説明

リチウムイオン二次電池

正極集電体の両面に正極活物質層を形成した正極電極と、負極集電体の両面に負極活物質層を形成した負極電極とを、正極活物質層と負極活物質層とがそれぞれ対向するようにセパレータを介して交互に複数積層した電池要素に、液体電解質を含浸せしめ、ラミネート外装で保持したリチウムイオン二次電池であって、以下の構成よりなる放電深度50%、25℃での10秒出力値が3000W/kg以上であるリチウムイオン二次電池。(1)正極活物質の平均粒径が3〜10μmであり、正極電極の集電体を除く厚みが30〜110μm、(2)負極活物質の平均粒径が5〜10μmであり、正極電極の集電体を除く厚みが30〜100μm、(3)正極端子および負極端子が互いに隔離して外周端縁部に導出され、前記正極端子および負極端子が各々、B/A≧0.57(ただし、Aは電流の方向に対して垂直な方向の活物質領域の幅、Bは電流の方向に対して垂直な方向の電極端子幅を表す)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池に関し、特に高出力のリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型、軽量の携帯電子機器の電源として、充電可能な種々の二次電池が提案されている。中でもリチウムイオン二次電池は、電池電圧が高く、高エネルギー密度を有し、自己放電が少なく、かつサイクル特性に優れ、小型軽量電池としてもっとも有望視されている。
【0003】
最近では、携帯電子機器用の電源としての用途のみならず、大気汚染や地球温暖化の一因となる内燃機関エンジンを搭載した自動車に代わる、電気自動車やハイブリッド自動車の動力源としてリチウムイオン二次電池の適用が期待されている。更に、人工衛星等の宇宙開発や、電力貯蔵用途への適用も検討され始めている。このような大型用途には、更に高出力、高寿命のリチウムイオン二次電池が要求される。
【0004】
リチウムイオン二次電池における正極材料としては、リチウムと遷移金属元素との複合酸化物が提案されており、主としてコバルト酸リチウムが用いられているが、コバルト自体が希少金属であり、価格が高く、大型用途には安価なマンガン酸リチウムが期待されている。負極材料としては基本的にはリチウム金属であるが、充放電を繰り返すことによる電極溶解の問題から、リチウム合金や、リチウムを吸蔵できる物質、特に炭素材料が主として使用されている。これら正負極材料は、通常、粉砕・分級を経て適度な粒度を持つ粉体とした後、必要に応じ導電剤、結着剤と混合して合剤とし、これを集電体に塗布、乾燥し、圧延、加圧、切断等の各工程を経て電極が作製される。
【0005】
リチウムイオン二次電池における重要な特性である、エネルギー密度、出力密度、サイクル特性等を改善する提案が数多く為されているが、例えば、特許文献1(特開2000−30745号公報)では、急速充放電可能で、高耐電圧かつ高容量、高エネルギー密度、充放電サイクル信頼性の高いリチウムイオン二次電池を提供するために、正極電極と負極電極の厚みを規定している。具体的には、正極が80〜250μmの厚みであるのに対して、負極を正極厚さの7〜60%であって、10〜150μmの厚み範囲内で形成することを提案している。一般的に、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度を向上させるためには、活物質塗布厚さを100μm程度まで厚くし、20μm程度の粒径の大きな活物質を用いている。特許文献1では活物質粒径に関して記載はなく、代わりに比表面積が800〜3000m/gの活性炭を正極に使用すること、X線回折による[002]面の面間隔が0.335〜0.410nmの炭素材料を負極に使用することが記載されている。
【0006】
これに対して、ハイブリッド自動車等の電源用途に高出力のリチウムイオン二次電池が提案されている。特許文献2(特開平11−329409号公報)、特許文献3(特開2002−151055号公報)では高出力密度のリチウムイオン二次電池を提供するために、活物質塗布厚さを80μm以下とし、同時に活物質粒径を5μm以下に規定している。更に、特許文献3では、電極内の電解液量が増えることにより、膜厚方向の電極内電解液中のリチウムイオン輸送力が増し、より出力密度を向上させることができるとして、空隙率を50〜60%にすることが好ましいと記載されている。また、活物質層を空隙率の異なる2層から構成することで、エネルギー密度を犠牲とすることなく出力密度を向上できるとしており、具体的には、集電体側の活物質層の空隙率を30〜50%、セパレータ側の活物質層の空隙率を50〜60%とすることを提案している。一方、正極活物質としてマンガン酸リチウムを使用するに際して、特許文献4(特開平11−185821号公報)では、正極合剤層の厚みを集電体厚みの4倍以下とし、マンガン酸リチウムの50%積算粒子径を5〜15μmとすることによって、大型電池に対応した高出力の電池システムが得られることが記載されている。このように、高出力化のためには、エネルギー密度向上目的とは逆に、小さな粒径の活物質を用い、高空隙率で薄い活物質層を形成する方法が提案されている。
【0007】
特許文献5(特開平11−297354号公報)では、マンガン酸化物またはリチウムとマンガンとの複合酸化物を含有する正極と、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムをドープ、脱ドープ可能な材料を含有する負極とを構成要素する非水電解液二次電池において、非水電解液としてエチレンカーボネートを20容量%〜30容量%含有し、少なくともLiBFが2.0mol/l〜5.0mol/lの濃度で溶解されてなる非水電解液を使用すると、高温下において、保存特性やサイクル特性が著しく悪化するという問題を解消できると記載されている。
【0008】
ところで、集電体に電極活物質を塗布して形成される正極及び負極は、ポリオレフィン系等の多孔質膜からなるセパレータを介して重ね合わせて電池要素を構成する。この電池要素は、巻き取られ、円筒状の外装缶の缶底に絶縁板を挿入した後、巻き取られた電池要素を挿入し、負極リード端子が外装缶底に、また正極リード端子が正極キャップに溶接され、その後、電解液が注入されて、最後に正極キャップが外装缶に封口されて完成品となる。角形電池の場合も、長円形に巻き取られた電池要素を角形の外装缶に挿入している。ただし、外装缶が円筒状外装缶の場合のニッケルメッキした鉄またはステンレス鋼ではなくアルミニウム缶を用いて軽量化を図っているため、封口に際しては通常の溶接法が適用できず、レーザー溶着が行われる。
【0009】
電気自動車やハイブリッド自動車用の電源に使用されるような大型電池では、高電流放電で使用する場合が多く、電池の内部抵抗による発熱の効率的な放熱処理が重要課題である。通常、単電池1個では必要な電流量が得られないため、複数の電池を直列に組み合わせて組電池として使用されている。このような単電池或いは組電池を電気自動車やハイブリッド自動車に搭載する際に、放熱性を考慮して外部冷却手段を有する保持部材が使用されている。
【0010】
外部冷却手段によれば、電池表面上の熱を除熱することは可能であるが、大型電池としては、電池設計が携帯機器用小型電池の延長であり、円筒形や角型等の外装缶に巻回した電池要素を挿入して電池を構成しているため、充放電時の電池の内部抵抗によるジュール熱、リチウムイオンの活物質内への出入りによるエントロピー変化による発熱により、電池内部に熱が蓄熱されやすく、電池内部と電池表面との温度差が大きくなり、内部抵抗の変動や、その結果、充電量や電圧のバラツキを生じやすい。
【0011】
これに対して、電池自体の放熱性を改善する方法として、例えば、特許文献6(特開平11−144771号公報)では、シート状或いは針状のヒートシンクを正負電極やセパレータと共に巻回して、電池内部の熱をこのヒートシンクを介して電池ケース等に伝える方法を提案している。同特許文献中には、正極集電体自体をヒートシンクとして負極集電体よりも幅広のものを用いることも提案されている。集電体形状を変更して放熱性を改良する提案が特許文献7(特開2000−277087号公報)に記載されている。同特許文献では、集電体の厚みを局所的に厚くして、この厚い部分を利用して電池内で発生する熱を積層面と平行な方向に効率的に逃がす電極板構造が提案されている。
【0012】
特許文献8(WO99/60652)には、電池の外装形状を扁平形状として放熱特性に優れた、エネルギー容量30Wh以上かつ体積エネルギー密度180Wh/l以上の非水系二次電池が開示されている。同特許文献では、厚さを12mm未満とすることで高容量二次電池における電池表面温度の上昇がほとんどないと記載している。ただし、この特許文献での電池厚みについて、その数値に臨界的な意義は認められない。
【0013】
しかしながら、これらの提案の殆どが、金属製の電池缶を用いた電池であるため、軽量化、薄型化に限界がある。特に電気自動車やハイブリッド自動車用の電源として、組電池(電池ユニット)としての重量や設置容積の低減を図ることは重要であるが、これに十分対応できるとは言い難い。
【0014】
ところで、近年、樹脂フィルムと金属フィルムを積層して一体化したラミネートフィルムを熱封止することにより構成される外装体(いわゆる、ラミネート外装)を用いた電池が活発に研究開発され、大幅な軽量化、薄型化を達成したラミネート外装電池が、小型携帯機器用電源として実用化されるに至っている。しかしながら、このようなラミネート外装を単純に高出力、高容量目的の二次電池にそのまま適用すると、様々な問題が発生する。
【0015】
ラミネート外装を用いるリチウムイオン二次電池としては、通常のリチウムイオン二次電池の液体有機電解質を各種のポリマー材料に代替したポリマー電解質二次電池として開発が進められてきた。高容量、高出力を達成するためには、例えば、特許文献9(特開平9−259859号公報)に示されているように、ポリマー電解質を有する単電池を複数直列、並列、直列一並列で組み合わせて組電池として使用されている。該特許文献では、正極端子および負極端子を互いに隔離して外周端縁部に導出させてなるシート状の薄型電池の外周端縁に一対の凹設部を設け、この凹設部内に両端子をそれぞれ導出させることで、電池要素部が相対的に大きく確保されると共に、外周端縁凹設部内に端子がそれぞれ導出されていることで、並列、直列、並列−直列などの組み合わせが容易となる組電池が開示されている。
【0016】
しかし、このような組電池として使用する場合、単電池として使用する場合と比較して大電流が流れることから発熱が著しく、組電池全体の温度上昇が顕著となって、温度上昇が大きくなりすぎると、電池の寿命が短くなったり、電池が破損したりするおそれがある。特に端子部での発熱のため、ラミネート外装の封止部に剥がれが生じやすいという問題がある。
【0017】
特許文献10(特開2003−27024号公報)では、小型、軽量の電池において、リードに十分な許容電流を確保してリードの溶断や外装ケースの融解の可能性を低減すると共に、外装ケースの封止不良や不十分な封止が発生するのを防止するため、外装ケースの一辺から取り出されるリードの幅の合計値Xとその辺の長さYとの比X/Yが0.4以下で、かつ、この辺の長さYが20mm以下で、リードが電池を1時間率放電(充電)させる際の放電(充電)電流値の5倍に相当する許容電流を確保できる断面積を有する様に構成することが開示されている。しかし、この例では、辺の長さ20mm以下という小型の電池について開示しているものであって、大電力を取り出す大型の電池に適用できるものではない。又、ここに開示の電池もポリマー電解質の使用を前提としている。更に、小型電池を想定しているため、電池の放熱、特に組電池として使用する場合の放熱性の確保については何ら検討されていない。
【0018】
ポリマー電解質を用いた二次電池は、所定電圧を定量的に放出する小型・軽量の二次電池を製造するには有利であるが、大型電池、特に短時間に大電流を必要とするハイブリッド自動車用の電源として使用するには、リチウムイオンの移動度が低く、十分に対応できない。
【0019】
【特許文献1】特開2000−30745号公報
【特許文献2】特開平11−329409号公報
【特許文献3】特開2002−151055号公報
【特許文献4】特開平11−185821号公報
【特許文献5】特開平11−297354号公報
【特許文献6】特開平11−144771号公報
【特許文献7】特開2000−277087号公報
【特許文献8】WO99/60652
【特許文献9】特開平9−259859号公報
【特許文献10】特開2003−27024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、従来の二次電池における各問題点を総合的に検討し、軽量化、薄型化に有利なラミネート外装を使用しつつ、電池自体の放熱性を高めながら、高出力が得られるリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、以下の本発明に到達したものである。
【0022】
すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池は、正極集電体の両面に正極活物質層を形成した正極電極と、負極集電体の両面に負極活物質層を形成した負極電極とを、正極活物質層と負極活物質層とがそれぞれ対向するようにセパレータを介して交互に複数積層した電池要素に、液体電解質を含浸せしめ、ラミネート外装で保持したリチウムイオン二次電池であって、以下の構成よりなる放電深度50%、25℃での10秒出力値が3000W/kg以上であるリチウムイオン二次電池。
(1)正極活物質の平均粒径が3〜10μmであり、正極電極の集電体を除く厚みが30〜110μm、
(2)負極活物質の平均粒径が5〜10μmであり、正極電極の集電体を除く厚みが30〜100μm、
(3)正極端子および負極端子が互いに隔離して外周端縁部に導出され、前記正極端子および負極端子が各々
B/A≧0.57
(ただし、Aは電流の方向に対して垂直な方向の活物質領域の幅、Bは電流の方向に対して垂直な方向の電極端子幅を表す)
を満たす。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高出力、高容量のリチウムイオン二次電池の軽量化、薄型化を達成し、放熱性にも優れた二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の電池要素を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の電極とリード端子との関係の一例を示す概念図である。
【図3】電極取り出し幅に対する端子幅の比率と電流通過距離との関係を示したグラフである。
【図4】本発明の電極とリード端子との関係の他の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の電極とリード端子との関係のさらに他の一例を示す概念図である。
【図6】リード端子を放熱板として使用する場合の一例を示す概略図である。
【図7】リード端子を放熱板として使用する場合の他の一例を示す概略図である。
【図8】本発明のラミネート外装リチウムイオン二次電池の封止前の斜視図である。
【図9】実施例及び各比較例における2.5A〜75Aでの容量(%)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0025】
1 正極活物質層

2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 セパレータ
6 正極リード端子
7 負極リード端子
8 熱シール部
11 活物質領域
12 集電部
13 リード端子
21 リード端子
211 熱シール部
22 電極
23 ラミネート外装
31 ラミネートフィルム(カップ状ケース)
32 ラミネートフィルム(蓋材)
33 電極群
331 集電部
34 リード端子
341 熱シール部
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のリチウムイオン二次電池の構成について詳細に説明する。
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池の電池要素の概略断面図である。正極集電体3の両面に正極活物質層1が設けられ、正極電極が構成され、負極集電体4の両面に負極活物質層2が設けられ負極電極が構成される。これら正極電極および負極電極は交互にセパレータ5を介して積層され、電極群を構成する。正極および負極集電体の一部は活物質層が塗布されず、集電部を構成しており、同図では、正極集電体3の集電部と負極集電体4の集電部とが対向する側に延出するように正極電極と負極電極とが積層されている。正極集電体3の集電部は正極リード端子6に、負極集電体4の集電部は負極リード端子7にそれぞれ接続されている。同図においては、正極および負極リード端子には予め熱シール部8が塗説されている。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池の正極活物質としては、リチウム系の正極活物質、一般的にはリチウムと遷移金属元素との複合酸化物であれば、特に限定されず、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、或いはこれらの混合物、さらにはこれら複合酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系等などが使用でき、特に大型電池用途として安定的に供給でき、熱分解温度も高いマンガン酸リチウムが好ましい。
【0028】
一方、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な負極材料であれば特に限定されず、従来公知のグラファイト(天然又は人造黒鉛)、アモルファスカーボン等の炭素材料が好適に使用される。
【0029】
本発明における正負極材料は、所定の平均粒径を有していることが必要である。平均粒径が大きすぎると、高出力、高容量を達成するための活物質層厚を達成することが困難となるため、正極活物質および負極活物質は共に10μm以下の平均粒径を有することが必要である。一方、平均粒径が小さすぎると、1μm以下の微粉も多く含むこととなり、電極として保持するために添加される結着剤等の添加剤の量も多くする必要があり、その結果、活物質層の内部抵抗が大きくなり、より発熱しやすくなるため、正極活物質では3μm以上、負極活物質では5μm以上の平均粒子径を有するものを使用する。
【0030】
本発明における正極電極および負極電極は、それぞれ集電体(金属箔)の両面に活物質層を形成したもので、正極電極では、集電体を除く厚みが30μm以上、110μm以下、好ましくは100μm以下であり、負極電極では、集電体を除く厚みが30μm以上、100μm以下、好ましくは80μm以下となるように、活物質層を形成する。なお、積層の最外部に配置する電極については、その外側に対向する電極が存在しないため、内側となる片面のみに活物質層を設けた電極を用いても良い。その場合、活物質層厚は上記範囲の1/2とすればよい。
【0031】
ここで、集電体の厚みは許容電流値を確保できる厚みであれば特に制限されるものではないが、あまり薄いと十分に端子部に熱を伝導することが困難となるため、正極集電体は正極活物質層厚の20%以上であることが好ましく、負極集電体は負極活物質層厚の10%以上であることが好ましい。上限については、集電体の厚みに応じて電池重量および電池全体の厚みが大きくなるため、必要以上に厚くすることは不利である。通常、正極集電体としてアルミニウム箔を用いるのであれば、入手の容易さ等を考慮して、10μm〜50μm、好ましくは15μm〜30μmであり、負極集電体として銅箔を用いるのであれば、5μm〜50μm、好ましくは5μm〜20μmである。
【0032】
活物質層を集電体上に形成する際は、正負極活物質それぞれを、適当な結着剤樹脂溶液に均一に分散させ、スラリーを調製する。このとき、必要に応じて、各種炭素質の導電性付与材、各種成形助剤などを添加しても良い。次いで、得られたスラリーを集電体上にコーターを用いて均一な厚みに塗布し、乾燥して、両面に形成する場合はもう一方の面にも同様に塗布、乾燥した後、活物質の形状を破壊しない程度の圧力でプレスして、上記膜厚の活物質層を形成する。このとき、集電体上に活物質を塗布しない未塗布部を筋状に形成し、この未塗布部を合わせて切り出すことで、それぞれの電極を得ることができる。このように筋状の未塗布部を形成しておくことで、活物質層幅の未塗布部が形成でき、これが後工程でリード端子との接続に用いられる集電部となる。特に、本発明では、後述するリード端子が従来より幅広に形成されるため、活物質層幅の未塗布部をそのまま集電部として用いるのが望ましい。もちろん、必要に応じて、リード端子幅に合わせて集電部をタブ状に成形することを妨げるものではない。
【0033】
このように形成した正負極電極は、それぞれ、正極活物質層と負極活物質層が対向するようにセパレータを介して複数積層することで電池要素を構成するが、このとき、正極電極の集電部と負極電極の集電部とが互いに隔離した領域に導出できるよう、例えばそれぞれ対向する側になるように積層する。
【0034】
ここで使用されるセパレータは、リチウムイオン二次電池において、通常使用されるポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類や、フッ素置換ポリオレフィン類、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド等が使用できる。セパレータの厚みは特に制限はないが、あまり厚すぎると、レート特性が不十分になり体積エネルギー密度も低下する上、相対的に含浸させる電解液量も増加し、電池重量の増大、更には、電池内部の蓄熱の原因にもなる。逆にあまり薄くなりすぎると、自己放電しやすくなる。通常、上限としては50μm以下、好ましくは30μm以下であり、下限としては5μm以上、好ましくは10μm以上である。
【0035】
次に、このように積層した電池要素の正極、負極集電部にそれぞれ正極リード端子および負極リード端子を接続する。本発明におけるリード端子は、放熱性に重点をおいて、従来よりも幅広に形成する。前記した特許文献10では、1つの辺から2極を取り出しているため、各極のリード端子は電池幅の50%未満にしか形成できず、しかも2極間の間隔が狭くなると封止が不十分となることからリード端子幅合計で電池幅の40%以下にしていたが、本発明では、1つの辺から1極の端子しか取り出しておらず、しかも幅広に形成することで電流通過距離が短くなり、端子部での発熱が抑制されることから、封止不良が起きにくい構造となっている。本発明では、活物質層の幅Aに対して端子の幅Bを、B/Aの値が57%以上になる様に構成する。
【0036】
特願2002−26147において、本発明者はこの端子幅について詳細に検討している。そこでは、図2に示すように矩形の電極(正極および負極)を想定し、集電体上の活物質が塗布された領域(活物質領域)11の幅をA,長さをCとし、集電体の活物質の未塗布部である集電部12にはリード端子13が取り付けられており、このリード端子の幅をBとして表す。
【0037】
図3は、図2のモデルにおいてシミュレーションにより電流通過距離を求め、B/Aとの関係をグラフ化したものである。図中、電流通過距離は、B/A比1%であるときの電流通過距離を100%としたときの比率で示した。電流通過距離と発熱量はほぼ比例関係にあるため、電流通過距離が短縮されるほど、発熱量が抑制されることになる。ここで、図3を参照すれば、Aに対するCの比率(C/A)に拘わらず、B/A値が57%以上の場合に電流通過距離が短くなっていることが分かる。したがって、B/A値が57%以上の場合に発熱量が効果的に抑制される。更に、電流通過距離の短縮は、電池の内部抵抗を低下させる効果を併有する。この点においても電池要素からの発熱抑制に寄与する。
【0038】
上記の例では矩形電極であるため、活物質領域の幅Aは一定であるが、他の形状の集電体を用いる場合、活物質領域の幅は一定でない場合もあり、その場合は、リード端子が延出する方向に対して垂直な方向の幅のうち、もっとも狭い幅(仮にA’とする)を活物質領域の幅とする。これは、前記した電流通過距離が活物質領域11の幅のうち最も狭い幅に依存して定まることによる。ただし、最も狭い幅となる領域が電流通過経路の途中にある場合、その部分の集電体断面積が許容電流値を確保できないほどその幅が狭くなるものでないことは自明である。例えば、図4に示すような電極形状では、電流通過経路の起点となるリード端子接続部の対向側の辺が最も狭い幅A’となっており、図5に示す例では、電流通過経路の途中がくびれた構造となり、その幅が最も狭い幅A’となっている。したがって、場合によってはB>A’となる場合もあるが、通常リード端子の幅Bは集電部の幅より広くなることはない。
【0039】
ラミネート外装を熱シール等で封止する際、リード端子を跨いで封止されることとなるが、通常、このリード端子には、封止を安全に行うため、封止部にラミネート材料との密着性を改良する手段が施されることが好ましい。例えば、金属材料からなるリード端子と熱可塑性樹脂からなるラミネート材料との密着性を強化するために、公知のプライマー処理を施したり、ラミネート材料に使用される熱可塑性樹脂を封止材として予めリード端子に塗設を実施しておく。このとき、リード端子の集電体接合部および封止部の表面積より外部に露出するリード端子部の表面積を大きくすることにより、リード端子を放熱板として機能させることができる。例えば、図6に示すように、リード端子21の長さ(電流の方向、前記幅に対して垂直な方向)を露出部の方が長くなるように構成したり、図7に示すように、露出部における幅を集電体接合部から連続的または段階的に広くして、表面積が大きくなるように構成することができる。これらの図において、211は、ラミネートフィルムとの密着性を改良する目的で塗設された熱シール部であり、この部分でラミネートフィルムの熱シールが行われる。22は、電極であり、23はラミネート外装を示す。
【0040】
このようにリード端子を取り付けた電極群を、ラミネート外装により封止する。ラミネート外装に使用されるラミネートフィルムとしては、通常、基材、金属箔、シーラントの三層で構成される。基材は、ラミネート外装の外側になるもので、ポリエステル(PET)やナイロンなどの耐薬品性や機械的強度に優れた樹脂が使用される。中間の金属箔は、ガスや水分の侵入防止や形状保持性を付与するもので、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、金等の単金属やステンレス、ハステロイ等の合金などが使用できる。特に、加工性に優れたアルミニウムが好ましい。シーラントには、ポリエチレン(PE)、変性ポリプロピレン(PP)、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の、熱シールによる封止を可能とする耐薬品性に優れた熱可塑性樹脂が好ましい。基材の厚みは、10〜50μm、好ましくは15〜30μm程度である。金属箔は、あまり厚いと、ラミネート外装の利点である加工性や軽量性を損ない、逆にあまりに薄いと、ラミネートフィルムとしての加工が困難であったり、水分などの侵入防止や形状保持性に劣ることから、通常、10〜50μm、好ましくは20〜40μmの厚みのものを使用する。シーラントは熱シール(通常、160〜180℃、5秒程度)によって十分な封止が可能な厚みであれば特に制限されないが、通常、100μm以下、好ましくは80μm以下であり、封止をより強固にするためには50μm以下とするのが望ましい。ただし、あまりに薄いと、機械的強度が不足することから10μm以上は必要である。
【0041】
このようなラミネートフィルムを用いて電池を構成するには、ラミネートフィルムを予め外装ケース状に成型して、或いはラミネートフィルムで直接電極群を覆って封止する方法が適用できる。例えば、図8に示すように、カップ状に深絞り成型したケース部材31に前記リード端子34を集電部331に取り付けた電極群33を収納する。このとき、リード端子34の熱シール部341が、ケース部材31のツバ部に乗るように配置する。蓋材のラミネートフィルム32をかぶせ、カップのツバ部の一部(リード端子を取り出す辺でない)を熱シールする。続いて、リード端子取り出し辺の熱シールを行い、残りの一辺から所定の電解液を注入し、注液後、減圧脱泡を行い、最後に、真空シール機を用いて減圧状態で残りの一辺の熱シールを行うことで本発明のリチウムイオン二次電池が得られる。リード端子取り出し辺ではない2辺では、ラミネートフィルムを折り返して熱シールすることもできる。
【0042】
本発明では、ラミネート外装を用いた従来のポリマー電解質電池とは異なり、高出力、高容量を達成するために、液状電解質を用いる。液状電解質としては、通常、リチウムイオン二次電池に使用される非水電解液が使用でき、溶媒として環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、環状エステル、鎖状エステルおよびこれらの混合溶媒が使用でき、更に支持電解質として種々のリチウム塩が使用できる。
【0043】
本発明では、このようにして、放電深度50%、25℃での10秒出力値が3000W/kg以上であるリチウムイオン二次電池が製造できる。本発明のリチウムイオン二次電池は単電池としても極めて高容量の電池であるが、更に複数の電池を接続して所望の電圧、容量の組電池を構成することができる。例えば、正、負極を揃えて積層し接続することによって並列接続による組電池が得られる。また、積層する際に正、負極を交互に接続すれば直列接続による組電池が得られる。また、並列接続と直列接続を併用して組電池を構成することも可能であり、自由なレイアウトでかつ空間を有効利用した、直列、並列、直並列型組電池を得ることができる。本発明のリチウムイオン二次電池は、単電池あたりの容量が従来よりも大きいため、組電池とした際に所定の電圧および容量を得るに際して少ない単電池数で構成でき、しかもラミネート外装を採用したことで、極めて軽量の組電池とすることができる。
【0044】
更に本発明では、リード端子の露出部に対して冷却風が当たるようにすることで、リード端子の放熱板としての効果を高めることができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
実施例1
平均粒径5μmのスピネル構造を持つマンガン酸リチウム粉末、炭素質導電性付与材、およびポリフッ化ビニリデンを90:5:5の重量比でN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に混合分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。このスラリーをドクターブレードを用いて、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃で2時間真空乾燥させた。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し、真空乾燥させた。この際、表裏の未塗布部が一致するようにした。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。この際プレス圧力を調整し、集電体を除いた正極の厚さが、75ミクロンとなるようにした。これを未塗布部を含めて矩形(幅90mm×長さ150mm)に切り出したものを18枚用意した。活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするもので、短辺側に設けた。このようにして、合計の理論容量が3Ahとなる正極を用意した。
【0047】
一方、平均粒径10μmのアモルファスカーボン粉末、ポリフッ化ビニリデンを91:9の重量比でNMPに混合、分散、攪拌してスラリーとした。NMPの量はスラリーが適当な粘度になるように調整した。ドクターブレードを用いて、このスラリーを負極集電体となる厚さ10ミクロンの銅箔の片面に均一に塗布した。塗布時には、わずかに未塗布部(集電体が露出している部分)が筋状にできるようにした。次にこれを100℃2時間真空乾燥した。なお、このとき負極層の単位面積あたりの理論容量と正極層の単位面積あたりの理論容量を1:1となるように活物質の塗布量を調整した。同様にもう一方の面にもスラリーを塗布し真空乾燥した。このようにして両面に活物質を塗布したシートをロールプレスした。この際プレス圧力を調整し、集電体を除いた負極の厚さが、70ミクロンとなるようにした。これを正極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズに、未塗布部を含めて矩形に切り出したものを18枚用意した。活物質未塗布部はリード端子への接続予定部とするものである。このようにして負極を用意した。
【0048】
上記のようにして用意した正極と負極の間に、負極のサイズよりも縦横2mmずつ大きいサイズの矩形の、ポリプロピレン製の厚さ30μmのセパレータを介して積層した。電極の最外側は負極となるようにし、その負極のさらに外側にセパレータを設置した(セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/‥‥‥/負極/セパレータ、という順番)。正極の活物質未塗布部と負極の活物質未塗布部とは対向する側となるような向きに揃えた(正負リード端子を反対向きにするため)。全層を積層し終わったところで、4箇所粘着テープ止めをして層間ずれを起こさないようにした。次に、正極リード端子となる厚さ0.2mm、幅60mm、長さ50mm(電流方向を「長さ」の方向としている。B/A=0.67)のアルミニウム板と、正極8枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。同様に負極リード端子となる厚さ0.2mm、幅60mm、長さ50mm(B/A=0.65)のニッケルメッキ銅板と、負極9枚の活物質未塗布部とを一括して超音波溶接した。なお、正極リード端子および負極リード端子は、上記の溶接接続に先立ち、外装体による封止予定部に予め電子線架橋ポリプロピレン(50μm)および酸変性ポリプロピレン(50μm、融点130℃〜140℃)の積層体からなる樹脂膜(以下リード被覆樹脂)を、後者をリード側に向けて両面に熱融着しておいた。その大きさは、リード端子の幅方向に2mmずつ両側にはみ出すようにし(はみだした部分は酸変性ポリプロピレン層同士が融着する)、リードの長さ方向に12mmである。
【0049】
一方、外装体用のラミネートフィルムとして、ナイロン25μm、軟質アルミニウム40μm、酸変性ポリプロピレン40μm(融点160℃)の積層体からなるフィルムを準備し、所定のサイズに切り出し、電極積層体が収納できるサイズ(リード接続部すなわち活物質未塗布部を含む電極積層体の縦横サイズと略同じ大きさ、厚さは同じ)にカップ状に深絞り成形した。この成形後、帽子のつばのようになっているカップの周囲のフィルムを、10mm幅の辺となるように残してトリミングした。このようにして成形したラミネートフィルムのカップ成形部に、上記の電極積層体を収納した。トリミングされたフィルムのツバ(鍔)部の2箇所に、リード端子が乗るようにした。予め融着しておいた樹脂膜が、ツバ部をまたいで電池の内側と外側に1mmずつはみ出るよう位置あわせした。
【0050】
次に上記のラミネートフィルムを成形せずに所定のサイズに切り出しただけのものを、上記の発電要素が収納されたカップ成形部の上にシール面を内側に向けて蓋をするように置いた。この蓋のサイズは上記の成形・トリミング後のサイズと同じサイズとし、重ねたときに一致するようにした。
【0051】
次にトリミングされたフィルムのツバ部の上を経由して引き出されているリード端子を、外装体の端辺(ツバ部)により以下のようにして封止した。リード端子通過部に選択的に強い圧力が印加されるように、リードの厚さに対応して設計したへこみ段差を形成した、幅9.5mmのヒータを用意した。へこみ段差の形成長さは、それぞれのリード端子のリード被覆樹脂のリード端子幅方向の長さと同じとした。このヒータを用い、リード封止予定部をラミネートフィルムの外側から所定の温度・圧力・時間条件でヒートプレスした。圧力・時間条件はすべての実施例(比較例)で一定とし、温度条件のみ変えた。時間条件を一定としたのは、タクトタイムを一定として実施例と比較例を比較するためである。ヒートプレスの際、ヒータの横位置は、ヒータのへこみ段差とリード端子通過部(またはリード被覆樹脂)を精密に位置合わせし、ヒータの縦位置は、フィルム端部からヒータ端部が0.5mm内側になるように位置合わせした(ヒータの反対側の端部はラミネートフィルムのカップ成形部の側面に当接するようにした)。このようにして、ラミネートフィルムが幅9.5〜10mmで熱融着封止され、リード端子も液密に封止された状態に形成した。このときのラミネート最外層(ナイロン)の状態を観察し、さらにラミネートフィルム内アルミ箔とリード端子の間の短絡の有無を調べた。
【0052】
次に、リード端子引き出し部でない辺(以下長辺P、長辺Qという)のうち一辺(以下長辺Pという)をヒートシールした。
【0053】
次に、長辺Pを下にして傾け、最後の未シール部である長辺Qの隙間から、電極積層体に電解液を注液した。電解液は1mol/リットルのLiPFを支持塩とし、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートの混合溶媒(重量比50:50)を溶媒とするものである。注液後、減圧脱泡を行った。最後に、真空シール機を用いて減圧状態で長辺Qのヒートシールを行い、積層ラミネート電池を完成させた。容量は2.5Ahである。
【0054】
比較例1
ロールプレス後の集電体を除いた正極の厚さが、130ミクロン、負極の厚さが120ミクロン以外は、実施例と同じにして積層ラミネート電池を完成させた。容量は5Ahである。
【0055】
比較例2
実施例と同様に正極、負極を作成した。正極および負極を、セパレータを介して対向させて巻くことによりロール状の巻回式電極をえた。巻回式電極では、セパレータの幅が最も広く、負極、正極の順に幅が狭くなる。巻回式電極の巻終わり部、つまり、最外周は、セパレータのみを数回巻くか、または、外装缶と接する部分には、活物質を形成していない負極(つまり、外缶と接する部分は負極集電体となる)を用いる。
【0056】
巻回式電極を、直径33mm長さ1000mmの円筒状の外装缶に挿入し負極端子と外装缶、正極端子と上蓋を接続する。外装缶は、ニッケルめっきした鉄あるいはステンレス鋼からなり、負極端子と接続することによって電圧を外部に取り出している。上蓋部は、外装缶と絶縁するための絶縁板部および正極端子と接続して電圧を外部に取り出すための導電部からなる。
【0057】
上述のようにして組み立てた電池に電解液を、含浸して上蓋と外装缶をかしめ封止して金属缶電池を完成させた。容量は2.5Ahである。
【0058】
比較例3
リード端子の幅を30mm(B/A=0.33)とした以外、実施例1と同様にして積層ラミネート電池を完成させた。容量は2.5Ahである。
【0059】
上記電池を用いて、4.2V(フル充電)から2.5V(フル放電)まで、75A連続放電を行った場合の1C容量に対する容量割合、および放電時のセル表面の温度上昇を調べた結果を下表に示す。
【0060】
また、それぞれ放電深度50%(全容量に対して50%放電を行う)で、10秒間電流放電を行い、10秒後の電圧降下を測定した。I−V特性より、放電下限電圧時の最大電流を求め、10秒出力値を、以下の算出式より求めました。
パワー密度(W/Kg)={電圧(V1)×Imax(A)}/Cell重量(g)
電圧(V1):2.5(V)
【0061】
図9には、2.5A〜75Aでの容量(%)を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例と比較例1の比較により、電極厚さを薄くすると大電流での容量が向上し、放電可能な時間が増えることが分かる。また、セル表面の温度上昇に関しても、電極厚さを薄くすることにより改善されていることが分かる。さらに、実施例と比較例2の比較より、積層ラミネート型にすることにより、同じ電極厚さでもセルの表面の温度上昇は、積層ラミネート型のほうが、小さいことがわかる。加えて、実施例と比較例3との比較により、端子幅が本発明の規定より狭くなると、セルの表面温度上昇が高く、また、高出力の電池が得られなくなることが分かる。積層ラミネート型は、電池の外形面積が大きく、積層中心と外部との距離が短いことから、円筒型に比べて放熱性にすぐれている。したがって、自動車のアシスト電源として利用するような電池を多数個接続して使用する組電池において、電池の設置間隔を小さくでき、コンパクトな組電池システムとすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の両面に正極活物質層を形成した正極電極と、負極集電体の両面に負極活物質層を形成した負極電極とを、正極活物質層と負極活物質層とがそれぞれ対向するようにセパレータを介して交互に複数積層した電池要素に、液体電解質を含浸せしめ、ラミネート外装で保持したリチウムイオン二次電池であって、以下の構成よりなる放電深度50%、25℃での10秒出力値が3000W/kg以上であるリチウムイオン二次電池。
(1)正極活物質の平均粒径が3〜10μmであり、正極電極の集電体を除く厚みが30〜110μm、
(2)負極活物質の平均粒径が5〜10μmであり、正極電極の集電体を除く厚みが30〜100μm、
(3)正極端子および負極端子が互いに隔離して外周端縁部に導出され、前記正極端子および負極端子が各々
B/A≧0.57
(ただし、Aは電流の方向に対して垂直な方向の活物質領域の幅、Bは電流の方向に対して垂直な方向の電極端子幅を表す)
を満たす。
【請求項2】
前記正極端子と負極端子を互いに対向して導出させたことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記正極端子および負極端子のラミネート外装からの露出部が、ラミネート外装内部に位置する前記正極端子および負極端子の表面積よりも広い表面積を有することを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のリチウムイオン二次電池を前記正極端子または負極端子を介して複数個組み合わせてなる組電池。
【請求項5】
前記正極端子および負極端子を冷却風により冷却可能にしてなる請求項4記載の組電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/013408
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512484(P2005−512484)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010460
【国際出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】