するのを低減できる。そのため、バネ定数などのばらつきや経時変化を小さくすることが可能となる。特に、アレイの面積が大きい場合は、アレイ内の温度や電極基板の変形分布が生じ易く、この効果が大きい。こうして、各々のマイクロ構造体の変位角精度が高く、且つ、その角度保持継続時間を長くすることができる。また、バネ定数などの変化が小さいので、大規模アレイを駆動する駆動回路と駆動方法を簡単にできる。これにより、基板9が駆動回路を有する場合、アレイの各々の電極を制御するための配線を減らすことが可能となる。
【0024】
(実施形態2)
次に、本発明のマイクロ構造体の製造方法に係る実施形態2を図2−1(a)から(d)と図2−2(e)、(f)を用いて説明する。図は、図1(a)の断面位置においてマイクロ構造体の各製造工程の様子を示す。最初に、図2−1(a)に示す様に、SOI基板を用意する。SOI基板は、第1の層25、絶縁層16、第2の層26を有する。第1の層25、第2の層26は単結晶シリコンである。以下の製造工程で本発明のマイクロ構造体を形成すれば、第1の層25は、第2の可動部3の形成される部分に相当し、第2の層26は、第1の可動部6等を含む構造体の形成される部分に相当することとなる。本実施形態では、第2の層26の厚さは1.5μm、第1の層25の厚さは525μmである。ただし、本発明のマイクロ構造体はこれらの寸法に限定されず、別の寸法でも製造可能である。
【0025】
次に、図2−1(b)に示す様に、第2の層26に結合部11を形成する。まず、第2の層26に、フォトリソグラフとシリコンのドライエッチングにより貫通孔をパターニングする。続いて、その下の絶縁層16にも貫通孔をパターニングする。更に、結合部11となる材料を貫通孔内に成膜する。本実施形態では、シリコン窒化膜を低圧化学気相合成法(LPCVD)により成膜する。成膜後、図示の様な結合部11の形状となる様に、フォトリソグラフとドライエッチングによりパターニングする。結合部11の材料は、上記シリコン窒化膜に限定されず、後の犠牲層16の除去時にエッチングされない材料、例えば、タングステン、多結晶シリコン等を用いてもよい。続いて、図2−1(c)に示す様に、弾性支持部である弾性変形部5を第2の層26に形成する。まず、接続受け部17となる材料を成膜した後、パターニングする。本実施形態では、レジストパターンを形成した後、クロム、パラジウム、金を連続に成膜し、リフトオフプロセスを行うことで形成する。本実施形態では、後の接合工程でアライメントを行うための基準マーク(不図示)も同時に形成される。その後、弾性変形部5の形状となる様に、フォトリソグラフとシリコンのドライエッチングを行い、第2の層26をパターニングする。本実施形態では、固定支持部4がここで同時に作製される。本実施形態では、固定支持部4の一辺は40μm、弾性変形部5の幅は3μmである。この後、第2の層26側を保護し、第1の層25を化学機械研磨(CMP)することによって厚さ100μmへ薄化する。
【0026】
次に、図2−1(d)に示す様に、基板9を準備し、前述のSOI基板と接合するためのアライメントを行う。本実施形態では、クロム、パラジウム、金の層構成の固定電極8、下引き層21をシリコンウエハに成膜しパターニングした基板9を準備する。このとき、電極8の形成と同時に、後の接合工程や分割工程で夫々アライメントを行う基準マーク(不図示)が形成される。その後、下引き層21上に接続部10を形成する。本実施形態では、フォトリソグラフと金の電気メッキにより、図示の様な突起状のバンプ10を形成する。このバンプの形状は四角柱で、底面の1辺が19μm、高さが15μmである。次に、SOI基板の第2の層26に形成された固定支持部4及び接続受け部17と、基板9上の柱状の接続部10が対向する様に、ウエハ同士を向き合わせる。そして、第2の層26上の基準マークと基板9上の接合工程用の基準マークを用いて、接続部10と接続受け部17の中心が夫々一致する様にアライメントを行う。なお、接続部10と接続受け部17との形成位置は逆にすることもできる。すなわち、第2の層26上の所定の位置に接続受け部と接続部の一方を形成し、第2の層26の前記一方を形成した位置に対応する基板9の位置に接続受け部と接続部の他方をすればよい。
【0027】
続いて、接続部10と接続受け部17を接合する。本実施形態では、前述のアライメントが終了した後、接続部10と接続受け部17の表面をアルゴンプラズマに晒し、洗浄・活性化を行う。この工程により、最表面の不純物が除去され、接合力を得るのに必要な清浄な面を形成することができる。その後、接続部10と接続受け部17を常温で圧着する。ここで、常温とは、およそ室温付近からおよそ100℃以下の温度を指す。この圧着により、接続部10は接合前の高さの半分程度に潰される。本実施形態では、接合後の高さが7μmである。圧着後、接続部10と接続受け部17は強固に接合される。この接合により、第1の空隙12が固定電極8と第2の層26の間に形成される。このとき、接続受け部17またそれが形成されている固定支持部4のサイズは、接続部10の位置精度(つまり接合のアライメント精度)に応じて大きめに形成されている。従って、アライメントが完全でなくても、接続部10と接続受け部17は接合することができる。
【0028】
次に、図2−2(e)に示す様に、複数のマイクロ構造体へ分割を行う。第1の層25上にクロムを成膜し、フォトリソグラフとエッチングによりハードマスクを形成する(不図示)。このとき、先の工程で基板9に形成したマイクロ構造体分割用の基準マークに対してアライメントされたハードマスクを形成する。その後、このハードマスクを用いて、第1の層25にシリコンの深堀ドライエッチング(DRIE)を行い、分割溝22を形成する。続いて、絶縁層16にもドライエッチングを行い、分割溝22を形成する。更に、第2の層26にもドライエッチングを行い、分割溝22を形成する。その後、上記ハードマスクを除去する。この工程により、第2の可動部3と第1の可動部6が形成される。この分割溝22は、次の絶縁層16の除去工程のための液体や気体を導入する穴となっている。
【0029】
最後に、図2−2(f)に示す様に、第2の空隙13を形成する。まず、絶縁層16をエッチングで除去する。その後、乾燥を行い、第2の空隙13を形成する。本実施形態では、バッファードフッ酸を用いて、シリコン酸化膜である絶縁層16を除去した後、二酸化炭素の超臨界乾燥により乾燥を行う。
【0030】
以上の様な本実施形態の製造方法は、次の様な効果を有する。
本実施形態の製造方法によれば、空隙13で互いに離間された単結晶シリコンの2層構造を1回の接合工程で形成できる。2層を順次接合する場合と比べ、接合不良が低減され、歩留まりを向上することが可能となる。また、工程数も少ないため低コストで製造可能となり、接合のアライメントが1回となるため高精度に製造可能となる。そして、SOI基板の第1の層25、第2の層26を夫々マイクロ構造体の第2の可動部、第1の可動部とすることで、残留応力がなく、表面が平滑で、結晶欠陥の少ない単結晶シリコン層を構造体として用いられる。また、SOI基板の第2の層26は、厚みや導電性、結晶欠陥、平坦性が管理されており、この部分に弾性変形部5を形成することで、バネ定数や破損確率のばらつきを低減できる。特に、数μm〜サブμm程度の薄い第2の層26のSOI基板を用いれば、低いバネ定数の弾性変形部5を少ないばらつきで作製可能となる。また、第1の層25に第2の可動部3を形成することで、数十μm〜数百μmの厚い構造体を形成可能となり、高い剛性を有する第2の可動部3を形成できる。この様に、SOI基板の第1の層25、第2の層26の異なる厚みを利用することで、マイクロ構造体を少ない接合工程で精度良く作製することが可能となる。
【0031】
また、結合部11を第2の層26側から形成することにより、結合部11を歩留まり良く形成できる。上述の通り、第2の層26の厚さは第1の層25より薄いため、この薄い厚さ分の段差を覆う様にして、途切れなく結合部11の材料を成膜可能となる。また、2つの基板の接合前に弾性変形部5を形成することにより、ハンドル層である第1の層25の直下に位置していても精度良く作製可能となる。また、接合の面積は、突起状の接続部10の先端面のみなので、接合面積が小さく、接合工程での塵・ゴミによる接合不良が生じ難い。本実施形態の様に、接続部10を押し潰して圧着することにより、潰す寸法と同程度の塵があっても乗り越えて接合を行うことが可能となる。そのため、益々、接合不良を低減できる。更に、金の接続部10と金が最表面である接続受け部17とをプラズマで洗浄、活性化し、常温で圧着することにより、大きな昇温がなく安定な接合を行える。そのため、第1の基板(SOI基板)と第2の基板(基板9)の温度差が殆どなく、伸びの差も生じていないため、2つの基板に形成された構造を高精度に位置決めして接続可能となる。つまり、基板9とSOI基板が、夫々、熱による変形を生じることなく、アライメント精度良く接合できる。また、第1の基板と第2の基板の接合後も、反りが殆ど生じない。また、はんだやペーストなど流動性接着剤を使用せずに、高い接合強度と所定の間隔を保って電気的な接続を得ながら、構造体を接続することが可能となる。そのため、固定位置や固定領域を高精度に設定できる。複数のマイクロ構造体を1つのウエハ上に作製する場合でも、接合不良が発生する率を低減することが可能となる。
【0032】
また、接合後にマイクロ構造体に分割溝22を形成することにより、ハードマスクを基板9の基準マークに対してアライメント可能となる。そのため、固定電極8に対する第2の可動部3、第1の可動部6の位置のアライメントを、接合工程のアライメント精度の影響を受けずに実施可能となる。従って、電極8に対する第2の可動部3、第1の可動部6の位置精度を良くできる。また、分割溝22の形成により、SOI基板の剛性が低下するが、全製造工程の後半とすることで歩留まりを向上できる。特に、最も基板に応力が掛かる接合工程ではSOI基板が高剛性に保たれているため、接合工程でのSOI基板の変形を低減できる。そのため、マイクロ構造体を高精度に製造可能となる。特に、第1の基板であるSOI基板と第2の基板9の間隔12を高精度に製造可能となる。
【0033】
また、最終工程で、第1の層25と第2の層26の間の絶縁層16を除去することにより、全工程中において、絶縁層16で弾性変形部5を支持できる。そのため、設計変位方向に変形容易なため製造工程中で破損する恐れのある弾性変形部5の歩留まりを向上することができる。
【0034】
ところで、本実施形態の接合工程とは異なって、以下に示す様な接合工程で本発明のマイクロ構造体を製造することもできる。すなわち、図2−1(d)で説明した接続部10と接続受け部17の接合工程では、接続部10をはんだバンプとし、接続受け部17を金とできる。接合工程では、昇温によりはんだを溶融し、常温に戻して固化して接合を行うことができる。また、接続部10を、最表面層に銀―スズを有する銅バンプとし、接続受け部17を金とすることもできる。この場合、接合工程では、昇温・加圧を行って接合を行うことができる。
【0035】
また、第1の空隙12を埋めるスペーサ層を形成し、このスペーサ層によって第1の空隙12の寸法を決定する様な接合工程とすることもできる。このとき、スペーサ層は、基板9と第2の層26の何れの側にも形成できる。例えば、図2−1(c)の工程終了後に、ポリイミド膜を塗布・成膜する。次に、化学機械研磨によりポリイミド膜の表面を平坦化した後、接続受け部17が露出する様に、ポリイミド膜にドライエッチングで貫通孔を開口する。これをスペーサ層として、ポリイミド膜の厚みによって、図2−1(d)の接合工程で形成される第1の空隙12の寸法精度を向上することできる。
【0036】
(実施例1)
以下、より具体的な実施例を説明する。
図3(a)〜(d)を用いて本発明の実施例1を説明する。図3において、(a)は、実施例1のマイクロ構造体の第1の可動部6を含む構造体の上面図、(b)は基板9上の固定電極8の上面図である。また、(c)はマイクロ構造体アレイ24の側断面図、(d)はマイクロ構造体18のアレイ24の上面図である。尚、前述の実施形態と同じ機能を有する個所には、同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0037】
本実施例では、図3(a)に示す様に、中央に位置する1つの固定支持部4に対して外周を取り囲む様に形成された第1の可動部6を、2組のねじり変位をする弾性変形部5により弾性支持している。2組の弾性変形部5は、固定支持部4の外周を取り囲む様に形成され弾性変形可能な枠状の連結部23を介して、接続される。2組の弾性変形部5と枠状の連結部23からなる弾性支持部により、A―A線、B−B線の様に直交する2つの軸回りに、第1の可動部6とこれに固定された第2の可動部3は2次元にねじり変位可能である。本実施形態では、2組のねじりバネが、図示の通り、蛇行したミアンダ構造となっている。
【0038】
図3(b)に示す様に、固定電極8は4枚設けられ、夫々扇形状を有している。中央の下引き層21には、電気メッキにより、接続部を形成するための電極取り出し配線が形成されている。更に、本実施例では、図3(c)の様に、1つの基板9に複数のマイクロ構造体がアレイ状に形成され、マイクロ構造体アレイ24を構成している。基板9は、各々のマイクロ構造体18に対応した固定電極8を有する。基板9は、半導体集積回路で構成された駆動回路を予め有しており、各々のマイクロ構造体18の電極へ印加する電圧を制御することが可能である。これにより、マイクロ構造体の第1の空隙12により形成されたコンデンサを静電アクチュエータとして、第1の可動部6と結合部11で連結された第2の可動部3を2次元にねじり変位することができる。図3(d)に示す様に、第2の可動部3の最表面には、反射率の高いアルミ膜の反射面20が成膜されて、各マイクロ構造体は光偏向器(ミラーピクセル)となっている。
【0039】
マイクロ構造体18の1辺Rは64μm、第2の可動部3の厚さ2(図1(a)参照)は50μm、第1の可動部6の厚さ1(図1(a)参照)は1.6μmである。柱状の接続部10の直径は10μm、固定支持部4の直径は15μm、連結部23の幅は3μmとなっている。更に、隣接するミラーピクセル間隔は5μmである。また、固定支持部4、弾性変形部5、連結部23を離間する間隔は、0.5μmである。弾性変形部5の蛇行したミアンダ構造のねじりバネは、折り返される直線部分のねじり軸方向に直角な幅が0.5μm、長さが5μmである。第1の可動部6と固定電極8の間には、4μmの空隙12が形成されている。
【0040】
また、マイクロ構造体アレイ(ミラーアレイ)24は、縦横夫々32個配列され、1024個のアレイである(図3(c)は、マイクロ構造体を明確に描くため個数を省略して描いてある)。4枚の電極8に最大40Vまでの電圧を印加することで、各々の第1の可動部6と第2の可動部3を独立に最大±1度の変位角で2次元偏向することができる。マイクロ構造体アレイ24に光を照射して、空間的な光強度変調器や位相変調器とできる。この様なミラーアレイにより、マスクレス露光などを行うことができる。本実施例の各マイクロ構造体でも、上記実施形態と同じ効果が得られる。特に、第2の可動部3に形成された反射面20を有する光偏向器アレイとしては、以下の様な効果を有する。
【0041】
意図しない変形を低減できるため、非常に平坦な反射面となり、反射光学特性が良好な光学デバイスとできる。そして、第2の可動部3が例えば厚さ50μmであり、剛性が高いため、反射面として、アルミ膜ではなく誘電体多層膜構造を用いても、平坦な反射面を形成できる。これは、誘電体多層膜の応力により変形が生じても、剛性が高いため、変形量を低減できるためである。従って、反射率を高くすることが可能となる。また、高出力の光や、波長の短いエキシマレーザなどの紫外線による反射面の劣化を防ぐための保護膜構造を形成しても、平坦な反射面を得ることができる。
【0042】
また、図3(d)に示す様に、第2の可動部3の直下に、固定支持部4、弾性変形部5、第1の可動部6、電極9が形成されているため、光が照射される側からは、これらの構造は隠れている。そのため、光照射によって損傷を受けて、これらの構造が劣化したり破損したりするのを防ぐことができる。また、これらの構造の光吸収による昇温を低減でき、高出力の光を高い信頼性で安定に変調する光変調器などとすることができる。
【0043】
更に、第1の可動部6上の第2の可動部3に反射面が形成されるので、構造体全体に占める反射面積の割合が大きく、反射効率の高い構造体とできる。また、剛性が高いため、反射面の材料や膜構成により応力が生じても、湾曲の少ない反射面を構成できる。そのため、前述した様に、マイクロメータオーダ等の微小な光学デバイスでありながら、光の照射に対する保護構成や、誘電体多層膜などを利用することが可能となる。従って、反射率が高く、反射率の劣化が少ない反射面構成が可能となる。また、弾性支持部の変位の安定性が高いので、反射面変位の保持の安定性を向上できる。これにより、一定方向に光を偏向する動作が可能となる。また、反射面変位の再現性が高いため、高精度に光を偏向・変調することが可能となる。特に、複数のマイクロ構造体をアレイ状に配置した場合でも、アレイ内での反射面変位のばらつきを低減できる。また、使用期間中にマイクロ構造体の電圧・変位特性が変化するのを低減できる。更に、構造体の剛性が高いので、アクチュエータの発生力による反射面の意図しない変形を低減できる。
【0044】
(実施例2)
図4(a)〜(d)を用いて本発明の実施例2を説明する。図4(a)、(c)は、夫々、本実施例とその変形例のマイクロ構造体の第1の可動部6を含む構造体の上面図、図4(b)、(d)は、夫々、本実施例とその変形例の基板9の上面図である。尚、前述の実施形態、実施例1と同じ機能を有する個所には、同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0045】
本実施例は、実施例1と異なり、第1の可動部6と基板9がコイル14と磁性体15を有しており、電磁力で第1の可動部6を駆動することができる。図4(a)、(b)の例では、第1の可動部6が磁性体15を有し、基板9がコイル14を有している。一方、図4(c)、(d)の変形例では、第1の可動部6がコイル14を有し、基板9が磁性体15を有している。コイル14及びこれへの配線は、これらが形成される部分に対して絶縁されている。コイル14に通電することにより、磁性体15との間に電磁力が発生し、第1の可動部6を駆動できる。図4(c)では、コイル14の両端に、引き出し電極19が第1の可動部6上に形成されている。この2つの引き出し電極19上に、夫々、2つの接続受け部17が形成され、図示の通り2箇所の接続層10と2箇所の下引き層21で基板9と接続されている。
【0046】
また、図4(a)、(c)の様に、弾性支持部5の形状は、図1の実施形態と同様である。本実施例では、図1のマイクロ構造体にコイル14と磁性体15を配した構成となっている。更に、本実施例のマイクロ構造体も、実施例1と同様に、光を反射する反射面を第2の可動部3に有しており、電磁力により反射面を図1(a)のF方向に変位することができる。磁性体15は、本実施例では、ニッケルを電気メッキすることで形成した。コイル14は、銅で同様に電気メッキを用いて形成した。本実施例のマイクロ構造体は、磁性体15とコイル14を配して電磁力を発生させることにより、ストロークが大きく、発生力が大きいアクチュエータとできる。反射面の変位の誤差に、周囲の絶縁物の帯電の影響がないため、ミラーを高精度に駆動することができる。その他の点は、実施例1と同様である。
【符号の説明】
【0047】
3…第2の可動部、4…固定支持部、5…弾性変形部(弾性支持部、ねじりバネ)、6…第1の可動部、9…基板、10…接続部、11…結合部、16…絶縁層、17…接続受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板に固定された固定支持部と、
第1の可動部と、
前記第1の可動部の剛性を補強する第2の可動部と、
前記第1の可動部と前記固定支持部とを弾性的に連結する弾性支持部と、を有し、
前記第2の可動部は、前記弾性支持部と前記固定支持部を覆う様に、空隙を隔てて前記第1の可動部に固定され、
前記第1の可動部と前記第2の可動部は、前記弾性支持部により、前記固定支持部に対して一体的に変位可能に弾性支持されることを特徴とするマイクロ構造体。
【請求項2】
前記第1の可動部は、前記固定支持部の外周に枠状に配置され、
前記第1の可動部と前記第2の可動部は、前記弾性支持部により、1つの前記固定支持部に対して一体的に変位可能に弾性支持されることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ構造体。
【請求項3】
前記弾性支持部は、前記固定支持部の外周に枠状に配置された弾性変形可能な連結部と第1のねじりバネと第2のねじりバネを含み、
前記第1のねじりバネは、前記固定支持部に対して、第1のねじり軸の回りにねじり変位可能に前記連結部を支持し、
前記第2のねじりバネは、前記連結部に対して、第2のねじり軸の回りにねじり変位可能に前記第1の可動部を支持することを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ構造体。
【請求項4】
前記弾性支持部は、弾性撓み変形により前記第1の可動部を所定の方向に並行変位可能に支持する弾性変形可能な弾性変形部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロ構造体。
【請求項5】
前記基板と対向する前記第1の可動部の面と前記基板との間に静電力または電磁力を作用させることで、前記第1の可動部と前記第2の可動部を一体的に駆動することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のマイクロ構造体。
【請求項6】
前記第1の可動部の面の法線方向を厚み方向として、前記第2の可動部の厚さは、前記第1の可動部の厚さより大きいことを特徴とする請求項5に記載のマイクロ構造体。
【請求項7】
前記第1の可動部と前記弾性支持部は同一の厚さを有することを特徴とする請求項7に記載のマイクロ構造体。
【請求項8】
前記第2の可動部は、光を反射する反射面を有し、
前記反射面を駆動することを特徴とする請求項5から7の何れか1項に記載のマイクロ構造体。
【請求項9】
前記前記第1の可動部と前記第2の可動部は単結晶シリコンで形成されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のマイクロ構造体。
【請求項10】
2層構造の可動部が一体的に変位可能に弾性支持されたマイクロ構造体の製造方法であって、
単結晶シリコンからなる第1の層の上に絶縁層を介して単結晶シリコンからなる第2の層が配された第1の基板を用意する工程と、
前記第2の層から前記絶縁層を貫通して前記第1の層に達する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔内に結合部を形成することで前記第2の層と前記第1の層とを結合する工程と、
前記第2の層をパターニングする工程と、
前記第2の層の上の所定の位置に接続受け部と接続部の一方を形成する工程と、
前記第2の層の前記接続受け部と接続部の一方を形成した位置に対応する位置に接続受け部と接続部の他方を有する第2の基板を用意する工程と、
前記第2の層と前記第1の層とを結合する工程の後に、前記第1の基板の前記第2の層の前記一方を形成した面と前記第2の基板の前記他方を有する面とを対向させて前記接続受け部と前記接続部とを接続することで前記第1の基板と前記第2の基板とを所定の間隔を隔てて接続する工程と、
前記接続受け部と前記接続部とを接続する工程の後に、前記絶縁層を除去する工程と、
を含むことを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記接続受け部と前記接続部とを接続する工程と前記絶縁層を除去する工程との間に、前記第1の基板をエッチングし、前記絶縁層を除去する液体または気体を導入する穴を形成する工程を含むことを特徴とする請求項10に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項12】
前記接続部は、金属の突起であり、
前記接続受け部と前記接続部とを接続する工程は、前記接続受け部と前記接続部の接触面を圧着する工程を含むことを特徴とする請求項10または11に記載のマイクロ構造体の製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191592(P2011−191592A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58726(P2010−58726)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】