説明

モータ用防振マウント

【課題】高い熱伝導性を有し、軽量で構造が簡単なモータ用防振マウントを提供することを課題とする。
【解決手段】モータ用防振マウント1は、金属製の高温側ブラケット91と金属製の低温側ブラケット92との間に介装され、高温側ブラケット91に当接する樹脂製の高温側プレート2と、低温側ブラケット92に当接する樹脂製の低温側プレート3と、高温側プレート2と低温側プレート3との間に介装され高温側プレート2および低温側プレート3に架橋接着する防振部40と、高温側ブラケット91と低温側ブラケット92との間に、高温側プレート2と低温側プレート3とが除外された状態で、介装される熱伝導部41と、を有し、ゴム組成物Rの架橋物製の弾性プレート4と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばADF(オート・ドキュメント・フィーダ)のステッピングモータ取付用として用いられるモータ用防振マウントに関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、所定角度ずつ小刻みに出力軸を回転駆動することができる。このため、ステッピングモータは、ADFなどによく用いられる。しかしながら、出力軸が小刻みに回動するのに伴い、ステッピングモータからは頻繁に振動が発生する。この点に鑑み、ステッピングモータと、ステッピングモータを固定するための固定部材と、の間には、モータ用防振マウントが介装されている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、一対の連結プレートと、防振プレートと、を備えるモータ用防振マウントが開示されている。防振プレートは、一対の連結プレートの間に、介装されている。防振プレートは、例えばジエン系ゴムを含むゴム組成物製である。一対の連結プレートは、共にポリアミド製である。防振プレートと一対の連結プレートとは、架橋接着されている。同文献記載のモータ用防振マウントによると、ステッピングモータの振動が、固定部材に伝達されるのを、抑制することができる。
【0004】
また、ステッピングモータからは、出力軸の回転駆動に伴い、振動に加えて熱も発生する。この点、特許文献3には、熱伝導性の高いモータ用防振マウントが開示されている。特許文献3のモータ用防振マウントは、特許文献1、2のモータ用防振マウントと同様の構成を備えている。同文献記載のモータ用防振マウントの防振プレートは、熱伝導性の高いシリコーンゴム組成物製である。一対の連結プレートは、共に金属製である。防振プレートと一対の連結プレートとは、架橋接着されている。同文献記載のモータ用防振マウントによると、ステッピングモータの熱を、速やかに固定部材に伝達することができる。このため、ステッピングモータに熱が溜まるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−097644号公報
【特許文献2】特開2007−139183号公報
【特許文献3】特開2007−297462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2のモータ用防振マウントは、特許文献3のモータ用防振マウントと比較して、以下のような利点を有している。すなわち、特許文献1、2のモータ用防振マウントによると、一対の連結プレートが共にポリアミド製である。一方、特許文献3のモータ用防振マウントの一対の連結プレートは、共に金属製である。このため、特許文献1、2のモータ用防振マウントによると、特許文献3のモータ用防振マウントと比較して、連結プレート延いてはモータ用防振マウント全体を、軽量化することができる。
【0007】
また、一般的に、金属製の連結プレート(特許文献3)は、金属製の板材に塑性加工を施すことにより、作製される。具体的には、板材に曲げ加工やプレス打抜き加工を施すことにより、連結プレートは作製される。一方、樹脂製の連結プレート(特許文献1、2)は、射出成形等により作製される。このため、特許文献1、2のモータ用防振マウントによると、特許文献3のモータ用防振マウントと比較して、連結プレートの形状を作り込みやすい。すなわち、連結プレートの寸法精度が高い。
【0008】
これに対して、特許文献3のモータ用防振マウントは、特許文献1、2のモータ用防振マウントと比較して、以下のような利点を有している。すなわち、金属の方が樹脂よりも、熱伝導性が高い。このため、特許文献3の連結プレートの方が、特許文献1、2の連結プレートよりも、熱伝導性が高い。また、特許文献3の防振プレートは、酸化亜鉛やカーボンブラックを含有するシリコーンゴム組成物製である。このため、防振プレート自体の熱伝導性も高い。したがって、特許文献3のモータ用防振マウントによると、特許文献1、2のモータ用防振マウントと比較して、熱伝導性が高い。
【0009】
このように、特許文献1、2のモータ用防振マウント、特許文献3のモータ用防振マウントは、各々、他方に対して長所、短所を有している。ここで、軽量性と熱伝導性とを両立させるため、特許文献1、2の一対の連結プレート間に、特許文献3の防振プレートを介装することも考えられる(この考え自体は従来技術ではない。)。しかしながら、特許文献1、2の連結プレートはポリアミド製である。このため、熱伝導性が低い。したがって、熱伝導性の高い特許文献3の防振プレートを用いても、連結プレートにより熱伝導が阻害されてしまう。
【0010】
一方、特許文献3の連結プレートを、軽量のアルミニウム合金等にすることも考えられる。しかしながら、金属製の連結プレートとゴム製の防振プレートとは、本来的に接合強度が低い。この傾向は、防錆処理として連結プレートにめっき処理を施す際、さらに顕著になる。このため、一般的には、連結プレートと防振プレートとを、接着剤で接合する必要がある。この場合、モータ用防振マウントの構造が複雑化する。また、接着剤自体にも高い熱伝導性が要求されるため、モータ用防振マウントの製造コストが高騰化する。
【0011】
本発明のモータ用防振マウントは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、高い熱伝導性を有し、軽量で、構造が簡単なモータ用防振マウントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するため、本発明のモータ用防振マウントは、モータが取り付けられる金属製の高温側ブラケットと、該高温側ブラケットを固定するための金属製の低温側ブラケットと、の間に介装され、該高温側ブラケットに当接する樹脂製の高温側プレートと、該低温側ブラケットに当接する樹脂製の低温側プレートと、該高温側プレートと該低温側プレートとの間に介装され該高温側プレートおよび該低温側プレートに架橋接着する防振部と、該高温側ブラケットと該低温側ブラケットとの間に、該高温側プレートと該低温側プレートとが除外された状態で、介装される熱伝導部と、を有し、ゴム組成物の架橋物製の弾性プレートと、を備えてなることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0013】
本発明のモータ用防振マウントは、高温側プレートと、低温側プレートと、弾性プレートと、を備えている。弾性プレートは、防振部と、熱伝導部と、を備えている。このうち、防振部は、高温側プレートと、低温側プレートと、の間に介装されている。すなわち、防振部が配置されている部分において、高温側ブラケットと低温側ブラケットとの間には、少なくとも高温側プレート、弾性プレート、低温側プレートの三層が介装されている。このため、モータの振動が低温側ブラケットに伝わるのを、抑制することができる。
【0014】
これに対して、熱伝導部は、高温側ブラケットと、低温側ブラケットと、の間に、高温側プレートおよび低温側プレートを介さない状態で、介装されている。すなわち、熱伝導部が配置されている部分において、高温側ブラケットと低温側ブラケットとの間には、少なくとも弾性プレートが介装されている。このため、モータの熱を、樹脂製の高温側プレートおよび低温側プレートに邪魔されることなく、高温側ブラケットから低温側ブラケットに伝達することができる。このように、本発明のモータ用防振マウントによると、樹脂製の高温側プレートおよび低温側プレートを備えるにもかかわらず、熱伝導性が高い。
【0015】
また、高温側プレートおよび低温側プレートは、共に樹脂製である。このため、共に金属製の高温側プレートおよび低温側プレートを備えるモータ用防振マウントと比較して、本発明のモータ用防振マウントは軽量である。また、本発明のモータ用防振マウントの高温側プレートおよび低温側プレートには、防錆処理が不要である。
【0016】
また、高温側プレートと、弾性プレートの防振部と、低温側プレートとは、互いに架橋接着されている。このため、プレート同士の接合に別途接着剤等を用いる場合と比較して、構造が簡単である。また、接着剤等が不要な分だけ、製造コストが低くなる。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記高温側ブラケットおよび前記低温側ブラケットのうち少なくとも一方と、前記熱伝導部と、の間には隙間が形成されており、さらに、該隙間を埋める金属製のスペーサを備えている構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0018】
本構成によると、高温側ブラケットと熱伝導部との間に隙間が区画されており低温側ブラケットと熱伝導部とが当接している場合、低温側ブラケットと熱伝導部との間に隙間が区画されており高温側ブラケットと熱伝導部とが当接している場合、高温側ブラケットと熱伝導部との間および低温側ブラケットと熱伝導部との間に隙間が区画されている場合、いずれの場合であっても、当該隙間を金属製のスペーサにより埋めることができる。このため、スペーサを介して、モータの熱を、高温側ブラケットから低温側ブラケットに確実に伝達することができる。また、本構成によると、スペーサを用いて上記隙間を埋めることができるため、既存の高温側ブラケット、あるいは低温側ブラケットを、本発明のモータ用防振マウントに転用しやすい。
【0019】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記高温側プレートは、高温側貫通孔を備えており、前記低温側プレートは、低温側貫通孔を備えており、前記防振部は、該高温側貫通孔および該低温側貫通孔の径方向外側に配置され、該高温側プレートと該低温側プレートとの間に介装されており、前記熱伝導部は、該高温側貫通孔および該低温側貫通孔の径方向内側に配置され、前記高温側ブラケットと前記低温側ブラケットとの間に介装され、前記モータの出力軸が挿通される出力軸挿通孔を備えている構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0020】
モータの駆動力は、出力軸を介して、外部に導出される。このため、出力軸を遮るようにモータ用防振マウントを配置する場合、モータ用防振マウントに出力軸を通すための孔を配置する必要がある。本構成は、この出力軸を通すための孔の周囲に、熱伝導部を配置するものである。
【0021】
すなわち、高温側プレートは高温側貫通孔を、熱伝導部は出力軸挿通孔を、低温側プレートは低温側貫通孔を、それぞれ備えている。出力軸は、これら高温側貫通孔、出力軸挿通孔、低温側貫通孔を、貫通している。
【0022】
このように、本構成によると、出力軸を通すための孔が必要であることを利用して、モータ用防振マウントに熱伝導部を配置している。このため、熱伝導部を出力軸挿通孔から独立して配置する場合と比較して、モータ用防振マウントを小型化することができる。
【0023】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記高温側プレートおよび前記低温側プレートは、共にポリアミドを含有する樹脂製であり、前記弾性プレートは、(A)ジエン系ゴムまたはメチレン基を有するゴム、(B)架橋剤、(C)レゾルシノール系化合物、(D)メラミン系樹脂、(E)1,2ビニル量が55質量%以上90質量%以下の液状ポリブタジエン、(F)導電性カーボン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムから選ばれる一種以上の充填材、を含有するゴム組成物の架橋物製である構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0024】
高温側プレートおよび低温側プレートは、ポリアミドを含有する樹脂製である。このため、高温側プレートおよび低温側プレートは、剛性が高い。また、高温側プレートおよび低温側プレートは、寸法精度が高い。
【0025】
ゴム組成物は、少なくとも(A)〜(F)の成分を含有している。このうち、(C)成分、(D)成分、(E)成分を含有することにより、弾性プレートと、高温側プレートおよび低温側プレートと、を強固に架橋接着することができる。その理由を以下に説明する。すなわち、ゴム組成物を架橋させる際、(D)成分のメラミン系樹脂の熱分解により発生するHCHO(ホルムアルデヒド)は、(C)成分のレゾルシノール系化合物の芳香環と、高温側プレートおよび低温側プレートの含有するポリアミドのアミド結合(−CONH−)と、を架橋(共有結合)させる。並びに、(E)成分中のポリブタジエンの二重結合が、上記架橋に関与する。また、(E)成分は液状である。このため、ゴム組成物と、高温側プレートおよび低温側プレートと、の密着性を向上させることができる。このような理由により、弾性プレートと、高温側プレートおよび低温側プレートと、が強固に接着すると考えられる。
【0026】
また、ゴム組成物は(F)成分を含有している。導電性カーボン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムを、単独、あるいは適宜組み合わせてゴム組成物に添加すると、ゴム組成物の熱伝導性が向上する。このため、本構成によると、弾性プレートの熱伝導性が向上する。したがって、モータの熱を、高温側ブラケットから低温側ブラケットに伝達しやすくなる。
【0027】
ここで、ゴムに一般的に添加されるカーボンブラックの一つであるファーネスブラックは、石油系原料を不完全燃焼させて製造する。これに対して、本構成の「導電性カーボン」の一つであるアセチレンブラックは、アセチレンを熱分解して製造する。このため、本構成の「導電性カーボン」は、高い導電性を有している。
【0028】
(4−1)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(F)成分は、前記導電性カーボンと、前記酸化亜鉛、前記酸化チタン、前記酸化アルミニウムのうち少なくとも一つと、からなる充填材である構成とする方がよい。
【0029】
ゴム組成物に導電性カーボンを添加すると、架橋物の硬度が上がりやすい。これに対して、ゴム組成物に、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムを単独で、あるいは適宜組み合わせて添加しても、架橋物の硬度が上がりにくい。このため、充填材における、導電性カーボンと、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムのうち少なくとも一つと、の配合比を、適宜調整することにより、架橋物の硬度を調整することができる。例えば、架橋物の硬度(JIS K 6253)を、60°Hs程度とすることができる。こうすると、モータの振動が低温側ブラケットに伝わるのを、より確実に抑制することができる。
【0030】
(4−2)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の割合は、0.5質量部以上10質量部以下に設定されている構成とする方がよい。
【0031】
ここで、(B)成分の割合を0.5質量部以上にしたのは、0.5質量部未満の場合、架橋密度が低くなり、圧縮永久歪みが大きくなるからである。また、接着性も低くなるからである。また、(B)成分の割合を10質量部以下にしたのは、10質量部超過の場合、架橋密度が過度に高くなり、耐久性が低下するおそれがあるからである。
【0032】
(4−3)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(A)成分100質量部に対する前記(C)成分の割合は、0.1質量部以上10質量部以下に設定されている構成とする方がよい。
【0033】
ここで、(C)成分の割合を0.1質量部以上にしたのは、0.1質量部未満の場合、ポリアミドとの接着性が低くなるおそれがあるからである。また、(C)成分の割合を10質量部以下にしたのは、10質量部超過の場合、架橋物の物性が低下するおそれがあるからである。より好ましくは、(A)成分100質量部に対する(C)成分の割合を、0.5質量部以上5質量部以下とする方がよい。こうすると、ポリアミドとの接着性が高くなる。また、架橋物の物性が低下しにくい。
【0034】
(4−4)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(C)成分と前記(D)成分との配合比は、質量比で、(C)成分/(D)成分=1/0.5〜1/2に設定されている構成とする方がよい。
【0035】
ここで、(C)成分1に対する(D)成分の質量比を0.5以上にしたのは、0.5未満の場合、架橋物の引張強さ(TB)や伸び(EB)等が低下するおそれがあるからである。また、(C)成分1に対する(D)成分の質量比を2以下にしたのは、2超過の場合、ポリアミドに対する接着性が飽和するからである。すなわち、(D)成分の質量比を2を超えて高くしても、弾性プレート延いてはモータ防振マウントの製造コストが高くなるだけだからである。より好ましくは、(C)成分と(D)成分との配合比は、質量比で、(C)成分/(D)成分=1/0.77〜1/1.5に設定されている構成とする方がよい。こうすると、架橋物の引張強さ(TB)や伸び(EB)等が低下しにくい。また、ポリアミドに対する接着性が高い。
【0036】
(4−5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(E)成分は、1,2ビニル量が70質量%以上90質量%以下の液状ポリブタジエンである構成とする方がよい。こうすると、さらにゴム組成物と、高温側プレートおよび低温側プレートと、の密着性を向上させることができる。このため、弾性プレートと、高温側プレートおよび低温側プレートと、をさらに強固に接着することができる。
【0037】
(4−6)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(E)成分の数平均分子量(Mn)は、1400以上6400以下に設定されている構成とする方がよい。こうすると、架橋反応を良好に行うことができる。
【0038】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記(F)成分の前記導電性カーボンの種類には、黒鉛が含まれる構成とする方がよい(請求項5に対応)。
【0039】
ゴムに一般的に添加されるファーネスブラックなどの汎用のカーボンブラックと比較して、黒鉛は結晶構造が発達している。このため、本構成によると、さらに、ゴム組成物の熱伝導性が向上する。また、さらに、ゴム組成物の導電性が向上する。
【0040】
(5−1)好ましくは、上記(5)の構成において、前記(A)成分100質量部に対する前記黒鉛の割合は、50質量部以上200質量部以下に設定されている構成とする方がよい。
【0041】
ここで、黒鉛の割合を50質量部以上にしたのは、50質量部未満の場合、ゴム組成物の架橋物、すなわち弾性プレートの熱伝導性が向上しにくいからである。また、黒鉛の割合を200質量部以下にしたのは、200質量部超過の場合、弾性プレートの加工性が悪くなるからである。
【0042】
(6)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、前記(A)成分100質量部に対する前記(E)成分の割合は、3質量部以上50質量部以下に設定されている構成とする方がよい(請求項6に対応)。
【0043】
ここで、(E)成分の割合を3質量部以上にしたのは、3質量部未満の場合、液状ポリブタジエンの有するポリアミドとの密着性改善効果が有意に得られないおそれがあるからである。また、(E)成分の割合を50質量部以下にしたのは、50質量部超過の場合、ゴム組成物の粘度が大きくなり、加工性に不具合が生じたり、圧縮永久歪み特性が悪化するおそれがあるからである。
【0044】
(6−1)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、前記(A)成分100質量部に対する(E)成分の割合は、6質量部以上25質量部以下に設定されている構成とする方がよい。こうすると、より確実に、ポリアミドに対する密着性改善効果を得ることができる。また、加工性に不具合が生じにくい。また、圧縮永久歪み特性が悪化するおそれが小さい。
【0045】
(7)好ましくは、上記(4)ないし(6)のいずれかの構成において、前記(A)成分のゴムは、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上のゴムであり、かつ前記(B)成分の架橋剤は、硫黄系架橋剤である構成とする方がよい(請求項7に対応)。
【0046】
本構成のゴムは、いずれもジエン系ゴムである。本構成によると、ゴム組成物の架橋反応が、より円滑に行われる。このため、弾性プレートと、高温側プレートおよび低温側プレートと、をより強固に接着することができる。
【0047】
(8)好ましくは、上記(4)ないし(6)のいずれかの構成において、前記(A)成分のゴムは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上のゴムであり、かつ前記(B)成分の架橋剤は、過酸化物架橋剤である構成とする方がよい(請求項8に対応)。
【0048】
本構成のゴムは、いずれもメチレン基を有するゴムである。本構成によると、ゴム組成物の架橋反応が、より円滑に行われる。このため、弾性プレートと、高温側プレートおよび低温側プレートと、をより強固に接着することができる。
【0049】
(9)好ましくは、上記(4)ないし(8)のいずれかの構成において、前記(A)成分100質量部に対する前記(F)成分の割合は、50質量部以上250質量部以下に設定されている構成とする方がよい(請求項9に対応)。
【0050】
ここで、(F)成分の割合を50質量部以上にしたのは、50質量部未満の場合、架橋物の熱伝導性が向上しにくいからである。また、(F)成分の割合を250質量部以下にしたのは、200質量部を超えて(F)成分を添加しても、熱伝導性が向上しにくいからである。
【0051】
(9−1)好ましくは、上記(9)の構成において、前記(F)成分は、前記導電性カーボンからなる(F1)成分と、前記酸化亜鉛、前記酸化チタン、前記酸化アルミニウムのうち少なくとも一つからなる(F2)成分と、からなる前記充填材であり、該(F1)成分と該(F2)成分との配合比は、質量比で、(F1)成分/(F2)成分=1/0.5〜1/1.5に設定されている構成とする方がよい。
【0052】
ここで、(F1)成分1に対する(F2)成分の質量比を0.5以上にしたのは、0.5未満の場合、モータの振動の伝達を抑制するという観点からは、架橋物の硬度が過剰に高くなるおそれがあるからである。また、(F1)成分1に対する(F2)成分の質量比を1.5以下にしたのは、1.5超過の場合、モータの振動の伝達を抑制するという観点からは、架橋物の硬度が過剰に低くなるおそれがあるからである。
【0053】
(10)好ましくは、上記(1)ないし(9)のいずれかの構成において、前記高温側プレートおよび前記低温側プレートのうち少なくとも一方は、導電性カーボンを含有する樹脂製である構成とする方がよい(請求項10に対応)。
【0054】
樹脂に導電性カーボンを含有させると、熱伝導性が向上する。このため、高温側プレートに導電性カーボンを含有させる場合、低温側プレートに導電性カーボンを含有させる場合、高温側プレートおよび低温側プレートに導電性カーボンを含有させる場合、いずれの場合であっても、モータの放熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によると、高い熱伝導性を有し、軽量で、構造が簡単なモータ用防振マウントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ADFのステッピングモータ取付部の分解斜視図である。
【図2】第一実施形態のモータ用防振マウントの分解斜視図である。
【図3】同モータ用防振マウントの前面図である。
【図4】同モータ用防振マウントの後面図である。
【図5】図3、図4のV−V方向断面図である。
【図6】同モータ用防振マウントの製造方法に用いる金型の上型の分解斜視図である。
【図7】同金型の下型およびスライドコアの分解斜視図である。
【図8】同金型の型開き状態の断面図である。
【図9】同金型の型締め状態の断面図である。
【図10】図9の枠X内の拡大図である。
【図11】同金型のゴム組成物架橋反応後の合体断面図である。
【図12】第二実施形態のモータ用防振マウントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明のモータ用防振マウントの実施の形態について説明する。
【0058】
<第一実施形態>
[モータ用防振マウントの配置]
まず、本実施形態のモータ用防振マウントの配置について説明する。OA(オフィス・オートメーション)機器のADFには、紙送り用としてステッピングモータが取り付けられている。図1に、ADFのステッピングモータ取付部の分解斜視図を示す。図1に示すように、ステッピングモータ取付部には、ステッピングモータ90と、高温側ブラケット91と、低温側ブラケット92と、モータ用防振マウント1と、が配置されている。
【0059】
高温側ブラケット91は、アルミニウム製であって、直方体箱状を呈している。ステッピングモータ90は、高温側ブラケット91の内部に収容されている。高温側ブラケット91の前面は、略正方形状を呈している。高温側ブラケット91の前面の四隅には、合計四つのスクリュー固定孔910が穿設されている。また、高温側ブラケット91の前面の略中央には、前方に突出する、円板状の高温側凸部911が配置されている。ステッピングモータ90の出力軸900は、高温側凸部911の略中央から、前方に突出している。
【0060】
低温側ブラケット92は、鉄製であって、上方および前方に開口する直方体箱状を呈している。低温側ブラケット92は、後述するモータ用防振マウント1を介して、高温側ブラケット91の前方に配置されている。低温側ブラケット92は、一対の筐体取付片920と、モータ取付壁921と、を備えている。一対の筐体取付片920は、低温側ブラケット92の左上隅および右上隅に配置されている。一対の筐体取付片920には、各々、スクリュー挿通孔920aが穿設されている。スクリュー(図略)は、下方からスクリュー挿通孔920aを貫通し、OA機器の筐体(図略)に、ねじ止めされている。スクリューにより、低温側ブラケット92は、筐体に固定されている。モータ取付壁921は、略正方形状を呈している。モータ取付壁921の左上隅および右下隅には、合計二つのスクリュー挿通孔921aが穿設されている。また、モータ取付壁921の略中央には、後方に突出する、円板状の低温側凸部921bが配置されている。低温側凸部921bの略中央には、出力軸挿通孔921cが穿設されている。
【0061】
モータ用防振マウント1は、略正方形の板状を呈している。モータ用防振マウント1は、高温側ブラケット91と、低温側ブラケット92と、の間に介装されている。モータ用防振マウント1により、高温側ブラケット91つまりステッピングモータ90は、低温側ブラケット92つまり筐体に、片持ち梁状に支持されている。
【0062】
[モータ用防振マウントの構成]
次に、本実施形態のモータ用防振マウント1の構成について説明する。図2に、本実施形態のモータ用防振マウントの分解斜視図を示す。図3に、同モータ用防振マウントの前面図を示す。図4に、同モータ用防振マウントの後面図を示す(方位注意)。図5に、図3、図4のV−V方向断面図を示す。なお、図5に示すのは、本実施形態のモータ用防振マウント1が、高温側ブラケット91と、低温側ブラケット92と、の間に介装されている状態である。図2〜図5に示すように、モータ用防振マウント1は、高温側プレート2と、低温側プレート3と、弾性プレート4と、を備えている。
【0063】
(高温側プレート)
高温側プレート2は、母相であるポリアミド66(100質量%)に対してガラスファイバーを50質量%添加した繊維強化ポリアミド66(PA66GF50)製である。高温側プレート2は、高温側ブラケット91の前方に配置されている。高温側プレート2は、略正方形の板状を呈している。
【0064】
高温側プレート2の四隅には、合計四つのスクリュー挿通孔20が穿設されている。四つのスクリュー挿通孔20のうち、右上隅および左下隅のスクリュー挿通孔20には、各々、真鍮製のはとめリング22が挿入されている。はとめリング22により、スクリュー挿通孔20の内周面および孔縁が補強されている。
【0065】
前出図1に示すように、四つのスクリュー挿通孔20は、高温側ブラケット91の四つのスクリュー固定孔910と、前後方向に対向している。すなわち、(スクリュー挿通孔20−スクリュー固定孔910)の組が、合計四つ形成されている。四つの(スクリュー挿通孔20−スクリュー固定孔910)のうち、右上隅および左下隅の(スクリュー挿通孔20−スクリュー固定孔910)には、各々、スクリュー23が挿通されている。スクリュー23は、前方からスクリュー挿通孔20を貫通している。スクリュー23の貫通端(後端)は、スクリュー固定孔910にねじ止めされている。スクリュー23により、高温側プレート2つまりモータ用防振マウント1は、高温側ブラケット91に固定されている。
【0066】
高温側プレート2の略中央には、高温側貫通孔21が穿設されている。図5に示すように、高温側貫通孔21の径方向内側には、高温側ブラケット91の高温側凸部911が収容されている。
【0067】
図4に示すように、高温側プレート2の高温側貫通孔21の右下部分および左上部分には、一対の注入孔24が穿設されている。後述するように、モータ用防振マウント1を製造する際、ゴム組成物は、注入孔24を介して、金型のキャビティ内部に注入される。
【0068】
(低温側プレート)
低温側プレート3は、母相であるポリアミド66(100質量%)に対してガラスファイバーを50質量%添加した繊維強化ポリアミド66(PA66GF50)製である。低温側プレート3は、低温側ブラケット92の後方に配置されている。また、低温側プレート3は、後述する弾性プレート4を介して、高温側プレート2の前方に配置されている。低温側プレート3は、略正方形の板状を呈している。低温側プレート3の右上隅および左下隅は、各々、直線状に面取りされている。
【0069】
低温側プレート3の左上隅および右下隅には、合計二つのスクリュー挿通孔30が穿設されている。前出図1に示すように、二つのスクリュー挿通孔30は、低温側ブラケット92の二つのスクリュー挿通孔921aと、前後方向に対向している。また、二つのスクリュー挿通孔30は、高温側ブラケット91の四つのスクリュー固定孔910のうち、左上隅および右下隅の二つのスクリュー固定孔910と、前後方向に対向している。また、図2に示すように、二つのスクリュー挿通孔30は、高温側プレート2の四つのスクリュー挿通孔20のうち、左上隅および右下隅の二つのスクリュー挿通孔20と、前後方向に対向している。すなわち、(スクリュー挿通孔921a−スクリュー挿通孔30−スクリュー挿通孔20−スクリュー固定孔910)の組が、合計二つ形成されている。二つの(スクリュー挿通孔921a−スクリュー挿通孔30−スクリュー挿通孔20−スクリュー固定孔910)には、各々、スクリュー33が挿通されている。スクリュー33は、前方から、スクリュー挿通孔921a、スクリュー挿通孔30、スクリュー挿通孔20を貫通している。スクリュー33の貫通端(後端)は、スクリュー固定孔910にねじ止めされている。スクリュー33により、低温側プレート3および高温側プレート2(つまりモータ用防振マウント1)は、低温側ブラケット92に固定されている。
【0070】
低温側プレート3の略中央には、低温側貫通孔31が穿設されている。図5に示すように、低温側貫通孔31の径方向内側には、低温側ブラケット92の低温側凸部921bが収容されている。
【0071】
(弾性プレート)
弾性プレート4は、後述するように、EPDMと、導電性カーボンブラックと、酸化亜鉛と、液状ポリブタジエンと、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物と、過酸化物架橋剤と、を含むゴム組成物の架橋物製である。
【0072】
なお、EPDMは本発明の(A)成分に、導電性カーボンブラックは本発明の(F)成分に、液状ポリブタジエンは本発明の(E)成分に、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂は本発明の(C)成分に、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物は本発明の(D)成分に、過酸化物架橋剤は本発明の(B)成分に、それぞれ含まれる。
【0073】
弾性プレート4は、高温側プレート2と低温側プレート3との間に、介装されている。また、弾性プレート4は、高温側プレート2および低温側プレート3に、架橋接着されている。弾性プレート4は、円板状を呈している。弾性プレート4は、防振部40と、熱伝導部41と、を備えている。
【0074】
熱伝導部41は、短軸円柱状を呈している。熱伝導部41は、高温側貫通孔21および低温側貫通孔31の、径方向内側に配置されている。熱伝導部41の後面は、高温側ブラケット91前面の高温側凸部911に、当接している。熱伝導部41の前面は、モータ取付壁921の低温側凸部921bに、当接している。すなわち、熱伝導部41は、高温側ブラケット91と低温側ブラケット92との間に、他の部材を介さずに、介装されている。熱伝導部41には、出力軸挿通孔410と、スリット411と、が穿設されている。出力軸挿通孔410は、熱伝導部41の略中央に配置されている。出力軸挿通孔410には、ステッピングモータ90の出力軸900が貫通している。スリット411は、出力軸挿通孔410を中心に、十字路状(放射状)に延在している。
【0075】
防振部40は、円形リング状を呈している。防振部40は、熱伝導部41の径方向外側に連なっている。防振部40の板厚(前後方向全長)は、熱伝導部41の板厚(前後方向全長)よりも、短く設定されている。このため、熱伝導部41は、防振部40に対して、前後方向に突出している。防振部40は、高温側貫通孔21および低温側貫通孔31の、径方向外側に配置されている。防振部40の後面は、高温側プレート2の前面に、架橋接着されている。防振部40の前面は、低温側プレート3の後面に、架橋接着されている。すなわち、防振部40は、高温側プレート2と低温側プレート3との間に、介装されている。
【0076】
[モータ用防振マウントの製造方法]
次に、本実施形態のモータ用防振マウント1の製造方法について説明する。本実施形態のモータ用防振マウント1の製造方法は、ゴム組成物調製工程と、型締め工程と、ゴム組成物注入工程と、架橋接着工程と、型開き工程と、を有している。
【0077】
(ゴム組成物調製工程)
本工程においては、弾性プレート4を形成するゴム組成物を調製する。まず、本発明の(A)成分としてEPDM(エスプレン(登録商標)6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、本発明の(F)成分として導電性カーボンブラック(デンカブラック(登録商標)、電気化学工業株式会社製)120質量部と、酸化亜鉛(三井金属鉱業株式会社製)70質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)60質量部と、本発明の(E)成分として液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート、登録商標)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、本発明の(C)成分として後述する一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール(登録商標)620、住友化学株式会社製)2質量部と、をバンバリーミキサーを用いて140℃で6分間混練する。
【0078】
続いて、上記混練物に対して、さらに、本発明の(D)成分としてホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、本発明の(B)成分として過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油(旧日本油脂)株式会社製)5質量部と、を追加混合する。それから、混合物を、オープンロールを用いて、50℃で5分間混練する。このようにして、ゴム組成物を調製する。
【0079】
(型締め工程)
本工程においては、金型の型締めを行う。
【0080】
{金型の構成}
まず、金型の構成について説明する。図6に本実施形態のモータ用防振マウントの製造方法に用いる金型の上型の分解斜視図を示す。図6においては、上型を下から見ている(方位参照)。図7に同金型の下型およびスライドコアの分解斜視図を示す。図7においては、下型およびスライドコアを上から見ている(方位参照)。図8に、同金型の型開き状態の断面図を示す。図9に、同金型の型締め状態の断面図を示す。図8、図9の断面の切断方向は、右前−左下方向(図6、図7のVIII−VIII方向)である。なお、説明の便宜上、図8、図9に示す注入孔703、24の位置は、実際の位置(図6参照)から若干相違している。図6〜図9に示すように、金型7は、上型70と、下型71と、一対のスライドコア72と、を備えている。
【0081】
上型70は、鋼製であって、直方体状を呈している。上型70の下面には、凹部700が形成されている。凹部700は、略正方形状を呈している。凹部700の四隅には、合計四つのスクリュー挿通孔用凸部701が配置されている。スクリュー挿通孔用凸部701は、円柱状を呈している。凹部700の略中央には、高温側貫通孔用凸部702が配置されている。高温側貫通孔用凸部702は、円板状を呈している。また、上型70には、二つの注入孔703が穿設されている。注入孔703は、上型70上面と、凹部700上底面と、の間を貫通している。
【0082】
下型71は、鋼製であって、直方体状を呈している。下型71は、上型70に対して、下方から近接可能である。下型71の上面には、凹部710が形成されている。凹部710は、略正方形状を呈している。凹部710の左後隅および右前隅は、各々、直線状に面取りされている。凹部700の左前隅および右後隅には、合計二つのスクリュー挿通孔用凸部711が配置されている。スクリュー挿通孔用凸部711は、円柱状を呈している。凹部710の略中央には、低温側貫通孔用凸部712が配置されている。低温側貫通孔用凸部712は、円板状を呈している。低温側貫通孔用凸部712の上面には、出力軸挿通孔用凸部713と、スリット用凸部714と、が配置されている。出力軸挿通孔用凸部713は、低温側貫通孔用凸部712上面の略中央に配置されている。出力軸挿通孔用凸部713は、円柱状を呈している。スリット用凸部714は、リブ状を呈している。スリット用凸部714は、出力軸挿通孔用凸部713を中心に、十字路状(放射状)に延在している。
【0083】
二つのスライドコア72は、各々、鋼製であって、三角形板状を呈している。二つのスライドコア72は、180°対向して配置されている。二つのスライドコア72は、上型70の下面に摺動可能な高さに配置されている。二つのスライドコア72のうち、一方のスライドコア72は、上型70に対して、右前方向から近接可能である。他方のスライドコア72は、上型70に対して、左後方向から近接可能である。スライドコア72の一辺には、半円形状の開口部720が形成されている。
【0084】
{金型の動き}
次に、本工程における金型7の動きについて説明する。まず、固定型である上型70に、予め射出成形しておいた高温側プレート2を、装着する。具体的には、上型70のスクリュー挿通孔用凸部701を、高温側プレート2のスクリュー挿通孔20に挿入する。また、上型70の高温側貫通孔用凸部702を、高温側プレート2の高温側貫通孔21に挿入する。また、上型70の注入孔703を、高温側プレート2の注入孔24に、連結する。並びに、下型71に、予め射出成形しておいた低温側プレート3を、装着する。具体的には、下型71のスクリュー挿通孔用凸部711を、低温側プレート3のスクリュー挿通孔30に挿入する。また、下型71の低温側貫通孔用凸部712を、低温側プレート3の低温側貫通孔31に挿入する。
【0085】
続いて、下型71を上昇させ、下型71の出力軸挿通孔用凸部713の上面、およびスリット用凸部714の上面を、上型70の高温側貫通孔用凸部702の下面に、当接させる。
【0086】
それから、二つのスライドコア72を、上型70の下面および下型71の上面に摺接させながら、互いに近接させる。そして、二つの開口部720同士を突き合わせる。二つの開口部720が合体することにより、円形の防振部成形孔721が形成される。
【0087】
本工程においては、このようにして金型7の型締めを行う。型締めにより、金型7の内部には、円板状のキャビティ75が形成される。キャビティ75の内部空間は、弾性プレート4と同じ形状を呈している。
【0088】
(ゴム組成物注入工程)
図10に、図9の枠X内の拡大図を示す。図9、図10に示すように、本工程においては、ゴム組成物調製工程で調製済みのゴム組成物Rを、型締め状態の金型7のキャビティ75の内部に、注入する。ゴム組成物Rは、成形機(図略)から、上型70の注入孔703および高温側プレート2の注入孔24を介して、キャビティ75の内部に注入される。ゴム組成物Rは、キャビティ75内の隅々にまで行き渡る。
【0089】
(架橋接着工程)
図11に、本実施形態のモータ用防振マウントの製造方法に用いる金型の、ゴム組成物架橋反応後の合体断面図を示す。本工程においては、ゴム組成物Rが充填されている金型7を、185℃の温度で、8分間保持する。そして、ゴム組成物Rを架橋反応させる。架橋反応により、ゴム組成物Rは架橋物になる。すなわち、ゴム組成物Rは弾性プレート4になる。並びに、弾性プレート4と、高温側プレート2および低温側プレート3と、が強固に架橋接着される。
【0090】
(型開き工程)
本工程においては、金型7の型開きを行う。具体的には、二つのスライドコア72を水平方向に移動させる。すなわち、二つのスライドコア72を、上型70から離間させる。また、下型71を下方に移動させる。すなわち、下型71を、上型70から離間させる。本工程においては、このようにして型開きを行う。
【0091】
型開き後の金型7に残った成形物に、ゲートカットやバリ取りなどの後処理を施し、高温側プレート2の二つのスクリュー挿通孔20に、各々、はとめリング22を装着することにより、本実施形態のモータ用防振マウント1が完成する。
【0092】
[モータ用防振マウントの動き]
次に、本実施形態のモータ用防振マウント1の動きについて説明する。図5に示すように、ADFを駆動する際、ステッピングモータ90の出力軸900は、所定角度ずつ小刻みに回転する。このため、ステッピングモータ90から振動が発生する。ステッピングモータ90の振動は、高温側ブラケット91から、高温側プレート2を介して(防振部40の場合)、あるいは直接(熱伝導部41の場合)、弾性プレート4に入力される。弾性プレート4は、自身が弾性変形することにより、入力された振動を吸収する。
【0093】
また、ADFを駆動する際、ステッピングモータ90からは、熱が発生する。ステッピングモータ90の熱は、高温側ブラケット91から低温側ブラケット92に、弾性プレート4の熱伝導部41を経て、伝達される。あるいは、ステッピングモータ90の熱は、高温側ブラケット91から低温側ブラケット92に、高温側プレート2→弾性プレート4の防振部40→低温側プレート3を経て、伝達される。
【0094】
[作用効果]
次に、本実施形態のモータ用防振マウント1の作用効果について説明する。本実施形態のモータ用防振マウント1の防振部40は、高温側プレート2と、低温側プレート3と、の間に介装されている。すなわち、防振部40が配置されている部分において、高温側ブラケット91と低温側ブラケット92との間には、高温側プレート2、弾性プレート4、低温側プレート3の三層が介装されている。このため、ステッピングモータ90の振動が低温側ブラケット92に伝わるのを、抑制することができる。
【0095】
本実施形態のモータ用防振マウント1の熱伝導部41は、高温側ブラケット91と、低温側ブラケット92と、の間に、高温側プレート2および低温側プレート3を介さない状態で、介装されている。すなわち、熱伝導部41が配置されている部分において、高温側ブラケット91と低温側ブラケット92との間には、弾性プレート4だけが介装されている。このため、ステッピングモータ90の熱を、迅速に高温側ブラケット91から低温側ブラケット92に伝達することができる。このように、本実施形態のモータ用防振マウント1によると、樹脂製の高温側プレート2および低温側プレート3を備えるにもかかわらず、熱伝導性が高い。
【0096】
また、高温側プレート2および低温側プレート3は、共に樹脂製である。このため、本実施形態のモータ用防振マウント1は軽量である。また、高温側プレート2および低温側プレート3は、防錆処理が不要である。
【0097】
また、高温側プレート2と、弾性プレート4の防振部40と、低温側プレート3とは、互いに架橋接着されている。このため、プレート同士の接合に別途接着剤等を用いる場合と比較して、構造が簡単である。また、接着剤等が不要な分だけ、製造コストが低くなる。
【0098】
また、本実施形態のモータ用防振マウント1によると、ステッピングモータ90の出力軸900を通すための孔(高温側貫通孔21、出力軸挿通孔410、低温側貫通孔31)が必要であることを利用して、モータ用防振マウント1に熱伝導部41を配置している。このため、熱伝導部41を出力軸挿通孔410から独立して配置する場合と比較して、モータ用防振マウント1を小型化することができる。
【0099】
また、本実施形態のモータ用防振マウント1の高温側プレート2および低温側プレート3は、共にポリアミドを含有する樹脂製である。このため、高温側プレート2および低温側プレート3は、剛性が高い。また、高温側プレート2および低温側プレート3は、寸法精度が高い。
【0100】
また、弾性プレート4は、EPDMと、導電性カーボンブラックと、液状ポリブタジエンと、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物と、過酸化物架橋剤と、を含むゴム組成物の架橋物製である。このため、弾性プレート4と、高温側プレート2および低温側プレート3と、を強固に架橋接着することができる。
【0101】
また、ゴム組成物つまり弾性プレート4は、導電性カーボンブラックを含有している。このため、本実施形態のモータ用防振マウント1によると、弾性プレート4自体の熱伝導性が向上する。したがって、ステッピングモータ90の熱を、高温側ブラケット91から低温側ブラケット92に、より伝達しやすくなる。
【0102】
また、EPDM100質量部(ただしポリマー分)に対する過酸化物架橋剤の割合は、5質量部に設定されている。すなわち、0.5質量部以上10質量部以下に設定されている。このため、架橋密度が低くなりにくい。また、圧縮永久歪みが大きくなりにくい。また、ポリアミドとの接着性が低くなりにくい。また、架橋密度が過度に高くなりにくい。このため、耐久性が低下するおそれが小さい。
【0103】
また、EPDM100質量部(ただしポリマー分)に対する変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂の割合は、2質量部に設定されている。すなわち、0.1質量部以上10質量部以下に設定されている。このため、ポリアミドとの接着性が低くなりにくい。また、架橋物の物性が低下しにくい。
【0104】
また、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物と、の配合比は、(変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂)/(ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物)=1/0.77に設定されている。すなわち、1/0.5〜1/2に設定されている。このため、架橋物つまり弾性プレート4の引張強さ(TB)や伸び(EB)等が低下するおそれが小さい。また、ポリアミドに対する接着性が飽和しにくい。
【0105】
また、液状ポリブタジエンの1,2ビニル量は90質量%に設定されている。すなわち、1,2ビニル量が70質量%以上90質量%以下に設定されている。このため、ゴム組成物と、高温側プレート2および低温側プレート3と、の密着性を向上させることができる。したがって、弾性プレート4と、高温側プレート2および低温側プレート3と、をさらに強固に接着することができる。また、液状ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)は、5200に設定されている。このため、架橋反応を良好に行うことができる。
【0106】
また、EPDM100質量部(ただしポリマー分)に対する液状ポリブタジエンの割合は、10質量部に設定されている。すなわち、3質量部以上50質量部以下に設定されている。このため、液状ポリブタジエンの有するポリアミドとの密着性改善効果を確実に得ることができる。また、ゴム組成物の粘度が過度に大きくなりにくい。このため、加工性に不具合が生じにくい。また、圧縮永久歪み特性が悪化しにくい。
【0107】
また、本実施形態のモータ用防振マウント1のゴム組成物によると、本発明の(A)成分としてEPDMを用いている。並びに、本発明の(B)成分として過酸化物架橋剤を用いている。EPDMは、メチレン基を有するゴムである。このため、ゴム組成物の架橋反応が、より円滑に行われる。したがって、弾性プレート4と、高温側プレート2および低温側プレート3と、をより強固に接着することができる。
【0108】
また、EPDM100質量部(ただしポリマー分)に対する導電性カーボンブラックの割合は、120質量部に設定されている。並びに、EPDM100質量部(ただしポリマー分)に対する酸化亜鉛の割合は、70質量部に設定されている。すなわち、導電性カーボンブラックと酸化亜鉛とを合計して、190質量部に設定されている。つまり、50質量部以上250質量部以下に設定されている。このため、架橋物の熱伝導性が高くなる。
【0109】
<第二実施形態>
本実施形態のモータ用防振マウントと、第一実施形態のモータ用防振マウントと、の相違点は、低温側ブラケットのモータ取付壁に低温側凸部が配置されていない点である。また、低温側凸部が無いために形成される隙間に、スペーサが配置されている点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。
【0110】
図12に、本実施形態のモータ用防振マウントの断面図を示す。なお、図5と対応する部位については、同じ符合で示す。図12に示すように、低温側ブラケット92のモータ取付壁921は、略平板状を呈している。モータ取付壁921の略中央には、出力軸挿通孔921cが穿設されている。
【0111】
モータ取付壁921の後面と、弾性プレート4の熱伝導部41の前面と、の間には、スペーサ6が介装されている。すなわち、スペーサ6の後面は、熱伝導部41の前面に当接している。並びに、スペーサ6の前面は、モータ取付壁921の後面に当接している。スペーサ6は、アルミニウムあるいは鉄製であって、円板状を呈している。スペーサ6は、低温側プレート3の低温側貫通孔31の径方向内側に、収容されている。スペーサ6の略中央には、出力軸挿通孔60が穿設されている。ステッピングモータ90の出力軸900は、出力軸挿通孔60、921cを貫通している。
【0112】
本実施形態のモータ用防振マウント1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態のモータ用防振マウントと同様の作用効果を有する。また、本実施形態のモータ用防振マウント1によると、スペーサ6により、モータ取付壁921の後面と、熱伝導部41の前面と、の間の隙間が埋められている。このため、スペーサ6を介して、ステッピングモータ90の熱を、高温側ブラケット91から低温側ブラケット92に確実に伝達することができる。
【0113】
また、本実施形態のモータ用防振マウント1によると、略平板状のモータ取付壁921を有する既存の低温側ブラケット92を用いることができる。すなわち、モータ取付壁921に、敢えて低温側凸部921b(図5参照)を配置する必要がない。このため、本実施形態のモータ用防振マウント1は、汎用性が高い。
【0114】
<その他>
以上、本発明のモータ用防振マウントの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0115】
[モータ用防振マウントの構造に関する変形的形態、改良的形態]
まず、本発明のモータ用防振マウントの構造に関する変形的形態、改良的形態について説明する。弾性プレート4の熱伝導部41の前面を、低温側プレート3の前面と、略面一に設定してもよい(図5参照)。こうすると、モータ取付壁921に、敢えて低温側凸部921bを配置する必要がない。また、モータ取付壁921の後面と熱伝導部41の前面との間に、スペーサ6を配置する必要がない。
【0116】
同様に、弾性プレート4の熱伝導部41の後面を、高温側プレート2の後面と、略面一に設定してもよい(図5参照)。こうすると、高温側ブラケット91に、敢えて高温側凸部911を配置する必要がない。また、高温側ブラケット91の前面と熱伝導部41の後面との間に、スペーサ6を配置する必要がない。
【0117】
熱伝導部41の板厚(前後方向全長)を、防振部40の板厚(前後方向全長)よりも、短く設定してもよい。こうすると、より高温側ブラケット91から低温側ブラケット92に、ステッピングモータ90の熱が伝達しやすい。
【0118】
[モータ用防振マウントの製造方法に関する変形的形態、改良的形態]
次に、本発明のモータ用防振マウントの製造方法に関する変形的形態、改良的形態について説明する。弾性プレート4を形成するゴム組成物Rの調製方法は、特に限定しない。例えば、以下の調製方法により調製することができる。まず、(B)成分、(C)成分、(D)成分以外の各成分を予備混合する。次いで、予備混合物を、所定時間、所定温度で混練する。それから、混練物に対して、上記(B)〜(D)成分を追加混合する。その後、混合物を所定時間、所定温度で混練する。このような調整方法により、ゴム組成物Rを調製することができる。なお、(C)成分、(D)成分は、予備混合の段階で添加してもよい。
【0119】
また、予め、(E)成分に、珪酸カルシウム、シリカ、炭酸カルシウム等の白色充填材を混合し、当該混合物を、ゴム組成物Rの混練時に使用してもよい。こうすると、(E)成分の秤量時における作業性、ゴム組成物Rの練り時の加工性を改善することができる。
【0120】
また、上記実施形態においては、金型7のキャビティ75でゴム組成物Rを架橋させることにより、弾性プレート4と、高温側プレート2および低温側プレート3と、を架橋接着した。しかしながら、ゴム組成物Rの混練物をシート状とし、当該混練物のシートを高温側プレート2と低温側プレート3との間に挟み込み、油圧プレスなどを用いて所定時間、所定温度で加熱することにより、弾性プレート4と、高温側プレート2および低温側プレート3と、を架橋接着してもよい。また、上記実施形態においては、はとめリング22を型開き工程において高温側プレート2に装着したが、型締め工程において高温側プレート2に装着してもよい。
【0121】
[材料に関する変形的形態、改良的形態]
次に、本発明のモータ用防振マウントの材料に関する変形的形態、改良的形態について説明する。弾性プレート4を形成するゴム組成物R、高温側プレート2および低温側プレート3を形成する樹脂は、特に限定しない。特許文献1、2に開示されているゴム組成物、樹脂を用いてもよい。
【0122】
(ゴム組成物の(A)成分)
ゴム組成物Rのうち(A)成分を、ジエン系ゴムとしてもよい。具体的には、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)等としてもよい。また、ゴム組成物Rのうち、(A)成分をメチレン基を有するゴムとしてもよい。具体的には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム(ECO、CO)、ウレタンゴム、水素添加スチレン−ブタジエンゴム(H−SBR)、シリコーンゴム(Q)、ビニル基含有シリコーンゴム(VMQ)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)等としてもよい。とりわけ、強度、耐油性、耐熱性等の観点から、EPDM、NR、NBR、H−NBRが好ましい。
【0123】
(ゴム組成物の(B)成分)
ゴム組成物Rのうち(B)成分を、硫黄系架橋剤としてもよい。具体的には、硫黄、塩化硫黄等としてもよい。また、ゴム組成物のうち、(B)成分を過酸化物系架橋剤を用いてもよい。具体的には、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n−ブチル−4,4′−ジ−t−ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3,1,3ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソ−プロピル)ベンゼン等としてもよい。これらの架橋剤は、単独で、あるいは二種以上併せて用いてもよい。とりわけ、硫黄、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0124】
(ゴム組成物の(C)成分)
ゴム組成物Rのうち(C)成分を、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン、レゾルシン・ホルムアルデヒド(RF)樹脂等としてもよい。これらは単独で、あるいは二種以上併せて用いてもよい。とりわけ、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性が優れる点で、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0125】
変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂としては、下記一般式(1)〜(3)で表されるものが挙げられる。とりわけ、一般式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

【0126】
(ゴム組成物の(D)成分)
ゴム組成物Rのうち(D)成分は、熱分解により系に対してホルムアルデヒドを供与可能であればよい。例えば、(D)成分を、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン等としてもよい。これらは単独で、あるいは二種以上併せて用いてもよい。とりわけ、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性が優れる点で、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物が好ましい。
【0127】
ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物としては、下記一般式(4)で表されるものが好ましい。
【化4】

【0128】
とりわけ、混合物全体を100質量%として、n=1の化合物を43〜44質量%、n=2の化合物を27〜30質量%、n=3の化合物を残部、それぞれ含む混合物が特に好ましい。
【0129】
(ゴム組成物の(E)成分)
ゴム組成物Rのうち(E)成分は、通常、ブタジエンをアニオンリビング重合等することにより得ることができる。また、(E)成分は、その1,2ビニル量が55質量%以上90質量%以下のものであれば、特に限定しない。(E)成分は、必要に応じ変性させたものであってもよい。液状変性ポリブタジエンとしては、例えば、エポキシ変性ポリブタジエン、エポキシ樹脂変性ポリブタジエン、アクリル酸変性ポリブタジエン、メタクリル酸変性ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリブタジエン、ウレタン変性ポリブタジエン等の液状物、または、それらを更に変性させたもの(例えば、液状エポキシ変性ポリブタジエンのアミン化物等)が挙げられる。具体的には、1,2ビニル量が70質量%の液状ポリブタジエン(RICON150、数平均分子量:3900、米国SARTOMER社製)、1,2ビニル量が85質量%の液状ポリブタジエン(RICON153、数平均分子量:4700、米国SARTOMER社製)、1,2ビニル量が90質量%の液状ポリブタジエン(RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)などを用いてもよい。これらの液状ポリブタジエンは、単独で、あるいは二種以上併せて用いてもよい。
【0130】
(ゴム組成物の(F)成分)
ゴム組成物Rのうち(F)成分を導電性カーボンとする場合、デンカブラック、アセチレンブラック(いずれも電気化学工業株式会社製)、ケッチェンブラックEC(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)、HAG−150(日本黒鉛工業株式会社製)、JB−5(日本黒鉛工業株式会社製)を用いてもよい。また、(F)成分を酸化亜鉛とする場合、三井金属鉱業株式会社製の酸化亜鉛を用いてもよい。また、(F)成分を酸化アルミニウムとする場合、AS−50(昭和電工株式会社製)を用いてもよい。また、(F)成分を酸化チタンとする場合、ET−600W(石原産業株式会社製)を用いてもよい。
【0131】
また、ゴム組成物には、プロセスオイル、老化防止剤、加工助剤、架橋促進剤、白色充填剤、反応性モノマー、発泡剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0132】
(高温側プレート2、低温側プレート3を形成する樹脂)
高温側プレート2、低温側プレート3を形成する樹脂は、特に限定しない。例えば、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などであってもよい。また、高温側プレート2、低温側プレート3を形成する樹脂を、ポリアミドを含有する樹脂としてもよい。この場合、ポリアミドとして、アミド結合(−CONH−)を繰り返し単位にもつ高分子化合物であれば特に限定しない。具体的には、ジアミンと二塩基酸との重縮合によるものを用いてもよい。例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミンのような脂肪族、脂環族または芳香族のジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸のような脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸とから製造されるポリアミドを用いてもよい。
【0133】
また、ポリアミドとして、アミノカルボン酸の重縮合によるものを用いてもよい。例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のようなアミノカルボン酸から製造される結晶性または非結晶性のポリアミドを用いてもよい。
【0134】
また、ポリアミドとして、ラクタムの開環重合によるものを用いてもよい。例えば、ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタムのようなラクタムから製造されるポリアミドを用いてもよい。
【0135】
ポリアミドとしては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド等を用いてもよい。とりわけ、剛性および耐熱性が特に良好な点で、ポリアミド6、ポリアミド66、芳香族ポリアミドが好ましい。
【0136】
また、好ましくは、高温側プレート2、低温側プレート3の曲げ弾性率は、6000MPa以上である方がよい。また、高温側プレート2、低温側プレート3の引張強さ(TB)は、120MPa以上である方がよい。これらの要求を充足するため、高温側プレート2、低温側プレート3を形成する樹脂に、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ウィスカー、粘度鉱物等を配合して補強してもよい。また、高温側プレート2、低温側プレート3を形成する樹脂には、ポリアミド以外の樹脂を含有させてもよい。すなわち、ポリマーブレンド材を用いてもよい。
【実施例1】
【0137】
次に、本発明のモータ用防振マウントについて行った、温度伝達シミュレーションについて説明する。
【0138】
<サンプル>
(実施例1−1)
実施例1−1のサンプルは、第一実施形態のモータ用防振マウント1(図1〜図11参照)である。すなわち、実施例1−1のサンプルの弾性プレート4を形成するゴム組成物Rは、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)120質量部と、酸化亜鉛(三井金属鉱業株式会社製)70質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)60質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。
【0139】
(比較例1−1)
比較例1−1のサンプルは、従来のモータ用防振マウントである。すなわち、比較例1−1のサンプルの弾性プレートは、シリコーンゴム組成物製である。比較例1−1の一対の連結プレート(本発明の高温側プレートおよび低温側プレートに対応)は、共に金属製である。比較例1−1のサンプルは、特許文献3の図1〜図4同様の構成を有している。
【0140】
(比較例1−2)
比較例1−2のサンプルは、従来のモータ用防振マウントである。比較例1−2のサンプルの弾性プレートは、EPDM組成物製である。比較例1−2の高温側プレートおよび低温側プレートは、共にPA66GF50製である。比較例1−2のサンプルは、特許文献2の図1同様の構成を有している。
【0141】
<シミュレーション条件>
ステッピングモータの大きさは、42mm角とした。ステッピングモータ、モータ用防振マウント、高温側ブラケット、低温側ブラケット、これらの部材に接触する空気の温度は、全て25℃とした。また、駆動時のステッピングモータの温度は、100℃に設定した。ステッピングモータの温度が90℃になってから、10分後の、1)モータ用防振マウントと低温側ブラケットとの境界A(図5参照)の温度、2)低温側ブラケットの端部B(図1参照)の温度を計算した。
【0142】
<シミュレーション結果>
実施例1−1の場合、境界Aの温度は46.7℃であった。また、端部Bの温度は41.2℃であった。比較例1−1の場合、境界Aの温度は64.2℃であった。また、端部Bの温度は53.9℃であった。比較例1−2の場合、境界Aの温度は32.7℃であった。また、端部Bの温度は30.6℃であった。シミュレーションの結果から、熱伝導性が最も高いのは比較例1−1であり、次に高いのは実施例1−1であり、最も低いのは比較例1−2であることが判った。
【0143】
ところで、モータなどの部品の温度限界値については、IEC国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)の規格が適用される。中でも、モータのように巻線絶縁を含む絶縁箇所は、A種絶縁材料(IEC60085による)として評価され、その評価にはIEC60950−1 1.4.12;1.4.13;4.5.1;が適用される。当該IEC規格によると、A種絶縁材料の最高温度は100℃と定められている。
【0144】
シミュレーション結果とIEC規格とを見比べると、比較例1−1のみならず、実施例1−1も充分にIEC規格をクリアーすることが判る。すなわち、比較例1−1は言わば過剰スペックとなっており、実施例1−1によると、高温側プレートおよび低温側プレートが樹脂製である分、低コストでIEC規格をクリアーできることが判る。
【実施例2】
【0145】
次に、本発明のモータ用防振マウントの弾性プレート単体について行った、熱伝導率測定実験について説明する。
【0146】
<サンプル>
(実施例2−1)
実施例2−1の弾性プレートを形成するゴム組成物は、第一実施形態のモータ用防振マウント1(図1〜図11参照)の弾性プレート4を形成するゴム組成物と、同様である。すなわち、実施例2−1のサンプルの弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)75質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。
【0147】
弾性プレートは、プレス成形により製造した。具体的には、180℃の温度下で、10分間架橋させることにより製造した。
【0148】
(実施例2−2)
実施例2−2の弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)質量部と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)120質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0149】
(実施例2−3)
実施例2−3の弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)75質量部と、酸化亜鉛(三井金属鉱業株式会社製)70質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0150】
(実施例2−4)
実施例2−4の弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)75質量部と、酸化アルミニウム(AS50、昭和電工株式会社製)70質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0151】
(実施例2−5)
実施例2−5の弾性プレートは、前記実施例1−1のサンプル(第一実施形態のモータ用防振マウント)の弾性プレート単体である。
【0152】
(実施例2−6)
実施例2−6の弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)60質量部と、同じく導電性カーボンブラック(人造黒鉛(HAG−150、日本黒鉛工業株式会社製))60質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0153】
(実施例2−7)
実施例2−7の弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、導電性カーボンブラック(デンカブラック、電気化学工業株式会社製)60質量部と、同じく導電性カーボンブラック(天然黒鉛(JB−5、日本黒鉛工業株式会社製))50質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0154】
(実施例2−8)
実施例2−8の弾性プレートを形成するゴム組成物は、実施例2−7のゴム組成物に対して、導電性カーボンブラック(天然黒鉛(JB−5、日本黒鉛工業株式会社製))の配合量を、50質量部から60質量部に変更したものである。その他の成分、配合量は、実施例2−7のゴム組成物と同様である。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0155】
(実施例2−9)
実施例2−9の弾性プレートを形成するゴム組成物は、実施例2−7のゴム組成物に対して、導電性カーボンブラック(天然黒鉛(JB−5、日本黒鉛工業株式会社製))の配合量を、50質量部から100質量部に変更したものである。その他の成分、配合量は、実施例2−7のゴム組成物と同様である。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0156】
(実施例2−10)
実施例2−10の弾性プレートを形成するゴム組成物は、実施例2−7のゴム組成物に対して、導電性カーボンブラック(天然黒鉛(JB−5、日本黒鉛工業株式会社製))の配合量を、50質量部から200質量部に変更したものである。その他の成分、配合量は、実施例2−7のゴム組成物と同様である。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0157】
(比較例2−1)
比較例2−1の弾性プレートを形成するゴム組成物は、EPDM(エスプレン6101、住友化学株式会社製)170質量部(油展ポリマーであり、ポリマー100質量部と、オイル70質量部と、からなる。)と、SRF(Simi−Reinforcing Furnace black、シーストS、東海カーボン株式会社製)75質量部と、可塑剤(ダイアナプロセスPW−380、出光興産社製)10質量部と、液状ポリブタジエン(1,2ビニル量:90質量%、RICON154、数平均分子量:5200、米国SARTOMER社製)10質量部と、エポキシ樹脂(jER(旧エピコート)828、ジャパンエポキシレジン株式会社製)3質量部と、前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(スミカノール620、住友化学株式会社製)2質量部と、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(スミカノール507A、住友化学株式会社製)1.54質量部と、過酸化物架橋剤(パーブチルP−40MB(K)、日油株式会社製)5質量部と、を含有している。弾性プレートは、実施例2−1同様の方法により製造した。
【0158】
<実験条件>
熱伝導率の測定は、迅速熱伝導率計(Kemtherm QTM−D3 京都電子工業株式会社製)により行った。すなわち、Haupin、Mittenbuehler等によって数式解析がなされた非定常熱線法の原理を基に、熱伝導率を測定した。
【0159】
<実験結果>
各サンプルの組成および実験結果を表1に示す。なお、表中の配合量の単位は、いずれも「質量部」である。
【表1】

【0160】
実験の結果、実施例2−1の熱伝導率は、0.44(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−2の熱伝導率は、0.54(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−3の熱伝導率は、0.45(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−4の熱伝導率は、0.44(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−5の熱伝導率は、0.53(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−6の熱伝導率は、0.6(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−7の熱伝導率は、0.62(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−8の熱伝導率は、0.66(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−9の熱伝導率は、0.69(W/m・K)であることが判った。また、実施例2−10の熱伝導率は、0.74(W/m・K)であることが判った。また、比較例2−1の熱伝導率は、0.29(W/m・K)であることが判った。
【0161】
すなわち、熱伝導率が最も高いのは実施例2−10であり、以下、高い方から、実施例2−9、実施例2−8、実施例2−7、実施例2−6、実施例2−2、実施例2−5、実施例2−3、実施例2−1および実施例2−4、比較例2−1の順であることが判った。
【符号の説明】
【0162】
1:モータ用防振マウント、2:高温側プレート、3:低温側プレート、4:弾性プレート、6:スペーサ、7:金型。
20:スクリュー挿通孔、21:高温側貫通孔、22:はとめリング、23:スクリュー、24:注入孔、30:スクリュー挿通孔、31:低温側貫通孔、33:スクリュー、40:防振部、41:熱伝導部、60:出力軸挿通孔、70:上型、71:下型、72:スライドコア、75:キャビティ、90:ステッピングモータ、91:高温側ブラケット、92:低温側ブラケット。
410:出力軸挿通孔、411:スリット、700:凹部、701:スクリュー挿通孔用凸部、702:高温側貫通孔用凸部、703:注入孔、710:凹部、711:スクリュー挿通孔用凸部、712:低温側貫通孔用凸部、713:出力軸挿通孔用凸部、714:スリット用凸部、720:開口部、721:防振部成形孔、900:出力軸、910:スクリュー固定孔、911:高温側凸部、920:筐体取付片、920a:スクリュー挿通孔、921:モータ取付壁、921a:スクリュー挿通孔、921b:低温側凸部、921c:出力軸挿通孔。
R:ゴム組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータが取り付けられる金属製の高温側ブラケットと、該高温側ブラケットを固定するための金属製の低温側ブラケットと、の間に介装され、
該高温側ブラケットに当接する樹脂製の高温側プレートと、
該低温側ブラケットに当接する樹脂製の低温側プレートと、
該高温側プレートと該低温側プレートとの間に介装され該高温側プレートおよび該低温側プレートに架橋接着する防振部と、該高温側ブラケットと該低温側ブラケットとの間に、該高温側プレートと該低温側プレートとが除外された状態で、介装される熱伝導部と、を有し、ゴム組成物の架橋物製の弾性プレートと、
を備えてなるモータ用防振マウント。
【請求項2】
前記高温側ブラケットおよび前記低温側ブラケットのうち少なくとも一方と、前記熱伝導部と、の間には隙間が形成されており、
さらに、該隙間を埋める金属製のスペーサを備えている請求項1に記載のモータ用防振マウント。
【請求項3】
前記高温側プレートは、高温側貫通孔を備えており、
前記低温側プレートは、低温側貫通孔を備えており、
前記防振部は、該高温側貫通孔および該低温側貫通孔の径方向外側に配置され、該高温側プレートと該低温側プレートとの間に介装されており、
前記熱伝導部は、該高温側貫通孔および該低温側貫通孔の径方向内側に配置され、前記高温側ブラケットと前記低温側ブラケットとの間に介装され、前記モータの出力軸が挿通される出力軸挿通孔を備えている請求項1または請求項2に記載のモータ用防振マウント。
【請求項4】
前記高温側プレートおよび前記低温側プレートは、共にポリアミドを含有する樹脂製であり、
前記弾性プレートは、下記の(A)〜(F)成分を含有するゴム組成物の架橋物製である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のモータ用防振マウント。
(A)ジエン系ゴムまたはメチレン基を有するゴム。
(B)架橋剤。
(C)レゾルシノール系化合物。
(D)メラミン系樹脂。
(E)1,2ビニル量が55質量%以上90質量%以下の液状ポリブタジエン。
(F)導電性カーボン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウムから選ばれる一種以上の充填材。
【請求項5】
前記(F)成分の前記導電性カーボンの種類には、黒鉛が含まれる請求項4に記載のモータ用防振マウント。
【請求項6】
前記(A)成分100質量部に対する前記(E)成分の割合は、3質量部以上50質量部以下に設定されている請求項4または請求項5に記載のモータ用防振マウント。
【請求項7】
前記(A)成分のゴムは、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上のゴムであり、かつ前記(B)成分の架橋剤は、硫黄系架橋剤である請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のモータ用防振マウント。
【請求項8】
前記(A)成分のゴムは、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴムから選ばれる一種以上のゴムであり、かつ前記(B)成分の架橋剤は、過酸化物架橋剤である請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のモータ用防振マウント。
【請求項9】
前記(A)成分100質量部に対する前記(F)成分の割合は、50質量部以上250質量部以下に設定されている請求項4ないし請求項8のいずれかに記載のモータ用防振マウント。
【請求項10】
前記高温側プレートおよび前記低温側プレートのうち少なくとも一方は、導電性カーボンを含有する樹脂製である請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のモータ用防振マウント。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−60132(P2010−60132A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175850(P2009−175850)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】