説明

マスク、レーザ結晶化装置、レーザ結晶化方法、結晶材、および半導体素子

【課題】従来よりも大きな角型結晶を得る。
【解決手段】マスクには、レーザ光の照射によって略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が形成するように種結晶形成用マスク要素群のスリットが配置され、種結晶中の特定位置を原点とするX−Y直交座標系について、kを1から4の自然数とし、第k象限におけるX軸正方向をkX+、X軸負方向をkX−、Y軸正方向をkY+、Y軸負方向をkY−とすると、種結晶形成用マスク要素群に続く種結晶伸張用マスク要素群を介して照射されるレーザ光の照射タイミングの制御と当該マスクの相対的な移動の制御とにより、略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が、1X+、1Y+、2X−、2Y+、3X−、3Y−、4X+、および4Y−の各方向に伸張するように、種結晶伸張用マスク要素群のスリットが配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーザ光の照射により結晶を形成するレーザ結晶化装置、この装置に用いられるマスク、レーザ結晶化方法、結晶材、および半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの製造技術として、ガラス基板上にシリコン薄膜を生成したシリコン薄膜を用いて半導体デバイスを製造するSOG(System on Glass)技術が注目されている。また、シリコン薄膜を生成する技術として、ラテラル成長法に分類されるレーザ結晶化技術が知られている。このレーザ結晶化技術を用いると、結晶の成長方向に方位が揃った結晶長の長い結晶が得られるため、当該レーザ結晶化技術は特に注目を集めている。
【0003】
また、上記ラテラル成長法の1つとして、マスクのスリットを通過したパルスレーザ光をシリコン薄膜に対して照射することによって、レーザ光の照射領域におけるシリコン薄膜を厚さ方向の全域に亘って溶融し、その後に結晶成長させる成長工程を繰り返して結晶化を行うSLS(Sequential Lateral Solidification)方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、当該SLS方法の一様式が開示されている。具体的には、特許文献1では、微細幅のパルスレーザ光をシリコン薄膜に照射することによって、シリコン薄膜をパルスレーザ光の照射領域の厚さ方向の全域に亘って溶融させ、その後、凝固させることによって結晶化を行っている。
【0005】
図96は、特許文献1に記載されている形態のマスク101を示した図である。マスク101には、横長の長尺状スリット(開口部)と遮光部とからなるスリットパターンが形成された第1〜第nのマスク要素(マスク要素の長さ:M)が、第1マス要素ク101−1、第2マスク要素101−2、…、第nマスク要素101−n(同図の例では、n=4)の順に設けられている。この第1〜第nマスク要素の各々を介したレーザ光の照射によって、被照射物80上に、それぞれ、第1〜第nの照射領域が形成される。
【0006】
また、第1〜第nの各マスク要素においては、同図に示すとおり、スリット101−1a、スリット101−2a、…、スリット101−4aといったように階段状に各スリットが配置されている(以下、スリット101−1aからスリット101−4aをスリットグループ101aと称する)。また、マスク101においては、同図に示すとおり、スリット101−1b、スリット101−2b、…、スリット101−4bといったように階段状にスリットが配置されている(以下、スリット101−1bからスリット101−4bをスリットグループ101bと称する)。
【0007】
さらに、このような階段状のスリットグループが、101a、101bといった順に、上下方向(同図の矢印方向と垂直な方向)に整列されている。また、同図の矢印方向へのマスク101の相対的な移動によって、スリットグループ101a中の最上部(階段の最後部)のスリット101−4aによるレーザ照射領域が、その上部に位置するスリットグループ101b中の最下部(階段の最下部)のスリット101−1bにより形成されていた照射領域と一部重複するように、スリットグループ101aとスリットグループ101bとが形成されている。
【0008】
図97は、マスク101を用いて結晶を成長させる過程における結晶の成長状態を示した図である。
【0009】
ここで、図97(a)は、上記マスク101によって、基板80上(詳しくはシリコン薄膜上)に形成されるレーザ光の照射パターンを示した図である。このような照射パターンを有するレーザ光の照射(第1照射)により、図97(b)に示すとおり、スリットを介してレーザ光が照射される各位置において結晶成長が起こる。この結晶成長の際しては、マスクの相対移動の向きと垂直となる方向(Y軸方向)におけるスリットの端部(図97(a)の上端および下端)に対応する領域から、スリットの中央部に対応する領域に向けて結晶成長が起こる。なお、図97(b)は、図97(a)に示した照射パターンを有するレーザ光によって、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【0010】
図98は、図97に示した基板80上の第101領域において、成長する結晶の状態を、図97に対応付けて示した図である。
【0011】
ここで、図98(a)は、上記第1照射によって、第101領域に形成される結晶を示した図である。同図に示すとおり、スリット101−1aに対応する領域に結晶101−Aが形成され、スリット101−1bに対応する領域に結晶101−Bが形成される。なお、図中の結晶101−Aおよび結晶101B内の縦線(マスクの相対移動の向きに垂直な線)は、結晶の成長方向に沿って生じる結晶粒界を模式的に示したものである。また、スリットの上記両端部に対応する位置から各々中央に向けて成長した結晶同士は、スリットの中央に対応する位置で衝突し、その結果、同図に示すとおり、2本の横線として示した、突起部であるリッジ101−ARおよびリッジ101−BRが形成される。
【0012】
図97(c)は、マスク101を基板80に対して図97(a)の矢印の向きにマスク要素の長さMだけ相対的に移動させた後、レーザ光を照射(第2照射)した場合に、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【0013】
このような第2照射によって、上記第1照射で形成された結晶101−Aと一部が重なる領域と、結晶101−Bと一部が重なる領域とに対して、レーザ光の照射が行われる。その結果、結晶101−Aのリッジ101−ARと、結晶101−Bのリッジ101−BRとを消し去りながら、結晶101−AについてY方向の結晶成長(引継ぎ成長)と、結晶101−BについてY方向の結晶成長が起こる。このため、図98(b)に示すように結晶102−Aと結晶102−Bとが形成される。
【0014】
以後、同様の移動と照射との動作を繰り返すことにより、図97(d)、図97(e)、図98(c)、および図98(d)に示すとおり、スリットグループ101aによるレーザ照射領域がY方向に順次重なるとともに、スリットグループ101bによるレーザ照射領域がY軸方向に順次重なる。その結果、第1照射により形成された結晶101−Aおよび結晶101−Bを種結晶として、図98(d)に示すとおり、Y軸方向に順次引継ぎ成長した最終結晶104−Aと最終結晶104−Bとが形成される。
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載のSLS法では、上述したスリットの移動とレーザ光の照射とを繰り返すことにより、当該移動の向きと垂直の方向が長手方向となる細長い結晶が形成される。このため、このような結晶を用いてTFT(Thin Film Transistor)を作製した場合、TFTの電流が流れる方向と結晶の長手方向とがなす角度によって、TFT特性は大幅に異なることになる。具体的には、TFTの電流が流れる方向と成長結晶の長手方向とが平行であるとき、TFT特性は最も良好となるのに対し、TFTの電流が流れる方向と成長結晶の長手方向とが垂直であるとき、TFT特性は最も悪くなる。このように、SLS法により結晶化した場合、結晶の異方性に起因して、均一なTFT特性を得ることができない。
【0016】
これに対し、特許文献2には、特許文献1とは異なるスリットが形成されたマスクを用いたレーザ結晶化技術が開示されている。この特許文献2には、異なるスリットが形成されたマスクを用いることにより、結晶の短手方向にも結晶成長した角型結晶の形成が可能になり、その結果、上記異方性を改善できることが記載されている。
【0017】
図99は、特許文献2に記載されている形態のマスク201を示した図である。マスク201には、長尺状スリット(開口部)と遮光部とからなるスリットパターンが形成された第1〜第4のマスク要素(マスク要素の長さ:M)が、第1マスク要素201−1、第2マスク要素201−2、第3マスク要素201−3、第4マスク要素201−4の順に設けられている。この第1〜第4マスク要素の各スリットを介したレーザ光の照射によって、基板80上(詳しくはシリコン薄膜上)に、それぞれ、第1〜第4の照射領域が形成される。
【0018】
また、マスク201においては、同図に示すとおり、横長(マスクの相対的な移動の向きが長手)のスリット201−1aおよび横長のスリット201−3a(スリットグループh−201aと称する)と、横長のスリット201−1bおよび横長のスリット201−3b(スリットグループh−201bと称する)と、縦長(マスクの相対的な移動の向きが短手)のスリット201−2aおよび縦長のスリット201−4a(スリットグループv−201aと称する)と、縦長のスリット201−2bおよび縦長のスリット201−4b(スリットグループv−201aと称する)とが配置されている。
【0019】
さらに、横長のスリットグループが、h−201a、h−201bといった順に、上下方向(同図の矢印方向と垂直な方向)に整列され、縦長のスリットグループが、v−201a、v−201bといった順に、左右方向(同図の矢印方向)に整列されている。
【0020】
また、マスク201を同図の矢印方向へ2Mだけ相対移動することによって、第3マスク要素201−3のスリット201−3aによるレーザ照射領域が、第1マスク要素201−1のスリット201−1aおよびスリット201−1bによるレーザ照射領域の両方と一部が重畳するように配置されている。さらに、マスク201を同図の矢印の向きへMだけ相対移動することによって、第4マスク要素201−4のスリット201−4aによるレーザ照射領域が、第2マスク要素201−2のスリット201−2aおよびスリット201−2bによるレーザ照射領域の両方と一部が重畳するように配置されている。
【0021】
図100は、マスク201を用いて結晶を成長させる過程における結晶の成長状態を示した図である。
【0022】
ここで、図100(a)は、上記マスク201によって、基板80上(詳しくはシリコン薄膜上)に形成されるレーザ光の照射パターンを示した図である。このような照射パターンを有するレーザ光の照射(第1照射)により、図100(b)に示すとおり、スリットを介してレーザ光が照射される各位置において結晶成長が起こる。この結晶成長の際しては、マスクの相対移動の向きと垂直となる方向(Y軸方向)におけるスリットの端部(図100(a)の上端および下端)に対応する領域から、スリットの中央部に対応する領域に向けて結晶成長が起こる。なお、図100(b)は、図100(a)に示した照射パターンを有するレーザ光によって、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【0023】
図101は、図100に示した基板80上の第201領域において、成長する結晶の状態を、図100に対応付けて示した図である。
【0024】
ここで、図101(a)は、上記第1照射によって、第201領域に形成される結晶を示した図である。同図に示すとおり、スリット201−1aに対応する領域に結晶201−Aが形成され、スリット201−1bに対応する領域に結晶201−Bが形成される。なお、図中の結晶201−Aおよび結晶201B内の縦線(マスクの相対移動の向きに垂直な線)は、結晶の成長方向に沿って生じる結晶粒界を模式的に示したものである。また、スリットの上記両端部に対応する位置から各々中央に向けて成長した結晶同士は、スリットの中央に対応する位置で衝突し、その結果、同図に示すとおり、2本の横線として示した、突起部であるリッジ201−ARおよびリッジ201−BRが形成される。
【0025】
図100(c)は、マスク201を基板80に対して図100(a)の矢印の向きにマスク要素の長さMだけ相対的に移動させた後、レーザ光を照射(第2照射)した場合に、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【0026】
このような第2照射によって、図100に示す第201領域においては、第2マスク要素201−2のスリット201−2aとスリット201−2bとによるレーザ照射が行われる。これにより、第1照射で形成された結晶201−Aと交差した形で結晶202−Aが形成されるとともに、結晶201−Bと交差した形で結晶202−Bが形成される。
【0027】
また、図101(a)のY軸方向に成長した結晶201−Aと201−Bとについて、同図のX軸方向とY軸方向とにおける結晶成長(引継ぎ成長)が起こる。その結果、図101(b)に示すとおり、矩形状の種結晶202−1、種結晶202−2、…、種結晶202−6が形成される。ここで種結晶とは、結晶内にリッジを含まない結晶(つまり、リッジで囲まれた結晶)を指す。より詳しくは、種結晶とは、連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた結晶を指す。
【0028】
図100(d)は、マスク201を基板80に対して図100(a)の矢印の方向にマスク要素の長さMだけさらに相対的に移動させた後、レーザ光を照射(第3照射)した場合に、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【0029】
このような第3照射によって、図100に示す第201領域においては、第3マスク要素201−3のスリット201−3aとスリット201−3bとによるレーザ照射が行われる。これにより、図100(d)に示すとおり、第1照射で形成された結晶201−Aと結晶201−Bとの両方に一部重畳して、結晶203−Aが形成されるとともに、第1照射で形成された結晶201−Bに一部重畳して、結晶203−Bが形成される。
【0030】
その結果、種結晶202−1、種結晶202−2、…、種結晶202−6といった種結晶について、Y軸方向において結晶成長(引継ぎ成長)が起こる。これにより、図101(c)に示すとおり、種結晶よりも大きな、角型結晶203−1、角型結晶203−2、…、角型結晶203−6といった角型結晶が形成される。
【0031】
図100(e)は、マスク201を基板80に対して図100(a)の矢印の方向にマスク要素の長さMだけさらに相対的に移動させた後、レーザ光を照射(第4照射)した場合に、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【0032】
このような第4照射によって、図100に示す第201領域においては、第4マスク要素201−4のスリット201−4aとスリット201−4bとによるレーザ照射が行われる。
【0033】
これにより、図100(e)に示すとおり、第2照射で形成された結晶202−Aと結晶202−Bとの両方に一部重畳して、結晶204−Aが形成されるとともに、第2照射で形成された結晶201−Bに一部重畳して、結晶204−Bが形成される。
【0034】
その結果、結晶203−1、結晶203−2、…、結晶203−6といった結晶について、X軸方向において結晶成長(引継ぎ成長)が起こる。これにより、図101(d)に示すとおり、種結晶よりも大きな、角型結晶204−1、角型結晶204−2、…、角型結晶204−9といった角型結晶が形成される。
【0035】
このように、特許文献2に記載のレーザ結晶化方法によれば、第1照射および第2照射の照射パターンが交差する領域に形成される結晶を種結晶として、この種結晶を、第3照射および第4照射の照射パターンにより拡大することができる。これにより、特許文献1に記載のレーザ結晶化方法によって得られる結晶に比べ、X軸方向にも結晶成長した角型結晶を作製することが可能となる。そして、このような結晶を用いてTFTを作成すれば、TFTの電流が流れる方向によらず、均一な特性のTFTを得ることができる。
【特許文献1】特開2003−51445号公報
【特許文献2】特開2003−22969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
ここで、図101(d)に示した角型結晶204−1に着目し、結晶201−1が当該角型結晶204−1に成長する過程について図102〜図105に基づき説明する。
【0037】
図102は、上記第1照射により形成される結晶201−1を示した図である。また、図103は、上記第2照射により形成される結晶202−1を示した図である。また、図104は、上記第3照射により形成される結晶203−1を示した図である。また、図105は、上記第4照射により形成される結晶204−1を示した図である。
【0038】
なお、図102〜図105においては、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0039】
図102における結晶201−1は、上記第1照射により、同図の矢印の向きに、上述した照射領域の端部から中央部に向かって成長した針状結晶である。次に、上記第2照射によって、図103に示すとおり、結晶201−1が同図の左向きに伸張され、矩形状の種結晶202−1が形成される。さらに、上記第3照射によって、図104に示すとおり、種結晶202−1が同図の上向きに伸張され、結晶203−1が形成される。そして、上記第4照射によって、図105に示すとおり、結晶203−1が同図の右向きに伸張され、最終的に角型結晶204−1が形成される。これにより、結晶化が完了する。なお、図106は、種結晶と、最終的に形成される角型結晶(角型結晶204−1)との関係を示した図である。
【0040】
図107は、第1照射と第2照射とによって形成される種結晶202−1の図心Pを原点とするX−Y直交座標系を示した図である。ここでは、マスクの相対移動の向きと逆(つまり、ステージの移動の向き)である、図102〜図105の各図における右向きをX軸方向の正の向きとし、当該各図における上向きをY軸方向の正の向きとする。
【0041】
さらに、図107に示すとおり、X−Y直交座標系における第k象限(k=1,2,3,4)におけるX軸方向の正の向きをkX+と、X軸方向の負の向きをkX−と、Y軸方向の正の向きをkY+と、Y軸方向の負の向きをkY−として表記する。また、X軸方向の正の向きである1X+と4X+とをまとめてX+と、X軸方向の負の向きである2X−と3X−とをまとめてX−と、Y軸方向の正の向きである1Y+と2Y+とをまとめてY+と、Y軸方向の負の向きである3Y−と4Y−とをまとめてY−と表記する。
【0042】
また、同図に示すとおり、X軸方向の正の向きを示すX+とX軸方向の負の向きとを示すX−とをまとめてXと、Y軸方向の正の向きを示すY+とY軸方向の負の向きを示すY−とをまとめてYと表記する。つまり、Xは、X軸方向(正の向きと負の向きとを含む)を示し、Yは、Y軸方向(正の向きと負の向きとを含む)を示している。
【0043】
図107に示した方向および向きの定義を用いれば、特許文献2に記載のレーザ結晶化方法において種結晶が伸張される向きは、図102〜図106に示すとおり、第1象限については1X+と1Y+との2つの向きであるが、第2象限は2Y+の1つの向きのみ、第4象限は4X+の1つの向きのみにしか伸張されず、第3象限に至ってはまったく伸張されない。
【0044】
このように、特許文献2に記載のレーザ結晶化方法では、種結晶は、伸張されうる8つの向きのうち、4つの向き(1X+,4X+,1Y+,2Y+)のみにしか伸張されない。言い換えれば、種結晶は、X軸方向の正の向き(1X+,4X+)と、Y軸方向の正の向き(1Y+,2Y+)とにしか伸張されない。
【0045】
図102〜図105においては、図101における角型結晶204−1の形成過程について説明したが、他の角型結晶(204−2〜204−6)についても、角型結晶204−1と同様に考えることにより、以下のことが言える。
【0046】
角型結晶204−2は、第2象限へは種結晶が拡大されず、種結晶が伸張されうる8方向のうち4方向のみにしか拡大されない。また、角型結晶204−3は、第3象限へは種結晶が伸張されず、種結晶が拡大されうる8方向のうち4方向のみにしか伸張されない。また、角型結晶204−4は、第4象限へは種結晶が伸張されず、種結晶が伸張されうる8方向のうち4方向のみにしか拡大されない。また、角型結晶204−5は、第1象限へは種結晶が伸張されず、種結晶が伸張されうる8方向のうち4方向のみにしか拡大されない。また、角型結晶204−6は、第4象限へは種結晶が伸張されず、種結晶が伸張されうる8方向のうち4方向のみにしか伸張されない。
【0047】
このように、特許文献2に記載のレーザ結晶化方法は、第1照射および第2照射によって形成された種結晶を第3照射と第4照射とによって伸張する際に、種結晶が伸張されうる8方向のうち4方向のみに種結晶を伸張するレーザ結晶化方法である。
【0048】
つまり、特許文献2に記載のレーザ結晶化方法は、種結晶毎に考えると、種結晶を、以下の(1)〜(4)のいずれか1つに示される向きに伸張する方法である。
(1)X軸方向の正の向き(1X+,4X+)およびY軸方向の正の向き(1Y+,2Y+)
(2)X軸方向の正の向き(1X+,4X+)およびY軸方向の負の向き(3Y−,4Y−)
(3)X軸方向の負の向き(2X−,3X−)およびY軸方向の正の向き(1Y+,2Y+)
(4)X軸方向の負の向き(2X−,3X−)およびY軸方向の負の向き(3Y−,4Y−)
このため、スリットの幅が固定された値であれば、スリットの幅やレーザ光が重畳して照射される領域の幅などによって決まる大きさの角型結晶しか得られない。
【0049】
ここで、図100のマスク201のスリットより広い幅のスリットを用いた場合には、図100のマスク201のスリットを用いた場合に比べて、第1照射による照射パターンと第2照射による照射パターンとが交差する領域は広くなる。このため、この交差する領域に形成された結晶を伸張させることにより、より大きな角型結晶を形成することが可能である。
【0050】
しかしながら、図100のマスク201のスリットより広い幅のスリットを用いる際には、十分な長さの結晶成長距離を得るために、図100のマスク201のスリットを用いる場合より高い照射エネルギーでレーザ光を照射する必要がある。しかしながら、レーザ光の照射エネルギーを高くしすぎると、基板にダメージが生じたり、膜剥離が生じたりするおそれがある。
【0051】
また、1回のレーザ光の照射における結晶成長距離が長くなるほど、結晶幅が不均一になる傾向がある。このため、第1照射による照射パターンと第2照射による照射パターンとが交差する領域において、第1照射により形成した結晶を、第2照射により引き継ぎ成長させて種結晶を作成する際に、種結晶に割れ(粒割れ)が発生しやすくなる。また、このような粒割れを含んだ種結晶を、第3照射および第4照射により伸張させても、結晶性の悪い角型結晶しか得られない。
【0052】
このように、幅広のスリットを用いる場合においても、スリットの幅を広くすることには限度があるため、得られる角型結晶の大きさには限界がある。
【0053】
それゆえ、特許文献2に記載のレーザ結晶化方法によって形成した角型結晶を用いてTFTを作製したした場合、TFTのチャネル領域の大きさによっては、チャネル内に多数の結晶粒界を含むことになる。したがって、このような場合、特性の低いTFTしか得ることができい。
【0054】
本願発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、従来よりも大きな角型結晶を形成可能な、マスク、レーザ結晶化装置、レーザ結晶化方法、結晶材、および半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明のある局面に従うと、マスクは、開口部を有し、当該開口部を介して、相対的に移動する被処理物に対してレーザ光を照射することによって、被処理物上に照射パターンを形成するためのマスクであって、移動方向に沿って配された、種結晶形成用マスク要素群と種結晶伸張用マスク要素群とを備え、レーザ光の照射によって略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が形成するように、種結晶形成用マスク要素群の開口部が配置され、種結晶中の特定位置を原点とするX−Y直交座標系について、kを1から4の自然数とし、第k象限におけるX軸正方向をkX+と、X軸負方向をkX−と、Y軸正方向をkY+と、Y軸負方向をkY−とすると、種結晶形成用マスク要素群に続く種結晶伸張用マスク要素群を介して照射されるレーザ光の照射タイミングの制御と、移動の制御とにより、形成された略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が、1X+、1Y+、2X−、2Y+、3X−、3Y−、4X+、および4Y−の各方向に伸張するように、種結晶伸張用マスク要素群の開口部が配置されている。
【0056】
また、前記1Y+および前記2Y+の2方向、前記2X−および前記3X−の2方向、前記3Y−および前記4Y−の2方向、ならびに前記1X+および前記4X+の2方向のうち、少なくともいずれか1つの2方向に前記種結晶を同時伸張するように、前記種結晶伸張用マスク要素群の開口部が配置されていることが好ましい。
【0057】
また、種結晶形成用マスク要素群は、X軸正方向をX+と、X軸負方向をX−と、Y軸正方向をY+と、Y軸負方向をY−とし、nを1以上の自然数とすると、上記Y+方向に前記種結晶を伸張させるための第4n−3開口部を有する第4n−3伸張マスク要素と、上記Y−方向に前記種結晶を伸張させるための第4n−2開口部を有する第4n−2伸張マスク要素と、上記X+方向に前記種結晶を伸張させるための第4n−1開口部を有する第4n−1伸張マスク要素と、上記X−方向に前記種結晶を伸張させるための第4n開口部を有する第4nマスク要素とを備えることが好ましい。
【0058】
また、前記第4n−3開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、前記第4n−2開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、前記第4n−1開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、前記第4n開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配されていることが好ましい。
【0059】
また、sを1以上の自然数、第s伸張マスク要素の第s開口部によって、基板上に形成される照射パターンを第s照射パターンとすると、nの値が1のときの第1照射パターンは、少なくとも第1象限および第2象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、nの値が1のときの第2照射パターンは、少なくとも第3象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、nの値が1のときの第3照射パターンは、少なくとも第1象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、nの値が1のときの第4照射パターンは、少なくとも第2象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なるように、第1〜4開口部が配置されていることが好ましい。
【0060】
また、第4n−3伸張マスク要素と第4n−2伸張マスク要素と第4n−1伸張マスク要素と第4n伸張マスク要素との各マスク要素に関し、nの値がkであるときのマスク要素をk番目のマスク要素とし、nの値がk+1であるときのマスク要素をk+1番目のマスク要素とし、さらに、k番目のマスク要素の開口部をk番目の開口部と、k+1番目のマスク要素の開口部をk+1番目の開口部と、k番目の開口部の第1方向における中心線を第1方向におけるk番目の中心線とし、k番目の開口部の第2方向における中心線を第2方向におけるk番目の中心線とすると、第4n−3伸張マスク要素に関しては、k+1番目のマスク要素は、k番目のマスク要素に対し種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、k+1番目の開口部の一部が、第2方向の前記一方の向き側において第1方向におけるk番目の中心線と重なり、第4n−2伸張マスク要素に関しては、k+1番目のマスク要素は、k番目のマスク要素に対し種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、k+1番目の開口部の一部が、第2方向の前記他方の向き側において第1方向におけるk番目の中心線と重なり、第4n−1伸張マスク要素に関しては、k+1番目のマスク要素は、k番目のマスク要素に対し種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、k+1番目の開口部の一部が、第1方向の前記一方の向き側において第2方向におけるk番目の中心線と重なり、第4n伸張マスク要素に関しては、k+1番目のマスク要素は、k番目のマスク要素に対し種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、k+1番目の開口部の一部が、第1方向の前記他方の向き側において第2方向におけるk番目の中心線と重なることが好ましい。
【0061】
また、第4n−3伸張マスク要素と、第4n−2伸張マスク要素と、第4n−1伸張マスク要素と、第4n伸張マスク要素とが、nの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0062】
また、第4n−3伸張マスク要素と、第4n−1伸張マスク要素と、第4n−2伸張マスク要素と、第4n伸張マスク要素とが、nの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0063】
また、第4n−3伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−3伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n−2伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−2伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n−1伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−1伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0064】
また、第4n−3伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−2伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−3伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n−2伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n−1伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−1伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0065】
また、第4n−3伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−2伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−1伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第4n−3伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n−2伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n−1伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第4n伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0066】
また、種結晶伸張用マスク要素群は、nを1以上の自然数とすると、Y+方向に種結晶を伸張させるための第2n−1のA開口部およびY−方向に種結晶を伸張させるための第2n−1のB開口部を有する第2n−1伸張マスク要素と、X+方向に種結晶を伸張させるための第2nのA開口部およびX−方向に種結晶を伸張させるための第2nのB開口部を有する第2n伸張マスク要素とを備えることが好ましい。
【0067】
また、第2n−1のA開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、第2n−1のB開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配されるとともに、第2n−1のA開口部に平行に配され、第2nのA開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、第2nのB開口部の各開口部は、nの値に関わらず、それぞれ平行に配されるとともに、第2nのA開口部に平行に配されていることが好ましい。
【0068】
また、tを1以上の自然数、第t伸張マスクの第tのA開口部によって、基板上に形成される照射パターンを第tA照射パターンと、第t伸張マスクの第tのB開口部によって、基板上に形成される照射パターンを第tB照射パターンとすると、nの値が1のときの第1A照射パターンは、少なくとも第1象限および第2象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、nの値が1のときの第1B照射パターンは、少なくとも第3象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、nの値が1のときの第2A照射パターンは、少なくとも第1象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、nの値が1のときの第2B照射パターンは、少なくとも第2象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なるように、開口部が配置されていることが好ましい。
【0069】
また、第2n−1伸張マスク要素と第2n伸張マスク要素とに関し、nの値がkであるときのマスク要素をk番目のマスク要素とし、nの値がk+1であるときのマスク要素をk+1番目のマスク要素とし、さらに、k番目のマスク要素の2つの開口部をk番目のAの開口部とk番目のBの開口部と、k+1番目のマスク要素の前記2つの開口部をk+1番目のAの開口部とk+1番目のBの開口部とし、さらに、k番目のAの開口部の第1方向における中心線を第1方向におけるk番目のAの中心線と、k番目のAの開口部の前記第2方向における中心線を第2方向におけるk番目のAの中心線と、k番目のBの開口部の第1方向における中心線を第1方向におけるk番目のBの中心線と、k番目のBの開口部の第2方向における中心線を第2方向におけるk番目のBの中心線とすると、第2n−1伸張マスク要素に関しては、k+1番目のマスク要素は、k番目のマスク要素に対し種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、k+1番目のAの開口部の一部が、第2方向の前記一方の向き側において第1方向におけるk番目のAの中心線と重なり、かつk+1番目のBの開口部の一部が、第2方向の前記他方の向き側において第1方向におけるk番目のBの中心線と重なり、第2n伸張マスク要素に関しては、k+1番目のマスク要素は、k番目のマスク要素に対し種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、k+1番目のAの開口部の一部が、第1方向の前記一方の向き側において第2方向におけるk番目のAの中心線と重なり、かつk+1番目のBの開口部の一部が、第1方向の前記他方の向き側において第2方向におけるk番目のBの中心線と重なることが好ましい。
【0070】
また、第2n−1伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第2n−1伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第2n伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第2n伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0071】
また、第2n−1伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第2n伸張マスク要素についてのk番目のマスク要素と、第2n−1伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素と、第2n伸張マスク要素についてのk+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されていることが好ましい。
【0072】
また、種結晶形成用マスク要素群は、移動方向に沿って配された、第1方向に伸びた第1開口部を有する第1マスク要素と、第2方向に伸びた第2開口部を有する第2マスク要素とを備えることが好ましい。
【0073】
また、種結晶形成用マスク要素群は、移動方向に沿って配された、第1方向に伸びた開口部を1つ以上有する第1形成マスク要素と、第2方向に伸びた開口部を1つ以上有する第2形成マスク要素とを備えることが好ましい。
【0074】
また、種結晶形成用マスク要素群における各マスク要素の各開口部と、種結晶伸張用マスク要素群における各マスク要素の各開口部とが、矩形であることが好ましい。
【0075】
また、種結晶形成用マスク要素群における各マスク要素の各開口部が、円形状であり、種結晶伸張用マスク要素群における各マスク要素の各開口部が、矩形であることが好ましい。
【0076】
また、第2方向は第1方向に対して垂直な方向であることが好ましい。
また、前記1X+および前記1Y+の2方向、前記2X−および前記2Y+の2方向、前記3X−および前記3Y−の2方向、ならびに前記4X+および前記4Y−の2方向のうち、少なくともいずれか1つの2方向に前記種結晶を同時伸張するように、前記種結晶伸張用マスク要素群の開口部が配置されていることが好ましい。
【0077】
本発明のさらに他の局面に従うと、レーザ結晶化装置は、上記マスクと、上記レーザ光を照射するレーザ光照射装置と、上記被処理物を前記マスクに対して相対的に移動させる移動装置と、照射と移動とを制御する制御装置とを備える。
【0078】
また、レーザ結晶化装置は、レーザ光照射装置が照射する一回あたりのレーザ光のエネルギー量が、基板上の被処理物を当該被処理物の厚み方向に亘り溶融させるエネルギー量であることが好ましい。
【0079】
また、レーザ結晶化装置は、上記レーザ光を第1レーザ光とすると、当該第1レーザ光とは異なる第2レーザ光を前記被処理物に対して照射する第2レーザ光照射装置をさらに備え、第1レーザ光の照射とともに、第1レーザ光が照射されている領域対して第2レーザ光の照射を行うことが好ましい。
【0080】
本発明のさらに他の局面に従うと、レーザ結晶化方法は、開口部を介してレーザ光を相対的に移動する被処理物に照射することにより、結晶粒を形成するレーザ結晶化方法であって、連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた種結晶を、被処理物上に形成する種結晶形成ステップと、種結晶の特定位置を原点としたX−Y直交座標系について、X軸正方向をX+と、X軸負方向をX−と、Y軸正方向をY+と、Y軸負方向をY−とし、さらに被処理物の相対的な移動方向をX+とすると、種結晶を、X+とX−とY+とY−とに、伸張させるための種結晶伸張ステップとを含む。
【0081】
また、種結晶伸張ステップでは、X+とX−とにおける結晶の伸張が終了した後に、Y+とY−とにおける結晶の伸張を行うことが好ましい。
【0082】
また、種結晶伸張ステップでは、X+およびX−における結晶の伸張と、Y+およびY−における結晶の伸張とを交互に行うことが好ましい。
【0083】
また、種結晶伸張ステップでは、X+の伸張とX−の伸張とを同時に行うことが好ましい。
【0084】
また、種結晶形成ステップでは、少なくとも2つの種結晶を形成し、種結晶伸張ステップでは、形成された種結晶を所定方向に伸張して得られた伸張途中の2つの結晶であって、所定方向において隣合う2つの結晶について、所定方向への最後の伸張を行う際に、一つの開口部を用いて同時に伸張させることが好ましい。
【0085】
また、上記種結晶形成ステップと、上記種結晶伸張ステップと、上記移動方向に対して垂直な方向へ被処理物を相対的に移動させる移動ステップとを繰り返すことが好ましい。

また、種結晶伸張ステップでは、形成された種結晶を上記移動方向と上記垂直な方向とに伸張して得られた伸張途中の第1結晶と、垂直な方向において隣合う伸張途中の第2結晶について、垂直な方向への最後の伸張を行う際に、一つの開口部を用いて第1結晶と第2結晶とを同時に伸張させることが好ましい。
【0086】
本発明のさらに他の局面に従うと、レーザ結晶化方法は、開口部を介してレーザ光を相対的に移動する被処理物に照射することにより、結晶粒を形成するレーザ結晶化方法であって、連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた種結晶を、被処理物上に形成する種結晶形成ステップと、種結晶の特定位置を原点としたX−Y直交座標系について、X軸正方向をX+と、X軸負方向をX−と、Y軸正方向をY+と、Y軸負方向をY−とし、さらに被処理物の相対的な移動方向をX+とすると、種結晶を、座標系における第1象限においてはX+とY+とに、座標系における第2象限においてはX−とY+とに、座標系における第3象限においてはX−とY−とに、座標系における第4象限においてはX+とY−とに、伸張させるための種結晶伸張ステップとを含む。
【0087】
本発明のさらに他の局面に従うと、結晶材は、上記のレーザ結晶化方法によって形成された結晶粒を含んでいる。
【0088】
本発明のさらに他の局面に従うと、半導体素子は、上記結晶材における結晶粒中にチャネル領域を有するトランジスタを含んでいる。
【発明の効果】
【0089】
上記マスク、レーザ結晶化装置、レーザ結晶化方法を用いることにより、従来に比べて巨大な角型結晶を得ることができる。このため、チャネルサイズが大きなTFTであってもTFTの特性が低くなることがなく、従来のTFTに比べて高性能なTFTを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施の形態にかかるレーザ光照射装置について、図1から図70に基づいて説明すると、以下のとおりである。
【0091】
図1は、レーザ結晶化装置1の概略構成を示した図である。
レーザ結晶化装置1は、同図に示すとおり、レーザ光発振器10と、可変減衰器11と、ミラー12と、ミラー13と、照明光学素子14と、マスク15と、結像レンズ16と、ミラー17と、ステージ18と、制御装置19とを備えている。また、ステージ18上には、レーザ光の照射対象となる被処理物20が載置される。
【0092】
ここで、レーザ結晶化装置1の各部材10〜19の説明に先立ち、被処理物20について説明する。図2は、被処理物20の断面を示した断面図である。
【0093】
被処理物20は、基板21と、基板21上に形成された下地膜22と、下地膜22上に形成された非晶質半導体薄膜23とから構成されている。
【0094】
基板21としては、たとえばガラス基板または石英基板等を用いることができる。なかでも、安価である点および大面積基板を容易に製造できる点から、基板21としてはガラス基板を用いることが好ましい。
【0095】
下地膜22は、主として、レーザ光による非晶質半導体薄膜23についての溶融と結晶化との際に、溶融した非晶質半導体薄膜23の熱による影響が基板21に及ばないようにするための膜である。下地膜22を形成することにより、基板21から非晶質半導体薄膜23への不純物の拡散を防止することもできる。下地膜22としては、たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸窒化シリコン膜等を用いることができる。下地膜22は、たとえば、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等により、たとえば100nm〜300nmの厚さに形成される。
【0096】
非晶質半導体薄膜23は、たとえば、膜厚が10nm〜100nmとなるように、プラズマエンハンスト化学気相成長(PECVD)、蒸着、スパッタリング等により生成することができる。非晶質半導体薄膜23としては、半導体特性を示すものであれば特に限定なく用いることができるが、結晶質半導体膜における結晶成長の長さを長くすることにより種々の特性が顕著に向上する非晶質シリコン膜を用いることが好ましい。非晶質半導体薄膜23の材質は、シリコンからなる材質に限られるものではなく、ゲルマニウム等の他の元素を含んだシリコンを主成分とする材質を用いることもできる。
【0097】
次に、レーザ結晶化装置1の各部材10〜19について説明する。
レーザ光発振器10は、パルス発振によりパルスレーザ光を出射する。レーザ光発振器10は、固体状態にある非晶質半導体薄膜23への吸収率が高い範囲の波長を有するパルスレーザ光を照射することができるものであれば、特に限定されるものではない。ただし、たとえば紫外域(1nm以上400nm以下)の波長を有するパルスレーザ光を照射できるものであることが好ましい。また、レーザ光発振器10から照射されるパルスレーザ光の1回の照射あたりのエネルギー量は、固体状態の非晶質半導体薄膜23の厚さ方向に亘って溶融させるエネルギー量以上としている。たとえば、レーザ光発振器10から照射されるレーザ光としては、波長が308nmのXeClエキシマレーザ光を挙げることができる。
【0098】
可変減衰器11は、レーザ光の吸収や散乱を通じて、レーザ光発振器10から出射されたパルスレーザ光のパワーを減衰させる。特に、可変減衰器11は、外部からの信号もしくは調節つまみによってその減衰量を変化させることができる。可変減衰器11により減衰されたパルスレーザ光は、ミラー12に向かって出射される。
【0099】
ミラー12は、可変減衰器11から出射したパルスレーザ光を、ミラー13の方向へ反射する。
【0100】
ミラー13は、ミラー12により反射されたパルスレーザ光を、照明光学素子14の方向へ反射する。
【0101】
照明光学素子14は、ホモジナイザやフィールドレンズ(視野レンズ)を備えている。照明光学素子は、ミラー13により反射されたパルスレーザ光を、所望の寸法に整形し、当該整形したレーザ光を均一の強度のレーザ光として、マスク15の方向へ出射する。
【0102】
マスク15は、スリット(つまり、開口部)を備えており、照明光学素子14から出射したパルスレーザ光を、スリットを介して通過させる。なお、マスク15の詳細については、後述する。
【0103】
結像レンズ16は、マスク15上の像をレーザ結晶化装置1の光学設計により決定される倍率で非晶質半導体薄膜23の表面上に結像させる。したがって、マスク15のスリットと被処理物20の表面上に照射される像とは相似となる。
【0104】
ミラー17は、結増レンズ16から出射したパルスレーザ光を被処理物20の方向へ反射する。
【0105】
ステージ18は、所定の方向に移動可能となっている。
制御装置19は、レーザ光発振器10におけるレーザ光の出射のタイミングと、ステージ18の位置を制御する。
【0106】
以上のように、レーザ結晶化装置1においては、レーザ光発振器10から出射されたレーザ光が、可変減衰器11と、照明光学素子14と、マスク15と、結像レンズ16とをこの順に通り、ステージ18上に載置された被処理物20の表面に対し入射する。
【0107】
なお、所定の位置にステージ18が移動し、かつ所定のタイミングでレーザ光の照射がなされるのであれば、ステージ18を連続移動させながらレーザ光を被処理物20に照射する方式としてもよいし、あるいはステージ18をステップ&リピートさせながらレーザ光を照射する方式としてもよい。なお、以下では、ステージ18を連続移動させながらレーザ光を被処理物20に照射するものとして説明する。
【0108】
ここで、マスク15の詳細について説明する。
図3は、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。
【0109】
マスク15は、同図に示すように、スリットである開口部(スリット幅:SW)と遮光部とからなるスリットパターン(開口部パターン)が形成された第1マスク要素から第nマスク要素(マスク要素の長さ:M)が、第1マスク要素、第2マスク要素、…、第nマスク要素(図2の例では、n=14)の順に設けられて構成されている。この第1マスク要素から第nマスク要素を介したレーザ光の照射によって、被処理物20上に、それぞれ、第1の照射パターンから第nの照射パターンが形成される。なお、スリット幅SWは数μm〜10μm程度の値であり、各マスク要素の長さMは数100μm〜1mm程度の値である。なお、各マスク要素におけるスリット幅(SW)は一定である。また、本実施の形態における他の構成のマスクについても、各マスク要素におけるスリット幅は一定である。
【0110】
また、マスク15は、被処理物20上に種結晶を形成するための種結晶形成用マスク要素群と、当該種結晶を伸張させるための種結晶伸張用マスク要素群とから構成されている。また、種結晶形成用マスク要素群と種結晶伸張用マスク要素群とは、種結晶形成用マスク要素群をマスクの相対的な移動の向き(つまり、ステージ18の移動の向きと逆の方向)における先頭側として、この順に並んでいる。
【0111】
種結晶形成用マスク要素群は、横長(マスクの相対的な移動の向きが長手)のスリットを有する種結晶形成用マスク要素1−1と、縦長(マスクの相対的な移動の向きが短手)のスリットを有する種結晶形成用マスク要素2−1とから構成されている。なお、図3においては、種結晶形成用マスク要素1−1、種結晶形成用マスク要素2−1の順に配置してあるが、これが逆順の配置であってもよい。
【0112】
ここで、種結晶形成用マスク群は、略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶を形成するマスク群である。つまり、種結晶形成用マスク群は、内部にリッジを含まない種結晶を形成するマスク群である。さらに、言い換えれば、連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた種結晶を形成するマスク群である。
【0113】
以下では、レーザ結晶化装置1は、マスク15が距離M(つまり、マスク要素の長さ)移動する度に、1回だけパルスレーザ光の照射を行うものとする。
【0114】
図4は、種結晶形成用マスク要素1−1を用いたレーザ光の照射(第1照射)と、マスク15が距離M移動した後の、種結晶形成用マスク要素2−1を用いたレーザ光の照射(第2照射)とによって形成される種結晶2AAの図心Pを原点とするX−Y直交座標系を示した図である。ここでは、マスクの相対移動の向きと逆の向き(つまり、ステージの移動の向き)きをX軸方向の正の向きとし、図3に示したマスク15の相対移動の向きと垂直なる図の矢印の向き(上向き)をY軸方向の正の向きとする。
【0115】
さらに、図107と同様に、図4に示すとおり、X−Y直交座標系における第k象限(k=1、2、3、4)におけるX軸方向の正の向き(X軸正方向)をkX+と、X軸方向の負の向き(X軸負方向)をkX−と、Y軸方向の正の向き(Y軸正方向)をkY+と、Y軸方向の負の向き(X軸負方向)をkY−として表記する。また、X軸方向の正の向きである1X+と4X+とをまとめてX+と、X軸方向の負の向きである2X−と3X−とをまとめてX−と、Y軸方向の正の向きである1Y+と2Y+とをまとめてY+と、Y軸方向の負の向きである3Y−と4Y−とをまとめてY−と表記する。
【0116】
また、同図に示すとおり、X軸方向の正の向きを示すX+とX軸方向の負の向きとを示すX−とをまとめてXと、Y軸方向の正の向きを示すY+とY軸方向の負の向きを示すY−とをまとめてYと表記する。つまり、Xは、X軸の方向(正の向きと負の向きとを含む)を示し、Yは、Y軸の方向(正の向きと負の向きとを含む)を示している。
【0117】
ここで、再度図3に戻り、種結晶伸張用マスク要素群について、説明する。
種結晶伸張用マスク要素群は、図3に示すとおり、それぞれに横長のスリットを有する、種結晶伸張用マスク要素3−1と、種結晶伸張用マスク要素3−2と、…、種結晶伸張用マスク要素3−jと、種結晶伸張用マスク要素4−1と、種結晶伸張用マスク要素4−2と、…、種結晶伸張用マスク要素4−kとを備える。さらに、種結晶伸張用マスク要素群は、同図に示すとおり、それぞれに縦長のスリットを有する、種結晶伸張用マスク要素5−1、種結晶伸張用マスク要素5−2、…、種結晶伸張用マスク要素5−lと、種結晶伸張用マスク要素6−1、種結晶伸張用マスク要素6−2、…、種結晶伸張用マスク要素6−mとを備えている。なお、図3は、j=k=l=m=3の例を示している。
【0118】
そして、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aと、当該スリット3−1aに対して図3のY軸方向の正の向きへとマスク15のスリットを距離をδずつずらして配置した、種結晶伸張用マスク要素3−2のスリット3−2aと種結晶伸張用マスク3−3要素のスリット3−3aとが、スリットグループ(以下、スリットグループ3−aと称する)を構成している。
【0119】
また、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aと、当該スリット4−1aに対して図3のY軸方向の負の向きへとマスク15のスリットを距離をδずつずらして配置した、種結晶伸張用マスク要素4−2のスリット4−2aと種結晶伸張用マスク4−3要素のスリット4−3aとがスリットグループ(以下、スリットグループ4−aと称する)を構成している。
【0120】
さらに、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aと、当該スリット5−1aに対して図3のマスク相対移動の向きと逆の向き(X軸方向の正の向き)へとマスク15のスリットを距離をδずつずらして配置した、種結晶伸張用マスク要素5−2のスリット5−2aと種結晶伸張用マスク5−3要素のスリット5−3aとが、スリットグループ(以下、スリットグループ5−aと称する)を構成している。
【0121】
また、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aと、当該スリット6−1aに対して図3のマスク相対移動の向き(X軸方向の負の向き)へとマスク15のスリットを距離をδずつずらして配置した、種結晶伸張用マスク要素6−2のスリット6−2aと種結晶伸張用マスク6−3要素のスリット6−3aとが、スリットグループ(以下、スリットグループ6−aと称する)を構成している。
【0122】
ここで、上記距離δの値は、スリット幅SWの1/2の値よりも小さくなるように設定している。
【0123】
なお、以下では、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aの長手方向(第1方向)における中心線を第1中心線とし、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aの長手方向(第2方向)における中心線を第2中心線とする。
【0124】
また、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aは、マスク15を同図のX軸方向の負の向きに距離2Mだけ相対移動させることにより、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aの上半分(Y軸方向の正の向き側の半分)の領域の一部とY軸方向の正の向き側において重なるように配置されている。つまり、種結晶伸張用マスク要素3−1は、Y軸方向の正の向き側(第2方向の一方の向き側)において一部が種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aと重なる位置にスリット3−1aを有している。
【0125】
また、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aは、それぞれ種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aの上半分の領域の一部とY軸方向の負の向き側において重なるように配置される。つまり、種結晶伸張用マスク要素4−1は、Y軸方向の負の向き側(第2方向の他方の向き側)において一部が上記第1中心線と重なる位置にスリット4−1aを有している。
【0126】
スリット3−1aとスリット4−1aとを上述した配置とすることにより、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aの上半分の領域で形成される種結晶を、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aによりY+方向に伸張させ、かつ、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aによりY−に伸張させることができる。つまり、上記配置により、Y軸方向(Y軸方向の正の向きおよびY軸方向の負の向き)に種結晶を伸張させることができる。
【0127】
なお、上記においては、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aの上半分の領域を種結晶として伸張させる例を示したが、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aと種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aとを、種結晶形成用マスク1−1のスリット1−1aの下半分(Y軸方向の負の向き側の半分)の領域と重畳するようにしても同様の結晶を形成することが可能である。
【0128】
また、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aは、マスク15を同図のX軸方向の負の向きに距離7Mだけ相対移動させることにより、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aの右半分(X軸方向の正の向き側の半分)の領域の一部とX軸方向の正の向き側において重なるように配置されている。つまり、種結晶伸張用マスク要素5−1が、X軸方向の正の向き側(第1方向の一方の向き側)において一部が種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aと重なる位置にスリット5−1aを有している。
【0129】
また、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aは、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aの右半分(X軸方向の正の向き側の半分)の領域の一部とX軸方向の負の向き側において重なるように配置されている。つまり、種結晶伸張用マスク要素6−1が、X軸方向の負の向き側(第1方向の他方の向き側)において一部が上記第2中心線と重なる位置にスリット6−1aを有している。
【0130】
スリット5−1aとスリット6−1aとを上述した配置とすることにより、たとえば、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aの右半分の領域で形成される結晶を、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aによりX+に伸張させ、かつ、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aによりX−に伸張させることができる。
【0131】
以上のように、マスク15は、スリットを有し、当該スリットを介してレーザ光を相対的に移動する被処理物に照射させるためのマスクである。また、マスク15は、移動の向きに沿って配された、X軸方向(第1方向)に伸びたスリット1−1aを有する種結晶形成用マスク要素1−1と、Y軸方向(第2方向)に伸びたスリット2−1aを有する種結晶形成用マスク要素1−1とを備えた種結晶形成用マスク要素群を備える構成である。
【0132】
さらに、マスク15は、種結晶形成用マスク要素1−1と種結晶形成用マスク要素1−1とに続き、上記移動の向きに沿って配された、スリット3−1aを有する種結晶伸張用マスク要素3−1と、スリット4−1aを有する種結晶伸張用マスク要素と、スリット5−1aを有する種結晶伸張用マスク要素5−1と、スリット6−1aを有する種結晶伸張用マスク要素6−1とを備えた種結晶伸張用マスク要素群を備える構成である。
【0133】
さらに、上述したように、スリット1−1aのX軸方向(第1方向)における中心線を第1中心線とし、スリット2−1aのY軸方向(第2方向)における中心線を第2中心線とすると、マスク15は、スリット3−1aの一部が、Y軸方向の一方の向き側においてスリット1−1aと重なり、スリット4−1aの一部が、Y軸方向の他方の向き側において上記第1中心線と重なり、スリット5−1aの一部が、X軸方向の一方の向き側においてスリット2−1aと重なり、スリット6−1aの一部が、X軸方向の他方の向き側において上記第2中心線と重なる構成である。
【0134】
ここで、種結晶伸張用マスク要素3−1を第1伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素3−2を第5伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素3−3を第9伸張マスク要素とすると、種結晶を上記Y+方向に伸張させるマスク要素は、nを1以上の自然数とし、第4n−3伸張マスク要素として表記することができる。同様に、種結晶伸張用マスク要素4−1を第2伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素4−2を第6伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素4−3を第10伸張マスク要素とすると、種結晶を上記Y−方向に伸張させるマスク要素は、nを1以上の自然数とし、第4n−2伸張マスク要素として表記することができる。
【0135】
さらに、スリット3−1aを第1伸張スリットと、スリット3−2aを第5伸張スリットと、スリット3−3aを第9伸張スリットとすると、種結晶を上記Y+方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第4n−3伸張スリットとして表記することができる。同様に、スリット4−1aを第2伸張スリットと、スリット4−2aを第6伸張スリットと、スリット4−3aを第10伸張スリットとすると、種結晶を上記Y−方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第4n−2伸張スリットとして表記することができる。
【0136】
また、種結晶伸張用マスク要素5−1を第3伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素5−2を第7伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素5−3を第11伸張マスク要素とすると、種結晶を上記X+方向に伸張させるマスク要素は、nを1以上の自然数とし、第4n−1伸張マスク要素として表記することができる。同様に、種結晶伸張用マスク要素6−1を第4伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素6−2を第8伸張マスク要素と、種結晶伸張用マスク要素6−3を第12伸張マスク要素とすると、種結晶を上記X−方向に伸張させるマスク要素は、nを1以上の自然数とし、第4n伸張マスク要素として表記することができる。
【0137】
さらに、スリット5−1aを第3伸張スリットと、スリット5−2aを第7伸張スリットと、スリット5−3aを第11伸張スリットとすると、種結晶を上記X+方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第4n−1伸張スリットとして表記することができる。同様に、スリット6−1aを第4伸張スリットと、スリット6−2aを第8伸張スリットと、スリット6−3aを第12伸張スリットとすると、種結晶を上記X−方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第4n伸張スリットとして表記することができる。
【0138】
また、マスク15は、連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた種結晶を、被処理物20上に形成するためのスリットパターンを有する種結晶形成用マスク要素群と、上記種結晶の特定位置Pを原点としたX−Y直交座標系において被処理物20の相対的な移動の向きをX軸方向の正の向きとすると、上記種結晶を、X軸方向の正の向きと、X軸方向の負の向きと、Y軸方向の正の向きと、Y軸方向の負の向とに、伸張させるためのスリットパターンを有する種結晶伸張用マスク要素群とを備える構成でもある。
【0139】
さらに、マスク15は、上記種結晶を、上記座標系における第1象限においてはX軸方向の正の向きとY軸方向の正の向きとに、上記座標系における第2象限においてはX軸方向の負の向きとY軸方向の正の向きとに、上記座標系における第3象限においてはX軸方向の負の向きとY軸方向の負の向きとに、上記座標系における第4象限においてはX軸方向の正の向きとY軸方向の負の向きとに、伸張させるためのスリットパターンを有する種結晶伸張用マスク要素群とを備える構成でもある。
【0140】
なお、上記においては、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aの右半分の領域を種結晶として伸張させる例を示したが、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aと種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aとを、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aの左半分の領域と重ねるようにしても同様の結晶を形成することが可能である。また、上記重畳領域は、なるべく小さくなるようにすることで、より大きな角型結晶を形成することができる。
【0141】
以上のような構成を有するレーザ結晶化装置1によって、レーザ光発振器10からパルスレーザ光が、可変減衰器11と、ミラー12と、ミラー13と、照明光学素子14と、マスク15と、結像レンズ16と、ミラー17とを介して被処理物20の表面に照射され、スリットが投影される各位置において、非晶質半導体薄膜23の照射領域がその厚さ方向に亘って溶融する。
【0142】
そして、パルスレーザ光の照射が完了した後は、溶融した非晶質半導体薄膜23が凝固し始め、スリットを通してレーザ光が照射された領域の端部から中央部の方向に結晶が横方向成長する。つまり、マスクの相対移動の向きと垂直となる方向(Y軸の方向)におけるスリットの端部に対応する領域から、スリットの中央部に対応する領域に向けて結晶成長が起こる。
【0143】
その後、制御装置19により、レーザ光発振器10およびステージ18を制御することにより、被処理物20に対しマスク15をマスク長さMだけX−(X軸方向の負方向)に移動させた状態で、レーザ光発振器10が、再度レーザ光の照射を行う。
【0144】
このようなレーザ光の照射と被処理物20の移動とを繰り返すことにより、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aを介して結晶化された領域上に、種結晶マスク要素2−1のスリット2−1aを介した結晶化、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aを介した結晶化(伸張化)、…、種結晶伸張用マスク要素6−3のスリット6−3aを介した結晶化(伸張化)という具合に隣接するマスクのスリットを介した結晶化が行われる。
【0145】
以下では、図3に示したマスク15を用いて、種結晶を形成する過程と当該形成した種結晶を伸張させる過程とを、図5〜図18に基づいて説明する。より詳しくは、第1回目の照射(第1照射)により種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aを介して結晶化された領域についての結晶形成過程について、図5〜図18に基づき説明する。
【0146】
また、以下では、このようにスリット1−1aを用いて第1照射を行った際の、種結晶形成用マスク要素1−1に対応する被処理物20上の領域を対応領域を称する。より詳しくは、スリット1−1a(開口部)と、種結晶形成用マスク要素1−1のうちスリット1−1aを除いた遮光部と(つまり、種結晶形成用マスク要素1−1全体)を被処理物20の表面に対して平行投影した領域を対応領域を称する。
【0147】
さらに、以下では、上記第1照射に引き続き、上記対応領域に対して順次照射するレーザ光の照射を、第2照射、第3照射、…、第14照射と称する。
【0148】
また、図5〜図18においては、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示す。
【0149】
図5は、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0150】
上記対応領域には、図5に示すように、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aによって、結晶1−1Aが形成される。ここで、図5における結晶1AAは、第1照射により形成される結晶1−1Aの一部であり、細長い針状結晶である。
【0151】
図6は、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0152】
この第2照射により、図6に示すとおり、上記対応領域には結晶2−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶2−1Aと第1照射により形成された結晶1−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1AAがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2AAが形成される。ここで、この種結晶2AAは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第14照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。
【0153】
図7は、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図8は、種結晶伸張用マスク要素3−2のスリット3−2aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図9は、種結晶伸張用マスク要素3−3のスリット3−3aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0154】
上記第3照射によって、図7に示すとおり、上記対応領域には結晶3−1Aが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2AAがY+に伸張され、その結果、結晶3AAが形成される。なお、同図に示すとおり、結晶2AAの図心を、XY座標系の原点Pとする。その後、上記第4照射によって、図8に示すとおり、上記対応領域には結晶3−2Aが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3AAがY+に伸張され、その結果、結晶4AAが形成される。さらにその後、第5照射によって、図9に示すとおり、上記対応領域には結晶3−3Aが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4AAがY+に伸張され、その結果、結晶5AAが形成する。
【0155】
図10は、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図11は、種結晶伸張用マスク要素4−2のスリット4−2aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図12は、種結晶伸張用マスク要素4−3のスリット4−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0156】
上記第6照射によって、図10に示すとおり、上記対応領域には結晶4−1Aが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5AAはY−に伸張され、その結果、結晶6AAが形成される。その後、上記第7照射によって、図11に示すとおり、上記対応領域には結晶4−2Aが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6AAがY−に伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。さらにその後、第8照射によって、上記対応領域には結晶4−3Aが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、結晶7AAがY−に伸張され、その結果、結晶8AAが形成される。
【0157】
図13は、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図14は、種結晶伸張用マスク要素5−2のスリット5−2aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図15は、種結晶伸張用マスク要素5−3のスリット5−3aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0158】
上記第9照射によって、図13に示すとおり、上記対応領域には結晶5−1Aが形成される。また、この第9照射によって、同図に示すとおり、種結晶8AAはX+に伸張され、その結果、結晶9AAが形成される。その後、上記第10照射によって、図14に示すとおり、上記対応領域には結晶5−2Aが形成される。また、この第10照射によって、同図に示すとおり、結晶9AAがX+に伸張され、その結果、結晶10AAが形成される。さらにその後、第11照射によって、図15に示すとおり、上記対応領域には結晶5−3Aが形成される。また、この第11照射によって、同図に示すとおり、結晶10AAがX+に伸張され、その結果、結晶11AAが形成される。
【0159】
図16は、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図17は、種結晶伸張用マスク要素6−2のスリット6−2aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図18は、種結晶伸張用マスク要素6−3のスリット6−3aを用いて、第14照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0160】
上記第12照射によって、図16に示すとおり、上記対応領域には結晶6−1Aが形成される。また、この第12照射によって、同図に示すとおり、種結晶11AAはX−に伸張され、その結果、結晶12AAが形成される。その後、上記第13照射によって、図17に示すとおり、上記対応領域には結晶6−2Aが形成される。また、この第13照射によって、同図に示すとおり、結晶12AAがX−に伸張され、その結果、結晶13AAが形成される。さらにその後、第14照射によって、図18に示すとおり、上記対応領域には結晶6−3Aが形成される。また、この第14照射によって、同図に示すとおり、結晶13AAがX−に伸張され、その結果、結晶14AAが形成される。
【0161】
以上により、結晶化が完了する。
このように、マスク15においては、種結晶伸張用マスク要素群が、さらに少なくとも、上述したマスクの移動の向きに沿って配された、スリット3−2aを有する種結晶伸張用マスク要素3−2と、スリット4−2aを有する種結晶伸張用マスク要素4−2と、スリット5−2aを有する種結晶伸張用マスク要素5−2と、スリット6−2aを有する種結晶伸張用マスク要素6−2とを備える。
【0162】
ここで、上述したスリット3−1aのX軸方向(第1方向)における中心線を第3中心線と、スリット4−1aのX軸方向における中心線を第4中心線と、スリット5−1aのY軸方向(第2方向)における中心線を第5中心線と、スリット6−1aのY軸方向における中心線を第6中心線とする。
【0163】
このように各中心線を定義すると、種結晶伸張用マスク要素3−2は、種結晶伸張用マスク要素3−1に対し種結晶形成用マスク要素1−1および種結晶形成用マスク要素2−1とは反対側に配されるとともに、スリット3−2aの一部が、Y軸方向の上記一方の向き側において上記第3中心線と重なる構成である。また、種結晶伸張用マスク要素4−2は、種結晶伸張用マスク要素4−1に対し種結晶形成用マスク要素1−1および種結晶形成用マスク要素2−1とは反対側に配されるとともに、スリット4−2aの一部が、Y軸方向の上記他方の向き側において上記第4中心線と重なる構成である。さらに、種結晶伸張用マスク要素5−2は、種結晶伸張用マスク要素5−1に対し種結晶形成用マスク要素1−1および種結晶形成用マスク要素2−1とは反対側に配されるとともに、スリット5−2aの一部が、X軸方向の上記一方の向き側において上記第5中心線と重なる構成である。また、種結晶伸張用マスク要素6−2は、種結晶伸張用マスク要素6−1に対し種結晶形成用マスク要素1−1および種結晶形成用マスク要素2−1とは反対側に配されるとともに、スリット6−2aの一部が、X軸方向の上記他方の向き側において上記第6中心線と重なる構成である。
【0164】
図19は、種結晶と、最終的に形成される角型結晶との関係を示した図である。図4に示した方向の定義を用いると、レーザ結晶化装置1では、第1照射および第2照射により種結晶を形成した後、第3照射〜第5照射によりY+へ種結晶が伸張され、第6照射〜第8照射によりY−へ種結晶が伸張され、第9照射〜第11照射によりX+へ種結晶が伸張され、第12照射〜第14照射によりX−へ種結晶が伸張される。このように、レーザ結晶化装置1を用いることにより、第1象限〜第4象限の全ての象限において種結晶を伸張させることができる。この点において、レーザ結晶化装置1を用いて形成された結晶と、従来(特許文献2)のレーザ結晶化方法により形成された結晶とは異なっている。
【0165】
以上のように、マスク15は、レーザ光の照射によって略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が形成するように、種結晶形成用マスク要素群のスリットが配置された構成であって、種結晶形成用マスク要素群に続く種結晶伸張用マスク要素群を介して照射されるレーザ光の照射タイミングの制御と上述した移動の制御とにより、形成された略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が、1X+、1Y+、2X−、2Y+、3X−、3Y−、4X+、および4Y−の各方向に伸張するように、種結晶伸張用マスク要素群のスリットが配置されている構成であるといえる。
【0166】
また、レーザ結晶化装置1によるレーザ結晶化方法は、第1照射および第2照射によって形成される種結晶を以降の照射により伸張させる際に、種結晶の図心Pを原点とする直交座標系における全象限(第1象限〜第4象限)において、それぞれ、X軸方向(X+またはX−)とY軸方向(Y+またはY−)とに種結晶を伸張するレーザ結晶化方法である。
【0167】
より詳しくは、当該レーザ結晶化方法は、第1象限においては1X+と1Y+とに、第2象限においては2X−と2Y+とに、第3象限においては3X−と3Y−とに、第4象限においては4X+と4Y−とに、種結晶を伸張させる方法である。それゆえ、種結晶が伸張されうる8方向すべてにおいて結晶成長させることができる。
【0168】
言い換えれば、レーザ結晶化装置1によるレーザ結晶化方法により、X軸方向の正の向きと、X軸方向の負の向きと、Y軸方向の正の向きと、Y軸方向の負の向きとに、種結晶を成長させることができる。
【0169】
以上により、レーザ結晶化装置1では、幅広のスリットを用いることなく、従来に比べて巨大な角型結晶を得ることができる。
【0170】
ところで、TFTのチャネルサイズが角型結晶よりも小さい場合、この角型結晶内に収まるようにチャネルを配置することによって、このようにチャネルを配置しない場合に比べて高性能なTFTを得ることができる。しかしながら、チャネルサイズが角型結晶よりも大きい場合には、チャネル内の角型結晶以外の領域は、結晶化されていない膜(非晶質半導体膜)で構成されることになる。このため、チャネルサイズが角型結晶よりも大きい場合には、TFTの特性は低くなる。
【0171】
ところが、レーザ結晶化装置1では、従来に比べ巨大な角型結晶を形成できるため、チャネルサイズが大きなTFTであってもTFTの特性が低くなることがない。このため、従来のTFTに比べ、高性能なTFTを得ることができる。
【0172】
〈マスク構成の変更例−1〉
ところで、上記においては、Y+への伸張と、Y−への伸張と、X+への伸張と、X−への伸張とが、この順に完了し、これにより角型結晶が得られる例を記載した。しかしながら、これに限定されるものではなく、一方向への伸張が完了する前に、他方向への伸張を実施してもよい。
【0173】
そこで、以下では、例として、Y+への伸張とY−への伸張とを交互に繰返したのち、X+への伸張とX−への伸張とを繰り返すレーザ結晶化方法について、図20〜図34に基づいて説明する。
【0174】
図20は、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。
同図に示すマスク15aは、種結晶伸張用マスク要素の配列が、図3に示したマスク15における種結晶伸張用マスク要素と異なっている。その他は、図20に示すマスク15aと図3に示すマスク15とは、同一である。なお、図20において、図3に示すマスク15の種結晶伸張用マスク要素と同じマスク要素については、同一の符号を付している。
【0175】
以下では、図20に示したマスク15aを用いて、種結晶を形成する過程と当該形成した種結晶を伸張させる過程とを、図21〜図34に基づいて説明する。なお、図21〜図34においても、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0176】
図21は、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0177】
上記対応領域には、図21に示すように、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aによって、結晶1−1Aが形成される。ここで、図21における結晶1AAは、第1照射により形成される結晶1−1Aの一部であり、細長い針状結晶である。
【0178】
図22は、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0179】
この第2照射により、図22に示すとおり、上記対応領域には結晶2−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶2−1Aと第1照射により形成された結晶1−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1AAがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2AAが形成される。ここで、この種結晶2AAは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第14照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。
【0180】
図23は、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図24は、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0181】
上記第3照射によって、図23に示すとおり、上記対応領域には結晶3−1Aが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2AAがY+に伸張され、その結果、結晶3AAが形成される。その後、上記第4照射によって、図24に示すとおり、上記対応領域には結晶4−1Aが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3AAがY−に伸張され、その結果、結晶4AAが形成される。
【0182】
図25は、種結晶伸張用マスク要素3−2のスリット3−2aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図26は、種結晶伸張用マスク要素4−2のスリット4−2aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0183】
上記第5照射によって、図25に示すとおり、上記対応領域には結晶3−2Aが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4AAがY+に伸張され、その結果、結晶5AAが形成される。その後、第6照射によって、図26に示すとおり、上記対応領域には結晶4−2Aが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5AAはY−に伸張され、その結果、結晶6AAが形成される。
【0184】
図27は、種結晶伸張用マスク要素3−3のスリット3−3aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図28は、種結晶伸張用マスク要素4−3のスリット4−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0185】
上記第7照射によって、図27に示すとおり、上記対応領域には結晶4−2Aが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6AAがY+に伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。その後、第8照射によって、図28に示すとおり、上記対応領域には結晶4−3Aが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、結晶7AAがY−に伸張され、その結果、結晶8AAが形成される。
【0186】
図29は、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図30は、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0187】
上記第9照射によって、図29に示すとおり、上記対応領域には結晶5−1Aが形成される。また、この第9照射によって、同図に示すとおり、種結晶8AAはX+に伸張され、その結果、結晶9AAが形成される。その後、上記第10照射によって、図30に示すとおり、上記対応領域には結晶6−1Aが形成される。また、この第10照射によって、同図に示すとおり、結晶9AAがX−に伸張され、その結果、結晶10AAが形成される。
【0188】
図31は、種結晶伸張用マスク要素5−2のスリット5−2aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図32は、種結晶伸張用マスク要素6−2のスリット6−2aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0189】
上記第11照射によって、図31に示すとおり、上記対応領域には結晶5−2Aが形成される。また、この第11照射によって、同図に示すとおり、結晶10AAがX+に伸張され、その結果、結晶11AAが形成される。その後、上記第12照射によって、図32に示すとおり、上記対応領域には結晶6−2Aが形成される。また、この第12照射によって、同図に示すとおり、種結晶11AAはX−に伸張され、その結果、結晶12AAが形成される。
【0190】
図33は、種結晶伸張用マスク要素5−3のスリット5−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図34は、種結晶伸張用マスク要素6−3のスリット6−3aを用いて、第14照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0191】
上記第13照射によって、図33に示すとおり、上記対応領域には結晶5−3Aが形成される。また、この第13照射によって、同図に示すとおり、結晶12AAがX+に伸張され、その結果、結晶13AAが形成される。その後、第14照射によって、図34に示すとおり、上記対応領域には結晶6−3Aが形成される。また、この第14照射によって、同図に示すとおり、結晶13AAがX−に伸張され、その結果、結晶14AAが形成される。
【0192】
以上により、結晶化が完了する。
このように、図20に示したマスク15aを用いた場合においては、図3に示したマスク15を用いた場合とは結晶成長の順序が異なるだけで、図3に示したマスク15を用いたときと同じ大きさの角型結晶を形成することができる。
【0193】
〈マスク構成の変更例−2〉
次に、Y+への伸張とY−への伸張を同時に行うとともに、X+への伸張とX−への伸張を同時に行う構成について、図35〜図43に基づいて説明する。
【0194】
図35は、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。同図に示すマスク15bは、Y+への伸張用スリットとY−への伸張用スリットとを同一マスク要素に配置するとともに、X+への伸張用スリットとX−への伸張用スリットとを同一マスク要素に配置している。
【0195】
マスク要素11−1とマスク要素12−1とが、種結晶形成用マスク要素となる。また、その他の6個のマスク要素(13−1〜13−3、および15−1〜15−3)が、種結晶伸張用マスク要素となる。ここで、種結晶伸張用マスク要素は、各マスク要素が2つのスリットを有している。
【0196】
具体的には、種結晶形成用マスク要素11−1はスリット11−1aを備え、種結晶形成用マスク要素12−1はスリット12−1aを備えている。また、種結晶伸張用マスク13−1はスリット13−1aおよびスリット14−1aを備え、種結晶伸張用マスク13−2はスリット13−2aおよびスリット14−2aを備え、種結晶伸張用マスク13−3はスリット13−3aおよびスリット14−3aを備えている。さらに、種結晶伸張用マスク要素15−1はスリット15−1aおよびスリット16−1aを備え、種結晶伸張用マスク要素15−2はスリット15−2aおよびスリット16−2aを備え、種結晶伸張用マスク要素15−3はスリット15−3aおよびスリット16−3aを備えている。
【0197】
ここで、種結晶伸張用マスク要素13−1を第1伸張マスク要素、種結晶伸張用マスク要素13−2を第3伸張マスク要素、種結晶伸張用マスク要素13−3を第5伸張マスク要素とすると、種結晶を上記Y+方向およびY−方向に伸張させるマスク要素は、nを1以上の自然数とし、第2n−1伸張マスク要素として表記することができる。
【0198】
さらに、スリット13−1aを第1のA伸張スリットと、スリット3−2aを第3のA伸張スリットとスリット13−3aを第5のA伸張スリットとすると、種結晶を上記Y+方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第2n−1のA伸張スリットとして表記することができる。同様に、スリット14−1aを第1のB伸張スリットと、スリット14−2aを第3のB伸張スリットとスリット14−3aを第5のB伸張スリットとすると、種結晶を上記Y−方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第2n−1のB伸張スリットとして表記することができる。
【0199】
また、種結晶伸張用マスク要素15−1を第2伸張マスク要素、種結晶伸張用マスク要素15−2を第4伸張マスク要素、種結晶伸張用マスク要素15−3を第6伸張マスク要素とすると、種結晶を上記X+方向およびX−方向に伸張させるマスク要素は、nを1以上の自然数とし、第2n伸張マスク要素として表記することができる。
【0200】
さらに、スリット15−1aを第2のA伸張スリットと、スリット15−2aを第4のA伸張スリットとスリット15−3aを第6のA伸張スリットとすると、種結晶を上記X+方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第2nのA伸張スリットとして表記することができる。同様に、スリット16−1aを第2のB伸張スリットと、スリット16−2aを第4のB伸張スリットとスリット16−3aを第6のB伸張スリットとすると、種結晶を上記X−方向に伸張させるマスク要素のスリットは、nを1以上の自然数とし、第2nのB伸張スリットとして表記することができる。
【0201】
ところで、図35にも示すとおり、各マスク要素における各スリットの位置については、図3のマスク15または図20のマスク15aとの間で、以下の関係がある。
【0202】
まず、スリット11−1aはスリット1−1aと同じ位置に、スリット12−1aはスリット2−1aと同じ位置に設けられている。また、スリット13−1aはスリット3−1aと同じ位置に、スリット13−2aはスリット3−2aと同じ位置に、スリット13−3aはスリット3−3aと同じ位置に設けられている。さらに、スリット14−1aはスリット4−1aと同じ位置に、スリット14−2aはスリット4−2aと同じ位置に、スリット14−3aはスリット4−3aと同じ位置に設けられている。
【0203】
また、スリット15−1aはスリット5−1aと同じ位置に、スリット15−2aはスリット5−2aと同じ位置に、スリット15−3aはスリット5−3aと同じ位置に設けられている。さらに、スリット16−1aはスリット6−1aと同じ位置に、スリット16−2aはスリット6−2aと同じ位置に、スリット16−3aはスリット6−3aと同じ位置に設けられている。
【0204】
以上のように、マスク15bは、種結晶形成用マスク要素11−1と種結晶形成用マスク要素12−1とに続き、少なくとも、上述したマスクの移動の向きに沿って配された、スリット13−1aおよびスリット14−1aを有する種結晶伸張用マスク要素13−1と、スリット15−1aおよびスリット16−1aを有する種結晶伸張用マスク要素15−1とを備えた種結晶伸張用マスク要素群を備えた構成である。
【0205】
ここで、スリット11−1a(第1スリット)のX軸方向(第1方向)における中心線を第1中心線と、スリット12−1a(第2スリット)のY軸方向(第2方向)における中心線を第2中心線と定義する。
【0206】
このように各中心線を定義すると、マスク15bは、スリット13−1aの一部が、Y軸方向の一方の向き側においてスリット11−1aと重なるとともに、スリット14−1aの一部が、Y軸方向の他方の向き側において上記第1中心線と重なる構成である。さらに、マスク15bは、スリット15−1aの一部が、X軸方向の一方の向き側においてスリット12−1aと重なるとともに、スリット16−1aの一部が、X軸方向の他方の向き側において上記第2中心線と重なる構成である。
【0207】
さらに、マスク15bにおいては、種結晶伸張用マスク要素群が、さらに、上記移動の向きに沿って配された、スリット13−2aおよびスリット14−2aを有する種結晶伸張用マスク要素13−2と、スリット15−2aおよびスリット16−2aを有する種結晶伸張用マスク要素15−2とを備える構成である。
【0208】
ここでは、スリット13−1aのX軸方向(第1方向)における中心線を第3A中心線と、スリット14−1aのX軸方向における中心線を第3B中心線と、スリット15−1aのY軸方向における中心線を第4A中心線と、スリット16−1aのY軸方向における中心線を第4B中心線と定義する。
【0209】
このように各中心線を定義すると、マスク15bは、スリット13−2aの一部が、Y軸方向の上記一方の向き側において上記第3A中心線と重なるとともに、スリット14−2aの一部が、Y軸方向の上記他方の向き側において上記第3B中心線と重なる構成である。さらに、マスク15bは、スリット15−2aの一部が、X軸方向の上記一方の向き側において上記第4A中心線と重なるとともに、スリット16−2aの一部が、X軸方向の上記他方の向き側において上記第4B中心線と重なる構成である。
【0210】
以下では、図35に示したマスク15bを用いて、種結晶を形成する過程と当該形成した種結晶を伸張させる過程とを、図36〜図43に基づいて説明する。なお、図36〜図43においても、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0211】
図36は、種結晶形成用マスク要素11−1のスリット11−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0212】
上記対応領域には、図36に示すように、種結晶形成用マスク要素11−1のスリット11−1aによって、結晶11−1Aが形成される。ここで、図36における結晶1AAは、第1照射により形成される結晶11−1Aの一部であり、細長い針状結晶である。
【0213】
図37は、種結晶形成用マスク要素12−1のスリット12−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0214】
この第2照射により、図37に示すとおり、上記対応領域には結晶12−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶12−1Aと第1照射により形成された結晶11−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1AAがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2AAが形成される。ここで、この種結晶2AAは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第8照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。
【0215】
図38は、種結晶伸張用マスク要素13−1のスリット13−1aおよびスリット14−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図39は、種結晶伸張用マスク要素13−2のスリット13−2aおよびスリット14−2aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図40は、種結晶伸張用マスク要素13−3のスリット13−3aおよびスリット14−3aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0216】
上記第3照射によって、図38に示すとおり、上記対応領域には結晶13−1Aと結晶14−1Aとが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2AAがY+とY−とに伸張され、その結果、結晶3AAが形成される。さらに、上記第4照射によって、図39に示すとおり、上記対応領域には結晶13−2Aと結晶14−2Aとが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3AAがY+とY−とに伸張され、その結果、結晶4AAが形成される。さらにその後、上記第5照射によって、図40に示すとおり、上記対応領域には結晶13−3Aと結晶14−3Aとが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4AAがY+とY−とに伸張され、その結果、結晶5AAが形成される。
【0217】
図41は、種結晶伸張用マスク要素15−1のスリット15−1aおよびスリット16−1aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図42は、種結晶伸張用マスク要素15−2のスリット15−2aおよびスリット16−2aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図43は、種結晶伸張用マスク要素15−3のスリット15−3aおよびスリット16−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0218】
上記第6照射によって、図41に示すとおり、上記対応領域には結晶15−1Aと結晶16−1Aとが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5AAはX+とX−とに伸張され、その結果、結晶6AAが形成される。さらに、上記第7照射によって、図42に示すとおり、上記対応領域には結晶15−2Aと結晶16−2Aとが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6AAがX+とX−とに伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。さらにその後、第8照射によって、上記対応領域には結晶15−3Aと結晶16−3Aとが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、結晶7AAがX+とX−とに伸張され、その結果、結晶8AAが形成される。
【0219】
以上により、結晶化が完了する。
このような図35に示したマスク15bを用いることにより、図20に示したマスク15aを用いる場合に比べて、同じ大きさの角型結晶を得る際の照射回数を減らすことができる。これにより、結晶作製時間を短縮することができる。
【0220】
また、照射回数を減らすことができるため、レーザ光の照射に伴って被処理物20に発生する蓄熱を抑制することができる。これにより、被処理物20の損傷を低減する効果を奏する。
【0221】
〈マスク構成の変更例−3〉
ところで、図3および図20においては、各マスク要素に一つのスリットが設けられているマスクの構成を示した。また、図35においては、各種結晶伸張用マスク要素に2つのスリットが設けられているマスクの構成を示した。しかしながら、図3、図20、および図35に示したマスクを用いた場合、上記一つの対応領域においては、種結晶は1つしか形成されない。
【0222】
そこで、以下では、種結晶形成用マスク要素により、上記対応領域において種結晶を2つ形成する構成について、図44〜図57に基づいて説明する。より詳しくは、Y+への伸張と、Y−への伸張と、X+への伸張と、X−への伸張とがこの順に完了し、Y軸方向において隣接する角型結晶を2個形成する場合について説明する。
【0223】
図44は、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。
同図に示すマスク15cにおいては、マスク要素21−1とマスク要素22−1とが、種結晶形成用マスク要素となる。また、その他の11個のマスク要素(23−1,23−2,24−1〜24−3,25−1〜25−3,26−1〜26−3)が、種結晶伸張用マスク要素となる。
【0224】
ここで、同図に示すとおり、種結晶形成用マスク要素21−1と、種結晶伸張用マスク要素23−1と、種結晶伸張用マスク要素23−2と、種結晶伸張用マスク要素24−1と、種結晶伸張用マスク要素24−2と、種結晶伸張用マスク要素24−3とが、それぞれ2つのスリットを有している。
【0225】
具体的には、種結晶形成用マスク要素21−1はスリット21−1aおよびスリット21−bを備え、種結晶形成用マスク要素22−1はスリット22−1aを備えている。また、種結晶伸張用マスク23−1はスリット23−1aおよびスリット23−1bを備え、種結晶伸張用マスク23−2はスリット23−2aおよびスリット23−2bを備えている。また、種結晶伸張用マスク24−1はスリット24−1aおよびスリット24−1bを備え、種結晶伸張用マスク24−2はスリット24−2aおよびスリット24−2bを備え、種結晶伸張用マスク24−3はスリット24−3aおよびスリット24−3bを備えている。
【0226】
また、種結晶伸張用マスク25−1はスリット25−1aを備え、種結晶伸張用マスク25−2はスリット25−2aを備え、種結晶伸張用マスク25−3はスリット25−3aを備えている。また、種結晶伸張用マスク65−1はスリット26−1aを備え、種結晶伸張用マスク26−2はスリット26−2aを備え、種結晶伸張用マスク26−3はスリット26−3aを備えている。
【0227】
ところで、図44にも示すとおり、各マスク要素における各スリットの位置については、図3のマスクとの間で、以下の関係がある。
【0228】
まず、スリット21−1aはスリット1−1aと同じ位置に、スリット22−1aはスリット2−1aと同じ位置に設けられている。また、スリット23−1aはスリット3−1aと同じ位置に、スリット23−2aはスリット3−2aと同じ位置に、スリット24−3bはスリット3−3aと同じ位置に設けられている。さらに、スリット24−1aはスリット4−1aと同じ位置に、スリット24−2aはスリット4−2aと同じ位置に、スリット24−3aはスリット4−3aと同じ位置に設けられている。
【0229】
ここで、種結晶伸張用マスク要素24−3におけるスリット24−3aとスリット24−3bとの距離をスリット間距離と称すると、スリット21−1b、スリット23−1b、スリット23−2b、スリット24−1b、およびスリット24−2bは、それぞれ、スリット21−1a、スリット23−1a、スリット23−2a、スリット24−1a、およびスリット24−2aを、上記スリット間距離だけ、同一マスク要素においてY軸方向の正の向きに平行移動した位置にある。
【0230】
また、スリット25−1aはスリット5−1aと同じ位置に、スリット25−2aはスリット5−2aと同じ位置に、スリット25−3aはスリット5−3aと同じ位置に設けられている。さらに、スリット26−1aはスリット6−1aと同じ位置に、スリット26−2aはスリット6−2aと同じ位置に、スリット26−3aはスリット6−3aと同じ位置に設けられている。
【0231】
以上のように、マスク15cは、ともにX軸方向に伸びたスリット21−1aおよびスリット21−1bを有する種結晶形成用マスク要素21−1と、Y軸方向に伸びたスリット22−1aを有する種結晶形成用マスク要素22−1とを有する種結晶形成用マスク要素群を備える構成である。さらに、マスク15cは、種結晶形成用マスク要素21−1と種結晶形成用マスク要素22−1とに続き、上記マスクの移動の向きに沿って配された、スリット23−1aおよびスリット23−1bを有する種結晶伸張用マスク要素23−1と、スリット24−1aおよびスリット24−1bを有する種結晶伸張用マスク要素24−1と、スリット25−1aを有する種結晶伸張用マスク要素25−1と、スリット26−1aを有する種結晶伸張用マスク要素26−1とを備えた種結晶伸張用マスク要素群とを備える構成である。
【0232】
ここでは、スリット21−1aのX軸方向における中心線を第1A中心線と、スリット21−1bのX軸方向における中心線を第1B中心線と、スリット22−1aのY軸方向における中心線を第2中心線と定義する。
【0233】
このように各中心線を定義すると、マスク15cは、スリット23−1aの一部が、Y軸方向の一方の向き側においてスリット21−1aと重なるとともに、スリット23−1bの一部が、Y軸方向の上記一方の向き側においてスリット21−1bと重なる構成である。また、マスク15cは、スリット24−1aの一部が、Y軸方向の他方の向き側において上記第1A中心線と重なるとともに、スリット24−1bの一部が、Y軸方向の上記他方の向き側において上記第1B中心線と重なる構成である。さらに、マスク15cは、スリット25−1aの一部が、X軸方向の一方の向き側においてスリット22−1aと重なり、スリット26−1aの一部が、X軸方向の他方の向き側において上記第2中心線と重なる構成である。
【0234】
以下では、図44に示したマスク15cを用いて、種結晶を形成する過程と当該形成した種結晶を伸張させる過程とを、図45〜図57に基づいて説明する。なお、図45〜図57においても、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0235】
図45は、種結晶形成用マスク要素21−1のスリット21−1aおよびスリット21−1−bを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0236】
上記対応領域には、図45に示すように、種結晶形成用マスク要素21−1のスリット21−1aによって結晶21−1Aが形成されるとともに、スリット21−1bによって結晶21−1Bが形成される。ここで、図45における結晶1AAは、第1照射により形成される結晶21−1Aの一部であり、結晶1ABは、第1照射により形成される結晶21−1Bの一部である。また、これらの結晶1AAと結晶1ABとは、ともに細長い針状結晶である。
【0237】
図46は、種結晶形成用マスク要素22−1のスリット22−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0238】
この第2照射により、図46に示すとおり、上記対応領域には結晶22−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶22−1Aと第1照射により形成された結晶21−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1AAがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2AAが形成される。また、結晶22−1Aと第1照射により形成された結晶21−1Bとが交差する領域においては、針状結晶1ABがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2ABが形成される。
【0239】
ここで、この種結晶2AAと種結晶2ABとは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第13照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。
【0240】
図47は、種結晶伸張用マスク要素23−1のスリット23−1aおよびスリット23−1bを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図48は、種結晶伸張用マスク要素23−2のスリット23−2aおよびスリット23−2bを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0241】
上記第3照射によって、図47に示すとおり、上記対応領域には結晶23−1Aと結晶23−1Bとが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2AAがY+に伸張され、その結果、結晶3AAが形成される。また、結晶2ABがY+に伸張され、その結果、結晶3ABが形成される。その後、上記第4照射によって、図48に示すとおり、上記対応領域には結晶23−2Aと結晶23−2Bとが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3AAがY+に伸張され、その結果、結晶4AAが形成される。また、結晶3ABがY+に伸張され、その結果、結晶4ABが形成される。
【0242】
図49は、種結晶伸張用マスク要素24−1のスリット24−1aおよびスリット24−1bを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図50は、種結晶伸張用マスク要素24−2のスリット24−2aおよびスリット24−2bを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図51は、種結晶伸張用マスク要素24−3のスリット24−3aおよびスリット24−3bを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0243】
上記第5照射によって、図49に示すとおり、上記対応領域には結晶24−1Aと結晶24−1Bとが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4AAがY−に伸張され、その結果、結晶5AAが形成される。また、結晶4ABがY−に伸張され、その結果、結晶5ABが形成される。その後、上記第6照射によって、図50に示すとおり、上記対応領域には結晶24−2Aと結晶24−2Bとが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5AAはY−に伸張され、その結果、結晶6AAが形成される。また、結晶5ABがY−に伸張され、その結果、結晶6ABが形成される。
【0244】
さらにその後、上記第7照射によって、図51に示すとおり、上記対応領域には結晶24−3Aと結晶24−3Bとが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6AAがY−とY+とに伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。また、結晶6ABがY−に伸張され、その結果、結晶7ABが形成される。つまり、同図に示すとおり、隣接種結晶(2AA,2AB)の隣接する方向(Y軸方向)への最終伸張において、隣接種結晶間の境界に向けて相反する方向に結晶6AAと結晶6ABとが成長し、当該境界において成長結晶が同時に衝突する。
【0245】
このような点から、図44に示すマスク15cは、Y軸方向への最終伸張において、6AAのY+への伸張に用いるスリットを、6ABのY−への伸張に用いるスリット(図44においてはスリット24−3b)が兼用するように、スリットが配置されている構成であるといえる。
【0246】
図52は、種結晶伸張用マスク要素25−1のスリット25−1aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図53は、種結晶伸張用マスク要素25−2のスリット25−2aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図54は、種結晶伸張用マスク要素25−3のスリット25−3aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0247】
上記第8照射によって、図52に示すとおり、上記対応領域には結晶25−1Aが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、結晶7AAがX+に伸張され、その結果、結晶8AAが形成される。また、結晶7ABがX+に伸張され、その結果、結晶8ABが形成される。その後、上記第9照射によって、図53に示すとおり、上記対応領域には結晶25−2Aが形成される。また、この第9照射によって、同図に示すとおり、結晶8AAはX+に伸張され、その結果、結晶9AAが形成される。また、結晶8ABがX+に伸張され、その結果、結晶9ABが形成される。さらにその後、上記第10照射によって、図54に示すとおり、上記対応領域には結晶25−3Aが形成される。また、この第10照射によって、同図に示すとおり、結晶9AAがX+に伸張され、その結果、結晶10AAが形成される。また、結晶9ABがX+に伸張され、その結果、結晶10ABが形成される。
【0248】
図55は、種結晶伸張用マスク要素26−1のスリット26−1aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図56は、種結晶伸張用マスク要素26−2のスリット26−2aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図57は、種結晶伸張用マスク要素26−3のスリット26−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0249】
上記第11照射によって、図55に示すとおり、上記対応領域には結晶26−1Aが形成される。また、この第11照射によって、同図に示すとおり、結晶10AAがX−に伸張され、その結果、結晶11AAが形成される。また、結晶10ABがX−に伸張され、その結果、結晶11ABが形成される。その後、上記第12照射によって、図56に示すとおり、上記対応領域には結晶26−2Aが形成される。また、この第12照射によって、同図に示すとおり、結晶11AAはX−に伸張され、その結果、結晶12AAが形成される。また、結晶11ABがX−に伸張され、その結果、結晶12ABが形成される。さらにその後、上記第13照射によって、図57に示すとおり、上記対応領域には結晶26−3Aが形成される。また、この第13照射によって、同図に示すとおり、結晶12AAがX−に伸張され、その結果、結晶13AAが形成される。また、結晶12ABがX−に伸張され、その結果、結晶13ABが形成される。
【0250】
以上により、結晶化が完了する。
このように、図44に示すマスク15cにおいては、隣接種結晶の隣接する方向への最終伸張において、隣接種結晶間の境界に向けて相反する方向に成長し、前記境界において成長結晶が同時に衝突するような、配置および形状のスリットパターンが形成されているといえる。
【0251】
すなわち、図44に示すマスク15cは、種結晶2AAを伸張して角型結晶13AAを形成し、かつ種結晶2ABを伸張して角型結晶13ABを形成する際に、Y+への最終伸張に用いるスリットを、Y−への最終伸張に用いるスリットが兼用するように、スリットが配置されている構成といえる。
【0252】
図44に示すマスク15cは、図3に示したマスク15中に示した種結晶伸張用マスク要素3−3に相当するマスク要素を備えていない。このような、図44に示すマスク15cを用いることにより、図57に示すように、隙間なく隣接した複数個の角型結晶を形成することができる。
【0253】
なお、上記においては、Y軸方向において角型結晶が隣接する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、種結晶形成用マスク要素21−1のスリットをY軸方向に沿った配置とし、かつ種結晶形成用マスク要素22−1のスリットをX軸方向に沿った配置することにより、X軸方向において角型結晶が隣接する構成とすることができる。
【0254】
〈ステージのY軸方向への移動〉
ところで、上記においては、マスクをマスクの相対移動の向き(X軸方向の負の向き)に移動させて、角型結晶を形成することについて説明した。以下では、このような移動により角型結晶を形成しかつステージをデフォルトの位置に戻した後に、ステージをY軸方向に所定の距離だけ移動させることにより被処理物20をY軸方向に所定の距離(以下、改行量と称する)だけ移動させて、被処理物20における角型結晶を形成した領域とは異なる領域に、再度、角型結晶を形成する構成について説明する。
【0255】
以下に、このような角型結晶の形成と、Y軸方向への所定距離(以下、改行量と称する)の移動とを繰り返すことにより、複数個の角型結晶を形成する過程について、図58〜図70に基づいて説明する。なお、以下では、角型結晶が形成される領域を結晶領域と称する。
【0256】
ここでは、図3に示したマスク15から種結晶伸張用マスク要素3−3を除いたマスクを用いることとする。つまり、種結晶伸張用マスク要素4−1が種結晶伸張用マスク要素3−2に隣接する構成のマスクを用いることとする。さらに、互いに隣接する結晶化領域についての隣接方向(Y軸方向)への最終伸張において、当該隣接する結晶化領域間の境界に向けて相反する向きに結晶を成長させるとともに、当該境界において成長結晶を同時に衝突するように、上記改行量を設定しておく。
【0257】
なお、図58〜図70においては、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0258】
図58は、第1結晶化領域に角型結晶を途中まで形成してから、上記改行量だけ被処理物20を移動させた後に、第2結晶化領域に対して、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aを用いて第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0259】
上記対応領域には、図58に示すように、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aによって、結晶1−1Aが形成される。ここで、図58における結晶1ABは、第1照射により形成される結晶1−1Aの一部であり、細長い針状結晶である。
【0260】
図59は、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0261】
この第2照射により、図59に示すとおり、上記対応領域には結晶2−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶2−1Aと第1照射により形成された結晶1−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1ABがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2ABが形成される。ここで、この種結晶2ABは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第13照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。なお、同図に示すとおり、結晶2ABの図心を、XY座標系の原点とする。
【0262】
図60は、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図61は、種結晶伸張用マスク要素3−2のスリット3−2aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0263】
上記第3照射によって、図60に示すとおり、上記対応領域(第2結晶化領域)には結晶3−1Aが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2ABがY+に伸張され、その結果、結晶3ABが形成される。その後、上記第4照射によって、図61に示すとおり、上記対応領域には結晶3−2Aが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3ABがY+に伸張され、その結果、結晶4ABが形成される。
【0264】
図62は、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図63は、種結晶伸張用マスク要素4−2のスリット4−2aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図64は、種結晶伸張用マスク要素4−3のスリット4−3aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0265】
上記第5照射によって、図62に示すとおり、上記対応領域には結晶4−1Aが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4ABはY−に伸張され、その結果、結晶5ABが形成される。その後、上記第6照射によって、図63に示すとおり、上記対応領域には結晶4−2Aが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5ABがY−に伸張され、その結果、結晶6ABが形成される。さらにその後、第7照射によって、図64に示すとおり、上記対応領域には結晶4−3Aが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6ABがY−に伸張され、その結果、結晶7ABが形成される。さらに、同図に示すとおり、結晶6AAがY+に伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。
【0266】
つまり、同図に示すとおり、隣接種結晶(第1結晶化領域において形成された種結晶2AA(図示せず),種結晶2AB)の隣接する方向(Y軸方向)への最終伸張において、隣接種結晶間の境界に向けて相反する方向に結晶6AAと結晶6ABとが成長し、当該境界において成長結晶が同時に衝突する。
【0267】
図65は、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図66は、種結晶伸張用マスク要素5−2のスリット5−2aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図67は、種結晶伸張用マスク要素5−3のスリット5−3aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0268】
上記第8照射によって、図65に示すとおり、上記対応領域には結晶5−1Aが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、種結晶7ABはX+に伸張され、その結果、結晶8ABが形成される。その後、上記第9照射によって、図66に示すとおり、上記対応領域には結晶5−2Aが形成される。また、この第9照射によって、同図に示すとおり、結晶8ABがX+に伸張され、その結果、結晶9ABが形成される。さらにその後、第10照射によって、図67に示すとおり、上記対応領域には結晶5−3Aが形成される。また、この第10照射によって、同図に示すとおり、結晶9ABがX+に伸張され、その結果、結晶10ABが形成される。
【0269】
図68は、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図69は、種結晶伸張用マスク要素6−2のスリット6−2aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図70は、種結晶伸張用マスク要素6−3のスリット6−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0270】
上記第11照射によって、図68に示すとおり、上記対応領域には結晶6−1Aが形成される。また、この第11照射によって、同図に示すとおり、種結晶10ABはX−に伸張され、その結果、結晶11ABが形成される。その後、上記第12照射によって、図69に示すとおり、上記対応領域には結晶6−2Aが形成される。また、この第12照射によって、同図に示すとおり、結晶11ABがX−に伸張され、その結果、結晶12ABが形成される。さらにその後、第13照射によって、図70に示すとおり、上記対応領域には結晶6−3Aが形成される。また、この第13照射によって、同図に示すとおり、結晶12ABがX−に伸張され、その結果、結晶13ABが形成される。
【0271】
以上により、結晶化が完了する。
このような結晶化を行うレーザ結晶化装置1は、第1結晶化領域において種結晶2AAを伸張して角型結晶13AAを形成し、かつ第2結晶化領域において種結晶2ABを伸張して角型結晶13ABを形成する際に、角型結晶13AAのY+への最終伸張に用いるスリットを角型結晶13ABのY−への最終伸張に用いるスリットが兼用するように、スリットの配置と改行量とが設定されている構成であるといえる。
【0272】
また、このような構成の装置を用いて結晶化を行うことにより、図70に示すように、隙間なく隣接した結晶化領域を形成することができる。なお、上記においては、Y軸方向の正の向き(Y+)へ移動(改行)する構成を例に挙げて説明したが、Y軸方向の負の向き(Y−)へ移動する構成としてもよい。
【0273】
ところで、一般的に、TFTのチャンルサイズが角型結晶よりも大きい場合、チャネル内の角型結晶以外の領域は、結晶化されていない膜(非晶質半導体膜)で構成されることになる。このようなTFTは、結晶化されていない膜をも含むため、このような膜を含まないTFTに比べて特性が低くなる。
【0274】
一方で、チャネルサイズが大きい場合に、高性能のTFTを得るためには、チャネル内を角型結晶で埋める必要がある。この手段として、チャネルサイズよりも大きな角型結晶を形成し、その角型結晶の中にチャネルを配置する方法と、図70に示したような複数の角型結晶が隙間なく並んだ角型結晶群を形成し、この角型結晶群の中にチャネルを配置する方法とがある。
【0275】
上述したように改行量分の移動を行い角型結晶を形成する構成では、図70に示したように、隣接した角型結晶(隣接した結晶化領域)を形成することによって、複数の角型結晶がリッジを隔てて複数個並ぶ角型結晶群を得ることができる。このため、当該角型結晶群を用いることにより、チャネルサイズが大きくても、高性能のTFTを製作することができる。
【0276】
〈マスク構成の他の変更例〉
ところで、上記においては、種結晶形成用マスク要素群における複数のスリットの配置パターンが互い交差するパターンである例を挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、一部の照射領域を重畳させながら伸張した針状結晶(例えば、図98(b)の針状結晶)に対し、交差するパターンであってもよい。
【0277】
この場合、一部の照射領域を重畳させながら結晶を伸張することにより、針状結晶の結晶幅を均一なものとすることができる。このため、後に交差したパターンを有するスリットを用いてレーザ光を照射した場合に形成される矩形状種結晶は、一部の照射領域を重畳させない構成に比べて、より均質な結晶性を有することになる。
【0278】
なお、上記の図3に示したマスク15および図20に示したマスク15aにおいては、j=k=l=m=3の例を示してあるが、これに限るものではなく、j、k、l、mが増加するほど大きな角型結晶が得られる。
【0279】
また、本実施の形態においては、種結晶形成用マスク要素のスリットの幅と種結晶伸張用マスク要素のスリットの幅とを、同一幅とした例を挙げて説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、種結晶形成用マスク群における種結晶形成用マスク要素のスリットの幅が、種結晶伸張用マスク群における種結晶伸張用マスク要素のスリットの幅と同じであるか、あるいは、種結晶伸張用マスク要素のスリットの幅より狭ければよい。これは、種結晶形成用マスク群における種結晶形成用マスク要素のスリットの幅が狭いほど、均質な矩形状種結晶を得ることができるためである。
【0280】
ところで、上記においては、X軸方向の正の向きと、X軸方向の負の向きと、Y軸方向の正の向きと、Y軸方向の負の向きとに、種結晶を伸張させる例を挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
【0281】
X軸方向の正の向きと、X軸方向の負の向きと、Y軸方向の正の向きと、Y軸方向の負の向きとのうち、少なくとも3つの向きに種結晶を伸張させる構成であればよい。このような構成であっても、例えばX軸方向の正負の向きとY軸方向の正の向きとにしか種結晶が伸張されない従来の構成に比べ、大きな角型結晶を得ることができる。
【0282】
このようなマスクの構成は、例えば図2に示すマスク15から、例えばY軸方向の負の向きに伸張させるために用いた種結晶伸張用マスク要素を取り除き、配列はそのままに他のマスク要素を隣接させるような構成とすればよい。なお、この場合には、X軸方向の正の向きと、X軸方向の負の向きと、Y軸方向の正の向きとに種結晶が伸張することになる。
【0283】
つまり、X軸方向の正の向きに伸張させるためのマスク要素と、X軸方向の負の向きに伸張させるためのマスク要素と、Y軸方向の正の向きに伸張させるためのマスク要素と、Y軸方向の負の向きに伸張させるためのマスク要素とのうち、いずれかのマスク用を備えない構成とすることにより、これら4つの方向のうち3つの方向のみに種結晶を伸張させることができる。
【0284】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態にかかるレーザ結晶化装置について、図71から図94に基づいて説明すると、以下のとおりである。なお、実施の形態1で示した部材については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0285】
本実施の形態にかかるレーザ結晶化装置は、マスクの構成が実施の形態1で示したマスクの構成と異なっているだけで、他の構成は実施の形態1のレーザ結晶化装置1と同じである。
【0286】
実施の形態1では、Y軸方向への伸張が完了してからX軸方向への伸張を行うレーザ結晶化方法、あるいは、X軸方向の伸張が完了してからY軸方向の伸張を行うレーザ結晶化方法について説明した。一方、本実施の形態は、実施の形態1のレーザ結晶化方法と異なっており、X軸方向への伸張とY軸方向への伸張とを交互に繰り返しながら結晶を伸張させる。
【0287】
以下、具体的なマスクの構成を示して、角型結晶を形成する過程を説明する。
図71は、本実施の形態で用いる、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。
【0288】
同図に示すマスク150は、種結晶伸張用マスク要素の配列が、図3に示したマスク15における種結晶伸張用マスク要素と異なっている。その他は、図71に示すマスク150と図3に示すマスク15とは、同一である。
【0289】
以下では、図71に示したマスク150を用いて、種結晶を形成する過程と当該形成した種結晶を伸張させる過程とを、図72〜図85に基づいて説明する。なお、図72〜図85においても、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0290】
図72は、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0291】
上記対応領域には、図72に示すように、種結晶形成用マスク要素1−1のスリット1−1aによって、結晶1−1Aが形成される。ここで、図72における結晶1AAは、第1照射により形成される結晶1−1Aの一部であり、細長い針状結晶である。
【0292】
図73は、種結晶形成用マスク要素2−1のスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0293】
この第2照射により、図73に示すとおり、上記対応領域には結晶2−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶2−1Aと第1照射により形成された結晶1−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1AAがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2AAが形成される。ここで、この種結晶2AAは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第14照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。
【0294】
図74は、種結晶伸張用マスク要素3−1のスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図75は、種結晶伸張用マスク要素4−1のスリット4−1aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0295】
上記第3照射によって、図74に示すとおり、上記対応領域には結晶3−1Aが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2AAがY+に伸張され、その結果、結晶3AAが形成される。その後、上記第4照射によって、図75に示すとおり、上記対応領域には結晶4−1Aが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3AAがY−に伸張され、その結果、結晶4AAが形成される。
【0296】
図76は、種結晶伸張用マスク要素5−1のスリット5−1aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図77は、種結晶伸張用マスク要素6−1のスリット6−1aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0297】
上記第5照射によって、図76に示すとおり、上記対応領域には結晶5−1Aが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4AAがX+に伸張され、その結果、結晶5AAが形成される。その後、第6照射によって、図77に示すとおり、上記対応領域には結晶6−1Aが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5AAはX−に伸張され、その結果、結晶6AAが形成される。
【0298】
図78は、種結晶伸張用マスク要素3−2のスリット3−2aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図79は、種結晶伸張用マスク要素4−2のスリット4−2aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0299】
上記第7照射によって、図78に示すとおり、上記対応領域には結晶3−2Aが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6AAがY+に伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。その後、第8照射によって、図79に示すとおり、上記対応領域には結晶4−2Aが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、結晶7AAがY−に伸張され、その結果、結晶8AAが形成される。
【0300】
図80は、種結晶伸張用マスク要素5−2のスリット5−2aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図81は、種結晶伸張用マスク要素6−2のスリット6−2aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0301】
上記第9照射によって、図80に示すとおり、上記対応領域には結晶5−2Aが形成される。また、この第9照射によって、同図に示すとおり、種結晶8AAはX+に伸張され、その結果、結晶9AAが形成される。その後、上記第10照射によって、図81に示すとおり、上記対応領域には結晶6−2Aが形成される。また、この第10照射によって、同図に示すとおり、結晶9AAがX−に伸張され、その結果、結晶10AAが形成される。
【0302】
図82は、種結晶伸張用マスク要素3−3のスリット3−3aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図83は、種結晶伸張用マスク要素4−3のスリット4−3aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0303】
上記第11照射によって、図82に示すとおり、上記対応領域には結晶3−3Aが形成される。また、この第11照射によって、同図に示すとおり、結晶10AAがY+に伸張され、その結果、結晶11AAが形成される。その後、上記第12照射によって、図83に示すとおり、上記対応領域には結晶4−3Aが形成される。また、この第12照射によって、同図に示すとおり、種結晶11AAはY−に伸張され、その結果、結晶12AAが形成される。
【0304】
図84は、種結晶伸張用マスク要素5−3のスリット5−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図85は、種結晶伸張用マスク要素6−3のスリット6−3aを用いて、第14照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0305】
上記第13照射によって、図84に示すとおり、上記対応領域には結晶5−3Aが形成される。また、この第13照射によって、同図に示すとおり、結晶12AAがX+に伸張され、その結果、結晶13AAが形成される。その後、第14照射によって、図85に示すとおり、上記対応領域には結晶6−3Aが形成される。また、この第14照射によって、同図に示すとおり、結晶13AAがX−に伸張され、その結果、結晶14AAが形成される。
【0306】
以上により、結晶化が完了する。
その結果、マスク150を用いることにより、図85に示したとおり、図3に示したマスク15を用いた場合に得られる角型結晶と同じ大きさの角型結晶を得ることができる。
【0307】
以上のように、本実施の形態においては、マスク150を用いることにより種結晶をX軸方向およびY軸方向に交互に少しずつ伸張させることができる。それゆえ、本実施の形態においては、実施の形態1に記した、例えば種結晶をY軸方向に伸張させた結晶をX軸方向に伸張させることにより得られる角型結晶よりも、結晶粒割れが少ない角型結晶を得ることができる。
【0308】
〈マスク構成の変更例〉
次に、X軸方向への伸張とY軸方向への伸張とを交互に繰り返しながら結晶を伸張させるとともに、Y+への伸張とY−への伸張を同時に行い、かつX+への伸張とX−への伸張を同時に行う構成について、図86〜図94に基づいて説明する。
【0309】
図86は、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。同図に示すマスク150aは、Y+への伸張用スリットとY−への伸張用スリットとを同一マスク要素に配置するとともに、X+への伸張用スリットとX−への伸張用スリットとを同一マスク要素に配置している。
【0310】
マスク150aは、種結晶伸張用マスク要素の配列が、実施の形態1で示したマスク15b(図35参照)における種結晶伸張用マスク要素と異なっている。その他は、図86に示すマスク150aと図35に示すマスク15bとは、同一である。なお、図86において、図35に示すマスク15bの種結晶伸張用マスク要素と同じマスク要素については、同一の符号を付している。
【0311】
以下では、図86に示したマスク150aを用いて、種結晶を形成する過程と当該形成した種結晶を伸張させる過程とを、図87〜図94に基づいて説明する。なお、図87〜図94においても、細線で囲まれた領域が各回の照射により結晶化される領域を示し、点線で囲まれた領域が各回の照射よりも1回前の照射により結晶化される領域を示し、太線で囲まれた領域が当該照射により結晶化される結晶を示し、斜線を施した領域が各回の照射より1回前の照射により形成される結晶を示している。
【0312】
図87は、種結晶形成用マスク要素11−1のスリット11−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0313】
上記対応領域には、図87に示すように、種結晶形成用マスク要素11−1のスリット11−1aによって、結晶11−1Aが形成される。ここで、図36における結晶1AAは、第1照射により形成される結晶11−1Aの一部であり、細長い針状結晶である。
【0314】
図88は、種結晶形成用マスク要素12−1のスリット12−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0315】
この第2照射により、図88に示すとおり、上記対応領域には結晶12−1Aが形成される。このとき、第1照射で形成されたような針状結晶が形成される。さらに、結晶12−1Aと第1照射により形成された結晶11−1Aとが交差する領域においては、針状結晶1AAがX−に引き伸ばされて、角型の種結晶2AAが形成される。ここで、この種結晶2AAは、略閉ループの結晶粒界(リッジ)に囲まれた結晶であって、その内部には結晶粒界を含まない結晶である。なお、以降のレーザ光の照射(第3照射〜第8照射)により、この種結晶を伸張させていくことになる。
【0316】
図89は、種結晶伸張用マスク要素13−1のスリット13−1aおよびスリット14−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図90は、種結晶伸張用マスク要素15−1のスリット15−1aおよびスリット16−1aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0317】
上記第3照射によって、図89に示すとおり、上記対応領域には結晶13−1Aと結晶14−1Aとが形成される。また、この第3照射によって、同図に示すとおり、種結晶2AAがY+とY−とに伸張され、その結果、結晶3AAが形成される。その後、上記第4照射によって、図90に示すとおり、上記対応領域には結晶15−1Aと結晶16−1Aとが形成される。また、この第4照射によって、同図に示すとおり、結晶3AAがX+とX−とに伸張され、その結果、結晶4AAが形成される。
【0318】
図91は、種結晶伸張用マスク要素13−2のスリット13−2aおよびスリット14−2aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図92は、種結晶伸張用マスク要素15−2のスリット15−2aおよびスリット16−2aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0319】
上記第5照射によって、図91に示すとおり、上記対応領域には結晶13−2Aと結晶14−2Aとが形成される。また、この第5照射によって、同図に示すとおり、結晶4AAがY+とY−とに伸張され、その結果、結晶5AAが形成される。その後、上記第6照射によって、図92に示すとおり、上記対応領域には結晶15−2Aと結晶16−2Aとが形成される。また、この第6照射によって、同図に示すとおり、結晶5AAはX+とX−とに伸張され、その結果、結晶6AAが形成される。
【0320】
図93は、種結晶伸張用マスク要素13−3のスリット13−3aおよびスリット14−3aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。また、図94は、種結晶伸張用マスク要素15−3のスリット15−3aおよびスリット16−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物20の上面図である。
【0321】
上記第7照射によって、図93に示すとおり、上記対応領域には結晶13−3Aと結晶14−3Aとが形成される。また、この第7照射によって、同図に示すとおり、結晶6AAがY+とY−とに伸張され、その結果、結晶7AAが形成される。その後、第8照射によって、上記対応領域には結晶15−3Aと結晶16−3Aとが形成される。また、この第8照射によって、同図に示すとおり、結晶7AAがX+とX−とに伸張され、その結果、結晶8AAが形成される。
【0322】
以上により、結晶化が完了する。
このような図86に示したマスク150aを用いることにより、図71に示したマスク150を用いる場合に比べて、同じ大きさの角型結晶を得る際の照射回数を減らすことができる。これにより、結晶作製時間を短縮することができる。
【0323】
また、照射回数を減らすことができるため、レーザ光の照射に伴って被処理物20に発生する蓄熱を抑制することができる。これにより、被処理物20の損傷を低減する効果を奏する。
【0324】
さらに、本実施の形態においても、実施の形態1に記したように、改行量分の移動を行い角型結晶を形成する構成とし、隣接した角型結晶(隣接した結晶化領域)を形成することによって、複数の角型結晶がリッジを隔てて複数個並ぶ角型結晶群を得ることができる。このため、当該角型結晶群を用いることにより、チャネルサイズが大きくても、高性能のTFTを製作することができる。
【0325】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施の形態にかかるレーザ結晶化装置について、図95に基づいて説明すると、以下のとおりである。なお、実施の形態1および実施の形態2で示した部材については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0326】
図95は、レーザ結晶化装置100の概略構成を示した図である。
レーザ結晶化装置100は、同図に示すとおり、レーザ光発振器10と、可変減衰器11と、ミラー12と、ミラー13と、照明光学素子14と、マスク15と、結像レンズ16と、ミラー17と、ステージ18と、制御装置19と、レーザ光発振器30と、可変減衰器31と、ミラー32とを備えている。また、ステージ18上には、レーザ光の照射対象となる被処理物20が載置される。
【0327】
つまり、本実施の形態にかかるレーザ結晶化装置100は、レーザ結晶化装置1が備える部材に加え、さらにレーザ光発振器30と可変減衰器31とミラー32とを備える点において、実施の形態1にかかるレーザ結晶化装置1と異なっている。
【0328】
レーザ光発振器30は、固体状態にある非晶質半導体薄膜23への吸収率が高い範囲の波長を有するレーザ光を照射することができるものであれば、特に限定されるものではない。たとえば、レーザ発振器30として、波長10.6μmの炭酸ガスレーザ発振器を用いることができる。ここで、レーザ光発振器30から照射されるレーザ光の1回の照射あたりのエネルギー量は、固体状態の非晶質半導体薄膜23の厚さ方向に亘って溶融させるエネルギー量未満とする。
【0329】
可変減衰器31は、レーザ光の吸収や散乱を通じて、レーザ光発振器30から出射されたレーザ光のパワーを減衰させる。特に、可変減衰器31は、外部からの信号もしくは調節つまみによってその減衰量を変化させることのできる。可変減衰器31で減衰されたパルスレーザ光は、ミラー32に向かって出射される。
【0330】
ミラー32は、可変減衰器31から出射したパルスレーザ光を、ステージ18上の被処理物20の方向へ反射する。
【0331】
つまり、レーザ結晶化装置100においては、レーザ光発振器300から出射されたレーザ光が、可変減衰器31を通り、ステージ18上に載置された被処理物20の表面に対し入射する。
【0332】
また、レーザ結晶化装置100では、レーザ光発振器10から出射されたレーザ光(以下、第1レーザ光と称する)と、レーザ光発振器30から出射されたレーザ光(以下、第2レーザ光と称する)とが、同時に被処理物20に照射される。なお、本実施の形態においては、制御装置19は、さらに、レーザ光発振器30におけるレーザ光の出射のタイミングを制御する。
【0333】
被処理物20へのレーザ光の入射方向に関しては、例えば、レーザ光発振器10から出射した第1レーザ光を非晶質半導体薄膜23に対して垂直方向から入射させ、レーザ光発振器30から出射した第2レーザ光を非晶質半導体薄膜23に対し斜方から入射させる。
【0334】
また、第2レーザ光による被処理物20におけるレーザ光照射領域(以下、第2照射領域と称する)が、第1レーザ光による被処理物20における照射領域(以下、第1照射領域と称する)を包含するような、第1照射領域よりも広い領域となるように、第2レーザ光を調整する。
【0335】
さらに、制御装置19は、被処理物20に対する第2レーザ光の照射を開始した後に、被処理物20に対する第1レーザ光の照射を開始するとともに、当該第2レーザ光の照射を終了する前に当該第1レーザ光の照射を終了させる。
【0336】
レーザ結晶化装置100では、第1照射領域と第2照射領域とを上記のように設定するとともに、第1レーザ光と第2レーザ光との照射タイミングを上記のように設定することにより、溶融状態にある非晶質半導体膜23が凝固するまでの時間を延長することができる。
【0337】
それゆえ、第1レーザ光のみを照射する構成に比べて、レーザ結晶化装置100では結晶成長距離を大幅に延ばすことができる。したがって、第1レーザ光の1回の照射によって、実施の形態1および2の構成に比べ、結晶成長をより長くすることが可能となる。
【0338】
それゆえ、マスク15におけるスリットのスリット幅を広くすることが可能となる。したがって、本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2に比べて、より巨大な角型結晶を形成することも可能となる。
【0339】
なお、上記においては、マスク15を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、マスク15の代わりにマスク15a、マスク15b、マスク15c、マスク150、またはマスク150aを用いてもよい。
【0340】
また、図95には記載していないが、レーザ結晶化装置100に対し、レーザ光発振器30が出射するレーザ光を所望の寸法に整形するためのビーム整形光学系や、当該レーザ光を均一な強度で照射するためのビーム均一化光学系などを必要に応じて導入してもよい。
【0341】
また、上記においては、第1レーザ光を非晶質半導体薄膜23に対して垂直方向から入射させ、第2レーザ光を非晶質半導体薄膜23に対し斜方から入射させたが、このような方向に限定されるものではない。
【0342】
また、第2照射領域が第1照射領域を包含するような構成を例に挙げたが、第2照射領域が第1照射領域を完全に包含しない場合であっても、照射領域が重複している領域があれば、当該領域については上述した効果を奏する。
【0343】
なお、上記の各実施の形態において用いたマスクのスリット形状を、矩形状としたが、これに限定されるものではない。例えば、スリット形状を円形や楕円形としてもよい。
【0344】
また、上記においては、ステージ18が移動する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、マスクが移動する構成としてもよい。
【0345】
また、上記においては、マスクが各マスク要素からなる構成を示した。つまり、物理的に一つのマスクを用いた構成を挙げて説明した。しかしながら、複数のマスクが集合して一つのマスクをなす構成であってもよい。この場合、複数のマスクのうち各マスクが、マスク要素に相当することになる。
【0346】
また、上記の各実施形態においては、種結晶の形成方法として、交差する2つのスリットを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、単独のスリット(例えば、図3のスリット1−1a)で形成される針状結晶を上記の種結晶とし、当該種結晶を種結晶伸張用マスク要素群で伸張させる構成としてもよい。あるいは、円形の開口部(円状のスリット)を有するマスクを用いて形成される円状結晶を上記の種結晶とし、当該種結晶を種結晶伸張用マスク要素群で伸張させる構成としてもよい。さらに、第1のスリット、第1のスリットに垂直に配されたスリット、および第1のスリットに平行なスリットといったように、3つ以上のスリットを用いて種結晶を形成してもよい。
【0347】
また、上記円状のスリットを有するマスクを介してレーザ光を照射することによって種結晶を伸張させる場合や、矩形の種結晶に対して斜め方向から矩形の開口部(矩形状のスリット)を有するマスクを介してレーザ光を照射することによって当該種結晶を伸張させる場合のように、レーザ結晶化装置によるレーザ結晶化の方法を、同一象限に関し2つの方向(例えば1X+方向および1Y+方向)に同時に種結晶を伸張させる構成とすることもできる。
【0348】
また、図44に示したマスク15cにおいては、マスク要素21−1とマスク要素22−1とが種結晶形成用マスク要素に該当し、当該マスク15cによって、2つの種結晶を同時に生成できた。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。マスク要素の数と各マスク要素におけるスリットの配置とを適宜変更することにより、X軸方向に2つ以上の種結晶、および/または、Y軸方向に2つ以上の種結晶を同時に形成することもできる。
【0349】
つまり、種結晶形成用マスク要素群が、上述した移動方向に沿って配された、第1方向に伸びた開口部を1つ以上有する第1形成マスク要素と、第2方向に伸びた開口部を1つ以上有する第2形成マスク要素とを備えていればよい。
【0350】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0351】
【図1】レーザ結晶化装置の概略構成を示した図である。
【図2】被処理物の断面を示した断面図である。
【図3】角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。
【図4】種結晶形成用マスク要素を用いた第1照射と、マスク15が距離M移動した後の、他の種結晶形成用マスク要素を用いた第2照射とによって形成される種結晶の図心Pを原点とするX−Y直交座標系を示した図である。
【図5】図3に示したマスクのスリット1−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図6】図3に示したマスクのスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図7】図3に示したマスクのスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図8】図3に示したマスクのスリット3−2aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図9】図3に示したマスクのスリット3−3aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図10】図3に示したマスクのスリット4−1aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図11】図3に示したマスクのスリット4−2aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図12】図3に示したマスクのスリット4−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図13】図3に示したマスクのスリット5−1aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図14】図3に示したマスクのスリット5−2aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図15】図3に示したマスクのスリット5−3aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図16】図3に示したマスクのスリット6−1aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図17】図3に示したマスクのスリット6−2aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図18】図3に示したマスクのスリット6−3aを用いて、第14照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図19】種結晶と、最終的に形成される角型結晶との関係を示した図である。
【図20】角型結晶を形成するための他のマスクの構成を示した図である。
【図21】図20に示したマスクのスリット1−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図22】図20に示したマスクのスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図23】図20に示したマスクのスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図24】図20に示したマスクのスリット4−1aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図25】図20に示したマスクのスリット3−2aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図26】図20に示したマスクのスリット4−2aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図27】図20に示したマスクのスリット3−3aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図28】図20に示したマスクのスリット4−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図29】図20に示したマスクのスリット5−1aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図30】図20に示したマスクのスリット6−1aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図31】図20に示したマスクのスリット5−2aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図32】図20に示したマスクのスリット6−2aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図33】図20に示したマスクのスリット5−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図34】図20に示したマスクのスリット6−3aを用いて、第14照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図35】角型結晶を形成するための、さらに他のマスクの構成を示した図である。
【図36】図35に示したマスクのスリット11−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図37】図35に示したマスクのスリット12−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図38】図35に示したマスクのスリット13−1aおよびスリット14−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図39】図35に示したマスクのスリット13−2aおよびスリット14−2aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図40】図35に示したマスクのスリット13−3aおよびスリット14−3aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図41】図35に示したマスクのスリット15−1aおよびスリット16−1aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図42】図35に示したマスクのスリット15−2aおよびスリット16−2aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図43】図35に示したマスクのスリット15−3aおよびスリット16−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図44】角型結晶を形成するための、さらに他のマスクの構成を示した図である。
【図45】図44に示したマスクのスリット21−1aおよびスリット21−1−bを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図46】図44に示したマスクのスリット22−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図47】図44に示したマスクのスリット23−1aおよびスリット23−1bを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図48】図44に示したマスクのスリット23−2aおよびスリット23−2bを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図49】図44に示したマスクのスリット24−1aおよびスリット24−1bを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図50】図44に示したマスクのスリット24−2aおよびスリット24−2bを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図51】図44に示したマスクのスリット24−3aおよびスリット24−3bを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図52】図44に示したマスクのスリット25−1aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図53】図44に示したマスクのスリット25−2aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図54】図44に示したマスクのスリット25−3aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図55】図44に示したマスクのスリット26−1aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図56】図44に示したマスクのスリット26−2aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図57】図44に示したマスクのスリット26−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図58】第1結晶化領域に角型結晶を途中まで形成した後、第2結晶化領域に対して、他のマスクのスリット1−1aを用いて第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図59】上記他のマスクのスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図60】上記他のマスクのスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図61】上記他のマスクのスリット3−2aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図62】上記他のマスクのスリット4−1aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図63】上記他のマスクのスリット4−2aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図64】上記他のマスクのスリット4−3aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図65】上記他のマスクのスリット5−1aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図66】上記他のマスクのスリット5−2aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図67】上記他のマスクのスリット5−3aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図68】上記他のマスクのスリット6−1aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図69】上記他のマスクのスリット6−2aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図70】上記他のマスクのスリット6−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図71】他の実施の形態に係る、角型結晶を形成するためのマスクの構成を示した図である。
【図72】図71に示したマスクのスリット1−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図73】図71に示したマスクのスリット2−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図74】図71に示したマスクのスリット3−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図75】図71に示したマスクのスリット4−1aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図76】図71に示したマスクのスリット5−1aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図77】図71に示したマスクのスリット6−1aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図78】図71に示したマスクのスリット3−2aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図79】図71に示したマスクのスリット4−2aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図80】図71に示したマスクのスリット5−2aを用いて、第9照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図81】図71に示したマスクのスリット6−2aを用いて、第10照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図82】図71に示したマスクのスリット3−3aを用いて、第11照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図83】図71に示したマスクのスリット4−3aを用いて、第12照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図84】図71に示したマスクのスリット5−3aを用いて、第13照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図85】図71に示したマスクのスリット6−3aを用いて、第14照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図86】角型結晶を形成するための他のマスクの構成を示した図である。
【図87】図86に示したマスクのスリット11−1aを用いて、第1照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図88】図86に示したマスクのスリット12−1aを用いて、第2照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図89】図86に示したマスクのスリット13−1aおよびスリット14−1aを用いて、第3照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図90】図86に示したマスクのスリット15−1aおよびスリット16−1aを用いて、第4照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図91】図86に示したマスクのスリット13−2aおよびスリット14−2aを用いて、第5照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図92】図86に示したマスクのスリット15−2aおよびスリット16−2aを用いて、第6照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図93】図86に示したマスクのスリット13−3aおよびスリット14−3aを用いて、第7照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図94】図86に示したマスクのスリット15−3aおよびスリット16−3aを用いて、第8照射により結晶化を行った場合における、被処理物の上面図である。
【図95】さらに他の実施の形態に係るレーザ結晶化装置の概略構成を示した図である。
【図96】従来のマスクを示した図である。
【図97】上記従来のマスクを用いて結晶を成長させる過程における結晶の成長状態を示した図であり、(a)は上記マスクによって基板上に形成されるレーザ光の照射パターンを示した図であり、(b)は(a)に示した照射パターンを有するレーザ光によって基板上に形成される結晶を示した図であり、(c)はマスクを基板に対して(a)の矢印の方向に長さMだけ相対的に移動させた後にレーザ光を照射した場合における、基板上に形成される結晶を示した図であり、(d)はマスクをさらに長さMだけ相対的に移動させた後にレーザ光を照射した場合における、基板上に形成される結晶を示した図であり、(e)はマスクをさらに長さMだけ相対的に移動させた後にレーザ光を照射した場合における、基板上に形成される結晶を示した図である。
【図98】図97に示した基板上の領域において成長する結晶の状態を図97に対応付けて示した図であって、(a)は第1照射によって上記領域に形成される結晶を示した図であり、(b)は第2照射によって上記領域に形成される結晶を示した図であり、(c)は第3照射によって上記領域に形成される結晶を示した図であり、(d)は第4照射によって上記領域に形成される結晶を示した図である。
【図99】従来の他のマスクを示した図である。
【図100】図99のマスクを用いて結晶を成長させる過程における結晶の成長状態を示した図であって、(a)は上記マスクによって基板上に形成されるレーザ光の照射パターンを示した図であり、(b)は(a)に示した照射パターンを有するレーザ光によって基板上に形成される結晶を示した図であり、(c)は上記マスクを基板に対して(a)の矢印の方向に長さMだけ相対的に移動させた後にレーザ光を照射した場合における、基板上に形成される結晶を示した図であり、(d)は上記マスクをさらに長さMだけさらに相対的に移動させた後にレーザ光を照射した場合における、基板上に形成される結晶を示した図であり、(e)は上記マスクさらに長さMだけさらに相対的に移動させた後に、レーザ光を照射した場合における、基板80上に形成される結晶を示した図である。
【図101】図100に示した基板上の領域において成長する結晶の状態を図100に対応付けて示した図であって、(a)は第1照射によって上記領域に形成される結晶を示した図であり、(b)は第2照射によって上記領域に形成される結晶を示した図であり、(c)は第3照射によって上記領域に形成される結晶を示した図であり、(d)は第4照射によって上記領域に形成される結晶を示した図である。
【図102】図99のマスクを用いた場合における第1照射により形成される結晶を示した図である。
【図103】図99のマスクを用いた場合における第2照射により形成される結晶を示した図である。
【図104】図99のマスクを用いた場合における第3照射により形成される結晶を示した図である。
【図105】図99のマスクを用いた場合における第4照射により形成される結晶を示した図である。
【図106】種結晶と最終的に形成される角型結晶との関係を示した図である。
【図107】上記第1照射と上記第2照射とによって形成される種結晶の図心Pを原点とするX−Y直交座標系を示した図である。
【符号の説明】
【0352】
1,100 レーザ結晶化装置、10,30 レーザ光発振器、15,15a,15b,15c,150,150a マスク、18 ステージ、19 制御装置、20 被処理物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、当該開口部を介して、相対的に移動する被処理物に対してレーザ光を照射することによって、前記被処理物上に照射パターンを形成するためのマスクであって、
前記移動方向に沿って配された、種結晶形成用マスク要素群と種結晶伸張用マスク要素群とを備え、
前記レーザ光の照射によって略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が形成するように、前記種結晶形成用マスク要素群の開口部が配置され、
前記種結晶中の特定位置を原点とするX−Y直交座標系について、kを1から4の自然数とし、第k象限におけるX軸正方向をkX+と、X軸負方向をkX−と、Y軸正方向をkY+と、Y軸負方向をkY−とすると、
前記種結晶形成用マスク要素群に続く前記種結晶伸張用マスク要素群を介して照射される前記レーザ光の照射タイミングの制御と、前記移動の制御とにより、前記形成された略閉ループの結晶粒界に包囲された種結晶が、1X+、1Y+、2X−、2Y+、3X−、3Y−、4X+、および4Y−の各方向に伸張するように、前記種結晶伸張用マスク要素群の開口部が配置されている、マスク。
【請求項2】
前記1Y+および前記2Y+の2方向、前記2X−および前記3X−の2方向、前記3Y−および前記4Y−の2方向、ならびに前記1X+および前記4X+の2方向のうち、少なくともいずれか1つの2方向に前記種結晶を同時伸張するように、前記種結晶伸張用マスク要素群の開口部が配置されている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記種結晶伸張用マスク要素群は、X軸正方向をX+と、X軸負方向をX−と、Y軸正方向をY+と、Y軸負方向をY−とし、nを1以上の自然数とすると、前記Y+方向に前記種結晶を伸張させるための第4n−3開口部を有する第4n−3伸張マスク要素と、前記Y−方向に前記種結晶を伸張させるための第4n−2開口部を有する第4n−2伸張マスク要素と、前記X+方向に前記種結晶を伸張させるための第4n−1開口部を有する第4n−1伸張マスク要素と、前記X−方向に前記種結晶を伸張させるための第4n開口部を有する第4n伸張マスク要素とを備える、請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記第4n−3開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、
前記第4n−2開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、
前記第4n−1開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、
前記第4n開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配されている、請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
sを1以上の自然数、第s伸張マスク要素の第s開口部によって、基板上に形成される照射パターンを第s照射パターンとすると、
前記nの値が1のときの第1照射パターンは、少なくとも第1象限および第2象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、
前記nの値が1のときの第2照射パターンは、少なくとも第3象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、
前記nの値が1のときの第3照射パターンは、少なくとも第1象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、
前記nの値が1のときの第4照射パターンは、少なくとも第2象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なるように、第1〜4開口部が配置されている、請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記第4n−3伸張マスク要素と第4n−2伸張マスク要素と第4n−1伸張マスク要素と第4n伸張マスク要素との各マスク要素に関し、nの値がkであるときのマスク要素をk番目のマスク要素とし、nの値がk+1であるときのマスク要素をk+1番目のマスク要素とし、さらに、前記k番目のマスク要素の開口部をk番目の開口部と、前記k+1番目のマスク要素の開口部をk+1番目の開口部と、前記k番目の開口部の前記第1方向における中心線を第1方向におけるk番目の中心線とし、前記k番目の開口部の前記第2方向における中心線を第2方向におけるk番目の中心線とすると、
前記第4n−3伸張マスク要素に関しては、前記k+1番目のマスク要素は、前記k番目のマスク要素に対し前記種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、前記k+1番目の開口部の一部が、前記第2方向の前記一方の向き側において前記第1方向におけるk番目の中心線と重なり、
前記第4n−2伸張マスク要素に関しては、前記k+1番目のマスク要素は、前記k番目のマスク要素に対し前記種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、前記k+1番目の開口部の一部が、前記第2方向の前記他方の向き側において前記第1方向におけるk番目の中心線と重なり、
前記第4n−1伸張マスク要素に関しては、前記k+1番目のマスク要素は、前記k番目のマスク要素に対し前記種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、前記k+1番目の開口部の一部が、前記第1方向の前記一方の向き側において前記第2方向におけるk番目の中心線と重なり、
前記第4n伸張マスク要素に関しては、前記k+1番目のマスク要素は、前記k番目のマスク要素に対し前記種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、前記k+1番目の開口部の一部が、前記第1方向の前記他方の向き側において前記第2方向におけるk番目の中心線と重なる、請求項5に記載のマスク。
【請求項7】
前記第4n−3伸張マスク要素と、第4n−2伸張マスク要素と、第4n−1伸張マスク要素と、第4n伸張マスク要素とが、前記nの値に関わらず、この順に配されている、請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
前記第4n−3伸張マスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素と、前記第4n伸張マスク要素とが、前記nの値に関わらず、この順に配されている、請求項6に記載のマスク。
【請求項9】
前記第4n−3伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−3伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素とが、前記kの値に関わらず、この順に配されている、請求項6に記載のマスク。
【請求項10】
前記第4n−3伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−3伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素とが、前記kの値に関わらず、この順に配されている、請求項6に記載のマスク。
【請求項11】
前記第4n−3伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第4n−3伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n−2伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n−1伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第4n伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素とが、前記kの値に関わらず、この順に配されている、請求項6に記載のマスク。
【請求項12】
前記種結晶伸張用マスク要素群は、nを1以上の自然数とすると、前記Y+方向に前記種結晶を伸張させるための第2n−1のA開口部および前記Y−方向に前記種結晶を伸張させるための第2n−1のB開口部を有する第2n−1伸張マスク要素と、前記X+方向に前記種結晶を伸張させるための第2nのA開口部および前記X−方向に前記種結晶を伸張させるための第2nのB開口部を有する第2n伸張マスク要素とを備える、請求項1または2に記載のマスク。
【請求項13】
前記第2n−1のA開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、
前記第2n−1のB開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配されるとともに、前記第2n−1のA開口部に平行に配され、
前記第2nのA開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配され、
前記第2nのB開口部の各開口部は、前記nの値に関わらず、それぞれ平行に配されるとともに、前記第2nのA開口部に平行に配されている、請求項12に記載のマスク。
【請求項14】
tを1以上の自然数、第t伸張マスクの第tのA開口部によって、基板上に形成される照射パターンを第tA照射パターンと、第t伸張マスクの第tのB開口部によって、基板上に形成される照射パターンを第tB照射パターンとすると、
前記nの値が1のときの第1A照射パターンは、少なくとも第1象限および第2象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、
前記nの値が1のときの第1B照射パターンは、少なくとも第3象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、
前記nの値が1のときの第2A照射パターンは、少なくとも第1象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なり、
前記nの値が1のときの第2B照射パターンは、少なくとも第2象限および第4象限の結晶粒界の一部を含むように、種結晶と重なるように、開口部が配置されている、請求項13に記載のマスク。
【請求項15】
前記第2n−1伸張マスク要素と前記第2n伸張マスク要素とに関し、前記nの値がkであるときのマスク要素をk番目のマスク要素とし、nの値がk+1であるときのマスク要素をk+1番目のマスク要素とし、
さらに、前記k番目のマスク要素の前記2つの開口部をk番目のAの開口部とk番目のBの開口部と、前記k+1番目のマスク要素の前記2つの開口部をk+1番目のAの開口部とk+1番目のBの開口部とし、
さらに、前記k番目のAの開口部の前記第1方向における中心線を第1方向におけるk番目のAの中心線と、前記k番目のAの開口部の前記第2方向における中心線を第2方向におけるk番目のAの中心線と、前記k番目のBの開口部の前記第1方向における中心線を第1方向におけるk番目のBの中心線と、前記k番目のBの開口部の前記第2方向における中心線を第2方向におけるk番目のBの中心線とすると、
前記第2n−1伸張マスク要素に関しては、前記k+1番目のマスク要素は、前記k番目のマスク要素に対し前記種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、前記k+1番目のAの開口部の一部が、前記第2方向の前記一方の向き側において前記第1方向におけるk番目のAの中心線と重なり、かつ前記k+1番目のBの開口部の一部が、前記第2方向の前記他方の向き側において前記第1方向におけるk番目のBの中心線と重なり、
前記第2n伸張マスク要素に関しては、前記k+1番目のマスク要素は、前記k番目のマスク要素に対し前記種結晶形成用マスク要素群とは反対側に配されるとともに、前記k+1番目のAの開口部の一部が、前記第1方向の前記一方の向き側において前記第2方向におけるk番目のAの中心線と重なり、かつ前記k+1番目のBの開口部の一部が、前記第1方向の前記他方の向き側において前記第2方向におけるk番目のBの中心線と重なる、請求項14に記載のマスク。
【請求項16】
前記第2n−1伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第2n−1伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第2n伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第2n伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されている、請求項15に記載のマスク。
【請求項17】
前記第2n−1伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第2n伸張マスク要素についての前記k番目のマスク要素と、前記第2n−1伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素と、前記第2n伸張マスク要素についての前記k+1番目のマスク要素とが、kの値に関わらず、この順に配されている、請求項15に記載のマスク。
【請求項18】
前記種結晶形成用マスク要素群は、前記移動方向に沿って配された、第1方向に伸びた第1開口部を有する第1マスク要素と、第2方向に伸びた第2開口部を有する第2マスク要素とを備える、請求項1から17のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項19】
前記種結晶形成用マスク要素群は、前記移動方向に沿って配された、第1方向に伸びた開口部を1つ以上有する第1形成マスク要素と、第2方向に伸びた開口部を1つ以上有する第2形成マスク要素とを備える、請求項1から18のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項20】
前記種結晶形成用マスク要素群における各マスク要素の各開口部と、前記種結晶伸張用マスク要素群における各マスク要素の各開口部とが、矩形である、請求項1から19のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項21】
前記種結晶形成用マスク要素群における各マスク要素の各開口部が、円形状であり、前記種結晶伸張用マスク要素群における各マスク要素の各開口部が、矩形である、請求項1から19のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項22】
前記第2方向は前記第1方向に対して垂直な方向である、請求項1から21のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項23】
前記1X+および前記1Y+の2方向、前記2X−および前記2Y+の2方向、前記3X−および前記3Y−の2方向、ならびに前記4X+および前記4Y−の2方向のうち、少なくともいずれか1つの2方向に前記種結晶を同時伸張するように、前記種結晶伸張用マスク要素群の開口部が配置されている、請求項1に記載のマスク。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1項に記載のマスクと、
前記レーザ光を照射するレーザ光照射装置と、
前記被処理物を前記マスクに対して相対的に移動させる移動装置と、
前記照射と前記移動とを制御する制御装置とを備える、レーザ結晶化装置。
【請求項25】
前記レーザ光照射装置が照射する一回あたりのレーザ光のエネルギー量が、基板上の前記被処理物を当該被処理物の厚み方向に亘り溶融させるエネルギー量である、請求項24に記載のレーザ結晶化装置。
【請求項26】
前記レーザ光を第1レーザ光とすると、当該第1レーザ光とは異なる第2レーザ光を前記被処理物に対して照射する第2レーザ光照射装置をさらに備え、
前記第1レーザ光の照射とともに、第1レーザ光が照射されている領域対して前記第2レーザ光の照射を行う、請求項24または25に記載のレーザ結晶化装置。
【請求項27】
開口部を介してレーザ光を相対的に移動する被処理物に照射することにより、結晶粒を形成するレーザ結晶化方法であって、
連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた種結晶を、前記被処理物上に形成する種結晶形成ステップと、
前記種結晶の特定位置を原点としたX−Y直交座標系について、X軸正方向をX+と、X軸負方向をX−と、Y軸正方向をY+と、Y軸負方向をY−とし、さらに前記被処理物の相対的な移動方向を前記X+とすると、前記種結晶を、X+とX−とY+とY−とに、伸張させるための種結晶伸張ステップとを含む、レーザ結晶化方法。
【請求項28】
前記種結晶伸張ステップでは、X+とX−とにおける結晶の伸張が終了した後に、Y+とY−とにおける結晶の伸張を行う、請求項27に記載のレーザ結晶化方法。
【請求項29】
前記種結晶伸張ステップでは、X+およびX−における結晶の伸張と、Y+およびY−における結晶の伸張とを交互に行う、請求項27に記載のレーザ結晶化方法。
【請求項30】
前記種結晶伸張ステップでは、X+の伸張とX−の伸張とを同時に行う、請求項27に記載のレーザ結晶化方法。
【請求項31】
前記種結晶形成ステップでは、少なくとも2つの種結晶を形成し、
前記種結晶伸張ステップでは、前記形成された種結晶を所定方向に伸張して得られた伸張途中の2つの結晶であって、前記所定方向において隣合う2つの結晶について、前記所定方向への最後の伸張を行う際に、一つの開口部を用いて同時に伸張させる、請求項27から30のいずれか1項に記載のレーザ結晶化方法。
【請求項32】
前記種結晶形成ステップと、
前記種結晶伸張ステップと、
前記移動方向に対して垂直な方向へ前記被処理物を相対的に移動させる移動ステップとを繰り返す、請求項27から31のいずれか1項に記載のレーザ結晶化方法。
【請求項33】
前記種結晶伸張ステップでは、前記形成された種結晶を前記移動方向と前記垂直な方向とに伸張して得られた伸張途中の第1結晶と、前記垂直な方向において隣合う伸張途中の第2結晶について、前記垂直な方向への最後の伸張を行う際に、一つの開口部を用いて前記第1結晶と前記第2結晶とを同時に伸張させる、請求項27から30のいずれか1項に記載のレーザ結晶化方法。
【請求項34】
開口部を介してレーザ光を相対的に移動する被処理物に照射することにより、結晶粒を形成するレーザ結晶化方法であって、
連続した結晶粒界または一部が不連続となった結晶粒界に囲まれた種結晶を、前記被処理物上に形成する種結晶形成ステップと、
前記種結晶の特定位置を原点としたX−Y直交座標系について、X軸正方向をX+と、X軸負方向をX−と、Y軸正方向をY+と、Y軸負方向をY−とし、さらに前記被処理物の相対的な移動方向を前記X+とすると、前記種結晶を、前記座標系における第1象限においてはX+とY+とに、前記座標系における第2象限においてはX−とY+とに、前記座標系における第3象限においてはX−とY−とに、前記座標系における第4象限においてはX+とY−とに、伸張させるための種結晶伸張ステップとを含む、レーザ結晶化方法。
【請求項35】
請求項27から34のいずれか1項に記載のレーザ結晶化方法によって形成された結晶粒を含んだ、結晶材。
【請求項36】
請求項35に記載の結晶材における前記結晶粒中にチャネル領域を有するトランジスタを含んだ、半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図70】
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【図71】
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【図75】
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【図76】
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【図80】
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【図82】
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【図83】
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【図85】
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【図86】
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【図87】
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【図89】
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【図90】
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【図91】
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【図92】
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【図93】
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【図94】
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【図95】
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【図96】
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【図97】
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【図98】
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【図99】
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【図100】
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【図101】
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【図102】
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【図103】
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【図104】
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【図105】
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【図106】
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【図107】
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【公開番号】特開2009−289922(P2009−289922A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139918(P2008−139918)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】